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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】クリンプおよびクリンプを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20220630BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020572515
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066658
(87)【国際公開番号】W WO2020002225
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】201841024239
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18201998.4
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514095099
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ インディア プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TE CONNECTIVITY INDIA PRIVATE LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ブルーメル,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】エス エヌ,シャシクマール
(72)【発明者】
【氏名】シェッター,ビナヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】エム,サラバンクマール
(72)【発明者】
【氏名】エイ ジー,ディーパック
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-055903(JP,A)
【文献】特開2014-060103(JP,A)
【文献】特開2011-040199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00 - 4/22
H01R 43/027-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを接続するためのクリンプ(2、6)であって、少なくとも1つの圧着バレルを備え、前記圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、前記ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁(4a、4b)とを備え、前記第1の側壁(4a)は、少なくとも1つのセルフロック羽根(11a、11b、111a、111b)を備え、前記第2の側壁(4b)は、少なくとも1つのセルフロックフックポケット(10a、10b、100a、100b)を備え、したがって前記第1の側壁の前記セルフロック羽根は、前記第2の側壁の前記セルフロックフックポケットにロックするように適合されており
前記第1の側壁は、少なくとも第2のセルフロックフックポケットを備え、前記第2の側壁は、少なくとも第2のセルフロック羽根を備え、前記第2の側壁は、前記第1の側壁にクロスロックするように適合されている、
クリンプ(2、6)。
【請求項2】
前記セルフロック羽根および前記セルフロックフックポケットは、前記クリンプの前記ベースまで延びている、請求項1に記載のクリンプ(2、6)。
【請求項3】
前記セルフロックフックポケットは、180度の角度に曲げられている、請求項1または2に記載のクリンプ(2、6)。
【請求項4】
前記セルフロックフックポケットは、120度の角度に曲げられている、請求項1または2に記載のクリンプ(2、6)。
【請求項5】
前記圧着バレルはFクリンプワイヤバレルである、請求項1からのいずれか一項に記載のクリンプ(2、6)。
【請求項6】
ワイヤを接続するためのクリンプを形成する方法であって、圧着バレルのベースを前記ワイヤの周りに曲げるステップを含み、前記圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、前記ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、前記第1の側壁は、少なくとも1つのセルフロック羽根を備え、前記第2の側壁は、少なくとも1つのセルフロックフックポケットを備え、したがって前記第1の側壁の前記セルフロック羽根は、前記第2の側壁の前記セルフロックフックポケットにロックするように適合されており
前記第1の側壁は、少なくとも第2のセルフロックフックポケットを備え、前記第2の側壁は、少なくとも第2のセルフロック羽根を備え、したがって前記第2の側壁は、圧着中に前記第1の側壁にクロスロックする、方法。
【請求項7】
前記セルフロックフックポケットは、180度または120度の角度に曲げられている、請求項に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項8】
前記圧着バレルはFクリンプワイヤバレルである、請求項6または7に記載のクリンプを形成する方法。
【請求項9】
請求項1に記載のクリンプを圧着するためのプロファイルを有する圧着ツール部材を備えた圧着デバイス(50)であって、前記プロファイルは、側面タブおよび上部形成面を有し、前記プロファイルは、圧着中に前記圧着バレルの前記壁の前方部分および後方部分と位置合わせされる、圧着デバイス(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高いロバスト性およびより薄い厚材(stock material)を有するクリンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器および電気工学において、可能な限り大きな範囲の電流、電圧、ならびに周波数および/またはデータ転送速度で電流、電圧、および/または電気信号を伝送するのに用いられる電気機械的な接続部(connection、接続、接続要素)が多数知られている。そのような接続部は、比較的長い期間後に適用可能な場合、一時的に、または恒久的に、熱負荷、汚れ、湿気、および/または化学的侵食性のある条件下で機械的接触、電力、電気信号、および/またはデータの正確な伝送を確実にしなければならない。したがって、特別に構築された電気機械コンタクト、特に圧着コンタクトが多数知られている。
【0003】
圧着接続部(crimp connection、圧着接続、圧着接続要素)は、無はんだ接続部である。圧着接続部は、ワイヤの端部への端子の一般的な挟持(pinching)より有利である。接続部において所望の性能および耐久性を得るには、クリンプの形状および印加される圧力の量が正確でなければならない。クリンプが不適切であると、不十分な電気的接続によって熱を生成することがあり、その結果、生成物の再加工につながり、屑が増大し、極端な場合、破局的な故障を招く可能性がある。
【0004】
ワイヤの端部を終端させるために、多くの場合、電気端子が使用される。そのような電気端子は典型的に、電気コンタクトおよび圧着バレルを含む。いくつかの端子では、圧着バレルは、ワイヤの端部を受け取る開放区域を含む。圧着バレルは、ワイヤの端部の周りに圧着されて、ワイヤ内の電気導体と端子との間の電気的な接続を確立し、かつ、電気端子をワイヤ端部で機械的に保持する。圧着バレルは、ワイヤ端部上に圧着されると、ワイヤの導体と電気コンタクトとの間の電気的および機械的な接続を確立する。
【0005】
恒久的な電気接続に加えて、ケーブルと圧着コンタクトの導体圧着領域との間には、コンタクトによって、恒久的な機械的接続も形成されなければならない。電気機械的な接続的のために、圧着コンタクトは、導体圧着領域を有し、ほとんどの場合、ケーブルに対する絶縁圧着領域を有する。小型化およびコスト節減のため、製造者は、より小型でより薄いコンタクトへ向かわざるを得なくなっている。
【0006】
当技術分野で知られている圧着接続部は、電気的な接触を確立すること、ならびに圧着ベースと少なくとも1つの電気導体との間に機械的な弾性接続を提供することに用いられており、少なくとも1つの電気導体は、1つまたは複数の個々のワイヤを含むことができる。圧着バレルは通常、金属板から形成され、金属板は、U字形もしくはV字形の断面を有するように、または平坦な底辺を含む矩形の断面を有するように曲げられる。以下、U字形またはV字形の下辺を、圧着ベースと呼ぶ。U字形またはV字形の上向きの脚部は概して、圧着フランクとして知られている。
【0007】
図1は、従来技術で見られる典型的なワイヤバレルクリンプ1を示す。そのようなクリンプには、機械的応力およびねじり応力を受けている間、ロバスト性が不足するという問題がある。
【0008】
圧着接続部は、圧着ダイによって形成され、圧着ダイは、アンビルおよび圧着スタンプからなる。圧着する際、圧着ベースは、アンビルの中心に位置決めされ、圧着バレル上の圧着脚部間に電気導体が配置される。次に、圧着スタンプはアンビルへ下降し、電気導体の周りに圧着フランクを曲げて、電気導体をきつく圧縮し、電気導体を圧着バレルにフォースロック(force-locking)で固定する。圧着ベースから圧着側壁への遷移区域、いわゆる圧着ルートにおいて、ならびに圧着側壁で横方向に、曲げ応力の高い区間が圧着バレル内に形成される。
【0009】
圧着バレルと電気導体との間のフォース接続(force connection)は、追加の形状嵌め要素、たとえばロック要素の作製のために導体に面している圧着バレルの内側の凹部またはくぼみを提供することによって改善することができ、変位された導体材料を圧縮中に凹部へ貫入することができる。
【0010】
圧着接続部の押圧区間は、より良好な電気特性を有する。それほど強く押圧されていない区域ほど、より高い機械的安定性を有する。
【0011】
圧着バレルおよび電気導体は、圧着ダイ内の段差または突起によって、局所的に補強することができる。
【0012】
米国特許第5,901,439号は、圧着ダイが閉じられるとき、アンビルの作業面内の開口を通して追加のパンチを供給することによって、圧縮をどのように局所的に増大させることができるかを開示している。
【0013】
特許出願DE102006045567A1は、ロールイン幾何形状で連続したオフセットを有する圧着ツールによって形成されたFクリンプ上の互い違いのシームを記載している。
【0014】
米国特許第5,561,267(A)号は、電気ワイヤの端部に圧着された圧着バレルを有するクリンプ端子を記載している。圧着バレルは、半円形の断面の本体と、本体の円弧の端部から一体的に延び、相互に重ね合わされた状態で電気ワイヤの端部の周りに締め付けられた1対の圧着羽根とを有する。圧着羽根は、重なり合いが解放される方向に互いに動かないように、重ね合わせられかつロックされる。
【0015】
圧着接続部が機械的応力を受けた場合、圧着フランクは、圧着ルートおよび曲げ応力の高い他の区間に沿って跳ね上がる可能性がある。圧着側壁の端部では、圧着ベースが長手方向シームに沿って開くというリスクがある。応力のタイプに応じて、圧着側壁の端部はまた、互いに対して軸方向に動く可能性もある。さらに、電気導体の個々のワイヤが互いに対して動く可能性があるという点から、従来技術では圧着力の低減が好まれる。ワイヤが長手方向に変位したとき、その結果生じる自由空間によって、圧着接続部の力は低減される。自由空間は、外部の物質が圧着接続部に貫入する可能性を与える。次いで圧着力は、外部からの物質によって引き起こされる電気導体および圧着バレルの腐食によってさらに弱くなる。
【0016】
圧着力が損なわれると、圧着接続部の所望の機械的安定性を維持することができなくなる。従来のクリンプでは、接続線または電気導体で動きが生じた場合、圧着接続部の他方の端部でも電気導体の個々のワイヤの動きを観察されうることが分かった。これは、電気導体の個々の両ワイヤ、ならびに電気導体および圧着バレルが、十分に確実に固定されなくなったことを示す。したがって、個々の事例において、圧着バレルと電気導体との間の電気的な遷移抵抗の増大が生じる可能性がある。
【0017】
クリンプ、特にFクリンプの機械的および電気的なロバスト性を実現するために、圧着バレルは、金属板が十分な材厚さ(ワイヤサイズに関係する)を有しなければならない。特に大きいワイヤの場合、この最小の材厚のバレルは、金属板から電気端子を製造する打抜きプロセスにおける切断または曲げに対する適合性が低下する、圧着プロセスに必要とされる力が大きくなる、材料コストが高くなるなどの欠点をもたらす。上記の問題に対処するために、従来技術のクリンプは、薄い材料を使用している。
【0018】
しかし、それによって薄すぎる材料を使用したとき、機械的および電気的な性能に関して、巻かれたのシームにおいてクリンプが機能しなくなり始めることが分かった。多数のワイヤを安全に電気接続することを可能にする端子デバイスであって、同時にロバスト性があり費用効果の高い端子デバイスを提供することが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本開示の目的は、シームの噛合が圧着強さの増大に寄与するように、薄い材厚のFクリンプバレルに対して改善されたロバスト性を有する圧着接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0021】
本発明は、より薄い材厚で圧着のロバスト性を増大させるために、セルフロックフック圧着接続部のシームの噛合(interlock)を提供するという概念に基づく。
【0022】
形状ロック要素または補強された圧着接続要素を提供するための当技術分野で知られている方策は、圧着バレルの撓み、ならびに電気導体の個々のワイヤの相対的な動き、およびその結果生じる圧着力が損なわれることを防止することができない。
【0023】
非限定的で例示的な実施形態の1つは、上述した問題を解決することができる噛合シームを含む圧着接続部を提供する。
【0024】
本開示の有利な実施形態によれば、ワイヤを接続するためのクリンプであって、少なくとも1つの圧着バレルを備え、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、第1の側壁は、少なくとも1つのセルフロック羽根を備え、第2の側壁は、少なくとも1つのセルフロックフックポケットを備え、したがって第1の側壁のセルフロック羽根は、第2の側壁のセルフロックフックポケットにロックするように適合されている、クリンプが提供される。
【0025】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプの第1の壁は、少なくとも第2のセルフロックフックポケットを備え、クリンプの第2の壁は、少なくとも第2のセルフロック羽根を備え、第2の壁は、第1の壁にクロスロック(交差ロック、cross lock)するように適合されている。
【0026】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプのセルフロック羽根およびセルフロックフックポケットは、クリンプのベースまで延びている。
【0027】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプのセルフロック羽根は、エントリチャンバを備える。
【0028】
本開示の別の有利な実施形態によれば、セルフロックフックポケットは、前方エントリガイドおよび後方エントリガイドを備える。
【0029】
本開示の別の有利な実施形態によれば、セルフロックフックポケットは、180度の角度に曲げられている。
【0030】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプのセルフロックフックポケットは、120度の角度に曲げられている。
【0031】
本開示の別の有利な実施形態によれば、圧着バレルはFクリンプワイヤバレルである。
【0032】
本開示の別の有利な実施形態によれば、ワイヤを接続するためのクリンプを形成する方法であって、圧着バレルのベースをワイヤの周りに曲げるステップを含み、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備え、第1の側壁は、少なくとも1つのセルフロック羽根を備え、第2の側壁は、少なくとも1つのセルフロックフックポケットを備え、したがって第1の側壁のセルフロック羽根は、第2の側壁のセルフロックフックポケットにロックするように適合されている、方法が開示される。
【0033】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプを形成する方法は、少なくとも第2のセルフロックフックポケットを備える第1の側壁と、少なくとも第2のセルフロック羽根を備える第2の壁とを有し、したがって第2の壁が、圧着中に第1の壁にクロスロックする、クリンプに適合されている。
【0034】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプを形成する方法は、クリンプのセルフロック羽根が、エントリチャンバを備えるクリンプに適合されている。
【0035】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプを形成する方法は、セルフロックフックポケットが、前方エントリガイドおよび後方エントリガイドを備えるクリンプに適合されている。
【0036】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプを形成する方法は、セルフロックフックポケットが、180度または120度の角度に曲げられているクリンプに適合されている。
【0037】
本開示の別の有利な実施形態によれば、クリンプを形成する方法は、圧着バレルが、Fクリンプワイヤバレルであるクリンプに適合されている。
【0038】
本開示の別の有利な実施形態によれば、上述したクリンプを圧着するためのプロファイルを有する圧着ツール部材を備えた圧着デバイス(50)であって、プロファイルは、圧着中に圧着バレルの壁の前方部分および後方部分と動作可能に位置合わせされる、圧着デバイス(50)が開示される。
【0039】
開示する実施形態の追加の利益および利点は、本明細書および図面から明らかになる。利益および/または利点は、本明細書および図面の様々な実施形態および特徴によって個々に得ることができ、そのような利益および/または利点の1つまたは複数を得るために、これらの実施形態および特徴のすべてが提供される必要はない。
【0040】
本発明について、実施形態および添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。同一、一義、または類似の構造および/または機能を有する要素または構成要素は、図面の様々な図において、同じ参照番号で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】従来のワイヤ圧着バレルの概略図である。
図2】本開示によるセルフロックフック圧着接続部の一実施形態の概略斜視図である。
図3】本開示によるセルフロックフック圧着接続部の概略底面図である。
図4A】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図4B】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図4C】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図4D】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図5A】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図5B】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図5C】本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の概略図である。
図6】本開示によるセルフロックフック圧着接続部の別の実施形態の概略斜視図である。
図7】本開示の方法による圧着ツールで使用されるクリンパの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示の実施形態について説明する前に、本開示の基礎を形成する根本的な知識について説明する。上記の考慮に基づいて、本発明者らは、本開示の以下の態様を想起した。
【0043】
本開示のより具体的な実施形態について、以下に説明する。しかし、過度に詳細な説明は省略することもあることに留意されたい。たとえば、すでによく知られている事柄についての詳細な説明、および実質上同一の構成要素についての説明の繰返しは、省略することがある。これは、以下の説明の不必要な冗長性を回避し、当業者の理解を容易にすることを意図したものである。本発明者らは、当業者であれば本開示を十分に理解することができるように、添付の図面および以下の説明を提供したものであり、添付の図面および以下の説明は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図したものではないことに留意されたい。以下の説明では、同一または類似の構成要素には、同じ参照番号が与えられる。
【0044】
本開示の一般概念によれば、ワイヤを接続するためのクリンプであって、少なくとも1つの圧着バレルを備え、圧着バレルは、少なくとも1つのベースと、ベースから延びる少なくとも2つの対向する側壁とを備えた、クリンプが提供される。第1の側壁は、少なくとも1つのセルフロック羽根を備え、第2の側壁は、少なくとも1つのセルフロックポケットを備え、したがって第1の側壁のセルフロック羽根は、第2の側壁のセルフロックポケットにロックするように適合されている。
【0045】
図2は、本開示の一実施形態によるセルフロックフッククリンプ2の概略図を示す。第1の側壁4aは、セルフロック羽根11aおよび11bを備える。第2の側壁4bは、セルフロックフックポケット10a、10bを備える。セルフロックフッククリンプ2において、セルフロック羽根11a、11bは圧着動作中にセルフロックフックポケット10a、10bと噛合し、これにより機械的応力およびねじり応力に対してさらなる機械的なロバスト性および電気的なロバスト性を得ることができる。
【0046】
セルフロックフッククリンプ2の形成中の圧縮および軸方向への伸長により、セルフロック羽根11a、11bの縁部およびセルフロックフックポケット10a、10bの縁部が互いに圧迫されて、シームの噛合接続が生じ、したがってさらなるロバスト性が与えられる。
【0047】
図3は、本開示によるシームセルフロッククリンプ2の平坦な斜視底面図であり、言い換えれば3次元形状に曲げられる前の図である。セルフロック羽根およびセルフロックポケットの様々な寸法は、特定の使用事例に合わせて好適に適合させることができる。
【0048】
任意選択で、圧着バレルの内面は、電気導体30に蓄積した酸化物および/または他の表面材料(それだけに限定されるものではないが、残留ワイヤ押出強化材料など)の層に貫入するための1つまたは複数の鋸歯44を含むことができる。本明細書では、これらの内面をそれぞれ、圧着バレルの「金属面」と呼ぶことができる。
【0049】
図4Aは、本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の一実施形態の概略図である。この実施形態では、セルフロックフックポケットを有する側壁は、約180度曲げられている。セルフロックフックポケットのそのような曲げ角度は、さらなるロバスト性を与え、外部応力に対するセルフロックフッククリンプの噛合シームの弾性を強化する。
【0050】
図4Bは、定位置における側壁とワイヤの噛合を示す圧着接続部の概略図である。図4Cは、羽根とポケットの噛合を示すセルフロックフック圧着接続部の概略断面図である。図4Dは、セルフロックフック圧着接続部の圧着動作に好適なクリンパのいわゆる「Oプロファイル通路」の概略図である。
【0051】
図5Aは、本開示の別の実施形態によるセルフロックフック圧着接続部の一実施形態の概略図である。この実施形態では、セルフロックフックポケットを有する側壁は、約120度曲げられている。セルフロックフックポケットのそのような曲げ角度は、外部応力に対するセルフロックフッククリンプの噛合シームの弾性を強化するために、追加の強さを提供する。
【0052】
図5Bは、羽根とポケットの噛合を示すセルフロックフック圧着接続部の概略断面図である。図5Cは、セルフロックフック圧着接続部の圧着動作に好適なクリンパの「Oプロファイル通路」の概略図である。
【0053】
図6は、本開示によるセルフロックフック圧着接続部の別の実施形態の概略図を示す。第1の側壁124aは、セルフロック羽根111bおよびセルフロックフックポケット100aを備える。第2の側壁124bは、セルフロックフックポケット100bおよびセルフロック羽根111aを備える。この実施形態のフッククリンプをセルフロックする際、セルフロック羽根111a、111bは圧着動作中にセルフロックフックポケット100a、100bにクロスロック(交差ロック、cross locked)し、これにより機械的応力およびねじり応力に対してさらなる機械的なロバスト性および電気的なロバスト性が得られる。
【0054】
電気伝導ワイヤに接触するために、クリンプは、たとえば、非絶縁ワイヤに取り付けられる。電気導体の端部の少なくとも一部分から電気絶縁層を除去して、導体端部を露出させることができる。いくつかの代替実施形態では、電気コンタクトは、別の電気ワイヤ(図示せず)の端部の周りに圧着して、この端子に他の電気ワイヤを機械的および電気的に接続するように構成された別の圧着バレル16である。
【0055】
したがって、いくつかの代替実施形態では、端子は、電気ワイヤを別の電気ワイヤに電気接続するように構成される。言い換えれば、いくつかの代替実施形態では、端子を使用して、電気ワイヤを別のワイヤにスプライス接続(splice)することができる。
【0056】
上記の実施形態の圧着部は、圧着デバイスまたはクリンパを使用して電気的および機械的な接続を実現するために使用される。圧着デバイスは、圧着部をワイヤに圧着する。一実施形態では、電気ワイヤは、圧着バレル内に受け取られる電気導体を有する。たとえば、ワイヤの端部区間は、圧着バレルに装入される露出された導体を有する。圧着動作中、バレルは、導体の周りに圧着され、圧着部と電気ワイヤとの間に機械的および電気的な接続を形成する。
【0057】
図7は、本開示の方法による圧着ツールで使用される「クリンパ」としても知られている圧着デバイスの概略図である。圧着が開始されると、セルフロック羽根はセルフロックポケットに入り、ワイヤ撚線と圧着する。クリンパ内の溝51により、シームセルフロックをもたらすためのセルフロック羽根の容易な動きが可能になる。
【0058】
圧着動作により、圧着部が形成され、導体を機械的に保持し、導体と圧着部とが係合する。端子を形成することは、開端子と同様にワイヤ導体の周りにアームもしくはタブを曲げること(たとえば、「F」型クリンプ)、または閉端子と同様にワイヤ導体の周りに閉バレルを圧縮すること(たとえば、「O」型クリンプ)を含むことができる。圧着動作中に端子がワイヤの周りに形成されるとき、端子および/または端子内の導体の金属を押し出すことができる。端子と電気ワイヤとが、確実に機械的に接続おされ、かつ、良質に電気的に接続されることが望ましい。本明細書に開示する圧着ツールの実施形態を使用することで、金属の押出によって圧着動作中に形成される形成機構(formed feature)が端子に形成される。このツールによって、様々な端子形状および設計を有する様々なタイプの端子に、形成機構を形成することができる。
【0059】
圧着デバイス50は、クリンプを圧着するためのプロファイルを有する圧着ツール部材51を備える。圧着中、このプロファイルは、図2および図6の実施形態に示すように、圧着バレルの壁の前方部分および後方部分と、動作可能に位置合わせされる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、側壁の長さは、側壁が係合されて噛合シームを形成するとき、側壁の端部がクリンプの内面に当たらないようになっている。
【0061】
圧着デバイス50は、アンビル[図示せず]および圧着ツール部材51を含むことができる。アンビルは、圧着部を受け取る上面を有する。ワイヤの電気導体は、アンビル上の圧着バレル内に受け取られる。圧着ツール部材51は、形成プロファイルを含む。この形成プロファイルは、圧着部に係合したときに導体の周りにバレルを形成または圧着するように選択的に成形されている。形成プロファイルは、圧着区間のうち、圧着動作中に圧着部およびワイヤが受け取られる部分を画定する。アンビルの上面はまた、端子が圧着ツール部材とアンビルとの間でワイヤに圧着されるように、圧着区間の一部分を画定する。
【0062】
圧着ツール部材51は、図7に示す方向53に圧着ストロークに沿って、アンビルに向かう方およびアンビルから離れる方へ可動である。圧着ストロークは、アンビルから離れる上方成分と、アンビルに向かう下方成分とを有する。圧着ツール部材は、圧着軸52に沿って、アンビルに向かう方およびアンビルから離れる方へ双方向に動く。圧着ツール部材は、圧着ツール部材がアンビルに向かう方へ動くと、圧着ストロークの下方成分中に電気導体の周りに端子を形成する。図示しないが、圧着ツール部材は、圧着ストロークに沿った圧着ツール部材の動きを推進させる機械アクチュエータに結合することができる。たとえば、圧着ツール部材は、アプリケータまたはリードメーカ機械の可動ラムに結合することができる。加えて、アプリケータまたはリードメーカ機械はまた、圧着デバイスのアンビルおよびベース支持体を含むことができ、または圧着デバイスのアンビルおよびベース支持体に結合することができる。
【0063】
圧着動作中、圧着部は、アンビルの上面に装入される。ワイヤは、圧着区間に向かって装入方向に動かされ、したがって電気導体は、圧着バレルの2つの側壁間の圧着バレル16内に受け取られる。圧着ツール部材がアンビルに向かって動くと、形成プロファイルは圧着バレルの上に下降し、側壁に係合して、電気導体の周りに壁を曲げまたは形成する。より具体的には、圧着ツール部材51が下方へ動くとき、形成プロファイルの側面タブおよび上部形成面が、側壁を電気導体の頂部の上へ徐々に曲げる。
【0064】
セルフロック羽根11、111は、クリンプのセルフロックフックポケット10、100に係合するように構成される。圧着ストローク中の圧着ツール部材の最も低い位置(またはベース支持体に最も近い位置)である圧着ツール部材の下死位置で、形成プロファイルの一部は、アンビルの上面の周りに延びることができる。圧着部は、形成プロファイルとアンビルとの間に圧縮され、それにより圧着バレルの側壁は、ワイヤの電気導体に機械的に係合し、かつ、電気的に接続する。高い圧縮力により、側壁と導体との間の金属間接合が生じる。本明細書に記載する1つまたは複数の実施形態は、本明細書に記載するシームセルフロック動作中、圧着バレルの側壁が互いに係合するときに形成される形成プロファイルを対象とする。
【0065】
さらに、外部からの力を受けた圧着接続部の機構および挙動について説明する。
【0066】
圧着接続部の恒久的な接触を確立および維持するための2つのメカニズム、すなわち冷間溶接および適した残留力分布の生成が存在する。どちらのメカニズムも、恒久的な接続の生成に寄与し、互いに独立している。圧着中、2つの金属面は、印加された力を受けて摺動または掃引動作にかけられ、したがって冷間溶接としても知られている低温状態の金属の溶接が行われる。適当な残留力分布下で、接触界面は、正の力を受ける。圧着中、圧着ツールが取り外されると、導体と圧着バレルとの間に残留力が蓄積し、これは異なる弾性回復を示す。
【0067】
電気導体が圧着バレルより跳ね返る傾向があるとき、バレルは、導体に圧縮力を及ぼし、それにより接触界面の完全性を維持する。圧着接続部の電気的および機械的な性能は、導体間および導体と圧着バレルとの間に微小冷間溶接接合をもたらす導体および圧着バレルの制御された変形に起因する。これらの接合は、残留力をもたらす圧着接続部内の適した残留応力分布によって維持され、それにより接合の安定性が維持される。
【0068】
圧着接続部に対する外部からの力(たとえば、張力)の印加中、圧着フランク間の噛合の位置がずれる可能性があり、そうすると圧着接続部は不十分なものとなる。したがって、本開示のシームセルフロック圧着接続部の実施形態では、セルフロック羽根およびセルフロックポケットによる圧着接続部が提供される。
【0069】
そのようなテーパ化されたエンボス区域は、圧着フランクの内側または外側の両方に設けることができ、それによって、圧着フランクの外面の横方向で法線ベクトルに等しくない角度で張力が印加されたときでも、噛合を確実に維持することができる。
【0070】
本開示について、本開示の例示的な実施形態を参照して特に図示および説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の意図から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更を加えることができることが、当業者には理解されよう。例示的な実施形態は、限定の目的ではなく実態に応じて考慮されるべきである。したがって、本開示の範囲は、本発明の上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義され、この範囲内のすべての違いは、本発明に含まれると解釈される。
【符号の説明】
【0071】
2、6 セルフロックフッククリンプ
4a、4b、104a、104b、124a、124b 側壁
11a、11b、111a、111b セルフロック羽根
10a、10b、100a、100b セルフロックフックポケット
16、106 圧着バレル
44、444 鋸歯
50 圧着デバイス
51 圧着ツール部材
52 圧着軸
53 動きの方向
1 従来のクリンプ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7