(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】結晶形
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6558 20060101AFI20220630BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220630BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220630BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220630BHJP
A61K 31/662 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C07F9/6558 CSP
A61P9/10
A61P27/02
A61P9/00
A61K31/662
(21)【出願番号】P 2019536696
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2017073858
(87)【国際公開番号】W WO2018055016
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/072562
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517248845
【氏名又は名称】イドーシア ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IDORSIA PHARMACEUTICALS LTD
【住所又は居所原語表記】HEGENHEIMERMATTWEG 91, 4123 ALLSCHWIL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ロイエンバーガー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン リーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォン ラウマー
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】Baldoni, Daniela; Bruderer, Shirin; Krause, Andreas; Gutierrez, Marcello; Gueret, Pierre; Astruc, Beatrice; Dingemanse, Jasper,A New Reversible and Potent P2Y12 Receptor Antagonist (ACT-246475): Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics in a First-in-Man Trial,Clinical Drug Investigation,2014年,34(11),,807-818
【文献】C.G.WERMUTH編,最新 創薬化学 下巻,p.347-365,株式会社 テクノミック,1999年
【文献】STAHLY,P.,医薬品の塩選択,結晶多形のスクリーニングの重要性について,薬剤学,2006年,Vol.66,No.6,p.435-439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6558
A61P 9/10
A61P 27/02
A61P 9/00
A61K 31/662
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°及び15.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶。
【請求項2】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、11.7°、15.3°及び19.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、請求項1に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶。
【請求項3】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、5.9°、11.7°、15.3°
、19.3°、19.7°及び20.7°におけるピークの存在により特徴づけられる、請求項1に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載
の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の
結晶の製造方法であって、下記の工程を有する方法:
a. 4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩と非極性溶媒(0.5~3.0vol.)を含む溶液にアセトン(10~30vol.)を45~60℃にて添加し、上記非極性溶媒が(C1-2)クロロアルカンから選択される工程;
b. 水(0.3~0.7vol.)を45~60℃にて添加する工程;
c. 上記混合物を、45~60℃の温度から30℃又はそれ未満の温度まで冷却しながら、少なくとも1h撹拌する工程;及び、
d. 得られた結晶物質を単離する工程。
【請求項5】
工程a.における非極性溶媒の量が1.0~2.0vol.であり、上記非極性溶媒がジクロロメタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程c.において上記混合物を45℃~60℃の温度にて1hから4hの間撹拌し、次いで、1hから2hの間に20℃から30℃の間の温度に冷却する、請求項4又は5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
医薬として使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶。
【請求項8】
活性成分としての請求項1~3のいずれか1項に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物の製造における使用のための、請求項1~3のいずれか1項に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶であって、当該医薬組成物が、活性成分としての4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を含む、上記結
晶。
【請求項10】
有効成分として、請求項1~3のいずれか1項に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶を含む、急性冠症候群、末梢性虚血、黒内障、虚血性(脳)卒中及び一過性虚血発作からなる群より選択される疾患の予防用又は治療用の医薬。
【請求項11】
有効成分として、請求項1~3のいずれか1項に記載の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結
晶を含む、急性冠症候群の予防用又は治療用の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(4-((R)-2-{[6-((S)-3-methoxy-pyrrolidin-1-yl)-2-phenyl-pyrimidine-4-carbonyl]-amino}-3-phosphono-propionyl)-piperazine-1-carboxylic acid butyl ester hydrochloride)(以下、「化合物HCl」とも記載する。)の新規な結晶形、その製造方法、当該結晶形を含む医薬組成物、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル(4-((R)-2-{[6-((S)-3-methoxy-pyrrolidin-1-yl)-2-phenyl-pyrimidine-4-carbonyl]-amino}-3-phosphono-propionyl)-piperazine-1-carboxylic acid butyl ester)(以下、「化合物」とも記載する。)を含む医薬組成物であって、「化合物」が「化合物HCl」の当該結晶形から得られる上記医薬組成物、「化合物HCl」のそのような結晶形から製造される医薬組成物、種々のP2Y12受容体介在疾患及び障害の治療におけるP2Y12受容体アンタゴニストとしての「化合物HCl」の上記結晶形の使用並びに種々のP2Y12受容体介在疾患及び障害の治療におけるP2Y12受容体アンタゴニストとしての「化合物」の使用であって、「化合物」が「化合物HCl」の当該結晶形から得られる上記使用に関する。
【背景技術】
【0002】
器官からの及び器官への血液の循環は、酸素、栄養の供給及び異化生成物の処理を担っている。従って、血管の健常性は常に必須である。血管の健常性が損なわれると、損傷部位において効率の高い修復機構が活性化されて修復シールを形成し、血液のさらなる損失を防ぐ。この基本的な生物学的プロセスは止血と定義されている。
【0003】
血栓症は、止血に関与する1種又は数種の因子の病理的な異常に起因するものであり、血小板血栓形成の制御が失われ、血管の閉塞が起こる。血小板は、それが発見されて以来、止血及び血栓症に関与すると記載されてきた(Coller BS、Historical perspective and future directions in platelet research. J Thromb Haemost.2011;9 Suppl 1:374-395)。より最近になって、閉塞性血小板血栓を伴う動脈硬化病変が虚血性心疾患による死亡例において見つかった(Davies MJら、Intramyocardial platelet aggregation in patients with unstable angina suffering sudden ischemic cardiac death.Circulation.1986;73:418-427)。
【0004】
血小板凝集の阻害は、冠状動脈(Jneid Hら、2012 accf/aha focused update of the guideline for the management of patients with unstable angina/non-st-elevation myocardial infarction(updating the 2007 guideline and replacing the 2011 focused update):A report of
the american college of cardiology foundation/american heart association task force on practice guidelines.J Am Coll Cardiol.2012;60:645-681;O’Gara PTら、2013 accf/aha guideline for the management of st-elevation myocardial infarction:A report of the american college of cardiology
foundation/american heart association task force on practice guidelines.Circulation.2013;127:e362-425)、末梢(Jagroop IAら、The effect of clopidogrel、aspirin and both antiplatelet drugs on platelet function in patients with peripheral arterial disease.Platelets.2004;15:117-125;Matsagas Mら、The effect of a loading dose(300mg)
of clopidogrel on platelet function in patients with peripheral arterial disease.Clin Appl Thromb Hemost.2003;9:115-120)及び脳血管循環(Liu Fら、P2Y12 receptor inhibitors for secondary prevention of ischemic stroke.Expert Opin Pharmacother.2015;16:1149-1165)の動脈硬化性疾患を有する患者において、血栓症の予防に対する効果的な戦略であると認識されている。抗血小板アプローチとしてのP2Y12の阻害は、多くの臨床試験において有効性が検証された。数種のP2Y12アンタゴニストが、急性冠症候群(ACS)を有する患者及び経皮的冠動脈インターベーション(PCI)を受けた患者において、有害な心血管系事象のリスクを効果的に減少させることが示された(Cattaneo M、The platelet P2Y12 receptor for
adenosine diphosphate:Congenital and drug-induced defects.Blood.2011;117:2102-2112;Thomas MRら、The future of P2Y12 receptor antagonists.Platelets.2015;26:392-398;Wiviott SDら、Clinical evidence for oral
antiplatelet therapy in acute coronary syndromes.Lancet.2015;386:292-302;Wallentin L、P2Y12 inhibitors:Differences in properties and mechanisms of action and potential consequences for clinical use.Eur Heart J.2009;30:1964-1977)。現在の治療ガイドラインにおいて、P2Y12アンタゴニストはACS患者に対する基礎治療となっている(Jneid Hら、2012 accf/aha focused update of the guideline for the management of patients with unstable angina/non-st-elevation myocardial infarction(updating the 2007 guideline and replacing the 2011 focused update):A report of the american college of cardiology foundation/american heart association task force on practice guidelines.J Am Coll Cardiol.2012;60:645-681;O’Gara PTら、2013 accf/aha guideline for the management of st-elevation myocar
dial infarction:A report of the american
college of cardiology foundation/american heart association task force on practice guidelines.Circulation.2013;127:e362-425)。
【0005】
ADP誘発血小板活性化及び凝集を遮断するチエノピリジンファミリーの3種の間接的P2Y12アンタゴニスト:すなわち、経口で有効なチクロピジン(ticlopidine)、クロピドグレル(clopidogrel)及びプラスグレル(prasugrel)が上市された。さらに、代謝による活性化を必要とせず、従って作用のより速やかな発現と消失を示す2種の直接的P2Y12アンタゴニスト:すなわち、ヌクレオチドアナログであるチカグレロル(ticagrelor)及びcangrelorが承認を受けた。
【0006】
4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステルは、強力で、可逆的な選択的P2Y12受容体アンタゴニストである(Caroff Eら、J.Med.Chem.2015;58:9133-9153;WO2009/069100)。その塩酸塩は粉末としてfirst-in-man臨床試験に使用された(Baldoniら、Clinical Drug Investigation 2014;34:807-818)。
【発明の概要】
【0007】
「化合物HCl」を単相溶媒系において数種の溶媒から結晶化する多くの試みが失敗したにも関わらず、驚くべきことに、特定の異種溶媒系において結晶化が起こることが見い出された。得られた「化合物HCl」の結晶形は、薬学的有効成分としての「化合物HCl」又は「化合物」の使用可能性の観点から有利な特性を有するであろう。そのような利点は、より高い純度;より良好な貯蔵安定性;より良好な流動特性;より低い吸湿性;製造におけるより良好な再現性(例えば、より良好なろ過パラメータ、形成のより良好な再現性、及び/又はより良好な沈降性);及び/又は一定したモルフォロジーを含むであろう。「化合物HCl」のそのような結晶形は、特定の医薬組成物の製造方法に特に向いているであろう。
【0008】
図の説明
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、結晶形1における「化合物HCl」の粉末X線回折ダイアグラムを示し、粉末X線回折ダイアグラムはCu Kα照射に対して示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-30°の範囲の2シータからの、10%又はそれより大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):4.0°(100%)、5.0(60%)、5.9°(23%)、11.7°(10%)、15.3°(13%)、19.3°(15%)、19.7°(11%)及び20.7°(10%)。
【
図2】
図2は、結晶形2における「化合物HCl」の粉末X線回折ダイアグラムを示し、粉末X線回折ダイアグラムはCu Kα照射に対して示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-30°の範囲の2シータからの、10%又はそれより大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):5.2°(100%)、6.8°(26%)、8.0°(14%)、10.3°(66%)、10.8°(66%)、12.7°(10%)、15.4°(18%)、16.2°(13%)、20.3°(40%)、20.5°(28%)及び21.7°(13%)。
【
図3】
図3は、結晶形3における「化合物HCl」の粉末X線回折ダイアグラムを示し、粉末X線回折ダイアグラムはCu Kα照射に対して示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(8-30°の範囲の2シータからの、10%又はそれより大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):5.5°(100%)、7.2(43%)、11.0°(51%)、11.5°(45%)、13.0°(10%)、14.4°(15%)、16.6°(51%)、18.1°(39%)、18.5°(27%)、21.1°(32%)、22.0°(37%)、23.1°(17%)、24.3°(16%)及び26.1°(10%)。
図1~
図3のX線回折ダイアグラムにおいては、屈折角2シータ(2θ)を横軸に、数値を縦軸にプロットする。 いかなる疑義をも避けるために、上記のピークは、
図1~
図3に示す粉末X線回折の実験結果を記述する。上記のピークのリストとは対照的に、本発明の各結晶形の「化合物HCl」を完全に及び明確に特徴づけるためには、選択された特徴的なピークのみが必要であることが理解されるべきである。
【
図4】
図4は、実施例1Aから得られる結晶形1の「化合物HCl」の20~75%RHの範囲における25℃での重量測定蒸気吸着挙動(gravimetric vapour sorption behaviour)(低%RHから高%RHへ、すなわち吸着サイクル)を示す。
【
図5】
図5は、実施例2から得られる結晶形2の「化合物HCl」の20~75%RHの範囲における25℃での重量測定蒸気吸着挙動(高%RHから低%RHへ、すなわち脱着サイクル)を示す。
【
図6】
図6は、実施例3Aから得られる結晶形3の「化合物HCl」の20~75%RHの範囲における25℃での重量測定蒸気吸着挙動(低%RHから高%RHへ、すなわち吸着サイクル)を示す。
【0010】
図4、5及び6の重量測定蒸気吸着ダイアグラムにおいては、相対湿度(%RH)を横軸に、質量変化(%dm、乾燥量基準)を縦軸にプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細な記述
1) 本発明の第1の態様は、
a) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°及び15.3°(結晶形1)におけるピークの存在;又は、
b) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°及び10.3°(結晶形2)におけるピークの存在;又は、
c) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、11.0°及び16.6°(結晶形3)におけるピークの存在;
により特徴づけられる、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(「化合物HCl」)の結晶形に関する。
【0012】
態様1)に従う結晶形は、塩化水素塩(塩酸塩)の形態の「化合物HCl」を含むことが理解されるべきである。さらに、当該結晶形は非配位及び/又は配位溶媒(特に、非配位及び/又は配位水)を有するかもしれない。配位溶媒(特に、配位水)は、本明細書に
おいて、結晶性溶媒和物(特に、結晶性水和物)についての用語として使用される。疑義を避けるために、本出願において、「結晶性水和物」という用語は、不定比水和物(non-stoichiometric hydrates)を包含する。同様に、非配位溶媒は、本明細書において、物理吸着又は物理補足溶媒についての用語として使用される(Polymorphism in the Pharmaceutical Industry(Ed.R.Hilfiker、VCH、2006)、Chapter 8:U.J.Griesser:The Importance of Solvatesによる定義)。さらに、結晶形は、相対湿度に応じて異なる量の配位水を含むことができ、従って、粉末X線回折ダイアグラムは相対湿度とともに変化し得ることが理解されるべきである。結晶形1は、特に、約0~3%の配位及び/又は非配位水を含む。結晶形2は、特に、約5~10%の配位及び/又は非配位水を含む。結晶形3は、特に、約2.5~8%の配位及び/又は非配位水を含む。
【0013】
2) 別の態様は、
a) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、11.7°、15.3°及び19.3°(結晶形1)におけるピークの存在;又は、
b) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、10.3°、10.8°及び15.4°(結晶形2)におけるピークの存在;又は、
c) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°及び16.6°(結晶形3)におけるピークの存在;
により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0014】
3) 別の態様は、
a) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、5.9°、11.7°、15.3°、16.9°、19.3°、19.7°及び20.7°(結晶形1)におけるピークの存在;又は、
b) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、8.0°、10.3°、10.8°、12.7°、15.4°、16.2°、20.3°及び21.7°(結晶形2)におけるピークの存在;又は、
c) 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°、14.4°、16.6°、18.1°、21.1°及び22.0°(結晶形3)におけるピークの存在;
により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0015】
4) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°及び15.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0016】
5) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、11.7°、15.3°及び19.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0017】
6) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、5.9°、11.7°、15.3°、16.9°、19.3°、19.7°及び20.7°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0018】
7) 別の態様は、
図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0019】
8) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°及び10.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0020】
9) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、10.3°、10.8°及び15.4°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0021】
10) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、8.0°、10.3°、10.8°、12.7°、15.4°、16.2°、20.3°及び21.7°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0022】
11) 別の態様は、
図2に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0023】
12) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、11.0°及び16.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0024】
13) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°及び16.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0025】
14) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°、14.4°、16.6°、18.1°、21.1°及び22.0°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0026】
15) 別の態様は、
図3に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様1)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0027】
16) 別の態様は、
a. 33%HCl水溶液(5.1vol.)を、ブチル 4-((R)-3-(ジエトキシホスホリル)-2-(6-((S)-3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキサミド)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレートをDCMとTHFの混合物(5.5vol.)中に溶解した溶液に添加し;
b. 20~30℃の温度にて4~12h撹拌し;
c. 20~30℃の温度にて水(8.2vol.)とDCM(8.2vol.)を添加し;
d. 層を分離し、DCM(8.2vol.)で抽出し;
e. Ti=50℃にて蒸留により溶媒を除き、アセトン(8.7vol.)を添加し、最終的に7.0vol.が残るまでTi=50℃にて蒸留により溶媒をさらに除き;
f. Ti=50℃にてアセトン(18.5vol.)を添加し;
g. 30min以内にTi=50℃にて水(0.5vol.)を添加し、Ti=56℃にて3.5h撹拌し;
h. 2h以内に20~30℃に冷却し、20~30℃にて1.5h撹拌し;そして、
i. 得られた固体残渣を単離する;
ことにより得ることができる、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-
ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(「化合物HCl」)の結晶形、例えば本質的に純粋な結晶形に関する。
【0028】
17) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°及び15.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様16)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0029】
18) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、11.7°、15.3°及び19.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様16)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0030】
19) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、5.0°、5.9°、11.7°、15.3°、16.9°、19.3°、19.7°及び20.7°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様16)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0031】
20) 別の態様は、
図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様16)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0032】
21) 別の態様は、態様16)の方法により得ることができる、態様4)~7)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0033】
22) 別の態様は、
a) 態様4)~7)のいずれか1つに従う結晶形の「化合物HCl」の試料を、RH>90%で約RTにて平衡化し;そして、
b) 得られた試料を約RH=40%で約RTにて平衡化する;
ことにより得ることができる、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩「化合物HCl」の結晶形、例えば本質的に純粋な結晶形に関する。
【0034】
特に、最初の平衡化工程は約3日を要し、2番目の平衡化工程は約1日を要する。
【0035】
23) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°及び10.3°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様22)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0036】
24) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、10.3°、10.8°及び15.4°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様22)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0037】
25) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.2°、6.8°、8.0°、10.3°、10.8°、12.7°、15.4°、16.2°、20.3°及び21.7°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様22)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0038】
26) 別の態様は、
図2に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様22)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0039】
27) 別の態様は、態様22)の方法により得ることができる、態様8)~11)の
いずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0040】
28) 別の態様は、
a) 態様8)~11)のいずれか1つに従う結晶形の「化合物HCl」の試料を、乾燥窒素気流中で約RTにて平衡化し;そして、
b) 得られた試料を約RH=40%で約RTにて平衡化する;
ことにより得ることができる、4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(「化合物HCl」)の結晶形、例えば本質的に純粋な結晶形に関する。
【0041】
特に、最初の平衡化工程は約400mL/minの気流において100mgの試料について約1日を要し、2番目の平衡化工程は約1日を要する。
【0042】
29) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、11.0°及び16.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様28)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0043】
30) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°及び16.6°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様28)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0044】
31) 別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:5.5°、7.2°、11.0°、11.5°、14.4°、16.6°、18.1°、21.1°及び22.0°におけるピークの存在により特徴づけられる、態様28)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0045】
32) 別の態様は、
図3に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、態様28)に従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0046】
33) 別の態様は、態様28)の方法により得ることができる、態様12)~15)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0047】
34) 別の態様は、
図4に示す重量測定吸湿プロファイル(gravimetric
moisture sorption profile)(吸着サイクル)を本質的に示し、上記重量測定吸湿プロファイルは25℃にて測定される、態様4)~7)又は16)~21)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0048】
35) 別の態様は、
図5に示す重量測定吸湿プロファイル(脱着サイクル)を本質的に示し、上記重量測定吸湿プロファイルは25℃にて測定される、態様8)~11)又は22)~27)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0049】
36) 別の態様は、
図6に示す重量測定吸湿プロファイル(吸着サイクル)を本質的に示し、上記重量測定吸湿プロファイルは25℃にて測定される、態様12)~15)又は28)~33)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0050】
37) 態様1)~7)のいずれか1つに従う結晶形の「化合物HCl」の製造方法であって、下記の工程を有する方法:
a. 「化合物HCl」と非極性溶媒(0.5~3.0vol.;「化合物HCl」1kg当たり0.5~3.0L)を含む溶液にアセトン(10~30vol.)を45~60
℃にて添加し、上記非極性溶媒が(C1-2)クロロアルカンから選択される工程;
b. 水(0.3~0.7vol.)を45~60℃にて添加する工程;
c. 上記混合物を、45~60℃の温度から30℃又はそれ未満の温度まで冷却しながら、少なくとも1h撹拌する工程;及び、
d. 得られた結晶物質を単離する工程。
【0051】
38) 工程a.において添加するアセトンの量が約20vol.である、態様37)に従う方法。
【0052】
39) 工程a.における非極性溶媒の量が1.0~2.0vol.であり、上記非極性溶媒がジクロロメタンである、態様37)又は38)のいずれか1つに従う方法。
【0053】
40) 工程b.において添加する水の量が0.4~0.6vol.(特に0.5vol.)である、態様37)~39)のいずれか1つに従う方法。
【0054】
41) 工程c.において上記混合物を45℃~60℃の温度にて1hから4hの間撹拌し、次いで、1hから2hの間に20℃から30℃の間の温度(特に25℃)に冷却する、態様37)~40)のいずれか1つに従う方法。
【0055】
42) 工程d.における上記単離をろ過により行う、態様37)~41)のいずれか1つに従う方法。
【0056】
43) 工程a.において使用する「化合物HCl」と非極性溶媒を含む上記溶液を、下記の工程を有する方法により得る、態様37)~42)のいずれか1つに従う方法:
a. アミドカップリング剤の存在下、(S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボン酸又はその塩(特に、そのナトリウム塩)を、ブチル (R)-4-(2-アミノ-3-(ジエトキシホスホリル)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレートとカップリングする工程;
b. (C1-2)クロロアルカン(特にジクロロメタン);及び
水又は無機塩の水溶液(特に、炭酸水素ナトリウム水溶液);
を含む溶媒混合物で抽出する工程;
c. 塩酸(aqueous hydrochloric acid)を添加し、混合物を撹拌する工程;
d. (C1-2)クロロアルカン(特にジクロロメタン);及び
水又は無機塩の水溶液(特に水);
を含む溶媒混合物で抽出する工程;及び、
e. (C1-2)クロロアルカンの量が「化合物HCl」1kg当たり0.5~3.0L(特に、1kg当たり1.0~2.0L)になるまで溶媒を除く工程。
【0057】
従って、上記部分で開示した種々の態様1)~43)の従属関係に基づいて、下記の態様が可能であり、意図されており、そして個々の形態としてここに具体的に開示される:
1、2+1、3+1、4+1、5+1、6+1、7+1、8+1、9+1、10+1、11+1、12+1、13+1、14+1、15+1、16、17+16、18+16、19+16、20+16、21+4+1、21+5+1、21+6+1、21+7+1、22、23+22、24+22、25+22、26+22、27+8+1、27+9+1、27+10+1、27+11+1、28、29+28、30+28、31+28、32+28、33+12+1、33+13+1、33+14+1、33+15+1、34+4+1、34+5+1、34+6+1、34+7+1、34+16、34+17+16、34+18+16、34+19+16、34+20+16、34+21+4+1、34+21+5+1、34+21+6+1、34+21+7+1、35+8+1、35+9+1、
35+10+1、35+11+1、35+22、35+23+22、35+24+22、35+25+22、35+26+22、35+27+8+1、35+27+9+1、35+27+10+1、35+27+11+1、36+12+1、36+13+1、36+14+1、36+15+1、36+28、36+29+28、36+30+28、36+31+28、36+32+28、36+33+12+1、36+33+13+1、36+33+14+1、36+33+15+1、37、38+37、39+37、39+38+37、40+37、40+38+37、40+39+37、40+39+38+37、41+37、41+38+37、41+39+37、41+39+38+37、41+40+37、41+40+38+37、41+40+39+37、41+40+39+38+37、42+37、42+38+37、42+39+37、42+39+38+37、42+40+37、42+40+38+37、42+40+39+37、42+40+39+38+37、42+41+37、42+41+38+37、42+41+39+37、42+41+39+38+37、42+41+40+37、42+41+40+38+37、42+41+40+39+37、42+41+40+39+38+37、43+37、43+38+37、43+39+37、43+39+38+37、43+40+37、43+40+38+37、43+40+39+37、43+40+39+38+37、43+41+37、43+41+38+37、43+41+39+37、43+41+39+38+37、43+41+40+37、43+41+40+38+37、43+41+40+39+37、43+41+40+39+38+37、43+42+37、43+42+38+37、43+42+39+37、43+42+39+38+37、43+42+40+37、43+42+40+38+37、43+42+40+39+37、43+42+40+39+38+37、43+42+41+37、43+42+41+38+37、43+42+41+39+37、43+42+41+39+38+37、43+42+41+40+37、43+42+41+40+38+37、43+42+41+40+ 39+37、43+42+41+40+39+38+37;
上記のリスト中、数字は上記の番号に応じた態様を意味し、「+」は他の態様への従属関係を表す。種々の態様は読点により個々に分けられている。換言すると、例えば「21+4+1」は、態様21)であって、態様4)に従属し、態様1)に従属することを意味し、すなわち、態様「21+4+1」は、態様4)及び21)の特徴によりさらに限定された態様1)に相当する。
【0058】
いかなる疑義をも避けるために、上記態様の1つが、「粉末X線回折ダイアグラムにおける、以下の屈折角2θにおけるピーク」に言及する場合は常に、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Ka2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射(combined Cu Ka1 and Ka2 radiation)を用いて得られたものであり;そして本明細書で提供される2θ値の精度は+/-0.1~0.2°の範囲内であることが理解されるべきである。特に、本発明の態様及び請求項中でピークに対する屈折角2シータ(2θ)を特定する場合、記載された当該2θ値は、当該値-0.2°から当該値+0.2°(2θ+/-0.2°)の間;そして好ましくは当該値-0.1°から当該値+0.1°(2θ+/-0.1°)の間と理解されるべきである。
【0059】
化合物、固体、医薬組成物、疾患等について複数形が使用される場合は、単数の化合物、固体、医薬組成物、疾患等をも意味することが意図されている。
【0060】
ここに記載される定義は、態様1)~43)のいずれか1つに定義されるような主題に対して一律に適用されることが意図されており、特段の定義によってより広い又はより狭い定義が与えられない限り本明細書及び請求項を通じて準用される。当然ながら、ある用語又は表現の定義又は好ましい定義が、ここに定義されるいずれか又は他のすべての用語又は表現のいずれか又は好ましい定義におけるそれぞれの用語又は表現を、独立して(及びそれらと共に)定義し置き換えるものであってよい。
【0061】
「(C1-2)クロロアルカン」という用語は、1又は2個以上の(場合によってはすべての)水素原子が塩素で置換された、1又は2個の炭素原子を有するアルカン基を意味する。例えば、(C1-2)クロロアルカン基は、1又は2個の炭素原子を有し、1~6個の(特に2個の)水素原子が塩素で置換されている。(C1-2)クロロアルカン基の好ましい例は、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタン(特にジクロロメタン)である。
【0062】
「アミドカップリング剤」という用語は、カルボン酸の-COOH基とアミンの-NH2基との間の化学結合(アミド結合)の形成を促進する化合物を意味する。アミドカップリング剤の代表的な例は、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール又はN-ヒドロキシスクシンイミド等の添加剤の存在下又は非存在下における(ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド等の)カルボジイミド;(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウム ヘキサフルオロ-ホスフェート又はベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート等の)ホスホニウム試薬;(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウム テトラ-フルオロボレート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウム ヘキサフルオロホスフェート又は2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウム ヘキサフルオロホスフェート等の)アミニウム試薬;又は2-プロパンホスホン酸無水物であり;好ましくは、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾールの存在下における1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。
【0063】
「エナンチオマーが富化された」という用語は、本発明の文脈において、特に、「化合物」の(又は「化合物HCl」の)少なくとも90、好ましくは少なくとも95、そして最も好ましくは少なくとも99重量パーセントが、「化合物」の(又は「化合物HCl」の)一方のエナンチオマーの形態で存在することを意味するものと理解される。「化合物」(又は「化合物HCl」)に対するいかなる言及も、エナンチオマーが富化された又は純粋な形態の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸(又は、そのHCl塩)を意味するものと理解される。
【0064】
「本質的に純粋な」という用語は、本発明の文脈において、特に、「化合物HCl」の結晶の少なくとも90、好ましくは少なくとも95、そして最も好ましくは少なくとも99重量パーセントが、本発明の結晶形で存在することを意味するものと理解される。
【0065】
例えば、粉末X線回折ダイアグラムにおけるピークの存在を定義する場合、通常の方法は、S/N比(S=シグナル、N=ノイズ)の点からこれを行うことである。この定義に従えば、粉末X線回折ダイアグラムにピークが存在しなければならないと述べる場合、粉末X線回折ダイアグラムのピークは、x(xは1より大きい数値である。)より大きい、通常は2より大きい、特に3より大きいS/N比(S=シグナル、N=ノイズ)を持つことにより定義されるものと理解されるべきである。
【0066】
結晶形が、それぞれ
図1、2又は3に表される粉末X線回折パターンを本質的に示す、という記載の文脈において、「本質的に」という用語は、少なくとも当該図に表されるダイアグラムの主要なピーク、すなわち、ダイアグラムにおいて最も強いピークと比べ、20%を超える、特に10%を超える相対強度を有するピークが存在しなければならないこ
とを意味する。しかしながら、粉末X線回折の当業者は、粉末X線回折ダイアグラムの相対強度が、好ましい配向効果に起因する強い強度変動に付され得ることを認識しているはずである。
【0067】
「「化合物HCl」の試料の平衡化」の文脈で使用される「平衡化」という用語は、平衡化時間の間、具体的に記載された相対湿度、具体的に記載された気流及び/又は具体的に記載された温度等の特定の条件下に試料を保つ工程を意味し、「平衡化時間」という用語は、試料中の含水量が本質的に一定になるのに必要な時間を意味する。具体的に記載された条件下に試料を24h保った場合に、含水量の変化が5%未満であれば、含水量は「本質的に一定」である。
【0068】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-10%XからX+10%Xの間、好ましくはX-5%XからX+5%Xの間を表し;最も好ましくはXである。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」の用語は、この出願において、Y-10℃からY+10℃にわたる間、好ましくはY-3℃からY+3℃にわたる間を表し;最も好ましくはYである。室温は、約25℃の温度を意味する。
【0069】
数値範囲を記述するために「間」又は「から(~)」の語が使用される場合は常に、示された範囲の末端の点は明示的にその範囲に含まれると解される。これは、例えば、温度範囲が40℃から80℃の間(又は40℃から(~)80℃)であると記述される場合、末端の点である40℃と80℃はその範囲に含まれることを意味し、あるいは、可変数が1から4の間(又は1から(~)4)の整数であると定義される場合、可変数は整数の1、2、3又は4であることを意味する。
【0070】
4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(又は、「化合物HCl」)は、「化合物」1モル当量当たり約1モル当量のHCl、特に「化合物」1モル当量当たり0.98~1.02モル当量のHCl、そしてとりわけ、「化合物」1モル当量当たり1.00モル当量のHClを含む、「化合物」の塩酸塩を意味するものと理解される。
【0071】
%w/wという表現は、考慮している組成物の総重量に対する重量百分率を意味する。同様に、v/vという表現は、考慮している2つの成分の体積比を意味する。
【0072】
態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形、特に本質的に純粋な結晶形は、医薬として、例えば、(特に経口等の)経腸又は(局所的適用又は吸入を含む)非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
【0073】
44) 従って、別の態様は、医薬として使用するための、態様1)~36)のいずれか1つに従う4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩の結晶形に関する。
【0074】
45) 別の態様は、「化合物」又はその薬学的に許容される塩が、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる、医薬として使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0075】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象化合物の所望の生物活性を保持し、かつ最小の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。そのような塩としては、対象化合物中
の塩基性基及び/又は酸性基の存在に応じた、無機又は有機の酸及び/又は塩基付加塩が挙げられる。参考としては、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties、Selection and Use.」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(Eds.)、Wiley-VCH、2008;及び「Pharmaceutical Salts and Co-crystals」、Johan Wouters and Luc
Quere(Eds.)、RSC Publishing、2012を参照されたい。
【0076】
態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶固体、特に本質的に純粋な結晶固体は、単一成分として、又は「化合物HCl」の他の結晶形若しくは非晶質形との混合物として使用してもよい。
【0077】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者にもよく知られた方法で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[published by Lippincott Williams & Wilkins]を見よ。)、本発明の結晶形を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。
【0078】
46) 本発明のさらなる態様は、活性成分としての態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を含む医薬組成物に関する。
【0079】
47) 本発明のさらなる態様は、活性成分としての「化合物」又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を含む医薬組成物に関し、「化合物」又はその薬学的に許容される塩は、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる。
【0080】
48) 本発明のさらなる態様は、医薬組成物の製造における使用のための、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関し、当該医薬組成物は、活性成分としての「化合物HCl」及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を含む。
【0081】
49) 本発明のさらなる態様は、医薬組成物の製造における使用のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩に関し、当該医薬組成物は、活性成分としての「化合物」又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体材料を含み、「化合物」は、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる。
【0082】
50) 本発明のさらなる態様は、急性動脈血栓症からなる群より選択される疾患の予防(prevention/prophylaxis)又は治療において使用するための態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0083】
51) 本発明の好ましい態様は、急性冠症候群、末梢性虚血、黒内障、虚血性(脳)卒中(ischaemic stroke)及び一過性虚血発作からなる群より選択される疾患の予防又は治療において使用するための態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0084】
52) 本発明の最も好ましい態様は、急性冠症候群の予防又は治療において使用するための態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0085】
53) 本発明のさらなる態様は、態様50)~52)のいずれか1つに従う疾患から選択される疾患の予防又は治療において使用するための「化合物」又はその薬学的に許容される塩に関し、「化合物」又はその薬学的に許容される塩は、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる。
【0086】
54) 本発明のさらなる態様は、急性動脈血栓症からなる群より選択される疾患の予防又は治療のための医薬組成物の製造において使用するための、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0087】
55) 本発明の好ましい態様は、急性冠症候群、末梢性虚血、黒内障、虚血性(脳)卒中及び一過性虚血発作からなる群より選択される疾患の予防又は治療のための医薬組成物の製造において使用するための、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0088】
56) 本発明の最も好ましい態様は、急性冠症候群の予防又は治療のための医薬組成物の製造において使用するための、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形に関する。
【0089】
57) 本発明のさらなる態様は、態様54)~56)のいずれか1つに従う疾患から選択される疾患の予防又は治療のための医薬組成物の製造において使用するための「化合物」又はその薬学的に許容される塩に関し、「化合物」又はその薬学的に許容される塩は、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる。
【0090】
58) 本発明のさらなる態様は、急性動脈血栓症からなる群より選択される疾患の予防又は治療において使用するための、態様46)に従う医薬組成物に関する。
【0091】
59) 本発明の好ましい態様は、急性冠症候群、末梢性虚血、黒内障、虚血性(脳)卒中及び一過性虚血発作からなる群より選択される疾患の予防又は治療において使用するための、態様46)に従う医薬組成物に関する。
【0092】
60) 本発明の最も好ましい態様は、急性冠症候群の予防又は治療において使用するための、態様46)に従う医薬組成物に関する。
【0093】
61) 本発明のさらなる態様は、態様58)~60)のいずれか1つに従う疾患から選択される疾患の予防又は治療において使用するための、態様47)に従う医薬組成物に関する。
【0094】
本発明はまた、薬学的に活性な量の態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形又は態様46)に従う医薬組成物を対象に投与することを有する、本明細書において言及する疾患又は障害の予防又は治療方法にも関する。
【0095】
本発明はまた、薬学的に活性な量の、「化合物」若しくはその薬学的に許容される塩であって、態様1)~36)のいずれか1つに従う「化合物HCl」の結晶形から得られる上記「化合物」若しくはその薬学的に許容される塩、又は、態様47)に従う医薬組成物を対象に投与することを有する、本明細書において言及する疾患又は障害の予防又は治療方法にも関する。
【実施例】
【0096】
実験手順
(前記の部分及びこの項において使用される)略語:
AP 水層
aq. 水溶液
Bu ブチル、例えばn-Bu=n-ブチル
conc. 濃縮した
DCM ジクロロメタン
EDCl 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
eq 当量
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Fig 図
h 時間
1H-NMR プロトン核磁気共鳴
HOBt 1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール一水和物
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPC インプロセス制御
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
mW ミリワット
min 分
MS 質量分析
N 規定度
NMR 核磁気共鳴
prep. 分取用
RH 相対湿度
RT 室温
sat. 飽和
sec 秒
Te 外部温度
Ti 内部温度
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
tR 保持時間
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
UV 紫外線
vol. 出発物質1kg当たりの溶媒(L)
XRPD 粉末X線回折
全ての溶媒及び試薬は、特に断らない限り、商業的供給元から得られたままで使用される。
【0097】
温度は、摂氏温度(℃)で示す。特に断らない限り、反応は、室温(RT)で行われる。
【0098】
混合物において、溶媒若しくは溶出液又は液体形態の試薬混合物の割合の関係は、特に断らない限り、体積関係で示す(v/v)。
【0099】
本発明に記載した化合物は、UPLC及びキラルHPLCで特徴付ける(保持時間tRは以下に記載した条件を用いてmin.で示す。)。
【0100】
以下の実施例で使用される分析UPLC条件:
UPLC分析は下記の溶出条件を用いて行う:
YMC Triart ExRS(Part.No.TAR08S03-1003PTH)カラム(100mmx3.0mm、3μm)での分析UPLC;20mM酢酸アンモニウム+10mM NH4PF6緩衝液/アセトニトリル 95/5(A)とアセトニトリル/酢酸アンモニウム10mM(B)の19minにわたる8%から100%Bへの勾配;流速0.5ml/min、210nmにおける検出。
【0101】
キラル固定相での分析HPLCはChiralpak AD-H(4.6x250mm、5mm)カラム上で行う。キラルHPLCの典型的な条件は、247nmで検出を行う、0.8mL/minの流速における40℃でのヘキサン/エタノール/TFA(80:20:0.1 v/v/v)の無勾配混合物である。
【0102】
粉末X線回折分析(XRPD)
粉末X線回折パターンは、反射モード(結合2シータ/シータ)においてCuKα-照射で作動するLynxeye検出器を備えたBruker D8 AdvanceX線回折計上で収集した。典型的には、X-線チューブを40kV/40mAで走査させた。3~50°の2θの走査範囲にわたって、0.02°(2θ)のステップサイズ及び76.8秒のステップタイムを適用した。発散スリットは固定的に0.3に設定した。粉末を、0.5mmの深さのシリコン単結晶サンプルホルダー内にわずかにプレスし、そして測定の間、サンプルをそれ自体のプレイン中で回転させた。回折データはKa2除去を適用することなくレポートされる。これまでに記録された粉末X線回折パターンが一般的にそうであるように、本明細書で提供される2θ値の精度は、+/-0.1~0.2°の範囲内である。
【0103】
重量測定蒸気吸着(GVS)分析
測定は、25℃においてステッピングモードで作動するIGASORP Model HAS-036-080吸湿装置(moisture sorption instrument)(Hiden Isochema、ウォリントン、UK)で行った。5%のDRHステップで、ステップ毎の最大平衡化時間が24時間である、予め既定された湿度プログラムを開始する前に、試料を開始相対湿度(RH)で平衡化した。各試料を約20~30mg使用した。
【0104】
I-化学
(S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボン酸、ブチル (R)-4-(2-アミノ-3-(ジエトキシホスホリル)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレート及び4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル(「化合物」)は、WO2009/069100(実施例2)又はCaroff Eら、J.Med.Chem.2015;58:9133-9153に記載の手順に従って製造することができる。
【0105】
(S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボン酸は、水酸化ナトリウム水溶液の存在下、ナトリウム (S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキシレートに変換す
ることができる。
【0106】
II. 「化合物HCl」の結晶形の製造
実施例1A: 結晶形1の「化合物HCl」の製造及び特性分析
15Lリアクターに、(S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキシレート(584g、1.82mol)及び1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール一水和物(HOBt)(274g、1.1eq.)を仕込んだ。水(1305mL、2.0vol.)を添加した。懸濁液のpHは5-6であった。ブチル
(R)-4-(2-アミノ-3-(ジエトキシホスホリル)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレート(665.7g、1.0eq)をテトラヒドロフラン(THF)(1960ml、3.0vol.)中に溶解した。この溶液を、5~10minの間に20~30℃にて反応液に添加した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)(389g、1.2eq.)を水(1305ml、2.0vol.)中に溶解したものを、15~30minの間に20~30℃にて反応液に添加した。溶液のpHは6~7の間に保たれていた。反応液を20~30℃にて4h撹拌した。IPCは93%の変換を示した。反応液を、ジクロロメタン(DCM)(3265ml、5.0vol.)及び1/2飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3265ml、5.0vol.)で希釈した。層を分離した。有機層を1/2飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3265ml、5.0vol.)で再び洗浄した。層を分離した。IPCは、HOBtが完全に除かれたことを示した。有機層をaq.10%クエン酸(3265ml、5.0vol.)で洗浄した。最低800mbar及びTe=75~80℃にて、40minの間に合計で3.75Lの溶媒を溜去した。残った溶液を20~30℃に冷却した。Aq.32%HCl(3L、19eq.)を、5~10minの間に20~30℃にて反応液に添加した。4hの撹拌の後、IPCは加水分解が完了したことを示した。水(5.2L、8vol.)を20~30℃にて添加した。反応液をDCM(5.2L、8vol.)で希釈した。層を分離した。水層を再びDCMで2回抽出した(2x5.2L、8vol.)。すべてのDCM層を合わせ、polycap75HDフィルターを通してろ過した。大気圧及びTe=75~80℃にて、2hの間に合計で14Lの溶媒を溜去した。アセトン(21.6L、33vol.)を、Te=70~75℃にて、反応混合物に還流下にて添加した。微細懸濁液に還流下、水(325ml、0.5vol.)を添加した。薄色の微細懸濁液を還流下1.5h撹拌し、濃白色のスラリーを得た。スラリーを1hの間にTi=25℃に冷却した(徐々に)。固体生成物をろ過により単離した。フィルターケークをアセトン(4.5L、7vol.)でリンスし、窒素を通気させることにより乾燥して、750g(69%)の4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩を白色の固体として得た。
【0107】
【0108】
実施例1B: 結晶形1の「化合物HCl」の製造及び特性分析
エナメル被覆リアクターに、水(10.5L;1.6vol.)、ナトリウム (S)-6-(3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキシレート(6.06kg;18.87mol、1.12eq)及び1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール一水和物(HOBt)(2.71kg;17.70mol;1.08eq.)を仕込んだ。得られた白色の懸濁液を21℃にて60min撹拌した。ブチル (R)-4-(2-アミノ-3-(ジエトキシホスホリル)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレート(6.47kg、16.45mol、1.0eq.)をTHF(41kg、46.6L、7.2vol.)中に溶解した黄色の溶液を、インラインフィルターを介して撹拌タンクに移した。20℃にて12min以内にこの溶液を上記リアクター内に添加した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)(4.00kg;20.8mol;1.26eq.)を水(13.5L;2.1vol.)中に溶解した溶液を、20℃にて13min以内に添加した。反応液を20℃にて64h撹拌した。20℃にて、aq.3.7%NaHCO3(32L;5.0vol.)、次いでジクロロメタン(DCM)(32L;5.0vol.)を上記リアクターに添加した。混合物を20℃にて10分間撹拌した。層分離後の水層(AP)のpHは8~9であった。上記APをDCM(16L;2.5vol.)で再び抽出した。有機層を合わせたものをリアクター(総体積=94L)内に仕込み、aq.3.7%NaHCO3(32L;5.0vol.)で洗浄した。層分離後のpHは10であった。得られた有機層をaq.10%クエン酸(32L;5.0vol.)で洗浄した。ブチル 4-((R)-3-(ジエトキシホスホリル)-2-(6-((S)-3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキサミド)プロパノイル)ピペラジン-1-カルボキシレートの黄色の溶液を、55℃にて、585mbarを下らない圧で濃縮して、最終体積を5.5vol.とした。52Lの溶媒を5h以内に除いた。
【0109】
濃縮した有機溶液をaq.33%HCl(33L;5.1vol.)で処理した。反応混合物を20~30℃にて12h撹拌した。IPCは、遊離ホスホネートへの変換が完了したことを示した。20~30℃にて、水(53L;8.2vol.)、次いでDCM(53L;8.2vol.)を上記リアクター内に添加した。層を分離した。水層をDCM(53L;8.2vol.)で2回抽出した。有機層を合わせ、Ti=50℃にて、900mbarを下らない圧で濃縮した。76Lの溶媒を除いた。蒸留を中断することなく、アセトン(56L;8.7vol.)を除いた。最終的に量が7vol.になるまで蒸留
をTi=50℃にて継続した。圧は500mbarを下まわらなかった。上記濃縮溶液をアセトン(120L;18.5vol.)で希釈した。上記濃縮溶液をTi=50℃にて撹拌した。白色の懸濁液が生成した。30分以内に上記白色の懸濁液を水(3.4L;0.5vol.)で希釈し、Ti=56℃にて3.5h撹拌した。懸濁液を2h以内に20~30℃に冷却し、この温度にて1.5h撹拌した。濃厚な白色の懸濁液をろ過した。フィルターケークをアセトンで2回洗浄し(2x24L;3.7vol.)、フィルター上で乾燥して、7.67kgの((R)-3-(4-(ブトキシカルボニル)ピペラジン-1-イル)-2-(6-((S)-3-メトキシピロリジン-1-イル)-2-フェニルピリミジン-4-カルボキサミド)-3-オキソプロピル)ホスホン酸塩酸塩を得た。
【0110】
【0111】
実施例2: 結晶形2の「化合物HCl」の製造及び特性分析
実施例1Aに記載の方法により得られた結晶形1の「化合物HCl」(100mg)を、>90%の相対湿度及び室温で3日間平衡化した。次いで、試料を40%RH及び室温で1日平衡化して、結晶形2の「化合物HCl」を得た。
【0112】
【0113】
実施例3A: 結晶形3の「化合物HCl」の製造及び特性分析
実施例2に記載の方法により得られた結晶形2の「化合物HCl」(100mg)を、乾燥窒素気流(400mL/min)内で室温にて1日平衡化した。次いで、試料を40%RH及び室温で1日平衡化して、結晶形3の「化合物HCl」を得た。
【0114】
【0115】
実施例3B: 再結晶化による結晶形3の「化合物HCl」の製造及び特性分析
エナメル被覆リアクターアセトン(20L)でリンスした。4-((R)-2-{[6-((S)-3-メトキシ-ピロリジン-1-イル)-2-フェニル-ピリミジン-4-カルボニル]-アミノ}-3-ホスホノ-プロピオニル)-ピペラジン-1-カルボン酸ブチルエステル塩酸塩(1.70kg)、水(1.28L、0.75vol.)及びアセトン(8.5L、5vol.)を仕込み、混合物をTi=40℃に34min加熱した。アセトン(17L、10vol.)をさらに47minにわたって添加した。混合物をTi=40℃にて37minさらに撹拌し、67minにわたってTi=20℃に冷却した。Ti=20℃にて、2h後、懸濁液を2hにわたってゆっくりとろ過し、結晶質の固体をアセトンで2回洗浄した(2x10L、5.9vol.)。サクションフィルタ上で長時間乾燥することにより、結晶形3の「化合物HCl」を得た。
【0116】