(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20220630BHJP
F16K 15/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K15/02
(21)【出願番号】P 2020213759
(22)【出願日】2020-12-23
(62)【分割の表示】P 2016022819の分割
【原出願日】2016-02-09
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2015109128
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中尾 康雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 光正
(72)【発明者】
【氏名】橋川 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祐輔
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-156373(JP,U)
【文献】実開昭62-066063(JP,U)
【文献】実開昭55-106770(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00 - 15/20
F16K 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する内部通路が形成された本体部と、
前記本体部内に収容され、前記本体部に設けられた弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖し、前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁体の開閉方向において前記弁体を案内する案内部と、
前記弁体と前記案内部との間に摩擦力を付与する摩擦力付与手段と
を備える弁装置であって、
前記弁体は、前記弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖しかつ前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁部材と、前記付勢部材が挿入される内部空間を有し前記弁部材が収容されてかつ前記弁体の開閉動作にともない前記案内部により案内される弁案内を備え、
前記弁部材と前記弁案内とは、個別に構成されるとともに、前記弁部材が閉方向に前記付勢部材によって付勢されることにより前記弁案内と前記弁部材とが一体に動作する構成であり、
前記弁体の開閉方向において前記弁部材と前記弁案内のフランジとの間には隙間が形成され、
前記隙間には、クッションスペーサが配置されている
弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁装置の一例として、流体が一方向に流通することを許容し、一方向とは反対方向に流通することを許容しない逆止弁が知られている。このような逆止弁は、流体が流通する内部通路が形成された本体部と、本体部内に収容され、付勢部材により本体部の弁座に向けて付勢される弁体とを備える。弁体は、その一部が本体部に形成された案内部に摺動可能に挿入された状態で付勢部材の付勢力と流体が弁体に付与する力(圧力)との関係に基づいて弁座に対して接触および離間することにより、内部通路を開放および閉鎖する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の逆止弁によれば、逆止弁が内部通路を開放する開弁状態、すなわち弁体が弁座から離間した状態において、弁体には、付勢部材による弁体の付勢力と流体が弁体を押す力とが付与される。このとき、弁体が案内部と接触した状態で振動することにより鳴動が発生する場合がある。なお、このような課題は、逆止弁に限られず、差圧弁についても同様に生じる場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、鳴動の発生を抑制することができる弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に従う弁装置の一形態は、流体が通過する内部通路が形成された本体部と、前記本体部内に収容され、前記本体部に設けられた弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖し、前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、前記弁体の開閉方向において前記弁体を案内する案内部とを備える弁装置であって、前記弁体は、前記案内部により案内される弁案内を備え、前記弁案内には、前記付勢部材が挿入される内部空間が設けられ、当該弁装置は、前記弁体と前記案内部との間に摩擦力を付与する摩擦力付与手段をさらに備える。
【0007】
本弁装置によれば、摩擦力付与手段により、案内部に対して弁体が移動するときにその移動の抗力となる摩擦力が案内部と弁案内との間に発生するため、弁体が弁座から離間した状態において弁体が振動しにくくなる。したがって、弁装置の鳴動の発生を抑制することができる。
【0008】
(2)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弁体は、前記弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖し、前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁と、前記弁体の開閉動作にともない前記案内部により案内される弁案内とが相対移動不能に一体化されている。
【0009】
本弁装置によれば、弁体の開閉動作にともない弁案内と弁とが一体に移動するため、すなわち弁案内に対して弁が移動しないため、弁案内に対する弁の移動に起因する振動を抑制することができる。
【0010】
(3)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記案内部は、前記弁座に向けて延びる延長部を備え、前記延長部と前記弁体とは、すきま嵌めの関係である。
【0011】
本弁装置によれば、弁体の開閉方向において案内部が弁体を支持する範囲が広がることにより、案内部に対して弁体が傾くことが一層抑制される。したがって、弁体が開閉動作を行う際に弁体が案内部に対して円滑に移動することができる。
【0012】
(4)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弁案内は、前記内部空間を含む円筒状に形成され、前記弁案内には、前記弁案内の外部と前記内部空間とを径方向に連通する弁側連通孔が形成されている。
【0013】
摩擦力付与手段により弁体と案内部との間から流体が弁案内の内部空間に流れ込みにくくなっている。このため、弁案内の内部空間の圧力が弁体の外部の圧力よりも低くなる場合、弁体の外部の圧力が弁体の弁座への移動に対する抗力となり、弁体が閉弁動作を行う際に弁体が弁座に速やかに移動しないおそれがある。
そこで、本弁装置によれば、弁案内の弁側連通孔により弁案内の内部空間と外部とを連通するため、弁案内の内部空間の圧力と外部の圧力とが概ね等しくなる。したがって、弁体が閉弁する際に弁体が弁座に速やかに移動しやすくなる。
【0014】
(5)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記延長部には、前記弁側連通孔と連通する案内側連通孔が形成されている。
【0015】
本弁装置によれば、案内部により弁体が収容された状態において、弁案内の内部空間と案内部の外部とを案内側連通孔および弁側連通孔を通じて連通することができる。このため、弁案内の内部空間の圧力と案内部の外部の圧力とが概ね等しくなるため、弁体が閉弁する際に弁体が弁座に速やかに移動しやすくなる。
【0016】
(6)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記案内部の外部と前記弁側連通孔とは、前記弁体と前記延長部との間の隙間のみを介して連通している。
【0017】
本弁装置によれば、弁案内の内部空間と案内部の外部(内部通路)とは、弁体の弁側連通孔、および弁体と延長部との間の隙間を介して連通される。したがって、弁体と延長部との間の比較的に小さな隙間を利用して、弁案内の内部空間と案内部の外部との間における流体の急激な流れによる音の発生を容易に抑えることができる。
【0018】
(7)本発明に従う弁装置の一形態は、流体が通過する内部通路が形成された本体部と、前記本体部内に収容され、前記本体部に設けられた弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖し、前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁体と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢部材と、前記弁体の開閉方向において前記弁体を案内する案内部とを備える弁装置であって、前記弁体は、前記案内部により案内される弁案内を備え、前記案内部は、前記弁体の開閉方向と直交する方向において前記弁体における前記弁座と対向する部分と前記弁案内との両方を支持し、当該弁装置は、前記弁体と前記案内部との間に摩擦力を付与する摩擦力付与手段をさらに備える。
【0019】
本弁装置によれば、摩擦力付与手段により、弁案内に対して弁体が移動するときにその移動の抗力となる摩擦力が案内部と弁体との間に発生するため、弁体が弁座から離間した状態において弁体が振動しにくくなる。したがって、弁装置の鳴動の発生を抑制することができる。
【0020】
(8)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記摩擦力付与手段は、前記弁体において前記案内部に対向する部分と前記案内部において前記弁体に対向する部分との一方に形成された凹部と、前記凹部内に配置され、前記案内部に接触する弾性部材とを備え、前記凹部の深さ寸法は、前記弾性部材が前記案内部に接触することにより生じる前記摩擦力が所定の範囲内となるような値である。
【0021】
摩擦力付与手段による案内部と弁体との間の摩擦力が過度に大きい場合、案内部に対して弁体が開閉動作しにくくなる。一方、案内部と弁体との間の摩擦力は、案内部の凹部の開口部からの弾性部材の突出量が多くなるにつれて大きくなる。
そこで、本弁装置によれば、凹部の深さ寸法を変更することにより凹部の開口部に対する弾性部材の突出量を調整する。これにより、案内部と弁体との間の摩擦力を、この摩擦力が過度に大きくならないように調整している。このため、弁体の振動を抑制すること、および、弁体が円滑に開閉動作することを両立することができる。
【0022】
(9)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記摩擦力付与手段は、前記弁体において前記案内部に対向する部分と前記案内部において前記弁体に対向する部分との一方に形成された凹部と、前記凹部内に配置された弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記摩擦力が所定の範囲内となるような断面形状である。
【0023】
摩擦力付与手段による案内部と弁体との間の摩擦力が過度に大きい場合、案内部に対して弁体が開閉動作しにくくなる。一方、案内部と弁体との間の摩擦力は、案内部の凹部の開口部からの弾性部材の突出量が多くなるにつれて大きくなる。
そこで、本弁装置によれば、弾性部材の断面形状を変更することにより凹部の開口部に対する弾性部材の突出量を調整する。これにより、案内部と弁体との間の摩擦力を、この摩擦力が過度に大きくならないように調整している。このため、弁体の振動を抑制すること、および、弁体が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置のメンテナンス時などにおいて、弾性部材を取り換えることにより案内部と弁体との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部と弁体との摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。
【0024】
(10)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記摩擦力付与手段は、前記弁体において前記案内部に対向する部分と前記案内部において前記弁体に対向する部分との一方に形成された複数の凹部と、前記複数の凹部の少なくとも1つの凹部内に配置された弾性部材とを備え、前記弾性部材の個数は、前記摩擦力が所定の範囲内となるような個数である。
【0025】
摩擦力付与手段による案内部と弁体との間の摩擦力が過度に大きい場合、案内部に対して弁体が開閉動作しにくくなる。一方、案内部と弁体との間の摩擦力は、弾性部材の個数が多くなるにつれて大きくなる。
そこで、本弁装置によれば、弾性部材の個数を変更することにより案内部と弁体との間の摩擦力を調整する。これにより、案内部と弁体との間の摩擦力を、この摩擦力が過度に大きくならないように調整している。このため、弁体の振動を抑制すること、および、弁体が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置のメンテナンス時などにおいて、弾性部材の数を変更することにより案内部と弁体との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部と弁体との間の摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。
【0026】
(11)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記摩擦力付与手段は、前記弁体において前記案内部に対向する部分と前記案内部において前記弁体に対向する部分との一方に形成された凹部と、前記凹部内に配置された弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記摩擦力が所定の範囲内となるような材質である。
【0027】
摩擦力付与手段による案内部と弁体との間の摩擦力が過度に大きい場合、案内部に対して弁体が開閉動作しにくくなる。一方、案内部および弁体の一方と弾性部材との摩擦係数は、弾性部材の材質によって変更される。このため、案内部と弁体との間の摩擦力は、弾性部材の材質に応じて変更される。
そこで、本弁装置によれば、弾性部材の材質を変更することにより案内部と弁体との間の摩擦力を調整する。これにより、案内部と弁体との間の摩擦力を、この摩擦力が過度に大きくならないように調整している。このため、弁体の振動を抑制すること、および、弁体が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置のメンテナンス時などにおいて、弾性部材をその材質が異なるものに取り換えることにより案内部と弁体との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部と弁体との間の摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。
【0028】
(12)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弾性部材は、OリングまたはMYパッキンである。
【0029】
本弁装置によれば、規格化され、かつ製品の流通量も多いOリングやMYパッキンを用いることにより、弾性部材を安価にかつ容易に取得できる。このため、弁装置のメンテナンス時において弾性部材を交換するとき、弾性部材を容易に準備することができる。
【0030】
(13)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弁体において前記弁座に対向する部分、および、前記弁座において前記弁体に対向する部分の一方には、クッションが設けられている。
【0031】
本弁装置によれば、クッションにより弁体が閉弁するときに弁体や弁座に加えられる衝撃が緩和される。
【0032】
(14)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弁体において前記弁座に対向する部分のみに前記クッションが設けられている。
【0033】
本弁装置によれば、弁体のみにクッションが設けられるため、弁装置のメンテナンス時において、クッションを交換する必要がある場合に弁体を取り換えればよい。このため、弁座にクッションが設けられた構成と比較して、弁装置のメンテナンスを容易に行うことができるとともに、クッションが劣化したときの部品交換のコストを低減することができる。
【0034】
(15)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記クッションは、前記弁体に着脱可能に取り付けられている。
【0035】
本弁装置によれば、クッションを交換する必要がある場合、弁体からクッションを取り外して、クッションのみを取り換えればよいため、すなわち最少の交換部品で対応できるため、クッションが劣化したときの部品交換のコストを低減することができる。
【0036】
(16)上記弁装置に従属する一形態によれば、前記弁体は、前記弁座に接触することにより前記内部通路を閉鎖し、前記弁座から離間することにより前記内部通路を開放する弁と、前記弁体の開閉動作にともない前記案内部により案内される弁案内とが個別に構成されるとともに、前記弁案内と前記弁とが一体に動作する構成であり、前記弁体の開閉方向において、前記弁体と前記弁案内との間には隙間が形成され、前記隙間には、クッションスペーサが配置されている。
【0037】
本弁装置によれば、弁と弁案内との間のクッションスペーサにより、弁案内に対して弁が移動するときにクッションスペーサに接触して、弁と弁案内との直接的な衝突を回避している。このため、弁と弁案内との衝突に起因する振動や騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0038】
本弁装置によれば、鳴動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】
図1のD-D線の断面図であり、弁ユニットと本体部とが分離した状態の断面図。
【
図3】
図2の弁ユニットにおける弾性部材およびその周辺を拡大した断面図。
【
図5】弁装置が開弁状態における弁体およびその周辺を拡大した断面図。
【
図10】弁装置が開弁状態における弁体およびその周辺を拡大した断面図。
【
図11】弁装置が閉弁状態となる直前の弁体および弁座を拡大した断面図。
【
図12】変形例1の弁装置におけるプラグおよびその周辺を示す断面図。
【
図13】変形例3の弁装置における弾性部材およびその周辺を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
第1実施形態の弁装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の弁装置は、流体の一例である圧縮空気が一方向に流通することを許容し、一方向とは反対方向に流通することを許容しない逆止弁で構成されている。また流体としては、圧縮空気等の気体に代えて、オイルや水等の液体であってもよい。
【0041】
図1に示されるように、弁装置1は、圧縮空気の流通経路を構成する内部通路11が形成された本体部10と、本体部10に着脱可能に取り付けられ、内部通路11の開放(開弁)および閉鎖(閉弁)を切り替える弁ユニット20とを備える。本体部10は、ステンレス鋼等の鋼材により形成され、内部通路11の上流側において配管(図示略)と接続するための第1接続部12と、内部通路11の下流側において上記配管とは別の配管(図示略)と接続するための第2接続部13とを備える。
【0042】
図2に示されるように、本体部10内には、内部通路11を区画する区画壁10Aが形成されている。区画壁10Aには、弁ユニット20の開閉方向において区画壁10Aを貫通するとともに内部通路11の一部を構成する貫通孔10Bが形成されている。貫通孔10Bが形成された区画壁10Aの周縁には、弁座14が形成されている。
【0043】
本体部10の外壁において弁座14の開口部と対向する部分には、取付開口部15が形成されている。取付開口部15の内周部分には、ねじ部16が形成されている。そして取付開口部15には、弁ユニット20が取り付けられる。
【0044】
弁ユニット20は、有蓋円筒状のプラグ21を備える。プラグ21の円筒部22の外周部分には、ねじ部23およびフランジ24が形成されている。一方、プラグ21の円筒部22の内周部分において円筒部22と蓋部25との境界部分には、段差部26が形成されている。蓋部25の中央部には、蓋部25から突出する円筒状の支持部27が形成されている。支持部27には、円柱状の支持ピン28が例えば圧入により固定されている。
【0045】
プラグ21の円筒部22の内周部分には、案内部の一例であり、例えば真鍮により形成された円筒状の案内部材30が固定されている。案内部材30は、プラグ21の段差部26に接触することにより、プラグ21に対する位置が決められている。
【0046】
案内部材30内には、本体部10内に収容され、弁座14に対して接触および離間することにより、内部通路11を開放(開弁)および閉塞(閉弁)する弁体40の一部が挿入される。これにより、案内部材30は、弁体40の開閉方向において弁体40を案内する。また弁体40は、弁座14と対向する弁41と、弁41からプラグ21に向けて延び、案内部材30により案内される部分である円筒状の弁案内42とを備える。弁41および弁案内42は、例えば真鍮の単一部材により一体に形成されている。弁41の外径は、弁案内42の外径よりも大きい。弁案内42は、案内部材30内に挿入される。
【0047】
弁41において弁座14と対向する部分には、ゴム製のクッション46が焼付けにより一体不可分に固定されている。すなわちクッション46は弁41の一部である。
弁案内42の内部空間SAにおいて弁41側の内周部分には、縮径部43が形成されている。縮径部43には、弁案内42の中心軸まわりで180°離れた位置に弁側連通孔の一例である連通孔44が形成されている。連通孔44は、内部空間SAと弁体40の外部とを開閉方向と直交する方向である径方向に連通する。なお、連通孔44の数は、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0048】
弁案内42の内部空間SAには、付勢部材60が挿入されている。付勢部材60の一例は、コイルばねである。付勢部材60の一端側は、支持ピン28に挿入され、付勢部材60の他端側は、縮径部43に挿入されて弁41に接触している。
【0049】
弁案内42において案内部材30に挿入された部分には、円環状の凹部45が形成されている。凹部45には、Oリングである弾性部材50が取り付けられている。なお、本実施形態では、弁体40の凹部45と、凹部45に取り付けられた弾性部材50とにより、摩擦力付与手段が構成されている。
【0050】
図3に示されるように、案内部材30の内周面と凹部45の底面45Aとの間の距離で規定される深さ寸法LHは、Oリングの大きさに基づいて規格(例えば、JIS規格のJIS B2401)により決められた深さ寸法LRよりも大きい(LH>LR)。深さ寸法LRは、案内部材30の内周面から仮想の凹部の底面である二点鎖線までの距離を示す。このため、凹部45の開口部45B(破線)からの弾性部材50の突出量、すなわち弁案内42の外周面42Aからの弾性部材50の突出量PLは、規格により決められた凹部(二点鎖線)に取り付けられた弾性部材50の弁案内42の外周面42Aからの突出量よりも少ない。本実施形態の深さ寸法LHは、弾性部材50が弁案内42と案内部材30との間のシール性を確保しつつも、案内部材30と弁案内42との間の摩擦力が基準範囲内となるように設定されている。なお、基準範囲は、弁体40が振動して鳴動が発生する摩擦力の上限値よりも大きく、かつ付勢部材60(
図2参照)の付勢力により弁体40が弁座14(
図2参照)に向けて速やかに移動することが可能な摩擦力の上限値以下であり、試験等により予め設定される。
【0051】
図4に示されるように、プラグ21に固定された案内部材30内に弁体40の弁案内42の一部が挿入された状態において、弾性部材50は、案内部材30と凹部45との間で圧縮されている。これにより、弾性部材50が案内部材30を押し付けるため、案内部材30と弁案内42との間に摩擦力が生じる。この摩擦力は、上述のとおり基準範囲内の大きさとなる。
【0052】
このような構成の弁ユニット20は、プラグ21のフランジ24が本体部10の取付開口部15の周縁に接触するまでプラグ21のねじ部23が本体部10のねじ部16にねじ込まれることにより、本体部10に取り付けられる。この状態において、付勢部材60は、弁体40の弁41のクッション46を弁座14に押し付ける。これにより、弁装置1は、内部通路11のうちの弁座14よりも第1接続部12側の上流側通路11Aと、内部通路11のうちの弁座14よりも第2接続部13側の下流側通路11Bとの連通を遮断する、すなわち内部通路11を閉鎖する閉弁状態となる。
【0053】
図5を参照して、弁装置1の動作について作用効果とともに説明する。
弁装置1が閉弁状態において、第1接続部12(
図4参照)から上流側通路11Aに圧縮空気が流入したとき、圧縮空気が弁41を弁座14から離間させる力を付与する。そして、弁41に付与される付勢部材60の付勢力に抗して弁41が弁座14から離間したとき、内部通路11が開放されて弁装置1が開弁状態となる。これにより、上流側通路11Aと下流側通路11Bとが連通し、上流側通路11Aの圧縮空気が下流側通路11Bに流入する。
【0054】
このような弁体40が弁座14から離間した状態で維持されたとき、圧縮空気が弁体40を弁座14から離間させる力と、付勢部材60が弁体40を弁座14に向けて押す力と下流側通路11Bの圧縮空気が弁体40を弁座14に向けて押す力との合計とが概ね釣り合う。この状態で、圧縮空気が弁41を介して上流側通路11Aから下流側通路11Bに流れることにより、弁41に付与される力が弁体40をその開閉方向において振動させるように働く。
【0055】
しかし、弁案内42の凹部45に取り付けられた弾性部材50により、弁体40が案内部材30に対して振動しようとするとき、弁体40(弾性部材50)と案内部材30との間に摩擦力が生じるため、この摩擦力が弁体40を振動させる力に対する抗力となる。このため、弁体40の振動が抑制されることにより、鳴動の発生を抑制することができる。
【0056】
ところで、弾性部材50による弁体40と案内部材30との間の摩擦力が過度に大きいと仮定した場合、付勢部材60により弁体40が弁座14に向けて移動しにくくなる。すなわち弁装置1の閉弁動作が遅くなる。このため、弁装置1の閉弁動作時に圧縮空気が下流側通路11Bから上流側通路11Aに流入するおそれがある。
【0057】
この点、本実施形態の弁装置1は、弁体40の弁案内42に形成された凹部45と案内部材30との間の深さ寸法LH(
図3参照)を、案内部材30と弁案内42との間の摩擦力が基準範囲内となるように設定しているため、弁体40の閉弁動作が遅くなることが抑制される。したがって、弁体40の振動の発生を抑制することと、弁装置1が開弁状態から閉弁状態に速やかに移動することとを両立することができる。
【0058】
本実施形態の弁装置1によれば、上記作用効果に加え、例えば以下に示す効果を得ることができる。
(1)弾性部材50として、規格化されており、かつ流通量も多いOリングが用いられることにより、弾性部材50を安価かつ容易に取得できる。このため、弁装置1のメンテナンス時において、弾性部材50を交換する必要があるとき、交換する弾性部材50を容易に準備することができる。
【0059】
(2)弁案内42には、弁案内42における付勢部材60が挿入される内部空間SAと、弁案内42の外部とを径方向に連通する連通孔44が形成されている。このため、弁体40の外部の内部通路11の圧力と内部空間SAの圧力とが概ね等しくなる。したがって、弁装置1が開弁状態から閉弁状態に切り替えられるときに弁体40が弁座14に速やかに移動することができる。
【0060】
また、付勢部材60が弁案内42の内部空間SAに挿入されない構成、すなわち開閉方向において付勢部材60と弁案内42とが隣り合うように配置された構成(以下、「比較構成」)を仮定した場合、プラグ21には、弁案内42が収容されるスペースおよび付勢部材60が収容されるスペースが開閉方向に並べて形成される必要がある。このため、プラグ21の開閉方向のサイズを大きくする必要がある。このため、既製品の弁装置のメンテナンス時に、既製品の弁装置の弁ユニットが比較構成に取り換えられる場合、弁ユニットが取り換えられた後の弁装置のサイズが大きくなってしまう。このため、弁ユニットが取り換えられた後の弁装置がその周囲の部材と干渉してしまうおそれがある。
一方、本実施形態の弁ユニット20は、付勢部材60が弁案内42の内部空間SAに挿入される構成のため、プラグ21の開閉方向のサイズの増大を抑制することができ、弁装置1のサイズの増大を抑制することができる。このため、既製品の弁装置のメンテナンス時において、既製品の弁ユニットが本実施形態の弁ユニット20に取り換えられても弁装置1がその周囲の部材と干渉することを抑制することができる。
【0061】
(3)弁体40および弁座14のうちの弁体40のみにクッション46が設けられている。このため、金属製の弁41と金属製の弁座14とが直接的に接触することが回避されるため、弁体40が閉弁動作にともない弁座14に接触するとき、弁体40や弁座14に加えられる衝撃が緩和される。加えて、弁体40および弁座14のいずれにもクッション46が設けられないことにより金属製の弁41と金属製の弁座14とが直接的に接触する構成と比較して、弁41と弁座14との間のシール性を高めることができる。
また、弁装置1のメンテナンス時において、クッション46が劣化したことに起因してクッション46を交換する必要があるとき、弁体40を取り換えればよいため、すなわち弁座14を含めた本体部10を取り換える必要がないため、クッション46が劣化したときの部品交換のコストを低減することができる。
【0062】
(4)弁41と弁案内42とが単一部材により構成されている。すなわち弁41と弁案内42とが相対移動不能に一体化されている。これにより、弁体40の開閉動作にともない、弁41と弁案内42とが一体に移動するため、弁案内42に対して弁41が移動しない。このため、弁案内42に対する弁41の移動に起因する振動の発生を防ぐことができる。
【0063】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態の弁装置1の構成について説明する。なお、第2実施形態の弁装置1において第1実施形態の弁装置1の構成と共通する構成要素には、共通の符号を用い、その説明の一部または全部を省略する。
【0064】
図6に示されるように、本実施形態の弁装置1は、第1実施形態の弁装置1の弁案内42と比較して、弁体40の開閉方向における弁案内42の寸法が短い。
また、本実施形態の弁装置1は、案内部の一例である案内部材の形状が第1実施形態の弁装置1とは異なる。本実施形態の案内部材70は、プラグ21の円筒部22に固定される円筒状の固定部71を備える。固定部71において弁41側の端部には、固定部71の径方向の外側に延びる円環状のフランジ72が形成されている。フランジ72の外周縁には、弁41に向けて延びる円筒状の延長部73が形成されている。延長部73の内周面73Aは、弁体40の弁41の外周面41Aと接触可能である。詳細には、延長部73と弁41とはすきま嵌めの関係となる。
【0065】
案内部材70のフランジ72がプラグ21の円筒部22の先端部と接触することにより、プラグ21に対する案内部材70の位置が決められる。また固定部71の先端部は、プラグ21の段差部26よりも弁41側に位置している。これにより、弁体40の開閉方向における固定部71の寸法が長くなることが抑制される。
【0066】
フランジ72と延長部73との境界部分において案内部材70の中心軸まわりに180°離れた位置には、案内部材70の内部と外部とを径方向に連通する案内側連通孔の一例である連通孔74が形成されている。この連通孔74は、内部空間SBを介して、弁体40の連通孔44と連通している。
図6に示されるとおり、連通孔74は、第2接続部13の開口部13Aよりもプラグ21側に位置している。また、連通孔74は、弁体40の連通孔44よりもプラグ21側に形成されている。なお、連通孔74は、1つまたは3つ以上であってもよい。また、連通孔74は、弁体40の連通孔44と対向するように形成されてもよい。
【0067】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(5)弁体40の弁41と案内部材70の延長部73とがすきま嵌めの関係であるため、弁41の外周面41Aは、延長部73の内周面73Aと接触可能である。このため、案内部材70に対して弁体40が傾くときに延長部73が弁41を支持する。これにより、弁体40の傾きを小さくすることができる。
【0068】
(6)弁体40の開閉方向における弁案内42の寸法や案内部材70の固定部71の寸法を短くしているため、第1実施形態の案内部材30に対して案内部材70のフランジ72および延長部73が追加されたとしても、弁装置1の重量の増加が抑制される。
【0069】
(7)案内部材70には、弁体40の連通孔44と連通する連通孔74が形成されている。この構成によれば、弁体40が案内部材70とプラグ21とに収容された状態において、弁案内42の内部空間SAと案内部材70の外部とを連通孔74および連通孔44を通じて連通することができる。このため、弁案内42の内部空間SAの圧力と案内部材70の外部の圧力とが概ね等しくなるため、弁体40が閉弁する際に弁体40が弁座14に速やかに移動しやすくなる。
【0070】
(第3実施形態)
図7を参照して、第3実施形態の弁装置1の構成について説明する。なお、第3実施形態の弁装置1において第1実施形態の弁装置1の構成と共通する構成要素には、共通の符号を用い、その説明の一部または全部を省略する。
【0071】
図7に示されるように、本実施形態の弁装置1においては、弁41とクッションとの固定構造が第1実施形態の弁装置1とは異なる。本実施形態の弁41において弁座14と対向する部分には、円環状の収容凹部47と、収容凹部47の内側において弁41を弁体40の開閉方向に貫通するねじ孔48とが形成されている。収容凹部47には、円環状のクッション49が嵌め込まれている。弁41には、クッション49を着脱可能に固定する固定機構80が設けられている。
【0072】
固定機構80は、クッション49を弁41との間で挟み込むホルダー81と、ねじ孔48にねじ込まれるボルト82と、ホルダー81をクッション49との間で挟み込む緩み止めナット83とを備える。ホルダー81の中央部分には、ボルト82が挿入され、弁41に向かい突出する円柱状の突起81Aが形成されている。
図7に示されるとおり、ホルダー81が弁体40に取り付けられたとき、突起81Aが弁41と接触している。
【0073】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)固定機構80によりクッション49が弁41に対して着脱可能に取り付けられている。このため、クッション49の劣化に起因してクッション49を交換する必要がある場合、クッション49のみを交換すればよい。すなわち最少の部品交換で対応することができる。このため、クッション49が劣化したときの部品交換のコストを低減することができる。
【0074】
(第4実施形態)
図8を参照して、第4実施形態の弁装置1の構成について説明する。なお、第4実施形態の弁装置1において第1実施形態の弁装置1の構成と共通する構成要素には、共通の符号を用い、その説明の一部または全部を省略する。
【0075】
図8に示されるように、本実施形態の弁装置1は、弁体が弁と弁案内との二部材により個別に形成された点が第1実施形態の弁装置1とは異なる。本実施形態の弁体90は、弁案内94に弁部材91が収容される構成である。弁案内94は、案内部材30に挿入される円筒状の挿入部95を備える。挿入部95には、円環状の凹部95Aが形成されている。凹部95Aには、弾性部材50が取り付けられている。凹部95Aと案内部材30との間の深さ寸法は、第1実施形態の弁体40の凹部45と案内部材30との間の深さ寸法LH(
図3参照)と同じである。
【0076】
挿入部95の弁座14側の端部には、挿入部95の径方向の外側に向けて延びるフランジ96が形成されている。フランジ96の外縁には、弁座14側に向けて延びる円筒状の延長部97が形成されている。フランジ96において弁案内94の中心軸まわりに180°離れた位置には、弁案内94の内部と外部とを連通する連通孔96Aが形成されている。なお、連通孔96Aは、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0077】
弁部材91は、延長部97内に収容されている。弁部材91は、金属製の円盤である芯材92にゴム製のクッション93を例えばインサート成形により一体化した構成である。弁部材91と弁案内94のフランジ96との間には、隙間Gが形成されている。この隙間Gには、円環状に形成されたゴム製のクッションスペーサ98が配置されている。また弁部材91は、弁部材91に対してクッションスペーサ98とは反対側において延長部97に取り付けられた止め輪99により弁部材91が弁案内94から脱落しないように構成されている。これにより、弁体40が開閉動作するとき、弁部材91と弁案内94とが一体に移動する。
【0078】
本実施形態によれば、第1実施形態の(4)以外の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(9)弁体90が弁部材91と弁案内94とにより構成されるため、弁部材91のクッション93の劣化に起因してクッション93を交換する必要がある場合、弁部材91を弁案内94から取り外して弁部材91を交換する。このため、弁体90の全てを交換する場合と比較して、クッション93が劣化したときの部品交換のコストを低減することができる。
【0079】
ところで、弁体を弁部材と弁案内との二部材により構成した場合、弁体の開閉動作にともない弁案内に対して弁部材が相対的に移動し、弁部材が弁案内に衝突する場合がある。これにより、弁部材と弁案内とが衝突することによる衝突音が騒音となる場合がある。
そこで、本実施形態では、弁部材91と弁案内94との間にクッションスペーサ98が配置されることにより、弁体90の開閉方向において弁部材91と弁案内94とが直接的に接触することが回避される。このため、弁部材91と弁案内94との衝突に起因する弁体90の振動や騒音を低減することができる。
【0080】
(10)クッションスペーサ98は、ゴム製である。このため、弁部材91が移動してクッションスペーサ98に衝突したとしても、クッションスペーサ98によりその衝突が緩和される。したがって、弁案内94に対する弁部材91の衝突に起因する弁体90の振動の発生を一層抑制することができる。
【0081】
(第5実施形態)
図9~
図11を参照して、第5実施形態の弁装置1の構成について説明する。なお、第5実施形態の弁装置1において第2実施形態の弁装置1の構成と共通する構成要素には、共通の符号を用い、その説明の一部または全部を省略する。
【0082】
図9に示されるように、本実施形態の弁装置1は、第2実施形態の弁装置1と比較して、案内部材70の連通孔74が省略され、弁体40において軸心を挟んで対向配置された一対の連通孔44のうちの一方が省略された点で異なる。また、本実施形態の弁装置1は、第2実施形態の弁装置1と比較して、案内部材70のフランジ72においてフランジ72の周方向に間隔を置いて形成された複数の連通溝75が追加された点で異なる。本実施形態では、案内部材70において軸心を挟んで対向配置された一対の連通溝75としてフランジ72に形成される。連通溝75は、固定部71の内周面と延長部73の内周面との間に亘って延びている。このため、
図10に示されるように、弁装置1が開弁状態であってもフランジ72と弁41との間に隙間が確実に形成される。
【0083】
また本実施形態の弁装置1では、第2実施形態の弁装置1と比較して、弁体40のクッション46の形状が異なる。クッション46は、弁41に固定される平板状のクッション本体46Aと、クッション本体46Aから閉方向に向けて突出する環状の突出部46Bとを備える。クッション本体46Aと突出部46Bとは一体的に形成されている。
図9に示されるとおり、弁体40が閉弁状態において、突出部46Bは、弁座14の内周側に位置し、弁体40の開閉方向と直交する方向において、弁座14の内周側の貫通孔10Bとの間に僅かな隙間が形成されている。なお、クッション本体46Aと突出部46Bとが個別に形成され、突出部46Bがクッション本体46Aの下面に固定されてもよい。また突出部46Bは、環状以外にも平板状であってもよい。
【0084】
次に、弁装置1の作用効果について説明する。
図10の太線の矢印により示されるように、弁装置1では、内部通路11(案内部材70の外部)が、弁41と案内部材70の延長部73との間に形成された隙間を介して案内部材70内と弁体40との間の内部空間SBと連通している。そして、その内部空間SBは、弁体40の連通孔44を介して付勢部材60が配置される内部空間SAと連通している。つまり、案内部材70の外部と連通孔(弁側連通孔)44とは、弁体40と案内部材70の延長部73との間の隙間のみを介して連通している。これによれば、弁体40と延長部73との間の比較的に小さな隙間を利用して、弁体40の内部空間SBと案内部材70の外部との間における圧縮空気の急激な流れによる気流音の発生を容易に抑えることができる。また、弁体40の連通孔44が弁体40の軸心を挟んだ対向位置に設けられてないことから、圧縮空気が複数の連通孔44を直線的に通過することによる気流音の発生を抑えることができる。
【0085】
また、
図11に示されるように、例えば弁体40が開弁状態から閉弁状態に動作するときの閉弁状態の直前の状態、すなわち上流側通路11Aと下流側通路11Bとの差圧が小さいとき、弁体40は開弁状態であるものの、弁体40と弁座14との開閉方向の間の隙間は小さい。そして、クッション46の突出部46Bが弁座14の内周側に位置した状態が維持されるため、突出部46Bと弁座14の内周側の貫通孔10Bとの間には僅かな隙間が形成されている。これにより、突出部46Bを有していないクッション46を備える弁装置と比較して、弁体40と弁座14および貫通孔10Bとの間の僅かな隙間の距離が長くなる。これにより、弁体40と弁座14との僅かな隙間を通過する圧縮空気の気流音の発生を抑制することができる。なお、本実施形態の弁装置1によれば、第2実施形態の(5)および(6)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う弁装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う弁装置は、上記各実施形態のうち、相互に矛盾しない少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた形態を取り得る。加えて、本発明に従う弁装置は、上記各実施形態以外に例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0087】
(変形例1)
上記各実施形態において、弁体40,90の凹部45,95Aを複数形成してもよい。複数の凹部45,95Aの少なくとも1つには、弾性部材50が取り付けられる。すなわち、凹部45,95Aの数と弾性部材50の数が異なってもよい。要するに、案内部材30,70と弁体40,90との間の摩擦力が基準範囲内となるように弾性部材50の数を調整することができる。
一例として、
図12に示されるように、弁体40の弁案内42には、2個の凹部45が互いに離間して形成される。各凹部45には、弾性部材50が取り付けられる。これにより、例えば、1個の弾性部材50では、案内部材30と弁体40との間の摩擦力が基準範囲の下限値よりも小さく、弁体40の振動を十分に抑制することができないような場合には、2個の弾性部材50により、案内部材30と弁体40との摩擦力を増加させて摩擦力を基準範囲内とする。
【0088】
このように、弾性部材50の個数を変更することにより案内部材30と弁体40との間の摩擦力が基準範囲内となるように調整するため、弁体40の振動を抑制すること、および、弁体40が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置1のメンテナンス時などにおいて、弾性部材50の数を変更することにより案内部材30と弁体40との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部材30と弁体40との間の摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。
【0089】
(変形例2)
上記各実施形態において、弁案内42,94における凹部45,95Aよりも弁41(弁部材91)側の部分、および、弁案内42,94における凹部45,95Aよりも弁41(弁部材91)側とは反対側の部分の少なくとも一方に、グリス等の潤滑剤を保持するための凹部または溝を設けてもよい。この凹部または溝に充填される潤滑剤の種類や充填量を調整することにより、弁体40,90と案内部材30,70との間の摩擦力が基準範囲内となるように調整することができる。
なお、この凹部または溝は、凹部45,95Aと同形状であってもよい。この場合、上記変形例1において、凹部45,95Aの数が弾性部材50の数よりも多い場合、弾性部材50が取り付けられていない凹部45,95Aに潤滑剤を充填してもよい。
【0090】
(変形例3)
上記各実施形態において、弾性部材50としてOリングを用いたが、弾性部材50の種類はこれに限定されない。例えば、
図13に示されるように、弾性部材100としてMYパッキンを用いてもよい。
図13では、弁体40に弾性部材100が取り付けられている。なお、弁体90に弾性部材100が取り付けられてもよい。
図13に示されるとおり、弾性部材100の断面形状が上記各実施形態の弾性部材50の断面形状と異なる。このように、弾性部材100の種類(断面形状)を変更することにより、凹部45の開口部45Bに対する弾性部材50の突出量PL(
図3参照)が調整される。そして一般に、MYパッキンが取り付けられた弁体40と案内部材30との間の摩擦力は、同一サイズのOリングが取り付けられた弁体40と案内部材30との間の摩擦力よりも小さくなる。なお、弾性部材は、OリングやMYパッキンの断面形状以外の断面形状であってもよい。
【0091】
この構成によれば、弾性部材50の種類(断面形状)を変更することにより、案内部材30と弁体40との間の摩擦力が基準範囲内に調整される。このため、弁体40の振動を抑制すること、および、弁体40が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置1のメンテナンス時などにおいて、弾性部材50を取り換えることにより案内部材30と弁体40との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部材30と弁体40との摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。また、規格化されており、かつ流通量も多いMYパッキンが用いられているため、第1実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(変形例4)
上記各実施形態において、弾性部材50としてのOリングの材質を変更してもよい。これにより、弁体40と案内部材30との間の摩擦力が変更される。このため、弾性部材50の材質を、弁体40と案内部材30との間の摩擦力が基準範囲内となるような材質に変更してもよい。なお、弾性部材100についても同様に弾性部材100の材質を変更してもよい。
【0093】
この構成によれば、弾性部材50の材質を変更して、弁体40と案内部材30との間の摩擦力が基準範囲内となるように調整されるため、弁体40の振動を抑制すること、および、弁体40が円滑に開閉動作することを両立することができる。加えて、弁装置1のメンテナンス時などにおいて、弾性部材50を取り換えることにより案内部材30と弁体40との間の摩擦力を事後的に調整することができる。したがって、案内部材30と弁体40との摩擦力を適切な値に容易に調整することができる。
【0094】
(変形例5)
上記第1~第3実施形態において、弁体40が弁41と弁案内42とが単一部材により形成されたが、弁体40の構成はこれに限られない。例えば、
図14に示されるように、弁体110は、個別に形成された弁部材111と弁案内113とが互いに固定されることにより、弁部材111と弁案内113とが一体化した構成であってもよい。詳細には、弁部材111の中央には、弁体110の開閉方向に延びる円筒状のねじ部112が形成されている。円筒状の弁案内113において弁部材111側の内周部分には、ねじ部114が形成されている。また弁体110には、弁案内113のねじ部114および弁部材111のねじ部112のそれぞれを径方向に貫通して、弁案内113の内部空間SCと弁案内113の外部とを連通する連結孔115が形成されている。このような構成の弁部材111と弁案内113とは、弁案内113のねじ部114と弁部材111のねじ部112とが螺合することにより互いに固定される。これにより、第1実施形態の(4)の効果に準じた効果を得ることができる。なお、弁部材111と弁案内113との固定方法は、上記螺合に限られず、溶接、接着、圧入等の他の方法であってもよい。
【0095】
(変形例6)
上記各実施形態において、弾性部材50は弁体40,90に取り付けられたが、案内部材30,70に凹部を形成し、その凹部に弾性部材50を取り付けてもよい。この構成によれば、上記各実施形態と同様に案内部材30,70と弁体40,90との間に摩擦力を付与することができる。
【0096】
(変形例7)
上記第1および第2実施形態において、クッション46に代えてまたは加えて、弁座14にクッションを設けてもよい。これにより、弁41と弁座14との直接的な接触を回避することができるため、弁体40が閉弁動作にともない弁座14に接触するとき、弁体40に加えられる衝撃が緩和される。また上記第3実施形態において、クッション49に加えて、弁座14にクッションを設けてもよい。
また、上記第4実施形態において、弁座14にクッションを設けてもよい。この場合、弁部材91は、クッション93を備えてもよいし、クッション93および芯材92に代えて、金属製の円盤として構成してもよい。
【0097】
(変形例8)
上記各実施形態において、プラグ21と案内部材30,70とが個別に形成されていたが、プラグ21の円筒部22が案内部材30,70の機能を兼ねてもよい。この場合、プラグ21の円筒部22が案内部に相当し、案内部材30,70が省略される。
【0098】
(変形例9)
上記各実施形態において、弁体40,90の弁案内42,94が円柱状に形成されてもよい。すなわち、弁案内42,94から内部空間SAが省略されてもよい。このような構成では、付勢部材60は弁案内42,94における弁41および弁部材91とは反対側の端部を弁座14に向けて押し付ける。
【0099】
(変形例10)
上記各実施形態において、弁体40,90がフラット弁であったが、弁体40,90はポペット弁であってもよい。
【0100】
(変形例11)
上記第1および第2実施形態において、弁体40のクッション46を第5実施形態の弁体40のように突出部46Bを有するクッション46に変更してもよい。また第3実施形態においても同様に、弁体40のクッション46に突出部46Bが設けられてもよい。また第4実施形態においても同様に、弁体90のクッション93に突出部46Bが設けられてもよい。
【0101】
(変形例12)
上記各実施形態において、弁装置1が逆止弁に適用されたが、弁装置1の構成はこれに限られず、弁装置1が差圧弁に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 :弁装置
10 :本体部
11 :内部通路
14 :弁座
30 :案内部材(案内部)
40 :弁体
41 :弁
42 :弁案内
44 :連通孔(弁側連通孔)
45 :凹部(摩擦力付与手段)
45A:開口部
46 :クッション
50 :弾性部材(摩擦力付与手段)
60 :付勢部材
70 :案内部材(案内部)
73 :延長部
74 :連通孔(案内側連通孔)
49 :クッション
90 :弁体
91 :弁部材(弁)
93 :クッション
94 :弁案内
95A:凹部(摩擦力付与手段)
96A:連通孔
98 :クッションスペーサ
100:弾性部材
110:弁体
111:弁部材(弁)
113:弁案内
116:連通孔
SA :内部空間
SB :内部空間
SC :内部空間
PL :突出量
LH :深さ寸法