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特許7097353生体試料におけるダニ媒介微生物を検出する方法及び固体担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】生体試料におけるダニ媒介微生物を検出する方法及び固体担体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20220630BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220630BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220630BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220630BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220630BHJP
   C07K 14/20 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
G01N33/569 F ZNA
G01N33/53 N
G01N33/543
G01N37/00 102
C12M1/34 F
C07K14/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019516059
(86)(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017060077
(87)【国際公開番号】W WO2017207186
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】16397518.8
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518428945
【氏名又は名称】テズテッド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート レオナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルグ クナル
(72)【発明者】
【氏名】メリライネン レーナ
(72)【発明者】
【氏名】プッタラクサ カノクティプ
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0274925(US,A1)
【文献】特表2010-534221(JP,A)
【文献】Leena Merilainen,Characterization and Immunological Aspects of Borrelia Burgdorferi Pleomorphic Round Bodies,Jyvaskyla Studies in Biological and Environmental Science,307,2015年
【文献】O. Brorson et al.,Grapefruit seed Extract is a Powerful in vitro Agent Against Motile and Cystic Forms of Borrelia burgdorferi sensu lato,Infection,2007年,35(3),206-208
【文献】A. Goc et al.,In Vitro Evaluation of Antibacterial Activity of Phytochemicals and Micronutrients against Borrelia burgdorferi and Borrelia garinii,Journal of Applied Microbiology,2015年,Vol.119, No.6,pp.1561-1572
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 37/00
C12M 1/34
C07K 14/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料における抗体の存在を検出するための固体担体であって、前記固体担体が、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含み、ここで前記微生物抗原が、ボレリア ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア ガリニ(Borrelia garinii)の多形性球状体の溶解物から調製される抗原を含み、
前記溶解物が、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニの細胞ペレットの単離により球状体を単離し、前記球状体を超音波処理することにより球状体溶解物を得て、前記球状体溶解物を加熱処理して加熱処理球状体溶解物を得た後、上記加熱処理球状体溶解物の超音波処理により調製された、前記固体担体。
【請求項2】
前記固体担体がマイクロウェルプレート又は抗原マイクロアレイである、請求項1に記載の固体担体。
【請求項3】
前記固体担体が、天然スピロヘータ型のボレリア属の種からなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原を更に含む、請求項1又は2に記載の固体担体。
【請求項4】
天然スピロヘータ型の前記ボレリア属の種が、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニからなる群から選択される、請求項3に記載の固体担体。
【請求項5】
前記固体担体が、天然スピロヘータ型のボレリア ブルグドルフェリから調製される固定化抗原を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体担体。
【請求項6】
前記固体担体が、天然スピロヘータ型のボレリア アフゼリから調製される固定化抗原を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体担体。
【請求項7】
前記固体担体が、天然スピロヘータ型のボレリア ガリニから調製される固定化抗原を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体担体。
【請求項8】
マイコプラズマ ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ肺炎、バルトネラ ヘンセレ(Bartonella henselae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、ネズミバベシア(Babesia microti)、クラミジア トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミジア肺炎(Chlamydia pneumonia)、エーリキア シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、コクサッキーウイルスA16、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体、ダニ媒介脳炎ウイルス及び痘瘡リケッチア(Rickettsia akari)からなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の固体担体。
【請求項9】
天然スピロヘータ型のボレリア属の種からなる群から調製される前記抗原が、前記天然スピロヘータ型の溶解物、タンパク質調製物又はペプチド調製物である、請求項3に記載の固体担体。
【請求項10】
生体試料におけるダニ媒介微生物を検出する方法であって、前記方法が以下のステップ:
(a)固体担体に固定された微生物抗原と前記微生物抗原に結合した生体試料から生じる抗体とを含む複合体を形成するために、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含む前記固体担体と前記生体試料を接触させるステップであって、前記微生物抗原が、ボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原を含み、前記固体担体が請求項1~のいずれか一項に記載の固体担体であるステップ、及び
(b)ステップ(a)で得られた複合体の存在を検出するステップであって、ボレリア属の多形性球状体から調製される抗原を含む複合体の存在が、前記生体試料におけるダニ媒介微生物の存在の徴候であるステップ
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記微生物抗原、前記微生物抗原と結合した前記抗体、及び抗抗体試薬の複合体を形成するために、前記固体担体を前記抗抗体試薬と接触させることによって、ステップ(a)で得られた複合体の存在が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗抗体試薬が抗IgG抗体、抗IgM抗体又は抗IgA抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗抗体試薬が抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgM抗体又は抗ヒトIgA抗体である、請求項1又は1に記載の方法。
【請求項14】
前記生体試料が血液若しくは血清試料、唾液試料、脳脊髄液試料、滑液試料又は涙試料である、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の固体担体の、生体試料におけるダニ媒介微生物検出用診断アッセイの製造のための使用。
【請求項16】
前記診断アッセイが患者におけるライム病の検出用である、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記診断アッセイが患者における慢性又は持続性ライム病の検出用である、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライム病及び他のダニ媒介疾患の検出に関する。本発明は、生体試料における抗体の検出にも関する。特に、本発明は、ダニ媒介疾患(TBD)微生物の多重及び多機能検出プラットホームを提供する。
【背景技術】
【0002】
ダニ媒介微生物(TBM)は、ダニ咬傷によって宿主に広がる肉眼で見える病原体として定義される。マダニは、感染症伝播の例外的な媒介物であり、ほぼすべての大陸に生息し、全世界の種の数は850を超える。欧州と北米の両方で最も一般的なダニ媒介疾患(TBD)は、スピロヘータボレリア種に起因するライム病である(非特許文献1、2)。世界的に、ライム病は、27のEUの国々及び中央アジアを含めて、80か国で風土病である(非特許文献3、4)。ボレリアに加えて、バベシア、リケッチア、エーリキア、バルトネラ、ダニ媒介脳炎ウイルスなどの同時感染する多数の他の細菌及び更にはウイルスが存在する(非特許文献5、6)。米国及び欧州のCenter of Disease Controlは、それぞれ年間300,000及び85,000件のTBD症例を報告した。しかし、年間のTBD症例の総数は、世界保健機構によって強調されているように極めて過小評価されている(非特許文献7)。
【0003】
発症患者の臨床診断は困難であり得る。というのは、TBM感染症は、初期に非特異的熱性疾患として現れ、特定の器官系の関与の有無にかかわらず、インフルエンザ様症状によく似ているからである(非特許文献2、5、8)。治療計画を更に複雑にすることに、マイコプラズマ、クラミジア、エプスタインバーウイルス又は別のウイルスによる二次感染がこれらの患者では一般的である(非特許文献6)。過小評価、誤診、同時感染及び二次感染の結果として、不適当な治療は、疲労、筋肉/関節痛、心血管/認知障害などの重篤な臨床症状を発生させ得る(非特許文献9)。患者は、不適当な診断の結果として重篤な臨床症状を発し、治療は、当該患者らの生活の質の低下を招き、その結果、医療の負担が増える(非特許文献9、10)。臨床症状は多様で非特異的であるので、信頼できる診断法は、患者の適時かつ正確な治療に最も重要である(非特許文献4、6、11、12)。
【0004】
ダニ媒介感染症診断における難題は、患者の生検材料中に存在する生存可能な病原体の数が少ないために、培養及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの直接検出法を行うことが困難であることである。このため、否定的な結果となり、活動性感染症又は患者が罹患し得る種々の段階の疾患が排除されない(非特許文献2、5、13)。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの間接的方法は、感染症又は疾患の初期段階では影響力の弱い、又は影響力のない可能性がある、限定的な抗体試験である。異なる細菌種間の交差反応性問題のため、著しい数の偽陽性結果も、これらの抗体に基づく検査では起こる。しかし、陽性特異的抗体応答は、感染症の治療が成功した後に数か月又は数年持続することがある。これらの現法は、第一期のダニ媒介疾患の最高80%を検出することができず、急性感染症と慢性感染症を識別しない(非特許文献4、11)。難題に更に加えて、複数のTBMではなく1つのTBMを通常扱う、主にヒト以外の動物に対するELISAに基づく診断法がある(非特許文献3)。
【0005】
進行中の診断ツールは、現在の研究の知見を備えていない。近年、TBD患者におけるボレリア球状体(非特許文献14)、ボレリア種分化の重要性(非特許文献15、16)、複数菌感染症(非特許文献12)、及びIgM免疫機能不全(非特許文献17)に関する科学的進展は、TBDについての本発明者らの臨床的理解を喚起した。ボレリア球状体は、ボレリアスピロヘータの多形構造の一つである(非特許文献14)。長年、ボレリアの多形体は、細胞壁欠損(CWD)、L体、スフェロプラスト、プロトプラスト、栄養繁殖体(propagules)又はシストと呼ばれている(非特許文献5、8、18~20)。つい最近、Merilaeinenらからの電子顕微鏡写真(2015)によって、それが球状体(RB)であると結論づけることによって、ボレリアの多形形態に関する矛盾が解決された。Merilaeinenら(2015)は、ボレリアRBをヒト血清中で誘発し、代謝的に不活性であり、独特の生化学的サインを有する、柔軟であるが完全な細胞壁を有する、球状RBを証明した。ボレリアの多形形態に関する臨床所見は繰り返し報告されたが、TBDにおけるその病原的役割が議論され、論評されてきた。進行中の診断ツールは、TBD患者をボレリア球状体については試験しない(非特許文献8、21~25)。
【0006】
現在の診断ツールは、それらが異なる臨床所見を個々に示すので、種々のボレリアスピロヘータを個々に又はまとめて試験することができる(非特許文献16)。最近、多重TBD診断ツールは、種々の組換えボレリアタンパク質を試験することができるが、TBDは、複数菌感染症として認識され、進行中の診断ツールは、個体を続発性日和見感染症、同時感染、及び感染症に付随する自己免疫状態について診断する用意がされていない(非特許文献5、13、22~25)。
【0007】
進行中のTBD検出ツールの落とし穴に対処するために、本発明は、ボレリア属、例えば、ボレリア ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア アフゼリ(Borrelia afzelii)及びボレリア ガリニ(Borrelia garinii)の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原を含む新規固体担体を提供する。本結果は、個体の免疫系がボレリア球状体のみに特異的に応答し、この免疫応答がライム病の持続期に関連し得ることを初めて示すものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Steere AC,Coburn J,Glickstein L.The emergence of Lyme disease.J Clin Invest.2004 Apr 4;113(8):1093-101
【文献】Steere AC.Lyme disease.N Engl J Med.2001 Jul 4;345(2):115-25
【文献】Chomel B.Lyme disease.Rev-Off Int Epizoot.2015 Aug 6;34(2):569-76
【文献】Mead PS.Epidemiology of Lyme disease.Infect Dis Clin North Am.2015 Jun 1;29(2):187-210
【文献】Stricker RB,Johnson L.Lyme disease:the next decade.Infect Drug Resist.2011 Jan 6;4:1-9
【文献】Berghoff W.Chronic Lyme Disease and Co-infections:Differential Diagnosis.Open Neurol J.2012 Jan;6:158-78
【文献】Lindgren E,Jaenson TGT.Lyme borreliosis in Europe:influences of climate and climate change,epidemiology,ecology and adaptation measures.WHO Regional Office for Europe.WHO Regional Office for Europe;2006;EUR/04(/5046250):34
【文献】Donta S.Issues in the Diagnosis and Treatment of Lyme Disease.Open Neurology J.bentham;2012;6(1):140-5
【文献】Johnson L,Wilcox S,Mankoff J,Stricker RB.Severity of chronic Lyme disease compared to other chronic conditions:a quality of life survey.PeerJ.2014 Jan 3;2:e322
【文献】Adrion ER,Aucott J,Lemke KW,Weiner JP.Health care costs,utilization and patterns of care following Lyme disease.PLoS ONE.2015 Jan 4;10(2):e0116767
【文献】Wilske B.Epidemiology and diagnosis of Lyme borreliosis.Ann Med.2005 Jan 6;37(8):568-79
【文献】Brogden KA,Guthmiller JM,Taylor CE.Human polymicrobial infections.Lancet.2005 Jan 6;365(9455):253-5
【文献】Aguero-Rosenfeld M,Wang G,Schwartz I,Wormser G.Diagnosis of Lyme Borreliosis.Clin Microbiol Rev.highwire;2005;18(3):484-509
【文献】Merilaeinen L,Herranen A,Schwarzbach A,Gilbert L.Morphological and biochemical features of Borrelia burgdorferi pleomorphic forms.Microbiology(Reading,Engl).2015 Mar;161(Pt 3):516-27
【文献】Seinost G,Golde WT,Berger BW,Dunn JJ,Qiu D,Dunkin DS,et al.Infection with multiple strains of Borrelia burgdorferi sensu stricto in patients with Lyme disease.Arch Dermatol.1999 Nov 1;135(11):1329-33
【文献】Dhote R,Basse-Guerineau AL,Bachmeyer C,Christoforov B,Assous MV.[Lyme borreliosis:therapeutic aspects].Presse Med.1998 Dec 6;27(39):2043-7
【文献】Kalish,McHugh,Granquist,Shea,Ruthazer,Steere.Persistence of immunoglobulin M or immunoglobulin G antibody responses to Borrelia burgdorferi 10-20 years after active Lyme disease.Clin Infect Dis Official Publ Infect Dis Soc Am.highwire;2001;33(6):780-5
【文献】Mursic VP,Wanner G,Reinhardt S,Wilske B,Busch U,Marget W.Formation and cultivation of Borrelia burgdorferi spheroplast-L-form variants.Infection.1996 Jan 1;24(3):218-26
【文献】Domingue,Woody.Bacterial persistence and expression of disease.Clin Microbiol Rev.1997;10(2):320-44
【文献】Murgia R,Piazzetta C,Cinco M.Cystic forms of Borrelia burgdorferi sensu lato:induction,development,and the role of RpoS.Wien Klin Wochenschr.2002 Jul 3;114(13-14):574-9
【文献】Schenk J,Doebis C,Kuesters U,von Baehr V.Evaluation of a New Multiparametric Microspot Array for Serodiagnosis of Lyme Borreliosis.Clin Lab.2015 Jan 4;61(11):1715-25
【文献】Lahey LJ,Panas MW,Mao R,Delanoy M,Flanagan JJ,Binder SR,et al.Development of a Multiantigen Panel for Improved Detection of Borrelia burgdorferi Infection in Early Lyme Disease.J Clin Microbiol.2015 Dec 2;53(12):3834-41
【文献】Embers ME,Hasenkampf NR,Barnes MB,Didier ES,Philipp MT,Tardo AC.A Five-Antigen Fluorescent Bead-based Assay for Diagnosis of Lyme Disease.Clin Vaccine Immunol.2016 Feb 3
【文献】Porwancher RB,Hagerty CG,Fan J,Landsberg L,Johnson BJ,Kopnitsky M,et al.Multiplex immunoassay for Lyme disease using VlsE1-IgG and pepC10-IgM antibodies:improving test performance through bioinformatics.Clin Vaccine Immunol.2011 May;18(5):851-9
【文献】Dessau RB,Moller JK,Kolmos B,Henningsson AJ.Multiplex assay(Mikrogen recomBead)for detection of serum IgG and IgM antibodies to 13 recombinant antigens of Borrelia burgdorferi sensu lato in patients with neuroborreliosis:the more the better?J Med Microbiol.2015 Mar;64(Pt 3):224-31
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の一目的は、患者が経験している急性、既往、特に慢性又は持続期のTBDを概説する新規な検出プラットホームを提供することである。さらに、本明細書は、TBDに付随する複数菌及び免疫機能不全態様を扱うこともできる。
【0010】
すなわち、一態様においては、本明細書は、生体試料における抗体の存在を検出するための固体担体であって、前記固体担体が、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含み、ここで前記微生物抗原が、ボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原を含む、前記固体担体を提供する。
【0011】
別の態様においては、本明細書は、生体試料におけるダニ媒介微生物を検出する方法であって、当該方法が以下のステップ:
(a)固体担体に固定された微生物抗原と前記微生物抗原に結合した生体試料から生じる抗体とを含む複合体を形成するために、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含む前記固体担体と前記生体試料を接触させるステップであって、ここで前記微生物抗原が、ボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原を含むステップ、及び
(c)ステップ(a)で得られた複合体の存在を検出するステップであって、ボレリア属の少なくとも1種の多形性球状体から調製される抗原を含む複合体の存在が、前記生体試料におけるダニ媒介微生物の存在の徴候であるステップ
を含む、前記方法を提供する。
【0012】
別の態様においては、本明細書は、ライム病の診断に使用するための上で定義した固体担体を提供する。
【0013】
別の態様においては、本明細書は、生体試料におけるダニ媒介微生物検出用診断アッセイの製造のための上で定義した固体担体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)すべてのボレリア抗原、(B)ボレリアスピロヘータのみ、及び(C)ボレリア球状体のみに対する全IgM免疫応答を示す図である。1A及び1Bにおいて、略語Bb、Ba及びBgは、それぞれ厳密な意味におけるボレリア ブルグドルフェリB31、ボレリア アフゼリP12及びボレリア ガリニFuji P1である。
図2】(A)すべてのボレリア抗原、(B)ボレリアスピロヘータのみ、及び(C)ボレリア球状体のみに対する全IgG免疫応答を示す図である。2A及び2Bにおいて、略語Bb、Ba及びBgは、それぞれ厳密な意味におけるボレリア ブルグドルフェリB31、ボレリア アフゼリP12及びボレリア ガリニFuji P1である。
図3】1種又は複数の微生物抗原に対する(A)IgM及び(B)IgG免疫応答の評価を示す図である。ある量の443種のヒト血清を使用して、個体が1種の微生物抗原のみ又は複数の微生物抗原に応答するかどうか評価した。さらに、20種の抗原に対して免疫応答を示さない個体を評価した。
図4】個々の微生物抗原に対するIgG免疫応答を示す図である。ある量の443種のヒト血清を使用して、この研究に利用される各微生物抗原に対する免疫応答の総数を評価した。さらに、20種の抗原に対して免疫応答を示さない個体を評価した。
図5】個々の微生物抗原に対するIgM免疫応答を示す図である。ある量の443種のヒト血清を使用して、この研究に利用される各微生物抗原に対する免疫応答の総数を評価した。さらに、20種の抗原に対して免疫応答を示さない個体を評価した。
図6】(A)ボレリアを伴う、及び伴わない、別の微生物に対する個体による全IgM免疫応答割合、(B)ボレリアを伴う、及び伴わない、複数の別の微生物の数に対する個体によるIgM免疫応答、並びに(C)ボレリアを伴う、及び伴わない、特定の別の微生物に対する個体によるIgM免疫応答を示す図である。ある量の443種のヒト血清を使用して、ボレリアスピロヘータのみ、ボレリア球状体のみ、又はボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した個体間の複数の別の微生物及びそれらの特定のタイプに対するIgM免疫応答の頻度を比較した。「別の微生物」という用語は、バルトネラ ヘンセレ(Bartonella henselae)(B.henselae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)(B.abortus)、ネズミバベシア(Babesia microti)(B.microti)、エーリキア シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)(E.chaffeensis)、痘瘡リケッチア(Rickettsia akari)(R.akari)、ダニ媒介脳炎ウイルス(Tick borne encephaltis virus)(TBEV)、クラミジア トラコマチス(Chlamydia trachomatis)(C.trachomatis)、クラミジア肺炎(Chlamydia pneumonia)(C.pneumonia)、マイコプラズマ ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)(M.fermentans)、マイコプラズマ肺炎(M.pneumonia)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(Epstein-barr virus)(EBV)、コクサッキーウイルス(Coxsachie virus)A16(CV A16)及びヒトパルボウイルスB19(HB19V)などの同時感染、二次及び自己免疫抗原を含む。
図7】(A)ボレリアを伴う、及び伴わない、別の微生物に対する個体による全IgG免疫応答割合、(B)ボレリアを伴う、及び伴わない、複数の別の微生物の数に対する個体によるIgG免疫応答、並びに(C)ボレリアを伴う、及び伴わない、特定の別の微生物に対する個体によるIgG免疫応答を示す図である。ある量の443種のヒト血清を使用して、ボレリアスピロヘータのみ、ボレリア球状体のみ、又はボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した個体間の複数の別の微生物及びそれらの特定のタイプに対するIgG免疫応答の頻度を比較した。「別の微生物」という用語は、バルトネラ ヘンセレ(B.henselae)、ウシ流産菌(B.abortus)、ネズミバベシア(B.microti)、エーリキア シャフェンシス(E.chaffeensis)、痘瘡リケッチア(R.akari)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、クラミジア トラコマチス(C.trachomatis)、クラミジア肺炎(C.pneumonia)、マイコプラズマ ファーメンタンス(M.fermentans)、マイコプラズマ肺炎(M.pneumonia)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、コクサッキーウイルスA16(CV A16)及びヒトパルボウイルスB19(HB19V)などの同時感染、二次及び自己免疫抗原を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これまで、既存のTBD診断ツールは、1つの疾患に対する1つの免疫応答(IgG又はIgM)の選別に依拠し、その知見について二次的確認試験を必要とすることが多い。本明細書は、ボレリア属の種の多形性球状体に対する免疫応答を検出することによって、ライム病の慢性、潜伏又は持続期を検出する手段及び方法を提供する。
【0016】
少なくとも18種のボレリア属は、ライム病又はボレリア症を引き起こすことが知られており、マダニによって伝染される48。主要なライム病病原体は、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニである。他は、例えば、ボレリア ミヤモトイ(Borrelia miyamotoi)、ボレリア タヌキ(Borrelia tanukii)、ボレリア ツルディ(Borrelia turdi)、ボレリア バレイシアナ(Borrelia valaisiana)、ボレリア カロライネンシス(Borrelia carolinensis)、ボレリア アメリカーナ(Borrelia americana)、ボレリア ルシタニエ(Borrelia lusitaniae)、ボレリア ジャポニカ(Borrelia japonica)及びボレリア シニカ(Borrelia sinica)である。
【0017】
多重及び多機能プラットホームとして、本態様は、複数の微生物及び抗体クラスに対して同時に個体を診断するのに使用することができる。TBD個体における一次、持続性、二次、同時感染及び自己免疫状態を診断するのに役立つ微生物抗原を、下表1に列挙する。
【0018】
本発明は、生体試料における抗体の存在を検出するための固体担体であって、前記固体担体が、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含み、ここで前記微生物抗原が、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ、ボレリア ガリニなどのボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原を含む、前記固体担体を対象とする。
【0019】
「多形性」という用語は、本明細書では、微生物学において、環境条件に応じてその形状又はサイズを変える一部の細菌の能力として定義される多形性を指す。本明細書で定義される多形性球状体は、Merilaeinenら(2015)に開示されているように、又は下記実験の項に開示するように誘導することができる。理論に拘泥するものではないが、その形状を多形性球状体(すなわち、平均直径2.8±0.46μmの球状細胞)に変える樽状スピロヘータ(すなわち、平均長さ20μmの長い螺旋状細胞)の背後にある基礎は、細菌がその環境から生理学的圧力下にあるということである。したがって、細菌の培地条件の変化に加えて、浸透圧などの応力条件もまた、球状体の誘導に役立つ47
【0020】
以前、B.ブルグドルフェリの球状体(RB)は、様々な様式で曖昧に呼ばれていた。これらの用語としては、CWD及びL体、スフェロプラスト、プロトプラスト、栄養繁殖体及び更にはシストが挙げられる。それにもかかわらず、これらの表示のすべてが同じ球状構造を記述している14
【0021】
一実施形態においては、ボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原は、ボレリア属の種の多形性球状体に特異的である。
【0022】
一実施形態においては、固体担体上の固定化抗原は、ボレリア属、例えば、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ又はボレリア ガリニの培養多形性球状体の溶解物又は溶解物の一部である。前記固定化抗原は、前記多形性球状体のタンパク質又はペプチド調製物とすることもできる。例えばpHシフト、ヒト血清、塩濃度変化の使用によって、調製された微生物細胞からの抗原を含む別の公知の調製物を、本発明に使用することもできる。
【0023】
急性及び慢性又は持続期のライム病を同時に検出するために、前記固体担体は、ボレリア属、例えば、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニからなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原を、天然スピロヘータ型又はその溶解物において更に含むことができる。
【0024】
一実施形態においては、天然スピロヘータ型のボレリア属の種からなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原は、天然スピロヘータ型のボレリア属の種に特異的である。
【0025】
一実施形態においては、アッセイは、1つのあるボレリア種の検出を対象とし、例えば、ここで1)前記固体担体は、ボレリア ブルグドルフェリの多形性球状体から調製される固定化抗原及び天然スピロヘータ型のボレリア ブルグドルフェリから調製される固定化抗原を含み、2)前記固体担体は、ボレリア アフゼリの多形性球状体から調製される固定化抗原及び天然スピロヘータ型のボレリア アフゼリから調製される固定化抗原を含み、又は3)前記固体担体は、ボレリア ガリニの多形性球状体から調製される固定化抗原及び天然スピロヘータ型のボレリア ガリニから調製される固定化抗原を含む。
【0026】
一実施形態においては、ボレリア ブルグドルフェリの多形性球状体から調製される固定化抗原は、ボレリア ブルグドルフェリの多形性球状体に特異的であり、天然スピロヘータ型のボレリア ブルグドルフェリから調製される固定化抗原は、天然スピロヘータ型のボレリア ブルグドルフェリに特異的である。
【0027】
一実施形態においては、ボレリア アフゼリの多形性球状体から調製される固定化抗原は、ボレリア アフゼリの多形性球状体に特異的であり、天然スピロヘータ型のボレリア アフゼリから調製される固定化抗原は、天然スピロヘータ型のボレリア アフゼリに特異的である。
【0028】
一実施形態においては、ボレリア ガリニの多形性球状体から調製される固定化抗原は、ボレリア ガリニの多形性球状体に特異的であり、天然スピロヘータ型のボレリア ガリニから調製される固定化抗原は、天然スピロヘータ型のボレリア ガリニに特異的である。
【0029】
一実施形態においては、固体担体は、多重アッセイ用に製造され、ここで前記固体担体は、ボレリア属の種、好ましくはボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及び/又はボレリア ガリニの多形性球状体から調製される固定化抗原を含む。更なる一実施形態においては、多重アッセイは、天然スピロヘータ型のボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及び/又はボレリア ガリニなどのボレリア属の種から調製される固定化抗原も含む。
【0030】
一実施形態においては、ボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニの多形性球状体から調製される固定化抗原は、それぞれボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ及びボレリア ガリニの多形性球状体に特異的である。
【0031】
多重アッセイは、マイコプラズマ ファーメンタンス、マイコプラズマ肺炎、バルトネラ ヘンセレ、ウシ流産菌、ネズミバベシア、クラミジア トラコマチス、クラミジア肺炎、エーリキア シャフェンシス、コクサッキーウイルスA16、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)及び痘瘡リケッチアからなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原を含むこともできる。
【0032】
一実施形態においては、マイコプラズマ ファーメンタンス、マイコプラズマ肺炎、バルトネラ ヘンセレ、ウシ流産菌、ネズミバベシア、クラミジア トラコマチス、クラミジア肺炎、エーリキア シャフェンシス、コクサッキーウイルスA16、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体、ダニ媒介脳炎ウイルス及び痘瘡リケッチアからなる群から調製される少なくとも1種の固定化抗原は、それぞれマイコプラズマ ファーメンタンス、マイコプラズマ肺炎、バルトネラ ヘンセレ、ウシ流産菌、ネズミバベシア、クラミジア トラコマチス、クラミジア肺炎、エーリキア シャフェンシス、コクサッキーウイルスA16、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体、ダニ媒介脳炎ウイルス及び痘瘡リケッチアに特異的である。
【0033】
前記固体担体は、ガラス又はポリスチレン若しくはポリプロピレンなどのプラスチックでできていてもよい。本明細書の固体担体の例は、抗原マイクロアレイ又はマイクロウェルプレートである。抗原マイクロアレイは、タンパク質チップとしても知られるタンパク質マイクロアレイの形である。マイクロアレイは、その上に数千の種々のタンパク質(この場合、抗原)が分散した空間的位置に固定化されて、高密度タンパク質ドットマトリックスを形成する、固体担体(一般に、ガラス)である。マイクロウェルプレートは、複数の「ウェル」を有する平板であり、ここで各ウェルは、特定の一試料に使用される。マイクロウェルプレートは、臨床診断試験室における標準ツールである。極めて一般的な使用は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)におけるものである。
【0034】
一実施形態においては、本明細書は、慢性/持続性ライム病などのライム病の診断に使用するための本明細書に定義した固体担体を対象とする。
【0035】
別の一実施形態においては、本明細書は、生体試料におけるダニ媒介微生物検出用診断アッセイの製造のための本明細書に定義した固体担体の使用を対象とする。一実施形態においては、前記診断アッセイは、患者におけるライム病、例えば患者における慢性/持続性ライム病の検出用である。
【0036】
「患者」、「個体」又は「ドナー」は、ヒト対象などの哺乳動物対象とすることができる。
【0037】
本明細書は、生体試料におけるダニ媒介微生物を検出する方法であって、当該方法が以下のステップ:
(a)固体担体に固定された微生物抗原と前記微生物抗原に結合した生体試料から生じる抗体とを含む複合体を形成するために、前記固体担体上に固定された微生物抗原を含む前記固体担体と前記生体試料を接触させるステップであって、ここで前記微生物抗原が、ボレリア属の種の多形性球状体からなる群から調製される少なくとも1種の抗原を含むステップ、及び
(b)ステップ(a)で得られた複合体の存在を検出するステップであって、ここでボレリア属の多形性球状体から調製される抗原を含む複合体の存在が、前記生体試料におけるダニ媒介微生物の存在の徴候であるステップ
を含む、前記方法も対象とする。
【0038】
一実施形態においては、前記微生物抗原、前記微生物抗原と結合した前記抗体、及び抗抗体試薬の複合体を形成するために、前記固体担体を前記抗抗体試薬と接触させることによって、ステップ(a)で得られた複合体の存在を検出する。
【0039】
本明細書は、単一のキットにおける複数の微生物に対する個体のIgG及びIgM又はIgA応答を特異的に、かつ感度良く選別する機会も提供する。したがって、前記抗抗体試薬を、抗IgG抗体、抗IgM抗体又は抗IgA抗体とすることができる。例えば、前記抗抗体試薬を、抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgM抗体又は抗ヒトIgA抗体とすることができる。
【0040】
一実施形態においては、前記生体試料は、血液、血清、尿、唾液若しくは涙試料、脳脊髄液試料、又は滑液試料、例えば血清試料である。
【0041】
一実施形態においては、本方法は、多形性球状体を生成する条件でボレリア ブルグドルフェリ、ボレリア アフゼリ又はボレリア ガリニなどのボレリア属の種を培養し、培養した細胞の溶解を行い、固体担体に溶解物又は溶解物の一部を塗布又は印刷する先行ステップを含む。多形性球状体を生成する前記条件は、Merilaeinenら(2015)に開示され、又は下記実験の項に開示されており、例えばボレリアスピロヘータ細胞を蒸留水中で、若しくは変化する塩濃度において、若しくはヒト血清の存在下でインキュベートし、又は培養を酸性pHにシフトさせる。培養ステップの後、抗原を微生物細胞から産生する別の公知技術も、細胞溶解以外にこの態様に使用することができる。例えば、抗原ペプチド及びタンパク質を、塗布又は印刷ステップ用に前記多形性球状体から調製することができる。
【0042】
本発明を全般的に記述したが、同じことは、以下の実験の項を参照することによってより容易に理解されるであろう。当該実験の項は、例として提供するものであり、限定することを意図したものではない。本明細書に記載のものと類似又は等価である方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料については後述する。
【0043】
実験の項
材料及び方法
血清試料収集の倫理的承認
合計532個のヒト血清試料を、Borreliose Centrum Augsburg(BCA)、ドイツ;King Christian 10th Hospital for Rheumatic Diseases、デンマーク;並びにFederal Institute for Drugs and Medical Devices、ドイツによって認可された欧州の複数の診療所/専門研究室(倫理的承認番号:95.10-5661-7066);デンマークデータ保護局及びサザンデンマークの領域倫理委員会(倫理的承認番号:S-20110029);並びにWestern Institutional Review board(倫理的承認番号:USMA201441)からそれぞれ収集した。532個のヒト血清試料のうち、51個の負の対照をIgGに割り当て、別の51個の負の対照をIgMに割り当てた。負の対照を利用して、両方の抗体クラスに対して定性的なカットオフ値を確立した。
【0044】
ELISA用抗原の調製
全532個のヒト血清試料を、20種の微生物抗原に対してIgM及びIgG抗体応答について試験した。表1には、全20種の抗原が入っている。ボレリアスピロヘータ、ボレリア球状体及びヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体を、所内で培養し、単離した。ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体を、他で報告された手順に従って培養し、単離した26,27。Dr.Marco Quevendo Diaz(Slovak Academy of Science)は、痘瘡リケッチア精製及び不活性化溶解物を提供した。残りの18種の微生物を、凍結乾燥微生物ペプチドとしてGeneCustから取り寄せた。1mg/mlの原液を、痘瘡リケッチア用に調製し、すべての微生物ペプチドを、ELISAに直接利用するように調製した。
【0045】
スピロヘータ及び多形型におけるボレリア種の培養及び単離
ボレリア培養物を、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。Barbour-Stoenner-Kelly(BSK)培地を利用して、全3種のボレリア培養物を増殖させた。BSK培地を、既報の指示に従って調製した39。天然スピロヘータ型のボレリア種を培養し、単離するために、各ボレリア株を、BSK培地中で37℃で5~7日間独立に増殖させた。インキュベーションの後、培養管を5000gで10分間遠心することによってボレリア細胞を単離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを更に使用するまで-80℃で貯蔵した14
【0046】
種々のボレリア球状体株を培養するために、それぞれのボレリアスピロヘータ細胞ペレットを、蒸留水(ddHO)2mlに再懸濁させた。ボレリアスピロヘータ細胞を、水中で、又は変化する塩濃度において、又は酸性pHにシフトさせて、又はヒト血清の存在下で、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、ボレリア細胞を、5000gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、ボレリア球状体ペレットを更に使用するまで-80℃で貯蔵した14
【0047】
・ヒトパルボウイルスB19アポトーシス小体の培養及び単離:
Kivovichら(2010)及びThammasriら(2013)は、ヒトパルボウイルスB19(B19V)誘導アポトーシス小体の製造、及び本明細書でB19Vアポトーシス小体と呼ぶこれらのアポトーシス小体の単離を報告した。手短に述べると、B19V非構造タンパク質(NS1)を、改変pFastBac1ベクター中で高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)と一緒にクローン化した。改変pFastBac1ベクターを利用して、オートグラファ カリフォルニカ(Autographa californica)ウイルスベクター中で組換えバキュロウイルスを生成した。得られた構造体を、AcCMV-EGFP-NS1と称した。Bac-to-Bac(登録商標)バキュロウイルス発現系を使用することによって、組換えバキュロウイルスストックを調製した。昆虫細胞ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(Sf9細胞ATCCCRL-1711、マナサス、VA)の単層培養物を、ウイルスストック増幅に利用した。ウイルスストックは、組換えバクミドDNAを含んでいた。感染の後(PI)、3世代のウイルスストックを、各々48又は72時間PIで収集した。細胞を遠心分離し、濾過した後、HepG2細胞の終夜の増殖、及び組換えAcEGFP又はAcEGFP-NS1の形質導入によって、それらの形質導入効率を求めた。BD FACSCALIBURフローサイトメータ(Becton-Dickinson、NJ、USA)を利用して、ウイルスがアポトーシス小体(ApoBods)誘導に更に使用するのに70%の形質導入効率を有するかどうか検証した。さらに、HepG2細胞に、第三世代AcEGFP-NS1ウイルスを、形質導入効率70%で形質導入した。最後に、形質導入の72時間後、培養における上清を遠心分離し、ペレット化し、更に使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0048】
ELISAに利用するための単離微生物ペレットの処理
ボレリアスピロヘータ、ボレリア球状体及びB19Vアポトーシス小体ペレットを、氷上で解凍し、リン酸緩衝食塩水溶液(PBS、pH7.4)100μlに再懸濁させた。溶解物を解離し、内容物をPBSに均一に溶解させるために、縦に並んだ全溶液を、15分間超音波処理し(Bransoni C220)、99.9℃で15分間加熱し、再度15分間超音波処理した。最後に、すべての抗原の1mg/ml原液濃縮物を、+4℃で貯蔵した。
【0049】
ELISA手順
抗原原液(1mg/ml)を、0.1M炭酸塩緩衝剤(0.1M NaCO+0.1M NaHCO、pH9.5)で1:100希釈した。希釈体積を、微生物用原液間で2つのペプチド配列で等分した。2つの正の対照、ヒトIgG(Sigma)及びヒトIgM(Sigma)を、この研究に利用した。さらに、ヒトIgG(Sigma)及びヒトIgM(Sigma#I8260)を、互いについて負の対照として互換的に利用した。対照原液(1mg/ml)を、0.1M炭酸塩緩衝剤で1:100希釈した。正及び負の対照を利用して、450nmで一貫した光学濃度(OD)値を維持した。
【0050】
100μlの抗原及び対照を、二つ組で平底96ウェルポリスチレンELISAプレート(Nunc)に塗布し、+4℃で終夜インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、PBS-Tween(PBS+0.05%Tween20)300μlで3回洗浄し、次いで2%BSA(Sigma#A7030)のPBS溶液100μlを塗布した。+4℃で終夜インキュベーションした後、2%BSAのPBS溶液を廃棄した。さらに、1%BSA/PBSで1:200希釈された患者血清100μlを添加した。次いで、プレートを2時間室温(RT)でインキュベートした。インキュベーション後、プレートを、PBS-Tween300μlで5回洗浄した。マウス抗ヒトIgG(Abcam)又はウサギ抗ヒトIgM(Antibodies Online)と複合化された100μlの量の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を、プレートにそれぞれ1:10000又は1:1000希釈係数で導入した。1.5時間室温でインキュベーションした後、プレートを、PBS-Tween300μlで5回洗浄し、次いで3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン基質(TMB、1-Step ultra TMB-ELISA基質、Thermo-Piercenet#34028)100μlを補充した。マウス抗ヒトIgG又はIgMと複合化されたHRPを前もって補充したプレートを、室温でそれぞれ5分間又は1時間インキュベートした。2M HSO 100μlを添加することにより、二次抗体とTMB基質との反応を停止した。さらに、Victor(商標)Xマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer 2030 manger)を利用して、OD値を450nmで0.1秒測定した。
【0051】
データ処理
品質保証目的で、各二つ組が互いの30%範囲内に存在するかを判定した。二つ組がそれらの平均の30%以内に存在するかを判定する代わりに40、二つ組が互いの30%範囲内に存在するかを判定した。互いの30%範囲内の二つ組はそれらの平均と無関係であるので、読みの違いは、それらの平均の30%以内の二つ組と比べて高度に限定的である。1セットの51個の負の対照をIgGに利用し、別の1セットの51個の負の対照をIgMに利用して、定性的なカットオフ値を20種の抗原に対して確立した。抗原に対して、全平均OD値の平均を全平均OD値の標準偏差の3倍に加算することによって、カットオフ値を確立した41。20種の抗原に対するカットオフ値を確立し、すべての平均OD値をそのそれぞれの抗原カットオフ値で除して、データセットを規準化した。すべてのOD値を規準化することによって、光学濃度指数(ODI)データセットを、両方の抗体タイプに対して確立した。最後に、それぞれ正又は負を表す1又は0を含む二値データセットにODI値を変換した。
【0052】
変化を、アッセイ内及びアッセイ間変化の計算から評価した42。同じプレート上の1個の高力価試料及び1個の低力価試料からの二つ組測定によって、アッセイ内変化を求めた。アッセイ間変化の場合、異なる日に異なる操作者によって行われた異なるプレートからの6個の高力価試料及び6個の低力価試料の測定によって、変化を求めた。
【0053】
利用した装置
ND1000分光光度計(Finnzymes)を使用して、細胞溶解物のタンパク質濃度を280nmで測定した。Victor(商標)Xマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer 2030 manger)を利用して、OD値を450nmで0.1秒測定した。マイクロプレート洗浄機DNX-9620G(Nanjing Perlove Medical Equipment Co.,Ltd)を使用して、ELISAマイクロプレートを洗浄した。
【0054】
結果
図1及び2は、ボレリアスピロヘータと球状体の組合せ、ボレリアスピロヘータのみ、及びボレリア球状体のみに対する443名の個体による免疫応答を示す。ボレリア球状体のみに対するIgM及びIgG(図1A及び2A)免疫応答の総数は、ボレリアスピロヘータのみに対するIgM及びIgG免疫応答の総数と比較した場合に一貫して多い。また、ボレリアスピロヘータと球状体との様々な組合せに対するIgM及びIgG(図1A及び2A)免疫応答の総数は、ボレリアスピロヘータのみ及びボレリア球状体のみに対するIgM及びIgG免疫応答の総数と比較した場合に多い。さらに、図1B及び2Bにおいては、様々な種のボレリアスピロヘータは、ボレリアスピロヘータの様々な組合せで記録された免疫応答の総数と比較した場合に多い免疫応答数を示した。同様に、図1C及び2Cにおいては、ボレリア球状体の様々な組合せと比較した場合に多い免疫応答数が、様々な種のボレリア球状体で記録された。図1及び2は、様々な種のボレリアスピロヘータに加えて、様々な種のボレリア球状体が、個体におけるボレリア感染を検出する診断ツールの効率を途方もなく改善するのに役立ち得ることを示唆している。
【0055】
図1Aにおいては、IgMを有する95名(21%)、15名(3%)及び65名(15%)の個体が、それぞれボレリアスピロヘータと球状体、ボレリアスピロヘータのみ、及びボレリア球状体のみに応答した。ボレリア球状体のみに対する免疫応答の総数は、ボレリアスピロヘータのみに対する免疫応答の総数と比較した場合に約5倍大きかった。残りの268名(61%)の個体は、いずれのボレリア抗原にも応答しなかった。ボレリア球状体は、天然ボレリアスピロヘータ構造体の休眠又は潜伏した形を示す5,9,14。IgMでそれ自体のスピロヘータ構造体よりもボレリア球状体に応答する患者は、IgM免疫機能不全が示唆される17。同様に、図2Aにおいては、IgGを有する171名(38%)、47名(11%)及び71名(16%)の個体が、それぞれボレリアスピロヘータと球状体、ボレリアスピロヘータのみ、及びボレリア球状体のみに応答した。ボレリア球状体のみに対する免疫応答の総数は、ボレリアスピロヘータのみに対する免疫応答の総数と比較した場合に約2倍大きかった。残りの154名(35%)の個体は、いずれのボレリア抗原にも応答しなかった。ボレリア球状体に対する免疫応答数が多いことは、ボレリアスピロヘータのみを用いた診断キットでは、ボレリア感染の完全であり、信頼できる診断を個体に提供できないことを示唆している。したがって、TBD患者を診断するためのボレリアスピロヘータと並んだボレリア球状体の実施は、この研究からの絶対的な新規性である。
【0056】
ボレリアの異なる株に感染した個体は、異なる治療処置を必要とする16。したがって、個体を、種々のボレリア株について診断しなければならない。ボレリアスピロヘータのみ及びボレリア球状体のみに対する免疫応答(図1A及び2A)を更に分けて(図1B、1C、2B及び2C)、個々のボレリア株に対する免疫応答の総数がボレリア株の様々な組合せに対する免疫応答の総数を超えるかどうか評価した。個々のボレリア株に対する免疫応答の総数は、ボレリア株の様々な組合せに対する免疫応答の総数と比較した場合に一貫して多かった(図1B、1C、2B及び2C)。
【0057】
図1Aにおいては、ボレリアスピロヘータのみに応答した15名(3%)の個体を、図1Bにおいて更に分け、評価した。15名(3%)の個体のうち、1名(7%)、5名(33%)及び5名(33%)の個体が、それぞれボレリア ブルグドルフェリ(Bb)、ボレリア アフゼリ(afzeilii)(Ba)及びボレリア ガリニ(Bg)スピロヘータに応答した。さらに、3名(20%)及び1名(7%)の個体が、それぞれBa+Bg及びBb+Ba+Bgスピロヘータの組合せに応答した。15名の個体のうち、4名(27%)の個体が異なるボレリア株の組合せに応答し、一方11名(73%)の個体が異なるボレリア株に応答した。同様に、図2Aにおいては、ボレリアスピロヘータのみに応答した47名(11%)の個体を、図2Bにおいて更に分け、評価した。47名(11%)の個体のうち、3名(6%)、10名(21%)及び13名(28%)の個体が、それぞれBb、Ba及びBgスピロヘータに応答した。さらに、4名(9%)、7名(15%)及び10名(21%)の個体が、それぞれBb+Bg、Ba+Bg及びBb+Ba+Bgスピロヘータの組合せに応答した。47名(11%)の個体のうち、21名(45%)の個体が異なるボレリア株の組合せに応答し、一方26名(55%)の個体が異なるボレリア株に応答した。IgM(図1B)とIgG(図2B)との両方において、Bb+Baの組合せに対して、免疫応答は記録されなかった。また、図1Bにおいては、Bb+Bgの組合せに対して、免疫応答は記録されなかった。
【0058】
図1Aにおいては、ボレリア球状体のみに応答した65名(15%)の個体を、図1Cにおいて更に分け、評価した。65名(15%)の個体のうち、16名(25%)、12名(18%)及び13名(20%)の個体が、それぞれBb、Ba及びBg球状体に応答した。さらに、9名(14%)、8名(12%)及び7名(11%)の個体が、それぞれBb+Ba、Bb+Bg及びBb+Ba+Bg球状体の組合せに応答した。65名(15%)の個体のうち、24名(37%)の個体が異なるボレリア株の組合せに応答し、一方41名(63%)の個体が異なるボレリア株に応答した。同様に、図2Aにおいては、ボレリア球状体のみに応答した71名(16%)の個体を、図2Cにおいて更に分け、評価した。71名の個体のうち、4名(6%)、5名(7%)及び30名(42%)の個体が、それぞれBb、Ba及びBg球状体に応答した。さらに、2名(3%)、16名(22%)、2名(3%)及び12名(17%)の個体が、それぞれBb+Ba、Bb+Bg、Ba+Bg及びBb+Ba+Bg球状体の組合せに応答した。71名の個体のうち、32名(45%)の個体が異なるボレリア株の組合せに応答し、一方39名(55%)の個体が異なるボレリア株に応答した。IgM(図1C)とIgG(図2C)の両方において、Ba+Bgの組合せに対して、免疫応答は記録されなかった。明らかに、個々のボレリア株に対する免疫応答の総数は、組合せのボレリア株に対する免疫応答の総数を超える(図1B、1C、2B及び2C)。個々のボレリア株に対する免疫応答数がより多いことは、異なるボレリア株間の異なるエピトープの流布を示唆している43。異なるボレリア株を診断ツールから除外すると、その感度が限定され得る44
【0059】
図3は、1種又は複数の微生物抗原に対する443名の個体からのIgM(3A)及びIgG(3B)免疫応答を示し、TBDにおける複数菌条件の関連性を評価する。世界的に、医学界及び診断業は、麻疹、結核、肝炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び他のものなどの多数の疾患において複数菌感染症を認めた12,45。しかし、複数菌感染症に関するTBD診断の状況は、変わっていない46図3Aにおいては、237名(53%)の個体が複数の微生物抗原に応答し、一方53名(12%)の個体が任意の単一の微生物抗原に応答した。同様に、図3Bによって、344名(78%)の個体が複数の微生物抗原に応答し、一方63名(14%)の個体が任意の単一の微生物抗原に応答したことが決定された。図3からのTBDにおける複数菌感染症に関する実験的証拠は、TBD診断の分野における不可避的なパラダイムシフトを支持するものである。残りの153名(35%)及び36名(8%)の個体は、それぞれIgM及びIgGについて試験した場合に微生物抗原に対して免疫を生じなかった。IgMによって複数の微生物に応答する個体(図3A)は、単一の微生物に応答する個体と比較した場合に約5倍多い。同様に、図3Bにおいては、複数の微生物に応答する個体は、単一の微生物に応答する個体と比較した場合に約6倍多い。IgMによる複数の抗原に対する応答(53%)(3A)は、免疫機能不全がTBD個体間の一般的現象であり得ることを示唆している17。さらに、図3A及び3Bは、複数菌感染症がIgMよりもIgGで観察されるべきより一般的な現象であり得ることを示唆している。
【0060】
図4及び5は、それぞれ個々の微生物抗原に対するIgM及びIgG免疫応答を示す。各抗原に対する免疫応答の総数は、IgMと比較した場合にIgGにおいて一貫して高かった。ボレリア球状体に対する免疫応答は、そのそれぞれのスピロヘータ株と比較した場合に高いか、同様であった。ボレリア球状体に対する免疫の数がボレリアスピロヘータとの比較において同じであることは、ボレリア球状体が、ボレリア診断ツールの感度を最大にするのに役立ち得ることを示唆している。130名(29%)及び64名(14%)にのぼる個体が、それぞれIgG及びIgMについて厳密な意味におけるボレリア ブルグドルフェリB31に応答し、162名(37%)及び79名(18%)の個体が、それぞれIgG及びIgMについてボレリア アフゼリP12に応答し、161名(36%)及び94名(21%)の個体が、それぞれIgG及びIgMについてボレリア ガリニFuji P1に応答し、158名(35%)及び120名(27%)の個体が、それぞれIgG及びIgMについて厳密な意味におけるボレリア ブルグドルフェリB31球状体に応答し、164名(37%)及び98名(22%)の個体が、それぞれIgG及びIgMにおいてボレリア アフゼリ(afzelli)p12球状体に応答し、並びに180名(41%)及び83名(19%)の個体が、それぞれIgG及びIgMについてボレリア ガリニFuji P12球状体に応答した。
【0061】
図4及び5においては、ボレリアスピロヘータ/球状体を除いた抗原に対する免疫応答は、個体を二次、同時感染及び自己免疫状態について試験することが必須であることを示唆している。IgG及びIgMに対する免疫応答は、以下の通りである:125名(28%)及び59名(13%)の個体がそれぞれバルトネラ ヘンセレに応答し、126名(28%)及び74名(16%)の個体がそれぞれネズミバベシアに応答し、115名(26%)及び65名(15%)の個体がそれぞれクラミジア トラコマチスに応答し、115名(26%)の個体がそれぞれクラミジア肺炎に応答し、167名(38%)及び122名(28%)の個体がそれぞれマイコプラズマ ファーメンタンスに応答し、137名(31%)及び58名(13%)の個体がそれぞれマイコプラズマ肺炎に応答し、115名(26%)及び76名(17%)の個体がそれぞれコクサッキーウイルスA16に応答し、150名(34%)及び127名(29%)の個体がそれぞれサイトメガロウイルスに応答し、203名(46%)及び68名(15%)の個体がそれぞれエプスタインバーウイルスに応答し、122名(28%)及び64名(14%)の個体がそれぞれウシ流産菌に応答し、134名(30%)及び104名(23%)の個体がそれぞれパルボウイルスB19アポトーシス小体に応答し、142名(32%)及び77名(17%)の個体がそれぞれエーリキア シャフェンシスに応答し、149名(34%)及び71名(16%)の個体がそれぞれダニ媒介脳炎ウイルスに応答し、184名(47%)及び146名(33%)の個体がそれぞれ痘瘡リケッチア(Rickketsia akari)に応答し、並びに36名(8%)及び153名(35%)の個体がそれぞれ20種の抗原のいずれにも応答しなかった。
【0062】
図6及び7は、ボレリアスピロヘータ、ボレリア球状体、又はボレリアスピロヘータと球状体の組合せを伴う別の微生物、及びボレリアを伴わない別の微生物に対する、443名の個体による免疫応答の違いを示す。本質的に、図6及び7は、複数の別の微生物の数に対する、並びに特にボレリア球状体を伴う、及び伴わない各々の別の微生物に対する免疫応答頻度の違いを示す。ボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答する個体は、複数の別の微生物の数だけでなく、特定の別の微生物に対してもより多大に応答する傾向があることが観察された。図6及び7は、ボレリアスピロヘータ、ボレリア球状体、同時感染、二次感染及び自己免疫抗原の診断ツールが、完全であり、信頼できるTBD診断を個体に提供することを示唆している。「別の微生物」という用語は、バルトネラ ヘンセレ(B.henselae)、ウシ流産菌(B.abortus)、ネズミバベシア(B.microti)、エーリキア シャフェンシス(E.chaffeensis)、痘瘡リケッチア(R.akari)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、クラミジア トラコマチス(C.trachomatis)、クラミジア肺炎(C.pneumonia)、マイコプラズマ ファーメンタンス(M.fermentans)、マイコプラズマ肺炎(M.pneumonia)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、コクサッキーウイルスA16(CV A16)、及びヒトパルボウイルスB19(HB19V)など、しかしそれらに限定されない、同時感染、二次及び自己免疫抗原を含む。
図6A及び7Aにおいては、443名の個体のほぼ1/4(26%)が、ボレリアを伴わない別の微生物に応答した。ボレリアを伴わない別の微生物に対する115名(26%)及び118名(26%)の個体からのIgM及びIgG免疫応答は、個体が、ボレリア以外の微生物についても選別されるべきであることを示唆している。さらに、図6A及び7Aは、ボレリアのみ及びボレリアを伴う別の微生物に対する個体による免疫応答を示す。ボレリアを伴う別の微生物に応答する個体の数が、ボレリア抗原のみに応答する個体の数と比較した場合にかなり多いことが観察された。図6Aにおいては、443名の個体から10名(2%)、2名(1%)及び5名(1%)の個体が、それぞれボレリア球状体、ボレリアスピロヘータ、及びボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した。しかし、443名の個体のうち、55名(12%)、13名(3%)及び90名(20%)の個体が、それぞれ別の微生物と一緒のボレリア球状体、ボレリアスピロヘータ、及びボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した。同様に、図7Aにおいては、443名の個体のうち、23名(5%)、2名(1%)及び13名(3%)の個体が、それぞれボレリア球状体、ボレリアスピロヘータ、及びボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した。しかし、443名の個体のうち、48名(11%)、45名(10%)及び158名(36%)の個体が、それぞれ別の微生物と一緒のボレリア球状体、ボレリアスピロヘータ、及びボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答した。
【0063】
図6A及び7Aにおいては、ボレリア球状体に応答する個体は、ボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合に別の微生物により多大に応答する傾向がある。しかし、ボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答する個体は、ボレリア球状体又はボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合に、別の微生物に約3倍高く応答する傾向がある。IgMの場合(図6A)、ボレリア球状体を伴う別の微生物に応答する個体の数は、ボレリアスピロヘータを伴う別の微生物に応答する個体の数と比較した場合に約4倍多い。しかし、IgGの場合(図7A)、ボレリア球状体を伴う別の微生物に応答する個体の数は、ボレリアスピロヘータを伴う別の微生物に応答する個体の数とわずかに類似している。443名の個体のうち、55名(12%)の個体がボレリア球状体を伴う別の微生物に応答し、一方13名(3%)の個体がIgMにおいてボレリアスピロヘータを伴う別の微生物に応答した(図6A)。同様に、48名(11%)の個体がボレリア球状体を伴う別の微生物に応答し、45名(10%)の個体がボレリアスピロヘータを伴う別の微生物に応答した。
【0064】
図6B及び7Bは、ボレリアを伴う、及び伴わない、別の微生物に応答する個体の微生物負荷の違いを示す。最初に、別の微生物に応答する個体(図6A及び7A)は、両方の抗体クラスにおいて8種を超える微生物に応答しなかった(図6B及び7B)。しかし、別の微生物に応答する75%を超える個体は、3種を超える微生物に応答しなかった。IgMで別の微生物に応答する115名(26%)の個体のうち(図6A)、92名(80%)の個体は、3種を超える微生物に応答しなかった。同様に、IgGで別の微生物に応答する118名(26%)の個体のうち(図7A)、89名(75%)の個体は、3種を超える微生物に応答しなかった。興味深いことに、ボレリアに応答する個体は、ボレリアに対するいかなる応答をも伴わない個体と比較した場合に複数の別の微生物に対してより多大に応答する傾向がある(図6B及び7B)。
【0065】
IgMでボレリア球状体に応答する個体は、ボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合に複数の別の微生物に対してより多大に応答する傾向がある(図6B)。逆に、IgGでボレリアスピロヘータに応答する個体は、ボレリア球状体に応答する個体と比較した場合に複数の別の微生物に対してより多大に応答する傾向がある(図7B)。しかし、ボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答する個体は、ボレリア球状体又はボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合に複数の微生物に対してより高く応答する傾向が一貫してある。ボレリアスピロヘータと球状体との組合せを伴う別の微生物に応答する50%を超える個体は、8~14種の複数の別の微生物に応答した。ボレリアスピロヘータと球状体との組合せを伴う別の微生物に応答する個体の濃度は、両方の抗体クラスにおいて14種の複数の微生物で最高である(図6B及び7B)。ボレリアスピロヘータと球状体との組合せに対してIgMで別の微生物に応答する90名(20%)の個体のうち(図6A)、14名(16%)の個体が、14種の別の微生物に応答した(図6B)。同様に、ボレリアスピロヘータと球状体との組合せに対してIgGで別の微生物に応答する158名(36%)の個体のうち(図7A)、23名(15%)の個体が、14種の別の微生物に応答した(図7B)。
【0066】
図6C及び7Cは、ボレリアを伴う、及び伴わない、個々の別の微生物に対する443名の個体からの免疫応答の違いを示す。図6B及び7Bにおいて最大の微生物負荷量を示すボレリア抗原はまた、図6C及び7Cにおける個々の別の微生物に対する免疫応答の最も高い頻度を示した。図6B及び7Bから、ボレリア球状体及びボレリアスピロヘータは、それぞれIgM及びIgGによる個体の最も高い微生物負荷を示した。したがって、IgMでボレリア球状体に応答する個体は、ボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合にすべての別の微生物に対して平均して5倍高く応答した(図6C)。さらに、IgGでボレリアスピロヘータに応答する個体は、ボレリア球状体に応答する個体と比較した場合にすべての別の微生物に対して平均して2倍高く応答した(図7C)。しかし、ボレリアスピロヘータと球状体との組合せは、両方の抗体クラスにおいて微生物負荷の最大の量を示した(図6B及び7B)。したがって、IgMでボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答する個体は、ボレリア球状体に応答する個体と比較した場合にすべての別の微生物に対して約3倍高く応答した(図6C)。また、IgGでボレリアスピロヘータと球状体との組合せに応答する個体は、ボレリアスピロヘータに応答する個体と比較した場合にすべての別の微生物に対して約5倍高く応答した(図7C)。
【0067】
アッセイ内及びアッセイ間変化
本方法のアッセイ内及びアッセイ間変化は、それぞれ4.6%及び15.6%と計算された。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
表1:本方法に利用される20種のダニ媒介微生物抗原のリスト
【0070】
参考文献
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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