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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】入浴式変圧カプセル
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220701BHJP
   A61G 10/02 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61H33/00 K
A61G10/02 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022502256
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2022000473
【審査請求日】2022-01-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507116950
【氏名又は名称】株式会社M2プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】海達 宣明
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003281(JP,A)
【文献】特開2003-290312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0015624(US,A1)
【文献】特開2015-139523(JP,A)
【文献】実開昭59-124273(JP,U)
【文献】国際公開第2004/047710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/02
A61H 33/00-14
A47K 4/00
E04H 1/12
E05C 1/00-12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座した状態で湯を導入可能な基台と、
前記基台に対して開閉可能な蓋体と、
前記基台と前記蓋体との間を密封する環状シールと、
前記基台及び前記蓋体をロックするロック機構と、
前記ロック機構により前記基台及び前記蓋体がロックされた状態で、前記基台及び前記蓋体の内部に形成された室を変圧し、ポンプとコンプレッサとを有する圧力調整機構と、
少なくとも前記ロック機構及び前記圧力調整機構の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記圧力調整機構を作動させて前記室を減圧することにより前記環状シールを圧縮させた状態で、前記ロック機構を作動させて前記基台及び前記蓋体を密閉状態にロックし、
前記制御部は、前記室が最大減圧状態となったときから前記室を大気開放して空気を取り入れ、前記室が大気圧より圧力が小さい所定のタイミングで前記ポンプを作動し、大気圧となったタイミングで前記コンプレッサを作動させて大気圧より大きい圧力に移行させる入浴式変圧カプセル。
【請求項2】
使用者が着座した状態で湯を導入可能な基台と、
前記基台に対して開閉可能な蓋体と、
前記基台と前記蓋体との間を密封する環状シールと、
前記基台及び前記蓋体をロックするロック機構と、
前記ロック機構により前記基台及び前記蓋体がロックされた状態で、前記基台及び前記蓋体の内部に形成された室を変圧する圧力調整機構と、
少なくとも前記ロック機構及び前記圧力調整機構の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記圧力調整機構を作動させて前記室を減圧することにより前記環状シールを圧縮させた状態で、前記ロック機構を作動させて前記基台及び前記蓋体を密閉状態にロックし、
前記ロック機構は、流体圧により前記蓋体を上昇又は下降させる上下シリンダと、前記蓋体に固定された状態で前記上下シリンダと連動するロック部材と、当該ロック部材の移動を規制する規制ピンと、流体圧により当該規制ピンを移動させる規制シリンダと、を有する入浴式変圧カプセル。
【請求項3】
前記制御部は、前記室が最大減圧状態となったときに前記ロック機構を作動させる請求項1又は2に記載の入浴式変圧カプセル。
【請求項4】
前記制御部は、前記室が最大加圧状態となったときから前記室を大気開放して空気を外部に排出し、前記室が大気圧より圧力が大きい所定のタイミングで前記圧力調整機構を作動して前記室を減圧しながら大気圧より小さい圧力に移行させる請求項1~の何れか一項に記載の入浴式変圧カプセル。
【請求項5】
前記蓋体は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、第一本体と、当該第一本体から外側に延在する第一環状フランジと、を有しており、
前記基台は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、前記第一本体との間で前記室を形成する第二本体と、当該第二本体から外側に延在する第二環状フランジと、を有しており、
前記環状シールは、前記第一環状フランジと前記第二環状フランジとの間に配置されており、
前記ロック部材は、前記第一環状フランジに固定されており、前記規制シリンダは、前記第二環状フランジに固定されている請求項に記載の入浴式変圧カプセル。
【請求項6】
前記環状シールは、前記第二環状フランジに固定されている請求項に記載の入浴式変圧カプセル。
【請求項7】
前記第一本体には、前記使用者が着座した状態で外部を視認可能な窓が設けられている請求項又はに記載の入浴式変圧カプセル。
【請求項8】
前記制御部は、前記基台に前記湯を所定量導入した状態から前記基台を前記蓋体で閉塞した後、前記圧力調整機構を作動させて前記室を減圧しながら前記基台に前記湯を補充する請求項1~の何れか一項に記載の入浴式変圧カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者がカプセル内で入浴しながら室が変圧される入浴式変圧カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴しながら室が変圧される浴室が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の浴室は、使用者の健康増進を図ることを目的として室の低気圧化を図っている。
【0003】
特許文献1に記載の浴室は、浴室内の気体を排出する排気手段により、室を減圧している。また、ドア開口部の全周に亘ってゴムパッキンを設けると共に、ドア下部に設けられた可動式ガラリの複数の羽根板部を回動させて、羽根板部の縁部に設けられた気密パッキンを密着させることにより、室の減圧状態を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-229624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の浴室のように開口部をパッキンで密封するだけでは、減圧状態の維持が不十分であり、室の容積が大きく変圧時間を要し、構造も複雑である。また、室を減圧するだけでなく、減圧,加圧を繰り返すことにより、水蒸気の断熱膨張,断熱圧縮を利用して水蒸気を使用者の体内に浸透させ、使用者の自然治癒能力を向上させることが可能となる。しかしながら、特許文献1に記載の浴室では、大気圧以上の加圧を考慮した構造になっていない。
【0006】
簡便な構成で減圧,加圧を繰り返すことが可能な入浴式変圧カプセルが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る入浴式変圧カプセルの特徴構成は、使用者が着座した状態で湯を導入可能な基台と、前記基台に対して開閉可能な蓋体と、前記基台と前記蓋体との間を密封する環状シールと、前記基台及び前記蓋体をロックするロック機構と、前記ロック機構により前記基台及び前記蓋体がロックされた状態で、前記基台及び前記蓋体の内部に形成された室を変圧する圧力調整機構と、少なくとも前記ロック機構及び前記圧力調整機構の作動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圧力調整機構を作動させて前記室を減圧することにより前記環状シールを圧縮させた状態で、前記ロック機構を作動させて前記基台及び前記蓋体を密閉状態にロックする点にある。
【0008】
本構成の入浴式変圧カプセルは、湯から発生した水蒸気が充満した室を圧力調整機構にて変圧することにより、水蒸気の断熱膨張,断熱圧縮を利用して、使用者の自然治癒能力を向上させることが可能となる。このとき、基台と蓋体との間に形成された室の減圧,加圧に耐えうる気密性を担保するように、基台と蓋体との間を密封する環状シールと、基台及び蓋体をロックするロック機構とを備えた入浴式変圧カプセルであるため、シンプルな構造となっている。
【0009】
また、本構成では、圧力調整機構を作動させて室を減圧することにより環状シールを圧縮させた状態で、ロック機構を作動させて基台及び蓋体を密閉状態にロックするため、室の気密性を高めることができる。しかも、環状シールを圧縮する機構は、室を変圧する圧力調整機構で兼用しているため、シール圧縮機構を別途設ける必要がなく簡便である。
【0010】
このように、簡便な構成で減圧,加圧を繰り返すことが可能な入浴式変圧カプセルとなっている。
【0011】
また、前記制御部は、前記室が最大減圧状態となったときに前記ロック機構を作動させてもよい。
【0012】
本構成のように室が最大減圧状態となったときにロック機構を作動させれば、環状シールが最も圧縮された状態となるため、室の気密性を確実に高めることができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記室が最大減圧状態となったときから前記室を大気開放して空気を取り入れ、前記室が大気圧より圧力が小さい所定のタイミングで前記圧力調整機構を作動して前記室を加圧しながら大気圧より大きい圧力に移行させてもよい。
【0014】
室は、最大減圧状態から大気圧に近付くにつれて、圧力上昇勾配が緩やかになってしまう。そこで、本構成のように、室が大気圧より圧力が小さい所定のタイミングで圧力調整機構を作動して室を加圧しながら大気圧より大きい圧力に移行させれば、室の圧力上昇勾配が円滑になり、変圧速度を適正なものにすることができる。
【0015】
また、前記圧力調整機構は、ポンプとコンプレッサとを有しており、前記制御部は、前記室が大気圧より圧力が小さい所定のタイミングで前記ポンプを作動し、大気圧となったタイミングで前記コンプレッサを作動させてもよい。
【0016】
ポンプの駆動力を高めれば加圧範囲を拡げることが可能となるが、コストが嵩んでしまう。そこで、本構成のように、ポンプに加えてコンプレッサにより加圧すれば、安価に加圧することができる。また、ポンプで室の圧力上昇を円滑にし、コンプレッサにより目標とする加圧状態にしているため、コストパフォーマンスを高めることができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記室が最大加圧状態となったときから前記室を大気開放して空気を外部に排出し、前記室が大気圧より圧力が大きい所定のタイミングで前記圧力調整機構を作動して前記室を減圧しながら大気圧より小さい圧力に移行させてもよい。
【0018】
室は、最大加圧状態から大気圧に近付くにつれて、圧力下降勾配が緩やかになってしまう。そこで、本構成のように、室が大気圧より圧力が大きい所定のタイミングで圧力調整機構を作動して室を減圧しながら大気圧より小さい圧力に移行させれば、室の圧力下降勾配が円滑になり、変圧速度を適正なものにすることができる。
【0019】
また、前記ロック機構は、流体圧により前記蓋体を上昇又は下降させる上下シリンダと、前記蓋体に固定された状態で前記上下シリンダと連動するロック部材と、当該ロック部材の移動を規制する規制ピンと、流体圧により当該規制ピンを移動させる規制シリンダと、を有してもよい。
【0020】
本構成のように、ロック機構を上下シリンダ、ロック部材、規制ピン及び規制シリンダで形成すれば、製造コストを安価にできる。
【0021】
また、前記蓋体は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、第一本体と、当該第一本体から外側に延在する第一環状フランジと、を有しており、前記基台は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、前記第一本体との間で前記室を形成する第二本体と、当該第二本体から外側に延在する第二環状フランジと、を有しており、前記環状シールは、前記第一環状フランジと前記第二環状フランジとの間に配置されており、前記ロック部材は、前記第一環状フランジに固定されており、前記規制シリンダは、前記第二環状フランジに固定されてもよい。
【0022】
本構成のように、蓋体及び基台がアルミニウムを含む金属材料で一体形成されていれば、耐久性を有しながら軽量化を図ることができる。また、環状シールが第一環状フランジと第二環状フランジの間に配置され、ロック部材が第一環状フランジに固定され、規制シリンダが第二環状フランジに固定されていれば、ロック機構をコンパクトにすることができる。
【0023】
また、前記環状シールは、前記第二環状フランジに固定されていてもよい。
【0024】
本構成のように環状シールを基台の第二環状フランジに固定すれば、蓋体の開閉に伴って環状シールが連動することがないため、環状シールの耐久性を高めることができる。
【0025】
また、前記第一本体には、前記使用者が着座した状態で外部を視認可能な窓が設けられていてもよい。
【0026】
本構成のように使用者が着座した状態で外部を視認可能な窓を第一本体に設ければ、使用者は開放感を得ながら入浴することができる。
【0027】
また、前記制御部は、前記基台に前記湯を所定量導入した状態から前記基台を前記蓋体で閉塞した後、前記圧力調整機構を作動させて前記室を減圧しながら前記基台に前記湯を補充してもよい。
【0028】
本構成のように、予め所定量の湯を導入した状態で蓋体を閉塞すれば、湯の導入スピードを高めることができる。また、室が密閉された状態で湯を導入した場合、内圧が上昇することによりロック機構が破損して蓋体が開くおそれがあるが、本構成のように減圧しながら湯を補充することで、入浴式変圧カプセルの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】入浴式変圧カプセルの外観斜視図である。
図2】入浴式変圧カプセルの開閉操作を示す側面図である。
図3】ロック機構を示す拡大斜視図である。
図4】入浴式変圧カプセルのブロック図である。
図5】入浴式変圧カプセルの制御フロー図である。
図6】ロック作動を示す概念図である。
図7】圧力調整の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本開示に係る入浴式変圧カプセルの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
図1は、入浴式変圧カプセル1の全体斜視図を示しており、図2は、入浴式変圧カプセル1が開閉状態の側面図を示しており、図3は、ロック機構2の拡大斜視図を示しており、図4は、入浴式変圧カプセル1のブロック図を示している。
【0032】
図1及び図2に示すように、入浴式変圧カプセル1は、使用者Uが着座した状態で湯を導入可能なバスタブ状の基台11と、基台11に対して開閉可能な蓋体12と、基台11と蓋体12との間を密封する環状シール13と、基台11及び蓋体12をロックするロック機構2と、基台11及び蓋体12の内部に形成された室Rを変圧する圧力調整機構3と、入浴式変圧カプセル1の作動を制御する制御装置4と、入浴式変圧カプセル1の湯量を調整する湯量調整機構5と、を備えている。この入浴式変圧カプセル1は、1人用の浴室であり、キャスター(不図示)を有する可動板14に固定されている。なお、基台11に導入される湯は、水を加熱した熱湯に自然治癒効果のある他の液体を混入させる概念が含まれている。
【0033】
また、図2及び図4に示すように、入浴式変圧カプセル1は、室Rの圧力を計測する公知の圧力センサSpと、室Rに導入される湯の水位を計測する公知の水位センサSwと、基台11に着座した使用者Uが操作可能な液晶パネル等で構成される操作パネルPnとを備えている。圧力センサSpは、室Rの実圧力を計測して電気信号に変換して出力する。水位センサSwは、室Rの水位を計測して電気信号に変換して出力する。操作パネルPnには、少なくとも開閉ボタン、開始,終了ボタン及び非常停止ボタンが表示されている。入浴式変圧カプセル1は、湯から発生した水蒸気が充満した室Rを圧力調整機構3にて変圧することにより、水蒸気の断熱膨張,断熱圧縮を利用して、使用者Uの自然治癒能力を向上させることが可能となる。なお、水位センサSwを省略して、湯量調整機構5が湯量を調整することにより、水位を推定してもよい。
【0034】
図1及び図2に示すように、蓋体12は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、逆バスタブ状の第一本体12aと、第一本体12aから外側に延在する第一環状フランジ12bとを有している。基台11は、アルミニウムを含む金属材料で一体形成され、第一本体12aとの間で室Rを形成する第二本体11aと、第二本体11aから外側に延在する第二環状フランジ11bと、を有している。蓋体12は、第一本体12a及び第二本体11aの一端部に設けられたヒンジを介して、基台11に対して開閉可能となっている。環状シール13は、第一環状フランジ12bと第二環状フランジ11bとの間に配置されており、第二環状フランジ11bの第一環状フランジ12bとの対向面に形成された環状凹部に嵌め込まれて固定されている(図6(a)も参照)。このように、環状シール13を基台11の第二環状フランジ11bに固定すれば、蓋体12の開閉に伴って環状シール13が連動することがないため、環状シール13の耐久性を高めることができる。
【0035】
第一本体12aには、使用者Uが着座した状態で外部を視認可能な窓12cが、使用者Uの前方及び両側方に設けられている。使用者Uの前方の窓12cは矩形状であり、使用者Uの両側方の窓12cは円形であり、前方の窓12cの開口面積は、両側方の窓12cの開口面積よりも大きい。使用者Uが着座した状態で外部を視認可能な窓12cを第一本体12aに設けているため、使用者Uは開放感を得ながら入浴することができる。特に、前方の窓12cの開口面積が大きいため、安心感を得られる。
【0036】
基台11の内部には、使用者Uが着座可能な座部11cが設けられており、基台11の底部には給排水口11dが設けられている。この給排水口11dには給水管11d1及び排水管11d2が接続されており、湯導入ポンプPwを作動させることにより給水管11d1を介して給排水口11dから基台11の内部に湯が導入され、弁(不図示)を開くことで給排水口11dから排水管11d2を介して湯が排出される。つまり、湯量調整機構5は、給排水口11d及び湯導入ポンプPwを含んでおり、給排水口11dは、給湯器で加熱した湯又は貯湯タンクに貯留された湯が室Rに導入されると共に、室Rから外部に湯を排出することが可能となっている。
【0037】
図2及び図3に示すように、ロック機構2は、空気圧(流体圧の一例)により蓋体12を上昇又は下降させる上下シリンダ21と、蓋体12に固定された状態で上下シリンダ21と連動するロック部材22と、ロック部材22の移動を規制する規制ピン23と、空気圧により規制ピン23を移動させる規制シリンダ24と、を有している。
【0038】
上下シリンダ21は、空気圧により上下移動する可動棒21aの端部がロック部材22の軸22a1に支持されている。ロック部材22は、軸22a1が水平方向に固定されたブロック部22aと、ブロック部22aの端面から鉛直方向に立設するロック板22bとを有している。ロック板22bには、規制ピン23を挿入可能なロック孔22b1が貫通形成されている。本実施形態におけるロック部材22は、第一環状フランジ12bに固定されており、規制シリンダ24は、第二環状フランジ11bに固定されている。入浴式変圧カプセル1を密封するときには、上下シリンダ21により可動棒21aを下移動させることにより蓋体12が下移動し、基台11の第二環状フランジ11bと蓋体12の第一環状フランジ12bとを対向させる(図6(a)も参照)。次いで、圧力調整機構3により室Rを減圧して最大減圧状態となったときに第一環状フランジ12b及び第二環状フランジ11bが最も近接し、ロック板22bのロック孔22b1に規制ピン23を挿入することが可能となる(図6(b)も参照)。なお、ロック部材22を第二環状フランジ11bに固定し、規制シリンダ24を第一環状フランジ12bに固定してもよい。
【0039】
上述したように、蓋体12及び基台11がアルミニウムを含む金属材料で一体形成されているため、耐久性を有しながら軽量化を図ることができる。また、環状シール13が第一環状フランジ12bと第二環状フランジ11bの間に配置され、ロック部材22が第一環状フランジ12bに固定され、規制シリンダ24が第二環状フランジ11bに固定されているため、ロック機構2をコンパクトにすることができる。
【0040】
圧力調整機構3は、ロック機構2により基台11及び蓋体12がロックされた状態で、基台11及び蓋体12の内部に形成された室Rを変圧する。本実施形態における圧力調整機構3は、最大減圧状態(例えば高度3000mの713hPa)と最大加圧状態(例えば水深3mの1313hPa)との間で、室Rの減圧,加圧を繰り返すことができる(図7も参照)。
【0041】
圧力調整機構3は、外部と室Rとの間で空気を吸引,排出可能な圧力調整ポンプPp(ポンプに相当)と、加圧された圧縮空気を室Rに導入可能な公知のコンプレッサCpと、コンプレッサCpと室Rとの連通,遮断を切替可能な電磁弁等で構成される開閉弁Vとを有している。圧力調整ポンプPpは、ベーン式やギア式のロータリーポンプやピストン式の往復動ポンプなど、空気を吸引,排出できるポンプで構成されている。室Rを大気圧以下に減圧するときには、圧力調整ポンプPpにより室Rから空気を排出し、室Rを大気圧以上に加圧するときには、圧力調整ポンプPpにより室Rに空気を導入してから、コンプレッサCpにより圧縮空気を更に導入する。なお、コンプレッサCpと室Rとの間の経路に圧縮空気を貯留するタンクを設けてもよい。
【0042】
コンプレッサCpで加圧された圧縮空気は、ロック機構2の上下シリンダ21や規制シリンダ24にも導入される。つまり、コンプレッサCpは、ロック機構2及び圧力調整機構3に兼用して用いられる。ロック機構2に圧縮空気を導入するタイミングは、蓋体12の開閉時及びロック機構2の作動時だけであるため、圧力調整機構3の作動とは異なるタイミングとなっている。このため、コンプレッサCpを有効活用することができる。
【0043】
制御装置4は、入浴式変圧カプセル1の作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムを含んでおり、コンピュータのASIC,FPGA,CPU又は他のハードウェアを含むプロセッサにより実行される。制御装置4は、入浴式変圧カプセル1に内蔵してもよいし、入浴式変圧カプセル1と有線又は無線通信可能な独立した制御ボックスで構成してもよい。
【0044】
図4に示すように、制御装置4は、少なくともロック機構2及び圧力調整機構3の作動を制御する制御部41と、各種プログラムや圧力波形マップ等を記憶する記憶部42とを有している。制御部41はソフトウェアで構成され、記憶部42はハードウェアで構成されている。なお、圧力波形マップは、入浴式変圧カプセル1の操作パネルPnにて、目標下限値、目標上限値、減圧,加圧周期などを使用者Uが任意に選択できるようにしてもよい。
【0045】
制御部41は、室Rの圧力を制御する圧力制御部41aと、室Rの湯量を制御する湯量制御部41bとを有している。圧力制御部41aは、例えば、使用者Uが開始ボタンを押圧したという入力情報に基づいて、記憶部42に記憶された所定の圧力波形マップに基づいて、圧力調整ポンプPp,コンプレッサCp及び開閉弁Vの作動を制御する。湯量制御部41bは、例えば、使用者Uが開始ボタンを押圧したという入力情報に基づいて、湯導入ポンプPw及び給排水口11dの作動を制御する。
【0046】
圧力制御部41aの制御形態の一例として、圧力調整機構3を作動させて室Rを減圧することにより環状シール13を圧縮させた状態で、ロック機構2を作動させて基台11及び蓋体12を密閉状態にロックする。このとき、室Rが最大減圧状態となったときにロック機構2を作動させることが好ましい。このように、圧力調整機構3を作動させて室Rを減圧することにより環状シール13を圧縮させた状態で、ロック機構2を作動させて基台11及び蓋体12を密閉状態にロックするため、室Rの気密性を高めることができる。しかも、環状シール13を圧縮する機構は、室Rを変圧する圧力調整機構3で兼用しているため、シール圧縮機構を別途設ける必要がなく簡便である。特に、室Rが最大減圧状態となったときにロック機構2を作動させれば、環状シール13が最も圧縮された状態となるため、室Rの気密性を確実に高めることができる。
【0047】
圧力制御部41a及び湯量制御部41bの制御形態の一例として、基台11に湯を所定量導入した状態から基台11を蓋体12で閉塞した後、圧力調整機構3を作動させて室Rを減圧しながら基台11に湯を補充する。このように、予め所定量の湯を導入した状態で蓋体12を閉塞すれば、湯の導入スピードを高めることができる。また、室Rが密閉された状態で湯を導入した場合、内圧が上昇することによりロック機構2が破損して蓋体12が開くおそれがあるが、本制御例のように室Rを減圧しながら湯を補充することで、入浴式変圧カプセル1の耐久性を高めることができる。
【0048】
上述したように、本実施形態における入浴式変圧カプセル1は、湯から発生した水蒸気が充満した室Rを圧力調整機構3にて変圧することにより、水蒸気の断熱膨張,断熱圧縮を利用して、使用者Uの自然治癒能力を向上させることが可能となる。このとき、基台11と蓋体12との間に形成された室Rの減圧,加圧に耐えうる気密性を担保するように、基台11と蓋体12との間を密封する環状シール13と、基台11及び蓋体12をロックするロック機構2とを備えた入浴式変圧カプセル1であるため、シンプルな構造となっている。
【0049】
続いて、図5図7を用いて、本実施形態における具体的な制御例を説明する。入浴式変圧カプセル1を使用する際、図2の2点鎖線で示すように蓋体12は基台11に対して上下シリンダ21により上側に位置する開放状態であり、湯量制御部41bが給排水口11dを開くと共に湯導入ポンプPwを作動させて、湯を基台11の内部に導入する(図5の♯51)。そして、所定量(例えば図2の2点鎖線で示す水位)まで湯が導入されたことを水位センサSwが検出したとき、湯量制御部41bが給排水口11dを閉じると共に湯導入ポンプPwを停止させる。
【0050】
次いで、使用者Uが基台11の座部11cに着座し、操作パネルPnの閉ボタンと押すことにより、制御部41がコンプレッサCpを作動させて上下シリンダ21に圧縮空気を導入して、蓋体12を下降させて閉じる(図5の♯52)。次いで、圧力制御部41aが圧力調整ポンプPpを作動させて室Rから空気を排出することにより、室Rの減圧を開始する(図5の♯53)。このとき、湯量制御部41bが給排水口11dを開くと共に湯導入ポンプPwを作動させて、湯を基台11の内部に補充する(図5の♯54)。そして、所定量(例えば図2の破線で示す水位)まで湯が導入されたことを水位センサSwが検出したとき、湯量制御部41bが給排水口11dを閉じると共に湯導入ポンプPwを停止させる。
【0051】
圧力制御部41aによる圧力調整ポンプPpの作動を継続し、制御部41は、圧力センサSpの計測値に基づいて、室Rの圧力が最大減圧状態となったか否かを判定する(図5の♯55,♯56)。室Rの圧力が最大減圧状態となったとき(図5の♯56Yes)、制御部41は、ロック機構2を作動させる(図5の♯57)。図6に示すように、基台11の第二環状フランジ11bと蓋体12の第一環状フランジ12bとを対向させた状態で室Rを減圧して最大減圧状態となったとき、第一環状フランジ12b及び第二環状フランジ11bが最も近接し、コンプレッサCpで加圧された圧縮空気をロック機構2の規制シリンダ24に導入する。その結果、ロック板22bのロック孔22b1に規制ピン23が挿入され、ロック状態となる。
【0052】
次いで、ロック状態となったとき、圧力制御部41aが圧力調整ポンプPpを停止させて、室Rを大気開放して空気を取り入れる(図5の♯58)。図7の破線で示すように、室Rは、最大減圧状態から大気圧に近付くにつれて、圧力上昇勾配が緩やかになってしまう。そこで、本実施形態では、室Rが大気圧より圧力が小さい所定のタイミングで、圧力制御部41aが圧力調整機構3を作動して室Rを加圧しながら大気圧より大きい圧力に移行させる。
【0053】
具体的には、室Rの圧力を計測する圧力センサSpの出力値が大気圧より小さい第一所定値となった場合(図5の♯59Yes)、圧力制御部41aは、圧力調整ポンプPpを作動して室Rを大気圧まで加圧する(図5の♯60)。次いで、圧力センサSpの出力値が大気圧となった場合(図5の♯61Yes)、圧力制御部41aは、コンプレッサCpを作動して室Rを最大加圧状態まで加圧する(図5の♯62)。その結果、図7の実線で示すように、室Rの圧力上昇勾配が円滑になり、変圧速度を適正なものにすることができる。特に、圧力調整ポンプPpに加えてコンプレッサCpにより加圧しているため、安価に加圧することができる。また、圧力調整ポンプPpで室Rの圧力上昇を円滑にし、コンプレッサCpにより目標とする加圧状態にしているため、コストパフォーマンスを高めることができる。
【0054】
次いで、室Rの圧力が最大加圧状態となったとき(図5の♯63Yes)、圧力制御部41aがコンプレッサCpを停止させて、室Rを大気開放して空気を外部に排出する(図5の♯64)。図7の破線で示すように、室Rは、最大加圧状態から大気圧に近付くにつれて、圧力下降勾配が緩やかになってしまう。そこで、本実施形態では、室Rが大気圧より圧力が大きい所定のタイミングで、圧力制御部41aが圧力調整機構3を作動して室Rを減圧しながら大気圧より小さい圧力に移行させる。具体的には、室Rの圧力を計測する圧力センサSpの出力値が大気圧より大きい第二所定値となった場合(図5の♯65Yes)、圧力制御部41aは、圧力調整ポンプPpを作動して室Rを大気圧まで減圧する(図5の♯56)。その結果、図7の実線で示すように、室Rの圧力下降勾配が円滑になり、変圧速度を適正なものにすることができる。
【0055】
入浴式変圧カプセル1の運転を終了しない場合(図5の♯66No)、図5の♯55~♯65を実行し、室Rの減圧,加圧を繰り返す。一方、入浴式変圧カプセル1の運転を終了する場合(図5の♯66Yes)、圧力制御部41aが圧力調整機構3を停止した状態で、湯量制御部41bが給排水口11dを開き、排水管11d2を介して湯を排出する(図5の♯67)。室Rの水位が図2に示す2点鎖線となったとき、圧力制御部41aが圧力調整機構3を作動して室Rを最大減圧状態とし、コンプレッサCpにより規制シリンダ24に圧縮空気を導入し、ロック板22bのロック孔22b1から規制ピン23を抜き出して、ロックを解除する。次いで、コンプレッサCpにより上下シリンダ21に圧縮空気を導入し、蓋体12を上昇させれば、使用者Uが外に出ることができる(図5の♯68)。なお、減圧制御や加圧制御の途中に、使用者Uは、気分が悪くなった場合などに操作パネルPnの非常停止ボタンを押すことで、室Rを大気開放して運転を停止する。本実施形態のように室Rが最大減圧状態となったときにロック機構2を作動させれば、環状シール13が最も圧縮された状態となるため、室Rの気密性を確実に高めることができる。また、最大減圧状態となったときに規制ピン23を抜き差しすることで、円滑なロック作動を実現できる。
【0056】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、大気圧未満の減圧制御と大気圧以上の加圧制御とを反復させたが、大気圧以上の圧力領域で加圧,減圧を反復制御してもよいし、大気圧以下の圧力領域で減圧,加圧を反復制御してもよい。また、加圧制御から開始しても良く、減圧制御及び加圧制御の順番は特に限定されない。
(2)上述した実施形態では、減圧制御と加圧制御との切換え時(最大減圧状態の目標下限値及び最大加圧状態の目標上限値)に圧力保持手段を設けてもよいし、段階的に減圧及び加圧する圧力保持手段を設けてもとい。このような圧力保持手段を設ければ、圧力保持のタイミングに合わせて耳管を開放させることが可能となって、使用者Uの耳づまり感を低減させることができる。
(3)図7に示す圧力波形はあくまでも例示であって、一周期における制御圧力の目標下限値や目標上限値などは特に限定されない。
【0057】
(4)上述した実施形態では、室Rが最大減圧状態となったときにロック機構2を作動させたが、室Rが大気圧より小さく最大減圧状態よりも大きい圧力のときにロック機構2を作動させてロックしてもよい。
(5)室Rの加圧を、駆動力の大きい圧力調整ポンプPpのみで実行してもよい。
(6)圧力調整機構3は、比例制御弁を設けて室Rに導入する空気圧を調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、使用者がカプセル内で入浴しながら室が変圧される入浴式変圧カプセルに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :入浴式変圧カプセル
2 :ロック機構
3 :圧力調整機構
11 :基台
11a :第二本体
11b :第二環状フランジ
12 :蓋体
12a :第一本体
12b :第一環状フランジ
12c :窓
13 :環状シール
21 :上下シリンダ
22 :ロック部材
23 :規制ピン
24 :規制シリンダ
41 :制御部
Cp :コンプレッサ
Pp :圧力調整ポンプ(ポンプ)
R :室
U :使用者
【要約】
入浴式変圧カプセルは、使用者が着座した状態で湯を導入可能な基台11と、前記基台に対して開閉可能な蓋体12と、基台11と蓋体12との間を密封する環状シール13と、基台11及び蓋体12をロックするロック機構2と、ロック機構2により基台11及び蓋体12がロックされた状態で、基台11及び蓋体12の内部に形成された室Rを変圧する圧力調整機構と、少なくともロック機構2及び圧力調整機構の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、圧力調整機構を作動させて室Rを減圧することにより環状シール13を圧縮させた状態で、ロック機構2を作動させて基台11及び蓋体12を密閉状態にロックする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7