(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】洗掘防止ユニットおよび洗掘防止方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
E02B3/04 301
(21)【出願番号】P 2019570246
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004639
(87)【国際公開番号】W WO2019155612
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392031572
【氏名又は名称】キョーワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守山 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】小田 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 茂
(72)【発明者】
【氏名】梶原 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕紀
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-021123(JP,A)
【文献】特開2015-218552(JP,A)
【文献】特開2016-079554(JP,A)
【文献】特開2017-227056(JP,A)
【文献】特開平11-241326(JP,A)
【文献】特開2018-155040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状物を袋材に収容した袋体と、
前記袋体と一体化された布とを含み、
前記布は、前記袋体の外部において、前記袋体の下部に
着脱自在な固定手段で固定され、
前記布はメッシュ状のシートであり、前記メッシュ状のシートの大きさは2mm以下である、洗掘防止ユニット。
【請求項2】
前記布は織物、編み物(メリヤス生地)、レース、フェルト、不織布の繊維を薄く広い板状に加工したものである、請求項1に記載の洗掘防止ユニット。
【請求項3】
塊状物を袋材に収容した袋体と、
前記袋体と一体化された布とを含み、
前記布は、前記袋材に収容され前記塊状物の下部に敷かれるとともに、前記袋体の外部において、前記袋体の下部に固定手段で固定される、洗掘防止ユニット。
【請求項4】
塊状物を袋材に収容した袋体を準備するステップと、
袋体と布とを一体化するステップを含む、洗掘防止方法であって、
袋体と布とを一体化するステップは、
布を袋材に収容して
、袋体の外部において、袋体の下部に
着脱自在な固定手段で固定するステップを含み、
布はメッシュ状のシートであり、メッシュの大きさは2mm以下である、洗掘防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗掘防止ユニットに関し、特に、洋上風力発電の風車基礎の洗掘防止に使用される洗掘防止ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川及び堤防の洗掘防止のために、吸出し防止シートを用いて構造体を構成する方法が提供されており、それが例えば、特開2001-262577号公報(特許文献1)や、特開2002-121720号公報(特許文献2)や、特開2015-31148号公報(特許文献3)に開示されている。
【0003】
特許文献1によれば、支保枠に吸出し防止シートを正確、堅固に据え付け、基礎地盤に敷設した吸出し防止シート上に、巨大積み工(2立方メートル程度以上の容積を持つ長方形型又は長円形型をした土嚢積み工、籠積み工等をさす)を設置して機械化施工し、さらに支保枠と吸出し防止シートで完全分離された積み工部と盛土部とを同時施工して工期の短縮をはかる、構成を開示している。
【0004】
特許文献2によれば、堤体の川裏側に、粗粒フィルター材が鋼製組立網に充填されてなる充填篭によって堤体の浸透水を流入させる篭製ドレーン部を形成し、この篭製ドレーン部と裏法尻の堤脚水路との間の基礎地盤に粗粒フィルター材を敷き詰めてドレーン層を形成し、この篭製ドレーン部及びドレーン層の上を堤体土で覆い、篭製ドレーン部に流入した浸透水を、ドレーン層を通して堤脚水路に導く構成を開示している。
【0005】
特許文献3によれば、堤体の天端被覆コンクリート内に設置される外筒体と、通常は、外筒体の上端開口を密閉する蓋体と、外筒体内に堤体土の沈下に伴い沈下する沈下板と逆止弁とを備え、蓋体が、水位の上昇によって堤防が受ける揚圧力により、外筒体内部に生じる圧縮空気により吹き飛ばされて離脱可能とする構成を開示している。
【0006】
一方で、吸出し防止シートを用いない従来の砕石を投入した袋体のみを用いた場合もある。この場合について具体的に説明する。
図7は吸出し防止シートを用いることなく、砕石のみを投入した袋体101を、河川110における橋脚の根本に設置した場合を示している。また
図8は河川110の護岸の為に砕石のみを投入した袋体102を川底に設置した場合の、それぞれ断面図を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-262577号公報(要約等)
【文献】特開2002-171720号公報(要約等)
【文献】特開2015-031148号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の洗掘防止用の砕石のみを投入した袋体は、上記のように構成されて、川底112に載置されていた。川底112の場合、平素からの川の水流により微細な粒子の土砂は流されており、一定以上の大きさの粒子の土砂のみが残っている為、砕石のみを投入した従来型の袋体を設置するだけで洗掘防護の機能が果たされている。
【0009】
図9(A)~
図9(C)は、従来の砕石のみを投入した袋体101を海底で使用した場合の問題点を説明するための図である。
図9(A)は海底120の粘土層121の表面121aの上に砂層122がある場合の,砂層122の表面122a上に砕石のみを投入した袋体101が載置された最初の状態を示し、
図9(B)は所定期間経過後を示し、
図9(C)は最終的な載置状態を示す図である。海底に設置された構造物の周囲を
図9(A)の様に洗掘防護を目的として従来型の砕石のみを投入した袋体101を設置する場合、海底には微細な粒子の砂が堆積して砂層122を形成している為、時間の経過とともに、
図9(B)の様に袋体101の上を流れる潮流124によって袋体101下部から砂層122の砂がその上に吸い上げられ(図中矢印中の曲線で示す)、更に時間が経過すると
図9(C)の様に、砂が無くなった結果、砕石のみを投入した袋体101が粘土層121まで下がってしまい、海底構造物123を鉛直に支持できずに、海底構造物123が傾斜してしまうという問題があった(なお、
図9(C)において、元の砂層の表面122aを点線で、また、海面を125で示す)。
【0010】
また、単に個別に砕石を撒く方法であれば、小規模な工事の場合に余計な時間と費用がかかり、また潮流が速く波が高い環境下においては砕石が流されてしまい洗掘防止ができなくなるという問題があった。
【0011】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、砕石等の塊状物を収容した袋体のような洗掘防止ユニットの載置面の下部からの砂の浸透が生じない洗掘防止ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る、洗掘防止ユニットは、塊状物を袋材に収容した袋体と、袋体と一体化された布とを含む。布は、袋体に収容された塊状物の下部に敷かれるか、または、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段を介して固定される。
【0013】
好ましくは、布は織物、編み物(メリヤス生地)、レース、フェルト、不織布の繊維を薄く広い板状に加工したものである。
【0014】
この発明の他の局面においては、洗掘防止ユニットは、塊状物を袋材に収容した袋体と、袋体と一体化された布とを含み、布は、袋材に収容された塊状物の下部に敷かれるとともに、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段で固定される。
【0015】
この発明の他の局面においては、洗掘防止方法は、塊状物を袋材に収容した袋体を準備するステップと、袋体と布とを一体化するステップを含む。袋体と布とを一体化するステップは、布を袋材に収容して塊状物の下部に敷くか、または、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段で固定するステップを含む。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、布を袋材に収容して塊状物の下部に敷くか、または、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段で固定するため、袋体を砂地の上に載置しても、砂が袋体を介して上部に浸透することはない。
【0017】
その結果、砕石のような塊状物を含む袋体の載置面の下部からの砂の吸出しが生じない洗掘防止ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の一実施の形態に係る洗掘防止ユニットの第1の実施の形態を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態の洗掘防止ユニットの設置状態を示す平面図である。
【
図3】この発明の一実施の形態に係る洗掘防止ユニットの第2の実施の形態を示す模式図である。
【
図4】第2の実施の形態の洗掘防止ユニットの設置状態を示す平面図である。
【
図5】第2の実施の形態の洗掘防止ユニットの設置状態を示す側面図である。
【
図6】第2の実施の形態の洗掘防止ユニットの具体的な設置状態を示す図である。
【
図7】従来の砕石のみが投入された袋体の設置例を示す図である。
【
図8】従来の砕石のみが投入された袋体の設置例を示す図である。
【
図9】従来の砕石のみが投入された袋体の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。この発明の実施の形態においては、洗掘防止ユニット10は、複数の砕石のような塊状物12を袋材13に収容した袋体11と、袋体11と一体化された布16とを含む。ここで、布とは多数の繊維を薄く広い板状に加工したものを指す。作り方によって、織物、編み物(メリヤス生地)、レース、フェルト、不織布に分けられる。
【0020】
塊状物は、砕石、コンクリート塊、玉石、割り栗石、鉄鉱石、ゴムタイヤ等で、比重1を超えるものであって、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2.0以上のものをいう。また、袋材は網で構成されるものをいう。
【0021】
図1は、第1の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10aを示す模式図である。
図1(A)は断面図であり、
図1(B)は斜視図である。
図1(A)および
図1(B)を参照して、洗掘防止ユニット10aは、布16が、塊状物12を袋材13に収容した袋体11に収容されて、塊状物12の下部に敷かれた状態で、海底に載置される。なお、
図1(B)においては、布16は袋体11の載置平面より大きくして、その一部が、上方から見えている状態を表示する。なお、
図1(B)においては、布16の一部16aが内部の塊状物を覆っている部分は白で示しており、中央部に塊状物12を示し、全体をメッシュ状の袋材13で覆った状態を示している。
【0022】
これは、布16が、塊状物12の下部に確実に収容されるように、また、布16が袋体11の内部で移動しないように、布16を袋体11に対して固定するためにも好ましい。なお、袋体11に布を固定するために、例えば、布16の四隅の端部、または、その近傍にフック付の紐を設け、このフックを袋体11の所定の箇所に固定するようにしてもよい。また、布16は袋体11の載置平面(後に説明する、
図2(B)において洗掘防止ユニット10aの円形の投影面)より大きくするのが好ましい。
【0023】
このように構成することによって、袋体11の内部で塊状物12が布16の上に載置されて保持されるため、袋体を砂地の上に載置しても、砂が袋体を介して上部に浸透することはない。
【0024】
その結果、砕石を含む袋体の載置面の下部からの砂の吸出しが生じない洗掘防止ユニットを提供できる。
【0025】
次に、第1の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10aを複数設置する場合の設置方法について説明する。
図2(A)は従来の袋体101の設置方法を示す平面図であり、
図2(B)はこの実施の形態における洗掘防止ユニット10aの設置方法を示す平面図である。従来の袋体101を複数設置する場合は、
図2(A)に示すようにその外周部が接触するように、相互に重複部分が無いように海底に配置された。これに対して、第1の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10aを複数設置する場合は、
図2(B)に示すように複数の洗掘防止ユニット10aが相互に重なるように海底120に配置される。
図2(C)は、
図2(B)において、IIC-IICで示した断面図である。
【0026】
このように配置することにより、海底からの砂の吸い出しをより効果的に防止できる。
【0027】
次に、第2の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10bについて説明する。
図3は、第2の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10bを示す模式図である。
図3(A)は断面図であり、
図3(B)は
図3(A)において、塊状物12を含む袋体11と布16との固定部分の詳細を示す図である。
【0028】
図3(A)および(B)を参照して、この実施の形態においては、塊状物12を含む袋体11の下部に布16が固定手段18で一体化されて固定される。ここで、固定手段18は、袋体11の外周に取り付けるフック19を先端に有する取付紐20を含み、取付紐20のフック19を取り付けていない端部に布16の一部と固定する固定部21を有する。ここで、固定手段18は、1個の袋体11について1個設けているが、この数は必要に応じて増やしてもよい。
【0029】
この実施の形態においては、洗掘防止ユニット10bは、布16が、固定手段18で袋体11の下部に一体的に設けられるため、塊状物12の下部に敷かれた状態で海底に載置される。袋体11を砂地の上に載置しても、布16がその下部にあるため、砂が袋体11を介して上部に浸透することはない。その結果、塊状物12を含む袋体11の載置面の下部からの砂の吸出しが生じない洗掘防止ユニットを提供できる。
【0030】
なお、布16は透水性であるほうが好ましいため、不織布やメッシュ状のシートのものが好ましい。メッシュ状の場合は、メッシュの目の大きさは5mmが好ましく、より好ましくは2mm以下である。
【0031】
次に、第2の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10bを設置する場合の設置方法について説明する。
図4(A)は洗掘防止ユニット10の下部に配置される矩形の布16を示す平面図であり、
図4(B)は
図4(A)に示した矩形の布16の上に饅頭状の袋体11を配置した状態を示す平面図であり、
図4(C)は矩形の布16の上に3つの袋体11を隣接して配置した場合の平面図である。また、
図4(C)の配置の断面図を
図5に示す。
【0032】
図4および
図5を参照して、この実施の形態においては、複数の袋体11aが1枚の布16aの上に載置されているため、複数の袋体11を一度に載置可能である。なお、この場合、複数の袋体11の各々が、
図3(B)で示したような固定手段を用いて個別に矩形の布16の上に固定されるのが好ましい。なお、3つの袋体をあらかじめ横方向に連結しておき、それを、布に固定してもよい。
【0033】
また、ここでは、1枚の矩形の布に3つの袋体を隣接して配置する場合について説明したが、これに限らず、2つでもよいし、4つ以上を並べてもよい。さらに、一方向に連続して並べる場合について説明したが、これに限らず、縦横方向にアレイ状に配列してもよい。
【0034】
次に、第3の実施の形態に係る洗掘防止ユニット10bを設置する場合の設置方法について説明する。
図6(A)は洗掘防止ユニット10の下部に配置される三角形状の布16bを示す平面図であり、
図6(B)は
図6(A)に示した三角形状の布16bの上に饅頭状の袋体11を配置した状態を示す断面図である。
図6(A)および(B)に示すように、三角形状の布16b上にそれぞれ、3つの袋体11bを隣接して配置している。ここでも、複数の袋体11aが1枚の布16bの上に載置されているため、複数の袋体11bを一度に載置可能である。なお、この場合、複数の袋体11の各々が、
図3(B)で示したような固定手段を用いて個別に三角形状の布16bの上に固定されるのが好ましい。なお、3つの袋体をあらかじめ隣接側面で連結しておき、それを、布16bに固定してもよい。
【0035】
また、ここでは、1枚の三角形状の布に3つの袋体を上に1つ、下に2つ隣接して配置する場合について説明したが、これに限らず、任意の多角形状を用いてもよいし、円形状の布を用いてその上に、任意の数の袋体を並べてもよい。
【0036】
このように袋体11を布16の上に配置することにより、先の実施の形態と同様に、海底からの砂の吸い出しを効果的に防止できる。
【0037】
また、この実施の形態においては、所望の任意の形状の布を準備し、その上に、任意の数の袋体を固定することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、洗掘防止ユニットにおいては、布は、袋材に収容され塊状物の下部に敷かれるか、または、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段で固定される場合について説明したが、これに限らず、布を、袋材に収容され塊状物の下部に敷くとともに、袋体の外部において、袋体の下部に固定手段で固定してもよい。このような構成にすれば、より、海底からの砂の吸い出しを効果的に防止できる。
【0039】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明によると、載置面の下部からの砂の吸い出しが生じない洗掘防止ユニットを提供できるため、洗掘防止用の設備として有利に利用される。
【符号の説明】
【0041】
10 洗掘防止ユニット、11 袋体、12 塊状物、13 袋材、16 布、18 固定手段、120 海底。