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特許7097688運動量制御デバイスで用いる高効率アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】運動量制御デバイスで用いる高効率アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/28 20060101AFI20220701BHJP
   H02P 27/04 20160101ALI20220701BHJP
【FI】
B64G1/28 300
H02P27/04
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017224255
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2018111486
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/443,237
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/608,602
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】トム・クレイダー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダグラス・ギルレス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・イー.・ストロング
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ヴィレラ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ハーデン
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511733(JP,A)
【文献】特開2016-116447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180388(US,A1)
【文献】特開2015-015885(JP,A)
【文献】特開2011-120322(JP,A)
【文献】特開2005-287133(JP,A)
【文献】特開平07-075364(JP,A)
【文献】特開2013-006593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/28
H02P 27/04-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクションホイール組立体(RWA)で用いられるモータ制御器であって、
宇宙機に関連する宇宙機電力バスと内部RWAバと呼ばれるリアクションホイール組立体の内部電力バスとの間で電気ノイズ及び電磁ノイズが伝達されるのを抑制するように構成された内部電力バスフィルタと、
ACモータに関連するモータ相電流のための経路を提供する電源スイッチ素子の配置であって、前記ACモータと前記内部RWAバスとの間で結合される電源スイッチ素子の配置と、
複数の異なるACモータに関連する複数のパラメータを含むメモリと、
前記メモリ、前記ACモータ及び前記電源スイッチ素子の配置に結合されるデジタル制御システムであって、
複数のデジタル及びシリアル通信プロトコルをサポートし、
サポートされた前記通信プロトコルの中から要求された通信プロトコルを検知し、
前記要求された通信プロトコルに応じて、前記デジタル制御システム内のデータ管理プロトコルを調整し、
前記ACモータを検出及び識別し、
前記ACモータに関連するパラメータを前記メモリから取得し、
コマンド入力を受信し、
前記ACモータに関連する位置センサのフィードバックを受信し、
前記ACモータに関連するパラメータをメモリから取得し、かつ、
前記コマンド入力、前記ACモータに関連する前記位置センサのフィードバック及び前記パラメータに基づいて、(i)前記電源スイッチ素子の配置の作動を制御し、(ii)前記要求された通信プロトコルを満たす、前記宇宙機に対するデータ出力を生成するように構成されたデジタル制御システムとを備えるモータ制御器。
【請求項2】
前記ACモータに関連する前記パラメータはトルク定数、摩擦及び最大電流のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載のモータ制御器。
【請求項3】
前記位置センサのフィードバックは、前記ACモータに関連するロータ位置又はロータ速度を含む、請求項2に記載のモータ制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2017年1月6日に出願された米国特許仮出願第62443237号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]本開示は、一般に、運動量制御デバイス及び方法に関し、より詳細には、運動量制御デバイスで用いるモータ制御電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]コントロールモーメントジャイロスコープ(CMG:control moment gyroscope)及びリアクションホイールなどの運動量制御デバイスは通常、宇宙機、衛星、輸送手段及び類似の移動プラットフォームにおいて用いられる姿勢制御システム内に配備される。一般化された運動量制御デバイスは、ロータ組立体筐体内に回転可能に設置されるロータ組立体を含む。このロータ組立体は、慣性要素、典型的には回転質量又は外側リムを含み、この慣性要素はロータ軸に固定して結合される。運動量制御デバイスの動作中、一般的にモータ制御電子機器のブロックによって駆動されるモータは、ロータ組立体をスピン軸を中心に回転又はスピンさせる。モータがロータ組立体をスピンさせると、回転する慣性要素に角運動量が蓄積される。次に、角運動量はトルクに変換される(トルクは角運動量の時間微分である)。宇宙空間において宇宙機の姿勢を変えるために、トルクは宇宙機との間で交換される。スピン軸を中心にスピンする過程で、ロータ組立体内の慣性要素は位置を変え、この位置はロータ位置と呼ばれることがある。三次元姿勢制御を準備するために、複数の運動量制御デバイスが組み合わされてリアクションホイールアレイ又は組立体(RWA:reaction wheel array or assembly)を形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]衛星応用例が進化するのに伴って、望ましい衛星の大きさの範囲は拡大している。具体的には、小規模衛星応用例の分野が現れ、このことは、小規模衛星を商業的に望ましいものにしている。効率的な小規模衛星を競争力のあるように生産するためには、RWA構成要素のすべてが、確実かつ効率的に縮小しなければならない。より小規模のリアクションホイール及びより小規模のモータに加えて、小規模衛星がモータ制御電子機器用に利用できるスペース(real estate)はより小さい。提供される開示及び実施形態は、これらの必要性及び他の設計上考慮すべき事柄に取り組む。
【0005】
[0005]本概要は、下記の「発明を実施するための形態」のセクションにおいてさらに記述される概念の1つの選択肢を単純な形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は不可欠な特徴を特定することを意図するものではなく、また、特許請求される主題の範囲を決定するのを助けるものとして用いられることを意図するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]リアクションホイール組立体(RWA)で用いられるモータ制御器が提供され、このモータ制御器は、宇宙機に関連する宇宙機電力バスとRWA内部電力バスとの間で電気ノイズ及び電磁ノイズが伝達されるのを抑制するように構成された内部電力バスフィルタと、ACモータに関連するモータ相電流のための経路を提供する電源スイッチ素子の配置であって、ACモータとRWA電力バスとの間で結合される電源スイッチ素子の配置と、ACモータ及び電源スイッチ素子の配置に結合されるデジタル制御システムであって、コマンド入力を受信し、ACモータに関連する位置センサのフィードバックを受信し、ACモータに関連するパラメータをメモリから取得し、かつ、コマンド入力、ACモータに関連する位置センサのフィードバック及びパラメータに基づいて、(i)電源スイッチ素子の配置の作動を制御し、(ii)データ出力を生成するように構成されたデジタル制御システムとを備える。
【0007】
[0007]また、リアクションホイール組立体(RWA)で用いられる被制御モータ組立体も提供される。この被制御モータ組立体は、宇宙機に関連する宇宙機電力バスとRWA電力バスとの間で結合されるフィルタであって、この宇宙機電力バスとRWA電力バスとの間の電磁ノイズの伝達を抑制するように構成されたフィルタと、宇宙機からの入力に基づいて動作するように構成されたACモータと、モータ相電流のための経路を提供する電源スイッチ素子の配置であって、ACモータ及びRWAの内部の電力バスに結合される電源スイッチ素子の配置と、ACモータ及び電源スイッチ素子の配置に結合されるデジタル制御システムであって、複数のサポートされた通信プロトコルの中からユーザ要求の通信プロトコルを受信し、ユーザ要求のシリアルプロトコルに従ったコマンド入力を受信し、ACモータに関連する位置センサのフィードバックを受信し、ACモータに関連するパラメータをメモリから取得し、かつ、コマンド入力、ACモータに関連する位置センサのフィードバック及びパラメータに基づいて、電源スイッチ素子の配置の作動を制御し、シリアル遠隔計測出力又はシリアルコマンド応答出力を生成するように構成されたデジタル制御システムとを備える。
【0008】
[0008]加えて、リアクションホイール組立体(RWA)が提供され、このリアクションホイール組立体(RWA)は、ロータ組立体と、モータ制御器、第1の周波数で動作するように構成されたACモータ、宇宙機に関連する宇宙機電力バスをRWA電力バスに結合するフィルタであって、宇宙機電力バスとRWAの内部のRWA電力バスとの間で第1の周波数の電磁ノイズが結合されるのを抑制するよう構成されたフィルタ、ACモータとフィルタとの間で結合される電源スイッチ素子の配置であって、(i)第1の周波数に基づき、(ii)ACモータに関連するモータ相電流のための経路を提供するように構成された電源スイッチ素子の配置、及び、ACモータ及び電源スイッチ素子の配置に結合されるデジタル制御システムであって、複数のサポートされた通信プロトコルの中からユーザによって要求された通信プロトコルのコマンド入力を受信し、ACモータに関連する位置フィードバックを位置センサから受信し、ACモータに関連するパラメータを不揮発性メモリから取得し、かつ、コマンド入力、ACモータに関連する位置フィードバック及びパラメータに基づいて、電源スイッチ素子の配置の作動を制御し、シリアル遠隔計測出力又はシリアルコマンド応答出力を生成するように構成されたデジタル制御システムを備える被制御モータ組立体とを備える。
【0009】
[0009]添付の図面及びこの背景技術と併せて、以下の「発明を実施するための形態」及び添付の特許請求の範囲から他の望ましい特徴が明らかとなろう。
[0010]同様の参照数字が同様の要素を示す添付の図面と併せて、以下の「発明を実施するための形態」から、本主題のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0011]さまざまな実施形態による、RWAを示す簡略化された概略構成図である。
図2】[0012]さまざまな例示の実施形態による、RWA設計用の被制御モータ組立体を示す簡略化された構成図である。
図3】[0013]RWA内で図2に示す被制御モータ組立体を用いるための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0014]以下の「発明を実施するための形態」は本質的に単なる例証であるにすぎず、主題の実施形態又はそのような実施形態の応用例及び使用の制限が意図されるわけではない。本明細書で用いられる「例示の」という単語は、「例、事例又は例証としての役割を果たす」ことを意味する。したがって、本明細書で「例示の」として記述されるいかなる実施形態も、他の実施形態よりも好ましい、又は有利であると必ずしも解釈されるわけではない。本明細書において記述される実施形態はすべて、当業者がRWA内の被制御モータ組立体を製造又は使用することができるようにするために提供される例示の実施形態であり、特許請求の範囲によって定められるモータ制御電子機器又は被制御モータ組立体の範囲を限定するためのものではない。さらに、前述の「技術分野」、「背景技術」、「発明の概要」、又は以下の「発明を実施するための形態」において提示される明確に示される、又は暗に示されるいかなる理論によっても束縛される意図はない。
【0012】
[0015]図1は、さまざまな実施形態による、RWA20の簡略化された概略構成図を示す。このRWA20は、運動量制御デバイスを利用する、宇宙機10の一部であり得、又は、そうではなく衛星又は任意の移動プラットフォームの一部であってよい。宇宙機制御モジュール22及び多機能入力/出力通信モジュール24は、宇宙機10とRWA20との間の通信を可能にする。宇宙機10をRWA20に結合する、宇宙機電力バス25、リード27上の(RWA20への)コマンド入力、及びリード29上の(RWA20からの)コマンド出力が示される。RWA20の内部で、モータ制御電子機器のブロック、モータ制御器26、モータ28及び(ロータ組立体32の内部の)慣性要素30が結合される。1つのモータ28及び1つの慣性要素30のみが示されるが、実際には2つ以上のモータ28と2つ以上の各慣性要素30とが存在し得ることは容易に理解される。
【0013】
[0016]本明細書において検討される目的は、ノイズを低減させることに加えて、効率、信頼性及び拡張性を最適にするようにモータ制御電子機器とモータとを組み合わせることである。以下、最適化されたモータ制御電子機器ブロックをモータ制御器26と呼び、モータ制御器26とモータ28との組合せを被制御モータ組立体40と呼ぶ。提供される被制御モータ組立体40は、広範な拡張性を有するように最適化される。また、提供される被制御モータ組立体40は、小規模又は極小規模の衛星、RWA製品の性能要件を満たしつつ、低コストかつ高効率をもたらす。この目的で、さまざまな実施形態において、モータ28(本明細書では「ACモータ」28とも呼ばれる)は、高速交流(AC:alternating current)永久磁石型同期モータ(PMSM:permanent magnet synchronous motor)、永久磁石型交流(PMAC:permanent magnet alternating current)モータ、又は、本明細書に記述される特徴を実現する複数の種類の高速交流(AC)モータのうち任意のものを備える。被制御モータ組立体40は、モータ28を、アナログ信号処理を最小限にしながらデジタル信号処理を最大限にするモータ制御器26と組み合わせる。複数の種類の高速交流(AC)モータを支援するために、被制御モータ組立体40は不揮発性メモリを用いて、その中に各モータ28の種類ごとのパラメータを記憶する。それゆえ、被制御モータ組立体40は(自動的に、かつ保全が介在することなく)モータ28の種類を検出し、この検出に応答して、検出されたモータ28の種類に適したタイミング及びメモリ管理を構成することができる。これらの特徴については、図2及び図3に関連して詳細に記述される。
【0014】
[0017]図2を参照すると、RWA20設計用の被制御モータ組立体40が提供される。図2は、ACモータ28と、部分的に、磁界方向制御(FOC108:field oriented control)によって行われるデジタル信号処理とを示す。直流(DC:direct current)三相モータ(たとえばブラシレスDCモータ)を利用する設計は、DC三相モータに電流を流すために時間のうちのどの3分の2か(すなわち三相のうちのどの二相か)についてモータ制御器26による決定を要するのが一般的であるのに対して、利用されるACモータ28は、連続時間領域制御された交流(AC)波形で動作するように構成される。ACモータ28は、ノード35を介して連続時間領域制御された交流(AC)波形を受信する(ゆえに、ACモータ28は常に駆動されるように構成される)。下記でより詳細に記述されるように、ACモータ28を駆動するノード35上のモータ相電流波形は、宇宙機10からの1つ又は複数の入力(たとえば、リード27及び宇宙機電力バス25)に基づくノード35-1、35-2及び35-3上のモータ相電流波形の組合せである。加えて、下記でより詳細に記述されるように、例示の実施形態はFOC108を含むデジタル制御システム86を利用し、ノード35上の電流波形の生成においてデジタル電子機器の使用を最大限に活用し、宇宙機制御モジュール22にかかる負担を軽減する。
【0015】
[0018]図2に示す実施形態では、モータ制御器26は、フィルタ82、デジタル制御システム86、及び電源スイッチ素子84の配置を備える。さまざまな実施形態において、モータ制御器26は、温度センサ90、アナログ-デジタル変換器92、電流センサ96及びデジタルアイソレータ98のうちの1つ又は複数をさらに備えてよい。被制御モータ組立体40は、前述のモータ制御器26及びACモータ28を備えることができる。
【0016】
[0019]モータ制御器26には、いくつかのI/O端子(加えて接地)が結合される。図2を参照すると、このI/O端子は、(i)宇宙機電力バス電圧(VBUS)を含み、電流が宇宙機10からモータ制御器26に、かつモータ制御器26から移動できるようにする宇宙機電力バス25と、(ii)複数の異なるサポートされた通信プロトコルを用いて与えられ得る宇宙機10からのコマンドを受け付けるリード27上のコマンド入力と、(iii)リード29上のコマンド出力とを含む。リード27上のコマンド入力は、デジタル制御システム86によってサポートされる複数の異なる通信プロトコルの中から選択的に調整するために用いられ得る。選択的な調整は、リード27上のさらなるコマンドの受信を開始するのに先立って、(リード27上のコマンド入力としての)ユーザ又はシステム要求の通信プロトコルを検知すること、及びそれに応じてデジタル制御システム86内のタイミングプロトコル及びデータ管理プロトコルを調整することを含み得る。一実施形態では、リード27はユーザ要求のシリアルプロトコルを受信し、次にユーザ要求のシリアルプロトコルに従った入力コマンドを受信する。しかしながら、他の実施形態では、リード27はさまざまなパラレルプロトコルに従ったコマンドを受信する。リード29上のコマンド出力はシリアル遠隔計測出力又はシリアルコマンド応答出力であってよく、これはリード27上のコマンド入力に基づく。
【0017】
[0020]ACモータ28、デジタル制御システム86、及び電源スイッチ素子84の配置は結合され、本明細書において記述される通り、それらの構成は相互の機能である。ACモータ28は、高周波信号(ノード35-1、35-2及び35-3上のモータ相電流、まとめてノード35上のモータ相電流)で動作するように(又は高周波信号によって駆動されるように)構成される。この応用例のために、「高周波」は約200KHz以上を意味する。ノード35上の高周波信号はデジタル制御システム86から送られ、高周波パルス幅変調された(PWM:pulse width modulated)信号として受信される。
【0018】
[0021]デジタル制御システム86は、パルス幅変調器100-1、100-2及び100-3、まとめてPWM100を介して高周波信号(ノード35上のモータ相電流)を生成し(下記で詳細に記述される)、これらの高周波信号は電源スイッチ素子84の配置(スイッチ84-1、スイッチ84-2及びスイッチ84-3)を駆動し、これは結果としてノード35上のモータ相電流を生じる。
【0019】
[0022]電源スイッチ素子84は、ACモータ28の周波数に対応するために早いスイッチング速度を有するように構成される。一実施形態では、電源スイッチ素子84は窒化ガリウム(GaN)トランジスタであり、シリコンMOSFETスイッチより少なくとも一桁速く切り換える。電源スイッチ素子84は、ACモータ28とフィルタ82との間で結合され、ノード35-1、35-2及び35-3上のモータ相電流のための経路を提供する。デジタル制御システム86は、コマンド入力、ACモータに関連する位置センサのフィードバック及びパラメータに基づいて電源スイッチ素子84の作動を制御し、制御はPWM100を介して電源スイッチ素子84の作動に対して行われる。パラメータは不揮発性メモリ(NVM:non-volatile memory)88に記憶され得る。コマンド入力、ACモータに関連する位置センサのフィードバック及びパラメータのいずれか1つの変更はPWM100構成要素の変更をトリガし、これは、電源スイッチ素子84の作動の変更をトリガする。本明細書において用いられるように、「A」が「B」をトリガする場合、BはAに応答する。一実施形態では、電源スイッチ素子84の作動を制御することは、たとえば、スイッチ84-1がノード35-1を駆動し、スイッチ84-2がノード35-2を駆動し、スイッチ84-3がノード35-3を駆動するための一連の作動を(PWM100構成要素を介して)制御することによって、電源スイッチ素子84を別々に制御することをさらに含む。電流は、内部RWAバス31及び宇宙機電力バス25を介して電源スイッチ素子84の配置に、及び電源スイッチ素子84の配置から移動することができる。
【0020】
[0023]フィルタ82は、宇宙機電力バス25と内部RWAバス31との間で電気ノイズ及び電磁ノイズが結合されるのを抑制するように構成される。必要とされるフィルタ82の大きさもまた、ACモータ28の周波数とパルス幅変調器100-1、100-2及び100-3とに基づく。必要とされるフィルタ82の大きさはACモータ28の周波数と反比例の関係を有し、ACモータ28の周波数が増加すると、フィルタ82の大きさは減少し得る。加えて、フィルタ82は高いdv/dtのパルス幅変調された(PWM)エッジに基づいて構成される。実際に、フィルタ82を電源スイッチ素子84の配置のできるだけ近くに置くことで、高周波動作に起因してACモータ28が通常遭遇するストレスを軽減することができる。
【0021】
[0024]個々の電流センサ96-1、96-2及び96-3(まとめて電流センサ96)は、任意の商用の電流検知デバイス又は技術を含むことができる。個々の電流センサ96-1、96-2及び96-3は、それぞれ電源スイッチ素子84の配置とACモータ28との間で結合される個々のノード35-1、35-2及び35-3上に置かれてよい。電流センサ96は、アナログ-デジタル変換器92に検知された電流入力49を提供する。
【0022】
[0025]まとめてデジタルアイソレータ98と呼ばれる個々のデジタルアイソレータ98-1~98-7は、ACモータ28、電源スイッチ素子84及び宇宙機電力バス25のためのガルバニック絶縁を行う。理論上、デジタルアイソレータ98-1~98-7は厳密にはデジタル信号アイソレータであり、デジタル制御システム86によって生成される非常に高いdv/dtのパルス幅変調された(PWM)信号からのノイズに直面したとしても、いかなるアナログ信号も通過させない。図示された実施形態は、個々の電源スイッチ素子、すなわちスイッチ84-1、スイッチ84-2及びスイッチ84-3それぞれにデジタル制御システム86を結合する個々のデジタルアイソレータ(98-1、98-2及び98-3)を示す。
【0023】
[0026]温度センサ90は、応用例に適した任意の商用の温度センサであってよい。この温度センサ90はACモータ28内のロータの温度を検知し、ノード47上のロータ温度入力をアナログ-デジタル変換器92に提供することができる。アナログ-デジタル変換器92は、応用例に適した任意の商用のアナログ-デジタル変換器であってよい。このアナログ-デジタル変換器92は、ノード33、49及び47を介して検知されたアナログ信号を受信し、この検知されたアナログ信号をそれぞれデジタル信号に変換し、これらはデジタル制御システム86への入力として(ノード45において)提供される。ACモータ28のノード49上で検知されたロータ電流は、ノード35-1、35-2及び35-3から集合的に検知され、宇宙機電力バス25から検知された電流はノード43上で入力される。
【0024】
[0027]位置センサ94は、ACモータ28に関連するロータの位置を検知し、その検知された位置はノード41上のロータ位置になる。位置センサ94はまた、ノード43におけるロータ速度になるロータの速度も検知する。動作中、位置センサ94はノード37上のアナログ信号を検知し、ノード39-1、39-2及び39-3上でデジタル信号を出力する。一実施形態では、位置センサ94はホールセンサ94-1、ホールセンサ94-2及びホールセンサ94-3を備える。しかしながら、他の実施形態では、位置センサ94は、アナログセンサ、光学エンコーダ、リゾルバ、抵抗デバイス及び磁気抵抗デバイスを含むセットから1つ又は複数を備えてよく、また、さまざまな実施形態において、位置センサ94は1つ又は複数の位置検知スキームを実行して、必要とされるノード39-1、39-2及び39-3上のデジタル信号を作出又は生成することができる。
【0025】
[0028]デジタル制御システム86に再度注目すると、デジタル制御システム86は、モータ制御器26のためのデジタル信号処理構成要素及びモジュールを備える。デジタル制御システム86の機能性は、たとえば、FOCs、正弦波ドライブ、ACモータ制御アルゴリズムなど、当技術分野において知られているデジタル論理素子のさまざまな組合せによって実行され得る。デジタル制御システム86は、1つ又は複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、汎用マイクロコントローラ及びマイクロプロセッサをさらに備えることができる。デジタル制御システム86内での構成要素及びモジュールの配置によって、本明細書に記述される機能を実行するように配置される1つ又は複数の抵抗器、メモリ管理制御、データ管理制御、システムタイミング及び論理ブロックが有ってよい。図2に示す非限定的な例では、デジタル制御システム86は、FOC108、不揮発性メモリ(NVM88)、宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110、速度検知論理106を含むブロック、位置推定器論理104を含むブロック、ADCドライバ及びスケーラ102、パルス幅変調器100-1、100-2及び100-3、並びにテストインターフェース120を含む。他の実施形態では、デジタル制御システム86は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)を備える。デジタル制御システム86は、デジタルアイソレータ98を介してRWA20の残りの部分のアナログ信号処理からバッファされ得る。デジタル制御システム86は、リード29上のデータ出力コマンドとしてのフィードバック(遠隔計測)を宇宙機制御モジュール22に提供する(たとえば、モータ制御器26及びACモータ28の状態など)。
【0026】
[0029]デジタル制御システム86は、複数のACモータに関連するパラメータ及び変数をNVM88内に記憶する。NVM88は、任意の周知の形式の記憶媒体、又は、任意の種類の読出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ又はこれらの任意の組合せを含む任意の種類のメモリ技術を含むことができる。これは、たとえば、但しこれらに限定されるわけではないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線又は半導体のシステム、装置、デバイス又は伝播媒体を含む種々の媒体を包含する。いくつかの実施形態では、NVM88は、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM:random-access memory)、読出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、電気的消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、固体メモリ又は他のメモリ技術、CD ROM、DVD、他の光学ディスク記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶デバイス、及び所望のデータを記憶するために用いられ得る任意の他の媒体など、不揮発性の、取外しできる、及び/又は取外しできない媒体を含む。例証を単純化するために、NVM88はデジタル制御システム86の外部にある単一のブロックとして図示されるが、NVM88は分散されることがあり、かつ、その一部はデジタル制御システム86の内部にあっても外部にあってもよい。
【0027】
[0030]NVM88に記憶される複数のACモータの各ACモータに関連するパラメータの非限定的な例として、摩擦、トルク定数及び最大電流を含む。NVM88はまた、さまざまなサポートされた通信プロトコル、メモリ管理プロトコル及びタイミングプロトコルに関するアルゴリズム及び変数を記憶することもできる。リード27におけるコマンド入力、ノード33及び35における位置センサのフィードバック、及びACモータ28に関連して取得されたパラメータに基づいて、デジタル制御システム86は(パルス幅変調器100-1、100-2及び100-3を介して)電源スイッチ素子84の配置の作動を制御し、リード29においてデータ出力を生成する。一実施形態では、リード27におけるコマンド入力はユーザ要求されているシリアルコマンド入力であり、リード29におけるデータ出力はシリアルデータ出力である。
【0028】
[0031]FOC108は、ノード52-1、52-2及び52-3(まとめて52)を介してパルス幅変調器100-1、100-2及び100-3に結合される。一実施形態では、パルス幅変調器100は、FOC108の制御下でパルス幅変調を実行する。一実施形態では、パルス幅変調器100-1、100-2及び100-3は、スペクトラム拡散の空間ベクトルパルス幅変調(SVPWM:space vector pulse width modulation)を実行し、本明細書に記述されるように、それらの出力は電源スイッチ素子84の配置を作動させる。
【0029】
[0032]FOC108は、ノード53を介して、宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110、速度検知論理106、位置推定器論理104、及び、ADCドライバ及びスケーラ102に結合される。速度検知論理106はACモータ28のロータ速度を判断し、これは宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110を介して外部の宇宙機制御に伝達され得る。位置推定器論理104は位置センサ94から出力を受信し、これを処理し、かつ、これを宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110を介してFOC108及び外部の宇宙機制御に伝達する。ADC92は、ノード33上で検知された宇宙機入力電力バス電流、ノード49上で検知されたモータ相電流、及びノード47上で検知されたモータ温度を含むセットから1つ又は複数を受信するように構成される。ADCドライバ及びスケーラ102は、98-4によってADC92からデジタル的に絶縁される。ADCドライバ及びスケーラ102は、ノード45においてアナログ-デジタル変換器92から受信された信号をスケール及び駆動する。
【0030】
[0033]宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110は、ノード51を介して速度検知論理106に結合される。この速度検知モジュールはノード35上のロータ速度入力(たとえばホールセンサデータ)を受信し、これを速度情報(たとえばRPM)に変換し、これはまた、宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110に送信される。宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110は、(i)生成されたリード29におけるデータ出力がユーザ要求を満たし、かつ(ii)それに応じてリード27におけるコマンド入力がデジタル制御システム86内での使用のために受信されるように、ユーザ要求のコマンドプロトコル、並びにこれに基づく構成論理、タイミング及びデータ処理を受け付ける機能を実行することができる。加えて、宇宙機インターフェース及びRWA制御論理110は、FOC108のためにデータ信号を調整する。
【0031】
[0034]図3は、図2の高効率モータ制御器26に関する方法300の流れ図を示す。提供されるモータ制御器26の実施形態では、デジタル制御システム86は、方法のステップの実行においてアルゴリズム及び関連する規則を実行し、NVM88を参照し、かつ電源スイッチ素子の配置を駆動する。本開示に照らして理解され得るように、方法のステップの順序は図3に示される順次的な実行に限定されるわけではなく、むしろ、適用できるように、かつ本開示に従って、1つ又は複数のさまざまな順序で方法のステップが実行されてよい。さらに理解され得るように、方法の1つ又は複数のステップは、プロセスの精神を変えることなく追加され、又は削除され得る。
【0032】
[0035]302において、宇宙機10から電力が受信される。304において、モータ28の検出及び識別を含む構成要素の初期設定が行われる。306において、識別されたモータ28に関連するパラメータ及び変数が取得される。パラメータ及び変数の取得に続いて、適切なタイミング及びデータ管理を設定するために追加の初期設定が行われ得る。308において、通信プロトコルが受信され得る。前述のように、通信プロトコルはシリアル又はパラレルであってよく、また、ユーザ供給又は宇宙機10によって提供されるものであってよい。310において、宇宙機10からのコマンドが受信される。312において、モータ制御が生成される。リード29を介する宇宙機への出力は方法300の実行中いつでも生じ得、リード27上で受信された入力コマンドによって開始され得る。加えて、電流は、たとえば宇宙機電力バス25内など、宇宙機10とモータ制御器26との間を移動することができる。
【0033】
[0036]とりわけ、提供されるモータ制御器26は十分な範囲のモータ制御を実行することができ、これらの義務に関して宇宙機10の負担を軽減する。たとえば、宇宙機10は、もはや、たとえば任意の所与のRWA20によって用いられる特定のモータ28の軸受抗力(bearing drag)のようなモータ28の特徴を「知り」、それらの特徴を処理し、次にRWA20にモータ制御コマンドを送り返す必要はない。この区分化は、製造及び品質保証の容易さを向上させる。それゆえ、提供されるモータ制御器26及び被制御モータ組立体40は、たとえば、重量、部品数、大きさ及びコストを抑えつつ効率を高めるなどさまざまな技術的効果をもたらす。RWAとの使用に加えて、被制御モータ組立体40は、環境制御生命維持システム(ECLSS:Environmental Control and Life Support System)用の線形位置システム、ジンバル機構、アンテナ機構及びファンを含むセットから1つ又は複数と組み合わされてよい。
【0034】
[0037]前述の「発明を実施するための形態」では少なくとも1つの例示の実施形態が提示されてきたが、多数の変形形態が存在することを理解されたい。また、例示の実施形態は単なる例にすぎず、本開示の範囲、適用可能性又は構成を限定することは全く意図されないことについても理解されたい。むしろ、前述の「発明を実施するための形態」は、例示の実施形態を実施するための好都合なロードマップを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲において述べられる本開示の範囲及びこれらと法的に同等であるものから逸脱することなく、要素の機能及び配置にさまざまな変更が加えられ得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0035】
10 宇宙機
20 RWA
22 宇宙機制御モジュール
24 多機能入力/出力通信モジュール
25 宇宙機電力バス
26 モータ制御器、高効率モータ制御器
27 リード
28 モータ、ACモータ
29 リード
30 慣性要素
31 内部RWAバス
32 ロータ組立体
33 ノード
35 ノード
35-1 ノード
35-2 ノード
35-3 ノード
37 ノード
39-1 ノード
39-2 ノード
39-3 ノード
40 被制御モータ組立体
41 ノード
43 ノード
45 ノード
47 ノード
49 電流入力、ノード
51 ノード
52 ノード
53 ノード
82 フィルタ
84 電源スイッチ素子
84-1 スイッチ
84-2 スイッチ
84-3 スイッチ
86 デジタル制御システム
88 不揮発性メモリ、NVM
90 温度センサ
92 アナログ-デジタル変換器、ADC
94 位置センサ
94-1 ホールセンサ
94-2 ホールセンサ
94-3 ホールセンサ
96 電流センサ
98 デジタルアイソレータ
100 パルス幅変調器、PWM
102 ADCドライバ及びスケーラ
104 位置推定器論理
106 速度検知論理
108 磁界方向制御、FOC
110 宇宙機インターフェース及びRWA制御論理
120 テストインターフェース
図1
図2
図3