(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20220701BHJP
E06B 1/70 20060101ALI20220701BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
E06B7/22 A
E06B1/70 A
E05D15/06 124Z
(21)【出願番号】P 2018010130
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 智
(72)【発明者】
【氏名】須賀 陽一
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-177438(JP,A)
【文献】特開2006-233452(JP,A)
【文献】実開昭54-157449(JP,U)
【文献】実開昭62-002768(JP,U)
【文献】特開2002-285766(JP,A)
【文献】特開2006-188818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/22
E06B 1/70
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子と下枠とを備え、障子は下部に戸車を有し、戸車は外周に溝を有するものであり、下枠は、戸車の溝が係合するレールと、レールの室外側に位置し、深さが戸車の溝の深さ
よりも深く室内外方向の幅が上にいくほど広い掘り込み部と、掘り込み部の室外側に位置するフラットな下枠上面と、レールの室内側に位置し障子の垂下片を案内する垂下片案内溝と、レールの根元から垂下片案内溝に向けて設けた水平片を有し、レールの上端が下枠上面と略同じ高さであり、下枠の水平片と障子の垂下片との間、垂下片案内溝の室内側壁と障子の垂下片との間にそれぞれ気密材を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠上面が略フラットな建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障子下部に設けた垂下片を下枠上面の溝に挿入し、障子下部に設けた外周に溝の無い戸車でフラットな下枠上面を走行する建具があった(例えば、非特許文献1参照)。かかる従来の建具は、障子の開閉時に障子が蛇行する問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山アルミ株式会社発行のカタログ「後付樹脂内窓 プラメイク」(カタログNo.STJ0134C T.10.03-060)、2010年3月、p.13-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、下枠上面を略フラットにしながら、障子の蛇行を防止できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、障子と下枠とを備え、障子は下部に戸車を有し、戸車は外周に溝を有するものであり、下枠は、戸車の溝が係合するレールと、レールの室外側に位置し、深さが戸車の溝の深さよりも深く室内外方向の幅が上にいくほど広い掘り込み部と、掘り込み部の室外側に位置するフラットな下枠上面と、レールの室内側に位置し障子の垂下片を案内する垂下片案内溝と、レールの根元から垂下片案内溝に向けて設けた水平片を有し、レールの上端が下枠上面と略同じ高さであり、下枠の水平片と障子の垂下片との間、垂下片案内溝の室内側壁と障子の垂下片との間にそれぞれ気密材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による建具は、戸車の溝が係合するレールの室外側に掘り込み部を有し、掘り込み部の室外側にフラットな下枠上面を有し、レールの室内側に設けた垂下片案内溝に障子の垂下片を案内し、レールの上端を下枠上面と略同じ高さにしたので、下枠上面を略フラットにしながら、障子の蛇行を防止できる。レールの根元から垂下片案内溝に向けて水平片を有し、水平片と障子の垂下片との間、垂下片案内溝の室内側壁と障子の垂下片との間にそれぞれ気密材を有するので、気密性が優れている。掘り込み部がレールの室外側にしかなく、掘り込み部は深さが戸車の溝の深さよりも深く室内外方向の幅が上にいくほど広くなっていることで、障子の建て込みがしやすいと共に、掃除が一層容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図2の建具の下枠側を拡大して示す縦断面図である。
【
図2】本発明に係る建具の一実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明に係る建具の一実施形態を示している。本建具は、
図2,3に示すように、既設の窓(外窓)11の屋内側に後付けされる内窓12に適用したものである。本建具は、額縁等の造作材13の内周側面に個々に取付けられる上枠14、下枠2、及び左右の縦枠15,15と、上下枠14,2間に引違い状に開閉自在に納めた外障子1a及び内障子1bとを備える。
上枠14と下枠2と左右の縦枠15,15は、樹脂の押出形材で形成してある。外障子1a及び内障子2bは、樹脂の押出形材より成る上框16と下框17と戸先框18と召合せ框19を四周框組みし、その内側にガラス20を嵌め込んで構成してある。下框17には、
図1に示すように、戸車3が取付けてあり、室内側に垂下片7を有している。戸車3は、外周に溝4を有するものとなっている。
【0009】
下枠2は、
図1に示すように、下枠上面2aに設けた掘り込み部5と、掘り込み部5の室内側に位置し戸車3の溝4が係合するレール6と、レール6の室内側に位置し障子1a,1bの垂下片7を案内する垂下片案内溝8と、レール6の根元から垂下片案内溝8に向けて設けた水平片9を有し、レール6の上端が下枠上面2aと同じ高さとなっており、下枠上面2aが略フラットになっている。戸車3は、溝4の外周側端4aが下枠上面2aより低い位置にあって、且つ掘り込み部5の底壁21から離れている。掘り込み部5とレール6と垂下片案内溝8と水平片9は、外障子1a用と内障子1b用にそれぞれ設けてある。
【0010】
掘り込み部5は、底壁21の下枠上面2aからの深さが2mmで、室外側の壁22が室外側に向かって斜め45°で上向きに傾斜している。これにより掘り込み部5は、上に向かうにつれて見込方向の幅が広くなっている。
レール6は、高さが2mm、見込方向の幅が3mmとなっており、室外側及び室内側の角をR状に面取りしてある。
垂下片案内溝8は、室外側壁23と底壁24と室内側壁25とで、上面が開口したコ字形に形成され、下枠上面2aからの深さが13.5mm、見込方向の幅が約10mmとなっている。室外側壁23は、レール6の真下に位置しており、これにより障子1a,1bの荷重を受けやすい構造となっている。また、底壁24は下枠底面2bから浮かせて設けてあり、底壁24と下枠底面2b間にリブ26が設けてある。本下枠2は、垂下片案内溝8の底壁24を造作材13にネジ止めされるが、上記のように底壁24を下枠底面2bから浮かせ、底壁24と下枠底面2b間にリブ26を設けてあることで、ネジ27を締め付けたときに底壁24が変形するのを防止できる。
水平片9は、掘り込み部5の底壁21と同じ高さに設けてあり、垂下片案内溝8の室外側壁23より室内側に2.5mm突出している。水平片9の先端は、円弧状に形成してある。
【0011】
本建具は、下枠2の水平片9と障子1a,1bの垂下片7との間、垂下片案内溝8の室内側壁25と障子1a,1bの垂下片7との間にそれぞれ気密材10a,10bを有している。この2箇所の気密材10a,10bのうち、一方の気密材10aは垂下片7に設けてあり、他方の気密材10bは下枠2に設けてある。
図1に示す例では、下枠2の水平片9と障子1a,1bの垂下片7との間の気密材10aが、垂下片7の下端部より室外側に向けて設けられ、同気密材10aは中間部で上向き湾曲しており、先端部が水平片9の先端に室内側から当接している。垂下片案内溝8の室内側壁25と障子1a,1bの垂下片7との間の気密材10bは、垂下片案内溝8の室内側壁25の上端部より斜め下向きに設けられ、その先端部が垂下片7の上下方向中間部に当接している。
【0012】
次に、本建具の施工手順を説明する。まず、上枠14と下枠2と左右の縦枠15,15を、枠組みしない状態で個々に造作材13の内周側面にネジ27で取付ける。下枠2を取付ける際、一方の気密材10aを障子1a,1bの垂下片7に設けたことで、下枠2の垂下片案内溝8が広く開いているため、ネジ止め作業がしやすい。その後、障子1a,1bを上下枠14,2間に室内側からけんどんで建て込む。その際、下枠上面2aの掘り込み部5が、上に向かうにつれて見込方向の幅が広くなっていることで、戸車3で下枠上面2aを傷つけたりすることなく、戸車3をレール6と容易に係合させることができ、障子1a,1bの建て込みがしやすい。また、障子1a,1bの垂下片に設けた気密材10aは先端が上向きで、下枠2の垂下片案内溝8に設けた気密材10bは先端が下向きのため、障子1a,1bの垂下片7を下枠の垂下片案内溝8に挿入する際に、気密材10a,10bが引っ掛かることがなく、挿入しやすい。その後、必要に応じて戸車3の高さ調整を行い、障子1a,1bの建てつけを調整する。下枠2の垂下片案内溝8に設けた気密材10bが垂下片7の上下方向中間部に当接しているため、障子1a,1bが多少上に上がっても気密材10bが垂下片7に当接した状態を維持できる。
【0013】
以上に述べたように本建具は、下枠上面2aに設けた掘り込み部5の室内側に戸車3の溝4が係合するレール6を有し、レール6の室内側に設けた垂下片案内溝8に障子1a,1bの垂下片7を案内し、レール6の上端を下枠上面2aと略同じ高さにしたので、下枠上面2aを略フラットにしながら、障子1a,1bの蛇行を防止できる。レール6の根元から垂下片案内溝8に向けて水平片9を有し、水平片9と障子1a,1bの垂下片7との間、垂下片案内溝8の室内側壁25と障子1a,1bの垂下片7との間にそれぞれ気密材10a,10bを有するので、気密性が優れている。
障子1a,1bがスムーズに開閉できる状態を維持するため、掘り込み部5に入ったゴミは除去する必要があるが、掘り込み部5がレール6の室外側にしかなく、しかも掘り込み部5はごく浅いものであり、尚且つ上に向かうにつれて見込方向の幅が広くなっているため、雑巾で拭いたりほうきで掃いたりすることで、ゴミを簡単に除去できる。なお、レール6の室内側の水平片9上のゴミは、垂下片案内溝8に落せばよい。垂下片案内溝8の内側は、日常的に掃除する必要はなく、年に1回程度掃除するだけでよい。
本建具は、一方の気密材10aを障子1a,1bの垂下片7に設け、他方の気密材10bを下枠2に設けたことで、垂下片案内溝8が広くなり、掃除がしやすい。
気密材10a,10bは、垂下片7に設ける場合は先端が上向きで、下枠2に設ける場合は先端が下向きとすることで、垂下片7を垂下片案内溝8に挿入する際に気密材10a,10bが引っ掛かることがなく、挿入しやすい。
本建具は、下枠上面2aの掘り込み部5を、上に向かうにつれて見込方向の幅を広くしたことで、障子1a,1bを建て込む際に戸車3で下枠上面2aを傷つけるのを防げるので、障子1a,1bの建て込みがしやすいと共に、掃除もしやすくなる。
本建具は、戸車4の外周側端4aを下枠上面2aと略同じ高さ又は下枠上面2aより低い位置とすることで、レール6が戸車4で隠れるので、下枠2の上面はフラットな部分2aしか見えない。
【0014】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。下枠の材質は、樹脂に限らず、アルミや、アルミと樹脂の複合であってもよい。気密材は、両方とも下枠側に設けることもできる。気密材は、垂下片や下枠と一体に設けてもよいし、別に形成したものを垂下片や下枠に取付けてもよい。本建具は、引違い窓に限らず、片引き窓にも適用することができ、また、腰窓と掃出し窓の何れにも対応できる。
【符号の説明】
【0015】
1a 外障子(障子)
1b 内障子(障子)
2 下枠
3 戸車
4 溝
5 掘り込み部
6 レール
7 垂下片
8 垂下片案内溝
9 水平片
10a,10b 気密材