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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】生体情報検出装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20220701BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/1455
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018141424
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020014773
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜史
(72)【発明者】
【氏名】槇 宏太郎
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0000563(US,A1)
【文献】特開2016-200895(JP,A)
【文献】特開2005-204869(JP,A)
【文献】特開2018-000930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06ー5/398
A61C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に設置される生体情報検出装置であって、
センサと、
電池と、
操作部を含み、前記操作部が操作されることにより、前記電池から前記センサへの電力供給がなされる通電状態と、前記電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うメカスイッチと、
前記操作部を覆う保護部分を含み、前記口腔内に装着されて前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを全て密封しつつ保持する保持部材と
を有し、
前記口腔内に前記保持部材が装着されることにより、前記保護部分が第1の変位方向へ変位し、前記操作部が操作されて前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能であり、
前記保護部分は、前記遮断状態において、前記メカスイッチと反対側に突出した凸面を含む
生体情報検出装置。
【請求項2】
口腔内に設置される生体情報検出装置であって、
センサと、
電池と、
操作部を含み、前記操作部が操作されることにより、前記電池から前記センサへの電力供給がなされる通電状態と、前記電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うメカスイッチと、
前記操作部を覆う保護部分を含み、前記口腔内に装着されて前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを全て密封しつつ保持する保持部材と
を有し、
前記口腔内に前記保持部材が装着されることにより、前記保護部分が第1の変位方向へ変位し、前記操作部が操作されて前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能であり、
前記保護部分は、前記操作部の外面の形状に沿った形状をなす突起部分を含む
生体情報検出装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記口腔内における歯に装着可能であり、
前記歯に前記保持部材が装着されることにより、前記歯から前記保護部分を介して前記操作部へ外力が付与され、前記遮断状態から前記通電状態へ移行するようになっている
請求項1または請求項2記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
さらに、前記口腔内に装着された前記保持部材が前記口腔内から取り外されることにより、前記保護部分が第2の変位方向へ変位し、前記操作部が操作されて前記通電状態から前記遮断状態へ移行可能である
請求項1または請求項2記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記口腔内における歯に装着可能であり、
前記保持部材は、前記歯を把持する把持部を含み、
前記把持部に前記歯が挿入されることにより、前記保護部分が前記第1の変位方向に変位し、
前記把持部から前記歯が離脱することにより、前記保護部分が前記第2の変位方向に変位するようになっている
請求項記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記保護部分は、前記口腔内に前記保持部材が装着されることにより、前記歯と前記操作部との間に挟まれるようになっている
請求項記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記保持部材は、前記保護部分と対向する対向部分をさらに含み、前記保護部分と前記対向部分との間に前記歯を把持することにより前記口腔内に装着される
請求項記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
前記メカスイッチは、モーメンタリスイッチである
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項9】
前記メカスイッチは、
第1の導体と、第2の導体とをさらに含み、
前記操作部へ外力が付与されて前記第1の導体と前記第2の導体とが接触することにより、前記遮断状態から前記通電状態へ移行し、
前記操作部への前記外力が除去されて前記第1の導体と前記第2の導体とが離間することにより、前記通電状態から前記遮断状態へ移行する
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項10】
前記センサは、光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含み、
前記保持部材は、前記発光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第1の透光部分および前記受光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第2の透光部分を含む
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項11】
前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎と対向するように配置され、
前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して前記歯茎と対向するように配置されている
請求項10記載の生体情報検出装置。
【請求項12】
前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して頬の内面と対向するように配置され、
前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して前記頬の内面と対向するように配置されている
請求項10記載の生体情報検出装置。
【請求項13】
前記保持部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、
前記保持部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記信号処理部からの前記データ信号を外部装置に送信可能であると共に前記外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部と
をさらに有する
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項14】
前記第1の透光部分および前記第2の透光部分は、熱可塑性高分子化合物により形成されている
請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項15】
前記センサは、脈波センサ、パルスオキシメータまたはグルコースセンサである
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項16】
物理量を測定する他のセンサをさらに有する
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項17】
歯または歯茎に装着される生体情報検出装置の製造方法であって、
センサと、電池と、操作部を含んで前記操作部が操作されることにより電池からセンサへの電力供給がなされる通電状態と前記電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うメカスイッチと、をそれぞれ用意することと、
前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを一対の封止フィルムの間に挟んだのち、前記一対の封止フィルムを加熱しつつモールド成型することにより、前記操作部を覆う保護部分と、前記保護部分との間に前記歯を挟持可能な対向部分とを含み、前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを密封しつつ前記歯に保持可能な保持部材を形成することと
を含み、
前記保持部材を形成する際に、前記歯に前記保持部材が装着されることにより、前記操作部が操作されて前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能となり、前記歯に装着された前記保持部材が前記歯から取り外されることにより前記通電状態から前記遮断状態へ移行可能となるように、前記メカスイッチを密封する
生体情報検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者の生体情報を検出する生体情報検出装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、口腔内に設置して生体情報を得る生体モニタがいくつか提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-167120号公報
【文献】米国特許第8771149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置においては、高い安全性を確保しつつ、長期に亘って正確な動作が維持されることが望まれる。よって、安全性および長期信頼性に優れた生体情報検出モジュールおよび生体情報検出装置、ならびにそれらの製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置は、口腔内に設置されるものであって、センサと、電池と、メカスイッチと、保持部材とを有する。メカスイッチは、操作部を含み、その操作部が操作されることにより、電池からセンサへの電力供給がなされる通電状態と電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うものである。保持部材は、操作部を覆う保護部分を含み、口腔内に装着されてセンサ、電池およびメカスイッチを全て密封しつつ保持するものである。ここで、口腔内に保持部材が装着されることにより、保護部分が第1の変位方向へ変位し、操作部が操作されて遮断状態から通電状態へ移行可能である。保護部分は、遮断状態において、メカスイッチと反対側に突出した凸面を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置によれば、センサ、電池およびメカスイッチは保持部材により密封されているので、センサ等に対する高い防水性と、生体に対する高い安全性との双方が確保される。さらに、メカスイッチにより、通電状態と遮断状態との切り替えを行うことができるので、電池の長寿命化に資する。よって、優れた長期信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置の外観を模式的に表す斜視図である。
図2A図1に示した生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す断面図である。
図2B図1に示した生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す他の断面図である。
図3図1に示した生体情報検出装置の、光センサを含む断面の概略構成例を表す断面図である。
図4図2Aに示したメカスイッチの概略構成例を表す断面図である。
図5図1に示した生体情報検出装置の、口腔内での設置例を表す斜視図である。
図6図1に示した生体情報検出装置の全体構成例を表すブロック図である。
図7図1に示した光センサの受光素子へ適用可能な各デバイスの受光波長域を表す特性図である。
図8A図1に示した生体情報検出装置の製造方法の一工程を表す説明図である。
図8B図8Aに続く一工程を表す説明図である。
図9A】本開示の変形例1としての生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す断面図である。
図9B図9Aに示した生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す他の断面図である。
図10A】本開示の変形例2としての生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す断面図である。
図10B図10Aに示した生体情報検出装置の、メカスイッチを含む断面の概略構成例を表す他の断面図である。
図11】本開示の変形例3としての生体情報検出装置の概略構成例を表す断面図である。
図12】本開示の変形例4としての生体情報検出装置の外観および装着例を表す斜視図である。
図13】本開示の変形例5としての生体情報検出装置の概略構成例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(光センサ、電池およびメカスイッチを密封した保持部材を有するマウスピース状の生体情報検出装置の例。)
2.変形例
変形例1(歯に装着する保持部材のうち、メカスイッチの操作部に対応する位置に突起部分を設けるようにした生体情報検出装置の例。)
変形例2(装着する歯の側面のうち、メカスイッチの操作部に対応する位置に突起部材を設けるようにした生体情報検出装置の例。)
変形例3(歪センサを有する生体情報検出装置の例。)
変形例4(加速度センサを有する生体情報検出装置の例。)
変形例5(光センサを歯茎に装着し、その歯茎の反射光を受光するようにした生体情報検出装置の例。)

3.その他の変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[生体情報検出装置1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置1の概略構成例を模式的に斜視図にて表したものである。また、図2A図2Bおよび図3は、いずれも、生体情報検出装置1の概略構成例を模式的に表した断面図である。但し、図2Aおよび図2Bは、生体情報検出装置1における、図1に示したメカスイッチ12(後に詳述)を含む、図1に示したII-II切断線に沿った矢視方向の断面を表す。なお、図2Aは、口腔内に装着される前の、遮断状態(後述)の生体情報検出装置1を表し、図2Bは、口腔内の歯Tに装着された通電状態(後述)の生体情報検出装置1を表している。一方、図3は、生体情報検出装置1における、図1に示した光センサ5(後に詳述)を含む、図1に示したIII-III切断線に沿った矢視方向の断面を表している。また、図4は、メカスイッチ12を拡大して表す断面図である。また、図5は、生体情報検出装置1の使用状態の一例を表す斜視図である。さらに図6は、生体情報検出装置1に含まれる生体情報検出モジュール2の構成を表すブロック図である。
【0010】
図5に示したように、生体情報検出装置1は、生体内、例えば口腔内に設置されるものであって、より具体的には、一部の歯Tを覆うように設置される。
【0011】
図1に示したように、生体情報検出装置1は、口腔内の、例えば歯Tに装着可能であるシェル10と、そのシェル10に内蔵された生体情報検出モジュール2とを備えている。なお、シェル10は、歯Tと共に、歯茎Gの一部をも覆うように形成されてもよい。
【0012】
シェル10は、図1~3,5に示したように、歯Tを覆うマウスピース状のものであり、例えば熱可塑性高分子化合物などの弾性部材により構成されている。熱可塑性高分子化合物としては、例えばポリエチレン、ポリウレタンおよびアクリルなどを含有するものが適用できる。生体情報検出モジュール2は、シェル10のうち、歯Tの側面TSを覆う封止部分10Aに埋め込まれている。封止部分10Aは、外側部分101と、内側部分102とを含んでいる。外側部分101は、シェル10のうち、生体情報検出モジュール2の外側、すなわち、歯Tに装着した際(図2B参照)に生体情報検出モジュール2から見て歯Tと反対側を覆う部分である。内側部分102は、生体情報検出モジュール2の内側、すなわち歯Tに装着した際(図2B参照)に生体情報検出モジュール2と歯Tとの間に挟まれる部分であり、操作部124を覆う保護部分である。内側部分102は、生体情報検出モジュール2と反対側に、歯Tの側面TSと当接することとなる内面102Sを有している。図2Aの非装着状態、すなわち遮断状態では、内面102Sは、生体情報検出モジュール2のメカスイッチ12と反対側へ突出した凸面となっている。なお、内側部分102は弾性を有するので、図2Bの装着状態、すなわち通電状態では、内面102Sは歯Tの側面TSに沿った形状に変位するようになっている。このように、生体情報検出モジュール2はシェル10に密封されるように埋め込まれているので、口腔内の唾液や飲料等の水分、および外気から確実に遮断される。したがって、シェル10は、生体情報検出モジュール2を密封する保持部材である。なお、図1では、説明の都合上、視認性を向上させるため、シェル10のうち生体情報検出モジュール2を覆う外側部分101を取り去った状態を表している。しかしながら、実際には生体情報検出モジュール2はシェル10の外側部分101により覆われることとなるので、外側部分101が透明である場合を除き、外部から視認することはできない。
【0013】
シェル10は、さらに、封止部分10Aの内側部分102と対向する対向部分10Bを有している。封止部分10Aの内側部分102と対向部分10Bとの間には、歯Tが挿入されることとなる空間10Vが形成されている(図2A図2Bおよび図3参照)。封止部分10Aの内側部分102および対向部分10Bは本開示の「第1の把持部」に対応する一具体例であり、図2Bおよび図3に示したように、空間10Vに歯Tが挿入された状態において歯Tを把持するようになっている。したがって、シェル10は、口腔内において生体情報検出モジュール2を保持する保持部材でもある。
【0014】
生体情報検出モジュール2は、例えば実装基板11に、電池6と、メカスイッチ12と、送受信モジュール8と、光センサ5とが配置されたものである(図1,2,6参照)。
【0015】
実装基板11は、例えば配線がプリントされたシート状のフレキシブル基板である。
【0016】
電池6は、光センサ5および送受信モジュール8に対し、それら光センサ5および送受信モジュール8を駆動するための電力を供給する電源として機能する。電池6は、例えばボタン型やコイン型の一次電池である。あるいは、電池6として、非接触充電が可能なものであれば、二次電池を適用してもよい。さらに、電池6の構造は特に限定されるものではなく、正極と負極とが電解質を挟んで交互積層された積層体が電極構造体として金属などの筐体に収容されたものでもよいし、さらにはその積層体が巻回された巻回構造体が電極構造体として筐体に収容されたものでもよい。
【0017】
メカスイッチ12は、例えば実装基板11上の、電池6と送受信モジュール8との間に配置されており、光センサ5および送受信モジュール8の各々に対する電池6からの電力供給がなされる通電状態と、その電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うものである。メカスイッチ12は、いわゆるモーメンタリスイッチである。図4に示したように、メカスイッチ12は、第1の導体121および第2の導体122を収容する本体123と、操作部124とを有する。本体123は、第1の導体121および第2の導体122を収容する筐体であり、底部123Aと、底部123Aの周縁に沿って立設すると共に第1の導体121および第2の導体122を取り囲む壁部123Bとを有している。メカスイッチ12では、操作部124が操作されることにより、本体123の内部において、第1の導体121と第2の導体122との接触および離間が繰り返しなされるようになっている。操作部124は、例えば第1の導体121に固定されており、それら第1の導体121と第2の導体122とを接触させる接触動作、および第1の導体121と第2の導体122とを離間させる離間動作を行うものである。メカスイッチ12では、図4に示したように、操作部124に対し矢印の方向に外力が付与され、操作部124が押下されると第1の導体121と第2の導体122との接触操作がなされ、遮断状態から、電池6から光センサ5への電力供給がなされる通電状態、すなわちオン状態へ移行する。なお、操作部124に対する外力は、歯Tにシェル10が装着されることにより、歯Tの側面TSと当接する内側部分102を介して付与されるようになっている。操作部124に対する外力が解放されると、操作部124が元の位置に戻り、第1の導体121と第2の導体122との離間操作がなされ、通電状態から、電池6から光センサ5への電力供給が遮断される遮断状態、すなわちオフ状態へ移行する。なお、図4では、第2の導体122が本体123に固定されており、第1の導体121が第2の導体122に対し相対的に変位可能に構成された例を表している。図4では、オン状態における第1の導体121を破線で示し、オフ状態における第1の導体121を実線で示している。
【0018】
送受信モジュール8は、例えば図6に示したように、送受信部3と、信号処理部4とを有している。一般的には、送受信部3と信号処理部4とが一体化されたチップで流通している。送受信部3は、生体情報検出モジュール2の外部に設けられたネットワーク接続器7との無線方式でのデータ通信を行うアンテナである。なお、ネットワーク接続器7は、パーソナルコンピュータやタブレット端末、あるいはスマートフォンなどの、インターネット等のネットワークに接続可能な通信デバイスである。また、信号処理部4は、例えばメモリやマイクロプロセッサ、アナログ-デジタル(A/D)コンバータなどを含む信号処理回路である。信号処理部4には、光センサ5からの検出信号(出力信号)が入力されるようになっている。信号処理部4は、電池6からの電力供給を受けて駆動し、光センサ5からの出力信号に基づき、送受信部3において送信可能なデジタルデータ信号を生成する。送受信部3は、電池6からの電力供給を受けて駆動し、信号処理部4からのデジタルデータ信号を、ネットワーク接続器7を介して外部ネットワークに無線送信可能である。さらに、送受信部3は、外部ネットワークからの制御信号を、ネットワーク接続器7を介して無線受信可能である。なお、図1等では、実装基板11が矩形状の平面形状を有し、電池6と、送受信モジュール8と、光センサ5とが一列に並ぶように配置されているが、本開示はそれに限定されるものではなく、電池6、送受信モジュール8および光センサ5のレイアウトを任意に設定できる。
【0019】
光センサ5は、例えば反射型光電センサであり、例えば口腔内の頬CHの内面に光を照射し、頬CHの内面からの反射光を受光することにより、生体情報を検出するものである。具体的には、光センサ5は、光を発することのできる発光ダイオードなどの発光素子5Aと、その発光素子5Aから発せられた光を受光可能なフォトダイオードなどの受光素子5Bとを含むものである。発光素子5Aから発せられる光は、例えば400nm以上1000nm以下の波長を有する。生体情報検出モジュール2を覆う封止部分10Aの外側部分101のうち発光素子5Aを覆う部分は、発光素子5Aから発せされた光を透過可能な第1の透光部分10T1となっている(図3参照)。また、封止部分10Aの外側部分101のうち受光素子5Bを覆う部分は、発光素子5Aから発せされたのち頬CHの内面において反射した光を透過可能な第2の透光部分10T2となっている(図3参照)。第1の透光部分10T1および第2の透光部分10T2も熱可塑性高分子化合物により形成されているとよい。なお、第1の透光部分10T1の構成材料と第2の透光部分10T2の構成材料とが実質的に同じ材料、例えば上述した熱可塑性高分子化合物のうちの透明なものにより形成されているとよい。さらに、第1の透光部分10T1と第2の透光部分10T2とが分離されておらず、連続して形成されていてもよい。一括形成に有利だからである。また、封止部分10Aの全体、あるいは外側部分101の全体が透明体であってもよいし、シェル10の全体が透明体であってもよい。すなわち、シェル10は、発光素子5Aを覆う第1の透光部分10T1および受光素子5Bを覆う第2の透光部分10T2(これらをまとめて透光部分10Tという。)が透光性を有していればよく、透光部分10T以外の部分は遮光性を有していても透光性を有していてもよい。
【0020】
発光素子5Aは、第1の透光部分10T1を介して頬CHの内面と対向するように配置され、受光素子5Bは、第2の透光部分10T2を介して頬CHの内面と対向するように、発光素子5Aに近接して配置されている。したがって、発光素子5Aから発せられた光は、シェル10の第1の透光部分10T1を透過して頬CHの内面に到達して頬CHの内面において反射する。頬CHの内面からの反射光は、シェル10の第2の透光部分10T2を透過して受光素子5Bに入射するようになっている。受光素子5Bに入射する反射光は、例えば血流量などの生体情報を含んでいる。光センサ5は、例えば、上述の生体情報を用いて脈波を検出する脈波センサであり、上述の生体情報を用いて経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)および脈拍数を検出するパルスオキシメータであり、あるいは、上述の生体情報を用いてグルコース濃度を検出するグルコースセンサである。なお、光センサ5の受光素子5Bは、取得を目的とする生体情報の種類により、受光波長域が異なる。図7は、各種生体情報の取得に適したデバイスにおける受光波長域を表している。図7に示したように、脈波センサの受光素子5Bとしては570nm前後の波長の光を受光可能なものが用いられ、経皮的動脈血酸素飽和度を測定するパルスオキシメータの受光素子5Bとしては約600nm~1000nm程度の波長の光を受光可能なものが用いられ、グルコース濃度を検出するグルコースセンサの受光素子5Bとしては750nm前後の波長の光を受光可能なものが用いられる。
【0021】
[生体情報検出装置1の製造方法]
次に、生体情報検出装置1の製造方法について、上記図1図7に加えて図8Aおよび図8Bを参照して説明する。図8Aは、生体情報検出装置1の製造方法の一工程を表す説明図であり、図8Bは、図8Aに続く一工程を表す説明図である。なお、図8Aおよび図8Bは、本製造工程の説明に関する主要な部材のみを記載した概略図である。
【0022】
この生体情報検出装置1を製造するにあたっては、まず、上述の生体情報検出モジュール2を用意する。次に、この生体情報検出モジュール2を、例えば図8Aに示したように、熱可塑性高分子化合物からなる2枚の封止フィルム9A,9Bの間に載置する。ここで、封止フィルム9Aは保持部材21に保持されており、封止フィルム9Bは保持部材21に保持されている。その一方で、この生体情報検出装置1を装着する予定のユーザの歯Tおよび歯茎Gに整合した歯型23を用意する。歯型23は、例えば型押しや3Dプリンタなどにより成形することができる。そののち、封止フィルム9A,9Bのうちの光センサ5の近傍部分を、ヒータ24により280℃程度の温度で加熱しつつ、図8Bに示したように、歯型23を封止フィルム9A,9Bに押し付けてモールド成形を行う。なお、ヒータ24による加熱温度は上述の280℃に限定されるものではなく、例えば100℃~300℃の範囲で任意に設定可能である。モールド成形の際には、歯型23の抜き穴23Hから歯型23と封止フィルム9A,9Bとの隙間の空気を排出することで、歯型23の表面23Sと封止フィルム9A,9Bとを密着させる。これにより、封止フィルム9A,9Bが歯型23の表面23Sに沿った形状に変形しつつ、溶着される。そののち、歯型23および溶着された封止フィルム9A,9Bを冷却することにより、マウスピース状のシェル10が得られる。ここで、シェル10を形成する際には、歯Tにシェル10が装着されることにより操作部124が操作されて遮断状態から通電状態へ移行可能となり、歯Tに装着されたシェル10が歯Tから取り外されることにより通電状態から遮断状態へ移行可能となるように、メカスイッチ12を密封するようにする。最後に、シェル10を歯型23から剥離することにより、生体情報検出装置1が得られる。このように、シェル10を、モールド成型により一括形成するようにしたので、効率的に生体情報検出装置1を製造することができる。なお、図8Aおよび図8Bでは、極めて簡略化された形状の表面23Sを有する歯型23を例示しているが、実際には歯型23の表面23Sは個々のユーザに応じた固有の形状を有する。
【0023】
[生体情報検出装置1の作用]
生体情報検出装置1では、図2Aの非装着状態から、封止部分10Aの内側部分102と対向部分10Bとの間の空間10Vに歯Tが挿入されることにより、図2Bの装着状態へ移行する。その際、保護部分としての内側部分102が第1の変位方向(図2Bに示した+X方向)に変位する。すなわち、歯Tにシェル10が装着されることにより、内側部分102が歯Tと操作部124との間に挟まれるようになっている。このため、歯Tから内側部分102を介して操作部124へ外力が付与され、遮断状態から通電状態へ移行する。反対に、空間10Vから歯Tが離脱することにより、図2Bの装着状態から図2Aの非装着状態へ移行する。その際、保護部分としての内側部分102が第2の変位方向(図2Aに示した-X方向)に変位する。すなわち、歯Tに装着されたシェル10が歯Tから取り外されることにより、内側部分102が第2の変位方向(図2Aに示した-X方向)に変位し、操作部124が操作されて通電状態から遮断状態へ移行するようになっている。
【0024】
[生体情報検出装置1の効果]
このように、本実施の形態の生体情報検出装置1によれば、生体情報検出モジュール2にメカスイッチ12を設け、電池6から光センサ5および送受信モジュール8への電力供給がなされる通電状態と、その電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うようにした。このため、生体情報の検出を実施したい場合のみメカスイッチ12をオン状態とし、光センサ5および送受信モジュール8への電力供給を行えばよいので、電力供給を常時行わなくて済む。したがって、消費電力の低減が可能であり、電池6が一次電池であれば電池6の長寿命化を図ることができ、電池6が二次電池であれば充電頻度を低下させることができる。あるいは、電池6の電池容量を低減できるので、電池6の小型化が可能であり、ひいては生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1自体の小型化を図ることができる。
【0025】
特に、生体情報検出装置1では、図2Aの非装着状態から図2Bの装着状態へ移行することにより自動的に操作部124が操作されて遮断状態から通電状態へ移行する。反対に、図2Bの装着状態から図2Aの非装着状態へ移行することにより自動的に操作部124が操作されて通電状態から遮断状態へ移行する。このため、ユーザがオン操作およびオフ操作を行う煩わしさから解放されるうえ、ユーザの操作に頼ることなく、確実に生体情報検出装置1を起動することができ、また、無駄な電力の消費を回避できる。
【0026】
また、生体情報検出装置1によれば、光センサ5やメカスイッチ12を含む生体情報検出モジュール2が保持部材としてのシェル10により密封されているので、高い防水性および高い動作安全性が確保される。よって、生体情報検出装置1は、長期信頼性に優れる。
【0027】
また、生体情報検出装置1によれば、光センサ5により生体情報を含む出力信号を取得し、その出力信号を、信号処理部4を介して送受信部3からネットワーク接続器7へ送信し、さらには外部のネットワークへ送信することができる。この出力信号を解析することにより、生体情報検出装置1が装着されるユーザである患者の、疾患に起因する特異的な生体情報を得ることができる。また、健康なユーザにおける日常の健康状態の変化を把握して、その健康状態の維持管理を行うこともできる。これらの情報はユーザ本人や担当医にとって非常に有益な情報となりうる。
【0028】
また、シェル10には第1の透光部分10T1および第2の透光部分10T2が設けられており、それらを介してシェル10の外界へ光を放出すると共に、その光を外界から取り込むようにしている。このため、例えば頬CHの内面などから、光センサ5が生体情報を精度よく得ることができる。
【0029】
さらに、生体情報検出装置1によれば、シェル10の封止部分10Aと対向部分10Bとの間に歯Tを挟持するようにしたので、光センサ5と、頬CHの内面との相対位置が安定し、検出精度の向上が見込める。
【0030】
また、光センサ5では、頬CHの内面と対向配置された発光素子5Aから光を頬CHの内面へ照射し、頬CHの内面からの反射光を、頬CHの内面と対向配置された受光素子5Bにより検出するようにした。このため、例えば口腔外の皮膚に光を照射し、その反射光を検出するようにした場合と比較して、より高精度の生体情報が得られる。また、比較的安定した温度環境にある口腔内に生体情報検出モジュール2が常時配置されるので、生体情報検出モジュール2が口腔外、例えば腕や指に装着するようにした場合と比べ、より高精度の生体情報が得られる。
【0031】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~5)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0032】
[変形例1]
図9Aおよび図9Bは、本開示の第1の変形例(変形例1)としての生体情報検出装置1Aの概略構成を表す断面図であり、上記実施の形態で説明した生体情報検出装置1を記載した図2Aおよび図2Bに対応するものである。すなわち、図9Aは、口腔内に装着される前の、遮断状態の生体情報検出装置1Aを表し、図9Bは、口腔内の歯Tに装着された通電状態の生体情報検出装置1Aを表している。この生体情報検出装置1Aは、シェル10の内側部分102が突起部分102Tを含むようにしたことを除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。
【0033】
図9Aおよび図9Bに示したように、生体情報検出装置1Aでは、シェル10の内側部分102が、メカスイッチ12の操作部124の外面の形状に沿って湾曲した形状を有する突起部分102Tを含んでいる。したがって、図9Aに示した非装着状態では、内側部分102のうちの突起部分102Tが対向部分10Bへ向けて、-X方向へ突出している。図9Bに示したように、生体情報検出装置1Aが歯Tに装着されると、すなわち、内側部分102と対向部分10Bとの間の空間10Vに歯Tが挿入されると、歯Tの側面TSに突起部分102Tの内面102Sが当接する。このため、突起部分102Tが第1の変位方向(+X方向)へ歯Tにより付勢されて変位し、外側部分101と内側部分102との間に挟持されたメカスイッチ12の操作部124が本体123へ押し込まれる。この結果、遮断状態から通電状態へ移行する。反対に、内側部分102と対向部分10Bとの間の空間10Vから歯Tが離脱することにより、図9Bの装着状態から図9Aの非装着状態へ移行する。その際、保護部分としての内側部分102が第2の変位方向(-X方向)に変位する。すなわち、歯Tに装着されたシェル10が歯Tから取り外されることにより、内側部分102が第2の変位方向(-X方向)に変位し、操作部124が操作されて通電状態から遮断状態へ移行するようになっている。
【0034】
このように、生体情報検出装置1Aでは、シェル10の内側部分102が、メカスイッチ12の操作部124の外面の形状に沿って湾曲した形状を有する突起部分102Tを含むようにしたので、歯Tに装着した際に、歯Tによる付勢力をより効果的にメカスイッチ12の操作部124に伝達することができる。そのため、生体情報検出装置1Aでは、ユーザによる装着動作および離脱動作とそれぞれ連動して、通電状態と遮断状態との切り替えを確実に行うことができる。
【0035】
[変形例2]
図10Aおよび図10Bは、本開示の第2の変形例(変形例2)としての生体情報検出装置1Bの概略構成を表す断面図であり、上記実施の形態で説明した生体情報検出装置1を記載した図2Aおよび図2Bに対応するものである。すなわち、図10Aは、口腔内に装着される前の、遮断状態の生体情報検出装置1Bを表し、図10Bは、口腔内の歯Tに装着された通電状態の生体情報検出装置1Bを表している。この生体情報検出装置1Bは、歯Tの側面TSのうち、メカスイッチ12の操作部124と対応する位置に取り付けられた突起部材TTをさらに有するようにしたことを除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。
【0036】
図10Aおよび図10Bに示したように、生体情報検出装置1Bでは、突起部材TTを、歯Tの側面TSのうち、メカスイッチ12の操作部124と対応する位置に取り付けるようにした。図10Aに示した非装着状態では、内側部分102と外側部分101とは互いに平行に配置されている。図10Bに示したように、生体情報検出装置1Bが歯Tに装着されると、すなわち、空間10Vに歯Tが挿入されると、歯Tの側面TSに取り付けられた突起部材TTが内側部分102の内面102Sに当接する。このため、内側部分102が第1の変位方向(+X方向)へ突起部材TTにより付勢されて変位し、外側部分101と内側部分102との間に挟持されたメカスイッチ12の操作部124が本体123へ押し込まれる。この結果、遮断状態から通電状態へ移行する。反対に、空間10Vから歯Tが離脱することにより、図10Bの装着状態から図10Aの非装着状態へ移行する。その際、保護部分としての内側部分102が第2の変位方向(-X方向)に変位する。すなわち、歯Tに装着されたシェル10が歯Tから取り外されることにより、内側部分102が第2の変位方向(-X方向)に変位し、操作部124が操作されて通電状態から遮断状態へ移行するようになっている。
【0037】
このように、生体情報検出装置1Bでは、歯Tの側面TSのうち、メカスイッチ12の操作部124と対応する位置に取り付けられた突起部材TTを有するようにしたので、歯Tに装着した際に、歯Tによる付勢力をより効果的にメカスイッチ12の操作部124に伝達することができる。そのため、生体情報検出装置1Bでは、ユーザによる装着動作および離脱動作とそれぞれ連動して、通電状態と遮断状態との切り替えを確実に行うことができる。
【0038】
[変形例3]
図11は、本開示の第3の変形例(変形例3)としての生体情報検出装置1Cの概略構成を表す断面図である。この生体情報検出装置1Cは、シェル10のうち歯Tの歯冠部TAを覆う部分に歪センサ31を埋設するようにしたものである。歪センサ31は、メカスイッチ12を介して電池6と電力線により接続されると共に、信号処理部4と通信線により接続されている。歪センサ31は、電池6からの電力供給を受け、信号処理部4に対し検出信号を送信するようになっている。生体情報検出装置1Cは、この点を除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。したがって、この生体情報検出装置1Cにおいても、上記実施の形態の生体情報検出装置1と同様の効果が得られる。そのうえ、歪センサ31を設けることにより、被験者が上顎の歯と下顎の歯とを咬み合せた際の咬合力や、歪センサ31に触れる被験者の頬や舌の圧力を測定することができる。咬合力や頬および舌の圧力などの情報を用いることで、例えば義歯やインプラントなどの人工の歯に必要とされる構造物強度の情報や歯列情報を得ることができる。なお、歪センサ31としては、例えば磁気歪みを利用した磁歪センサが適用可能である。また、歪センサ31の代わりに圧電素子などを用いた圧力センサの適用可能性もある。
【0039】
[変形例4]
図12は、本開示の第4の変形例(変形例4)としての生体情報検出装置1Dの概略構成を表す斜視図である。この生体情報検出装置1Dは、例えば生体情報検出モジュール2に、加速度センサ32をさらに設けるようにしたものである。加速度センサ32は、電池6と電力線により接続されると共に、信号処理部4と通信線により接続されている。加速度センサ32は、電池6からの電力供給を受け、信号処理部4に対し検出信号を送信するようになっている。生体情報検出装置1Dは、この点を除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。したがって、この生体情報検出装置1Dにおいても、上記実施の形態の生体情報検出装置1と同様の効果が得られる。そのうえ、加速度センサ32を設けることにより、被験者の例えば上顎に対する下顎の動きを検出することができる。上顎と下顎との相対的な動きを検出することにより、例えば義歯やインプラントなどの人工の歯に必要とされる構造物強度の情報や、顎関節異常の有無などの診断に活用できる可能性がある。また、加速度センサ32の代わりにジャイロセンサを用いてもよい。
【0040】
[変形例5]
上記実施の形態の生体情報検出装置1は、口腔内の頬CHの内面に光を照射し、頬CHの内面からの反射光を受光することにより、生体情報を検出するようにしたものである。これに対し、図13に示した本開示の第5の変形例(変形例5)の生体情報検出装置1Eは、歯茎Gに光を照射し、歯茎Gからの反射光を受光することにより、生体情報を検出するものである。生体情報検出装置1Eでは、生体情報検出モジュール2のうちメカスイッチ12が歯Tの側面TSと対向する位置に配置され、光センサ5などのその他の部分は歯茎Gと対向する位置に配置される。生体情報検出装置1Eにおけるシェル10は、生体情報検出モジュール2のうちのその他の部分を封止する封止部分10Cをさらに有している。生体情報検出装置1Eでは、メカスイッチ12と、電池6、光センサ5および送受信モジュール8とが図示しない配線によりそれぞれ繋がれている。生体情報検出装置1Eでは、発光素子5Aは、第1の透光部分10T1を介して歯茎Gと対向するように配置され、受光素子5Bは、第2の透光部分10T2を介して歯茎Gと対向するように、発光素子5Aに近接して配置されている。したがって、生体情報検出モジュール2を覆うシェル10の透光部分10Tは、生体情報検出モジュール2を挟んで歯茎Gと反対側に位置する外側部分101に設けられている。生体情報検出装置1Eは、これらの点を除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。この生体情報検出装置1Eにおいても、上記実施の形態の生体情報検出装置1と同様の効果が得られる。
【0041】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、上記実施の形態等では、連続する2つの歯冠部を覆うように装着されるシェル10を有する生体情報検出装置1を例示したが、本開示の生体情報検出装置はこれに限定されるものではない。本開示の生体情報検出装置は、例えば1つの歯冠部のみを覆うように装着されるシェルを有するものであってもよいし、3以上の歯冠部を覆うように装着されるシェルを有するものであってもよい。但し、誤飲防止を考慮すると、できる限り大きなシェルを有することが望ましく、例えば下顎の全ての歯もしくは上顎の全ての歯を覆うサイズのシェルを有することがより望ましい。
【0043】
また、上記実施の形態では、生体情報検出装置が1つのセンサを有する場合について説明したが、本開示の生体情報検出装置は2以上のセンサを有するようにしてもよい。さらに、上顎および下顎の双方に生体情報検出装置を装着するようにしてもよい。
【0044】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0045】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
口腔内に設置される生体情報検出装置であって、
センサと、
電池と、
操作部を含み、前記操作部が操作されることにより、前記電池から前記センサへの電力供給がなされる通電状態と、前記電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うメカスイッチと、
前記操作部を覆う保護部分を含み、前記口腔内に装着されて前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを全て密封しつつ保持する保持部材と
を有し、
前記口腔内に前記保持部材が装着されることにより、前記保護部分が第1の変位方向へ変位し、前記操作部が操作されて前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能である
生体情報検出装置。
(2)
前記保持部材は、前記口腔内における歯に装着可能であり、
前記歯に前記保持部材が装着されることにより、前記歯から前記保護部分を介して前記操作部へ外力が付与され、前記遮断状態から前記通電状態へ移行するようになっている
上記(1)記載の生体情報検出装置。
(3)
さらに、前記口腔内に装着された前記保持部材が前記口腔内から取り外されることにより、前記保護部分が第2の変位方向へ変位し、前記操作部が操作されて前記通電状態から前記遮断状態へ移行可能である
上記(1)記載の生体情報検出装置。
(4)
前記保持部材は、前記口腔内における歯に装着可能であり、
前記保持部材は、前記歯を把持する把持部を含み、
前記把持部に前記歯が挿入されることにより、前記保護部分が前記第1の変位方向に変位し、
前記把持部から前記歯が離脱することにより、前記保護部分が前記第2の変位方向に変位するようになっている
上記(3)記載の生体情報検出装置。
(5)
前記保護部分は、前記口腔内に前記保持部材が装着されることにより、前記歯と前記操作部との間に挟まれるようになっている
上記(4)記載の生体情報検出装置。
(6)
前記保持部材は、前記保護部分と対向する対向部分をさらに含み、前記保護部分と前記対向部分との間に前記歯を把持することにより前記口腔内に装着される
上記(5)記載の生体情報検出装置。
(7)
前記保護部分は、前記遮断状態において、前記メカスイッチと反対側に突出した凸面を含む
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(8)
前記保持部材における前記保護部分は、前記操作部の外面の形状に沿った形状をなす突起部分を含む
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(9)
前記歯に取り付けられた突起部材をさらに有し、
前記歯に前記保持部材が装着されることにより前記突起部材と前記保護部分とが当接し、前記保護部分を介して前記突起部材から前記操作部へ外力が付与され、前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能である
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(10)
前記メカスイッチは、モーメンタリスイッチである
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(11)
前記メカスイッチは、
第1の導体と、第2の導体とをさらに含み、
前記操作部へ外力が付与されて前記第1の導体と前記第2の導体とが接触することにより、前記遮断状態から前記通電状態へ移行し、
前記操作部への前記外力が除去されて前記第1の導体と前記第2の導体とが離間することにより、前記通電状態から前記遮断状態へ移行する
上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(12)
前記センサは、光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含み、
前記保持部材は、前記発光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第1の透光部分および前記受光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第2の透光部分を含む
上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(13)
前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎と対向するように配置され、
前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して前記歯茎と対向するように配置されている
上記(12)記載の生体情報検出装置。
(14)
前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して頬の内面と対向するように配置され、
前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して前記頬の内面と対向するように配置されている
上記(12)記載の生体情報検出装置。
(15)
前記保持部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、
前記保持部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記信号処理部からの前記データ信号を外部装置に送信可能であると共に前記外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部と
をさらに有する
上記(11)から(14)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(16)
前記第1の透光部分および前記第2の透光部分は、熱可塑性高分子化合物により形成されている
上記(11)から(15)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(17)
前記センサは、脈波センサ、パルスオキシメータまたはグルコースセンサである
上記(1)から(16)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(18)
物理量を測定する他のセンサをさらに有する
上記(1)から(17)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(19)
歯または歯茎に装着される生体情報検出装置の製造方法であって、
センサと、電池と、操作部を含んで前記操作部が操作されることにより電池からセンサへの電力供給がなされる通電状態と前記電力供給が遮断される遮断状態との切り替えを行うメカスイッチと、をそれぞれ用意することと、
前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを一対の封止フィルムの間に挟んだのち、前記一対の封止フィルムを加熱しつつモールド成型することにより、前記操作部を覆う保護部分と、前記保護部分との間に前記歯を挟持可能な対向部分とを含み、前記センサ、前記電池および前記メカスイッチを密封しつつ前記歯に保持可能な保持部材を形成することと
を含み、
前記保持部材を形成する際に、前記歯に前記保持部材が装着されることにより、前記操作部が操作されて前記遮断状態から前記通電状態へ移行可能となり、前記歯に装着された前記保持部材が前記歯から取り外されることにより前記通電状態から前記遮断状態へ移行可能となるように、前記メカスイッチを密封する
生体情報検出装置の製造方法。
【符号の説明】
【0046】
1,1A~1E…生体情報検出装置、2…生体情報検出モジュール、3…送受信部、4…信号処理部、5…光センサ、6…電池、7…ネットワーク接続器、8…送受信モジュール、9A,9B…封止フィルム、10…シェル、10A…封止部分、101…外側部分、102…内側部分、102T…突起部分、10B…対向部分、10V…空間、11…実装基板、12…メカスイッチ、121…第1の導体、122…第2の導体、123…本体、123A…底部、123B…壁部、123G…保護部、124…操作部、23…歯型、24…ヒータ、31…歪センサ、32…加速度センサ、G…歯茎、T…歯。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13