(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】監視装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220701BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20220701BHJP
【FI】
G01C15/00 104A
G01S17/89
G01C15/00 103A
(21)【出願番号】P 2018007213
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510222006
【氏名又は名称】株式会社バイオネット研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤川 保
(72)【発明者】
【氏名】京免 継彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 正巳
(72)【発明者】
【氏名】黒田 千歳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆朗
(72)【発明者】
【氏名】江口 純一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 由夫
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-194112(JP,A)
【文献】特開2006-045678(JP,A)
【文献】特開2016-008399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの切羽面、道路建設のための切土法面、又は土木構造物、地山の表面を、測定対象である測定面とし、当該測定面に発生した異常を検知して警報を発する監視装置であって、
前記
測定面に面して設置され、自身と前記
測定面における複数の測定点までの距離を非接触で測定して出力する測距部と、
前記
測定面において指定された一領域となる測定対象領域に対する前記測距部による測定を複数の時点で行わせ、
2つの異なる時点での前記測定面における前記複数の測定点で構成される3次元多面体の体積を算出し、当該体積、当該体積の前記測定対象領域の単位面積当たりの値、当該体積の前記2つの異なる時点の間の時間平均値、当該時間平均値の前記測定対象領域の単位面積当たりの値、のうちのいずれか評価数値とし、当該評価数値に基づいて、前記計測対象に異常があると判定する制御部と、
前記制御部が前記計測対象に異常があると判定した場合に、前記測定面から離間した箇所にいる作業者に警報を発する警報部と、
を具備することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記測距部は、パルス状の光を発振して前記
測定面に対して照射した際の反射光を受光したタイミングと前記光の発振タイミングとの時間差から前記距離を前記複数の測定点において面的に測定することを特徴とする請求項
1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記
測定面における前記複数の測定点までについて測定された前記距離を画像化した距離画像を表示する表示部を具備することを特徴とする請求項1
又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記評価数値を、濃淡又は色で表示することを特徴とする請求項
3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記
測定面における前記複数の測定点の異なる時点からの変位を認識し、
前記表示部は、前記変位又は前記変位の時間変化率を前記複数の測定点毎に濃淡又は色で表示した2次元画像化して表示することを特徴とする請求項
3又は4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記複数の測定点が平面を構成するとした場合における当該平面を基準として前記変位によって構成される面を表示することを特徴とする請求項
3から請求項
5までのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記測定対象領域は、前記表示部で表示された前記距離画像中で指定される構成とされたことを特徴とする請求項
3から請求項
6までのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項8】
前記
測定面の光学的な画像を撮像し、前記測距部との間の位置関係が固定された光学撮像部を具備し、
前記表示部は、前記光学撮像部で得られた前記画像である光学画像を表示し、
前記測定対象領域は、前記表示部で表示された前記光学画像中で指定される構成とされたことを特徴とする請求項
3から請求項
7までのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項9】
離間した箇所に設置された複数の前記測距部を具備し、
前記測定対象領域は複数の前記測距部の各々毎に設定されたことを特徴とする請求項1から請求項
8までのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記計測対象に異常があると判定した場合に、ネットワークを介して接続されたコンピュータに前記ネットワークを介して警報を発することを特徴とする請求項1から請求項
9までのいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項11】
計測対象に発生した異常を検知して警報を発する監視方法であって、
前記計測対象の表面における一領域となる測定対象領域を設定する設定工程と、
前記測定対象領域内の前記表面の複数の測定点までの距離を非接触で測定し、
2つの異なる時点での前記表面における前記複数の測定点で構成される3次元多面体の体積を算出し、当該体積又は当該体積の前記測定対象領域の単位面積当たりの値に基づいて、前記計測対象に異常があると判定する判定工程と、
を具備することを特徴とする監視方法。
【請求項12】
前記判定工程において、パルス状の光を発振して前記表面に対して照射した際の反射光を受光したタイミングと前記光の発振タイミングとの時間差から前記距離を測定することを特徴とする請求項
11に記載の監視方法。
【請求項13】
前記設定工程において、
前記表面における前記複数の測定点までについて測定された前記距離を画像化した距離画像を表示し、前記距離画像中において前記測定対象領域を表示させることを特徴とする請求項
11又は12に記載の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等に代表される土木構造物や土木工事に伴って出現する地山等の安全性を無人で監視するための監視装置、監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内の安全を確保することは、車両等の通行を安全に行わせるために重要である。このため、自動的にトンネルの内部の状態を監視し、異常が発生したと認識された場合には、自動的に警報を発するシステムが用いられることがある。こうした状況は、トンネルに限らず、他の土木構造物および土木工事に伴って出現する地山等についても同様である。
【0003】
特許文献1には、トンネル内部の壁面を撮像する撮像装置と、レーザー光を壁面に照射して測距を行うレーザー測距装置とを移動体(車両等)に設置し、この移動体をトンネル内で走行させることによって、壁面の状態をモニターするシステムが記載されている。このシステムは、車両が通行するトンネルの安全性の確保することを目的としており、レーザー光がこの装置と壁面との距離を移動体の走行に応じて測定することによって、例えば壁面における亀裂等を認識することができる。
【0004】
特許文献2には、トンネルの内壁に小さなLED(発光ダイオード)素子を分布させて配置し、その発光の画像を単体の撮像素子を用いて撮像し、この画像中における発光点(LED)の間隔の変動をモニターすることによって、トンネルの異常の有無を判定するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-347585号公報
【文献】特開2009-300324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
監視をすべき対象となるトンネルが実際に使用されている場合には、上記のような技術を容易に適用することができる。一方、監視すべき対象としては、実際に車両等が通行しているトンネル以外にも、工事中であるトンネルもある。トンネルが工事中のものである場合には、完成後のトンネルと比較してその壁面、特に切羽面の状態は不安定であり、特に崩落等が発生しやすいため、工事作業者の安全確保のためには、同様のモニターをすることが望まれる。例えば、こうしたモニターを工事の中断中(夜間)に行い、この際に異常が認められれば即時に警報を発すれば、工事の再開時(翌朝)において作業者がこの警報を認識し、注意することができる。
【0007】
このようなトンネルにおいては、例えばその内部を車両等が通行できない場合も多いため、特許文献1に記載のシステムを適用することは困難であった。また、夜間において自動的に監視を行わせるためには、このためのシステムが小型かつ低消費電力であることが要求されるが、この点に対しても、特許文献1に記載のシステムは適さなかった。また、特に夜間のトンネル内においては、この測定のためには十分な照度をもつ照明も必要となり、この点からもこのシステムを低消費電力とすることが困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載のシステムを実現するためには、多くのLEDを壁面に設置する必要があるが、特に工事中のトンネルにおいてモニターすべき切羽面は、工事の進行に伴ってその位置、状態が時間の進行とともに変動するために、壁面に多くのLEDを固定することは実質的には不可能である。このため、特許文献2に記載のシステムを適用することも困難であった。
【0009】
このように工事作業者の安全を確保するために異常を自動的に検知して警報を発する技術は、トンネルに対してだけでなく、道路建設のための切土法面等、一般的な土木構造物および地山においても同様に望まれた。このため、小型、単純な構成で土木構造物、地山等の計測対象の安全性を自動的に調べるための技術が求められた。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の監視装置は、トンネルの切羽面、道路建設のための切土法面、又は土木構造物、地山の表面を、測定対象である測定面とし、当該測定面に発生した異常を検知して警報を発する監視装置であって、前記測定面に面して設置され、自身と前記測定面における複数の測定点までの距離を非接触で測定して出力する測距部と、前記測定面において指定された一領域となる測定対象領域に対する前記測距部による測定を複数の時点で行わせ、2つの異なる時点での前記測定面における前記複数の測定点で構成される3次元多面体の体積を算出し、当該体積、当該体積の前記測定対象領域の単位面積当たりの値、当該体積の前記2つの異なる時点の間の時間平均値、当該時間平均値の前記測定対象領域の単位面積当たりの値、のうちのいずれか評価数値とし、当該評価数値に基づいて、前記計測対象に異常があると判定する制御部と、前記制御部が前記計測対象に異常があると判定した場合に、前記測定面から離間した箇所にいる作業者に警報を発する警報部と、を具備することを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記測距部は、パルス状の光を発振して前記測定面に対して照射した際の反射光を受光したタイミングと前記光の発振タイミングとの時間差から前記距離を前記複数の測定点において面的に測定することを特徴とする。
本発明の監視装置は、前記測定面における前記複数の測定点までについて測定された前記距離を画像化した距離画像を表示する表示部を具備することを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記表示部は、前記評価数値を、濃淡又は色で表示することを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記制御部は、前記測定面における前記複数の測定点の異なる時点からの変位を認識し、前記表示部は、前記変位又は前記変位の時間変化率を前記複数の測定点毎に濃淡又は色で表示した2次元画像化して表示することを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記表示部は、前記複数の測定点が平面を構成するとした場合における当該平面を基準として前記変位によって構成される面を表示することを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記測定対象領域は、前記表示部で表示された前記距離画像中で指定される構成とされたことを特徴とする。
本発明の監視装置は、前記測定面の光学的な画像を撮像し、前記測距部との間の位置関係が固定された光学撮像部を具備し、前記表示部は、前記光学撮像部で得られた前記画像である光学画像を表示し、前記測定対象領域は、前記表示部で表示された前記光学画像中で指定される構成とされたことを特徴とする。
本発明の監視装置は、離間した箇所に設置された複数の前記測距部を具備し、前記測定対象領域は複数の前記測距部の各々毎に設定されたことを特徴とする。
本発明の監視装置において、前記制御部は、前記計測対象に異常があると判定した場合に、ネットワークを介して接続されたコンピュータに前記ネットワークを介して警報を発することを特徴とする。
本発明の監視方法は、計測対象に発生した異常を検知して警報を発する監視方法であって、前記計測対象の表面における一領域となる測定対象領域を設定する設定工程と、前記測定対象領域内の前記表面の複数の測定点までの距離を非接触で測定し、2つの異なる時点での前記表面における前記複数の測定点で構成される3次元多面体の体積を算出し、当該体積又は当該体積の前記測定対象領域の単位面積当たりの値に基づいて、前記計測対象に異常があると判定する判定工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の監視方法は、前記判定工程において、パルス状の光を発振して前記表面に対して照射した際の反射光を受光したタイミングと前記光の発振タイミングとの時間差から前記距離を測定することを特徴とする。
本発明の監視方法は、前記設定工程において、前記表面における前記複数の測定点までについて測定された前記距離を画像化した距離画像を表示し、前記距離画像中において前記測定対象領域を表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、小型、単純な構成で計測対象の安全性を自動的に調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る監視装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る監視装置が使用される際の形態を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る監視方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係る監視方法の設定工程において表示される画像の一例である。
【
図5】計測対象となる面とその上の測定点の変化の状況(その1)と、これに応じて算出される値を模式的に示す図である。
【
図6】計測対象となる面とその上の測定点の変化の状況(その2)と、これに応じた表示方式の例を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る監視方法において、測定対象における体積的変化を算出する原理を説明する図(その1)である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る監視方法において、測定対象における体積的変化を算出する原理を説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る監視装置について説明する。ここで監視の対象となる計測対象は、表面の変状、特にその形状の変化によってその異常の発生の有無を認識できるものであり、ここでは工事中のトンネルであるものとする。
図1は、この監視装置1の構成を示すブロック図である。ここでは、測距撮像部(測距部)10が用いられる。測距撮像部10としては、監視の対象となる表面における複数の点までの距離を非接触で測定可能なのものが用いられる。具体的には、測距撮像部10としては、測定対象に対してパルス状の光を照射し、その測定対象からの反射光(拡散反射光)の受光タイミングと光の発振タイミングのずれ(遅延時間)より測定対象までの距離を認識し、この距離を2次元画像化して出力するTOF(Time Of Flight)カメラが用いられる。光は1nsの間に30cm進行するため、0.1ns程度の時間分解能により、数cm程度の空間(距離)分解能が得られる。TOFカメラの詳細については、例えばURL: http://www.baslerweb.com/jp/products/cameras/3d-cameras/time-of-flight-camera/に記載されている。TOFカメラにおいては、例えば10m程度の距離におけるmm単位の変動を識別することが可能である。
【0015】
ここで主に使用される光は近赤外光(例えば波長が850nm)であり、この場合には可視光等の照明の影響を受けにくいため、上記の距離の測定を高精度で行うことができ、上記の距離の変動をその位相の変動として認識することができる。また、この波長の光を発する光源としては、LED(発光ダイオード素子)を用いており、制御されたパルス状に光を発振させることができ、かつ、測距撮像部10を小型とすることができる。また、制御されたパルス状の光は多数回にわたり発振し、その都度上記の遅延時間を測定し、その統計的処理(例えば時間的平均化)を行うことによって、高精度に距離が算出される。各測定点毎にこのような距離が算出され、各点とその距離を対応付けた点群データが制御部20側に出力され、この点群データから、測定された距離を2次元の画像(距離画像)とすることができる。
【0016】
制御部20は、例えばパーソナルコンピュータであり、測距撮像部10に上記の動作を行わせ、かつその測定結果となる点群データを受け取る。その測定結果に応じて、測定対象に異常が発生したか否かを判定する。制御部20には、例えば上記のように測定された距離を2次元画像化して表示するディスプレイと、制御部20を操作するための操作キー等が設けられた表示操作部(表示部)30も接続される。ユーザは、表示操作部30を目視して操作することによって、この監視装置1を操作することができる。また、以下に説明する各種の動作を行うにあたり使用される各種のデータを記憶する記憶部21(ハードディスク、フラッシュメモリ等)も制御部20に接続される。制御部20、表示操作部30、記憶部21としては、これらが一体化された小型軽量のタブレット型のパーソナルコンピュータを用いてもよい。
【0017】
制御部20には、異常が認められた際に警報を発する警報部40も接続されている。警報部40において警報を発する手段としては、警告灯(回転灯)を動作させること等、照明光のないトンネル内でも警報として使用可能なものが用いられる。また、制御部20は、ネットワークを介して遠隔地にある他のコンピュータ(サーバ90や携帯端末91等)と接続可能とされる。また、上記の構成に電力を供給するための電源部50が設けられている。電源部50においては、電源として、蓄電池51、商用交流電源52が切替可能で使用できる。
【0018】
図1の構成において、特に測距撮像部10は、測定対象に面して固定して設置される。
図2はこの形態を示す図であり、ここでは、測定対象はトンネル(正確にはトンネルの内壁(切羽面)S)であるため、小型の測距撮像部10は、トンネルの路盤Gの上に設置された架台11において、水平方向、あるいは更に垂直方向における位置が調整可能とされて装着される。また、測距撮像部10の視野方向の方位角、仰角も調整可能とさるため、測距撮像部10は、トンネルの内壁Sをほぼ全域にわたり視野の対象とすることができる。また、警報部40も、同様にトンネル内に設置される。一方、制御部20、表示操作部30については、これらを測距撮像部10と同様にトンネル内に設置してもよく、制御部20と測距撮像部10、警報部40との間を長いケーブル線またはネットワークを介して接続した状態で、これらをトンネルの外部に設置してもよい。
【0019】
測距撮像部10によって、内壁Sにおける2次元上に分布した複数の測定点までの距離を測定することができる。このため、この各測定点毎に測定された距離を各測定点に対応した箇所で濃淡で表示した2次元画像(距離画像)を作成することができ、表示操作部30で、この2次元画像を表示させることができる。この際、後述するように、通常の可視光による2次元画像(光学画像)を距離画像と同時に表示させることもできる。
【0020】
また、制御部20は、このような距離画像を表示操作部30で表示させ、カーソル等を用いて、その中の任意の位置の一領域を使用者に設定させることができ、この一領域(測定対象領域)における距離の時間変化をモニターし、この変化がある一定の範囲を超えた場合に、内壁S(トンネル)に異常が発生したと認識することができる。
【0021】
以下に、この監視装置1における制御部20(より具体的には制御部20におけるCPU)の動作(監視方法)について説明する。
図3は、この動作の概要を示すフローチャートである。この動作は、監視を実際に行うための監視モードの動作と、そのための準備を行うための設定モードの動作に2分される。
【0022】
まず、制御部20は、ユーザに対して、モニターをするべき領域(測定対象領域)を設定させる動作モード(設定モード)の動作を行う(S1)。この際に、制御部20は、測距撮像部10で得られた距離の2次元画像(距離画像)を表示操作部30で表示させることができる。この2次元画像は、前記のように距離の遠近がドットの濃淡や色で表現された画像となるため、ユーザが目視によって得る可視光の2次元画像とは異なる点もあるものの、一般的には、可視光の画像と対応付けることが可能である。ユーザは、表示操作部30の操作キーを操作し、この画像中の任意の位置の一領域を測定対象領域として設定することができる。この操作を行う際には、
図2の構成において、測距撮像部10の架台11に対する位置や方位角、仰角を調整することにより、内壁Sにおける大部分の距離画像を得ることができ、その中で測定対象領域を任意の位置に設定することができる(設定工程:S2)。
【0023】
また、このために、測距撮像部10と重複する領域を同時に可視光で撮像することのできる撮像部(光学撮像部)を測距撮像部10と一体化して用い、これによる可視光の画像(光学画像)を上記の距離画像と共に表示させてもよい。この場合においては、光学撮像部と測距撮像部10の位置関係が固定されていれば、制御部20は、距離画像中の各点と光学画像中の各点との間の対応関係を予め記憶しておくことができる。このため、上記のような測定対象領域の設定を距離画像中で行わせる代わりに、この光学画像中で行わせることもできる。この場合には、測定対象領域は、光学画像と距離画像の中で同時に表示させることが好ましい。光学撮像部での撮像に用いられる光としては、可視光に限らず、赤外線等、小型の光学撮像部で撮像することが可能なものを用いることができる。
【0024】
図4は、この場合における表示操作部30で表示される画像の一例である。ここでは、
図1における内壁(切羽面)Sの距離画像が表示され、その中の矩形領域として測定対象領域Rが示されている。測定対象領域Rの大きさ、位置、形状は、操作キーを用いて設定される。この際、例えば内壁Sにおいて構造体(例えば照明灯等)が存在する箇所は、本来の内壁Sの状態を反映しにくいため、測定対象領域Rとしては好ましくない。このように距離画像上で測定対象領域Rを任意の位置に設定させることによって、適切に測定対象領域Rを設定することができる。この点については、上記のように可視光の画像を表示させ、この上で測定対象領域Rを設定させる場合においても同様である。
【0025】
測定対象領域が設定されたら(S2)、設定モードは終了し、その後、監視モードの動作が開始する(S3)。監視モードにおいては、測距撮像部10による測定が一定の周期(1秒~9999秒の任意の秒数で設定可能、あるいは分、時間等、任意の単位でも設定可能)で行われる(S4)。ここでは、少なくとも測距撮像部10は、
図2に示された状況でトンネル内に固定され、この状態で測距撮像部10は、特に上記のように指定された測定対象領域中における測定を行う。具体的には、測定対象領域中の各画素に対応した複数の測定点までの距離を測定し、このデータを取得した時刻に関する情報と共に、記憶部21に記憶する。また、測定対象領域内におけるこの距離の統計値(平均値、最大値、最小値、最頻値、標準偏差のいずれか、またはその組み合わせ)を算出し、このような統計値を記憶部21に記憶させてもよい。なお、測定の時間間隔は一定である必要はなく、例えばこの時間間隔が時間帯に応じて設定されていてもよい。このような時間間隔は、監視期間(例えば夜間)中における監視が十分に行え、かつ内壁Sの形状の変化を適切に認識できる範囲で適宜設定される。
【0026】
なお、上記の測定(S4)においては、制御部20は、測定対象領域を認識した上で測定対象領域中における各測定点までの距離を測距撮像部10によって測定する。ここで、設定モードから監視モードに移行する際に測距撮像部10が僅かに動いた場合には、前記の設定モードの際に測定対象領域が指定された際の測距撮像部10の位置、姿勢と監視モードにおいて固定された際の測距撮像部10の位置、姿勢とが正確には一致しない場合もあるが、少なくとも監視モードにおいて固定された際の位置、姿勢において測距撮像部10の視野範囲に測定対象領域が含まれる場合には、制御部20は、特徴点を用いた周知のパターン認識手法によって、監視モードの間において測距撮像部10で得られた画像中における測定対象領域を認識した上で上記の測定を行ってもよい。
【0027】
次に、このように得られた距離に関する測定結果より、制御部20は、測定対象領域中に異常が存在するか否かを判定する(判定工程:S5)。異常が認められた場合(S5:Yes)には、制御部20は警報部40を動作させ、警報を発する(S6)。これによって、トンネル内に侵入しようとする作業者がいた場合に、トンネルに異常がある旨を知らせることができる。異常が認められなかった場合(S5:No)には、そのままの状態で次回の測定(S4)が行われる。この判定(S5)は、測定(S4)が行われる度にその直後に行われる。
【0028】
ここで、トンネルにおける内壁Sに変形が生じた場合には、トンネルに異常が発生したと認識することができる。測距撮像部10がトンネルの内部で固定されている場合には、この変形した部分と測距撮像部10までの距離が変動し、この距離の変動は、測距撮像部10によって認識することができる。この際、測定対象領域における内壁Sの面としての変状は、測定対象領域内の複数の測定点(測距撮像部10における画素に対応)までの距離の変動に基づいて認識することができる。この判定(S5)のための具体的手法としては、以下に例示する複数のものが存在する。
【0029】
まず、測定対象領域内における複数の測定点までの距離の統計値(平均値、最大値、最小値、最頻値、標準偏差のいずれか、またはその組み合わせ)の時間的変動が大きくなった場合に異常が発生したと認識させることができる。この場合においては、測定(S4)によって得られた距離の統計値と、基準となる値との差分の絶対値がある閾値を超えた場合に、異常があると判定することができる。ここで、基準となる値(基準値)としては、例えば直前の測定(S4)で得られた距離の統計値を用いることができる。この場合には、測定間隔に対応した短時間内で急激な距離の変動があった場合に異常があると認識される。また、測定対象領域の設定(S2)の直後において測定された距離の統計値、あるいは初回の測定(S4)時において得られた距離の統計値をこの基準値として用いることができる。この場合には、測定間隔よりも長い時間間隔での距離の変動があった場合に異常があると認識される。設定モードで測定対象領域を設定した際に、その時点での距離を表示操作部30で表示させた上で、ユーザがこの基準値を設定することができる構成とすることもできる。
【0030】
また、例えば測定対象領域内の距離の平均値としては大きな変化はない状態で、測定対象領域内において内壁Sが大きく変形するという状況も発生しうる。こうした場合には、測定対象領域における各測定点毎の距離の変動を算出し、この変動の絶対値の総和が大きくなった場合に異常が発生したと判定してもよい。
【0031】
また、上記の測距撮像部10を用いた場合には、測定時における測定対象領域中における複数の測定点(画素に対応)までの距離を測定できるため、各時点におけるこれらの複数の測定点の空間的位置を認識することができる。このため、1点における単なる距離の変化ではなく、測定対象領域の面としての変化を適正に認識し、かつこの状態をユーザが視認しやすい形態で表示させることができる。
【0032】
以下にこの点について説明する。
図5は、時刻tにおける測定対象領域における測定点をP
1(t)~P
N(t)(総数N:
図5においてはN=3×6=18であり、実際には2次元の配列)とした場合の、時刻t
1、t
2における形状の変化を単純化した例を示す図である。時刻t
1における測定対象領域の面はP
1(t
1)~P
N(t
1)であり図中黒丸で表され、時刻t
2における測定対象領域の面はP
1(t
2)~P
N(t
2)であり図中白丸で表される。
図5(a)では、この面が左側に突出するように変化し、これを左側から措定しているものとする。また、時刻t
1においては測定対象領域の面(P
1(t
1)~P
N(t
1)で構成される面)は平面を構成するものとする。上記の監視装置1においては、測距撮像部10によって、P
1(t
1)~P
N(t
1)、P
1(t
2)~P
N(t
2)の空間的位置を認識することができるため、制御部20は、
図5(b)に示されるような、P
1(t
1)~P
N(t
1)、P
1(t
2)~P
N(t
2)で規定される3次元多面体の体積を算出することができる。この体積は、測定対象領域の時刻t
1からt
2における体積としての変化量(体積的変化)に相当し、さらにこの値を測定対象領域の面積(例えばP
1(t
1)~P
N(t
1)の各測定点で形成される面の面積)で割った値は、測定対象領域の平均の変位と認識することができる。また、この体積を時間差t
2-t
1で割った値は時刻t
1とt
2の間の平均的な体積的変化率(例えばcm
3/hour単位)とすることができる。更に、この体積的変化率を上記と同様の測定対象領域の面積で割った、面積当たりの体積的変化率(例えばcm
3/m
2/hour、あるいはcm/hour単位)を算出することもでき、この値は測定対象領域の平均の変位速度と認識することができる。このような、測定対象領域における体積的変化(例えばcm
3単位)、平均変位(例えばcm単位)、体積的変化率(例えばcm
3/hour単位)、平均変位速度(例えばcm/hour単位)は、いずれも、各時点において複数の測定点までについて測定された距離の統計値を用いて数値化され、測定対象領域の変化に対応した、異常を判定するための指標となる評価数値となる。上記の評価数値のいずれかが、各々について予め設定された閾値を超えた場合に、異常があると判定することもできる。あるいは、これらのうちのいずれかが閾値を超えた場合や、これらのうちの複数が閾値を超えた場合等、判定条件を組み合わせて、異常があるとしてもよい。この監視装置1を使用する度に測定対象領域が大きく変わる場合には平均変位や平均変位速度を評価数値として用いること、測定時間間隔が大きく変わる場合には体積的変化率や平均変位速度を評価数値として用いることにより、これらの設定が大きく変わっても、使用の度に判定の閾値を大きく変える必要性は低くなる。
【0033】
この他にも、測距撮像部10によって測定された測定対象領域中の各測定点までの距離を用いて、内壁Sの状態の経時変化が大きいと認識するためには、各種の方法を用いることができる。あるいは、このような判定条件を複数組み合わせ、いずれかの経時変化が大きいと認められた場合に異常があると設定することもできる。いずれの場合においても、制御部20は、ユーザによって定められた測定対象領域中における複数の測定点までの距離の時間的変化に基づいて上記の判定を行う。このように異なる時点における複数の測定点までについて測定された距離の統計的処理によって得られた値を基にすることによって、測定対象領域の面あるいは全体的な形状としての変化に基づいた判定をすることができる。
【0034】
なお、異常の認識(S5)に関わらず、制御部20は、上記の測定結果を表示操作部30で表示させることができる。この際には、前記の設定工程の場合において
図4で例示されたような距離の遠近がドットの濃淡や色で表示された距離画像の代わりに、例えば各測定点における距離の変化や、距離の変化率(時間的変動あるいは移動速度)を濃淡、あるいは色で対応付けて表示させることもできる。
【0035】
また、このような距離の変化より、制御部20は、上記の各測定点の変位を認識することもできる。
図5(c)においては、
図5(a)の変形があった場合における各測定点の変位がベクトルで示されている。この各ベクトルの大きさを、各測定点に対応付けて上記のようにドットの濃淡や色で2次元画像表示すれば、ユーザが測定対象領域の状態をより認識しやすくなる。上記のような各測定点の変位の他に、この変位の時間変化率(変位速度:
図5の例では変位の大きさをt
2-t
1で割った値)を用いることができ、測定時間間隔が一定でない場合には、変位の時間変化率を表示することは特に有効である。
【0036】
また、
図5においては時刻t
2における測定対象領域の面との比較対象となる面(時刻t
1における測定対象領域の面)が平面を構成するものとした。
図6(a)においては、この面が平面でない場合の例を示す。この場合においても、
図5(b)と同様に、P
1(t
1)~P
N(t
1)、P
1(t
2)~P
N(t
2)で規定される3次元多面体の体積を算出することができる。また、
図6(b)は、この場合における各測定点の変位を
図5(c)と同様に示す。
図5の場合には基準となる面が平面であったために時刻t
2における面の形状は各測定点の変位量を直接反映した形状となっていたのに対し、
図6(b)の場合には、基準となる面が平面でないために、時刻t
2における面の形状は各測定点の変位量を直接反映せず、この面の形状は、時刻t
1における面の形状の影響も受ける。
【0037】
こうした場合には、
図6(c)に示されるように、基準となる面が平面である場合において各測定点が同様の変位をした場合における仮想的な面を、表示操作部30で表示させてもよい。この場合には、変位の大小を濃淡や色で表示する代わりに、
図6(c)のように、この仮想的な面を表示操作部30で斜視図等で立体的に表示させることもできる。この場合には、実際の面の形状は表示されないものの、測定対象領域における変形の状況をより確認しやすくすることができる。なお、この際に、P
1(t
2)~P
N(t
2)の各点のP
1(t
1)~P
N(t
1)の各点からの変位の代わりに、この変位を時間差t
2-t
1で割った値(前記の変位速度)を表示させてもよい。
【0038】
また、前記の通り、
図5(b)に示された3次元多面体の体積より測定対象領域の体積的変化率(cm
3/hour単位)や面積当たりの体積的変化率(cm
3/m
2/hour単位)、平均変位(cm単位)、平均変位速度(cm/hour単位)等の評価数値を算出することができる。これらの評価数値を、前記のような変位あるいは変位速度の2次元画像等と共に濃淡あるいは色で表示して示すこともできる。また、
図5(b)の例では、測定対象領域における体積的変化を算出する場合が示されたが、測定対象領域における測定点が多い場合には、測定対象領域をサブ領域に更に細かく区分し、各サブ領域において
図5(b)の体積を算出してもよい。この場合には、前記のような変位、変位速度の2次元画像に代わり、サブ領域の体積的変化率等を測定対象領域全体の中で同様に表示させることもできる。
【0039】
このように、上記のような測距撮像部10を用いることによって、各測定点の空間的位置及びその変位を認識することができるため、測定対象領域の面としての変化を、表示操作部30において、様々な態様で表示させることができる。どの態様の表示を行わせるかを、ユーザが表示操作部30を操作することによって設定できるようにしてもよい。これにより、ユーザは、測定対象領域における変化をより直感的に認識することができる。
【0040】
次に、測距撮像部10(TOFカメラ)によって
図5、6に示されたような体積の変化を測定する際の具体的な算出方法について説明する。
図7は、測距撮像部10が測定面Qを撮像する際の状況を模式的に示す図である。ここで、
図7上側に示されたように、測定面Qにおける実際の撮像範囲は原点Oを中心とした横2X、縦2Yの領域(撮像領域)であり、この中における複数の点までの距離が測定され、ここではそのうちの1点である点P(x、y)についての測定が行われるものとする。実際には測距撮像部10が認識するのは
図7下側に示されたような、画素の2次元配列に対応し仮想的な原点O’を中心とした横2X’、縦2Y’(X/X’=Y/Y’=a、aはa>0であり測定面Qと測距撮像部10の位置関係や使用単位に応じて定まる定数)の領域(カメラ画像領域)であり、この中でP’(x’、y’)はP(x、y)に対応する点である。カメラ画像領域におけるx’、y’は、画素単位で表される。また、ここでは、P(x、y)までの距離Lが実測される。同様に、測距撮像部10は、原点O(P(0、0)の点)までの距離k、最大仰角点M(P(0、Y))の点)の仰角をθ(tanθ=Y/k)を認識することができる。
図7において、r=a・r’、かつk=(L
2-r
2)
1/2であるため、kを上記の測距撮像部10側で認識できるパラメータで表すと、tanθ=bとして、(1)式の通りとなる。
【0041】
【0042】
ここで、kは、測定面Qと測距撮像部10までの距離と認識されるため、測定面Qが時間的に変動し、時刻t
1の時の距離をk
1、時刻t
2の時のkをk
2とすれば、この間の測定面Qの移動距離はhはk
1-k
2となる。ここでは、t
2>t
1であり、時刻の進展に伴って測定面Qが手前側に突出してくるものとする。実際には
図8における時刻t
1における測定面がQ
1(Q
1面上の座標(x
1、y
1)であり、
図7上側におけるX=X
1、Y=Y
1、X
1/X’=Y
1/Y’=a
1となるような面)、時刻t
2において測定面がQ
2(Q
2面上の座標(x
2、y
2)であり、
図7上側におけるX=X
2、Y=Y
2、X
2/X’=Y
2/Y’=a
2となるような面)となる、測距撮像部10における1画素分の領域は測定面Q
1上での面積ds
1の領域、測定面Q
2上での微小面積ds
2となるとすると、ds
1=a
1
2、ds
2=a
2
2となるため、これらの面の変動に対応する体積変化dv
t2-t1は、(2)式の通りとなる
【0043】
【0044】
測定対象領域における時刻t2、t1間の体積変化Vt2-t1は、上記のdvt2-t1をカメラ画像領域における測定対象領域中の全画素についての総和(積分)となり、(3)式で算出される。
【0045】
【0046】
実際の体積変化は、測距撮像部10における1画素の面積をこれに掛けることによって求められる。また、上記体積の測定対象領域の単位面積当たりの値は、上記の積分値をカメラ画像領域における測定対象面積(画素単位)で割った値となる。また、体積変化の時間変化率(あるいは測定対象領域の単位面積当たりの体積変化の時間変化率:dV/dtに対応)は、これらの値をt2-t1で割った値となる。
【0047】
また、上記のように体積変化の時間変化率(あるいは測定対象領域の単位面積当たりの体積変化の時間変化率が算出された場合には、これらの値を経時的にモニターすることによって、これらの値の時間変化率(d2V/dt2に対応)を算出し、その大小によって、急激な変化、緩慢な変化を識別することができる。このため、例えばこの値が閾値を超えた場合に異常があると認識することができる。この場合には、例えば、d2V/dt2に対応する量として、t1、t2、t3(t1<t2<t3)で測定を行い、(4)式で定義される量を前記の評価数値として用いることができる。
【0048】
【0049】
このように、測距撮像部10としてTOFカメラを用いた場合には、上記のような計算を画素毎に行うことができる。
【0050】
測定対象領域としては、異常が発生した場合においてこうした変化が表れやすい箇所を、ユーザが選択して設定することができる(S2)。また、測定対象領域として、分離された複数の領域を設定させる(S2)こともでき、各領域毎に上記の判定(S5)を行い、このうち異常と判定された領域が発生した場合に、警報を発する(S6)設定とすることもできる。
【0051】
ユーザは、例えばある日における、作業者によるトンネルの工事作業の終了時にこの監視装置1を動作させ、まず上記の設定モードによって内壁S(切羽面)中における測定対象領域を設定することができる。その後、トンネル内に作業者のいない状態で監視モードの動作を開始させることができる。その後、翌日に再び作業者がトンネル内に侵入しようとする際には、警報部40で警報が出ていなければ、トンネル内に異常がないと判定することができる。一方、警報が出ていれば、トンネル内で何らかの異常が発生した可能性が高いと判定されるため、トンネル外から内部の状況、安全性を確認する作業を行うことができる。
【0052】
また、制御部20は、異常が認められた旨をネットワークを介して電子メール等で携帯端末91に連絡することもでき、携帯端末91をユーザ(工事関係者)が携帯していれば、ユーザは異常が発生したことを迅速に認知することができる。警報のためにネットワークを介した電子メール以外の手段を用いてもよい。
【0053】
この際、トンネルが工事の途中であれば、内壁S(切羽面)の位置、形状等は日毎に変動する。これに対して、上記の監視装置1においては、その時点でモニターすべき対象として適する部分を設定モードで測定対象領域として設定し、その後で監視モードにおいて無人の状態でこの部分の変化を見ることができ、その結果によって、トンネル内部の異常の有無を認識することができる。この際、特許文献1に記載の技術のように車両を通行させることや、特許文献2に記載の技術のようにLED素子をトンネルの内部に設置することは不要であり、ユーザが実際に行う操作は、表示操作部30により測定対象領域を画像中で設定する操作あるいは基準値を設定する操作のみである。
【0054】
例えば、レーザー距離計等を用いて内壁Sにおけるある1点までの距離を同様に非接触で測定し、上記と同様の判定を行うことも可能である。しかしながら、この場合には、トンネル(内壁S)に発生した異常を同様に検知することが可能であるものの、例えばレーザー距離計の位置の微小な変動等によって距離が変動したことによる誤検知の可能性が高くなる。これに対して、上記の監視装置1においては、ある1点までの距離ではなく、測定対象領域における複数の測定点までの距離を基にした値を用いてこの判定を行うため、こうした誤検知が起きる可能性が低くなる。更に、
図4に示されたように、実際に測距撮像部10で得られる距離画像中においてユーザが測定対象領域を確認した上で設定することができる。このため、こうした誤検知が生じにくい箇所を測定対象領域として設定することにより、異常の検知をより適正に行うことができる。
【0055】
特に、工事中のトンネルにおける切羽面の変状としては、面全体の変状と、面における局所的な変状の2種類が存在し、どちらもトンネルに異常が発生したか否かの判定に対する有効な指標となる。こうした場合において、上記のような1点における測定では、面全体の変状の検知は十分可能であるが、局所的な変状の検知を適正に行うことは、測定点の設定が適正でない場合には困難である。これに対して、上記の監視装置1においては、測定対象領域を面として広く設定することによって、面全体の変状の検知だけでなく、局所的な変状も高い確率で検知することができる。一方で、測定対象領域の面あるいは全体的な形状としての変化も認識できるため、多くのタイプの変状を検知することができる。このため、上記の監視装置1は工事中のトンネルの監視には特に有効である。また、同様に局所的な変状が発生しうる土木構造体や、土木工事に伴って出現する地山等の監視においても、上記の監視装置1は有効である。
【0056】
また、上記の動作は、測距撮像部10(TOFカメラ)を用いた単純な構成で行わせることができ、
図1における測距撮像部10以外の構成要素は、通常のパーソナルコンピュータ及びこれに付随する電源等を用いて実現することができる。このため、単純な構成で計測対象の安全性を自動的に監視することができる。ここで、
図2においては、監視の対象が工事中のトンネルであるとしたが、任意の計測対象に対して同様にこの監視装置1を用いることができることは明らかである。
【0057】
上記の動作を行うにあたり、この監視装置1の各部には電源部50から電力が供給される。
図1において、上記の設定モードにおける動作に際しては、特に、電源部50で用いられる電源として、蓄電池51を用いることができる。特に制御部20、表示操作部30、記憶部21としてタブレット型のパーソナルコンピュータを用いた場合には、このパーソナルコンピュータとを電源部50と共にユーザが携帯した上で、上記の動作を行わせることもできる。また、設定モードにおける動作は短時間で終了するために、その間の電力消費は小さいために、蓄電池51を用いることができる。
【0058】
これに対して、上記の監視モードにおける動作は、例えば工事の行われていない夜間でも行われるため、一般的には長時間にわたることもある。また、例えば警報部40を動作させた場合には、その消費電力は大きくなる場合があり、かつこの動作が長時間にわたる場合がある。このため、電源部50で用いられる電源としては、商用交流電源52を用いることが好ましい。このため、電源部50においては、蓄電池51と商用交流電源52とが切替可能で使用できることが好ましい。
【0059】
また、上記の監視装置1は、測距撮像部10(TOFカメラ)とパーソナルコンピュータ等を用いて構成できるため、監視モードにおける判定結果(S5)をネットワークを介して遠隔地のコンピュータ(サーバ90)に伝えることも容易である。この場合には、複数の監視装置1を同時に異なる箇所で用い、全ての監視装置1の結果をサーバ90で見ることもできる。このため、異常が認められた(S5:Yes)場合においては、個々の監視装置1側の警報部40で警報を発すると同時に、サーバ90側でも警報を発することができる。
【0060】
こうした設定とする場合には、例えば、離間した複数の測定対象領域をそれぞれ異なる測距撮像部10で撮像し、その全体的な結果を考慮した上で、警報を発することができる。例えば、近接した領域で複数のトンネルが工事中である場合において、一つのトンネルで異常が発生し他のトンネルでは異常が認められなかった場合においても、異常が認められなかったトンネルにおいて警報を発することができる。また、例えば、異常が発生したトンネルの数が増加している場合には、異常が発生していないトンネルにおいても異常が発生する可能性が高いと判定し、その旨を警告させることもできる。このため、作業者の安全性を更に確保することができる。この場合においては、警告のレベルを複数種類設定し、状況に応じて異なる警告を発するようにすることが好ましい。
【0061】
また、この際に、個々の監視装置1がサーバ90側に判定結果(S5)を伝える代わりに、測定(S4)毎に測距撮像部10から得たデータをサーバ90に伝えてもよい。この場合には、サーバ90側で上記の判定(S5)を行い、その判定結果が各監視装置1側に伝えられ、異常があると判定された場合(S5:Yes)には、対応する警報部40で警報を発する設定とすることができる。すなわち、
図3の動作に際して、ネットワークを介して接続されたサーバ90に判定工程(S5)を行わせ、異常が認められたトンネル内で警報(S6)を発するようにすることができる。この際、
図1における異常が発生した旨を制御部20が携帯端末91に電子メール等で発する代わりに、サーバ90側が携帯端末91が電子メールを発する設定とすることができる。前記のような表示操作部30における表示も、サーバ90側で一括して行わせることができる。すなわち、こうした場合には、
図1における監視装置1が複数個用いられ、ネットワークを介してこれらと接続されたサーバ90と各監視装置1における制御部20とを全体的な制御部として動作させればよい。このため、ここでいう制御部は、単体の監視装置中に設けられていても、ネットワークを用いて構成されていてもよい。
【0062】
なお、上記の例においては、測定対象領域(内壁S)における複数の測定点までの距離を非接触で測定する測距撮像部10としてTOFカメラが用いられた。上記の例ではTOFカメラにおける距離の非接触での測定に近赤外光が用いられたが、小型の測距撮像部10にその光源を搭載することができ、同様の測定が可能である限りにおいて、光の種類やその光源は任意である。ただし、様々な環境下で安定した測定が可能である光を用いることが好ましい。また、距離が測定される複数の測定点を画素として距離画像を得ることのできるTOFカメラを測距撮像部10として用いることが特に好ましい。ただし、同様の非接触の測定を行うことができる限りにおいて、他の手段を用いることもできる。また、上記の監視装置1や監視方法は、トンネルや地山に限定されず、表面形状の変化の有無と安全性とが直結する任意の計測対象に対して有効であることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1 監視装置
10 測距撮像部(測距部)
11 架台
20 制御部
21 記憶部
30 表示操作部(表示部)
40 警報部
50 電源部
51 蓄電池
52 商用交流電源
90 サーバ
91 携帯端末
G 路盤
S 内壁(切羽面)
R 測定対象領域
P1、P2、P3、・・・P18 測定点
Q、Q1、Q2 測定面