(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】殺有害生物化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20220630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
C07D401/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019532074
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 US2017068250
(87)【国際公開番号】W WO2018125816
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-02
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユ
(72)【発明者】
【氏名】ロールスバッハ,ベス
(72)【発明者】
【氏名】リ,シャオヨン
(72)【発明者】
【氏名】ロス,ギャリー
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0060245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0213448(US,A1)
【文献】特表2015-519320(JP,A)
【文献】特表2015-518488(JP,A)
【文献】特表2014-534217(JP,A)
【文献】特表2014-504267(JP,A)
【文献】特表2016-539092(JP,A)
【文献】特表2016-535004(JP,A)
【文献】特表2016-536296(JP,A)
【文献】特開2014-034540(JP,A)
【文献】特表2020-503336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1D
【化1】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を調製する方法であって、
(a)触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、式1A
【化2】
(式中、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を3-ハロピリジンと接触させて、式1B
【化3】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップと、
(b)塩基および溶媒の存在下で、式1B
【化4】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物をアシル化剤と接触させて、式1B’
【化5】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップと、
(c)溶媒の存在下で、式1B’
【化6】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を還元剤と接触させて、式1Dの化合物を得るステップとを含
み、
ステップ(a)の前記リガンドが、N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(DMEDA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(BHEEA)および8-ヒドロキシキノリンからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
ステップ(a)の前記触媒が、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl
2)、臭化銅(I)(CuBr)またはヨウ化銅(I)(CuI)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、二リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)、リン酸ナトリウム(Na
3PO
4)、二リン酸カリウム(K
2HPO
4)、リン酸カリウム(K
3PO
4)、ナトリウムメトキシド(NaOCH
3)およびナトリウムエトキシド(NaOCH
2CH
3)からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)の前記塩基が、K
2CO
3である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)の前記溶媒が、アセトニトリル(CH
3CN)、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)の前記アシル化剤が、塩化アセチルまたは無水酢酸である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、二リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)およびリン酸カリウム(K
3PO
4)からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の前記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の前記溶媒が、二塩化メチレン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、アセトニトリル(CH
3CN)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が酢酸エチル(EtOAc)またはテトラヒドロフラン(THF)である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)の前記還元剤が、Red-Al、ボラン、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)/三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3・Et
2O)からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)の前記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル(Et
2O)、シクロペンチルメチルエーテルまたはこれらの混合物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒がTHFである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記3-ハロピリジンが3-ブロモピリジンである、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
R
2がHである、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
R
1がClである、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月29日に出願された米国仮特許出願第62/440178号明細書に対して合衆国法典第35巻第119条第e項の下での優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、殺有害生物チオエーテルおよび殺有害生物スルホキシドの調製のための効率的かつ経済的な合成化学法に関する。さらに、本出願は、これらの合成に必要な特定の新規な化合物に関する。市販の出発材料から効率的かつ高収率で殺有害生物チオエーテルおよび殺有害生物スルホキシドを製造することが有利であろう。
【背景技術】
【0003】
農業損失の原因になる有害生物は1万種を超える。世界的な農業損失額は、毎年数十億米ドルに及ぶ。貯蔵食物有害生物は、貯蔵食物を食べ、その質を落とす。世界的な貯蔵食物の損失額は毎年数十億米ドルに及ぶが、より重要なことは、人々から必要な食料を奪うことである。特定の有害生物は、現在用いられている殺有害生物剤(pesticide)に対して耐性を発現している。数百もの有害生物種が、1種または複数の殺有害生物剤に対して耐性を示す。一部の昔の殺有害生物剤、例えば、DDT、カルバメートおよび有機リン酸塩に対して耐性を発現することはよく知られている。しかし、一部の新しい殺有害生物剤に対してさえ耐性を発現している。そのため、新しい殺有害生物剤の開発につながる新しい殺有害生物剤が、緊急に必要とされている。具体的には、米国特許出願公開第20130288893号明細書には、とりわけ、特定の殺有害生物チオエーテルおよび殺有害生物剤としてのこれらの使用が記載されている。このような化合物は、有害生物の防除のための農業での使用を見出している。
【0004】
米国特許第9102654号には、このような殺有害生物チオエーテルの調製方法が記載された。一実施形態において、本明細書に記載の中間体1dは、以下のスキーム1
【0005】
【0006】
スキーム1の方法は、市販の出発材料3-ヒドラジノピリジン二塩酸塩から化合物5dを経由して式1dの化合物に至る7つのステップを必要とするので、米国特許第9102654号明細書に記載の標的殺有害生物チオエーテルの大規模製造を困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非常に大量の殺有害生物剤、とりわけ米国特許第9102654号明細書および米国特許出願公開第20130288893号明細書に記載の種類の殺有害生物チオエーテルが必要とされているため、経済的な市販の出発材料から効率的かつ高収率で殺有害生物チオエーテルを製造する新しい方法を開発することは非常に有利であろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は以下の[1]から[20]を含む。
[1]式1D
【化1】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を調製する方法であって、
(a)触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、式1A
【化2】
(式中、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を3-ハロピリジンと接触させて、式1B
【化3】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップと、
(b)塩基および溶媒の存在下で、式1B
【化4】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物をアシル化剤と接触させて、式1B’
【化5】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップと、
(c)溶媒の存在下で、式1B’
【化6】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を還元剤と接触させて、式1Dの化合物を得るステップと
を含む、方法。
[2](a)触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、式1A
【化7】
(式中、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を3-ハロピリジンと接触させて、式1B
【化8】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップ
を含む、方法。
[3](b)塩基および溶媒の存在下で、式1B
【化9】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物をアシル化剤と接触させて、式1B’
【化10】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップ
を含む、方法。
[4](c)溶媒の存在下で、式1B’
【化11】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を還元剤と接触させて、式1D
【化12】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1
およびR
2
は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1
~C
6
アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を得るステップ
を含む、方法。
[5]ステップ(a)の上記触媒が、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl
2
)、臭化銅(I)(CuBr)またはヨウ化銅(I)(CuI)である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[6]ステップ(a)の上記リガンドが、N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(DMEDA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(BHEEA)および8-ヒドロキシキノリンからなる群から選択される、上記[1]または[2]に記載の方法。
[7]ステップ(a)の上記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3
)、炭酸ナトリウム(Na
2
CO
3
)、炭酸カルシウム(CaCO
3
)、炭酸セシウム(Cs
2
CO
3
)、炭酸リチウム(Li
2
CO
3
)、炭酸カリウム(K
2
CO
3
)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2
)、二リン酸ナトリウム(Na
2
HPO
4
)、リン酸ナトリウム(Na
3
PO
4
)、二リン酸カリウム(K
2
HPO
4
)、リン酸カリウム(K
3
PO
4
)、ナトリウムメトキシド(NaOCH
3
)およびナトリウムエトキシド(NaOCH
2
CH
3
)からなる群から選択される、上記[1]または[2]に記載の方法。
[8]ステップ(a)の上記塩基が、K
2
CO
3
である、上記[7]に記載の方法。
[9]ステップ(a)の上記溶媒が、アセトニトリル(CH
3
CN)、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO)である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[10]ステップ(b)の上記アシル化剤が、塩化アセチルまたは無水酢酸である、上記[1]または[3]に記載の方法。
[11]ステップ(b)の上記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3
)、炭酸ナトリウム(Na
2
CO
3
)、炭酸カルシウム(CaCO
3
)、炭酸セシウム(Cs
2
CO
3
)、炭酸リチウム(Li
2
CO
3
)、炭酸カリウム(K
2
CO
3
)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2
)、二リン酸ナトリウム(Na
2
HPO
4
)およびリン酸カリウム(K
3
PO
4
)からなる群から選択される、上記[1]または[3]に記載の方法。
[12]ステップ(b)の上記塩基が、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3
)である、上記[11]に記載の方法。
[13]ステップ(b)の上記溶媒が、二塩化メチレン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、アセトニトリル(CH
3
CN)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される、上記[1]または[3]に記載の方法。
[14]上記溶媒が酢酸エチル(EtOAc)またはテトラヒドロフラン(THF)である、上記[13]に記載の方法。
[15]ステップ(c)の上記還元剤が、Red-Al、ボラン、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4
)/三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
・Et
2
O)からなる群から選択される、上記[1]または[4]に記載の方法。
[16]ステップ(c)の上記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル(Et
2
O)、シクロペンチルメチルエーテルまたはこれらの混合物である、上記[1]または[4]に記載の方法。
[17]上記溶媒がTHFである、上記[16]に記載の方法。
[18]上記3-ハロピリジンが3-ブロモピリジンである、上記[1]または[2]に記載の方法。
[19]R
2
がHである、上記[1]、[2]、[3]または[4]に記載の方法。
[20]R
1
がClである、上記[1]、[2]、[3]または[4]に記載の方法。
開示の定義
具体的な例において別段限定されない限り、以下の定義は、本明細書を通じて用いられる用語に適用される。
【0009】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、C1~C6、C1~C4およびC1~C3を含むがこれらに限定されない、炭素原子鎖(これは任意選択で分岐である)を含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルは、置換または非置換であり得る。「アルキル」は、他の基、例えば、上記に示すものと組み合わせられて、官能化アルキルを形成し得ることが理解されるであろう。例として、本明細書に記載の「アルキル」基と「シクロアルキル」基との組み合わせは、「アルキル-シクロアルキル」基と称することができる。
【0010】
本明細書で使用する用語「シクロアルキル」は、任意選択で1つまたは複数の二重結合を含有する、全炭素環式環を指すが、シクロアルキルは、完全に共役したπ電子系を含有しない。特定の実施形態において、シクロアルキルは、有利には、制限された大きさ、例えば、C3~C6であり得ることが理解されるであろう。シクロアルキルは、非置換または置換であり得る。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0011】
本明細書で使用する用語「アリール」は、完全に共役したπ電子系を含有する全炭素環式環を指す。特定の実施形態において、アリールは、有利には、制限された大きさ、例えば、C6~C10であり得ることが理解されるであろう。アリールは、非置換または置換であり得る。アリールの例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0012】
本明細書で使用する「ハロ」または「ハロゲン」または「ハロゲン化物」は、互換的に用いられ得、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を指す。
【0013】
本明細書で使用する「トリハロメチル」は、3つのハロ置換基を有するメチル基、例えば、トリフルオロメチル基を指す。
【0014】
開示の詳細な説明
本開示の化合物および方法を、以下に詳細に記載する。本開示の方法は、スキーム2により示すことができる。
【0015】
【0016】
スキーム2のステップ(a)において、ピラゾール出発材料1A(R1およびR2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C1~C6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)は、銅触媒、リガンド、塩基、溶媒、および任意選択で添加剤の存在下で、3-ハロピリジンと反応し得る。触媒は、銅試薬(I)または銅試薬(II)であり得る。触媒の例としては、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl2)およびヨウ化銅(I)(CuI)が挙げられる。いくつかの実施形態において、銅試薬は、塩化銅(I)(CuCl)である。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.01~約0.4モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.05~約0.25モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.2モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。
【0017】
ステップ(a)の塩基は、無機塩基であってもよい。ステップ(a)に関連して使用するのに好適な塩基の例としては、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、二リン酸カリウム(K2HPO4)、リン酸カリウム(K3PO4)、ナトリウムメトキシド(NaOCH3)、ナトリウムエトキシド(NaOCH2CH3)などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、塩基は、K3PO4またはK2CO3である。いくつかの実施形態において、ピラゾール出発材料と比較して過剰な塩基を使用することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約5倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約3倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍過剰で用いられる。
【0018】
ステップ(a)の方法のリガンドは、アミンまたはヘテロアリールアミン、例えば、N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(DMEDA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(BHEEA)および8-ヒドロキシキノリンであってもよい。いくつかの実施形態において、反応は、さらにコストを削減するために、等モル量未満のリガンドの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.08~約1.0モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.4~約0.6モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.1~約0.2モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。
【0019】
ステップ(a)の方法は、溶媒、例えば、アセトニトリル(CH3CN)、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン中などで行われてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒はジオキサンである。いくつかの実施形態において、高温でステップ(a)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、反応は約50℃~約150℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、反応は約60℃~約120℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、反応は約95℃~約115℃の温度で行われる。
【0020】
ステップ(a)の生成物が、例えば化合物1Bである場合、ステップ(b)の方法は任意選択で、アミンをアシル化して式1B’の化合物を得ることにより行われてもよい。ステップ(b)において、アシル化剤の例としては、塩化アセチルまたは無水酢酸が挙げられる。ステップ(b)の方法の塩基は、無機塩基、例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)であってもよい。ステップ(b)は、溶媒の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の溶媒は、酢酸エチル(EtOAc)またはテトラヒドロフラン(THF)である。いくつかの実施形態において、低温でステップ(b)の方法を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、反応は、約-10℃~約30℃の温度で行われてもよい。いくつかの実施形態において、塩基は、約5%モル過剰~約5倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約3倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は約2倍過剰で用いられる。
【0021】
ステップ(c)の方法は、還元剤、例えば、ボラン、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)/三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF3・Et2O)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)などにより行われてもよい。いくつかの実施形態において、約2.0~約5.0モル当量の還元剤、例えば、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)の存在下でステップ(c)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の方法で用いられるRed-Alの量は、約3.0モル当量である。ステップ(c)の方法は、溶媒または溶媒の混合物の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテルまたはこれらの混合物である。いくつかの実施形態において、溶媒はTHFとトルエンとの混合物である。約0℃~約80℃の温度でステップ(c)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、高温でステップ(c)の方法を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の温度は約25℃~約50℃であってもよい。
【0022】
あるいは、本開示の方法は、スキーム3により示すことができる。
【0023】
【0024】
スキーム3のステップ(a)において、ピラゾール出発材料1aは、触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、3-ブロモピリジンまたは3-ヨードピリジンと反応し得る。触媒は銅試薬(I)または銅試薬(II)であってもよい。触媒の例としては、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl2)およびヨウ化銅(I)(CuI)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、銅試薬は、塩化銅(I)(CuCl)である。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.01~約0.4モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.1~約0.25モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.2モル当量の銅触媒の存在下で行われてもよい。
【0025】
ステップ(a)の塩基は、無機塩基であってもよい。ステップ(a)に関連して使用するのに好適な塩基の例としては、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、二リン酸カリウム(K2HPO4)、リン酸カリウム(K3PO4)、ナトリウムメトキシド(NaOCH3)、ナトリウムエトキシド(NaOCH2CH3)などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、塩基は、K3PO4またはK2CO3である。いくつかの実施形態において、ピラゾール出発材料と比較して過剰な塩基を使用することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約5倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約3倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍過剰で用いられる。
【0026】
ステップ(a)の方法のリガンドは、アミンまたはヘテロアリールアミン、例えば、N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(DMEDA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(BHEEA)および8-ヒドロキシキノリンであってもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.08~約1.0モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.4~約0.6モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、反応は、ピラゾール出発材料と比較して約0.1~約0.2モル当量のリガンドの存在下で行われてもよい。
【0027】
ステップ(a)の方法は、溶媒、例えば、アセトニトリル(CH3CN)、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン中などで行われてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒はジオキサンである。いくつかの実施形態において、高温でステップ(a)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、反応は約50℃~約150℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、反応は約60℃~約120℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、反応は約95℃~約115℃の温度で行われる。
【0028】
ステップ(b)において、アシル化剤の例としては、塩化アセチルまたは無水酢酸が挙げられる。ステップ(b)の方法の塩基は、無機塩基、例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸カリウム(K3PO4)などであってもよい。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の塩基は、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)であってもよい。ステップ(b)は、溶媒、例えば、二塩化メチレン(DCM)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、アセトニトリル(CH3CN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の溶媒は、酢酸エチル(EtOAc)またはテトラヒドロフラン(THF)である。いくつかの実施形態において、低温でステップ(b)の方法を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、反応は、約-10℃~約30℃の温度で行われてもよい。いくつかの実施形態において、塩基は、約5%モル過剰~約5倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は、約2倍~約3倍過剰で用いられる。いくつかの実施形態において、塩基は約2倍過剰で用いられる。
【0029】
ステップ(c)の方法は、還元剤、例えば、ボラン、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)/三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF3・Et2O)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)などにより行われてもよい。いくつかの実施形態において、約2.0~約5.0モル当量の還元剤、例えば、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)の存在下でステップ(c)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の方法で用いられる水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)の量は、約3.0モル当量である。ステップ(c)の方法は、溶媒または溶媒の混合物の存在下で行われてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテルまたはこれらの混合物である。いくつかの実施形態において、溶媒はTHFとトルエンとの混合物である。約0℃~約80℃の温度でステップ(c)の反応を行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の方法を高温で行うことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の温度は約25℃~約50℃であってもよい。
【0030】
化合物1dからの殺有害生物チオエーテルの調製についての例示的方法は、例えば、米国特許第9102654号明細書に見出すことができ、それはすべて、式1dの化合物から殺有害生物チオエーテルを調製することについて開示するために参照により組み込まれている。このような方法の例示的実施形態は、スキーム4に示すように記載され得る。
【0031】
【0032】
スキーム4において、3-クロロ-N-エチル-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-アミン(1d)は、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3で示される活性化カルボニルチオエーテルでアシル化されて、殺有害生物チオエーテル(1e)が生成され得る。いくつかの実施形態において、R3は(C1~C4)-ハロアルキルである。いくつかの実施形態において、R3はCH2CH2CF3である。
【0033】
X1がClである場合、反応は、溶媒、例えば、酢酸エチル中で行われる。反応は、任意選択で、塩基、例えば、重炭酸ナトリウムの存在下で行われて、殺有害生物チオエーテル(1e)が生成され得る。
【0034】
X1がOC(=O)(C1~C4)-アルキルである場合、反応は、塩基、好ましくは重炭酸ナトリウムの存在下で行われて、殺有害生物チオエーテル(1e)が生成される。あるいは、X1が、2,4,6-トリプロピル-トリオキサトリホスフィナン-2,4-トリオキシド(T3P)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、好ましくは、2,4,6-トリプロピル-トリオキサトリホスフィナン-2,4-トリオキシドおよびカルボニルジイミダゾールのような試薬により活性化された活性化カルボン酸である場合、反応は約0℃~約80℃の温度で行われてもよい。また、この反応は、アミン塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンの存在下で、非プロトン性溶媒、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランまたはジクロロメタン中で、約-10℃~約30℃の温度にて、ウロニウムまたはホスホニウム活性化基、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)またはベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)で行われて、殺有害生物チオエーテル(1e)が形成され得る。
【0035】
活性化カルボニルチオエーテルは、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3(式中、X1は、OHである)から調製され、これは、溶媒、例えば、メタノールまたはテトラヒドロフラン中で、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3(式中、X1は、O(C1~C4)-アルキルである)で示される対応するエステルチオエーテルを、金属水酸化物、例えば、水酸化リチウムで鹸化することにより調製される。あるいは、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3(式中、X1はOHまたはO(C1~C4)-アルキルである)は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン開始剤および長波長UV光の存在下で、有機溶媒中で、3-メルカプトプロピオン酸およびそのエステルと3,3,3-トリフルオロプロペンとの光化学的フリーラジカルカップリングにより調製され得る。さらに、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3(式中、X1はOHまたはO(C1~C4)-アルキルである)は、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチル)バレロニトリル(V-70)開始剤の存在下で、約-50℃~約40℃の温度にて、溶媒中で、3-メルカプトプロピオン酸およびそのエステルと3,3,3-トリフルオロプロペンとの低温フリーラジカル開始カップリング(low temperature free-radical initiated coupling)によっても調製され得る。好ましくは、X1C(=O)(C1~C4)-アルキル-S-R3(式中、X1はOHまたはO(C1~C4)-アルキルである)は、過酸化ベンゾイルおよびジメチルアニリンまたはN-フェニルジエタノールアミンの2つの成分の開始剤系の存在下で、約-50℃~約40℃の温度にて、溶媒、例えば、トルエンまたは酢酸エチル中で、3-メルカプトプロピオン酸およびそのエステルと3,3,3-トリフルオロプロペンとの低温フリーラジカル開始カップリングにより調製される。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示は、殺有害生物チオエーテルを調製する方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態において、本開示は、式1D
【0038】
【化5】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を調製する方法であって、
a.触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、式1A
【0039】
【化6】
(式中、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を、3-ハロピリジンと接触させて、式1B
【0040】
【化7】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を得るステップ、または
b.式1B
【0041】
【化8】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物をアシル化剤と接触させて、式1B’
【0042】
【化9】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を得るステップ、または
c.式1B’
【0043】
【化10】
(式中、Arはピリジン-3-イルであり、R
1およびR
2は各々独立にH、F、Cl、Br、I、C
1~C
6アルキルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される)
の化合物を還元剤と接触させて、式1Dの化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態において、本開示は、式1d
【0045】
【化11】
の化合物を調製する方法であって、
a.触媒、リガンド、塩基および溶媒の存在下で、式1a
【0046】
【化12】
の化合物を3-ハロピリジンと接触させて、式5d
【0047】
【化13】
の化合物を得るステップ、または
b.塩基および溶媒の存在下で、式5d
【0048】
【化14】
の化合物をアシル化剤と接触させて、式1c
【0049】
【化15】
の化合物を得るステップ、または
c.溶媒の存在下で、式1c
【0050】
【化16】
の化合物を還元剤と接触させて、式1dの化合物を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、ステップ(a)およびステップ(b)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、ステップ(a)およびステップ(c)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)を含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、殺有害生物チオエーテルの調製方法、例えば、米国特許第9102654号明細書に記載の方法に関連して行われてもよい。
【実施例】
【0052】
これらの実施例は、例示目的のためであり、本開示がこれらの実施例に開示される実施形態のみに限定されると解釈されてはならない。
【0053】
商業的供給源から得た出発材料、試薬および溶媒を、さらなる精製なしに使用した。融点は未補正である。「室温」を使用する実施例を、約20℃~約24℃の範囲の温度の温度湿度制御実験室(climate controlled laboratory)で行った。分子には、Accelrys Draw、ChemDrawまたはACD Name Pro内の命名プログラムに従って命名されたこれらの公知の名前が与えられる。このようなプログラムが、分子を命名できない場合、このような分子は、従来の命名規則を使用して命名される。別段の記載のない限り、1H NMRスペクトルデータを、ppm(δ)で示し、300、400、500または600MHzで記録した;13C NMRスペクトルデータを、ppm(δ)で示し、75、100または150MHzで記録した;19F NMRスペクトルデータを、ppm(δ)で示し、376MHzで記録した。
【0054】
3-クロロ-1H-ピラゾール-4-アミン塩酸塩、化合物1aを、本明細書で化合物1aと称される化合物Iaの調製のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9102655号明細書に記載の方法に従って調製した。
【0055】
化合物実施例
[実施例1]
3-クロロ-1(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-アミン(5d)の調製
【0056】
【化17】
3口丸底フラスコ(100mL)に、塩化銅(I)(0.627g、6.33mol)、N,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(1.12g、12.7mmol)、3-クロロ-1H-ピラゾール-4-アミン塩酸塩(5.85g、38.0mmol)、炭酸カリウム(8.75g、63.3mmol)およびジオキサン(50mL)を入れ、混合物を窒素下で10分間撹拌した。3-ブロモピリジン(3.05mL、31.6mmol)を添加し、混合物を80℃で18時間加熱した。反応物を20℃に冷却し、セライト(登録商標)パッドを通して濾過した。パッドを酢酸エチル(2×20mL)で洗い流し、合わせた濾液を濃縮した。溶出液として0~80%酢酸エチル/ヘキサンを用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製により、薄黄色固体として表題化合物(3.56g、58%)が得られた:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.95 (dd, J = 2.6, 0.8 Hz, 1H), 8.45 (dd, J = 4.7, 1.4 Hz, 1H), 1H), 8.07 (ddd, J = 8.4, 2.4, 1.4 Hz, 1H), 7.90 (s, 1H), 7.48 (ddd, J = 8.3, 4.7, 0.8 Hz, 1H), 4.42 (s, 2H);
13C NMR (101 MHz, DMSO-d
6) δ 146.35, 138.53, 135.72, 132.09, 130.09, 124.29, 124.11, 114.09;ESIMS m/z 195([M+H])
+)。
【0057】
[実施例2]
N-(3-クロロ-1(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)アセトアミド(1c)の調製
【0058】
【化18】
3口丸底フラスコ(100mL)に、3-クロロ-1(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-アミン(1.00g、5.14mmol)および酢酸エチル(10mL)を入れた。重炭酸ナトリウム(1.08g、12.9mmol)を添加し、次いで<20℃で無水酢酸(0.629g、6.17mmol)を滴下添加した。反応物を20℃で2時間撹拌して、懸濁液を得、その時点で、薄層クロマトグラフィー分析[TLC、溶出液:酢酸エチル]により、反応が完了したことが示された。反応物を水(50mL)で希釈し、得られた懸濁液を濾過した。固体を水(10mL)、次いでメタノール(5mL)で洗い流した。固体を、真空下で20℃にてさらに乾燥して、白色の固体として所望の生成物(0.804g、66%)を得た:融点169~172℃。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 9.84 (s, 1H), 9.05 (dd, J = 2.8, 0.8 Hz, 1H), 8.82 (s, 1H), 8.54 (dd, J = 4.7, 1.4 Hz, 1H), 8.20 (ddd, J = 8.4, 2.8, 1.4 Hz, 1H), 7.54, (ddd, J = 8.3, 4.7, 0.8 Hz, 1H), 2.11 (s, 3H);
13C NMR (101 MHz, DMSO-d
6) δ 168,12, 147,46, 139,42, 135.46, 133.60, 125.47, 124.21, 122.21, 120,16, 22.62;EIMS m/z 236([M]
+)。
【0059】
[実施例3]
3-クロロ-N-エチル-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-アミンの調製
【0060】
【化19】
25mLの丸底フラスコに、N-(3-クロロ-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-N-エチルアセトアミド(1.0g、4.2mmol)および無水THF(6.0mL)を添加し、白色懸濁液を得た。懸濁液を、氷水浴中で6℃に冷却した。ポット温度<10℃を維持しながら、二水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al、トルエン中60重量%、3.52mL、2.5当量)をシリンジを介して10分かけて徐々に添加した。濃縮懸濁液は、Red-Alの添加中透明な黄色溶液に徐々に変化した。反応混合物を、25℃まで1.5時間かけて徐々に昇温した。LCにより83.8%の変換が示された。溶液を50℃に加熱し、4.5時間撹拌した。LCにより88.1%の変換が示された。溶液を20℃に冷却した。NaOH(H
2O中2M、5mL)を添加して、反応をクエンチし、白色懸濁液を得た。水(20mL)を添加し、混合物を2相に分離した。水相を分離し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮して、赤褐色の油として粗生成物(0.758g)を得た。内部標準としてフタル酸ジ-n-プロピルを用いるLC分析により、78重量%、0.591g活性、62.8%の収率が示された。ESIMS m/z 222([M+H]
+)。
【0061】
[実施例4]
3-クロロ-N-エチル-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-アミンの別の調製
【0062】
【化20】
25mLの丸底フラスコにN-(3-クロロ-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-N-エチルアセトアミド(1.0g、4.2mmol)および無水THF(9mL)を添加し、白色懸濁液を得た。フラスコを、氷水浴中で5℃に冷却した。ポット温度<10℃を維持しながら、Red-Al(トルエン中60重量%、4.3mL、3.0当量)をシリンジを介して15分かけて徐々に添加した。濃縮懸濁液は、Red-Alの添加中透明な黄色溶液に徐々に変化した。反応混合物を25℃まで3時間かけて徐々に昇温し、次いで25℃で17時間撹拌した。NaOH(H
2O中2M、6mL)を添加して、反応をクエンチし、濃縮スラリーを得た。水(20mL)を添加し、2層を分離した。下の水相をEt
2O(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮して、赤褐色の油として粗生成物(0.91g)を得た。内部標準としてフタル酸ジ-n-プロピルを用いるLC分析により、61重量%、0.555g活性、59.0%の収率が示された。ESIMS m/z 222([M+H]
+)。
【0063】
3-クロロ-N-エチル-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-アミンの別の調製
【0064】
【化21】
100mLの3口丸底フラスコにN-(3-クロロ-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)アセトアミド(475mg、2.01mmol)およびテトラヒドロフラン(10mL)を入れた。三フッ化ホウ素エーテラート(0.63mL、5.02mmol)を添加し、混合物を15分間撹拌して、懸濁液を得た。水素化ホウ素ナトリウム(228mg、6.02mmol)を添加し、反応物を60℃で4時間加熱し、その時点で、薄層クロマトグラフィー分析[溶出液:酢酸エチル、試料は、反応混合物を塩酸で処理し、次いで重炭酸ナトリウムで塩基性化し、酢酸エチルで抽出することにより調製された]により、反応が完了したことが示された。水(10mL)および濃縮された塩酸(1mL)を添加し、反応物を60℃で1時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、蒸留して、テトラヒドロフランを除去した。混合物を飽和水性重炭酸ナトリウムでpH約8に中和して、懸濁液を得、これを1時間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを水(10mL)で洗い流し、真空下で乾燥して、白色固体(352mg、79%)を得た:融点93~96℃。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.99 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.44 (dd, J = 4.6, 1.4 Hz, 1H), 8.10 (ddd, J = 8.4, 2.7, 1.4 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.50 (dd, J = 8.4, 4.7 Hz, 1H), 4.63 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 3.06-2.92 (m, 2H), 1.18 (t, J = 7.1 Hz, 3H);
13C NMR (101 MHz, DMSO-d
6) δ 146.17, 138.31, 135.81, 132.82, 130.84, 124.10, 123.96, 112.23, 40.51, 14.28;EIMS m/z 222([M]
+)。
【0065】
[実施例5]
N-(3-クロロ-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-N-エチル-3-((3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ)プロパンアミド(化合物6.9)の調製
【0066】
【化22】
3口丸底フラスコ(100mL)に、3-クロロ-N-エチル-1-(ピリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-アミン(5.00g、22.5mmol)および酢酸エチル(50mL)を入れた。重炭酸ナトリウム(4.72g、56.1mmol)を添加し、次いで塩化3-((3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ)プロパノイル(5.95g、26.9mmol)を<20℃で2時間滴下添加し、その時点で、HPLC分析により、反応が完了したことが示された。反応物を水(50mL)(オフガス)で希釈し、層を分離した。水層を酢酸エチル(20mL)で抽出し、合わせた有機層を、乾燥するまで濃縮して、薄茶色の固体(10.1g、定量)を得た。粗生成物の小試料を、溶出液として酢酸エチルを用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、分析用参照試料を得た:融点79~81℃。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 9.11 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.60 (dd, J = 4.8, 1.4 Hz, 1H), 8.24 (ddd, J = 8.4, 2.8, 1.4 Hz, 1H), 7.60 (ddd, J = 8.4, 4.7, 0.8 Hz, 1H), 3.62 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.75 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.66 - 2.57 (m, 2H), 2.57 - 2.44 (m, 2H), 2.41 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 1.08 (t, J = 7.1 Hz, 3H);ESIMS m/z 407([M+H]
+)。