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特許7097783着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20220701BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C10/14
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018160275
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2019043842
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 119 914.4
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2018 101 423.6
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エーフェリン ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュピーア
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ボックマイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツェンカー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シェーンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス シュティナー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ホーホライン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ マーテンス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブーク
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520226(JP,A)
【文献】特表2012-528064(JP,A)
【文献】特表2015-528782(JP,A)
【文献】特表2013-532622(JP,A)
【文献】特表2016-509987(JP,A)
【文献】特表2013-531776(JP,A)
【文献】特開2016-155742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計で0~<1000ppmのAs23含有率および/またはSb23含有率、
55ppm~200ppmのV25含有率、
450ppm~1000ppmのFe23含有率、
3~9のFe23/V25の比率(両方とも質量%で表す)、
および不純物を除いてCoO、NiOおよびCr23を含まないこと、
ならびに次の透過率特性:
Y(D65、2°)が2.5%以上で、10%以下
τ(465nmで)>1.0%
差(Y(D65、2°)-τ (465nmで) )が3%以下
を特徴とし、
酸化物を基準として質量%で表して次の成分:
Li 2 O 3.0~4.2
Na 2 O+K 2 O 0.2~1.5
Al 2 3 19~23
SiO 2 60~69
TiO 2 2.5~4
ZrO 2 0.5~2
SnO 2 0.05~<0.6
を含む、着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項2】
Y(D65、2°)が2.5%超で、10%以下
τ(465nmで)>1.2%
差(Y(D65、2°)-τ (465nmで) )が3%未満
を特徴とする、請求項1記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項3】
10.9%±3.8%、好ましくは10.9%±2.5%、特に好ましくは10.9%±2.0%、全く特に好ましくは10.9%±1.5%のτ(630nm)を特徴とする、請求項1または2記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項4】
前記リチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックは、さらに、酸化物を基準として質量%で表して次の成分:
MgO 0~1.5
CaO+SrO 0~4
BaO 0~3
ZnO 0~2.2
2 5 0~3
2 3 0~2
かつ場合によりCeO2のような化学清澄剤の添加物および硫酸塩化合物、塩化物化合物、フッ化物化合物のような清澄添加物は全体の含有率中で2.0質量%まで
を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項5】
前記リチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックは、酸化物を基準として質量%で表して次の成分:
Li2O 3.2~4.0
Na2O+K2O 0.4~1.2
MgO 0.1~1.3
CaO+SrO 0.2~1
BaO 1.5~2.8
ZnO 1~2.2
Al23 20~22
SiO2 62~67
TiO2 2.8~3.5
ZrO2 1~1.8
SnO2 0.1~0.4
25 0~0.1
23 0~1
かつ場合により硫酸塩化合物、塩化物化合物、フッ化物化合物のような清澄添加物は全体の含有率中で1.0質量%まで
を含むことを特徴とする、請求項4記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項6】
SnO2含有率が0.05~0.4質量%、好ましくは0.05~0.3質量%、特に好ましくは0.05~0.2質量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項7】
5~7のFe23/V25の比率(両方とも質量%で表す)を特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項8】
700ppm~1000ppmのFe23含有率を特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項9】
100ppm~200ppmのV25含有率を特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項10】
前記リチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックは、主結晶相として高温石英混晶を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミック。
【請求項11】
2mm~20mmの厚みを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックからなるガラスセラミックプレート。
【請求項12】
クックトップとして、暖炉覗き窓ガラス/暖炉内装材もしくは外装材として、照明領域の遮閉として、および任意に貼り合わせ複合材内の安全ガラスとして、キャリアプレートもしくは炉内装材としての、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラスセラミックプレートを含む物品の使用。
【請求項13】
前記クックトップは、下側被覆を備えたクックトップとして、および/または常温領域内、つまりディスプレイ領域/表示領域内に照明用に空所、いわゆる空白部を備え、かつ/または温熱領域内に、つまり調理領域内に被覆材を備えた下側が被覆されたクックトップとして、および/または前記クックトップの下側から観察者に向かって出射する光を均一に分配するいわゆるディフューザー層を備えたクックトップとして、および/または接着されたまたは印刷されたまたは被覆された形で適用されたいわゆる色補正フィルタを備えたクックトップとして、および/または動作を調節および制御するために貼り合わされた、印刷されたまたは押し付けられた形で適用された不透明または透明な容量型センサ構造を備えたクックトップとして、および/または操作ボタン、ガスバーナー、排気システム(いわゆる下降流システム)および/またはその他の機能モジュール用に1つ以上の穿孔を備えかつ/または1つ以上の角部に平坦なカット面を備えたクックトップとして、および/または表示領域および/または温熱領域内に局所的に高められた/変更された、Y(D65、2°)値によって定義される透過率を有するクックトップとして構成されている、請求項12記載のガラスセラミックプレートを含む物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックに関する。本発明は、このようなLASガラスセラミックの使用にも関する。
【0002】
Li2O-Al23-SiO2の系からなるガラスは、主結晶相として高温石英混晶および/またはケアタイト混晶を有するガラスセラミックに変換することができることは公知である。ガラスセラミックの第1のタイプについては、文献中では「β-石英」または「β-ユークリプタイト」の同義語が見られ、かつ第2のタイプについては、この結晶相についての名称として「β-スポジュメン」が見られる。LASガラスセラミックについての好ましい適用範囲は、そのクックトップとしての使用である。
【0003】
このガラスセラミックの中心的特性は、このガラスセラミックが室温~約700℃までの温度範囲で、通常では1.5・10-6/K未満の極端に低い熱膨張係数α20/700を提供することである。主結晶相として高温石英混晶を有するガラスセラミックは、例えばクックトップとしての適用温度の範囲内でたいていは0±0.3・10-6K程度の比較的低い膨張係数を提供し、主結晶相としてケアタイト混晶を有するガラスセラミックは0.8・10-6/K~1.5・10-6/K程度の値である。両方のガラスセラミックタイプは、その平均クリスタリットサイズの点でも異なる。高温石英混晶を有するガラスセラミックは、通常では50nm未満のその比較的低いクリスタリットサイズに基づき透明または着色透明で製造可能である。ケアタイトが主要な相を形成する場合、通常では平均クリスタリットサイズは100nmを超え、生じる光散乱のために半透明~不透明である。しかしながら、透明なケアタイト相も存在し、例えば独国特許出願公開第102014226986号明細書(DE 10 2014 226 986 A1)または仏国特許出願公開第3002532号明細書(FR 3 002 532 A1)に記載されている。
その適用温度での低い熱膨張率に基づき、LASガラスセラミックは優れた耐温度差性および耐熱衝撃性ならびに寸法安定性を有する。
LASガラスセラミックの大規模な工業的製造は当業者に公知である。この場合、まず、破砕物および粉末状の混合原材料からなる混合物から結晶化可能な出発ガラスを、通常では1550℃~1700℃の温度で溶融させかつ清澄させる。清澄剤として、たいていは酸化ヒ素および/または酸化アンチモンが、またはことに環境を損なわない清澄のためには酸化スズが使用される。気泡品質の改善のために、1700℃を超える高温清澄を使用してもよい。溶融および清澄の後に、このガラスは通常ではキャスティング、圧縮、または板の製造のために圧延もしくはフロートにより熱付形される。
引き続く温度処理プロセスにおいて、出発ガラスは制御された結晶化によりガラスセラミック物品に変換される。このセラミック化は二段階温度処理プロセスで行われ、この場合、まず680℃~800℃の間の温度での核生成により、通常ではZrO2/TiO2混晶からなる核を生じさせる。引き続く温度上昇の際に、800℃~950℃の結晶化温度でこの核上に高温石英混晶を成長させる。
最大製造温度で、ガラスセラミックの組織は均質化され、この際に、光学特性、物理特性および化学特性が調節される。所望の場合には、高温石英混晶を引き続きさらにケアタイト混晶に変換することもできる。ケアタイト混晶への変換は、約950℃~1250℃の温度範囲での温度上昇の場合に行われる。この変換によって、ガラスセラミックの熱膨張係数は上昇し、一般にさらなる結晶成長により半透明~不透明な外観と結びつく光散乱が生じる。この変換の際に結晶化度が高まり、およびガラスセラミックはより堅固になる。
【0004】
25、CoO、NiO、Fe23、Cr23、CeO2のような着色酸化物を単独でまたは組み合わせて添加することにより、例えば所定の透過率推移を有する黒色クックトップを製造するために、ガラスセラミックを着色することができる。
【0005】
着色ガラスセラミックにおいても、透明なガラスセラミックと、半透明なガラスセラミックと、不透明なガラスセラミックとは区別される。最初に挙げた着色された透明なガラスセラミックは、透明といわれる無着色の透明なガラスセラミックとは異なり、頻繁に着色透明といわれる。着色透明ガラスセラミックの光学品質については、透明性および色感覚が重要である。透明性とは、ガラスセラミックが、可視光領域において比較的高い光透過率、ならびに低い光散乱(曇り)を提供することを意味する。
したがって、CIE表色系で光透過率Y(D65、2°)として測定され、頻繁にはτvisまたは明るさともいわれる光透過率は、一方で、下側に配置された表示が点灯された状態で十分に見えることを保証するために、最小値を有するべきであり、かつ他方で、消灯された状態で調理台内部が不可視となるために、つまり、色補正フィルタと組み合わせた場合でもまたはこのようなフィルタなしでもデッドフロント効果を実現することができるために、最大値を超えるべきではない。
対象物の見通しおよび点灯する表示を偽らないために、透明なガラスセラミックは、視覚を損なう光散乱がわずかであるないしは視覚を損なう光散乱がないべきである。ガラスセラミックプレート下のディスプレイの表示は明確であり、輪郭は鮮明であり、かつ実際に曇りなく見えるべきである。
わずかな光散乱は、とりわけ、高い核密度によって達成され、この高い核密度は、成長する高温石英混晶が可視光の波長領域を下回るサイズにあることを引き起こす。典型的には、高温石英混晶の平均クリスタリットサイズは20nm~50nmの範囲内にある。高い核密度は、核生成剤の十分な含有率、および核生成の間での十分な核生成時間を前提とする。
【0006】
下側に取り付けられた表示の良好な可視性と同時に調理台内部の低減された見通しに関して最良の結果を望む場合、可視透過領域(380nm~780nm)においてできる限り平坦に推移する曲線が必要である。ことに、450nm~700nmの間のスペクトル波長に対して良好に分布した中立に推移する光透過性が望ましい。調理台中の、赤色とは別の色の表示が重要となる範囲で、先行技術では多種多様な透過率推移が描かれているが、この透過率推移の全ては特定のまたは他の欠点を有し、かつ/または不利なように実現される。
【0007】
独国特許出願公開第102008050263号明細書(DE 10 2008 050 263 A1)は、可視光の領域で>450nmの波長について>0.1%の分光透過率を有するが、可視光において2.5%の最大の光透過率を有する透明で着色されたガラスセラミッククックトップを記載している。
【0008】
独国特許出願公開第102009013127号明細書(DE 10 2009 013 127 A1)は、可視光において5%までの光透過率を有し、かつ可視光の領域で>450nmの波長について>0.1%の分光透過率を有する透明で着色されたガラスセラミッククックトップを記載しているが、中立な色感覚を有する製品は生じていない。
【0009】
独国特許出願公開第102012105576号明細書(DE 10 2012 105 576 A1)および独国特許出願公開第102012105572号明細書(DE 10 2012 105 572 A1)は、τvis>2.5%および色感覚にとって重要な420~480nmの範囲内の波長で著しく変化する値を有するガラスセラミックプレートを記載している。
【0010】
国際公開第2012/001300号(WO 2012/001300 A1)は、少なくとも2.3%~極めて明るい40%までのτvisおよび被覆材との組み合わせで420nm~480nmの範囲内で少なくとも0.6%の透過率を有するガラスクックトップまたはガラスセラミッククックトップを記載しているが、中立な色感覚を有する製品は生じていない。
【0011】
欧州特許出願公開第1465460号明細書(EP 1 465 460 A1)は、3mmの厚みで2.5%~15%のY(D65)値を有するクックトップを記載している。この実施例はAs含有である。
【0012】
国際公開第2010/137000号(WO 2010/137000 A1)は、3mmの厚みで1.5~5%の光透過率を有しかつ450~480nmの間で>0.5%の分光透過率を有するガラスセラミックを記載している。この透過率は酸化コバルトを用いて実現されている。
【0013】
国際公開第2010/136731号(WO 2010/136731 A1)も、クックトップの表示可能性を扱っていて、かつ4mmの厚みで400~500nmの範囲内のどこかで0.2~4%の分光透過率を有するガラスセラミックを請求している。
【0014】
ガラスセラミックの経済的製造のために、出発ガラスの低い溶融温度および低い加工温度VAが望ましい。さらに、このガラスは付形の際に失透を示してはならず、つまり出発ガラスにおいておよびその出発ガラスから製造されたガラスセラミックにおいて強度を損なう有害な結晶を形成してはならない。
【0015】
本発明の課題は、下側に取り付けられた表示の良好な可視性と同時に調理台内部への低減された見通しおよびこのクックトップを通したできる限りわずかな表示色の色ずれ、つまり赤色、緑色、青色およびそれにより白色、ならびに他の色調の表示色のできる限り偽りのない可視性を保証する、着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックを提供することである。
【0016】
本発明の課題は、LASガラスセラミックから製造された物品についての使用にも関する。
【0017】
この場合、ガラスセラミックは、例えば耐薬品性、機械強度、透明性、耐熱性、およびその特性(例えば熱膨張、透明性、応力の構築)の変化に関する長期間安定性に関する多様な適用の要件を満たすべきである。
かつ、このガラスセラミックは経済的でかつ環境を損なわない製造特性を有するべきである。
【0018】
これらの課題は、請求項1記載の着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックにより、および請求項11記載のその使用により解決される。
【0019】
上述の多様な要件は、クックトップとして適したガラスセラミックのために必要な通常の特性の他に特別な透過率特性を有し、かつその製造の際に所定の環境に有害な成分が省かれた、本発明による環境を損なわない着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックにより満たされる。
【0020】
例えば、本発明によるガラスセラミックは、CIE表色系で光透過率Y(D65、2°)として測定して少なくとも2.5%、有利に2.5%超、好ましくは少なくとも3.5%、特に好ましくは少なくとも4.5%でかつ最大で10%、好ましくは最大で7.5%、特に好ましくは5%の光透過率を有する。これらの値は、標準光D65で、観測角2°で、4mmの厚みの研磨されたガラスセラミック試料について測定されたものに関する。
【0021】
本発明によるガラスセラミックは、1.0%超、好ましくは1.2%超の、465nmでの分光透過率τを有する。この値は、4mmの厚みの研磨されたセラミック化されたガラスセラミック試料に関して測定される。
【0022】
さらに、本発明によるガラスセラミックの場合、この両方の透過率特性は互いに特別な関係にある。例えば本発明の場合に、差(Y(D65、2°)-τ(465nmで))は3%以下、好ましくは3%未満である。
【0023】
これらの特性を有する本発明によるガラスセラミックは、55ppm~200ppmのV25含有率、450ppm~1000ppmのFe23含有率、3~9、好ましくは5~7のFe23/V25(両方とも質量%またはppmで表す)の比率を有するリチウムアルミニウムガラスセラミックである。好ましくは、V25含有率は少なくとも100ppmであり、好ましくは最大で200ppmである。好ましくは、Fe23含有率は少なくとも700ppmである。この単位ppmも質量部に関する。
【0024】
本発明によるガラスセラミックは、酸化コバルト、酸化ニッケルおよび酸化クロム不含である。挙げられた成分の「不含」とは、酸化コバルトは、あったとしても、最大で10ppm(CoOとして表す)で存在し、酸化ニッケルは、あったとしても、最大20ppm(NiOとして表す)で存在し、かつ酸化クロムは、あったとしても、最大20ppm(Cr23として表す)で存在すると解釈される。
【0025】
それにより、本発明によるガラスセラミックは、一方では下側に取り付けられた表示の良好な可視性と、他方では調理台内部の低減された見通しを可能にする光透過率と、極めて中立な、つまり偽りのない色感覚および明るさ感覚、つまりガラスセラミックプレートを透過したにもかかわらずほとんど変化しない~無変化の光感覚で、赤色だけでなく緑色のような色調も透過するような色透過性とを統合する。
【0026】
好ましくは、本発明によるLASガラスセラミックは、赤色のスペクトル領域、つまり610nm~650nmの範囲内で、赤色の表示で使用するために通常使用される材料の透過率と比べて高められた透過率を有する。これは、LEDディスプレイにますます多数のLEDが取り付けられる範囲で、同じ接続出力で、LED当たりの固有の出力供給が低下するために好ましい。したがって、好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、10.9%±3.8%、好ましくは10.9%±2.5%、特に好ましくは10.9%±2.0%、全く特に好ましくは10.9%±1.5%の630nmでの分光透過率τを有する。これらの値は、4mmの厚みの研磨されたセラミック化されたガラスセラミック試料に関して測定される。10.9%±3.8%は、7.1%~14.7%の範囲と解釈される。
【0027】
本発明によるLASガラスセラミックは、環境を損なわない組成を有する。これについては、ガラスセラミックが、不可避的原料不純物を除いて、着色する酸化物の酸化コバルト、酸化ニッケルおよび酸化クロムを含まないことの他に、工業的に清澄剤の酸化ヒ素および酸化アンチモンを含まないと解釈される。不純物として、これらの成分の酸化ヒ素および酸化アンチモン(As23またはSb23として表す)は、合計で1000ppm未満、好ましくは400ppm未満の含有率で存在する。
【0028】
酸化物のLi2O、Al23およびSiO2は、LASガラスセラミック中で混晶に必要な成分である。
【0029】
このために、Li2Oの含有率は、好ましくは少なくとも3.0質量%である。好ましくはこの含有率は最大で4.2質量%である、というのもより高い含有率は、製造プロセスにおいて場合により失透を引き起こしかねないためである。Li2Oの少なくとも3.2質量%の含有率が好ましく、Li2Oの最大で4.0質量%の含有率が好ましい。
【0030】
Al23含有率は、出発ガラスの高い粘度を回避し、かつ付形の際の失透傾向を抑制するために、好ましくは最大で23質量%である。好ましくは、この含有率は少なくとも19質量%である。Al23の少なくとも20質量%の含有率が好ましく、Al23の最大で22質量%の含有率が好ましい。
【0031】
SiO2含有率は、好ましくは最大で69質量%である、というのもSiO2は、ガラスの粘度を著しく上昇させ、かつ比較的高い含有率は不経済な溶融条件および付形条件を引き起こしかねないためである。この含有率は、SiO2の場合に、好ましくは少なくとも60質量%である。SiO2の少なくとも62質量%の含有率が好ましく、SiO2の最大で67質量%の含有率が好ましい。
【0032】
任意成分として、MgO、ZnOおよびP25が存在してよく、かつこれらは高温石英混晶中に組み込まれてよい。
ZnOが存在する場合に、ZnOの含有率は、好ましくは最大で2.2質量%に制限される、そうでないとガーナイトのような不所望な結晶相の形成の危険が生じるためである。ZnOの少なくとも1質量%の含有率が好ましい。
MgOが存在する場合に、MgOの含有率は、好ましくは最大で1.5質量%に制限される、そうでないとガラスセラミックの熱膨張係数が極端に上昇するためである。MgOの少なくとも0.1質量%の含有率が好ましく、MgOの最大で1.3質量%の含有率が好ましい。
25が存在する場合に、P25の含有率は、好ましくは最大で3質量%に制限される、そうでないと耐酸性が弱まりかねないためである。P25の最大0.1質量%の含有率が好ましい。場合による不純物を除いて、P25は省かれることが特に好ましい。
【0033】
好ましくは、ガラスセラミックは、Na2Oおよび/またはK2Oを合計で少なくとも0.2質量%含む。好ましくは、ガラスセラミックは、Na2Oおよび/またはK2Oを合計で最大で1.5質量%含む。
ガラスセラミックは、アルカリ土類酸化物も含んでよいが、SrOおよび/またはCaOは、好ましくは合計で最大で4質量%に制限されかつ/またはBaOは好ましくは最大で3質量%に制限される。
上述のアルカリ酸化物および上述のアルカリ土類酸化物は、ガラスセラミックの、これらの成分について高濃度化されかつLi2Oについて低濃度化されたガラス質の表面層の形成を支援する。これは、ガラスセラミックの耐薬品性について好ましく作用する。
【0034】
ガラスセラミックはB23も含んでよいが、好ましくは最大2質量%に制限される。
23、上述のアルカリ酸化物および上述のアルカリ土類酸化物は、グリーンガラスの付形の際に溶融性および失透安定性を改善する。上述の含有率よりも高い場合に熱膨張は高まることがあり、かつグリーンガラスをガラスセラミックに変換する際の結晶化挙動が損なわれることがある。
23の最大で1質量%の含有率が好ましく、場合による不純物を除いて、B23は省かれることが特に好ましい。
BaOの少なくとも1.0質量%の含有率が好ましく、BaOの最大で2.8質量%の含有率が好ましい。
SrOおよび/またはCaOの、合計で少なくとも0.2質量%の含有率が好ましく、SrOおよび/またはCaOの、合計で最大で1質量%の含有率が好ましい。
Na2Oおよび/またはK2Oの、合計で少なくとも0.4質量%の含有率が好ましく、Na2Oおよび/またはK2Oの、合計で最大で1.2質量%の含有率が好ましい。
【0035】
好ましくは、ガラスセラミックは、TiO2を2.5質量%の最小含有率で含む。好ましくは、ガラスセラミックは、ZrO2を0.5質量%の最小含有率で含む。好ましくは、ガラスセラミックは、SnO2を0.05質量%の最小含有率で含む。これらの3つの成分は、核生成剤として用いられる。
好ましくは、ガラスセラミックは、TiO2を最大で4質量%含む、それというのもより高い含有率は失透安定性を悪化させかねないためである。
好ましくは、ガラスセラミックは、ZrO2を最大で2質量%含む、というのもより高い含有率はガラス製造の際に混合物の溶融挙動を悪化させ、かつ付形の際にZrO2含有結晶の形成により失透安定性を損ないかねないためである。
好ましくは、ガラスセラミックは、SnO2を0.6質量%未満で含む、というのもより高い含有率は失透安定性を悪化させかねないためである。
TiO2の少なくとも2.8質量%の含有率が好ましく、TiO2の最大で3.5質量%の含有率が好ましい。
ZrO2の少なくとも1質量%の含有率が好ましく、ZrO2の最大で1.8質量%の含有率が好ましい。
SnO2の少なくとも0.1質量%の含有率が好ましく、SnO2の最大で0.4質量%のSnO2含有率が好ましく、特に最大0.3質量%が好ましい。
TiO2とZrO2とSnO2との合計は、5.5質量%を超えないことが特に好ましい。
【0036】
好ましい実施形態の場合に、着色透明なLASガラスセラミックは、主成分として次の成分(酸化物を基準として質量%で表す)を含む:
Li2O 3.0~4.2
Na2O+K2O 0.2~1.5
MgO 0~1.5
CaO+SrO 0~4
BaO 0~3
ZnO 0~2.2
Al23 19~23
SiO2 60~69
TiO2 2.5~4
ZrO2 0.5~2
SnO2 0.05~<0.6
25 0~3
23 0~2
かつV25の上述の含有率は50ppm~250ppmであり、かつFe23の上述の含有率は500ppm~1000ppmであり、Fe23/V25の比率(両方とも質量%で表す)は3~9であり、かつ場合によりCeO2のような化学清澄剤の添加物および硫酸塩化合物、塩化物化合物、フッ化物化合物のような清澄添加物は全体の含有率中で2.0質量%までである。
【0037】
好ましくは、ガラスセラミックは、上述の割合で上述の成分から主になる。「……から主になる」とは、これらの成分が、ガラスセラミックス中で少なくとも98質量%含まれていると解釈される。
【0038】
ガラスセラミックの製造のための結晶化可能なガラスの水含有率は、混合原材料の選択および溶融時のプロセス条件に依存して、好ましくは0.015~0.06mol/lである。これは、0.16~0.64mm-1のβ-OH価に相当する。ガラスセラミックへの変換の際に、水含有率の決定のために考慮されるIRバンドは変化する。それにより、測定に応じて、ガラスセラミックについてのβ-OH価は、この際に水含有率は変化せずに、約1.6倍上昇する。このこと、およびβ-OH価を決定する方法は、例えば欧州特許出願公開第1074520号明細書(EP 1 074 520 A1)に記載されている。
【0039】
他の好ましい実施形態の場合に、着色透明のLASガラスセラミックは主成分として次の成分(酸化物を基準として質量%で表す)を含む:
Li2O 3.2~4.0
Na2O+K2O 0.4~1.2
MgO 0.1~1.3
CaO+SrO 0.2~1
BaO 1~2.8
ZnO 1~2.2
Al23 20~22
SiO2 62~67
TiO2 2.8~3.5
ZrO2 1~1.8
SnO2 0.1~0.4
25 0~0.1
23 0~1
かつ場合により硫酸塩化合物、塩化物化合物、フッ化物化合物のような清澄添加物は全体の含有率中で1.0質量%までである。
【0040】
好ましくは、ガラスセラミックは、上述の割合で上述の成分から主になる。「……から主になる」とは、これらの成分が、ガラスセラミックス中で少なくとも98質量%含まれていると解釈される。
【0041】
ガラスセラミックは、SnO2が核生成剤として存在している場合に、SnO2によっても清澄されてよい。このために、これは上述で議論された割合で存在する。この清澄作用は、上述の清澄添加物によって支援されてもよい。
【0042】
必要とされる気泡品質および槽処理量で極めて良好な清澄作用を達成するために、1700℃を超える、好ましくは1750℃を超える高温清澄を実施することが好ましいことがある。この場合、ガラスまたはガラスセラミックス中で1kg当たり気泡2未満の気泡品質(寸法が0.1mmを超える気泡サイズから測定)が達成される。
【0043】
例えばアルカリのRb、Csのような元素またはMn、Hfのような元素の多数の化合物は、大規模工業的に使用される混合原材料の場合に通常の不純物である。例えば元素W、Nb、Y、Mo、Bi、希土類の化合物のような他の化合物も同様にわずかな割合で含まれていてよい。
【0044】
着色透明のリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックは、通常では、主結晶相として高温石英混晶を含む。好ましくは、平均クリスタリットサイズは、50nm未満である。
【0045】
本発明によるLASガラスセラミックは、好ましくは、3.5mmについて、ASTM D1003-13により測定した標準光Cについての積分ヘイズ値として表して、20%未満、好ましくは15%未満の光散乱を有する。
【0046】
20℃~700℃の間で測定した熱膨張は、このタイプの高温石英混晶を有するLASガラスセラミックの場合に、有利に1・10-6/K、好ましくは(0±0.3)・10-6/Kの値に調節されている。
【0047】
主結晶相として高温石英混晶を有するリチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスセラミックは、当業者に通常で公知の手法で、主結晶相としてケアタイト混晶を有するガラスセラミックに変換することができる。通常では120nmを超える大きな平均クリスタリットサイズに基づき、この変換されたガラスセラミックは半透明であるかまたは不透明である。主結晶相として高温石英混晶を有するガラスセラミックは、主結晶相としてケアタイト混晶を有するガラスセラミックに、そのクリスタリットが十分に小さいままであるように変換することもでき、このガラスセラミックは透明である。ケアタイト混晶を有するこのようなガラスセラミックは、通常では、20℃~700℃の間で測定して、0.8・10-6/K~1.5・10-6/K、好ましくは1・10-6/K超~1.5・10-6/Kの熱膨張を有する。
【0048】
本発明によるガラスセラミック、またはこのガラスセラミックから製造された物品の好ましい形状は、プレートの形である。このプレートは、好ましくは2mm~20mmの厚みを有する、というのもそれにより重要な用途が開けるためである。より低い厚みの場合には強度が損なわれ、より高い厚みの場合にはより高い材料必要量に基づき経済性がより低くなる。したがって、高い強度が重要である安全ガラスとしての用途を除いて、原則として6mm未満の厚みが選択される。クックトップとしての用途の場合には、好ましくは2mm~6mmの厚みが選択される。通常の標準クックトップにとって、通常では0.5m2までの大きさが好ましい。例えばカラーディスプレーを備えた、またはクックトップが同時にワークトップとして構成されている場合、および調理機能の他に、可能なクックトップ用途の記述の際に詳細に説明されている他の機能性を含む場合に、より大きな構造について、0.5m2超またはそれどころか0.8m2超のサイズが好ましい。
【0049】
プレート状の形状のための適切な付形方法は、ことに圧延およびフロートである。
【0050】
ガラスセラミックプレート、および好ましくはこのガラスセラミックプレートから製造された物品は、この場合、平坦に仕上げられているだけでなく、立体的に成形されていてよい。例えば、端部が折り曲げられた、角度が付けられたまたは湾曲されたプレートを使用してもよい。このプレートは、直角のまたは他の形状で存在してよく、かつ平坦な領域の他に、立体的に成形された領域、例えば球欠または圧延されたウェブまたは隆起部もしくは凹陥部としての平面で存在してよい。プレートの幾何学的変形は、例えば構造化された付形ロールによる熱付形の際に、または出発ガラスに関して後置された熱付形により、例えばバーナーによりまたは重力垂下により行われる。セラミック化の際に、幾何学形状の制御不能な変化を避けるために、支持するセラミック型を用いて作業される。
【0051】
ガラスセラミックプレート、および好ましくはこのガラスセラミックプレートから製造された物品は、両面が平滑であるか、または片面に隆起部が設けられていてよい。
【0052】
低い熱膨張および最適化された透過率推移と関連する有利な光学特性および熱特性、ならびにその他の、ことに機械特性により、多くの用途は好ましい影響が及ぼされる。
本発明の、着色透明のガラスセラミック物品は、クックトップとして、ことに下側被覆を備えたクックトップとして、常温領域内、つまりディスプレイ領域/表示領域内に照明用に空所、いわゆる空白部を備え、かつ/または温熱領域内に、つまり調理領域内に被覆材を備えた下側が被覆されたクックトップとして、クックトップの下側から観察者に向かって出射する光を均一に分配するいわゆるディフューザー層を備えたクックトップとして、接着されたまたは印刷されたまたは被覆された形で適用されたいわゆる色補正フィルタを備えたクックトップとして使用される。さらに、動作を調節および制御するために貼り合わせられた、印刷されたまたは押し付けられた形で適用された不透明または透明な容量型センサ構造を備えた上述の実施態様の場合にクックトップとして使用される。さらに、操作ボタン、ガスバーナー、排気システム(いわゆる下降流システム)またはその他の機能モジュール用に1つ以上の穿孔を備え、任意に1つ以上の角部に平坦なカット面を備えた上述の実施態様の場合にクックトップとして使用される。
さらに、表示領域および/または温熱領域内に局所的に高められた/変更された、Y(D65、2°)値によって定義される透過率を有する上述の実施態様の場合にクックトップとして使用される。透過率Y(D65、2°)は、この場合、基材の基本透過率または名目透過率に対して局所的に50%まで、好ましくは30%まで、全く特に好ましくは25%まで高められていてよい。
【0053】
全く特に好ましい実施形態の場合に、この透過率は、基本透過率に対して局所的に5%まで、特に好ましくは2.5%まで高められている。
本発明の一実施形態の場合に、この透過率は、基材の基本透過率に対して局所的に4%まで、好ましくは3%まで低下されていてもよい。
この場合、基本透過率の低減は、被覆またはシートまたは固有の局所的材料変性によって行うことができる。
【0054】
特別な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、鍋温度の測定のためのセンサが取り付けられた調理器具用に使用することができる。この種のセンサは、この場合、例えば鍋内に直接または鍋を介して取り付けられているか、またはIRセンサを用いて鍋底温度を検知することができる。この種のIRセンサは、この場合、好ましくは>1μm、好ましくは≧1500nmの波長で作動する。特別な実施形態の場合に、この種のセンサは3~5μmの波長で作動する。したがって、クックトップは、関連する波長領域で、相応する透過率を有する。これは、とりわけ、被覆材が局所的に切り欠かれているかまたは関連する波長領域で十分に透過性であることにより保証される。
【0055】
他の特別な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、無線のデータ接続を備えた調理器具用に使用することができる。この場合、データ接続は、調理器具と、換気フード、家事器具用のもしくはこの器具の機能制御のための中央制御ユニットとのネットワーク化のために用いられる。データ接続は、IRセンサを介して、またはGHz領域での無線通信、例えばW-LAN、ブルートゥース(Bluetooth)により行うことができる。
【0056】
この場合、この種のIRセンサは、好ましくは0.9~1μm、好ましくは930~970nmの波長で作動する。したがって、クックトップは、関連する波長領域で、相応する透過率を有する。これは、とりわけ、被覆材が局所的に切り欠かれているかまたは関連する波長領域で十分に透過性であることにより保証される。
【0057】
他の特別な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、非接触型制御技術を備えた調理器具用に使用することができる。この種の制御は、例えば容量型センサ技術、IRセンサまたは超音波センサによって作動する。
【0058】
他の特別な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、LEDベースのまたはセグメントベースの表示素子および/またはグラフィカルディスプレイ素子を備えた調理器具用に使用することができる。この場合、グラフィカルディスプレイ素子は、単色または多色に構成されていてよい。好ましい単色のグラフィカルディスプレイは白色である。好ましくは、この種のディスプレイ素子は容量型タッチセンサを用いて構成されている。
【0059】
他の特別な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、最小の上面装飾を備えた調理器具用に使用することができる。一実施形態の場合に、1つ以上のブランドロゴおよびオン/オフスイッチだけが上面側に存在する。この場合、例えば調理区域標識用の装飾機能は、完全に照明素子により引き受けられる。
【0060】
さらに、ガラスセラミックは、機能的な上面被覆との関連で使用される。この場合、機能的な上面被覆は、耐引掻性の改善のため、清浄化能力の軽減のため、ディスプレイの可視性の改善のため、煩わしい反射の防止のため、指紋の最小化のためおよび/または鍋を引き摺る音の最小化のために設けることができる。
【0061】
特別な実施形態の場合に、表面は研磨されているかまたは確率論的に構造化されていてよい。
【0062】
さらに、本発明による着色透明のガラスセラミック物品は、暖炉覗き窓ガラス/暖炉内装材もしくは外装材として、照明領域の遮閉として、および任意の貼り合わせ複合材内の安全ガラスとして、キャリアプレートもしくは炉内装材として使用することができる。セラミック工業、太陽電池工業もしくは製薬工業、または医学技術において、このガラスセラミック物品は、ことに高清浄条件下での生産プロセス用に、化学的または物理的な被覆方法を実施する炉の内装材として、または耐薬品性の実験室装備として適している。さらに、本発明による着色透明のガラスセラミック物品は、高温用途または極低温用途のガラスセラミック物品として、焼却炉用の炉窓として、高温環境を遮閉するための断熱シールドとして、リフレクタ、照明灯、プロジェクタ、ビデオプロジェクタ、写真複写機用のカバーとして、熱機械負荷を有する用途のため、例えば暗視装置中で、または加熱素子用のカバーとして、ことにクックトップまたはグリルトップとして、家電機器として、放熱器カバーとして、ウェハ基板として、UV保護を備えた物品として、フロントパネルプレートとして、または電子工学機器の構成要素として使用される。
【0063】
本発明を、次の実施例を用いてさらに明確に説明する。
【0064】
実施例A1~A6において、ガラス工業において通常の原材料からなる出発ガラスを、約1620℃の温度で4時間溶融させた。高度に石英を含む耐火材料からなるるつぼ中で混合物を溶融させた後、この溶融物をシリカガラスからなる内部るつぼを備えたPtRh20るつぼ内に移し換え、1600℃の温度で60分間攪拌により均質化した。この均質化の後に、ガラスを1640℃で3時間清澄させた。引き続き、約170×120×25mm3のサイズの片をキャスティングし、かつ徐冷炉内で、640℃から初めて、室温にまで冷却した。このガラス片を、試験用におよびセラミック化用に必要なサイズに切り分けた。
【0065】
実施例A7~A11は、大規模工業的に、Snで清澄したLASガラスセラミックのために通常のパラメータで溶融させた。
【0066】
これらの試料を、さらに下記に説明されたセラミック化プログラムを用いてセラミック化した。
【0067】
表1は、実施例を表す例A1~A11、および比較例を表すV1~V8について、セラミック化可能な出発ガラスの組成および特性、ならびにこれらのガラスから製造されたガラスセラミックの特徴を示す。
【0068】
使用された大規模工業的混合原材料中の典型的な不純物に基づき、これらの組成は合計で正確に100.0質量%とはならない。典型的な不純物は、この組成に意図的に導入されていない場合であっても、Mn、Rb、Cs、Hfの化合物であるか、または清澄剤として使用されない限り、ClおよびFの化合物でもあり、これらは一般に0.1質量%以下である。これらの不純物は、しばしば、使用される成分用の原料を介して、例えばRbおよびCsはNa原料もしくはK原料を介して、またはHfはZr原料を介して持ち込まれる。
【0069】
透過率測定は、厚み4mmの研磨されたプレートに関して標準光Cで、2°で実施された。選択された波長、つまり465nm、470nmおよび630nmでの透過率の値、ならびに光透過率が記載されている。光透過率および明るさ(brightness)Yの名称は、DIN5033に従ってCIE表色系でY(D65、2°)としての測定値に相応する。さらに、差τvis-τ465、つまりY-τ465が記載されている。
【0070】
セラミック化プログラムは次のようである:
a) 室温から600℃まで5minで加熱、
b) 600℃から、700℃と750℃との間の核生成温度TKBまで、50K/minの加熱速度で温度上昇、5minの持続時間tKB
b1) 780℃と820℃との間の結晶化温度TKristまで12K/minの加熱速度で温度上昇、TKristで8minの持続時間tKrist
c) TKristから910℃と950℃との間の最大温度Tmaxまで20K/minの加熱速度で温度上昇、Tmaxで7minの持続時間tmax
d) 約800℃に10K/minで冷却、次いで室温まで急速冷却。
【0071】
表1
【表1-1】
表1の続き
【表1-2】
【0072】
表1中の例V1~V8は、本発明の範囲外の比較ガラスセラミックである。
V1は、≦3%の差(Y-τ(465nmで))を有するが、透過率特性はCoOの添加により実現されている。
V2も同様に、≦3%の差(Y-τ(465nmで))を有するが、可視領域における透過率の値は、赤色の表示を除いて他の色調は可視でないほど低い。これは、可視領域での透過率を明らかに低減するCr23の添加に起因するとみなされる。
例V3~V5は、全て>3%の差(Y-τ(465nmで))を有し、これは、部分的に極めて高い透過率の値を有する領域に起因し、この透過率の値はいわゆる鉄過剰着色に起因するとみなされる。
V6およびV7は、確かに2.5~10%の光透過率Y(D65、2°)および>1.0%の分光透過率τ(465nmで)を有する。しかしながら、この差(Y(D65、2°)-τ(465nmで))は>3%である。
V8は、確かに<3%の差(Y(D65、2°)-τ(465nmで))を有するが、これは、2.2%の低い光透過率Y(D65、2°)および0.67%の低い分光透過率τ(465nmで)の場合である。
【0073】
実施例A1~A11は、本発明によるガラスセラミックが、透過率特性の2.5~10%の光透過率Y(D65、2°)、>1.0%の分光透過率τ(465nmで)、および≦3%の差(Y(D65、2°)-τ(465nmで))を統合し、それにより一方では下側に取り付けられた表示の良好な可視性で、他方では調理台内部の低減された見通しも、赤色だけでなく緑色のような色調も透過するような色透過性も、ならびに極めて中立な、つまり偽りのない色感覚および明るさ感覚、つまりガラスセラミックプレートを透過したにもかかわらずほとんど変化しない~無変化の光感覚も可能にすることを明確に示す。好ましい実施形態としてのこれらの実施例は、10.9%±3.8%の、630nmでの分光透過率τにより示される、赤色スペクトル領域において好ましく高い透過率も有する。
【0074】
本発明によるガラスセラミックの出発ガラスは、低い溶融温度および付形温度を有し、かつ低コストの混合原材料から製造可能である。この出発ガラスは高い失透耐久性を示す。この出発ガラスは、短いセラミック化時間でガラスセラミックに変換可能である。本発明によるガラスセラミックは、経済的でかつ環境を損なわない製造特性を有し、後者の環境を損なわない製造特性は、環境に有害な原料の酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化コバルトおよび酸化クロムを省くことによる。本発明によるガラスセラミックは、多様な用途の要件を満たす。例えば、このガラスセラミックは、良好な耐薬品性、高い機械強度、所望な透過率特性、光散乱がない~わずかな光散乱、高い耐熱性、およびその特性(例えば熱膨張、透過率、応力の構築)の変化に関して高い長期間安定性を有する。