(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】挟圧装置及びモップ等絞り器
(51)【国際特許分類】
A47L 13/60 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A47L13/60
(21)【出願番号】P 2017009038
(22)【出願日】2017-01-22
【審査請求日】2019-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】羽地 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】安東 慎人
【審査官】山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-196499(JP,A)
【文献】米国特許第06487749(US,B1)
【文献】実開昭49-035566(JP,U)
【文献】米国特許第01955444(US,A)
【文献】独国実用新案第202010016671(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00-13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する開口部を有する洗浄部と、挟圧装置を備えてなり、
前記挟圧装置は、揺動挟圧体と固定挟圧体と押下部を有し、
前記揺動挟圧体は、所定水平方向における一方の側の下方に揺動軸線を有する
ように前記洗浄部に支持された揺動腕体により揺動可能に支持されており、
前記固定挟圧体は、前記所定水平方向における他方の側に固定的に位置し、
前記揺動挟圧体は、固定挟圧体から最も離れた原位置と、固定挟圧体に接する又は近接する挟圧位置の間で揺動し得、
前記押下部は、前記所定水平方向における他方の側における前記固定挟圧体よりも下方に位置し、押下部が上位置にある場合は揺動挟圧体は原位置に位置し、押下部が下位置にある場合は揺動挟圧体は挟圧位置に位置するよう、前記揺動腕体における揺動軸線と揺動挟圧体の間に設けられた所定の連繋位置と連繋体を介して連繋しており、
押下部に押下力が加わっていない場合は揺動挟圧体が原位置へ復元する復元付勢力が加えられて
おり、
前記所定水平方向において、前記揺動軸線を中心として垂直上方から原位置における前記揺動挟圧体の中心位置までの中心角が前記固定挟圧体側へ5度乃至20度であり、
前記揺動軸線と連繋位置の距離が、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置の距離の85乃至100%であることにより押下部の押下による固定挟圧体と揺動挟圧体による挟圧対象物の挟圧効率を高めた
ものであり、
前記開口部又はその付近の前記所定水平方向における一方の側に前記揺動挟圧体の原位置が位置すると共に他方の側に前記固定挟圧体が位置するモップ等絞り器。
【請求項2】
上記揺動挟圧体の原位置における中心位置が上記開口部の上端縁よりも下方に位置する請求項1記載のモップ等絞り器。
【請求項3】
上記揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置を結ぶ線と連繋体の軸線の角度が、揺動挟圧体が挟圧位置にある状態において55乃至90度である請求項1又は2記載の
モップ等絞り器。
【請求項4】
上記揺動挟圧体が、上記原位置から上記挟圧位置に向かって、上記所定水平方向に対する下降傾斜角を次第に増大させつつ下降回動するものであり、前記下降傾斜角は、前記原位置において5度乃至20度である請求項1
乃至3の何れか1項に記載の
モップ等絞り器。
【請求項5】
揺動軸線に垂直な面において、挟圧位置における揺動挟圧体の中心位置と固定挟圧体の中心位置を結ぶ線と、揺動挟圧体の中心位置の軌跡のうち揺動挟圧体の挟圧位置における接線がなす角度が0乃至45度である請求項1乃至
4の何れか1項に記載の
モップ等絞り器。
【請求項6】
上記揺動軸線と連繋位置の距離が、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置の距離の88乃至98%である請求項1乃至
5の何れか1項に記載の
モップ等絞り器。
【請求項7】
揺動挟圧体及び固定挟圧体が、円筒状外周面部を有し、軸線のまわりに回動し得るよう支持されたローラ状体である請求項1乃至
6の何れか1項に記載の
モップ等絞り器。
【請求項8】
上記洗浄部の開口部は、上記所定水平方向に対し側方に上縁部を有し、
前記上縁部のうち、上記原位置と挟圧位置の間に位置する状態の揺動挟圧体が臨む部分は、前記原位置側から挟圧位置側に向かって下降傾斜している請求項
1乃至7の何れか1項に記載のモップ等絞り器。
【請求項9】
上記洗浄部が、スリットを有する外壁部を有し、そのスリットを介して上記揺動挟圧体が揺動腕体により支持されており、
上記原位置と挟圧位置の間に位置する状態の揺動挟圧体は、前記スリットのうち前記原位置側から挟圧位置側に向かって下降傾斜する部分を介して前記揺動腕体により支持されている請求項
1乃至7の何れか1項に記載のモップ等絞り器。
【請求項10】
上記連繋体のうち少なくとも所定の連繋位置から最も離隔した部分が、所定水平方向の他方の側における洗浄部の外部に位置する請求項
1乃至9の何れか1項に記載のモップ等絞り器。
【請求項11】
所定水平方向における他方の側における洗浄部の外壁面部に上下方向の溝状凹部を有し、上記押下部がその溝状凹部に位置する請求項
1乃至10の何れか1項に記載のモップ等絞り器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄後のモップ糸等を搾水等のために挟圧するための挟圧装置及びモップ等絞り器に関する。
【背景技術】
【0002】
実公平6-37813号公報には、水容器の口縁部に架設状にかつ回転可能にロールが支軸で取付けられるとともに、前記水容器に端部が軸着されたスイング部材にも、前記水容器の口縁部に位置させてロールが回転可能に支軸で取付けられ、かつ前記一対のロールが互いに平行状に配置されて、前記スイング部材のスイングで一対のロールを互いに圧接させるモップ絞り器であって、その水容器1に水を入れて、清掃に使用したモップを前記水で洗浄し、そのモップを固定ロール2の側面に重ね、操作アーム6の踏み下げでスイングアーム5をスイングさせて、可動ロール7を前記モップの側面に当接させて、固定ロール2と可動ロール7とで支軸4、9を介してモップを挾持し加圧するモップ絞り器の発明が記載されている。
【0003】
しかしながら、従来のこの種のモップ絞り器、特に比較的コンパクトなものにおいては、操作アーム6の踏み下げてスイングアーム5をスイングさせ、固定ロール2と可動ロール7とで支軸4、9を介してモップを挾持し加圧する際の加圧力を効率的に発生させることができず、無理に力を加えればモップ絞り器の安定性が損なわれる恐れがあり、安定性を重視すれば全体が大型化することにつながっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、押下部を押下することによって揺動挟圧体により固定挟圧体との間に挟圧対象物を挟圧する効率を高めることができる挟圧装置及びモップ等絞り器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の挟圧装置及びモップ等絞り器は、次のように表すことができる。
【0007】
(1) 揺動挟圧体と固定挟圧体と押下部を有し、
前記揺動挟圧体は、所定水平方向における一方の側の下方に揺動軸線を有する揺動腕体により揺動可能に支持されており、
前記固定挟圧体は、前記所定水平方向における他方の側に固定的に位置し、
前記揺動挟圧体は、固定挟圧体から最も離れた原位置と、固定挟圧体に接する又は近接する挟圧位置の間で揺動し得、
前記押下部は、前記所定水平方向における他方の側における前記固定挟圧体よりも下方に位置し、押下部が上位置にある場合は揺動挟圧体は原位置に位置し、押下部が下位置にある場合は揺動挟圧体は挟圧位置に位置するよう、前記揺動腕体における揺動軸線と揺動挟圧体の間に設けられた所定の連繋位置と連繋体を介して連繋しており、
押下部に押下力が加わっていない場合は揺動挟圧体が原位置へ復元する復元付勢力が加えられている挟圧装置であって、
前記揺動軸線と連繋位置の距離が、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置の距離の85乃至100%であることにより押下部の押下による固定挟圧体と揺動挟圧体による挟圧対象物の挟圧の効率を高めたことを特徴とする挟圧装置。
【0008】
連繋位置が揺動挟圧体に十分に近い位置であるため、押下部を押下することによって揺動挟圧体により固定挟圧体との間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。
【0009】
(2) 上記揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置を結ぶ線と連繋体の軸線の角度が、揺動挟圧体が挟圧位置にある状態において55乃至90度である上記(1)記載の挟圧装置。
【0010】
(3) 所定水平方向において、原位置の揺動挟圧体の中心位置が揺動腕体の揺動軸線と同等であるか又は固定挟圧体側に位置する上記(1)又は(2)記載の挟圧装置。
【0011】
(4) 揺動軸線を中心として垂直上方から原位置における揺動挟圧体の中心位置までの中心角が0度乃至固定挟圧体側へ20度である上記(3)記載の挟圧装置。
【0012】
(5) 揺動軸線に垂直な面において、挟圧位置における揺動挟圧体の中心位置と固定挟圧体の中心位置を結ぶ線と、揺動挟圧体の中心位置の軌跡のうち揺動挟圧体の挟圧位置における接線がなす角度が0乃至45度である上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の挟圧装置。
【0013】
(6) 上記揺動軸線と連繋位置の距離が、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置の距離の88乃至98%である上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の挟圧装置。
【0014】
(7) 揺動挟圧体及び固定挟圧体が、円筒状外周面部を有し、軸線のまわりに回動し得るよう支持されたローラ状体である上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の挟圧装置。
【0015】
(8) 上方に開口する開口部を有する洗浄部と上記(1)乃至(7)の何れか1項に記載の挟圧装置を備えてなり、
前記開口部又はその付近の上記所定水平方向における一方の側に上記揺動挟圧体の原位置が位置すると共に他方の側に上記固定挟圧体が位置するモップ等絞り器。
【0016】
(9) 上記連繋体のうち少なくとも所定の連繋位置から最も離隔した部分が、所定水平方向の他方の側における洗浄部の外部に位置する上記(8)記載のモップ等絞り器。
【0017】
(10) 所定水平方向における他方の側における洗浄部の外壁面部に上下方向の溝状凹部を有し、上記押下部がその溝状凹部に位置する上記(8)又は(9)記載のモップ等絞り器。
【発明の効果】
【0018】
本発明の挟圧装置及びモップ等絞り器によれば、連繋位置が揺動挟圧体に十分に近い位置であるため、押下部を押下することによって揺動挟圧体により固定挟圧体との間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図8】挟圧状態のモップ等絞り器の側面透視状図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図面は本発明の挟圧装置を備えた本発明のモップ等絞り器の実施の形態の一例についてのモップ絞り器についてのものである。
【0022】
このモップ絞り器は、洗浄部Aと挟圧装置Pを備えるものであり、その挟圧装置Pは、揺動挟圧体Sと固定挟圧体Fと押下部Dを有する。
【0023】
(1) 洗浄部Aは、平面視において方形状をなし把手Hを有するバケツ状のものであって、上方に開口する平面視方形状の開口部A1を有し、水を溜めてモップ(図示せず)のモップ糸部等の拭部を洗浄し得る。
【0024】
(2) 揺動挟圧体及び固定挟圧体
【0025】
(2-1) 揺動挟圧体S及び固定挟圧体Fは、それぞれ、洗浄部Aの上方に開口する開口部A1付近に位置する。
【0026】
揺動挟圧体Sと固定挟圧体Fは、何れも、軸線方向に平行な凸条を周方向等中心角毎に多数供えた円筒状外周面部を有し、バケツ状の洗浄部Aの左右水平方向の軸線のまわりに回動し得るよう支持されたローラ状体である。
【0027】
(2-2) 揺動挟圧体Sは、その軸体S1の両端(左右端)においてそれぞれ一対の揺動腕体Mにより支持されることにより、揺動可能に支持されている。
【0028】
左右一対の揺動腕体Mは、バケツ状の洗浄部Aの前後方向(所定水平方向)における後方の側の下方にそれぞれ有する固定軸体M1のまわりに、すなわち洗浄部Aの左右水平方向の共通の揺動軸線Maのまわりに、揺動挟圧体Sを介して一体状に揺動する。揺動挟圧体S及び固定挟圧体Fの回動軸線は、何れも、揺動腕体Mの揺動軸線Maに平行状をなす。
【0029】
固定挟圧体Fは、洗浄部Aの前後方向(所定水平方向)における前方の側に位置し、その軸体F1の両端(左右端)において、洗浄部Aに対し固定位置に支持されている。
a
【0030】
(2-3) 揺動挟圧体Sは、最も後方の位置である(すなわち固定挟圧体Fから最も離れた)原位置Tと、最も前方の位置である固定挟圧体Fに接する挟圧位置Uの間で揺動軸線Maのまわりに揺動し得る。揺動挟圧体Sは原位置Tから挟圧位置Uに向かって下降するので、洗浄部Aの上方開口部A1の左右の所定縁部A2は、揺動挟圧体Sの揺動が可能なように前方に向かって下降傾斜している。
【0031】
原位置Tの揺動挟圧体Sの回動軸線の位置(中心位置)は、前後方向において、揺動腕体Mの揺動軸線Maの位置よりも前方(固定挟圧体F側)に位置する。揺動軸線Maを中心として垂直上方から原位置Tにおける揺動挟圧体Sの回動軸線の位置までの中心角α(揺動軸線Maに垂直な面における中心角)は、固定挟圧体F側へ約10度である。
【0032】
左右の揺動腕体Mのそれぞれ基部には、揺動挟圧体Sが原位置Tへ復元する復元付勢力が、ねじりコイルばねW(
図1及び
図3以外は図示を略す)によって加えられている。
【0033】
原位置Tにおける揺動挟圧体Sの軸体S1の両端部は、洗浄部Aの上方開口部A1の左右縁部にそれぞれ設けられた受止突部C(原位置側受止部)により前向きに受止され、揺動挟圧体Sが原位置Tよりも後方(所定水平方向における一方の側)へ揺動することが防がれる。
【0034】
挟圧位置Uにおける揺動挟圧体Sは、固定挟圧体Fで受止されることにより、それよりも前方(所定水平方向における他方の側)へ揺動することが防がれる。
【0035】
(3) 押下部
【0036】
(3-1) 押下部Dは、前後方向(所定水平方向)における前方の側における固定挟圧体Fよりも下方に位置し、ペダル状をなす。押下部Dは、洗浄部Aの前壁部A3の外側(前側、すなわち外壁面部)に設けた上下方向の溝状凹部A4に位置する。
【0037】
(3-2) 押下部Dは、上下に移動し得、最上位置にある場合は揺動挟圧体Sは原位置Tに位置し、最下位置にある場合は揺動挟圧体Sは挟圧位置Uに位置するよう、左右の揺動腕体Mそれぞれにおいて揺動軸線Maと揺動挟圧体Sの間に設けられた連繋位置Lと、左右一対の剛性的なワイヤからなる連繋体Eを介して連繋している。
【0038】
(3-3) 揺動挟圧体Sが原位置Tに位置し押下部Dが最上位置にある状態において、そのペダル状の押下部Dを押下することにより、揺動腕体Mは連繋体Eを介して前方(所定水平方向における他方の側)へ引かれて順方向に回動し、揺動挟圧体Sは挟圧位置Uへ向かって移動する。揺動腕体Mの順方向回動に伴い、ねじりコイルばねWは復元付勢力の向きと逆向きにねじり変形を受け、復元付勢力が増強される。
【0039】
押下部Dが最下位置に押下されて揺動挟圧体Sが挟圧位置Uに位置している状態において、そのペダル状の押下部Dの押下を解除すると、揺動腕体Mは、ねじりコイルばねWの復元付勢力により逆方向に回動し、揺動挟圧体Sは原位置Tへ向かって移動する。
【0040】
揺動挟圧体Sが挟圧位置U又は原位置Tと挟圧位置Uの間に位置する状態においてペダル状の押下部Dに押下力が加わっていない場合は、他に障害等がない限り、左右の揺動腕体Mのそれぞれ基部に対しねじりコイルばねWによって加えられている復元付勢力によって、揺動挟圧体Sは原位置Tへ復元する。
【0041】
押下部Dが最上位置にあって揺動挟圧体Sが原位置Tに位置する状態において、揺動挟圧体Sと固定挟圧体Fの間を通じて上方からモップのモップ糸部等の拭部を洗浄部Aに溜めた水又はその他の液体に浸して洗浄し、洗浄後に拭部を引き上げる際に押下部Dを押下して揺動挟圧体Sを挟圧位置Uへ移動させることによりモップの拭部を揺動挟圧体Sと固定挟圧体Fの間に挟圧しつつ引き上げることによって、拭部を搾水することができる。
【0042】
(3-4) 揺動腕体Mにおける連繋位置Lは、揺動軸線Maと連繋位置Lの距離が、揺動軸線Maと揺動挟圧体Sの回動軸線(揺動挟圧体Sの中心位置)の距離の約89%である位置である。連繋位置Lが揺動挟圧体Sに非常に近い位置であるため、押下部Dを押下することによって揺動挟圧体Sにより固定挟圧体Fとの間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。
【0043】
揺動軸線Maと揺動挟圧体Sの中心位置を結ぶ線と連繋体Eの軸線の角度βは、揺動挟圧体Sが挟圧位置Uにある状態において約60度であり、また、揺動挟圧体Sが原位置Tにある状態において約70度である。特に揺動挟圧体Sが挟圧位置Uにある状態において、揺動軸線Maと揺動挟圧体Sの中心位置を結ぶ線と連繋体Eの軸線の角度が十分に大きいことにより、押下部Dを押下することによって揺動挟圧体Sにより固定挟圧体Fとの間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。なお、連繋体Eのうち連繋位置Lから最も離隔した部分は、洗浄部Aの前壁部A3の外側(前側)、すなわち洗浄部Aの外部に位置するので、揺動軸線Maと揺動挟圧体Sの中心位置を結ぶ線と連繋体Eの角度をこのような角度となし易い。
【0044】
揺動軸線Maに垂直な面において、挟圧位置Uにおける揺動挟圧体Sの中心位置と固定挟圧体Fの中心位置を結ぶ線と、揺動挟圧体Sの中心位置の軌跡のうち揺動挟圧体Sの挟圧位置Uにおける接線がなす角度γは約40度である。
【0045】
(4) 以上のような構成により、揺動挟圧体Sを原位置Tから挟圧位置Uに揺動させる上で押下部Dが下方へ移動することを要する高さを可及的に小さくしてモップ絞り器全体の高さをできるだけ小さくし、安定性を高め且つコンパクト化しつつ両挟圧体間に十分な挟圧力が得られるようにすることができる。
【0046】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0047】
本発明の挟圧装置は、揺動挟圧体と固定挟圧体と押下部を有し、本発明のモップ等絞り器は、洗浄部と本発明の挟圧装置を備える。
【0048】
(1) 揺動挟圧体及び固定挟圧体
【0049】
(1-1) 揺動挟圧体及び固定挟圧体としては、それぞれ、円筒状外周面部(周方向に凹凸を有する形状であるものを含む)を有し、軸線のまわりに回動し得るよう支持されたローラ状体が最も一般的であるが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、揺動挟圧体及び固定挟圧体の一方又は両方を、円筒状外周面部(周方向に凹凸を有する形状であるものを含む)を有し回動しない非回動体、横断面の外周部が非円形(多角形状、周方向に凹凸を有する形状等)の軸線のまわりに回動し得るよう支持されたローラ状体又は回動しない非回動体を挙げることができる。
【0050】
揺動挟圧体及び固定挟圧体は、両者間に対象物品を挟圧する上で十分な強度や剛性等の物性を備えると共に耐久性を有するものであることが望まれる。
【0051】
(1-2) 揺動挟圧体は、所定水平方向における一方の側の下方に揺動軸線を有する揺動腕体により揺動可能に支持されている。揺動腕体は、例えば十分な耐久性を有する剛性的な材料により形成することができる。
【0052】
固定挟圧体は、所定水平方向における他方の側に固定的に位置する。固定的というのは、揺動挟圧体との間に対象物を挟圧する上で差し支えない範囲で固定挟圧体の位置がずれ得るように固定挟圧体が支持されたものを含めることができる。
【0053】
揺動挟圧体及び固定挟圧体は、それぞれ、揺動腕体の揺動軸線に平行状をなす軸線に沿うものであることが好ましい。例えば、前記のようなローラ状体又は回動しない非回動体であって中心軸線(回動し得るものの場合は回動軸線)が揺動腕体の揺動軸線に平行状をなすものを挙げることができる。
【0054】
揺動腕体による揺動挟圧体の支持は、揺動軸線を共通とする一対の揺動腕体(好ましくは、両揺動腕体が一体状をなすもの、或いは、両揺動腕体が揺動挟圧体を介して一体状をなすもの)により行うものとすることができる。揺動挟圧体が揺動腕体の揺動軸線に平行状をなす軸線に沿うものである場合、その軸線方向における両端部において揺動挟圧体の支持を行うことが好ましい。
【0055】
固定挟圧体が揺動腕体の揺動軸線に平行状をなす軸線に沿うものである場合、その軸線方向における両端部において固定挟圧体の支持を行うことが好ましい。
【0056】
(1-3) 揺動挟圧体は、所定水平方向における他方の側に固定的に位置する固定挟圧体から最も離れた原位置と、固定挟圧体に接する又は近接する挟圧位置の間で揺動軸線のまわりに揺動し得る。
【0057】
揺動腕体に対しては、揺動挟圧体が原位置へ復元する復元付勢力(例えば、ねじりコイルばね、引っ張りコイルばね、圧縮コイルばね、その他の弾性体による復元付勢力)が、直接又は間接に加えられている。
【0058】
揺動挟圧体が原位置よりも所定水平方向における一方の側へ揺動することを防ぐには、例えば、揺動挟圧体又は揺動腕体を原位置又は原位置に対応する位置で受止するための原位置側受止部を有するものとすることができる。
【0059】
また、揺動挟圧体が挟圧位置よりも所定水平方向における他方の側へ揺動することを防ぐには、例えば、揺動挟圧体を固定挟圧体で受止するか、又は、揺動挟圧体又は揺動腕体を挟圧位置又は挟圧位置に対応する位置で受止するための挟圧位置側受止部を有するものとすることができる。
【0060】
(2) 押下部
【0061】
(2-1) 押下部は、所定水平方向における他方の側における固定挟圧体よりも下方に位置し、例えばペダル状部分などの踏下部とすることができるが、これに限るものではない。
【0062】
(2-2) 押下部は、上下(垂直状に限らず、直線状に限らない)に移動し得、上位置(一般的には最上位置)にある場合は揺動挟圧体は原位置に位置し、下位置(一般的には最下位置)にある場合は揺動挟圧体は挟圧位置に位置するよう、揺動腕体における揺動軸線と揺動挟圧体の間に設けられた所定の連繋位置と、連繋体を介して連繋している。
【0063】
連繋体は、例えば十分な耐久性を有する剛性的な材料により形成することができる。
【0064】
(2-3) 揺動挟圧体が原位置に位置し押下部が上位置にある状態において、その押下部を押下することにより、揺動腕体は連繋体を介して所定水平方向における他方の側へ引かれて順方向に回動し、揺動挟圧体は挟圧位置へ向かって移動する。
【0065】
押下部が下位置に押下されて揺動挟圧体が挟圧位置に位置している状態において、その押下部の押下を解除すると、揺動腕体は復元付勢力により逆方向に回動し、揺動挟圧体は原位置へ向かって移動する
【0066】
揺動挟圧体が挟圧位置又は原位置と挟圧位置の間に位置する状態において押下部に押下力が加わっていない場合は、他に障害等がない限り、揺動挟圧体は原位置へ復元する。
【0067】
(2-4) 揺動腕体における揺動軸線と揺動挟圧体の間に設けられた所定の連繋位置の距離は、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置(揺動軸線に対し垂直な面における揺動挟圧体の中心位置であって、例えば、揺動挟圧体が揺動軸線に平行な回動軸線のまわりに回動し得るローラ状体である場合のその回動軸線)の距離の85乃至100%(例えば88乃至98%)である。連繋位置が揺動挟圧体に十分に近い位置であるため、押下部を押下することによって揺動挟圧体により固定挟圧体との間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。
【0068】
揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置を結ぶ線と連繋体の軸線の角度は、揺動挟圧体が挟圧位置にある状態において55乃至90度(例えば55乃至85度)、好ましくは60乃至90度(例えば60乃至85度)とすることができ、また、揺動挟圧体が原位置にある状態において60乃至90度(例えば60乃至85度)、好ましくは70乃至90度(例えば70乃至85度)とすることができる。特に揺動挟圧体が挟圧位置にある状態において、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置を結ぶ線と連繋体の軸線の角度が十分に大きい(90度に近い)ことにより、押下部を押下することによって揺動挟圧体により固定挟圧体との間に挟圧対象物を挟圧する効率が高まる。
【0069】
また、揺動軸線に垂直な面において、挟圧位置における揺動挟圧体の中心位置と固定挟圧体の中心位置を結ぶ線と、揺動挟圧体の中心位置の軌跡のうち揺動挟圧体の挟圧位置における接線がなす角度は、挟圧効率を良好なものとする上で0乃至45度であるものとすることができる。挟圧効率を高める上で、好ましくは0乃至30度、より好ましくは0乃至15度、更に好ましくは0乃至10度である。
【0070】
(2-5) このような構成を、揺動挟圧体を原位置から挟圧位置に揺動させる上で押下部が下方へ移動することを要する高さを可及的に小さくして(すなわち、挟圧装置全体の高さをできるだけ小さくして安定性を高め且つコンパクト化しつつ両挟圧体間に十分な挟圧力が得られるようにして)実現する上で、所定水平方向において、原位置の揺動挟圧体の中心位置は、揺動腕体の揺動軸線と同等であるか又は揺動軸線よりも固定挟圧体側に位置するものとすることが好ましい。例えば、揺動軸線を中心として垂直上方から原位置における揺動挟圧体の中心位置までの中心角(揺動軸線に垂直な面における中心角)が0度乃至固定挟圧体側へ20度(好ましくは固定挟圧体側へ5乃至15度)とすることができる。なお、この場合、揺動腕体における揺動軸線と揺動挟圧体の間に設けられた所定の連繋位置の距離は、挟圧装置全体の高さをできるだけ小さくして安定性を高め且つコンパクト化しつつ両挟圧体間に必要な挟圧力が得られるようにする上で、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置の距離の70乃至100%とすることもできる。
【0071】
(3) 洗浄部
【0072】
(3-1) 洗浄部は、上方に開口する開口部を有し、水を溜めてモップのモップ糸部等の拭部を洗浄し得るもの、例えば平面視において方形状をなすバケツ状のものとすることができるが、これに限るものではない。
【0073】
洗浄部の材料は合成樹脂が好適である。
【0074】
(3-2) 洗浄部の高さ、幅、奥行は、用途に応じたものとすることができる。コンパクトで安定性の良いものとするには、高さはできるだけ低いことが望ましい。
【0075】
(3-3) 揺動挟圧体と固定挟圧体は、それぞれ、洗浄部の上方に開口する開口部又はその付近に位置するように設けることが望ましい。
【0076】
固定挟圧体は、所定水平方向における他方の側に固定的に位置するように設ける。
【0077】
揺動挟圧体は、所定水平方向における一方の側の下方において洗浄部に支持された揺動軸線を有する揺動腕体により揺動可能に支持されたものとすることができる。
【0078】
揺動挟圧体は原位置から挟圧位置に向かって全体として下降するものとすることができる。その場合洗浄部は、例えば、揺動挟圧体が揺動し得るようにするために、開口部縁部のうち所定水平方向に直交する方向の縁部が所定水平方向における他方の側に向かって下降傾斜するものとすること、又は、洗浄部外壁にスリットが設けられ、そのスリットを介して揺動挟圧体が揺動腕体により支持されている場合は、そのスリットが揺動挟圧体の揺動が可能なように所定水平方向における他方の側に向かって下降傾斜するものとすることができる。
【0079】
連繋体のうち少なくとも所定の連繋位置から最も離隔した部分は、所定水平方向の他方の側における洗浄部の外部に位置するものとすることができる。これにより、揺動軸線と揺動挟圧体の中心位置を結ぶ線と連繋体の角度を前記のような角度となし易い。
【0080】
押下部は、所定水平方向における他方の側における固定挟圧体よりも下方における、例えば洗浄部の外壁面部に設けた上下方向の溝状凹部に位置するものとすることができる。
【0081】
押下部が上位置にあって揺動挟圧体が原位置に位置する状態において、揺動挟圧体と固定挟圧体の間を通じて上方からモップのモップ糸部等の拭部を洗浄部に溜めた水又はその他の液体に浸して洗浄し、洗浄後に拭部を引き上げる際に押下部を押下して揺動挟圧体を挟圧位置へ移動させることにより拭部を揺動挟圧体と固定挟圧体の間に挟圧しつつ引き上げることによって、拭部を搾水することができる。
【符号の説明】
【0082】
A 洗浄部
A1 上方開口部
A2 所定縁部
A3 前壁部
A4 溝状凹部
C 受止突部
D 押下部
E 連繋体
F 固定挟圧体
F1 軸体
H 把手
L 連繋位置
M 揺動腕体
M1 固定軸体
Ma 揺動軸線
P 挟圧装置
S 揺動挟圧体
S1 軸体
T 原位置
U 挟圧位置
W コイルばね