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特許7097398ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのアデノ随伴ウイルスベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのアデノ随伴ウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220630BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220630BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20220630BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20220630BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220630BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K35/76
A61P27/06
A61K38/17
A61K31/713
C12N15/113 Z
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020036344
(22)【出願日】2020-03-04
(62)【分割の表示】P 2017534525の分割
【原出願日】2015-09-16
(65)【公開番号】P2020105194
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】62/051,299
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ペカン
(72)【発明者】
【氏名】エイブラハム・スケーリア
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・アーディンジャー
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6673923(JP,B2)
【文献】Mol. Ther., (2011), 19, [Suppl.1], p.S255(664)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
A61K 48/00
A61K 35/76
A61P 27/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのキットであって、該キットは、哺乳動物の眼の線維柱帯網に核酸を送達するための医薬組成物を含み、該医薬組成物は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)2粒子を含み、該AAV2粒子はrAAVベクターを含み、該rAAVベクターは該核酸を含み、該核酸は、治療用導入遺伝子をコードし、該治療用導入遺伝子は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記キット。
【請求項2】
(i)使用説明書;および/または(ii)緩衝剤および/または医薬的に許容される賦形剤をさらに含む請求項1に記載のキット。
【請求項3】
rAAV粒子は、眼の線維柱帯網の細胞に形質導入する、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
治療用導入遺伝子は、眼の線維柱帯網において発現される、請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
哺乳動物はヒトである、請求項1~4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
医薬組成物は、硝子体内投与用および/または前房内投与用である、請求項1~5のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年9月16日に出願した米国仮出願第62/051,299号の優先権の利益を主張するものであり、前記仮出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている:コンピュータ読み取り可能な形式(CRF)の配列表(ファイル名:159792012540SeqList.txt、記録日:2015年9月15日、サイズ:31KB)。
【0003】
本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのAAVベクターおよびAAVベクターの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ミオシリン(MYOC)突然変異は、原発開放隅角緑内障(POAG;米国患者数約90,000)の約2%~4%についての主原因である。詳細には、緑内障性MYOC突然変異P370LまたはY437Hは、若年性のPOAG(JOAG;米国患者数約6,000)の10%~30%についての主原因であり、眼圧(IOP)上昇、網膜神経節細胞死、および視神経乳頭(ONH)損傷に関連している(特許文献1;特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Shimizuら(2000)Am.J.Ophthalmol.130:165~77頁
【文献】FanおよびWiggs(2010)J.Clin.Invest.120:3064~72頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MYOC突然変異と緑内障とのこの関連性にもかかわらず、眼の機能に対するMYOC突然変異体の効果は依然として不明である。したがって、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための新規治療戦略を見いだすために、MYOCおよび突然変異型MYOCの機能をさらに理解する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、該哺乳動物の眼におけるWntシグナル伝達を増加させる薬剤を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼の線維柱帯網(TM)細胞におけるWntシグナル伝達を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼におけるR-スポンジン1(RSPO1)、R-スポンジン2(RSPO2)、R-スポンジン3(RSPO3)、および/またはR-スポンジン4(RSPO4)活性を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼における1つまたはそれ以上のRSPO活性を増加させる1つまたはそれ以上のさらなる薬剤と併用される。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRS
PO1を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO1またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO1またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO1は、短縮型RSPO1である。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO2を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO2またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO2またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO2は、短縮型RSPO2である。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO3を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO3またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO3またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO3は、短縮型RSPO3である。いくつかの実施形態において、薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO4を増加させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO4またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、薬剤は、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO4は、短縮型RSPO4である。
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼におけるWntシグナル伝達を増加させる第2の薬剤の投与を提供する。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTMにおけるWntシグナル伝達を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼におけるミオシリン(MYOC)の発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTMにおけるミオシリン(MYOC)の発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、MYOCの発現を標的とする阻害性核酸をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、阻害性核酸は、MYOCの発現を標的とするMYOC RNAiである。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、MYOCの発現を標的とするMYOC shRNAである。
【0009】
いくつかの態様において、本発明の薬剤は、哺乳動物の眼におけるミオシリン(MYOC)の発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、哺乳動物の眼のTMにおけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、MYOCの発現を標的とする阻害性核酸をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、阻害性核酸は、MYOCの発現を標的とするMYOC RNAiである。さらなる実施形態において、MYOC RNAiは、MYOCの発現を標的とするMYOC shRNAである。
【0010】
本発明のいくつかの態様において、前記方法は、哺乳動物の眼におけるWntシグナル伝達を増加させる第2の薬剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTMにおけるWntシグナル伝達を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼におけるR-スポンジン1(RSPO1)、R-スポンジン2(RSPO2)、R-スポンジン3(RSPO3)またはR-スポンジン4(RSPO4)活性を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO1を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO1またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO1またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO1は、短縮型RSPO1である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO2を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、R
SPO2またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO2またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO2は、短縮型RSPO2である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO3を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO3またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO3またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO3は、短縮型RSPO3である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、哺乳動物の眼のTM内のRSPO4を増加させる。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO4またはその機能的変異体である。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子である。いくつかの実施形態において、RSPO4は、短縮型RSPO4である。
【0011】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、該哺乳動物の眼におけるWntシグナル伝達を増加させる薬剤と該哺乳動物におけるミオシリンの発現を低減または阻害する薬剤とを該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子と該哺乳動物におけるミオシリンの発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含むrAAV粒子とを該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。さらに他の態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードし、かつ該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC shRNA)の発現を標的とするMYOC shRNAをコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、RNAiは、MYOCを標的とするshRNAである。いくつかの実施形態において、shRNAは、MYOCの発現を低減または阻害する。
【0012】
いくつかの態様において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とする阻害性核酸をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本
発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子と該哺乳動物におけるミオシリンの発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含むrAAV)粒子とを該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体をコードし、かつ該哺乳動物におけるミオシリンの発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、眼障害は、ミオシリン(MYOC)緑内障である。
【0013】
いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。本発明のいくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、ミオシリンの突然変異を伴う。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、ヒトミオシリンの突然変異を伴う。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、E323K、K398R、Q368X、G364V、P370L、D380A、K423E、Y437HおよびI477Sから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、P370Lアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、Y437Hアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、原発開放隅角緑内障(POAC)である。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、若年性の原発開放隅角緑内障(JOAC)である。本発明のいくつかの実施形態において、処置は、ミオシリン(MYOC)緑内障の症状を軽減する。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障の症状の軽減は、眼圧の低下、MYOCの線維柱帯網内蓄積の低減、高眼圧の低下、または線維柱帯網からの房水流出の増加である。
【0014】
いくつかの実施形態において、RSPO1は、ヒトRSPO1である。いくつかの実施形態において、RSPO1は、ヒトRSPO1に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号8に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号11に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号12に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO2は、ヒトRSPO2である。いくつかの実施形態において、RSPO2は、ヒトRSPO2に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号9に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号13に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RS
PO2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号14に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3は、ヒトRSPO3である。いくつかの実施形態において、RSPO3は、ヒトRSPO3に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号1に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号15に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号17に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4は、ヒトRSPO4である。いくつかの実施形態において、RSPO4は、ヒトRSPO4に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号10に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号18に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号12に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、および/またはその機能的変異体は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、および/またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、および/またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明のMYOCの発現を標的とするMYOC RNAiは、ヒトMYOCを標的とする。いくつかの実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)である。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、MYOC shRNAである。いくつかの実施形態において、shRNAは、配列番号6に記載のMYOCのアミノ酸配列を標的とする。いくつかの実施形態において、shRNAは、配列番号7のループ配列を含む。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることができる。さらなる実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることがで
きる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)の発現は、哺乳動物の眼におけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)の発現は、哺乳動物の線維柱帯網の細胞におけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOCは、野生型MYOCである。いくつかの実施形態において、MYOCは、突然変異型MYOCである。いくつかの実施形態において、MYOCは、野生型MYOCおよび突然変異型MYOCである。さらなる実施形態において、突然変異型MYOCは、ヒトMYOCのP370Lおよび/またはY437Hアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、E323K、K398R、Q368X、G364V、P370L、D380A、K423E、Y437HおよびI477Sから選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。
【0016】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2012/0164106号に記載されているような変異型AAV6カプシド、例えばShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2013/0323226号に記載されているような修飾AAV9カプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド突然変異体、ヘパリン結合カプシド突然変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開2012/0066783号に記載されている他の任意のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開番号WO/2003/042397に記載されているAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585またはR588位のうちの1カ所またはそれ以上におけるアミノ酸置換を含むAAVカプシドを含む。さらなる実施形態において、AAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV血清型2カプシドを含む。さらなる実施形態において、AAV血清型2カプシドは、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型逆位末端反復配列(ITR)を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV血清型2 ITRを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびカプシドを含む。他の実施形態において、AAVウイルス粒子は、rAAVウイルス粒子のカプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2カプシドを含み、この場合のベクターは、AAV2 ITRを含む。さらなる実施形態において、AAV2カプシドは、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子の少なくとも1×10ゲノムコピーが哺乳動物に投与される。いくつかの実施形態において、AAVは、哺乳動物の眼の角膜に、網膜におよび/または強膜に投与される。いくつかの実施形態において、AAV粒子は、硝子体内注射および/または前房内注射によって投与される。いくつかの実施形態において、rAAVは、眼の1カ所より多くの位置に投与される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、該哺乳動物はヒトである、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、原発開放隅角緑内障(POAC)である。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、若年性の原発開放隅角緑内障(JOAC)である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、医薬組成物中のものである。さらなる実施形態において、医薬組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0020】
上記方法のいくつかの実施形態において、薬剤(例えば、AAV粒子)は、R-スポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/またはRSPO4)の活性を増加させる1つまたはそれ以上のさらなる薬剤と併用される。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は、AAVベクターを含む組換えAAV粒子であって、該AAVベクターは、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含む、前記組換えAAV粒子を提供する。他の態様において、本発明は、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とする阻害性核酸をコードするベクターを含むrAAV粒子を提供する。他の態様において、本発明は、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含むrAAV粒子を提供する。さらに他の態様において、本発明は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードし、かつ哺乳動物におけるミオシリンの発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含むrAAV粒子を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、ヒトRSPO1である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、配列番号8、11および/または12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、配列番号8、11および/または12のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、ヒトRSPO2である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、配列番号9、13および/または14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、配列番号9、13および/または14のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変
異体は、ヒトRSPO3である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変異体は、配列番号1および/または15~17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変異体は、配列番号1および/または15~17のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4をコードする核酸を含み、前記RSPO4は、ヒトRSPO4である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO4またはその機能的変異体は、配列番号10、18および/または19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO4またはその機能的変異体は、配列番号10、18および/または19のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体は、プロモーターに作動可能に連結されている。さらなる実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、および/またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0023】
いくつかの実施形態において、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とする阻害性核酸は、RNAiである。いくつかの実施形態において、本発明のMYOCの発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)は、ヒトMYOCを標的とする。いくつかの実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)である。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、shRNAである。いくつかの実施形態において、RNAi(例えば、shRNA)は、配列番号6に記載のMYOCのアミノ酸配列を標的とする。いくつかの実施形態において、RNAi(例えば、shRNA)は、配列番号7のループ配列を含む。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることができる。さらなる実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)の発現は、哺乳動物の眼におけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(例えば、shRNA)の発現は、哺乳動物の線維柱帯網の細胞におけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOCは、野生型MYOCである。いくつかの実施形態において、MYOCは、突然変異型MYOCである。いくつかの実施形態において、MYOCは、野生型MYOCおよび突然変異型MYOCである。さらなる実施形態において、突然変異型MYOCは、ヒトMYOCのE323K、K398R、Q368X、G364V、P370L、D380A、K423E、Y437HおよびI477Sアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、突然変異型MYOCは、ヒトMYOCのP370Lおよび/またはY437Hアミノ酸置換に対応するアミ
ノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、原発開放隅角緑内障(POAC)に関連している。いくつかの実施形態において、ミオシリン突然変異は、若年性の原発開放隅角緑内障(JOAC)に関連している。
【0024】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2012/0164106号に記載されているような変異型AAV6カプシド、例えばShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2013/0323226号に記載されているような修飾AAV9カプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド突然変異体、ヘパリン結合カプシド突然変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開2012/0066783号に記載されている他の任意のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開番号WO/2003/042397に記載されているAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585またはR588位のうちの1カ所またはそれ以上におけるアミノ酸置換を含むAAVカプシドを含む。さらなる実施形態において、AAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV血清型2カプシドを含む。さらなる実施形態において、AAV血清型2カプシドは、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型逆位末端反復配列(ITR)を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV血清型2 ITRを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびカプシドを含む。他の実施形態において、AAVウイルス粒子は、rAAVウイルス粒子のカプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2カプシドを含み、この場合のベクターは、AAV2 ITRを含む。さらなる実施形態において、AAV2カプシドは、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。
【0025】
本発明は、本明細書に記載する組換えAAV粒子のいずれかを含む医薬組成物を提供する。本発明は、本明細書に記載する任意の方法に好適である医薬組成物も提供する。本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための薬物の製造における、本明細書に記載する医薬組成物および組換えAAV粒子の使用を提供する。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、原発開放隅角緑内障(POAC)である。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、若年性の原発開放隅角緑内障(JOAC)である。
【0026】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのキットであって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはそ
の機能的変異体をコードするベクターを含むrAAVウイルス粒子;AAVベクターを含むrAAVウイルス粒子であって、該ベクターが、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とする阻害性核酸(例えば、shRNAを含む、MYOC RNAi)をコードする核酸を含む、rAAVウイルス粒子;および/またはAAVベクターを含むrAAVウイルス粒子であって、該AAVベクターは、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体をコードし、かつ哺乳動物におけるMYOCの発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸を含む、rAAVウイルス粒子を含む、前記キットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、ミオシリン(MYOC)緑内障の処置に関する使用説明書をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、緩衝剤および/または医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明のキットは、哺乳動物におけるMYOCの発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、ヒトMYOCの発現を標的とする。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、配列番号6に記載のMYOCのアミノ酸配列を標的とする。いくつかの実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)である。いくつかの実施形態において、RNAiは、shRNAである。いくつかの実施形態において、MYOC shRNAは、配列番号7のループ配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、AAVベクターであって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含む、前記AAVベクターを提供する。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、ヒトRSPO1である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、配列番号8、11および/または12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO1またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO1またはその機能的変異体は、配列番号8、11および/または12のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、ヒトRSPO2である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、配列番号9、13および/または14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO2またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO2またはその機能的変異体は、配列番号9、13および/または14のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変異体は、ヒトRSPO3である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変異体は、配列番号1および/または15~17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO3またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO3またはその機能的変異体は、配列番号1および/または15~17のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO4またはその機能的変異体
は、ヒトRSPO4である。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO4またはその機能的変異体は、配列番号10、18および/または19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含み、前記RSPO4またはその機能的変異体は、配列番号10、18および/または19のアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてMYOC RNAiを発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてMYOC RNAiを発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiの発現は、哺乳動物の眼におけるMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOC RNAiの発現は、哺乳動物の線維柱帯網の細胞におけるMYOCの発現を低減または阻害する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するAAV粒子は、R-スポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/またはRSPO4)の活性を増加させる1つまたはそれ以上のさらなる薬剤と併用される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明のキットは、ベクターと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2012/0164106号に記載されているような変異型AAV6カプシド、例えばShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2013/0323226号に記載されているような修飾AAV9カプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド突然変異体、ヘパリン結合カプシド突然変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開2012/0066783号に記載されている他の任意のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開番号WO/2003/042397に記載されているAAVカプシドとを含む、AAVウイルス粒子を含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585またはR588位のうちの1カ所またはそれ以上におけるアミノ酸置換を含むAAVカプシドを含む。さらなる実施形態において、AAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV血清型2カプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAV血清型2カプシド
は、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型逆位末端反復配列(ITR)を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、AAV血清型2 ITRを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびカプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、rAAVウイルス粒子のカプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含む。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2カプシドを含み、ベクターは、AAV2 ITRを含む。いくつかの実施形態において、AAV2カプシドは、AAV2 VP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む。
【0030】
上記キットのいくつかの実施形態において、キットのAAV粒子は、R-スポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/またはRSPO4)の活性を増加させる1つまたはそれ以上のさらなる薬剤と併用される。いくつかの実施形態において、本発明のキットは、本明細書に記載のAAV粒子と、R-スポンジン(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/またはRSPO4)の活性を増加させる1つまたはそれ以上のさらなる薬剤とを含む。
【0031】
本発明は、本明細書に記載する方法のいずれか1つにおける使用に好適なキットを提供する。本発明は、本明細書に記載する組換えAAV粒子のいずれかを含むキットを提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載するキットは、ミオシリン(MYOC)緑内障の処置に関する使用説明書をさらに含む。いくつかの態様において、本明細書に記載するキットは、緩衝剤および/または医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0032】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼の線維柱帯網に核酸(例えば、治療用導入遺伝子をコードする核酸)を送達する方法であって、rAAVベクターを含むAAV血清型2(AAV2)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含み、該rAAVベクターは核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼障害を処置する方法であって、rAAVベクターを含むAAV2粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含み、該rAAVベクターは、治療用導入遺伝子をコードする核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、硝子体内および/または前房内投与される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、眼の線維柱帯網の細胞に形質導入する。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、眼の線維柱帯網において発現される。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、眼障害は、眼の線維柱帯網に関連する障害である。いくつかの実施形態において、眼障害は、ミオシリン(MYOC)緑内障である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0033】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼の線維柱帯網に核酸(例えば、治療用導入遺伝子をコードする核酸)を送達するための組換えAAV2粒子であって、該AAV2粒子はrAAVベクターを含み、該rAAVベクターは該核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAA
V2カプシドタンパク質を含む、前記組換えAAV2粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼障害を処置するための組換えAAV2粒子であって、該AAV2粒子はrAAVベクターを含み、該rAAVベクターは治療用導入遺伝子をコードする核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記組換えAAV2粒子を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、眼の線維柱帯網の細胞に形質導入する。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、眼の線維柱帯網において発現される。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、眼障害は、眼の線維柱帯網に関連する障害である。いくつかの実施形態において、眼障害は、ミオシリン(MYOC)緑内障である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0034】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼の線維柱帯網に核酸(例えば、治療用導入遺伝子をコードする核酸)を送達するための組換えAAV2粒子の使用であって、該AAV粒子はrAAVベクターを含み、該rAAVベクターは該核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記使用を提供する。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼障害を処置するための組換えAAV2粒子であって、該AAV粒子はrAAVベクターを含み、該rAAVベクターは、治療用導入遺伝子をコードする核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記組換えAAV2粒子を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、硝子体内および/または前房内投与される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、眼の線維柱帯網の細胞に形質導入する。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、眼の線維柱帯網において発現される。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、眼障害は、眼の線維柱帯網に関連する障害である。いくつかの実施形態において、眼障害は、ミオシリン(MYOC)緑内障である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼の線維柱帯網に核酸(例えば、治療用導入遺伝子をコードする核酸)を送達するキットであって、rAAVベクターを含むrAAV2粒子を含み、該rAAVベクターは核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記キットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の眼障害を処置するためのキットであって、rAAVベクターを含むrAAV2粒子を含み、該rAAVベクターは、治療用導入遺伝子をコードする核酸を含み、該AAV2粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドタンパク質を含む、前記キットを提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、硝子体内および/または前房内投与される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、眼の線維柱帯網の細胞に形質導入する。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、眼の線維柱帯網において発現される。いくつかの実施形態において、治療用導入遺伝子は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、眼障害は、眼の線維柱帯網に関連する障害である。いくつかの実施形態において、眼障害は、ミオシリン(MYOC)緑内障である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0036】
特許出願および公報を含めて、本明細書に引用するすべての参考文献は、それら全体が参照によって組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】MYOC突然変異体P370LおよびY437Hが分泌されず、野生型MYOC(「wtMYOC」)の分泌を遮断することを実証する図である。wtMYOCおよび/またはMYOC突然変異体を発現する構築物がトランスフェクトされた293細胞からの細胞培養培地または細胞溶解物(標示の通り)を、抗ヒトMYOC抗体を使用してウェスタンブロッティングによって探索した。
図2】293T細胞においても、SV40 T抗原が形質変換されたヒト線維柱帯網(「hTM-T」)細胞においても、MYOC突然変異体P370Lは分泌されず、野生型MYOC(「wtMYOC」)の分泌を遮断することを示す図である。wtMYOCおよび/またはP370L MYOCを発現する構築物がトランスフェクトされた293T細胞またはhTM-T細胞からの細胞培養培地または細胞溶解物(標示の通り)を、抗ヒトMYOC抗体を使用してウェスタンブロッティングによって探索した。
図3】Wntシグナル伝達に対するwtMYOC、P370L MYOC、またはY437H発現の効果を示す図である。実験ごとに、「mWnt3aなし」のバーが左側にあり、「mWnt3aあり-400ng/ml」のバーが右側にある。
図4】RSPO3発現はP370LまたはY437H MYOCと共発現時にWntシグナル伝達を回復させることができることを示す図である。実験ごとに、「mWnt3aなし」のバーが左側にあり、「mWnt3a-400ng/ml」のバーが右側にある。
図5】RSPO3発現はP370L hTM-T細胞においてP370L MYOCとの共発現時にWntシグナル伝達を回復させることができることを示す図である。実験ごとに、「mWnt3aなし」のバーが左側にあり、「400ng/ml-hWnt3a」のバーが右側にある。
図6】293T細胞におけるMYOC発現に対するMYOC shRNAの効果を示す図である。293T細胞からの細胞培養培地または細胞溶解物を抗ヒトMYOC抗体でのウェスタンブロッティングによって探索した。wtMYOC(レーン1);wtMYOCおよびMYOC shRNA #79(2);wtMYOCおよびMYOC shRNA #93(3);wtMYOCおよびスクランブルshRNA対照(4);またはEGFP(5)を発現するプラスミドを、細胞にトランスフェクトした。55/57kDバンドは、グリコシル化(57kD)および非グリコシル化(55kD)形態のフルサイズMYOCタンパク質を表す。22kDバンドは、カルパインII切断産物のN末端を表す。
図7】hTM-T細胞におけるMYOC発現に対するMYOC shRNAの効果を示す図である。hTM-T細胞からの細胞培養培地または細胞溶解物を抗ヒトMYOC抗体でのウェスタンブロッティングによって探索した。wtMYOC(レーン1);P370L MYOC(2);wtMYOCおよびP370L MYOC(3);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびGrp94 shRNA #1(4);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびGrp94 shRNA #2(5);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびMYOC shRNA #53(6);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびpGIPZ MYOC shRNA #79(7);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびpGIPZ MYOC shRNA #93(8);wtMYOCおよびP370L MYOCおよびスクランブルshRNA対照(9);またはEGFP(10)を発現するプラスミドを、細胞にトランスフェクトした。
図8】RSPO3発現およびMYOCサイレンシングはP370L MYOCと共発現時にWntシグナル伝達を相乗的に回復させることを示す図である。標示の通り、P370L MYOC、Grp94 shRNA、pGIPZ MYOC shRNAs #79(第1)および#93(第2)、ならびに/またはRSPO3プラスミドに加えて、TOP-Flashレポーター構築物およびwtMYOC(「MYOC」)を、293T細胞にコトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=1~3複製ウェル)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。実験ごとに、「Wnt添加なし」のバーが左側にあり、「400ng/ml Wnt3a添加」のバーが右側にある。
図9】MYOCサイレンシングはP370LまたはY437H MYOCと共発現時にWntシグナル伝達を回復させることを示す図である。標示の通り、P370L MYOC、Y437H MYOC、MYOC shRNA、および/またはスクランブル対照shRNA(「pGIPZ-Null」)に加えて、TOP-Flashレポーター構築物およびwtMYOC(「MYOC」)を、293T細胞にコトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=1~3複製ウェル)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。実験ごとに、「Wnt添加なし」のバーが左側にあり、「400ng/ml Wnt3a添加」のバーが右側にある。
図10】野生型AAVウイルス粒子(上のパネル)およびカプシドタンパク質のR471Aアミノ酸置換を含むAAV粒子による、線維柱帯網の細胞へのin vitro(左パネル)およびin vivo(右パネル)形質導入を示す図である。
図11】標示の通り、フューリン様Cysリッチドメイン、トロンボスポンジン1型ドメイン、および正電荷を有するC末端ドメインを図示するヒトRSPOファミリータンパク質のドメイン図を示す図である(Kim,K.A.ら(2008)Mol.Biol.Cell.19:2588~2596頁出典の図)。
図12図11に記載のタンパク質ドメインを図示するヒトRSPOファミリー遺伝子のドメイン図を示す図である。アミノ酸配列ナンバリングを示す。各ファミリーメンバーについて試験した短縮型突然変異体は標示の通りである(Kim,K.A.ら(2006)Cell Cycle 5:23~26頁出典の図)。
図13図13Aは、完全長ヒトRSPO3(配列番号1)の配列を示す図である。シグナル配列、FU1、FU2およびTSP1ドメインを標示した。図13Bは、活性ヒトRSPO3断片(配列番号16)の配列を示す図である。シグナル配列、FU1およびFU2ドメインを標示した。シグナルペプチドがない使用した断片は、配列番号16のアミノ酸22~146に対応し、Hisタグを含めて15kDaである。図13Cは、完全長hRSPO3のドメイン構造を示す図である。シグナルペプチド、FU1、FU2、TSP1およびBRを標示した。各ドメインの推定機能を下に収載する。図13Dは、完全長hRSPO3およびhRSPO3断片のウェスタンブロットを示す図である。
図14】試験したhRSPO3断片を示す図である。シグナルペプチド、FU1、FU2、TSP1およびBRドメインを標示した完全長hRSPO3のドメイン構造、ならびに各ドメインについての推定機能も下に提供する。
図15】完全長RSPO3およびRSPO3断片の発現はY437H MYOCと共発現時にWntシグナル伝達を回復させることを示す図である。
図16】RSPOファミリーメンバーの発現は、Y437H MYOCと共発現時に、Wnt3aの添加がなくてもWntシグナル伝達を誘導することができることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ウイルス粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物の眼におけるWntシグナル伝達を;例えば、R-スポンジン1(RSPO1)、R-スポンジン2(RSPO2)、R-スポンジン3(RSPO3)および/またはR-スポンジン4(RSPO4)の発現によって、増加させる。いくつかの実施形態では、ミオシリン(MYOC)(例えば、突然変
異型ミオシリン)の発現を;例えば、MYOC発現を標的とするRNAiの使用によって、阻害する。いくつかの態様において、AAV粒子は、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4、ならびに/またはそれらに関する機能的変異体をコードするベクターを含む。他の態様において、rAAV粒子は、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするベクターを含む。他の態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4、ならびに/またはそれらに関する機能的変異体をコードするベクターを含むrAAV粒子と、該哺乳動物におけるミオシリンの発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするベクターを含むrAAV粒子との混合物を、該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。他の態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4、ならびに/またはそれらに関する機能的変異体をコードし、かつ該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC shRNA)の発現を標的とするMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするベクターを含むrAAV粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための組成物およびキットであって、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4ならびに/またはそれらに関する機能的変異体ならびに/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを使用する、前記組成物およびキットも提供する。本発明は、組換えAAV粒子、組成物およびキットも提供する。
【0039】
いくつかの態様において、本発明は、線維柱帯網の細胞に形質導入するためにAAV2を標的化する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471A突然変異を含むrAAV2粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、線維柱帯網に関連する眼疾患(例えば、ミオシリン(MYOC)緑内障)を処置するための方法および組成物であって、突然変異カプシドタンパク質(例えば、R471Aアミノ酸置換)を含むAAV2ウイルス粒子を使用する、前記方法および組成物を提供する。
【0040】
I.一般技術
本明細書に記載するまたは本明細書中で参照する技術および手順は一般によく理解されており、当業者によって、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、2003);the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies、A Laboratory Manual(Harlow and Lane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Pre
ss、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8頁);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)のような従来の方法論を用いて一般に利用される。
【0041】
II.定義
「ベクター」は、本明細書で用いる場合、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0042】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で用いる場合、任意の長さの重合体形態のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、を指す。したがって、この用語は、一本鎖、二本鎖もしくは多鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基または他の天然、化学もしくは生化学修飾、非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む重合体を含むが、これらに限定されない。核酸の主鎖は、(RNAもしくはDNAにおいて通常見いだされるように)糖およびリン酸エステル基を含むことがあり、または修飾もしくは置換されている糖もしくはリン酸エステル基を含むこともある。あるいは、核酸の主鎖は、ホスホルアミデートなどの合成サブユニットの重合体を含むことがあり、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミデート(P-NH)または混合ホスホルアミデート-ホスホジエステルオリゴマーであることがある。加えて、二本鎖核酸は、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド生成物から、相補鎖の合成およびそれらの鎖の適切な条件下でのアニーリングによって、またはDNAポリメラーゼと適切なプライマーを使用する相補鎖のデノボ合成によって、得ることができる。
【0043】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために同義で用いており、最小長に限定されない。アミノ酸残基のそのような重合体は、天然アミノ酸残基を含有することもあり、または非天然アミノ酸残基を含有することもあり、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含むがこれらに限定されない。完全長タンパク質とそれらの断片の両方がこの定義に包含される。これらの用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、
リン酸化なども含む。さらに、本発明の目的では、「ポリペプチド」は、ネイティブ配列に対する修飾、例えば欠失、付加および置換(一般に、本質的に保存的なもの)を含むタンパク質を指すが、ただし、該タンパク質が所望の活性を維持することを条件とする。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発によるような意図的なものであることもあり、または偶然なもの、例えば、タンパク質を生産する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーであることもある。
【0044】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス由来でない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸には少なくとも1つ、好ましくは2つの逆位末端反復配列(ITR)が隣接している。
【0045】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つ、好ましくは2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接している1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。そのようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染しており(または好適なヘルパー機能を発現しており)、かつ、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされる。rAAVベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体におけるもの、または別のベクター、例えば、クローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドにおけるもの)に組み込まれている場合には、そのrAAVベクターは「プロベクター」と呼ばれることもがあり、該プロベクターは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下での複製およびカプシド封入によって「レスキュー」される。rAAVベクターは、プラスミド、直鎖状人工染色体を含む(しかしこれらに限定されない)多数の形態のいずれであってもよく、rAAVベクターを脂質と複合体化することができ、リポソームに封入することができ、実施形態によっては、ウイルス粒子、特にAAV粒子、のカプシドに封入することができる。rAAVベクターをAAVウイルスカプシドにパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生じさせることができる。AAVヘルパー機能(すなわち、AAVの複製および宿主細胞によるパッケージングを可能にする機能)は、AAV複製およびパッケージングを助けるヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子が含むがこれらに限定されない、多数の形態のいずれかで提供される。他のAAVヘルパー機能は、当技術分野において公知である。
【0046】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質とカプシドに封入されたrAAVベクターゲノムとで構成されているウイルス粒子を指す。
【0047】
「異種」には、比較されるまたは導入されるもしくは組み込まれる実体の残部のものと遺伝子型的に異なる実体に由来するという意味がある。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞タイプに導入された核酸は、異種核酸である(および、発現されたとき、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれる細胞配列(例えば、遺伝子またはその一部分)は、そのベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0048】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入される核酸であって、RNAに転写されること、ならびに場合により、適切な条件下で翻訳および/または発現されることが可能である前記核酸を指す。複数の態様において、導入遺伝子は、その導入遺伝子が導入される細胞に所望の特性を付与するか、または所望の治療もしくは診断アウトカムを別様にもたらす。別の態様において、導入遺伝子は、siRNAなどのRNA干渉を媒介する分子に翻訳され
ることもある。
【0049】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム当量」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター製剤中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例に記載のもの、または例えば、Clarkら(1999)Hum.Gene Ther.、10:1031~1039頁;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、6:272~278頁に記載のものなどの手順によって測定することができる。
【0050】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「感染単位(iu)」、「感染粒子」または「複製単位」は、例えば、McLaughlinら(1988)J.Virol.,62:1963~1973頁に記載されているような複製中心アッセイとしても公知の、感染中心アッセイによって測定されるような、感染性かつ複製可能な組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0051】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「形質導入単位(tu)」は、本明細書の実施例に記載のもの、または例えば、Xiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、144:113~124頁に記載のもの;もしくはFisherら(1996)J.Virol.、70:520~532頁に記載のもの(LFUアッセイ)などの機能性アッセイで測定されるような、機能性導入遺伝子産物の生産をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0052】
「逆位末端反復」または「ITR」配列は、当技術分野において十分に理解されている用語であり、反対向きであるウイルスゲノムの末端に見られる比較的短い配列を指す。
【0053】
当技術分野において十分に理解されている用語、「AAV逆位末端反復(ITR)」配列は、ネイティブ一本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端間の異質性をもたらす、2つの二者択一配向のいずれかで存在することができる。最も外側の125ヌクレオチドは、自己相補性のいくつかのより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と呼ばれる)も含有し、これらの領域が、ITRのこの部分の中での鎖内塩基対合の発生を可能にする。
【0054】
「末端切断配列」または「trs」は、ウイルスDNA複製中にAAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域内の配列である。突然変異型末端切断配列は、AAV repタンパク質による切断を受けにくい。
【0055】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、(欠陥パルボウイルスである)AAVの複製および宿主細胞によるパッケージングを可能にするウイルスを指す。多数のそのようなヘルパーウイルスが同定されており、それらにはアデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス、例えばワクシニアが含まれる。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最もよく使用されている。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類由来の非常の多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ATCCなどの寄託機関から同じく入手可能であるヘルペス科のウイルスとしては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。
【0056】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、必要に応じて、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入
した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、該参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージと定義する。アミノ酸または核酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)、補遺30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されているものを使用する、およびBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含む、当技術分野における技術の範囲内の様々な方法で達成することができる。好ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。本明細書の目的では、所与のアミノ酸配列Bに対しての、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対しての、それとの、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aと表現することができる)を次のように算出する:100×分数X/Y(ここで、Xは、配列アライメントプログラムによってそのプログラムのAとBのアライメントで同一マッチとしてスコアされるアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと同一でない場合、Bに対してのAのアミノ酸配列同一性%が、Aに対してのBのアミノ酸配列同一性%と同一にならないことは理解されるであろう。本明細書の目的では、所与の核酸配列Dに対しての、それとの、またはそれに対する所与の核酸配列Cの核酸同一性%(あるいは、所与の核酸配列Dに対しての、それとの、またはそれに対する特定の核酸配列同一性%を有するまたは含む所与の核配列Cと表現することができる)を次のように算出する:100×分数W/Z(ここで、Wは、配列アライメントプログラムによってそのプログラムのCとDのアライメントで同一マッチとしてスコアされるヌクレオチドの数であり、Zは、D中のヌクレオチドの総数である)。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと同一でない場合、Dに対してのCの核酸配列同一性%が、Cに対してのDの核酸配列同一性%と同一にならないことは理解されるであろう。
【0057】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、それが、その天然の環境の成分から同定および分離および/または回収されたことを意味する。
【0058】
「有効量」は、臨床結果(例えば、症状の改善、臨床エンドポイントの達成など)を含む、有益なまたは所望の結果を達成するために十分な量である。有効量を1回またはそれ以上の投与で投与することができる。病状の点からは、有効量は、疾患の改善、安定化、または発症遅延に十分な量である。例えば、rAAV粒子の有効量は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸などの異種核酸の所望の量を表す。
【0059】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、および齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、個体または対象はヒトである。
【0060】
本明細書で用いる場合、「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能であろうと、検出不能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の低下、安定化された(例えば、悪化しない)病状、疾患の拡大(転移)の予防、疾患進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、および寛解(部分寛解であろうと、完全寛解であろうと)を含むが、これらに限定さ
れない。「処置」は、処置を受けていない場合に予期される生存期間と比較して生存期間の延長も意味することができる。
【0061】
本明細書で用いる場合、用語「線維柱帯網」は、房水を眼から血液に排出するように機能する、角膜および虹彩付近に位置するスポンジ様組織を指す。房水を眼から血液に排出するように機能する、角膜および虹彩付近に位置するスポンジ様組織。線維柱帯網は、内皮で囲まれた空間(線維柱帯間の空間)を含有し、そこを通って房水をシュレム管に送る。線維柱帯網は、通常は、2つの部分:角膜および強膜と接触しており、シュレム管に開口している角強膜網目構造と、前房に面しているぶどう膜網目構造と、に分けられる。
【0062】
用語「中心網膜」は、本明細書で用いる場合、外黄斑および/または内黄斑および/または中心窩を指す。用語「中心網膜細胞タイプ」は、本明細書で用いる場合、例えばRPEおよび光受容器細胞などの、中心網膜の細胞タイプを指す。
【0063】
用語「黄斑」は、周辺網膜と比較して高い相対濃度の光受容器細胞、特に杆体および錐体を含有する、霊長類の中心網膜領域を指す。本明細書で用いる場合の用語「外黄斑」は、「周辺黄斑」も指すことがある。本明細書で用いる場合の用語「内黄斑」は、「中心黄斑」も指すことがある。
【0064】
用語「中心窩」は、周辺網膜および黄斑と比較して高い相対濃度の光受容器細胞、特に錐体を含有する、直径がおおよそ0.5mm以下の、霊長類の中心網膜内の小領域を指す。
【0065】
用語「網膜下腔」は、本明細書で用いる場合、網膜内の光受容器細胞と網膜色素上皮細胞の間の位置を指す。網膜下腔は、流体の任意の網膜下注射前などの、潜在空隙であることもある。網膜下腔は、潜在空隙に注射される流体を含有することもある。この場合、流体は、「網膜下腔と接触している」。「網膜下腔と接触している」細胞としては、RPEおよび光受容器細胞などの、網膜下腔に隣接する細胞が挙げられる。
【0066】
用語「ブレブ」は、本明細書で用いる場合、眼の網膜下腔内の液腔を指す。本発明のブレブは、単一の腔への流体の単回注射によって形成されることもあり、同じ腔への1つもしくはそれ以上の流体の複数回の注射によって形成されることもあり、複数の腔への複数回の注射によって形成されることもあり、または再配置されたときに網膜下腔の所望の部分に対する治療効果の達成に有用な全液腔を生じさせる、複数の腔への複数回の注射によって形成されることもある。
【0067】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBank Entrez Gene ID396526によって表されるニワトリ(Gallus gallus)βアクチン)に由来するポリヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いる場合、「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、Miyazaki,J.ら(1989)Gene 79(2):269~77頁に記載されている配列などの、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー要素とニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターならびに第1エクソンおよびイントロンとウサギβ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターとを含有するプロモーターを指すこともある。本明細書で用いる場合、用語「CAGプロモーター」を同義で用いることがある。本明細書で用いる場合、用語「CMV初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター」を同義で用いることがある。
【0068】
「ミオシリン(MYOC)」は、細胞骨格機能、細胞接着、細胞シグナル伝達および細胞遊走(線維柱帯網誘導性グルココルチコイド応答、GPOA、TIGR、GLC1A、
JOAGおよびJOAG1としても公知)に関与するタンパク質(または前記タンパク質をコードする遺伝子)を指す。ミオシリンは、多くの異なる細胞タイプにおいて分泌タンパク質として発現される。眼では、ミオシリンは、眼圧(IOP)の調節に肝要な組織である、線維柱帯網によって房水に分泌されると考えられている。上で説明したように、ミオシリンの突然変異は、原発開放隅角緑内障のサブセット、特に、若年性のこの障害の主原因であると考えられている。
【0069】
本明細書で用いる場合、「ミオシリン」は、完全長前駆体はもちろん、プロセシングされたあらゆる形態のこのタンパク質(例えば、細胞から分泌された成熟タンパク質)も指すことがある。ミオシリンタンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコミオシリン、例えば、NCBI参照配列NP_000252、NP_034995、NP_001041495およびNP_001265779を挙げることができる。ミオシリン遺伝子の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコミオシリン遺伝子、例えば、GenBank Entrez Gene ID 4653(MYOC、別名GPOA、JOAG、TIGR、GLC1AおよびJOAG1)、GenBank Entrez Gene ID 17926(Myoc、別名TIGR、GLC1AおよびAI957332)、GenBank Entrez Gene ID 490344、およびGenBank Entrez Gene ID 101087632を挙げることができる。
【0070】
「R-スポンジン1(RSPO1)」は、Wntシグナル伝達の修飾に関与するR-スポンジンファミリーのメンバーである。用語「RSPO1」は、RSPO1タンパク質を指すこともあり、またはRSPO1タンパク質をコードする遺伝子を指すこともある。トロンボスポンジン1型反復配列(TSR-1)含有タンパク質のスーパーファミリーのメンバー、R-スポンジンは、シグナルペプチド、TSR-1ドメイン、および2つのフューリン様反復配列を含む。正確なメカニズムは不明であるが、R-スポンジンファミリーポリペプチドは、Wntシグナル伝達を活性化すると考えられている。R-スポンジンとWntシグナル伝達間の関連のさらなる説明については、例えば、Kim,K.A.ら(2006)Cell Cycle 5:23~26頁;Kim,K.A.ら(2008)Mol.Biol.Cell.19:2588~2596頁;Jin,Y.R.およびYoon,J.K.(2012)Int.J.Biochem.Cell Biol.44:2278~2287頁;ならびにde Lau,W.B.ら(2012)Genome
Biol.13(3):242頁を参照されたい。
【0071】
本明細書で用いる場合、「RSPO1」は、完全長前駆体はもちろん、プロセシングされたあらゆる形態のこのタンパク質(例えば、細胞から分泌された成熟タンパク質)も指すことがある。RSPO1タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO1、例えば、NCBI参照配列NP_001229837、NP_619624、XP_00562890およびXP_003989918を挙げることができる。RSPO1遺伝子の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO1遺伝子、例えば、GenBank Entrez Gene ID 284654(RSPO1、別名RSPOおよびCRISTIN3)、GenBank Entrez Gene ID 192199(Rspo1、別名RスポンジンおよびR-スポンジン)、GenBank Entrez Gene ID 608179、およびGenBank Entrez Gene ID 101091033を挙げることができる。いくつかの実施形態において、RSPO1は、RSPO1の機能的変異体である。いくつかの実施形態において、機能的RSPO1変異体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失(例えば、短縮化)を含むことがあるが、完全長RSPO1の1つまたはそれ以上の活性(例えば、Wntシグナル伝達活性、本明細書に記載および/または例示するアッセイ)に関する一部または
すべての活性を保持することができる。いくつかの実施形態において、機能的RSPO1変異体は、短縮型RSPO1である。短縮型RSPO1ポリペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号11および12、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号11および12が挙げられる。
【0072】
「R-スポンジン2(RSPO2)」は、Wntシグナル伝達の修飾に関与するR-スポンジンファミリーのメンバーである。用語「RSPO2」は、RSPO2タンパク質を指すこともあり、またはRSPO2タンパク質をコードする遺伝子を指すこともある。トロンボスポンジン1型反復配列(TSR-1)含有タンパク質のスーパーファミリーのメンバー、R-スポンジンは、シグナルペプチド、TSR-1ドメイン、および2つのフューリン様反復配列を含む。正確なメカニズムは不明であるが、R-スポンジンファミリーポリペプチドは、Wntシグナル伝達を活性化すると考えられている。R-スポンジンとWntシグナル伝達間の関連のさらなる説明については、例えば、Kim,K.A.ら(2006)Cell Cycle 5:23~26頁;Kim,K.A.ら(2008)Mol.Biol.Cell.19:2588~2596頁;Jin,Y.R.およびYoon,J.K.(2012)Int.J.Biochem.Cell Biol.44:2278~2287頁;ならびにde Lau,W.B.ら(2012)Genome
Biol.13(3):242頁を参照されたい。
【0073】
本明細書で用いる場合、「RSPO2」は、完全長前駆体はもちろん、プロセシングされたあらゆる形態のこのタンパク質(例えば、細胞から分泌された成熟タンパク質)も指すことがある。RSPO2タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO2、例えば、NCBI参照配列NP_848660、NP_766403、XP_005627927およびXP_004000104を挙げることができる。RSPO2遺伝子の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO2遺伝子、例えば、GenBank Entrez Gene ID 340419(RSPO2、別名CRISTIN2)、GenBank Entrez Gene ID 239405(Rspo2、別名ftls、AA673245、D430027K22および2610028F08Rik)、GenBank Entrez Gene ID 482004、およびGenBank Entrez Gene ID 101087380を挙げることができる。いくつかの実施形態において、RSPO2は、RSPO2の機能的変異体である。いくつかの実施形態において、機能的RSPO2変異体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失(例えば、短縮化)を含むことがあるが、完全長RSPO2の1つまたはそれ以上の活性(例えば、Wntシグナル伝達活性、本明細書に記載および/または例示するアッセイ)に関する一部またはすべての活性を保持することができる。いくつかの実施形態において、機能的RSPO2変異体は、短縮型RSPO2である。短縮型RSPO2ポリペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号13および14、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号13および14が挙げられる。
【0074】
「R-スポンジン3(RSPO3)」は、Wntシグナル伝達の修飾に関与するR-スポンジンファミリーのメンバーである。用語「RSPO3」は、RSPO3タンパク質を指すこともあり、またはRSPO3タンパク質をコードする遺伝子を指すこともある。トロンボスポンジン1型反復配列(TSR-1)含有タンパク質のスーパーファミリーのメンバー、R-スポンジンは、シグナルペプチド、TSR-1ドメイン、および2つのフューリン様反復配列を含む。正確なメカニズムは不明であるが、RSPO3は、Wntシグナル伝達を活性化すると考えられており、マウスおよびゼノパス属のカエルにおけるRSPO3機能の欠損は、Wnt機能喪失表現型をもたらす(Kazanskaya,O.ら(2008)Development 135:3655~64頁)。R-スポンジンと
Wntシグナル伝達間の関連のさらなる説明については、例えば、de Lau,W.B.ら(2012)Genome Biol.13(3):242頁を参照されたい。
【0075】
本明細書で用いる場合、「RSPO3」は、完全長前駆体はもちろん、プロセシングされたあらゆる形態のこのタンパク質(例えば、細胞から分泌された成熟タンパク質)も指すことがある。RSPO3タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO3、例えば、NCBI参照配列NP_116173、NP_082627、XP_005615677およびXP_003986583を挙げることができる。RSPO3遺伝子の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO3遺伝子、例えば、GenBank Entrez Gene ID 84870(RSPO3、別名PWTSR、THSD2およびCRISTIN1)、GenBank Entrez Gene ID 72780(Rspo3、別名Thsd2,Cristin1、AW742308および2810459H04Rik)、GenBank Entrez Gene ID 476287、およびGenBank Entrez Gene ID 101085635を挙げることができる。いくつかの実施形態において、RSPO3は、RSPO3の機能的変異体である。いくつかの実施形態において、機能的RSPO3変異体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失(例えば、短縮化)を含むことがあるが、完全長RSPO3の1つまたはそれ以上の活性(例えば、Wntシグナル伝達活性、本明細書に記載および/または例示するアッセイ)に関する一部またはすべての活性を保持することができる。いくつかの実施形態において、機能的RSPO3変異体は、短縮型RSPO3である。短縮型RSPO3ポリペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号15~17、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号15~17が挙げられる。
【0076】
「R-スポンジン4(RSPO4)」は、Wntシグナル伝達の修飾に関与するR-スポンジンファミリーのメンバーである。用語「RSPO4」は、RSPO4タンパク質を指すこともあり、またはRSPO4タンパク質をコードする遺伝子を指すこともある。トロンボスポンジン1型反復配列(TSR-1)含有タンパク質のスーパーファミリーのメンバー、R-スポンジンは、シグナルペプチド、TSR-1ドメイン、および2つのフューリン様反復配列を含む。正確なメカニズムは不明であるが、R-スポンジンファミリーポリペプチドは、Wntシグナル伝達を活性化すると考えられている。R-スポンジンとWntシグナル伝達間の関連のさらなる説明については、例えば、Kim,K.A.ら(2006)Cell Cycle 5:23~26頁;Kim,K.A.ら(2008)Mol.Biol.Cell.19:2588~2596頁;Jin,Y.R.およびYoon,J.K.(2012)Int.J.Biochem.Cell Biol.44:2278~2287頁;ならびにde Lau,W.B.ら(2012)Genome
Biol.13(3):242頁を参照されたい。
【0077】
本明細書で用いる場合、「RSPO4」は、完全長前駆体はもちろん、プロセシングされたあらゆる形態のこのタンパク質(例えば、細胞から分泌された成熟タンパク質)も指すことがある。RSPO4タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO4、例えば、NCBI参照配列NP_001025042、NP_001035779、XP_542937およびXP_011279253を挙げることができる。RSPO4遺伝子の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、マウス、イヌおよびネコRSPO4遺伝子、例えば、GenBank
Entrez Gene ID 343637(RSPO4、別名CRISTIN4およびC20orf182)、GenBank Entrez Gene ID 228770(Rspo4、別名A730099F22およびA930029K19Rik)、GenBank Entrez Gene ID 485813、およびGenBank
Entrez Gene ID 101091527を挙げることができる。いくつかの実施形態において、RSPO4は、RSPO4の機能的変異体である。いくつかの実施形態において、機能的RSPO4変異体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失(例えば、短縮化)を含むことがあるが、完全長RSPO4の1つまたはそれ以上の活性(例えば、Wntシグナル伝達活性、本明細書に記載および/または例示するアッセイ)に関する一部またはすべての活性を保持することができる。いくつかの実施形態において、機能的RSPO4変異体は、短縮型RSPO4である。短縮型RSPO4ポリペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号18および19、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号18および19が挙げられる。
【0078】
本明細書で用いる場合、「RNA干渉(RNAi)」は、通常は特異的mRNA分子の破壊が原因で起こる、RNA分子が遺伝子発現を阻害する生物学的過程である。RNAiの例としては、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)が挙げられる。
【0079】
本明細書で用いる場合、「低分子ヘアピン型RNA」または「短鎖ヘアピン型RNA」(shRNA)は、標的遺伝子発現を;例えばRNA干渉によって、発現停止させるために使用することができる、急なヘアピンターンを生じさせるRNA分子である。
【0080】
「Wntシグナル伝達」は、Wntタンパク質とFrizzled(Fz)ファミリー受容体との相互作用によって調節される関連細胞シグナル伝達経路の1群を指す(総説については、例えば、Logan,C.Y.およびNusse,R.(2004)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.20:781~810頁を参照されたい)。これらの経路は、幅広い発生過程および病態形成過程に関係づけられている。本明細書で用いる場合、別段の規定がない限り、用語「Wntシグナル伝達」は、正準Wnt経路、Wnt/平面内細胞極性(PCP)経路、および/またはWnt/カルシウム経路の一部またはすべてを指すことがある。例えば、正準Wnt経路では、WntのFrizzled/LRP受容体複合体との結合は、ディシブルド(Dsh)、アキシン、大腸腺腫症(APC)およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK-3)活性の修飾をもたらし、最終的にベータ-カテニンの分解を阻害する。したがって、ベータ-カテニンは核に転位し、遺伝子転写を、例えば、リンパ系エンハンサー結合因子1/T細胞特異的転写因子(LEF/TCF)転写因子とともに、調節することができる。いくつかの実施形態では、ベーターカテニン活性をWntシグナル伝達についての読み出しとして(例えば、Molenaar,M.ら(1996)Cell 86(3):391~9頁に特徴が記述されているものなどの、TOP-Flashアッセイによって)アッセイすることができる。
【0081】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそれ自体に関する実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0082】
本明細書で用いる場合、単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、別段の指示がない限り、複数の言及対象を包含する。
【0083】
本明細書に記載する本発明の態様および実施形態が、「含む」、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および実施形態を包含することは理解される。
【0084】
III.処置方法
本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が哺乳動物の眼に送達される、前記方法を提供する。いくつかの実
施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、原発開放隅角緑内障(POAC)である。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障は、若年性の原発開放隅角緑内障(JOAC)である。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒト(例えば、POACを有するヒトまたはJOACを有するヒト)である。いくつかの実施形態において、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する哺乳動物は、突然変異MYOCを有する。いくつかの実施形態において、突然変異MYOCは、ヒトMYOCのE323K、K398R、Q368X、G364V、P370L、D380A、K423E、Y437HおよびI477Sに対応する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、突然変異MYOC遺伝子は、ヒトMYOCのP370Lおよび/またはY437Hアミノ酸置換に対応する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトのミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えばshRNA)をコードするベクターを含む有効量のrAAV粒子を該ヒトの眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障の症状の軽減;例えば、眼圧の低下、MYOCの線維柱帯網内蓄積の低減、高眼圧の低下、または線維柱帯網からの房水流出の増加、に使用される。
【0085】
いくつかの態様において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、眼障害を有する哺乳動物の線維柱帯網細胞におけるWntシグナル伝達を増進する方法であって、該哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)の発現を標的とするMYOC RNAiをコードするベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、Wntシグナル伝達は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAiを発現する1つまたはそれ以上のウイルス粒子を使用して増進され;例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体とMYOC RNAiは、異なる組換えウイルスゲノムを有するrAAVベクターから発現されることもあり、または同じrAAVウイルスゲノムからのものであることもある。
【0086】
治療用ベクター
本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が哺乳動物の眼に送達され;例えば、該治療用ベクターは治療用核酸および/または治療用ポリペプチドをコードすることができる、前記方法を提供する。治療用核酸および/または治療用ポリペプチドをコードする治療用AAVベクターは、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて、作成することができる。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を刺激するポリペプチドである。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、突然変異型MYOCの存在下でWntシグナル伝達を刺激する。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、ヒト突然変異型MYOCの存在下でWntシグナル伝達を刺激する。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、緑内障に関連するヒト突然変異型MYOCの存在下でWntシグナル伝達を刺激する。いくつかの実施形態において、突然変異型MYOCは、P370Lおよび/またはY437Hアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、突然変異MYOCは、ヒトMYOCのE323K、K398R、Q368X、G364V、P370L、D380A、K423E、Y437HおよびI477Sに対応する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためのrAAVベクターであって、R-スポンジン(RSPO)ポリペプチド(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体)をコードする、前記rAAVベクターを提供する。いくつかの実施形態において、RSPO1ポリペプチドは、ヒトRSPO1である。いくつかの実施形態において、RSPO1は、配列番号8のアミノ酸配列、またはその機能的変異体を含む。RSPO1機能的変異体の例としては、配列番号8のアミノ酸配列に対する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加および/または欠失を有するRSPO1が挙げられる。いくつかの実施形態において、変異型RSPO1は、配列番号8のアミノ酸配列に対する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの置換、付加および/または欠失を含むが、Wntシグナル伝達を(例えば、突然変異型MYOCの存在下で)刺激する能力を維持する。いくつかの実施形態において、変異型RSPO1は、配列番号8に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO1は、短縮型RSPO1である。いくつかの実施形態において、短縮型RSPO1は、1つまたはそれ以上のフューリン様Cysリッチドメイン(例えば、FU1および/またはFU2)を含むことがあり、しかし次のうちの1つまたはそれ以上がないことがある:シグナルペプチド、トロンボスポンジン1型ドメイン(例えば、TSR-1またはTSP1)、および/または正電荷を有するC末端ドメイン(例えば、二分NLSおよび/またはBRドメインを含む;参考のために図11~13Cを参照されたい)。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO1は、配列番号11および/もしくは12、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号11および/もしくは12を含むことがある。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO1は、配列番号11および/または12に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO2ポリペプチドは、ヒトRSPO2である。いくつかの実施形態において、RSPO2は、配列番号9のアミノ酸配列、またはその機能的変異体を含む。RSPO2機能的変異体の例としては、配列番号9のアミノ酸配列に対する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加および/または欠失を有するRSPO2が挙げられる。いくつかの実施形態において、変異型RSPO2は、配列番号9のアミノ酸配列に対する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの置換、付加および/または欠失を含むが、Wntシグナル伝達を(例えば、突然変異型MYOCの存在下で)刺激する能力を維持する。いくつかの実施形態において、変異型RSPO2は、配列番号9に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO2は、短縮型RSPO2である。いくつかの実施形態において、短縮型RSPO2は、1つまたはそれ以上のフューリン様Cysリッチドメイン(例えば、FU1および/またはFU2)を含むことがあり、しかし次のうちの1つまたはそれ以上がないことがある:シグナルペプチド、トロンボスポンジン1型ドメイン(例えば、TSR-1またはTSP1)、および/または正電荷を有するC末端ドメイン(例えば、二分NLSおよび/またはBRドメインを含む;参考のために図11~13Cを参照されたい)。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO2は、配列番号13および/もしくは14、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号13および/もしくは14を含むことがある。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO2は、配列番号13および/または14に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3ポリペプチドは、ヒトRSPO3である。いくつかの実施形態において、RSPO3は、配列番号1のアミノ酸配列、またはその機能的変異体を含む。RSPO3機能的変異体の例としては、配列番号1のアミノ酸配列に対する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加および/または欠失を有するRSPO3が挙げられる。いくつかの実施形態において、変異型RSPO
3は、配列番号1のアミノ酸配列に対する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの置換、付加および/または欠失を含むが、Wntシグナル伝達を(例えば、突然変異型MYOCの存在下で)刺激する能力を維持する。いくつかの実施形態において、変異型RSPO3は、配列番号1に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO3は、短縮型RSPO3である。いくつかの実施形態において、短縮型RSPO3は、1つまたはそれ以上のフューリン様Cysリッチドメイン(例えば、FU1および/またはFU2)を含むことがあり、しかし次のうちの1つまたはそれ以上がないことがある:シグナルペプチド、トロンボスポンジン1型ドメイン(例えば、TSR-1またはTSP1)、および/または正電荷を有するC末端ドメイン(例えば、二分NLSおよび/またはBRドメインを含む;参考のために図11~13Cを参照されたい)。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO3は、配列番号15、16および/もしくは17、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号15、16および/もしくは17を含むことがある。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO3は、配列番号15,16および/または17に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4ポリペプチドは、ヒトRSPO4である。いくつかの実施形態において、RSPO4は、配列番号9のアミノ酸配列、またはその機能的変異体を含む。RSPO2機能的変異体の例としては、配列番号10のアミノ酸配列に対する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加および/または欠失を有するRSPO2が挙げられる。いくつかの実施形態において、変異型RSPO4は、配列番号10のアミノ酸配列に対する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くの置換、付加および/または欠失を含むが、Wntシグナル伝達を(例えば、突然変異型MYOCの存在下で)刺激する能力を維持する。いくつかの実施形態において、変異型RSPO4は、配列番号10に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。いくつかの実施形態において、RSPO4は、短縮型RSPO4である。いくつかの実施形態において、短縮型RSPO4は、1つまたはそれ以上のフューリン様Cysリッチドメイン(例えば、FU1および/またはFU2)を含むことがあり、しかし次のうちの1つまたはそれ以上がないことがある:シグナルペプチド、トロンボスポンジン1型ドメイン(例えば、TSR-1またはTSP1)、および/または正電荷を有するC末端ドメイン(例えば、二分NLSおよび/またはBRドメインを含む;参考のために図11~13Cを参照されたい)。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO4は、配列番号18および/もしくは19、またはシグナルペプチドがないプロセシングされた形態の配列番号18および19を含むことがある。ある特定の実施形態において、短縮型RSPO4は、配列番号18および/または19に対して約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、プロモーターに作動可能に連結されているRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4、またはその機能的変異体を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0089】
本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が哺乳動物の眼に送達され;例えば、該治療用ベクターは治療用核
酸および/または治療用ポリペプチドをコードすることができる、前記方法を提供する。治療用核酸および/または治療用ポリペプチドをコードする治療用AAVベクターは、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて、作成することができる。いくつかの実施形態において、治療用核酸は、MYOCの発現を標的とするRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型ヒトMYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、突然変異型ヒトMYOCは、P370Lアミノ酸置換および/またはY437アミノ酸置換を含む。治療用核酸の非限定的な例としては、RNAi、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)および/またはリボザイム(例えば、ハンマーヘッド型およびヘアピンリボザイム)が挙げられる。いくつかの実施形態において、MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする異種核酸は、MYOC(例えば、野生型および突然変異型MYOC)の発現を低減または阻害するshRNAである。
【0090】
いくつかの態様において、本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が哺乳動物の眼に送達され、該治療用ベクターは、1つまたはそれ以上の治療用ポリペプチドをコードする核酸を含む、前記方法を提供する。治療用ベクターを含むrAAV粒子は、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて、作成することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を標的とする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を刺激にする。
【0091】
いくつかの態様において、本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が哺乳動物の眼に送達され、該ベクターは、1つまたはそれ以上の治療用ポリペプチドをコードする核酸と、1つまたはそれ以上の治療用核酸とを含む、前記方法を提供する。治療用ベクターを含むrAAV粒子は、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて、作成することができる。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を標的とし、治療用核酸は、MYOC発現を標的とする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を刺激にする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型ヒトMYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、突然変異型ヒトMYOCは、P370Lアミノ酸置換および/またはY437アミノ酸置換を含む。治療用核酸の非限定的な例としては、RNAi、siRNA、miRNA、shRNAおよび/またはリボザイムが挙げられる。
【0092】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物におけるミオシリン(MYOC)緑内障の遺伝子治療の方法であって、1つまたはそれ以上の治療用ペプチドをコードするベクターを含むrAAV粒子が該哺乳動物に投与され、1つまたはそれ以上の治療用核酸をコードするベクターを含むrAAV粒子が該哺乳動物に投与される、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を標的とし、治療用核酸は、MYOC発現を標的とする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、Wntシグナル伝達を刺激にする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型MYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。い
くつかの実施形態において、異種核酸は、突然変異型ヒトMYOCの発現を低減または阻害するRNAをコードする。いくつかの実施形態において、突然変異型ヒトMYOCは、P370Lアミノ酸置換および/またはY437アミノ酸置換を含む。治療用核酸の非限定的な例としては、RNAi、siRNA、miRNA、shRNAおよび/またはリボザイムが挙げられる。1つまたはそれ以上の治療用ポリペプチドをコードするベクターを含むrAAV粒子、および1つまたはそれ以上の治療用核酸をコードするベクターを含むrAAV粒子は、哺乳動物に同時に投与されることもあり、または逐次的に投与されることもある。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の治療用ポリペプチドをコードするベクターを含むrAAV粒子は、1つまたはそれ以上の治療用核酸をコードするベクターを含むrAAV粒子が投与される前に投与される。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の治療用ポリペプチドをコードするベクターを含むrAAV粒子は、1つまたはそれ以上の治療用核酸をコードするベクターを含むrAAV粒子が投与された後に投与される。
【0093】
本発明の核酸は、細胞内タンパク質であるポリペプチド、細胞膜に固定されているポリペプチド、細胞内に残存するポリペプチド、または本発明のベクターで形質導入された細胞によって分泌されるポリペプチドをコードすることがある。ベクターを受け取った細胞によって分泌されるポリペプチドについては;好ましくは、該ポリペプチドは可溶性である(すなわち、細胞に付着していない)。例えば、可溶性ポリペプチドは、膜貫通領域を欠き、細胞から分泌される。膜貫通ドメインをコードする核酸配列を同定および除去する技術は、当技術分野において公知である。
【0094】
本発明に従って投与することができるベクターは、RNA(例えば、shRNA、RNAi、リボザイム、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA)をコードする核酸を含むベクターであって、該RNAが、該ベクターの該核酸から転写されたとき、発明の病状に関連する異常なまたは過剰なタンパク質;例えばMYOC、の翻訳または転写に干渉することによってミオシリン(MYOC)緑内障を処置することができる、前記ベクターも含む。いくつかの例では、本発明の核酸は、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって疾患を処置するRNAをコードすることもある。治療用RNA配列としては、様々な形態の遺伝性網膜変性の際に発生するものなどの、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって疾患を処置することができる低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、RNAi、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、および/またはリボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイムおよびヘアピンリボザイム)が挙げられる。本発明において使用することができる治療用RNA配列およびこれらの配列をコードする核酸の例としては、米国特許第6、225,291号に記載されているものが挙げられ、前記特許文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態において、治療用RNA配列は、MYOCの発現を標的とするRNAi(例えば、shRNA)配列である。いくつかの実施形態において、MYOCの発現を標的とするRNAi(例えば、shRNA)配列は、MYOCの発現を低減または阻害するRNAi(例えば、shRNA)配列である。いくつかの実施形態において、RNAi(例えば、shRNA)は、ヒトMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、RNAi(例えば、shRNA)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むMYOCの発現を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、MYOC
RNAi(例えば、shRNA)は、MYOCのQAMSVIH(配列番号6)アミノ酸配列を標的とする。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、MYOCの発現を標的とする(例えば、低減または阻害する)1つより多くのRNAi(例えば、shRNA)を含むベクターをコードする。いくつかの実施形態において、MYOC RNAi(
例えば、shRNA)のループ配列は、AATAGTGAAGCCACAGATGTATT(配列番号7)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、MYOCの発現を標的とする(例えば、低減または阻害する)1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のRNAi(例えば、shRNA)を含むベクターをコードする。
【0096】
いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、プロモーターに作動可能に連結されているMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、線維柱帯網の細胞においてMYOC RNAi(例えば、shRNA)を発現させることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。
【0097】
いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、本明細書に記載の任意のRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、および本明細書に記載の任意のMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、およびMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸は、異なるrAAVゲノム上にある。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、およびMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸は、同じrAAVゲノム上にある。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、およびMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸は、同じプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、およびMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸は、異なるプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸は、MYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸の5’側にある。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸は、MYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸の3’側にある。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードする核酸、およびMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸は、同じプロモーターに作動可能に連結されており、この場合、前記核酸は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体とMYOC RNAi(例えば、shRNA)核酸との間に配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。
【0098】
rAAV組成物
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載するrAAV粒子のいずれかを含む組成物を提供する。一般に、本発明の方法およびシステムに使用するための組成物は、好ましくは、医薬的に許容される賦形剤中の、ポリペプチドおよび/またはRNAをコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子の有効量を含む。当技術分野において周知であるように、医薬的に許容される賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を助長する比較的不活性な物質であり、溶液もしくは懸濁液として、エマルジョンとして、または使用前に液体に溶解もしくは懸濁させるのに好適な固体形態として供給することができる。例えば、賦形剤は、形状もしくは稠度を与えることができ、または希釈剤として作用することができる。好適な賦形剤としては、安定剤、湿潤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変えるための塩、封入剤、pH緩衝物質および緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。
そのような賦形剤は、過度の毒性なく投与することができる、眼への直接送達に好適な任意の医薬品を含む。医薬的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、様々なTWEEN化合物のいずれか、ならびに液体、例えば水、食塩水、グリセロールおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容される塩、例えば、無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などを、そこに含めることができる。医薬的に許容される賦形剤の詳細な論考は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.、N.J.1991)において入手することができる。
【0099】
一般に、これらの組成物は、眼内注射(例えば、硝子体内、前房内、網膜下注射)による投与用に製剤化される。したがって、これらの組成物は、好ましくは医薬的に許容されるビヒクル、例えば食塩水、リンゲル平衡塩類溶液(pH7.4)などと併用される。必須ではないが、場合によっては、組成物を正確な量の投与に好適な単位剤形で供給してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障の処置のためのrAAVの医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態において、製剤は、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、MYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体とMYOC RNAi(例えば、shRNA)とをコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子と、MYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子とを含む。
【0101】
rAAVの眼内送達方法
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、rAAV粒子を該哺乳動物の眼に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、RSPO1、RSPO2、RSPO3および/もしくはRSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターと、MYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターとを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、硝子体内および/前房内注射によって眼に送達される。rAAV粒子の眼への投与方法は、当技術分野において公知である。
【0102】
いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子は、哺乳動物の眼に送達され、そこでその眼の線維柱帯網において前記RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)は発現される。いくつかの実施形態において、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4またはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子は、哺乳動物の眼に送達され、そこでその眼の他の部分(例えば、網膜神経節細胞が形質導入される。R471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシドを含むrAAV粒子の使用は、線維柱帯網の細胞への形質導入を助長することができる。
【0103】
治療用ポリペプチドまたは核酸配列を含むベクターの眼細胞(例えば線維柱帯網の細胞)への安全かつ効率的形質導入によって、形質導入された細胞がミオシリン(MYOC)緑内障(例えば、POACまたはJOAC)の処置に十分な量の治療用ポリペプチドまたはRNA配列を産生する本発明の方法は、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する個体;例えばヒトを処置するために使用することができる。いくつかの実施形態において、眼細胞への形質導入は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてAAVカプシドタンパク質のR471Aアミノ酸置換を含むrAAV2粒子を使用することによって向上される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、線維柱帯網の細胞への形質導入増加;例えば、線維柱帯網の細胞の約10%超、25%、50%、75%、100%またはこれらの間の任意の数への形質導入を示す。
【0104】
rAAV(いくつかの実施形態では、粒子の形態のもの)の有効量が処置の目的に応じて投与される。例えば、低い形質導入パーセンテージが所望の治療効果を達成できる場合には、処置の目的は、一般に、この形質導入レベルを満たすまたは超えることである。いくつかの例では、この形質導入レベルを、標的細胞(例えば、線維柱帯網の細胞)のたった約1~5%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約20%、いくつかの実施形態では少なくとも約50%、いくつかの実施形態では少なくとも約80%、いくつかの実施形態では少なくとも約95%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約99%の形質導入によって達成することができる。参考のために、1回の注射で投与される粒子の数は、一般に、粒子約1×10~約1×1014の間、粒子約1×10~1×1013の間、粒子1×10~1×1012の間、または粒子1×10、粒子約1×1010、もしくは粒子約1×1011である。rAAV組成物は、同じ手技の間に、または数日、数週間、数カ月もしくは数年間隔を空けて、1回またはそれ以上の眼内注射によって投与されることがある。いくつかの実施形態では、複数のベクターを使用してヒトを処置することもある。
【0105】
AAVウイルス粒子によって形質導入された眼細胞を同定する方法は、当技術分野において公知であり;例えば、免疫組織化学、または高感度緑色蛍光タンパク質などのマーカーの使用を用いて、ウイルス粒子;例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するrAAVカプシドを含むウイルス粒子、の形質導入を検出することができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態において、前記方法は、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する個体;例えば、POACまたはJOACを有するヒトを処置するための、有効量のAAVウイルス粒子の哺乳動物への硝子体内および/または前房内投与を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、前記眼の細胞(例えば、線維柱帯網の細胞)において異種核酸を発現させるために眼内の1カ所またはそれ以上の位置に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、眼内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ所または10カ所より多くの位置のいずれかの1つに注射される。
【0107】
いくつかの実施形態において、rAAVカプシドを含むrAAVウイルス粒子は、1カ所より多くの位置に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間を超えて間隔を空けない。
【0108】
網膜下送達方法
網膜下送達方法は、当技術分野において公知である。例えば、参照によって本明細書に組み入れられているWO2009/105690を参照されたい。簡単に言うと、rAAV粒子(例えば、rAAV2粒子)を黄斑および中心窩の網膜下に送達するための一般的な方法は、以下のおおまかな概要によって説明することができる。この例は、前記方法の特定の特徴を説明することを意図したものに過ぎず、断じて制限を意図したものではない
【0109】
一般に、rAAVベクターは、手術用顕微鏡を使用して直接観察しながら眼内(網膜下)注射される組成物の形態で送達することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、rAAV粒子のカプシドに封入され、該rAAV粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する(例えば、HSPG結合を低減または阻害または減少させる)1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む。この手順は、硝子体切開、続いての、網膜下腔への1回またはそれ以上の小さい網膜切開によって細いカニューレを使用するrAAVベクター懸濁液の注射を含む。
【0110】
簡単に言うと、注入カニューレを所定の位置に縫合して、手術の間ずっと(例えば食塩水の)注入により正常眼球容積を維持することができる。硝子体切除は、適切な口径(例えば、20~27ゲージ)のカニューレを使用して行われ、除去される硝子体ゲルの容量は、注入カニューレからの食塩水または他の等張液の注入によって置換される。硝子体切除は、(1)その皮質(後部硝子体膜)の除去がカニューレによる網膜の貫通を助長する;(2)その除去および流体(例えば食塩水)による置換が、ベクターの眼内注射に適応する腔を形成する、および(3)その制御された除去が、網膜裂孔および予定外の網膜剥離の可能性を低減させるため、行うと有利である。
【0111】
いくつかの実施形態では、適切な口径(例えば、27~45ゲージ)のカニューレを利用して、中心網膜の外側の網膜下腔にrAAV組成物を直接注射し、かくして網膜下腔にブレブを形成する。他の実施形態では、rAAV組成物の網膜注射の前に、少量(例えば、約0.1~約0.5ml)の適切な流体(例えば、食塩水またはリンゲル液)を中心網膜の外側の網膜下腔に網膜下注射する。網膜下腔へのこの初回注射によって網膜下腔内に最初のブレブが構築され、これに起因してその最初のブレブの位置に網膜剥離が限局される。この最初の流体ブレブは、(rAAV送達前に注射面を規定することにより)網膜下腔へのrAAV組成物の標的送達を助長することができ、可能性のある脈絡膜へのrAAV投与を最小にすることができ、硝子体腔へのrAAV注射または逆流の可能性を最小にすることができる。いくつかの実施形態では、1つもしくはそれ以上のrAAV組成物および/または1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤を含む流体を最初の流体ブレブに、同じまたはさらなる細径カニューレいずれかでの最初の流体ブレブへのこれらの流体の直接投与よって、さらに注射することができる。
【0112】
rAAV組成物および/または最初の少量の流体の眼内投与は、注射器に取り付けられた細径カニューレ(例えば、27~45ゲージ)を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、この注射器のプランジャーは、機械化デバイスによって、例えば、足踏みペダルを押し下げることによって駆動することができる。細径カニューレを、強膜切開により、硝子体腔を横断して、標的となる網膜の領域に従って各対象の網膜の所定の部位(しかし中心網膜の外側)に進ませる。直接見えるようにしながら、自然に閉じる拡大しない網膜切開で網膜剥離を限局させてベクター懸濁液を網膜神経感覚上皮下に機械的に注射する。上で述べたように、rAAV組成物を網膜下腔に直接注射して中心網膜の外側のブレブを形成することができ、または該ベクターを中心網膜の外側の最初のブレブに注射してそのブレブを膨張させる(そして網膜剥離領域を拡大する)ことができる。いくつかの実施形態では、rAAV組成物の注射後に別の流体がブレブに注射される。
【0113】
理論に拘束されることを望むものではないが、網膜下注射の速度および位置によって、黄斑、中心窩および/または下にあるRPE細胞を損傷させることがある局所的剪断力が生じる結果となることがある。剪断力を最小にするまたは回避する速度で網膜下注射を行
ってもよい。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約15~17分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、ベクターは、約17~20分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約20~22分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約35~約65μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約35μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約40μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約45μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約50μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約55μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約60μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約65μl/分の速度で注射される。ブレブの注射速度および時間が、例えば、中心網膜の細胞に接近するのに十分な網膜剥離を生じさせるために必要なrAAV組成物の容量またはブレブのサイズ、rAAV組成物を送達するために使用されるカニューレのサイズ、および本発明のカニューレの位置を安全に維持する能力によって左右されることがあることは、当業者には理解されるであろう。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態において、網膜の網膜下腔に注射される組成物の容量は、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μlもしくは1mLのいずれか1つより多いか、またはそれらの間の任意の量である。
【0115】
1つまたは複数(例えば、2、3もしくはそれ以上の)ブレブを形成することができる。一般に、本発明の方法およびシステムによって形成されるブレブの全容量は、眼の流体容量、例えば典型的なヒト対象では約4ml、を超えることができない。個々のブレブ各々の合計容量は、中心網膜の細胞タイプを暴露するのに十分なサイズの網膜剥離を助長するために、および最適な操作に十分な依存度のブレブを生成するために、好ましくは少なくとも約0.3mlであり、より好ましくは少なくとも約5mlである。本発明の方法およびシステムに従ってブレブを生成する際、眼の構造に対する損傷を回避するために適切な眼圧を維持しなければならないことは、当業者には理解されるであろう。個々のブレブ各々のサイズは、例えば、約0.5~約1.2ml、約0.8~約1.2ml、約0.9~約1.2ml、約0.9~約1.0ml、約1.0~約2.0ml、約1.0~約3.0mlであることがある。したがって、一例では、合計3mlのrAAV組成物懸濁液を注射するために、各々約1mlの3個のブレブを構築することができる。併せてすべてのブレブの合計容量は、例えば、約0.5~約3.0ml、約0.8~約3.0ml、約0.9~約3.0ml、約1.0~約3.0ml、約0.5~約1.5ml、約0.5~約1.2ml、約0.9~約3.0ml、約0.9~約2.0ml、約0.9~約1.0mlとなるだろう。
【0116】
ブレブの原位置の縁部の外側の標的網膜(例えば、中心網膜)領域に安全かつ効率的に形質導入するために、ブレブを操作して形質導入の標的領域にブレブを再配置してもよい。このブレブの操作は、ブレブの容量が生じさせるブレブの依存性によって、眼のブレブを有する位置を変えることによって、ヒトの頭と眼または1つもしくはそれ以上のブレブを有する眼とを位置合わせし直すことによって、および/または液空気置換を用いて行うことができる。これは、特に、中心網膜に関する。この領域は通常は網膜下注射による剥離に耐えるからである。いくつかの実施形態では、流空気置換を用いてブレブを再配置し;注入カニューレからの流体を空気によって、例えば、網膜表面への吹き込み空気によって、一時的に置換する。大量の空気が網膜表面から硝子体腔液を追い出すので、その硝子体腔内の流体はカニューレから流出することができる。硝子体腔液からの圧力の一時的な
欠如に起因して、ブレブは移動し、眼の依存部に引き寄せられる。眼球を適切に配置することによって、隣接領域(例えば、黄斑および/または中心窩)を含むように網膜下rAAV組成物のブレブを操作する。場合によっては、ブレブの大部分は、流空気置換を使用しなくてもブレブを引き寄せさせるのに十分なものである。眼内の所望の位置にブレブを引き寄せさせるように対象の頭の位置を変えることによって、所望の位置へのブレブの移動をさらに助長してもよい。ブレブの所望の立体配置を達成したら、流体を硝子体腔に戻す。この流体は、適切な流体、例えば、作りたての食塩水である。一般に、網膜下rAAV組成物を網膜切開に対する網膜裂孔閉鎖術なしで、および眼内タンポナーデなしで、生体内原位置に放置してもよく、網膜は約48時間以内に自然に再付着することになる。
【0117】
治療用ポリペプチドまたはRNA配列を含むベクターの眼細胞(例えば線維柱帯網の細胞)への安全かつ効率的形質導入によって、形質導入された細胞がミオシリン(MYOC)緑内障の処置に十分な量の治療用ポリペプチドまたはRNA配列を産生する本発明の方法は、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する個体;例えばヒトを処置するために使用することができる。
【0118】
rAAV(いくつかの実施形態では、粒子の形態のもの)の有効量が治療目的に応じて投与される。例えば、低い形質導入パーセンテージによって所望の治療効果が達成できる場合には、処置の目的は、一般に、この形質導入レベルを満たすまたは超えることである。いくつかの例では、この形質導入レベルを、標的細胞のたった約1~5%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約20%、いくつかの実施形態では少なくとも約50%、いくつかの実施形態では少なくとも約80%、いくつかの実施形態では少なくとも約95%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約99%に形質導入することによって達成することができる。上で論じたように、HSPGと相互作用するrAAVカプシドの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換は、rAAV形質導入を向上させる。参考のために、1回の注射で投与される粒子の数は、一般に、粒子約1×10~1×1014の間、粒子約1×10~1×1013の間、粒子約1×10~1×1012の間、または粒子約1×1011である。rAAV組成物は、同じ手技の間に、または数日、数週間、数カ月もしくは数年間隔を空けて、1回またはそれ以上の網膜下注射によって投与されることがある。いくつかの実施形態では、複数のベクターを使用してヒトを処置することもある。
【0119】
いくつかの実施形態において、治療有効量のrAAVウイルス粒子の眼への投与は、眼細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%のいずれかを超える%、もしくは100%、またはこれらの間の任意の%への形質導入をもたらす。いくつかの実施形態では、眼細胞の約5%~約100%、10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。rAAVカプシドを含むAAVウイルス粒子によって形質導入された眼細胞を同定する方法は、当技術分野において公知であり;例えば、免疫組織化学、または高感度緑色蛍光タンパク質などのマーカーの使用を用いて、ウイルス粒子の形質導入を検出することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療有効量のrAAVウイルス粒子の線維柱帯網への投与は、線維柱帯網細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%のいずれかを超える%、もしくは100%、またはこれらの間の任意の%への形質導入をもたらす。いくつかの実施形態では、線維柱帯網細胞の約5%~約100%、10%~約50%、約10~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%に形質導入される。rAAVカプシドを含むAAVウイルス粒子によって形質導入された線維柱帯網胞を同定する方法は、当技術分野において公知であり;例えば、免疫組織化学、または高
感度緑色蛍光タンパク質などのマーカーの使用を用いて、ウイルス粒子の形質導入を検出することができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態において、前記方法は、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する個体;例えば、ミオシリン(MYOC)緑内障を有するヒトを処置するために、有効量のAAVウイルス粒子を哺乳動物の眼に投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、眼細胞において異種核酸を発現させるために眼内の1カ所またはそれ以上の位置に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、眼内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ所または10カ所より多くの位置のいずれかの1つに注射される。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態において、前記方法は、ミオシリン(MYOC)緑内障を有する個体;例えば、ミオシリン(MYOC)緑内障を有するヒトを処置するために、有効量のAAVウイルス粒子を哺乳動物の線維柱帯網に投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、線維柱帯網細胞において異種核酸を発現させるために線維柱帯網内の1カ所またはそれ以上の位置に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、線維柱帯網内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ所または10カ所より多くの位置のいずれかの1つに注射される。
【0123】
いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子は、1カ所より多くの位置に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間を超えて間隔を空けない。
【0124】
硝子体内注射の方法
硝子体内注射の一般的な方法は、以下のおおまかな概要によって説明することができる。この例は、前記方法の特定の特徴を説明することを意図したものに過ぎず、断じて制限を意図したものではない。硝子体内注射の手技は、当技術分野において公知である(例えば、Peyman,G.A.ら(2009)Retina 29(7):875~912頁、ならびにFagan,X.J.およびAl-Qureshi,S.(2013)Clin.Experiment.Ophthalmol.41(5):500~7頁を参照されたい)。
【0125】
簡単に言うと、硝子体内注射の対象に、瞳孔拡大、眼の消毒、および麻酔薬の投与によってその手技のための準備を施すことができる。当技術分野において公知のいずれの好適な散瞳薬を瞳孔拡大に使用してもよい。十分な瞳孔拡大を確認した後、処置することができる。消毒は、眼の消毒処置薬、例えば、ポビドン-ヨード(BETADINE(登録商標))などのヨウ素含有溶液を適用することによって果たすことができる。まぶた、まつげおよび任意の他の周囲の組織(例えば、皮膚)を清浄にするために同様の溶液を使用してもよい。いずれの好適な麻酔薬、例えばリドカインまたはプロパラカインを、いずれの好適な濃度で使用してもよい。麻酔薬は、限定ではないが、局所滴剤、ゲルまたはゼリー、および麻酔薬の結膜下適用をはじめとする、当技術分野において公知の任意の方法によって投与することができる。
【0126】
注射に先立ち、消毒した開瞼器を使用して、その領域からまつげをなくす。注射部位に注射器で印をつけてもよい。注射部位を患者の水晶体に基づいて選択してもよい。例えば、注射部位は、偽水晶体または無水晶体患者の場合は縁から3~3.5mm、有水晶体患者の場合は縁から3.5~4mmであることがある。患者は、注射部位とは反対の方を見ることができる。
【0127】
注射中に、針を強膜に垂直に挿入し、眼の中心に向けてもよい。針を、先端が網膜下腔ではなく硝子体腔内で終わるように挿入してもよい。当技術分野において公知のいずれの好適な注射量を使用してもよい。注射後、眼を抗生物質などの消毒薬で処置してもよい。眼をすすいで過剰な消毒薬を除去してもよい。
【0128】
前房内注射の方法
眼への前房内注射方法は、当技術分野において公知である。前房内注射の非限定的な例は、Buieら(2010)IOVS 51(1):236~248頁によって提供されている。
【0129】
硝子体内または前房内注射によるrAAV送達の有効性を、本明細書に記載のいくつかの基準によってモニターすることができる。例えば、本発明の方法を使用して対象の処置を行った後、本明細書に記載するものを含む1つまたはそれ以上の臨床パラメータによって、例えば、病状の1つまたはそれ以上の兆候または症状の改善および/もしくは安定化ならびに/または進行遅延について、対象を評価してもよい。そのような試験の例は当技術分野において公知であり、客観的測定はもちろん、主観的(例えば、対象によって報告される)測定も含む。例えば、対象の視覚機能に対する処置の有効性を測定するために、次のうちの1つまたはそれ以上を評価してもよい:対象の主観的な見え方の質または中心視機能の向上(例えば、対象の流暢に読む能力および顔を認識する能力の向上)、対象の視覚の動き(例えば、迷路を進むために必要な時間の減少)、視力(例えば、対象のLogMARスコアの向上)、微小視野測定(例えば、対象のdBスコアの向上)、暗順応視野測定(例えば、対象のdBスコアの向上)、微細マトリックスマッピング(例えば、対象のdBスコアの向上)、ゴールドマン視野測定(例えば、暗点領域(すなわち盲領域)のサイズ低減およびより小さい標的を解像する能力の向上)、フリッカー感度(例えば、ヘルツの向上)、自発蛍光、および電気生理学測定(例えば、ERGの向上)。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の視覚の動きによって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の視力によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、微小視野測定によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、暗順応視野測定によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、ERGによって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の主観的な見え方の質によって測定される。
【0130】
本明細書に記載する方法および組成物にいずれについても、ミオシリン(MYOC)緑内障の医学的検査を用いて、本明細書に記載する処置の効能を評価すること、または本明細書に記載する処置の恩恵に浴することができる患者を診断することができる。ミオシリン(MYOC)緑内障を診断またはモニターするための非常に多くの医学的検査が当技術分野において公知である。例えば、検眼鏡検査、レーザー旋光分析、光干渉断層撮影(ocular coherence tomography)、および/または走査レーザー断層撮影を用いて、ミオシリン(MYOC)緑内障によって損傷されている可能性がある視神経を検査することができる。眼圧は、眼圧検査によって測定することができる。パキメータを使用して中心角膜厚を測定することができる(例えば、薄い中心角膜厚は、ミオシリン(MYOC)緑内障を示すことができる)。視野検査を用いて視野を評価することができる。
【0131】
上で説明したように、ミオシリン突然変異は、原発開放隅角ミオシリン(MYOC)緑内障(POAG)関係づけられている。したがって、POAGを診断するための医学的検査を用いて、本明細書に記載する処置の効能を評価すること、または本明細書に記載する処置の恩恵に浴することができる患者を診断することができる。当技術分野において公知のPOAGを診断するための任意の医学的検査を用いて、例えば、POAGを別の型のミオシリン(MYOC)緑内障(例えば、閉塞隅角緑内障)と区別することができる。例え
ば、隅角鏡検査を用いて、POAGの診断を助ける評価を得ることができる。
【0132】
ミオシリン(MYOC)緑内障の処置の効能を動物モデルで試験することができる。ミオシリン(MYOC)緑内障の動物モデルは、当技術分野において公知である。例えば、Y437HヒトMYOCまたはY423HマウスMYOCを発現するマウスは、POAGに類似したミオシリン(MYOC)緑内障症状を発症することが実証されている(Zodeら(2011)J.Clin.Invest.121(9):3542~53頁、およびSenatorov,V.ら(2006)J.Neurosci.26(46):11903~14頁を参照されたい)。加えて、一酸化窒素受容体可溶性グアニル酸シクラーゼのアルファサブユニットがないマウスは、もう1つのPOAGモデルである(Buys,E.S.ら(2013)PLoS ONE 8(3):e60156)。ラットモデルも開発されている;アデノウイルス遺伝子導入によって送達されたヒトTGF-ベータを発現するラットはIOP上昇を示す(Shepard,A.R.ら(2010)Invest.Ophthalmol.51(4):2067~76頁)。霊長類、イヌおよびゼブラフィッシュモデルを含む、POAGの様々な態様についての他の動物モデルのさらなる説明は、Bouhenni,R.A.ら(2012)J.Biomed.Biotechnol.2012:692609において見い出すことができる。
【0133】
一部の眼障害には、あるタイプの細胞の機能の向上が別のタイプの細胞の機能を向上させる「ナース細胞」現象がある。例えば、本発明のrAAVによる中心網膜のRPEへの形質導入は杆体の機能を向上させることができ、そしてまた、向上された杆体機能が、錐体機能向上をもたらす。したがって、あるタイプの細胞の処置は、別のタイプの細胞に関する機能向上をもたらすことができる。ミオシリン(MYOC)緑内障において、TMへの形質導入によるIOPの低下は、神経節細胞構造よび機能の変性を低減させることになる。
【0134】
特定のrAAVベクターおよび組成物の選択は、個々のヒトの病歴ならびに処置される状態および個体の特徴を含むがこれらに限定されない、多数の異なる因子に依存する。そのような特徴の評価および適切な治療レジメンの設計は、最終的には、処方する医師の責任である。
【0135】
本発明の組成物(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4もしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする、AAVウイルス粒子)を単独で使用することができ、または眼障害を処置するための1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤と併用することができる。逐次投与間の間隔は、少なくとも数分、数時間もしくは数日(または、代替的に、数分、数時間もしくは数日未満の)単位であってよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤が線維柱帯網に投与されることもある。さらなる治療剤の非限定的な例としては、プロスタグランジン、例えば、キサラタン、ルミガン、トラバタンズおよびレスキュラ;ティモプティックXE、イスタロールおよびベトプティックSを含むベータ遮断薬;アイオピジン、アルファガン、アルファガン-Pを含むアルファ-アドレナリン刺激薬;トルソプトおよびエイゾプト、ダイアモックス、ネプタザンおよびダラナイドを含む炭酸脱水酵素阻害剤;ピロカルピン、カルバコール、エコチオパートおよびデメカリウムを含む副交感神経刺激薬;プロピンを含む、エピネフリン;またはコソプト、コンビガンおよびデュオトラバを含む併用処置が挙げられる。
【0137】
IV.発現構築物
本発明は、異種核酸を含むrAAVベクターの網膜下送達によって眼に異種核酸を送達
する方法であって、該rAAVベクターは、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVカプシドに封入されている、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、異種核酸(例えば、導入遺伝子)は、プロモーターに作動可能に連結されている。例示的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9頁)および伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター(Kimら、Gene、1990、91(2):217~23頁およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10頁)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、またはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されているサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性または抑制性プロモーターであることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、眼の細胞において異種核酸を発現する能力がある。いくつかの実施形態において、プロモーターは、光受容器細胞またはRPEにおいて異種核酸を発現する能力がある。実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、例えば、ヒトRKプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、オプシンプロモーター、例えば、ヒトオプシンプロモーターまたはマウスオプシンプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、CBAプロモーターの制御下のRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を該哺乳動物の眼に投与することによる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、CBAプロモーターの制御下のMYOC(例えば、ヒトMYOC)を標的とする(例えば、低減または阻害する)RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を該哺乳動物の眼に投与することによる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、CBAプロモーターの制御下のRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子と、CBAプロモーターの制御下のMYOC(例えば、ヒトMYOC)を標的とする(例えば、低減または阻害する)RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子とを該哺乳動物の眼に投与することによる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)のミオシリン(MYOC)緑内障を処置する方法であって、CBAプロモーターの制御下のRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体とCBAプロモーターの制御下のMYOC(例えば、ヒトMYOC)を標的とする(例えば、低減もしくは阻害する)RNAi(例えば、shRNA)とをコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子を該哺乳動物の眼に投与することによる、前記方法を提供する。
【0138】
本発明は、rAAVウイルス粒子へのパッケージングのために治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする1つまたはそれ以上の核酸配列を導入するための組換えウイルスゲノムの使用を企図している。組換えウイルスゲノムとしては、治療用ポリペプチド
および/または核酸の発現を確立するための任意の要素、例えば、プロモーター、ITR、リボソーム結合要素、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製起点を挙げることができる。
【0139】
いくつかの態様において、本発明は、組換え自己相補性ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子、および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号;同第7,765,583号;同第7,785,888号;同第7,790,154号;同第7,846,729号;同第8,093,054号;および同第8,361,457号;ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されており、これらの参考文献の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分相補性配列(例えば、導入遺伝子の相補性コードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成することになる。いくつかの実施形態において、第1の異種核酸配列と第2の異種核酸配列は、突然変異ITR(例えば、右ITR)によって連結されている。いくつかの実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号20)を含む。突然変異ITRは、末端切断配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製中に、repタンパク質は、ウイルスゲノムを突然変異ITRで切断しないことになり、したがって、5’から3’の順序で以下のものを含む組換えウイルスゲノムは、ウイルスカプシドにパッケージングされることになる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異AAV ITR、第1の異種ヌクレオチドに対して逆向きの第2のポリヌクレオチド配列、そして第3のAAV ITR。
【0140】
VI.ウイルス粒子およびウイルス粒子の生産方法
rAAVウイルス粒子
本発明は、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置するためにrAAV粒子を使用する方法を提供し、rAAV粒子を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、1つまたは2つのITRと隣接している、本明細書に記載するRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えばshRNA)をコードする配列を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子に封入されている。AAV粒子は、カプシドタンパク質も含む。いくつかの実施形態において、核酸は、転写方向に成分が作動可能に連結されている目的(例えば、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えばshRNA)をコードする核酸)のコード配列、転写開始および終結配列を含む制御配列を含み、それによって発現カセットを形成する。発現カセットは、その5’および3’末端に少なくとも1つの機能性AAV ITR配列が隣接している。「機能性AAV ITR配列」は、該ITR配列が、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングのために意図した通りに機能することを意味する。Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40頁;およびPechanら、Gene Ther.、2009、16:10~16頁を参照されたい。これらの参考文献のすべては、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。本発明のいくつかの態様を実施するために、組換えベクターは、カプシド封入に不可欠なAAVの配列のすべておよびrAAVによる感染のための物理的構造を少なくとも含む。本発明のベクターに使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要がなく(例えば、Kotin、Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801頁に記載の通り)、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって改変されていてもよく、またはいくつかのAAV血清型のいずれに由
来するものであってもよい。AAVの40より多くの血清型が今では公知であり、新たな血清型、および既存の血清型の変異体が同定され続けている。Gaoら、PNAS、2002、99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6頁;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810頁を参照されたい。任意のAAV血清型の使用が本発明の範囲内で考えられる。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVなどを限定ではないが含む、AAV血清型に由来するベクターである。いくつかの実施形態において、AAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型逆位末端反復配列(ITR)などのITRを含む。いくつかの実施形態において、AAV中の核酸は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体;MYOC RNAi(例えば、shRNA);またはRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体と本明細書に記載のMYOCをさらにコードする。例えば、AAV中の核酸は、本明細書において企図される任意のAAV血清型の、少なくとも1つのITRを含むことができ、配列番号6を標的とし、かつ配列番号7のループ配列を含むMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする核酸、ならびに/または次のうちの1つもしくはそれ以上をさらにコードすることができる:配列番号8、11および/もしくは12を含むRSPO1;配列番号9、13および/もしくは14を含むRSPO2;配列番号1、15、16および/もしくは17を含むRSPO3;ならびに配列番号10、18および/もしくは19を含むRSPO4。いくつかの実施形態において、核酸は、配列番号8、11もしくは12と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるRSPO1;配列番号9、13もしくは14と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるRSPO2;配列番号1もしくは15~17と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるRSPO3;または配列番号10、18もしくは19と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるRSPO4をコードする。
【0141】
さらなる実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2012/0164106号に記載されているような変異型AAV6カプシド、例えばShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開第2013/0323226号に記載されているような修飾AAV9カプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンカプシド突然変異体、ヘパリン結合カプシド突然変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、もしくは米国特許登録前出願公開2012/0066783号に記載されている他の任意のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開番号WO/2003/042397に記載されているAAVカプシドのカプシドタンパク質を含む。いく
つかの実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585またはR588位のうちの1カ所またはそれ以上におけるアミノ酸置換を含むAAVカプシドを含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、突然変異型カプシドタンパク質は、AAVカプシドを形成する能力を維持する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、線維柱帯網への形質導入を可能にするカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、線維柱帯網への形質導入を可能にする突然変異型カプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のカプシドタンパク質であって、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含む前記カプシドタンパク質を含む(Lochrie ら、J Virol(2006)80(2):821~834頁)。いくつかの実施形態において、本発明は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体をコードするベクター;AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含むAAV2カプシド;および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするベクターを含む、rAAV粒子を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための組成物および方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV2ウイルス粒子が該哺乳動物の眼に送達され、そこでその眼の異なる部分(例えば、網膜)が形質導入され得、MYOC RNAiをコードするrAAVベクターを含むrAAV2 R471Aウイルス粒子が該哺乳動物の眼に送達され、そこで線維柱帯網の細胞が形質導入される、前記組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための組成物および方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV2 R471Aウイルス粒子と、MYOC RNAiをコードするrAAVベクターを含むrAAV2 R471Aウイルス粒子とが、該哺乳動物の眼に送達され、そこで線維柱帯網の細胞が形質導入される、前記組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、哺乳動物のミオシリン(MYOC)緑内障を処置するための組成物および方法であって、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードし、かつMYOC RNAiをコードするrAAVベクターを含むrAAV2 R471Aウイルス粒子が、該哺乳動物の眼に送達され、そこで線維柱帯網の細胞が形質導入される、前記組成物および方法を提供する。
【0143】
いくつかの態様において、本発明は、導入遺伝子を(例えば、治療用導入遺伝子を眼の線維柱帯網に)送達するための組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、組成物および方法は、AAV2のVP1を基準にしてナンバリングしてR471Aアミノ酸置換を含む突然変異型カプシドを含む、rAAV2粒子を使用する。そのような組成物および方法は、眼疾患;例えば、線維柱帯網に関連する眼疾患、例えばミオシリン(MYOC)緑内障、の処置に使用することができる。
【0144】
様々なAAV血清型が、特定の標的細胞への形質導入を最適化するために、または特定の標的組織(例えば、罹病組織)内の特異的細胞タイプを標的化するために、使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。
【0145】
自己相補型AAVウイルスゲノム
いくつかの態様において、本発明は、組換え自己相補型ゲノムを含むウイルス粒子を提
供する。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子、および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号;同第7,765,583号;同第7,785,888号;同第7,790,154号;同第7,846,729号;同第8,093,054号;および同第8,361,457号;ならびにWang Z.ら(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されており、これらの参考文献の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分相補性配列(例えば、導入遺伝子の相補性コードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成することになる。いくつかの実施形態において、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子であって、該rAAVゲノムが、第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、miR-708および/またはロドプシンコード鎖)と、第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、miR-708のアンチセンス鎖および/またはロドプシン非コードもしくはアンチセンス鎖)とを含み、該第1の異種ポリヌクレオチド配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2のポリヌクレオチド配列と鎖間塩基対を形成することができる、前記AAVウイルス粒子を提供する。いくつかの実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列と第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖間塩基対合を助長する配列;例えば、ヘアピンDNA構造、によって連結されている。ヘアピン構造、例えば、siRNA分子のヘアピン構造は、当技術分野において公知である。いくつかの実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列と第2の異種ポリヌクレオチド配列は、突然変異ITR(例えば、右ITR)によって連結されている。いくつかの実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号20)を含む。突然変異ITRは、末端切断配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製中に、repタンパク質は、ウイルスゲノムを突然変異ITRで切断しないことになり、したがって、5’から3’の順序で以下のものを含む組換えウイルスゲノムがウイルスカプシドにパッケージングされることになる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異AAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドに対して逆向きの第2の異種ポリヌクレオチド、そして第3のAAV ITR。いくつかの実施形態において、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むAAVウイルス粒子であって、該組換えウイルスゲノムが、機能的AAV2 ITRと、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、D領域の欠失を含み、機能的末端切断配列がない、突然変異AAV2 ITRと、該第1のポリヌクレオチド配列のRSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする配列に対する相補配列を含む第2のポリヌクレオチド配列と、機能的AAV2 ITRとを含む前記AAVウイルス粒子を提供する。
【0146】
AAV粒子の生産
rAAV粒子は、当技術分野において公知の方法を用いて生産することができる。例えば、米国特許6,566,118号;同第6,989,264号;および同第6,995,006号を参照されたい。本発明を実施する場合、rAAV粒子を生産する宿主細胞としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、微生物細胞および酵母が挙げられる。宿主細胞は、AAV repおよびcap遺伝子が宿主細胞内に安定的に維持されるパッケージング細胞、またはAAVベクターゲノムが安定的に維持されるプロデューサー細胞である場合もある。例示的パッケージングおよびプロデューサー細胞は、293、A549またはヒーラ細胞に由来する。AAVベクターは、当技術分野において公知の標準的技術を用いてを精製され、製剤化される。
【0147】
いくつかの態様では、本明細書に開示の任意のrAAV粒子を生産する方法を提供し、この方法は、(a)rAAV粒子が生産される条件下で宿主細胞を培養する工程であって、該宿主細胞は、(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子[ここで、該AAVパッケージング遺伝子の各々は、AAV複製および/またはカプシド封入タンパク質をコードする]と;(ii)少なくとも1つのAAV ITRが隣接している本明細書に記載の治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする核酸を含むrAAVプロベクターと、(iii)AAVヘルパー機能とを含む、前記工程;および(b)前記宿主細胞によって生産されたrAAV粒子を回収する工程を含む。
【0148】
さらなる実施形態では、rAAV粒子を精製する。用語「精製された」は、本明細書で用いる場合、rAAV粒子が天然に存在するまたは元はそこから調製された場所に存在することもある他の成分の少なくとも一部がないrAAV粒子の製品を含む。したがって、例えば、ソース混合物、例えば培養溶解物または生産培養上清、からrAAV粒子を濃縮する精製技術を用いて、単離されたrAAV粒子を製造してもよい。濃縮は、様々な方法で、例えば、溶液中に存在するDNアーゼ耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の比率よって、または感染力よって、測定することができ、またはソース混合物中に存在する第2の、干渉する可能性のある物質、例えば、不純物[生産培養不純物もしくは工程内不純物(ヘルパーウイルス、培地成分などを含む)を含む]に関して測定することができる。
【0149】
治療用ポリペプチドおよび/または治療用核酸をコードする異種核酸を含むrAAV粒子であって、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVカプシドを含む前記rAAV粒子、ならびに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も本明細書において提供する。前記医薬組成物は、本明細書に記載する任意の投与方式;例えば網膜下投与によるもの、に好適であるだろう。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するrAAVと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。そのような担体は、当技術分野において周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載するrAAVと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物は、眼注射に好適である。そのような医薬的に許容される担体は、滅菌液、例えば、水および油(石油、動物、植物または合成由来のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油などを含む)であることができる。食塩溶液ならびにデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール水溶液も、特に注射用溶液のために、液体担体として用いることができる。医薬組成物は、さらなる成分、例えば、保存薬、緩衝剤、等張化剤、抗酸化物質および安定剤、非イオン性湿潤または清澄化剤、増粘剤などをさらに含むことがある。本明細書に記載する医薬組成物を単一単位剤形でまたは複数投与量形態で包装することができる。前記組成物は、一般に、無菌かつ実質的に等張性の溶液として製剤化される。
【0151】
VII.システムおよびキット
本明細書に記載のrAAV組成物を、本明細書に記載の発明の方法の1つで使用するために設計されたシステム内に含めてもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、個体の眼へのベクターの送達のためのシステムであって、a)rAAV粒子の有効量を含む組成物[ここで、該ベクターは、治療用ポリペプチドおよび/または治療用RNAをコードする異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含む];およびb)該rAAVの眼内送達のためのデバイスを含む、前記システムを提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードする、rAAVベクターを含む。いくつかの実施形態
において、rAAV粒子は、MYOC発現を標的とする(例えば、低減または阻害する)1つまたはそれ以上のMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードする、rAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体と、MYOCの発現を標的とする(例えば、低減または阻害する)1つまたはそれ以上のMYOC RNAi(例えば、shRNA)とをコードするrAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、前記キットまたはシステムは、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドまたはその機能的変異体をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子と、MYOC発現を標的とする(例えば、低減または阻害する)1つまたはそれ以上のMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子とを含む。
【0152】
一般に、前記システムは、27~45ゲージである細径カニューレと、1本またはそれ以上の(例えば、1、2、3、4またはそれ以上の)注射器と、本発明の方法での使用に好適な1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4つまたはそれ以上)の流体とを含む。
【0153】
細径カニューレは、網膜下腔に注射されるベクター懸濁液および/または他の流体の網膜下注射に好適である。いくつかの実施形態において、カニューレは27~45ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは35~41ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは40または41ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは41ゲージである。前記カニューレは、いずれの好適なタイプのカニューレであってもよく、例えば、de-Juan(登録商標)カニューレまたはEagle(登録商標)カニューレであってもよい。
【0154】
注射器は、いずれの好適な注射器であってもよいが、ただし、流体送達のためのカニューレへの接続が可能であることを条件とする。いくつかの実施形態において、注射器は、Accurus(登録商標)システム注射器である。いくつかの実施形態において、システムは、1本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、2本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、3本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、4本またはそれ以上の注射器を有する。
【0155】
システムは、例えばフットペダルによって作動させることができる、自動インジェクションポンプをさらに含むことがある。
【0156】
本発明の方法での使用に好適な流体としては、本明細書に記載するもの、例えば、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のベクターの有効量を各々が含む1つまたはそれ以上の流体、最初のブレブを形成するための1つまたはそれ以上の流体(例えば、食塩水または他の適切な流体)、および1つまたはそれ以上の治療剤を含む1つまたはそれ以上の流体が挙げられる。
【0157】
本発明の方法での使用に好適な流体としては、本明細書に記載するもの、例えば、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のベクターの有効量を各々含む1つまたはそれ以上の流体、最初のブレブを形成するための1つまたはそれ以上の流体(例えば、食塩水または他の適切な流体)、および1つまたはそれ以上の治療剤を含む1つまたはそれ以上の流体が挙げられる。
【0158】
いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8mlより大きい。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約0.9mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の
容量は、少なくとも約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約2.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約2.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約1.0~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約1.0~約2.0mlである。
【0159】
最初のブレブを形成するための流体は、例えば、約0.1~約0.5mlであることがある。いくつかの実施形態において、システム内のすべての流体の合計容量は、約0.5~約3.0mlである。
【0160】
いくつかの実施形態において、システムは、単一の流体(例えば、ベクターの有効量を含む流体)を含む。いくつかの実施形態において、システムは、2つの流体を含む。いくつかの実施形態において、システムは、3つの流体を含む。いくつかの実施形態において、システムは、4つまたはそれ以上の流体を含む。
【0161】
本発明のシステムは、さらにキットに包装されることがあり、該キットは、使用説明書をさらに含むことがある。いくつかの実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物の網膜下送達のためのデバイスをさらに含む。いくつかの実施形態において、使用説明書は、本明細書に記載する方法の1つに準じた説明書を含む。いくつかの実施形態において、使用説明書は、RSPO1、RSPO2、RSPO3、RSPO4ポリペプチドもしくはその機能的変異体および/またはMYOC RNAi(例えば、shRNA)をコードするベクターを含むrAAV粒子の硝子体内および/または前房内送達についての説明書を含む。
【実施例
【0162】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに十分に理解されるであろう。しかし、これらの実施例を、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。本明細書に記載する実施例および実施形態が単に説明を目的としたものであること、ならびに様々な修飾または変更が、それらの実施例および実施形態を踏まえて当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれるはずであることが理解される。
【実施例1】
【0163】
緑内障性MYOC突然変異(例えば、P370LおよびY437H)はMYOCの分泌を遮断する
MYOC突然変異体が眼、特に、IOPの一因となることがある細胞、例えば線維柱帯網細胞、の機能にどのような影響を及ぼすのかを理解することは、ミオシリン(MYOC
)緑内障の病態形成を知る上での手がかりとなる。MYOC機能の理解は、ミオシリン(MYOC)緑内障のための、可能性がある治療戦略を見いだすのにも役立つだろう。本明細書に記載する結果は、MYOC突然変異体が野生型MYOC発現を低減させ、Wntシグナル伝達を遮断することを実証する。さらに、これらの結果は、R-スポンジン3(RSPO3)の発現および/またはMYOCのサイレンシングが、突然変異型MYOCの発現によって遮断されたWntシグナル伝達を回復させることができることを示唆する。
【0164】
方法
プラスミドベクター
MYOCおよびRSPO3プラスミドのためのMYOC cDNAは、Clone DB-Sanofi Oncologyによって提供された。RSPO3 cDNAは、Clone DB-Sanofi Oncologyによって提供された。
【0165】
pCBA2-in-MYOC P370Lの構築のために、QUIKCHANGE(登録商標)IIキット(Agilent、Santa Clara)を使用して、製造業者の推奨基準ならびにプライマー5’-ACCACGGACAGTTCCGTATTCTTGGGGTGG -3’(配列番号21)および5’-CCACCCCAAGAATACGGAACTGTCCGTGGT-3’(配列番号22)に従って所望の単一塩基置換を導入した。
【0166】
pCBA2-in-MYOC Y437Hの構築のために、QUIKCHANGE(登録商標)Lightningキット(Agilent、Santa Clara)を使用して、製造業者の推奨基準ならびにプライマー5’-TCTGTGGCACCTTGACACCGTCAGCAGC-3’(配列番号23)および5’-GCTGCTGACGGTGTCAAGGTGCCACAGA-3’(配列番号24)に従って所望の単一塩基置換を導入した。
【0167】
Grp94 shRNAプラスミドは、OriGene Technologies,Inc.(カタログ番号TR312309)から得た。pGIPZ-MYOCプラスミド(Dharmacon GE Life Sciences)は、Clone DB-Sanofi Oncologyによって提供された。GIPZマイクロRNA適応shRNAコレクション(Stegmeierら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.102:13212~7頁)。GIPZ shRNAデザインは、内因性RNAi経路によるプロセシングを可能にし、最小細胞毒性で特異的遺伝子サイレンシングをもたらすために、ネイティブmiR-30一次転写産物に基づくものであった。非標的化ヌルshRNAmirを発現する構成的shRNAmirベクターであるpGIPZ-Nullプラスミドは、Clone DB-Sanofi Oncologyによって提供された。
【0168】
細胞培養および組換えタンパク質
HEK293細胞(Microbix Biosystems Inc.)をDMEM、10%FCSおよび5%CO2で培養した。HEK293T(293T)細胞株をATCCから得、DMEM、10%FCSおよび5%CO2で培養した。
【0169】
初代ヒト線維柱帯網(hTM)細胞の不死化
SV40ラージT抗原(SV40 TAg)をAAV2-SV40 T抗原ベクターでの形質導入による不死化に使用した。完全線維芽細胞増殖培地(ScienCell)中で維持した第7継代hTM細胞(ScienCell Research Laboratories、Carlsbad、CA)を10cm細胞培養プレートに播種し、1×10DRPのAAV2-SV40-Tag(「hTM-T」と標示した)またはAAV2
-EGFP(陰性対照、「hTM-ENT」と標示した)のどちらか一方を24時間、形質導入した。細胞が集密に達したら、それらを2×15cmプレート(P8)で継代させた。細胞をおおよそ3~4日ごとに繰り返し継代した。第10継代で、アリコートを採取して細胞数を判定した。hTM-T細胞からの全細胞数は、hTM-ENT細胞からの全細胞2.5×10と比較して、5.2×10であった。
【0170】
ウェスタンブロッティングを行って、SV40 T抗原の存在を判定した。簡単に言うと、細胞浮遊液500uLを遠心分離し、得られた細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するRIPA緩衝液100μLに溶解した。細胞溶解物5μLをSDS-PAGEによって分析し、その後、iBlot高速転写システム(Life Technologies)を使用して免疫ブロットした。TBSタンパク質不含ブロッカー(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用してブロットをブロックし、モノクローナル抗SV40T抗原抗体(GeneTex、Irvine、CA)とともにインキュベートした。その後、ブロットを抗マウスHRP標的抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)とともにインキュベートした。Supersignal West Femto Chemiluminescent Substrate(Thermo Fisher)を使用して、免疫反応性バンドを可視化した。SV40 T抗原の存在および発現を示す、SV40 T抗原に対応する顕著な80kDaバンドがhTM-Tから検出されたが、hTM-ENT細胞からは検出されなかった。同じく80kDa SV40 T抗原バンドを有する、293T細胞からの溶解物を、陽性対照とした。hTM-T細胞を増殖させ、細胞バンクを第12継代(1×10細胞で10バイアル)、そしてその後、第18継代(10細胞で46バイアル)で、細胞凍結培地(Life Technologies、Grand Island、NY)中で凍結させた。
【0171】
hTM-T特徴づけ
hTM-T細胞と初代hTM細胞の比較は、細胞形態、集団倍加時間、およびプラスミドトランスフェクション効率の著しい差を示した。初代hTM細胞は、長い紡錘形の細胞体で、より大きく、線維芽細胞のように見えたが、不死化hTM-T細胞は、より小さく、立方体状の形状であり、比較的均一なサイズであった。hTM-T細胞株は、増殖速度の増加を示し、集団倍加が初代細胞よりおおよそ3~4倍速く起こった。加えて、hTM-T細胞は、20細胞継代を超えて増殖し続けたが、初代hTM細胞は、第10継代までに増殖減少を示し、第12継代までに最終的な増殖停止を示した。同様の細胞密度の両方の細胞タイプに対してEGFPプラスミドおよびリポフェクタミンを使用して、トランスフェクション効率を判定した。簡単に言うと、Lipofectamine 2000(Life Technologies)をその製造業者のプロトコルに従って使用して、集密に達していないhTM-TまたはhTM細胞にEGFPプラスミドをトランスフェクトした。hTM-T細胞のほうが細胞培養面のmm当りの細胞数は多かったが、初代hTM細胞(約5%)と比較してEGFP+ hTM-T細胞のパーセンテージ(約50%)のほうが明確に高かった。
【0172】
ウェスタンブロッティング
wtMYOC、MYOC突然変異体P370LおよびY437H RSPO3ならびに/またはshRNAを発現するプラスミドを、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を使用して293TまたはhTM-T細胞にトランスフェクトした。簡単に言うと、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するRIPA緩衝液50~100μLに細胞を溶解した。細胞溶解物10~13μLをSDS-PAGEによって分析し、その後、iBlot高速転写システム(Life Technologies)を使用して免疫ブロットした。Tris緩衝食塩水、0.05%Tween 20(TBST)、0.2% I-Block(カゼインベースのブロッキング試薬;Lif
e Technologies)を使用してブロットをブロックし、マウス抗ヒトMYOC抗体とともにインキュベートした。その後、ブロットを抗マウスHRP標的抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)とともにインキュベートした。ECL Chemiluminescent Substrate(Thermo Fisher)を使用して免疫反応性バンドを可視化し、BioMax XARフィルム(Carestream Health)を用いてKodak X-Omat 2000 Processorで現像して可視化した。
【0173】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
293TまたはhTM-T細胞をCostar 96ウェルホワイトまたはブラックウォールプレートに2×10細胞/ウェルで播種した。細胞播種の1~2日後に、Fugene HDトランスフェクション試薬(Promega、Madison、WI)をその製造業者のプロトコルに従って使用してトランスフェクションを行った。
【0174】
簡単に言うと、40:1比のTcf/lef調節ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子とサイトメガロウイルス(CMV)駆動ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を含有する、TopFlashレポータープラスミド(Millipore、Billerica、MA)を、標的プラスミドと1:1混合した。Fugene HD試薬8μLを添加し、直ちに試料をボルテックスし、15分間、室温でインキュベートした。プラスミドDNA複合体を細胞に添加し、37℃で24時間インキュベートした。試料を刺激せず、または組換えヒトまたはマウスwnt3aタンパク質(R&D Systems)400ng/mLで刺激し、さらに20~24時間インキュベートした。Dual Luciferase Assay System(Promega)をその製造業者のプロトコルに従って使用して、Wntシグナル伝達を測定した。Centro XS 960マイクルプレートルミノメーター(Berthold Technologies、Oak Ridge、TN)で吸光度値を測定し、相対発光量(RLU)として記録した。トランスフェクション効率を制御するために、ホタルルシフェラーゼRLUをウミシイタケルシフェラーゼRLUに対して正規化した。すべての試料を3反復ウェルで行った。
【0175】
結果
野生型MYOC(wtMYOC)は培養細胞から分泌されるが、5種の異なる突然変異型のMYOCを発現する細胞からはMYOCが殆どまたは全く分泌されない。また培養細胞への正常MYOCと突然変異型MYOCのコトランスフェクションはwtMYOC分泌を抑制することが報告されている(Jacobsonら(2001)Hum.Mol.Genet.10(2):117~25頁)。MYOC分泌に対する突然変異型MYOC発現の効果を調査するために、野生型MYOC、P370L突然変異型MYOCまたはY437H突然変異型MYOCを発現するプラスミドを293細胞にトランスフェクトした。
【0176】
図1に示すように、野生型MYOCを発現する293細胞は、両方の細胞溶解物において検出可能なMYOCタンパク質発現を示し(「細胞」と標示した、下のブロットを参照されたい)、細胞培養培地に分泌された(「培地」とい標示した、上のブロットを参照されたい)。しかし、P370LまたはY437H MYOCを発現するプラスミドをトランスフェクトした細胞は、細胞内発現を示したが、細胞培養培地への分泌を示さなかった。さらに、野生型MYOCを発現するプラスミドとP370L MYOCまたはY437Y MYOCのどちらら一方を発現するプラスミドとの293細胞へのコトランスフェクションは、細胞培養培地へのMYOC分泌の欠如をもたらした。これらの結果は、P370LおよびY437H突然変異体が293細胞から分泌されることができず、そしてまた野生型MYOCの分泌を遮断することができることを示唆している。
【0177】
これらの結果がヒトの眼細胞で観察されるかどうかを判定するために、さらなる実験に
着手した。ヒト線維柱帯網細胞株を、上で説明したようにSV40ラージT抗原(hTM-T細胞)のAAV媒介発現によって不死化した。293TおよびhTM-T細胞に、野生型MYOCを発現するプラスミド、P370L MYOCを発現するプラスミド、または両方のプラスミドをトランスフェクトした。図2は、これらの細胞における細胞内または分泌MYOCタンパク質の存在を探索するウェスタンブロットを示す。野生型MYOCは、293TおよびhTM-T細胞によって発現され、分泌されたが、P370L MYOCは、293T細胞によっても、hTM-T細胞によっても、発現はされたが分泌されなかった。P370L MYOCはまた、293T細胞においても、hTM-T細胞においても、野生型MYOCの分泌を遮断した。
【0178】
これらの結果は、緑内障性MYOC突然変異体(例えば、P370LおよびY437H)がヒト細胞において野生型MYOCの分泌を遮断することができることを実証する。さらに、突然変異型MYOCは、hTM細胞においてMYOC分泌を遮断することもできる。
【実施例2】
【0179】
緑内障性MYOC突然変異(例えば、P370LおよびY437H)はWntシグナル伝達を遮断する
MYOCは、ストレスファイバーの形成を刺激するアクチン細胞骨格の機構を修飾するWntシグナル伝達経路の成分、例えば、Frizzled(Fzd)ファミリーのWnt受容体、分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)ファミリーのWntアンタゴニスト、およびWnt阻害因子1(WIF-1と相互作用すると考えられている(Kwonら(2009)Mol.Cell.Biol.29:2139~54頁)。ストレスファイバーの形成は、線維柱帯網(TM)の収縮性およびIOP調節に肝要である。しかし、正確にどのようにMYOCがWntシグナル伝達に関連しているのか、およびこの関連性がIOPにどのような影響を及ぼすのかは不明である。細胞生物学実験に基づいて、マトリックス細胞タンパク質としてのミオシリンの役割が提案されている(ReschおよびFautsch、2009;Kochら、2014)。他のグループにより、ミオシリンはオリゴデンドロサイト分化の媒介因子であり、マウスの視神経のミエリン形成に関与することが立証されている(Kwonら、2014)。
【0180】
MYOCは、Wntシグナル伝達の修飾因子としての機能を果たすことができること、Wntタンパク質は、その機能を実行することによってミオシリンの不在を代償することができることが提案された(Kwonら(2009)Mol.Cell.Biol.29:2139~54頁)。いくつかのグループにより、ミオシリンの作用と、b-カテニン非依存性メカニズムによって作用するWntタンパク質の作用との類似性が報告された(KwonおよびTomarev(2011)J.Cell.Physiol.226(12):3392~402頁)。緑内障性TM(GTM)細胞におけるWntシグナル伝達の低減は、より高い内因性sFRP1レベルに起因することが報告された(Wangら(2008)J.Clin.Invest.118:1056~64頁;Lin and Hankenson(2011)J.Cell.Biochem.112:3491~501頁)。別のグループにより、Wntシグナル伝達経路は網膜細胞株RGC-5を上昇した圧力から保護することが証明されている(Fragosoら(2011)Cell.Mol.Neurobiol.31(1):163~73頁)。
【0181】
緑内障性MYOC突然変異(例えば、P370LまたはY437H)にTMにおけるWntシグナル伝達に対して何らかの効果があるのかどうかは、文献からは不明である。ある報告では、TOP-Flash Wntシグナル伝達アッセイによって測定して、TMからのMYOC分泌を阻害する緑内障性MYOC突然変異の、TMにおけるWntシグナル伝達に対する効果は不明であると述べられている(Maoら(2012)Invest
.Ophthalmol.Vis.Sci.53(11):7043~51頁)。別のグループにより、P370Lには、TOP-Flash Wntシグナル伝達アッセイによって証明される、Caco-2細胞におけるWntシグナル伝達に対する刺激効果があることが報告されている(Shenら(2012)PLoS ONE 7(9):e44902)。
【0182】
対照的に、本発明者らは、MYOC突然変異(例えば、P370LおよびY437H)には、ベータ-カテニン活性を記録するTOP-Flash Wntシグナル伝達アッセイに証明されるように、293およびTM細胞におけるWntシグナル伝達に対する阻害効果があることを発見した。
【0183】
MYOC P370LおよびY437H突然変異体のWntシグナル伝達に対する効果を評価するために、293T細胞にTOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC」)、P370L MYOCまたはY437H MYOCプラスミドとをコトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=4)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。
【0184】
図3に示すように、293T細胞に対する組換えマウスWnt3での刺激は、TOP-Flashレポーターの増加をもたらした。TOP-Flashによってアッセイして、野生型MYOCの発現はWntシグナル伝達に干渉しなかった。しかし、野生型MYOCとP370L MYOCまたはY437H MYOCのどちらか一方との共発現は、293T細胞でのTOP-Flash活性化を遮断した。これらの結果は、緑内障性MYOC突然変異体(例えば、P370LおよびY437H)の発現がヒト細胞におけるWntシグナル伝達を阻害できることを示す。
【実施例3】
【0185】
緑内障性MYOC突然変異(例えば、P370LおよびY437H)によって遮断されたWntシグナル伝達の回復
前の実施例は、緑内障性MYOC突然変異体P370LおよびY437Hがヒト細胞におけるWntシグナル伝達を遮断するように作用することを実証した。これらのMYOC突然変異体を発現する細胞においてWntシグナル伝達を回復させることができる可能性があるメカニズムを調査するためのさらなる実験に着手した。
【0186】
R-スポンジン3(RSPO3)は、Wntシグナル伝達を活性化するRSPO3遺伝子によってコードされたタンパク質であるので、RSPO3の発現が、突然変異型MYOC発現によるその阻害時にWntシグナル伝達を回復させることができるかどうかを調査した。上の図3と同様にこれらの実験については、標示の通り、TOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC」)、P370L MYOC、Y437H MYOCおよび/またはRSPO3プラスミドとを293T細胞にコトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=3)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。
【0187】
図4に示すように、TOP-Flashによって測定して、RSPO3発現はWntシグナル伝達の増加をもたらした。重要なこととして、RSPO3とP370L MYOCまたはY437H MYOCのどちらか一方との共発現は、単独でのP370L MYOCまたはY437H MYOCの発現時に観察されたWntシグナル伝達の阻害と比較し
て、Wntシグナル伝達を回復させることができた。標示の通り、TOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC」)、P370L MYOC、Y437H MYOCおよび/またはRSPO3プラスミドとを293T細胞にコトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。
【0188】
同様の効果がhTM細胞において観察されるかどうかを試験するために、TOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC野生型」)、P370L MYOCおよび/またはRSPO3プラスミドとをhTM-T細胞にコトランスフェクトした。上で説明したようにTOP-FlashアッセイによってWnt活性を測定した(ルシフェラーゼ活性を平均±SDとして示す、n=3)。図5は、P370L MYOCの発現がWntシグナル伝達の低減をもたらし、野生型MYOCを共発現するhTM-T細胞におけるWntシグナル伝達を低減させることができたことを示す。RSPO3の発現は、P370L MYOCを単独でまたはP370L MYOCを野生型MYOCとの組合せで発現するhTM-T細胞においてWntシグナル伝達を増加させることができた。図4および5に図示する結果は、RSPO3の発現が、緑内障性MYOC突然変異体を発現する細胞、例えば293TおよびhTM-T細胞、においてWntシグナル伝達を回復させることを示す。
【0189】
驚くべきことに、緑内障性MYOC突然変異体の発現によるWnt阻害は、MYOCを(例えば、RNAi)によって発現停止させることによって非常によく反転されることも発見した。MYOC発現に対するMYOC shRNAの効果を293T細胞において試験した。図6に示すように、MYOC shRNAは、野生型MYOCを発現する細胞において、スクランブルshRNA対照と比較してMYOCタンパク質発現を低減させた。この低減は、細胞内MYOCについても、分泌MYOCについても、観察された。
【0190】
図7は、hTM-T細胞におけるMYOC shRNAの効果を示す。MYOC shRNAは、野生型MYOCとP370L突然変異型MYOCを共発現するhTM-TにおいてMYOCタンパク質発現を低減させた。この低減は、細胞内MYOCについても、分泌MYOCについても、観察された。対照的に、Grp94を標的とするshRNAにはMYOC発現に対する効果がなかった。Grp94は、分泌タンパク質のプロセシングおよび輸送に関与する分子シャペロンである。Grp94は、MYOC突然変異体のクリアランスを助長すると考えられたので、最近、MYOC緑内障の一部の症例に罹患している患者のための治療薬として提案された(Suntharalingamら(2012)J.Biol.Chem.287(48):40661~9頁)。同様に、スクランブルshRNA対照にはMYOC発現に対する効果がなかった。
【0191】
MYOC shRNAはMYOC発現に影響を及ぼすので、Wntシグナル伝達に対するその効果を次に研究した。図8に示すように、P370L MYOCの発現は、293T細胞におけるWntシグナル伝達を低減させた。Grp94 shRNAおよびスクランブルshRNA対照は、P370L MYOCによって阻害されたWntシグナル伝達を回復させることができなかった。対照的に、MYOC shRNAは、P370L MYOCを発現する細胞におけるWntシグナル伝達をほぼ野生型レベル(すなわち、TOP-Flashによって測定して、P370L MYOCを発現しない対照細胞において観察されるWntシグナル伝達レベル)に増加させた。RSPO3の発現も、P370L
MYOCを発現する細胞におけるWntシグナル伝達を増加させることが判明し、RSPO3の発現とMYOC RNAi(例えば、shRNA)を組み合わせることによって、P370L MYOCを発現する細胞においてWntシグナル伝達の相乗的増加がもた
らされた。
【0192】
Grp94の阻害はMYOC突然変異体の効果を低減させるメカニズムとして報告されているが、本明細書に記載するこれらの結果は、MYOC突然変異体発現の存在下でのRSPO3および/またはMYOC shRNAの発現のほうがWntシグナル伝達の抑制解除に効果的であることを示す。
【0193】
Y437H MYOCを発現する細胞におけるWntシグナル伝達に対するMYOC shRNAの効果も調査した。図9に示すように、P370LまたはY437H MYOCの発現は、293T細胞におけるWntシグナル伝達を低減させた。しかし、MYOC
shRNAは、P370L MYOCまたはY437H MYOCのどちらか一方を発現する細胞におけるWntシグナル伝達を回復させることができた。この効果は、スクランブルshRNA対照の発現時には観察されなかった。
【0194】
要約すると、これらの結果は、MYOC突然変異体(例えば、P370LおよびY437H)によって遮断されたWntシグナル伝達を、R-スポンジン3(RSPO3)発現および/またはMYOCの(例えば、RNAiによる)阻害によって回復させることができることを実証する。
【実施例4】
【0195】
AAV2 R471Aは線維柱帯網の細胞に形質導入する
AAV粒子が線維柱帯網の細胞に形質導入することができるかどうかを判定するために、EGFPをコードするAAV2ベクターを、(VP1に基づいてナンバリングして)R471Aアミノ酸置換を含むAAV2粒子の野生型AAV2粒子にパッケージングした。AAV2 EGFPおよびAAV2 R471A EGFPでのhTM細胞の処置(上記)によって、ウイルス粒子をin vitroで評価した。図10(左パネル)に示すように、AAV2 R471A EGFPは、野生型AAV2と比較して高いTM細胞形質導入を示した。TM細胞形質導入をin vivoで評価するために、AAV2 EGFPおよびAAV2 R471A EGFPをマウスの眼に注射した。その後、マウスを屠殺し、EGFP発現について分析した。図10(右パネル)に示すように、AAV2 R471A EGFPは、野生型AAV2と比較して高いTM細胞形質導入をin vivoで示した。
【実施例5】
【0196】
ミオシリン(MYOC)緑内障の動物モデルにおけるRSPO3発現またはMYOC shRNA
上の実施例は、緑内障性MYOC突然変異(例えば、P370LおよびY437H)がWntシグナル伝達を遮断すること、およびWntシグナル伝達のこの阻害をR-スポンジン3(RSPO3)発現またはMYOC shRNAによって反転させることができることを実証した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、MYOC突然変異(例えば、P370Lおよび/またはY437H)は、TMにおけるWntシグナル伝達に影響を及ぼすことによって、IOPを変更しPOAGに寄与する可能性があると考えた。次の実験では、AAV2ベクターによって送達されるR-スポンジン3(RSPO3)発現またはMYOC shRNAが、緑内障の症状をこの疾患のマウスモデルにおいて改善することができるかどうかを試験した。
【0197】
POAGのマウスモデルを使用して、ミオシリン(MYOC)緑内障を処置する上でのR-スポンジン3(RSPO3)発現および/またはMYOC shRNAの眼へのAAV媒介送達の効能を調査した。例えば、Y437H MYOCを発現するマウスモデルを使用することができる(Zodeら(2011)J.Clin.Invest.121(
9):3542~53頁を参照されたい)。このモデルでは、ヒトY437H MYOCがトランスジェニックマウスにおいてCMVプロモーターの制御下で発現される。この系を使用して、ミオシリン(MYOC)緑内障に関連する組織、例えば、線維柱帯網および強膜においてY437H MYOCを発現させた。これらのマウスは、肉眼的には正常な眼の形態を示したが、3月齢後にミオシリン(MYOC)緑内障様症状、例えば、IOP上昇、および視神経の漸進的な軸索変性を示し始めた。
【0198】
GFPを発現する導入遺伝子、マウスRSPO3を発現する導入遺伝子、マウスMYOC(MYOC shRNA標的、およびプラスミドpGIPZ #93からのループ配列;Dharmacon、GE Healthcare)を標的とするshRNAを発現する導入遺伝子、またはスクランブルshRNAを発現する導入遺伝子を、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列も含有する、プラスミドpCBA(2)-int-BGHからのハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの制御下のAAV2ゲノム(Xu,R.ら(2001)Gene Ther.8:1323~32頁)にクローニングした。その後、その発現カセットを、AAV2逆位末端反復配列(ITR)を含有するプレウイルスプラスミドベクターpAAVSP70(Ziegler,R.J.ら(2004)Mol.Ther.9:231~40頁)にクローニングした。ITRと隣接している領域を含むプラスミドsp70.BR/sFLT01中の得られたAAVゲノムの全サイズは、4.6kbであった。
【0199】
AAV2ゲノムを、R471A突然変異を有するAAV2カプシドにパッケージングして線維柱帯網に感染させた、または野生型AAV2カプシドにパッケージングして網膜神経節細胞に感染させた。三重トランスフェクション法を使用する「ガットレス」ベクターアプローチ(例えば、Xiaoら(1998)J.Virol.、3:2224~32頁を参照されたい)を使用して、AAV2ゲノムをAAV2野生型またはR471Aカプシドにパッケージングした。簡単に言うと、repおよびcap遺伝子を治療用遺伝子およびその調節エレメントで置換し、両方を、5’逆位末端反復配列(ITR)と3’逆位末端反復配列(ITR)の間にサンドイッチした。repおよびcap遺伝子をトランスで別のプラスミドに与え、第3のプラスミドが必要アデノウイルスヘルパー遺伝子に寄与した。あるいは、必要ヘルパー遺伝子を複製欠損アデノウイルスから得た、および/またはアデノウイルスヘルパー遺伝子を宿主細胞ゲノムに安定的に組み込んだ。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ウイルスカプシドが完全に組み立てられ、その後、ITRと隣接しているベクターゲノムがカプシドポア経由でそのカプシドに挿入される(MyersおよびCarter(1980)Virology、102:71~82頁)と仮定した。その後、ゲノム含有カプシドを注射用に製剤化した。
【0200】
ヒトY437H MYOCを発現するトランスジェニックマウスをおおよそ3月齢まで成長させ、その後、無作為に処置群に割り当てた。マウスを麻酔し、GFPをコードするAAVベクター、マウスRSPO3をコードするAAVベクター、マウスMYOCを標的とするshTNAをコードするAAVベクター、またはスクランブルshRNAをコードするAAVベクターを硝子体内または前房内注射によってマウスに注射した。1つの処置群のマウスには、網膜神経節細胞における効果を試験するために、マウスRSPO3を発現する野生型AAV2カプシドを有するAAV2ベクターの注射を施し、GFPを発現する野生型AAV2カプシドを有するAAV2ベクターの注射を反対側の眼に施した。1つの処置群のマウスには、線維柱帯網における効果を試験するために、マウスMYOCを標的とするshRNAを発現するR471A AAV2カプシドを有するAAV2ベクターの注射を施し、スクランブルshRNAを発現するR471A AAV2カプシドを有するAAV2ベクターの注射を反対側の眼に施した。1つの処置群のマウスには、マウスRSPO3を発現するAAVベクターとマウスMYOCを標的とするshRNAを発現するAAVベクターの混合物の注射を一方の眼に施し、GFPを発現するAAVベクターおよ
び/またはスクランブルshRNAを発現するAAVベクターの注射を反対側の眼に施した。1つの処置群のマウスには、マウスRSPO3を発現し、かつマウスMYOCを標的とするshRNAを発現するAAVベクターの注射を一方の眼に施し、GFPを発現し、かつスクランブルshRNAを発現するAAVベクターの注射を反対側の眼に施した。
【0201】
注射後に定期的にミオシリン(MYOC)緑内障症状についてマウスを検査し、実験的処置を施した眼と対照処置を施した眼とを比較した。IOPを眼圧検査(Kim,C.Y.ら(2007)Eye(Lond.)21(9):1202~9頁)によって測定した。角膜厚を超音波パキメータ(Lively,G.D.ら(2010)Physiol.Genomics 42(2):281~6頁)によって測定した。虹彩角膜角を隅角鏡検査によって評価した。網膜神経節細胞機能は、パターン網膜電図(PERG)を使用する視覚刺激に対するパターン網膜電図応答の分析(Zodeら(2011)J.Clin.Invest.121(9):3542~53頁)によって測定した。他の表現型の特徴づけのためにマウスを屠殺して眼を切除した。例えば、網膜神経節細胞の数および/または形態を免疫蛍光顕微鏡法および/または透過型電子顕微鏡法によって評価した。
【実施例6】
【0202】
緑内障性MYOC突然変異によって遮断されたWntシグナル伝達を回復させるためのRSPOファミリータンパク質の使用
実施例3で実証したように、MYOC突然変異体(例えば、P370LおよびY437H)によって遮断されたWntシグナル伝達を、R-スポンジン3(RSPO3)発現によって回復させることができる。Wntシグナル伝達のこの回復の根底にあるメカニズムをさらに理解するために、Wntシグナル伝達を回復させる様々なRSPOファミリーメンバーおよび変異体の能力を調査した。
【0203】
ヒトRSPOファミリータンパク質hRSPO1、2、3および4は、図11および12に図示するように、フューリン様CysリッチドメインとトロンボスポンジンI型ドメインと正電荷を有するC末端ドメインとを含む同様のドメイン構造を共有する。Wntシグナル伝達の回復に必要な機能性ドメインを調査するために、ヒトRSPO3のいくつかの短縮型変異体を作成した。これらの変異体、ならびに各変異体に含まれるおよび含まれない特異的ドメインを図11、12、13Aおよび14に示す。
【0204】
Wntシグナル伝達に対するRSPO3変異体の効果を試験するために、図15に標示の通り、TOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC」)またはY437H MYOCとを、293T細胞にコトランスフェクトし、完全長または部分RSPO3プラスミドもトランスフェクトした。Wntシグナル伝達は組換えヒトWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=3)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。
【0205】
実施例3で説明したように、突然変異型MYOC Y437Hは、TOP-Flashアッセイによって測定して293T細胞におけるWntシグナル伝達を阻害した。図15は、このアッセイでのWntシグナル伝達に対する様々なhRSPO3短縮型変異体の効果を示す。図15に示すように、部分長なものも完全長のものも、試験したhRSPO3型はすべてのWnt回復活性があり、完全長RSPO3は短縮型の多くのものより強い活性を示した。
【0206】
Wntシグナル伝達に対する様々なRSPOファミリーの効果を試験するために、図16に標示の通り、TOP-Flashレポーター構築物とwtMYOC(「MYOC」)
またはY437H MYOCとを293T細胞にコトランスフェクトし、完全長または部分RSPO1、RSPO2またはRSPO4プラスミドもトランスフェクトした(RSPO1、2、3および4短縮型の描写については図12を参照されたい)。Wntシグナル伝達は組換えマウスWnt3a(400ng/ml)の添加後に増幅され、それをTOP-Flashアッセイによって測定した。ルシフェラーゼ活性(平均±SD、n=3)をトランスフェクション後に測定し、構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレベルのトランスフェクション対照に正規化した。
【0207】
これらの研究の結果を図16に示す。これらの結果は、完全長および短縮型RSPO1、2および4もWnt回復活性があり、完全長RSPOが短縮型より強い活性を示したことを示す。すべてのRSPOファミリーメンバーおよび型がWnt3aとともに作用した。
【0208】
配列
RSPO3ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MHLRLISWLFIILNFMEYIGSQNASRGRRQRRMHPNVSQGCQGGCATCSDYNGCLSCKPRLFFALERIGMKQIGVCLSSCPSGYYGTRYPDINKCTKCKADCDTCFNKNFCTKCKSGFYLHLGKCLDNCPEGLEANNHTMECVSIVHCEVSEWNPWSPCTKKGKTCGFKRGTETRVREIIQHPSAKGNLCPPTNETRKCTVQRKKCQKGERGKKGRERKRKKPNKGESKEAIPDSKSLESSKEIPEQRENKQQQKKRKVQDKQKSVSVSTVH(配列番号1)
【0209】
RSPO3ポリヌクレオチド配列
ATGCACTTGCGACTGATTTCTTGGCTTTTTATCATTTTGAACTTTATGGAATACATCGGCAGCCAAAACGCCTCCCGGGGAAGGCGCCAGCGAAGAATGCATCCTAACGTTAGTCAAGGCTGCCAAGGAGGCTGTGCAACATGCTCAGATTACAATGGATGTTTGTCATGTAAGCCCAGACTATTTTTTGCTCTGGAAAGAATTGGCATGAAGCAGATTGGAGTATGTCTCTCTTCATGTCCAAGTGGATATTATGGAACTCGATATCCAGATATAAATAAGTGTACAAAATGCAAAGCTGACTGTGATACCTGTTTCAACAAAAATTTCTGCACAAAATGTAAAAGTGGATTTTACTTACACCTTGGAAAGTGCCTTGACAATTGCCCAGAAGGGTTGGAAGCCAACAACCATACTATGGAGTGTGTCAGTATTGTGCACTGTGAGGTCAGTGAATGGAATCCTTGGAGTCCATGCACGAAGAAGGGAAAAACATGTGGCTTCAAAAGAGGGACTGAAACACGGGTCCGAGAAATAATACAGCATCCTTCAGCAAAGGGTAACCTGTGTCCCCCAACAAATGAGACAAGAAAGTGTACAGTGCAAAGGAAGAAGTGTCAGAAGGGAGAACGAGGAAAAAAAGGAAGGGAGAGGAAAAGAAAAAAACCTAATAAAGGAGAAAGTAAAGAAGCAATACCTGACAGCAAAAGTCTGGAATCCAGCAAAGAAATCCCAGAGCAACGAGAAAACAAACAGCAGCAGAAGAAGCGAAAAGTCCAAGATAAACAGAAATCGGTATCAGTCAGCACTGTACACTAG(配列番号2)
【0210】
MYOCポリペプチド配列
MRFFCARCCSFGPEMPAVQLLLLACLVWDVGARTAQLRKANDQSGRCQYTFSVASPNESSCPEQSQAMSVIHNLQRDSSTQRLDLEATKARLSSLESLLHQLTLDQAARPQETQEGLQRE
LGTLRRERDQLETQTRELETAYSNLLRDKSVLEEEKKRLRQENENLARRLESSSQEVARLRRGQCPQTRDTARAVPPGSREVSTWNLDTLAFQELKSELTEVPASRILKESPSGYLRSGEGDTGCGELVWVGEPLTLRTAETITGKYGVWMRDPKPTYPYTQETTWRIDTVGTDVRQVFEYDLISQFMQGYPSKVHILPRPLESTGAVVYSGSLYFQGAESRTVIRYELNTETVKAEKEIPGAGYHGQFPYSWGGYTDIDLAVDEAGLWVIYSTDEAKGAIVLSKLNPENLELEQTWETNIRKQSVANAFIICGTLYTVSSYTSADATVNFAYDTGTGISKTLTIPFKNRYKYSSMIDYNPLEKKLFAWDNLNMVTYDIKLSKM(配列番号3)
【0211】
MYOC cDNA配列
ATGAGGTTCTTCTGTGCACGTTGCTGCAGCTTTGGGCCTGAGATGCCAGCTGTCCAGCTGCTGCTTCTGGCCTGCCTGGTGTGGGATGTGGGGGCCAGGACAGCTCAGCTCAGGAAGGCCAATGACCAGAGTGGCCGATGCCAGTATACCTTCAGTGTGGCCAGTCCCAATGAATCCAGCTGCCCAGAGCAGAGCCAGGCCATGTCAGTCATCCATAACTTACAGAGAGACAGCAGCACCCAACGCTTAGACCTGGAGGCCACCAAAGCTCGACTCAGCTCCCTGGAGAGCCTCCTCCACCAATTGACCTTGGACCAGGCTGCCAGGCCCCAGGAGACCCAGGAGGGGCTGCAGAGGGAGCTGGGCACCCTGAGGCGGGAGCGGGACCAGCTGGAAACCCAAACCAGAGAGTTGGAGACTGCCTACAGCAACCTCCTCCGAGACAAGTCAGTTCTGGAGGAAGAGAAGAAGCGACTAAGGCAAGAAAATGAGAATCTGGCCAGGAGGTTGGAAAGCAGCAGCCAGGAGGTAGCAAGGCTGAGAAGGGGCCAGTGTCCCCAGACCCGAGACACTGCTCGGGCTGTGCCACCAGGCTCCAGAGAAGTTTCTACGTGGAATTTGGACACTTTGGCCTTCCAGGAACTGAAGTCCGAGCTAACTGAAGTTCCTGCTTCCCGAATTTTGAAGGAGAGCCCATCTGGCTATCTCAGGAGTGGAGAGGGAGACACCGGATGTGGAGAACTAGTTTGGGTAGGAGAGCCTCTCACGCTGAGAACAGCAGAAACAATTACTGGCAAGTATGGTGTGTGGATGCGAGACCCCAAGCCCACCTACCCCTACACCCAGGAGACCACGTGGAGAATCGACACAGTTGGCACGGATGTCCGCCAGGTTTTTGAGTATGACCTCATCAGCCAGTTTATGCAGGGCTACCCTTCTAAGGTTCACATACTGCCTAGGCCACTGGAAAGCACGGGTGCTGTGGTGTACTCGGGGAGCCTCTATTTCCAGGGCGCTGAGTCCAGAACTGTCATAAGATATGAGCTGAATACCGAGACAGTGAAGGCTGAGAAGGAAATCCCTGGAGCTGGCTACCACGGACAGTTCCCGTATTCTTGGGGTGGCTACACGGACATTGACTTGGCTGTGGATGAAGCAGGCCTCTGGGTCATTTACAGCACCGATGAGGCCAAAGGTGCCATTGTCCTCTCCAAACTGAACCCAGAGAATCTGGAACTCGAACAAACCTGGGAGACAAACATCCGTAAGCAGTCAGTCGCCAATGCCTTCATCATCTGTGGCACCTTGTACACCGTCAGCAGCTACACCTCAGCAGATGCTACCGTCAACTTTGCTTATGACACAGGCACAGGTATCAGCAAGACCCTGACCATCCCATTCAAGAACCGCTATAAGTACAGCAGCATGATTGACTACAACCCCCTGGAGAAGAAGCTCTTTGCCTGGGACAACTTGAACATGGTCACTTATGACATCAAGCTCTCCAAGATGTAG(配列番号
4)
【0212】
MYOC shRNA標的配列
GGCCATGTCAGTCATCCAT(配列番号5)
QAMSVIH(配列番号6)
【0213】
shRNAループ配列
AATAGTGAAGCCACAGATGTATT(配列番号7)
【0214】
RSPO1ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRLGLCVVALVLSWTHLTISSRGIKGKRQRRISAEGSQACAKGCELCSEVNGCLKCSPKLFILLERNDIRQVGVCLPSCPPGYFDARNPDMNKCIKCKIEHCEACFSHNFCTKCKEGLYLHKGRCYPACPEGSSAANGTMECSSPAQCEMSEWSPWGPCSKKQQLCGFRRGSEERTRRVLHAPVGDHAACSDTKETRRCTVRRVPCPEGQKRRKGGQGRRENANRNLARKESKEAGAGSRRRKGQQQQQQQGTVGPLTSAGPA(配列番号8)
【0215】
RSPO2ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MQFRLFSFALIILNCMDYSHCQGNRWRRSKRASYVSNPICKGCLSCSKDNGCSRCQQKLFFFLRREGMRQYGECLHSCPSGYYGHRAPDMNRCARCRIENCDSCFSKDFCTKCKVGFYLHRGRCFDECPDGFAPLEETMECVEGCEVGHWSEWGTCSRNNRTCGFKWGLETRTRQIVKKPVKDTILCPTIAESRRCKMTMRHCPGGKRTPKAKEKRNKKKKRKLIERAQEQHSVFLATDRANQ(配列番号9)
【0216】
RSPO4ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRAPLCLLLLVAHAVDMLALNRRKKQVGTGLGGNCTGCIICSEENGCSTCQQRLFLFIRREGIRQYGKCLHDCPPGYFGIRGQEVNRCKKCGATCESCFSQDFCIRCKRQFYLYKGKCLPTCPPGTLAHQNTRECQGECELGPWGGWSPCTHNGKTCGSAWGLESRVREAGRAGHEEAATCQVLSESRKCPIQRPCPGERSPGQKKGRKDRRPRKDRKLDRRLDVRPRQPGLQP(配列番号10)
【0217】
RSPO1短縮化1-135ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRLGLCVVALVLSWTHLTISSRGIKGKRQRRISAEGSQACAKGCELCSEVNGCLKCSPKLFILLERNDIRQVGVCLPSCPPGYFDARNPDMNKCIKCKIEHCEACFSHNFCTKCKEGLYLHKGRCYPACPEGSSA(配列番号11)
【0218】
RSPO1短縮化1-206ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRLGLCVVALVLSWTHLTISSRGIKGKRQRRISAEGSQACAKGCELCSEVNGCLKCSPKLFILLERNDIRQVGVCLPSCPPGYFDARNPDMNKCIKCKIEHCEACFSHNFCTKCKEGLYLHKGRCYPACPEGSSAANGTMECSSPAQCEMSEWSPWGPCSKKQQLCGFRRGSEERTRRVLHAPVGDHAACSDTKETRRCTVRRVPC(配列番号12)
【0219】
RSPO2短縮化1-134ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MQFRLFSFALIILNCMDYSHCQGNRWRRSKRASYVSNPICKGCLSCSKDNGCSRCQQKLFFFLRREGMRQYGECLHSCPSGYYGHRAPDMNRCARCRIENCDSCFSKDFCTKCKVGFYLHRGRCFDECPDGFAP(配列番号13)
【0220】
RSPO2短縮化1-203ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MQFRLFSFALIILNCMDYSHCQGNRWRRSKRASYVSNPICKGCLSCSKDNGCSRCQQKLFFFLRREGMRQYGECLHSCPSGYYGHRAPDMNRCARCRIENCDSCFSKDFCTKCKVGFYLHRGRCFDECPDGFAPLEETMECVEGCEVGHWSEWGTCSRNNRTCGFKWGLETRTRQIVKKPVKDTILCPTIAESRRCKMTMRHC(配列番号14)
【0221】
RSPO3短縮化1-135ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MHLRLISWLFIILNFMEYIGSQNASRGRRQRRMHPNVSQGCQGGCATCSDYNGCLSCKPRLFFALERIGMKQIGVCLSSCPSGYYGTRYPDINKCTKCKADCDTCFNKNFCTKCKSGFYLHLGKCLDNCPEGLEA(配列番号15)
【0222】
RSPO3短縮化1-146ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MHLRLISWLFIILNFMEYIGSQNASRGRRQRRMHPNVSQGCQGGCATCSDYNGCLSCKPRLFFALERIGMKQIGVCLSSCPSGYYGTRYPDINKCTKCKADCDTCFNKNFCTKCKSGFYLHLGKCLDNCPEGLEANNHTMECVSIV(配列番号16)
【0223】
RSPO3短縮化1-206ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MHLRLISWLFIILNFMEYIGSQNASRGRRQRRMHPNVSQGCQGGCATCSDYNGCLSCKPRLFFALERIGMKQIGVCLSSCPSGYYGTRYPDINKCTKCKADCDTCFNKNFCTKCKSGFYLHLGKCLDNCPEGLEANNHTMECVSIVHCEVSEWNPWSPCTKKGKTCGFKRGTETRVREIIQHPSAKGNLCPPTNETRKCTVQRKKC(配列番号17)
【0224】
RSPO4短縮化1-128ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRAPLCLLLLVAHAVDMLALNRRKKQVGTGLGGNCTGCIICSEENGCSTCQQRLFLFIRREGIRQYGKCLHDCPPGYFGIRGQEVNRCKKCGATCESCFSQDFCIRCKRQFYLYKGKCLPTCPPGTLA(配列番号18)
【0225】
RSPO4短縮化1-195ポリペプチド配列(シグナル配列に下線を引く)
MRAPLCLLLLVAHAVDMLALNRRKKQVGTGLGGNCTGCIICSEENGCSTCQQRLFLFIRREGIRQYGKCLHDCPPGYFGIRGQEVNRCKKCGATCESCFSQDFCIRCKRQFYLYKGKCLPTCPPGTLAHQNTRECQGECELGPWGGWSPCTHNGKTCGSAWGLESRVREAGRAGHEEAATCQVLSESRKCPIQRP(配列番号19)
【0226】
Mutated ITRポリヌクレオチド配列
CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGG
CGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG(配列番号20)
【0227】
MYOC370Lフォワード変異誘発プライマー(置換は下線付き)
ACCACGGACAGTTCCGTATTCTTGGGGTGG(配列番号21)
【0228】
MYOC370Lリバース変異誘発プライマー(置換は下線付き)
CCACCCCAAGAATACGGAACTGTCCGTGGT(配列番号22)
【0229】
MYOCY437Hフォワード突然変異誘発プライマー(置換に下線を引く)
TCTGTGGCACCTTGACACCGTCAGCAGC(配列番号23)
【0230】
MYOCY437Hリバース突然変異誘発プライマー(置換に下線を引く)
GCTGCTGACGGTGTCAAGGTGCCACAGA(配列番号24)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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