(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】電流検出システム、蓄電システム
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20220701BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220701BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20220701BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20220701BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R19/00 M
G01R31/3828
G01R31/396
H02J7/02 H
(21)【出願番号】P 2018084432
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】椎名 三四郎
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519803(JP,A)
【文献】特開2006-138783(JP,A)
【文献】特開2005-261130(JP,A)
【文献】特開2002-050406(JP,A)
【文献】特開2011-209086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 31/36-31/396
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出対象に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記第1電流検出部より電流検出範囲が広く、かつ前記第1電流検出部より電流検出精度が低い電流検出部であり、前記検出対象に流れる電流を、前記第1電流検出部と並行して検出する第2電流検出部と、
前記第1電流検出部により検出された電流値を積算するための第1積算部と、
前記第2電流検出部により検出された電流値を積算するための第2積算部と、
前記第1積算部に積算された第1積算値と、前記第2積算部により積算された第2積算値との差分を算出する差分算出部と、
前記差分算出部により算出された差分をPI補償、P補償またはPID補償して補償値を生成する補償部と、
前記補償部により生成された補償値を、前記第2電流検出部により検出された電流値に加算する補償値加算部と、
前記検出対象の電流値が前記第1電流検出部の電流検出範囲に収まっているか否か判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記電流値が前記第1電流検出部の電流検出範囲内のとき前記第1電流検出部の出力値を前記第1積算部に出力し、前記電流値が前記第1電流検出部の電流検出範囲外のとき前記補償値加算部の出力値を前記第1積算部に出力する選択部と、
を備えることを特徴とする電流検出システム。
【請求項2】
前記検出対象は、蓄電可能なセルであり、
前記第1積算値または前記第2積算値をもとに前記セルのSOC(State Of Charge)が算出されることを特徴とする請求項
1に記載の電流検出システム。
【請求項3】
直列接続された複数のセルと、
前記複数のセルのそれぞれの電圧を検出する電圧検出部と、
前記複数のセルに流れる電流を検出する請求項
1に記載の電流検出システムと、
前記電圧検出部により検出された各セルの電圧と、前記電流検出システムにより
生成された
前記第1積算値または前記第2積算値をもとに、各セルのSOC(State Of Charge)を推定するSOC推定部と、
を備えることを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池などの対象物に流れる電流を検出する電流検出システム、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。さらにモータ走行による航続距離を伸ばすために、セルやモジュールを並列接続して電池容量が増加された車両が増えてきている。安全性を確保しつつモータ走行による航続距離を伸ばすには、セルのSOC(State Of Charge)を高精度に管理することが重要となる。セルに電流が流れている期間において、セルのSOCを推定するには、電流積算法を用いることが一般的である。電流積算法は、充放電開始時のセルのOCV(Open Circuit Voltage)に対応するSOCを初期値として、当該SOCの初期値に充放電電流の積算値を加算することにより、現在のSOCを推定する方法である。
【0003】
電流積算法により高精度にSOCを推定するには、電流センサの検出精度を向上させることが重要である(例えば、特許文献1参照)。上述のように車載電池の容量増加に伴い、セルに流れる電流の値が大きくなってきており、広い電流検出範囲を持つ電流センサが必要になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、広い電流検出範囲を持つ電流センサは、オフセット誤差が大きくなる傾向にある。電流検出範囲が広く検出精度が高い電流センサを汎用品で見つけるのは難しく、仮に存在した場合でも単価が高くなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、広範囲の電流を高精度に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電流検出システムは、所定の検出対象に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記第1電流検出部より電流検出範囲が広く、かつ前記第1電流検出部より電流検出精度が低い電流検出部であり、前記検出対象に流れる電流を、前記第1電流検出部と並行して検出する第2電流検出部と、前記第1電流検出部により検出された電流値を積算した第1積算値と、前記第2電流検出部により検出された電流値を積算した第2積算値との差分をもとに、前記第1電流検出部の電流検出範囲を超えた期間における前記第1電流検出部の出力値を補正する補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広範囲の電流を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電流検出システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、第1電流検出部の構成例を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(c)は、第1電流検出部及び第2電流検出部により検出される電流波形の一例を示す図である。
【
図4】
図1の電流検出システムを、車載用の蓄電システムに適用した例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る電流検出システム50の構成を示す図である。電流検出システム50は、対象物5に流れる電流を検出するシステムであり、第1電流検出部11、第2電流検出部12及び補正部15を備える。対象物5は、電流経路Pc上に接続された電池や負荷である。第1電流検出部11及び第2電流検出部12は、対象物5が接続された電流経路Pcに流れる電流を同時並行で検出する。第1電流検出部11は、第2電流検出部12より検出精度が高いが、第2電流検出部12より電流検出範囲(以下、レンジという)が狭い。第1電流検出部11のレンジ外の電流が流れた場合、第1電流検出部11の保証外の値となるため、第2電流検出部12で検出された値を使用する必要がある。
【0011】
図2(a)、(b)は、第1電流検出部11の構成例を示す図である。
図2(a)に示す構成例1は、第1電流検出部11を、ホール素子11a、差動アンプ11b及びA/D変換器11cで構成する例である。ホール素子11aはホール効果を利用して、電流経路Pcに流れる電流により発生する磁界を電圧に変換して出力する。ホール素子11aは例えば、電流経路Pcの近傍に設置された磁気コアのギャップ内に設置される。磁気コアは電流配線を囲むように設置されてもよい。ホール素子11aには定電流が供給されており、ホール素子11aは磁気コアに発生した磁界に応じた電圧を出力する。
【0012】
差動アンプ11bはホール素子11aから入力される電圧を増幅して出力する。A/D変換器11cは、差動アンプ11bから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換して出力する。
【0013】
図2(b)に示す構成例2は、第1電流検出部11を、シャント抵抗Rs、差動アンプ11b及びA/D変換器11cで構成する例である。シャント抵抗Rsは電流経路Pcを構成する配線に挿入される。差動アンプ11bはシャント抵抗Rsの両端電圧を増幅して出力する。A/D変換器11cは、差動アンプ11bから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換して出力する。
【0014】
図2(a)に示す構成例1及び
図2(b)に示す構成例2のいずれにおいても、第1電流検出部11の出力値にオフセット誤差が発生し得る。差動アンプ11b及びA/D変換器11cでは、レンジが広いものほどオフセット誤差が発生しやすく、発生したオフセット誤差も大きなものとなる。特にA/D変換器はレンジが広く、高分解能・高精度なものを実現することが難しい。レンジが広いA/D変換器は、検出精度が低くなる傾向にある。またホール素子11a及びシャント抵抗Rsについても、プロセスや環境条件などにより、無視できないオフセット誤差が発生することがある。
【0015】
第1電流検出部11と第2電流検出部12は、同じ構成例のものが用いられてもよいし、異なる構成例のものが用いられてもよい。いずれにしても、第2電流検出部12の方が第1電流検出部11よりレンジが広く、検出精度が低いものが用いられる。
【0016】
図3(a)-(c)は、第1電流検出部11及び第2電流検出部12により検出される電流波形の一例を示す図である。
図3(a)-(c)は、電流経路Pcに、振幅が±600Aの正弦波電流が流れている場合のシミュレーション結果である。縦軸は電流を示し、横軸は時間を示す。第1レンジは第1電流検出部11の電流検出範囲を示し、第2レンジは第2電流検出部12の電流検出範囲を示す。
図3(a)-(c)に示す例では第1レンジが±400Aに設定されており、第2レンジが±800A以上に設定されている。第1電流検出部11のオフセット誤差は0A、第2電流検出部12のオフセット誤差は-40Aとしている。
【0017】
図3(b)は、第1電流検出部11で検出された電流波形を示している。
図3(b)では±400Aを超えるレンジについても正しく電流波形が描かれているが、実測する場合には±400Aを超えるレンジについては、値が保証されない。
図3(c)は、第2電流検出部12により検出された電流波形を示している。第2電流検出部12はオフセット誤差により、実際の電流値より40A低い電流値を出力している。
図3(a)は、後述する選択部15bから出力される電流値の波形を示している。第1レンジ内の電流値にはオフセット誤差がなく、第1レンジ外で第2レンジ内の電流値にはオフセット誤差が含まれるが、値は保証される。
【0018】
図1に戻る。第1電流検出部11及び第2電流検出部12により検出された電流値は、それぞれ補正部15に出力される。補正部15は、第1電流検出部11により検出された電流値を積算した第1積算値と、第2電流検出部12により検出された電流値を積算した第2積算値との差分をもとに、第1レンジを超えた期間における第1電流検出部11の出力値を補正する。以下、補正部15の具体的な構成例を説明する。
【0019】
補正部15は、レンジ判定部15a、選択部15b、補償値加算部15c、第1積算部15d、第2積算部15e、差分算出部15f及び補償部15gを含む。補正部15は例えば、マイクロコンピュータなどを用いたデジタル信号処理で実現できる。なお補正部15の全体または一部の機能をハードウェア素子で実現してもよい。
【0020】
レンジ判定部15aは、第1電流検出部11及び/又は第2電流検出部12により検出された電流値をもとに、電流経路Pcに流れている電流が第1レンジに収まっているか否か判定する。レンジ判定部15aは、判定結果を選択部15bに出力する。
【0021】
選択部15bは、当該判定結果が第1レンジ内を示す場合は第1電流検出部11の出力値を第1積算部15dに出力し、当該判定結果がレンジ外を示す場合は、補償値加算部15cの出力値を第1積算部15dに出力する。
【0022】
第1積算部15dは原則として、第1電流検出部11により検出された電流値を積算する。第2積算部15eは原則として、第2電流検出部12により検出された電流値を積算する。差分算出部15fは、第1積算部15dに積算された第1積算値と、第2積算部15eにより積算された第2積算値との差分を算出する。
図1に示す例では、差分算出部15fは、第1積算値から第2積算値を減算して生成した差分値を補償部15gに出力する。
【0023】
補償部15gは、差分算出部15fにより算出された差分値をもとに、PI補償により補償値を生成する。なお、PI補償の代わりにP補償やPID補償を用いてもよい。補償値加算部15cは、第2電流検出部12の出力値に、補償部15gにより生成された補償値を加算する。当該補償値は、第1電流検出部11の検出値と第2電流検出部12の検出値が理想的に同じ値であり続ければ0になる。補償値加算部15cの出力値は、選択部15b及び第2積算部15eに出力される。
【0024】
電流経路Pcに流れている電流が第1レンジ内である場合、第1積算部15dは、第1電流検出部11により検出された電流値を積算し続ける。第2積算部15eは、補償値加算部15cにより補正された、第2電流検出部12により検出された電流値を積算し続ける。第2電流検出部12の出力値の方が第1電流検出部11の出力値よりオフセット誤差が大きくなるが、当該オフセット誤差が補償値加算部15cにより補正され、第2積算部15eに入力される電流値の精度が向上する。
【0025】
電流経路Pcに流れている電流が第1レンジ外である場合、第1積算部15dは、第1電流検出部11により検出された電流値ではなく、補償値加算部15cにより補正された第2電流検出部12により検出された電流値を、第1積算値に加算する。従って、電流経路Pcに流れている電流が第1レンジを超えた場合における、第1積算値の精度が向上する。
【0026】
補正部15は、第1電流検出部11の出力値(瞬時値1)、第1積算部15dの出力値(積算値1)、第2電流検出部12の出力値(瞬時値2)及び第2積算部15eの出力値(積算値2)を後段の処理部(不図示)に出力する。当該処理部は各種のアプリケーション処理において、電流経路Pcに流れている電流が第1レンジ内である場合は瞬時値1を使用し、第1レンジ外である場合は瞬時値2を使用する。積算値を使用する場合は当該処理部は、積算値1を使用してもよいし、積算値2を使用してもよいし、両者を平均化した値を使用してもよい。
【0027】
図4は、
図1の電流検出システムを、車載用の蓄電システム1に適用した例を説明するための図である。蓄電システム1は蓄電モジュール20及び管理装置10を備える。
図4に示す例では、
図1に示した電流検出の対象物5は、蓄電モジュール20となる。蓄電システム1は、コンタクタリレー4及びインバータ3を介してモータ2に接続される。インバータ3は力行時、蓄電システム1から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ2に供給する。回生時、モータ2から供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電システム1に供給する。モータ2は三相交流モータであり、力行時、インバータ3から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ3に供給する。
【0028】
コンタクタリレー4は蓄電システム1の蓄電モジュール20とインバータ3を繋ぐ配線間に挿入される。管理装置10は走行時、コンタクタリレー4をオン状態(閉状態)に制御し、蓄電モジュール20と車両の動力系を電気的に接続する。管理装置10は非走行時、原則としてコンタクタリレー4をオフ状態(開状態)に制御し、蓄電モジュール20と車両の動力系を電気的に遮断する。
【0029】
蓄電モジュール20は複数のセルE1-Emが直列接続されて形成される。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。セルE1-Emの直列数は、モータ2の駆動電圧に応じて決定される。
【0030】
なおプラグインハイブリッド車(PHV)の場合、外部の充電器と蓄電システム1を充電ケーブルで接続することにより、蓄電モジュール20を外部から充電することができる。
【0031】
管理装置10は、第1電流検出部11、第2電流検出部12、電圧検出部13、制御部14及び駆動部17を備える。第1電流検出部11及び第2電流検出部12は、
図1に示した第1電流検出部11及び第2電流検出部12と同様であり、蓄電モジュール20に流れる電流を同時並行で検出する。
【0032】
電圧検出部13は、直列接続された複数のセルE1-Emの各ノードと複数の電圧線で接続され、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ検出することにより、各セルE1-Emの電圧を検出する。電圧検出部13は、検出した各セルE1-Emの電圧を制御部14に送信する。
【0033】
電圧検出部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧検出部13はマルチプレクサ及びA/D変換器を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。
【0034】
駆動部17は、制御部14からの制御信号をもとにコンタクタリレー4を開/閉するための駆動信号を生成し、コンタクタリレー4に供給する。
【0035】
制御部14は、マイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM、フラッシュメモリ)により構成することができる。制御部14は、電圧検出部13、第1電流検出部11、第2電流検出部12及び図示しない温度検出部により検出された複数のセルE1-Emの各電圧、電流、及び温度をもとに蓄電モジュール20を管理する。例えば制御部14は、複数のセルE1-Emの少なくとも1つに過電圧、過小電圧、過電流、温度異常が発生すると、駆動部17を制御してコンタクタリレー4を遮断させ、複数のセルE1-Emを保護する。
【0036】
制御部14は、補正部15及びSOC推定部16を含む。補正部15は、
図1に示した補正部と同様である。SOC推定部16は、複数のセルE1-EmのそれぞれのSOCを推定する。SOCは、OCV法または電流積算法により推定できる。OCV法で推定する場合、SOC推定部16は、電圧検出部13により検出される各セルE1-EmのOCVと、不揮発メモリに保持されるSOC-OCVカーブの特性データをもとに各セルE1-EmのSOCを推定する。電流積算法で推定する場合、SOC推定部16は、電圧検出部13により検出される各セルE1-Emの充放電開始時のOCVと、補正部15から入力される複数のセルE1-Emに流れる電流の積算値をもとにSOCを推定する。
【0037】
以上説明したように本実施の形態によれば、レンジが狭く高精度の第1電流検出部11と、レンジが広く低精度の第2電流検出部12を併用し、第1積算値と第2積算値の差分をもとにフィードバック制御によりオフセット誤差を補正する。これにより、広範囲の電流を高精度に検出することができる。また、レンジが狭く高精度の第1電流検出部11と、レンジが広く低精度の第2電流検出部12を併用する方が、レンジが広く高精度の1つの電流検出部を採用する場合より、コストを抑えることができ、冗長性も高い。
【0038】
このように本実施の形態によれば、広範囲の電流を低コストで高精度に検出することができる。車載用の蓄電システムに用いた場合、SOCの推定精度が向上するため、蓄電システム内の容量を効率的に使用することができ、モータ走行による航続距離を伸ばすことができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0040】
上述の実施の形態では電流検出システムを、車載用途の蓄電システム1に適用する例を説明した。この点、定置型蓄電用途の蓄電システムにも適用可能である。またノート型PCやスマートフォンなどの電子機器用途の蓄電システムにも適用可能である。
【0041】
また本実施の形態に係る電流検出システムは、電池に流れる電流を検出する用途に限らず、積算電流を検出する用途全般に適用可能である。例えば、太陽光発電システムの発電量を計測する用途、負荷の所定時間における消費電力を計測する用途などに適用可能である。例えば、スマートメータにも適用可能である。
【0042】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0043】
[項目1]
所定の検出対象(5)に流れる電流を検出する第1電流検出部(11)と、
前記第1電流検出部(11)より電流検出範囲が広く、かつ前記第1電流検出部(11)より電流検出精度が低い電流検出部であり、前記検出対象(5)に流れる電流を、前記第1電流検出部(11)と並行して検出する第2電流検出部(12)と、
前記第1電流検出部(11)により検出された電流値を積算した第1積算値と、前記第2電流検出部(12)により検出された電流値を積算した第2積算値との差分をもとに、前記第1電流検出部(11)の電流検出範囲を超えた期間における前記第1電流検出部(11)の出力値を補正する補正部(15)と、
を備えることを特徴とする電流検出システム(50)。
これによれば、広範囲の電流を高精度に検出することができる。
[項目2]
前記補正部(15)は、
前記第1電流検出部(11)により検出された電流値を積算するための第1積算部(15d)と、
前記第2電流検出部(12)により検出された電流値を積算するための第2積算部(15e)と、
前記第1積算部(15d)に積算された第1積算値と、前記第2積算部(15e)により積算された第2積算値との差分を算出する差分算出部(15f)と、
前記差分算出部(15f)により算出された差分に応じた補償値を生成する補償部(15g)と、
前記補償部(15g)により生成された補償値を、前記第2電流検出部(12)により検出された電流値に加算する補償値加算部(15c)と、
前記検出対象(5)の電流値が前記第1電流検出部(11)の電流検出範囲に収まっているか否か判定する判定部(15a)と、
前記判定部(15a)による判定の結果、前記電流値が前記第1電流検出部(11)の電流検出範囲内のとき前記第1電流検出部(11)の出力値を前記第1積算部に出力し、前記電流値が前記第1電流検出部(11)の電流検出範囲外のとき前記補償値加算部の出力値を前記第1積算部に出力する選択部(15b)と、
を含むことを特徴とする項目1に記載の電流検出システム(50)。
これによれば、電流値が第1電流検出部(11)の電流検出範囲を超えた場合における、第1積算値の精度を向上させることができる。
[項目3]
前記検出対象(5)は、蓄電可能なセル(E1-Em)であり、
前記第1積算値または前記第2積算値をもとに前記セル(E1-Em)のSOC(State Of Charge)が算出されることを特徴とする項目1または2に記載の電流検出システム(50)。
これによれば、高精度なSOCを推定することができる。
[項目4]
直列接続された複数のセル(E1-Em)と、
前記複数のセル(E1-Em)のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部(13)と、
前記複数のセル(E1-Em)に流れる電流を検出する項目1または2に記載の電流検出システム(50)と、
前記電圧検出部(13)により検出された各セル(E1-Em)の電圧と、前記電流検出システム(50)により検出された前記複数のセル(E1-Em)に流れる電流をもとに、各セルのSOC(State Of Charge)を推定するSOC推定部(16)と、
を備えることを特徴とする蓄電システム(1)。
これによれば、蓄電システム(1)に流れる電流を、高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 蓄電システム、 11 第1電流検出部、 12 第2電流検出部、 13 電圧検出部、 15 補正部、 15b 選択部、 15c 補償値加算部、 15d 第1積算部、 15e 第2積算部、 15f 差分算出部、 15g 補償部、 16 SOC推定部、 E1,E2,E3,Em セル、 50 電流検出システム。