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特許7097400コンテナターミナル及びコンテナターミナルの運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】コンテナターミナル及びコンテナターミナルの運用方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
B65G63/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020042595
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143044
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】星島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 成幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 義晴
(72)【発明者】
【氏名】小松 嵩幸
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007814(JP,A)
【文献】特開2019-049838(JP,A)
【文献】特開2016-194481(JP,A)
【文献】特開2020-035054(JP,A)
【文献】特許第6262826(JP,B1)
【文献】特開2003-306210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/00 - 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナを搬送する複数の荷役車両と、複数の前記荷役車両の走行状況を検知する検知手段と、前記検知手段に接続されて前記走行状況が入力され、前記荷役車両の走行を前記走行状況に基づき制御する制御部を備えたコンテナターミナルであって、
前記コンテナターミナルに設置されるとともに前記制御部に電気的に接続されるレーダを前記検知手段が含んでいて、
複数の前記荷役車両は予め走行の優先順位が定められ、
前記制御部は、
複数の前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出すように構成したことを特徴とするコンテナターミナル。
【請求項2】
前記荷役車両の周囲には、他の前記荷役車両の進入を規制する規制領域が予め設定され、
前記制御部は、
前記優先順位の高い前記荷役車両の前記規制領域に前記優先順位の低い前記荷役車両が進入した場合に、前記優先順位の高い前記荷役車両の進路を妨害すると判断し、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出す、請求項1に記載のコンテナターミナル。
【請求項3】
前記優先順位は、
運転方式が手動運転の前記荷役車両を、運転方式が自動運転の前記荷役車両よりも優先する請求項1又は2に記載のコンテナターミナル。
【請求項4】
前記優先順位は、
前記コンテナターミナルの外部と荷役を行う前記荷役車両である外来車両を、前記コンテナターミナルの構内で前記コンテナの配置換えをする前記荷役車両である構内車両よりも優先する請求項1又は2に記載のコンテナターミナル。
【請求項5】
コンテナを搬送する複数の荷役車両と、複数の前記荷役車両の走行状況を検知する検知手段と、前記検知手段に接続されて前記走行状況が入力され、前記荷役車両の走行を前記走行状況に基づき制御する制御部を備えたコンテナターミナルであって、
複数の前記荷役車両は予め走行の優先順位が定められ、
前記制御部は、
複数の前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出すように構成されていて、
前記優先順位は、
運転方式が異なる場合、手動運転の前記荷役車両を自動運転の前記荷役車両よりも優先し 、
運転方式が同じ場合、前記コンテナターミナルの外部との間で前記コンテナの荷役作業を行う前記荷役車両を、前記コンテナターミナルの構内で前記コンテナの配置換えをする前記荷役車両よりも優先することを特徴とするコンテナターミナル。
【請求項6】
コンテナを搬送する複数の荷役車両の走行を、前記荷役車両の走行状況に基づき制御するコンテナターミナルの運用方法であって、
前記コンテナターミナルに設置されるレーダを含む検知手段により前記走行状況を検知する検知工程と、
予め定められた走行の優先順位が異なる前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出す走行指令工程と、を実施することを特徴とするコンテナターミナルの運用方法。
【請求項7】
コンテナを搬送する複数の荷役車両の走行を、前記荷役車両の走行状況に基づき制御するコンテナターミナルの運用方法であって、
前記走行状況を検知する検知工程と、
予め定められた走行の優先順位が異なる前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出す走行指令工程と、を実施して、
前記優先順位は、
運転方式が異なる場合、手動運転の前記荷役車両を自動運転の前記荷役車両よりも優先し 、
運転方式が同じ場合、前記コンテナターミナルの外部との間で前記コンテナの荷役作業を行う前記荷役車両を、前記コンテナターミナルの構内で前記コンテナの配置換えをする前記荷役車両よりも優先することを特徴とするコンテナターミナルの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナターミナル及びコンテナターミナルの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナターミナルは海上でコンテナを輸送するコンテナ船と、陸上でコンテナを輸送する外来車両との間でコンテナを受け渡す港湾設備である。
コンテナターミナルでコンテナを陸揚げする際は通常、まずコンテナ船から岸壁クレーンがコンテナを受け取り、受け取ったコンテナを構内車両に乗せ換えて蔵置領域と呼ばれる領域に搬送する。蔵置領域では門型クレーンが構内車両からコンテナを受け取り、蔵置領域に仮置きする。外来車両がコンテナターミナルに到着すると、蔵置領域に仮置きされたコンテナを門型クレーンから受け取って退出する。
この際、コンテナターミナル内では構内車両、外来車両、門型クレーンのように、車種や用途の異なる荷役車両が混在するため、安全性や荷役効率の向上という観点からは、荷役車両同士の衝突を防止する必要がある。
特許文献1には、コンテナターミナル内で有人荷役車両の走行経路と無人荷役車両の走行経路を分離し、両者の走行経路が交差する部分に信号機を設けて交通整理を行うことで、有人荷役車両と無人荷役車両の衝突を防止する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-44063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の構成では車種や用途ごとに荷役車両の走行経路を分離する必要があるため、既存のコンテナターミナルに適用する際には大規模な工事や運用の変更が必要になる問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、大規模な工事や運用の変更を行わなくても荷役車両の衝突を防止できるコンテナターミナルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の1態様は、コンテナを搬送する複数の荷役車両と、複数の前記荷役車両の走行状況を検知する検知手段と、前記検知手段に接続されて前記走行状況が入力され、前記荷役車両の走行を前記走行状況に基づき制御する制御部を備えたコンテナターミナルであって、前記コンテナターミナルに設置されるとともに前記制御部に電気的に接続されるレーダを前記検知手段が含んでいて、複数の前記荷役車両は予め走行の優先順位が定められ、前記制御部は、複数の前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出すように構成したことを特徴とする。
【0006】
本発明の他の態様は、コンテナを搬送する複数の荷役車両の走行を、前記荷役車両の走行状況に基づき制御するコンテナターミナルの運用方法であって、前記コンテナターミナルに設置されるレーダを含む検知手段により前記走行状況を検知する検知工程と、予め定められた走行の優先順位が異なる前記荷役車両が互いの進路を妨害すると前記走行状況から判断した場合に、前記優先順位の低い前記荷役車両に対し、進路を変更して前記優先順位の高い前記荷役車両に進路を譲る指令を出す走行指令工程と、を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、コンテナターミナル内を走行する荷役車両が互いの進路を妨害する可能性がある場合に優先順位の低い方が高い方に進路を譲る。
そのため、荷役車両の種類や用途毎に優先順位を設定するだけで、コンテナターミナルの大規模な工事や運用の変更を行わなくてもコンテナターミナル内で荷役車両の衝突を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るコンテナターミナルの概要を示す平面図である。
図2】2台の荷役車両の走行状況を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンテナターミナルの運用方法の手順を示すフロー図であって、進路を変更する指示を制御部が出すまでのステップを示す。
図4】本発明の実施形態に係るコンテナターミナルの運用方法の手順を示すフロー図であって、進路を譲った荷役車両に進路を戻す指示を制御部が出すまでのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず図1を参照して本実施形態に係るコンテナターミナル1の概略構成を説明する。
ここではコンテナターミナル1として、コンテナ船48と外来車両21aとの間で、構内車両21bを介してコンテナ10の荷役を行う施設が記載されている。
以下の説明で外来車両21aとは、コンテナターミナル1内とコンテナターミナル1外でコンテナ10の陸送を行う車両を意味する。構内車両21bとは、コンテナターミナル1の構内でのみコンテナ10の荷役を行う車両を意味する。
外来車両21aと構内車両21bは、例えばコンテナ輸送用のトレーラと該トレーラを牽引するトラクター等からなるが、構内車両21bはストラドルキャリアやリーチスタッカでもよい。外来車両21aの運転方式は一般に手動運転方式である。構内車両21bの運転方式は自動運転方式、手動運転方式のいずれの方式でもよい。なお、遠隔操作方式は手動運転方式に含まれる。
【0010】
図1に示すようにコンテナターミナル1は、岸壁クレーン5、蔵置領域17、入退場ゲート23、荷役車両21、検知手段11、及び制御部7を備える。
岸壁クレーン5は、コンテナ船48と構内車両21bの間でコンテナ10の荷役を行うクレーンであり、岸壁に沿って配置される。
【0011】
蔵置領域17はコンテナ船48と外来車両21aのうち、コンテナ10を運んできた方がコンテナターミナル1に到着した時点で、コンテナ10を受け取りに来る方がコンテナターミナル1に未着の場合にコンテナ10を仮置きする領域である。
図1では蔵置領域17としてX方向に長手方向を有する平面視長方形の蔵置領域17a~17dを図示している。蔵置領域17aと蔵置領域17c、及び蔵置領域17bと蔵置領域17dは各々Y方向(海陸方向)に沿って配列されている。蔵置領域17aと蔵置領域17b、及び蔵置領域17cと蔵置領域17dは各々X方向に沿って配列されている。
蔵置領域17同士は互いに離間しており、離間した領域が外来車両21aと構内車両21bの走行経路となる。
【0012】
なお、以下の説明では、蔵置領域17b、17d寄りの位置に接岸したコンテナ船48が蔵置領域17b、17dとの間で本船荷役を行っているとする。さらに、蔵置領域17a、17cにコンテナターミナル1に未達のコンテナ船48に搭載する予定のコンテナ10が蔵置されており、マーシャリングを行っているとするが、蔵置領域17で行われる荷役作業は必要に応じて変更できるものである。
マーシャリングとは、蔵置領域17に蔵置されたコンテナ10を受け取るコンテナ船48が接岸するまでに、コンテナ船48への荷役の順番に応じて荷役効率の向上のためコンテナ10の配置換えを行う作業を意味する。
【0013】
蔵置領域17には門型クレーン19が跨設される。
門型クレーン19は蔵置領域17と外来車両21a又は構内車両21bとの間でコンテナ10の荷役を行うクレーンであり、構内車両21bがコンテナ10を吊り上げる機能を持たない車両の場合に設置される。構内車両21bがストラドルキャリアやリーチスタッカのように、コンテナ10を吊り上げる機能を持つ場合、門型クレーン19は必須でない。
【0014】
門型クレーン19は、蔵置領域17にY方向に跨設され、X方向に走行可能な門型の支持構造体、支持構造体に支持されてY方向に移動可能な台車であるトロリ、及びトロリに保持されて上下動してコンテナ10を掴む吊具であるスプレッダを備える。
入退場ゲート23は陸上におけるコンテナターミナル1の内外を接続するゲートであり、外来車両21aがコンテナターミナル1に入退場する際に通過する。
【0015】
荷役車両21はコンテナターミナル1においてコンテナ10の荷役に用いられる車両である。具体的な荷役車両21としてはコンテナ10の荷役のためにコンテナターミナル1内を走行する車両が挙げられる。より具体的には外来車両21a、構内車両21b、門型クレーン19が含まれる。
荷役車両21は走行の優先順位が予め決められている。ここでいう優先順位とは、複数の荷役車両21の進路が重なった場合に、順位の低い方が進路を変更して高い方に進路を譲る順位であり、安全性や荷役効率の確保の観点から設定された順位である。
【0016】
このように本実施形態のコンテナターミナル1では、走行経路の分離や信号機の設置ではなく、優先順位に基づき荷役車両21の一方が他方に進路を譲ることで、荷役車両21同士の進路が重なったまま走行を続けるのを防ぐ。そのため、荷役車両21の種類や用途毎に優先順位を設定するだけで、大規模な工事や運用の変更を行わなくてもコンテナターミナル1内で荷役車両21の衝突を防止できる。
【0017】
この点についてより具体的に説明する。
本船荷役中の荷役車両21がマーシャリング中の蔵置領域17に誤進入したり、マーシャリング中の荷役車両21が本船荷役中の蔵置領域17に誤進入したりすると、荷役が中断して荷役効率を損ね、衝突事故に至ると安全性も損ねる。
従来はこのような誤進入を防止するために、マーシャリング中の蔵置領域17である蔵置領域17a、17cと本船荷役中の蔵置領域17である蔵置領域17b、17dの間の通路Lをフェンスで分断する等して、作業内容で走行経路を分けていた。しかしながらこのような方式ではコンテナターミナルの大規模な工事や運用の変更が必要になる。また、同じ蔵置領域17内で運転方式と作業内容が異なる車両が混在する場合は走行経路を分けるのが困難な場合がある。例えばマーシャリングを自動運転車両が行い、マーシャリング中の蔵置領域17へのマーシャリング対象のコンテナ10の搬送を手動運転車両が行う場合、運転方式と作業内容で各々走行経路を分離するのは困難である。
【0018】
これに対して本実施形態では仮に誤進入が起こったとしても、安全性や荷役効率の確保の観点で設定された優先順位に基づき荷役車両21の一方が他方に進路を譲る。そのためコンテナターミナル1は、走行経路を物理的に分離しなくても安全性と荷役効率を確保できる。これが本実施形態の大きな利点である。
【0019】
具体的な優先順位の基準は、荷役の安全性、又は荷役効率の観点から、進路を優先すべき車両の順位が高くなるような基準とする。
例えば優先順位としては車両の運転方式が挙げられる。
具体的には、運転方式が手動運転の荷役車両21を、運転方式が自動運転の荷役車両21よりも優先する。
これは運転方式が自動運転の荷役車両21の方が、手動運転の荷役車両21よりも進路を譲る操作を正確に行えるので、進路を譲る操作を確実に安全に行えるためである。
また、手動運転の荷役車両21はコンテナターミナル1の地理に不案内な外来車両21aが多いため、無理に進路を譲らせると、急ブレーキ等のような危険な操作で進路を譲ろうとして逆に荷役の安全性を損ねる場合があるためである。
さらに、自動運転の荷役車両21は基本的にはコンテナターミナル1内での荷役のみを行うため、マーシャリングのような本船荷役より優先順位の低い荷役を行う場合が多く、進路を譲る操作を行っても荷役効率が悪化し難いためである。
【0020】
優先順位としては、荷役作業の内容も挙げられる。
具体的にはコンテナターミナル1の外部と荷役を行う荷役車両21を、コンテナターミナル1の構内でコンテナ10の配置換えをする荷役車両21より優先する。
ここでいうコンテナターミナル1の外部と荷役を行う荷役車両21とは、コンテナ船48又は外来車両21aとの荷役に係わる荷役車両21を意味する。具体的には岸壁クレーン5と門型クレーン19の間でコンテナ10の荷役を行う構内車両21b、及びコンテナ10を運んできた外来車両21aを意味する。
【0021】
コンテナターミナル1の構内でコンテナ10の配置換えをする荷役車両21とは、マーシャリングを行う荷役車両21を意味する。
マーシャリングはコンテナ船48が未達で本船荷役が行えない期間に実施する荷役作業であり、本船荷役と比べて優先する荷役作業ではない。一方で本船荷役のようにコンテナターミナル1の外部との間の荷役が遅れるとコンテナ船48の港湾使用料の増加や、コンテナ10の配送遅れの原因となる。
そのため、本船荷役をマーシャリングのような構内荷役よりも優先させることで、荷役効率の向上に益々有利になる。
【0022】
優先順位として、運転方式と荷役作業のように、複数の条件を併用する場合は、優先順位同士の優先順位を予め設定することで、どちらかの条件を優先してもよい。例えば安全性を重視する場合は、運転方式を荷役作業よりも優先する。
具体的には、運転方式が異なる場合、手動運転の荷役車両21を自動運転の荷役車両21よりも優先する。運転方式が同じ場合、コンテナターミナル1の外部との間でコンテナ10の荷役作業を行う荷役車両21を、コンテナターミナル1の構内でコンテナ10の配置換えをする荷役車両21よりも優先する。
このように、運転方式を荷役作業の内容よりも優先することで、安全性を優先しつつ、荷役効率も向上させられる。
なお荷役効率を安全性よりも優先したい場合は、荷役作業を運転方式よりも優先してもよい。
【0023】
優先順位としては、他の優先順位の有無によらず、特定の荷役車両21を最優先としてもよい。
最優先にする荷役車両21としては門型クレーン19が挙げられる。
これは外来車両21aや構内車両21bよりも門型クレーン19は重心が高く、大重量で、かつスプレッダをワイヤで吊るため、他の荷役車両21に進路を譲るために速度を変更するとスプレッダに振れが発生し、荷役効率を損ねるためである。
このように、特定の車両を他の優先順位によらず、最優先にしてもよい。
この構成では、荷役効率や安全性に重要な役割を果たす荷役車両21を最優先で走行させられるので、安全性や荷役効率向上の観点から益々有利になる。
【0024】
検知手段11は荷役車両21の走行状況を検知する装置である。具体的には荷役車両21の位置、走行速度、走行の進路を検知する装置である。これらを検知できる装置であれば検知手段11の具体的な検知方式は適宜選択できる。図1に示すように荷役車両21にGPS受信機11aが搭載されていればGPS受信機11aを検知手段11として用いればよい。なおGPSはGlobal Positioning Systemの略である。
【0025】
ただし外来車両21aのようにコンテナターミナル1の外部から入場する荷役車両21はGPS受信機11aを搭載していない場合がある。そのため、GPS受信機11aを検知手段11として用いる場合でも、外来車両21aの走行状況を検知する検知手段11を別途コンテナターミナル1内に設けるのが好ましい。このような装置として図1ではレーダ11bを例示している。レーダ11bは外来車両21aの走行状況を検知できる位置に必要な数だけ配置される。具体的なレーダ11bの設置位置としてはコンテナターミナル1の照明塔を例示できるが、専用の支柱を設置して該支柱にレーダ11bを設けてもよい。
【0026】
制御部7は、検知手段11が検知した走行状況に基づき荷役車両21の走行を制御する装置である。
制御部7は、検知手段11に電気的に接続されて走行状況が入力される構成となっている。制御部7はまた、荷役車両21と通信可能な構成となっている。ここでいう通信可能とは、その運転を指示できることを意味する。具体的には自動運転車両に対しては、進路を変更する制御信号を送信可能であることを意味する。手動運転車両に対しては、荷役車両21の運転室に設けた表示部やスピーカ等を用いて、運転手に対して進路の変更を指示できることを意味する。
【0027】
制御部7はコンテナターミナル1内で、検知手段11及び荷役車両21と通信ができる場所に設けられる。図1では管理棟25に制御部7を設けているが、個々の荷役車両21に設けてもよい。図1では制御部7の数は1つであるが、個々の荷役車両21に制御部7を設ける場合等は複数あってもよい。この場合、1つの制御部7が走行を制御する範囲や制御対象となる荷役車両21を予め設定する等して、他の制御部7と制御が干渉しないようにするのが好ましい。
制御部7は検知手段11が検知した走行状況に基づき荷役車両21の走行を制御できる構造であれば、汎用のコンピュータでもよいし、組み込み等の専用コンピュータでもよい。
【0028】
具体的な制御部7の走行制御の動作は、複数の荷役車両21が互いの進路を妨害すると走行状況から判断した場合に、優先順位の低い荷役車両21に対し、進路を変更して優先順位の高い前記荷役車両21に進路を譲る指令を出す動作である。
進路を妨害すると判断する基準としては、複数の荷役車両21の進路が重なっており、かつ所定の時間内に荷役車両21が接触する可能性がある場合が挙げられる。
例えば複数の荷役車両21の進路が対向する等して、互いに近づく向きに走行している場合は進路が重なっている場合に該当する。
また、所定の時間とは、一方が進路を譲る動作をすれば衝突を回避できる最短時間以上の時間であるが、時間ではなく距離を基準にしてもよい。
【0029】
より具体的な判断基準としては、図2に示すように、荷役車両21の周囲に設定された規制領域R1が挙げられる。規制領域R1は他の荷役車両21の進入を規制する領域である。規制領域R1は、その外周と荷役車両21の距離が所定の距離以上となる範囲で設定される。所定の距離とは、一方が進路を譲る動作をすれば衝突を回避できる最短距離以上の距離である。
この場合、制御部7は、優先順位の高い荷役車両21の規制領域R1に優先順位の低い荷役車両21が進入した場合に、優先順位の高い荷役車両21の進路を妨害すると判断する。
【0030】
例えば図2(a)に示すように外来車両21aと構内車両21bが互いに対向するA1、A2の向きに走行しており、外来車両21aの優先順位の方が構内車両21bの優先順位よりも高い場合を仮定する。
この場合、図2(b)に示すように外来車両21aの規制領域R1に構内車両21bが進入した場合に外来車両21aの進路を妨害すると制御部7は判断する。
【0031】
この場合、制御部7は優先順位の低い構内車両21bに対し、進路をA3の向きに変更して規制領域R1から離脱することで、優先順位の高い外来車両21aに進路を譲る指令を出す。
図2(c)に示すように構内車両21bが進路を譲って規制領域R1からの離脱が完了した後は、制御部7は構内車両21bに対して、A4の向きに移動して元の進路に復帰する指示を出す。
【0032】
規制領域R1の具体的な広さや形状は、一方が進路を譲る動作をすれば衝突を回避できる範囲で適宜設定できる。安全性を優先したい場合は規制領域R1をなるべく広くすればよい。荷役効率を優先したい場合は、規制領域R1をなるべく狭くすればよい。
このように規制領域R1に優先順位が低い他の車両が進入した場合に進路を妨害すると判断する構成にすると、安全性と荷役効率のいずれを優先するかを規制領域R1の広さで設定できる。
【0033】
なお、制御部7は荷役車両21の走行を制御する際に、荷役車両21の走行状況だけでなく、個々の荷役車両21を識別して優先順位を判断する必要がある。構内車両21bや門型クレーン19はコンテナターミナル1内で各々を区別するための固有の識別番号を有している場合が多いので、この識別番号を荷役車両21から取得して、TOS(Terminal Operation System)等を参照して運転方式や荷役作業から優先順位を判断すればよい。
外来車両21aの場合は、入退場ゲート23でナンバープレートを読み取る等して個々の外来車両21aを識別すればよい。外来車両21aの場合、運転方式は手動であり、荷役作業はコンテナターミナル1の外部との間でのコンテナ10の荷役作業であるため、外来車両21aであることを制御部7が識別できれば、優先順位が決まる場合が多い。
【0034】
優先順位の基準、優先順位同士の優先順位、及び規制領域R1の広さと形状を示す情報は、制御部7に有線又は無線で電気的に接続された図示しない記憶装置等に予め記憶されていればよい。フラッシュメモリ等の外部記憶装置に記憶させてもよい。
優先順位の基準、優先順位同士の優先順位、及び規制領域R1の広さと形状は、制御部7が設定を変更できるようにしてもよい。
【0035】
優先順位の基準、優先順位同士の優先順位、及び規制領域R1の広さと形状は、コンテナターミナル1内の領域によって、異なってもよい。あるいは特定の領域内でのみ制御部7が優先順位に基づく走行制御を行ってもよい。
例えば優先順位が荷役作業の内容である場合、マーシャリング中の蔵置領域17a、17cの周囲の領域はマーシャリングを行う荷役車両21を優先し、本船荷役中の蔵置領域17b、17dの周囲の領域は本船荷役を行う荷役車両21を優先してもよい。
以上がコンテナターミナル1の概略構成の説明である。
【0036】
次に、コンテナターミナル1の運用方法、具体的には荷役車両21の走行を制御する方法について、図3及び図4も参照して説明する。
なお、荷役車両21の走行を制御する際には、互いの進路を妨害する荷役車両21のうち、優先順位の低い方に対して進路を変更させて優先順位が高い方に進路を譲る制御と、進路を譲った後で本来の進路に復帰させる制御が必要になる。
【0037】
まず、進路を譲る制御について図3を参照して説明する。
まず前提として制御部7が起動しており、検知手段11も荷役車両21の走行状況を取得できる状態にあるとする。
この場合、まず制御部7は検知手段11を用いてコンテナターミナル1内の荷役車両21の走行状況を取得する(図3のS110、検知工程)。
取得のタイミングは、荷役の安全性の観点からは常時であるのが好ましい。ただし所定のサンプリング周期で検知手段11が走行状況を検知する場合、制御部7による走行状況の取得も所定のサンプリング周期でよい。
【0038】
次に制御部7は、取得した走行状況から、互いの進路を妨害する走行を行っている荷役車両21の有無を判断する(図3のS120)。互いの進路を妨害する走行を行っている荷役車両21がある場合はS130に進み、無い場合はリターンしてS110に戻る。なお、検知手段11が所定のサンプリング周期で走行状況を検知する場合、リターンで戻るとサンプリングの1周期が経過する。
互いの進路を妨害する走行を行っている荷役車両21があると判断した場合、制御部7は、該当する荷役車両21の種類や荷役作業の内容をTOS等に照会して優先順位の上下を判断して、優先して走行させる荷役車両21を決定する(図3のS130)。
なお、優先順位が全く同じ場合や、検知手段11の不調等の理由で優先順位の上下を決められない場合は、進路を譲る操作をし難い方を優先して走行させる荷役車両21とするか、任意に選択した方を優先して走行させる荷役車両21とすればよい。
【0039】
次に制御部7は優先順位の低い荷役車両21に対し優先順位の高い荷役車両21に進路を譲るために進路を変更する指令を出す(図3のS140、走行指令工程)。指令を受けた荷役車両21は進路を譲る走行を行う。進路を譲った荷役車両21は、その後、進路を避けた状態でその場に停止してもよいし、優先して走行させる荷役車両21から離れる走行を続けてもよい。ただし、その場に停止するのが好ましい。これは、その場に停止する方が安全性の点で有利であること、及び、避けた後で走行を続ける場合は進路の設定等の制御が複雑になるためである。
進路を変更する指令を出した後で、制御部7はフラグを立てる(図3のS150)。このフラグは、優先順位の低い荷役車両21が進路を譲る走行を行った後、本来の進路に復帰していないことを意味するフラグである。
以上が進路を譲る制御の説明である。
【0040】
次に進路を譲った後で本来の進路に復帰する制御について図4を参照して説明する。
まず制御部7は、フラグが立っている状態か否かを判断する(図4のS210)。フラグが立っている場合はS220に進み、立っていない場合はリターンしてS210に戻る。
フラグが立っている場合、制御部7は検知手段11から進路を譲る走行を行った荷役車両21の走行状況を取得する(図3のS220)。
制御部7は取得した走行状況から進路を譲る走行を行った荷役車両21が、優先して走行させる荷役車両21の進路を未だ妨害しているか否かを判断する(図3のS230)。未だ妨害していると判断した場合はリターンしてS210に戻る。妨害していないと判断した場合はS240に進む。
妨害していないと判断した場合、制御部7は進路を譲る走行を行った荷役車両21に対し、本来の進路に戻る指令を出す(図4のS240)。
本来の進路に戻る指令を出した後で、制御部7はフラグをOFFにする(図4のS250)。
以上が進路を譲った後で本来の進路に復帰させる制御の説明である。
【0041】
このように本実施形態に係るコンテナターミナル1では荷役車両21同士が接触する可能性がある場合に優先順位の低い方が高い方に進路を譲る。
そのため荷役車両21の優先順位を設定するだけで、コンテナターミナル1の大規模な工事や運用の変更を行わなくてもコンテナターミナル1内で種類の異なる荷役車両21の衝突を防止できる。
【0042】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は実施形態には限定されない。当業者であれば本発明の技術思想の範囲内において各種変形例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 :コンテナターミナル
5 :岸壁クレーン
7 :制御部
10 :コンテナ
11 :検知手段
11a :GPS受信機
11b :レーダ
17、17a、17b、17c、17d :蔵置領域
19 :門型クレーン
21 :荷役車両
21a :外来車両
21b :構内車両
23 :入退場ゲート
25 :管理棟
48 :コンテナ船
図1
図2
図3
図4