(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】フラックス及びはんだ材料
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220701BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20220701BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2018165532
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特許第3004712(JP,B2)
【文献】特開2016-026882(JP,A)
【文献】特開2010-137283(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065076(WO,A1)
【文献】特開平02-030397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン系樹脂と、アルコールとジカルボン酸とが脱水縮合されたポリエステルポリオールとを含み、
前記ポリエステルポリオールがロジン系樹脂の総量に対して0.1質量%以上50質量%以下含まれ
、且つ、熱重量測定(TG測定)によって質量変化を測定したとき、240℃での重量減少が15%以下であるはんだ付け用のフラックス。
【請求項2】
前記アルコールは水酸基を2以上含むものである請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記アルコールは脂肪族アルコールである請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記ロジン系樹脂は酸価100KOHmg/g以上350KOHmg/g以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールが固形物成分の総量に対して0.1質量%以上30質量%以下含まれる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項6】
前記ポリエステルポリオールは脂肪族アルコールと鎖状のジカルボン酸とが脱水縮合されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項7】
前記アルコールと前記ジカルボン酸は、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸、1,3-プロパンジオールとセバシン酸、ネオペンチルグリコールとアジピン酸、1,2-エタンジオールとアジピン酸、トリメチロールプロパンとアジピン酸、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリメチロールプロパンとアジピン酸のいずれかの組み合わせである請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフラックスとはんだ合金とを含むはんだ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、及びフラックスを含むはんだ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の接合等に用いられるはんだは、はんだ合金とフラックスとを含むはんだ材料等からなる。フラックスは、はんだ付け性を向上させるために配合されるものであり、樹脂成分、活性剤成分、溶剤成分、酸化防止成分、チキソトロピック成分(以下、チクソ剤ともいう。)等の各種成分を含んでいる。
電子部品を基板等にはんだ付けで接合した電子機器等は、高温、低温、高湿度等、様々な条件下での使用が想定される。そのため、はんだ付け部分には耐熱性、耐湿性等が要求される。
高湿度条件下でははんだ付け部分に水分が付着することによる絶縁不良が発生するおそれがある。特に温度変化が激しい条件下では結露が発生しやすくなり、比較的多量の水分が付着しやすくなる。よって、水分に対する絶縁抵抗性を高める必要が生じる。
【0003】
例えば、特許文献1には、重合脂肪酸、芳香族カルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を活性剤として含み、さらに温度20℃における水への溶解度が2g/100g以下である溶剤を含むフラックスが記載されている。
特許文献2には、特定の脂肪酸ポリアマイド構造を有するチクソ剤を含むフラックスが記載されている。
前記特許文献1及び2に記載のフラックスは、一定の高湿度条件下でも絶縁抵抗性が維持できることが各文献中に記載されている。
【0004】
しかし、前記各特許文献に記載のフラックスは一定の高湿度条件下ではある程度の絶縁抵抗性を維持できるが、例えば、温度変化の激しい条件下では湿度も大きく変化するためこのような条件下での絶縁抵抗性を十分に維持することは困難である。また、温度変化が大きい条件では、単に湿度が高いだけではなく結露のような比較的多量の水分が付着することがあるが、かかる場合に絶縁抵抗性を十分に維持することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-64758号
【文献】特開2017-64783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高湿度条件下でも絶縁抵抗性を十分に維持しうるフラックス及びはんだ材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフラックスは、ロジン系樹脂と、アルコールとジカルボン酸とが脱水縮合されたポリエステルポリオールとを含み、
前記ポリエステルポリオールがロジン系樹脂の総量に対して0.1質量%以上50質量%以下含まれ、且つ、熱重量測定(TG測定)によって質量変化を測定したとき、240℃での重量減少が15%以下であるはんだ付け用のフラックスである。
【0008】
本発明において、前記アルコールは水酸基を2以上含んでいてもよい。
【0009】
本発明において、前記アルコールは脂肪族アルコールであってもよい。
【0010】
本発明において、前記ロジン系樹脂は酸価100KOHmg/g以上350KOHmg/g以下であってもよい。
【0011】
本発明において、ポリエステルポリオールが固形物成分の総量に対して0.1質量%以上30質量%以下含まれていてもよい。
【0013】
はんだ材料にかかる本発明は、前記フラックスとはんだ合金とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高湿度条件下でも絶縁抵抗性を十分に維持しうるフラックス及びはんだ材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】サイクル試験における温度と湿度の経時変化を示すグラフ。
【
図2】実施例のサイクル試験における絶縁抵抗値のグラフ。
【
図3】実施例のサイクル試験における絶縁抵抗値のグラフ。
【
図4】実施例のサイクル試験における絶縁抵抗値のグラフ。
【
図5】実施例、比較例のサイクル試験における絶縁抵抗値のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るフラックス、及び、フラックスを含むはんだ材料について説明する。
本実施形態のフラックスは、ロジン系樹脂と、アルコールとジカルボン酸とが脱水縮合されたポリエステルポリオールとを含むフラックス。
【0017】
ロジン系樹脂としては、ロジン及びロジンの誘導体である樹脂が挙げられ、フラックスの樹脂成分として用いられる公知のロジン系樹脂であれば特に制限されるものではない。具体的には、例えば、ロジン、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、アクリル酸変性ロジン等のロジン誘導体樹脂等が挙げられる。
前記ロジン系樹脂は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0018】
本実施形態のフラックスに含まれるロジン系樹脂は、例えば、酸価100KOHmg/g以上350KOHmg/g以下、好ましくは酸価200KOHmg/g以上300KOHmg/g以下のものが挙げられる。
酸価が前記範囲の樹脂である場合にははんだ付け性が良好であり、例えば、フラックスの活性剤として配合される成分を多く又は全く含まなくてもはんだ付け性が良好であるフラックスが得られやすい。
【0019】
尚、本実施形態における酸価とはJIS Z 3197に記載の測定方法で測定される値をいう。
【0020】
フラックスにはフラックスの性能を高めるために活性剤を含む場合があるが、活性剤が多く含まれる場合にはボイドの原因になったり、フラックス残渣中に活性剤成分が多く残り接続信頼性の低下や絶縁不良等の原因になったりするおそれがある。
前記のような酸価の範囲であるロジン系樹脂を使用した場合には、活性剤の配合量を低減してもあるいは配合しなくても、はんだ付け性が良好なフラックスが得られやすくなるため好ましい。
【0021】
ロジン系樹脂は透明あるいは淡色であることが好ましい。樹脂が透明あるいは淡色である場合にはフラックスも着色されにくくなり、はんだ接合部における外観検査などにおいて誤検査等が生じにくくなる。また、着色したフラックス残渣等により外観が損なわれることがない。
【0022】
本実施形態のフラックスには、前記ロジン系樹脂と共に、ガラス転移温度の低いアクリル系樹脂、ポリブタジエン樹脂等のロジン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。
これらのロジン系樹脂以外のガラス転移温度の低い樹脂を混合することで、はんだ付け性を維持しつつ、温度変化が大きくてもクラックの発生を抑制することができる。
【0023】
本実施形態のフラックスにおけるロジン系樹脂の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以上95質量%以下、好ましくは60質量%以上90質量%以下、より好ましくは70質量%以上90質量%以下等が挙げられる。
また、ロジン系樹脂以外の樹脂を含む場合のロジン系樹脂の含有量は、例えば、全樹脂成分中の0.1質量%以上30質量%以下、好ましくは5.0質量%以上15質量%以下であることが、はんだ付け性の維持及びクラックの抑制等の観点からみて好ましい。
【0024】
ポリエステルポリオールは、アルコールとジカルボン酸とが脱水縮合されたポリエステルポリオールである。
【0025】
アルコールとしては、例えば、水酸基を一分子中に2以上含むアルコール、すなわち、ジオール又はトリオール、及びその混合物が挙げられる。
アルコールとしては芳香族アルコール、脂肪族アルコールいずれでもよい。
アルコールが脂肪族アルコールである場合には、高湿度条件下での絶縁性がより維持しやすくなる。
【0026】
脂肪族アルコールである場合にはアルコールを構成する炭化水素鎖が直鎖状、分岐状いずれであってもよい。
脂肪族アルコールを構成する炭化水素鎖には、その両端、またはいずれか一方の端部に水酸基が結合されているアルコールが好ましい。
【0027】
アルコールとしては、具体的には、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)(C2、直鎖)、1,3-プロパンジオール(C3、直鎖)、1,6-ヘキサンジオール(C6、直鎖)、ネオペンチルグリコール(C3、分枝)、トリメチロールプロパン(C4,分枝)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(C5、分枝)等が挙げられる。
【0028】
ジカルボン酸としては、鎖状のジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸いずれでもよい。
ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
特に、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6~C10の鎖状のジカルボン酸が好ましい。
【0029】
本実施形態のポリエステルポリオールは、アルコールとジカルボン酸とを適度なモル比で、必要に応じて触媒、溶媒、その他添加剤を共存させて、脱水縮合反応させることで得られる。
【0030】
反応させるアルコールとジカルボン酸の組み合わせは任意であるが、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸、1,3-プロパンジオールとセバシン酸、ネオペンチルグリコールとアジピン酸、1,2-エタンジオールとアジピン酸、トリメチロールプロパンとアジピン酸、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリメチロールプロパンとアジピン酸等の組み合わせが挙げられる。
【0031】
本実施形態のポリエステルポリオールの分子量は特に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量(MW)は、通常300~10,000、好ましくは400~7000などが挙げられる。
【0032】
本実施形態のポリエステルポリオールとしては、高温においても分解しにくいポリエステルポリオールであることが好ましい。例えば、電子部品を基板に実装する際のリフローの際には、通常約240℃程度の高温に加熱されるため、リフロー後にも分解しにくいポリエステルポリオールを用いることで、使用時のはんだ接合部の耐湿性を維持しやすくすることができる。
高温においても分解しにくいポリエステルポリオールとしては、熱重量測定(TG測定)によって質量変化を測定したとき、240℃での重量減少が15%以下のもの、好ましくは12%以下等であるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0033】
本実施形態のフラックスに含まれるポリエステルポリオールは市販のものから入手してもよい。例えば、クラレポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、F-510、F-1010、F-2010、F-3010、P-2011、P-520、P-1020、P-2020、P-1012、P-2012、P-530、P-2030、P-2050(クラレ製)、ニッポラン136、141、164、4002、4040、4009、4010、3027、4073、1004、4042、5018、5035、800、1100(東ソー社製)、URIC SE-2003、2606(伊藤製油社製)、テスラック2455、2459、2460、2461、2462、2464、2469、2471(日立化成社製)、ポリライトRX-4800、OD-X-2251、OD-X-2523、OD-X-2420、OD-X-102、OD-X-2108(DIC社製)、ETERNACOLL3000シリーズ(宇部興産社製)等が挙げられる。
【0034】
本実施形態のフラックスにおける前記ポリエステルポリオールの含有量は特に限定されるものではないが、例えば、フラックス中の固形物成分の総量に対して、0.1質量%以上30質量%以下、好ましくは0.1質量%以上27質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下の割合で含まれることが挙げられる。
尚、本実施形態において固形物成分の総量とは、フラックス中の溶剤成分(揮発性成分)以外の固形物成分の総質量をいう。
【0035】
本実施形態のフラックスにおいて、ロジン系樹脂に対するポリエステルポリオールの含有量の割合は限定されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオールがロジン系樹脂の総量に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上45質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上25質量%以下の割合で含まれることが挙げられる。
ロジンに対するポリエステルポリオール含有量の割合が前記範囲である場合には、高湿度条件下での絶縁性維持の観点からみて好ましい。
【0036】
本実施形態のフラックスは、ロジン、ポリエステルポリオールの他に、公知のフラックスの成分、例えば、活性剤成分、溶剤成分、酸化防止成分、チキソトロピック成分(チクソ剤)等を含んでいてもよい。
尚、これらの各成分は必要に応じてフラックスに配合されることができ、いずれの成分が含まれていても含まれていなくてもよい。
【0037】
本実施形態のフラックスは、有機酸、ハロゲン系活性剤、その他の活性剤成分をさらに含んでいてもよい。
有機酸は、フラックスの活性剤成分等として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、グルタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、安息香酸、ドデカン二酸、マレイン酸、シアヌル酸等が挙げられる。
前記有機酸は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0038】
前記有機酸などの活性剤のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは3.0質量%以上10質量%以下等であることが挙げられる。
【0039】
有機酸以外の活性剤成分、例えば、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤、イミダゾール系活性剤等を用いることができる。
ハロゲン系活性剤のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、フラックス中のハロゲン全体の濃度が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下になるように配合されることが好ましい。
イミダゾール系活性剤のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、0.1質量%以上1.0質量%以下になるように配合されることが挙げられる。
【0040】
活性剤は、単独で又は各種類を複数組み合わせて使用してもよい。フラックスにおける活性剤の総量は特に限定されるものではないが、例えば0.1質量%以上20質量%以下であることが挙げられる。
【0041】
活性剤成分は加熱時にボイドの原因になるガスを発生させたり、フラックス残渣中に活性剤成分が多く残り接続信頼性の低下や絶縁不良等の原因になったりするおそれがあるため、これらを防止するためには活性剤成分を低減することが考えられるが、活性剤成分を低減した場合にははんだ付け性が低下するという問題もある。
本実施形態のフラックスは前記のようなロジン系樹脂を含むため、活性剤成分を低減してもはんだ付け性を維持できる。
【0042】
溶剤成分としては、フラックスの溶剤成分として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、などのグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、オクタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどのアルコール類等が挙げられる。
前記溶剤は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0043】
前記溶剤成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、20質量%以上70質量%以下、好ましくは30質量%以上60質量%以下等が挙げられる。
【0044】
チキソトロピック成分としては、フラックスのチキソトロピック成分として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類、ワックス等が挙げられる。
前記チキソトロピック成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、3.0質量%以上20質量%以下、好ましくは5.0質量%以上10質量%以下等が挙げられる。
【0045】
本実施形態のフラックスには、さらに、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
本実施形態のフラックスは、ポストフラックス等の液状フラックスとして用いることができるが、その他、ソルダーペースト、やに入りはんだのようなはんだ材料用のフラックスとしても用いられる。
【0047】
本実施形態のはんだ材料は、前記各フラックスとはんだ合金とを含む。
前記はんだ合金は、鉛フリー合金であってもよい。
前記はんだ合金としては、特に限定されるものではなく、鉛フリー(無鉛)のはんだ合金、有鉛のはんだ合金のいずれでもよいが、環境への影響の観点から鉛フリーのはんだ合金が好ましい。
具体的には、鉛フリーのはんだ合金としては、スズ、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金等が挙げられ、より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。特に、Sn/Ag/Cuが好ましい。
【0048】
前記はんだ合金のはんだ材料における含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、80質量%以上95質量%以下、好ましくは85質量%以上90質量%以下等が挙げられる。
【0049】
本実施形態のはんだ材料がはんだ合金と前記本実施形態のフラックスとを混合することで得られるソルダーペーストである場合には、例えば、前記はんだ合金80質量%以上95質量%以下、前記フラックス5質量%以上20質量%以下で混合されていることが好ましい。
【0050】
本実施形態のはんだ材料を使用する場合の条件は、はんだ接合する対象物等に応じて適宜設定可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、プリヒート時の昇温速度:1.0~3.0℃/秒、プリヒート温度:150~190℃/60~100秒、はんだ溶融時の昇温速度:1.0~2.0℃/秒、溶融温度:219℃以上30秒以上、リフローピーク温度:230~250℃等の条件が挙げられる。
【0051】
本実施形態のフラックスは、はんだ材料に配合した場合に、高湿度条件下、特に結露等の多量の水分が発生する条件下でも絶縁抵抗性を維持できる。
【0052】
本実施形態のはんだ材料は、電子部品、特に、車載、屋外ディスプレイ、携帯電話等、温度変化が激しい条件下で使用される電子部品の電気的接続に好適である。
【0053】
本実施形態にかかるフラックス及びはんだ材料は、以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。尚、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0055】
(フラックスの作製)
表1及に示す材料を用いて表2に記載の配合で各実施例、比較例に用いるフラックスを作製した。
作製方法は各材料を適当な容器に投入して、170℃付近まで加熱を行い、全材料が均一に溶解するまで混合することで各のフラックスを得た。
表3中のポリエステルポリオールの固形物成分中の含有割合X1(質量%)は、フラックスから溶剤を除いた固形物中のポリエステルポリオールの質量の割合を示し、下記式で算出する。
X1=X2/(100-X3)×100
X2=フラックス中のポリエステルポリオールの含有割合(質量%)
X3=フラックス中の溶剤含有割合(質量%)
尚、本実施例ではX3は41.8(質量%)である。
また、表3中のポリエステルポリオールの含有割合(質量%、対ロジン系樹脂総量)X4(質量%)は、下記式で算出する。
X4=X1/X5×100
X5=固形物成分に対するロジン系樹脂の含有割合(質量%)
X5(質量%)はロジン系樹脂のフラックスから溶剤を除いた固形物成分に対する割合を示し、下記式で算出する。
X5=X6/(100-X3)×100
X6=フラックス中のロジン系樹脂の含有割合(質量%)
X3=フラックス中の溶剤含有割合(質量%)
尚、本実施例ではX3は41.8(質量%)である。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
<ソルダーペースト>
はんだ合金粉末(Sn-3.0%Ag-0.5%Cu、粒径20~38μm)と前記フラックス各とを88±1質量%と12±1質量%となる比率で混合し、ペースト状の各はんだ材料(ソルダーペースト)を作製した。
【0060】
(試験基板)
試験基板は、前記各実施例及び比較例のはんだ材料を用いて、基板(IPC-B-25:くし形電極の導体幅0.318mm、導体間隔0.318mm)に、印刷厚さ:100μmになるようにメタルマスクを用いて印刷して、下記温度条件で1回熱処理を行った。
<温度条件>
・プリヒート時
昇温速度:1.0~3.0℃/秒
プリヒート温度:150~190℃/60~100秒
・はんだ溶融時
昇温速度:1.0~2.0℃/秒
溶融温度:219℃以上45秒以上
ピーク温度:240℃
大気雰囲気
【0061】
(絶縁抵抗値の測定試験)
前記実施例及び比較例を用いて作製した各試験基板のそれぞれ4カ所において、温度:10℃~80℃、相対湿度:30%RH~95%RH、印加電圧:DC50V、サイクル数:30サイクルの条件でサイクル試験を行った。
試験装置としてはESPEC社製イオンマイグレーション評価装置(AMI-150-U-25)を用いた。
この試験条件で試験装置のチャンバー内における温度と湿度の経時変化を示すグラフを
図1に示す。
試験中、70℃、相対湿度95%RHの時に装置の除き窓に結露水が付着していることを目視にて確認した。
この条件で各試験基板に通電して絶縁抵抗値(Ω)を測定した。
絶縁抵抗値(Ω)が1×10の8乗(Ω)以下にならなかった試験基板をOKとし、1×10の8乗(Ω)以下に一度でもなったものをNGとした。
結果を表3に示す。
また、各試験基板の絶縁抵抗値の変化を示すグラフを
図2~
図5に示す。
【0062】
表3及び
図2~
図5に示すように、実施例の試験基板では最低絶縁抵抗値が1×10の8乗(Ω)以下になったものはなかった。
一方、比較例ではいずれも絶縁抵抗値が1×10の6乗(Ω)以下になった。