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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】出力プログラム、出力装置及び出力方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20220630BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021192490
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2021-11-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 別紙提案先リストの通り公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399009239
【氏名又は名称】株式会社帝国データバンク
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 公平
(72)【発明者】
【氏名】川端 篤
(72)【発明者】
【氏名】安江 直芳
(72)【発明者】
【氏名】徳永 明恵
(72)【発明者】
【氏名】北島 聡
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特許第6860731(JP,B1)
【文献】特開2015-026388(JP,A)
【文献】特許第6871469(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着目企業と取引関係にある1次取引企業における売上高に、前記着目企業との取引高が占める1次取引高シェアを取得し、
前記1次取引高シェアに100%を乗算して、1次波及度を算出し、
n次取引企業(nは自然数)と取引関係にある(n+1)次取引企業における売上高に、前記n次取引企業との取引高が占める(n+1)次取引高シェアを取得し、
前記(n+1)次取引高シェアに、n次波及度を乗じた(n+1)次波及度を、nを1から増加させながら、所定条件となるまで繰り返し算出し、
前記n次取引企業からm次取引企業(mは前記所定条件を満たすnの値)の少なくとも一つに属する企業毎に、1次波及度からm次波及度を合算した依存度を算出し、
企業毎に該企業と前記依存度とを対応付けて出力する
処理をコンピュータに行わせる
ことを特徴とする出力プログラム。
【請求項2】
前記所定条件は、前記nが所定値以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の出力プログラム。
【請求項3】
前記所定条件は、m次波及度の合計が所定の閾値未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の出力プログラム。
【請求項4】
前記着目企業及びn次取引企業からm次取引企業を頂点で表現し、企業間の取引関係を辺で表現したグラフを生成し、
前記頂点毎に前記依存度を付して、前記グラフを出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の出力プログラム。
【請求項5】
前記n次取引企業からm次取引企業を、前記依存度の大小を面積に比例させた図形で表現し、複数の前記図形を、直接取引関係のある企業間の図形が隣接又は内包するように配置し、配置した図形群を出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の出力プログラム。
【請求項6】
着目企業と取引関係にある1次取引企業における売上高に、前記着目企業との取引高が占める1次取引高シェアを取得する第1取得部と、
前記1次取引高シェアに100%を乗算して、1次波及度を算出する第1算出部と、
n次取引企業(nは自然数)と取引関係にある(n+1)次取引企業における売上高に、前記n次取引企業との取引高が占める(n+1)次取引高シェアを取得する第2取得部と、
前記(n+1)次取引高シェアに、n次波及度を乗じた(n+1)次波及度を、nを1から増加させながら、所定条件となるまで繰り返し算出する第2算出部と、
前記n次取引企業からm次取引企業(mは前記所定条件を満たすnの値)の少なくとも一つに属する企業毎に、1次波及度からm次波及度を合算した依存度を算出する第3算出部と、
企業毎に該企業と前記依存度とを対応付けて出力する出力部と
を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項7】
コンピュータが、
着目企業と取引関係にある1次取引企業における売上高に、前記着目企業との取引高が占める1次取引高シェアを取得し、
前記1次取引高シェアに100%を乗算して、1次波及度を算出し、
n次取引企業(nは自然数)と取引関係にある(n+1)次取引企業における売上高に、前記n次取引企業との取引高が占める(n+1)次取引高シェアを取得し、
前記(n+1)次取引高シェアに、n次波及度を乗じた(n+1)次波及度を、nを1から増加させながら、所定条件となるまで繰り返し算出し、
前記n次取引企業からm次取引企業(mは前記所定条件を満たすnの値)の少なくとも一つに属する企業毎に、1次波及度からm次波及度を合算した依存度を算出し、
企業毎に該企業と前記依存度とを対応付けて出力する
ことを特徴とする出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業間の依存度を出力する出力プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
企業の経営において、複数の事業間での相互依存性や、特定事業についての影響が企業全体に与えるインパクトを分析することが重要である。これに関して、特許文献1には、企業における複数の事業間での相互依存性を分析し、特定の事業に対する影響が他の事業や企業全体に与えるインパクトをシミュレーションする事業連関表の作成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-224769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、大企業(サプライチェーン頂点企業等。以後、「頂点企業」という。)及びその下請取引先群によって形成されている取引ネットワーク(以後、「商流圏」という)においては、頂点企業の業績変動が直接の取引関係がない孫請け企業等、商流圏内に存在する企業の業績に影響を与える。そのため、複数企業との取引によりリスク分散を図っている企業であっても、その取引先が同一の商流圏内にある場合にはリスク分散に成功しているとは言い難い。したがって、各企業の商流圏への依存度は企業経営におけるリスクの状態を判断するうえで重要な指標となる。しかし現状、直接取引が無い、間接的な企業間取引については十分な実績データが存在しないことから、商流圏の頂点企業に対する正確性の高い依存度を把握できていない。依存度の算出においては、起点となる企業を定めることが必要である。本明細書において、起点となる企業を着目企業という。頂点企業は着目企業の一例である。着目企業は、頂点企業に限らず、サプライチェーンに含まれる企業の中から定めることが可能である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、商流圏における着目企業に対する企業の依存度を算出し出力する出力プログラム等の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一態様に係る出力プログラムは、着目企業と取引関係にある1次取引企業における売上高に、前記着目企業との取引高が占める1次取引高シェアを取得し、前記1次取引高シェアに100%を乗算して、1次波及度を算出し、n次取引企業(nは自然数)と取引関係にある(n+1)次取引企業における売上高に、前記n次取引企業との取引高が占める(n+1)次取引高シェアを取得し、前記(n+1)次取引高シェアに、n次波及度を乗じた(n+1)次波及度を、nを1から増加させながら、所定条件となるまで繰り返し算出し、前記n次取引企業からm次取引企業(mは前記所定条件を満たすnの値)の少なくとも一つに属する企業毎に、1次波及度からm次波及度を合算した依存度を算出し、企業毎に該企業と前記依存度とを対応付けて出力する処理をコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願の一態様にあっては、商流圏における着目企業に対する企業の依存度を算出し出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】商流圏分析システムの構成例を示す説明図である。
図2】分析装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】ユーザ端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】売上高DBの例を示す説明図である。
図5】取引高DBの例を示す説明図である。
図6】取引高シェアDBの例を示す説明図である。
図7】波及度の計算例を示す説明図である。
図8】波及度の計算結果を示す説明図である。
図9】取引関係を示す有向グラフの一例である。
図10】メイン処理の手順例を示すフローチャートである。
図11】データ準備処理の手順例を示すフローチャートである。
図12】波及度算出処理の手順例を示すフローチャートである。
図13】サークルパッキングによる取引関係の表現例を示す説明図である。
図14】サークルパッキングによる取引関係の表現例を示す説明図である。
図15】サークルパッキングによる取引関係の表現例を示す説明図である。
図16】サンバーストによる取引関係の表現例を示す説明図である。
図17】ツリーマップによる取引関係の表現例を示す説明図である。
図18】アイシクルによる取引関係の表現例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は商流圏分析システムの構成例を示す説明図である。商流圏分析システム100は、分析装置(出力装置)1、企業情報DB(Database:データベース)2及びユーザ端末3を含む。分析装置1、企業情報DB2及びユーザ端末3はネットワークNにより、互いに通信可能に接続されている。分析装置1はサーバコンピュータ、PC(Personal Computer)等で構成する。また、分析装置1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータ、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシン又は量子コンピュータで構成しても良い。さらに、分析装置1が備える機能をクラウドサービスで実現してもよい。ユーザ端末3はノートパソコン、タブレットコンピュータ、スマートフォン等で構成する。
【0010】
企業情報DB2は、複数の企業に関する情報が蓄積されている。企業情報は、各企業の基本情報(企業コード、商号、代表者、所在地、電話番号、企業URL、上場区分、設立年月日、資本金、事業内容、取引銀行、従業員数等)の他に、役員構成、株主構成、親子会社関係、過去の業績、今後の業績見通し、取引先(仕入先及び得意先)、取引先との直接取引の実績値、財務諸表等を含む。なお、取引先との直接取引の実績値が得られていない場合、推定値を用いる。取引先との直接取引の実績値及び推定値を以下、「取引高」という。
【0011】
図2は分析装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。分析装置1は制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、通信部14及び読み取り部15を含む。制御部11、主記憶部12、補助記憶部13、通信部14及び読み取り部15はバスBにより接続されている。
【0012】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有する。制御部11は、補助記憶部13に記憶された制御プログラム1P(出力プログラム、プログラム製品)を読み出して実行することにより、分析装置1に係る種々の情報処理、制御処理等を行い、各種の機能部を実現する。例えば機能部は、第1取得部、第1算出部、第2取得部、第2算出部、第3算出部、及び出力部である。
【0013】
主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等である。主記憶部12は主として制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0014】
補助記憶部13はハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等であり、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1Pや各種DB(Database)を記憶する。補助記憶部13は、売上高DB131、取引高DB132及び取引高シェアDB133を記憶する。補助記憶部13は分析装置1と別体で、外部接続された外部 記憶装置であってもよい。補助記憶部13に記憶する各種DB等を、分析装置1とは異なるデータベースサーバやクラウドストレージに記憶してもよい。
【0015】
図3はユーザ端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。ユーザ端末3は制御部31、主記憶部32、補助記憶部33、通信部34、入力部35及び表示部36を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0016】
制御部31は補助記憶部33に記憶された制御プログラム3Pにしたがい、ハードウェア各部を制御する。主記憶部32は例えばSRAM、DRAM又はフラッシュメモリである。主記憶部32は制御部31によるプログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。補助記憶部33は、例えばハードディスク又はSSDなどである。補助記憶部33は各種データを記憶する。
【0017】
通信部34はネットワークNを介して、分析装置1と通信を行う。また、制御部31が通信部34を用い、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御プログラム3Pをダウンロードし、補助記憶部33に記憶してもよい。
【0018】
入力部35はキーボードやマウスである。表示部36は液晶表示パネル等を含む。表示部36は企業情報DB2より取得した信用情報や分析装置1から取得した依存度などを表示する。また、入力部35と表示部36とを一体化したタッチパネルディスプレイを構成してもよい。なお、ユーザ端末3は外部の表示装置に表示を行ってもよい。
【0019】
分析装置1が行う商流圏分析の概要を以下に説明する。商流圏分析では、まず起点となる企業を定める。通常はサプライチェーンの頂点企業である。次に、着目企業の下請取引を行っている企業(1次取引企業)を特定する。さらに、1次取引企業と取引を行っている企業(2次取引企業)、2次取引企業と下請取引を行っている企業(3次取引企業)、…を順に特定する。続いて、着目企業の売上高に占める1次取引企業の取引高の割合(1次取引高シェア)を求める。さらに、1次取引企業の売上高に占める2次取引企業の取引高の割合(2次取引高シェア)、同様に2次取引企業の売上高に占める3次取引企業の取引高の割合(3次取引高シェア)、…を順次求める。取引高シェアを用いて、着目企業の売上変動が、1次取引企業の売上に与える影響度合い(1次波及度)を算出する。算出した1次波及度と2次取引高とから、2次取引企業の波及度(2次波及度)を求める。同様に、3次波及度、4次波及度、…を順次求める。波及度が十分小さい値になるまで計算を行う。例えば、同一レベルの波及度の合計が閾値以下となるまで行う。以下、波及度をm次まで算出したとする。そして、同一の取引企業毎に1波及度からm次波及度の合計を算出する。当該合計値が、着目企業の売上変動が取引企業に与える影響の大きさ(ここでは、依存度という。)を示している。取引関係を示す有向グラフを作成し、当該有向グラフとともに、波及度や依存度を示すことが望ましい。
【0020】
次に、商流圏分析システム100で用いるデータベースについて説明する。図4は売上高DBの例を示す説明図である。売上高DB131は各企業の売上高をまとめたものである。単位は例えば百万円である。売上高DB131は企業情報DB2から、処理対象とする着目企業、取引企業についての売上高を抽出し作成したものでもよい。
【0021】
図5は取引高DBの例を示す説明図である。取引高DB132は2社間の取引高をまとめたものである。単位は例えば百万円である。横方向に受注企業を、縦方向に発注企業を並べている。取引高DB132は企業情報DB2から、処理対象とする着目企業、取引企業に含まれる2社間の取引高を抽出し作成したものでもよい。取引高が不明である場合、推定値を用いてもよい。なお、取引高の算出期間は、売上高の算出期間と同一であることが望ましい。
【0022】
図6は取引高シェアDBの例を示す説明図である。取引高シェアDB133は取引高シェアをまとめたものである。取引高シェアは、取引高を受注企業の売上高で除したものである。取引高シェアDB133は、売上高DB131及び取引高DB132に基づいて作成する。図6において、空白は0を意味している。
【0023】
続いて、商流圏分析について、事例を想定して説明する。以下の説明おいては、企業G0Aが着目企業とする。1次取引企業はT1A、T1Bとする。2次取引企業はT2A、T2Bとする。そして、3次取引企業はT3A、T3Bとする。各企業の売上高、取引高は、上述した図4図5に示している値であるとする。売上高及び取引高から算出した取引高シェアは図6に示している。
【0024】
図7は波及度の計算例を示す説明図である。n次波及度は取引高シェア×(n-1)次波及度と定義する。但し、0次波及度=100%である。1次取引企業は、着目企業と直接取引があるから、0次波及は100%となる。まず、1次波及度について説明する。G0Aと直接取引がある1次取引企業はT1AとT1Bである。図6の取引高シェアDB133に示されているように、T1AにおけるG0Aの取引高シェアは70%、T1Bについても70%である。したがって、T1A及びT1Bの1次波及度は70%×100%で70%である。
【0025】
次に2次波及度について説明する。T1Aと取引がある2次取引企業は、T1B、T2A、T2Bである。T1BにおいてT1Aの取引高シェアは20%である。T2AにおいてT1Aの取引高シェアは100%である。T2BにおいてT1Aの取引高シェアは25%である。T1Bと取引がある2次取引企業はT2Bである。T2BにおいてT1Bの取引高シェアは50%である。T1Bの2次波及度は、20%×70%で14%である。T2Aの2次波及度は、100%×70%で70%である。T2BのT1Aを介しての2次波及度は25%×70%で17.5%である。T2BのT1Bを介しての2次波及度は50%×70%で35%である。
【0026】
求めた2次波及度から、3次波及度を計算すると、図7に示したように、T2BはT1Bを介して7%、T2Aを介して17.5%、T3AはT2Aを介して70%である。T3BはT1A、T2Aを介して、35%、T1A、T2Bを介して、4.375%、T1B、T2Bを介して、8.75%である。以降、同様な計算方法により、4次波及度以降を求めることが可能である。
【0027】
図8は波及度の計算結果を示す説明図である。図8では10次波及度までの計算を行っている。ここでは波及度計算の打ち切り条件として、波及度の合計が0.01%未満となった場合としている。ここでは図8に示したように、10次波及度の合計が0.005%で、0.01%未満となったので、10次で打ち切っている。そして、1次波及度から10次波及度の合計が、依存度となる。図8において、空欄は0を意味している。
【0028】
図9は取引関係を示す有向グラフの一例である。有向グラフは例えば、ユーザ端末3に表示される。有向グラフの頂点は企業を示す。有向グラフの有向辺は取引関係を示す。有向辺の元が発注企業を示し、有向辺の先が受注企業を示す。有向辺のラベルは(取引高)×(発注企業の依存度)を記載している。頂点を表現する図形内部には企業名、依存度に相当する取引高/売上高、(依存度)を記載している。
【0029】
図9に示す有向グラフをユーザに出力することにより、取引関係と依存度とを一覧可能となる。また、依存度を取引高額に換算した額を合わせて表示するので、依存度を金額として把握可能となる。
【0030】
次に、分析装置1が行う情報処理について説明する。図10はメイン処理の手順例を示すフローチャートである。ユーザ端末3からのリクエストにより処理を開始する。当該リクエストには着目企業の情報を含む。分析装置1の制御部11はリクエストから着目企業を取得する(ステップS1)。制御部11は依存度を算出するためのデータ準備を行う(ステップS2)。制御部11は波及度を算出する(ステップS3)。制御部11は有向グラフを作成する(ステップS4)。制御部11は有向グラフをユーザ端末3へ送信(ステップS5)、処理を終了する。
【0031】
図11はデータ準備処理の手順例を示すフローチャートである。制御部11は関係企業を特定する(ステップS11)。関係企業は着目企業と直接取引がある1次企業、1次企業と取引がある2次企業、2次企業と取引がある3次企業、…である。制御部11は企業情報DB2を参照して関係企業の特定を行う。制御部11は、着目企業及び関係企業の売上高表を作成する(ステップS12)。制御部11は作成した売上高表を売上高DB131に記憶する。制御部11は着目企業と関係企業との取引高、関係企業間の取引高を含む取引高表を作成する(ステップS13)。制御部11は作成した取引高表を取引高DB132に記憶する。制御部11は売上高表と取引高表とから取引高シェア表を作成する(ステップS14)。制御部11は作成した取引高シェア表を取引高シェアDB133に記憶する。制御部11は処理を呼び出し元に戻す。なお、売上高表、取引高表及び取引高シェア表は都度、作成するのではなく、予め作成しておいてもよい。
【0032】
図12は波及度算出処理の手順例を示すフローチャートである。制御部11は初期設定を行う(ステップS21)。例えば、制御部11は波及度算出を打ち切る条件設定を補助記憶部13等から読み込む。制御部11はループ変数iに1を代入する(ステップS22)。制御部11はi次企業それぞれについてi次波及度を算出する(ステップS23)。制御部11はi次波及度の合計を算出する(ステップS24)。制御部11は合計が閾値α未満であるか否かを判定する(ステップS25)。制御部11は合計が閾値α以上であると判定した場合(ステップS25でNO)、ループ変数iを1増加させる(ステップS26)。制御部11は処理をステップS23へ戻す。制御部11は合計が閾値α未満であると判定した場合(ステップS25でYES)、各関係企業の依存度を算出し(ステップS27)、処理を呼び出し元に戻す。
【0033】
図12において、波及度の計算を打ち切る条件を、波及度の合計値が閾値α未満であるとしたが、それに限らない。波及度の次数を条件としてもよい。例えば10次波及度まで計算する場合、ループ変数i=10が打ち切り条件となる。
【0034】
波及度算出は行列演算により実行可能である。以下、図6から図8で示した例を用いて、説明する。取引高シェア行列をRとすると、行列Rは式(1)となる。以下に示すRは図6に示した取引高シェアDB133を行列で表現したものである。
【0035】
【数1】
【0036】
着目企業i社からのk次波及度をSikとすると、Sikは式(2)で求められる。
【0037】
【数2】
【0038】
ikは行ベクトルである。また、Si0はi行の要素が1、その他の行の要素は0である。ここでは、Si0は式(3)である。
【0039】
【数3】
【0040】
式(1)から式(3)より、1次波及度Si1は式(4)により求まる。
【0041】
【数4】
【0042】
式(4)の結果は、図8に示した1次波及度と整合している。式(4)と式(2)とから、2次波及度Si2は式(5)により求まる。
【0043】
【数5】
【0044】
さらに式(5)と式(2)とから、3次波及度Si3は式(6)により求まる。
【0045】
【数6】
【0046】
式(5)の結果は図8に示した2次波及度と、式(6)の結果は図8に示した3次波及度と、それぞれ整合している。
【0047】
関係企業毎に波及度を合計したi社への依存度Dは式(7)により求まる。
【0048】
【数7】
【0049】
また、波及度の収束条件は式(8)で表現できる。但し、k=lのとき、収束したとする。
【0050】
【数8】
【0051】
以上のように、波及度算出は行列演算により実行することが可能である。行列演算が予め組み込まれているプログラミング言語、例えばPythonでコーディングを行えば、波及度算出についてのソースコードを簡潔に記載することが可能である。また、行列演算は、予め用意されているライブラリにより実行されるので、行列演算をコーディングする場合に比べて、実行効率が高くなることが期待できる。プログラミング言語をPythonとしたが、それに限らず、SAS言語やR言語を使用してもよい。
【0052】
本実施の形態においては、以下の効果を奏する。着目企業への依存度を、着目企業と直接取引がある1次企業だけでなく、1次企業と取引がある2次企業についても算出可能である。上述の例での企業T2Bのように、着目企業から見て、同階層にある企業T2Aと取引がある場合であっても、当該取引を考慮した依存度の算出が可能である。また、企業T1Bのように、階層の低い企業と取引がある場合であっても、当該取引を考慮した依存度の算出が可能である。また、以上のような複雑な取引関係を考慮したしても、行列演算を用いるため、依存度の算出を効率的に実行可能である。さらに、依存度の算出結果を、図9に示したように有向グラフで表現し、表示することにより、取引関係と依存度とを一覧することが可能となる。なお、依存度の算出起点とする着目企業は任意に指定してよい。例えば、上述の例において、G0A以外を着目企業と指定すれば、指定した企業を着目企業とした商流圏について、各企業の依存度が計算される。
【0053】
依存度を利用することにより、以下の効果を奏する。着目企業の売上高が増加又は減少した場合に、商流圏内の企業への影響規模を把握可能となる。下請企業が倒産、又は下請企業の生産量が減少した場合に、着目企業及び商流圏全体が受ける影響を把握可能となる。
【0054】
上述では、着目企業を1社としたが、それに限らない。複数社を着目企業に設定して分析が可能である。例えば、特定地域・業種などでグループ化して、周辺企業への影響を分析するなどの利用が考えられる。
【0055】
(取引関係の表現手法)
着目企業と直接取引又は間接取引がある企業との関係を示す表現手法として有向グラフの例を図9にて示したが、それに限らない。以下では有向グラフ以外の表現手法について説明する。
【0056】
(サークルパッキング)
図13図14及び図15はサークルパッキングによる取引関係の表現例を示す説明図である。サークルパッキング(Circle Packing)は複数の円を内包する円を入れ子状にしたものである。サークルパッキングによる表現法では、円それぞれが、一つの企業を表す。円の包摂により取引関係を表現する。円を内包する企業は発注企業である。円に内包される企業は受注企業である。内包される円の直径は、受注企業が発注企業への依存度を表現する。
【0057】
図13は着目企業の取引関係を示している。円C0が着目企業を表現している。円C0に内包される円C11、円C12等が、着目企業と直接取引関係のある1次企業を示す。円C11はDHK(株)を示し、円C12は(株)TYAOを示している。円C11の直径は、円C12の直径より大きいので、DHK(株)のほうが、(株)TYAOよりも、着目企業の依存度が高いことを表現する。
【0058】
図14図13の部分拡大図に相当する。図14は円C11を拡大表示している。図13から図14への遷移は例えば次のように行う。図13において、マウスポインタを円C11内部に移動させる。マウスポインタの形状が通常の矢印形状から手の形状に変化する。また、円C11の円周がやや太く表示される。この状態でマウスクリックを行うと、図14の状態へ遷移する。円C11が内包する円C21、円C22、円C23等は、円C11に対応するDHK(株)と直接取引関係がある企業を示す。円C21はSDS(株)を示し、円C22は(株)MATを示し、円C23はTRI(株)を示す。SDS(株)、(株)MAT、TRI(株)それぞれは、DHK(株)を介して着目企業と間接的に取引する2次企業である。円C21、円C22、円C23等の直径の大小は、SDS(株)、(株)MAT、TRI(株)それぞれのDHK(株)への依存度の高低を示す。すなわち、(株)MAT、TRI(株)のDHK(株)への依存度はほぼ同じであるが、SDS(株)のDHK(株)への依存度は、(株)MAT、TRI(株)を含めた受注企業の中で、最も高いことを示す。
【0059】
また、2次企業を示す円は、1次企業を示す円に内包され、その直径は1次企業への依存度の高低により変動する。1次企業を示す円の直径は着目企業への依存度の高低により変動するから、2次企業を示す円の直径は、2次企業の着目企業への依存度の高低を示す。したがって、1次企業がどの企業であるかに関わらず、2次企業の直径の大小関係は、着目企業への依存度の高低を示す。
【0060】
図15図14の部分拡大図に相当する。図15は円C23を拡大表示している。図14から図15への遷移は、図13から図14への遷移と同様であるから説明を省略する。円C23が内包する円C31、円C32等は、円C23に対応するTRI(株)と直接取引関係がある企業を示す。円C31は(株)TTCを示し、円C32は(株)ITSを示す。(株)TTC、(株)ITSそれぞれは、TRI(株)を介してDHK(株)と間接的に取引し、さらにDHK(株)を介して着目企業と間接的に取引する3次企業である。円C31、円C32等の直径の大小は、(株)TTC、(株)ITSそれぞれのTRI(株)への依存度の高低を示す。すなわち、(株)TTCのTRI(株)への依存度は、(株)ITSのTRI(株)への依存度より、やや高いことを示す。
【0061】
3次企業を示す円の直径は2次企業への依存度の高低により変動するから、3次企業を示す円の直径は、3次企業の2次企業への依存度の高低を示す。そして、1次企業がどの企業であるかに関わらず、2次企業の直径の大小関係は、着目企業への依存度の高低を示すことから、3次企業でも同様に、2次企業がどの企業であるかに関わらず、3次企業の直径の大小関係は、着目企業への依存度の高低を示す。
【0062】
以上のことから、改めて図13について説明すると、円の内包関係は、着目企業との取引関係が1次、2次、3次のいずれかであるかを示す。内包される円の直径は、取引関係が1次、2次、3次のいずれであるかに関係なく、着目企業への依存度の高低を示す。したがって、サークルパッキングによる取引関係の表現により、各企業について、着目企業との取引関係、及び、着目企業への依存度を視覚的に理解することが可能となる。図9に示した有向グラフの表現よりも、大まかではあるが、依存度の大小が視覚的に把握可能である。しかし、領域の形状が円だけであるため、後述するTree Mapと比べると空間効率があまり良くないと言える。なお、サークルパッキングの表現では、内包される円の中にグリフなどを埋め込むことが可能である。グリフ(glyph)とは、多変量を表現した図形のことであり、スモールマルチプル(複数ビュー)などで用いられる。
【0063】
図面間の遷移について、上述した以外に以下の遷移が実装可能である。着目企業を表示した状態(図13)で、2次企業を示す円の内部にマウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、当該2次企業を部分拡大した状態(図15)へ遷移する。2次企業を部分拡大した状態(図15)で、拡大表示している2次企業を示す円、又は、当該円に内包されている3次企業を示す円の内部にマウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、着目企業を表示する初期状態(図13)へ戻る。2次企業を部分拡大した状態(図15)で、拡大表示している2次企業を示す円以外の、2次企業を示す円又は当該円に内包されている3次企業の円の内部にマウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、当該2次企業を部分拡大する状態に遷移する。2次企業を部分拡大した状態(図15)で、2次企業を示す円、及び、3次企業を示す円以外の部分にマウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、マウスポインタが位置に対応した1次企業、部分拡大した2次企業の円を内包する1次企業の円を拡大表示する状態(図14)へ戻る。1次企業の円を拡大表示する状態(図14)で、拡大表示している1次企業を示す円以外の、1次企業を示す円の内部であって、2次企業を示すいずれの円の内部でない位置に、マウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、当該1次企業を部分拡大する状態に遷移する。1次企業の円を拡大表示する状態(図14)で、拡大表示している1次企業を示す円以外の、1次企業を示す円に内包される2次企業を示す円の内部に、マウスポインタを移動させ、マウスクリックを行うと、当該2次企業を部分拡大する状態(図15)に遷移する。
【0064】
図13から図15では作図の都合で複数色を使った表現ができないが、企業の階層が把握しやすいように階層毎に色を変えてもよい。例えば、1次企業、2次企業、3次企業それぞれを示す円毎に内部の色を変えてもよい。
【0065】
(サンバースト)
図16はサンバーストによる取引関係の表現例を示す説明図である。サンバースト(Sunburst)は、取引関係を扇型で表現する手法である。図15では着目企業に対する1次企業を中心に近いドーナツ形状で示す。その外側のドーナツ形状で2次企業を、さらに外側のドーナツ形状で3次企業を示す。3次企業を示すドーナツ形状の外側のドーナツ形状で4次企業を示す。サンバーストはサンバーストチャートともいう。
【0066】
階層関係は放射状方向の隣接で表現している。ある1次企業と取引関係のある2次企業の図形は、当該1次企業の図形と接するようにしてある。
【0067】
着目企業への依存度に合わせて、各企業の面積を変えている。図16において、1次企業はA社からJ社までである。複数色での表現が可能である場合、1次企業毎、及び、各1次企業と直接又は間接的に取引のある2次企業、3次企業、4次企業を1つのグループとし、グループ毎に色を変えてもよい。図16においては、色を変えるのではなく異なるハッチングを付している。なお、図16ではA社グループ、B社グループのみにハッチングを付している。
【0068】
サンバーストによる表現においては、ドーナツ形状を分割したアーチ形状の一つ一つが取引企業を示し、中心から放射状方向の位置で、着目企業との取引関係が1次、2次、3次のいずれかであるかを示す。アーチ形状の面積は、取引関係が同じ次数であれば、その大小は、着目企業への依存度に比例している。したがって、サンバーストによる取引関係の表現により、各企業について、着目企業との取引関係、及び、着目企業への依存度を視覚的に理解することが可能となる。
【0069】
(ツリーマップ)
図17はツリーマップによる取引関係の表現例を示す説明図である。各企業を長方形領域で表し、依存度は長方形の面積で表現する。階層上位の領域に、階層下位の領域が含むようにして、取引企業間の階層関係を表現する。上位の領域を下位の重みで分割する。(上位の領域内に下位を隙間なく配置する。)そのため現在の商流圏分析で生成されるデータを厳密に可視化できない場合もある。
【0070】
図17において、太線の四角形が1次企業を、1次企業に内包される先の太さが中間の四角形が2次企業を、2次企業に内包される細線の四角形が3次企業を示している。ツリーマップにおいても、他の表現手法と同様に1次企業毎にグループ分けをして、四角形の色を変えてもよい。
【0071】
ツリーマップによる表現においては、四角形の内包関係で取引関係を、四角形の面積大小で依存度の大小を把握することが可能となる。
【0072】
(アイシクル)
図18はアイシクルによる取引関係の表現例を示す説明図である。アイシクル(Icicle)では、各取引企業を長方形で表す。左右の隣接関係で階層関係を表現する。図18では左が上位で、右が下位である。図18では長方形の高さで依存度を表現している。階層関係を上下の隣接関係で表現してもよい。この場合、依存度は長方形の幅で表現する。図18においても、他の表現手法と同様に1次企業毎にグループ分けをして、四角形の色を変えてもよい。図18では1次企業の上位2社について、異なるハッチングを付している。なお、アイシクルはアイシクルツリーともいう。
【0073】
図13から図18に示した各種の表現技法は、直感的な把握は可能であるものの、同階層での取引(図9のT2AとT2Bとの取引)や、階層を越えての取引(図9のT3BとT1Bとの取引)が表現できないことに注意が必要である。また、このような取引も考慮した依存度の大小を厳密に表現することは難しい場合が想定される。
【0074】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
100 商流圏分析システム
1 分析装置
11 制御部
12 主記憶部
13 補助記憶部
131 売上高DB
132 取引高DB
133 取引高シェアDB
14 通信部
15 読み取り部
1P 制御プログラム
2 企業情報DB
3 ユーザ端末
31 制御部
32 主記憶部
33 補助記憶部
34 通信部
35 入力部
36 表示部
3P 制御プログラム
B バス
N ネットワーク
【要約】      (修正有)
【課題】商流圏における着目企業に対する企業の依存度を算出し出力する、出力プログラム、出力装置及び出力方法を提供する。
【解決手段】分析装置、企業情報DB及びユーザ端末がネットワークにより互いに通信可能に接続されている商流圏分析システムにおいて、商流圏における着目企業に対する企業の依存度を算出し出力する出力プログラムは、リクエストから着目企業を取得するステップ、依存度を算出するためのデータ準備を行うステップ、波及度を算出するステップ、有向グラフを作成するステップ及び有向グラフをユーザ端末へ送信するステップを備える。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18