(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】抗Her2ナノボディ及びそのコード序列と用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220701BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220701BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220701BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220701BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220701BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220701BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220701BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220701BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220701BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20220701BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220701BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220701BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K51/10 200
A61P35/00
G01N33/574 A
C12N5/0783
C07K19/00
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2020520703
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2018091953
(87)【国際公開番号】W WO2018233624
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】201710471319.6
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519454936
【氏名又は名称】ナノマブ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOMAB TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】9/F Tung Ning Bld,249-253 Des Voeux Road,Centra,Hong Kong,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ティン,ホン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チュン リム
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェンホア
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534809(JP,A)
【文献】国際公開第2017/075537(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/068625(WO,A2)
【文献】Vaidyanathan, Ganesan et al.,Organic & biomolecular chemistry,vol. 14 no.4,2016年01月20日,pp.1261-71
【文献】Arvind Chopra,[99mTc]Epidermal growth factor-receptor specific nanobody.,Molecular Imaging and Contrast Agent Database (MICAD) ,2008年05月13日
【文献】VANEYCKEN ILSE et al.,Preclinical screening of anti-HER2 nanobodies for molecular imaging of breast cancer.,FASEB,vol.25, no.7,2011年04月08日,pp.2433-2446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 5/0783
C07K 16/28
A61K 39/395
A61K 47/68
A61K 51/10
A61P 35/00
G01N 33/574
C07K 19/00
C12N 15/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスツズマブまたはペルツズマブと競合せずにHer2に結合する抗Her2ナノボディであって、
Her2エピトープに対するナノボディであり、SEQ ID NO.:1-40のいずれか1つに示されるアミノ酸
配列のVHH鎖を有することを特徴とする、前記抗Her2ナノボディ。
【請求項2】
ポリヌクレオチドであって、
請求項1に記載の抗Her2ナノボディ
のタンパク質をコードすることを特徴とする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項3】
SEQ ID NO.:41-80のいずれか1つに示されるヌクレオチド
配列を有することを特徴とする
請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
発現担体であって、
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、前記発現担体。
【請求項5】
宿主細胞であって、
請求項4に記載の発現担体を含むか、請求項2に記載のポリヌクレオチドがそのゲノムに組み込まれることを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項6】
抗Her2ナノボディの生成方法であって、
ナノボディの生成に適した条件の下で、請求項5に記載の宿主細胞を培養して、前記抗Her2ナノボディを含む培養物を獲得するステップ(a)と、及び
前記培養物から前記抗Her2ナノボディを分離または回収するステップ(b)とを含むことを特徴とする、前記抗Her2ナノボディの生成方法。
【請求項7】
免疫コンジュゲートであって、
(a)請求項1に記載の抗Her2ナノボディと、及び
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、ナノ磁性粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される結合部分を含むことを特徴とする、前記免疫コンジュゲート。
【請求項8】
Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、I-131、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、Lu-177、Re-188、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される(i)診断用同位体と、および/または
Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra223、Ru-106、Na24、Sr89、Tb-149、Th-227、Xe-133 Yb-169、Yb-177、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される(ii)治療用同位体とを含むことを特徴とする
請求項7に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項9】
前記薬物は、細胞毒性薬物であり、好ましくは、前記細胞毒性薬物は、抗チューブリン薬物、DNA小溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗薬、抗代謝拮抗薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする
請求項7に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項10】
前記毒素は、オーリスタチン系、オーレオマイシン、
メイタンシノイド(maytansinoid)、リシン毒素、リシン毒素A-鎖、コンブレタスタチン(combretastatin)、ズオカルマイシン(duocarmycin)、ドラスタチン(dolastatin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、パクリタキセル(paclitaxel)、シスプラチン(cisplatin)、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、コルヒチン(colchicine)、ジヒドロキシアントラシンジオン(Dihydroxyanthracine dione)、アクチノマイシン(actinomycin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クルシン(curicin)、クロチン(crotin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイド(glucocorticoid)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする
請求項7に記載の免疫コンジュゲート。
【請求項11】
Her2タンパク質またはHer2癌の検出試薬であって、
前記検出試薬は、請求項7に記載の免疫コンジュゲート及び検出学的に許容される担体を含むことを特徴とする、前記Her2タンパク質またはHer2癌の検出試薬。
【請求項12】
前記検出試薬は、同位体トレーサー、造影剤、フロー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子およびイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬であることを特徴とする
請求項11に記載の検出試薬。
【請求項13】
抗Her2ナノボディの使用であって、
(a)Her2分子を検出するための試薬と、(b)腫瘍を治療するための薬物とを調製するために使用されることを特徴とする、前記請求項1に記載の抗Her2ナノボディの使用。
【請求項14】
薬物組成物であって、
(i)請求項1に記載の抗Her2ナノボディ、または請求項7に記載の免疫コンジュゲートと、及び
(ii)薬理学的
に許容される担体とを含むことを特徴とする、前記薬物組成物。
【請求項15】
CAR-T細胞であって、
前記CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体CARを発現し、前記CARの抗原結合ドメインは、請求項1に記載の抗Her2ナノボディを有することを特徴とする、前記CAR-T細胞。
【請求項16】
製剤であって、
請求項15に記載のCAR-T細胞、及び薬理学的
に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学または生物製薬技術分野に関し、より具体的には、Her2に対するナノボディ及びそのコード序列と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
Her2/Neu、ErbB-2、CD340またはp185とも呼ばれるヒト上皮成長因子受容体-2(human epidermal growth factor receptor 2:Her2/ErbB2)は、ヒトHer2遺伝子によってコードされるタンパク質である。Her2は、上皮成長因子受容体(EGFR/ErbB)ファミリーに属するチロシンキナーゼ受容体(RTK)であり、4つの細胞外ドメイン(I、II、III、及びIV)と、チロシンキナーゼ活性ドメインと1つのチロシン残基および細胞内シグナル伝達分子のアンカーポイントを含むカルボキシ末端尾部を持つ1つの膜貫通領域とを含む1255個のアミノ酸で構成され、その分子量は、約185kDである。EGFRファミリーのメンバーは、細胞外ドメインIおよびIIIが受容体のリガンドへの結合に関与し、受容体の立体構造の変化により受容体活性化を引き起こし、細胞外ドメインIIおよびIVが受容体の二量化に関与する類似の構造を持っている。Her2には特別なオープン構造があり、特異性リガンドの関与なしに自己活性化が発生する可能性があり、ホモダイマーを形成するか、EGFRファミリーの他の受容体とヘテロダイマーを形成し、ファミリーのメンバーの間のヘテロ二量体化に好ましい分子である。
【0003】
Her2は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、肺癌などの複数の上皮細胞由来の悪性腫瘍で過剰に発現しているが、正常組織では発現が低いか、まったく発現しない。Her2の発現が低い場合、受容体タンパク質は一般に単量体として存在し、そのチロシンキナーゼ活性は低い。Her2が過剰発現すると、受容体チロシンキナーゼの長期的かつ強化された活性化を引き起こし、一連の下流カスケードを引き起こし、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼプロテインキナーゼB/Akt(PI3K-PKB/Akt)、ホスホリパーゼCプロテインキナーゼC(PLC-PKC)および転写シグナル伝達と活性化タンパク質(STAT)などの複数の主要なシグナル経路を活性化する。Her2を介したシグナル伝達経路は、腫瘍関連遺伝子の発現を調節でき、例えば、血管内皮(細胞)成長因子、ウロキナーゼ型プラスミン活性化因子、シクロオキシゲナーゼ-2、ケモカインサイトカイン受容体CXCR-4などの発現をアップレギュレーションし、MMP阻害因子RECKの発現をダウンレギュレーションし、腫瘍の侵入と転移を促進することができる。Her2の増幅または過剰発現は、特異性浸潤性乳癌の発病と発展過程に重要な役割を果たし、乳癌の重要なマーカーおよび治療標的となった。
【0004】
ヒト化組換えモノクローナル抗体トラスツズマブ(Trastuzumab)とペルツズマブ(Pertuzumab)は、Her2/neu遺伝子増幅と過剰発現を伴う乳癌患者向けの伝統的な標的治療薬物である。Trastuzumabは、Her2細胞外構造の膜近傍領域に結合し、エンドサイトーシスを引き起こして腫瘍細胞の核内に進入し、Her2が細胞膜にリサイクルされるプロセスをブロックし、Her2タンパク質のバイパス分解を加速し、それにより、Her2による腫瘍細胞の悪性表現型への形質導入を阻害する。Her2過剰発現に対する原発性浸潤性乳癌患者に非常に効果的である。Pertuzumabの抗原結合ポイントは、Her2細胞外ドメインのIIサブ領域に位置し、Her2と他のErbBメンバー間の二量体の形成を妨害して、細胞シグナル伝達をブロックし、Her2が過剰発現しているかどうかに関係なく、抗腫瘍効果を発揮することができる。
【0005】
従来のモノクローナル抗体の製造プロセスは複雑で、コストが高すぎ、分子量が大きすぎ、組織に浸透できないため、腫瘍領域の有効濃度が低くなり、治療効果が不十分になる。従来の抗体は免疫原性が高く、修飾抗体は元の親和性に到達するのが困難である。なお、完全にヒト化された従来の抗体は、開発サイクルが長く、生産コストが高く、安定性が不十分などの臨床応用と普及を制限する他の多くの要因がある。しかし、ナノボディは現在最小の抗体分子であり、その分子量は通常の抗体の1/10である。ナノボディは、モノクローナル抗体の抗原反応性に加えて、分子質量が小さく、安定性が強く、溶解性が良好で、発現し易く、免疫原性が弱く、浸透性が強く、ターゲティング性が強く、ヒト化が簡単で、調製のコストは低いなどのユニークな機能的特徴も備え、伝統的な抗体の開発サイクルが長く、安定性が低く、保管条件が厳しいなどの欠点をほぼ完全に克服する。さらに、放射性同位元素を標的とする担体としての特殊構造により、腫瘍組織結合標的に迅速かつ特異的に浸透し、非結合抗体は血液から迅速に除去されるため、身体の放射線量を減し、トレーサーや標的の内部放射線治療薬として、従来の抗体よりも多くの明らかな利点がある。
しかし、現在、当技術分野ではHer2に対する満足のナノボディが不足している。したがって、当技術分野では、Her2に対して有効な新しい特異性ナノボディを開発することが急務である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、Her2に対して有効な特異性ナノボディを提供することである。
本発明の第1の態様では、VHH鎖のアミノ酸序列は、SEQ ID NO.:1-40のいずれか1つに示されるとおりである抗Her2ナノボディのVHH鎖を提供する。
別の好ましい例において、前記VHH鎖のアミノ酸序列は、SEQ ID NO.:8、7、15、12、27、11、32、13、14、9、21、30、17、24、16、6、28、25、10、1のいずれか1つに示されるとおりである。
別の好ましい例において、前記VHH鎖のアミノ酸序列は、SEQ ID NO.:8、7、15、12、27、11、32、13のいずれか1つに示されるとおりである。
別の好ましい例において、前記VHH鎖のアミノ酸序列は、SEQ ID NO.:9、10、13、17、22、23、26のいずれか1つに示されるとおりである。
【0007】
別の好ましい例において、前記Her2は、ヒトHer2である。
なお、フレーム領域FRと相補性決定領域CDRを含み、ここで、前記CDRは、SEQ ID NO.:1-40のいずれか1つの序列のうち対応するCDR1、CDR2及びCDR3と、および前記CDR1-3により分離されたFR1、FR2、FR3及びFR4とを含む抗Her2ナノボディのVHH鎖をさらに提供する。
なお、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、3つのCDRは、SEQ ID NO.:1-40のいずれか1つの序列のうち対応するCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗ヒトHer2抗体の重鎖可変領域をさらに提供する。
なお、SEQ ID NO.:1-40に示されるアミノ酸序列のうち下線で示されるCDR1、CDR2及びCDR3(それぞれのVHHアミノ酸序列中の3つの下線部分は、順次にCDR1、CDR2及びCDR3を表す)を含む抗ヒトHer2抗体の相補性決定領域CDR領域をさらに提供する。
【0008】
本発明の第2の態様では、Her2エピトープに対するナノボディであり、SEQ ID NO.:1-40のいずれか1つに示されるアミノ酸序列のVHH鎖を有する抗Her2ナノボディを提供する。
別の好ましい例において、好ましい抗Her2ナノボディは、第1の態様で好ましいVHH鎖のアミノ酸序列を有する。
【0009】
本発明の第3の態様では、第1の態様に記載の抗Her2ナノボディのVHH鎖、または第2の態様に記載の抗Her2ナノボディからなる群から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド(polynucleotide)を提供する。
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含む。
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO.:41-80のいずれか1つに示されるヌクレオチド序列を有する。
【0010】
本発明の第4の態様では、第3の態様に記載のポリヌクレオチドを含む発現担体を提供する。
別の好ましい例において、前記発現担体は、DNA、RNA、ウイルス担体、プラスミド、トランスポゾン、他の遺伝子導入システム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、前記発現担体は、レンチウイルス(lentivirus)、アデノウイルス(adenovirus)、AAVウイルス、レトロウイルス(retrovirus)、またはそれらの組み合わせなどのウイルス担体を含む。
【0011】
本発明の第5の態様では、第4の態様に記載の発現担体を含むか、第3の態様に記載のポリヌクレオチドがそのゲノムに組み込まれる宿主細胞を提供する。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞を含む。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌、酵母細胞からなる群から選択される。
【0012】
本発明の第6の態様では、
ナノボディの生成に適した条件の下で、第5の態様に記載の宿主細胞を培養して、前記抗Her2ナノボディを含む培養物を獲得するステップ(a)と、及び
前記培養物から前記抗Her2ナノボディを分離または回収するステップ(b)とを含む抗Her2ナノボディの生成方法を提供する。
別の好ましい例において、前記抗Her2ナノボディは、SEQ ID NO.:1-40に示されるアミノ酸序列を有する。
【0013】
本発明の第7の態様では、
(a)第1の態様に記載の抗Her2ナノボディのVHH鎖、または第2の態様に記載の抗Her2ナノボディと、及び
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、ナノ磁性粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される結合部分を含む免疫コンジュゲートを提供する。
【0014】
別の好ましい例において、前記放射性核種は、
Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、I-131、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、Lu-177、Re-188、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される(i)診断用同位体と、および/または
Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra223、Ru-106、Na24、Sr89、Tb-149、Th-227、Xe-133 Yb-169、Yb-177、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される(ii)治療用同位体とを含む。
【0015】
別の好ましい例において、前記結合部分は、薬物または毒素である。
別の好ましい例において、前記薬物は、細胞毒性薬物である。
別の好ましい例において、前記細胞毒性薬物は、抗チューブリン薬物、DNA小溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗薬、抗代謝拮抗薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド(vinca alkaloids)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
特に有用な細胞毒性薬物系の例は、例えば、DNA小溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、例えば、オーリスタチン(auristatins)、カンプトテシン(camptothecins)、デュオカルマイシン(duocarmycins)、エトポシド(etoposides)、メイタンシン(maytansines)及びメイタンシノイド(maytansinoids)(例えば、DM1及びDM4)、タキサン(taxanes)、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)またはベンゾジアゼピンを含有する薬物(benzodiazepine containing drugs)(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBDs)、インドリノベンゾジアゼピン(indolinobenzodiazepines)及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン(oxazolidinobenzodiazepines))、ビンカアルカロイド(vinca alkaloids)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0017】
別の好ましい例において、前記毒素は、
オーリスタチン系(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAE和MMAF)、オーレオマイシン、美坦西醇(maytansinoid)、リシン毒素、リシン毒素A-鎖、コンブレタスタチン、ズオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クルシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
別の好ましい例において、前記結合部分は、検出可能なマーカーである。
別の好ましい例において、前記コンジュゲートは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピュータ断層撮影技術)造影剤、または検出可能な製品を生成できる酵素、放射性核種、生体毒素、サイトカイン(例えば、IL-2など)、抗体、抗体Fcフラグメント、抗体scFvフラグメント、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、プロドラッグ活性化酵素(例えば、DT-心筋細胞(DTD)またはビフェニル加水分解酵素様タンパク質(BPHL))、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、または任意の形態のナノ粒子などから選択される。
【0019】
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートは、本発明の第1の態様に記載の抗Her2ナノボディの多価(例えば、二価)VHH鎖、本発明の第2の態様に記載の抗Her2ナノボディを含む。
別の好ましい例において、前記多価とは、前記免疫コンジュゲートのアミノ酸序列に本発明の第1の態様に記載の抗Her2ナノボディの複数の重複のVHH鎖、本発明の第1の態様に記載の抗Her2ナノボディを含むことを指す。
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートは、特にHer2を発現する腫瘍(即ち、Her2陽性腫瘍)などの癌の診断または予後に使用される。
別の好ましい例において、前記検出は、生体内検出または生体外検出である。
【0020】
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートは、Her2タンパク質を発現する腫瘍の診断および/または治療に使用される。
本発明の第8の態様では、(a)Her2分子を検出するための試薬と、(b)腫瘍を治療するための薬物とを調製するために使用される本発明の第2の態様に記載の抗Her2ナノボディ、または本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートを用途を提供する。
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートの結合部分は、診断用同位体である。
【0021】
別の好ましい例において、前記試薬は、同位体トレーサー、造影剤、フロー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子及びイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬である。
別の好ましい例において、前記Her2分子を検出するための試薬は、(体内)Her2分子を検出するための造影剤である。
別の好ましい例において、前記検出は、生体内検出または生体外検出である。
別の好ましい例において、前記検出は、フロー検出、細胞免疫蛍光検出む含む。
【0022】
本発明の第9の態様では、
(i)本発明の第1の態様に記載の抗Her2ナノボディのVHH鎖、または本発明の第2の態様に記載の抗Her2ナノボディ、または本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートと、及び
(ii)薬理学的許容される担体とを含む薬物組成物を提供する。
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートの結合部分は、薬物、毒素、および/または治療用同位体である。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、細胞毒性薬物などの腫瘍を治療する他の薬物をさらに含む。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、Her2タンパク質(即ち、Her2陽性)を発現する腫瘍を治療するために使用される。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、注射剤である。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、腫瘍を治療するための薬物を調製するために使用され、前記腫瘍は、胃がん、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、リンパ腫、副腎腫瘍、または膀胱腫瘍からなる群から選択される。
【0023】
本発明の第10の態様では、本発明の第2の態様に記載の抗Her2ナノボディ、または本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートの1つまたは複数の用途を提供する、
(i)ヒトHer2分子を検出のために使用され、
(ii)フロー検出に使用され、
(iii)細胞免疫蛍光検出に使用され、
(iv)腫瘍の治療のために使用され、
(v)腫瘍の診断のために使用される。
別の好ましい例において、前記腫瘍は、Her2タンパク質(即ち、Her2陽性)を発現する腫瘍である。
別の好ましい例において、前記用途は、非診断的と非治療的である。
【0024】
本発明の第11の態様では、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域VHHを有する抗体をさらに提供する。
別の好ましい例において、前記抗体は、Her2タンパク質に特異的な抗体である。
別の好ましい例において、前記抗体は、ナノボディである。
【0025】
本発明の第12の態様では、組換えタンパク質を提供し、前記組換えタンパク質は、
(i)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域VHHの序列または本発明の第2の態様に記載のナノボディの序列と、及び
(ii)発現および/または精製を支援する任意のタグ序列とを含む。
別の好ましい例において、前記タグ序列は、6HisタグとHAタグを含む。
別の好ましい例において、前記組換えタンパク質は、Her2タンパク質に特異的に結合する。
【0026】
本発明の第13の態様では、本発明の第1の態様に記載のVHH鎖、本発明の第2の態様に記載のナノボディ、または本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートの用途を提供し、それらは、医薬品、試薬、検出プレートまたはキットの製造に使用され、
ここで、前記試薬、検出プレートまたはキットは、サンプル中のHer2タンパク質の検出のために使用され、
ここで、前記医薬品は、Her2タンパク質(即ち、Her2陽性)を発現する腫瘍を治療または予防するために使用される。
別の好ましい例において、前記腫瘍は、黒色腫、胃がん、リンパ腫、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、または副腎腫瘍を含む。
【0027】
本発明の第14の態様では、サンプル中のHer2タンパク質を検出する方法を提供し、前記方法は、
サンプルを本発明の第2の態様に記載のナノボディと接触されるステップ(1)と、及び
抗原-抗体複合体が形成されているかどうかを検出し、ここで、複合体が形成されるとサンプルにHer2タンパク質が存在することを示すステップ(2)とを含む。
【0028】
本発明の第15の態様では、本発明の第2の態様に記載のナノボディまたは本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートを必要とする対象に投与する疾患を治療する方法を提供する。
別の好ましい例において、前記対象は、ヒトのような哺乳動物を含む。
【0029】
本発明の第16の態様では、本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲート及び検出学的許容される担体を含むHer2タンパク質検出試薬を提供する。
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートの結合部分は、診断用同位体である。
別の好ましい例において、前記検出学的許容される担体は、非毒性的、不活性的水性担体媒体である。
別の好ましい例において、前記検出試薬は、同位体トレーサー、造影剤、フロー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子およびイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬である。
別の好ましい例において、前記検出試薬は、造影剤であり、前記造影剤は、イメージング用の他の製剤をさらに含む。
別の好ましい例において、前記造影剤は、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピュータ断層撮影技術)に使用される造影剤である。
別の好ましい例において、前記イメージング剤は、Ga-68およびGdなどの2つまたは複数の信号を同時にキレートし、PET/CTおよびMRIに使用され、またはTc-99mおよび蛍光剤は、同時にSPECT/CTおよび蛍光検出に同時に使用される。
別の好ましい例において、前記検出試薬は、生体内検出に使用される。
別の好ましい例において、前記検出試薬の剤形は、液体または粉末状(例えば、水剤、注射剤、凍結乾燥粉末、錠剤、バッカル剤、エアロゾル剤)である。
【0030】
本発明の第17の態様では、本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートと取扱説明書を含むHer2分子を検出するためのキットを提供する。
別の好ましい例において、前記取扱説明書には、キットは、検出対象のHer2の発現を非侵入的に検出するために使用されることが記載されている。
別の好ましい例において、前記キットは、Her2タンパク質(即ち、Her2陽性)を発現する腫瘍を検出するために使用される。
【0031】
本発明の第18の態様では、生体内でHer2分子を検出ための造影剤を製造するための本発明の第7の態様に記載の免疫コンジュゲートの用途を提供する。
別の好ましい例において、前記検出は、癌の診断または予後に使用される。
【0032】
本発明の第19の態様では、CAR-T細胞を提供し、前記CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体CARを発現し、前記CARの抗原結合ドメインは、本発明の第1の態様に記載のVHH鎖、または本発明の第2の態様に記載のナノボディを有する。
【0033】
本発明の第20の態様では、本発明の第20の態様に記載のCAR-T細胞、及び薬理学的許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む製剤を提供する。
別の好ましい例において、前記製剤は、液体製剤である。
別の好ましい例において、前記製剤の剤形は、注射剤を含む。
別の好ましい例において、前記製剤中のCAR-T細胞の濃度は、1×103-1×108個細胞/mlであり、好ましくは、1×104-1×107個細胞/mlである。
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下(例えば、実施例)に具体的に説明する各技術的特徴を互いに組み合わせて、新規または好ましい技術的解決手段を形成することができることを理解されたい。スペースの制限のため、ここでは繰り返しない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】抗原タンパク質精製SDS-PAGE図である。図の3つの電気泳動レーンは、左から右に核酸分子標準、精製したヒトHer2(ECD)-Fcタンパク質、TEV酵素分解後のヒトHer2(ECD)タンパク質であり、以上のタンパク質はすべてHEK293F細胞によって発現される。
【
図2】ライブラリの構築及びその品質検出図である。
図Aは、第1のPCR増幅産物であり、サイズが約700bpの標的バンドをタッピングによって回収し、
図Bは、第2のPCR増幅産物であり、サイズが約400bpのVHH遺伝子フラグメントを獲得し、
図Cは、ライブラリーのライブラリー容量検出図であり、構築したライブラリーは勾配希釈した後にプレーティングされ、1/5の濃度で10
3倍、10
4倍、10
5倍、10
6倍のクローン数を希釈し、モノクローナル抗体の数を計算してライブラリーのサイズが2×10
9CFUであることを確認した。
図Dは、ライブラリ挿入率の検出図であり、ライブラリの24個のモノクローナル抗体をランダムに選択してPCR同定し、左から右へのDNAバンドはそれぞれ第1のレーンは、DNA分子標識、残りのウェルは、挿入フラグメント検出用のPCR産物であり、検出した結果前記ライブラリのVHH挿入率は100%である。
【0035】
【
図3】Her2ナノボディスクリーニング濃縮プロセスを示した。1回目のパンニングの後、ライブラリーは倍の濃縮を示さず、2回目のパンニングで3.75倍の濃縮を示し、3回目のパンニングで110倍の濃縮を示した。
【
図4】Her2ナノボディの精製結果を示した。ナノボディは、ニッケルカラムイオンアフィニティクロマトグラフィーによって1ステップで調製および精製され、純度は95%以上に達することができる。
【
図5】Her2ナノボディと異なる種Her2との親和性を示した。ナノボディは、異なる勾配濃度でヒトおよびマウス抗原タンパク質Her2と反応し、結果はナノボディがヒトHer2にのみ結合することを示した。
【0036】
【
図6】HER-2高発現腫瘍を有するマウスにおけるI-125標識Her2ナノボディのSPECT-CTイメージングの結果を示した。複数のナノボディは、Her2高発現腫瘍を効果的に蓄積することができ、同時に非結合抗体は腎臓および膀胱を介して血液から迅速に除去される。
【
図7】HER-2高発現腫瘍を有するマウスにおける99m-Tc標識Her2ナノボディのSPECT-CTイメージングの結果を示した。ナノボディは、Her2高発現腫瘍に特異的に蓄積することができ、非結合抗体は腎臓および膀胱を介して血液から迅速に除去され、同時にトラスツズマブまたはペルツズマブと競合しない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明者は、広範囲にわたる綿密な研究および大量なスクリーニングにより、あるクラスの抗Her2ナノボディを得ることに成功し、実験結果は、本発明によって得られたHer2ナノボディがHer2に効果的に結合できることを示す。
具体的に、本発明は、ヒト由来のHer2抗原タンパク質を使用してラクダを免疫し、高品質の免疫ナノボディ遺伝子ライブラリーを獲得する。次に、Her2タンパク質分子を酵素プレートに結合して、Her2タンパク質の正しい空間構造を表示し、この形式の抗原を使用して、ファージディスプレイ技術を使用して免疫ナノボディ遺伝子ライブラリー(ラクダ重鎖抗体ファージディスプレイ遺伝子ライブラリー)をスクリーニングし、それによってHer2特異的ナノボディ遺伝子を獲得した。次に、この遺伝子を大腸菌に導入して、大腸菌で効率的に発現できる高度に特異的なナノボディ株を獲得した。
【0038】
本発明はまた、Her2分子の検出に特に適した免疫コンジュゲートを初めて意外に発見し、前記免疫コンジュゲートは、特定の抗Her2ナノボディVHH鎖と放射性核種を含み、検出対象のHer2発現状況の非侵入的検出に使用できる。本発明の免疫コンジュゲートは、小さいサイズおよび高い特異性を有し、原発性腫瘍および転移性腫瘍を同時に標的化する全身検出に適し、精度が高く、放射線量が少ない。
なお、本発明は、Her2陽性腫瘍を効果的に治療することができる免疫コンジュゲートをさらに提供する。
本明細書で使用される用語「本発明のナノボディ」、「本発明の抗Her2ナノボディ」、「本発明のHer2ナノボディ」は互換的に使用されることができ、すべてHer2(ヒトHer2を含む)を特異的に認識して結合するナノボディを指す。特に好ましいのは、VHH鎖のアミノ酸序列は、SEQ ID NO.:1-40に示されたナノボディである。
【0039】
本明細書で使用される用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、2つの同じ軽鎖(L)および2つの同じ重鎖(H)からなる、同じ構造特性を有する約150000ダルトンのヘテロテトラグリカンタンパク質である。各軽鎖は共有ジスルフィド結合を介して重鎖に接続され、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は異なる。各重鎖と軽鎖にも、一定の間隔で鎖内ジスルフィド結合がある。各重鎖の一端に可変領域(VH)があり、その後に複数の定常領域が続く。各軽鎖の一端に可変領域(VL)があり、他端に定常領域があり、軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域の反対側にあり、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域の反対側にある。特別なアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変領域間に界面を形成する。
【0040】
本明細書で使用される用語「単一ドメイン抗体(VHH)」、「ナノボディ」(nanobody)は、同じ意味を有し、抗体重鎖の可変領域をクローンすることを指し、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築し、これは完全な機能を持つ最小の抗原結合フラグメントを有する。通常、軽鎖および重鎖の定常領域1(CH1)を自然欠缺の抗体を最初に取得した後、抗体の重鎖の可変領域をクローニングして、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築する。
【0041】
本明細書で使用される用語「可変」は、抗体の可変領域のある部分が序列で異なり、その特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合および特異性を形成することを意味する。しかし、可変性は抗体の可変領域全体に均等に分布されていない。相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる軽鎖および重鎖の可変領域の3つのフラグメントに集中している。可変領域のより保存された部分は、フレーム領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ4つのFR領域を含み、それらは一般にb-折り畳まれた構成で、3つのCDRで連結されて連結ループを形成し、場合によっては部分的なb折り畳まれた構造を形成する。各鎖のCDRはFR領域によって密接に結合され、他の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位を形成する(Kabatら等、NIH Publ. No. 91-3242、巻I、647-669ページ(1991)を参照)。定常領域は、抗体と抗原の結合には直接関与しないが、抗体に関与する抗体依存性細胞毒性などの異なるエフェクター機能を示す。
【0042】
当業者に知られているように、免疫コンジュゲートおよび融合発現産物は、薬物、毒素、サイトカイン(cytokine)、放射性核種、酵素、および他の診断または治療分子と本発明の抗体またはそのフラグメントが結合することにより形成すされるコンジュゲートを含む。本発明はまた、前記抗Her2タンパク質抗体またはそのフラグメントに結合した細胞表面マーカーまたは抗原を含む。
本明細書で使用される用語「重鎖可変領域」と「VH」は、互換的に使用されることができる。
本明細書で使用される用語「可変領域」と「相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)」は、互換的に使用されることができる。
【0043】
本発明の一好ましい実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
本発明の一好ましい実施形態において、前記抗体の重鎖は、前記重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。
本発明において、用語「本発明の抗体」、「本発明のタンパク質」、または「本発明のポリペプチド」は、互換的に使用されることができ、重鎖可変領域を有するタンパク質またはポリペプチドなどのHer2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドを指す。それらは出発メチオニンを含んでも含まなくてもよい。
【0044】
本発明は、本発明の抗体を有する他のタンパク質または融合発現産物をさらに提供する。具体的に、本発明は、可変領域を含む重鎖を有する任意のタンパク質コンジュゲート及び融合発現産物(即ち、免疫コンジュゲートおよび融合発現産物)を含み、前記可変領域と本発明の抗体の重鎖可変領域が同一であるか、少なくとも90%相同であり、好ましくは、少なくとも95%相同である。
一般に、抗体の抗原結合特性は、可変領域(CDR)と呼ばれる重鎖の可変領域にある3つの特定の領域によって説明することができる。前記セグメントを、4つのフレーム領域(FR)に分け、4つのFRのアミノ酸序列は、比較的保存的で、結合反応に直接関与しない。これらのCDRはループ構造を形成し、それらの間のFRによって形成されるβ折り畳みは、空間構造において互いに近接し、重鎖のCDRと対応する軽鎖の対応するCDRは抗体の抗原結合部位を構成する。同じタイプの抗体のアミノ酸序列を比較して、どのアミノ酸がFRまたはCDR領域を構成するかを決定することができる。
【0045】
本発明の抗体の重鎖の可変領域は、それらの少なくとも一部が抗原の結合に関与しているため、特に興味深い。従って、本発明は、そのCDRが本明細書で同定されたCDRと90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)相同である限り、CDRを持つ抗体重鎖可変領域を有する分子を含む。
本発明は、完全な抗体だけでなく、免疫活性を有する抗体のフラグメントまたは抗体と他の序列によって形成された融合タンパク質をさらに含む。従って、本発明は、前記抗体のフラグメント、誘導体、および類似体をさらに含む。
【0046】
本明細書で使用される用語「フラグメント」、「誘導体」および「類似体」は、本発明の抗体と同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドフラグメント、誘導体または類似体は、(i)1つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、ここで、そのような置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされていてもいなくてもよい、または(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(iii)成熟ポリペプチドと、別の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどのポリペプチドの半減期を延長する化合物)との融合によって形成されるポリペプチド、または(iv)追加のアミノ酸序列をこのポリペプチド序列に融合することにより形成されたポリペプチド(例えば、リーダー序列または分泌序列、またはこのポリペプチドまたはタンパク質を精製するために使用される序列、または6Hisタグと形成された融合タンパク質)であることができる。本明細書の教示によれば、これらのフラグメント、誘導体、および類似体は、当業者に知られている範囲内にある。
【0047】
本発明の抗体は、Her2タンパク質結合活性を有し、前記CDR領域を含むポリペプチドを指す。この用語は、本発明の抗体と同じ機能を有する前記CDR領域を含むポリペプチドのバリアントをさらに含む。これらのバリアントは、以下を含む(ただし、これらに限定されない)。1つまたは複数(通常は1個-50個、好ましくは1個-30個、より好ましくは1個-20個、最も好ましくは1個-10個)のアミノ酸欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端に1つまたは複数(通常20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸を付加。例えば、当該技術分野において、近接または類似の特性を有するアミノ酸で置換する場合、一般にタンパク質の機能を変化させない。別の例として、C末端および/またはN末端に1つまたは複数のアミノ酸を追加しても、通常、タンパク質の機能は変わらない。当該用語は、本発明の抗体の活性フラグメントおよび活性誘導体をさらに含む。
【0048】
前記ポリペプチドのバリアントは、相同序列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然変異体、誘導変異体、および高または低ストリンジェンシー条件下で本発明の抗体のコードDNAとハイブリダイズできるDNAにコードされたタンパク質、および本発明の抗体に対する抗血清を使用して得られたポリペプチドまたはタンパク質を含む。
本発明は、ナノボディまたはそのフラグメントを含む融合タンパク質などの他のポリペプチドをさらに提供する。ほぼ全長のポリペプチドに加えて、本発明は、本発明のナノボディのフラグメントをさらに含む。一般に、前記フラグメントは、本発明の抗体の少なくとも約50個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも約50個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも約80個の連続したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約100個の連続したアミノ酸を有する。
【0049】
本発明において、「本発明抗体の保存的変異体」とは、本発明の抗体のアミノ酸序列と比較して、最大10個、好ましくは最大8個、より好ましくは最大5個、最も好ましくは最大3個のアミノ酸を、近接または類似の特性を有するアミノ酸で置換することにより形成されるポリペプチドを指す。これらの保存的変異体ポリペプチドは、好ましくは表1によるアミノ酸置換により生成される。
【表1】
【0050】
本発明は、上記抗体またはそのフラグメントまたはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子をさらに提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態またはRNA形態であることができる。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAを含む。DNAは、一本鎖または二本鎖であることができる。DNAは、コーディング鎖または非コーディング鎖であることができる。
本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、成熟ポリペプチドのみをコードするコード序列と、成熟ポリペプチドのコード序列および様々な追加コード序列と、成熟ポリペプチドのコード序列(および任意の追加コード序列)および非コード序列を含む。
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、前記ポリペプチドをコートするポリヌクレオチドであることができ、追加コードおよび/または非コード序列をさらに含むポリヌクレオチドであることもできる。
【0051】
本発明はまた、上記序列にハイブリダイズし、2つの序列の間で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、厳密な条件下で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズできるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「厳密な条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDS、60℃などの低イオン強度および高温でのハイブリダイゼーションおよび溶出、または(2)ハイブリダイゼーション中に50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清/0.1%Ficoll、42℃などの変性剤の添加、または(3)2つの序列の間の同一性が少なくとも90%以上、より好ましくは95%が以上である場合のみハイブリダイズが発生することを指す。また、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0052】
本発明の抗体のヌクレオチド全長序列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法、または人工合成法により獲得することができる。実行可能な方法は、特にフラグメントの長さが短い場合に、人工的な合成方法によって関連する序列を合成することである。通常、最初に複数の小さなフラグメントを合成し、次にそれらを連結することにより序列の長いフラグメントを獲得することができる。なお、重鎖のコード序列と発現タグ(例えば、6His)を融合して融合タンパク質を形成することもできる。
一旦関連序列を獲得すると、組換え法を使用して関連序列を大量に獲得することができる。これは通常、担体にクローニングし、細胞に移し、その後、従来の方法で増殖した宿主細胞から分離して関連序列を獲得する。本発明による生体分子(核酸、タンパク質など)は、分離された形態で存在する生体分子が含む。
【0053】
現在、本発明のタンパク質(またはそのフラグメント、またはその誘導体)をコードするDNA序列は、化学合成により完全に獲得することができる。次いで、前記DNA序列を、当該分野で公知のさまざまな既存のDNA分子(または担体など)および細胞に導入することができる。なお、化学合成により、本発明のタンパク質序列に突然変異を導入することもできる。
本発明はまた、上記の適切なDNA序列および適切なプロモーターまたは制御序列を含む担体に関する。これらの担体を使用して適切な宿主細胞を形質転換して、タンパク質を発現させることができる。
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、または酵母細胞などの下等真核細胞、または哺乳動物細胞などの高等真核細胞であることができる。代表的な例は、大腸菌、ストレプトマイセスと、ネズミチフス菌の細菌細胞と、酵母などの真菌細胞と、ショウジョウバエS2またはSf9の昆虫細胞と、CHO、COS7、293細胞などの動物細胞がある。
【0054】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術を使用して実施することができる。宿主が大腸菌などの原核生物である場合、指数関数的増殖期の後にDNAを吸収できるコンピテント細胞を獲得し、CaCl2法で処理し、使用されるステップは、当技術分野で周知である。別の方法は、MgCl2を使用することである。必要に応じて、エレクトロポレーションにより形質転換を行うこともできる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームパッケージングなどの従来の機械的方法などのDNAトランスフェクション法を使用することができる。
得られた形質転換体は、常法により培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。使用される宿主細胞に応じて、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択されることができる。宿主細胞の増殖に適した条件下で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度まで成長した後、適切な方法(例えば、温度変換または化学的誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、細胞を一定期間培養する。
【0055】
上記の方法における組換えポリペプチドは、細胞内で、または細胞膜上で発現されるか、細胞外で分泌されることができる。必要に応じて、組換えタンパク質は、その物理的、化学的、およびその他の特性を使用したさまざまな分離方法によって分離および精製することができる。これらの方法は、当業者に周知である。これらの方法の例は、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧破壊、超処理、超遠心分離、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびその他のさまざまな液体クロマトグラフィー技術、およびこれらの方法の組み合わせの結合を含むが、これらに限定されない。
本発明の抗体は、単独で使用することができ、または検出可能なマーカー(診断目的のため)、治療薬、PK(プロテインキナーゼ)修飾部分、またはこれらのいずれかの組み合わせまたはコンジュゲートすることができる。
【0056】
診断目的の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピューター断層撮影技術)造影剤、または検出可能な産物を生成できる酵素を含むが、これらに限定されない。
本発明の抗体と組み合わせまたはコンジュゲートすることができる治療薬は、1、放射性核種、2、生物毒性、3、IL-2などのサイトカイン、4、金ナノ粒子/ナノロッド、5、ウイルス粒子、6、リポソーム、7、ナノ磁性粒子、8、薬物活性化酵素(例えば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質(BPHL))、9、治療薬(例えば、シスプラチン)または任意の種類のナノ粒子などを含むが、これらに限定されない。
【0057】
免疫コンジュゲート
本発明は、免疫コンジュゲートをさらに提供し、前記免疫コンジュゲートは、以下を含む。
(a)本発明の第1の態様に記載の抗Her2ナノボディのVHH鎖、または本発明の第2の態様に記載の抗Her2ナノボディと及び
(b)結合部分:放射性核種、酵素抗体、細胞、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される結合部分。
別の好ましい例において、前記免疫コンジュゲートは、本発明の第7の態様に記載のとおりである。
本発明の免疫コンジュゲートは、試験対象のHer2発現を非侵入的に検出するために使用することができ、サイズが小さく、特異性が高く、原発性および転移性腫瘍を同時に標的とする全身検出に適し、精度が高く、放射線量が少ない。
【0058】
細胞毒性
本発明の抗体コンジュゲート構成する結合部分は、細菌、真菌、植物または動物由来の小分子毒素などの毒素を含み、そのフラグメントおよび/または変異体を含む。細胞毒性の例は、オーリスタチン系(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAEとMMAF)、オーレオマイシン、美坦西醇、リシン毒素、リシン毒素A-鎖、コンブレタスタチン、ズオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クルシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤及び糖質コルチコイドと他の化学療法薬、およびAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212または213、P32とLu177を含むLuの放射性同位体などの放射性同位体を含むが、これらに限定されない。抗体は、プロドラッグをその活性型に変換することができる抗癌プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせることもできる。
好ましい小分子薬物は、高い細胞毒性を有する化合物であり、好ましくは、モノメチルオーリスタチン(monomethylauristatin)、カリケアマイシン、メイタンシノイド、またはそれらの組み合わせであり、より好ましくは、モノメチルオーリスタチン-E(MMAE)、モノメチルオーリスタチン-D(MMAD)、モノメチルオーリスタチン-F(MMAF)、またはそれらの組み合わせである。
【0059】
薬物組成物
本発明は、組成物をさらに提供する。好ましくは、前記組成物は、薬物組成物であり、上記抗体またはその活性フラグメントまたはその融合タンパク質または免疫コンジュゲート、及び薬理学的許容される担体を含む。通常、これらの物質を非毒性、不活性、および薬理学的に許容される水性担体媒体で製剤することができ、ここで、pHは通常約5~8、好ましくは約6~8であり、pHは、製剤化される物質の性質と治療する病気によって異なる場合がある。製剤化された薬物組成物は、腫瘍内、腹腔内、静脈内、または局所投与を含む(しかし、これらに限定されない)従来の経路により投与することができる。
本発明の薬物組成物は、Her2タンパク質分子の結合に直接に使用することができるため、腫瘍を治療に使用することができる。なお、他の治療薬を同時に使用することもできる。
【0060】
本発明の薬物組成物は、安全かつ有効な量(例えば、0.001-99wt%、好ましくは、0.01-90wt%、より好ましくは、0.1-80wt%)の本発明の上記ナノボディ(またはそのコンジュゲート)及び薬理学的許容される担体または賦形剤を含む。このタイプの担体は、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含む(しかし、これらに限定されない)。薬物製剤は、投与方法と合わせる必要がある。本発明の薬物組成物は、例えば、生理食塩水またはグルコースおよび他のアジュバントを含む水溶液を用いた従来の方法により、注射剤の形態で調製することができる。注射剤および液剤などの薬物組成物は、無菌条件下で製造されることが好ましい。活性成分の投与量は、治療有効量であり、例えば、1日当たり約10ng/k体重-約50mg/kg体重、より好ましくは、50ng/kg体重-約1mg/kg体重または10μg/kg体重-約10mg/kg体重である。
なお、本発明のポリペプチドまたはそのコンジュゲートは、他の治療薬(例えば、抗腫瘍剤または免疫調節剤)とともに使用することもできる。
薬物組成物を使用する場合、安全かつ有効な量の免疫コンジュゲートを哺乳動物に投与し、安全かつ有効な量は通常少なくとも約10ng/kg体重であり、ほとんどの場合、約50mg/kg体重を超えず、好ましくは、投与量は約50ng/kg体重-約1mg/kg体重である。もちろん、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康などの他の要因などの要因も考慮する必要があり、これらはすべて熟練した医師のスキルの範囲内である。
【0061】
標識されたナノボディ
本発明の一好ましい例において、前記ナノボディは、検出可能なマーカーを有する。より好ましくは、前記マーカーは、同位体、コロイド金マーカー、有色マーカーまたは蛍光着色マーカーからなる群から選択される。
コロイド金標識は、当業者に知られている方法を使用して実施することができる。本発明の一好ましい実施形態において、Her2に対するナノボディをコロイド金で標識して、コロイド金標識のナノボディを獲得する。
本発明の抗Her2ナノボディは、良好な特異性と高い力価を有する。
【0062】
CAR-T細胞
本明細書で使用される用語「CAR-T細胞」、「CAR-T」、「本発明CAR-T細胞」はすべて本発明の第19の態様に記載のCAR-T細胞を指す。
本明細書で使用されるキメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor:CAR)は、細胞外ドメイン、任意のヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、任意のシグナルペプチドと標的特異的結合エレメント(抗原結合ドメインともよばれる)を含まれます。細胞内ドメインは、共刺激分子とζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子を含む細胞内ドメインの一部を指す。共刺激分子は、リンパ球が抗原に効果的に応答するために必要な細胞表面分子であり、抗原受容体またはそれらのリガンドではない。
【0063】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」、「一本鎖抗体フラグメント」はすべて、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、または単一Fvフラグメントを指す。Fv抗体は、抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含むが、定常領域はなく、すべての抗原結合部位の最小の抗体フラグメントを有する。一般に、Fv抗体はVHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーも含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。抗原結合ドメインは通常scFv(single-chain variable fragment)である。一本鎖抗体は、好ましくは、ヌクレオチド鎖によりコードされるアミノ酸鎖序列である。本発明の好ましい実施形態として、前記scFvは、本発明の第1の態様に記載のVHH鎖、または本発明の第2の態様に記載のナノボディを含む。
【0064】
ヒンジ領域および膜貫通領域(膜貫通ドメイン)については、CARの細胞外ドメインに融合した膜貫通ドメインを含むようにCARを設計することができる。一実施形態において、CAR中のドメインの1つと自然に関連する膜貫通ドメインを使用する。いくつかの例において、膜貫通ドメインの選択またはアミノ酸置換による修飾により、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑える。
【0065】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインの間にリンカーを組み込むことができる。本明細書で使用される用語「リンカー」は、通常、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外または細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。リンカーは、0~300個のアミノ酸、好ましくは、2~100個のアミノ酸、最も好ましくは3~50個のアミノ酸を含むことができる。
CARがT細胞で発現すると、細胞外セグメントは特定の抗原を認識することができ、このシグナルは細胞内ドメインを介して伝達され、細胞の活性化と増殖、細胞溶解毒性、IL-2やIFN-γなどのサイトカインの分泌を引き起こし、腫瘍細胞に影響を及ぼし、腫瘍細胞が成長しない、死に至る、または他の方法で影響を受け、患者の腫瘍負荷の軽減または排除をもたらす。抗原結合ドメインは、好ましくは、共刺激分子およびζ鎖の1つまたは複数からの細胞内ドメインと融合する。
【0066】
検出方法
本発明はまた、Her2タンパク質を検出する方法に関する。前記方法のステップはおよそ次のとおりです。細胞および/または組織サンプルの獲得、サンプルの媒体への溶解、前記溶解されたサンプルのHer2タンパク質のレベルの検出。
本発明の検出方法において、使用されるサンプルは特に限定されず、代表例は、細胞保存液中に存在する細胞含有サンプルである。
【0067】
キット
本発明は、本発明の抗体(またはそのフラグメント)または検出プレートを含むキットをさらに提供し、本発明の一好ましい例において、前記キットは、容器、取扱説明書、緩衝液などをさらに含む。
本発明は、Her2レベルを検出するための検出キットをさらに提供し、前記キットは、Her2タンパク質を認識する抗体、サンプルを溶解するためのクラッキング媒体、様々な緩衝液、検出標識、検出基質などの検出に必要な一般的な試薬および緩衝液を含む。前記検出キットは、生体内診断装置であることができる。
本発明は、本発明の免疫コンジュゲートを含むキットをさらに提供し、本発明の一好ましい例において、前記キットは、容器、取扱説明書、同位体トレーサー及び造影剤、フロー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子とイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬をさらに含む。
好ましくは、本発明のキットは、被験者のHer2発現を非侵入的に検出するための生体内診断キットである。
【0068】
応用
上述のように、本発明のナノボディは、幅広い生物学的応用価値および臨床的応用価値を有し、その応用は、Her2関連疾患の診断および治療、基礎医学研究、生物学研究などの多くの分野に関する。一好ましい応用は、Her2に対する臨床診断および標的療法である。
【0069】
本発明の主な利点は、以下を含む。
(a)本発明のナノボディは、正しい空間構造を有するヒトHer2タンパク質に対して高度に特異的である。
(b)本発明のナノボディの親和性は強い。
(c)本発明のナノボディの製造は簡単である。
(d)本発明のナノボディは、ヒト由来のHer2に特異的に結合でき、Her2高発現腫瘍モデルに効果的に蓄積でき、トラスツズマブまたはペルツズマブと競合しない。本発明のHer2ナノボディは、Her2標的癌診断および治療効果評価、ならびに新世代のHer2の標的インビボ放射線療法に非常に適している。
【0070】
以下、具体的な実施例に結び付けて、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例における具体的な条件のない実験方法は、一般的に、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載の条件、またはメーカーが推奨する条件に基づく。他に示されない限り、パーセンテージおよび部数は重量パーセントおよび重量部である。
【0071】
実施例1:ヒトHer2タンパク質の発現と精製
(1)ヒトHer2のヌクレオチド序列をpCDNA3.1(-)担体に合成し、その後その細胞外フラグメント序列をpFUSE-IgG1担体にサブクローニングし、ここで、hHer2(ECD)のC端にTEV酵素分解ポイントに導入して、FcタグのないhHer2(ECD)タンパク質の調製を容易にする。
(2)Omegaプラスミド大抽出キットで構築されたpFUSE-IgG1-hHer2(ECD)プラスミドを抽出した。
(3)HEK293F細胞をODが2.0×10
6個/mLになるまで培養した。
(4)プラスミドとトランスフェクション試薬PEIを1:5に均一に混合した後、10分間静置し、その後HEK293F細胞に加え、37℃、6% CO
2シェイキングインキュベーターで5-6日間培養した。
(5)細胞上清を回収し、室温でプロテインAビーズと1時間結合させた。
(6)pH7.0のリン酸緩衝液でビーズを洗浄した後、0.1MのpH3.0グリシンでタンパク質を溶出した。
(7)溶出したタンパク質をPBSで限外ろ過し、収量を測定した後、サンプリングしてSDS-PAGE検出(テスト結果は、
図1に示した通りである)し、前記抗原の純度は95%を以上であり、後続の免疫反応に使用することができる。
(8)続いて、TEV酵素を使用してタンパク質を酵素分解し、後続抗体スクリーニングのためにタグのない抗原タンパク質Her2(ECD)を獲得した。
【0072】
実施例2:Her2ナノボディライブラリの構築
(1)1mgのhHer2(ECD)-Fc抗原とフロイントアジュバント(freund’s adjuvant)を等量混合し、新疆バクトリアラクダを週に1回、3回免疫し、B細胞を刺激して抗原特異的ナノボディを発現させた。
(2)3回の免疫後、100mLのラクダ末梢血リンパ球を抽出し、トータルRNAを抽出した。
(3)cDNAを合成し、ネストされたPCRを使用してVHHを増幅した(
図2のAは、第1のPCR増幅産物であり、サイズが約700bpのVHH-hinge-CH2-CH3フラグメントをタッピングによって回収し、
図2のBは、第2のPCR増幅産物であり、サイズが約400bpのVHHフラグメントである)。
(4)制限酵素Pst IおよびNot Iを使用して、20μgのpMECSファージディスプレイベクター(Biovectorから提供)および10μgのVHHを切断し、2つのフラグメントを連結した。
(5)連結産物をエレクトロコンピテント細胞TG1に形質転換し、Her2ナノボディライブラリを構築し、保存容量を測定した。結果は、
図2のCに示した通りであり、構築したライブラリーは勾配希釈した後にプレーティングされ、1/5の濃度で10
3倍、10
4倍、10
5倍、10
6倍のクローン数を希釈し、モノクローナル抗体の数を計算してライブラリーのサイズが2×10
9CFUであることを確認した。
(6)同時に、コロニーPCR検出のために24個のクローンをランダムに選択した。
図2のDはコロニーPCRの結果を示し、結果は構築したライブラリのVHH挿入率は100%であることを示した。
【0073】
実施例3:Her2ナノボディのスクリーニングと識別
抗体のスクリーニング
(1)100mMのNaHCO
3、pH8.2に溶解した10μgのhHer2(ECD)-Fc抗原(10μg Fc in NaHCO
3を対象とする)をNUNCプレートにコンジュゲートし、4℃で一晩放置した。
(2)翌日に100μLの0.1%BSAを添加し、室温で2時間ブロックした。
(3)2時間後、100μLのファージ(2×10
11CFU免疫ラクダナノボディファージディスプレイ遺伝子ライブラリー)を加え、室温で1時間反応させた。
(4)0.05%のPBS+Tween-20で5回洗浄して、非特異的ファージを洗い流した。
(5)100mMのトリエタノールアミンでHer2に特異的に結合するファージを分離し、対数期に増殖する大腸菌TG1細胞に感染させ、37℃で1時間培養し、次のスクリーニングのためにファージを生成および精製した。同じスクリーニングプロセスを3回繰り返し、濃縮結果は、
図3に示したとおりであり、3回のバイオパニング(bio-panning)プロセスの後、最終的に110倍の濃縮が現れた。
【0074】
ファージの酵素免疫測定法(ELISA)による特異的単一陽性クローンのスクリーニング:
(1)上記2-3回のスクリーニング後、ファージを含む細胞培養皿から600個の個々のコロニーを選択し、100μg/mLのアンピシリン(Ampicillin)を含むTB培地(1LのTB培地には、2.3gのKH2PO4、12.52gのK2HPO4、12gのペプトン、24の酵母エキス、4mLのグリセロールが含まれる)に接種し、対数期に成長した後、1mMのIPTG最終濃度で添加し、28℃で一晩培養した。
(2)浸透法により粗抗体を得て、抗体を抗原被覆ELISAプレートに移し、室温で1時間放置した。
(3)非結合抗体をPBSTで洗浄し、マウス抗HA抗体(北京康為世紀生物科技有限公司から購入)を加え、室温で1時間放置した。
(4)PBSTで非結合抗体を洗浄し、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ標識抗体を加え、室温で1時間放置した。
(5)非結合抗体をPBSTで洗浄し、アルカリホスファターゼ発色溶液を加え、ELISA装置において405nmの波長で吸収値を読み取った。
(6)サンプルウェルのOD値が対照ウェルのOD値の3倍以上である場合(Ratio+/->3)、陽性クローンウェルと判断される。 PE-ELISAの結果、合計486の陽性クローンを示し、比率(比:+/-)が3~30でしあり、その後、すべての陽性クローンをLA培地に移して培養し、プラスミドを抽出してシーケンスを実行した。シーケンシング結果が多く、シーケンシング結果はほとんど繰り返しシーケンスであるため、表2に示すように、最終的に得られた40ナノボディの対応するELISA結果のみを表示した。
【0075】
【表2】
上記の40の抗体のVHH鎖のヌクレオチド序列は、それぞれSEQ ID NO.:1-40に示された。表3において、番号がnであるVHH(n=1-40の正の整数)のアミノ酸序列はSEQ ID NO.:nであり、対応するコーディング序列はSEQ ID NO.:40+nである。
【0076】
【0077】
40のナノボディの序列は以下の通りであり、40のナノボディの3つのCDR領域は、それぞれ下線を引いだ。
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
【化1-5】
【化1-6】
【化1-7】
【0078】
実施例4:宿主細菌大腸菌におけるナノボディの発現、精製:
(1)実施例3のシーケンス分析で得られた異なるクローン(7つのナノボディをランダムに選択)について、対応する各プラスミドを大腸菌WK6に電気形質転換し、LA+グルコース、即ちアンピシリンとグルコースを含む培養プレートにコーティングし、37℃で一晩培養した。
(2)単一のコロニーを選び、5mLのアンピシリンを含むLBブロスに接種し、37℃でシェイキング培養した。
(3)1mLの一晩培養した細菌を330mLのTB培地に接種し、37℃でシェイキング培養し、OD値が0.6-1に達したら、IPTGを加え、28℃で一晩シェイキング培養した。
(4)遠心分離して細菌を収集した。
(5)浸透法により抗体粗抽出物を獲得した。
(6)ニッケルカラムイオンアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたナノボディを調製した。
精製結果は、
図4に示したとおりであり、精製後、抗Her2ナノボディの純度は95%以上に達することができる。
【0079】
実施例5:酵素免疫測定法(ELISA)によりナノボディと異なる種のHer2の親和性を同定
(1)ヒトおよびマウス種の抗原タンパク質HER2をコーティング:ヒトおよびマウス種の抗原タンパク質Her2を添加し、4℃で一晩放置した。
(2)翌日にPBSTで3回洗浄し、1%のBSAを加えて室温で2時間ブロックした。
(3)精製したナノボディを勾配で希釈し、コーティングされたHer2抗原と室温で1時間放置した。
(4)非結合抗体をPBSTで洗浄し、マウス抗HA抗体を加えて、室温で1時間放置した。
(5)非結合抗体をPBSTで洗浄し、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ標識抗体を加え、室温で1時間放置した。
(6)非結合抗体をPBSTで洗浄し、アルカリホスファターゼ発色溶液を加え、ELISA装置において、405nmの波長で吸収値を読み取り、吸収値に従ってナノボディの特異性を判断した。
検出結果は
図5に示したように、本発明のナノボディは、ヒトHer2にのみ結合する。
【0080】
実施例6:フローサイトメトリーによるナノボディと細胞の結合の検出
(1)細胞タイプ:BT474及びMDA-MB-231。PBSで細胞を2回洗浄した。
(2)ナノボディをPBSで0.1ug/uLの濃度に希釈した。
(3)洗浄した細胞をウェルプレートに分注し、各サンプルの細胞数を3×10
5にした後、希釈したナノボディを各ウェルに加え、均一に混合し、4℃で20分間放置した。
(4)細胞をPBSで2回洗浄し、細胞を100uLのPBSで再懸濁し、マウス抗HA Alexa Fluor488標識抗体を、サンプルあたり1uLに加え、均一に混合し、4℃で20分間放置した。
(5)細胞をPBSで2回洗浄し、300uLのPBSを含むフローチューブに細胞を再懸濁し、光から保護して氷上に置き、機械でテストした。
結果は、Her2発現が高い(BT474)細胞株において、本発明のナノボディの陽性率は>99%であり、Her2発現が低い(MDA-MB-231)細胞株において、ナノボディの陽性率は、6-14%であり、2つの間の差は少なくとも約6倍であったことを示し、これは、本発明のナノボディがHer2に対して非常に良好な特異性を有することをさらに示唆している。いくつかのナノボディの結果を表4に示した。
【表4】
【0081】
実施例7:Biacore 3K親和性およびトラスツズマブとペルツズマブの競合の測定
(1)固定:固定相抗原タンパク質Her2をカルボキシアミノ反応によりCM-5センサーチップの表面に固定した。
(2)結合:ナノボディをHBSバッファーで異なる濃度に希釈し、ナノボディとトラスツズマブまたはペルツズマブまたは抗原のみの結合プロセスを観察した。
(3)チップの再生:次の抗体測定を実行するとき、10mMグリシンですすいで、再生した。
結果は、本発明のナノボディがHer2との親和性がナノモル濃度レベル以上に達し、トラスツズマブまたはペルツズマブと競合してHer2に結合しないことを示した。いくつかのナノボディのデータを表5に示した。
【表5】
【0082】
実施例8 ナノボディI-125の標識、分離精製及びSPECTイメージングスキャン
(1)150μLの抗体原液を取り、100μLの0.02mol/L pH7.4リン酸緩衝液と50μLのNa125I溶液を加え、均一に混合し、20μLの5mg/mLクロラミンT溶液を加え、ミキサーで室温で70秒間反応させ、200μLのメタ重亜硫酸ナトリウム溶液(5mg/mL)を加え、5分間作用させた。
(2)PD10カラムで分離し、溶出液は0.02mol/L pH 7.4のリン酸緩衝液であり、チューブあたり10滴を収集し、ペーパークロマトグラフィーを使用してI-125標識ナノボディの純度を確認した。
(3)NOD/SCIDマウスに、細胞接種の1日前に右背中にエストロゲン錠剤を皮下移植し、右乳房脂肪パッドに1×10
7Her2高発現(BT474)細胞を接種し、腫瘍が150-200mm
3に成長すると、正式な実験研究に使用した。
(4)担癌マウスをイソフルランで麻酔し、I-125標識ナノボディ(~50ug、5MBq)を尾静脈に注射した。
(5)投与の30分後にスキャンし、取得方法は静的15分SPECTおよび中解像度全身CTである。
結果は、本発明の複数のナノボディが、Her2高発現腫瘍モデルの効果的な蓄積に効果的であり、癌の診断および治療に適用されることを示した。同時に、非結合抗体は腎臓と膀胱を介して血液から迅速に除去され、身体の放射線量を減らす。
担癌マウスの一部のナノボディの30分のSPECTスキャン写真と身体分布データを
図6と表6に示した。
【表6】
【0083】
実施例9 ナノボディTc-99m標識、分離精製及びSPECTイメージングスキャン
(1)それぞれ5.5mgのNa2CO3、15.2mgの酒石酸カリウムナトリウム、及び20.5mgのNaBH4を10mLの滅菌ボトルに加え、20分間のCOを通過させ、1mL(35mCi)のNa[99mTcO4]を加え、反応ボトルを密閉し、80℃で30分間加熱した。
(2)50μlの抗体原液を取り、500μlの99mTc(CO)3(H2O)3反応溶液(6.56mCi)を加え、45-50℃で90分間反応させた。
(3)PD10カラムで分離し、溶離液は0.02mol/L pH 7.4リン酸緩衝液であり、薄層クロマトグラフィーにより99mTc標識ナノボディに放射純度を確認した。
(4)NOD/SCIDマウスに、細胞接種の1日前の右背中にエストロゲンの丸薬を皮下移植し、右乳房脂肪パッドに1×10
7Her2高発現(BT474)細胞を接種し、腫瘍が150-200mm
3に成長すると、正式な実験研究に使用した。
(5)担癌マウスをイソフルランで麻酔し、Tc-99m標識ナノボディ(~10ug、5MBq)を尾静脈に注入するか、20x非標識ナノボディを同時に混合するか、72時間前に20xトラスツズマブまたは20xペルツズマブ尾静脈注射により前処置した。
(6)投与の30分後にスキャンし、取得方法は静的15分SPECTおよび中解像度全身CTである。
結果は、本発明の複数のナノボディが、Her2高発現腫瘍モデルの効果的な蓄積に効果的であり、トラスツズマブまたはペルツズマブと競合しないことを示した。Her2をターゲットにした癌の診断と有効性の評価に使用でき、同時にHer2をターゲットにした新世代の治療法を開発することができる。
担癌マウスの一部のナノボディの30分のSPECTスキャン写真と身体分布データを
図7と表7に示した。
【表7】
【0084】
本発明で言及されるすべての文書は、あたかも各文書が個々に参照により組み込まれたかのように、本出願に参照により組み込まれる。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内に入ることを理解されたい。
【配列表】