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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】免振家具、および免振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220701BHJP
   F16F 15/06 20060101ALI20220701BHJP
   F16F 15/03 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
F16F15/06 A
F16F15/03 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022014007
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-325175(JP,A)
【文献】特開平02-035141(JP,A)
【文献】米国特許第03125767(US,A)
【文献】米国特許第05107556(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/00-23/34
29/00
A61G 1/00- 5/14
E04H 9/00- 9/16
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座するため、あるいは横臥するために用いる家具が免振装置で免振される免振家具であって、
支持部に、傾動可能に支持されるピボット支承部と、
垂直振動を免振する垂直免振部と、
前記ピボット支承部の傾動を抑制するとともに、前記傾動に起因する傾動振動を免振する傾動免振部と、を備え、
前記垂直免振部は、前記ピボット支承部に支持されるとともに前記家具を懸垂することを特徴とする免振家具。
【請求項2】
前記ピボット支承部は、前記支持部から直立して設けられ、
前記垂直免振部は、前記ピボット支承部の上面に載置される空気バネと、前記空気バネの上端に接続して前記空気バネの上端の垂直変位、および前記ピボット支承部の傾動に追従して変位する懸垂ロッドと、を有し、
前記懸垂ロッドは、前記家具と接続することを特徴とする請求項1に記載の免振家具。
【請求項3】
前記傾動免振部は、前記支持部に固定された状態で前記ピボット支承部を内挿する第1外筒と、前記第1外筒と前記ピボット支承部の双方に接触する第1ダンパーとを有し、
前記第1ダンパーは、前記ピボット支承部の周方向に複数個並べられた薄板状の第1環状バネと、前記第1環状バネの変形に伴って変形する第1変形容器とを含み、前記第1変形容器は空気を通過させるための第1通気孔が画定されることを特徴とする請求項1または2に記載の免振家具。
【請求項4】
前記傾動免振部は、前記支持部に固定された状態で前記懸垂ロッドを内挿する第2外筒と、前記第2外筒と前記懸垂ロッドの双方に接触する第2ダンパーとを有し、
前記第2ダンパーは、前記懸垂ロッドの周方向に複数個並べられた薄板状の第2環状バネと、前記第2環状バネの変形に伴って変形する第2変形容器とを含み、前記第2変形容器は空気を通過させるための第2通気孔が画定されることを特徴とする請求項に記載の免振家具。
【請求項5】
前記家具は、床面に接地する脚部を有し、
前記脚部は、一部が分離して、前記床面から離れることで、前記免振装置で免振されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の免振家具。
【請求項6】
前記脚部は、前記床面での加速度が所定の閾値を超えたとき一部が分離することを特徴とする請求項5に記載の免振家具。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の免振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免振装置によって免振される免振家具、および家具を免振するための免振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振り子構造の免振装置については、種々提案されている。
【0003】
特許文献1では、無方向性振動減衰機能を有する二重の振り子ユニット構造の免振装置が提案されている。基礎からの振動を、第二支持枠体、第二吊下アーム、第一支持枠体、第一吊下アームに伝え第一支持枠体及び第一吊下アームの振り子作動を生起させその連携によって当該振動を吸収減衰して免振し、建物自体及び建物内の設備機器や重要文化財などの収容建具などの倒壊、破損、崩壊などの被害や居住する人間自身への体感度を最小限に止めることができるものである。
【0004】
特許文献2では、鉄骨・木造住宅等の建築構造物の出隅と入隅及び直線部分の中間部位における基礎と前記建築構造物の土台との間に装着される免振装置が提案されている。基板と、相対向する一対の側板及び上部板を有し、かつ相対向する両側面が開口した略台形函形状の下部鋼枠体と、下部板と、相対向する一対の側板及び上部板を有し、かつ相対向する両側面が開口した略逆台形函形状の上部鋼枠体とを備え、下部鋼枠体と上部鋼枠体は、鎖状に組み付けられるとともに、下部鋼枠体の上部板中央部と上部鋼枠体の下部板中央部は、上部板の中央部シャフト挿通穴と下部板の中央部シャフト挿通穴を介して挿通され、かつX-X’軸方向とY-Y’軸方向に上部鋼枠体と共に可動する1本の吊りシャフトで連結され、下部鋼枠体が基礎上にアンカーボルト等で固着され、上部鋼枠体の上部板上には建築構造物の土台が載置固定されてセットされ、建築構造物が前記X-X’軸方向に揺れて最大振幅を越えた場合には、上部鋼枠体の側板内面が下部鋼枠体の上部板端面に当接し、前記建築構造物が前記Y-Y’軸方向に揺れて最大振幅を越えた場合には、上部鋼枠体の下部板端面が下部鋼枠体の側板内面に当接して、建築構造物に加わる振動が一定に保たれる構成を特徴とするものである。
【0005】
特許文献3では、地震時における強い水平加速速度と上下の振動を大幅に低減し得て、建物自体及び建物内の設備機器の被害や体感度を最小限に止め、安心感が得られる建築構造物の免振装置が提案されている。建物の基礎と建物の土台との間にセットされて、建物に働く強い水平加速度は、基板1上に支柱を介して固定された上部固定板と、該固定板に複数の振り子板吊りシャフトにより垂設された振り子構造の振り子板の振動減衰機能により免振され、上下の振動に対しては各シャフト17に球面滑り軸受22と共に設けられた皿バネ等の弾性部材により吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3150287号
【文献】特開2004-232371号公報
【文献】特開2004-11318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3で提案されている振り子構造の免振装置は、建築物の倒壊を回避することを主たる目的としている。そのため、建築物の振動を一定程度に抑える程度の免振効果を得るためのものであり、例えば、身体が不自由で、ベッドに横臥せざるを得ない方々の、地震時における安全についてまでは考慮されていないと考えられる。さらに、設置できる場所は地面、あるいは基礎の上に限られている。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、ベッド、椅子などの家具を直接支持して、地震時における使用者の安全を確保できる免振家具、および家具を免振するための免振装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、着座するため、あるいは横臥するために用いる家具が免振装置で免振される免振家具であって、支持部に、傾動可能に支持されるピボット支承部と、垂直振動を免振する垂直免振部と、ピボット支承部の傾動を抑制するとともに、傾動に起因する傾動振動を免振する傾動免振部とを備え、垂直免振部は、ピボット支承部に支持されるとともに家具を懸垂することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、着座するため、あるいは横臥するために用いる家具は、免振装置で直接免振されるので、仮に、家具を使用している際に地震が発生した場合でも、使用者は、家具からの転落、脱落を回避できる。また、家具は懸垂されており、垂直免振部、および傾動免振部は家具の上方の位置に設けられるので、家具の下方に設ける場合に比べ自由な配置が可能となる。これにより、大きな免振効果を得る構造とすることができる。
【0011】
好ましくは、ピボット支承部は支持部から直立して設けられ、垂直免振部は、ピボット支承部の上面に載置される空気バネと、空気バネの上端に接続して空気バネの上端の垂直変位、およびピボット支承部の傾動に追従して変位する懸垂ロッドとを有し、懸垂ロッドは、家具と接続することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、垂直免振部は、支持部から直立して設けられるピボット支承部の上面に載置される空気バネを有するので、ピボット支承部の傾動に追従して家具を免振できる。
【0013】
好ましくは、傾動免振部は、支持部に固定された状態でピボット支承部を内挿する第1外筒と、第1外筒とピボット支承部の双方に接触する第1ダンパーとを有し、第1ダンパーは、ピボット支承部の周方向に複数個並べられた薄板状の第1環状バネと、第1環状バネの変形に伴って変形する第1変形容器とを含み、第1変形容器は空気を通過させるための第1通気孔が画定されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、傾動免振部は、支持部に固定された状態でピボット支承部を内挿する第1外筒と、第1外筒とピボット支承部の双方に接触する第1ダンパーとを有するので、ピボット支承部は傾動免振部によって所定の位置で安定して静止できるとともに、ピボット支承部の傾動に伴って家具を免振できる。
【0015】
好ましくは、傾動免振部は、支持部に固定された状態で懸垂ロッドを内挿する第2外筒と、第2外筒と懸垂ロッドの双方に接触する第2ダンパーとを有し、第2ダンパーは、懸垂ロッドの周方向に複数個並べられた薄板状の第2環状バネと、第2環状バネの変形に伴って変形する第2変形容器とを含み、第2変形容器は空気を通過させるための第2通気孔が画定されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、傾動免振部は、支持部に固定された状態で懸垂ロッドを内挿する第2外筒と、第2外筒と懸垂ロッドの双方に接触する第2ダンパーとを有するので、懸垂ロッドを構成する部材ごとに第2ダンパーを設けることができる。例えば、空気バネに接続する部材を複数として、その部材ごとに第2ダンパーを設けることで高い減衰効果を得ることができる。
【0017】
好ましくは、家具は、床面に接地する脚部を有し、脚部は、一部が分離して、床面から離れることで、免振装置で免振されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、家具は、床面に接地する脚部を有し、脚部は、一部が分離して、床面から離れることで、免振装置で免振されるので、家具は状況に応じて、適宜に免振できる。
【0019】
好ましくは、脚部は、床面での加速度が所定の閾値を超えたとき一部が分離することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、脚部は、床面での加速度が所定の閾値を超えたとき一部が分離して家具は免振されるので、閾値を適切に設定することで、地震が発生したとき、適切に家具を免振できる。
【0021】
上記課題を解決するための他の発明は、上述した家具を免振するための免振装置である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】免振家具の正面図である。
図2】同、平面図である。
図3】空気バネの正面部分断面図である。
図4】(a)は、傾動免振部の正面断面図であり、(b)は、同平面図である。
図5】(a)、(b)は脚部の床面への接地、あるいは一部が分離する状態の部分正面図である。
図6】ベッドが傾斜したときの免振家具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1~6を参照して本発明の実施形態を詳述する。
【0024】
図1、2に示す通り、免振家具100は、免振装置1によってベッド(家具)110が懸垂される構造である。本実施形態では、家具として、横臥するために用いるベッドを例示しているが、椅子、ソファー等の着座のために用いる家具であってもよい。
【0025】
免振装置1は、床面130に接地する支持部120によって支持されている。支持部120は正面視がコ字形の骨組構造である。支持部は、ベッド110を懸垂したとき免振家具100を安定して免振できる構造であればよく、本実施形態の形状に限定されるものではない。具体的には、支持部は壁面や天井に接続する構造であってもよい。また、ベッド110は床面130に接地する脚部50によって床面130に支持されている。脚部50が床面130に接地している状態で、免振装置1は、ベッド110の重量の一部を支持している。また、脚部50は、一部が分離できる構造となっており、分離したときに、ベッド110は分離した部材を除き免振装置1によって支持される。この状態で、ベッド110は免振装置1によって免振される。
【0026】
ピボット支承部20は、支持部120の上に置かれ、ピボット支承部20の上に空気バネ30(垂直免振部)が置かれている。懸垂ロッド33は、一対の第1懸垂ロッド33a、33aと、第2懸垂ロッド33bを有している。第1懸垂ロッド33aは、空気バネ30の上端部に接続している接続棒32の両端部で、ボルトで固定されている。また、ピボット支承部20の貫通部25をスライドできる状態で貫通するとともに台座孔21bを通過して下方に向かって延びている。
【0027】
第2懸垂ロッド33bは、ベッド110を直接に支持する骨組部材であり、水平方向に延びる部材の中間部で一対の第1懸垂ロッド33aとボルトで相互に固定されている。また、水平方向に延びる部材の両端部から下方に延びる部材はベッド110に接続している。
【0028】
傾動免振部40は一対の第1懸垂ロッド33a、33aを取り囲んだ状態で台座21に固定されている。第1懸垂ロッド33aの一端は、接続棒32を介して空気バネ30にボルト接合で接続している。また、他端は、第2懸垂ロッド33bに接続している。
【0029】
ピボット支承部20は、台座21、球体22、受台支持棒23、受台24、および貫通部25で構成されている。台座21は支持部120の上端部に固定される平板であり、中央部に球面の一部を画定する球面凹部21a、および台座孔21bが設けられている。球体22は球面凸部22aによって画定される球であり、球面凹部21aに挿入されている。球体22と球面凹部21aの直径は同じに設定されている。これにより、球体22は挿入された位置で全方向に傾動するとともに回動できる。
【0030】
ピボット支承部20は、いわゆる天秤の構造であり、それ自体は全方向に傾動、あるいは回動できる。しかし、傾動免振部40によって、第1懸垂ロッド33aの動きが拘束されることで安定して、受台24の上に直立した状態を保ち得る。
【0031】
受台支持棒23は台座21から直立した状態で設けられる棒状部材である。受台支持棒23の一端は、球体22に接続している。また、傾動免振部40によって水平方向の変位が抑制されている。これにより、受台支持棒23は倒伏することなく直立状態を保ち得る。受台24は、空気バネ30を載置するための平板であり、中央部で、受台支持棒23と垂直な状態で接続している。また、第1懸垂ロッド33aを貫通させるための貫通部25が設けられている。
【0032】
台座孔21bの大きさは、第1懸垂ロッド33aが傾斜したとき、第1懸垂ロッド33aに接触しない程度の大きさとすることが好ましい。これにより、第1懸垂ロッド33aは、接続棒32と貫通部25の2箇所で変位が拘束されることとなり、ピボット支承部20の傾動変位に対応して一義的に傾動することで、空気バネ30の垂直変位に対応して、一義的に垂直方向に変位する。ここで、垂直変位とは、受台24に対して垂直な方向の変位である。
【0033】
図3に示す通り、空気バネ30は、スプリング35が環状ゴム36に内挿された状態で下板37、上板38に挟持される構造である。下板37は受台24に接続しており、上板38は接続棒32と接続している。また上板38には空気を内部に吸気するとともに、外部に排出できる空気孔38aが設けられている。環状ゴム36は、高減衰性能を具備した防振ゴムである。スプリング35はコイルバネであり、垂直方向に負荷された荷重のほとんどを負担して伸縮する。環状ゴム36は、スプリング35と同期して変位することで、環状ゴム36の弱点となるヘタリを防止できる。これにより、繰り返しの振動変位に対して高い耐久性を得ることができる。このような構成とすることで、環状ゴム36の減衰効果と、空気孔38aのエアダンピング効果によって高い減衰効果を得ることができる。
【0034】
ベッド110に生じる垂直振動は懸垂ロッド33を経由して空気バネ30に伝わり、空気バネ30が振動するときの減衰効果によって、ベッド110は免振される。
【0035】
本実施形態では、一対の第1懸垂ロッド33a、33aを、2個の傾動免振部40で取り囲んだ状態で台座21に固定されるとしているが、受台支持棒23を、1個の傾動免振部40で取り囲んだ状態で台座21に固定される構造としてもよく、懸垂ロッド33、受台支持棒23の双方を3個の傾動免振部40で取り囲んだ状態で台座21に固定してもよい。さらに、第1懸垂ロッドは3本以上であってもよく、3本以上の第1懸垂ロッドのそれぞれに傾動免振部を設けてもよい。
【0036】
図4に示す通り、傾動免振部40は、外筒(第2外筒)41とダンパー(第2ダンパー)42で構成されている。外筒41は円筒の下端部から径方向の外方に向かって水平に延びる鍔部41aが設けられている。また、鍔部41aは台座21に固定されている。
【0037】
ダンパー42は、外筒41と第1懸垂ロッド33aで画定される空間に挿入されており、9個の環状バネ(第2環状バネ)43と、環状バネ43に接した状態で収容される変形容器(第2変形容器)44を有している。環状バネ43は、外筒41および第1懸垂ロッド33aの双方に接続する円筒形状の薄板である。また、環状バネ43同士は相互に接触している。
【0038】
本実施形態では、環状バネ43の平面視の形状は、円形を例示しているが、楕円形、長円形、多角形であってもよい。
【0039】
変形容器44は、薄膜で構成される袋であり上端部に空気を通過させる通気孔(第2通気孔)44aが画定されている。また側面は環状バネ43に接している。なお、受台支持棒を取り囲んで台座に固定される構造となる傾動免振部は、第1外筒、第1ダンパー、第1環状バネ、および第1通気孔が画定される第1変形容器を有しているが、これらの構造は、それぞれ上述の第2外筒、第2ダンパー、第2環状バネ、および第2変形容器の構造とほぼ同じであることから説明は省略する。
【0040】
地震力等によってピボット支承部20が傾動振動すると、それに伴って、第1懸垂ロッド33aが振動し、環状バネ43は変形する。環状バネ43の変形に伴って、変形容器44に充満していた空気は通気孔44aを経由して外部に放出される、あるいは外部に存する空気が通気孔44aを経由して変形容器44に流入する。空気が通気孔44aを通過するときの減衰効果によって、地震動に起因する振動を早期に減衰できる。
【0041】
図5(a)、(b)に示す通り、ベッド110は、横臥するためのベッド本体111と、ベッド本体111を支持する脚部50を有している。脚部50はベッド本体111に接続する上脚部51と床面130に接地する下脚部52を有している。上脚部51と下脚部52は接触面50aで相互に接続している。接触面50aはベッド本体111の端部から中央部に向かって下り傾斜の斜面を画定している。これにより、ベッド本体111は脚部50を介して床面130に支持される。
【0042】
下脚部52は、回動板54によって変位が拘束された状態で、バネ53によって付勢されている。回動板54は、床面130の方向に向かって回動できる平板であり、上脚部51と下脚部52のそれぞれの側壁面51a、52aに接触している。また、ベッド本体111に固定されるソレノイド55によって回動変位が拘束されている。具体的には、回動板54が、ソレノイド55の先端に設けられたラッチ55aに係止されている。
【0043】
ソレノイド55が動作して、ラッチ55aが上方に向かって移動するとラッチ55aと回動板54の係止が解かれ回動板54は床面130の方向に向かって回動する。これに伴って、下脚部52の拘束は解かれ、バネ53の付勢力によって回動板54の方向に向かって押し出される。これにより、ベッド本体111は免振装置1で免振支持される。
【0044】
免振家具100の免振メカニズムについて説明する。
【0045】
図1に示す通り、通常の使用状態では、ベッド110は床面130に接地する脚部50によって床面130に支持されている。免振装置1は、脚部50が床面130に接地している状態で、ベッド110の重量の一部を支持している。これにより、ベッド110に横臥したとき、免振装置1に起因する揺れを感じることはない。
【0046】
地震が発生し床面130が揺れたとき、床面130に置かれた加速度計(図示略)によって、床面130の加速度が計測される。加速度計によって計測された計測値はコントローラー(図示略)に送られる。コントローラーが、加速度の計測値が閾値を超えたと判断したとき、コントローラーからの指令によりソレノイド55は通電される。これにより、ラッチ55aは上方に移動し、ラッチ55aと回動板54の係止状態が解かれ、回動板54は床面130に向かって回動する。
【0047】
図5に示す通り、回動板54によって変位が拘束されていた下脚部52は、回動板54の回動によって変位の拘束が解かれ、バネ53の付勢力によって回動板54の方向に向かって押し出される。これにより、ベッド本体111は脚部50での支持を失い、免振装置1で免振支持される。
【0048】
ベッド110が免振装置1で免振支持されたとき、上下方向の振動は、以下の通り、垂直免振部によって免振される。ベッド110の上下方向に振動は、懸垂ロッド33を経由して空気バネ30に伝達され、空気バネ30に伝達された振動は、空気バネ30が具備する高い減衰効果によって徐々に弱まり減衰する。
【0049】
水平方向の加速度に起因する振動は、以下の通り、傾動免振部40によって免振される。水平方向の加速度を受けたとき、台座21の下方に位置するベッド110と、台座21の上方に位置する傾動免振部40および空気バネ30(以後、免振部等と呼ぶ。)は、同一の水平方向の加速度を受ける。このときベッド110は球体22を中心として回動しようとする。一方免振部等は、球体22を中心としてベッド110と反対方向に回動しようとする。すなわち、ベッド110が回動しようとする回動力は、免振部等の回動力によって相殺される。免振部等がない場合に比べてベッド110の回動力は弱められる。ベッド110と免振部等の回動力の大きさを同じとすることで、理論的に水平方向の加速度に起因する振動は生じない。
【0050】
ベッド110と免振部等の回動力の大きさが同じとなるように、ベッド110と免振部等の重量比を設定すればよいが、想定する加速度、経済性等を勘案して適宜に定めればよい。経済性等を勘案すると、免振部等による回動力は、ベッド110による回動力を超えないように設定することが好ましい。
【0051】
図6に示す通り、球体22を中心とする傾動振動が発生したとき、第1ロッド33aは傾斜する。第1ロッド33aの傾斜によって環状バネ43および変形容器44は、径方向の伸縮を伴って変形する。なお、前述した通り、回動力の相殺効果によって傾動振動を発生させる回動力は軽微なものとすることができる。このとき、変形容器44に充満していた空気は、通気孔44aを経由して外部に放出される、あるいは外部に存する空気が通気孔44aを経由して変形容器44に流入する。空気が通気孔44aを通過するときの減衰効果によって、傾動振動は徐々に弱まり減衰する。
【0052】
さらに、ベッド本体111は、球体22のみの1カ所で支持される構造となるので、床面130自体が傾斜したとしても、ベッド本体111そのものは、元の水平状態を維持し得る。
【0053】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、ベッドを懸垂する免振装置の基数は、複数基であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る免振家具は、横臥しているときに、不意に地震が発生したとしてもベッドから振り落とされて床面に落ちるリスクを回避できる。特に、ベッドでの横臥を余儀なくされる方々にとって、地震時の安全を確保できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1:免振装置
20:ピボット支承部
30:空気バネ(垂直免振部)
33:懸垂ロッド
40:傾動免振部
41:外筒(第2外筒)
42:ダンパー(第2ダンパー)
43:環状バネ(第2環状バネ)
44:変形容器(第2変形容器)
44a:通気孔(第2通気孔)
50:脚部
110:ベッド(家具)
100:免振家具
120:支持部
130:床面
【要約】
【課題】ベッド、椅子などの家具を直接支持して、地震時における使用者の安全を確保できる免振家具、および家具を免振するための免振装置を提供する。
【解決手段】免振家具100は、免振装置1によってベッド(家具)110が懸垂される構造である。免振装置1は、床面130に接地する支持部120によって支持されている。支持部120は正面視がコ字形の骨組構造である。ベッド110は床面130に接地する脚部50によって床面130に支持されている。脚部50が床面130に接地している状態で、免振装置1は、ベッド110の重量の一部を支持している。また、脚部50は、一部が分離できる構造となっており、分離したときに、ベッド110は分離した部材を除き免振装置1によって支持される。この状態で、ベッド110は免振装置1によって免振される。
【選択図】 図1
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図2
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図5
図6