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  • 特許-着色樹脂微粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】着色樹脂微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20220701BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20220701BHJP
【FI】
C08J3/16 CER
C08J3/16 CEZ
C09D11/328
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018032818
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019147878
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物(web予稿集)への発表における公開 刊行物名 化学工学会第49回秋季大会の講演予稿集 発行者名 公益社団法人 化学工学会 公表日 平成29年(2017年)9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085202
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】武井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】亀澤 美春
(72)【発明者】
【氏名】大角 義浩
(72)【発明者】
【氏名】高木 斗志彦
(72)【発明者】
【氏名】澤野 文二
(72)【発明者】
【氏名】木下 智之
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-114989(JP,A)
【文献】特開昭58-062655(JP,A)
【文献】特開2011-132418(JP,A)
【文献】特開2004-331750(JP,A)
【文献】特開平01-170672(JP,A)
【文献】特開2011-011144(JP,A)
【文献】特許第4011476(JP,B2)
【文献】森田 正道ほか,高圧ホモジナイザーによるO/Wエマルションの調整 他の乳化装置との性能比較,油化学,日本油化学会,1991年,第40巻第1号,p.58-63
【文献】[第3回]乳化剤の基本的性質 ,乳化剤講座,太陽化学株式会社,2021年10月21日,https://www.taiyokagaku.com/lab/emulsion_learning/03/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、99/00
C09D 11/00-13/00
B01J 13/02-13/22
B41J 2/01、2/165-2/215
G03G 9/00-9/113、9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(4)からなる着色樹脂微粒子の製造方法。
(1)色素成分および皮膜形成ポリマーを水に相溶しない溶媒に溶かして得られた溶液にHLB値が15以上の乳化・分散剤を添加する工程
(2)前工程(1)にて得られた溶液をホモミキサー、ホモジナイザー、または超音波を用いて水中に乳化・分散させる工程
(3)前工程(2)の乳化・分散にて得られた分散液を加温・減圧して、前記溶媒を蒸散させ、色素成分及び皮膜形成ポリマーの固形化析出物を得る工程
(4)得られた固形化析出物をデカンテーションおよび/または遠心分離して複合ナノカプセルを得る工程
【請求項2】
皮膜形成ポリマーが、メタクリル酸エステル重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリイプシロンカプロラクタム、ポリ乳酸およびポリ乳酸とグリコール酸の共重合体から選ばれた1種又は2種以上のポリマーである請求項1の製造方法。
【請求項3】
色素成分がフタロシアニン化合物である請求項1に記載の着色樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
有機溶剤が非ハロゲン溶媒である請求項1に記載の着色樹脂微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素成分を含有するエマルションより調製されたナノカプセルからなる着色樹脂微粒子およびその製造方法に関する。本発明の着色樹脂微粒子は、インクジェット用のセキュリティーインクや熱線遮断用の材料として好ましい。
【背景技術】
【0002】
近年、色再現性が高く、高画質の電子写真用トナーや、インクジェット記録用のインクに向けた着色樹脂微粒子の需要が増加している。着色樹脂微粒子の製造方法としては、従来、粉砕法、重合法などが知られている。粉砕法は、結着樹脂、着色剤等を溶融混練し、粉砕、分級して粒子を製造するものであり粒径分布が広く、小粒径化などに限界がある。一方、重合法は、液体中にて液滴として製造されるため比較的細かく均一な粒子が得られるが未だ充分に微細な粒径が得られるには至っていない。
更なる微粒子の製造法としてはマイクロカプセル法があり、近年、大きな技術進歩がみられる。マイクロカプセルは極小のカプセル内に着色剤、医薬成分などの特定成分を内包したものであり、記録材料、医薬品用カプセルなどさまざまな分野に利用されつつある。
【0003】
色素成分のひとつである金属フタロシアニン化合物は可視領域に特徴的な強い吸収を有し鮮明な色合いを呈して耐光性に優れるため、塗料、カラーフィルタ等の顔料として用いられてきた。しかしながら、金属フタロシアニン化合物は通常の有機溶媒に難溶で結晶性の高い有機顔料であり、その特性の改善には製造工程、精製工程、粉砕及び微細工程などにおける検討の必要がある。
フタロシアニン化合物を含む着色樹脂微粒子の製造法については、これまでにも多くの方法が提案されている。たとえば、下記の特許文献1は懸濁重合法により着色微粒子を製造するものであって、非水溶性樹脂によって被覆されている顔料が重合性不飽和単量体と反応性乳化剤の共重合物を含むカプセルに内包された着色性樹脂微粒子について記載されている。特許文献2、3および4には、種々の形態のエマルションより液中乾燥、或いは重合によりマイクロカプセル化を行い、特定成分を内包した樹脂微粒子を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-089757
【文献】特開2015-230416
【文献】特許第4723864号
【文献】特開2016-150961
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の顔料を分散した着色樹脂微粒子では、粒子が透明性を有するに充分微細な粒径(平均粒径約100nm以下)が得られておらず着色粒子の透明性が不充分である。また、特許文献2、3などの樹脂微粒子製造法では、液中乾燥法の溶媒としてクロロホルムなどハロゲン系の極性の高い有機化合物を用いるなど環境への負荷が大きい。さらに、カプセル粒子内に取り込まれた色素内包効率が10%以下と低く特性が不充分である(特許文献4)などの問題がある。
このように、従来の技術においてはカプセル内への色素の内包効率が高く、かつ非ハロゲン系の幅広い溶媒を用いることができ、粒径が小さく透明性に優れた着色樹脂微粒子を容易に製造することのできる技術は提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、所定の製造法によりフタロシアニン化合物を内包する着色樹脂微粒子を製造することにより前記課題が解決できることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は
(i)下記の工程(1)~(4)からなる着色樹脂微粒子の製造方法である。
(1)色素成分および皮膜形成ポリマーを水に相溶しない溶媒に溶かす工程
(2)前工程(1)にて得られた溶液をホモミキサー、ホモジナイザー、または超音波を用いて水中に乳化・分散させる工程
(3)前工程(2)の乳化・分散にて得られた分散液を加温・減圧して、前記溶媒を蒸散させ、色素成分及び皮膜形成ポリマーの固形化析出物を得る工程
(4)得られた固形化析出物をデカンテーションおよび/または遠心分離して複合ナノカプセルを得る工程
(ii)また本願第2の発明は、皮膜形成ポリマーが、メタクリル酸エステル重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリイプシロンカプロラクタム、ポリ乳酸およびポリ乳酸とグリコール酸の共重合体から選ばれた1種又は2種以上のポリマーである前記(i)の製造方法である。
さらなる本願発明は、
(iii)色素成分がフタロシアニン化合物である前記(i)の着色樹脂微粒子の製造方法。
(iv)有機溶剤が非ハロゲン溶媒である前記(i)の着色樹脂微粒子の製造方法。
(v)工程(1)にて得られる溶液に乳化・分散剤を添加した請求項1に記載の製造方法。
(vi)乳化・分散剤のHLB値が15以上である前記(v)の製造方法。
(vii)前記(i)の製造方法により製造された平均粒子径50-150nmの着色樹脂微粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均粒径が小さく透明性に優れ、カプセル中の色素成分濃度が高い着色樹脂微粒子を非ハロゲン系の幅広い溶媒を用いて効率よく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のフタロシアニン化合物を内包したカプセルの電界放出型走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の着色樹脂微粒子の製造方法において、第1の工程は色素成分および皮膜形成ポリマーを水に相溶しない溶媒に溶かす工程である。
かかる色素成分としては、種々の色素を用いることができるがフタロシアニン化合物が好ましく、下記の式(1)にて表すことができる。
【0010】
〔式中、A~A16は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、あるいは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、またはハロゲン原子を含んでも良い炭素数1~20の置換基を表し、かつ、隣り合う2個の置換基が連結基を介して繋がっていてもよい。但し、A~A16の内の少なくとも4つは硫黄原子を介する置換基および/または窒素原子を介する置換基である。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子、あるいはオキシ金属を表す。〕
【0011】
本発明で用いる一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物中、A1~A16で表される置換基において、A1~A16の内の少なくとも4つは硫黄原子を介する置換基および/または窒素原子を介する置換基であれば、その他の置換基については特に制限を受けないが、以下に具体的に記載する。
【0012】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
炭素数1~20の窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ハロゲン原子を含んでもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、
メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジエチルアミノメチル基、フェニルチオメチル基、ベンジル基、p-クロロベンジル基、p-メトキシベンジル基、等のヘテロ原子や芳香環を含むアルキル基、フェニル基、p-メトキシフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、p-クロロフェニル基、等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、iso-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、ヒドロキシエトキシ基等のヒドロキシアルコキシ基、ベンジルオキシ基、p-クロロベンジルオキシ基、p-メトキシベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基、フェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、p-t-ブチルフェノキシ基、p-クロロフェノキシ基、o-アミノフェノキシ基、p-ジエチルアミノフェノキシ基等のアリールオキシ基、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、iso-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、iso-ブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n-ヘプチルカルボニルオキシ基、3-ヘプチルカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-クロロベンゾイルオキシ基、p-メトキシベンゾイルオキシ基、p-エトキシベンゾイルオキシ基、p-t-ブチルベンゾイルオキシ基、p-トリフロルオメチルベンゾイルオキシ基、m-トリフルオロメチルベンゾイルオキシ基、o-アミノベンゾイルオキシ基、p-ジエチルアミノベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基、
【0013】
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基等のアルキルチオ基、ベンジルチオ基、p-クロロベンジルチオ基、p-メトキシベンジルチオ基等のアラルキルチオ基、フェニルチオ基、p-メトキシフェニルチオ基、p-t-ブチルフェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、o-アミノフェニルチオ基、o-(n-オクチルアミノ)フェニルチオ基、o-(ベンジルアミノ)フェニルチオ基、o-(メチルアミノ)フェニルチオ基、p-ジエチルアミノフェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基、
【0014】
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、ジ-n-ヘプチルアミノ基、ジ-n-オクチルアミノ基等のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-メチルフェニルアミノ基、p-t-ブチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ-p-メチルフェニルアミノ基、ジ-p-t-ブチルフェニルアミノ基等のアリールアミノ基、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-プロピルカルボニルアミノ基、iso-プロピルカルボニルアミノ基、n-ブチルカルボニルアミノ基、iso-ブチルカルボニルアミノ基、sec-ブチルカルボニルアミノ基、t-ブチルカルボニルアミノ基、n-ペンチルカルボニルアミノ基、n-ヘキシルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、n-ヘプチルカルボニルアミノ基、3-ヘプチルカルボニルアミノ基、n-オクチルカルボニルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、p-クロロベンゾイルアミノ基、p-メトキシベンゾイルアミノ基、p-メトキシベンゾイルアミノ基、p-t-ブチルベンゾイルアミノ基、p-クロロベンゾイルアミノ基、p-トリフルオロメチルベンゾイルアミノ基、m-トリフルオロメチルベンゾイルアミノ基等のアリールカルボニルアミノ基、ヒドロキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、iso-プロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、iso-ブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、フェノキシエトキシカルボニル基、ヒドロキシエトキシカルボニル基等のアルコキシアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-メトキシフェノキシカルボニル基、p-t-ブチルフェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基、o-アミノフェノキシカルボニル基、p-ジエチルアミノフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n-プロピルアミノカルボニル基、n-ブチルアミノカルボニル基、sec-ブチルアミノカルボニル基、n-ペンチルアミノカルボニル基、n-ヘキシルアミノカルボニル基、n-ヘプチルアミノカルボニル基、n-オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジ-n-プロピルアミノカルボニル基、ジ-n-ブチルアミノカルボニル基、ジ-sec-ブチルアミノカルボニル基、ジ-n-ペンチルアミノカルボニル基、ジ-n-ヘキシルアミノカルボニル基、ジ-n-ヘプチルアミノカルボニル基、ジ-n-オクチルアミノカルボニル基等のアルキルアミノカルボニル基、
【0015】
フェニルアミノカルボニル基、p-メチルフェニルアミノカルボニル基、p-t-ブチルフェニルアミノカルボニル基、ジフェニルアミノカルボニル基、ジ-p-メチルフェニルアミノカルボニル基、ジ-p-t-ブチルフェニルアミノカルボニル基等のアリールアミノカルボニル基、メチルアミノスルホニル基、エチルアミノスルホニル基、n-プロピルアミノスルホニル基、n-ブチルアミノスルホニル基、sec-ブチルアミノスルホニル基、n-ペンチルアミノスルホニル基、n-ヘキシルアミノスルホニル基、n-ヘプチルアミノスルホニル基、n-オクチルアミノスルホニル基、2-エチルヘキシルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基、ジ-n-プロピルアミノスルホニル基、ジ-n-ブチルアミノスルホニル基、ジ-sec-ブチルアミノスルホニル基、ジ-n-ペンチルアミノスルホニル基、ジ-n-ヘキシルアミノスルホニル基、ジ-n-ヘプチルアミノスルホニル基、ジ-n-オクチルアミノスルホニル基等のアルキルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、p-メチルフェニルアミノスルホニル基、p-t-ブチルフェニルアミノスルホニル基、ジフェニルアミノスルホニル基、ジ-p-メチルフェニルアミノスルホニル基、ジ-p-t-ブチルフェニルアミノスルホニル基等のアリールアミノスルホニル基等が挙げられる。
【0016】
隣り合う2個の置換基が連結基を介して繋がっていてもよい置換基としては、下記式:
等で表されるようなヘテロ原子を介して5員環あるいは6員環を形成する置換基が挙げられる。A~A16の内の硫黄原子を介する置換基および/または窒素原子を介する置換基としては、アミノ基、アミノスルホニル基、上記のアルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0017】
フタロシアニンの吸収波長は通常600~750nm程度であるが、硫黄原子あるいは窒素原子を介する置換基が導入されることにより、吸収が長波長化され、800nm以上に吸収を有するようになる。そのためには、A~A16の内の少なくとも4つは硫黄原子を介する置換基および/または窒素原子を介する置換基であり、より好ましくは8つ以上が硫黄原子を介する置換基および/または窒素原子を介する置換基である。
【0018】
あるいはMで表される2価の金属の例としては、Cu(II)、Zn(II)、Fe(II)、
Co(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、
Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、
Pb(II)、Sn(II)などが挙げられる。
【0019】
1置換の3価金属の例としては、Al-Cl、Al-Br、Al-F、Al-I、Ga-Cl、Ga-F、Ga-I、Ga-Br、In-Cl、In-Br、In-I、In-F、
Tl-Cl、Tl-Br、Tl-I、Tl-F、Al-C65、Al-C64(CH3)、
In-C65、In-C64(CH3)、Mn(OH)、Mn(OC65)、Mn〔OSi(CH3)3〕、
Fe-Cl、Ru-Cl等が挙げられる。
【0020】
2置換の4価金属の例としては、CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2
ZrCl2、GeCl2、GeBr2、GeI2、GeF2、SnCl2、SnBr2、SnF2
TiCl2、TiBr2、TiF2、Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2
Sn(OH)2、TiR2、CrR2、SiR2、SnR2、GeR2〔Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す〕、Si(OR’)2、Sn(OR’)2、Ge(OR’)2、Ti(OR’)、Cr(OR’)〔R’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す〕、Sn(SR”)、Ge(SR”)(R”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す)などが挙げられる。
【0021】
オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられる。これらの中で特に好ましい中心金属はCu、Pd、AlCl、TiO、またはVOの場合である。
【0022】
本発明に用いる水に相溶しない溶媒とは、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、オクタン、ノナン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等があり、これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
本発明に用いる皮膜形成ポリマーとは、色素成分を包み込む物質であり、ポリメチルメタクリル酸などのメタクリル酸エステル重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリイプシロンカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体であれば分子量、構造等の制限は特に無く、これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0024】
本発明に用いることのできる溶媒の乳化・分散剤とは、色素成分及び皮膜形成ポリマーが溶解した溶媒を乳化・分散でき、HLB値が15以上のものであれば特に制限は無く、水に相溶しない溶媒あるいは水に添加することができる。例えば、ポリオキシエチレンが付加したトリあるいはジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルコールエーテル,ポリオキシエチレンが付加したソルビタンオレエート等のツイーン系界面活性剤、ソルビタンオレエート等のスパン系界面活性剤、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレンー無水マレイン酸の共重合体やポリカルボン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等、ポリグリセノール縮合リシノレイン酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリン、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機物及びリン酸カルシウム等の無機物が挙げられ、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明のマイクロカプセル製剤製造において使用される各成分の量は、色素成分の種類によって異なるが、通常、最終調製量に対して色素成分は0.01~60重量%、好ましくは0.01~40重量%、色素成分を包み込むための皮膜形成ポリマーは0.005~80重量%、好ましくは0.005~50重量%、色素成分及び皮膜形成ポリマーを溶かす溶媒は0.005~80重量%、好ましくは0.01~50重量%、乳化・分散用界面活性剤は0~30重量%、好ましくは0~20重量%、消泡剤は0~10重量%、好ましくは0~5重量%である。
【0026】
本発明の実施にあたっては、(1)色素成分1種あるいは2種以上とメタクリル酸エステル重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体の1種あるいは2種以上の皮膜形成ポリマーとの混合物を水に相溶しない溶媒中に溶解させ(第1工程)、(2)色素成分とポリマーが溶解した溶媒、あるいはその含浸体をホモミキサー、ホモジナイザー、または超音波を用いて水中に細かな粒として乳化・分散させ(第2工程)、(3)溶液中に乳化・分散させた乳化粒子中の溶媒を加温・減圧により蒸散させ、色素成分及びポリマーの固形化析出物を得る(第3工程)ことにより懸濁液を製造する。次いで、(4)懸濁液から水をデカンテーションあるいは遠心分離等により取り除く(第4工程)ことによりマイクロカプセル製剤を製造する。
【実施例
【0027】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
水相として、蒸留水300gに完全けん化型のポリビニルアルコール(PVA、重合度500)を3.0g溶解した。有機相としてPMMAを0.5g、下式(2)のフタロシアニン色素0.125g、トルエン10.0gに溶解した。有機相に対し、界面活性剤としてTween80を1.0wt%を添加した。有機相と水相を混合した後に、小型アナログ超音波ホモジナイザー(BRANSON製 型式Sonifier 450A)を用いて出力400Wで氷浴中3分間超音波処理し、O/Wエマルションを作成した。作成したO/Wエマルションを500mLジャケット付セパラブルフラスコに入れ、傾斜パドル式4枚撹拌翼(直径50mm)を用いて、30℃/900hPaで1時間、次いで40℃/500hPaで1時間、最終50℃/200~300hPaで1時間撹拌し、トルエンを液中乾燥した。液中乾燥後15000rpmで15分遠心分離し蒸留水で洗浄したのち凍結乾燥を行い調製したナノカプセルを回収した。回収率は58.9%であった。
【0028】
【0029】
(評価)
回収率は以下の式(1)により算出した。
Rr=(Qr/Wo)×100 ・・・・(1)
Rr:回収率(%)、Qr:カプセルの回収量(g)、Wo:PMMA量(g)+フタロシアニン量(g)

含有率および内包効率の算出については
カプセル内に含まれるフタロシアニン色素をトルエンで抽出し、抽出液をトルエンで10倍に希釈した溶液を紫外・可視分光光度計(SHIMADZU製 UV-1700)を用いて測定し含有率(R)および内包効率(E)を算出した。

含有率は以下の式(1)により算出した。
R=(Qp/Qr)×100・・・(1)
R:含有率(%)、Qp:フタロシアニン色素の内包量(g)、Qr:カプセルの回収量(g)
内包効率は以下の式(2)により算出した。
E=((Qr×Qp)/Wp)×100・・・(2)
E:内包効率(%)、Qr:カプセルの回収量(g)、Qp:フタロシアニン色素の内包量(g)、Wp:フタロシアニン色素の仕込み量(g)

調製したカプセルについては、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製 S-3000N)および電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日立製 S-4100H)を用いて形態観察を行った。平均粒子径については電子顕微鏡写真を画像解析ソフト(D measure)により算出した。
【0030】
(実施例2)
界面活性剤であるTween80の配合量を1.5wt%とした以外は、実施例1と同様に実施した。
(実施例3)
界面活性剤であるTween80の配合量を2.0wt%とした以外は、実施例1と同様に実施した。
(実施例4)
界面活性剤であるTween80の配合量を2.5wt%とした以外は、実施例1と同様に実施した。
(実施例5)
界面活性剤であるTween80の配合量を3.0wt%とした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0031】
(比較例1)
界面活性剤としてTween85を1.0wt%配合した以外は、実施例1と同様に実施した。
(比較例2)
界面活性剤としてユニオックスHC-40を1.0wt%配合した以外は、実施例1と同様に実施した。
(比較例3)
界面活性剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0032】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、カプセル中の色素成分濃度が高い着色樹脂微粒子を効率よく容易に製造することができる。そのため、インクジェット用のセキュリティーインクや熱線遮断用の材料として利用することができる。


図1