(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】鉄道車両の位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220630BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G01B11/00 B
B61L25/02 G
(21)【出願番号】P 2019049121
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018050136
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】515332975
【氏名又は名称】近畿日本鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】桂 正士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦彦
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240519(JP,A)
【文献】特開2015-232456(JP,A)
【文献】特開2015-105081(JP,A)
【文献】特開2014-167802(JP,A)
【文献】特開2015-145186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する鉄道車両の位置を検出する位置検出装置であって、
レーザ光を投光して走査する際の走査面が、前記鉄道車両の連結部を継続して通るように、前記レーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光が物体で反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記位置検出装置は、前記鉄道車両よりも高い位置に配置され、
前記投光部は、前記鉄道車両の正面から、前記走査面が前記連結部を継続して通るように垂直から所定角度以内で走査
し、且つ前記レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査し、
前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記鉄道車両までの距離を検出し、検出した前記距離が所定距離であり、且つ第1投光方向での前記距離である第1距離よりも、前記第1投光方向の次の第2投光方向での前記距離である第2距離が初めて長くなった場合に、前記第1投光方向又は前記第2投光方向に基づいて、前記鉄道車両の重量の大小度合を検出する、鉄道車両の位置検出装置。
【請求項2】
軌道を走行する鉄道車両の位置を検出する位置検出装置であって、
レーザ光を投光して走査する際の走査面が、前記鉄道車両の連結部を継続して通るように、前記レーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光が物体で反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記投光部は、前記鉄道車両の正面から、前記レーザ光が前記連結部を通るように垂直から所定角度以内で走査し、
前記投光部は、前記レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査し、
前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記鉄道車両までの距離を検出し、検出した前記距離が所定距離であり、且つ第1投光方向での前記距離である第1距離よりも、前記第1投光方向の次の第2投光方向での前記距離である第2距離が初めて長くなった場合に、前記第1投光方向又は前記第2投光方向に基づいて、前記鉄道車両の重量の大小度合を検出する、鉄道車両の位置検出装置。
【請求項3】
前記位置検出部により検出された前記位置を、前記鉄道車両から見えるように表示する表示部を備える、請求項1
又は2に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項4】
前記位置検出部により検出された前記重量の大小度合を、前記鉄道車両から見えるように表示する表示部を備える、請求項
1又は2に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項5】
前記位置検出装置は、ホームドアを備えるホームに設けられている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記物体までの距離を検出し、前記投光方向及び前記距離で特定される複数の点により前記鉄道車両を構成し、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項7】
前記位置検出部は、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点により多角形を形成し、前記投光部から前記多角形の重心までの距離に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、請求項
6に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項8】
軌道を走行する鉄道車両の位置を検出する位置検出装置であって、
レーザ光を投光して走査する際の走査面が、前記鉄道車両の連結部を継続して通るように、前記レーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光が物体で反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記物体までの距離を検出し、前記投光方向及び前記距離で特定される複数の点により前記鉄道車両を構成し、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点により多角形を形成し、前記投光部から前記多角形の重心までの距離に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、鉄道車両の位置検出装置。
【請求項9】
前記位置検出部は、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち前記投光部からの距離が最も短い点までの距離に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、請求項
6に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項10】
前記投光部により投光される前記レーザ光が前記鉄道車両の窓に当たらないように、前記投光部により投光される前記レーザ光の一部を遮断する遮断部材を備える、請求項1~
9のいずれか1項に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【請求項11】
前記投光部は、前記レーザ光が前記鉄道車両の窓に当たらない範囲で前記レーザ光を投光して走査する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の鉄道車両の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道を走行する鉄道車両の位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅のホームに鉄道車両を停止させる際には、軌道に設けられた停止位置の目印に運転士が目測で鉄道車両を合わせている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、運転士の運転技術に頼ってホームに鉄道車両を停止させているため、停止した鉄道車両が停止位置からずれることがある。特に、ホームにホームドアが設けられている場合は、ホームドアの扉体に鉄道車両のドアを正確に合わせて鉄道車両を停止させる必要がある。そこで、鉄道車両の位置を検出することが望ましいが、様々な種類の鉄道車両が存在するため、鉄道車両の種類にかかわらず安定して位置を検出することは困難である。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、鉄道車両の種類にかかわらず、軌道を走行する鉄道車両の位置を安定して検出することのできる位置検出装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の手段は、
軌道を走行する鉄道車両の位置を検出する位置検出装置であって、
レーザ光を投光して走査する際の走査面が、前記鉄道車両の連結部を継続して通るように、前記レーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光が物体で反射された反射光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する位置検出部と、
を備える。
【0006】
上記構成によれば、位置検出装置により、軌道を走行する鉄道車両の位置が検出される。ここで、投光部は、レーザ光を投光して走査する際の走査面が、鉄道車両の連結部を継続して通るように、レーザ光を投光する。様々な種類の鉄道車両が存在するが、連結部を含む車両下部の構成は共通していることが多い。さらに、連結部は鉄道車両の最も端に位置するため、鉄道車両の他の部分によりレーザ光が遮られる可能性が低い。このため、投光部は、鉄道車両の種類にかかわらず、レーザ光を連結部に安定して投光することができる。
【0007】
受光部によって、投光部により投光されたレーザ光が物体で反射された反射光が受光される。このとき、受光部は、連結部で反射されたレーザ光を安定して受光することができる。そして、位置検出部によって、受光部により受光された反射光に基づいて、鉄道車両の位置が検出される。したがって、位置検出部は、鉄道車両の種類にかかわらず、軌道を走行する鉄道車両の位置を安定して検出することができる。なお、鉄道車両の位置を安定して検出することができれば、その検出結果をリアルタイムで運転士に伝えたり、その検出結果を鉄道車両の停止制御に反映させたりすることができる。
【0008】
具体的には、第2の手段のように、前記投光部は、前記鉄道車両の正面から、前記レーザ光が前記連結部を通るように垂直から所定角度以内で走査する、といった構成を採用することができる。例えば、投光部が、鉄道車両の正面から、レーザ光が連結部を通るように垂直に走査すれば、レーザ光の走査面が連結部を継続して通り、連結部までの距離を継続して検出することができる。
【0009】
第3の手段では、前記投光部は、前記レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査し、前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記鉄道車両までの距離を検出し、検出した前記距離が所定距離であり、且つ第1投光方向での前記距離である第1距離よりも、前記第1投光方向の次の第2投光方向での前記距離である第2距離が初めて長くなった場合に、前記第1投光方向又は前記第2投光方向に基づいて、前記鉄道車両の重量の大小度合を検出する。
【0010】
上記構成によれば、投光部により、レーザ光が下方から上方へ順次投光されて走査される。位置検出部によって、受光部により受光された反射光に基づいて、レーザ光の投光方向ごとに投光部から鉄道車両までの距離が検出される。ここで、連結部は鉄道車両の最も端に位置する。このため、投光部から鉄道車両までの距離が所定距離の場合に、レーザ光が下方から上方へ順次投光される際の投光方向ごとの鉄道車両までの距離は、レーザ光が連結部に投光されるようになるまでは減少し、レーザ光が連結部に投光されなくなると増加する。
【0011】
この点、位置検出部は、投光部から鉄道車両までの距離が所定距離であり、且つ第1投光方向での上記距離である第1距離よりも、第1投光方向の次の第2投光方向での上記距離である第2距離が初めて長くなった場合に、第1投光方向又は第2投光方向に基づいて、鉄道車両の重量の大小度合を検出する。例えば、乗客数が多く鉄道車両の重量が大きい場合は、連結部の位置が低くなるため、第1投光方向及び第2投光方向は走査において早い時期の投光方向となる。したがって、第1投光方向又は第2投光方向に基づいて、鉄道車両の重量の大小度合を検出することができる。
【0012】
さらに、投光部は、レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査するため、レーザ光を上方から下方へ順次投光して走査する場合と比較して、第1投光方向及び第2投光方向を早期に検出することができる。なお、鉄道車両の重量の大小度合を検出することができれば、その検出結果を運転士に伝えたり、その検出結果を鉄道車両の停止制御に反映させたりすることができる。
【0013】
第4の手段では、前記位置検出部により検出された前記位置を、前記鉄道車両から見えるように表示する表示部を備える。
【0014】
上記構成によれば、表示部によって、位置検出部により検出された鉄道車両の位置が、鉄道車両から見えるように表示される。このため、鉄道車両の運転士は、表示部に表示された鉄道車両の位置を見ながら鉄道車両を適切に停止させることができる。なお、鉄道車両の位置としては、停止位置までの鉄道車両の距離や、停止位置とは異なる基準位置までの鉄道車両の距離等を採用することができる。
【0015】
第5の手段では、前記表示部は、前記位置検出部により検出された前記重量の大小度合を、前記鉄道車両から見えるように表示する。
【0016】
駅のホームに鉄道車両を停止させる際に、運転士は鉄道車両のブレーキを操作して停止位置に鉄道車両を停止させる。この際、運転士は、乗客数の多少による鉄道車両の重量の変化を考慮しておらず、例えば通勤時間帯等、鉄道車両の重量が大きい場合に、鉄道車両が停止位置を超えることがある。
【0017】
この点、上記構成によれば、表示部によって、位置検出部により検出された鉄道車両の重量の大小度合が、鉄道車両から見えるように表示される。このため、鉄道車両の運転士は、表示部に表示された鉄道車両の重量の大小度合を見て、鉄道車両を適切に停止させることができる。重量の大小度合を表示する際は、例えば鉄道車両の重量を大中小の3段階や、通常と大重量との2段階で表示することができる。なお、その表示態様として、黄色、青色、赤色等に色分けして表示したり、文字で表示したりすることができる。
【0018】
駅のホームにホームドアが設けられている場合は、ホームドアの扉体に鉄道車両のドアを正確に合わせて鉄道車両を停止させる必要がある。
【0019】
この点、第6の手段では、前記位置検出装置は、ホームドアを備えるホームに設けられている。したがって、ホームドアを備えるホームにおいて、位置検出部は、鉄道車両の種類にかかわらず、軌道を走行する鉄道車両の位置を安定して検出することができる。
【0020】
第7の手段では、前記位置検出部は、前記受光部により受光された前記反射光に基づいて、前記レーザ光の投光方向ごとに前記投光部から前記物体までの距離を検出し、前記投光方向及び前記距離で特定される複数の点により前記鉄道車両を構成し、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する。
【0021】
上記構成によれば、位置検出部によって、受光部により受光された反射光に基づいて、レーザ光の投光方向ごとに投光部から物体までの距離が検出される。そして、投光方向及び距離で特定される複数の点により鉄道車両が構成される。ここで、鉄道車両を構成する全ての点を用いて鉄道車両の位置を検出すると、位置を検出する処理の負荷が大きくなり、位置の検出が遅くなるおそれがある。この点、鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて、鉄道車両の位置が検出される。したがって、位置の検出が遅くなることを抑制することができる。
【0022】
具体的には、第8の手段のように、前記位置検出部は、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点により多角形を形成し、前記投光部から前記多角形の重心までの距離に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、といった構成を採用することができる。こうした構成によれば、投光部から多角形の重心までの距離に基づいて鉄道車両の位置を検出するため、鉄道車両の位置を安定して検出することができる。さらに、鉄道車両を構成する全ての点のうち一部の点を用いて鉄道車両の位置が検出されるため、位置の検出が遅くなることを抑制することができる。
【0023】
また、具体的には、第9の手段のように、前記位置検出部は、前記鉄道車両を構成する全ての点のうち前記投光部からの距離が最も短い点までの距離に基づいて、前記鉄道車両の位置を検出する、といった構成を採用することができる。こうした構成によれば、鉄道車両の位置を安定して検出しつつ、迅速に位置を検出することができる。
【0024】
第10の手段では、前記投光部により投光される前記レーザ光が前記鉄道車両の窓に当たらないように、前記投光部により投光される前記レーザ光の一部を遮断する遮断部材を備える。
【0025】
投光部により投光されたレーザ光が鉄道車両の窓に当たると、レーザ光の強度が弱い場合はレーザ光が窓ガラス(樹脂製を含む)を透過せず、レーザ光の強度が強い場合はレーザ光が窓ガラスを透過する。具体的には、投光部から鉄道車両の窓までの距離が長い場合にレーザ光の強度が弱くなり、投光部から鉄道車両の窓までの距離が短い場合にレーザ光の強度が強くなる。このため、反射光に基づいて検出される鉄道車両の位置が、投光部から鉄道車両の窓までの距離によってばらつくおそれがある。
【0026】
この点、上記構成によれば、投光部により投光されるレーザ光が鉄道車両の窓に当たらないように、投光部により投光されるレーザ光の一部が遮断部材により遮断される。したがって、反射光に基づいて検出される鉄道車両の位置が、投光部から鉄道車両の窓までの距離によってばらつくことを抑制することができる。さらに、投光部により投光されるレーザ光の一部を遮断するように遮断部材を取り付けるだけでよいため、投光部及び受光部の構成を変更する必要がない。
【0027】
第11の手段では、前記投光部は、前記レーザ光が前記鉄道車両の窓に当たらない範囲で前記レーザ光を投光して走査する。こうした構成によっても、反射光に基づいて検出される鉄道車両の位置が、投光部から鉄道車両の窓までの距離によってばらつくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】乗客数が少ない場合において連結部角度を検出する態様を示す模式図。
【
図5】乗客数が多い場合において連結部角度を検出する態様を示す模式図。
【
図6】投光部から列車までの距離が長い場合のレーザ光の投光態様を示す模式図。
【
図7】投光部から列車までの距離が短い場合のレーザ光の投光態様を示す模式図。
【
図9】マスクを取り付けたレーダによるレーザ光の投光態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、駅のホームに停止しようとしている列車の位置を検出する走査型レーザレーダシステムとして具現化している。
【0030】
図1に示すように、軌道50は、2本のレール51等を備えている。
【0031】
列車60(鉄道車両)は、レール51の上を走行する。列車60は、各車両を互いに連結する連結部61を備えている。特急列車、急行列車、普通列車等に応じて、様々な種類の車両が存在する。しかしながら、連結部61を含む車両下部の構成は共通していることが多い。
【0032】
駅のホーム70には、ホームドア80が設置されている。ホームドア80は、複数の戸袋81、複数の扉体82等を備えている。各扉体82が各戸袋81の内部に収納されることにより、ホームドア80が開かれる。
【0033】
走査型レーザレーダシステム10(鉄道車両の位置検出装置)は、走査型レーザレーダ20、表示器30等を備えている。レーダシステム10は、ホームドア80を備えるホーム70に設けられている。
【0034】
レーダ20は、前方の略190°の検出範囲をレーザ光で垂直に走査する広角の測距レーダである。レーザ光には、例えば赤外線や、可視光、紫外線等を利用することができる。
【0035】
表示器30(表示部)は、液晶ディスプレイ等で構成されており、レーダ20からの信号に基づいて画像を表示する。表示器30は、ホーム70において、列車60の運転士Dから画像が見える位置に設置されている。
【0036】
図2に示すように、レーダ20は、投光部21、受光部22、位置検出部23等を備えている。位置検出部23は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。
【0037】
投光部21は、投光部21を中心として、例えば0.25°(所定角度θ)間隔でレーザ光を投光する。すなわち、投光部21は、走査方向においてレーザ光の投光方向を所定角度θずつ変えて、レーザ光を投光する。
【0038】
受光部22は、投光部21により投光されたレーザ光が物体で反射された反射光を受光し、反射光の受光量を検出する。受光部22は、投光部21によりレーザ光が投光される度に、反射光の受光量を検出する。
【0039】
位置検出部23は、投光部21によりレーザ光が投光されてから、受光部22により反射光が受光されるまでの時間に基づいて、投光方向ごとに投光部21(レーダ20)から物体までの距離を算出(検出)する。このとき、受光部22により受光した反射光の受光量が閾値よりも大きい場合は、投光部21から物体までの距離を算出する。一方、受光部22により受光した反射光の受光量が上記閾値よりも小さい場合は、投光部21から物体までの距離を算出しない。すなわち、位置検出部23は、受光部22により受光された反射光に基づいて、列車60の位置を検出する。
【0040】
図3に示すように、列車60(各車両)の連結部61は、各車両の車体62に取り付けられている。連結部61は、車体62の前端及び後端に取り付けられており、各車両の最も端に位置している。車体62は、サスペンション63を介して、車輪64により支持されている。サスペンション63は、車両の重量に応じて伸縮し、乗客数が多いほど縮む。サスペンション63の伸縮に応じて、車体62及び連結部61は上下する。
【0041】
レーダ20は、駅の壁や、柱、梁において、所定の高さ(例えば列車60よりも高い位置)に取り付けられている。投光部21は、列車60の正面から、レーザ光が連結部61を通るように垂直に走査する。投光部21は、レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査する。すなわち、投光部21がレーザ光を投光して走査する際の走査面は、列車60の中心を通る垂直面になっている。このため、列車60がレール51上を走行しても、レーザ光の走査面は列車60の連結部61を継続して通る。なお、レーザ光の走査面は、列車60の連結部61を継続して通ればよく、必ずしも列車60の中心を通らなくてもよい。また、投光部21は、列車60の正面から、レーザ光の走査面が連結部61を継続して通るように、垂直から所定角度以内で走査すればよい。
【0042】
位置検出部23は、投光方向ごとに算出した投光部21から物体までの距離に基づいて、床面Fや、天井C、梁B等の静止物と、移動物M(列車60)とを区別する。位置検出部23は、静止物や移動物Mを、距離の検出された複数の点の集まりとしてそれぞれグルーピングする。位置検出部23は、投光部21から移動物Mまでの距離d1を検出する。投光部21から移動物Mまでの距離d1としては、投光部21から移動物Mを構成する複数の点の重心までの距離を用いてもよいし、投光部21から移動物Mを構成する複数の点のうち最も距離の短い点までの距離を用いてもよい。
【0043】
図1に示すように、位置検出部23は、レーダ20から列車60の停止OK位置(停止位置)までの距離d2と上記距離d1とに基づいて、停止OK位置から移動物M(列車60)までの距離d3(鉄道車両の位置)を算出(検出)する。すなわち、位置検出部23は、上記投光方向及び検出した距離で特定される複数の点により列車60を構成し、列車60を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて、停止OK位置から列車60までの距離d3(鉄道車両の位置)を算出(検出)する。そして、位置検出部23は、表示器30に信号を送信して、表示器30により距離d3を表示させる。これにより、運転士Dは、停止OK位置から列車60までの距離d3を確認しながら、列車60のブレーキ操作を行うことができる。
【0044】
駅のホーム70に列車60を停止させる際に、運転士Dは列車60のブレーキを操作して停止位置に列車60を停止させる。この際、運転士Dは、乗客数の多少による列車60の重量の変化を考慮しないことが多く、例えば通勤時間帯等、列車60の重量が大きい場合に、列車60が停止位置を超えることがある。
【0045】
例えば、
図4に示すように、位置検出部23は、基準線S(基準方向)からの角度θ1~θ5において、投光部21から移動物Mを構成する各点までの距離d(θ1)~d(θ5)を検出している。同図では、列車60の乗客数が少ない場合を示している。
【0046】
ここで、連結部61は列車60の最も端に位置する。このため、投光部21から移動物M(列車60)までの距離d1が所定距離dr(例えば30m)の場合に、レーザ光が下方から上方へ順次投光される際の投光方向ごとの移動物Mまでの距離(距離d(θ1)~d(θ5))は、レーザ光が連結部61に投光されるようになるまで(角度θ1~θ3)は減少し、レーザ光が連結部61に投光されなくなると(角度θ4)増加する。
【0047】
位置検出部23は、移動物Mまでの距離d1が所定距離drであり、且つ角度θ3(第1投光方向)での距離(第1距離)である距離d(θ3)よりも、角度θ3の次の角度θ4(第2投光方向)での距離(第2距離)である距離d(θ4)が初めて長くなった場合に、角度θ3を連結部61の高さを表す連結部角度θrとする。
【0048】
図5は、列車60の乗客数が多い場合を示している。この場合、投光部21から移動物Mまでの距離d1が所定距離drの場合に、レーザ光が下方から上方へ順次投光される際の投光方向ごとの移動物Mまでの距離(距離d(θ1)~d(θ5))は、レーザ光が連結部61に投光されるようになるまで(角度θ1~θ2)は減少し、レーザ光が連結部61に投光されなくなると(角度θ3)増加する。このため、位置検出部23は、角度θ2を連結部角度θrとする。このように、連結部角度θrは、列車60の重量に応じて変化する。したがって、位置検出部23は、連結部角度θr(第1投光方向)に基づいて、列車60の重量の大小度合を検出する。
【0049】
そして、位置検出部23は、表示器30に信号を送信して、表示器30により列車60の重量の大小度合を表示させる。例えば、位置検出部23は、列車60の重量が小さい場合(乗客数が少ない場合)に黄色を表示させ、列車60の重量が通常の場合(乗客数が通常の場合)に青色を表示させ、列車60の重量が大きい場合(乗客数が多い場合)に赤色を表示させる。したがって、運転士Dは、列車60の重量の大小度合を表す色を確認して、列車60のブレーキの操作開始時期や、操作量、操作継続時間等を調節することができる。
【0050】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0051】
・投光部21は、レーザ光を投光して走査する際の走査面が、列車60の連結部61を継続して通るように、レーザ光を投光する。様々な種類の列車60が存在するが、連結部61を含む車両下部の構成は共通していることが多い。さらに、連結部61は列車60の最も端に位置するため、列車60の他の部分によりレーザ光が遮られる可能性が低い。このため、投光部21は、列車60の種類にかかわらず、レーザ光を連結部61に安定して投光することができる。
【0052】
・受光部22によって、投光部21により投光されたレーザ光が物体で反射された反射光が受光される。このとき、受光部22は、連結部61で反射されたレーザ光を安定して受光することができる。そして、位置検出部23によって、受光部22により受光された反射光に基づいて、列車60の位置が検出される。したがって、位置検出部23は、列車60の種類にかかわらず、軌道50を走行する列車60の位置を安定して検出することができる。
【0053】
・投光部21は、列車60の正面から、レーザ光が連結部61を通るように垂直に走査する。このため、レーザ光の走査面が連結部61を継続して通り、連結部61までの距離を継続して検出することができる。
【0054】
・
図4において、位置検出部23は、投光部21から列車60までの距離d1が所定距離drであり、且つ第1投光方向(角度θ3)での距離d(θ3)である第1距離よりも、第1投光方向の次の第2投光方向(角度θ4)での距離d(θ4)である第2距離が初めて長くなった場合に、第1投光方向に基づいて、列車60の重量の大小度合を検出する。乗客数が多く列車60の重量が大きい場合は、連結部61の位置が低くなるため、第1投光方向は走査において早い時期の投光方向となる。したがって、第1投光方向に基づいて、列車60の重量の大小度合を検出することができる。
【0055】
・投光部21は、レーザ光を下方から上方へ順次投光して走査するため、レーザ光を上方から下方へ順次投光して走査する場合と比較して、第1投光方向を早期に検出することができる。
【0056】
・表示器30によって、位置検出部23により検出された列車60の位置が、列車60の運転士Dから見えるように表示される。このため、列車60の運転士Dは、表示器30に表示された列車60の位置を見ながら列車60を適切に停止させることができる。
【0057】
・表示器30によって、位置検出部23により検出された列車60の重量の大小度合が、列車60の運転士Dから見えるように表示される。このため、列車60の運転士Dは、表示器30に表示された列車60の重量の大小度合を見て、列車60を適切に停止させることができる。
【0058】
・駅のホーム70にホームドア80が設けられている場合は、ホームドア80の扉体82に列車60のドアを正確に合わせて列車60を停止させる必要がある。この点、ホームドア80を備えるホーム70には、走査型レーザレーダシステム10が設けられている。したがって、位置検出部23は、列車60の種類にかかわらず、軌道50を走行する列車60の位置を安定して検出することができる。
【0059】
・位置検出部23によって、受光部22により受光された反射光に基づいて、レーザ光の投光方向ごとに投光部21から移動物Mまでの距離が検出される。そして、投光方向及び距離で特定される複数の点により列車60が構成される。ここで、列車60を構成する全ての点を用いて列車60の位置を検出すると、位置を検出する処理の負荷が大きくなり、位置の検出が遅くなるおそれがある。この点、列車60を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて、列車60の位置が検出される。したがって、位置の検出が遅くなることを抑制することができる。
【0060】
・位置検出部23は、列車60を構成する全ての点のうち投光部21からの距離が最も短い点までの距離に基づいて、列車60の位置を検出することができる。こうした構成によれば、列車60の位置を安定して検出しつつ、迅速に位置を検出することができる。
【0061】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0062】
・位置検出部23は、移動物Mまでの距離d1が所定距離drであり、且つ角度θ3(第1投光方向)での距離(第1距離)である距離d(θ3)よりも、角度θ3の次の角度θ4(第2投光方向)での距離(第2距離)である距離d(θ4)が初めて長くなった場合に、角度θ4を連結部61の高さを表す連結部角度θrとすることもできる。すなわち、位置検出部23は、連結部角度θr(第2投光方向)に基づいて、列車60の重量の大小度合を検出することもできる。
【0063】
・投光部21は、レーザ光を上方から下方へ順次投光して走査してもよい。その場合、位置検出部23は、移動物Mまでの距離d1が所定距離drであり、且つ角度θ3(第1投光方向)での距離(第1距離)である距離d(θ3)が、移動物Mを構成する複数の点までの距離のうち最も短くなった場合に、角度θ3を連結部61の高さを表す連結部角度θrとすることもできる。
【0064】
・表示器30は、列車60の重量の大小度合を色で表示する以外に、文字等で表示してもよい。
【0065】
・位置検出部23は、列車60の重量の大小度合を、列車60の重量が小さい場合(乗客数が少ない場合)と、列車60の重量が大きい場合(乗客数が多い場合)との2段階に分けてもよい。また、列車60の重量の大小度合を、列車60の重量が大きい場合(乗客数が多い場合)と、列車60の重量が通常の場合(乗客数が通常の場合)との2段階に分けてもよい。
【0066】
・位置検出部23は、列車60の重量の大小度合を検出する処理を省略することもできる。その場合、位置検出部23は、表示器30により列車60の位置のみを表示させてもよい。
【0067】
・位置検出部23は、投光部21から移動物Mまでの距離d1を、列車60の位置として検出することもできる。そして、位置検出部23は、表示器30に信号を送信して、表示器30により距離d1を表示させることもできる。
【0068】
・ホームドア80を備えていないホーム70に、走査型レーザレーダシステム10を設けてもよい。また、軌道50において、駅のホーム以外に、走査型レーザレーダシステム10を設けることもできる。その場合であっても、軌道50において停止位置とは異なる基準位置までの列車60の距離(鉄道車両の位置)を表示器30により表示することで、運転士Dはその距離を見ながら列車60を適切に停止させたり、走行させたりすることができる。
【0069】
・位置検出部23は、検出した列車60の重量の大小度合を、列車60に送信してもよい。その場合、列車60は、受信した列車60の重量の大小度合に基づいて、ブレーキ制御や走行制御を実行することもできる。
【0070】
・位置検出部23は、検出した列車60の位置を、列車60に送信してもよい。その場合、列車60は、受信した列車60の位置に基づいて、ブレーキ制御や走行制御を実行することもできる。
【0071】
・1本のレール上(軌道)を走行する列車(鉄道車両)、いわゆるモノレールに対して走査型レーザレーダシステム10を適用することもできる。
【0072】
・
図6に示すように、位置検出部23は、移動物M(列車60)を構成する全ての点のうち一部の点により多角形Cmを形成し、投光部21から多角形Cmの重心bまでの距離に基づいて、列車60の位置を検出してもよい。具体的には、移動物Mを構成する複数の点のうち多くの点を通る線分を作成し、線分の端点を頂点とするように多角形Cmを形成する。そして、多角形が四角形や六角形等の偶数角形の場合は、少なくとも2本の対角線の交点を重心bとする。多角形が三角形や五角形等の奇数角形の場合は、頂点から対辺の中央に引いた少なくとも2本の直線の交点を重心bとする。こうした構成によれば、投光部21から多角形Cmの重心bまでの距離に基づいて列車60の位置を検出するため、列車60の位置を安定して検出することができる。さらに、列車60を構成する全ての点のうち一部の点を用いて列車60の位置が検出されるため、位置の検出が遅くなることを抑制することができる。
【0073】
・投光部21により投光されたレーザ光が列車60の窓に当たると、レーザ光の強度が弱い場合はレーザ光が窓ガラス66を透過せず(
図6参照)、レーザ光の強度が強い場合はレーザ光が窓ガラス66を透過する(
図7参照)。具体的には、
図6に示すように、投光部21から列車60の窓ガラス66(窓)までの距離が長い場合にレーザ光の強度が弱くなる。一方、
図7に示すように、レーダ20(投光部21)が上記停止OK位置の近くに設置され、投光部21から列車60の窓ガラス66までの距離が短い場合にレーザ光の強度が強くなる。このため、投光部21から重心bまでの距離、ひいては列車60の位置が、投光部21から列車60の窓ガラス66までの距離によってばらつくおそれがある。例えば、
図7の場合、列車60が投光部21から遠いとレーザ光が窓ガラス66を透過せず、列車60が投光部21に近付くとレーザ光が窓ガラス66を透過する。なお、窓ガラス66は、ガラス製に限らず、樹脂製であってもよい。
【0074】
そこで、
図8,9に示すように、レーダシステム10(鉄道車両の位置検出装置)は、投光部21により投光されるレーザ光が列車60の窓ガラス66(窓)に当たらないように、投光部21により投光されるレーザ光の一部を遮断するマスク25,26を備える。マスク25,26(遮断部材)は、上下方向の所定隙間wが互いの間に形成されるように、レーダ20の外側に取り付けられている。こうした構成によれば、投光部21により投光されるレーザ光が列車60の窓ガラス66に当たらないように、投光部21により投光されるレーザ光の一部がマスク25,26により遮断される。したがって、投光部21から重心bまでの距離、ひいては列車60の位置が、投光部21から列車60の窓ガラス66までの距離によってばらつくことを抑制することができる。さらに、投光部21により投光されるレーザ光の一部を遮断するようにマスク25,26をレーダ20に取り付けるだけでよいため、投光部21及び受光部22の構成を変更する必要がない。
【0075】
・投光部21は、レーザ光が列車60の窓ガラス66に当たらない範囲でレーザ光を投光して走査することもできる。こうした構成によっても、反射光に基づいて検出される列車60の位置が、投光部21から列車60の窓ガラス66までの距離によってばらつくことを抑制することができる。
【0076】
・位置検出部23は、列車60を構成する全ての点のうち一部の点に基づいて列車60の位置を検出する際に、投光部21からの距離が最も短い点及び多角形Cmの重心b以外の点を用いることもできる。例えば、位置検出部23は、列車60を構成する全ての点のうち所定割合を間引いた点に基づいて、列車60の位置を検出することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10…走査型レーザレーダシステム(鉄道車両の位置検出装置)、20…走査型レーザレーダ、21…投光部、22…受光部、23…位置検出部、25…マスク(遮断部材)、26…マスク(遮断部材)、30…表示器(表示部)、50…軌道、51…レール、60…列車(鉄道車両)、61…連結部、65…窓ガラス(窓)、70…ホーム、80…ホームドア。