(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】熱源機
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20220701BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20220701BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F24H1/14 B
(21)【出願番号】P 2018098624
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 卓也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-227255(JP,A)
【文献】実開昭55-105846(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0201662(US,A1)
【文献】特開昭49-124661(JP,A)
【文献】米国特許第03734065(US,A)
【文献】特開2003-343926(JP,A)
【文献】特開平05-066063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 9/00
F28F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、該バーナの燃焼排気により加熱される熱交換器とを備え、前記熱交換器は、直線状に延設された複数の水管と、各水管の直線状の延設方向に沿って所定間隔を存して複数装着されたフィンとを備える熱源機において、
前記熱交換器は、各フィン間を通過する燃焼排気の流動方向の下流側に設けられて、各フィン間を通過する燃焼排気に抵抗を付与する抵抗付与部材を備え、
前記抵抗付与部材は、各水管に対向する位置に形成されて燃焼排気を通過させる排気通過部と、互いに隣り合う前記水管の間に対向して、各フィン間の間隙を前記水管の直線状の延設方向に沿って閉塞する帯状の閉塞部とを備
え、
前記バーナは、火炎を下方に向けて形成する姿勢で前記熱交換器の上方に配設され、
前記抵抗付与部材の前記閉塞部は、前記水管の直線状の延設方向に沿って延びる樋状に形成されていることを特徴とする熱源機。
【請求項2】
前記抵抗付与部材の前記閉塞部は、前記フィンの端縁に当接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱源機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナと、該バーナの燃焼排気により加熱される熱交換器とを備える熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱源機に設けられる熱交換器は、一般に、所定間隔を存して直線状に延設された複数の水管と、各水管の直線状の延設方向に沿って所定間隔を存して複数装着されたフィンとを備えている。
【0003】
従来、この種の熱交換器として、燃焼排気の流れを遮る折り曲げ突出部をフィンに形成したものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。折り曲げ突出部は、フィンにバーリング加工を施すことにより形成され、複数のフィンを所定間隔を存して各水管に装着したとき、各水管の間に位置して隣接するフィンに向かって突出した状態となっている。
【0004】
これによりフィン間を通過する燃焼排気の流速を適度に低下させて、熱交換時の効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フィンに形成されている折り曲げ突出部は、フィンを水管に装着する際の変形等の影響により、隣接するフィンとの間に隙間が生じやすい。折り曲げ突出部と隣接するフィンとの間に隙間が生じると、その隙間を燃焼排気が通過して熱効率が低下する。
【0007】
熱効率の低下に伴い、燃焼排気は、熱交換器を通過した後であっても比較的高い温度を維持し、排気ダクト等の熱交換器よりも下流にある部品が排出途中の高温の燃焼排気に加熱されて耐久性の低下を招くおそれもある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、熱効率の高い熱源機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、バーナと、該バーナの燃焼排気により加熱される熱交換器とを備え、前記熱交換器は、直線状に延設された複数の水管と、各水管の直線状の延設方向に沿って所定間隔を存して複数装着されたフィンとを備える熱源機において、前記熱交換器は、各フィン間を通過する燃焼排気の流動方向の下流側に設けられて、各フィン間を通過する燃焼排気に抵抗を付与する抵抗付与部材を備え、前記抵抗付与部材は、各水管に対向する位置に形成されて燃焼排気を通過させる排気通過部と、互いに隣り合う前記水管の間に対向して、各フィン間の間隙を前記水管の直線状の延設方向に沿って閉塞する帯状の閉塞部とを備え、前記バーナは、火炎を下方に向けて形成する姿勢で前記熱交換器の上方に配設され、前記抵抗付与部材の前記閉塞部は、前記水管の直線状の延設方向に沿って延びる樋状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、抵抗付与部材が備える帯状の閉塞部は、水管の間に対向しているので(具体的には、水管の間の領域にバーナの反対側から対向しているので)、従来のようなフィンの一部を折り曲げて形成した折り曲げ突出部と異なり、各水管の間におけるフィン間を通過する燃焼排気の流れを確実に遮ることができる。よって熱交換器を通過する燃焼排気に適度な抵抗を付与して高い熱効率を得ることができ、高い排気温度での排出を防止することができる。更に、抵抗付与部材が備える排気通過部は、熱交換器内で閉塞部により抵抗が付与された燃焼排気を整流して円滑に排出することができるので、閉塞部による燃焼排気への過剰な抵抗の付与を防止することができる。
【0011】
また、前記バーナは、火炎を下方に向けて形成する姿勢で前記熱交換器の上方に配設されている。熱交換器がバーナの上方に配設されていると、バーナの燃焼によって熱交換器で生じるドレンがバーナ上に滴下し、円滑な燃焼を阻害するおそれがあるが、バーナを熱交換器の上方に配設することで、熱交換器からバーナへのドレンの滴下を確実に防止することができる。そして、この場合に、抵抗付与部材の閉塞部を樋状に形成することによって、熱交換器で生じるドレンを閉塞部で受けることができ、ドレンの排出等のドレン処理を容易とすることができる。
【0012】
ところで、例えば、フィンの下流端と閉塞部とが当接しておらず、フィンの下流端と閉塞部との間に比較的大きな空隙が形成されていると、燃焼排気は、フィン間を通過した後に前記空隙に入り込んで滞留する。このため、フィン間を通過中の燃焼排気に適度な抵抗が付与されずに比較的速い流速のまま前記空隙に流れ込み、熱効率を十分に向上させることができないおそれがある。
【0013】
そこで、本発明において、前記抵抗付与部材の前記閉塞部は、前記フィンの端縁に当接して設けられていることが好ましい。これによれば、フィンの端縁と閉塞部とが当接していない場合と異なり、フィン間を通過した後の燃焼排気の滞留が殆どない。従って、フィン間を通過中の燃焼排気に適度な抵抗が確実に付与されて燃焼排気の流速が低下するので、高い熱効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の熱源機の要部の構成を模式的に示す図。
【
図2】本実施形態における熱交換器を下方から臨んだ斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の熱源機1は、
図1に主要な構成を模式的に示すように、ガスバーナ2と顕熱熱交換器3と潜熱熱交換器4とを備えている。
【0017】
ガスバーナ2の上部には、ガスバーナ2に燃焼空気を送り込むファン5が接続されている。ガスバーナ2は、底面に燃焼面を備えていて下向きに火炎を形成するように構成されている。ガスバーナ2には、燃料ガス供給管6から燃料ガスが供給される。
【0018】
ガスバーナ2の燃焼により生成された燃焼排気は、顕熱熱交換器3の内部を上方から下方へ抜け、更に、潜熱熱交換器4の内部を通過した後に、排気ダクト7を介して機外へ排出される。ガスバーナ2を顕熱熱交換器3の上方位置に設けることにより、顕熱熱交換器3で生じるドレンがガスバーナ2に滴下することがなく、ガスバーナ2の火炎の消失や燃焼面の損傷が確実に防止でき、良好な燃焼状態を維持することができる。
【0019】
ガスバーナ2は本発明におけるバーナに相当し、顕熱熱交換器3は本発明における熱交換器に相当する。
図2に示すように、顕熱熱交換器3の下面側(燃焼排気の流動方向の下流側)には、抵抗付与部材8が取り付けられている。
【0020】
図3に示すように、顕熱熱交換器3は、四角筒状の枠体9と、枠体9の内部を直線状に横断する複数の水管10と、各水管10に装着された複数のフィン11とを備えている。
【0021】
枠体9内部で直線状に延びている各水管10は、
図2に示すように、枠体9の周壁内部に形成された接続管部12を介して接続されており、一本の水(又は熱媒)の流路を形成している。
【0022】
また、枠体9の周壁内部には水管10に連通する冷却管部13が形成されている。冷却管部13は、水管10に供給する水(又は熱媒)により枠体9を冷却するが、それと同時に、水管10内部に向かう水(又は熱媒)が加熱されるので、顕熱熱交換器3全体としての熱効率を一層向上させている。
【0023】
顕熱熱交換器3は、上述したように接続管部12や冷却管部13が枠体9の周壁内部に形成されていることにより、枠体9の外側への張出し部分が比較的少なく、外形がコンパクトとなっている。
【0024】
各フィン11は、水管10の延設方向に沿って所定間隔を存して多数設けられている。枠体9、水管10、フィン11、及び抵抗付与部材8は、本実施形態では何れもステンレススチールによって形成されているが、銅などの他の金属で形成されていてもよい。
【0025】
フィン11は、
図4に一部を拡大して示すように、円形の水管挿通孔14と、折り曲げ突出部15とが形成されている。水管挿通孔14には、水管10が挿通される。水管10には水管挿通孔14の内周縁が溶接等により接合され、これによって、水管10とフィン11とが一体的に連結固定される。
【0026】
折り曲げ突出部15は、フィン11の一部をバーリング加工等により隣接する他のフィン11に向かって突出するように折り曲げて形成されている。折り曲げ突出部15は、互いに隣り合う水管10の間に位置し、当該位置を通過して直下に向かう燃焼排気の流れを遮る。折り曲げ突出部15によって直下方向への流れが遮られた燃焼排気は、水管10の方向に向かう流れとなって、水管10の近傍に位置するフィン11からの吸熱効果が増加する。これにより、熱効率が向上する。
【0027】
抵抗付与部材8は、
図5に示すように、帯状の閉塞部16と、スリット状の排気通過部17とを交互に配した構成となっている。
【0028】
閉塞部16は、
図4に示すように、水管10の間に対向して(詳しくは、水管10の間の領域にガスバーナ2の反対側から対向して)、折り曲げ突出部15の下方に位置するように設けられている。これにより、閉塞部16は、水管10が直線状に延びる方向に沿って連続してフィン11間を閉塞する。折り曲げ突出部15は、各フィン11に個別に設けられているために、折り曲げ精度のばらつき等が生じたり、フィン11を水管10に装着する際の歪み等が生じることがあり、この影響によって、折り曲げ突出部15と隣接するフィン11との間に隙間が生じて燃焼排気が通過してしまうおそれがある。そこで、折り曲げ突出部15の下方位置(燃焼排気の流動方向の下流側)に閉塞部16を配置することで、折り曲げ突出部15と隣接するフィン11との間に隙間が生じていても、その直下に向かう燃焼排気の流れを確実に遮ることができる。これによって、フィン11間を通過中の燃焼排気は、閉塞部16によって付与される抵抗により適度に流速が低下するので、熱効率が向上する。
【0029】
更に、閉塞部16は、
図4に示すように、フィン11の下流側端縁に当接して設けられている。閉塞部16がフィン11の下端縁に当接していることにより、閉塞部16とフィン11の下端縁との間での燃焼排気の滞留を小さく抑えることができるので、熱効率を一層向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態においては、水管10の間の下方端部のフィン11の形状が下方に突出しており、この形状に対応して閉塞部16の形状も断面凹形状(樋状)に形成されている。閉塞部16が樋状であって両側縁に沿って斜め上方に起立する(上方に向かって互いに対向間隔が広くなる)一対の壁16a,16bを備えることにより、フィン11間に生じるドレンを受けることができる。
【0031】
更に、本実施形態においては、
図4に示すように、閉塞部16に当接するフィン11の端縁の一部に切欠き部18が形成されていて、閉塞部16とフィン11の端縁との間に、極めて小さいが隙間が形成されている。これによれば、閉塞部16が受けたドレンがフィン11によって堰き止められることがなく、樋状の閉塞部16上のドレンが円滑に流れるので、ドレンの排出が容易となる。
【0032】
排気通過部17は、
図4に示すように、水管10に対向する下方位置に形成されており、水管10の直下位置を水管10の延設方向に沿って開放している。これによれば、閉塞部16で遮られた燃焼排気が整流され、排気通過部17から円滑に流出させることができる。
【0033】
更に、排気通過部17の水管に沿って延びる両側には、閉塞部16の壁壁16a,16bが形成されている。この壁壁16a,16bは、排気通過部17を中央としたとき上方から下方に向かって次第に間隔が広くなる。これによれば、排気通過部17を通過する燃焼排気が、その両側に位置する閉塞部16の壁壁16a,16bにより確実に整流されるので、燃焼排気を一層円滑に通過させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…熱源機、2…ガスバーナ(バーナ)、3…顕熱熱交換器(熱交換器)、8…抵抗付与部材、10…水管、11…フィン、16…閉塞部、17…排気通過部。