(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】電線溶着装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H01B13/012 Z
(21)【出願番号】P 2018110862
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017145222
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】小田 憲男
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀樹
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-334925(JP,A)
【文献】特開平10-69821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H01B 13/00
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶着可能なシート状物(11)をその一部又は全部が水平になるように支持するシート支持手段(12,62)と、
前記シート状物(11)の上面に電線(30)を供給する電線供給手段(41)と、
前記シート状物(11)の上面に供給された前記電線(30)を上方から押さえるアンビル(31,81)と、
前記シート状物(11)の下面に前記アンビル(31,81)に対向するように設けられ前記アンビル(31,81)と共に前記シート状物(11)及び前記電線(30)を挟持可能に構成された超音波ホーン(51,111)と
、
前記シート状物(11)の水平な一部又は全部を水平方向に移動させるシート移動手段(21,71)と、
前記アンビル(31,81)を水平面内において回転させるアンビル回転手段(36,86)と
を備えた電線溶着装置。
【請求項2】
シート移動手段(21)がシート状物(11)の水平な一部又は全部を一方向に移動させるように構成され、
前記シート状物(11)の移動方向に直交する方向にアンビル(31)を移動させるアンビル移動手段(33)と、
前記シート状物(11)の移動方向に直交する方向に超音波ホーン(51)を移動させるホーン移動手段(52)を更に備えた
請求項1記載の電線溶着装置。
【請求項3】
電線供給手段(41)が電線を上方からアンビル(81)に供給するように構成され、
前記アンビル(81)の上方に設けられ前記アンビル(81)に供給される電線を案内する案内部材(108)と、
前記案内部材(108)を前記アンビル(81)の回転と同期して水平面内において回転させる案内部材回転手段(109)とを更に備えた
請求項1又は2記載の電線溶着装置。
【請求項4】
アンビル(81)が電線(30)をシート状物(11)に押しつけつつ前記シート状物(11)の上面において転動可能なローラから成る請求項
1ないし3いずれか1項に記載の電線溶着装置。
【請求項5】
アンビル(31,81)に電線(30)を落とし込む溝(31a,81a)が形成された
請求項1ないし4いずれか1項に記載の電線溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に配索するワイヤハーネスなどを製造する電線溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に配索するワイヤハーネスにはクランプを長さ方向に間隔をあけて取付け、車体パネルに予め設けている取付穴にクランプの係止羽根を挿入係止して取付けている場合が多い。けれども、車室床材やルーフ材等の取付穴を設けることが困難な場合では、ワイヤハーネスに両面接着テープや面ファスナを取付けて車体側固定材に取付ける場合もある。
【0003】
しかし、両面接着テープを用いる場合、ワイヤハーネスの電線群を結束保護するために粘着テープを巻き付け、その外周に両面粘着テープを貼着する必要があり、かつ、該両面粘着テープの剥離紙を剥がしながら車体側固定材に接着してワイヤハーネスを取付ける必要がある。このように、2度のテープ巻きが必要となり、かつ、車体への取付工程で剥離紙を剥がしながら接着する必要があるため作業手数がかかる問題がある。
【0004】
面ファスナを用いる場合も同様で、ワイヤハーネスを粘着テープで結束保護した外周に雌雄面ファスナのうちの一方側を取付けておき、車体側固定材に他方側の面ファスナを固着する必要があり、両面接着テープよりも作業性が更に悪くなり、コストもアップする問題がある。
【0005】
この点を解消する為に、ワイヤハーネスに巻き付けた保護シートを車体側固定材に簡単に超音波溶着して取付けることができるように、熱溶着ができるシートでワイヤハーネスを被覆することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
即ち、ワイヤハーネス組立ラインで、作業台上に熱溶着ができるシートを巻付側面を上面として配置し、作業員により該シートの中央粘着部の中央に電線群をセットし、シートの中央粘着部の両側を電線群の上面側に巻き付けると共に余剰となる両側部を重ね合わせる。このように、電線群の長さ方向の所要位置にシートを巻き付けた状態としてワイヤハーネスを組み立てる。
【0007】
このように組み立てられたワイヤハーネスは、その後自動車組立ラインに搬送され、その自動車組立ラインにおいて、自動車の内張り材となる車体側固定材の天井側内面に沿ってワイヤハーネスを配索し、シートにより所要位置で車体側固定材に超音波溶着具で溶着固定するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この従来のワイヤハーネスでは、ワイヤハーネス組立ラインで、シートを電線群の外周に巻き付けた状態で保持するという、作業員による作業が必要となり、その作業の自動化が困難となる未だ解決すべき課題が残存していた。
【0010】
一方、電線群は、車体側固定材に固着するシートに固着されていれば、特に巻き付ける必要も無く、この巻き付け作業を省略可能であれば、更なる自動化も可能となって、その単価が押し上げられるようなことを回避することができ、好ましい。
【0011】
本発明の目的は、車体等の固定材に固着可能なシート状物に電線を損傷させることなく固着し得る電線溶着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、超音波溶着可能なシート状物をその一部又は全部が水平になるように支持するシート支持手段と、シート状物の上面に電線を供給する電線供給手段と、シート状物の上面に供給された電線を上方から押さえるアンビルと、シート状物の下面にアンビルに対向するように設けられアンビルと共にシート状物及び電線を挟持可能に構成された超音波ホーンとを備えた電線溶着装置である。
【0013】
この場合、シート状物の水平な一部又は全部を水平方向に移動させるシート移動手段を備えることが好ましく、それがシート状物の水平な一部又は全部を一方向に移動させるように構成されている場合には、そのシート状物の移動方向に直交する方向にアンビルを移動させるアンビル移動手段や、シート状物の移動方向に直交する方向に超音波ホーンを移動させるホーン移動手段を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、アンビルが電線をシート状物に押しつけつつシート状物の上面において転動可能なローラとすることができ、アンビルに電線を落とし込む溝が形成され、そのアンビルを水平面内において回転させるアンビル回転手段を更に備えることもできる。
【0015】
そして、電線供給手段が電線を上方からアンビルに供給する場合、アンビルの上方に設けられアンビルに供給される電線を案内する案内部材と、その案内部材をアンビルの水平面内における回転と同期して回転させる案内部材回転手段とを更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電線溶着装置では、上面に電線が供給されたシート状物の下面に接触する超音波ホーンを備えるので、その超音波ホーンをシート状物の下面に接触させて超音波振動させることにより、そのシート状物に電線を溶着させることができる。
【0017】
ここで、一般的に超音波溶着では、超音波ホーンが接触する部位に接触痕が生じるけれども、本発明の電線溶着装置では、超音波ホーンをシート状物に接触させるので、そのシート状物に接触痕が生じたとしても、電線に超音波ホーンの接触痕が生じるようなことはない。よって、超音波ホーンの接触に起因して、電線に損傷が生じるようなことを回避することができ、電線の損傷を回避しつつその電線をシート状物に溶着することが可能となる。
【0018】
そして、シート状物の水平な一部又は全部を水平方向に移動させるシート移動手段を設けると、比較的長尺のシート状物に電線を溶着させることができ、比較的長いワイヤハーネスを得ることができ、シート状物の移動方向に直交する方向にアンビルや超音波ホーンを移動させると、電線をシート状物の幅方向に溶着させることもできる。
【0019】
また、アンビルがシート状物の上面において転動可能なローラから成るようであれば、電線の連続的な溶着が容易となり、アンビルに電線を落とし込む溝を形成すれば、シート状物に押しつけられることに起因する電線の変形を抑制することが可能となる。
【0020】
更に、そのアンビルがシート状物に平行な平面内において回転可能であれば、並列に供給される複数の電線をシート状物の長手方向や幅方向に並列のままに溶着することが可能となり、電線の配索の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態における電線溶着装置の正面図である。
【
図4】そのアンビルの周囲を示す
図1のB部拡大図である。
【
図5】その電線の端部をシート状物に溶着する状態を示す
図4のD-D線断面上面図である。
【
図6】その電線をシート状物に順次溶着する状態を示す
図5に対応する上面図である。
【
図7】そのシート状物の上面に電線が供給された状態を示す
図6のC-C線断面図である。
【
図8】そのシート状物に電線が溶着される状態を示す
図7に対応する断面図である。
【
図9】シート状物に電線が断続的に溶着されて得られたワイヤハーネスを示す上面図である。
【
図10】シート状物に電線が連続的に溶着されて得られたワイヤハーネスを示す
図9に対応する図である。
【
図11】シート状物に湾曲して溶着された電線を含む別のワイヤハーネスを示す上面図である。
【
図12】電線を湾曲させつつシート状物に溶着させる状態を示す
図11のE部拡大上面図である。
【
図13】そのシート状物に外径の異なる複数の電線が溶着される状態を示す
図8に対応する断面図である。
【
図14】本発明の別の実施形態における電線溶着装置の正面図である。
【
図16】その電線溶着装置の上面図を示す
図14のE-E線断面図である。
【
図18】そのアンビルの周囲を示す
図14のG部拡大図である。
【
図19】そのクランプ装置とカッタ装置を示す
図18のH-H線断面図である。
【
図21】そのアンビルと案内部材が90度回転した状態を示す
図18に対応する図である。
【
図22】その電線の端部をシート状物に溶着する状態を示す
図18のL-L線断面上面図である。
【
図23】その電線がシート状物に直線的に連続溶着された状態を示す
図22に対応する上面図である。
【
図24】その直線的な電線を横断して新たに電線が溶着された状態を示す
図23に対応する上面図である。
【
図25】そのアンビルを180度回転させて電線がU字状に溶着された状態を示す
図24に対応する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0023】
図1~
図3に本発明における電線溶着装置10を示し、この電線溶着装置10は、超音波溶着可能なシート状物11をその一部又は全部が水平になるように支持するシート支持手段12を備える。
【0024】
図におけるシート支持手段12は、長尺状のシート状物11の一部を水平になるように支持するものであって、
図1に示す様に、そのシート状物11の一部が上面に載せられる水平板13と、その水平板13の両側に設けられ、その水平板13の両端から突出するシート状物11における長手方向の両側を巻き付ける互いに平行な一対の巻き取りローラ14,15と、その一対の巻き取りローラ14,15を別々に回転させる一対の巻き取りモータ16,17とを備える。
【0025】
ここで、超音波溶着可能なシート状物11としては、後述する超音波ホーン51が接触して、その超音波ホーン51の振動により溶着し得るものであって、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、PP(polypropylene)などの樹脂からなるフィルムや、これらの樹脂からなる不織布等のシート状物11が例示される。
【0026】
また、本発明の電線溶着装置10は、そのシート状物11の水平な一部又は全部を水平方向に移動させるシート移動手段21を備える。図におけるシート移動手段21は水平板13の両側における端部近傍に設けられて、水平板13の端部から突出するシート状物11がそれぞれ載置される一対の可動ローラ22,23と、その一対の可動ローラ22,23と共にシート状物11を挟む一対の挟持ローラ24,25と、その一対の可動ローラ22,23を回転させる一対の駆動モータ26,27とを備える。
【0027】
そして、このシート移動手段21では、一対の駆動モータ26,27により一対の可動ローラ22,23を同期して同一方向に同一の速度で回転させることにより、それらに載置された長尺状のシート状物11を長手方向に移動させるように構成され、一対の巻き取りローラ14,15の内、シート状物11の移動方向後方側の巻き取りローラ14又は15は、そのシート状物11の移動に伴って、既に巻き取られているシート状物11を巻解き、移動方向前方にある巻き取りローラ14又は15にあっては、その移動するシート状物11を新たに巻き取るように回転させるものとする。
【0028】
図1に示す様に、本発明の電線溶着装置10は、シート状物11の上面に供給された電線30を上方から押さえるアンビル31を備える。ここで、電線30は、少なくとも1本含まれていればよい。この実施の形態における電線30は複数(
図6に示す例では3本)含まれる場合を示す。
図7及び
図8に示すように、電線30としては、芯線30aと芯線30aを覆う絶縁被覆30bとを含む絶縁電線30が採用されている。芯線30aは、銅又はアルミニウム等の導電性材料によって形成される。芯線30aは単線であってもよいし、撚線であってもよい。
【0029】
一方、電線30はシート状物11に超音波溶着可能なものが採用される。このため、シート状物11に溶着されることになる電線30における絶縁被覆30bは、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、PP(polypropylene)などの超音波溶着可能な樹脂が例示される。即ち、電線30は、超音波溶着可能な樹脂が芯線30aの外周に押出成形されて形成されたものが例示されるけれども、シート状物11に超音波溶着可能なものであれば、芯線30aの外周に塗布されたワニス等の絶縁被覆30bが焼き付けられて形成されたものであってもよい。
【0030】
図1に戻って、シート状物11の上面に供給された電線30を上方から押さえるアンビル31は、このアンビル31を回転させかつ移動させる回転移動手段32を介してシート状物11の上方に設けられる。そして、この回転移動手段32は、水平板13の上方において、アンビル31をシート状物11の幅方向に移動させるアンビル移動手段である上側伸縮アクチュエータ33を備える。
【0031】
この上側伸縮アクチュエータ33は、サーボモータ33aによって回動駆動されるボールネジ33bと、このボールネジ33bに螺合して平行移動する従動子33cを備え、従動子33cがシート状物11の幅方向に移動可能に、そのハウジング33dが水平板13の上方においてシート状物11の幅方向に延びて取付けられる。
【0032】
従動子33cにはハウジング33dの側方にシート状物11の長手方向に延びる可動板34が取付けられ、その可動板34には、アンビル回転手段である回転モータ36がその回転軸36aを下方に突出させた状態で取付けられる。そして、その回転軸36aには中間板37及び昇降手段38を介してアンビル31が取付けられる。図における中間板37は水平に設けられ、昇降手段は上側流体圧シリンダ38である場合を示す。即ち、上側流体圧シリンダ38は流体の圧力により出没するロッド38aを下方に向けて、そのロッド38aが回転軸36aと同軸になるようにその本体38bが中間板37の下部に取付けられる。
【0033】
また、本発明の電線溶着装置10は、シート状物11の上面に電線30を供給する電線供給手段41を備える。この実施の形態における電線供給手段41は、電線30を上方からアンビル31に供給するものであって、回転移動手段32を構成する上記中間板37にはノズル42が設けられる。このノズル42は、シート状物11の上面に電線30を供給するものであって、このノズル42は必要とする電線30の本数に相応して設けられる。この実施の形態では、3本の電線30を供給するために、3本のノズル42(
図6)が、電線30をその先端からシート状物11の上面になだらかに供給するように傾斜して、中間板37に支持材43を介して取付けられる。
【0034】
図4に示すように、ノズル42は単一の電線30を通過可能な挿通孔42aが中心軸に貫通して形成された筒体であって、その一部に外部から挿通孔42aに連通する切り欠き42bが形成される。また、このノズル42を支持する支持材43には、ノズル42に挿通された電線30の移動を禁止可能なクランプ装置44が設けられる。
【0035】
このクランプ装置44は、流体圧によりロッド44aを出没させるシリンダ44であって、突出したロッド44aが切り欠き42bに貫通するように本体44bが支持材43に取付けられる。このため、このクランプ装置44では、実線で示す様に、ロッド44aを突出させることにより挿通孔42aを通過する電線30にそのロッド44aを接触させて、電線30の自由な移動を禁止し、一点鎖線で示す様に、ロッド44aを本体44bに没入させることにより挿通孔42aを通過する電線30からそのロッド44aを離間させて、電線30の繰り出しが可能になるように構成される。
【0036】
図1~
図3に示すように、この実施の形態における電線供給手段41は、ノズル42の近傍に設けられた架台46と、この架台46に設けられて電線30が巻回されて貯線されたドラム47と、そのドラム47から巻解かれてノズル42に向かう電線30に所定のテンションを付与するテンション装置48を備える。これらは、供給する電線30の数に相応して設けられる。この実施の形態では、3本の電線30を供給するために、ドラム47及びテンション装置48も、それに相応してそれぞれ3つ設けられる。
【0037】
これらは同一構造であるので、その内の1つを代表して説明すると、
図1に示すように、このテンション装置48は、回動支点48bの回りで回動可能に設けられたテンションバー48aと、テンションバー48aに取付けられた線材ガイド48cと、テンションバー48aの回動角度に応じた弾性力を及ぼす弾性部材48dと、テンションバー48aの回動角度を検出する検出手段としてのポテンショメータ48eと、それが検出する回動角度が所定の角度となるように電線30の繰り出し速度を制御する繰り出し速度制御手段48f(
図2及び
図3)とを備える。
【0038】
図1~
図3に示すように、架台46には複数の支柱46aが立設され、この支柱46aに繰り出し速度制御手段となるサーボモータ48fとテンション装置48が設けられる。電線30が巻回されて貯線されたドラム47はサーボモータ48fの回転軸に同軸に取付けられ、サーボモータ48fが駆動してその回転軸を回転させると、その回転軸と共にドラム47も回転して、そこに貯線された電線30を解きほぐして繰り出すように構成される。
【0039】
図1に示す様に、ドラム47から繰り出された電線30はテンション装置48における線材ガイド48cに導かれた後にノズル42に導かれてシート状物11の正面に供給されるけれども、中間板37には、線材ガイド48cを通過した電線30をノズル42に導く案内プーリ49が取付けられる。
【0040】
このテンション装置48において、電線30の繰り出し速度は、テンションバー48aの回動角度が所定の角度となるように繰り出し速度制御手段であるサーボモータ48fにより制御され、電線30の繰り出し速度はその電線30が上面に供給されるシート状物11の移動速度とバランスし、電線30にはテンションバー48aにより所定のテンションが加わった状態とされる。
【0041】
図1及び
図4に示す様に、そのシート状物11に供給された電線30を押さえるアンビル31は、昇降手段を構成する上側流体圧シリンダ38の出没ロッド38aに取付けられ、この上側流体圧シリンダ38は、その出没ロッド38aを下方に向けてその本体38bが中間板37に取付けられる。
【0042】
図7及び
図8に示すように、アンビル31には電線30を落とし込む断面V字状の溝31aが形成される。この実施の形態では、3本の電線30がノズル42により供給される場合を例示するので、アンビル31には、3列の断面V字状の溝31aが互いに平行に形成される。
【0043】
このV字状の溝31aは、電線30の外径に相応して形成され、
図8に示す様に、上側流体圧シリンダ38のロッド38aを下方に突出させた場合にアンビル31により電線30をシート状物11に押さえ付けることになるけれども、この押さえた状態で全ての電線30は対応する断面V字状の溝31aに収容されて接触し、シート状物11に複数の電線30を均等な力で押さえ付けるように構成される。
【0044】
このように、昇降手段を構成する上側流体圧シリンダ38は、そのロッド38aを下方に突出すると、そこに設けられたアンビル31が下降してノズル42から繰り出された電線30に当接してシート状物11の上面に押しつけるけれども、
図7に示すように、そのロッド38aを本体38bに没入させると、それと共にアンビル31が上昇して電線30から離間し、ノズル42から繰り出された電線30をシート状物11の上面に繰り出し可能に構成される。
【0045】
図1に示すように、この上側流体圧シリンダ38及びノズル42が設けられた中間板37は回転モータ36の回転軸36aに取付けられるので、回転モータ36が駆動してその中間板37及び上側流体圧シリンダ38が水平面内において回転すると、そのアンビル31もノズル42と共に水平面内において回転可能に構成される。
【0046】
そして、この回転モータ36は上側伸縮アクチュエータ33によりシート状物11の幅方向に移動可能であるので、ノズル42からの電線30の供給方向をシート状物11の幅方向に向け、そのノズル42をその幅方向に移動させることにより、ノズル42から供給される電線30を、シート状物11の長手方向のみならず、幅方向にも供給しうるように構成される(
図12)。
【0047】
一方、シート状物11の下方には、アンビル31に対向するように超音波ホーン51が設けられる。この実施の形態における超音波ホーン51は、アンビル31と共にシート状物11及び電線30を挟持し、超音波振動によりシート状物11を電線30に溶着させるものであり、3本の電線30が供給されるこの実施の形態では、その3本の電線30を一度に溶着可能な大きさのものが用いられる。
【0048】
長尺状のシート状物11を長手方向に移動させるシート移動手段21を備えるこの実施の形態では、超音波ホーン51をシート状物11の幅方向に移動させかつ昇降させるホーン移動手段52を備え、超音波ホーン51をシート状物11に接触させる必要から、この超音波ホーン51が移動する範囲に水平板13は設けられないものとする。
【0049】
この実施の形態におけるホーン移動手段52は、超音波ホーン51をシート状物11の幅方向に移動させる下側伸縮アクチュエータ53と、超音波ホーン51を昇降させる昇降手段としての下側流体圧シリンダ54を備える。超音波ホーン51をシート状物11の幅方向に移動させる下側伸縮アクチュエータ53は、アンビル31を移動させる上側伸縮アクチュエータ33と同一構造であって、その従動子53cがシート状物11の幅方向に移動可能に、そのハウジング53dが水平板13の下方においてシート状物11の幅方向に延びて取付けられる。
【0050】
従動子53cはハウジング53dの上方において移動可能に設けられ、この従動子53cに昇降手段である下側流体圧シリンダ54が出没ロッド54aを上方にした状態でその本体54bが取付けられる。出没ロッド54aの上端には超音波ホーン51を超音波振動させる振動子56が取付けられ、この振動子56に超音波ホーン51が上方に突出して設けられる。
【0051】
図8に示す様に、アンビル31における回転移動手段32の上側流体圧シリンダ38のロッド38aを下方に突出させ、アンビル31が電線30をシート状物11の上面に押しつけた状態で、
図1に示すホーン移動手段52を構成する下側流体圧シリンダ54の出没ロッド54aを上方に突出させると、その上端に取付けられた超音波ホーン51がシート状物11の下面に当接し、そのシート状物11及び電線30がアンビル31及び超音波ホーン51により挟持可能に取付けられる。このため、
図8に示す様に、この状態で超音波ホーン51を超音波振動させることによりシート状物11を電線30に溶着可能に構成される。
【0052】
そして、この実施の形態では、アンビル31及び超音波ホーン51をシート状物11の幅方向にそれぞれ移動可能に構成されているので、アンビル31及び超音波ホーン51も幅方向に移動させることにより、電線30をシート状物11の幅方向にも溶着可能に構成される(
図11及び
図12)。
【0053】
次に、このように構成された電線溶着装置の動作を説明する。
【0054】
先ず、超音波溶着可能なシート状物11を準備し、その一部又は全部が水平になるようにシート支持手段12により支持させる。
【0055】
この実施の形態では、
図1に示す様に、シート支持手段12における水平板13の上面にシート状物11の一部を載せ、その水平板13の両側から突出するシート状物11における両側をシート移動手段21である可動ローラ22,23と挟持ローラ24,25によりそれぞれ挟み、その後その両端を一対の巻き取りローラ14,15にそれぞれ巻き付ける。このようにして、水平板13の上面に長尺状のシート状物11の一部を水平になるように支持させる。
【0056】
一方、そのシート状物11に溶着する電線30にあっては、ドラム47に巻回された状態で準備され、
図2及び
図3に示すように、その電線30が貯線されたドラム47を架台46における繰り出し制御手段であるサーボモータ48fの回転軸に取付ける。そして、
図1に示す様に、そのドラム47から電線30を巻解いてテンション装置48の線材ガイド48cに配索した後に、案内プーリ49を介してノズル42にまで案内する。
【0057】
図4に示すように、ノズル42では電線30をその挿通孔42aに通過させて、ノズル42から突出した電線30をアンビル31のV字状溝31aにまで案内する。この状態で、クランプ装置44におけるロッド44aを実線で示すように突出させ、挿通孔42aを通過する電線30にそのロッド44aを接触させて、電線30の自由な移動を禁止しておく。
【0058】
この状態から、シート状物11に電線30を溶着する。そのために、シート移動手段21は電線30の溶着開始位置までシート状物11を移動させ、シート状物11の端部近傍に電線30が載置されるようにする。
【0059】
このシート状物11の移動にあっては、シート移動手段21により行われ、一対の駆動モータ26,27により一対の可動ローラ22,23を同期して同一方向に同一の速度で回転させることにより、それらに載置された長尺状のシート状物11を長手方向に移動させる。この際、一対の巻き取りローラ14,15の内、シート状物11の移動方向後方側の巻き取りローラ14又は15は、そのシート状物11の移動に伴って、既に巻き取られているシート状物11を巻解き、移動方向前方にある巻き取りローラ14又は15にあっては、その移動するシート状物11を新たに巻き取るものとする。
【0060】
シート状物11の移動にあっては、
図7に示すように、アンビル31の回転移動手段32における上側流体圧シリンダ38のロッド38aを本体38bに没入させて、アンビル31を電線30から離間させ、
図1に示す超音波ホーン51が取付けられた下側流体圧シリンダ54にあっては、その出没ロッド54aを本体54bに没入させて、超音波ホーン51をシート状物11の下面から離間させておく。このように、そのシート状物11及び電線30がアンビル31及び超音波ホーン51により挟持されていない状態においてシート状物11を移動させる。
【0061】
図5に示すように、電線30の溶着開始位置までシート状物11を移動させた後には、
図8に示す様に、シート状物11の端部近傍に位置した電線30とそのシート状物11を超音波ホーン51とアンビル31により挟持し、シート状物11を電線30に溶着させる。
【0062】
具体的には、アンビル31の回転移動手段32における上側流体圧シリンダ38のロッド38aを下方に突出させ、アンビル31が電線30をシート状物11の上面に押しつけた状態で、超音波ホーン51をシート状物11の下面に当接させ、そのシート状物11及び電線30がアンビル31及び超音波ホーン51により挟持させる。この状態で超音波ホーン51を超音波振動させる。
【0063】
超音波ホーン51からの超音波振動の伝達態様としては、縦振動、横振動等があるけれども、溶着対象の部材の形状、物性等に応じて適宜選択するものとする。超音波ホーン51からシート状物11に超音波振動を付与すると、付与された超音波振動に起因して摩擦又は圧縮等が生じて熱エネルギーが発生する。これにより、シート状物11と電線30の一部が熱エネルギーによって溶融し、両者が接合される。このようにして、シート状物11を電線30に溶着させる。
【0064】
ここで、超音波溶着を行う場合、一般的に、超音波ホーン51を押し当てた跡(以下、ホーン跡57(
図6)という)が部材に残る場合があり得る。けれども、本発明の電線溶着装置10では、超音波ホーン51をシート状物11に当接させているため、ホーン跡57は、電線30が接触する上面ではなく、シート状物11の下面に残ることになる。このため、本発明の電線溶着装置10では、この超音波溶着工程時に電線30が傷つくことを抑制することが可能となる。
【0065】
また、アンビル31により電線30を押しつけると、電線30の絶縁被覆30bが変形することも考えられる。けれども、アンビル31に形成された溝31aは、断面がV字状を成すものであって、電線30の入り口が拡大する末広がりの溝31aとなっている。このため、その溝31aに電線30を落とし込む際に、電線30の絶縁被覆30bが溝31aの角部に接触して損傷するような事態は回避される。
【0066】
また、電線30が溝31aに侵入した後には、電線30の絶縁被覆30bに接触するアンビル31の表面積は拡大する。このため、そのアンビル31により電線30をシート状物11に押しつけても、電線30の絶縁被覆30bが過度に変形することは回避されることになる。よって、電線30の溶着に起因する電線30の変形をも抑制することも可能となる。
【0067】
電線30の端部がシート状物11に溶着された後には、テンション装置48により電線30にテンションが付与されていても、その電線30がノズル42から抜け出ることは無くなるので、クランプ装置44におけるロッド44aを
図4の一点鎖線で示す様に本体44bに没入させてロッド44aを電線30から離間させ、ノズル42における挿通孔42aに挿通された電線30の自由な移動を許容させる。
【0068】
その後、再びシート状物11を所定量移動させ、そのシート状物11の移動と共にノズル42から新たに繰り出された電線30を再びシート状物11に溶着させる。
【0069】
即ち、
図7に示す様に、アンビル31の回転移動手段32における上側流体圧シリンダ38のロッド38aを本体38bに没入させて、アンビル31を電線30から離間させるとともに、超音波ホーン51をシート状物11の下面から離間させる。このように、そのシート状物11及び電線30がアンビル31及び超音波ホーン51により挟持されていない状態にした後、
図1に示す一対の駆動モータ26,27により一対の可動ローラ22,23を再び同期して同一方向に同一の速度で回転させて、長尺状のシート状物11を長手方向に所定量移動させる。
【0070】
このシート状物11を
図6の実線矢印で示す様に移動させると、端部がシート状物11に溶着された電線30は、その溶着された端部がノズル42から遠ざかることになり、新たな電線30がノズル42からシート状物11の上面に供給される。そして、シート状物11を所定量移動させた後には、
図8に示す様に、新たに繰り出された電線30とそのシート状物11を超音波ホーン51とアンビル31により再び挟持し、超音波ホーン51を再び超音波振動させてシート状物11をその電線30に溶着させる。
【0071】
このように、電線30の端部をシート状物11に溶着した後には、そのシート状物11の所定量の移動と、ノズル42から新たに繰り出された電線30を再びシート状物11に溶着させることを繰り返し、所望の長さ及び本数の電線30を、電線30の損傷を回避しつつ比較的長尺のシート状物11に溶着させる。
【0072】
ここで、シート状物11の移動と溶着を繰り返し、シート状物11の移動量が超音波溶着範囲となる超音波ホーン51の外径を超えていると、
図6に示すように、電線30は、その長手方向に沿ってシート状物11に溶着された部位と溶着されていない部位が交互に生じることから、電線30はシート状物11に断続的に超音波溶着されることになる。
【0073】
このとき、1つの溶着箇所の範囲及びシート状物11を移動させる所定量、即ち、隣り合う溶着箇所の間隔(ピッチP)等は、接合強度等に応じて適宜設定されることになる。また、シート状物11を移動させる所定量を一定にして、電線30の長手方向に沿ってその電線30をシート状物11に一定のピッチPで断続的に超音波溶着してもよいけれども、シート状物11を移動させる所定量に変化を生じさせて、溶着されるピッチPが異なるようにしても良い。
【0074】
所望の長さ及び本数の電線30が所望のピッチPでシート状物11に溶着された後には、
図4に示すクランプ装置44におけるロッド44aを実線で示す様に本体44bから突出させて、そのロッド44aをノズル42における挿通孔42aに挿通された電線30に当接させ、ノズル42における電線30の移動を禁止する。その状態で、ノズル42とシート状物11に溶着された部位の間の電線30を切断し、その電線30が溶着されたシート状物11を
図1に示すシート支持手段12から取り外し、所望の長さ及び本数の電線30が比較的長尺のシート状物11に溶着された比較的長いワイヤハーネス9を得る。
【0075】
図9に示す様に、このように電線30がシート状物11に断続的に超音波溶着されて得られたワイヤハーネス9は、その後、電線30の端部に必要に応じてコネクタ8が取付けられ、その後に自動車組立ライン等に搬送される。そして、図示しないが、その自動車組立ラインにおいて、自動車の内張り材等の固定材に沿って配索され、シート状物11を所要位置でその固定材に超音波溶着具で溶着固定することになる。
【0076】
なお、
図9では、超音波ホーン51の外径を超えてシート状物11を所定量(ピッチP )移動させて、電線30がシート状物11に断続的に超音波溶着される場合を説明したけれども、
図10に示すように、シート状物11の移動量(ピッチP)を超音波溶着範囲となる超音波ホーン51の外径未満として、電線30をシート状物11に連続的に超音波溶着させるようにしても良い。
【0077】
図10に示す様に、電線30をシート状物11に連続的に超音波溶着させても、本発明の電線溶着装置10では、超音波ホーン51を電線30ではなくシート状物11に当接させているため、電線30の損傷を回避しつつその電線30をシート状物11に溶着することが可能となる。
【0078】
また、
図9では、3本の電線30が並列にシート状物11の長手方向に真っ直ぐに延びて溶着された場合を示すけれども、
図1に示すように、シート支持手段12が一対の巻き取りローラ16,17を備えるので、3本の電線30がシート状物11に溶着された後に、そのシート状物11を戻して、
図11に示す様に、既に溶着された電線30に並べて、新たに電線30をそのシート状物11に溶着するようにしても良い。
【0079】
また、
図1に示すように、アンビル31が設けられた上側流体圧シリンダ38及びノズル42が設けられた中間板37は回転モータ36の回転軸36aに取付けられるので、そのアンビル31もノズル42と共に水平面内において回転可能に構成される。
【0080】
そして、この回転モータ36は上側伸縮アクチュエータ33(
図1)によりシート状物11の幅方向に移動可能であるので、ノズル42からの電線30の供給方向をシート状物11の幅方向に向け、そのノズル42をその幅方向に移動させることにより、ノズル42から供給される電線30をシート状物11の幅方向にも供給可能である。
【0081】
一方、超音波ホーン51もシート状物11の幅方向に移動可能に構成されているので、アンビル31に対向する超音波ホーン51を、アンビル31に対向させた状態でシート状物11の幅方向に移動させることにより、シート状物11の幅方向に供給された電線30をシート状物11の幅方向に向けた状態で、そのシート状物11に溶着させてもよい。
【0082】
この時、そのアンビル31がシート状物11に平行な平面内において回転可能であるので、並列に供給される複数の電線30をシート状物11の長手方向や幅方向に並列のままに溶着することが可能となる。
【0083】
具体的に、シート状物11の長手方向に電線30を溶着している場合、
図12に示す様に、アンビル31を複数のノズル42と共に徐々に回転させつつ、並列に供給される複数の電線30をシート状物11に並列のまま溶着することにより、複数の電線30を並列のままその配索方向をシート状物11の長手方向から幅方向に変更することができる。
【0084】
そして、電線30の配索方向がシート状物11の幅方向に変更された後に、そのノズル42をシート状物11の幅方向に移動させることにより、ノズル42から供給される電線30はシート状物11の幅方向に供給され、それとともに超音波ホーン51をシート状物11の幅方向に移動させつつ、並列に供給される複数の電線30をシート状物11に溶着することにより、複数の電線30を並列のままシート状物11の長手方向のみならず、幅方向にも溶着することが可能となる。この結果、電線30の配索の自由度は向上することになる。
【0085】
なお、上述した実施の形態では、単一の電線30を挿通させるノズル42が複数設けられる場合を説明したけれども、複数の電線30が挿通された単一のノズル42を用いるようにしても良い。
【0086】
また、上述した実施の形態では、
図7及び
図8に外径が近似する3本の電線30を押さえるアンビル31に同様の大きさの凹溝31aが形成される場合を示した。けれども、アンビル31により電線30をシート状物11に押さえ付けた状態で、全ての電線30は対応する断面V字状の溝31aに収容されて接触し、この凹溝31aはシート状物11に複数の電線30を均等な力で押さえ付けるものである。このため、
図13に示す様に、電線30の外径が異なる様であれば、凹溝31aの大きさも異なる様にすることが好ましい。このように凹溝31aの大きさを異なる様にすることにより、この凹溝31aはシート状物11に複数の電線30を均等な力で押さえ付けることが可能となり、それら複数の電線30をシート状物11に同時かつ確実に溶着することが可能となる。
【0087】
次の
図14~
図16に、本発明の別の実施の形態を示す。この別の実施の形態において上述した実施の形態と同一符号は同一部品を示し、繰り返しての説明を省略する。
【0088】
図15及び
図16に示す様に、この別の実施の形態における電線溶着装置60にあっても、シート支持手段62を備える。この別の実施の形態におけるシート支持手段62は、超音波溶着可能なシート状物11の全部が水平になるように支持するものであって、そのシート状物11の外周を支持する枠部材64を備える。
【0089】
図17に示す様に、長方形状のシート状物11の外周を支持する枠部材64は、長方形状のシート状物11の周囲が載置されるように、長尺の長平板65aをシート状物11の外形に沿って長方形状に組み合わせ、その中央が開口された金属製の平板材65と、その長方形状に組み立てられた平板材65の周囲を補強する補強材66と、平板材65に載置されたシート状物11の周囲4隅をその平板材65と共に挟む押さえ具67とを備える。
【0090】
平板材65は金属から成り、押さえ具67は、その平板材65と共にシート状物11の周囲を挟む押さえ板67aを備え、その押さえ板67aにはマグネット67bと把手67cが設けられる。このように構成された押さえ具67は、平板材65にシート状物11の縁が載置された状態で、そのシート状物11の縁にその押さえ具67を重ねるだけで、マグネット67bの磁力によりシート状物11の縁を平板材65と共に押さえ板67aが挟むことになる。そして、把手67cを把持した作業員が、マグネット67bの平板材65に吸引される力に抗して、押さえ具67を平板材65から引き離すことにより、枠部材64からシート状物11を取り外すことができるように構成される。
【0091】
図16に示すように、この別の実施の形態におけるシート支持手段62は、シート状物11の全部を水平になるように支持した枠部材64が上面に載せられる水平板63を備え、この別の実施の形態における電線溶着装置60は、その水平板63の上面に載せられた枠部材64を水平方向に移動させるシート移動手段71を備える。
【0092】
このシート移動手段71は、枠部材64に周囲が挟持されたシート状物11の水平な全部を、その枠部材64と共に、水平に設けられたシート状物11の長手方向と幅方向のいずれにも移動させる、即ち水平方向の全方向に移動させるものであって、図におけるシート移動手段71はその枠部材64をシート状物11の幅方向に移動させる幅方向アクチュエータ72と、その幅方向アクチュエータ72を枠部材64と共にシート状物11の長手方向に移動させる長手方向アクチュエータ73とを備える。
【0093】
これらのアクチュエータ72,73は先の実施の形態における伸縮アクチュエータ33と同一構造であって、枠部材64を十分に移動可能な大きさの水平板63の両側に、その水平板63を両側から挟むように一対の長手方向アクチュエータ73が設けられる。即ち、長手方向アクチュエータ73のハウジング73dが、シート状物11の長手方向に平行に設けられ、サーボモータ73aによるボールネジ73bの回転により長手方向に移動する従動子73cに、幅方向アクチュエータ72のハウジング72dが架設される。
【0094】
また、
図17に示す様に、幅方向アクチュエータ72のサーボモータ72aによるボールネジ72bの回転により移動する従動子72cには、枠部材64に係止する係止部材74が設けられる。枠部材64の長方形状に組み立てられた平板材65の短辺を補強する補強材66には係止板68が設けられ、係止部材74は、水平板63に載せられた枠部材64の係止板68が取付けられて、係止するように構成される。
【0095】
図16に戻って、このシート移動手段71では、幅方向アクチュエータ72のサーボモータ72aを駆動して、そのボールネジ72bを回転させることにより従動子72cを移動させると、水平板63に載せられた枠部材64を、その枠部材64に支持されたシート状物11とともに、その幅方向に移動させ、一対の長手方向アクチュエータ73のサーボモータ73aを同時に駆動して、そのボールネジ73bを同期して回転させることにより従動子73cを同一方向に同一の速度で移動させると、幅方向アクチュエータ72と共に水平板63に載せられた枠部材64を、その枠部材64に支持されたシート状物11をその長手方向に移動させることになる。
【0096】
図14及び
図15に示す様に、本発明の電線溶着装置60は、シート状物11の上面に供給された電線30を上方から押さえるアンビル81を備える。この別の実施の形態におけるアンビル81にあっては、このアンビル81を水平面内において回転させかつ鉛直方向に昇降させる回転移動手段82を介してシート状物11の上方に設けられる。即ち、水平板63の略中央には、この水平板63を上方から覆うような鳥居部材83が設けられ、水平板63の略中央における上方の鳥居部材83には支持板84が水平方向に突出して設けられる。
【0097】
図18に示す様に、この支持板84には、アンビル81を水平面内において回転させる回転モータ86がその回転軸86aを下方に突出させた状態で取付けられる。この支持板84には鉛直回転棒材87が鉛直軸を中心に回転可能であって、かつ鉛直方向に移動可能に設けられる。支持板84には、この鉛直回転棒材87を包囲するようなボス材85が上方に向けて取付けられ、そのボス材85の上端には水平部材89が設けられる。図における水平部材89は水平に設けられ、アンビル81を鉛直方向に昇降させる昇降手段である流体圧シリンダ88が設けられる。
【0098】
即ち、流体圧シリンダ88は流体の圧力により出没するロッド88aを下方に向けて、そのロッド88aが鉛直回転棒材87と同軸になるようにその本体88bが水平部材89に取付けられる。ロッド88aの下端には、鉛直回転棒材87の上端が回転可能に係止され、その鉛直回転棒材87の支持板84を貫通した下端に、枢支具94を介してアンビル81が取付けられる。
【0099】
また、支持板84には、鉛直回転棒材87に回転不能であってかつ鉛直回転棒材87の長手方向に移動可能なプーリ91が設けられる。そして、回転モータ86の回転軸86aにもプーリ92が設けられ、回転モータ86におけるプーリ92と鉛直回転棒材87に設けられたプーリ91との間にはベルト93が架設され、回転モータ86が駆動してその回転軸86aがプーリ92とともに回転すると、ベルト93を介して鉛直回転棒材87が、その下端に設けられたアンビル81と共に水平面内において回転するように構成される。
【0100】
図14及び
図15に示す様に、この別の実施の形態における電線溶着装置60にあっても、上述した実施の形態で説明した電線供給手段41を備える。そして、アンビル81は、鉛直回転棒材87の下端に、枢支具94を介して枢支され、その枢支具94には電線供給手段41により上方から繰り出される電線30を転向させるプーリ状の線材ガイド102が更に枢支される。この線材ガイド102は必要とする電線30の本数に相応して設けられる。
【0101】
図18に示す様に、この線材ガイド102及びアンビル81を支持する枢支具94には、線材ガイド102により転向してアンビル81を通過した電線30を挟持するクランプ装置104及びカッタ装置106が流体圧シリンダ96,97を介して設けられる。アンビル81を挟んだ線材ガイド102の反対側における枢支具94には、可動片96aを鉛直方向にした鉛直方向流体圧シリンダ96の本体部96bが設けられ、その鉛直方向流体圧シリンダ96の可動片96aには、アンビル81を通過した電線30に直交する水平方向に可動片97aを移動可能にした水平方向流体圧シリンダ97の本体部97bが設けられる。
【0102】
更に
図19に示す様に、水平方向流体圧シリンダ97の可動片97aには、取付片98が鉛直方向に延びて取付けられ、この取付片98にクランプ装置104及びカッタ装置106が設けられる。
【0103】
このクランプ装置104は、流体圧によりロッド104aを出没させる流体圧シリンダ104であってアンビル81を通過した電線30が載置される挟持具105aが取付片98に取付けられ、その挟持具105aと共に電線30を挟む挟持片105bが流体圧シリンダ104のロッド104aに取付けられる。そして、流体圧シリンダ104は、ロッド104aを突出させると、そのロッド104aと共に移動する挟持片105bが挟持具105と共に電線30を挟持するように、その本体104bが取付片98に取付けられる。
【0104】
このため、このクランプ装置104では、実線矢印で示す様に、ロッド104aを突出させることによりアンビル81を通過した電線30を挟持して、電線30の自由な移動を禁止し、破線矢印で示す様に、ロッド104aを本体104bに没入させることにより電線30の挟持を解消させて、電線30の繰り出しが可能になるように構成される。
【0105】
一方、カッタ装置106は、クランプ装置104を通過した電線30をクランプ装置104の近傍において切断するものであって、このカッタ装置106にあっても、流体圧によりロッド106aを出没させる流体圧シリンダ106である。具体的に、クランプ装置104を通過した電線30が載置される固定カッタ刃107aが取付片98に取付けられ、流体圧シリンダ106のロッド106aには可動カッタ刃107bが取付けられる。
【0106】
このため、そのロッド106aを可動カッタ刃107bと共に突出させると、可動カッタ刃107bの刃先が固定カッタ刃107aの刃先に当接して、その間に存在する電線30を切断するように、その本体106bが取付片98に取付けられる。このため、このカッタ装置106では、実線矢印で示す様に、ロッド106aを突出させることによりクランプ装置104を通過した電線30を切断するように構成される。
【0107】
図18に示す様に、枢支具94に枢支されたアンビル81は、上方より供給されて線材ガイド102により転向した電線30をシート状物11に押しつけつつそのシート状物11の上面において転動可能なローラであって、
図22に示すように、このローラ状のアンビル81には、その周囲に電線30を落とし込む断面U字状の溝81aが形成される。この実施の形態では、3本の電線30が線材ガイド102により転向して供給される場合を例示するので、アンビル81には、3列の断面U字状の溝81aが互いに平行に形成される。
【0108】
図18に戻って、昇降手段を構成する流体圧シリンダ88は、そのロッド88aを下方に突出すると、鉛直回転棒材87が下降し、その下端に枢支具94を介して設けられたアンビル81も下降させるように構成される。このため、アンビル81の下方にシート状物11が存在すると、線材ガイド102により転向してアンビル81に掛け回された電線30をシート状物11の上面に押しつけるように構成される。
【0109】
そして、
図21に示す様に、アンビル81のU字状の溝81aは、電線30の外径に相応して形成され、アンビル81により電線30をシート状物11に押さえ付けた状態で全ての電線30は対応する断面U字状の溝81aに収容されて接触し、シート状物11に複数の電線30を均等な力で押さえ付けるように構成される。
【0110】
一方、昇降手段を構成する流体圧シリンダ88は、そのロッド88aを本体88bに没入させると、鉛直回転棒材87と共にアンビル81も上昇してシート状物11から離間するように構成される。
【0111】
図14に戻って、電線供給手段41は電線30を上方からアンビル81に供給するように構成され、アンビル81の上方にあって流体圧シリンダ88が設けられた水平部材89には、アンビル81に供給される電線30を線材ガイド102に案内する案内部材108と、案内部材108をアンビル81の水平面内における回転と同期して回転させる案内部材回転手段109とが更に設けられる。
【0112】
図18及び
図20に示す様に、案内部材108は、通過孔108aが先端に形成された平板であって、その基端が水平部材89に枢支される。この案内部材108を回転させる案内部材回転手段109は電動モータであって、その電動モータ109は、その回転軸109aが案内部材108の枢支点と同軸になるように水平部材89に取付けられ、その回転軸109aは案内部材108の基端に同軸に取付けられる(
図18)。
【0113】
図18及び
図21に示す様に、電線30をシート状物11の上面に押しつけるアンビル81が設けられた枢支具94は回転モータ86が駆動すると水平面内において回転可能に構成されているので、
図21に示す様に、アンビル81の転動方向をシート状物11の幅方向に向けた場合、電動モータ109を駆動させて案内部材108も同方向に回転させることにより、案内部材108の通過孔108aが移動し、上方から繰り出されてその通過孔108aを通過する電線30を線材ガイド102に導くように構成される。
【0114】
すると、線材ガイド102からの電線30の供給方向もシート状物11の幅方向に向くことになり、その状態でシート状物11をその幅方向に移動させることにより、線材ガイド102から供給される電線30を、シート状物11の長手方向のみならず、幅方向にも供給しうるように構成される(
図24)。
【0115】
即ち、
図20の一点鎖線及び二点鎖線で示すように、案内部材回転手段109は、アンビル81の水平面内における回転と同期して案内部材108を同方向に回転させることにより、上方から繰り出される電線30を、アンビル81と共に回転する線材ガイド102に支障なく速やかに案内するように構成される。
【0116】
図14及び
図15に示す様に、アンビル81の下方には、そのアンビル81に対向するように超音波ホーン111が設けられる。この実施の形態における超音波ホーン111は、アンビル81と共にシート状物11及び電線30を挟持し(
図18及び
図21)、超音波振動によりシート状物11を電線30に溶着させるものであり、3本の電線30が供給されるこの実施の形態では、その3本の電線30を一度に溶着可能な大きさのものが用いられる。
【0117】
この別の実施の形態では、アンビル81の下方の水平板63に超音波ホーン111の外径より僅かに大きな孔63aが形成され、超音波ホーン111の上端がこの孔63aを介して昇降可能に構成される。即ち、この別の実施の形態における電線溶着装置60は、超音波ホーン111を昇降させる昇降手段としての下側流体圧シリンダ112を備える。この下側流体圧シリンダ112は、その出没ロッド112aを上方にした状態で孔63aの下方に本体112bが取付けられる。出没ロッド112aの上端には超音波ホーン111を超音波振動させる振動子110が取付けられ、この振動子110に超音波ホーン111が上方に突出して設けられる。
【0118】
図18及び
図21に示す様に、アンビル81が電線30をシート状物11の上面に押しつけた状態で、
図14に示す下側流体圧シリンダ112の出没ロッド112aを上方に突出させると、その上端に取付けられた超音波ホーン111がシート状物11の下面に当接し、そのシート状物11及び電線30がアンビル81及び超音波ホーン111により挟持可能に取付けられる。このため、超音波ホーン111の上端縁はシート状物11の下面に密着可能であって、かつそのシート状物11が摺動可能なように平らに形成される。そして、シート状物11及び電線30がアンビル81及び超音波ホーン111により挟持された状態で、超音波ホーン111を超音波振動させることによりシート状物11を電線30に溶着可能に構成される。
【0119】
一方、下側流体圧シリンダ112の出没ロッド112aを本体112bに没入させると、その上端に取付けられた超音波ホーン111が下降して、その上縁が水平板63の上面と面一になるように構成される。このため、超音波ホーン111を下降させると、水平板63の上面に搭載された枠部材64(
図16)と超音波ホーン111が干渉することは防止され、これにより水平板63の上面に搭載された枠部材64(
図16)の水平方向の移動が可能になるように構成される。
【0120】
次に、このように構成された別の実施の形態における電線溶着装置の動作を説明する。
【0121】
先ず、超音波溶着可能なシート状物11を準備し、その一部又は全部が水平になるようにシート支持手段62により支持させる。
図16に示す様に、この別の実施の形態では、シート支持手段62が枠部材64を備えるので、必要な大きさのシート状物11を支持可能な枠部材64が準備され、この枠部材64にシート状物11を支持させる。このシート状物11の支持にあっては、枠部材64における平板材65にシート状物11の縁を載置し、その状態で、そのシート状物11の縁に押さえ具67を重ねることにより行われる。
【0122】
シート状物11を枠部材64に支持させた後には、その枠部材64を水平板63上に搭載させ、これにより、シート状物11の全部が水平になるように支持させる。そして、枠部材64に設けられた係止板68を、シート移動手段71における係止部材74に係止させて、シート移動手段71により枠部材64を水平面内において移動可能にさせておく。
【0123】
一方、
図14に示す様に、そのシート状物11に溶着する電線30にあっては、貯線されたドラム47から巻解いてテンション装置48の線材ガイド48cに配索した後に、案内部材108の孔108aを通過させた後に線材ガイド102にまで案内する。線材ガイド102では電線30を転向させてアンビル81のU字状溝81a(
図21)にまで案内し、その後クランプ装置104により、アンビル81を通過した電線30を挟持して、電線30の自由な移動を禁止しておく。
【0124】
この状態から、シート状物11に電線30を溶着するために、シート移動手段71は電線30の溶着開始位置までシート状物11を移動させ、
図22に示す様に、シート状物11の端部近傍に電線30が載置されるようにする。即ち、シート移動手段71(
図16)は、水平板63に載せられた枠部材64をシート状物11とともに移動させ、枠部材64に支持されたシート状物11の端部近傍に電線30が載置されるようにする。
【0125】
シート状物11の移動にあっては、
図18に示す流体圧シリンダ88は、そのロッド88aを本体88bに没入させてアンビル81をシート状物11から離間させ、
図14に示す超音波ホーン111が取付けられた下側流体圧シリンダ112にあっては、その出没ロッド112aを本体112bに没入させて、超音波ホーン111をシート状物11の下面から離間させておく。このように、そのシート状物11及び電線30がアンビル81及び超音波ホーン111により挟持されていない状態においてシート状物11を移動させる。
【0126】
電線30の溶着開始位置までシート状物11を移動させた後には、
図18に示す様に、シート状物11の端部近傍に位置した電線30とそのシート状物11を超音波ホーン111とアンビル81により挟持させる。
【0127】
具体的には、
図18に示す流体圧シリンダ88のロッド88aを下方に突出させ、アンビル81が電線30をシート状物11の上面に押しつけた状態で、
図14に示す下側流体圧シリンダ112にあっては、その出没ロッド112aを上方に突出させて、超音波ホーン111をシート状物11の下面に当接させる。このようにして、そのシート状物11及び電線30をアンビル81及び超音波ホーン111により挟持させる。この状態で超音波ホーン111を超音波振動させ、シート状物11を電線30に溶着させる。
【0128】
溶着開始位置となる電線30の端部がシート状物11に溶着された後には、クランプ装置104における電線30の挟持を解除し、流体圧シリンダ96,97(
図18)により、そのクランプ装置104をカッタ装置106とともに電線の30の繰り出し位置から離間する待避位置まで移動させる。
【0129】
その後、超音波ホーン111を超音波振動させた状態でシート状物11を移動させ、そのシート状物11の移動と共に線材ガイド102から新たに繰り出されて、そのシート状物11の上を転動するローラ状のアンビル81と超音波ホーン111により次々に挟持される電線30を、そのシート状物11の上面に順次溶着して、
図23に示す様に、その電線30をシート状物11の移動方向に連続的に溶着させる。
【0130】
この時、そのシート状物11は、超音波ホーン111の上端縁の上を摺動し、そのシート状物11にローラ状のアンビル81が転動してシート状物11の上に繰り出された電線30は、そのアンビル81と超音波ホーンが挟持した段階で、シート状物11に順次溶着されることになる。
【0131】
このように、本発明の別の実施の形態における電線溶着装置60では、電線30をシート状物11に連続的に溶着するけれども、超音波ホーン111をシート状物11に下方から当接させているため、ホーン跡57がシート状物11の下面に生じることになっても、シート状物11の上面にアンビル81が転動するので、その上面に溶着された電線30にアンビル81の摺動痕のような傷がつくようなことはない。
【0132】
また、アンビル81に形成された溝81aは、断面がU字状を成すものであるので、電線30の絶縁被覆30b(
図7)に接触するアンビル81の表面積は拡大する。このため、そのアンビル81により電線30をシート状物11に押しつけても、電線30の絶縁被覆30bが過度に変形することは回避されることになる。よって、電線30の溶着に起因する電線30の変形をも抑制することも可能となる。
【0133】
また、アンビル81が設けられた枢支具94は
図18に示す回転モータ86により水平面内において回転可能であり、
図16に示すシート移動手段71は、シート状物11を支持する枠部材64を長手方向のみならず幅方向にも移動可能であるので、
図21に示す様に、ローラ状のアンビル81の転動方向をシート状物11の幅方向に向け、そのシート状物11をその幅方向に移動させることにより、
図24に示す様に、線材ガイド102から供給されてアンビル81が転動して超音波ホーン111と共に挟持する電線30をシート状物11の幅方向にも連続的に溶着可能である。
【0134】
この時、そのアンビル81には、並列に供給される複数の電線30を落とし込む複数列の凹溝81aが形成されているので、シート状物11の長手方向や幅方向に並列のままに溶着することが可能となる。
【0135】
具体的に、シート状物11の長手方向に電線30を溶着した後、アンビル81を線材ガイド102と共に徐々に回転させ、並列に供給される複数の電線30をシート状物11に並列のまま溶着することにより、複数の電線30を並列のままその配索方向をシート状物11の長手方向から幅方向に変更することができる。
【0136】
また、アンビル81を昇降させる流体圧シリンダ88を備えたので、シート状物11の幅方向に連続溶着している電線30が、先にシート状物11の長手方向に連続溶着された別の電線30を跨ぐような場合であっても、その別の電線30を跨ぐ際に、アンビル81を一旦上昇させて、シート状物11の上面からそのアンビル81を浮かすことにより、そのアンビル81が、先にシート状物11の長手方向に連続溶着された別の電線30の上を交差するように転動することを防止することができる。
【0137】
そして、先にシート状物11の長手方向に連続溶着された別の電線30をアンビル81が超えた段階で、アンビル81を再び下降させてシート状物11の上を転動させることにより、先にシート状物11の長手方向に連続溶着された別の電線30に、アンビル81の転動に起因する損傷を生じさせることなく、それに交差させて、新たに電線30をシート状物11の幅方向に連続溶着させることもできる。
【0138】
また、回転モータ86によるアンビル81が設けられた枢支具94の水平面内における回転範囲は特に制限が無いので、
図25に示すように、シート状物11の長手方向に電線30を溶着した後、枢支具94を水平面内において180度回転させて、複数の電線30の配索方向をシート状物11の長手方向から幅方向に変更し、更に、その配索方向をシート状物11の長手方向に戻すようにすれば、複数の線材30を並列のままシート状物11にU字状に溶着することもできる。
【0139】
そして、案内部材回転手段109は、アンビル81の水平面内における回転と同期して案内部材108を同方向に回転させるので、アンビル81と共に線材ガイド102が例え180度回転しても、上方から繰り出される電線30を案内部材108が線材ガイド102に支障なく速やかに案内するので、線材30をシート状物11にU字状に溶着することに支障を生じさせることはない。この結果、電線30の配索の自由度は更に向上することになる。
【0140】
所望の長さ及び本数の電線30を所望の方向でシート状物11に溶着した後には、
図18に示すクランプ装置104により、ローラ状のアンビル81からシート状物11に延びる電線30を挟持し、新たな電線30の供給を防止する。その状態で、カッタ装置106によりクランプ装置104とシート状物11に溶着された部位の間の電線30を切断し、その電線30が溶着されたシート状物11と共に、枠部材64をシート移動手段71から取り外す。そして、更にシート支持手段62である枠部材64からシート状物11を取り外すことにより、所望の長さ及び本数の電線30がシート状物11に溶着されたワイヤハーネスを得る。
【0141】
アンビル81からシート状物11に延びる電線30はクランプ装置104により挟持されているので、シート状物11が支持された別の枠部材64をシート移動手段71に取付けることにより、直ちに次の電線30のシート状物11への溶着作業を開始することができる。
【0142】
そして、図示しないが、電線30がシート状物11に連続的に超音波溶着されて得られたワイヤハーネスは、上述した実施の形態と同様に、その後、電線30の端部に必要に応じてコネクタが取付けられ、その後に自動車組立ライン等に搬送される。そして、その組立ラインにおいて、例えば、自動車の内張り材等の固定材に沿って配索され、シート状物11を所要位置でその固定材に超音波溶着具で溶着固定されることになる。
【0143】
なお、上述した実施の形態では、
図1及び
図14に示す様に、アンビル31,81を昇降させる昇降手段が流体圧シリンダ38,88である場合を説明した。けれども、その昇降手段38,88は、アンビル31,81を昇降させ得る限り、流体圧シリンダに限定されるものではない。例えば、超音波溶着時における加重を受けるのが困難な場合には、カム機構を用いてアンビル31,81を昇降させるようにしても良い。
【0144】
また、上述した実施の形態では、3本の電線30が供給される場合を示して説明したけれども、電線30の本数はこれに限らず、1本であっても良く、2本であっても良い。また4本以上であっても良い。
【符号の説明】
【0145】
10,60 電線溶着装置
11 シート状物
12,62 シート支持手段
21,71 シート移動手段
30 電線
31,81 アンビル
31a,81a 溝
33 アンビル移動手段
36,86 アンビル回転手段
41 電線供給手段
51,111 超音波ホーン
52 ホーン移動手段
108 案内部材
109 案内部材回転手段