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特許7097739側面フレームにスリットを備えた運搬用台車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】側面フレームにスリットを備えた運搬用台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/14 20060101AFI20220701BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20220701BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B62B3/14
B62B3/02 Z
B62B5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018077936
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019182311
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390005463
【氏名又は名称】ヤマト・インダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕之
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-016080(JP,U)
【文献】特開平08-080855(JP,A)
【文献】特開2017-081473(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00475501(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
B65D 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面にキャスターを有する床フレームの上面に、荷物を載せることができる床板を備え、前記床フレームの対向辺に、第1側面フレームおよび第2側面フレームを有する運搬用の台車であって、前記第1側面フレームと前記第2側面フレームとを結ぶ方向を走行方向として、以下のように構成したことを特徴とする側面フレームにスリットを備えた運搬用台車。
(1) 前記床フレームは、前記第1側面フレームの下方付近に第1キャスターを備え、かつ前記第2側面フレームの各支柱の下方付近に第2キャスターを備え、前記第1キャスターの外方と前記第2キャスターの内方との間に空隙部を形成した。
(2)前記第1側面フレームは、縦方向の支柱を備え、前記支柱周りに回動自在に第1柵および第2柵を取り付け、前記第1柵および第2柵は、略面一状態の広げた状態と折り畳んで重ねた状態とを取ることができるように構成した。
(3) 前記第2側面フレームは、前記走行方向で、他の運搬用台車の第1側面フレームの重ねた状態の第1柵および第2柵が通過可能な縦スリットを形成した。
(4) 前記第2側面フレームで、前記床板の直上に、他の運搬用台車の床板が通過する横スリットを形成した。
(5) 前記床板は、前記第1側面フレーム側が高く、前記第2側面フレーム側が低くなるように傾斜して配置され、前記床板は、前記縦スリットに連続し、他の運搬用台車の第1側面フレームの支柱の下端部が通過できる床スリットを形成した。
【請求項2】
下面にキャスターを有する床フレームの上面に、荷物を載せることができる床板を備え、前記床フレームの対向辺に、第1側面フレームおよび第2側面フレームを有する運搬用の台車であって、前記第1側面フレームと前記第2側面フレームとを結ぶ方向を走行方向として、以下のように構成したことを特徴とする側面フレームにスリットを備えた運搬用台車。
(1) 前記床フレームは、前記第1側面フレームの下方付近に第1キャスターを備え、かつ前記第2側面フレームの各支柱の下方付近に第2キャスターを備え、前記第1キャスターの外方と前記第2キャスターの内方との間に空隙部を形成した。
(2)前記第1側面フレームは、縦方向の支柱を備え、前記支柱周りに回動自在に第1柵および第2柵を取り付け、前記第1柵および第2柵は、略面一状態の広げた状態と折り畳んで重ねた状態とを取ることができるように構成した。
(3) 前記第2側面フレームは、前記走行方向で、他の運搬用台車の第1側面フレームの重ねた状態の第1柵および第2柵が通過可能な縦スリットを形成した。
(4) 前記床板は、前記第2側面フレーム側の略水平軸周りに回転して起伏自在として、前記床フレーム上に載置される伏せ状態と、前記第2側面フレームに沿って立てかける起状態とをとることができるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行安定とネスティングを考慮し、側面フレームにスリットを備えた運搬用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
下面のキャスターを有し上面に荷物を載せて運搬する運搬用台車では、運搬用台車を発進するときおよび停止するときに荷崩れしやすいので、走行方向の前後に荷崩れ防止の側面フレームが必要になる。またこれらの運搬用台車は使用しない時にはコンパクトに収納されることが望まれている。多くの運搬台車は矩形で、短辺側から押す作業が主になるので、短辺幅で複数台をコンパクトに収納する(ネスティングする)ことが便利になる。
【0003】
また、キャスターや側面フレームを支える床フレームが必要であり、ネスティングする場合には、平面視で、床フレームがコンパクトに重ねるために、例えば、床フレームを平面視で閉じた側が狭い略U字状とする構造(特許文献1。図1図3)を採用していた。このような運搬用台車をネスティングする場合、床フレームはそのまま走行方向で重ねることができた。
【0004】
しかし、ネスティングする場合、進行方向どちらかの側面フレームが邪魔になるので、例えば、略U字状の閉じた側(走行方向前側)の側面フレームを支柱ごと移動して、他方の側面フレームに添わせるように運搬用台車を変形させていた(特許文献1。図5)。あるいは、略U字状の閉じた側(走行方向前側)の側面フレームを取り外す場合もあった(図示していない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-236311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の運搬用台車の場合、側面フレームを大きく移動変形させることが必要となり、変形させるための操作がやや面倒となり、また、側面フレームが進行方向後ろ側に重なり、さらに床板も進行方向後ろ側に重なるので、やや重量バランスが後ろ側に偏る状態となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1側面フレームに支柱周りに折り畳みできる第1柵および第2柵を備え、第2側面フレームに縦スリットおよび横スリットを設け、床板に床スリットを設けたので、ネスティングに際して、側面フレームの支柱の位置を大きく移動させるような変形をすることなく、前記問題点を解決した。
【0008】
即ちこの第1の発明は、下面にキャスターを有する床フレームの上面に、荷物を載せることができる床板を備え、前記床フレームの対向辺に、第1側面フレームおよび第2側面フレームを有する運搬用の台車であって、前記第1側面フレームと前記第2側面フレームとを結ぶ方向を走行方向として、以下のように構成したことを特徴とする側面フレームにスリットを備えた運搬用台車である。
(1) 前記床フレームは、前記第1側面フレームの下方付近に第1キャスターを備え、かつ前記第2側面フレームの各支柱の下方付近に第2キャスターを備え、前記第1キャスターの外方と前記第2キャスターの内方との間に空隙部を形成した。
(2)前記第1側面フレームは、縦方向の支柱を備え、前記支柱周りに回動自在に第1柵および第2柵を取り付け、前記第1柵および第2柵は、略面一状態の広げた状態と折り畳んで重ねた状態とを取ることができるように構成した。
(3) 前記第2側面フレームは、前記走行方向で、他の運搬用台車の第1側面フレームの重ねた状態の第1柵および第2柵が通過可能な縦スリットを形成した。
(4) 前記第2側面フレームで、前記床板の直上に、他の運搬用台車の床板が通過する横スリットを形成した。
(5) 前記床板は、前記第1側面フレーム側が高く、前記第2側面フレーム側が低くなるように傾斜して配置され、前記床板は、前記縦スリットに連続し、他の運搬用台車の第1側面フレームの支柱の下端部が通過できる床スリットを形成した。
【0009】
また、第2の発明は、下面にキャスターを有する床フレームの上面に、荷物を載せることができる床板を備え、前記床フレームの対向辺に、第1側面フレームおよび第2側面フレームを有する運搬用の台車であって、前記第1側面フレームと前記第2側面フレームとを結ぶ方向を走行方向として、以下のように構成したことを特徴とする側面フレームにスリットを備えた運搬用台車である。
(1) 前記床フレームは、前記第1側面フレームの下方付近に第1キャスターを備え、かつ前記第2側面フレームの各支柱の下方付近に第2キャスターを備え、前記第1キャスターの外方と前記第2キャスターの内方との間に空隙部を形成した。
(2)前記第1側面フレームは、縦方向の支柱を備え、前記支柱周りに回動自在に第1柵および第2柵を取り付け、前記第1柵および第2柵は、略面一状態の広げた状態と折り畳んで重ねた状態とを取ることができるように構成した。
(3) 前記第2側面フレームは、前記走行方向で、他の運搬用台車の第1側面フレームの重ねた状態の第1柵および第2柵が通過可能な縦スリットを形成した。
(4) 前記床板は、前記第2側面フレーム側の略水平軸周りに回転して起伏自在として、前記床フレーム上に載置される伏せ状態と、前記第2側面フレームに沿って立てかける起状態とをとることができるように構成した。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、第1側面フレームに支柱周りに折り畳みできる第1柵および第2柵を備え、第2側面フレームに、他の運搬用台車の柵を折り畳んだ第1側面フレームが通過できる縦スリットおよび床板に床スリットを設け、かつ第2側面フレームに、他の運搬用台車の床板が通過できる横スリットを設けた。この特徴により、この運搬用台車は走行時に安定して荷物を運搬でき、かつ不使用時に簡単な操作で、複数台の運搬用台車を、ネスティング効率が良いネスティングができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の運搬用台車で、(a)は平面図、(b)は正面図、をそれぞれ表す。
図2】(a)はこの発明の運搬用台車でキャスターを省略した底面図、(b)は図1(a)のA-A線における断面図である。
図3】この発明の運搬用台車で、(a)は左側面図(前方側)、(b)は右側面図(後方側)、をそれぞれ表す。
図4】この発明の運搬用台車の作動状態の平面図で、(a)は第1側面フレームの片側を外に開いた状態、(b)は第1側面フレームの全体を内側に畳んだ状態、をそれぞれ表す。
図5】この発明の運搬用台車をネスティングした状態の平面図を表し、(a)は2台、(b)は4台、の場合をそれぞれ表す。
図6】この発明の他の実施形態で、キャスターを6つにした運搬用台車を表し、(a)は左側面図、(b)は正面図、を表す。
図7】他の実施形態の運搬用台車を4台ネスティングした状態の平面図を表す。
図8】この発明の第二の実施形態で、(a)は左側面図、(b)は正面図をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施態様の運搬用台車40の構成
【0013】
(1) 直線状の斜め材2、2を斜めに並列して、間隔が狭い側の斜め材2、2の端を前直線材3で連結して、間隔が広い側を開放して、平面視略U字状の床フレーム1を構成する。開放した間隔が広い側を床フレーム1の開放端4とする(図1(a)。
前直線材3の両端部(斜め材2、2との連結位置付近)の下面1bに、下面に前キャスター8a(第1キャスター)を取り付けた前方取付板5、5を固定し、斜め材2、2の開放端4の下面1bに、下面に後ろキャスター8b(第2キャスター)を取り付けた後方取付板6、6をそれぞれ固定する。走行時、前キャスター8a、8aが進行方向前側に位置し、後ろキャスター8b、8bが進行方向後ろ側に位置する。また、前方取付板3、33は、床フレーム1の下面1bで、斜め材2、2間に架設された補強材7と、床フレーム1の前直線材3との間に架設固定されている。前記において、前キャスター8a、8aは垂直軸周りに旋回自在のいわゆる自在キャスターとして、後ろキャスター8b、8bは旋回できないいわゆる固定キャスターとしてある。
また、側面視で後ろキャスター8b、8bが外側に、前キャスター8a、8aが内側に、所定の間隔を空けて配置され(図3(a)(b))、側面視で、前キャスター8aの外方と後ろキャスター8bの内方との間に空隙部9が形成される(図3(a)(b))。したがって、直線走行した際に、前キャスター8a、8aの走行軌跡と後ろキャスター8b、8bの走行軌跡が重ならないように配置されている。
【0014】
(2) 床フレーム1の上面1a側に、荷物を載せる床板10を取り付ける。床板10の下面12に床フレーム1の補強材7の上面に固定した突部材7aが、当接して下面12に固定されて、床板10は、後ろ側の縁14が床フレーム1の上面1aに位置し、前側の縁13の上面11が、高さH1だけ床フレーム1の上面1aから浮いた状態となり、前側が高く後ろ側が低くなるように斜めに配置される(図1(b))。
また、床板10には、後ろ側の縁14から前側の縁13に向けて長さL1、幅D1の床スリット17を形成してある。床スリット17の長さL1は、床板10の前後方向の長さL0に対して、3分の2程度で形成されている(図2(b))。
【0015】
(3) 前方側面フレーム20(第1側面フレーム)は、支柱21を挟んで両側に、荷崩れ防止用などの第1柵22および第2柵22aが取り付けられた構造である。第1柵22および第2柵22aは、並列した内縦材23(23a)と外縦材24(24a)の上下を横材25(25a)、25(25a)で連結し、側面視で角を丸めた縦長長方形となっている(図3)。また、支柱21には、支柱21の長さ方向に沿って、縦方向の縦回転軸26、26aを取り付けてあり、縦回転軸26周りに第1柵22の内縦材23が、縦回転軸26a周りに第2柵22aの内縦材23aがそれぞれ回動自在に取りつけられている(図3(a))。
前方側面フレーム20の支柱21の下端を、床フレーム1の前直線材3の上面で、ほぼ中央に固定する。第1柵22および第2柵22aの外縦材24、24aは、平面視で床板10の側縁15、15とほぼ同じ位置にある。
また、前方側面フレーム20は、第1柵22および第2柵22aを縦回転軸26、26a周りに回転させると、内側(床板10の上方)、外側(床板10が無い方)で、それぞれ第1柵22および第2柵22aが重なるように並列させることができ、この状態で、第1柵22および第2柵22aの平面視の幅(厚さ)をL2とする(図4(b))。
また、第1柵22、第2柵22a内には縦横の桟材が配置されている(図3(a))。
【0016】
(4) 後方側面フレーム30(第2側面フレーム)は、並列した支柱31、31aの上端を横材32で連結して、角を丸めた略門型形状のフレーム基材33を形成し、支柱31と横材32との間、支柱31aと横材32との間に、それぞれ荷崩れ防止用の柵材34、34aを固定して、構成される。柵材34(34a)は、縦材36(36a)の下縁に横材35(35a)を連結して角を丸めた略L状に形成してある。また、柵材34(34a)は、縦材36(36a)の上縁をフレーム基材33の横材32に固定し、横材35の端縁をフレーム基材33の縦材31の下端部に、横材35aの端縁をフレーム基材33の縦材31aの下端部に、それぞれ固定してある(図3(b))。また、柵材34の縦材36aの外縁と柵材34aの縦材36aの外縁とは、距離L3を離して配置され、後方側面フレーム30には、フレーム基材33の横材32の下方に幅L3の縦長の側面縦スリット38が形成される。この際、前方側面フレーム20の重ねた第1柵22および第2柵22aの幅(厚さ)L2に対して、側面縦スリット38の幅L3は、
L2<L3
で形成されている。また、フレーム基材33(支柱31、31a、横材32)と柵材34、34aとの間には、縦横の桟材が配置されている(図3(a))。
後方側面フレーム30の支柱31、31aの下端を、それぞれ床フレーム1の後方取付板6、6の上面に固定する。この状態で、床板10は後方側面フレーム30の支柱31、31a間に挟まれるように配置され、すなわち、床板10の側縁15、15は後方側面フレーム30の支柱31、31aより内側に位置する。また、床フレーム1の上面1aと、後方側面フレーム30の柵材34、34aの横材35、35aの下面との間に、距離H3の側面横スリット39が形成される(図3(b)、図1(b))。ここで、前記の床板10の上面11の前側の縁13の高さ(床フレーム1の上面1aから)H1に対して(図1(b))、
H1<H3
で形成されている。
【0017】
(5)以上のようにして、運搬用台車40を構成する(図1図3)。なお、ここで、床板10の走行方向の全体の長さL00(側面フレーム20、30を含めた運搬用台車40の走行方向の全長)として、走行方向に直交する方向の全体の長さを幅W0(側面フレーム20、30を含めた運搬用台車40の全幅)とした場合(図1(a))、
W00<L00
としてある。
また、ここで、一般的には例えば、
L00×W00=770mm×1100mm
L00×W00=1100mm×1500mm
などの大きさを採用するが、運搬用台車40が積載する荷物や、運搬用台40、40自体を搬送する大型トラックの荷台の大きさなどにより、L00、W00の数値は任意である。
【0018】
2.運搬用台車40の作動
【0019】
(1) 運搬用台車40は、床板10の上面11に荷物を載せて、通常の運搬用台車と同様に荷物を搬送する際に使用する。この場合、通常は矢示42方向(前方側面フレーム20が前側に位置するように)、地面43を走行する。この際、前キャスター8a、8aは垂直軸周りに旋回自在のいわゆる自在キャスターとして、後ろキャスター8b、8bは旋回できないいわゆる固定キャスターとして、かつ運搬用台車40の走行方向の長さL00、幅W00に対して
W00<L00
としたので、運搬用台車40を走行方向42に走行させる場合に安定して走行させることができる(図1)。
また、荷物を搬送して走行する場合、床板10は傾斜しているが、高さH1が「床板の厚さ+α」程度となるので、長さL0にもよるが、傾斜角度は3~10度程度であり、荷物が床板10上面11で、滑ることはない。また、床スリット17の幅D1は通常、10~15cm程度であり、段ボール箱など通常の荷物の搬送時に問題が生じることはないが、床スリット17の幅D1よりも小さなものを運ぶ際には、床スリット17を塞ぐようなシートを床板10の上面11に載せることが望ましい(図示していない)。
また、運搬用台車40から荷物の揚げ降ろしをする際には、通常は床板の10の側縁15、15側から行うが(図1(a)、図4(a))、前方側面フレーム20の第1柵材22、第2柵材22aの一方または両方を、縦回転軸26、26a周りに、外側(走行方向の前側=矢示42側)に、矢示44のように回転させれば(図4(a))、前方側面フレーム20側からも荷物の揚げ降ろしをすることができる。
【0020】
(2) 運搬用台車40を使用しない場合には、複数の運搬用台車40、40をネスティングできる。
運搬用台車40の前方側面フレーム20の第1柵材22および第2柵材22aを縦回転軸26、26a周りに、内側(走行方向の後ろ側=矢示42の反対側=床板10の上方側)に、矢示45、45のように、回転させれば、第1柵材22および第2柵材22aが並列するように幅L2に重ねることができる(図4(b)。この状態を前方側面フレーム20Aとする)。この状態で、床フレーム1に対して、前方側面フレーム20の支柱21、後方側面フレーム30の支柱31、31は相対的な位置を保ったまま(床フレーム1から取り外す必要もない)、運搬用台車40をネスティング状態に変形できる。
このように変形させた運搬用台車40をゆっくり走行させながら、前方側面フレーム20A側(床板10の前側の縁13)を、他の運搬用台車40aの後方側面フレーム30側(床板10の後ろ側の縁14)から重ねれば、幅L2の前方側面フレーム20Aは、他の運搬用台車40aの側面縦スリット(幅L3)を通過し、かつ支柱21は他の運搬用台車40aの床板10の床スリット17(幅D1)に入り、かつ床板10の前側の縁13(高さH1)は他の運搬用台車40aの側面横スリット39(高さH3)を通過できる。したがって、運搬用台車40の前方側面フレーム20Aの支柱21が他の運搬用台車40aの床スリット17の底17a付近に位置する状態まで、両運搬用台車40、40をネスティングできる(図5(a))。また、この場合、運搬用台車40の床フレーム1の前直線材3側は、他の運搬用台車40aの床フレーム1の開放端4側から入り、両床フレーム1、1が走行方向で重なるが、両運搬用台車40、40aで前キャスター8、8、後ろキャスター8a、8aが緩衝して当接するおそれはない。
また、運搬用台車40は、前方側面フレーム20Aの状態で走行させても、第1柵材22、第2柵材22aの重心は床フレーム1側(運搬用台車40の中心側)に移動するので、運搬用台車40の走行時の安定性を失うことはない。
同様に、4台の運搬用台車40、40a、40b、40cをネスティングした状態を、図5(b)に示す。
【0021】
3.他の実施態様
【0022】
(1) 前記実施形態において、前方側面フレーム20の第1柵材22、第2柵材22a内の縦横の桟材の構成の他の構成とすることができる(図示していない)。また、後方側面フレーム30の縦横の桟材も他の構成とすることができる(図示していない)。
【0023】
(2) また、前記実施形態において、床フレーム1、床板10の走行方向の長さL0を長くして、床フレーム1の下面1bで、走行方向で、前方取付板5と後方取付板6との間に、中間取付板6a
を固定して、中間取付板6aの下面に中間キャスター8cを固定して、いわゆる六輪台車として使用することもできる(図6)。
この場合、側面図視で、前キャスター8aと中間キャスター8cとの間に水平方向の間隙9a、後ろキャスター8bと中間キャスター8cとの間に水平方向の間隙9bが形成されるので、各キャスター8a、8b、8cの走行軌跡が重ならず(図6(a))、ネスティングした際にも重ねた運搬用台車で、キャスター8a(前方取付板5)、キャスター8b(後方取付板6)、キャスター8c(中間取付板6a)が緩衝することを防止できる(図7)。
【0024】
(3) 前記実施形態において、前キャスター8a、8aは垂直軸周りに旋回自在のいわゆる自在キャスターとして、後ろキャスター8b、8bは旋回できないいわゆる固定キャスターとしたので、荷物搬送時に走行がより安定するが、キャスターは他の構成とすることもできる(図示していない)。
また、同様に、より走行安定性を高めるために、運搬用台車40の走行方向の長さL00として、走行方向に直交する方向の長さを幅W00として(図1(a))、
W00<L00
としたが、
L00≦W00
とすることもできる(図示していない)。
【0025】
4.第二の実施形態の運搬用台車50
【0026】
前記実施形態では、床板10を斜めに配置したが、この運搬用台車50では、床板10を略水平に配置して、かつ起伏可能とした実施形態である。
【0027】
(1) 前記実施形態と同様の床フレーム1、前方側面フレーム20、後方側面フレーム30を使用する。
【0028】
(2) 床板10は、床スリット17の幅D1に応じた幅D1の間隔52を空けて配置した床板片10a、10bから構成する(図8(a))。床板片10a、10bの後ろ側の縁14に、帯状の連結片53、53をそれぞれ垂直に固定する。
ここで、後方側面フレーム30の側面縦スリット38の幅L3に対して、
L3≦D1
で形成されている。
【0029】
(3) 後方側面フレーム30で、支柱31の下端部(柵材34の屈曲部付近)で、支柱31と柵材34(縦材36)との間に水平回転軸54を架設する。また、同様に、支柱31aの下端部(柵材34aの屈曲部付近)で、支柱31aと柵材34a(縦材36a)との間に水平回転軸54aを架設する。
【0030】
(4) 床フレーム1の上面1bに、間隙52を保ったまま、床板片10a、10bを載置する。この状態で、床板片10aの連結片53、53の先端は、後方側面フレーム30の水平回転軸54付近にあり、連結片53、53の先端部を水平回転軸54に回転自在に取り付ける。同様に、床板片10bの連結片53a、53aの先端は、後方側面フレーム30の水平回転軸54a付近にあり、連結片53a、53aの先端部を水平回転軸54aに回転自在に取り付ける。
【0031】
(5) 以上のようにして、運搬用台車50を構成する(図8)。他の構成は前記実施形態の運搬用台車40と同様である。
【0032】
(6) 運搬用台車50は、床板片10a、10bの上面11に荷物を載せて搬送する。
運搬用台車50を使用しない場合には、まず、床板片10a、10bを矢示46のように、回転させて、水平状態から略垂直状態に起こして、床板片10a、10bを後方側面フレーム30に沿った状態で保持する(図8(b))。この状態で、
L3≦D1
であるので、後方側面フレーム30の側面縦スリット38内に、起こした床板片10a、10bがはみ出すおそれはない(図8(a))。以下、前記実施形態と同様に、前方側面フレーム20の第1柵22および第2柵22aを折り畳み、複数台の運搬用台車50、50をネスティングできる(図5参照)。また、前記実施形態の運搬用台車40とこの運搬用台車50とを混在させてネスティングすることもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0033】
1 床フレーム
1a 床フレームの上面
1b 床フレームの下面
2 床フレームの斜め材
3 床フレームの前直線材
4 床フレームの開放端
5 床フレームの前方取付板
6 床フレームの後方取付板
6a 床フレームの中間取付板
7 床フレームの補強材
7a 床フレームの突部材
8 前キャスター(第1キャスター)
8a 後ろキャスター(第2キャスター)
8c 中間キャスター
9、9a、9b 空隙部
10 床板
11 床板の上面
12 床板の下面
13 床板の前側の縁
14 床板の後ろ側の縁
15 床板の側縁
17 床板の床スリット
17a 床スリットの底
20 前方側面フレーム(第1側面フレーム)
20A 畳んだ前方側面フレーム
21 前方側面フレームの支柱
22 前方側面フレームの第1柵
22a 前方側面フレームの第2柵
23(23a) 第1の柵(第2の柵)の内縦材
24(24a) 第1の柵(第2の柵)の外縦材
25(25a) 第1の柵(第2の柵)の横材
26(26a) 第1の柵(第2の柵)の縦回転軸
30 後方側面フレーム(第2側面フレーム)
31、31a 後方側面フレームの支柱
32 後方側面フレームの横材
33 後方側面フレームのフレーム基材
34、34a 後方側面フレームの柵材
35、35a 柵材の横材
36、36a 柵材の縦材
38 後方側面フレームの側面縦スリット
39 後方側面フレームの側面横スリット
40、50a、40b、40c、50 運搬用台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8