(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】サプライチェーンにおけるリスク識別
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220701BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017099112
(22)【出願日】2017-05-18
【審査請求日】2020-05-12
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギリッシュ ビー.シェノイ
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0120373(US,A1)
【文献】特表2015-528946(JP,A)
【文献】特開2014-199680(JP,A)
【文献】特開2006-040039(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104412283(CN,A)
【文献】特開2015-207086(JP,A)
【文献】特表2003-532234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンネットワークをモデル化するコンピュータ実施方法であって、
サプライチェーンネットワークのビジュアルモデルを生成し、メモリ内に記憶するステップであって、前記生成されたビジュアルモデルは、(i)前記サプライチェーンネットワーク内の物理的サイトをグラフィカルに表す1または複数の論理ステーションと、(ii)前記表された物理的サイト間における材料の輸送をグラフィカルに表す1または複数の論理トランジットとを含む、該ステップと、
物理的サイトをグラフィカルに表す与えられた論理ステーションごとに、プロセッサを使用して、
前記与えられた論理ステーションと関連付けられたリスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについてのリスク値を識別するステップであって、前記リスクカテゴリは、モデル化された物理的サイト内
に2つ以上の物理的領域間の資源使用および流れに関連付けられた少なくとも1つの
リスクを含み、
前記物理的サイト内の前記2つ以上の物理的領域は、(i)入荷エリア、(ii)在庫エリア、(iii)製造エリア、(iv)組み立てエリア、(v)倉庫エリア、(vi)出荷エリアのうちの2つ以上を含み、(a)前記与えられた論理ステーションによって表される前記物理的サイトと、(b)前記与えられた論理ステーションへと流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理ステーションによって表される各物理的サイトと、(c)前記流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理トランジットによって表される各輸送とに関連する物理的条件に基づいて、前記リスク値を決定する、該ステップと、
前記与えられた論理ステーションの前記リスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値を視覚的に比較するグラフィカル表現を生成するステップであって、前記グラフィカル表現は、前記ビジュアルモデル内の前記与えられた論理ステーションにおいて表示される、該ステップと、
前記リスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値に基づいて、前記与えられた論理ステーションについての総リスク値を決定するステップであって、
(i)前記決定された総リスク値を、リスク許容閾値からの前記決定された総リスク値の確率的距離を指定する許容範囲のセットと比較すること
と、および(ii)前記決定された総リスク値が含まれる前記許容範囲のセットの所与の範囲を識別することと、に基づいて、前記決定された総リスク値の視覚的インジケーションを指定し、前記指定された視覚的インジケーションは、前記ビジュアルモデル内の前記与えられた論理ステーションにおいて提示される、該ステップと
を実施するステップと、
それぞれの論理ステーションに前記生成されたグラフィカル表現を有し、それぞれの論理ステーションに前記指定された視覚的インジケーションを有する、前記ビジュアルモデルを、コンピュータスクリーンビュー内に表示するステップであって、前記表示されたビジュアルモデルは、前記モデル化されたサプライチェーンネットワーク内におけるリスク評価を提供する、該ステップと
を含
み、
前記決定された総リスク値の前記視覚的インジケーションを指定することは、
それぞれの所与の論理ステーションについての前記識別されたリスク値および前記総リスク値を使用して、前記モデル化されたサプライチェーンネットワーク内の関連するリスクを最小化するように、前記サプライチェーンネットワークの前記ビジュアルモデル内の前記1または複数の論理ステーションおよび前記1または複数の論理トランジットを更新することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記リスクカテゴリのセットは、環境リスク、調達リスク、配送リスク、計画リスク、および生産リスクのうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環境リスクカテゴリ、調達リスクカテゴリ、配送リスクカテゴリ、および計画リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイトのジオロケーションに基づいたリスクを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記配送リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイト間における材料の前記輸送についての方法に基づくことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記生産リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイトにおける生産プロセスに基づくことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記指定された視覚的インジケーションは、赤色、緑色、および黄色のうちの少なくとも1つを含む色を表示し、表示される前記色は、前記決定された総リスク値と前記許容範囲のセットと
前記識別された所与の範囲との比較に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1または複数の論理ステーションは、供給者サイト、生産サイト、在庫サイト、流通サイト、貯蔵サイト、小売りサイト、および顧客サイトのうちの少なくとも1つを表すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記識別されたリスク値および前記決定された総リスク値は、フォルトツリー解析を使用して、前記プロセッサによって確率的に計算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
与えられた論理ステーションについての前記識別されたリスク値に基づいて、各流れ下るサプライチェーンパスによって前記与えられた論理ステーションに対して与えられる確率的リスクを決定することと、前記それぞれのサプライチェーンパスにおける前記決定された確率的リスクを、前記表示されたビジュアルモデル内に視覚的に示すこととをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記与えられた論理ステーションに最も高い確率的リスクを与えるクリティカルなサプライチェーンパスを決定することと、前記それぞれのサプライチェーンパスにおける前記それぞれの最も高い確率的リスクを、前記ビジュアルモデル内に視覚的に示すこととをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サプライチェーンネットワークをモデル化するためのコンピュータシステムであって、
サプライチェーンネットワークのビジュアルモデルを表示するように構成されたユーザインターフェースであって、前記ビジュアルモデルは、(i)前記サプライチェーンネットワーク内の物理的サイトをグラフィカルに表す1または複数の論理ステーションと、(ii)前記表された物理的サイト間における材料の輸送をグラフィカルに表す1または複数の論理トランジットとを含む、ユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースおよび関連するコンピュータメモリに通信可能に結合された少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ユーザインターフェース上に表示するための前記サプライチェーンネットワークの前記ビジュアルモデルを生成し、前記コンピュータメモリ内に維持することを行うように構成され、
物理的サイトをグラフィカルに表す前記1または複数の論理ステーションのうちの与えられた論理ステーションごとに、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記与えられた論理ステーションと関連付けられたリスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについてのリスク値を識別することであって、前記リスクカテゴリは、モデル化された物理的サイト内
に2つ以上の物理的領域間の資源使用および流れに関連付けられた少なくとも1つの
リスクを含み、
前記物理的サイト内の前記2つ以上の物理的領域は、(i)入荷エリア、(ii)在庫エリア、(iii)製造エリア、(iv)組み立てエリア、(v)倉庫エリア、(vi)出荷エリアのうちの2つ以上を含み、(a)前記与えられた論理ステーションによって表される前記物理的サイトと、(b)前記与えられた論理ステーションへと流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理ステーションによって表される各物理的サイトと、(c)前記流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理トランジットによって表される各輸送とに関連する物理的条件に基づいて、前記リスク値を決定する、該識別することと、
前記与えられた論理ステーションの前記リスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値を視覚的に比較するグラフィカル表現を生成することであって、前記グラフィカル表現は、前記ビジュアルモデル内の前記与えられた論理ステーションにおいてに表示される、該生成することと、
前記リスクカテゴリのセット内の各リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値に基づいて、前記与えられた論理ステーションについての総リスク値を決定することであって、
(i)前記決定された総リスク値を、リスク許容閾値からの前記決定された総リスク値の確率的距離を指定する許容範囲のセットと比較すること
と、および(ii)前記決定された総リスク値が含まれる前記許容範囲のセットの所与の範囲を識別することと、に基づいて、前記決定された総リスク値の視覚的インジケーションを指定し、前記指定された視覚的インジケーションは、前記ビジュアルモデル内の前記与えられた論理ステーションにおいて提示される、該決定することと
を行うように構成され、
それぞれの論理ステーションに前記生成されたグラフィカル表現を有し、それぞれの論理ステーションに前記指定された視覚的インジケーションを有する、前記ビジュアルモデルを、前記ユーザインターフェース上に表示することであって、前記表示されたビジュアルモデルは、前記モデル化されたサプライチェーンネットワーク内におけるリスク評価を提供する、該表示すること
を行うように構成され、
前記決定された総リスク値の前記視覚的インジケーションを指定することは、
それぞれの所与の論理ステーションについての前記識別されたリスク値および前記総リスク値を使用して、前記モデル化されたサプライチェーンネットワーク内の関連するリスクを最小化するように、前記サプライチェーンネットワークの前記ビジュアルモデル内の前記1または複数の論理ステーションおよび前記1または複数の論理トランジットを更新することを含むことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項12】
リスクカテゴリの前記セットは、環境リスク、調達リスク、配送リスク、計画リスク、および生産リスクのうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータシステム。
【請求項13】
前記環境リスクカテゴリ、調達リスクカテゴリ、配送リスクカテゴリ、および計画リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイトのジオロケーションに基づいたリスクを含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピュータシステム。
【請求項14】
前記配送リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイト間における材料の前記輸送についての方法に基づくことを特徴とする請求項12に記載のコンピュータシステム。
【請求項15】
前記生産リスクカテゴリについての前記識別されたリスク値は、前記表された物理的サイトにおける生産プロセスに基づくことを特徴とする請求項12に記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記指定された視覚的インジケーションは、赤色、緑色、および黄色のうちの少なくとも1つを含む色を表示し、表示される前記色は、前記決定された総リスク値と前記許容範囲のセットと
前記識別された所与の範囲との比較に基づくことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
前記1または複数の論理ステーションは、供給者サイト、生産サイト、在庫サイト、流通サイト、小売りサイト、および顧客サイトのうちの少なくとも1つを表すことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータシステム。
【請求項18】
前記識別されたリスク値および前記決定された総リスク値は、フォルトツリー解析を使用して、前記プロセッサによって確率的に計算されることを特徴とする請求項11に記載のコンピュータシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
与えられた論理ステーションについての前記識別されたリスク値に基づいて、各流れ下るサプライチェーンパスによって前記与えられた論理ステーションに対して与えられる確率的リスクを決定し、
前記それぞれのサプライチェーンパスにおける前記決定された確率的リスクを、前記ユーザインターフェース上の前記ビジュアルモデル内に視覚的に示し、
前記与えられた論理ステーションに最も高い確率的リスクを与えるクリティカルなサプライチェーンパスを決定し、
前記それぞれのサプライチェーンパスにおける前記それぞれの最も高い確率的リスクを、前記ユーザインターフェース上の前記表示されたビジュアルモデル内に視覚的に示すことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータシステム。
【請求項20】
コンピュータに、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項21】
請求項20記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サプライチェーンにおけるリスク識別に関し、特に、サプライチェーンネットワーク内のリスクを識別し、評価する、コンピュータシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グローバル製造企業では、産出される製品は、複数の製造された材料および未加工の材料から生産されてよく、複数の製造された材料の各々は、同様に、他の製造された材料および未加工の材料のフローから生産されてよい。これらの企業では、材料のこのフローは、一般に、サプライチェーンネットワークとして表される。サプライチェーンネットワークは、一般に、供給者サイト、製造サイト、保管サイト、流通サイト、および小売りサイトなど、材料のフローに参加する各物理的ロケーション(サイト)を含む。サプライチェーンネットワークは、一般に、これらのサイト間において材料を運ぶために使用される輸送も含む。既存のサプライチェーンモデル化ソリューションの大多数は、サプライチェーンネットワークを表形式で表すが、それは、特に多層サプライチェーンネットワークを表す場合、ユーザがサプライチェーンネットワーク内に含まれるサイトおよび輸送の完全なチェーンを見ようと試みるときに、ビジビリティの難しさを引き起こす。加えて、先行するサプライチェーンモデル化ソリューションは、これらのソリューションによって入手可能なリスク関連データが制限されることに一部起因して、各表されたサイトおよびこれらの表されたサイト間における表された輸送と関連付けられたリスクなど、表されたサプライチェーンネットワーク内の材料のフローと関連付けられたリスク(不確実性)を識別せず、または評価しない。そのため、これらの先行するサプライチェーンモデル化ソリューションは、表されたサプライチェーンネットワーク内の材料のフローと関連付けられたリスクのビジビリティを提供しない。したがって、表されたサプライチェーンネットワーク内の材料のフローと関連付けられたリスクのビジビリティを提供するサプライチェーンモデル化ソリューションに対する必要性が、グローバル製造企業において存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Manuj et al., “Global supply chain risk management strategies,” Journal of Business Logistics, Vol.29, No.1, pages 133-156(2008)
【文献】“Quantified Risk Assessment Techniques - Part 3 Fault Tree Analysis - FTA,” The Institute of Engineering and Technology, Health & Safety Briefing No.26c(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、サプライチェーンネットワーク内のリスクを識別し、評価する、改善されたコンピュータシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、サプライチェーンネットワークと関連付けられたリスク(不確実性)を含む、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデルを含む、モデル化ソリューションを提供することによって、先行するサプライチェーンモデル化ソリューションの制限に対処する。ビジュアルモデルは、論理ステーションと呼ばれる物理的サイトをノードとして示し、論理トランジットと呼ばれる物理的サイト間における材料の物理的輸送をリンクまたはパスとして示す。さらに、本発明のモデル化ソリューションは、それぞれの物理的サイトから収集された供給データおよび生産データを含む、拡張サプライチェーン関連データ、ならびに外部ソース(例えば、外部アグリゲータ)から取得された、ロケーション関連データ(例えば、物理的サイトの環境的条件、地政学的条件、経済的条件、および技術的条件など)を入手する。本発明のモデル化ソリューションは、このサプライチェーン関連データを入手して、各示された物理的サイトと関連付けられたリスク、および表されたサプライチェーンネットワークの各パス上の材料のフローと関連付けられたリスクを識別し、評価する。本発明のモデル化ソリューションは、ビジュアルモデルを構成するそれぞれの論理ステーションおよび論理トランジットにおける識別されたリスクを提示して、サプライチェーンネットワーク全体と関連付けられたリスク(ならびにリスクに寄与する特定の物理的サイトおよび物理的サイト間における特定の物理的輸送)のビジビリティを提供する。
【0006】
特に、本発明は、サプライチェーンネットワークをモデル化するためのコンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法に関する。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、リスクを決定し、提示するための、ユーザインターフェースおよびコンピュータメモリに通信可能に結合された少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、最初に、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデルを生成し、コンピュータメモリ内に記憶する。生成されたビジュアルモデルは、(i)サプライチェーンネットワーク内の物理的サイトをグラフィカルに表す1または複数の論理ステーションと、(ii)表された物理的サイト間における材料の輸送をグラフィカルに表す1または複数の論理トランジットとを含む。いくつかの実施形態では、論理ステーションは、供給者サイト、生産(または製造)サイト、在庫サイト、保管サイト、流通サイト、小売りサイト、および顧客サイトのうちの少なくとも1つをグラフィカルに表す。
【0007】
サプライチェーンネットワークのそれぞれの物理的サイトをグラフィカルに表す与えられた論理ステーションごとに、コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、それぞれの物理的サイトと関連付けられたリスクカテゴリのセットについてのリスク値を識別する。例示的な実施形態では、リスクカテゴリのセットは、環境リスク、調達リスク、配送リスク、計画リスク、および生産リスクのうちの少なくとも1つを含む。与えられた論理ステーションごとに、コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、(a)与えられた論理ステーションによって表される物理的サイトと、(b)与えられた論理ステーションへと流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理ステーションによって表される物理的サイトと、(c)流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理トランジットによって表される各輸送とに関連する物理的条件を決定することに基づいて、リスク値を識別する。これらの実施形態のいくつかでは、環境リスク、調達リスク、配送リスク、および計画リスクについての識別されたリスク値は、それぞれのサイトのジオロケーションに基づいて決定される。これらの実施形態のいくつかでは、配送リスクについての識別されたリスク値は、表された物理的サイト間における材料の輸送のために使用される方法に基づく。これらの実施形態のいくつかでは、生産リスクについての識別されたリスク値は、表された物理的サイトにおける生産プロセスに基づく。例示的な実施形態では、識別されたリスク値は、フォルトツリー(fault tree)解析を使用して、確率的に計算される。
【0008】
与えられた論理ステーションごとに、コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、リスクカテゴリのセットについての識別されたリスク値を視覚的に比較するグラフィカル表現(または他のインジケーション)を生成し、それは、与えられた論理ステーションにおいて表示される。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、リスクカテゴリのセットについての識別されたリスク値に基づいて、与えられた論理ステーションについての総リスク値も決定する。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、決定された総リスク値をリスク許容閾値と比較することに基づいて、決定された総リスク値の視覚的インジケーションを指定し、それは、与えられた論理ステーションにおいて提示される。いくつかの実施形態では、指定された視覚的インジケーションは、決定された総リスク値とリスク許容閾値との比較に基づいて、赤色、緑色、および黄色などの色を表示する。これらの実施形態のいくつかでは、コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、決定された総リスク値とリスク許容閾値との比較に基づいて、赤色、緑色、または黄色を表示する交通信号として、指定された視覚的インジケーションを示す。例示的な実施形態では、決定された総リスク値は、フォルトツリー解析を使用して、確率的に計算される。
【0009】
論理ステーションごとの識別されたリスク値に基づいて、コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、各流れ下るサプライチェーンパスによって与えられた論理ステーションに与えられる確率的リスクを決定してもよい。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、ビジュアルモデル内のそれぞれのサプライチェーンパスにおける決定された確率的リスクを視覚的に示して(例えば、指定された色で強調して)よい。いくつかの実施形態では、決定された確率的リスクは、与えられた論理ステーションに最も高い確率的リスクを与えるクリティカルなサプライチェーンパスを決定することを含んでよい。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、ビジュアルモデル内のそれぞれのサプライチェーンパスにおける決定された最も高い確率的リスクを視覚的に示して(例えば、指定された色で強調して)よい。コンピュータシステムおよびコンピュータ実施方法は、さらに、それぞれの論理ステーションに生成されたグラフィカル表現を有し、それぞれの論理ステーションに指定された視覚的インジケーションを有する、ビジュアルモデルを、ユーザインターフェース(コンピュータスクリーンビュー)上に表示し、前記表示されたビジュアルモデルは、モデル化されたサプライチェーンネットワーク内におけるリスク評価を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
特許または出願ファイルは、カラー作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開のコピーは、要求があれば、必要な手数料を支払うことによって、特許庁によって提供される。
【0011】
上述されたことは、添付の図面において図説される、本発明の例示的な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかであり、図面において、同様の参照文字は、様々な図のいずれにおいても、同じ部分を参照する。図面は、必ずしも実寸に比例しておらず、代わりに、本発明の実施形態を図説する際には、強調が施される。
【0012】
【
図1】本発明の実施形態における、サプライチェーンネットワークについてのリスクの一般的カテゴリを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデルを提供する例示的なモデル化システムを示す図である。
【
図3A】
図2の例示的なモデル化システムによって提供されるサプライチェーンネットワークのビジュアルモデルにおける、リスクの識別および評価を示す図である。
【
図3B】
図2の例示的なモデル化システムによって提供されるサプライチェーンネットワークのビジュアルモデルにおける、リスクの識別および評価を示す図である。
【
図3C】
図2の例示的なモデル化システムによって提供されるサプライチェーンネットワークのビジュアルモデルにおける、リスクの識別および評価を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態における、サプライチェーンネットワークをモデル化するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の少なくとも1つの実施形態における、サプライチェーンネットワークを視覚的にモデル化し、サプライチェーンネットワークにおけるリスクを識別し、評価するための、コンピュータ(またはデジタル処理)システムのブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態がその中で実施されてよい、例示的なコンピュータネットワーク環境の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の例示的な実施形態の説明は、以下の通りである。本明細書で引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示は、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【0014】
サプライチェーンネットワークにおけるリスク
サプライチェーンネットワークは、グローバル製造企業のための材料フローおよび資源使用を組織化および構造化するために使用されてよい。特に、サプライチェーンネットワークは、完成した最終製品を生産し、配送するための、グローバル製造組織についての材料のエンドツーエンドフロー(例えば、材料の明細書)および資源の使用をモデル化する。例えば、サプライチェーンネットワークは、外部供給者サイトから提供された未加工の材料のフローを、すなわち、外部供給者製造サイト(例えば、相手先商標製造会社(OEM))におけるこれらの未加工の材料からの部品材料の生産に始まり、組織の製造サイトにおける部品材料からの完成した最終製品の生産、その後の、貯蔵サイト、流通サイト、および小売りサイトを通る完成した最終製品の顧客への配送に到るフローをモデル化してよい。これらの異なるサイトは、鉱山、農場、精錬所、プラント/工場、ドック/ターミナル/ポート、倉庫、流通センタ、および小売り店などを含んでよい、物理的ロケーションである。サプライチェーンネットワークは、サプライチェーンネットワーク内のモデル化されたサイト間における輸送もモデル化する。モデル化された輸送は、トラック、列車、船、および飛行機などを含む、異なる種類の物理的乗物を含んでよく、それらは、モデル化された輸送中にそれぞれの材料を保持するための異なる作り付け装備を備えるように構成されてよい。
【0015】
さらに、与えられたモデル化されたサイトについて、サプライチェーンネットワークは、与えられたモデル化されたサイト内において部品材料または完成した最終製品を生産するための、内部的な材料のフローおよび資源の使用をモデル化してもよい。例えば、サプライチェーンネットワークは、(1または複数の他のモデル化されたサイトから部品材料を入荷する)モデル化されたサイト内の入荷エリアに始まり、(入荷された部品材料の在庫登録を行う)モデル化されたサイト内の在庫エリア、(在庫登録された部品材料から配送可能な部品材料または最終製品を製造し、および/または組み立てる)製造エリアおよび組み立てエリアのうちの少なくとも一方、(製造された/組み立てられた配送可能な部品材料または最終製品を貯蔵する)倉庫エリア、(製造された/組み立てられた配送可能な部品材料または最終製品を出荷する)出荷エリアに到る、内部的な材料のフローをモデル化してよい。サプライチェーンネットワークは、サプライチェーンネットワークにおけるモデル化されたサイト内のこれらのモデル化された物理的エリア間における輸送もモデル化する。モデル化された輸送は、フォークリフト、コンベヤベルト、および貨物運搬車などを含む、異なる種類の物理的乗物を含んでよく、それらは、モデル化された輸送中にそれぞれの材料を保持するための異なる作り付け装備を備えるように構成されてよい。
【0016】
サプライチェーンネットワークでは、組織の完成した最終製品を供給し、生産し、配送することに関する、各モデル化されたサイトおよびモデル化された輸送と関連付けられた様々な不確実性(リスク)が存在する。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、非特許文献1を参照されたい。いくつかの実施形態では、不確実性(リスク)は、与えられたモデル化されたサイト内の特定のモデル化されたエリアと特に関連付けられてよい。これらの様々な不確実性は、サプライチェーンネットワーク内の各それぞれのモデル化されたサイトと関連付けられた、リスクの様々な相互に関連したカテゴリに組織化されてよい。リスクの様々な関連したカテゴリは、
図1に示されるように、供給関連リスクカテゴリ110と、需要関連リスクカテゴリ120と、運営関連リスクカテゴリ130とを含んでよい。供給関連リスクカテゴリ110は、モデル化されたサイトにおける供給の途絶または物価の上昇を引き起こす出来事の可能性から成る。供給関連リスクカテゴリ110は、調達リスクを含んでよく、それは、組織の外部の供給者(または供給製造会社)から材料を調達することに関連付けられた不確実性を識別する。例えば、外部供給者は、組織の営業ロケーションから遠いジオロケーション(例えば、遠い外国)に位置付けられてよく、経済的および政治的な風潮は、組織の営業ロケーションのそれとは異なる。そのため、調達リスクは、供給者サイトのジオロケーションに関連する、政治不安、貿易制限、テロリズム、汚職、盗難、非識字、貿易活動、および海賊などを含む、地政学的要因から成ってよい。調達リスクは、供給者サイトのジオロケーションに関連する、需要ショック、価格変動、通貨変動、およびエネルギー不足などを含む、地理経済的要因を考慮してもよい。調達リスクは、供給者サイトのジオロケーションに関連する、ネットワークインフラストラクチャ障害、ならびに情報および通信技術(ICT)混乱などを含む、地理技術的要因をさらに考慮してよい。
【0017】
環境リスクは、外部供給者サイトと関連付けられた、別の同様の供給者関連リスクカテゴリ110である。環境リスクは、外部供給者サイトの環境的条件と関連付けられた不確実性を識別し、外部供給者サイトのジオロケーションにおいて発生したことがある(または発生することが予想される)自然災害、異常気象、およびパンデミックなどを含む、環境的要因から成ってよい。供給者関連リスクカテゴリ110は、モデル化されたサイト間におけるモデル化された輸送と関連付けられたリスクをさらに含んでよく、それは、配送リスクカテゴリ内で識別されてよい。配送リスクカテゴリは、2つのモデル化されたサイト間における輸送の1または複数の方法(例えば、貨物列車、船、飛行機、およびトラックなど)、ならびにそれぞれの1または複数の輸送方法を使用して材料を輸送するために必要とされる作り付け装備(例えば、タンク、冷却システム、加熱システム、リフト、およびラックなど)と関連付けられたリスクから成る。配送リスクカテゴリは、貿易制限、盗難、および海賊などの地政学的要因と、国境での遅延、およびエネルギー不足などの地理経済的要因と、運送中の通信途絶などの地理技術的要因と、環境的要因とを含む、輸送のジオロケーションと関連付けられたリスクから成ってもよい。
【0018】
リスクの様々なカテゴリは、顧客が最終製品を購入する可能性、または顧客によって購入される見込みの最終製品の数量に影響する可能な出来事から成る、需要関連リスクカテゴリ120を含んでもよい。需要関連リスクカテゴリ120は、計画リスクを含んでよく、それは、完成した製品についての製造計画の一環としての、モデル化されたサイトから契約された、材料または材料の量と関連付けられた不確実性を識別する。計画リスクは、季節性、競合企業の新製品、最終製品に対する長続きしない熱狂、および需要の歪みなどの要因から成ってよい。リスクの様々なカテゴリは、モデル化された製造サイトの内部における製造プロセスおよび資源使用における不確実性から成る、運営関連リスクカテゴリ130をさらに含んでよい。運営関連リスクカテゴリ130は、生産リスクを含んでよく、それは、製造プロセスの故障時の中断または遅延のリスクを識別し、モデル化されたサイトにおける、処理能力、処理変動、処理技術の変化、および処理コストの変化などの不確実性要因から成る。本発明の実施形態は、サプライチェーンネットワークにおけるリスク/不確実性を識別し、評価するために使用されてよい他の任意のリスクカテゴリおよび不確実性要因とともに、これらのリスクカテゴリおよび不確実性要因のうちのいくつかまたはすべてを適用してよい。
【0019】
リスクの各カテゴリに関連する不確実性要因は、リスクのそれぞれのカテゴリについてのリスクレベルを評価する確率値を決定するために使用されてよい。いくつかの実施形態では、不確実性要因は、定量化されたリスク評価(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、非特許文献2を参照されたい)を行って、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての確率値を決定するために、フォルトツリー解析の一部として、適用されてよい。他の実施形態では、不確実性要因(または他のそのような要因もしくはガイドライン)は、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての確率値を決定するために、他の任意のリスク評価技法または計算の一部として、適用されてよい。いくつかの実施形態では、リスクの一般的カテゴリ(供給関連リスクカテゴリ110、需要関連リスクカテゴリ120、および運営関連リスクカテゴリ130)に関連する不確実性要因が、与えられたサイトに関するリスクのこれらそれぞれの一般的カテゴリについての確率値を決定するために、適用されてよい。他の実施形態では、リスクの一般的カテゴリを構成するリスクの特定のカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、計画リスク、配送リスク、および生産リスクなど)に関連する不確実性要因が、与えられたサイトに関するこれら特定のリスクカテゴリについての確率値を決定するために、代わりに適用されてよい。
【0020】
与えられたサイトのリスク評価は、(例えば、サプライチェーンネットワーク内の与えられたサイトへと流れ下るパス内にある)与えられたサイトへの材料フローに影響する1または複数の他のサイトを含んでもよい。これらの実施形態のいくつかでは、不確実性要因は、1つの解析において、与えられたサイトと、与えられたサイトに影響する1または複数の他のサイトとに一緒に適用されて、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての累積確率値を決定してよい。これらの実施形態の他のものでは、不確実性要因は、与えられたサイトと、与えられたサイトに影響する他のサイトの各々とに別々に適用されて、それぞれの物理的サイトごとに別個の確率値を決定してよく、それらは、その後、確率的に計算されて(いくつかの実施形態では、重み付けされて、または他の方法で調整されて)、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての累積確率値を生成する。さらに、いくつかの実施形態では、リスクカテゴリの各々についての不確実性要因が、1つの解析において一緒に適用されて、与えられたサイトについての総確率的リスク値(評価されたリスクのレベル)を確率的に計算してよい。他の実施形態では、それぞれのリスクカテゴリごとに決定された確率値が、計算されて(いくつかの実施形態では、重み付けされて、または他の方法で調整されて)、与えられたサイトについての総確率的リスク値(評価されたリスクのレベル)を生成してよい。
【0021】
サプライチェーンネットワークをモデル化するための例示的なシステム
図2は、本発明の実施形態における、サプライチェーンネットワークにおけるリスクを識別し、評価するためのビジュアルモデル201を提供する、例示的なモデル化システム200である。いくつかの例示的な実施形態では、モデル化システム200は、Dassault SystemsによるDELMIA 3DEXPERIENCE(登録商標)である。
図2の実施形態では、モデル化システム200は、ユーザインターフェースディスプレイ210を含み、それは、インターフェース接続260を介して、処理環境230に通信可能に接続される。
図2では、インターフェース接続260は、有線インターフェースとして示されているが、しかしながら、いくつかの実施形態では、インターフェース接続260は、WiFiまたはBluetoothなどの無線接続であってよい。処理環境230は、少なくともモデル化エンジン234およびリスク定量化エンジン236を構成する、1または複数のプロセッサを備えるように構成されてよい。
【0022】
モデル化エンジン234は、組織のためのサプライチェーンネットワークの計画、設計、分析、実行、および変更を可能にする。具体的には、モデル化エンジン234は、完成した最終製品を生産し、配送するための、組織のためのエンドツーエンド材料フローおよび資源使用を示す、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201を生成し、生成されたビジュアルモデル201を、
図2に示されるように、(インターフェース接続260を介して)ユーザインターフェース210上に表示する。ビジュアルモデル201は、モデル化されたサプライチェーンネットワーク(例えば、多層サプライチェーンネットワーク)にわたるビジビリティおよびトレーサビリティを提供する。モデル化エンジン234は、(有線接続または無線接続であってよい)接続インターフェース235を介して、企業ナレッジベース2155(例えば、DELMIA Apriso(登録商標)およびENOVIA)からなど、コンピュータメモリから、記憶されたサプライチェーンネットワークをロードすることによって、ビジュアルモデル201を生成してよい。モデル化エンジン234は、ユーザ(人間またはシステム)が、(例えば、ビジュアルテンプレートから)新しいサプライチェーンネットワークを生成することを、またはロードされたサプライチェーンネットワークを変更することを可能にすることによって、ビジュアルモデル201を生成してもよい。生成されたビジュアルモデル201では、供給者サイト、供給者製造サイト(OEMサイト)、組織製造サイト、貯蔵サイト、在庫サイト、流通サイト、小売りサイト、および顧客サイトなどを含む、サプライチェーンネットワークの物理的サイトは、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201内にノードとして配置される論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)として視覚的にモデル化される。(
図2に図示されない)いくつかの実施形態では、入荷エリア、在庫エリア、製造エリア、組み立てエリア、貯蔵エリア、彩色および発送エリア、ならびに供給者エリアなどを含む、物理的サイト内の内部物理的エリアも、物理的サイトを表す論理ステーション内の内部論理ステーションとして視覚的にモデル化される。さらに、生成されたビジュアルモデル201では、輸送中にそれぞれの材料を保持するための異なる作り付け装備を用いるように構成された、トラック、列車、船、および飛行機などによる、モデル化された物理的サイト(およびいくつかの実施形態では、物理的サイト内の物理的エリア)間における材料の物理的輸送は、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201内にパスまたはリンクとして配置された、論理トランジット(例えば、論理トランジット212、214)として視覚的にモデル化される。
【0023】
ビジュアルモデル201を生成または変更する際、モデル化エンジン234は、ユーザが、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201内に、論理ステーションをノードとして、論理トランジットをパスとして、配置することを可能にする。ユーザは、これらの論理ステーションおよび論理トランジットを、完成した最終製品を生産し、配送するための、組織のためのエンドツーエンド材料フローおよび資源使用を構成するような方法で配置する。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内に、論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)、または論理トランジット(例えば、論理トランジット212、214)を配置するための、ユーザグラフィカルツールを提供する。他の実施形態では、モデル化エンジン234は、ビジュアルモデル201内における論理ステーションまたは論理トランジットの配置を指定するための、構成ファイル、コマンドラインインターフェース、またはデータベースインターフェース(例えば、企業ナレッジベース2155のインターフェース)などの、他のユーザツールを提供してよい。モデル化エンジン234は、さらに、ユーザが、配置された論理ステーションをそれぞれの物理的サイト(もしくは物理的エリア)として、または配置された論理トランジットを2つの論理ステーション間におけるそれぞれの物理的乗物として構成するために、詳細を割り当てることを可能にしてよい。モデル化エンジン234は、同様に、論理ステーションまたは論理トランジットに詳細を割り当てるために、ユーザインターフェース210上でユーザグラフィカルツールを、または上で説明されたような他のツールを提供してよい。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、(例えば、新しい論理ステーションまたは論理トランジットがビジュアルモデル201に追加されたときに)モデル化されたサプライチェーンネットワークにわたる継続的なビジビリティおよびトレーサビリティを提供するために、ユーザインターフェース210上でビジュアルモデル201を継続的に監視して、論理ステーションおよび論理トランジットのサイズ/スケールおよび位置付け/ロケーションを動的に更新してよい。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、モデル化エンジン234が変化したクリティカルな情報を検出または他の方法で決定したときに、それぞれのクリティカルな情報(例えば、リスク)の継続的なビジビリティおよびトレーサビリティを提供するために、ユーザインターフェース210上でビジュアルモデル201を継続的に監視して、ビジュアルモデル201の視覚的効果を動的に更新して(例えば、論理ステーションまたは論理トランジットを色で強調して)よい。
【0024】
論理ステーションについての割り当てられた詳細は、ジオロケーション(例えば、経度、緯度、国、および都市など)、関連する会社名(例えば、会社A1)、サイトの種類(例えば、供給者、OEM供給者、最終製品製造者、倉庫、流通者、および小売り店など)、サイトエリアの種類(入荷エリア、在庫エリア、製造エリア、および組み立てエリアなど)、ならびにサイトと関連付けられた材料(例えば、特定の未加工の材料、部品材料、および完成した最終製品など)などを含んでよい。いくつかの実施形態では、ユーザは、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内の表示された論理ステーションを選択する(例えば、指またはポインティングデバイスをその上にホバリングする)ことによって、割り当てられた詳細を見てよい。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)と関連付けられた会社名を、モデル化システム200を使用もし、モデル化システム200が供給者データおよび生産データのうちの少なくとも一方を収集し、企業ナレッジベース2155内に記憶する会社として認識してよい。これらの実施形態では、モデル化エンジン234は、企業ナレッジベース2155内のこの記憶されたデータを、論理ステーションについての構成された詳細の一部として(接続インターフェース235を介して)参照してもよい。論理トランジット(例えば、論理トランジット212、214)についての構成された詳細は、2つの物理的サイト間における輸送のジオロケーション(例えば、経度、緯度、国、および都市など)、輸送乗物の種類(例えば、トラック、船、飛行機、および列車など)、輸送される材料を運ぶために輸送乗物上に構成された作り付け装備(例えば、タンク、冷却システム、加熱システム、リフト、およびラックなど)、ならびに運ばれる特定の部品(例えば、飛行機の翼部品)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ユーザは、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内の表示された論理トランジットを選択する(例えば、指またはポインティングデバイスをその上にホバリングする)ことによって、構成された詳細を見てよい。
【0025】
ユーザが、配置された論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)または論理トランジット(例えば、論理トランジット212、214)に詳細を割り当てたときに、モデル化エンジン234は、これらの詳細をリスク定量化エンジン236に伝達してよい。その後、リスク定量化エンジン236は、これらの詳細を使用して、配置された論理ステーションによって表されるそれぞれのサイト、または配置された論理トランジットによって表されるそれぞれの輸送と関連付けられたリスクを(例えば、継続的またはリアルタイムに)決定(識別)するためのデータを入手してよい。例えば、リスク定量化エンジン236は、割り当てられた詳細からのそれぞれのサイトまたは輸送のジオロケーションを使用して、環境的条件、地政学的条件、経済的条件、技術的条件、および他の任意のそのような条件など、それぞれのサイトまたは輸送の条件に関するデータを、外部データソース220(例えば、メープルクロフトおよびロイターなどのアグリゲータ)から、インターネットまたは他のグローバルコンピュータネットワーク240上で入手してよい。別の例として、モデル化エンジン234が、生産データは配置された論理ステーションと関連付けられた会社のための企業ナレッジベース2155内に記憶されたと決定した場合、リスク定量化エンジン236は、この生産関連データを、それぞれの会社のための企業ナレッジベース2155から(接続インターフェース235を介して)入手してよい。その後、リスク定量化エンジン236は、リスクカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、計画リスク、配送リスク、および生産リスクなど)のセットと関連付けられた要因に関する入手されたデータを分析して、配置された論理ステーションまたは配置された論理トランジットについてのそれぞれのリスク値(および総リスク値)を決定してよい。
【0026】
それぞれのリスクカテゴリについての決定されたリスク値、および総リスク値は、モデル化システム200によって使用されて、関連するリスク/不確実性を最小化するように、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201を自動的に更新してよい。例えば、決定されたリスクに基づいて、モデル化システム200は、特定の完成した最終製品を最小のリスク/不確実性で生産するために、モデル化されたサプライチェーンネットワークの一部として、未加工の材料および部品材料を供給および製造するためのあるサイト、輸送、およびプロセス(ならびにそれらのネットワーク)を選択または推奨してよい。いくつかの実施形態では、関連するリスク/不確実性に基づいて自動的に更新されたことがあってよいモデル化されたサプライチェーンネットワークは、サプライチェーンネットワーク内でモデル化された物理的サイトもしくは物理的輸送のための制御システムをプログラムするような、または物理的サイトもしくは物理的輸送の運用を制御して、これらの物理的サイトまたは物理的トランジットの運用を達成する他のモデル化システムをプログラムするような形式で(例えば、信号として)出力される。
【0027】
例示的なサプライチェーンネットワークシステムにおけるリスクのモデル化
図3Aないし
図3Cは、
図2の例示的なモデル化システム200によって提供されるようなビジュアルモデル201を使用する、サプライチェーンネットワークの識別および評価を示している。
図3Aは、モデル化エンジン234が、与えられた論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)ごとに、リスク定量化エンジン236によって決定された総確率的リスク値を、(ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内で)グラフィカルに識別する、例示的な実施形態を示している。具体的には、
図3Aでは、モデル化エンジン234は、モデル化エンジン234がユーザインターフェース210上に表示する、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201を生成する。モデル化エンジン234によってユーザインターフェース210上に表示されるようなビジュアルモデル201は、供給者サイトである会社Eを表す論理ステーション211と、供給者製造(OEM)サイトである会社Fおよび組織(会社A1、これは施設1に配置された会社Aを示す)を表す論理ステーション215、213と、組織(会社A4、これは施設4に配置された会社Aを示す)の最終製品製造サイトを表す論理ステーション216とを含む。モデル化エンジン234によってユーザインターフェース210上に表示されるビジュアルモデル201は、論理ステーション211(供給者サイト)と論理ステーション213(OEMサイト)との間における輸送を表す論理トランジット212と、論理ステーション213(OEMサイト)と論理ステーション216(最終製品製造サイト)との間における輸送を表す論理トランジット214とをさらに含む。
【0028】
論理ステーション216について、ビジュアルモデル201は、論理ステーション216によって表される最終製品製造サイト内で配送される最終製品を製造するための材料の内部エンドツーエンドフロー310も、サプライチェーンネットワークの一部として含む。材料の内部エンドツーエンドフロー310に関して、モデル化エンジン234によってユーザインターフェース210上に表示されるようなビジュアルモデル201は、論理ステーション216によって表される最終製品製造サイトの、入荷エリアを表す内部論理ステーション312と、在庫エリアを表す内部論理ステーション314と、組み立てエリアを表す内部論理ステーション316と、彩色および発送エリアを表す内部論理ステーション318とを含む。モデル化エンジン234によってユーザインターフェース210上に表示されるビジュアルモデル201は、内部論理ステーション312(入荷エリア)と内部論理ステーション314(在庫エリア)との間における輸送を表す内部論理トランジット313と、内部論理ステーション314(在庫エリア)と内部論理ステーション316(組み立てエリア)との間における輸送を表す内部論理トランジット315と、内部論理ステーション316(組み立てエリア)と内部論理ステーション318(彩色および発送エリア)との間における輸送を表す内部論理トランジット317とをさらに含む。ビジュアルモデル201は、ビジュアルモデル201内に示される論理ステーションのいくつかまたはすべてについて、材料の内部フロー310を同様に含んでよい。
【0029】
ユーザインターフェース210上に表示されるビジュアルモデル201内に示される論理ステーションごとに、モデル化エンジン234は、リスク定量化エンジン236と通信して、それぞれの論理ステーションと関連付けられたリスクを識別する。例えば、モデル化エンジン234は、リスク定量化エンジン236と通信して、論理ステーション211によって表される供給者サイトについての総リスクを0.0001の確率値(P)であると識別する。具体的には、モデル化エンジン234は、ユーザが、ユーザインターフェース210上で論理ステーション211をサプライチェーンネットワーク内に配置し、表されたサイトのジオロケーションをスウェーデンとして割り当てる(これは論理ステーション211上でのスウェーデン国旗の表示によって示される)など、論理ステーション211に詳細を割り当てることを可能にする。ユーザが、論理ステーション211にジオロケーションを割り当てた場合、モデル化エンジン234は、ジオロケーション情報をリスク定量化エンジン236に伝達してよく、リスク定量化エンジン236は、それを受けて、そのジオロケーションに関するデータを入手して、論理ステーション211によって表されるサイトと関連付けられた不確実性を(例えば、リアルタイムに)決定してよい。すなわち、リスク定量化エンジン236は、外部データソース220(例えば、メープルクロフトおよびロイターなどのアグリゲータ)、または他の任意の公的もしくは私的データソースから、環境的条件、地政学的条件、経済的条件、技術的条件、および他の任意のそのような条件など、ジオロケーション(すなわち、スウェーデン内の特定のジオロケーション)についての条件に関する関連データを入手する。リスク定量化エンジン236は、外部データソース220(例えば、メープルクロフトおよびロイターなどのアグリゲータ)、または他の任意の公的もしくは私的データソースから、市場のトレンドに関する市場データなど、最終製品を取り巻く他の条件に関するデータを入手してもよい。モデル化エンジン234が、また、生産データは論理ステーション211と関連付けられた会社のための企業ナレッジベース2155内に記憶されたと決定した場合、リスク定量化エンジン236は、それぞれの会社のための企業ナレッジベース2155からこの生産関連データも入手する。
図3Aの例示的な実施形態では、論理ステーション211は、企業ナレッジベース2155内に記憶された生産関連データが存在しない、供給者サイトを表す。
【0030】
リスク定量化エンジン236は、(例えば、外部データソース220から取得された)入手されたデータに、リスクの1または複数のカテゴリに関連する不確実性要因を適用して、論理ステーション211によって表されるサイトについて0.0001の確率値(P)を決定する。例えば、リスク定量化エンジン236は、地政学的な不確実性要因(例えば、政治不安、貿易制限、テロリズム、汚職、盗難、非識字、貿易活動、および海賊など)、地理経済的な不確実性要因(例えば、需要ショック、価格変動、通貨変動、およびエネルギー不足など)、ならびに地理技術的な不確実性要因(ネットワークインフラストラクチャ障害、およびICT混乱など)などの、スウェーデン内の供給者サイトロケーションについての調達リスクと関連付けられた不確実性要因を、入手されたデータに適用してよい。リスク定量化エンジン236は、フォルトツリー解析などの確率的解析技法を使用して、これらの不確実性要因のうちの1または複数を適用して、論理ステーション211と関連付けられた調達リスクについての確率値を決定(識別)してよい。リスク定量化エンジン236は、スウェーデン内の供給者のロケーションにおいて発生したことがある(または発生することが予想される)自然災害、異常気象、およびパンデミックなど、スウェーデン内のサイトについての環境リスクと関連付けられた不確実性要因を、入手されたデータに同様に適用して、環境リスクについての確率値を決定してよい。
【0031】
さらに、リスク定量化エンジン236は、これらの供給された材料から生産される最終製品の季節性、競合企業の新製品、最終製品に対する長続きしない熱狂、および需要の歪みなど、論理ステーション211によって表される供給者サイトにおいて供給される材料と関連付けられた計画リスクと関連付けられた不確実性要因を、入手されたデータに適用して、計画リスクについての確率値を決定してよい。その場合、リスクカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、および計画リスク)ごとの決定された値は、確率的に計算されてよく、その際、与えられたカテゴリごとに特定の重みを確率計算に含めて、論理ステーション211についての総リスク値(P=0.0001)を得てよい。いくつかの実施形態では、これらの異なるリスクカテゴリについての不確実性要因は、代わりに、(例えば、フォルトツリー解析または他の確率的解析技法を使用して)一緒に適用されて、論理ステーション211についての総確率値(P=0.0001)を決定してよい。
【0032】
同様に、モデル化エンジン234は、リスク定量化エンジン236と通信して、論理ステーション213によって表されるOEMサイトについての総リスクを、0.0001の確率値(P)であると識別する。リスク定量化エンジン236は、同様に、外部データソース220から、論理ステーション213によって表されるOEMサイトについてのデータを入手してよい。論理ステーション213によって表されるサイトが、供給者製造サイトであっても、会社についての生産データは、企業ナレッジベース2155内で入手可能ではない(しかし、他のOEMサイトについては入手されてよい)。リスク定量化エンジン236は、(論理ステーション211に関して説明されたように)例えば、それぞれの不確実性要因をイタリア内の表されたサイトの入手されたジオロケーションデータに適用することに基づいて、論理ステーション213と関連付けられた調達リスクおよび環境リスクについての確率値を決定してよい。リスク定量化エンジン236は、さらに、(論理ステーション211に関して説明されたように)それぞれの不確実性要因を論理ステーション213によって表されるOEMサイトにおいて製造された材料と関連付けられた入手された市場データに適用することに基づいて、計画リスクについての確率値を決定してよい。論理ステーション213についての調達リスク、環境リスク、および計画リスクについての確率値を決定する際、リスク定量化エンジン236は、論理ステーション211における供給不確実性は、(論理ステーション211からの材料のフローに依存する)論理ステーション213における供給不確実性に影響するので、それぞれの不確実性要因を論理ステーション211に関連する入手されたデータに適用してもよい。
【0033】
加えて、論理ステーション213によって表されるOEMサイトは、(論理トランジット212によって表される輸送を介して)論理ステーション211によって表される供給者サイトから材料を入荷するので、リスク定量化エンジン236は、配送リスクと関連付けられた不確実性要因を、入手されたデータに適用してもよい。すなわち、リスク定量化エンジン236は、2つのサイト間における輸送の方法(例えば、貨物列車、船、飛行機、およびトラックなど)、輸送方法を使用して材料を輸送するために必要とされる作り付け装備(例えば、タンク、冷却システム、加熱システム、リフト、およびラックなど)、ならびに輸送のジオロケーション(例えば、貿易制限、盗難、海賊、国境での遅延、エネルギー不足、および通信途絶など)などの、スウェーデン内の供給者サイト(論理ステーション211)からイタリア内のOEMサイト(論理ステーション213)に供給される材料の輸送(論理トランジット212)と関連付けられた不確実性要因を、入手されたデータに適用して、配送リスクについての確率値を決定してよい。その場合、リスクカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、計画リスク、および配送リスク)ごとの決定された値は、確率的に計算されてよく、その際、与えられたカテゴリごとに特定の重みを確率計算に含めて、論理ステーション213についての総リスク値(P=0.0001)を得てよい。いくつかの実施形態では、これらの異なるリスクカテゴリについての不確実性要因は、代わりに、(例えば、フォルトツリー解析または他の確率的解析技法を使用して)一緒に適用されて、論理ステーション213についての総確率値(P=0.0001)を決定してよい。
【0034】
同様に、モデル化エンジン234は、リスク定量化エンジン236と通信して、論理ステーション216によって表される最終製品製造サイトについての総リスクを、0.1の確率値(P)であると識別する。リスク定量化エンジン236は、同様に、外部データソース220から、論理ステーション216によって表される最終製品サイトについてのデータを入手してよい。論理ステーション216は、モデル化システム200を使用もし、モデル化システム200が供給者データおよび生産データのうちの少なくとも一方を収集し、企業ナレッジベース2155内に記憶する会社のサイトを表すので、リスク定量化エンジン236は、同様に、企業ナレッジベース2155から、論理ステーション216によって表される最終製品サイトについてのデータを入手してよい。リスク定量化エンジン236は、(論理ステーション211および213に関して説明されたように)米国内の表されたサイトについてのジオロケーションに関する入手されたデータに基づいて、論理ステーション216と関連付けられた調達リスクおよび環境リスクについての確率値を決定してよい。リスク定量化エンジン236は、さらに、(論理ステーション211および213に関して説明されたように)論理ステーション216によって表されるOEMサイトにおいて製造/供給される材料と関連付けられた計画リスクについての確率値を決定してよい。リスク定量化エンジン236は、さらに、(論理ステーション211および213に関して説明されたように)イタリア内のOEMサイト(論理ステーション213)から米国内の最終製品サイト(論理ステーション216)への供給される/製造された材料の輸送(論理トランジット214)と関連付けられた配送リスクについての確率値を決定して、配送リスクについての確率値を決定してよい。
【0035】
論理ステーション216についての調達リスク、環境リスク、および計画リスクについての確率値を決定する際、論理ステーション211および213における供給不確実性は、(論理ステーション211および213からの材料のフローに依存する)論理ステーション216における供給不確実性に影響するので、リスク定量化エンジン236は、それぞれの不確実性要因を論理ステーション211および213に関連する入手されたデータに適用してもよい。さらに、論理ステーション216についての配送リスクについての確率値を決定する際、論理トランジット212における配送不確実性は、(論理ステーション211および213からの材料の輸送に依存する)論理ステーション216における配送不確実性に影響するので、リスク定量化エンジン236は、それぞれの不確実性要因を論理トランジット212に関連する入手されたデータに適用してもよい。加えて、論理ステーション216によって表される最終製品サイトについての生産データは、企業ナレッジベース2155から入手可能であるので、リスク定量化エンジン236は、入手されたデータを、生産リスクと関連付けられた不確実性要因に適用してもよい。入手された生産データは、最終の最終製品を生産するために、最終製品製造サイトにおいて内部的に使用される、特定の生産計画、資源、およびプロセスを含んでよいことに留意されたい。例えば、生産データは、論理ステーション312(モデル化された入荷エリア)、論理ステーション314(モデル化された在庫エリア)、論理ステーション316(モデル化された組み立てエリア)、ならびに論理ステーション318(モデル化された彩色および発送エリア)によって示されるような、論理ステーションによって表される表された最終製品製造サイトの内部エリアのうちの1または複数において使用される、特定の生産計画、資源、およびプロセスを含んでよい。
【0036】
この入手生産データは、処理能力、処理変動、処理技術の変化、および処理コストの変化などの、論理ステーション216によって表されるサイトでの生産における中断または遅延のリスクと関連付けられた不確実性要因に適用されて、配送リスクについての確率値を決定する。論理ステーション216によってモデル化された最終製品製造サイトについての、生産リスクについての確率値を決定する際、サイト内のそれぞれのエリアについての入手された生産データは、不確実性要因に適用されて、そのそれぞれのエリアのリスクまたは不確実性を決定してよい。例えば、論理ステーション312についての入手された生産データ(例えば、計画、資源、およびプロセスなど)は、論理ステーション312によってモデル化されたそれぞれの入荷エリアと関連付けられた生産リスクをP=0.01と決定するために、使用されてよい。同様に、論理ステーション314についての入手された生産データ(例えば、計画、資源、およびプロセスなど)は、論理ステーション314と関連付けられた不確実性に影響する、論理ステーション312の下流の生産データおよび論理トランジット313とともに、論理ステーション312によってモデル化されたそれぞれの在庫エリアと関連付けられた生産リスクをP=0.01と決定するために、使用されてよい。同様に、材料の内部フロー310の他の論理ステーションについての入手された生産データは、論理ステーション216によって表される最終製品製造プラントのそれぞれの物理的エリアと関連付けられた生産リスクを決定するために使用されてよい。その場合、生産エリアごとの決定された確率値は、確率的に計算されてよく、その際、与えられた生産エリアごとに特定の重みを確率計算に含めて、論理ステーション216によって表される最終製品製造サイト全体の生産リスクについての確率値を得てよい。いくつかの実施形態では、異なる生産エリアについての不確実性要因は、代わりに、(例えば、フォルトツリー解析または他の確率的解析技法を使用して)一緒に適用されて、論理ステーション216によって表される最終製品製造サイト全体の生産リスクについての確率値を決定してよい。
【0037】
その場合、論理ステーション216によってモデル化された最終製品製造サイト全体についてのリスクカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、計画リスク、配送リスク、および生産リスク)ごとについての決定された値は、確率的に計算されてよく、その際、与えられたカテゴリごとに特定の重みを確率計算に含めて、論理ステーション216についての総リスク値(P=0.1)を得てよい。いくつかの実施形態では、これらの異なるリスクカテゴリについての不確実性要因は、代わりに、(例えば、フォルトツリー解析または他の確率的解析技法を使用して)一緒に適用されて、論理ステーション216についての総確率値(P=0.1)を決定してよい。
【0038】
図3Bは、
図3Aに示されたビジュアルモデル201の異なる実施形態を示している。
図3Bの実施形態では、モデル化エンジン234は、
図3Aを参照して説明されたように、与えられた論理ステーション(例えば、論理ステーション211、213、215、216)について(リスク定量化エンジン236によって)決定された、総確率的リスク値についての視覚的インジケーションを指定する。具体的には、モデル化エンジン234は、与えられた論理ステーションについての決定された総確率的リスク値を、リスク許容閾値と比較する。決定された総確率的リスク値が、リスク許容閾値の第1の範囲(例えば、確率0.00001ないし0.001の範囲)内にある場合、モデル化エンジン234は、それぞれの論理ステーションに第1の視覚的インジケーションを指定し、それが、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内に提示される。例えば、リスク定量化エンジン236は、論理ステーション211および論理ステーション213についての総確率的リスク値が、(
図3Aに示されるように)ともにP=0.0001であり、それは、リスク許容閾値の第1の範囲内にある(すなわち、低位のリスクレベルを表す)と決定する。そのため、モデル化エンジン234は、第1の視覚的インジケーションをそれぞれの論理ステーション211および213に指定し、それは、
図3Bの実施形態では、それぞれの論理ステーション211および213のための表示された交通信号グラフィック上に緑色のライトを視覚的に示すことを含む。
【0039】
決定された総確率的リスク値が、リスク許容閾値の第2の範囲(例えば、確率0.001ないし0.1の範囲)内にある場合、モデル化エンジン234は、それぞれの論理ステーションに第2の視覚的インジケーションを指定し、それが、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内に提示される。例えば、リスク定量化エンジン236は、論理ステーション216についての総確率的リスク値が、(
図3Aに示されるように)P=0.1であり、それは、リスク許容閾値の第2の範囲内にある(すなわち、中位のリスクレベルを表す)と決定する。そのため、モデル化エンジン234は、第2の視覚的インジケーションを論理ステーション216に指定し、それは、
図3Bの実施形態では、それぞれの論理ステーション216のための表示された交通信号グラフィック上に黄色のライトを視覚的に示すことを含む。さらに、決定された総確率的リスク値が、リスク許容閾値の第3の範囲(例えば、確率0ないし0.1の範囲)内にある場合、モデル化エンジン234は、それぞれの論理ステーションに第3の視覚的インジケーションを指定し、それが、ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内に提示される。例えば、リスク定量化エンジン236は、論理ステーション218についての総確率的リスク値が、P=0.5であり、それは、リスク許容閾値の第3の範囲内にある(すなわち、高位のリスクレベルを表す)と決定する。そのため、モデル化エンジン234は、第3の視覚的インジケーションを論理ステーション218に指定し、それは、
図3Bの実施形態では、それぞれの論理ステーション218のための表示された交通信号グラフィック上に赤色のライトを視覚的に示すことを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、リスク許容閾値およびリスク許容閾値からのリスク許容の範囲のうちの少なくとも一方が、ユーザインターフェース210上に表示されたグラフィカルツール、またはモデル化システム200によって提供される他のツールによって、ユーザによって指定される。他の実施形態では、リスク許容閾値およびリスク許容閾値からのリスク許容の範囲のうちの少なくとも一方が、(収集され、企業ナレッジベース2155内に記憶された関連するデータ、外部データソース220から取得されたデータ、または対象組織によって入手可能な他の任意の公的もしくは私的データから決定されてよい)最終製品に対する特定の制約に基づいて、モデル化エンジン234によって自動的に計算される。さらに、
図3Bの実施形態では、モデル化エンジン234は、リスク許容閾値に関する3つのリスク許容の範囲を決定するが、他の実施形態では、モデル化システム200は、任意の数のリスク許容の範囲(レベル)を含んでよい。加えて、
図3Bの実施形態では、モデル化エンジン234は、指定されたリスクを、表示された交通信号グラフィック上のライトの色として視覚的に示すが、他の実施形態では、モデル化エンジン234は、当技術分野において知られた任意の方法で、与えられた論理ステーションについての指定されたリスクを視覚的またはその他で示してよい。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、モデル化エンジン234が、変化するリスクを検出または他の方法で決定すると直ちに(すなわち、リアルタイムに)、論理ステーションに関連するそれぞれのリスクの継続的なビジビリティおよびトレーサビリティを提供するために、ユーザインターフェース210上でビジュアルモデル201を継続的に監視して、ビジュアルモデル201の視覚的効果を自動的に更新して(例えば、論理ステーションについてのリスクを色で指定して)よい。
【0041】
さらに、
図3Bの実施形態では、モデル化エンジン234は、論理ステーションごとのリスクカテゴリのそれぞれのセットについての決定されたリスク値を視覚的に比較する、詳細なグラフィカルプロファイル330(例えば、パイチャート)を生成する。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、リスクのカテゴリが、(重み付けされてもよく、またはされなくてもよい、決定されたリスク値に基づいた)カテゴリリスクが与えられた論理ステーションについての決定された総リスクに寄与するパーセンテージで表示されるように、決定されたリスク値をパーセンテージで比較してよい。他の実施形態では、モデル化エンジン234は、当技術分野において知られた他の任意の確率的な解析、技法、計算、および表現(例えば、フォルトツリー解析)を使用して、決定されたリスク値を比較してよい。モデル化エンジン234は、さらに、論理ステーションを選択する(例えば、それぞれの表示されたグラフィカル交通信号をクリックする)ことによって、
図3Bの論理ステーション216においてユーザによって表示されるような、グラフィカルプロファイル330を、ユーザがそれぞれの論理ステーションにおいて表示することを可能にする。
図3Bの実施形態では、モデル化エンジン234は、リスクカテゴリのセットについての比較される決定されたリスク値をパイチャートとして生成するが、他の実施形態では、モデル化エンジン234は、当技術分野において知られた任意の方法で、これらの決定されたリスク値(および与えられた論理ステーションと関連付けられたリスクに関連する他の任意の詳細)をグラフィカルまたはその他で示してよいことに留意されたい。
【0042】
図3Cは、
図3Aおよび
図3Bに示されたビジュアルモデル201の異なる実施形態を示している。
図3Cの実施形態では、与えられた論理ステーションおよび論理トランジットについての決定された総確率的リスク値に基づいて、モデル化エンジン234は、サプライチェーンネットワーク内の与えられた論理ステーションから各それぞれの上流論理ステーションまでの各サプライチェーンパスと関連付けられた、総確率的リスクを決定する。他の実施形態では、モデル化エンジン234は、サプライチェーンネットワーク内の与えられた論理ステーションから各それぞれの上流論理ステーションまでの各サプライチェーンパスと関連付けられた、確率的リスクのカテゴリ(例えば、調達リスク、環境リスク、計画リスク、配送リスク、および生産リスクなど)を決定する。モデル化エンジン234は、ユーザが、モデル化されたサプライチェーンネットワーク内の論理ステーションを選択することを可能にし、モデル化エンジン234は(ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内において)、選択された論理ステーションに材料を流す異なるパスを視覚的に示す。視覚的インジケーションは、部品材料または最終製品を供給/生産するために、選択された論理ステーションにそれぞれの材料を提供する際に、それぞれの異なるパスの各々によって与えられるリスクに基づく。モデル化エンジン234は(ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内において)、さらに、部品材料または最終製品を供給/生産するために、選択された論理ステーションにそれぞれの材料を提供する際に、(例えば、総リスクまたは特定のリスクカテゴリに基づいて)最も高い確率的リスクを与えるクリティカルパスを視覚的に示す。いくつかの実施形態では、モデル化エンジン234は、モデル化エンジン234が変化したクリティカルな情報を検出または他の方法で決定したときに、論理トランジットに関連するそれぞれのクリティカルな情報(例えば、リスク)の継続的なビジビリティおよびトレーサビリティを提供するために、ユーザインターフェース210上でビジュアルモデル201を継続的に監視して、ビジュアルモデル201の視覚的効果を自動的に更新して(例えば、論理トランジットを色で強調して)よい。
【0043】
例えば、
図3Cの実施形態では、ユーザは、組織のための最終製品製造サイトをモデル化する論理ステーション340を選択する。モデル化エンジン234は(ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内において)、それぞれの異なるパスの各々によって与えられるリスクに基づいて、論理ステーション340に材料を流す異なるパスを視覚的に示す。
図3Cでは、モデル化エンジン234は、他の下流論理ステーションから論理ステーション340までのサプライチェーンパスのほとんどを、サプライチェーンパスのほとんどは、最終製品を生産するために、(論理ステーション340によってモデル化された)最終製品製造サイトにそれぞれの材料を提供する際に、低レベルのリスクを与えるので、緑色で視覚的に示す(強調する)。例えば、供給者サイトである会社Oをモデル化した論理ステーション342からのパス344、および論理ステーション350(供給者サイトである会社B)からのパス352は、最終製品を生産するために、それらが論理ステーション340に材料を提供する際に、各々、低レベルのリスクを与えるので、緑色である。モデル化エンジン234は(ユーザインターフェース210上のビジュアルモデル201内において)、さらに、最終製品を生産するために、(論理ステーション340によってモデル化された)最終製品製造サイトにそれぞれの材料を提供する際に、最も高い総確率的リスク(例えば、
図3Cでは中位のリスク)を与えるクリティカルパスを黄色で視覚的に示す(強調する)。例えば、OEMサイトをモデル化した論理ステーション346(OEMサイトである会社A2、それは施設2に配置された会社Aを示す)から論理ステーション340へのパス348は、最終製品を生産するために、(論理ステーション340によってモデル化された)最終製品製造サイトにそれぞれの材料を提供する際に、パス348は最も高い総確率的リスク(例えば、中位のリスク)を与えるので、黄色である。
図3Cの実施形態では、モデル化エンジン234は、(クリティカルパスを含む)寄与パスを、リスクレベルを表す異なる色で強調するが、他の実施形態では、モデル化エンジン234は、当技術分野において知られた任意の方法で、(1または複数のクリティカルパスを含む)寄与パスを、グラフィカルまたはその他で示してよいことに留意されたい。
【0044】
サプライチェーンネットワークにおけるリスクを評価するための例示的な方法
図4は、本発明の実施形態における、サプライチェーンリスクをモデル化するための例示的な方法400のフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法400は、
図2に示されるようなサプライチェーンモデル化システム200の一部として実行されてよい。方法400は、ステップ420において、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201を生成し、(
図2の企業ナレッジベース2155などの)コンピュータメモリ内に記憶することによって開始する。ビジュアルモデル201は、サプライチェーンネットワーク内の物理的サイト(例えば、供給者サイト、供給者製造サイト、最終製品製造サイト、貯蔵サイト、流通サイト、および小売りサイトなど)をグラフィカルに表す、1または複数の論理ステーションを含む。論理ステーションは、さらに、論理ステーションによってモデル化された物理的製造サイト内の(内部の)物理的エリアをグラフィカルに表す、1または複数の内部論理ステーションを含んでよいことに留意されたい。論理ステーションを記憶する一環として、方法400は、ステップ420において、ジオロケーション、関連する会社、サイトまたはサイトエリアの種類、サイトまたはエリアによって実行される計画、サイトまたはエリアによって実行されるプロセス、およびサイトまたはエリアによって使用される資源など、モデル化されたサイトを定義するために論理ステーションに割り当てられたデータを記憶してよい。ビジュアルモデル201は、モデル化されたサイト間における材料の輸送をグラフィカルに表す、1または複数の論理トランジットも含む。論理トランジットは、論理ステーションによってモデル化された製造サイト内における物理的輸送をグラフィカルに表す、1または複数の内部論理トランジットを含んでよいことに留意されたい。
【0045】
その後、方法400は、ステップ430において、サプライチェーンネットワーク内のサイトをグラフィカルに表す与えられた論理ステーションごとのリスクを識別する。与えられた論理ステーションごとに、方法400は、ステップ430において、与えられた論理ステーションと関連付けられたリスクカテゴリのセットについてのリスク値を識別する。方法400は、ステップ430において、(a)与えられた論理ステーションによって表される物理的サイト、(b)与えられた論理ステーションへと流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理ステーションによって表される各物理的サイト、および(c)流れ下るサプライチェーンパス内に配置されたそれぞれの論理トランジットによって表される各輸送に関連する物理的条件に基づいて、識別されたリスク値を決定する。例えば、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201内のOEMサイトを表す論理ステーションと関連付けられたリスクカテゴリについてのリスク値は、与えられたOEMサイト、そのOEMサイトに供給する下流サイト、およびOEMサイトと下流供給者サイトとの間における輸送と関連付けられた物理的条件に基づいてよい。
【0046】
具体的には、リスクカテゴリは、調達リスク、環境リスク、計画リスク、配送リスク、および生産リスクを含んでよい。与えられた論理ステーションごとに、方法400は、ステップ430において、(例えば、
図2および
図3Aの外部データソース220、
図2および
図3Aの企業ナレッジベース2155、または他のそのような公的もしくは私的データソースから)与えられたサイトのために入手されたデータに、それぞれの不確実性要因を適用することによって、与えられたリスクカテゴリについての確率的リスク値を決定してよい。与えられたサイトについてのこの入手されたデータは、与えられたサイトの物理的条件、与えられたサイトへのサプライチェーンパス内に配置された各下流サイトの物理的条件、およびこれらのサイト間における輸送の物理的条件を定義する。例えば、方法400は、ステップ430において、与えられたサイトについての入手されたジオロケーションデータに、地政学的不確実性要因(例えば、政治不安、貿易制限、テロリズム、汚職、盗難、非識字、貿易活動、および海賊など)、地理経済的不確実性要因(例えば、需要ショック、価格変動、通貨変動、およびエネルギー不足など)、ならびに地理技術的不確実性要因(例えば、ネットワークインフラストラクチャ障害、およびICT混乱など)を適用することによって、与えられた論理ステーションについての調達リスクを決定してよい。方法400は、ステップ430において、フォルトツリー解析などの確率的解析技法を使用することによって、与えられたサイトについての入手されたジオロケーションデータに、これらの不確実性のいくつかまたはすべてを適用して、調達リスクについての確率値を決定(識別)してよい。
【0047】
方法400は、ステップ430において、同様に、与えられた論理ステーションによって表されるサイトと関連付けられた同じまたは他の物理的条件に関する入手されたデータを適用して、与えられた論理ステーションについての、環境リスクカテゴリ、配送リスクカテゴリ、計画リスクカテゴリ、生産リスクカテゴリ、および他のそのようなリスクカテゴリそれぞれの確率値を識別(決定)してよい。これらの実施形態のいくつかでは、不確実性要因は、1つの解析において、与えられたサイト、与えられたサイトへのサプライチェーンパス内に配置された各下流サイト、およびこれらのサイト間における輸送に一緒に適用されて、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての累積確率値を決定してよい。これらの実施形態の他のものでは、不確実性要因は、与えられたサイト、下流サイトの各々、およびこれらのサイト間における輸送に別々に適用されて、サイトごとに別々の確率値を決定してよく、それらは、その後、確率的に計算されて(およびいくつかの実施形態では、重み付けされて、または他の方法で調整されて)、与えられたサイトについてのリスクの各カテゴリについての累積確率値を生成する。
【0048】
次に、方法400は、ステップ440において、リスクカテゴリのセットのうちの各々ごとに識別されたリスク値を視覚的に比較する、グラフィカル表現を生成する。いくつかの実施形態では、方法400は、ステップ440において、与えられた論理ステーションと関連付けられた各リスクカテゴリについての識別された確率値が、与えられたサイトについての他のリスクカテゴリの各々と関連付けられた識別された確率値とパーセントの関連で表示されるように、識別されたリスク値をパーセンテージで比較する。他の実施形態では、方法400は、ステップ440において、当技術分野において知られた他の任意の確率的または数学的な方法を使用して、識別されたリスク値を視覚的に比較する。いくつかの実施形態では、方法400は、ステップ440において、これらの識別されたリスク値を視覚的に比較する前に、それぞれのリスクカテゴリについての確率値のいくつかまたはすべてに重みを適用する。次に、方法400は、ステップ440において、ビジュアルモデル201内の与えられた論理ステーションにおいて、視覚的な比較をグラフィカル表現(例えば、グラフ、チャート、表、または当技術分野において知られた他の任意のグラフィカル表現)で表示する。
【0049】
次に、方法400は、ステップ450において、それぞれのリスクカテゴリについての識別されたリスク値に基づいて、総リスク値を決定する。いくつかの実施形態では、方法400は、ステップ450において、1つの解析において、与えられたサイトについてのリスクカテゴリの各々についての不確実性要因を一緒に適用して、与えられたサイトについての総確率的リスク値(リスクの評価されたレベル)を確率的に計算する。他の実施形態では、それぞれのリスクカテゴリごとに決定された確率的リスク値は、確率的に計算されて(およびいくつかの実施形態では、重み付けされて、または他の方法で調整されて)与えられたサイトについての総確率的リスク値(リスクの評価されたレベル)を生成してよい。次に、方法400は、ステップ460において、与えられた論理ステーションについての決定された総確率的リスク値を、定義されたリスク許容閾値と比較する。リスク許容閾値は、モデル化されたサプライチェーンネットワーク内のすべての論理ステーションに対して、同じ値として定義されてよく、サイトの種類(例えば、供給者サイト、および供給者製造サイトなど)に従って、定義されてよく、または与えられた論理ステーションごとに(例えば、論理ステーションにデータを割り当てるときに)個別に定義されてよいことに留意されたい。方法400は、ステップ460において、総確率的リスク値をリスク許容閾値と比較して、総確率値とリスク許容閾値との間の距離(相違)を計算してよい。方法400は、ステップ460において、計算された距離を、リスク許容閾値からの確率的または数学的距離を指定する許容範囲のセットと比較してよい。計算された距離が含まれる、範囲のセットのうちの範囲に基づいて、方法400は、ステップ460において、ビジュアルモデル201内のそれぞれの論理ステーションに視覚的インジケーションを指定する。例えば、
図3Bで説明されたように、その視覚的インジケーションは、交通信号グラフィック表示上に提示される色であってよい。
【0050】
与えられた論理ステーションについての識別されたリスク値に基づいて、方法400は、ステップ470において、与えられた論理ステーションに向かって流れ下る各サプライチェーンパスによって与えられる確率的リスクも決定する。方法400は、ステップ470において、与えられた論理ステーションへのサプライチェーンパス内の各論理ステーション(および論理トランジット)について計算された、総確率的リスクまたは確率的リスクの1もしくは複数のカテゴリに対する寄与リスクを決定してよい。次に、方法400は、与えられた論理ステーションに向かって流れ下る各サプライチェーンパスによって与えられるそれぞれのレベルのリスクを視覚的に示す(例えば、指定された色または他のそのようなマーキングで強調する)。方法400は、ステップ470において、論理ステーションに視覚的インジケーションを指定した際に使用されたのと同じまたは異なるリスク許容閾値および許容範囲のセットを使用して、それぞれのレベルのリスクを決定してよい。次に、方法400は、ステップ470において、総確率的リスクまたは確率的リスクの1もしくは複数のカテゴリに関して、与えられた論理ステーションに対して最も高い確率的リスクを与えるクリティカルサプライチェーンパスを決定してよい。次に、方法400は、ステップ470において、表示されたビジュアルモデル201内において、それぞれの最も高い確率的リスクを有するサプライチェーンパスを視覚的に示す(例えば、指定された色または他のそのようなマーキングで強調する)。
【0051】
方法400は、それぞれの論理ステーションに生成されたグラフィカル表現を有し、それぞれの論理ステーションに指定された視覚的インジケーションを有する、ビジュアルモデル201を、コンピュータスクリーンビュー(例えば、
図2、
図3Aないし
図3Cのユーザインターフェース210)内に表示する。表示されたビジュアルモデル201は、モデル化されたサプライチェーンネットワークのリスク識別および評価を提供する。いくつかの実施形態では、(ビジュアルモデル201内に示されるような)モデル化されたサプライチェーンネットワークは、サプライチェーンネットワーク内でモデル化された物理的サイトもしくは物理的輸送のための制御システムをプログラムするような、または物理的サイトもしくは物理的輸送の運用を制御して、これらの物理的サイトまたは物理的トランジットの運用を達成する他のモデル化システムをプログラムするような形式(例えば、信号)で出力されてよく、識別されたリスクを含む。
【0052】
デジタル処理環境
図5は、本発明の実施形態による、サプライチェーンネットワークにおけるリスクを評価するために使用されてよい、コンピュータベースのシステム520の簡略化されたブロック図である。システム520は、バス525を備える。バス525は、システム520の様々なコンポーネント間における相互コネクタとしての役割を果たす。バス525には、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなど、様々な入力デバイスおよび出力デバイスをシステム520に接続するための、入力/出力デバイスインターフェース528が接続される。中央処理装置(CPU)522が、バス525に接続され、コンピュータ命令の実行を提供する。メモリ527は、方法400を実施するコンピュータ命令を実行するために使用されるデータ、および/または
図2ないし
図4において詳述されたような、サプライチェーンネットワークをモデル化するためのモジュール234、236のための揮発性記憶を提供する。ストレージ526は、オペレーティングシステム(図示されず)など、ソフトウェア命令のための不揮発性記憶を提供する。特に、メモリ527および/またはストレージ526は、先に
図4で詳述されたリスクを識別し、評価するための方法400、および
図3Aないし
図3Cのユーザインターフェースを実施するプログラム命令を有するように構成される。システム520は、クラウド、ワイドエリアネットワーク(WAN)、およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当技術分野において知られた任意の多種多様なネットワークに接続するための、ネットワークインターフェース521も備える。
【0053】
さらに、バス525には、第1のモジュール523が接続される。第1のモジュール523は、ユーザインターフェース上にビジュアルモデル201としてサプライチェーンネットワークをロードするように構成される。第1のモジュール523は、当技術分野において知られた任意の手段を通して、ローディング機能を提供してよい。例えば、第1のモジュール523は、ストレージデバイス526またはメモリ527上に記憶された企業ナレッジベース(例えば、
図2および
図3Aの2155)内の(例えば、
図2および
図3Aの企業ナレッジベース2155内の)サプライチェーンデータを参照してよい。さらなる例として、第1のモジュール523は、ネットワークインターフェース521および/または入力/出力デバイスインターフェース528を介して、システム520に通信可能に結合された任意のポイントから(例えば、
図2および
図3Aの外部データアグリゲータ220から)、サプライチェーンデータをロードしてよい。
【0054】
システム520は、さらに、第1のモジュール523に通信可能/動作可能に結合された、第2のモジュール524を備える。第2のモジュール524は、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201上に表示するために、サプライチェーンリスクをリアルタイムに識別するように構成される。第2のモジュール524は、当技術分野で知られた任意の手段を通して、リスク識別機能を提供してよい。例えば、第2のモジュール524は、サプライチェーンネットワークについてのリスク関連データを、ストレージ526またはメモリ527上に記憶してよい。別の例として、第2のモジュール524は、バス525を介したCPU522を用いて、様々なリスクカテゴリに従って、識別されたリスクを確率的に計算してよい。さらなる例として、第2のモジュール524は、ネットワークインターフェース521および/または入力/出力デバイスインターフェース528を介して、システム520に通信可能に結合された任意のポイントから、特定の供給者ロケーションについてのジオロケーション関連リスクデータを取得してよい。
【0055】
本明細書で説明される例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実施されてよいことを理解されたい。いくつかの例では、本明細書で説明される様々な方法およびマシンは、各々が、コンピュータシステム520などの、物理、仮想、またはハイブリッド汎用コンピュータによって実施されてよい。コンピュータシステム520は、例えば、CPU522による実行のために、ソフトウェア命令をメモリ527または不揮発性ストレージ526内にロードすることによって、本明細書で説明される方法を実行するマシンに変換されてよい。さらに、例示的な実施形態では、第1のモジュール523および第2のモジュール524は、別個のモジュールとして示されているが、これらのモジュールは、多種多様な構成を使用して、実施されてよい。
【0056】
システム520およびそれの様々なコンポーネントは、
図2ないし
図4に関連してそれぞれ先に本明細書で説明された、モジュール234、236、ユーザインターフェース、および/または方法400を実行または実施するように構成されてよい。例えば、システム520は、
図4に関連して先に本明細書で説明された方法400、ならびに
図2および
図3Aないし
図3Cのサポートユーザインターフェースを実行するように構成されてよい。例示的な実施形態では、第1のモジュール523および第2のモジュール524は、メモリ527および/またはストレージデバイス526上に記憶されたソフトウェアで実施されてよい。そのような例示的な実施形態では、CPU522およびメモリ527は、メモリ527および/またはストレージデバイス526上に記憶されたコンピュータコード命令を用いて、サプライチェーンネットワークをビジュアルモデル201としてロードし、モデル化エンジン234について先に説明されたように動作する、第1のモジュール523を実施する。さらに、システム520のコンポーネントは、第1のモジュール523に動作可能に結合され、リスク定量化エンジン236について先に説明されたように、サプライチェーンネットワークのビジュアルモデル201上に表示するために、サプライチェーンリスクをリアルタイムに識別するように構成された、第2のモジュール524を実施する。
【0057】
図6は、本発明の実施形態が実施されてよい、コンピュータネットワーク環境660を示している。コンピュータネットワーク環境660では、サーバ631は、通信ネットワーク632を通して、クライアント633aないし633nにリンクされる。環境660は、クライアント633aないし633nが、単独で、またはサーバ631と組み合わされて、方法および/またはモジュール(例えば、先に本明細書で説明された
図2ないし
図4の、方法400、ならびに/またはモジュール234、236、およびそれらのユーザインターフェース)のいずれかを実行することを可能にするために使用されてよい。環境660は、
図2のサプライチェーンモデル化システム200(例えば、DELMIA 3DEXPERIENCE)を備えてよい。上で説明された例示的な実施形態は、多くの異なる方法で実施されてよいことを理解されたい。いくつかの例では、本明細書で説明される様々な方法およびマシンは、各々が、物理、仮想、もしくはハイブリッド汎用コンピュータ、またはコンピュータ環境660などのコンピュータネットワーク環境によって実施されてよい。
【0058】
実施形態、またはそれらの態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実施されてよい。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはそれの命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成された、任意の非一時コンピュータ可読媒体上に記憶されてよい。その後、プロセッサは、命令を実行し、本明細書で説明される方法で動作するように、または装置を動作させるように構成される。
【0059】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの何らかのアクションおよび/または機能を実行するものとして、本明細書で説明されてよい。しかしながら、本明細書に含まれるそのような説明は、単に便宜的なものにすぎないこと、およびそのようなアクションは、実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスから生じることを認識されたい。
【0060】
フロー図、ブロック図、およびネットワーク図は、より多いもしくはより少ない要素を含んでよいこと、異なるように配置されてよいこと、または異なるように表されてよいことを理解されたい。しかし、ある実施は、実施形態の実行が特定の方法で実施されることを説明するブロック図およびネットワーク図、ならびにブロック図およびネットワーク図の数を指示してよいことをさらに理解されたい。
【0061】
したがって、さらなる実施形態は、多種多様なコンピュータアーキテクチャ、物理、仮想、クラウドコンピュータ、および/またはそれらの何らかの組み合わせで実施されてもよく、したがって、本明細書で説明されるデータプロセッサは、もっぱら説明を目的として意図されており、実施形態の限定としては意図されていない。
【0062】
本発明は、それの例示的な実施形態を参照して、詳細に示され、説明されたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および細部の様々な変更がその中で施されてよいことが、当業者によって理解される。