(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】多孔質部材中の閉塞の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20220630BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20220630BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20220630BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20220630BHJP
G01N 15/08 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N27/12 B
G01N29/48
G01N27/00 K
G01N15/08 B
(21)【出願番号】P 2018532315
(86)(22)【出願日】2017-02-02
(86)【国際出願番号】 US2017016227
(87)【国際公開番号】W WO2017136559
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-06-19
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150586
【氏名又は名称】エムエスエー テクノロジー, リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェリン
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,ライアン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】セクストン,ロバート,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ウーバー,ロバート,エリック
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-502924(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2189956(EP,A1)
【文献】特公平06-044318(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 27/00-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検ガスに応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境であって、該周囲環境からの前記被検ガスが、前記デバイスのポートと作動的に接続された多孔質部材を透過して前記被検ガスに応答する前記ガスセンサに到達する周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の閉塞状態を検出する方法であって、
圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記内室内で前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源を介して前記内室中に圧力波を発することと、
前記内室中に配置された、前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサを介して圧力波に対する応答を測定することと、
圧力波に応答する前記センサの応答を前記多孔質部材の前記閉塞状態と関連付けることと、を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの前記多孔質部材の透過を阻害するものである、
方法。
【請求項2】
前記内室中に圧力波を発することは、前記内室中に配置されたスピーカをアクティブにすることを有し、
圧力波に応答する前記センサを介して前記応答を測定することは、前記内室中に配置されたマイクロフォンを介して前記応答を測定することを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力波は、複数の周波数で前記内室中に発せられ、
応答は、前記複数の周波数の内の1より多くの周波数で測定される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記応答を測定することは、少なくとも前記多孔質部材から反射した圧力波が測定されることを有する、
請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
振幅変化及び位相変化の内の少なくとも1つが測定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
位相変化が測定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
振幅変化も測定される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ロックインアルゴリズムが使用されて、前記振幅変化及び前記位相変化のそれぞれが測定される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の周波数の少なくとも1つは前記多孔質部材の自己共振周波数であり、
前記複数の周波数の前記少なくとも1つで測定された応答は、前記閉塞状態と関連付けられる、
請求項
3または請求項3に従属する請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質部材の外表面と関連付けられた少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために、測定された前記応答を用いることをさらに備える、
請求項2~9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
圧力波は、前記多孔質部材の自己共振周波数で発せられ、
前記自己共振周波数で測定された応答は、前記多孔質部材の孔に侵入する前記少なくとも部分閉塞の決定と関連付けられる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
周囲環境中の被検ガスを検出するためのガスセンサデバイスであって、
内室及びポートを有するハウジングと、
前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続され前記被検ガスが透過する多孔質部材と、
前記内室中に配置された、前記被検ガスに応答するガスセンサと、
前記内室中に配置された圧力波源であって、該圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源と、
前記内室中に配置された、前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサと、
圧力波に応答する前記センサの応答を前記多孔質部材の閉塞状態と関連付けるために、
圧力波に応答する前記センサと作動的に接続された回路と、を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの透過を阻害するものである、
ガスセンサデバイス。
【請求項13】
前記圧力波源はスピーカを有し、
圧力波に応答する前記センサはマイクロフォンを有する、
請求項12に記載のガスセンサデバイス。
【請求項14】
前記スピーカは、複数の周波数で音響波を発する、
請求項13に記載のガスセンサデバイス。
【請求項15】
前記回路は、少なくとも前記多孔質部材から反射した圧力波を測定する、
請求項12~14の何れかに記載のガスセンサデバイス。
【請求項16】
前記回路は、振幅変化及び位相変化の内の少なくとも1つを測定する、
請求項15に記載のガスセンサデバイス。
【請求項17】
前記回路は、位相変化を測定する、
請求項15に記載のガスセンサデバイス。
【請求項18】
前記回路は、振幅変化も測定する、
請求項17に記載のガスセンサデバイス。
【請求項19】
前記回路は、メモリシステムに作動的に接続されたプロセッサシステムを有する、
請求項12~18の何れかに記載のガスセンサデバイス。
【請求項20】
前記メモリシステムは、前記振幅変化及び前記位相変化のそれぞれを測定するために、
前記プロセッサシステムによって実行可能なロックインアルゴリズムを有する、
請求項
16~18の何れかに記載のガスセンサデバイス。
【請求項21】
前記複数の周波数の内の少なくとも1つは、前記多孔質部材の自己共振周波数であり、
前記複数の周波数の内の前記少なくとも1つで測定された応答は、前記多孔質部材の孔に侵入する閉塞と関連付けられる、
請求項
14に記載のガスセンサデバイス。
【請求項22】
前記回路は、前記多孔質部材の外表面と関連付けられた少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために、測定された前記応答を用いるように構成されている、
請求項16~21の何れかに記載のガスセンサデバイス。
【請求項23】
圧力波は、前記多孔質部材の自己共振周波数で発せられ、
前記回路は、前記多孔質部材の孔に侵入する前記少なくとも部分閉塞の決定と関連付けられた前記自己共振周波数での応答を測定するように構成されている、
請求項22に記載のガスセンサデバイス。
【請求項24】
デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検ガスに応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境であって、該周囲環境からの前記被検ガスが、多孔質部材を透過して前記被検ガスに応答する前記ガスセンサに到達する周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の閉塞状態を検出する方法であって、
圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記内室内で前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源を介して前記内室中に圧力波を発することと、
前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサを介して応答の位相変化を測定することと、
前記応答の位相変化を前記多孔質部材の前記閉塞状態と関連付けることと、
を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの透過を阻害するものである、
方法。
【請求項25】
前記応答の前記位相変化が、前記内室中に配置された、圧力波に応答する前記センサを介して測定される、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記応答の大きさの変化を測定することをさらに備える、
請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記応答の前記位相変化が、1より多い周波数で測定される、
請求項24~26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
前記応答の前記位相変化及び前記応答の大きさの変化が、1より多い周波数で測定される、
請求項24~27の何れかに記載の方法。
【請求項29】
前記応答を測定することは、少なくとも前記多孔質部材から反射した圧力波を測定することを有する、
請求項24~28の何れかに記載の方法。
【請求項30】
ロックインアルゴリズムが使用されて、前記
応答の大きさの変化及び前記位相変化のそれぞれが測定される、
請求項
26に記載の方法。
【請求項31】
前記1より多い周波数の少なくとも1つは、前記多孔質部材の自己共振周波数であり、
前記1より多い周波数の前記少なくとも1つで測定された応答は、前記多孔質部材の孔に侵入する閉塞と関連付けられる、
請求項28~30の何れかに記載の方法。
【請求項32】
前記多孔質部材の外表面と関連付けられた少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために、測定された前記応答を用いることをさらに備える、
請求項24~31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
圧力波は、前記多孔質部材の自己共振周波数で発せられ、
前記自己共振周波数で測定された応答は、前記多孔質部材の孔に侵入する前記少なくとも部分閉塞の決定と関連付けられる、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
周囲環境中の被検ガスを検出するためのガスセンサデバイスであって、
内室及びポートを有するハウジングと、
前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続され前記被検ガスが透過する多孔質部材と、
前記内室中に配置された、前記被検ガスに応答するガスセンサと、
前記内室中に配置された圧力波源であって、該圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源と、
前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサであって、前記内室中に配置されたセンサと、
圧力波に応答する前記センサの位相応答と前記多孔質部材の閉塞状態とを関連付けるために、圧力波に応答する前記センサと作動的に接続された回路と、を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの透過を阻害するものである、
ガスセンサデバイス。
【請求項35】
デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検ガスに応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の閉塞状態を検出する方法であって、前記周囲環境からの前記被検ガスは、前記多孔質部材を透過して前記被検ガスに応答する前記ガスセンサに到達するよう構成され、
圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記内室内で前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源を介して前記内室中に圧力波を発することと、
前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサを介して1より多い周波数における応答変化を測定することと、
1より多い周波数における前記応答変化を前記多孔質部材の前記閉塞状態と関連付けることと、を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの前記多孔質部材の透過を阻害するものである、
方法。
【請求項36】
前記応答変化は、前記内室中に配置された、圧力波に応答する前記センサを介して測定される、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記応答の位相変化は、各周波数で測定される、
請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記応答の
大きさの変化は、各周波数で測定される、
請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記応答の位相変化及び
大きさの変化は、各周波数で測定される、
請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記応答を測定することは、少なくとも前記多孔質部材から反射した圧力波を測定することを有する、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ロックインアルゴリズムが使用されて、前記
応答の大きさの変化及
び位相変化のそれぞれが測定される、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記1より多い周波数の内の少なくとも1つは、前記多孔質部材の自己共振周波数であり、
前記1より多い周波数の内の前記少なくとも1つで測定される応答は、前記多孔質部材の孔に侵入する閉塞と関連付けられる、
請求項35に記載の方法。
【請求項43】
周囲環境中の被検ガスを検出するためのガスセンサデバイスであって、
内室及びポートを有するハウジングと、
前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続され前記被検ガスが透過する多孔質部材と、
前記内室中に配置された、前記被検ガスに応答するガスセンサと、
1より多い周波数で圧力波を発するように構成され、前記内室中に配置された圧力波源であって、該圧力波源から発せられて前記内室の外へ伝達される圧力波が前記多孔質部材を通って伝達されるように、前記多孔質部材から離間して配置された圧力波源と、
前記ガスセンサとは異なる圧力波に応答するセンサであって、前記内室中に配置されたセンサと、
前記1より多い周波数のそれぞれで、圧力波に応答する前記センサの応答と前記多孔質部材の閉塞状態とを関連付けるために、圧力波に応答する前記センサと作動的に接続された回路と、を備え、
前記多孔質部材の閉塞は、被検ガスの透過を阻害するものである、
ガスセンサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年12月29日に出願された米国特許出願第15/394,534号明細書の利益、及び2016年12月29日に出願された米国特許出願第15/394,566号明細書の利益を主張する。これらは、2016年2月5日に出願された米国仮特許出願第62/291,823号明細書の利益を主張する。これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の情報は、読者が以下に開示された技術及びこのような技術が一般的に使用され得る環境を理解することの助けとなるために提供される。本明細書で使用される用語は、本文献において特に明記されていない限り、何ら特定の狭い解釈に限定されることを意図したものではない。本明細書で記載された参考文献は、技術及び技術の背景の理解を容易にし得る。本明細書で引用される全ての参考文献における開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
多くのガスセンサは、前記センサが監視することを意図する環境と前記センサの分析部品とを隔てるかまたは仕切る、ガス多孔質部材/障壁または拡散障壁を含む。このような多孔質部材は、一般に、前記センサの分析部品の操作を妨げる可能性がある汚染物質の侵入を低減または除去するため、かつ/または、前記センサが曝される環境において、点火源としての前記分析部品を分離するために使用される。このような多孔質部材が使用される場合、前記センサによって検出/監視される被検物質ガスは、前記多孔質部材を通って移動し、前記センサの分析部品に達する必要がある。前記多孔質部材を通って被検物質が移動する能力及び効果は、モニターされている外部の周囲環境における前記被検物質の相対濃度変化に前記センサが反応することができる速度、精密さ及び正確さに直に影響する。その結果、多孔質部材は、該多孔質部材を通る被検物質の移動が前記センサの前記分析部品と協同することによって、前記センサがレベル及び/または変化に応答できるように、多孔質部材は、設計及び/又は選択され、そのレベル及び/または変化は、モニターされる環境において、センシング用途によって決められる、名目速度または最小速度、精密さ及び正確さでの被検物質の相対レベルにおけるものである。センサが配置された時点で、前記多孔質部材に接触または侵入する(通常の操作環境で生じる、あるいは変則的な事象またはメンテナンス活動が原因となって生じる)外部からの汚染物質によって、直にまたは前記多孔質部材との反応の結果として、前記環境と前記センサの分析部品との間での被検物質の移動が妨げられ得る。前記多孔質部材を通る被検物質の移動のこのような阻害の結果、目的とする前記被検物質についての目的とするセンサ応答速度からの逸脱が生じ、かつ/または、被検物質の濃度の絶対的または相対的変化の評価における精密さ/正確さにおける逸脱が生じることとなる。このような阻害は、用語「閉塞」または「ブロッキング」によって規定される。さらに、前記ブロッキングの原因となる汚染物質または状態は、一般的に、「閉塞」と称される。閉塞の一般的な例は、前記被検物質に対するセンサ応答が、オーバーペイント(overpainting)、水、砂/泥、虫または動物堆積物によって、あるいは、他の外部の拡散阻害物質によって、部分的に、または完全に阻害されるようになり得る産業環境において生じる。前記センサ多孔質部材を通る移動の不具合を認識できない結果、安全な環境限界を上回る被分析物質の濃度レベルが、検出限界以下または不検出となる。
【0004】
拡散の閉塞または他のセンサ多孔質部材の閉塞に加えて、前記センサ自体の性能は経時的に劣化し得る。そのため、安全方策(Prudence)によって、機能性について、ガス検出機器を定期的にテストすることが指示されている。例えば、日常的に、携帯用ガス検出機器に「バンプチェック」または機能チェックを行うことが、一般的な実務である。この試験の目的は、一般的に機器と称されるガス検出システム全体の機能を保証することである。例えば、フル校正の間の期間を延ばすために、定期的なバンプチェックまたは機能チェックが常設のガス検出機器について実行されてもよい。ガス検出システムは、少なくとも1つのガスセンサ、電子回路、及び前記センサを駆動するための電源を含み、かつ前記センサの応答を解析し、前記センサの応答をユーザに表示する。前記システムは、上記のような部品を囲って保護するためのハウジングをさらに含む。バンプチェックは、一般に、a)対象ガス(通常は、前記機器が検出することを意図している標的ガスまたは被検物質ガス)を適用すること、b)前記センサ応答を収集して解析すること、及びc)エンドユーザに、前記システムの機能状態(すなわち、前記機器が適切に機能しているか否か)を示すことを含む。
【0005】
上記のように、このようなバンプ試験は、携帯用ガス検出機器について、定期的に、かつ一般的には日常的に実行される。バンプチェックによって、前記ガス検出デバイスが適切に動作しているという比較的高程度の保証がユーザに提供される。バンプチェックは、有害ガスの警報レベルを検出することを要するのと同様に、ガス検出デバイスの全ての部品の必要な機能の全てを実行する。この点については、前記バンプチェックは、アクティブなセンサ部品と接触するための(例えば、任意の保護及び/または拡散部材または膜を含む)任意の移動経路を通って、前記機器の外側からの効率的なガス移動があることを保証する。前記バンプチェックはまた、前記センサ自体の検出態様が適切に動作すること、並びに前記センサが適切な応答機能及び信号を提供することを保証する。前記バンプチェックは、前記センサがそれに関連する電源及び電子回路に適切に接続されること、及び前記センサ信号が適切に解析されることをさらに保証する。さらに、前記バンプチェックは、前記ガス検出機器の表示器またはユーザインターフェース(例えば、ディスプレイ及び/または報知機能)が意図した通りに機能していることを保証する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、定期的/日常的なバンプチェックの要求には、多数の明らかな欠点がある。例えば、このようなバンプチェックは、時間がかかる。特に、多くのガス検出システムまたは機器を含む設備においては、時間がかかる。バンプチェックは、高価でありかつ潜在的に有毒な校正ガス(すなわち、前記センサが応答する被検物質ガスまたはその模擬物質)の使用も必要とする。さらに、バンプチェックは、加圧ガスボトル、減圧レギュレータ、及びチューブ、並びに前記校正ガスを前記機器に正確に供給するアダプタを通常含む専用のガス運搬システムも必要とする。専用のガス運搬システムが必要であることは、パーソナル式のガス検出デバイスをバンプチェックする機会が、前記ガス運搬機器の入手可能性によって、場所及び時間において制限されることを意味することが多い。
【0007】
近年、数多くのシステム及び方法が、必要とされるバンプ試験の数を減らすために提案されている。このようなシステムは、例えば、(被検物質ガスまたはその模擬物質の適用なしに)拡散障壁または他の障壁を通ることを含む、センサの電子問い合わせ及び/または前記センサへの移動経路の試験を含んでいてもよい。それにも関わらず、センサに必要とされるバンプ試験の数を減らすための、改良された試験システムと改良された方法とを開発することが、依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検物質に応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の少なくとも部分閉塞を検出する方法は、前記内室中に圧力波を発することと、前記内室中に配置された、圧力波に応答するセンサを介して応答を測定することと、を含む。前記内室中に圧力波を発することは、例えば、前記内室中に配置されたスピーカを(例えば、音響波を発するために)アクティブにすることを含んでいてもよい。圧力波に応答するセンサを介した前記応答を測定することは、例えば、前記内室中に配されたマイクロフォンを介した前記応答を測定することを含んでいてもよい。数多くの実施形態では、圧力波は、複数の周波数で前記室中に発せられ、応答は、前記複数の周波数の内の1より多くで測定される。
【0009】
応答を測定することは、例えば、(前記圧力波の)透過、反射、または吸収の内の少なくとも1つを測定することを含んでいてもよい。例えば、振幅変化及び位相変化の少なくとも一つが測定されてもよい。数多くの実施形態では、位相変化が測定される。数多くの実施形態では、振幅変化及び位相変化のそれぞれが測定される。例えば、ロックインアルゴリズムが用いられて、振幅変化及び位相変化のそれぞれを測定されてもよい。位相及び振幅は、例えば、発せられた圧力波の複数の周波数のそれぞれで測定されてもよい。
【0010】
発せられた前記圧力波の複数の周波数の内の少なくとも一つは、例えば、前記多孔質部材の自己共振周波数であってもよく、この周波数で測定された応答は、前記多孔質膜の複数の孔に侵入する閉塞と関連付けられてもよい。測定された応答は、例えば、前記多孔質部材の外表面と関連付けられる少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために用いられてもよい。
【0011】
別の態様では、周囲環境中の被検物質ガスを検出するためのガスセンサデバイスは、内室及びポートと、前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続された多孔質部材と、前記内室中に配置された圧力波源と、前記内室中に配置された、圧力波に応答するセンサと、圧力波に応答する前記センサの応答を前記多孔質部材の閉塞と関連付けるために、圧力波に応答する前記センサに作動的に接続された電子回路と、を含む。前記圧力波源は、例えば、スピーカを含んでおり、圧力波に応答する前記センサは、例えば、マイクロフォンを含んでいてもよい。前記スピーカは、例えば、音響波又は音を発してもよい。音響波は、複数の周波数で発せられてもよい。
【0012】
前記電子回路は、例えば、前記圧力波の透過、反射または吸収の内の少なくとも一つを測定してもよい。数多くの実施形態では、前記電子回路は、振幅変化及び位相変化の内の少なくとも一つを測定する。前記電子回路は、例えば、位相変化を測定してもよい。数多くの実施形態では、前記電子回路は、振幅変化及び位相変化のそれぞれを測定する。位相変化及び振幅変化のそれぞれは、発せられた前記圧力波の複数の周波数の内の一つ以上で測定されてもよい。
【0013】
前記電子回路は、例えば、メモリシステムに作動的に接続されたプロセッサシステムを含んでいてもよい。前記メモリシステムは、例えば、前記振幅変化及び前記位相変化のそれぞれを測定するために、前記プロセッシングシステムによって実行可能なロックインアルゴリズムを含んでいてもよい。
【0014】
発せられた圧力波の複数の周波数の内の少なくとも一つは、例えば、前記多孔質部材の自己共振周波数であってもよく、複数の周波数の内の少なくとも一つで測定された応答は、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する閉塞と関連付けられてもよい。前記電子回路は、例えば、前記多孔質部材の外表面と関連付けられる少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために、測定された前記応答を用いるように構成されてもよい。
【0015】
別の態様では、デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検物質に応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の少なくとも部分閉塞を検出する方法は、前記内室中に圧力波を発することと、圧力波に応答するセンサを介して応答の位相変化を測定することと、を含む。前記応答の位相変化は、例えば、前記内室中に配置または設置された、圧力波に応答するセンサを介して測定されてもよい。前記方法は、前記応答の大きさの変化を測定することをさらに含んでいてもよい。数多くの実施形態では、前記応答の位相変化は、1より多い周波数で測定される。数多くの実施形態では、前記応答の位相変化及び前記応答の大きさの変化は、1より多い周波数で測定される。
【0016】
前記応答を測定することは、例えば、透過、反射または吸収の内の少なくとも一つを測定することを含んでいてもよい。数多くの実施形態では、ロックインアルゴリズムが使用されて、振幅変化及び位相変化のそれぞれが測定されてもよい。1より多い周波数の内の少なくとも一つは、例えば、前記多孔質部材の自己共振周波数であってもよく、1より多い周波数の内の少なくとも一つで測定された応答は、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する閉塞と関連付けられてもよい。
【0017】
前記方法は、前記多孔質部材の外表面と関連付けられた少なくとも部分閉塞と、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する少なくとも部分閉塞とを区別するために、測定された応答を用いることを含んでいてもよい。圧力波は、例えば、前記多孔質部材の自己共振周波数で発せられ、前記自己共振周波数で測定された応答は、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する少なくとも部分閉塞の決定と関連付けられてもよい。
【0018】
別の態様では、周囲環境中の被検物質ガスを検出するためのガスセンサデバイスは、内室及びポートを有するハウジングと、前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続された多孔質部材と、前記内室中に配置された、前記被検出物質ガスに応答するセンサと、前記内室中に配置された圧力波源と、圧力波に応答するセンサと、圧力波に応答する前記センサの位相応答を前記多孔質部材の閉塞と関連付けるために、圧力波に応答する前記センサと作動的に接続された回路と、を含む。圧力波に応答するセンサは、前記内室中に配置されていてもよい。前記電子回路はまた、本明細書に記載されたような他の動作及び/または機能にさらに影響を及ぼすように構成されてもよい。
【0019】
別の態様では、デバイスの内室であって、該内室中に配置された、被検物質に応答するガスセンサを有するデバイスの内室と、周囲環境と、を隔てる多孔質部材中の少なくとも部分閉塞を検出する方法は、前記内室中に圧力波を発することと、1より多い周波数で、圧力波に応答するセンサを介して応答変化を測定することと、を含む。前記応答変化は、例えば、前記内室中に配置された、圧力波に応答するセンサを介して測定されてもよい。前記応答の位相変化は、各周波数で測定されてもよい。数多くの実施形態では、前記応答の振幅変化は、各周波数で測定されてもよい。数多くの実施形態では、前記応答の位相変化及び振幅変化は、各周波数で測定される。
【0020】
前記応答を測定することは、透過、反射または吸収の内の少なくとも1つを測定することを備える。多くの実施形態では、ロックインアルゴリズムが使用されて、振幅変化及び位相変化のそれぞれが測定される。1より多い周波数の内の少なくとも1つは、例えば、前記多孔質部材の自己共振周波数であってもよく、1より多い周波数の内の少なくとも1つで測定された応答は、前記多孔質部材の複数の孔に侵入する閉塞と関連付けられてもよい。
【0021】
別の態様では、周囲環境中の被検物質ガスを検出するためのガスセンサデバイスは、内室及びポートを有するハウジングと、前記周囲環境から前記内室を隔てるために、前記ポートと作動的に接続された多孔質部材と、前記内室中に配置された、前記被検出物質ガスに応答するセンサと、1より多い周波数で圧力波を発するように構成された、前記内室中に配置された圧力波源と、圧力波に応答するセンサと、1より多い周波数のそれぞれで、圧力波に応答する前記センサの応答と前記多孔質部材中の閉塞とを関連付けるために、圧力波に応答する前記センサと作動的に接続された回路と、を含む。圧力波に応答するセンサは、前記内室中に配置されていてもよい。前記電子回路はまた、本明細書の記載されたような動作及び/または機能にさらに影響を及ぼすように構成されてもよい。
【0022】
別の実施形態では、デバイスの内容積と前記デバイスの外側の容積とを隔てる多孔質部材中の少なくとも部分閉塞を検出する方法は、圧力波を前記内室中に発することと、圧力波に応答するセンサを介して応答の位相変化を測定することと、を含む。概して、本明細書に記載された方法及びデバイスは、多孔質部材を含むあらゆるデバイスまたはシステムにおける少なくとも部分閉塞を検出するために用いられてもよい。
【0023】
別の態様では、デバイスは、内室及びポートを有するハウジングと、前記周囲環境から前記内室を隔てるように、前記ポート作動的に接続された多孔質部材と、前記内室中に配置された圧力波源と、圧力波に応答するセンサと、圧力波に応答するセンサの位相応答と前記多孔質部材中の閉塞とを関連付けるために、圧力波に応答するセンサと作動的に接続された電子回路と、を含む。圧力波に応答するセンサは、前記内室中に配置されていてもよい。前記電子回路はまた、本明細書に記載されたような他の動作及び/または機能にさらに影響を及ぼすように構成されてもよい。
【0024】
更なる態様では、デバイスの内容積と前記デバイスの外側の容積とを隔てる多孔質部材中の少なくとも部分閉塞を検出する方法は、前記内室中に圧力波を発することと、前記内室に配置された、圧力波に応答するセンサを介して、1より多い周波数で応答変化を測定することを含む。数多くの実施形態では、前記応答の位相変化は、各周波数で測定される。多くの実施形態では、前記応答の大きさの変化は、各周波数で測定される。数多くの実施形態では、前記応答の位相の変化及び前記応答の大きさの変化は、各周波数で測定される。
【0025】
更なる態様では、デバイスは、内室及びポートを有するハウジングと、前記周囲環境から前記内室を隔てるように、前記ポートと作動的に接続された多孔質部材と、1より多い周波数で圧力波を発するように構成された前記内室中に配置された圧力波源と、圧力波に応答するセンサと、1より多い周波数のそれぞれで、圧力波に応答するセンサの応答と、前記多孔質部材中の閉塞とを関連付けるために、圧力波に応答するセンサと作動的に接続された電子回路と、を含む。圧力波に応答するセンサは、前記内室中に配置されていてもよい。前記電子回路はまた、本明細書に記載されたような他の動作及び/または機能にさらに影響を及ぼすように構成されてもよい。
【0026】
本発明に係るデバイス、システム及び方法は、特性及び該特性に伴う利点と共に、添付の図面と一緒に以下の詳細な説明を見ると、最良に評価され理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明のガスセンサデバイスの一実施形態を示している。
【
図2】
図2は、本発明のガスセンサデバイスの別の実施形態を示している。
【
図3】
図3は、
図2のセンサにおける閉塞された多孔質金属フリット及び閉塞されていない多孔質金属フリットについての、周波数範囲に亘る圧力または音響センサ応答を示している。
【
図4】
図4は、本発明のガスセンサデバイスの別の実施形態を示している。
【
図5】
図5は、
図4のセンサにおける閉塞された多孔質金属フリット及び閉塞されていない多孔質金属フリットについての、周波数範囲に亘る圧力または音響センサ応答を示している。
【
図6】
図6は、
図4に示したガスセンサデバイスを検討するために使用する試験システムの一実施形態を示している。
【
図7】
図7は、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットについての、閉塞割合の範囲に亘る反射係数の振幅変化を示している。
【
図8】
図8は、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットについての、閉塞割合の範囲に亘る反射係数の位相変化を示している。
【
図9A】
図9Aは、閉塞がある状態での、膜またはフリットにおける音の透過(T)、反射(R)、及び吸収(A)を概略的に示している。
【
図9B】
図9Bは、フリットのような多孔質部材への音響波入射のエネルギー収支ブロック図を示している。
【
図9C】
図9Cは、受信信号のベクトル加法を説明する極座標プロットを示している。
【
図9D】
図9Dは、外部閉塞がある状態での受信信号変化の成分を説明する極座標プロットを示している。
【
図9E】
図9Eは、単一の問い合わせ周波数(500Hz)での単一のパラメータ(反射振幅の変化)を用いた、閉塞分類及び分類誤差の代表例を示している。
【
図9F】
図9Fは、複数の問い合わせ周波数での応答の大きさを用いて、周波数依存閾値を伴う20%及び60%閉塞の場合を示した、代表的な閉塞分類を示している。
【
図9G】
図9Gは、複数の問い合わせ周波数での位相応答を用いて、周波数依存閾値を伴う20%及び60%閉塞の場合を示した、代表的な閉塞分類を示している。
【
図9H】
図9Hは、20%及び60%閉塞について、3つの問い合わせ周波数で振幅及び位相を組み合わせた代表的な極座標プロットを示している。ここで、網掛け領域は、
図9Eにおいて区別され、3kHzでの閉塞検出事例に適用される検出範囲の適用を示している。
【
図9I】
図9Iは、多孔質部材の外側における障害が原因となる閉塞を区別するための方法の代表的な実施形態を説明するブロック図を示している。
【
図10A】
図10Aは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットのダクトテープ閉塞の場合における透過係数変化を示している。
【
図10B】
図10Bは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットのダクトテープ閉塞の場合における反射係数変化を示している。
【
図10C】
図10Cは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットのダクトテープ閉塞の場合における吸収係数変化を示している。
【
図11A】
図11Aは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの氷閉塞の場合における透過係数変化を示している。
【
図11B】
図11Bは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの氷閉塞の場合における反射係数変化を示している。
【
図11C】
図11Cは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの氷閉塞の場合における吸収係数変化を示している。
【
図11D】
図11Dは、氷閉塞がある状態で生じる、フリットを通って移動する波の位相シフトを示している。
【
図12A】
図12Aは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの塩閉塞の場合における透過係数変化を示している。
【
図12B】
図12Bは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの塩閉塞の場合における反射係数変化を示している。
【
図12C】
図12Cは、周波数範囲に亘る、
図4のガスセンサデバイスの多孔質金属フリットの塩閉塞の場合における吸収係数変化を示している。
【
図13A】
図13Aは、透過を阻害する多孔質部材の1または複数の固有共振周波数を用いた、多孔質部材から生じる音響変化の区別についてのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。ここで、多孔質部材は、内部汚染物によって遮られていない。
【
図13B】
図13Bは、透過を阻害する多孔質部材の1または複数の固有共振周波数を用いた、多孔質部材から生じる音響変化の区別についてのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。該図は、フリットの侵入汚染を生じさせるインピーダンス変化(例えば、内部共振周波数のシフト)に起因する反射信号及び返送信号の変化を示している。
【
図14】
図14は、多孔質部材の孔の汚染(侵入)の結果としての、約6.5kHzの共振周波数で受信機に反射される音響エネルギー変化を示す検討における反射係数の周波数依存性を示している。
【
図15A】
図15Aは、内部共鳴室を用いた、多孔質部材に結合された室の幾何学的形状と、スピーカ/マイクロフォンポートの幾何学的形状との選択によって促進される、改良された共振周波数モニタリングのためのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。
【
図15B】
図15Bは、追加の外部共鳴室を用いた、多孔質部材に結合された室の幾何学的形状と、スピーカ/マイクロフォンポートの幾何学的形状との選択によって促進される、改良された共振周波数モニタリングのためのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。
【
図16】
図16は、非閉塞状態についての主音響信号伝播を示す閉塞の透過検出のためのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。
【
図17A】
図17Aは、多孔質部材と受信機との間に障害を示す閉塞の透過検出のためのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。
【
図17B】
図17Bは、多孔質部材から受信機の反対側に障害を示す閉塞の透過検出のためのシステム及び方法の一実施形態のブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概して、本願の図面に記載され、かつ示されているように、本実施形態の構成要素は、記載された代表的な実施形態に加えて、広範な種々の構成において配置及び設計され得ることが容易に理解されることとなる。そのため、図に示されているような代表的な実施形態の以下のより詳細な説明は、請求されているように実施形態の範囲を限定することを意図したものではなく、代表的な実施形態を単に例示的に示したものである。
【0029】
本明細書を通じて、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(a embodiment)」についての参照は、実施形態に関連して記載された、特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。そのため、本明細書を通じた種々の場所における、「一実施形態において(in one embodiment)」または「一実施形態において(in an embodiment)」などの語句の出現は、必ずしも、同じ実施形態についての全ての参照ではない。
【0030】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされ得る。以下の説明では、種々の実施形態を完全に理解するために、多数の具体的詳細が提供される。しかしながら、関連技術における当業者であれば、種々の実施形態が、1または複数の具体的詳細を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを理解することとなる。他の例では、公知の構造、材料、または操作は、曖昧さを避けるために、詳細に示されたり、記載されたりしない。
【0031】
本明細書及び添付の請求の範囲で使用されているように、単数形”a”、”an”、及び”the”は、文脈上明らかに別の意味を示していると判断されない限り、複数の参照を含む。そのため、例えば、「センサ(a sensor)」についての参照は、複数のそのようなセンサ及び当業者に公知のその等価物などを含み、「センサ(the sensor)」についての参照は、1または複数のそのようなセンサ及び当業者に公知のその等価物などについての参照である。本明細書の数値範囲の記載は、単に、前記範囲内の各別個の値についての個々の参照の簡略表記として役立つことを意図したものである。本明細書において特に断りのない限り、各個々の値及び中間の範囲が、本明細書において個々に引用されているように、本明細書に包含される。本明細書で記載された全ての方法は、本明細書において特に断りのない限り、または文脈によって明らかに禁じられていない限り、任意の好適な順番で実施され得る。
【0032】
本明細書で使用されているように、用語「回路」または「電気回路」は、これらに限られないが、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、または機能または作用を実行するためのそれぞれの組み合わせを含む。例えば、所望の特徴または要求に基づいて、回路は、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(AISC)のような個別論理、または他のプログラムされたロジックデバイスを含み得る。回路はまた、ソフトウェアとして、完全に具体化され得る。
【0033】
用語「制御システム」または「コントローラ」は、本明細書で使用されているように、これらに限られないが、1または複数の入力または出力デバイスの操作を調整または制御する任意の回路またはデバイスを含む。例えば、コントローラは、1または複数のプロセッサ、マイクロプロセッサ、または入力または出力機能を実行するようにプログラム可能な中央処理装置(CPU)を有するデバイスを含み得る。
【0034】
用語「プロセッサ」は、本明細書で使用されているように、これらに限られないが、任意に組み合わせた、1または複数のプロセッサシステム、またはマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、及びデジタルシグナルプロセッサ(DSP)のようなスタンドアロンプロセッサを含む。プロセッサは、メモリシステム(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM))、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなどのような、前記プロセッサの操作を支援する種々の他の回路と関連付けられ得る。これらの支援回路は、前記プロセッサまたはそれに関連付けられる電子パッケージの内部にあってもよいし、外部にあってもよい。前記支援回路は、前記プロセッサと操作的に通信する。前記支援回路は、必ずしも、ブロック図または他の図において、前記プロセッサと分離して示されていない。
【0035】
閉塞は、指標として、前記多孔質部材を通る被検物質移動のインピーダンスを直接選定してもよいし、かつ/または、この移動インピーダンスから生じるセンサ性能の間接的な変化を選定してもよい。閉塞は、例えば、連続的な測定において測定されてもよい。例えば、閉塞は、前記多孔質部材を通る被検物質の移動が通常である場合または名目上である場合の0%から、センサ分析部品とモニター環境との間で被検物質の移動が完全に阻害される100%までの範囲で、百分率として測定されてもよい。閉塞はまた、閉塞されていない(前記多孔質部材を通る一般的または通常の被検物質の移動を示す)、または部分的(一般的または通常の被検物質の移動を上回っているが、完全な移動阻害を下回る被検物質の移動のインピーダンスを示す)、あるいは完全(前記多孔質部材を通る被検物質の移動が完全に阻害されることを示す)のような名称の選定によって、別個の状態として測定されてもよい。これに代えて、前記多孔質部材を通る被検物質の移動阻害が選定された許容下限を下回ることを示す閉塞されていない状態、及び、被検物質の移動阻害が選定された下限を上回ることを示す閉塞された状態を用いて、閉塞は、ブーリアン状態とみなすこともできる。閉塞(及び/またはセンサ性能について得られた不具合)を検出及び選定する適切な測定は、センサ機能の保証のために重要である。上記されているように、前記センサの多孔質部材を通る移動の不具合を認識できないと、安全な環境基準を上回る被検物質の濃度レベルが、検出限界未満となるか、または非検出となり得る。
【0036】
数多くの実施形態では、本発明のデバイス、システム、及び方法は、例えば、標的ガスまたは被検物質ガスを検出するためのセンサの多孔質部材、膜、または障壁(例えば、拡散障壁)を通る流れを検出するために使用される。このような多孔質部材は、多くの実施形態では、例えば、多孔質金属フリットまたは多孔質高分子膜であってもよい。数多くの実施形態では、スピーカのような、圧力波または音響波の源、発生器、または送信機は、多孔質フリットまたは多孔質膜のような多孔質部材の後側(すなわち、センサ側かつ周囲側)の容積または室内に導かれる。発せられた音響波/圧力波(例えば、音)に対する応答が、圧力波センサ、音響波センサ、またはマイクロフォンのような受信機によって測定され、前記膜を通るガス移動に関連付けられる。概して、圧力変化または媒体中を伝播する圧力波(例えば、空気)に応答するあらゆるセンサまたは受信機が、本明細書で使用され得る。そのようなセンサまたは受信機は、本明細書において、概して、音響センサまたは受信機と称されることがある。
【0037】
本デバイス、システム、及び方法は、例えば、固定式または携帯式のガス機器において使用され得るが、特に、固定式のガス機器において有益である。(携帯式とは対照的に)固定式のガス機器の場合、該機器は、利用される際に校正される。上記のように、利用における配置後に、センサへのガス流れについてチェックを行うため、かつ前記センサが予想通りに応答することをチェックするために、高頻度で前記機器を“バンプ試験する”ことが推奨される。また上記のように、機器をバンプ試験するために、ユーザは、既知の濃度の標的/被検物質ガス(または前記センサが応答する模擬ガス)を前記機器に適用して、予想される応答または許容可能な応答について、前記機器をチェックする。前記センサ応答が(例えば、所定の閾値を用いたときに)許容可能な場合、前記ユーザは、次に、既知の濃度の前記標的ガスについて前記機器を校正することができる。
【0038】
例えば、米国特許第7413645号明細書、及び米国特許出願公開第2014/0273263号明細書、第2013/0193004号明細書、第2013/0192332号明細書、第2013/0186776号明細書、第2013/0186777号明細書、並びに米国特許出願第15/012919号明細書(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたような電子問い合わせシステム及び方法を使用すると、センサに電子問い合わせすることができ、それによりセンサ性能の変化を決定することができ、前記センサ応答が許容可能となるようにセンサ出力を補償することができ、それにより、バンプチェック間の期間が延ばされる(またはバンプチェックが省略される)。センサの電子問い合わせは、例えば、電子エネルギーを電極またはセンサ要素に適用すること、並びに、電子エネルギーの前記適用への応答と、及び/または、前記センサの状態を決定するために前記電極またはセンサ要素の電子特性とを測定することを含む。しかしながら、センサに電子問い合わせをすることでは、周囲環境または外界から前記センサを隔てる/保護する前記多孔質部材の閉塞を説明または検出することができない。前記センサの電子応答と、そのような多孔質部材の閉塞を検出するシステム、デバイス、及び方法とを組み合わせることによって、前記機器をバンプ試験することをさらに減らすことができ、または省略できることが提供される。
【0039】
多くの代表的な本明細書の実施形態では、(被検物質ガスの濃度が検出される)周囲環境からガスセンサを隔てる多孔質部材の閉塞を検出するために、源/スピーカから送信される音響波または波は、前記多孔質部材及びその任意の閉塞と相互作用する。次に、音響センサ/マイクロフォンによって、信号が受信される。前記応答は、加工され、前記多孔質部材を通る流れの損失と対応付けられ、かつ/または、センサの場合には、前記センサのガス応答の損失と対応付けられる。閉塞の存在及び/または程度を決定するために、前記データを解析及び/または加工する数多くの方法がある。数多くの実施形態では、前記源/スピーカ及び前記音響センサは、前記ガスセンサとしての前記多孔質部材の同じ側に配置または設置される。
【0040】
本発明の検討された数多くの実施形態では、可燃ガスセンサデバイス100が試験された。該デバイス100は、防爆ハウジング130によって作製された内室120中にセンサ110を含み、かつ多孔質フリットの形態で多孔質部材を含む。触媒燃焼ガスセンサデバイス及びその電子問い合わせは、例えば、米国出願公開第2014/0273263号明細書に記載されている。該明細書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。燃焼ガスセンサは、本明細書の数多くの代表的な実施形態において検討されているが、本発明のデバイス、システム、及び方法は、あらゆるセンサ(例えば、電気化学センサ、光音響センサなど)と、または、多孔質部材または膜が内室または内容積を外側環境から隔てる他のデバイスと、組み合わせて使用され得る。デバイス10の実施形態では、スピーカ150及びマイクロフォン160はまた、室120中に位置している。スピーカ150及びマイクロフォン160を内室120及びセンサ110の残部から必ずしも音響的に分離する必要はなく、または、それらの間で音/圧力波の伝播を必ずしも狭く伝える必要はない。示された実施形態では、センサ110、スピーカ150、及びマイクロフォン160は、回路に電気的に接続される。該回路は、
図1に模式的に示された、防爆ハウジング130の内側及び/または外側に位置され得る制御電子回路180と電気的に接続されてもよいプリント回路板170を含む。制御電子回路180は、例えば、(マイクロプロセッサのような1または複数のプロセッサを含む)プロセッサシステム190、及びプロセッサシステム190と作動的に接続されるメモリシステム194を含み得る。メモリシステム194は、例えば、その中に保管され、かつ、プロセッサシステム190によって実行可能な1または複数のアルゴリズムを含み得る。
【0041】
例えば、
図1に示されているように、音響波は、フリット140に向けて室120中で伝播する。いかなるメカニズムにも限定されず、幾つかの音響波は、フリット140に移行し、幾つかの音波は、反射されて内室120中に戻る。これに関連して、フリット140に移行する音響波の内、幾つかはフリット140中に吸収され、幾つかは反射されて(前記音波が発せられた)内室130内に戻り、幾つかはフリット140を通過して、防爆ハウジング130の外側の周囲環境に入る。フリット140を通過した防爆ハウジング130の外側の音響波は、「損失」音響波であり、該「損失」音響波は、フリット140の閉塞の程度と極めて関連が強い。フリット140が閉塞されると、少量の音響波(例えば、音波)が失われ、多量の音響波が反射されて室120中に戻る。多くの検討では、複数の周波数がスピーカ150によって発生する。例えば、どの音が、周波数領域においてマイクロフォン160によって受信されたかに注目すれば、発せられた周波数を容易に見分けることができるはずである。次に、閉塞された応答又は閉塞されていない応答であるはずのものについての大きさ及び/又は位相のために、各周波数にて閾値を一旦設定する。分析はまた、時間領域においてなされてもよい(ここで、閾値は、例えば、応答の大きさ及び/または応答の時間遅延のために設定されてもよい)。時間領域では、複数の周波数を含む駆動力が、例えば、前記スピーカによって生成されてもよい。
【0042】
種々の周波数を生成し、かつマイクロフォン160での応答を測定することを伴う実験では、フリット140が閉塞された場合、幾つかの周波数にて、前記応答が、実際に、より静かであり/低減されていたことが予想に反して発見された。問い合わせ信号と同じ周波数領域において、室120の共鳴が顕著であり得ることも分かった。
【0043】
前記内室中での共鳴に対処するために、(
図2においてハウジングを有さずに示されている)可燃ガスセンサデバイス100aが製造された。ここで、スピーカ150a及びマイクロフォン160aは、フリット140とセンサ110aとの間において、室130aと音響的に接続された単数または複数のチャンネル132a内に配置された。マイクロフォン160aが受ける音圧レベル(SPL)及びフリット140aに向けられるSPLも、可燃ガスセンサデバイス100と比べて増加したことが分かった。前記SPLが増加したため、信号応答が、閉塞された状態及び閉塞されていない状態の間で増加した。
図3は、閉塞されたフリット、閉塞されていないフリット、及びオープンフリット(つまり、フリットなし)についての周波数に対する応答の代表的な検討からのデータを示す。
【0044】
可燃ガスセンサデバイス100aは、可燃ガスセンサデバイス100で経験された共鳴を示さず、上記したように、閉塞された状態から閉塞されていない状態までの応答において、より大きな差を示した。しかしながら、可燃ガスセンサデバイス100bの設計のデメリットは、製造の難しさである。
【0045】
図4のデバイス100bにおいて、スピーカ150b及びマイクロフォン160bは、隣り合って配置されたか、またはプリント回路基板17b上に配置された。マイクロプロセッサ190b及びメモリ194bを含む制御システムも、前記システムを制御し、かつ閉塞物を検出するために必要な計算を実行するために、プリント回路基板170b上に組み込まれた。しかしながら、デバイス100とは異なり、スピーカ150b及びマイクロフォン160bは、センサ110b及びフリット140bの間の室130bの容積に、チャンネル132b及び134bを介してそれぞれ直に導入された(ported)。
図4のデバイス100bのデザインによって、(
図1のデバイス100と比べて)センサ110b、マイクロフォン150b、及びスピーカ160bが配置された室130bの容積が減らされた一方で、
図2のデバイス100aと比べて、製造の容易さが大きく改善された。デバイス100bのより小さな室によって、導入が使用されていない事例を上回る、数多くの利点が提供された。それに関連して、センサ応答は、より速くなった。これは、少量の空気が、モニターされていた周囲空気と交換される必要があったためであった。さらに、マイクロフォン160が受けた、スピーカ150bからの信号の容積(音量)は、増加した。これは、スピーカ150bが、より小さい容積の室を駆動する必要があったためであった。
図5は、周波数範囲に亘って、塗料で閉塞されたフリット140bと閉塞されていないフリット140bとの間での反射係数の振幅応答の差を示している。ここで、x軸には周波数が示され、y軸には測定された応答の大きさが示されている。
【0046】
図4のデバイス100bのデザインに基づいて、(
図6に概略的に示された)試験システム100b’が構築された。該試験システムでは、種々のフリット140は、種々の閉塞があるか、あるいは種々の閉塞がなく、試験システム100b’と容易に作動的に接続されて配置されることができ、かつ試験システム100b’との接続から容易に取り外されることができる。試験システム100b’は、フリット140bの外側に配置された第2音響センサ/マイクロフォン164bをさらに含む。試験システム100b’からの測定出力は、(マイクロフォン164bによって測定された)透過係数、(マイクロフォン160bによって測定された)反射係数、及び(算出された)吸収係数の位相及び振幅の応答の変化を含んでいた。本発明のシステムは、反射されたエネルギー及び/又は透過されたエネルギーを測定してもよい。反射されたエネルギーだけを測定することによって、デバイスの筐体内において音響センサまたはマイクロフォンだけを使用するという利点が提供される。さらに、例えば、危険性、可燃性、及び/又は爆発性ガスが存在し得る環境において使用されるセンサの場合、防爆ハウジング内の音響センサの筐体は、潜在的な点火源を除外する。しかしながら、本質的に安全な回路及び/又は追加の保護が、危険性、可燃性、及び/又は爆発性ガスが存在し得る環境において、多孔質部材の外側に配置される音響センサ又はマイクロフォンのために使用されてもよい。
【0047】
数多くの検討において、反射及び/又は透過は、1又は複数の周波数にて、試験されたそれぞれのフリット140bについて測定された。
図7及び8は、それぞれ、周波数500Hzでの種々の閉塞の種類についての代表的な振幅及び位相応答を示している。しかしながら、フリット140bの閉塞に関する情報は、例えば、測定された反射及び/又は透過データの位相又は振幅のいずれかの変化から得ることができる。位相及び振幅のそれぞれを分析することが有利であってもよいことが発見された。これに関連して、特定の周波数にて、所定の種類の閉塞によって、振幅の顕著な変化及び位相の極めて小さい変化または無変化が生じ得る。同様に、特定の周波数にて、所定の種類の閉塞によって、位相の顕著な変化及び振幅の極めて小さい変化または無変化が生じ得る。
【0048】
図9Aは、閉塞がある状態において、フリットのような多孔質部材と相互作用する音響波/音の透過(T)、反射(R)及び吸収(A)を概略的に示している。
図9Aにおいて、Iは、フリット(又は他の多孔質部材)への(例えば、スピーカから生じる)入射波を示しており、R
1、R
2及びR
3は、フリット表面位置、スリット頂部位置、及び閉塞位置でそれぞれ反射された波である。Tは、透過波を示しており、Aは、吸収波を示している。
【0049】
本明細書の数多くの実施形態において、全ての又は結合された、反射波R=R1+R2+R3が測定される。以下の等式R1≒I×Γ1は、R1をどのように入射波に関連付けるかを示している。ここで、Γ1は室境界についてのフリットの反射係数である。反射係数は、周波数依存性であり、位相及び振幅情報を含む。以下の等式R2≒I×(1-Γ1)×Γ2は、R2をどのように入射波に関連付けるかを示している。ここで、Γ2は、空気/閉塞境界についてのフリットの反射係数である。同様に、R3は、以下の式R3≒I×(1-Γ1)×(1-Γ2)×Γ3において、入射波に関連付けられる。ここで、Γ3は、フリットから間隔を開けられた閉塞/環境要素の反射係数である。本明細書のマイクロフォンにて測定された、全ての反射波は、全ての3つの反射波を考慮している。
【0050】
図9Bは、本発明の再帰反射音問い合わせシステムの一実施形態の別の略図を示している。これは、多孔質部材又は障壁の音響特性の変化を評価し、かつ/又は、音響波源又は送信機及び音響波センサ又は受信機の反対側の音響反射の変化を評価するためのものである。音響特性の変化及び音響反射の変化は、障害及び閉塞の導入または存在を示している。上記のように、再帰反射システムは、多孔質部材又は障壁の反対側の送信機及び/又は受信機の配置が、困難又は危険である状況において、特に有利である。
【0051】
このようなシステムの操作は、音響エネルギー収支原理を用いて議論されてもよい。この原理は、閉じられた境界を透過するエネルギー、該境界から反射されるエネルギー、及び該境界内に吸収されるエネルギーの総和が、該境界内で生成される、かつ/又は、該境界における入射のエネルギー/パワーの総和に等しいことを示す。この原理は、音響波源または送信機から生成され、音響波センサ又は受信機に戻る音響問い合わせ信号の伝播を説明するために有用である。送信機及び受信機周辺に描かれた別の境界を考慮すると、送信機から受信機に返送される音響エネルギーの成分は、多孔質部材における音響入射から反射かつ返送されたエネルギーの結果の総和と、受信機に伝播するものの多孔質部材に作用しない音エネルギーとの間で分けられる。非入射(non-incident)経路の音響エネルギーは、多孔質部材又は、該多孔質部材の反対側の環境の音響インピーダンスによって修正されず、そのため、これらに関する情報を殆ど含んでいないか、全く含んでいない。多孔質部材における音響入射から受信機に返送される音響エネルギーの成分は、多孔質部材で反射されるエネルギーと、多孔質部材を通り多孔質部材の反対側の環境に至る遠回り経路を取り、反射されて多孔質部材に戻された後、多孔質部材を通って透過されて受信機に至るエネルギーと、のベクトルの総和を含む。反射エネルギーの振幅及び位相は、大部分が、(反射係数Rcoefで表される)多孔質部材の音響インピーダンスが原因となるものであり、そのため、主に、多孔質部材に関連する情報を含む。多孔質部材の反対側の環境から返送される音響エネルギーの振幅及び位相は、(透過係数Tcoefで表される)多孔質部材の音響インピーダンスと、(Rscatter_coedで表される)前記環境の複合インピーダンスと、によって2倍の影響を受け、そのため、多孔質部材及び環境に関する複合情報を含んでいる。
【0052】
図9Cは、参照として送信機の振幅及び位相を用いた、受信機から返送され複合受信信号となる信号成分のグラフでのベクトル加算を示している。これらのベクトルの振幅及び位相は周波数依存性であり、そのため、複合和は、周波数依存性の振幅及び位相を伴う受信信号となる。最も大きな振幅偏差及び/又は最も大きな位相偏差を伴うベクトル成分は、複合受信信号の振幅及び位相に最も影響を及ぼす。
図9Dに示すように、受信機に返送される非入射音響信号は、多孔質部材又は多孔質部材の向こう側の環境の音響インピーダンスの変化によって影響されず、そのため、閉塞検出に関連する無視できる程度の情報を含む。このことによって、非入射経路中を伝播する成分を最小にしつつ送信機パワーの入射成分を最大にし、これにより、情報不足、すなわち、非入射信号の影響(impact and influence)(ノイズ)を最小にしつつ複合受信信号側における情報関連信号の振幅及び影響を最大にする音響デザイン方策が提案される。
【0053】
音響問い合わせシステムは、受信機に返送される送信機音エネルギーの振幅及び/又は位相の変化と、フリット及び/又はフリット並びに外部障害の結合物を通過する通気性の変化との関連付けを利用して、外部環境からフリット側の送信機/受信機へのガス移動(閉塞)の制限の変化/フリット側の送信機/受信機からのガス移動(閉塞)の制限の変化を推論する。閉塞検出の目的のために、多孔質部材及び外部障害の音響インピーダンス(及び、関連する、透過、反射及び吸収係数)は周波数依存性であることから、閉塞された状況と閉塞されていない状況との間における反射及び/又は返送される音振幅及び/または位相の差を最大にする問い合わせ周波数を選ぶことができる。このような周波数は、例えば、本明細書に記載されたような、多孔質部材の所定の実験的特性評価によって、例えば、製造時に容易に測定される。閉塞されていないシステムの基準振幅及び/又は位相に対する、振幅及び/又は位相変化に基づいて、閉塞の割合を推論することができ、あるいは、ブーリアン閉塞状態を表明することができる。
図9Dにおける極座標プロットは、外部障害が原因となり返送かつ反射されるベクトル変化に起因する受信信号の振幅及び位相の最終的な変化を示している。
【0054】
数多くの実施形態においては、閉塞検出は、単一又は複数の周波数で受信信号の振幅及び位相の両方を利用することによって、顕著に改善され、これにより、多孔質部材の閉塞状態を区別するための多次元閾値スキームを作製する。単一周波数での単一閾値、例えば、反射振幅の使用の結果、
図9Eに示したように、閉塞検出エラーが生じ得る。
図7と同様に、
図9Eにおいて、多孔質部材に適用される種々の閉塞材料を用いた500Hzでの反射の変化が、最終的に測定された閉塞割合に対してプロットされる。30%閉塞での水平方向の閉塞閾値線は、検出ターゲットを示している。
図9Eの代表的な例において、30%を上回る閉塞は、(例えば、オペレータ/オペレータシステムの警報を用いて)閉塞されていると決定される一方で、この閾値を下回る閉塞は、閉塞されていないと決定される。この単一周波数、単一の閾値スキーマにおいて、垂直方向の振幅検出閾値の値を用いて、閉塞が検出される。この閾値を超える反射振幅の変化は、閉塞されていると決定される一方で、前記閾値を下回る範囲内の反射振幅の変化は、閉塞されていないと決定される。説明したように、この単一閾値のアプローチは、閉塞が30%を下回るときに、幾つかの閉塞材料が前記閾値を超える反射振幅変化を示す(タイプ1エラー)一方で、幾つかの材料は、閉塞が30%を上回るときに、前記検出閾値を下回る範囲内の反射振幅変化を示す(タイプ2エラー)ため、検出エラーを生じさせる。タイプ1エラーを避けることが望ましい。その理由は、そのようなエラーによって、重大でない閉塞を除去又は修繕するためのメンテナンスサイクルの誤り及び/又は開始の決定/警報が生じ得るからである。タイプ2エラーを避けることも望ましい。その理由は、そのようなエラーの結果、性能を損なわせる閉塞があるときに、(多孔質部材を通過する流れが顕著に妨げられていないことを示す)閉塞された多孔質部材についての誤った決定/警報の失敗が生じ得るからである。
【0055】
図9F~9Hは、20%閉塞及び60%閉塞における差を区別するための、3つの別の問い合わせ周波数からの振幅データ及び位相データの両方の使用を示している。
図9F及び9Gは、重畳された各周波数でのそれぞれの閾値を用いた20%及び60%閉塞についての振幅及び位相の変化を明示している。500Hz及び1kHzでの振幅応答だけが検出において利用された場合には、閉塞状況は、不正確に決定/警報(タイプ1エラー)されるかもしれない。前記検出スキームが、閉塞されている多孔質部材を決定/警報するためのそれらの各振幅閾値を超えることを、全ての問い合わせ周波数の振幅に要求すれば、3kHzでの更なる振幅の包含が、閉塞がないことの正確な表明となるであろう。
図9Iは、重畳された3kHzでの検出境界を伴う、結合された振幅及び位相閾値化の極概論(polar view)を示し、これは、多孔質部材の閉塞状態の誤った分類及び表明を減らすための結合された応答閾値の使用をさらに説明するためのものである。
【0056】
返送信号(外部障害が原因となる閉塞)又は反射信号(多孔質部材汚染が原因となる閉塞)のいずれかによって複合受信機信号が支配的となる周波数を利用することによって、閉塞を区別することによって、検出される閉塞源(すなわち、多孔質部材に対して外部の障害/閉塞または多孔質部材の孔の内部汚染/侵入から生じる障害/閉塞)が評価される。フリット又は他の多孔質部材の表面に閉塞が存在する場合、オペレータは、例えば、多孔質部材の表面を洗浄してもよい。フリット又は他の多孔質部材に閉塞物質が侵入している場合、恐らく、交換が要求される。
【0057】
図9Iは、多孔質部材(外部障害)と隣り合った閉塞又は障害についての区別及び評価を示している。受信した音響信号変化源として、多孔質部材と外部障害とを区別するために、単数(又は複数)の問い合わせ周波数が選択される。該問い合わせ周波数は、外部閉塞及び障害の導入によって起こる返送信号の変化によって、複合受信信号の変化が支配的となるように、通常、多孔質部材に対して実質的に透過性である(すなわち、多孔質部材を通る透過性が高く、多孔質部材での反射及び吸収が低い周波数である)。
【0058】
図10A~12Cは、多孔質部材の外表面を超えて存在する外部閉塞又は障害の導入に伴う、周囲環境に透過される周波数依存性の音響信号パワーにおける変化、受信機に反射/返送されて吸収されるパワーにおける変化を示している。
図10A~12Cに使用されているように、「未処理の」は、閉塞していない多孔質部材又はフリットの通常の参照事例を示す一方で、「処理された」は、外部閉塞又は障害の追加によって起こる変化を示している。Raは、障害の反射及びその後の返送ベクトルによって支配的となる受信機への複合(反射+返送)信号を示している。障害からの反射の結果として返送パワーが増加するので、Raは障害の存在とともに増加する。Taは、結合された多孔質部材及び何らかの閉塞を通って透過される音響パワーを示している。吸収及び反射の結果、Taは、閉塞とともに減少する。アルファは、多孔質部材及び何らかの閉塞の組み合わせによって吸収される音響パワーを示している。閉塞による吸収の結果、アルファは、閉塞の存在とともに増加する。
図10A~12Cで検討された多孔質金属フリットの場合、閉塞されていない事例及び閉塞された事例についての複合受信機信号は、本質的に同一であり、多孔質部材/フリットからの反射信号によって支配的となるように、汚染されていないフリットの6.5kHzでの固有共振によって、多孔質部材/フリット吸収が増加され、フリット透過が減少される。
【0059】
図10A、10b及び10Cは、それぞれ、未処理のフリット140b及びダクトテープで閉塞されたフリット140bについての、試験システムの透過係数、反射係数及びアルファ/吸収係数の出力をそれぞれ示している。
図11A、11B及び11Cは、それぞれ、未処理のフリット140b及び氷で閉塞されたフリット140bについての、試験システムの透過係数、反射係数、及びアルファ/吸収係数の出力をそれぞれ示している。
図12A、12b及び12cは、それぞれ、未処理のフリット140b及び塩で閉塞されたフリット140bについての、試験システムの透過係数、反射係数及びアルファ/吸収係数出力を示している。
図11A~12Cにおいて、2つのフリット140bが各検討で試験された。
【0060】
図11Bに示したように、反射振幅係数は、氷閉塞検討において試験された全ての周波数範囲に亘って、約20%変化した。反射振幅係数出力は、塩で焼かれたフリットに対して、僅かに異なっている。塩で焼かれたフリットでは、反射振幅係数は、1kHzを下回る周波数において約20%変化するが、約6.5kHzでのクリーンなフリットと同じ応答を有するために、除々に減少する。上記のように、約6.5kHzにて、フリット140bは共鳴状態にあり、その周波数に近い音を吸収することが決定された。
【0061】
図11A~11Cは、例えば、各態様のフリットの振幅、透過、吸収、及び反射の周波数依存性を示している。フリット140bが閉塞物質で未処理の場合、反射は、約70%の入射信号の振幅に相当する(例えば、
図11B又は12Bを参照されたい)。フリットが閉塞物質で処理されている場合、反射係数は、100%に近付くことができる(例えば、
図12Bを参照されたい)。
【0062】
図13A及び13Bは、(フリット140bのような多孔質部材の内部汚染を示す)フリット140bについての音響変化の区別及び評価を示している。(多孔質部材における汚染物質によって潜在的な閉塞を推論する)受信される音響信号変化源として多孔質部材を区別するために、多孔質部材に対して通常は不透過性である(すなわち、多孔質部材に侵入する音響信号が、通常、多孔質部材を通って透過されるよりも吸収される)問い合わせ周波数又は周波数のセットが選択され、通常の多孔質部材と汚染された多孔質部材との間で反射パワーの顕著な変化が生じる。これらの周波数では、受信信号は、フリットの外表面における障害の存在又は不存在による影響を比較的受けない。その理由は、僅かな量の音響出力だけが、このような外部障害に透過された後、受信機に返送されるためである。
【0063】
図14は、フリット140bの孔に侵入又は浸潤した汚染物質から生じるフリット140bの音響インピーダンスの変化によって生じる、フリット140bについての6.5kHzの固有共振周波数にて受信機に返送される音響パワーの変化(減少)を示している。
図14においては、汚染された又は侵入されたフリット140bについて、処理された応答の反射パワーと未処理の応答の反射パワーとの間に、6.5kHzにて顕著な違いがある一方で、例えば、
図10Bに示されるような、外部又は表面障害の場合には、反射パワーは、外部障害によって、大きな影響を受けない。
【0064】
数多くの実施形態では、多孔質部材の共鳴周波数に関連する振幅及び/又は位相変化の検出、及び/又は、多孔質部材の共鳴周波数の変化の検出は、スピーカ/マイクロフォンシステムと多孔質部材とを結合する室の幾何学的形状のデザインによって高められてもよい。そのようなシステムの共鳴周波数は、例えば、多孔質部材の結合された音響インピーダンスと、接続された室の音響特性とによって決定されてもよい。
図15に描かれたように、共鳴を実現するために、例えば、スピーカ及び/又はマイクロフォンを室に接続する音響ポートであって、多孔質部材に向けてシールされる音響ポートの幾何学的形状の選択によって、検出をさらに高めることが実現されてもよい。代替的又は追加的に、
図15Bに示したように、多孔質部材を通って受信機に返送される信号を高めるために、音響共鳴室が、多孔質部材の環境(外部)側に固定されてもよい。
【0065】
上記の再帰反射システムは、送信機及び受信機が多孔質部材と同じ側に存在することを可能にすることによる利点を提供する。再度になるが、一方側(外側)の危険な環境又は爆発性の環境と、危険な環境によって損傷若しくは機能低下し得るか、又は、外部環境に対して潜在的な点火源を示し得る他方側(内側)の部品と、を分けるために、多孔質部材が使用される場合、この配置は、特に有利である。しかしながら、音響信号振幅及び/又は位相変化を用いた多孔質部材閉塞の検出及び区別は、再帰反射システムに限られるものではない。代替例は、多孔質部材を通って透過される音響信号を直接モニターするための検出システムを構成することである。
図16は、多孔質部材の反対側に位置する送信機及び受信機を用いたこのような透過検出システムの実施形態を概略的に示している。このような実施形態は、外部環境から受信機を保護するため、又は点火源としての受信機を分離するための、追加の障壁又は保護部品/方法を含んでいてもよい。上記のように、本質的に安全な回路が受信機のために使用されてもよい。追加された受信機障壁によって、周囲環境からセンサを別々に分離する受信機障壁と多孔質部材との上に閉塞を形成するための機会が付与されてもよく、これにより、多孔質部材の閉塞検出の信頼性が悪化し、該信頼性が潜在的な影響を受ける。
図16に描かれるように、検出信号は、多孔質部材又は障壁(I2)を通って直接受信機に透過される音響信号の一部(Irec)と、環境から受信機に反射かつ散乱される音響信号との複合物を含む。そのため、閉塞の検出及び区別は、1又は複数の周波数における複合信号の振幅及び/又は位相の変化から決定される。再帰反射システムと異なり、
図17A及び17Bにそれぞれ描いたように、多孔質部材と受信機との間に、又は受信機の向こう側に閉塞が存在することが可能になり、検出システムの変化と閉塞状態の変化とを関連付けるために、受信音響信号と閉塞との間における異なる又は追加の相関関係が要求される。さらに、外部閉塞の区別及び多孔質部材の汚染は、多孔質部材の共鳴周波数にて吸収または反射する閉塞の可能性によって悪化し、汚染物質が誘導する共鳴変化の結果、多孔質部材透過における変化の検出を潜在的に悪化させる。
【0066】
デバイス100b及び試験システム100b’のような本発明のデバイス又はシステムを用いて生じた生データに基づいて、多数のアルゴリズムを試験した。そして、閉塞に伴って変化することとなる信号を付与するデータを処理するための多くの方法がある。数多くの実施形態において、ロックインアプローチに基づくアルゴリズムを使用した。上記のように、多孔質部材が閉塞されたときに、スピーカで発せられてマイクロフォンで受けられる信号の位相及び振幅の両方が変化することとなる。ロックインアプローチによって、僅かに処理されたこれらの出力の両方が提供される。ロックインアルゴリズムは、その性質上、モノトーンの又は極めて狭いバンドの検出器である。単一のロックイン検出アプローチを用いる複数周波数に亘る検出は、音響送信機が一度に一つの周波数を送る、複数の問い合わせを必要とする。代わりに、複数の周波数で同時に送信機を駆動することによって(このような周波数が、ロックイン検出器を用いてバンド幅を十分に区別するように分離されている場合)、及び平行配置されたロックイン検出器を用いて(各周波数について1回)検出することによって、複数の周波数問い合わせが、ロックインを伴って実行され得る。複数の周波数問い合わせは、受信信号を記録すること、及びロックイン検出器を通じてその信号を繰り返し通過させることによっても実行され得る。ここで、前記信号は、通過のそれぞれ間、関心のある各周波数についてロックされる。マルチトーン及びブロードバンドの問い合わせ信号は、例えば、フーリエ系の周波数応答関数検出を伴って使用されてもよい。他のブロードバンド準拠検出スキームは、ブロードバンド又はマルチトーン技術を伴って使用されてもよい。時間ドメイン検出技術を用いてもよい。再度になるが、多くの検出スキームが、本発明のデバイス、システム及び方法での使用に適している。好ましい検出スキームの例には、これらに限られる訳ではないが、ロックインアルゴリズム、フーリエ変換、ウェーブレット/カーブレット、及びヒルベルト変換が含まれる。
【0067】
数多くの実施形態において、音波源又はスピーカは、本発明のデバイスにおける音響波センサとして使用されることもできる。これに関連して、多孔質部材の閉塞から生じるハウジングの内室中の音圧変化は、スピーカ(波源)の音響負荷を修正することができる。この音響負荷は、スピーカ駆動端子における、逆起電力、電流又はインピーダンス(起電力及び電流を組み合わせたもの)の変化において検出可能な振幅及び/又は位相での、歪み、及び/又は、他の周波数に起因する変化をもたらす。本明細書の随所で論じたような送信機から分離された、マイクロフォン又は受信機が受信する信号を利用することと同様に、スピーカの音響負荷におけるそのような変化の測定と評価とを、多孔質部材の閉塞と関連付けることができる。
【0068】
上記のようなセンサの電子問い合わせに関連付けられるセンサ出力の修正に加えて、流路/閉塞試験の結果として測定されるセンサ出力に、1又は複数の修正を適用するために、本発明のデバイス及びシステムが作動可能であってもよく、上記適用するように構成されてもよい。これに関連して、センサは、例えば、「分子カウンター」として考慮されてもよい。そのため、所定量の分析分子が機器を通って拡散して、例えば、先の校正に基づいた同じ読取値を基準とした百万分率(ppm)又は百分率に、測定値が変換されるように、分析センサは、分析用の作用電極又は検出電極にて所定量の分析分子が反応する方法で校正される。センサ入口に関連する多孔質部材又は障壁が開放状態にあって閉塞されていない場合、拡散速度は、同じ状況下で、かなりの再現性がある。多孔質部材が閉塞さるか、又は、流路が別の方法で塞がれるにつれて、分子が機器のハウジングの外側からセンサに拡散できる速度は遅くなり得るため、センサの活性部分に分子が出くわす速度は低下し、これにより、出力が低下する。1又は複数の本発明の試験の結果として、部分閉塞を測定することによって、このような部分閉塞にかかわらず、正確な読取を維持するために、センサの感度を調節することができる。
【0069】
閉塞割合は、例えば、実験によって容易に、補正係数と関連付けられ得る。関連付けられたルックアップテーブル又は関連付けられたアルゴリズム/式は、例えば、本発明のデバイス及びシステムのメモリに保管されてもよく、センサ感度についての補正係数は、これらから決定されてもよい。
【0070】
先の説明及び添付の図面は、現時点において数多くの代表的な実施形態を記載している。言うまでもないが、種々の修正、追加及び代替のデザインが、先の教示の観点から、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。これらは、先の説明よりも以下のクレームによって示される。クレームの等価物の意味及び範囲に含まれる全ての変形及び修正が、クレームの範囲に包含されることとなる。