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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】絶対値符号器
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
G01D5/245 R
G01D5/245 N
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020564881
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019063659
(87)【国際公開番号】W WO2019224400
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102018112653.0
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018118477.8
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506061842
【氏名又は名称】ゼンジテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sensitec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】パウル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】グレンスケ,クラウディア
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-139352(JP,A)
【文献】特開平9-5116(JP,A)
【文献】特開平10-213406(JP,A)
【文献】特開2016-183897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度位置または縦位置に関して相互に変位可能な2つの物体(30、32)の絶対位置を決定するための磁気絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)であって、
磁気特性を備えた複数の第1の符号要素(14.1~14.9)を含み、前記物体(30、32)の変位方向に第1の物体(30)上の絶対トラック(13)を定義する、少なくとも1つの第1の材料スケール(12、12a、12b)と、
前記材料スケール(12、12a、12b)によって第2の物体上に生じる漏れ磁場をサンプリングする少なくとも1つの第1の磁場センサ配置(15)と、
前記第1の磁場センサ配置(15、15a)からの測定信号を受信するように構成される評価部とを備え、
前記第1の符号要素(14.1~14.9)のそれぞれは、前記絶対トラック(13)の縦方向に前記第1の符号要素(14.1~14.9)のそれぞれに1:1の関係で割り当てられた仮想参照位置(18.1~18.4)に対して各符号化オフセットだけオフセットして配置され
前記仮想参照位置(18.1~18.4)は、前記絶対トラック(13)に沿って等距離にかつオフセット無く定義され、
前記第1の符号要素(14.1~14.9)のそれぞれは、少なくとも前記符号化オフセットに基づいて、N文字を含む1符号の特定の1文字を符号化し、
評価部は、前記測定信号に基づいて、サンプリングした第1の符号要素(14.1~14.9)の前記符号化オフセットおよび当該符号化オフセットで符号化された前記1文字を確認するように構成される、ことを特徴とする磁気絶対値符号器。
【請求項2】
前記第1の符号要素(14.1~14.9)は、前記仮想参照位置(18.1~18.4)に対して前記絶対トラック(13)の前記縦方向において対称的な符号化オフセットだけオフセットされている、ことを特徴とする請求項1に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項3】
P個の符号要素列(14.1~14.9)のそれぞれは、各1つの符号語を符号化し、符号語のそれぞれは前記第1の材料スケール(12、12a、12b)内で一意であり、かつそれぞれの絶対位置を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項4】
前記第1の磁場センサ配置(15、15a)は、複数の第1の磁場センサ(16.1~16.8)を含み、前記複数の第1の磁場センサ(16.1~16.8)は、前記第1の材料スケール(12、12a、12b)の各位置について複数の隣接する前記第1の符号要素(14.1~14.9)を同時にサンプリングし、その結果、前記第1の磁場センサ(16.1~16.8)のそれぞれは、各第1の符号要素(14.1~14.9)をサンプリングする、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項5】
前記複数の第1の磁場センサ(16.1~16.8)の数は、前記Pの数に等しいかまたはそれより大きい、ことを特徴とする請求項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項6】
さらに、等距離の複数の第2の磁気符号要素(24.1~24.9)を有し、増分トラック(23)を定義する、第2の材料スケール(22)と、
前記第2の材料スケール(22)をサンプリングする第2の磁場センサ配置(15b)とを備え、
前記増分トラック(23)は、前記絶対トラック(13)に平行に、かつ離れて延在し、
前記仮想参照位置(18.1~18.4)のそれぞれは、前記増分トラック(23)上に割り当てた前記第2の符号要素の少なくとも1つの縦位置によって、前記絶対トラック(13)上にその縦位置に関して決定され、
前記評価部は、前記前記第2の磁場センサ配置(15b)からの測定信号を受信して前記仮想参照位置を確認するように構成される、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絶対値符号器10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項7】
それぞれの文字の前記符号化は、前記符号化オフセットの大きさおよび/または向きに基づいて生じる、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項8】
前記第1および/または第2の符号要素(14.1~14.9、24.1~24.4)のそれぞれは、永久磁石を含み、各符号要素(14.1~14.9、24.1~24.4)の磁気極性は、前記割り当てた磁場センサ配置(15、15a、15b)によって検出可能であり、かつそれぞれの文字の前記符号化は、前記極性に基づいても追加的に生じる、ことを特徴とする請求項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項9】
オフセットの前記符号化は、絶対トラック(13)に沿った横方向の成分を含む、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項10】
前記第1の磁場センサ配置(15、15a)の少なくとも1つは、少なくとも1つの磁場センサ(16.1~16.8)を含み、前記磁場センサ(16.1~16.8)のそれぞれは、複数の磁気抵抗体要素(20)を含み、当該磁気抵抗体要素を相互接続して、ハーフホイートストンブリッジ(17.1~17.34)、またはフルホイートストンブリッジを形成する、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項11】
前記磁気抵抗体要素(20)は、抵抗が方向に敏感なAMR、GMR,またはTMR抵抗体要素であって、その抵抗は前記オフセットの方向に平行な磁場成分に対して線形に変化するか、またはその抵抗は磁場の角度に依存する、ことを特徴とする請求項10に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項12】
前記磁場センサ配置(15、15a、15b)は、磁場センサ(16.1~16.8)を少なくとも1つ含み、前記磁場センサ(16.1~16.8)のそれぞれは、少なくとも第1の測定位置についての第1の測定信号、および前記第1の測定位置から前記絶対トラック(13)の延長方向に離れた第2の測定位置についての第2の測定信号を生成し、前記第1および第2の測定位置の距離は、隣接する前記仮想参照位置(18.1~18.4)の距離よりも小さく、前記評価部は、事前定義された基準を考慮して前記第1または第2の測定信号に基づき前記符号化オフセットを確認するように構成される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項13】
前記測定位置の距離は、隣接する前記仮想参照位置(18.1~18.4)の距離の半分以下であることを特徴とする請求項12に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項14】
前記測定位置の距離は、隣接する前記仮想参照位置(18.1~18.4)の距離の4分の1に等しいことを特徴とする請求項13に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項15】
前記磁場センサ(16.1~16.8)のそれぞれは、少なくとも2対のハーフホイートストンブリッジ(17.1~17.34)を含み、第1の対を、前記第1の測定位置に割り当て、第2の対を、前記第2の測定位置に割り当てる、ことを特徴とする請求項10または12に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項16】
前記第1および第2の材料スケール(12、12a、12b、22)の延長方向を見込んだとき、前記第1の対のハーフホイートストンブリッジ(17.1~17.34)および前記第2の対のハーフホイートストンブリッジ(17.1~17.34)は、交互に配置される、ことを特徴とする請求項15に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項17】
2つの隣接する第1の符号要素(14.1~14.9)の間は、それぞれの分離領域を備える、ことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【請求項18】
2つの隣接する第2の符号要素(24.1~24.5)の間は、それぞれの分離領域を備える、ことを特徴とする請求項6に記載の絶対値符号器(10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度位置または縦位置に関して相互に変位可能な2つの物体の絶対位置を決定する磁気絶対値符号器に関し、第1の磁気符号要素を複数含む絶対トラックに沿って延在する少なくとも1つの第1の材料スケールと、第1の材料スケールをサンプリングする少なくとも1つの第1の磁場センサ配置と、第1の磁場センサ配置からの測定信号を受信するように構成される評価部と、を備える。
【背景技術】
【0002】
(先行技術)
絶対値符号器は、角度位置または縦位置に関して相互に変位可能な2つの物体の絶対位置を決定する測定装置であり、特に、工作機械上の変位または角度測定装置として、操作および自動化技術分野、ならびに測定およびテスト装置に使用される。
【0003】
絶対値符号器は、通常、デジタル数値の形式で絶対位置を出力する。この数値は、絶対値符号器の測定長または測定範囲全体で一意なので、たとえば増分符号器の場合のように、初期参照移動は不要である。一方、増分符号器は、増分変化に基づく相対的な位置変化を測定する。増分は、所謂、材料スケールの符号要素の基本構造と考えられ得る。この文脈での材料スケールとは、サンプリング可能な符号要素により増分を通知する実施形態である。増分符号器は、通常、位置が変化する過程で通過した増分の数を数える。ここでの相対位置は、測定の開始時における位置に対してのみ知ることができ、または、たとえば、停止もしくは参照位置に対する参照移動を介して、絶対情報を確認し得る。
【0004】
材料スケールの複数の符号トラックが光学電子センサの助けを借りて並行してサンプリングされる光学絶対値符号器に加えて、磁気絶対値符号器も、汚れる可能性がある環境でよく使用される。ここでの符号化は、回転磁石の位置を評価するか、または材料スケールがノニウスの原理に従って変調された磁場を評価するか、のいずれかによる。ノニウスの原理では、材料スケールは、等距離の符号要素を複数有するトラックを2つ含み、符号要素の数は1つだけ異なる。その結果、絶対位置に相関する2つのトラック間の位相シフトについて、それぞれのトラックをサンプリングしたときに知ることができる。
【0005】
符号原理に従って動作する磁気絶対値符号器も知られている。この場合、符号要素は磁気双極子として形成され、材料スケール内での各符号要素の整列方向に依存して、N極またはS極がサンプリングされ、二進符号が定義される。複数の符号要素は、絶対値符号器の各角度または縦位置で同時にサンプリングされ、材料スケールに沿った符号化は、特定の位置でサンプリングされる各ビットパターンが一意となるように選ばれる。しかし、この種の磁気絶対値符号器は、符号要素の一定の最小サイズを要求し、さらに、磁気活性材料から製造する必要がある。
【0006】
磁気絶対値符号器は、米国特許第6871554号および第6841958号明細書から知られ、二進符号化の符号要素は、磁場センサ配置に対する符号要素の移動中に読むことができ、その符号化に基づいて絶対位置が決定される。この目的のためには、まず、符号要素を磁場センサ配置に対して運動させることが不可欠であり、それゆえ、疑似絶対値符号器と呼ぶことができる。複数の符号要素の相対位置は、移動中に時系列において決定される。静止時の絶対値の決定、または位置情報の読み取りは、これらの配置では不可能である。そのため、この位置決定は、疑似絶対値決定とも呼ばれる。
【0007】
静止時の絶対値を読み取ることができない増分長センサについて、米国特許第9719805号明細書に記載されている。4ビットセンサを使用して絶対値位置を分解する。ここで、絶対値を決定するために、符号要素に対する当該センサの相対的な運動が必要であり、二進数列は、対応する南北極の方向によって表される。符号要素は相互に等距離に配置され、情報を符号化するために、符号要素の相対位置の空間的なオフセットは一切、設けられない。
【0008】
増分トラックを備えた絶対値符号器の材料スケールおよび絶対トラックは独国特許出願公開第102015121474号明細書から知られており、2つのトラックはそれぞれ、能動的な磁気配置で次々に配置された磁極対の列を含む。位置符号化は、正の位相シフト、つまり、増分トラックの磁極対に対する絶対トラックの磁極対の縦方向の片側の正の変位を検出し、それによって論理値を符号化することで発生する。しかし、そのような正の位相シフトは、絶対トラックの磁極対の、増分トラックの磁極対に対する1:1割り当てを解消するため、事前定義された距離にわたって、絶対トラックの磁極対の数が、増分トラックの磁極対の数よりも少なくなる結果を生じる。したがって、材料スケールの製造および絶対トラックの磁極対の増分トラックの磁極対への割り当ては難しく、それに加えて、この原理を使用すると、絶対値符号器単体の、つまり、より多い数の磁極対を有する関連の増分トラックが無い材料スケールを実現することは不可能である。最終的に、この原理は、独自の磁場を生成する能動的な磁極対で作られた材料スケールにのみ使用できる。独国特許出願公開第3942625号明細書には、また、増分トラックおよび絶対トラックを備えた絶対値符号器について記載されており、増分トラックをサンプリングすることによって生成される信号を、絶対トラックのサンプリング信号を評価するための信号処理の同期に利用する。この目的のために、絶対トラックの符号要素を、増分トラックの物理的に小さい符号要素の1つまたは複数に割り当てる。
【0009】
さらなる一般的な文書は、独国特許出願公開第4209629号および欧州特許出願公開第1980824号明細書であり、それぞれの場合、独国特許出願公開第3942625号明細書の記載に匹敵する方法で、増分トラックの複数の符号要素を、絶対トラックの符号要素の1つに割り当てる。そのため、増分トラックの存在は、上記の文書において、絶対位置の決定に不可欠である。
【0010】
本発明の目的は、先行技術の上記の問題を克服する改善された絶対値符号器を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する絶対値符号器によって達成される。有利な展開について、従属請求項に記載する。
【0012】
第1の符号要素はそれぞれ、それぞれの符号化オフセットだけオフセットして配置され、特に1:1の関係で第1の符号要素のそれぞれに割り当てられた仮想参照位置に対して対称に配置され、等距離でオフセットがない仮想参照位置は絶対トラックとして知られるトラックを定義し、第1の符号要素はそれぞれ、少なくとも前述の符号化オフセットに基づいて、N文字を含む符号の特定の1文字を符号化し、評価部は、その測定信号に基づいて、サンプリングされた第1の符号要素の前述の符号化オフセットおよび該符号化オフセットによって符号化された前述の1文字を確認するように構成される、ことを提案する。
【0013】
第1の符号要素は、能動的な磁気特性、すなわち、それ自体の磁場を生成する特性、または受動的な磁気特性、すなわち、既存の磁場に影響を与える特性、として設計され得る磁気特性を有する。したがって、ここでの特別な利点は、材料スケールについて、それ自体の磁場を伴う磁気的に能動的な形にも、または外部磁場に影響を与えることによって受動的にも、両設計ができることである。
【0014】
オフセットは、1つまたは複数のステップを有することができ、参照位置から開始して、正または負のオフセット方向の両方に、すなわち仮想参照位置に対して対称的に生じさせることができる。原則として、最大オフセット距離を、特に絶対トラックが延在する方向に一致させる場合、2つの隣接する参照位置間の距離の最大50%程度に制限する。好ましくは、オフセット間隔を、2つの隣接する参照位置間の距離の25%から5%の範囲、特に20%から10%の範囲、さらに特別な場合には15%から10%の範囲で選択する。これらのオフセット範囲内で、位相オフセット情報を、高精度の磁場センサを使用して分離し得る。
【0015】
第1の符号要素の1つを、正確に、それぞれの参照位置に割り当てるため、同数の参照位置および第1の符号要素を、絶対トラックの指定可能な範囲に沿って配置する。このようにして、第1の符号要素の列を使用し、仮想参照位置に対する符号要素の可能な正および負のオフセットの大きさの知識を使用して、絶対トラックに割り当てた、オフセット無く等距離に配置された仮想参照位置の位置を確認することが可能である。このようにして、仮想参照位置、したがって絶対トラックについて、第1の符号要素のオフセットの大きさを相互に相対的に比較することを介して抽出することができる。これにより、物理的に分離された第2の増分トラックを省略できるため、参照位置を事前に知る必要がなくなる。これを、事実上、事後的に構築できるからである。少なくとも物理的な参照位置が存在しないとき、仮想参照位置への考慮下に全ての符号要素の等しいオフセットを要求する符号情報、例えば、「0000」または「1111」のような4ビット符号の二進情報は、第1の符号要素から除外されることが、ここでは有利である。
【0016】
この状況では、Nは、参照位置に関連して単一の符号要素を表すことができる異なる情報文字の数を定義し、通常、参照位置からの可能な符号化オフセットの数および/または磁気分極もしくは磁気的振る舞いと相関する。したがって、二進符号化の場合、N=2(二進情報単位「0」および「1」を表す)であり、二進情報を符号化するために、参照位置からの少なくとも1つの符号化オフセットを採用することができ、これは、好ましくは、参照位置からの2つの反対方向の符号化オフセットを採用することができる。もちろん、空間符号化オフセットの最大サイズは、符号化オフセットが絶対トラックが延びる方向に移動すると仮定すると、直に隣接する一対の相対位置間の距離の半分に制限される。磁場センサ配置により、Pの数の符号要素を1符号語として同時に取り込むことができるため、絶対位置を決定するための絶対値符号器によって、N個の異なる位置情報の項目を評価することができる。
【0017】
P個の第1の符号要素の観測された配置の絶対位置を符号化する1符号語について、磁場センサ配置で読み取る可能性があるため、絶対位置を符号に基づく位置情報からすでに決定し得る。磁場センサ配置は、仮想参照位置からの第1の符号要素のオフセットのサイズをさらに取り込むので、この局所オフセット情報を参照して、改善された位置決定を行うことができる。局所オフセット情報を、負および正のオフセット距離の平均オフセット距離として決定できる。したがって、絶対位置は、たとえば、次の方法で決定できる。
絶対位置=符号に基づく位置情報+局所オフセット情報、
そして、特に、
絶対位置=磁極数*幅(磁極周期)+(Pos_Pole_negative+Pos_Pole_positive)/2、
ここで、幅は、2つの仮想参照位置間の距離、磁極数は、取得した参照位置の符号に基づく数、Pos_Pole_positiveは、1磁極周期内の負オフセットの位置、Pos_Pole_negativeを1磁極周期内の正オフセットの確認された位置である。
【0018】
絶対値符号器の冗長設計は、絶対値符号器の安全性が重要なアプリケーションの機能信頼性の観点から、特に有利である。符号に基づく位置情報と局所オフセット情報を組み合わせることにより、局所オフセット情報が考慮されていない場合や誤って解釈されている場合でも、使用可能な絶対位置の値を確認できる。(仮想)参照位置の定義が別個の物理的な増分トラックとして存在する場合、または仮想参照位置が符号オフセットを個別に評価せずに分離して考慮される場合、その種の通常の増分位置符号器の(仮想)増分トラックの利用可能な信号列は、すなわち擬似絶対値符号器のように、システムがスイッチオフされたときに揮発しない位置情報を用いて確認することができる。これにより、絶対値位置を絶対トラックおよび(仮想)増分トラックによって冗長に確認できるため、障害に対するセキュリティの向上および誤ったデータの回避という意味で、機能信頼性に対する高度な要件を満たすことができる。
【0019】
本発明による絶対値符号器は、絶対角度位置を決定するための角度符号器としても、または絶対線形位置を決定するための線形符号器としても両方の設計ができる。この種の絶対値符号器で通常行われているように、第1の物体に配置された材料スケールおよび、第2の物体に配置された磁場センサ配置は、機械的に結合されているため、両物体の相互に対する相対的な運動は、磁場センサ配置に対する材料スケールの相対的な運動になる。材料スケールは、漏れ磁場を生成するか、外部で生成された磁気測定場の漏れ磁場に影響を与える。この漏れ磁場、または磁場の変化は、磁場センサ配置によって検出される。絶対トラックの方向は、物体の変位運動、すなわち通常は物体を貫通する環状または直線状のいずれかに定義される。前記参照位置は仮想目印であり、必ずしも直接、すなわち物理的に材料スケールに適用する必要はないが、別の適切な方法で、間接的に、または他の適切な参照点を参照することによって、例えば第1の符号要素の相互のオフセットの分析を通じて確認することができる。絶対トラックに沿ったオフセットの無い配置とは、特に、参照位置が横方向のオフセットを持たない、すなわち絶対トラックの延長方向を横切るまたはそれに沿うオフセットはないが相互に等距離で均等に配置されるという事実を指す。したがって、すべての参照位置は、絶対トラックを定義する。符号化オフセットは、参照位置に対する空間オフセットのステップ幅を決定する。ここで、個々の符号要素はまた、符号化オフセットを0から有することも、つまり参照位置に留まることができる一方、他の符号要素では、参照位置から符号化オフセットのステップ幅で空間的に離れることもでき、絶対位置情報を文字として符号化する。
【0020】
この状況では、1つの符号は符号化可能な文字の全体を指す。最も単純な場合では、符号は0と1の文字を含む二進符号であるが、3つ以上の文字を含むこともできる。従って、異なる符号化オフセット、例えば、4符号化オフセットを用いて、同一精度で符号要素の数の著しく削減する、もしくは同一精度で磁場センサ量を削減する、または精度の向上を提示することが好都合のように思われる。
【0021】
符号化オフセットを、参照位置に対して対称に整列し、たとえば、参照位置に対して正および負の方向に整列し、等しいオフセットサイズで規則的にオフセットするか、または複数の符号化オフセットの場合は、正および負の方向に同一オフセットサイズでオフセットする。しかし、これに関して、参照位置に対する二方向の非対称なオフセットサイズも考えられ、正方向のオフセットサイズが負方向とは異なるように選択することもできる。符号要素は、絶対トラックに沿って参照位置に配置することもでき、つまり、「0」のオフセットを持ち、符号情報がこの位置に割り当てられる。
【0022】
一実施形態では、符号要素は、磁気的に活性である、すなわち永久磁性材料から製造されることができる。したがって、硬磁性符号要素は、N極およびS極を有する永久磁石として実装することができ、磁化は、好ましくは、絶対トラックまたは増分トラックの方向に一致する。永久磁石は、相互に対して隙間を伴って、近接配置するか、またはオフセットを持たせることができ、その場合に、文字を符号化するためにオフセットを変えるか、または文字を符号化するために永久磁石を異なる長さにすることができる。
【0023】
あるいは、軟磁性符号要素を、すなわち、一時的に磁化可能か強磁性となる材料、例えば、鉄、ニッケル、コバルトもしくは適切な合金から製造されるか、またはそれらが含まれる符号要素を使用することができる。したがって、符号要素は、例えば、軟磁性歯として、または軟磁性金属薄板のくぼみとして形成することができる。磁場センサ配置は、受動的磁気符号要素を使用するための測定磁石をさらに含むことができ、磁石の磁束密度、または符号要素によってその中で引き起こされる変化は、磁場センサ配置の基本的に知られた方法で測定することができる。磁気符号要素は、磁場センサ配置によって検出することができる、測定磁石の磁場の誘導または歪みを引き起こすのに適している。
【0024】
したがって、符号化を、本発明に係る絶対値符号器とともに使用し、それぞれの文字を、主に符号要素の固有の特性によってではなく、符号化オフセット、つまり、それぞれの参照位置に対する符号要素の位置の空間的変化によって生じさせる。
【0025】
有利には、P個の符号要素列はそれぞれ、各1符号語を符号化し、各符号語は、第1の材料スケール内で一意であり、かつそれぞれの絶対位置を表す。したがって、角度位置または縦位置を各符号語に割り当て、その結果、評価部は、アルゴリズムまたは、好ましくはルックアップテーブルの助けを借りて、確認された符号語に関連する絶対位置を決定することができる。材料スケールで符号化された文字列の全体は、たとえば、PRBS(疑似ランダム二進数列)符号として知られているものにすることができ、いかなる符号語も、つまりP個の連続した文字列は、材料スケールによって表される文字列全体で複数回発生しないように生成することができる。サイズPは、ここで少なくとも2である自然数を定義し、有利なことには、2の倍数、例えば、4、8、または16である。絶対値記述の精度を定義する他のビット深度の選択も可能で、Pを7、8、または11にすることもできる。ビット深度が大きいほど、より多くの一意の符号語を形成でき、あらゆる場所でその一意の絶対位置を表す絶対トラックを長くすることができる。こうして8または10のビット深度を用いると、絶対トラックは、2、210の符号要素長で、かつそれにもかかわらず、各位置で一意の符号語を含むことができる。数Pは、有利には、絶対トラックが依然として十分な長さでありながら、可能な限り最短の磁場センサ配置が達成され得るように選択される。二進符号の代わりに、同一精度で数Pを減らすために、文字ごとに複数の符号文字を使用する符号化を選択することもでき、各符号要素は、3つ以上の符号化状態、たとえば相対位置からの異なるオフセット長、または異なる磁気分極のような磁気特性の追加変化を、空間オフセットもしくは類似のものと組み合わせて指示することができる。したがって、211=2048符号要素を持つ二進11ビット符号は、たとえば、3=2187符号要素を持つ3文字(-1、0、1)の符号化システムに置き換えることができる。
【0026】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、第1の磁場センサ配置は、第2の物体上に第1の磁場センサを複数含み、第1の磁場センサは、第1の物体上の第1の材料スケールの各位置における複数の隣接する符号要素を同時にサンプリングするように配置されているため、各磁場センサは各第1の符号要素をサンプリングする。磁場センサは、この目的のために、トラックの方向に前後に配置され、基本的に参照位置の間隔に対応する間隔を有する。したがって、複数の連続する文字を材料スケールから同時に読み取ることができる。有利には、磁場センサについて、後で説明するように、検出精度を高めるために、参照位置よりも小さい間隔にすることができる。
【0027】
有利には、第1の磁場センサの数は、数Pと同一かそれより多い。したがって、この場所で符号化された各符号語は、同時に読み取ることができる。これにより、静止時に、すなわち、磁場センサ配置に対する符号要素の相対位置の変更が無くても、絶対位置を読み取ることが可能になる。好ましくは、磁場センサ配置は、少なくとも、絶対位置を符号化する符号語に必要なビット深度まで対応する範囲を有するからである。換言すれば、磁場センサ配置について、好ましくは、複数の第1の符号要素、または静止時の絶対位置を決定できる1符号語を符号化するために必要なもっと多数の第1の符号要素、の符号化された文字を読み取るように構成する。
【0028】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、増分トラックを定義する複数の等距離の第2の磁気符号要素を有する第2の材料スケール、および第2の材料スケールをサンプリングするための第2の磁場センサ配置が提供され、増分トラックは、絶対トラックと平行に、絶対トラックから距離を置いて延びる。各参照位置は、絶対トラック上に、その縦位置に関して、増分トラック上の少なくとも1つの割り当てられた第2の符号要素の縦位置によって決定され、評価部は、第2の磁場センサ配置から測定信号を受信し、それらに基づいて参照位置を確認するように構成される。したがって、第2の材料スケールは、参照位置の場所を決定するための基準として機能する。この状況において、縦位置は、それぞれのトラックの延長方向における、または特定の場合には、また、その延長方向を横切る、符号要素の位置もしくは参照位置を、つまり物体の変位方向における位置を指す。参照位置は、例えば、関連する第2の符号要素に対してそれぞれ同一の縦位置を有し、トラックに垂直な方向にのみオフセットすることができ、参照位置および第2の符号要素の間隔は、絶対トラックおよび増分トラックの間の間隔に対応する。絶対トラック上の参照位置の相対位置は、ここでは増分トラック上の第2の符号要素の位置に対応する。増分トラックは、絶対トラック上の符号要素の参照位置を正確に指定するのに役立ち、したがって、位置測定の精度を高めるのに役立つ。ここで、第2の符号要素は、参照位置に対して一定のオフセットを採用していなくても、第2の符号要素の位置は少なくとも1つの軸方向の参照位置を定義することが有利である。最も単純なケースでは評価部によって減算することによってオフセットを考慮できる。
【0029】
原則として、増分トラック上に割り当てた単一の符号要素の縦位置を、絶対トラック上の参照位置を決定するために参照することができる。参照位置を決定するために、増分トラック上の2つ以上の符号要素の縦位置を参照することも考えられる。したがって、絶対トラックに沿った参照位置について、例えば、増分トラックの符号要素が検出された位置を平均化することによって、より高い精度で決定することができる。絶対トラックに加えて増分トラックが存在する場合、これを磁場センサ配置のセンサ要素によってもサンプリングする。絶対トラックに沿う第1の材料スケールの符号要素のサンプリング、および増分トラックに沿う第2の材料スケールの符号要素のサンプリングのための2つの補助的な配置で該磁場センサ配置のセンサ要素を提供することは、ここでは好都合のように思われる。
【0030】
有利には、それぞれの文字の符号化は、符号化オフセットの値および/または方向に基づいて行われる。たとえば、二進符号の符号化は、絶対トラックの方向におけるオフセットが、一方向に文字0を符号化し、その反対方向に文字1を符号化する、というようにされよう。その場合、符号化オフセットの値は同一にすることができる。しかし、異なる値のオフセットを提供することも可能である。たとえば、オフセットが2倍異なる場合、前の例の変更として、合計4文字を1符号要素で符号化できる。
【0031】
符号化オフセットの値は、基本的に0とすることができる。二進符号は、たとえば、以下のようにできよう。すなわち、値が0のオフセット、つまり符号要素の参照位置への配置は、文字0を符号化し、絶対トラックの方向の事前定義した符号化オフセット値によるオフセットは、文字1を符号化する。
【0032】
一つの有利な変形例によれば、第1及び/又は第2の符号要素はそれぞれ、永久磁石を含み、それぞれの符号要素の磁気極性を割り当てた磁場センサ配置により検出可能であり、それぞれの文字の符号化は、追加的に、磁気極性に基づいても生じる。したがって、符号要素は、双極子磁石として構成されており、例えば、磁北極または磁南極のいずれかは、各磁場センサの方向を指す。このように、符号の深さ、すなわち可能な文字数を、それ以外は同一の符号化オフセット仕様を有する各符号要素によって、二倍にすることができる。あるいは、極性の評価を利用して、符号化に冗長性を作成することもできる。極性によって、たとえば、チェックビットを符号化することもできる。
【0033】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、符号化オフセットは、絶対トラックに沿った縦方向成分および/または横方向成分を含む。符号化オフセットの縦方向成分は絶対トラックに沿ったオフセットを指し、符号化オフセットの横方向成分は絶対トラックの方向に垂直に延びる。好ましくは、符号化オフセットは、縦方向成分のみを含む、つまり、第1の符号要素を、それらの関連する参照位置に対して絶対トラックの延長方向のみにオフセットさせる。しかしながら、基本的に、符号化について、第1の符号要素を、絶対トラックの延長方向を横切る方向にオフセットして配置し、ここでも、例えば、符号化オフセットの大きさに応じて2つ以上の文字を再びこれにより表すことができる、というようにできる。さらに、両変形例を組み合わせることもできる。
【0034】
少なくとも第1の磁場センサ配置は、磁場センサを少なくとも1つ含み、各磁場センサは、複数の、特に2つ、4つ、または8つの磁気抵抗体要素を含み、それらを相互接続して少なくとも1つのホイートストン測定ブリッジ、特にハーフホイートストンブリッジもしくはフルホイートストンブリッジを形成する場合、有利であることが見出された。AMR、CMR、TMR、またはGMR磁場センサは、特に磁気抵抗体要素の例である。xMR磁場センサとしても知られているこれらのセンサ種は、これも使用する可能性のあるホールセンサの最大50倍の感度が特徴である。前記磁気抵抗センサは、異方性磁気抵抗(AMR)効果、超巨大磁気抵抗(CMR)効果、トンネル磁気抵抗(TMR)効果、または巨大磁気抵抗(GMR)効果に基づく。ハーフホイートストンブリッジは、通常、それぞれの場合に、好ましくは反対向きに接続した2つの磁気抵抗体要素を含む。反対向きの接続とは、両方の抵抗体要素に作用する外部磁場が一方の抵抗体要素の抵抗の上昇をもたらし、他方の抵抗体要素の抵抗の低下をもたらす、抵抗体要素の配置を指す。このように相反する抵抗体の動作は、均一方向の磁場を、以下において適用すると非常に簡単に実現できる。たとえば、上記の抵抗体種では、TMRもしくはGMR要素ではピン止め方向を反対とする、またはAMR要素では理髪店の看板棒配置とすると、反対向きの接続となる。均一方向の磁場の代わりに、抵抗体の特定の空間配置を通して、または、例えば軟磁性磁束要素を通して磁束の注意深い誘導を通して達成することができる相反磁場効果を使用することもできる。次に、各抵抗体はその同一の抵抗値変化で外部磁場に反応するが、材料スケールに対する抵抗体の適切な空間配置および/または回路配置を使用すると、反対向きの抵抗変化を生成することができる。
【0035】
有利なことに、磁気抵抗体要素を、方向に敏感なAMR、GMRまたはTMR抵抗体要素にすることができ、その抵抗は、オフセット方向に平行な磁場成分とともに線形に変化するか、またはその抵抗は磁場の角度に依存する。磁場センサ内の空間的にオフセットされた複数の抵抗体要素の適切な相互接続を通して、一般にハーフブリッジ回路が基本回路要素として適切であるが、それによって、磁気測定場の角度配向および/または磁場強度を決定することができる。したがって、磁場センサは、測定する磁場成分の方向ならびに磁場強度値を測定するように構成される。したがって、特に漏れ磁場の場合、磁場成分の方向および強度を測定することができる。これは、磁気符号要素が、永久磁石の場合、磁石自体によって、または(外部)測定磁石によって生成される磁気測定場の歪みを通して生成される不均一な漏れ磁場を引き起こすからである。好ましくは、磁場センサ配置に含まれる磁場センサは、トラックの延長方向における漏れ磁場の振幅Aを測定するように構成される。これを、以下、Htanまたは接線成分と呼ぶ。絶対又は増分トラックに沿う符号要素間の規則的な間隔(絶対トラックに沿って、絶対位置を示す符号の文字を符号化する符号要素間の間隔の大きさは、等間隔の参照位置と比較して変化するが)に起因して、接線成分の振幅は、符号要素が磁場センサに対して移動するときに、本質的に正弦波状に変化する。符号の文字は、仮想参照位置に対する符号要素の符号化オフセットに対応し、仮想参照位置は、増分トラックが存在する場合、絶対トラックの符号要素の相対位置に対する増分トラックの符号要素の相対場所を比較することで非常に簡単に確認できる。一方、絶対トラック上の符号要素の参照位置は、増分トラック上の符号要素の場所に対応し、または、たとえば補間を介して、そこから確認できる。
【0036】
接線成分の振幅曲線の位相角の評価により、トラックの進路に沿った符号要素の相対位置の決定が可能になる。これにより、振幅曲線の最大値と最小値を、原則として、各符号要素の端領域において測定でき、かつ接線成分のゼロ遷移は、符号要素の中心で、または正確に2つの符号要素間で毎回発生する。その範囲で、相互の2つの参照位置の間隔は、接線成分の360°位相回転に対応する。
【0037】
参照トラックの接線成分の曲線は、ほぼ正弦関数で表すことができる。
【数1】
【0038】
センサで測定される振幅は、接線成分に比例する。
【数2】
【0039】
ここで、
【数3】
で、λは符号要素の周期長、sは検出場所、s0は任意の参照場所、たとえば2つの符号要素間の中心である。φは周期的正弦関数の位相角、φは任意の参照角である。
【0040】
絶対トラックの接線成分の曲線も、ほぼ正弦関数で表すことができる。
【数4】
【0041】
センサで測定される振幅は、接線成分に比例する。
【数5】
【0042】
φVersatzの値は絶対トラック全体で一定ではないが、位置に応じて、特に符号化オフセットに応じて変化する。φVersatzは、符号要素が参照位置に対して絶対トラックの方向にφVersatz≦φだけオフセットされるか、反対方向にφVersatz≧φだけオフセットされるかに応じて、正または負の値を採用できる。ここで、φおよびφは、採用できる最大値である。符号化オフセットが異なる2つの符号要素が相互に隣接する場合は常に、この領域を局所的に超えると、φVersatz値が変化し、とりわけ、φVersatz=0となる場合も存在する。
【0043】
参照位置(φ-φ)に対するオフセットした符号要素の位相位置(φ-φ-φVersatz)の決定により、オフセットの大きさおよび方向に関して結論を引き出すことが可能になり、符号要素によって符号化した文字の確認に役立てることができる。したがって、異なる符号要素の位相値の差を文字の復号化に使用できる。したがって、有利なことに、磁場センサは、参照位置に対する接線成分の位相進行を評価し、ここでは、参照位置に対する符号要素のオフセットを角度値として出力することができる磁場センサを、この目的のために各符号要素に割り当てている。この目的のために、磁場センサの少なくとも2個のセンサ要素をそれぞれ、90°だけ、すなわちλ/4、すなわち等間隔で配置された参照位置の隣接する間隔の4分の1だけオフセットして設けることを提案する。
【数6】
【数7】
【0044】
位相位置は、逆正接関数を使用して直接確認できる。
【数8】
【数9】
【0045】
さらに、位相確認の精度、およびそれによる文字復号化の精度は、90°だけオフセットされた2つのセンサ要素の代わりに、それぞれが90°だけオフセットされた4つのセンサ要素を使用する場合、著しく増加することが見出された。相互に180°だけオフセットされた要素を、一対にグループ化する。一対にグループ化されたこれらの2つのセンサ要素は、位相差が正確に180°の場合、同一値で算術符号が反対の2つの振幅Aを取り込む。2つの値を引くと
【数10】
となり、2倍の振幅が得られ、さらに、システムは、外部干渉場に対して、干渉場の均一成分が減算によって除去されるため、より堅牢になる。
【数11】
【0046】
2つのセンサ要素は、このように正弦波成分、および余弦波成分をそれぞれ交互に変化する算術符号で測定し、正しい位相で加算し、逆正接関数を用いて高い精度で位相値の把握のために使用する。180°分割のさらなる利点は、磁場センサが左への1オフセットおよび右への1オフセットの中間に正確に配置されている場合にある。この位置では、磁場センサから見た測定可能なオフセットは0であり、磁場センサはランダムな値を返す。これを回避するために、磁場センサを、必要に応じて、以下の場所、すなわちそれに半周期オフセットした場所で測定できるように構成することが有利である。磁場センサの値はそこでは明確だからである。これは、いわば、正確な文字復号化のために、符号要素に対する磁場センサの相対的な電子的な移動に対応する。
【0047】
前述の考察に即して、さらなる有利な実施形態による磁場センサ配置では、少なくとも1つの磁場センサを含み、各磁場センサにより、第1の測定位置についての第1の測定信号、および第1の測定位置から絶対トラックの延長方向に離れた第2の測定位置についての第2の測定信号を少なくとも生成するように構成する。2つの測定位置間の距離は、隣接する仮想参照位置の距離よりも小さく、特に、当該距離の半分に等しい、好ましくは、(正弦波および余弦波成分の測定に対して)当該距離の4分の1に等しい。評価部を、第1または第2の測定信号に基づき、事前定義された基準を考慮して符号化オフセットを確認するように構成する。材料スケールの各符号要素について、このように、少なくとも二つの測定位置において、好ましくは4つの測定位置において、サンプリングするので、負オフセットの符号要素から正オフセットの符号要素への遷移が磁場センサの領域にちょうど達するときでも、信頼できる、明確なサンプリングを達成できる。それぞれの磁場センサが1つの測定位置でしかサンプリングできない絶対値符号器では、状況によって、φVersatzが0の近傍のとき明確なサンプリングを実行できないという困難が生じる場合がある。これにより、一種の振動、または明確でない測定値出力が発生する可能性がある。2つ以上の測定位置でのサンプリングにより、センサ要素は常に符号要素に対して可能な限り明確なサンプリングを行う位置にあることが保証される。2つの測定信号のどちらを評価すべきかについての決定は、例えば、測定信号を相互に、または基準信号と比較することに基づいて行うことができる。特に、妥当性チェックは、異なる磁場センサの測定信号を相互に比較することによって行うことができる。異なる測定位置でのサンプリングは、第1、第2、または両方の磁場センサ配置を追加して提供できる。特に、複数の測定位置でのサンプリングを使用して、符号化オフセットを確認できる。特に、2つの参照位置間の4分の1の間隔をそれぞれ有する4つのセンサ要素が各磁場センサに含まれ、前記要素により、符号要素によって生成される磁場の接線成分の位相位置について参照位置を基準にして決定するように評価する。好ましくは、磁場センサを参照位置に位置合わせし続けなければならず、かつ、ずっと絶対トラックの符号要素の参照位置に対する符号化オフセットについてその位相角から決定することが可能でなければならない。当該位相角は、磁場センサの測定信号により決定可能である。
【0048】
この状況において、各磁場センサが磁場センサ要素として二対のハーフホイートストンブリッジを含み、それによって第1の対を第1の測定位置に割り当て、第2の対を第2の測定位置に割り当てる場合に有利であることも見出された。第1の測定位置を、第1の対の第1のハーフブリッジおよび第2の対の第1のハーフブリッジによって定義し、これらは正弦および余弦値を供給し、この目的のために、二対の2つのハーフブリッジを90°、つまりλ/4だけオフセット方向にオフセットして配置する。第2の測定位置を、第1の対の第2のハーフブリッジおよび第2の対の第2のハーフブリッジによって定義し、これらは第1の測定位置から180°だけオフセットして配置することができ、それぞれは、さらなる正弦および余弦値を提供する(2つのハーフブリッジは90°離れている)。ここでは、磁場センサに割り当てたそれぞれのハーフホイートストンブリッジを、材料スケールまたは前述のトラックの延長方向に一列に配置することは本質的ではない。それらはまた、相互に対して横方向のオフセットで配置することもできる。有利なことは、材料スケールの延長方向から見た第1の対の1つのハーフストーンブリッジおよび第2の対の1つのハーフストーンブリッジを、交互に配置できることである。したがって、二対のハーフホイートストンブリッジは、いわば、インターレース方式で配置されて、特に、一対のハーフホイートストンブリッジ内での差分測定も可能となる。したがって、このようなハーフホイートストンブリッジの一対は、フルホイートストンブリッジを構成し、各ブリッジは正弦値または余弦値を供給する。第1および第2の対の2つのハーフブリッジ間の間隔は、好ましくは、隣接する参照位置間の間隔の4分の1に対応し、さらに有利には、各磁場センサは、二対のハーフブリッジを含み、ハーフブリッジの各対間の間隔は、隣接する参照位置の間隔の半分に対応する。ハーフブリッジの各対は、正弦波または余弦波の値の確認に役立ち、これらの測定信号を、符号要素の位相オフセットについて決定するための三角関数の計算に使用する。有利には、図示されていない評価部をこの目的のために設けて、2つのハーフブリッジの測定信号の逆正接評価を実行させるように構成する。
【0049】
基本的に、2つのフルブリッジは、二文字の符号(二進符号)の評価には十分であるが、二文字を超えるより多値の符号評価にも十分である。しかしながら、有利には、4つを超えるハーフホイートストンブリッジを各磁場センサに設けることが、例えば、二文字を超える符号を読み取るために可能である。符号要素の位相オフセットの分解能精度は十分に高い場合、たとえば、3、4、またはそれ以上の文字を、参照位置からの符号要素の異なる符号化オフセット値として表すことができ、符号要素の総数、ひいては絶対値符号器の物理的サイズを縮小することができる。
【0050】
さらに有利な実施形態によれば、分離領域を、各2つの隣接する符号要素の間に設ける。これにより、磁気符号要素および非磁気分離要素をトラックの方向に交互に配置できる構造が得られる。これは、特に、軟磁性の歯構造または穴あきプレートを使用する場合に存在するが、硬磁性の符号要素とともに使用することもできる。それぞれのトラックの延長方向に見た分離領域の長さは、トラックの延長方向の符号要素の長さまであり得るが、それより短くなるように選択することもできる。分離領域のサイズを、提供する最大符号化オフセットに一致させる必要があることは明らかである。分離領域について、隣接する符号要素の磁場の歪みを抑制するために、信号品質および堅牢性を改善するのに十分な大きさになるように選択できる。好ましくは、分離領域のサイズとして、上記波長λに対して10°以上、特に36°以上の分離領域サイズを選択することができる。
【0051】
上記の実施形態は、単一の磁場成分の検出のために設計した、好ましくはトラックの延長方向に一致した磁場成分のために設計した、弱磁場センサとして知られているものの使用に適している。それらの出力信号は、磁場の振幅に比例する。しかしながら、有利なことに、強磁場センサとして知られているものを使用することも可能である。これらは、磁場センサの位置に対する磁場の角度の検出によって特徴付けられる。この場合、2P+1の強磁場角度センサを、各磁場センサ配置において有利に使用するであろう。磁場センサの寸法が符号要素の寸法と比較して小さい場合、強磁場配置が可能であり、これによって直接漏れ磁場成分の角度が決定されるためである。この強磁場センサ配置は、磁気測定場のない硬磁性の符号要素に適している。強磁場センサを使用する場合、通常、縦方向のセンサ配置が好ましい。絶対トラックはこの場合一直線に並んでいる。したがって、トラックの延長する直線方向の符号要素によって生成される漏れ磁場の位相位置を決定することができ、絶対トラックの符号要素の位相角αおよび参照トラックの隣接する符号要素の位相角βを磁場センサの強磁界センサによって非常に容易に決定することができる。角度差β-αは、2つの符号要素間の符号化オフセットのための尺度を提供する。
【0052】
特に、符号要素を永久磁石として形成する場合、すなわち、交互に北極および南極を含む能動的なスケールを構成する場合、強磁場センサまたは角度センサを有利に使用することができる。磁場センサ要素の観点からは、漏れ磁場は、符号要素が磁場センサ配置に対して変位するにつれて回転する。
【0053】
符号要素は、センチメートルまたはミリメートルのオーダーの幾何学的寸法を持ち、それぞれの測定課題に一致させることができる。しかし、符号要素を幅が50μm以下の範囲まで小型化でき、1符号語の文字数Pを8文字以上にすることができる。符号要素に対するハーフブリッジの相対位置に応じて、磁場センサのすべてのハーフブリッジ、または磁場センサのハーフブリッジのサブグループのみを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
さらなる利点は、図面および関連する図面の説明によって明らかになる。図面は、本発明の例示的な実施形態を示している。図面、説明、およびクレームには、多くの機能が組み合わされて含まれている。当業者はまた、これらの特徴を個別に検討し、さらにそれらを意味のある組み合わせにするのが適切であろう。
図1】絶対値符号器の実施形態の斜視図ならびに平面図および側面図の一例を示す。
図2a】第1の実施形態に係る絶対値符号器の材料スケールの概略図の一例を示す。
図2b】第1の実施形態に係る絶対値符号器の材料スケールの概略図の一例を示す。
図3】第2の実施形態に係る絶対値符号器の材料スケールの概略図の一例を示す。
図4】第3の実施形態に係る絶対値符号器の材料スケールの概略図の一例を示す。
図5】第3の実施形態に係る絶対値符号器の磁場構成の概略図の一例を示す。
図6】第1の実施形態に係る絶対値符号器の磁場構成の概略図の一例を示す。
図7】第4の実施形態に係る絶対値符号器の磁場構成の概略図の一例を示す。
図8a】材料スケールに対する磁気センサ配置のオフセット相対位置を有する、さらなる実施形態に係る絶対値符号器の磁場センサ配置の概略部分図の一例を示す。
図8b】材料スケールに対する磁気センサ配置のオフセット相対位置を有する、さらなる実施形態に係る絶対値符号器の磁場センサ配置の概略部分図の一例を示す。
図9図7の実施形態に係る絶対値符号器の磁場センサ配置の概略全体図の一例を示す。
【0055】
図では、同一または類似している要素を識別するため、同一参照番号を使用している。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明の実施形態の一例10.0の斜視図、平面図および側面図を示す。絶対値符号器10.0は、第1の材料スケール12aおよび第2の材料スケール22を支える可動の第1の物体30を備える。その磁場感知センサ表面が材料スケール12a、22の方向に整列する磁場センサ配置15は、第2の物体32上に提供される。
【0057】
この実施形態では、第1の物体30は、第2の物体32に対して線形に相対的に移動することができる。第1の材料スケール12aの符号要素14および第2の材料スケール22の符号要素24の二列を、第1の物体30の移動方向に整列して、互いに平行に配置する。符号要素14の第1の列によって、絶対トラック13を定義し、符号要素24の第2の列によって、増分トラック23を定義する。
【0058】
材料スケール12aおよび22を支える第1の物体30上からの斜視図では、第2の物体32の磁場センサ配置15は、符号要素14、24と向き合うように配置される。磁場センサ配置15は、複数の磁場センサ16を含み、磁場センサ16は互いに平行な2つの列15a、15bに配置され、平行な材料スケール12a、22の符号要素14、24に割り当てられる。したがって、磁場センサ15の2つの補助的な配置15a、15bは、結果として、それぞれが複数の磁場センサ16を有し、絶対トラック13に沿って第1の材料スケール12の符号要素14をサンプリングするのに役立つ磁場センサ16aを備えた第1の補助構成15a、および増分トラック23に沿って第2の材料スケール22の符号要素24をサンプリングするのに役立つ磁場センサ16bを備えた第2の補助構成15bを有する。絶対値符号器10の動作に必要な磁気測定場を、例えば、符号要素14、24の硬磁気特性によって生成するか、または外部磁石(図示せず)もしくは、例えば、第2の物体32に配置された磁石配置によって生成し得る。磁場を生成する磁石は、永久的に磁性を帯びている場合もあれば、電磁石として形成される場合もある。
【0059】
第2の材料スケール22の符号要素24は、絶対トラック23に沿ったそれらの縦位置において相互に等距離に配置され、絶対トラックの第1の材料スケール12aの符号要素14の相対位置が決定可能な参照位置の目印となる。図示する実施形態の例では、符号要素14の符号化オフセットを、絶対トラック13の方向に整列して提供し、かつ符号要素24によって定義される参照位置に対して正または負を定義する。符号化オフセットを、同様に、参照位置に対して一方向のみにも適切に整列することができ、または、例えば、二桁の二進符号よりも多値の情報符号化のため符号化オフセットを、複数のステップ幅とすることができる。
【0060】
以下の図では、物体30、32の図を省略する。
【0061】
第1の材料スケール12による位置情報の表現のための2つの異なる変形を、図2aおよび2bの側面図に示す。
【0062】
図2aは、絶対値符号器の第1の実施形態の一例10.1を示す。絶対値符号器10.1は、絶対トラック13を定義し、かつ磁場センサ配置15によって測定する磁場に影響をもたらす、材料スケール12aを備える。材料スケール12aは、この目的のために、個々の符号要素14.1、14.2、14.3および14.4を含むことができ、前記要素は、強磁性かつ図示しない電磁石もしくは永久磁石の磁場を誘導および偏向させることができるか、または符号要素14.1~14.4は、例えば、それ自体が永久磁石の磁化を有する。磁場は、好ましくは静的であるが、しかしながら、少なくとも1つの時間依存成分を有することもできる。磁場センサ配置15は、一群の磁場センサ16.1~16.4を含み、各磁場センサ16.1~16.4は、符号要素14.1~14.4に空間的に隣接する。磁場センサ16を、符号要素14によって絶対方向に偏向された磁場の接線成分を決定できるように設定する。好ましくは、絶対トラックの方向の接線成分の位相位置を出力する磁場センサ16の評価(図示せず)を実行することができる。符号要素14がすべて相互に等距離に配置されていると仮定すると、符号要素14に対する磁場センサ16の相対位置は同一なので、各磁場センサ16は、磁場の接線成分について同一の位相位置を測定するであろう。もし、符号要素14.1~14.4相互の間隔が変化すると、位相位置の差が発生し、それから位置情報を抽出することができる。ここで、図2aは、各符号要素14が「0」または「1」のいずれかを表す、二進符号による位置情報を示す。図示の実施形態では、この目的のために、各符号要素14.1~14.4に属する参照位置18.1~18.4を破線で描いている。すべての符号要素14を、参照位置18の場所に配置した場合、同一の位相情報をすべての磁場センサ16は測定する。最初の2つの符号要素14.1および14.2ならびに第4の符号要素14.4について、絶対トラック13に関して定義した(固定の)符号化オフセットだけ後方にオフセットし、これにより、二進のゼロ「0」を符号化する。符号要素14.3について、絶対トラック13の方向にさらに定義した(固定の)符号化オフセットだけ前方にオフセットし、これにより、二進の「1」を符号化する。参照位置18に対して生じる位相のずれから、符号語を二進符号「0010」として読み取ることができ、その符号は絶対位置を符号化し得る。参照位置18の知識は評価に役立つが、絶対情報は、位相位置を相互に相対的に比較することによって信頼性高く抽出することができる。この目的のために、二進符号を混合した個々の情報項目から構成し、その結果、二進語ごとに少なくとも1つの符号要素14に関連する位相変化を検出できるため、少なくとも1つの1および少なくとも1つの0を含む符号語のみを許可するようにすると有用である。
【0063】
二進符号の代わりに、たとえば、異なるサイズ間隔などの追加の値を提供し、その結果、比較的短い符号語により位置を正確に決定することもできる。図2bは、これを示す、原則として図2aの図に対応する絶対値符号器のさらなる実施形態の一例10.1である。図2aとは異なり、符号要素14は、参照位置18に対して異なる符号化オフセットを有することができる。4つの符号化オフセットである、-2Δ、-Δ、Δ、2Δにより、四元系の情報「0」、「1」、「2」および「3」が符号化されることを例として示す。4つの符号要素14.1~14.4の位置情報0132が表されている。各符号要素は4つの異なる情報項目を表すことができるため、4=256項目の位置情報を四元系の4つの符号要素で表すことができるが、図2aの二進システムでは、16項目の位置情報しか表すことができない。したがって、複数の符号化オフセットの解像度を通じて、同時に取り込む符号要素の位置の量を著しく減らすことができるか、または、より高い解像度の精度を実現できる。
【0064】
図2a、2bでは、それぞれの符号語は4ビットの長さを有するので、最大16の異なる符号語が表され、最大16の絶対位置について、図示した4つの符号要素14.1~14.4を有する材料スケール12a、12bを用いて明確に符号化し得る。
【0065】
図3は、絶対値符号器10.2の平面図を示しており、その重要な特徴は、図2aの絶対値符号器10.1に対応する。第1の実施形態の一例(図2a)に係る第1の材料スケール12aの代わりに、絶対トラック13を定義する第2の実施形態の一例に係る材料スケール12bを、ここでは設けている。材料スケール12bでは、第1の符号要素14.1~14.4の符号化オフセットを、絶対トラック13の延長方向ではなく、それに垂直に設ける。したがって、第2の実施形態の一例では、符号化要素14.1、14.2および14.4は、図の位置に対して上方にシフトさせ、文字0を符号化する一方、符号要素14.3は、図の位置に対して下方にシフトさせ、文字1を符号化する。センサの配置は、材料スケールの上または下に配置され、上方向または下方向のオフセットを検出できるように設計されている。磁場センサ構成は、有利には、図面の平面内にあり、絶対トラック13に垂直に整列する漏れ磁場成分を測定する。
【0066】
次に、第3の実施形態の絶対値符号器10.3の動作モードの一例について、図4を参照して、より詳細に説明する。絶対値符号器10.3は、絶対トラックを定義する第1の実施形態の一例に係る第1の材料スケール12a、および増分トラック23を定義する第2の材料スケール22を備える。2つのトラック13、23について、それぞれを側面図で示すが、実際には、一平面内で互いに平行にかつ隣り合って配置する。図4では、明確性のため、それらを互いの上に配置している。各材料スケール12a、22を、それぞれの磁場センサ配置15a、15bによってサンプリングする。その構造については、後の図8および9で詳細に説明するが、材料スケール12aの符号要素14および材料スケール22の符号要素24によって引き起こされる絶対トラック13または増分トラック23に沿った磁場の接線成分の位相位置変化を検出するように設計されている。明確性のため、図2~4には正確な磁場センサ配置を示していない。簡単に言えば、関連する符号要素14、24から磁場位相情報について読み取ることができるそれぞれの磁場センサ16を、各符号要素14.1~14.4、24.1~24.4の表面に配置していると仮定してよい。
【0067】
第1の材料スケール12aは、第1の磁気符号要素を複数含み、そのうちの符号要素14.1~14.4のみを、第2の材料スケール22は、第2の磁気符号要素を複数含み、そのうちの符号要素24.1~24.4のみを図4に示す。第1の材料スケール12aは、絶対トラック13を形成する一方、第2の材料スケール22は、増分トラック23を表す。
【0068】
符号要素24.1から24.4を、増分トラック23上に、等距離に配置し、横方向のオフセット無く配置する。第2の符号要素24.1から24.4により、図3および4において破線で示す参照位置18.1~18.4からの絶対トラック13上の縦位置を定義する。したがって、参照位置18.1~18.4は、第2の符号要素24.1~24.4と同一の縦位置を有する。
【0069】
しかしながら、第1の符号要素14.1~14.4はそれぞれ、関連する参照位置18.1~18.4に正確に配置されておらず、それぞれの参照位置18.1~18.4に対してそれぞれの符号化オフセットを有する。符号要素14.3は、絶対トラック13の矢印方向によって定義される方向にオフセットしているが、符号要素14.1、14.2、および14.4は、その反対方向にオフセットしている。符号の対応する文字は、それぞれの符号化オフセットに割り当てることができる。図4による実施形態の一例では、符号は二進符号であり、文字1を符号要素14.3に割り当て、文字0を符号要素14.1、14.2および14.4に割り当てる。図示の場合、符号語を、絶対位置に割り当てる二進符号0010として符号化している。考慮する符号要素の数を増やすことにより、アプリケーションの仕様に応じて、絶対位置を明確にする材料スケールの長さを増やすことができる。
【0070】
図4の実施形態の一例を考慮すると、4つの第1の符号要素14.1~14.4、または4つの第2の符号要素24.1~24.4のそれぞれについて、それぞれの磁場センサ配置を介して同時にサンプリングする。4文字からなるそれぞれの符号語は、参照位置18.1~18.4、または第2の符号要素24.1~24.4に対する、第1の符号要素14.1~14.4の符号化オフセットから復号することができる。この符号語は、磁場センサ配置に対する材料スケールの変位位置が変化すると変化する。これは、新しい位置の結果として、異なる第1および第2の符号要素をセンサ部によって取り込み、復号化するためである。材料スケール12aによって表す適切な文字列を選択することにより、材料スケール12aまたは22の増分ごとに異なる符号語が符号化され、その結果、そこから絶対位置を確認することができる。
【0071】
図5は、さらなる実施形態の一例の絶対値符号器10.4を示す。再び、側面図を選択している。これは、絶対トラック13を定義する第1の材料スケール12aおよび、これと平行する、増分トラック23を定義する第2の材料スケール22を含む。説明を簡略化するために、絶対トラック13および増分トラック23を互いの上に示す。磁束が、両方のトラック13、23の符号要素14、24を次々に貫通するように描いている。しかし、原則として、これらを、共通の一平面内に互いに平行に配置し、その平面に垂直な磁束が平行に貫通し、一方、その平面の上部にある磁場センサ配置15によって、両方のトラック13、23を覆い、サンプリングする。2つの材料スケールを、磁力線が示す磁気測定場を発生する測定磁極26の第1および第2の磁場センサ配置15a、15bの領域内に含み、その磁力線を材料スケール12a、12bの符号要素14、24が偏向する。測定磁極26を、永久磁石極、もしくは電磁石構成の極とすることができ、有利には、静磁場を提供できるものの、経時変化する磁場も考えられるであろう。符号要素14、24は、強磁性特性を有し、かつ、それらの軟磁気特性のために、磁場測定場によって一時的に磁化される。これらによって、また、例えば、強磁性材料のくぼみも表現し得る。唯一必要なことは、測定磁極26間の磁束に影響を与えるように構成することのみである。一方、符号要素24.1、24.2、24.3等を、増分トラック23に沿って等距離に配置し、符号要素14.1、14.2、14.3等を、絶対トラック13に沿って符号要素24に対して予め定義されたステップ幅だけそれぞれ前方または後方にオフセットする。当該オフセットにより、この実施形態の例では、1または0の二進情報単位を符号化し、絶対トラック13に沿った正のオフセットは1に対応し、負のオフセットは0に対応する。第2の磁場センサ配置15bの磁場センサ16S1、S2、S3等を、増分トラック23に沿って、第2の材料スケール22の各符号要素24に割り当て、絶対トラック13に沿って、同一位置に、第1の磁場センサ配置15aの磁場センサ16AS1、AS2、AS3等を各符号要素14に割り当てる。第1および第2の磁場センサ構成15a、15bによる磁場測定の動作モードを説明するため、測定磁極26間に形成される磁場の接線成分Htanの振幅曲線28a、28bを、材料スケール22および材料スケール12aのそれぞれの場合について示す。増分トラック23に沿って、振幅曲線28bは、波長λの周期を有し、それはまた、360°または2πの位相として表現することもできる。対応する目盛りも表示する。増分トラックに等距離に配置した符号要素24に沿った磁場の接線成分の振幅曲線28bは正弦波であり、したがって、各磁場センサS1、S2、S3等は、材料スケール22が移動する場合、実際上同一の正弦波曲線を測定するが、絶対トラック12aに沿った接線成分の振幅曲線28aは、符号要素14の非平衡配置の結果として、二進情報1から0への遷移において歪められ、その結果、磁場センサAS1、AS2、AS3により測定する振幅曲線28aから確認される位相位置は、磁場センサ配置15bのS1、S2、S3により測定する振幅曲線28bの位相位置とは異なる。磁場センサグループ15a、15b間の位相角の差を、符号要素14の絶対位置を示す二進符号語の評価に使用する。
【0072】
符号化オフセットの確認について、さらに、図6および図7の実施形態に基づいて説明する。ここでは、簡略化のため、符号要素14の参照位置の符号化オフセットの図を省略する。
【0073】
図6は、図2の実施形態の一例10.1に基づいて、絶対トラック13を定義し、符号要素14相互に対する相対的な間隔がPRBS符号語を表す材料スケール12aを有する実施形態の一例10.5を表す。当該PRBS符号語は、絶対位置を示す。符号要素14を、2つの測定磁極26間に配置し、ここでは、例示の目的で、符号要素14によって影響を受ける磁場を表すために、磁力線の経路をスケッチする。符号要素がない場合、磁力線は垂直であり、接線成分Htan=0であろう。符号要素の存在により、磁力線は歪み、それによって(図示する)振幅曲線28を持つ測定可能な接線成分が発生する。符号要素に沿って、磁場センサ配置15によって測定する、平均波長λを有する接線方向の磁気成分の振幅曲線および関連する位相角を示す。磁場センサ配置15は、この目的の磁界センサ16.1、16.2、16.3、およびより多くの図示しない、磁場センサを含み、その数はPRBS符号のビット深度に対応し、周期λと等しい距離に配置する。磁場センサ16を、周期λで等距離に配置し、これにより、それぞれを1つの符号要素14に割り当てることができる。これらについて、接線成分Htanの振幅を測定するように設計する。一波長λの間隔による隣接符号要素14の等間隔配置により、実際上、隣接符号要素14の接線成分Htanの振幅曲線における位相差は生じないので、2つの隣接符号要素14において、同一の二進情報14を推定することができる。隣接する符号要素14において位相ステップを測定し、符号要素14の異なる二進情報が存在する場合、隣接する符号要素14の位相を比較することにより、絶対位置を示す符号語を確認することができる。
【0074】
磁場センサ16を介して符号要素14の位相情報を決定し、かつ位相確認における測定精度を改善するために、各磁場センサ16は、複数の、有利には4つのハーフブリッジ17を含み、その構造について、図8および9に、さらに詳しく示す。ハーフブリッジ17の二対は、それぞれがλ/2の間隔で配置され、接線成分の正弦波成分S11、S12を測定し、2つのハーフブリッジ17は、これらのハーフブリッジS11、S12と向き合うようにλ/4の間隔で配置され、再び、相互にλ/2の間隔を有するため、接線成分の余弦成分C11、C12を測定することができる。信号の精度を向上させるために、2つの正弦波ハーフブリッジS11、S12および2つの余弦波ハーフブリッジC11、C12を正確な位相で合成する。このようにして、位相角φおよび磁場センサ16の領域内の符号要素14の相対位置は、以下によって得られる。
【数12】
【0075】
磁場センサ16の測定領域内の各符号要素14の相対位置を比較することにより、二進情報を読み取ることができ、磁場センサ配置15内の十分な数の磁場センサを用いて、絶対位置を決定できる。これについて、詳細には説明しないが、必要な逆正接動作を実行し、符号化オフセットを決定し、そこから文字を復号化する評価部によって決定できる。符号のすべての文字を同時に評価することにより、PRBS符号語の絶対値スケールへの割り当てを行うことができ、それによって絶対位置を決定する。
【0076】
図6の実施形態の一例10.5に基づいて、図7にさらなる実施形態10.6を示す。図6に示す絶対値符号器10.5の修正として、符号要素14を、それぞれの場合で2つの隣接し交互に磁気分極を有する測定磁極26によって形成する。このように、交互に分極する一連の測定磁極26.1~26.5により、絶対トラック13を定義し、それぞれの場合で2つの隣接する測定磁極26は、1つの符号要素14を定義する。結果として、測定磁極26.1および26.2を、1つの合成符号要素14に割り当てる。対応する考慮事項を、符号要素14.2以降に適用する。符号化は、測定磁極26の異なる長さを介して行うことができる。磁場センサ配置15は、等距離に配置された、磁場センサ16.1、16.2の一列およびそれ以上を含み、磁場センサの数により、ビット深度、すなわち、位置情報のデジタル解像度を定義する。各磁場センサ16.1は、4つのハーフブリッジS11、S12、C11、C12を含み、これらにより、上記の方法で、磁場センサ16の取得範囲内の符号要素14の相対位置を決定することができ、したがって、符号要素のデジタル情報14を確認できる。
【0077】
図8a、8bおよび9は、さらなる実施形態の係る絶対値符号器の一例10.7を示し、例えば、図6および図7の実施形態10.5および10.6において使用することができる。図8aおよび8bは、ここでは、一部を示し、図9は絶対値符号器10の全体図を示す。磁場センサ配置15に対する符号要素14のλ/2の相対変位が、図8aおよび8b間で生じている。絶対値符号器10.7は、第1の磁気符号要素を複数備えた第1の材料スケール12を含み、実施形態の一例では、相互に隣接する9つの第1の符号要素14.1~14.9のみを考慮し、明確性のため、第1の符号要素14.1、14.2、14.8、および14.9のみを図8a、8bに示し、第1の符号要素14.3~14.7を省略している。一方、図9は、絶対値符号器10.7の全範囲を示す。
【0078】
絶対値符号器10.7は、第1の符号要素をサンプリングするように設計した第1の磁場センサ配置15をさらに備える。第1の磁界センサ配置15は、17.1~17.34の計34個のハーフブリッジ含み、2つのそれぞれが反対向きに接続された磁気抵抗体要素20を含む。図8a、8bでは、ハーフブリッジ17.1~17.7および17.29~17.34のみを示し、ハーフブリッジ17.8~17.28は、明確性のため、省略する。反対向きの接続を、抵抗要素20の領域における小さな矢印によって示す。抵抗要素の抵抗値は、接線方向の磁場Htanが矢印の向きを指すとき、接線方向の磁場に比例して下がることを示す。ハーフブリッジ17.1~17.32は、計8つの磁場センサ16.1~16.8のうちの1つに割り当てるので、磁場センサ16.1~16.8は、それぞれが4つのハーフブリッジを含む。さらに2つのハーフブリッジ、すなわち、ハーフブリッジ17.33および17.34は、最後の磁界センサ16.8に属し、その測定値を明確にするのに役立つ。
【0079】
測定ブリッジ17.1~17.34は、共通の電源電圧VCCおよび共通のグランドGNDに接続される。さらに、それぞれの測定信号または測定電圧は、1から34まで番号が付けられたハーフブリッジ17.1~17.34の測定ポイントでアクセスできる。それぞれのラインを、図示しない評価部に接続し得る。
【0080】
磁場センサ16.1~16.8において、奇数の参照番号付きハーフブリッジは、第1のハーフブリッジ対を形成し、偶数の参照番号付きハーフブリッジは、第二のハーフブリッジ対を形成する。符号要素14によって生成された磁気漏れ場の接線成分の正弦曲線も示す。
【0081】
この目的のために、磁場センサ16.1のハーフブリッジ17に対する図8aに示す符号要素14の位置において、ハーフブリッジ17.1および17.3は、例えば、磁場センサ16.1の正弦波成分を測定するための第1のハーフブリッジ対を形成し、ハーフブリッジ17.2および17.4は、その余弦波成分を測定するための第2のハーフブリッジ対を形成する。磁場センサ16.2は、ハーフブリッジ17.5~17.8を含み、磁場センサ16.8は、ハーフブリッジ17.29~17.32を含む。各磁場センサ16の二対の隣接する2つのハーフブリッジ間の距離、例えば、ハーフブリッジ17.1~17.2までは、2つの隣接する(オフセットの無い)符号要素14.1~14.8(すなわち、参照位置)間の距離の正確に4分の1、したがってλ/4の距離であり、各磁場センサ16の測定ブリッジのハーフブリッジ対のそれぞれのハーフブリッジ、たとえば17.1および17.3、または17.2および17.4の距離は、参照位置の距離の半分、つまりλ/2の距離である。
【0082】
図8aに容易に見られるように、ある瞬間では、符号要素14.1の端は、ハーフブリッジ17.1および17.3の領域内に位置し、ハーフブリッジ17.2および17.4は、符号要素14.1内の中心にあるか、または2つの符号要素14.1および14.2の中間にある。ハーフブリッジ17.2は、符号要素14.1の中央位置に配置され、一方、ハーフブリッジ17.4は、符号要素14.1および14.2の間の分離領域内に配置される。図8bでは、符号要素14は、λ/2の距離、つまり符号要素14の幅だけ、磁場センサ配置15に対して左側にずれている。今度は展開する符号要素14が生成する漏れ磁場の位相位置を決定するため、図8aと同一の漏れ磁場に対するハーフブリッジ割り当てを達成できるように、ハーフブリッジ17.3~17.6の磁場センサ16.1への割り当てが、今度は可能である。そして同様に、磁場センサ16.2にハーフブリッジ17.7~17.10を、そして最後に磁場センサ16.8にハーフブリッジ17.31~17.34を割り当てることができる。
【0083】
このことにより、磁場センサ配置15に対する材料スケール12、22の移動に伴って、例えば、位相角の決定のために隣接して配置する各4つのハーフブリッジ17を含む磁場センサ16へのハーフブリッジ17の割り当てについて、センサの精度を最適化するために変更できることが明らかである。その程度まで、磁場センサ配置15は、ハーフブリッジ17の磁場センサ16への割り当ての電子的な「切替スイッチ」を介して、材料スケール12、22に対して、少なくともλ/4またはλ/2の距離にわたって「仮想的に移動」し、センサ精度の改良を達成できる。
【0084】
磁場センサ配置15の構成原理のみについて、図8a、8bおよび9を参照して説明することを意図しているので、符号要素14.1~14.9を、それぞれの符号化オフセット無しで示している。機能の態様について、第1の磁場センサ16.1を例として、より詳細に説明する。ハーフブリッジ17.1および17.3を備えた第1のハーフブリッジ対はフルブリッジを形成し、その測定電圧を測定ポイント1および3からアクセスできる。ハーフブリッジ17.2および17.4を備えた第2の測定ブリッジ対もまた、フルブリッジを形成し、その測定電圧を測定ポイント2および4からアクセスできる。フルブリッジは、ある種の差動測定を実行できるように設計されている。すでに上で示したように、位相位置について、各符号要素の逆正接計算によって決定できる。
【0085】
磁場センサ16.1~16.8は、符号要素14.1~14.8の上にある場合、明確な復号化が正確に可能である。しかし、磁場センサ16.1~16.8が符号要素14.1~14.9の中間にある瞬間は、異なるオフセット間の遷移を明確に読み取ることができない。この場合、磁場センサ16.1~16.8を、その瞬間にλ/2だけオフセットしてハーフブリッジに割り当てる。たとえば、磁場センサ16.8を、17.29~17.32のハーフブリッジではなく、17.31~17.34のハーフブリッジに関連付ける。これは、図8aおよび8bの比較において明らかである。
【0086】
これは、2つの隣接する符号要素の符号化オフセットが異なる場合、たとえば、14.2でφ+および14.3でφ-の場合、ハーフブリッジ17.5、17.6、17.7、17.8を有するセンサ16.2は、14.2から14.3に移動するときに、測定オフセットが正確にφ+およびφ-の平均値を横切る領域を横切るからである。ここでは、それが0であるか1であるかを決定することはできない。これは、特に、センサ16.2は、正確に2つの符号要素の中間に位置し、センサが左側の符号要素に属しているのか右側の符号要素に属しているのかを知り得ないという事実による。適切な基準の助けを借りて、評価部は、この状況において、ハーフブリッジ17.6およびハーフブリッジ17.5に基づく信号値のみを評価するかどうか、かつ該当する場合には17.8を評価するかどうかについて指定できる。
【0087】
あるいは、ハーフブリッジ17.5~17.8の代わりに、ハーフブリッジ17.7、17.8、17.9、および17.10を磁場センサ16.2に使用することもできる。この場合、これらの4つのハーフブリッジを符号要素14.3に明確に割り当てることができる。同様に、ハーフブリッジ17.3~17.6を符号要素14.2に割り当てることができる。したがって、第1または第2の測定位置で生成された測定信号を信頼できる。さらに、符号要素14.2および14.3の符号化オフセットを、ハーフブリッジ17.3~17.10、もしくは測定点3~10で確認した測定電圧の評価または比較を通じて確認することもできる。この変更された割り当てについて、たとえば、図8bに示す。
【0088】
他の磁場センサ16.1および16.3~16.8は、対応する方法で動作するので、磁場センサ配置15によって、8つの符号要素のそれぞれの絶対位置を同時にサンプリングすることができる。符号要素が二進符号を符号化していると仮定すると、最大256の異なる符号語または絶対位置を確認できる。
【0089】
符号要素14.1~14.9、24.1~24.4の相対的なサイズは、ここでは、例としてのみ再現されている。したがって、個々の符号要素間の中間区域、つまり分離領域のサイズについて、符号要素との関係を相対的に考慮し、大きくすることも小さくすることもできる。符号要素を、長方形または正方形にすることができる。絶対トラックおよび増分トラック間の距離もまた、実施形態の一例に示されるよりも大きくても小さくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 絶対値符号器
12、12a、12b 第1の材料スケール
13 絶対トラック
14.1~14.9 第1の符号要素
15、15a、15b 磁場センサ配置
16.1~16.8 磁場センサ
17.1~17.34 ハーフブリッジ
18.1~18.4 参照位置
20 磁気抵抗体要素
22 第2の材料スケール
23 増分トラック
24.1~24.4 第2の符号要素
26 測定磁極
28 接線成分の振幅曲線
30 第1の物体
32 第2の物体

図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9