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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】広告配信システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20220701BHJP
【FI】
G06Q30/02 446
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017228607
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019101521
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】514253552
【氏名又は名称】株式会社TimeTree
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】深川 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】吉本 安寿
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-142826(JP,A)
【文献】特開2012-128538(JP,A)
【文献】特開2002-044637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カレンダー機能を備えたアプリケーションソフトウェアに入力されたユーザの予定データを取得する予定データ取得機能と、
取得したユーザの予定データを分析し、当該ユーザの予定の内容を特定する予定分析・特定機能と、
特定されたユーザの予定内容に基づいて、当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測する広告在庫予測計測機能と、
予測計測された広告在庫をもとに、ユーザに広告配信を希望する広告主へ広告枠を販売する広告在庫販売機能と、
販売された広告在庫へ広告主の広告を配信する広告配信機能と、
を備え
前記広告在庫予測計測機能は、まだ将来の予定内容に対して、予定入力後の所定の期間及び/又は予定履行日前の所定の期間に当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することを特徴とする広告配信システム。
【請求項2】
予定分析・特定機能は、取得したユーザの予定データの他に、予定データに関連して入力されたユーザの追加データを分析し、当該ユーザの予定の内容を特定することを特徴とする請求項1記載の広告配信システム。
【請求項3】
予定分析・特定機能は、予定の入っていない日時のデータもユーザの予定データとして分析し、当該ユーザの予定の内容を特定することを特徴とする請求項1又は2記載の広告配信システム。
【請求項4】
広告在庫予測計測機能は、既に過去の予定内容に対して、現時点以降、広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の広告配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ユーザへ最適な広告を配信するための広告配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、2015年3月よりスマートフォンやタブレット・パソコン対応のカレンダー共有アプリケーション「TimeTree」(登録商標)を提供している。
ところで、これまでインターネット(Web)による広告配信といえば、ユーザが過去に入力したキーワードをもとに、そのキーワードに応じた広告を配信するものであった。
しかし、これでは必ずしもユーザに必要とされる広告を配信できているとは言えないこともあった。
【0003】
そこで、本願出願人は、その提供しているカレンダー共有アプリケーションの特性をいかして、ユーザへ最適な広告を配信すべく本願発明を完成するに至った。
ここで、カレンダーやスケジュールに基づいて広告配信をするものとして、特許文献1及び2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-76001号公報
【文献】特開2005-17967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ネットワークを介してスケジュール情報を入力・参照するカレンダーサービスにおける情報の提供方法であって,特にユーザのスケジュールにマッチした広告等のイベント情報を,ユーザに知らせることができるようにしたイベント情報提供方法に関するとして、ネットワーク2を介して,ユーザが個人やグループのスケジュールを登録し,参照することが可能なサービスを提供するカレンダーサービス提供装置1において,アクション対象抽出部103は,ユーザの入力したスケジュールからユーザの行動を抽出する。広告選択部104は,抽出した行動に基づいて送信する広告データを,あらかじめ広告の表示条件の記載されている広告選択表106から選択する。広告送信部105は,選択した広告データまたはその広告データへのURLをユーザ端末3へ送信する。スケジュールから抽出する行動として,アクションと対象という複数の単語を抽出し,これらの複数のキーワードを用いて広告選択表106を検索するものである。
ここでは、ユーザのスケジュールから抽出した複数のキーワードを用いてイベント情報選択表(広告選択表)から確度の高いイベント情報(広告)を選択できるとされている。
【0006】
また、特許文献2は、目的とするユーザに効果的に広告を提供するカレンダー表示装置、プログラムを提供することを目的とし、広告受信手段は、ネットワークを介した他の通信装置より所定の広告情報を受信し、広告表示手段は、暦に加えて上記受信した広告情報を表示するものである。
ここでも、ユーザがカレンダーに入力したイベントからそれに該当或いはふさわしいと思われる広告をユーザの当該カレンダーに提供(表示)される。
【0007】
確かに、上記特許文献1又は2のようにスケジュール表やカレンダーに入力された情報(データ)に基づいて選択された広告を配信すれば効果的な広告配信ができるかもしれない。
しかし、実際に上記のような発想で広告配信システムを運用しようとすると次のような課題がある。
(1)ユーザがスケジュール表やカレンダーに入力した情報(データ)だけでは情報量が少なすぎて最適な広告を選択できない場合も多い。特許文献1では、入力されたスケジュール文から「アクション」と「対象」を抽出し、この複数のキーワードを利用して広告等とのマッチングを行うようであるが、それだけで効果的な広告配信が可能となるのか疑問である。
(2)これまではユーザに対してどの広告を配信するのかに力点が置かれていたが、いつ配信するかという配信のタイミングも非常に重要である。この点について特許文献1及び2では特に言及されていない。また、本願出願人が特許調査した限り、この点について言及した特許文献も発見されなかった。
(3)スケジュール表やカレンダーに入力された情報(データ)は、未来の予定もあり、過去の予定もある。例えば、特許文献1及び2は、明示の記載はないが、未来の予定に対する広告の配信を行うものである。しかし、過去の予定からもそのユーザの嗜好や特性は分析・特定できるので、未来の予定だけを対象とする広告配信は、スケジュール表やカレンダーに入力された情報(データ)を十分に活用できていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これに対して、本願発明者は、本願発明によって上記した課題を解決し、真にユーザへ最適な広告を配信することを可能にした。
第1の発明は、カレンダー機能を備えたアプリケーションソフトウェアに入力されたユーザの予定データを取得する予定データ取得機能と、取得したユーザの予定データを分析し、当該ユーザの予定の内容を特定する予定分析・特定機能と、特定されたユーザの予定内容に基づいて、当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測する広告在庫予測計測機能と、予測計測された広告在庫をもとに、ユーザに広告配信を希望する広告主へ広告枠を販売する広告在庫販売機能と、販売された広告在庫へ広告主の広告を配信する広告配信機能と、を備えたことを特徴とする広告配信システムである。
第2の発明は、予定分析・特定機能が、取得したユーザの予定データの他に、予定データに関連して入力されたユーザの追加データを分析し、当該ユーザの予定の内容を特定することを特徴とする同広告配信システムである。
第3の発明は、予定分析・特定機能が、予定の入っていない日又は時間帯もユーザの予定データとして分析し、当該ユーザの予定の内容を特定することを特徴とする同広告配信システムである。
第4の発明は、広告在庫予測計測機能が、まだ将来の予定内容に対して、予定入力後の所定の期間及び/又は予定履行日前の所定の期間に当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することを特徴とする同広告配信システムである。
第5の発明は、広告在庫予測計測機能が、既に過去の予定内容に対して、現時点以降、広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することを特徴とする同広告配信システムである。
【発明の効果】
【0009】
本願発明のよれば、以下の効果を有する。
(1)ユーザの予定内容を特定するための予定データとして、カレンダー機能を備えたアプリケーションソフトウェアに入力されたユーザのデータ、すなわち、タイトル・日付・場所・メモなどといった予定に関する全てのデータを使用するので、予定分析・特定機能によって、確実に当該ユーザの予定内容を特定できる。
(2)かりに分析するための予定データが不足する場合には、ユーザに対して追加データの入力を促すようにしてユーザにデータを入力させ、予定内容を分析・特定できるまでの予定データ量にすることで、当該ユーザの予定内容を特定できる。
(3)広告在庫予測計測機能を備えることで、ユーザへ広告を配信する回数、すなわち、広告を配信するタイミングを広告在庫として予測計測するので、ユーザに対して効果的なタイミングで広告を配信できる。
(4)ユーザの予定内容を将来(未来)の予定内容と過去の予定内容に分けて、広告在庫予測計測機能がそれぞれの予定内容に合わせて広告在庫を予測計測することで、ユーザの全ての予定データ(未来・過去を問わず)を活用して、ユーザに対して効果的な広告配信ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スマートフォンにカレンダー(マンスリー)を表示している画像。
図2】オプション表示の画像。
図3】コミュニケーションスペースの画像。
図4】本願発明に係る広告配信システムを説明する説明図。
図5】スマートフォンに広告が配信された画像。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の実施形態を、本願出願人の提供するカレンダー共有アプリケーションを例にして説明する。
まず、カレンダー共有アプリケーションとは、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末やパソコンなどにアプリケーションソフトウェアをダウンロードし、家族・職場・友人・恋人などのグループでカレンダーを共有するサービスである(但し、個人のみの単独で利用することも可能である)。
【0012】
図1に示すように、このカレンダー共有アプリケーションをダウンロードして利用可能になったスマートフォン10の画面上には、カレンダー20が表示されて、ユーザがそのカレンダー20に予定を入力するとともに、カレンダー20を共有するグループの他のユーザの入力した予定がそのカレンダー20に反映される。予定の入力は、タイトルや開始時間など予定に必要な情報となっている。
【0013】
カレンダー共有アプリケーションには、次のような機能も備えている。
カレンダー画面の「オプション表示」を選択することで、図2に示すように、繰り返し設定や場所・メモなどより詳細な情報を入力(登録)できる。
同じくカレンダー画面の「参加者登録」を選択することで、カレンダー20を共有するグループに参加するユーザを登録できる。
【0014】
また、図3に示すように、予定ごとにコミュニケーションスペースがあり、カレンダーを共有するユーザ間でコメント(テキスト)や画像、URLなどのやりとり(送受信)ができるチャット機能を備えている。
さらに、カレンダーの設定機能として、予定ごとに色を設定することも可能である。
【0015】
続いて、図4図5に基づいて本願発明に係る広告配信システムについて説明する。
広告配信システム30は、カレンダー20を共有するユーザA,B,C・・・Xがカレンダー20に入力した予定データ及び予定データに関連して入力された追加データを取得する「予定データ取得機能」を備える。予定データ及び追加データには、ユーザが積極的に入力して得られた直接的なデータの他に、入力時刻や入力回数など入力行為等によって派生して得られる間接的なデータも含まれる。
【0016】
予定データ及び追加データの具体例としては、次のようなものである(一部使用も可)が、これに限られるものではない。
・予定名(タイトル)
・日付及び時刻
・参加者(予定への参加者)
・場所(駅名、店名など予定を行う場所)
・URL(飲食店などのホームページ)
・利用用途(家族利用・仕事利用・恋人利用など)
・カレンダーへの参加人数
・予定の色
・予定の繰り返し登録(毎週水曜日にまとめて登録してる等)
・予定の作成者/編集者かどうか
・メモ(予定ごとに備考欄があるのでそこに記載されている内容)
・コメント(予定ごとにチャット機能ができるのでテキストや画像、URLなどを含むその内容)
・広告に対する広告非表示アクション(広告の配信拒否の設定)
・性別
・年齢
・独身・既婚などの婚歴(現在のステータス)
・子供の有無
【0017】
次に、その取得したユーザの予定データ及び追加データを分析し、当該ユーザの予定の内容を特定する「予定分析・特定機能」を備える。
分析の例としては、予定を分類する予定カテゴリを用意し(例:大分類-教育カテゴリ、中分類-子育てカテゴリ、中分類-小学生カテゴリ)、取得した予定データ及び追加データをそれに照らし合わせてカテゴリに分類するなどである。なお、AI(人工知能)の技術などを利用して、予定データ及び追加データを機械学習(共通する特徴を抽出して自動的に分析していく仕組み)によりカテゴリに分類していくこともよい。
また、分析は、予定の入っている日時のデータだけではなく、予定の入っていない日時のデータもその対象となる。すなわち、予定の入っていない日時をターゲットにした広告を配信すれば広告効果を期待できるからである。
その他に、予定に参加しているユーザのリアクション(例えば、コメントが多いなど)を分析することで、重要度や実行確度が分かり、予定の精度が上がる。
なお、ユーザが広告に対する広告非表示アクション(広告の配信拒否の設定)をしている追加データを取得している場合には、当該ユーザには広告効果を期待できないので、広告配信をしない処理を行う。
【0018】
さらに、特定されたユーザの予定内容に基づいて、当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測する「広告在庫予測計測機能」を備える。
広告在庫予測計測機能には、未来の予定をターゲティングしたものと過去の予定をターゲティングしたものとが挙げられる。
【0019】
前者(未来予定ターゲティング)は、まだ将来の予定内容に対して、予定入力後の所定の期間及び/又は予定履行日前の所定の期間に当該ユーザへ広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することである。
すなわち、カレンダーに入っている未来の予定内容に対して、その予定内容にあったターゲティング配信を行うものであり、例えば、旅行の予定が入っているユーザに対して、アイマスクの広告を配信することである。その広告配信のタイミングは、ターゲティング対象予定の予定入力直後の1週間、ターゲティング対象予定の予定当日の1か月~2週間前などとする。予定入力直後や予定当日の前が広告効果を期待できるからである。
【0020】
後者(過去予定ターゲティング)は、既に過去の予定内容に対して、現時点以降、広告を配信する回数を広告在庫として予測計測することである。
すなわち、過去の予定からそのユーザの興味関心を推測して、そのユーザの興味関心にあったターゲティング配信を行うものであり、例えば、過去に映画の予定が多く入っていた場合、映画愛好者と推測して映画の広告を配信することである。その広告配信のタイミングは、現在以降であればいつでも配信タイミングとなる。
【0021】
そして、予測計測された広告在庫をもとに、ユーザに広告配信を希望する広告主へ広告枠を販売する「広告在庫販売機能」と、販売された広告在庫へ広告主の広告を配信する「広告配信機能」と、を備える。
【0022】
ここからは、具体的な例を挙げて、広告配信システム30の予定入力から予定分析乃至広告配信までの流れを説明する。
<予定入力>
予定名: 京都
日 付: 終日 2017/8/13-2017/8/17
参加者: パパ、ママ
場 所: 登録なし
メ モ: 7:20発の品川駅発の新幹線にのる
【0023】
<予定分類(予定分析・特定機能)>
(1)ユーザが上記の予定を入力(入力した日付は2017/6/2)
(2)予定のカテゴリ化(カテゴリ化は2017/6/2の予定入力後すぐに実施)
・予定名からお出かけの予定であることを推測
・日付から日をまたぐ予定なので旅行や出張(仕事)の予定であることを推測
・参加者から旅行であることを特定
【0024】
<広告在庫予測計測機能>
(3)広告在庫の作成(在庫の作成は2017/6/2にカテゴリ化完了後すぐに実施)
・広告配信のタイミングでは「予定入力後の1週間」「予定実施日(2017/8/13-2017/8/17前の1週間前」の2つのタイミングで配信を行う。
・すなわち、本件の場合、
予定入力後1週間 :6/3-6/10
予定実施日前1週間:8/6-8/12
に、ユーザへ対して共有カレンダー内で広告の配信される回数が広告在庫となる。これを予測計測する。
【0025】
<広告在庫販売機能>
(4)広告主へ共有カレンダー内の広告を販売
・上記の(1)~(3)で作成された広告在庫をもとに、旅行予定を保持しているユーザにターゲティングしたいと考えている広告主が広告を購入する。
【0026】
<広告配信機能>
(5)広告配信
予定入力後1週間 :6/3-6/10
予定実施日前1週間:8/6-8/12
・上記配信期間にこの予定(京都旅行)を持つユーザがカレンダー共有アプリケーションを起動したタイミングで購入した広告主の広告が配信される。カレンダーに予定を入力した直後や予定実施前の準備期間なので、精度の高い広告効果を期待できる。
【0027】
そして、広告配信システム30が上記した予定入力に基づいて、予定データ取得機能、予定分析・特定機能、広告在庫予測計測機能、広告在庫販売機能及び広告配信機能によって、図5に図示するような京都の夏の風物詩「納涼床」の広告40がユーザであるパパ・ママのスマートフォン10に配信されることになる。ユーザ(パパ・ママ)にとってみれば、京都旅行にぴったりの広告である。しかも、その配信タイミングが、予定を入力した直後の旅行に対する期待が大きい時期やまだ旅行の中身が十分に固まっていない時期(旅行の予定入力後1週間)の配信であったり、旅行前の準備期間の時期(旅行1週間前)の配信であるため、極めて高い広告効果を期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願発明は、ユーザへ最適な広告を配信するための広告配信システムとして幅広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0029】
10 スマートフォン
20 カレンダー
30 広告配信システム
40 広告
図1
図2
図3
図4
図5