(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20220630BHJP
G02B 30/56 20200101ALI20220630BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
G02B30/56
(21)【出願番号】P 2021500934
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 CN2018095949
(87)【国際公開番号】W WO2020010641
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】201810760383.0
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521009979
【氏名又は名称】安徽省東超科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI EASPEED TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Level 1, Building A3, Chuanggu Technology Park, No. 900 Wangjiang West Road, High-Tech District, Hefei, Anhui 230088, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】範 超
(72)【発明者】
【氏名】韓 東成
(72)【発明者】
【氏名】張 亮亮
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161790(JP,A)
【文献】特開2014-81617(JP,A)
【文献】特開2012-45871(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106597583(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107831558(CN,A)
【文献】特開2018-74051(JP,A)
【文献】中国実用新案第207502759(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
G02B 1/00- 1/08
G02B 5/00- 5/136
G02B30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術であって、
(1)光学材料を矩形塊状材料に加工して、矩形塊状材料を方形平板に切断し、方形平板を、前面及び後面が互いに平行な平行平板に加工するステップと、
(2)平行平板の前面と後面のいずれかをフォトエッチング面とし、このフォトエッチング面にフォトレジスト塗布、マスク、露光処理を順に施すステップであって、露光処理の露光ブロック及び未露光ブロックは両方とも矩形であり、すべての矩形の対角線はそれぞれ前記平行平板の縁に平行であり、露光ブロックと未露光ブロックは
互いに垂直している縦方向と横方向に交差し
て配置され
、前記縦方向と前記横方向は前記平行平板の縁に対して傾いているステップと、
(3)平行平板上の未露光ブロックのフォトレジストを除去してから、該露光ブロックを深さ0.1~2mmの矩形溝に加工するステップと、
(4)露光ブロックの表面と矩形溝のすべての面に保護層を塗布し、矩形溝の側面に反射膜をメッキするステップと、
(5)露光ブロックの表面と矩形溝の底面の保護層を除去してから、溝に充填材料を充填し、平行平板の前面と後面をさらに処理して、前面と後面の平行度の偏差<1’にするステップと、
(6)この新しい平行平板の前面と後面に保護ダイアフラムを追加するステップと、を含むことを特徴とする複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【請求項2】
前記ステップ(2)における露光ブロック及び未露光ブロックのサイズは、
0.01mm<長さ<2mm、かつ、0.01mm<幅<2mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【請求項3】
前記ステップ(4)における保護層は樹脂又はフォトレジストである、ことを特徴とする請求項1に記載の複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【請求項4】
前記ステップ(4)における反射膜はアルミニウム膜である、ことを特徴とする請求項1に記載の複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【請求項5】
前記ステップ(5)における充填材料は、樹脂
又は光学ガラスである、ことを特徴とする請求項1に記載の複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【請求項6】
前記ステップ(6)における前記新しい平行平板と保護ダイアフラムとは、感光性接着剤又は感熱性接着剤で接着される、ことを特徴とする請求項1に記載の複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学製造の分野に関し、具体的には、空気結像を実現するための複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
結像表示技術の発展に伴い、結像特性の要件は増え続けている。一方では、小さな歪みの要件を満たしながら、観察された画像の鮮明さを確保するために、より高い解像度が必要である。他方では、3次元立体表示の特性が必要となるとともに、裸眼の3次元ホログラフィック表示の要件も必要である。既存の結像技術は、主にレンズを採用して結像を行うため、主に視野と開口部によって制限され、球面収差、コマ、非点収差、像面湾曲、歪み、色収差などの光学収差があり、広い視野と大開口の結像および表示の分野ではさらに制限される。一方、既存の裸眼3次元表示技術のほとんどは、実際の3次元表示技術ではなく、左眼と右眼の間の視差の調整に基づいて3次元感覚を実現するものである。ホログラフィー結像技術は、製造コストが高くなる。
【0003】
より良い表示効果と製品体験を追求するために、本発明は、3次元立体結像及び表示を実現できる等価負屈折率平板レンズの加工技術を提供し、裸眼3次元表示を実現するための等価負屈折率平板レンズのプロセスサポートを提供する。従来の光導波路の加工技術で製造されたストリップ光導波路は、光導波路間に大きな個体差がある。各表面の平行度の偏差に一貫性がないため、切断後、三次元結像に使用される、スプライスされた複数列複数行等価負屈折率平板レンズは、各行各列の配置が不規則であり、それにより、各方形光導波路による光の偏向方向が一致せず、画像の各各領域がクリッピングされる鮮明な3次元結像を実現することは困難である。
【発明の概要】
【0004】
従来技術の問題に対して、本発明は、複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術を提供する。この技術は、従来加工されたストリップ光導波路間の個体差を大幅に低減することができ、それにより、スプライスされたアレイの鮮明な三次元結像の目的を達成することができる。本発明の技術的手段は次のとおりである。
【0005】
複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術であって、
(1)光学材料を矩形塊状材料に加工して、矩形塊状材料を方形平板に切り、方形平板を、前面及び後面が互いに平行な平行平板に加工するステップと、
(2)平行平板の前面と後面のいずれかをフォトエッチング面とし、このフォトエッチング面にフォトレジスト塗布、マスク、露光処理を順に施すステップであって、露光処理の露光ブロック及び未露光ブロックは両方とも矩形であり、すべての矩形の対角線はそれぞれ前記平行平板の縁に平行であり、露光ブロックと未露光ブロックは斜めに交差して間隔で配置されるステップと、
(3)平行平板上の未露光ブロックのフォトレジストを除去してから、該露光ブロックを深さ0.1~2mmの矩形溝に加工するステップと、
(4)露光ブロックの表面と矩形溝のすべての面に保護層を塗布し、矩形溝の側面に反射膜をメッキするステップと、
(5)露光ブロックの表面と矩形溝の底面の保護層を除去してから、溝に充填材料を充填し、平行平板の前面と後面をさらに処理して、前面と後面の平行度の偏差<1’にし、新しい平行平板を取得するステップと、
(6)この新しい平行平板の前面と後面に保護ダイアフラムを追加するステップと、を含む。
【0006】
さらに、前記ステップ(2)における露光ブロック及び未露光ブロックのサイズは、0.01mm<長さ/幅<2mmである。
【0007】
さらに、前記ステップ(4)における保護層は樹脂又はフォトレジストである。
【0008】
さらに、前記ステップ(4)における反射膜はアルミニウム膜である。
【0009】
さらに、前記ステップ(5)の充填材料は樹脂又は光学ガラスである。
【0010】
さらに、前記ステップ(6)における前記新しい平行平板と保護ダイアフラムとは、感光性接着剤又は感熱性接着剤で接着される。
【0011】
図1は、本発明により得られた複数列複数行等価負屈折率平板レンズの1つの構造模式図を提供する。この平板レンズは、それぞれ2つの光学面を有する1対のガラス窓(1,3)と、2つのガラス窓の間に位置する光導波路組立体(2)とを含む。この光導波路組立体は、複数列複数行で45°の斜め方向に配置された矩形光導波路アレイと、矩形光導波路アレイの周りに配置されたエッジ光導波路とを含む。この矩形光導波路アレイの各列及び/各行の単一の矩形光導波路のサイズは同じである。このような平板レンズは、2次元や3次元の光源を空気中で直接実像にして、真のホログラフィー像を実現し、広い視野、大口径、高解像度、歪みなし、分散なしを実現しながら、裸眼3次元立体表示の特性を実現する。
【0012】
本発明の有益な効果は次のとおりである。本発明により、従来加工されたストリップ光導波路間の個体差を大幅に低減することができ、フォトエッチング法を採用して加工を行うことで、各ユニットのサイズが均一に加工され、誤差が小さく、システムの組み立て誤差が回避される。平板レンズの各結像ユニットの加工サイズをミクロンレベルに縮小できるため、平板レンズの結像解像度を大幅に向上させることができる。同時に、システムの加工誤差が非常に小さいため、結像の歪みが非常に小さく、3次元立体表示の特性や、裸眼3次元ホログラフィック表示の要件が実現され、スプライスされたアレイの鮮明な三次元結像の目的が確かに達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明により得られた複数列複数行等価負屈折率平板レンズの構造模式図である。1は第1玻璃ダイアフラム、2は光導波路組立体、3は第2玻璃ダイアフラムである。
【
図2】本発明の実施例1における方形平板の構造模式図である。4は平板の厚さ、5は平板の幅、6は平板の長さ、7は前面、8は後面である。
【
図3】本発明の実施例1における平行平板のフォトエッチング面にフォトレジストが塗布された構造模式図である。3-1は正面図、3-2は斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1における平行平板のフォトエッチング面にマスク、露光を施した構造模式図である。4-1は側面図、4-2は上面図、9は露光ブロック及び未露光ブロックのサイズである。
【
図5】本発明の実施例1における平行平板の表面の溝の構造模式図である。5-1は、平行平板上の未露光ブロックのフォトレジストが除去された斜視図であり、5-2は、平行平板で加工し得られた矩形溝の正面図であり、10は溝の側面である。
【
図6】本発明の実施例1における平行平板に保護層が塗布され、反射膜がメッキされた構造模式図である。11は露光ブロックの表面であり、12は溝の底面である。
【
図7】本発明の実施例1における平行平板の保護層が除去された構造模式図である。
【
図8】本発明の実施例1における平行平板の溝が充填された構造模式図である。
【
図9】本発明の実施例1における新しい平行平板の構造模式図である。
【
図10】光が光導波路内で反射され、集束されて結像される原理図である。Aは物体空間、Bは画像空間である。
【
図11】オブジェクト側の光が単一のマイクロレンズ内で反射されて画像面に伝播される原理図である。11-1は光伝播の側面図、11-2は光伝播の左側面図である。 注:以上の図における五角星は、簡単な画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。以下の説明は、本発明の解釈であり、限定ではない。
【0015】
<実施例1>
本実施例は、複数列複数行等価負屈折率平板レンズの加工技術を提供する。この技術は、次のステップ(1)~(6)を含む。
(1)光学材料を矩形塊状材料に加工し、矩形塊状材料を方形平板に切断する。構造は
図2に示す。サイズは、10mm<長さ(6)<100mm、10mm<幅(5)<100mm、1mm<厚さ(4)<6mmである。方形平板の前面8及び後面9を互いに平行にするように研磨する。
【0016】
(2)平行平板の前面と後面のいずれかをフォトエッチング面として、このフォトエッチング面にフォトレジスト塗布(
図3に示す)、マスク、露光処理を順に施す。露光処理された露光ブロック及び未露光ブロックは両方とも矩形である。露光ブロックと未露光ブロックは、縦列及び横列の形で交差して間隔で配置され(
図4に示す)、サイズ9は、0.01mm<長さ<2mm、及び0.01mm<幅<2mmを満たす。
【0017】
(3)平行平板上の未露光ブロックのフォトレジストを除去してから、未露光ブロックを深さ0.1~2mmの矩形溝に加工する(
図5に示す)。
【0018】
(4)露光ブロックの表面及び矩形溝のすべての面に樹脂保護層を塗布し、次に、全反射面の代わりに、矩形溝の側面にアルミニウム反射膜をメッキする(
図6に示す)。
【0019】
(5)露光ブロックの表面と矩形溝の底面の樹脂保護層を除去した(
図7に示す)後、射出成形により溝に光学ガラスを充填する(
図8に示す)。平行平板の前面と後面をさらに処理して、前面と後面の平行度の偏差<1’にして、新しい平行平板を取得し、その構造は
図9に示される。
【0020】
(6)この新しい平行平板の前面と後面に保護ダイアフラムを追加して、
図1に示すような複数列複数行等価負屈折率平板レンズを取得する。保護ダイアフラムと平板レンズは、感光性接着剤又は感熱性接着剤で接着される。
【0021】
該複数列複数行等価負屈折率平板レンズは、中国特許出願第201711305662 X号で開示されている。
【0022】
<実施例2>
実施例1で取得された複数列複数行等価負屈折率平板レンズの結像原理を以下に説明する。
本発明に係るコア結像素子は、
図9に示される複数列複数行等価負屈折率光導波路アレイ平板であり、物体空間と画像空間のポイントツーポイントの、収差のない結像を実現することができる。具体的な原理は
図10に示される。A側の物体空間からの光は、等価負屈折率平板レンズの光導波路内で反射され、1回以上の反射がある。光ビームは、B側の画像空間に伝達されるとともに、ミラーリング光に変調され、再収束され結像する。
図11は、物体空間からの光が、平板レンズの単一のマイクロレンズ内で反射され変調されて、画像空間に到達する原理図を示す。変調の原理は次のとおりである。光が単一のマイクロレンズを通過すると、直角平面内の光の成分が180°回転し、直角平面に垂直な成分が反射鏡の反射方向に沿って伝播される。X¥Y面は直角平面、X¥Z平面は直角平面に垂直な平面である。この結像原理の最終的な結像効果は、負屈折率材料で作られた平板レンズと一致する(
図9を参照)。
【0023】
要約すれば、本発明により、従来加工されたストリップ光導波路間の個体差を大幅に低減することができ、フォトエッチング法を採用して加工を行うことで、各ユニットのサイズが均一に加工され、誤差が小さく、システムの組み立て誤差が回避される。平板レンズの各結像ユニットの加工サイズをミクロンレベルに縮小できるため、平板レンズの結像解像度を大幅に向上させることができる。同時に、システムの加工誤差が非常に小さいため、結像の歪みが非常に小さく、3次元立体表示の特性や、裸眼3次元ホログラフィック表示の要件が実現され、スプライスされたアレイの鮮明な三次元結像の目的が確かに達成される。
【0024】
本発明の実施例は上に示され説明されたが、上記の実施例は例示的なものであり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではないことが理解され得る。当業者は、本発明の範囲内で上記の実施例に変化、修正、置換、及び変更を行うことができる。