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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】架台、及び排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
E03F5/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018184133
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051203
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222914(JP,A)
【文献】特開平09-268641(JP,A)
【文献】特開2002-285628(JP,A)
【文献】特開2015-078513(JP,A)
【文献】特開2010-209931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マス本体と、前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、前記マス本体の周部に少なくとも一対の前記流出入部が周方向に間隔を開けて設けられた排水マスを支持する架台であって、
板状とされた基台部と、
前記基台部の表裏をなす面のうち一方からなる配置面と、
前記配置面側に前記排水マスを保持するための保持部とを有し、
前記保持部が、前記流出入部を支持する支持部を有し、
前記支持部が、前記流出入部の外径にあわせて凹状に形成された受部を対をなすように設けたものであり、
前記流出入部の中途に段差が形成された前記排水マスを設置可能であり
前記受部に前記流出入部を配置した状態において前記段差が到来する位置に対して、前記流出入部の軸線方向に隣接する位置に凸部が設けられていることを特徴とする架台。
【請求項2】
マス本体と、前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、前記マス本体の周部に少なくとも一対の前記流出入部が周方向に間隔を開けて設けられた排水マスを支持する架台であって、
板状とされた基台部と、
前記基台部の表裏をなす面のうち一方からなる配置面と、
前記配置面側に前記排水マスを保持するための保持部とを有し、
前記保持部が、前記流出入部を支持する支持部を有し、
前記支持部が、前記流出入部の外径にあわせて凹状に形成された受部を対をなすように設けたものであり、
前記保持部が、
前記受部よりも高さ方向に延出された延出部を有し、
前記受部に前記流出入部を配置した状態において、前記排水マスにおいて前記流出入部よりも高さ方向に離れた位置にある部分の側方に前記延出部が到来するように形成されていることを特徴とする架台。
【請求項3】
マス本体と、前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、前記マス本体の周部に少なくとも一対の前記流出入部が周方向に間隔を開けて設けられた排水マスを支持する架台であって、
板状とされた基台部と、
前記基台部の表裏をなす面のうち一方からなる配置面と、
前記配置面側に前記排水マスを保持するための保持部とを有し、
前記保持部が、前記流出入部を支持する支持部を有し、
前記支持部が、前記流出入部の外径にあわせて凹状に形成された受部を対をなすように設けたものであり、
前記排水マスが、前記流出入部よりも高さ方向に離れた位置に、前記流出入部の軸線方向に広がる平坦面を有するものであり、
前記保持部が、
前記受部よりも前記高さ方向に延出された延出部を有し、
前記延出部が、前記受部に前記流出入部を配置した状態において前記平坦面の側方に到来するように形成されていることを特徴とする架台。
【請求項4】
前記流出入部の外径が相違する複数種の排水マスに対応可能な架台であって、
前記支持部が、
外径が第一の外径D1である前記流出入部に適合した大きさの前記受部を対をなすように設けた第一支持部と、
外径が第一の外径D2である前記流出入部に適合した大きさの前記受部を対をなすように設けた第二支持部とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の架台。
【請求項5】
前記受部が、円弧状に凹んだ形状とされていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の架台。
【請求項6】
前記基台部には、前記受部の近傍に一又は複数の係止部が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の架台。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の架台と、
排水マスとを有し、
前記排水マスが、
マス本体と、
前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、
前記流出入部が複数、前記マス本体の周部に設けられたものであり、
前記マス本体の周方向に対向して配置される一対の流出入部により前記マス本体を介して汚水又は雨水を流出入させる第一流路を形成可能なものであり、
前記支持部により前記流出入部を支持された状態で、前記保持部により前記排水マスが保持されることを特徴とする排水システム。
【請求項8】
前記基台部が、前記保持部に取り囲まれた領域に貫通孔として設けられた中央孔を備えるものであり、
前記排水マスが、
前記第一流路に対して交差する方向に汚水又は雨水を流出入可能なように開口する第二流出入部を備え、
前記マス本体を介する汚水又は雨水の流出入経路を、前記第一流路と、前記第二流出入部を介して汚水又は雨水を流出入可能とする第二流路とに切り替え可能な切替式の排水マスであり、
前記排水マスの周部に設けられた流出入部が、前記支持部に支持されるとともに、
前記第二流出入部が前記中央孔に挿通されて、前記切替式の排水マスが前記架台に保持されることを特徴とする請求項に記載の排水システム。
【請求項9】
建物の内部空間に吊り下げられて配設されることを特徴とする請求項7又は8に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水マスを配設するための架台、及び架台を備える排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排水マスを管路に配設するに際し、排水マスを安定して保持することが求められる。例えば、排水マスを建物の床に吊り下げて建物の内部の区画された空間(ピット)に配置する場合や、排水マスを地中に埋設して配設する場合の、いずれの場合においても排水マスを安定して保持することが好ましい。このような課題に対して、下記特許文献1には、排水マスを地中に埋設する場合に用いられる台座が開示されている。特許文献1の台座は、排水マスの形状に対応した形状とすることにより、排水マスを安定して保持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-222914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の台座では、排水マスの形状に応じて台座を提供する必要があり、これらの台座を準備あるいは提供するにあたり、コストがかさむこととなる。また、特許文献1の台座では、排水マスを建物のピット内に吊り下げられて配設される場合(吊り配管の場合)が想定されていない。
【0005】
そこで本発明は、ピット内に配設される場合及び地中に埋設される場合を問わず、排水マスを安定して保持することができる架台、及び架台を備える排水システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決すべく提供される本発明の架台は、マス本体と、前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、前記マス本体の周部に少なくとも一対の前記流出入部が周方向に間隔を開けて設けられた排水マスを支持するものであって、板状とされた基台部と、前記基台部の表裏をなす面のうち一方からなる配置面と、前記配置面側に前記排水マスを保持するための保持部とを有し、前記保持部が、前記流出入部を支持する支持部を有し、前記支持部が、前記流出入部の外径にあわせて凹状に形成された受部を対をなすように設けたものであることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の架台によれば、受部に流出入部を嵌め込むことにより、排水マスをマス本体の周方向の複数箇所において支持することができる。これにより、排水マスが、流出入部の軸線方向に対して交差する方向に位置ズレするのを抑制できる。すなわち、例えば基台部の表面を配置面とし、この上に流出入部の軸線方向が手前から奥側に方向に延びるように排水マスを配置した場合は、軸線方向に対して左右方向及び下方に位置ズレするのを抑制できる。従って、本発明の架台は、排水マスを地中に埋設させる場合及び吊り配管において配設する場合のいずれの場合においても、排水マスの姿勢を安定させて保持することができる。
【0008】
ここで、排水マスの管路径(流入口や流出口の径方向の大きさ)は、排水マスが設置される施設などにより異なる。そのため、架台を管路径の異なるものごとに製造して提供すると、製造コストが増加する上に、現場で間違って納入された場合等、差し替えや再発注等の手間がかかることが想定される。そのため、本発明の架台は、ひとつの架台で複数種類の排水マスに対応可能であることが望ましい。
【0009】
本発明の架台は、前記流出入部の外径が相違する複数種の排水マスに対応可能な架台であって、前記支持部が、外径が第一の外径D1である前記流出入部に適合した大きさの前記受部を対をなすように設けた第一支持部と、外径が第一の外径D2である前記流出入部に適合した大きさの前記受部を対をなすように設けた第二支持部とを有するものであることが望ましい。
【0010】
上述の構成によれば、流入部あるいは流出部(以下、流入部及び流出部を総称して「流出入部」と記載する場合がある)の管路径の異なる排水マス(異なる種類の排水マス)に兼用して用いることができる。具体的には、本発明の架台は、排水マスの流出入部の管路径がD1と略一致する場合には、排水マスの流出入部を第一支持部に嵌め込んで排水マスを保持することができる。また、排水マスの流出入部の管路径がD2と略一致する場合には、排水マスの流出入部を第二支持部に嵌め込んで排水マスを保持することができる。このように、本発明の架台は、管路径の異なる複数種類の排水マスに兼用可能とし、汎用性を持たせることができる。その結果、本発明の架台は、架台の製造コストを抑制し、管路径のサイズを取り違えて発注されて現場に納入されることを回避することができる。
【0011】
本発明の架台は、前記受部が、円弧状に凹んだ形状とされているものであることが望ましい。
【0012】
上述の構成によれば、受部を流出入部の下方の外周面を取り囲むように支持することができる。これにより、本発明の架台は、より安定して排水マスを保持することができる。
【0013】
本発明の架台は、排水マスを保持することに加え、排水マスを架台に対して水平方向(流出入部の軸線方向)に位置決めして保持可能であることが望ましい。かかる構成について、本発明の発明者らが検討した。ここで、排水マスは、流出入部に開口縁の近傍が拡径されて受口が構成されているものが多く提供されている。また、流出入部の外周面には、受口が形成されて拡径されている部分と拡径されていない部分との境界において、径方向に形成される段差とされた段差部が形成されている。本発明の発明者らは、排水マスの段差部に隣接する位置に、段差部が引っかかるようなものを架台に設ければ、流出入部の軸線方向への排水マスの位置決め精度を向上できるのではないかとの知見に至った。
【0014】
かかる知見に基づけば、本発明の架台は、前記流出入部の中途に段差が形成された前記排水マスを設置可能な架台であって、前記受部に前記流出入部を配置した状態において前記段差が到来する位置に対して、前記流出入部の軸線方向に隣接する位置に凸部が設けられたものであることが望ましい。
【0015】
上述の構成によれば、段差部が形成されている排水マスを架台に保持させた際に、段差部が凸部に隣接する位置に到来した状態になる。このような状態になると、排水マスが流出入部の軸線方向に移動しようとしても、凸部に対して段差が引っかかり移動できない状態になる。従って、上述した構成によれば、排水マスを架台に対して水平方向(流出入部の軸線方向)に位置決めして保持することができる。従って、本発明の架台によれば、排水マスをより一層位置決め精度良く、安定感の高い状態で保持することができる。
【0016】
本発明の架台は、排水マスを安定して保持するために、架台に対する排水マスの姿勢が傾いたり、受部から流出入部が外れて排水マスが倒れたりすることを抑制可能であることが望ましい。すなわち、本発明の架台は、基台部に対して水平な方向や流出入部の軸線方向だけでなく、例えば流出入部の軸線を中心として排水マスが傾斜や回転等するのを抑制できるようなものであることが望ましい。
【0017】
かかる課題を解消すべく提供される本発明の架台は、前記保持部が、前記受部よりも前記高さ方向に延出された延出部を有し、前記受部に前記流出入部を配置した状態において、前記排水マスにおいて前記流出入部よりも高さ方向に離れた位置にある部分の側方に前記延出部が到来するように形成されているものである。
【0018】
上述したような延出部を保持部に設ければ、架台に据え付けられた排水マスが回転するように傾斜した場合に、延出部に対し、排水マスの流出入部よりも高さ方向に離れた位置にある部分が接触して傾斜が規制される。これにより、本発明の架台は、排水マスが傾斜することや倒れたりすることを抑制することができる。
【0019】
ここで、本発明者らは、図7に例示するように、マス本体と流出入部との接続部分に平坦面とされた平坦部が形成されているものを準備し、このような排水マスを架台を用いて設置することを検討した。より具体的には、図7に例示した排水マスは、排水マスの外面において流入部から流出部に至る部分には、流出入部の下方の外周面が周面とされる一方、上方には平坦面とされた平坦部が形成されている。本発明の発明者らは、本発明の架台に平坦部を側方から支える構成(延出部)を設けることで、排水マスを架台に保持させた際に、排水マスが傾斜することや倒れたりすることを抑制することができるとの知見に至った。
【0020】
本発明の架台は、前記排水マスが、前記流出入部よりも高さ方向に離れた位置に、前記流出入部の軸線方向に広がる平坦面を有するものであり、前記保持部が、前記受部よりも前記高さ方向に延出された延出部を有し、前記延出部が、前記受部に前記流出入部を配置した状態において前記平坦面の側方に到来するように形成されているものであることが望ましい。
【0021】
上述の構成によれば、架台に据え付けられた排水マスが回転するように傾斜した場合に、排水マスの平坦部が延出部と接触して傾斜が規制される。これにより、本発明の架台は、排水マスが傾斜することや倒れたりすることを抑制することができる。
【0022】
本発明の架台は、前記基台部には、前記受部の近傍に一又は複数の係止部が設けられているものであってもよい。
【0023】
上述の構成によれば、受部に流出入部を嵌め込んで排水マスを下方から支持しつつ、流出入部の上方面から下方に係止するようにU字部材等の固定部材を取り付けて係止部に取り付けることができる。これにより、本発明の架台は、上方から下方に排水マスを維持して、より確実に排水マスを保持することができる。
【0024】
本発明の排水システムは、上述した本発明の架台と、排水マスとを有し、前記排水マスが、マス本体と、前記マス本体に対して汚水又は雨水を流出入可能であって筒状に形成された流出入部とを有し、前記流出入部が複数、前記マス本体の周部に設けられたものであり、前記マス本体の周方向に対向して配置される一対の流出入部により前記マス本体を介して汚水又は雨水を流出入させる第一流路を形成可能なものであり、前記支持部により前記流出入部を支持された状態で、前記保持部により前記排水マスが保持されることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の排水システムは、上述した本発明の架台を用いて排水マスを設置したものである。そのため、本発明の排水システムの施工にあたっては、受部に流出入部を嵌め込むことにより、排水マスをマス本体の周方向複数箇所において支持することができる。従って、本発明の排水システムは、排水マスが、流出入部の軸線方向に対して交差する方向に位置ズレするのを抑制しつつ配管接続等することで施工でき、容易かつ位置決め精度良く施工できる。
【0026】
また、本発明の排水システムは、上述した架台を用いて排水マスを設置したものである。そのため、例えば施工後に排水マスの上に人や物が配置されたり、水の流出入等により大きな力が作用したとしても、排水マスをしっかりと保持することができる。従って、本発明の排水システムは、排水マスに大きな力が作用する懸念がある場所に設置されたとしても、安定的に使用することができる。
【0027】
本発明の排水システムは、前記基台部が、前記保持部に取り囲まれた領域に貫通孔として設けられた中央孔を備えるものであり、前記排水マスが、前記第一流路に対して交差する方向に汚水又は雨水を流出入可能なように開口する第二流出入部を備え、前記マス本体を介する汚水又は雨水の流出入経路を、前記第一流路と、前記第二流出入部を介して汚水又は雨水を流出入可能とする第二流路とに切り替え可能な切替式の排水マスであり、前記排水マスの周部に設けられた流出入部が、前記支持部に支持されるとともに、前記第二流出部が前記中央孔に挿通されて、前記切替式の排水マスが前記架台に保持されるものとすることができる。
【0028】
上述の構成によれば、切替式の排水マスを管路において安定して保持することができる。特に、切替式の排水マスを吊り配管とされた管路において保持する場合に、水平方向に形成される流路(第一流路)を形成するとともに、下方に向けて形成される流路(第二流路)を確保して切替式の排水マスを保持することができる。
【0029】
上述した本発明の排水システムは、建物の内部空間に吊り下げられて配設されるものとして好適である。
【0030】
本発明の排水システムは、吊り下げた状態で配設されるものであるため、施工に際しては、排水マスをいかに安定的かつ位置決め精度良く保持できることが望ましい。本発明の排水システムでは、上述した本発明の架台を用いて排水マスを設置することとしているため、排水マスをいかに安定的かつ位置決め精度良く保持した状態で施工できる。従って、本発明の排水システムは、安定的かつ精度良く施工できる。
【0031】
また、本発明の排水システムのように吊り下げた状態で配設する場合は、施工後の使用状態において排水マスの蓋の上に人や物が乗る等して大きな力が作用する可能性がある。かかる状況を考慮し、本発明の排水システムでは、上述した本発明の架台を用いて排水マスを保持することとしている。そのため、本発明の排水システムでは、排水マスに対して大きな力が作用したとしても、排水マスをしっかりと支えることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ピット内に配設される場合及び地中に埋設される場合を問わず、排水マスを安定して保持することができる架台、及び架台を備える排水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る架台を示す斜視図である。
図2図1の架台を示す平面図である。
図3図1の架台の側面図である。(a)は図2におけるA1方向から視認した場合を示す図(左側面図)、(b)は図2におけるA2方向から視認した場合を示す図(正面図)である。
図4図1の架台の支持対象とされた排水マスを示す断面図である。
図5図4の排水マスのマス本体及び切替部材を示す斜視図である。
図6図4の排水マスの排水流路の切り替えと切替部材の位置を示している。
図7図1の架台に図4の排水マスを据え付けた状態を示す斜視図である。
図8図1の架台に図4の排水マスを据え付けた状態を示している、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図9図1の架台と排水マスの配置を示す平面図である。(a)は第一支持部に排水マスを支持させた状態、(b)は第二支持部に排水マスを支持させた状態を示している。
図10図1の架台に図4の排水マスを据え付けた状態を示す断面図である。(a)は図8(b)におけるA3-A3’線断面図、(b)は図8(b)におけるA4-A4’線断面図である。
図11】ボルト孔の長手方向の大きさ及びピッチが異なるアングルを示す参考図である。
図12図1の架台の取付孔の配置を示す図である。
図13図1の架台にアングルを取り付ける場合のボルト孔と取付孔の配置を示す概念図である。
図14】本発明の排水システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る架台10、及び排水システム100について図面を参照しつつ説明する。
【0035】
架台10は、図1に示す外観を有している。図7に示すとおり、架台10は、後で詳述する排水マス60を保持するためのものである。本実施形態では、架台10は、図14に示すように建物1の内部空間であるピット3に天井から吊り下げられて配設される管路4において、排水マス60を支持するために用いられる場合を例に挙げて説明する。
【0036】
図1に示すとおり、架台10は、基台部20、保持部30、及び凸部50(肉厚部)を有している。
【0037】
なお、以下の説明において、基台部20の表裏をなす面のうち、架台10に排水マス60を保持させた状態において上方に向く面を「配置面20a」と記載し、他方の面を「下方面20b」と記載して説明する場合がある。
【0038】
また、架台10に排水マス60を保持させた状態において、上下方向H(配置面20aと交差する方向)であって基台部20から離間する方向(上方向)を「高さ方向h1」と記載して説明する場合がある。さらに、上下方向Hにおいて、高さ方向h1と向きが逆となる方向を「下方向h2」と記載して説明する場合がある。
【0039】
図1に示すとおり、架台10は、保持部30が基台部20の配置面20aから高さ方向h1に形成され、基台部20及び保持部30が一体的に形成されている。
【0040】
本実施形態の架台10は、樹脂素材を成型したものとされている。なお、本発明の架台は、樹脂素材により一体的に成型したもののほか、基台部と保持部とを別体として成型した後に基台部と保持部とを接続して構成したものであってもよい。また、架台10は、樹脂素材により形成されるもののほか、木製材料や金属材料により形成されるものであってもよい。
【0041】
基台部20は、板状とされている。図2に示すとおり、基台部20は、平面視において略矩形の外観を有している。基台部20には、中央孔24、複数の取付孔26、係止部28、及び勾配方向表示部52が設けられている。
【0042】
図2に示すとおり、中央孔24は、基台部20の略中央に形成された円形の貫通孔である。中央孔24は、保持部30に取り囲まれた領域に形成されている。中央孔24には、後で詳述する排水マス60の第二流出部67が挿通される。
【0043】
取付孔26は、形鋼や吊り下げ部材等の支持部材を取り付けるための締結部材の挿通孔として設けられている。図1及び図2に示すとおり、取付孔26は長孔とされている。
【0044】
図2に示すとおり、架台10には、四つの取付孔26が設けられている。図12に示すとおり、四つの取付孔26は、基台部20の外縁21の四つの辺22a,22b,22c,22dが交差する四つの角部23の近傍にそれぞれ設けられている。また、図12に示すとおり、四つの取付孔26は、基台部20の辺22の両側にそれぞれ設けられており、辺22の両側に設けられた取付孔26の長手方向に延びる中心軸線Eが相互に角度をなしている。より具体的には、取付孔26は、中心軸線Eが基台部20の中央から外縁21に向けて放射状となるように設けられている。そのため、取付孔26は、基台部20の辺22に対してそれぞれ約45度の角度をなすように形成されている。
【0045】
係止部28は、U字ボルト等の部材を係止するために設けられている。本実施形態の係止部28は、基台部20に設けられた貫通孔とされている。係止部28は、後述する受部32の近傍に設けられており、一つの受部32に対して二つの貫通孔が一対として設けられている。なお、本発明の架台の係止部は、本実施形態に限定されない。例えば、本発明の架台における係止部は、固定部材を係止可能なものであればいかなるものであってもよい。例えば、本発明の架台の係止部は、フック状の部材が設けられたものであってもよい。
【0046】
保持部30は、排水マス60を保持するために設けられている。図1に示すとおり、保持部30は、高さ方向h1に向けて形成されている。また、図2に示すとおり、保持部30は、平面視において略環状の形状とされている。
【0047】
保持部30は、下方向h2に向けて凹状に形成された複数の受部32と、受部32よりも高さ方向h1に延出するように形成された複数の延出部34とを有している。
【0048】
受部32は、後述する排水マス60の流出入部63を下方から支持するために設けられている。より具体的には、受部32は、流出入部63の下方の外周面を取り囲むように支持可能とされている。図1に示すとおり、受部32は、円弧状(本実施形態では半円状)に凹んだ切り欠き部分として形成されている。なお、以下の説明において、受部32の最も深い部分(最も配置面20aに近い部分)を「最深部33」と記載して説明する場合がある。
【0049】
図1及び図2に示すとおり、保持部30には、四つの受部32が設けられている。より具体的には、保持部30には、四つの受部32として、第一受部32a、第二受部32b、第三受部32c、及び第四受部32dが設けられている。
【0050】
二つの受部32は、保持部30の周方向において対向するように配置されて対をなし、支持部40を構成している。言い方を換えれば、架台10には、一対の受部32により一つの支持部40が構成されている。また、架台10には、四つの受部32により、二つの支持部40として第一支持部41及び第二支持部42が形成されている。
【0051】
より具体的には、図2に示すとおり、第一支持部41は、第一受部32a及び第二受部32bにより構成されている。また、第二支持部42は、第三受部32c及び第四受部32dにより構成されている。
【0052】
また、一対の受部32が向かい合う方向である軸線方向X(仮想連結線Kが延びる方向)は、第一支持部41の第一軸線方向x1と、第二支持部42の第二軸線方向x2とが、配置面20a上で交差する。言い方を換えれば、第一支持部41と第二支持部42とは、軸線方向Xが十字状に交差するように配置されている。
【0053】
支持部40は、一対の受部32により後述する流出入部63を支持して排水マス60を支持する。また、排水マス60を支持部40に支持させた場合、受部32の最深部33に排水マス60の荷重が集中することとなる。言い方を換えれば、一対の受部32の最深部33には、排水マス60の荷重が集中する。
【0054】
なお、以下の説明において、一対の受部32の最深部33を結ぶ仮想線を「仮想連結線K」と記載して説明する場合がある。また、仮想連結線Kを配置面20aに配置したと仮定した場合の仮想線を「中心線C」と記載する場合がある。また、第一支持部41の中心線Cを「第一中心線c1」と、第二支持部42の中心線Cを「第二中心線c2」と記載して説明する場合がある。
【0055】
図3に示すとおり、第一支持部41の受部32の径方向の大きさD1と、第二支持部42の受部32の径方向の大きさD2とは、異なる大きさとされている(D1≠D2)。具体的には、第一支持部41の受部32の径方向の大きさD1は、第二支持部42の受部32の径方向の大きさD2よりも小さい(D1<D2)。
【0056】
さらに具体的に説明すると、図3(a)に示すとおり、第一支持部41を構成する第一受部32a及び第二受部32bは、径方向の大きさ(第一軸線方向x1と交差する方向において受部32の最も大きい部分の大きさ)がD1とされている。また、図3(b)に示すとおり、第二支持部42を構成する第三受部32c及び第四受部32dは、径方向の大きさ(第二軸線方向x2と交差する方向において受部32の最も大きい部分の大きさ)がD2とされている。言い方を換えれば、架台10は、第一支持部41と第二支持部42とで、異なる径方向の大きさとされている。
【0057】
支持部40は、配置面20aから受部32の最深部33までの距離が、一対の受部32において異なるように形成されている。これにより、支持部40は、配置面20aに対して僅かに高さ方向h1に傾斜するように構成されている。より具体的に説明すると、第一支持部41は、第二受部32bから第一受部32aに向けて僅かに下り勾配となるように構成されている。また、第二支持部42は、第四受部32dから第三受部32cに向けて僅かに下り勾配となるように構成されている。このように、架台10の支持部40には、「勾配」が形成されている。
【0058】
架台10には、支持部40の勾配の向きを示す勾配方向表示部52が設けられている。図2に示すとおり、本実施形態の勾配方向表示部52は、基台部20の配置面20aにおいて向きを示す記号(矢印)として設けられている。また、架台10には、第一支持部41の勾配の向きを示す勾配方向表示部52aと、第二支持部42の勾配の向きを示す勾配方向表示部52bとが設けられている。
【0059】
図1及び図2に示すとおり、延出部34は、受部32と受部32との間にそれぞれ設けられている。本実施形態の架台10では、保持部30において四つの延出部34が設けられている。延出部34は、受部32の両端よりも高さ方向h1に向かって延伸するように形成されている。また、延出部34の側面には、高さ方向h1及び支持部40の軸線方向Xに沿うような平坦面とされた壁面36が形成されている。図1に示すとおり、一つの延出部34には、二つの壁面36が交差するように形成されている。より具体的には、図2に示すとおり、延出部34には、第一軸線方向x1に沿うように形成された壁面36aと、第二軸線方向x2に沿うように形成された壁面36bとが形成されている。本実施形態の架台10では、四つの延出部34のそれぞれに、壁面36a及び壁面36bが形成されている。
【0060】
図1に示すとおり、凸部50(肉厚部)は、受部32の近傍から基台部20の外縁21に向かって凸状に形成されている。凸部50は、基台部20の他の部分よりも肉厚とされた部分として設けられている。凸部50は、基台部20の配置面20aに設けられている。また、凸部50は高さ方向h1の面が、受部32の最深部33の上方面と略面一となるように設けられている。図2に示すとおり、架台10は、四つの凸部50を備えている。
【0061】
図2に示すとおり、凸部50は、支持部40の中心線C上に設けられている。より具体的には、四つの凸部50のうち、二つの凸部50は、第一支持部41の第一中心線c1上に設けられている。また、他の二つの凸部50は、第二支持部42の第二中心線c2上に設けられている。言い方を換えれば、凸部50(肉厚部)は、排水マス60の流出入部63を受部32に嵌め込んで支持させた状態において、排水マス60の荷重が集中する中心線C上に設けられている。
【0062】
続いて、排水マス60について説明する。本実施形態では、架台10に保持させる排水マス60を、流路の切り替えを行うことができる切替式の排水マスを一例に挙げて説明する。なお、本発明の架台は、切替式の排水マスを保持するものに限定されない。すなわち、本発明の架台は、マス本体の周方向において対向するように流入部及び流出部が形成される排水マスを、好適に保持することができる。
【0063】
図4に示すとおり、排水マス60は、マス本体62、切替部材80、点検筒90、及び蓋体92を有している。本実施形態の排水マス60は、塩化ビニル、強化繊維プラスチックなどの樹脂素材を加工成形したものとされている。
【0064】
排水マス60は、排水流路Rを切り替えることができる排水マス60(切替式の排水マス)である。排水マス60は、排水流路Rを、直線状に形成される第一流路r1と、屈曲して形成される第二流路r2とに、切り替え可能とされている。排水マス60は、マス本体62に対する切替部材80の相対位置が変位されることにより、排水流路Rを第一流路r1から第二流路r2へ、あるいは第二流路r2から第一流路r1へと切り替え可能とされている。
【0065】
図4及び図5に示すとおり、マス本体62は、上部及び下部に開口が形成され、複数の略筒状の部分が一体的に形成された部材である。また、マス本体62の側部には、二つの開口が形成されている。さらに、図5に示すとおり、マス本体62の内側には、段状部68が形成されている。マス本体62の上部に形成された開口は、点検口69とされている。
【0066】
図5に示すとおり、マス本体62には、汚水又は雨水を流入させるための筒状の流入部64及び汚水又は雨水を流出させるための流出部65を含む流出入部63が複数(本実施形態の排水マス60では三つ)形成されている。より具体的に説明すると、マス本体62には、汚水又は雨水を流入させる一つの流入部64と、汚水又は雨水を流出させる第一流出部66及び第二流出部67の二つの流出部65との、三つの流出入部63が設けられている。
【0067】
三つの流出入部63のうち、流入部64と第一流出部66とは、マス本体62の周方向に対向するように設けられている。排水マス60は、マス本体62の周方向に対向して配置される流入部64及び第一流出部66が対をなす一対の流出入部63により、流入部64から第一流出部66に向けて直線状の経路とされた第一流路r1を形成する(図6参照)。
【0068】
また、第二流出部67は、第一流路r1と交差する方向であって下向きに開口するように設けられている。排水マス60は、流入部64から第二流出部67に向けて屈曲した経路とされた第二流路r2を形成可能とされている。
【0069】
このように、排水マス60は、三つの流出入部63により、直線状の経路とされた第一流路r1と、屈曲した経路とされて下方に向けて汚水又は雨水を排水する第二流路r2とを形成可能とされている。
【0070】
図5に示すとおり、排水マス60には、流入部64の開口の近傍に、第一流路r1の向きを示す流路方向表示部76が設けられている。
【0071】
図4及び図5に示すとおり、排水マス60の流出入部63のうち、流入部64及び第一流出部66は、配管が挿入される受口とされている。より具体的に説明すると、流入部64及び第一流出部66の端部には、径方向に拡径された拡径部70が形成されている。また、流入部64及び第一流出部66には、拡径部70との境界部分の外面に、段差部72が形成されている。
【0072】
段差部72は、流出入部63の軸線方向において、マス本体62側の拡径されていない部分と、開口の近傍が径方向に拡大された拡径部70との境界部分において、流出入部63の外周面に形成された段差状の部分である。
【0073】
排水マス60には、マス本体62の周方向においた対向するように設けられた一対の流出入部63のそれぞれに、段差部72が形成されている。より具体的には、排水マス60は、流入部64には段差部72aが形成され、第一流出部66には段差部72bが形成されている。別の言い方をすれば、排水マス60は、第一流路r1が延びる方向の両側において、流出入部63の端部が拡径された拡径部70を備えるとともに、段差部72が形成されている。
【0074】
また、図5に示すとおり、マス本体62の外面において、流入部64から第一流出部66に至る部分には、平坦面として形成された平坦部74が形成されている。平坦部74は、マス本体62において略鉛直の姿勢となるような平坦面とされている。第一流路r1を境界としてマス本体62を径方向に二つに分断したと仮定した場合に一方を正面側、他方を背面側とすると、平坦部74は、マス本体62の正面側及び背面側の双方に形成されている。
【0075】
図4及び図5に示すように、点検口69は、地面に向かって開口している。点検口69には、点検筒90が接続されている。点検筒90の上端は、地面と略同じ高さとなるように配置されている。作業者は、地上から点検筒90を通じて、マス本体62の内部に破損または詰まりなどがないかを点検することができる。なお、点検筒90の上端には、蓋体92が配置されている。蓋体92は、取り外しが可能である。点検筒90は、蓋体92によって閉じられている。蓋体92によって、排水マス60内の汚水又は雨水から発生する悪臭が点検口69を通じてピット3の内部から外部に漏れることを防止することができる。
【0076】
切替部材80は、汚水又は雨水の排水流路Rを第一流路r1及び第二流路r2に相互に切り替えるための部材である。具体的には、切替部材80は、トイレなどの排水設備130から流出した汚水又は雨水を、第一流路r1により下水本管(図示を省略)に排水させ、又は第二流路r2により貯留槽110に排水させるように汚水又は雨水の排水流路Rを切り替えるために設けられている。
【0077】
図5に示すとおり、切替部材80は、マス本体62の内部に収容されている。また、切替部材80は、マス本体62の下方に形成された第二流出部形成部67aに対して着脱可能とされている。切替部材80が第二流出部形成部67aに嵌め込まれると、第二流出部67は閉鎖される。切替部材80が第二流出部形成部67aから取り外されると、第二流出部67は開放される。
【0078】
図5に示すように、切替部材80は、本体部82と、持ち手83と、嵌合部84と、越流抑止板85とを備えている。
【0079】
図5に示すとおり、本体部82は、断面視において略U字状に形成されている。本体部82の両側には、径方向外側に突出するように鍔状部82bが形成されている。また、本体部82は、流入部64から第一流出部66へと繋がる流路を形成する底面82aを備えている。
【0080】
図5に示すとおり、持ち手83は、一端側の鍔状部82bから他端側の鍔状部82bに至り、本体部82を横断するように設けられている。嵌合部84は、本体部82の下方に設けられている。嵌合部84は、第二流出部67を閉塞すべく、第二流出部67に嵌合可能な略円筒状の部分である。本実施形態では、嵌合部84の外周部には、ゴム製のシール部材84aが設けられている。このシール部材84aによって、第二流出部67と切替部材80の嵌合部84との間のシールが図られている。越流抑止板85は、第二流路r2を形成させる際に、第一流出部66側へ汚水又は雨水が越流することを抑制するために設けられている。
【0081】
排水マス60は、第二流出部形成部67aに切替部材80の嵌合部84が嵌め込まれた状態では、第二流出部67を閉鎖して、流入部64から流入した汚水又は雨水を第一流出部66から流出させる。具体的には、図6(a)に示すとおり、流入部64及び第一流出部66が連通するように第一流路r1を形成させる場合には、切替部材80は、鍔状部82bがマス本体62の段状部68(図6では図示を省略)に支持されるような姿勢に維持される。これにより、切替部材80は、底面82aと流入部64及び第一流出部66を接続するように配置され、断面視において略U字状の排水路を形成する。
【0082】
排水マス60は、第二流出部67に切替部材80の嵌合部84が嵌め込まれた状態から、マス本体62に対する切替部材80の位置を変位させることで、汚水又は雨水の排出口を第一流出部66から第二流出部67に切り替えることができる。
【0083】
具体的には、図6(a)に示す状態から、切替部材80の持ち手83を把手して上方に持ち上げ、切替部材80を周方向に約90度回転するように変位させると、切替部材80は、マス本体62の段状部68(図6では図示を省略)の上方に本体部82が支持された状態となる(図6(b)参照)。図6(b)に示すとおり、本体部82がマス本体62の段状部68に支持された状態では、底面82aが上方に変位して、閉鎖されていた第二流出部67が開放される。
【0084】
第二流出部67が開放された状態では、流入部64からマス本体62内に流入した汚水又は雨水は、第一流出部66に到達する前に第二流出部67に向けて落下し、第二流出部67から流出する。これにより、排水マス60は、第一流出部66から汚水又は雨水を流出させる状態から、第二流出部67から汚水又は雨水を流出させる状態へと切り替えることができる。また、排水マス60は、上述とは逆の動作、すなわち嵌合部84が第二流出部形成部67aから外された状態から、嵌合部84が第二流出部形成部67aに嵌め込まれた状態とすることで、第二流出部67から汚水又は雨水を流出させる状態から第一流出部66から汚水又は雨水を流出させる状態へと切り替えることができる。
【0085】
<施工時の作業について>
続いて、建物1の床2の下の区画された空間(ピット3)に配設された管路4(吊り配管)において、架台10を用いて排水マス60を配設する場合の作業について説明する。
【0086】
建物1の床2の下方には、複数の区画された空間であるピット3がある。ピット3は、建物1の基礎5によって囲まれている。以下で説明する管路4は、床2に吊り下げられてピット3に配設されたいわゆる「吊り配管」の管路である。なお、本発明の架台は、以下に説明するとおり、吊り配管において排水マスを配設する場合に好適に用いることができるほか、排水マスを地中に埋設する場合にも好適に用いることができる。
【0087】
管路4は、建物1の床2の下の区画された空間に配設されている。以下の説明において、建物1の床2の下に形成された区画された空間を、「ピット3」と記載して説明する。なお、ピット3には、建物1の内部であって地面よりも上方に形成されるもののほか、建物1の地下に形成されたものも含まれる。
【0088】
排水マス60は、架台10に保持された状態で、架台10が吊り下げバンド6等を介して床2に吊り下げられてピット3内に配設される。
【0089】
図7及び図8に示すとおり、架台10は、排水マス60を、受部32に流出入部63を支持して、中央孔24を介して第二流出部67を下方に突出させるように排水マス60を保持することができる。そのため、架台10は、下方に向けて開口する第二流出部67が形成される排水マス60を、第二流出部67を下方に取り出しつつ、安定して保持することができる(図8(a)参照)。
【0090】
上述のとおり、架台10には、管路径の異なる排水マス60に対応するように、二つの支持部40が設けられている。具体的には、架台10には、排水マス60の管路径が概ねD1である場合に対応する第一支持部41と、排水マス60の管路径が概ねD2である場合に対応する第二支持部42とが設けられている。そのため、排水マス60を管路4に配設しようとする場合において、排水マス60の管路径がD1である場合、及び管路径がD2である場合の双方において、一つの架台10を用いることができる。
【0091】
より具体的には、図9(a)に示すとおり、排水マス60の管路径がD1である場合には、排水マス60の一対の流出入部63を第一支持部41に支持させるように、第一流路r1が第一軸線方向x1に沿うように排水マス60を配置させる。言い方を換えれば、排水マス60の管路径がD1である場合には、第一支持部41を管路4が形成される方向に沿うように架台10を配置させる。
【0092】
図9(b)に示すとおり、排水マス60の管路径がD2である場合には、排水マス60の一対の流出入部63を第二支持部42に支持させるように、第一流路r1が第二軸線方向x2に沿うように排水マス60を配置させる。言い方を換えれば、排水マス60の管路径がD2である場合には、第二支持部42を管路4が形成される方向に沿うように架台10を配置させる。
【0093】
このように、架台10は、管路径の異なる排水マス60に兼用して用いることで汎用性を持たせることができる。その結果、架台10は、排水マス60の管路径に応じて複数種類の架台を提供する場合と比較して、製造コストを抑制し、管路径のサイズを取り違えて発注されて現場に納入されることを回避することができる。
【0094】
図7に示すとおり、排水マス60を架台10に据え付けた状態では、排水マス60は、両側の側方において一対の流出入部63がそれぞれ受部32に嵌め込まれて保持される。言い方を換えれば、排水マス60は、両脇が受部32により下方から支持される。また、受部32は、流出入部63の下方の外周面に沿うように円弧状に形成されている。そのため、架台10は、排水マス60を流出入部63の下方の外周面と略一致させて支持し、排水マス60を安定して保持することができる。
【0095】
また、図10(a)に示すとおり、排水マス60を架台10に据え付けた状態では、排水マス60の段差部72が凸部50により軸線方向Xへの移動が規制され、排水マス60が架台10に対して位置決めされる。これにより、架台10は、排水マス60が軸線方向Xにずれることを抑制して、より安定して排水マス60を保持することができる。
【0096】
さらに、図10(b)に示すとおり、排水マス60を架台10に据え付けた状態では、排水マス60は、流出入部63の下方の外周面が受部32に嵌め込まれるとともに、平坦部74が延出部34の壁面36と向かい合うように配置される。そのため、架台10に据え付けられた排水マス60が回転するように傾斜した場合に、排水マス60は平坦部74が壁面36と接触して傾斜が規制される。これにより、架台10は、排水マス60の平坦部74を側方から支え、排水マス60が傾斜することや倒れたりすることを抑制することができる。
【0097】
このように、架台10を用いて排水マス60を管路4に配設する場合、支持枠としてアングル8を組み立てるなどの作業を要さず、床2にアンカーボルト等や吊り下げバンド6を介して簡単に架台10を床2に取り付けることができる。また、架台10は、排水マス60を据え付けるだけの動作で、排水マス60を容易に安定して保持することができる。その結果、架台10は、架台10に代えてアングル8により支持枠を組み立てて排水マス60を支持しようとする場合と比較して、施工性を向上させることができる。
【0098】
より詳細に説明すると、アングル8を支持枠として組み立てて排水マス60の基台とする場合には、支持枠に対する排水マス60の姿勢が不安定となるため、一人の作業者が支持枠に対する排水マス60の姿勢を保持して、他の者が基台を床2に取り付ける作業を行う必要があった。これに対して、架台10は、排水マス60を据え付けるだけで架台10に対する排水マス60の位置や姿勢を安定して保持する。そのため、排水マス60を基台に対する位置や姿勢を維持するための作業を要さず、施工性を向上させることができる。
【0099】
また、図7に示すとおり、排水マス60を架台10に据え付けた上で、流出入部63を上方側から押さえつけるためにU字ボルト7などの固定部材を取り付けることができる。U字ボルト7は、両端が係止部28に取り付けられる。これにより、架台10は、上方から下方に排水マス60を維持して、より確実に排水マス60を保持することができる。
【0100】
また、排水マス60を架台10に保持させる際には、架台10に設けられた勾配方向表示部52の向き(矢印の示す向き)を指標として、これと排水マス60の流路方向表示部76の向きを一致させるように配置することができる。これにより、架台10は、排水マス60に形成される流路勾配の向きを取り違えて排水マス60を取り付けてしまうことを抑制することができる。
【0101】
ここで、架台10を樹脂素材により形成する場合など、基台部20が変形する可能性がある場合には、架台10は、排水マス60の荷重によって基台部20が撓むことを抑制するために、下方面20bにアングル8などの形鋼等からなる長尺状の補強部材が取り付けられて補強されることが望ましい。架台10の下方面20bにアングル8などの支持部材を取り付ける場合は、アングル8等の補強部材が流入部64及び流出部66の軸線方向と交差(本実施形態では略直交)する姿勢としつつ、取付孔26とアングル8のボルト孔8aとの位置を合わせ、ボルト9などの締結部材を挿通させて接続される。
【0102】
図11に一例として示すとおり、アングル8などの形鋼には、ボルト9などを取り付けるためのボルト孔8aが所定のピッチP及び所定の長さLで形成されている。しかしながら、アングル8などの形鋼に形成されているボルト孔8aのピッチPや長さLなどは、様々な種類がある。ピッチがp1、長さがl1のアングル8や、ピッチがp2、長さがl2のアングル等がある。さらに、施工現場では、様々なピッチや長さを備えるアングルが用いられる。
【0103】
図12に示すとおり、架台10の下方面20bに二本のアングル8を取り付けて補強して支持する場合、基台部20の一端側に設けられた二つの取付孔26に一本のアングル8の両端を取り付けて、他端側に設けられた二つの取付孔26に一本のアングル8の両端を取り付けることとなる。図12に示すとおり、架台10の取付孔26は、長手方向に延びる軸中心線Jが相互に角度をなすように形成されている。そのため、ピッチPや長さLが異なるアングル8に対応して取り付けることができる。
【0104】
具体的には、図13に示すとおり、取付孔26に対してアングル8を辺22と略平行に移動させて(図13における矢印Fの方向)ボルト孔8aと取付孔26との位置を調整することで、様々なピッチPや長さLのボルト孔8aに対応してボルト9等の締結部材を取り付けることができる。また、架台10には四つの取付孔26が設けられているため、二本のアングル8を長手方向が第一軸線方向x1と交差するように配置する場合(図13の場合)に加え、二本のアングル8を長手方向が第二軸線方向x2と交差するように配置する場合にも、様々な種類のアングル8に対応して取り付けることができる。
【0105】
このように、架台10は、様々な種類のアングル8に柔軟に対応して取り付けることができる。これにより、架台10は、排水マス60の一対の流出入部63の向きを第一軸線方向x1及び第二軸線方向x2の双方に対応して据え付けることができることに加え、管路4に排水マス60を配設する際のアングル8の選定や取り違えによる手間を軽減して、施工性を向上させることができる。
【0106】
<排水システムについて>
続いて、ピット3に配設された管路4に含まれる排水システム100について説明する。図13に示すとおり、管路4は、吊り配管とされている。また、管路4には、排水システム100、及び貯留槽110が設けられている。排水システム100は、架台10及び排水マス60を備えている。また、管路4は、複数の排水マスや管材を備え、排水流路Rを形成している。
【0107】
図13に示すとおり、排水マス60は、上述した作業により、架台10に支持された状態で床2に吊り下げられている。また、排水マス60の各流出入部63には、それぞれ管材120が接続されている。なお、第二流出部67は、管材120を介して貯留槽110と接続されている。
【0108】
図13に示すとおり、排水マス60は、点検筒90の上端が建物1の床2とほぼ同じ高さとなるように配置されている。なお、点検筒90は、上端が床2から上方に突出していてもよい。点検筒90は、蓋体92により閉塞されている。蓋体92は、床2の上方面と略同じ位置となるように配置されている。
【0109】
排水マス60は、水平方向に向くように配置された流入部64及び第一流出部66が、それぞれ管材120と接続されている。また、排水マス60は、下方に開口する第二流出部67が管材120を介して貯留槽110と接続されている。言い方を換えれば、排水マス60は、管材120や貯留槽110との接続により、下方に向けた変位が規制された状態で保持されている。
【0110】
ここで、蓋体92が人に踏まれるなどすると、排水マス60に荷重がかかり、排水マス60には上下方向Hにせん断力が加えられるところ、排水マス60は、床2に吊り下げられた架台10に保持されている。そのため、架台10は、排水マス60に加えられた荷重を受け止めて、上下方向Hのせん断力を抑制することができる。その結果、架台10は、吊り配管において配設された排水マス60の上下方向Hのせん断力による破損を抑制することができる。
【0111】
また、上述のとおり、架台10において排水マス60の荷重が集中する中心線C上には、凸部50が設けられている。言い方を換えれば、架台10は、基台部20において排水マス60の排水流路Rが形成される直下部分に、他の基台部20よりも厚みのある部分として凸部50(肉厚部)が設けられている。そのため、架台10は、排水マス60の荷重が集中する中心線Cにおいて基台部20の強度を向上させ、基台部20の撓みを抑制することができる。
【0112】
さらに、上述のとおり、排水マス60を架台10に据え付けられた状態では、排水マス60の平坦部74と架台10の壁面36とが隣接して向かい合うように配置される。そのため、排水マス60の荷重により基台部20が撓むように変形しようとすると、やがて延出部34の壁面36が平坦部74と接触する。言い方を換えれば、架台10は、保持部30の壁面36が排水マスの平坦部74と接触して変形が規制される。そのため、排水マス60の平坦部74が、保持部30の変形を抑制するストッパーのような機能を発揮し、さらに基台部20の撓みを抑制することができる。特に、本実施形態の架台10のように、基台部20の中央に中央孔24が形成されている場合には、さらに基台部20が撓みやすくなるところ、架台10は効果的に基台部20の撓みを抑制することができる。
【0113】
上述のとおり、排水マス60は、排水流路Rの切り替えを行うことができる切替式の排水マスである。排水システム100は、切替部材80をマス本体62に対する姿勢を変化させることで、水平方向に直線状に延びる第一流路r1と、汚水又は雨水を貯留槽110に排水する第二流路r2とを切り替えることができる。
【0114】
このように、排水システム100は、ピット3に配設される管路4において好適に排水マス60を保持しつつ、汚水又は雨水の排水流路Rを切り替えることができる。
【0115】
以上、本発明の架台及び排水システムの実施形態について説明したが、本発明の架台及び排水システムは上述の実施形態に限定されない。
【0116】
すなわち、上述の実施形態に係る架台10における保持部30は、平面視において略円形をなすような環状の形状を備えるものとした例を示したが、本発明の架台10はこれに限定されない。例えば、本発明の架台における保持部は、平面視において略矩形、あるいはL字状としてもよい。さらに、本発明の架台における保持部は、受部及び延出部が、それぞれ分離したものとしてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態の説明において、架台10を切替式の排水マス60を保持するものとして説明したが、架台10の支持対象とする排水マスは上述の実施形態に限定されない。例えば、架台10は、下方に開口する第二流出部67を備えないものであって、一対の流出入部63を備える排水マス(いわゆる「ストレートタイプ」)を保持するものとして用いられるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の架台、及び排水マスは、排水マスを配設する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 建物
3 ピット(内部空間)
10 架台
20 基台部
20a 配置面
22 辺
24 中央孔
26 取付孔
30 保持部
32 受部
32a 第一受部
32b 第二受部
32c 第三受部
32d 第四受部
33 最深部
34 延出部
36 壁面
36a 壁面
36b 壁面
40 支持部
41 第一支持部
42 第二支持部
50 凸部
60 排水マス
62 マス本体
63 流出入部
64 流入部(流出入部)
65 流出部(流出入部)
66 第一流出部(流出入部、流出部)
67 第二流出部(流出入部、流出部)
100 排水システム
E 中心軸線
C 中心線
c1 第一中心線
c2 第二中心線
h1 高さ方向
R 排水流路
r1 第一流路
r2 第二流路
X 軸線方向
x1 第一軸線方向(軸線方向)
x2 第二軸線方向(軸線方向)
図1
図2
図3
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図5
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