(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】フルオロ界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/42 20220101AFI20220701BHJP
C08G 65/329 20060101ALI20220701BHJP
C08G 65/04 20060101ALI20220701BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20220701BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220701BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20220701BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20220701BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20220701BHJP
【FI】
C09K23/42
C08G65/329
C08G65/04
G01N35/08 B
G01N37/00 101
B01F23/41
C12Q1/02
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2018562208
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(86)【国際出願番号】 GB2017051507
(87)【国際公開番号】W WO2017203280
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-25
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517131204
【氏名又は名称】スフィア フルイディクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Sphere Fluidics Limited
【住所又は居所原語表記】The Jonas Webb Building, Babraham Research Campus, Babraham, Cambridge, Cambridgeshire CB22 3AT, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シン・リ
(72)【発明者】
【氏名】クライヴ・エー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・クレイ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・エフ・クレイグ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-308242(JP,A)
【文献】特表2012-506458(JP,A)
【文献】特表2012-506459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0105112(US,A1)
【文献】国際公開第2015/015198(WO,A1)
【文献】特開平05-279471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/42
C08G 65/00-67/04
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G01N 35/00-37/00
C12Q 1/00-3/00
B01F 23/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
A-(CH
2)
a-(X)
x-B-(X)
x-(CH
2)
a-A (II)
[式中、
各Aはペルフルオロポリエーテル基であり、かつ式:
-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数である]の繰返し単位を含み;
aは正の整数であり;
Xは、共有結合又は連結基であり;
xは正の整数であり;
Bはポリアルキレンオキシド単位であり;
複数のA、X、a及びxを含む化合物においては、それぞれは同じでも異なってもよい]
を有する界面活性剤。
【請求項2】
各Aが、式
-[CF
2CF
2O]
c-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数であり、及びcは0又は正の整数である]の単位を含む、又は、
各Aが、式
CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-
[式中、bは正の整数である]から構成される、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
bが1から100の整数である、請求項2に記載の界面活性剤。
【請求項4】
各aが1から5の整数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項5】
少なくとも1つのXが共有結合であ
る、請求項1から4のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項6】
少なくとも1つのX
が連結基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項7】
少なくとも1つのXが、式-D-(E)
h-(G)
d-又は-(G)
d-(E)
h-D-[式中、Dは、NH、NMe、C(O)、CO
2、O又はSO
g(ここで、gは0、1若しくは2である)から選択され、Eは、アルキレン、場合により置換されたアリーレン又は場合により置換されたヘテロアリーレンから選択され、hは0又は1であり、Gは、C(O)NH、CO
2、NH、NMe、O、C(O)、S又はSO
2NHから選択され、dは0又は1である]の連結基であるか、又は少なくとも1つのXが、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SO
2NH-、-NHSO
2-、-NHSO
2-C
6H
4-O-及び-O-C
6H
4-SO
2NH-から選択される連結基である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項8】
各xが1である、請求項
1から7のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項9】
各Bが、ポリエチレンオキシド単位、
又は
ポリプロピレンオキシド単位
、
を含む、請求項
1から8のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項10】
各Bが式
-[CH
2]
r-[CH
2CH
2O]
e-[CH
2]
r'-、
[式中、eは正の整数であり、r及びr'は、それぞれ独立に0、1、2、3、4又は5である]の単位から構成される、請求項
1から9のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項11】
各Bが式
-[CH
2CH
2O]
e-
[式中、eは正の整数である]の単位から構成される、請求項
1から9のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項12】
各Bが式
-[CH(CH
3)CH
2O]
f-[CH
2CH
2O]
e-[CH
2CH(CH
3)O]
f'-CH
2CH(CH
3)-
[式中、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]から構成される、請求項
1から9のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項13】
eが1から100の整数である、請求項
10から12のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項14】
f及びf'が、それぞれ独立に1から50の整数である、請求項
12又は請求項
13に記載の界面活性剤。
【請求項15】
【化1】
【化2】
【化3】
[式中、各b、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]からなる群から選択される、請求項
1から14のいずれか一項に記載の界面活性剤。
【請求項16】
請求項
1から15のいずれか一項に記載の界面活性剤を製造する方法であって、式(VIII)の化合物
A-(CH
2)
a-Y (VIII)
[式中、Aはペルフルオロポリエーテル基であり、;かつAが、式
-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数である]の繰返し単位を含む;
aは正の整数であり、
Yは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む]を、式(XI)の化合物
Z-B-Z (XI)
[式中、Bはポリアルキレンオキシドであり、
各Zは、求核基、脱離基又はイソシアナート基を含む]
と反応させる工程を含む方法。
【請求項17】
各Aが、式
-[CF
2CF
2O]
c-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数であり、及びcは0又は正の整数である]の単位を含む、又は、
各Aが、式
CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-
[式中、bは正の整数である]から構成される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
各aが1から5の整数である、請求項
16又は請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
各Bが、ポリエチレンオキシド単位、
又は
ポリプロピレンオキシド単
位
を含む、請求項
16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
Bが、式-[CH
2]
r-[CH
2CH
2O]
e-[CH
2]
r'-又は-[CH(CH
3)CH
2O]
f-[CH
2CH
2O]
e-[CH
2CH(CH
3)O]
f'-CH
2CH(CH
3)-[式中、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数であり、r及びr'は、それぞれ独立に0、1、2、3、4又は5である]から構成されている、請求項
16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Yが、NH
2、NHMe、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OTs、OMs、OTf、OC
6H
4NO
2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO
2L及びOC
6H
4SO
2L[ここで、Lは、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC
6H
4NO
2から選択される]から選択され、且つ/又は、Zが、NH
2、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf、OC
6H
4NO
2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO
2L及びOC
6H
4SO
2L[ここで、LはCl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC
6H
4NO
2から選択される]から選択される、請求項
16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(VIII)の化合物が、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2OC
6H
4SO
2Cl、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2SO
2Cl、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2OC(O)OC
6H
4NO
2、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2OH、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2NCO、CF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2NH
2及びCF
3CF
2CF
2O-[CF(CF
3)CF
2O]
b-CF(CF
3)-CH
2NHMe、[ここで、bは1から50の整数である]からなる群から選択され、且つ/又は
式(XI)の化合物が、TsO-CH
2CH
2-[OCH
2CH
2]
e-OTs、MsO-CH
2CH
2-[OCH
2CH
2]
e-OMs、NO
2C
6H
4OC(O)O-CH
2CH
2-[OCH
2CH
2]
e-OC(O)OC
6H
4NO
2、OCN-CH
2CH
2-[OCH
2CH
2]
e-NCO、H
2N-[CH
2]
3-[OCH
2CH
2]
e-CH
2-NH
2及びH
2N-[CH(CH
3)CH
2O]
f-[CH
2CH
2O]
e-[CH
2CH(CH
3)O]
f'-CH
2CH(CH
3)-NH
2[式中、eは1から100の整数であり、f及びf'は、それぞれ独立に1から50の整数である]から選択される、請求項
16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
式(II):
A-(CH
2)
a-(X)
x-B-(X)
x-(CH
2)
a-A (II)
[式中、
各Aはペルフルオロポリエーテル基であり、かつ式:
-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数である]の繰返し単位を含み;
aは正の整数であり;
Xは、共有結合又は連結基であり;
xは正の整数であり;
Bはポリアルキレンオキシド単位であり;
複数のA、X、a及びxを含む化合物においては、それぞれは同じでも異なってもよい]
を有する界面活性剤を含む組成物。
【請求項24】
請求項
1から15のいずれか一項に規定する式 (II)を有する化合物の、界面活性剤としての使用。
【請求項25】
エマルジョンの調製における、請求項
1から15のいずれか一項に記載の界面活性剤の使用。
【請求項26】
エマルジョンの形態の、請求項
23に記載の組成物。
【請求項27】
不連続水性相;
連続油相;及び
前記界面活性剤
を含む、請求項
26に記載の
エマルジョンの形態の組成物。
【請求項28】
(i) 水性相を準備する工程と;
(ii) 油相を準備する工程と;
(iii) 前記水性相、前記油相及び界面活性剤を混合して、エマルジョンを形成する工程と
を含み、前記界面活性剤が、式(II):
A-(CH
2)
a-(X)
x-B-(X)
x-(CH
2)
a-A (II)
[式中、
各Aはペルフルオロポリエーテル基であり、かつ式:
-[CF(CF
3)CF
2O]
b-
[式中、bは正の整数である]の繰返し単位を含み;
aは正の整数であり;
Xは、共有結合又は連結基であり;
xは正の整数であり;
Bはポリアルキレンオキシド単位であり;
複数のA、X、a及びxを含む化合物においては、それぞれは同じでも異なってもよい]
からなる群から選択される式を有する、請求項
26又は27に記載のエマルジョンの形態の組成物を調製する方法。
【請求項29】
前記混合が、マイクロ流体デバイスのフローフォーカス型合流法によるものである、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
請求項
26又は27に記載のエマルジョンの形態の組成物の不連続水性相において、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
本発明は、ペルフルオロポリエーテル及びポリアルキレンオキシド単位を含む、特定の繰返し単位を含む界面活性剤に関する。本発明はまた、界面活性剤を製造する方法、界面活性剤を含むエマルジョン、及びエマルジョンを調製する方法に関する。更に、本発明は、界面活性剤及びエマルジョンを使用する方法、並びに界面活性剤及びエマルジョンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、様々な用途のための安定なエマルジョンの製造に長年使用されてきた。エマルジョンに関する一般的な背景の先行技術は、以下のものに見られる: US 5,587,153; US 6,017,546; WO2005/099661; US2004/081633; US6,379,682; US2002/172703; WO2004/038363; US2005/087122; US2007/275415及びUS2008/053205。従来の界面活性剤は、通常、エマルジョンの水性相に可溶性の親水性の頭部基及びエマルジョンの油相に可溶性の1つ又は複数の親油性の尾部を含む。
【0003】
最近になって、連続油相中の水の微小液滴を含む界面活性剤安定化エマルジョンは、例えば、ハイスループットスクリーニング、酵素研究、核酸増幅及び他の生物学的プロセスが実施されるのを可能にする、マイクロ流体技術における用途が見出されている。例えば、生物学的アッセイは、マイクロ流体デバイス中で極めて少量の生物学的物質を用いて実施することができる。マイクロ流体技術に関する更なる情報は、本発明者らの以前の出願WO2009/050512及びWO2015/015199に見ることができる。微小液滴に関する他の一般的な背景の先行技術は、RainDance Technologies Inc.社名義の特許/出願、例えばWO2008/063227に見ることができる。
【0004】
マイクロ流体用途において、エマルジョン形成/製造における連続相として油を使用すると、油は、低摩擦、不揮発性(アルコールとは異なる)、耐熱性等の、有用なマイクロ流体特性を有し、加えて油-水エマルジョンを容易に生じさせることができるので有利である。
【0005】
しかし、従来の界面活性剤は、一般に、溶解度の問題の理由で、フルオラス油相を含むエマルジョンを安定化するのには適してなく、加えて、従来の界面活性剤は、生物学的分子に対して有毒であるか又は細胞に対して有毒であることが多く、安定なエマルジョンを形成せず、外部環境からエマルジョンの内部領域への気体の移動を妨げうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US 5,587,153
【文献】US 6,017,546
【文献】WO2005/099661
【文献】US2004/081633
【文献】US6,379,682
【文献】US2002/172703
【文献】WO2004/038363
【文献】US2005/087122
【文献】US2007/275415
【文献】US2008/053205
【文献】WO2009/050512
【文献】WO2015/015199
【文献】WO2008/063227
【文献】WO2008/021123
【文献】US6,638,749
【文献】WO 2012/022976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、このようなエマルジョンを安定化するのに適した新規な界面活性剤が必要である。フルオロ界面活性剤の例は、以前にWO2008/021123及びUS6,638,749に記載されている。多くの場合、これらは依然として細胞に対して有毒であり、又は生物学的分子を損傷し、温度サイクルを伴う生物学的用途(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))に対して、又はエマルジョン中の長期の試験に対してエマルジョンの安定性をもたらす適切な化学特性又は温度特性を有しなかった。したがって、この使用に更に適した界面活性剤が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様から見ると、本発明は、
B-((X)x-(CH2)a-A)n (VI)、
(A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A)n (IV)、
(A-(CH2)a-(X)x-B)n (V)、及び
(B)n-(X)x-(CH2)a-A (VII)
[式中、
Aはペルフルオロポリエーテルであり;
aは正の整数であり;
Xは、共有結合又は連結基であり;
xは正の整数であり;
Bはポリアルキレンオキシド単位であり;
nは、1を超える正の整数であり、複数のA、B、X、a及びxを含む化合物においては、それぞれは同じでも異なってもよい]からなる群から選択される式を有する界面活性剤を提供する。
【0009】
本発明の好ましい界面活性剤は、式(II)
A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A (II)
[式中、各A、X、a及びxは、同じでも異なってもよい]を有する。
【0010】
本発明の界面活性剤は、安定なエマルジョン、特に不連続水性相及び連続油相を含み、油相がフルオラス油を含むエマルジョンの形成に使用するのに適していることが明らかにされている。本発明の界面活性剤によって安定化されたエマルジョンは、エマルジョンPCRを含めた様々な用途に使用するのに適していることも明らかにされている。更に、本発明の界面活性剤は、マイクロ流体デバイスにおいて使用するのに適していることも明らかにされている。
【0011】
他の態様から見ると、本発明は、上で定義された界面活性剤を製造する方法であって、式(VIII)の化合物
A-(CH2)a-Y (VIII)
[式中、Aはペルフルオロポリエーテルであり、
aは正の整数であり、
Yは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む]を式(XI)の化合物
Z-B-Z (XI)
[式中、Bはポリアルキレンオキシドであり、
各Zは、求核基、脱離基又はイソシアナート基を含む]と反応させる工程を含む方法を提供する。
【0012】
他の態様から見ると、本発明は、上で定義された界面活性剤を含む組成物を提供する。
【0013】
他の態様から見ると、本発明は、上で定義された(VI)、(IV)、(V)、(VII)及び(II)からなる群から選択される式を有する化合物の界面活性剤としての使用を提供する。
【0014】
他の態様から見ると、本発明は、エマルジョンの調製における上で定義された界面活性剤の使用を提供する。
【0015】
他の態様から見ると、本発明は、上で定義された界面活性剤を含むエマルジョンを提供する。
【0016】
他の態様から見ると、本発明は、
不連続水性相;
連続油相;及び
上で定義された界面活性剤
を含むエマルジョンを提供する。
【0017】
他の態様から見ると、本発明は、
(i) 水性相を準備する工程と;
(ii) 油相を準備する工程と;
(iii) 前記水性相、前記油相及び上で定義された界面活性剤を混合して、前記エマルジョンを形成する工程と
を含む上で定義されたエマルジョンを調製する方法を提供する。
【0018】
他の態様から見ると、本発明は、上で定義されたエマルジョンの不連続水性相において、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する工程を含む方法を提供する。
【0019】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を選別する方法であって、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の水性液滴のストリームを、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) ストリームに第1の方向から光を当てる工程と;
(iii) 液滴中の被験物質からの光を、第2の方向において検出する工程と;
(iv) 液滴を、検出された光又は測定可能なシグナルに応じて複数の分別されたストリームの1つに選別する工程と
含む方法を提供する。
【0020】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を合体させる方法であって、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を電界に曝露して、それによって少なくとも2個の水性液滴を単一の液滴に合体させる工程と
を含む方法を提供する。
【0021】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴に流体を導入する方法であって、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を流体のストリームと接触させて、それによって前記流体を水性液滴中に導入する工程と
を含む方法を提供する。
【0022】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴を分割する方法であって、
(i) 第1のマイクロ流体流路、第2のマイクロ流体流路及び第3のマイクロ流体流路を含むマイクロ流体合流点を備える、マイクロ流体デバイスを用意する工程と;
(ii) 上で定義されたエマルジョン中の水性液滴を、前記第1のマイクロ流体流路に供給する工程と;
(iii) 水性液滴をマイクロ流体の合流点を通して通過させて、それによって前記水性液滴を、少なくとも第2のマイクロ流体流路中の第1の娘液滴と第3のマイクロ流体流路中の第2の娘液滴とに分割する工程と
を含む方法を提供する。
【0023】
他の態様から見ると、本発明は、流体から分子を抽出する方法であって、
(i) 上で定義された界面活性剤を二酸化炭素に溶解して、二酸化炭素/界面活性剤混合物を形成する工程と;
(ii) 二酸化炭素/界面活性剤混合物に、該分子を含む流体を添加して、それによって流体から該分子を二酸化炭素中に抽出する工程と
を含む方法を提供する。
【0024】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路又はデバイスにおける、上で定義された界面活性剤の使用を提供する。
【0025】
他の態様から見ると、本発明は、より大きな流体デバイス、容器又はバットにおける分子の分離への、上で定義された界面活性剤の使用を提供する。
【0026】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた自動化されたデバイスにおける、上で定義された界面活性剤の使用を提供する。
【0027】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路又はデバイスにおける、上で定義されたエマルジョンの使用を提供する。
【0028】
他の態様から見ると、本発明は、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた自動化されたデバイスにおける、上で定義されたエマルジョンの使用を提供する。
【0029】
定義
本明細書で使用される場合、「ペルフルオロポリエーテル」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子によって置換されているポリエーテル化合物を表す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ポリアルキレンオキシド」という用語は、1種又は複数のアルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド)から誘導された繰返し単位を含む化合物又は基を表す。ポリアルキレンオキシドは、1種又は複数のアルキレンオキシドから誘導された1種の繰返し単位を含んでいてもよく、又はそれぞれが1種又は複数のアルキレンオキシドから誘導されてもよい複数の異なる繰返し単位を含んでいてもよい。ポリアルキレンオキシド単位は、1種又は複数のポリアルキレンオキシド成分、例えばポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド成分を含んでいてもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、炭素及び水素を含む任意の基を表す。該基は、飽和の直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。アルキル基は、置換又は非置換であってもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「連結基」という用語は、2つ以上の分子の成分を一緒に間接的に結合する役割を果たす任意の基を表す。2つの分子の成分が、連結基なしで一緒に結合される場合、分子の2つの部分が、互いに直接、即ちいずれの介在する原子なしで結合されている。分子の2つの成分が連結基によって結合される場合、2つの成分の間に介在する原子が存在する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、2個の水素原子が除去された脂肪族(即ち、芳香族でない)炭化水素から誘導された二価基を表す。該基は、置換又は非置換であってもよい。置換されたアルキレンでは、1個又は複数の水素原子が、異なる基によって置換されている。C1~8アルキレンは、1から8個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。C1~5は、1から5個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。C1~3は、1から3個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。アルキレン基の一例は、式C2H4を有するエチレンである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アリーレン」という用語は、2個の炭素原子から水素原子が除去されている芳香族炭化水素から誘導された二価の基を表す。アリーレン基の一例は、ベンゼンから誘導されたフェニレン(C6H4)である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリーレン」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含むアリーレン基を表す。「ヘテロ原子」の例には、N、S又はOが含まれる。ヘテロアリーレンは、2個の炭素原子から水素原子が除去されている芳香族複素環から誘導される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「求核基」という用語は、共有結合を形成する電子対を供給することができる任意の原子又は基を表す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「脱離基」という用語は、脱離基を分子の残部に結合している共有結合の不均一開裂に続いて、共有結合から結合電子を脱離基に取りこんで、該分子から脱離させることが可能な任意の原子又は基を表す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「フルオラス」という用語は、1個又は複数のフッ素原子を含有する任意の基又は物質を表す。通常、該基又は物質は、複数のフッ素原子を含有する。例えば、フルオラス油は、部分的にフッ素化された炭化水素、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル及びこれらの混合物を含めた、フッ素原子を含有する任意の油を表す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「炭化水素」という用語は、炭素及び水素を含む任意の化合物を表す。1個又は複数の水素原子は、異なる原子又は基で置換されていてもよい。例えば、部分的にフッ素化された炭化水素は、水素原子の一部、すべてではなく、がフッ素原子によって置換された炭化水素である。ペルフルオロカーボンは、すべての水素原子がフッ素原子によって置換されている炭化水素である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、ペルフルオロポリエーテル及びポリアルキレンオキシドを含む界面活性剤であって、ペルフルオロポリエーテルが、アルキル基及び場合により連結基を介して、ポリアルキレンオキシドと結合された界面活性剤に関する。
【0041】
本発明の界面活性剤は、
B-((X)x-(CH2)a-A)n (VI)、
(A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A)n (IV)、
(A-(CH2)a-(X)x-B)n (V)、及び
(B)n-(X)x-(CH2)a-A (VII)
[式中、
Aはペルフルオロポリエーテルであり;
aは正の整数であり;
Xは、共有結合又は連結基であり;
xは正の整数であり;
Bはポリアルキレンオキシド単位であり;
nは、1を超える正の整数であり、複数のA、B、X、a及びxを含む化合物においては、それぞれは同じでも異なってもよい]からなる群から選択される式を有する。
【0042】
好ましくは本発明の界面活性剤は、式(II)
A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A (II)、
[式中、各A、X、a及びxは、同じでも異なってもよい]を有する。
【0043】
本発明の界面活性剤は、式(I)の単位
A-(CH2)a-(X)x-B- (I)
[式中、Aはペルフルオロポリエーテルである]を含む。本発明の各界面活性剤は、少なくとも1個のペルフルオロポリエーテル(A)成分を含む。ペルフルオロポリエーテル成分は、親フッ素性尾部として作用し、油相に、例えばエマルジョンの連続油相、特に油相がフルオラス油、例えばフルオラス油相を含む場合、可溶である。
【0044】
本発明の界面活性剤において、好ましくは、各Aは式-[CF(CF3)CF2O]b-、[式中、bは正の整数である]の繰返し単位を含む。より好ましくは、各Aは、式-[CF2CF2O]c-[CF(CF3)CF2O]b-、[式中、b及びcはそれぞれ、0又は正の整数であり、ただし、bとcが共に0であることはない]の単位を含む。cは、好ましくは0又は1から100の整数、例えば5から50の整数である。好ましい界面活性剤では、cは0である。特に好ましい界面活性剤では、各Aは、式CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-[式中、bは正の整数である]から構成されている。本発明の界面活性剤では、上記の式において、bは、好ましくは1から100(例えば1から50)の整数、より好ましくは5から50の整数、及び特に好ましくは10から25の整数である。本発明の好ましい界面活性剤において、各Aは、166から16,600Da、より好ましくは800から9,000Da、及び更に好ましくは1,500から6,000Daの質量平均分子量を有する。
【0045】
本発明の界面活性剤において、各aは正の整数である。本発明の界面活性剤において、ペルフルオロポリエーテル成分及びポリアルキレンオキシド成分の間に、したがってアルキル基が存在する。アルキル基はスペーサーとしての機能を果たし、有利には界面活性剤をより安定に、例えばより加水分解に対して抵抗性があるようにする。好ましくは、各aは1から5の整数である。より好ましくは、各aは1である。
【0046】
本発明の界面活性剤の一群において、少なくとも1つのXは共有結合である。Xが共有結合の場合、アルキル基は、界面活性剤のペルフルオロポリエーテル成分及びポリアルキレンオキシド成分の両者と直接結合される。
【0047】
本発明の界面活性剤の別の群において、少なくとも1つのXは連結基である。Xが連結基の場合、アルキル基は、ペルフルオロポリエーテル成分と直接結合されるが、界面活性剤のポリアルキレンオキシド成分とは直接結合されない。好ましくは、少なくとも1つのXは、式-D-(E)h-(G)d-又は-(G)d-(E)h-D-[式中、Dは、NH、NMe、C(O)、CO2、O又はSOg(ここで、gは0、1若しくは2である)から選択され、Eは、アルキレン、場合により置換されたアリーレン又は場合により置換されたヘテロアリーレンから選択され、hは0又は1であり、Gは、C(O)NH、CO2、NH、NMe、O、C(O)、S又はSO2NHから選択され、dは0又は1である]の連結基である。より好ましくは、少なくとも1つのXは、式-D-(E)h-(G)d-又は-(G)d-(E)h-D-[式中、Dは、NH、C(O)、CO2、O又はSOg(ここで、gは0、1若しくは2である)から選択され、Eは、アルキレン、場合により置換されたアリーレン又は場合により置換されたヘテロアリーレンから選択され、hは0又は1であり、Gは、C(O)NH、CO2、NH、O、C(O)、S又はSO2NHから選択され、dは0又は1である]の連結基である。
【0048】
好ましいアルキレンは、C1~8アルキレン、より好ましくはC1~5アルキレン(例えばメチレン、エチレン、プロピレン又はブチレン)、及び更に好ましくはC1~3アルキレン、例えばメチレン、エチレン又はプロピレンである。好ましい、場合により置換されたアリーレンは、場合により置換されたフェニレン及び場合により置換されたナフチレン、より好ましくは、場合により置換されたフェニレンである。好ましい、場合により置換されたヘテロアリーレンは、フラン、ピロール、ピリジン、チオフェン、ベンゾフラン、インドール、イミダゾール及びベンゾイミダゾールから誘導される。
【0049】
場合により置換されたアリーレン及び場合により置換されたヘテロアリーレンに対する適した任意選択の置換基には、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、保護されたOH、置換又は非置換のC1~C12アルキル、置換又は非置換のC2~C12アルケニル、置換又は非置換のC2~C12アルキニル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換の複素環基(ここで、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換のC1~C12アルキル、置換又は非置換のC2~C12アルケニル、置換又は非置換のC2~C12アルキニル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換の複素環基からなる群から独立に選択される)等の基が含まれる。このような基それ自体が置換される場合、該置換基は、前述のリストから選択してもよい。
【0050】
本発明のいくつかの好ましい界面活性剤において、Eはフェニレンである。他の場合、Eは場合により置換されたアリーレン基である。
【0051】
Eが場合により置換されたアリーレン又はヘテロアリーレン基の場合、任意選択の置換基は、好ましくは-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)2、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH(CH3)2、-SCH3、-SCH2CH3、-SCH(CH3)2及び-N(CH3)2から選択される。
【0052】
少なくとも1つのXが連結基である本発明の界面活性剤において、少なくとも1つのXは、アミド、チオエステル、エステル、カルボナート、カルバマート、エーテル、チオエーテル、尿素、スルホニル又はスルホンアミド連結基、好ましくはチオエステル、カルボナート、カルバマート、エーテル、チオエーテル、尿素、スルホニル又はスルホンアミド連結基を含んでも又はそれらから構成されていてもよい。より好ましくは、少なくとも1つのXは、カルバマート、エーテル、尿素、スルホニル又はスルホンアミド連結基、更に好ましくはエーテル、尿素又はカルバマート連結基、更に好ましくはエーテル又はカルバマート連結基を含み、例えばそれらから構成されている。更に好ましくは、少なくとも1つのXは、エーテル又はカルバマート連結基から構成されている。
【0053】
本発明のいくつかの好ましい界面活性剤において、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。より好ましくは、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、--C(O)S-、-SC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。更に好ましくは、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-C(O)NMe-、-NHC(O)-、-NMeC(O)-、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。更に好ましくは、少なくとも1つのXは、-OC(O)NH-、-OC(O)NMe-、-O-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)NH-、-NHC(O)NMe-、-NHC(O)O-、-NMeC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-、好ましくは、-O-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-、-NHC(O)NH-、-NMeC(O)O-又は-NMeC(O)NH-、及び最も好ましくは、-O-、-OC(O)NH-、-NHC(O)O-又は-NHC(O)NH-から選択される連結基である。
【0054】
本発明の特定の好ましい界面活性剤において、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NHC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。より好ましくは、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-C(O)S-、-SC(O)-、-OC(O)O-、-OC(O)NH-、-O-、-S-、-NHC(O)NH-、-NHC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。更に好ましくは、少なくとも1つのXは、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-OC(O)NH-、-O-、-NHC(O)NH-、-NHC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-から選択される連結基である。更に好ましくは、少なくとも1つのXは、-OC(O)NH-、-O-、-NHC(O)NH-、-NHC(O)O-、-SO2NH-、-NHSO2-、-NHSO2-C6H4-O-及び-O-C6H4-SO2NH-、好ましくは-O-、-OC(O)NH-又は-NHC(O)O-、例えば-O-又は-OC(O)NH-から選択される連結基である。
【0055】
本発明の界面活性剤において、各xは正の整数である。好ましくは、各xは、1、2又は3である。より好ましくは、各xは1である。xが1を超える場合、各Xは独立に、上で定義された共有結合又は連結基であってもよい。各Xは異なってもよい。或いは、各Xは同じであってもよい。
【0056】
本発明の界面活性剤において、各Bはポリアルキレンオキシド単位である。ポリアルキレンオキシド単位は、親水性の頭部基としての機能を果たし、水性相、例えばエマルジョンの不連続水性相に可溶である。好ましくは、各Bは、ポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシドを含む。好ましくは、各Bは、ポリエチレンオキシド単位及び/又はポリプロピレンオキシド単位を含む。場合により、ポリアルキレンオキシド単位は、1個又は複数の-(CH2)-基に結合される。
【0057】
本発明の好ましい界面活性剤において、各Bは、式-[CH2CH2O]e-の単位(ここで、eは正の整数である)を含む。他の好ましい界面活性剤において、各Bは、式-[CH(CH3)CH2O]f-の単位(ここで、fは正の整数である)を含む。好ましい界面活性剤の一群において、各Bは、式-[CH2CH2O]e-の単位及び式-[CH(CH3)CH2O]f-の単位(ここで、e及びfは、それぞれ独立に正の整数である)を含む。好ましい界面活性剤の別の群において、各Bは、式-[CH2CH2O]e-の単位(ここで、eは正の整数である)又は式-[CH(CH3)CH2O]f-の単位(ここで、fは正の整数である)、好ましくは、式-[CH2CH2O]e-の単位(ここで、eは正の整数である)を含む。場合により各Bは、1個又は複数の-(CH2)-基を更に含む。
【0058】
本発明のいくつかの好ましい界面活性剤において、各Bは、式-[CH2]r-[CH2CH2O]e-[CH2]r'-の単位(ここで、eは、正の整数であり、r及びr'は、それぞれ独立に0、1、2、3、4又は5である)から構成されている。好ましくは、r及びr'はそれぞれ独立に、0、1、2又は3である。本発明のいくつかの好ましい界面活性剤において、r及びr'の両者は0であり、即ち、Bは式-[CH2CH2O]e-から構成されている。他の好ましい界面活性剤において、rは0であり、r'は2であり、即ち、Bは式-[CH2CH2O]e-CH2CH2-から構成されている。他の好ましい界面活性剤において、rは1であり、r'は3であり、即ち、Bは式-CH2-[CH2CH2O]e-CH2CH2CH2-から構成されている。好ましくは、Bは式-[CH2CH2O]e-の単位(ここで、eは正の整数である)から構成されている。本発明の他の好ましい界面活性剤において、各Bは、式-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-(ここで、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である)から構成されている。
【0059】
eは、好ましくは1から100、より好ましくは5から50、及び更に好ましくは10から30の整数である。fは、好ましくは1から50、より好ましくは1から10、及び更に好ましくは1から5の整数である。f'は、好ましくは1から50、より好ましくは1から10、及び更に好ましくは1から5の整数である。f及びf'は、同じであってもよく、又はこれらは異なってもよい。
【0060】
本発明の好ましい界面活性剤において、各Bは、50から5,000Da、より好ましくは200から2,500Da及び更に好ましくは400から1,500Daの質量平均分子量を有する。
【0061】
本発明の界面活性剤において、nは1を超える正の整数である。nは好ましくは2から50である。本発明の好ましい界面活性剤は、式(VI)を有する。本発明の特に好ましい界面活性剤は、式(VI)の界面活性剤(ここで、nは2である)である。nが2である式(VI)の界面活性剤は式(II)
A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A (II)
によって表される。
【0062】
したがって、最も好ましくは、本発明の界面活性剤は式(II)
A-(CH2)a-(X)x-B-(X)x-(CH2)a-A (II)
[式中、各A、X、a及びxは、同じでも異なってもよい]を有する。これらの式のそれぞれに当てはまる先の定義及び先の好ましい定義、即ち、A、a、X、x、及びBのそれぞれの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである。特に好ましい界面活性剤は、式(II)(ここで、少なくとも1つのXは連結基である)を有する界面活性剤である。
【0063】
本発明の好ましい界面活性剤は、500から20,000Da、より好ましくは2,000から15,000Da及び更に好ましくは3,000から10,000Daの質量平均分子量を有する。
【0064】
本発明の好ましい界面活性剤は、
【0065】
【0066】
[式中、各b、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]
からなる群から選択される。
【0067】
本発明の特に好ましい界面活性剤は、
【0068】
【0069】
[式中、各b、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]
からなる群から選択される。
【0070】
本発明の好ましい界面活性剤は、
【0071】
【0072】
[式中、各b、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]
からなる群から選択される。
【0073】
本発明の特に好ましい界面活性剤は、
【0074】
【0075】
[式中、各b、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である]
からなる群から選択される。
【0076】
式(IIa)から(IIj)の界面活性剤において、各b並びにe、f及びf'のそれぞれに対する好ましい値は式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである。各bは同じであってもよく、又はこれらは異なってもよい。f及びf'は、同じであってもよく、又はこれらは異なってもよい。
【0077】
本発明はまた、上で定義された界面活性剤を製造する方法に関する。該方法は、式(VIII)の化合物
A-(CH2)a-Y (VIII)
[式中、Aはペルフルオロポリエーテルであり、
aは正の整数であり、
Yは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む]を、式(IX)の単位を含む化合物
Z-B- (IX)
[式中、Bはポリアルキレンオキシドであり、
Zは、求核基、脱離基又はイソシアナート基を含む]
と反応させる工程を含む。
【0078】
好ましくは、該方法は、式(VIII)の化合物
A-(CH2)a-Y (VIII)
[式中、Aはペルフルオロポリエーテルであり、
aは正の整数であり、
Yは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む]を、式(XI)の化合物
Z-B-Z (XI)
[式中、Bはポリアルキレンオキシドであり、
各Zは、求核基、脱離基又はイソシアナート基を含む]
と反応させる工程を含む。
【0079】
本発明のいくつかの好ましい方法において、A、a及びBのそれぞれの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである。本発明の他の好ましい方法において、A及びaそれぞれの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りであり、Bは、式-[CH2]r-[CH2CH2O]e-[CH2]r'-又は-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-(ここで、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数であり、r及びr'は、それぞれ独立に0、1、2、3、4又は5である)から構成されている。好ましくは、r及びr'は、それぞれ独立に0、1、2又は3である。e、f及びf'のそれぞれに対する好ましい値は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである。f及びf'は、同じであってもよく、又はこれらは異なってもよい。特定の好ましい方法において、Bが式-[CH2]r-[CH2CH2O]e-[CH2]r'-(rは0であり、r'は2である)から構成されている場合、即ちBは、式-[CH2CH2O]e-CH2CH2-から構成されている。他の好ましい方法において、Bが、式-[CH2]r-[CH2CH2O]e-[CH2]r'-(rは1であり、r'は3である)から構成されている場合、即ちBは、式-CH2-[CH2CH2O]e-CH2CH2CH2-から構成されている。他の好ましい方法において、Bが式-[CH2]r-[CH2CH2O]e-[CH2]r'-(r及びr'の両者は0である)から構成されている場合、即ちBは、式-[CH2CH2O]e-から構成されている。より好ましくは、Bは、式-[CH2CH2O]e-CH2CH2-又は-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-(ここで、e、f及びf'は、それぞれ独立に正の整数である)から構成されている。
【0080】
好ましくは、Zは、求核基又は脱離基を含む。好ましくは、Yは、求核基又は脱離基を含む。Yが求核基を含む場合、各Zは、好ましくは、脱離基又はイソシアナート基、より好ましくは、脱離基を含む。Zが求核基を含む場合、Yは、好ましくは脱離基又はイソシアナート基、より好ましくは脱離基を含む。
【0081】
式(VIII)の化合物と式(IX)の単位を含む化合物(例えば式(XI)の化合物)の反応は、上で定義された界面活性剤、即ち、(VI)、(IV)、(V)、及び(VII)からなる群から選択される式を有する界面活性剤の形成をもたらす。
【0082】
本発明の好ましい方法において、式(VIII)の化合物と式(IX)の単位を含む化合物との反応は、式(VIII)の化合物のY成分と式(IX)の単位を含む化合物のZ成分との化学反応を伴う。好ましくは、これは、生じる界面活性剤中に連結基又は共有結合の形成、例えば、(VI)、(IV)、(V)、及び(VII)からなる群から選択される式を有する界面活性剤中にX成分の形成をもたらす。
【0083】
本発明の好ましい方法において、式(VIII)の化合物と式(XI)の化合物との反応は、式(VIII)の化合物のY成分と式(XI)の化合物のZ成分との化学反応を伴う。好ましくは、これは、生じた界面活性剤中に連結基又は共有結合の形成、例えば、(VI)、(IV)、(V)、及び(VII)からなる群から選択される式を有する界面活性剤中にX成分の形成をもたらす。
【0084】
本発明の方法によって製造された界面活性剤は、上で定義された式(VI)、(IV)、(V)又は(VII)を有する界面活性剤である。より好ましくは、該方法によって製造された界面活性剤は、上で定義された式(VI)を有する界面活性剤である。最も好ましくは、本発明の方法によって製造された界面活性剤は、上で定義された式(II)を有する界面活性剤(即ち、式(VI)(ここでnは2である)を有する界面活性剤)である。
【0085】
式(II)を有する界面活性剤を、2分子の式(VIII)の化合物と1分子の式(IX)の単位を含む化合物(例えば、1分子の式(XI)の化合物)との組合せによって製造してもよい。式(IV)を有する界面活性剤を、n分子の式(IX)の単位を含む化合物(例えば、n分子の式(XI)の化合物)と2n分子の式(VIII)の化合物の組合せによって製造してもよい。式(V)を有する界面活性剤を、n分子の式(IX)の単位を含む化合物とn分子の式(VIII)の化合物との組合せによって製造してもよい。式(VI)を有する界面活性剤を、1分子の式(IX)の単位を含む化合物とn分子の式(VIII)の化合物との組合せによって製造してもよい。式(VII)を有する界面活性剤を、n分子の式(IX)の単位を含む化合物と1分子の式(VIII)の化合物との組合せによって製造してもよい。
【0086】
本発明の方法において、Yは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む。好ましくは、Yは、NH2、NHMe、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OTs、OMs、OTf、OC6H4NO2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO2L及びOC6H4SO2L(ここで、Lは、好ましくはCl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC6H4NO2から選択される適した脱離基である)から選択される。より好ましくは、Yは、NH2、NHMe、OH、SH、NCO、C(O)L(例えば、C(O)Cl又はC(O)OMe)、OC(O)OL(例えばOC(O)OC6H4NO2)、SO2L(例えばSO2Cl)及びOC6H4SO2L(例えばOC6H4SO2Cl)、更に好ましくは、NH2、NHMe、OH、NCO、OC(O)OC6H4NO2、SO2Cl及びOC6H4SO2Clから選択される。特に好ましい方法において、Yは、OH、NH2、NHMe及びOC(O)OC6H4NO2から選択される。
【0087】
本発明の好ましい方法において、Yは、NH2、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OTs、OMs、OTf、OC6H4NO2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO2L及びOC6H4SO2L(ここで、Lは、好ましくは、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC6H4NO2から選択される適した脱離基である)から選択される。より好ましくは、Yは、NH2、OH、SH、NCO、C(O)L(例えば、C(O)Cl又はC(O)OMe)、OC(O)OL(例えばOC(O)OC6H4NO2)、SO2L(例えばSO2Cl)及びOC6H4SO2L(例えばOC6H4SO2Cl)、更に好ましくは、NH2、OH、NCO、OC(O)OC6H4NO2、SO2Cl及びOC6H4SO2Clから選択される。特に好ましい方法において、Yは、OH及びOC(O)OC6H4NO2から選択される。
【0088】
本発明の方法において、Zは、求核基、脱離基、又はイソシアナート基を含む。好ましくは、Zは、NH2、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf、OC6H4NO2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO2L及びOC6H4SO2L(ここで、Lは、好ましくはCl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC6H4NO2から選択される適した脱離基である)から選択される。より好ましくは、Zは、NH2、OTs、OMs、OTf、NCO及びOC(O)L(例えばOC(O)OC6H4NO2)、更に好ましくは、NH2、NCO、OTs及びOC(O)L(例えばOC(O)OC6H4NO2)から選択される。特に好ましい方法において、Zは、NCO、OTs、OC(O)OC6H4NO2及びNH2から選択される。
【0089】
本発明の好ましい方法において、Zは、NH2、OH、SH、NCO、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf、OC6H4NO2、NHC(O)L、C(O)L、OC(O)L、SO2L及びOC6H4SO2L(ここで、Lは、Cl、Br、I、OMe、OEt、OH、OTs、OMs、OTf及びOC6H4NO2から好ましくは選択される適した脱離基である)から選択される。より好ましくは、Zは、NH2、OTs、OMs、OTf及びOC(O)L(例えばOC(O)OC6H4NO2)、更に好ましくは、NH2、OTs及びOC(O)L(例えばOC(O)OC6H4NO2)から選択される。特に好ましい方法において、Zは、OTs及びNH2から選択される。
【0090】
本発明のいくつかの好ましい方法において、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)NH2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)OMe、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC6H4SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OPh、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NCO、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NH2及び-CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NHMe、(ここで、bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである)からなる群から選択される。
【0091】
より好ましくは、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC6H4SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NCO、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NH2及び-CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NHMeからなる群から選択される。bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである。好ましくは、bは1から100の整数である。
【0092】
更に好ましくは、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2又はCF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NHMeである。bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである。
【0093】
本発明のいくつかの好ましい方法において、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)NH2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-C(O)OMe、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC6H4SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OPh、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NCO及びCF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)-CH2NH2、(ここで、bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである)からなる群から選択される。
【0094】
より好ましくは、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC6H4SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2SO2Cl、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NCO及びCF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2NH2からなる群から選択される。bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである。好ましくは、bは1から100の整数である。
【0095】
更に好ましくは、式(VIII)の化合物は、CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OH又はCF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]b-CF(CF3)-CH2OC(O)OC6H4NO2である。bの定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で説明した通りである。
【0096】
本発明のいくつかの好ましい方法において、式(XI)の化合物は、TsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OTs、MsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OMs、NO2C6H4OC(O)O-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OC(O)OC6H4NO2、OCN-CH2CH2-[OCH2CH2]e-NCO、H2N-[CH2]3-[OCH2CH2]e-CH2-NH2及びH2N-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-NH2(ここで、e、f及びf'の定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである)から選択される。f及びf'は、同じであってもよく、又はこれらは異なってもよい。好ましくは、eは1から100、例えば10から30の整数である。好ましくは、f及びf'は、それぞれ独立に1から50、例えば1から5の整数である。
【0097】
特に好ましくは、式(XI)の化合物は、TsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OTs、NO2C6H4OC(O)O-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OC(O)OC6H4NO2、OCN-CH2CH2-[OCH2CH2]e-NCO、H2N-[CH2]3-[OCH2CH2]e-CH2-NH2又はH2N-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-NH2である。
【0098】
本発明のいくつかの好ましい方法において、式(XI)の化合物は、TsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OTs、MsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OMs、NO2C6H4OC(O)O-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OC(O)OC6H4NO2及びH2N-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-NH2(ここで、e、f及びf'の定義及び好ましい定義は、式(VI)、(IV)、(V)及び(VII)に関して上で示された通りである)から選択される。f及びf'は、同じであってもよく又はこれらは異なってもよい。好ましくは、eは、1から100、例えば10から30の整数である。好ましくは、f及びf'は、それぞれ独立に1から50、例えば1から5の整数である。特に好ましくは、式(XI)の化合物は、TsO-CH2CH2-[OCH2CH2]e-OTs又はH2N-[CH(CH3)CH2O]f-[CH2CH2O]e-[CH2CH(CH3)O]f'-CH2CH(CH3)-NH2である。
【0099】
本発明の界面活性剤は、組成物に組み込まれうる。したがって、上で定義された界面活性剤を含む組成物は、本発明の別の態様を形成する。
【0100】
上で定義された(VI)、(IV)、(V)、(VII)及び(II)からなる群から選択される式を有する化合物は、界面活性剤として用いられる。したがって、別の態様において、本発明は、上で定義された(VI)、(IV)、(V)、(VII)及び(II)からなる群から選択される式を有する化合物の界面活性剤としての使用に関する。本発明の界面活性剤を、エマルジョンを安定化するため、より詳細には、連続油相、例えばフルオラス油を含む連続油相中の不連続水性相、例えば1種又は複数の水性液滴を安定化するために使用してもよい。本発明の界面活性剤のペルフルオロポリエーテル成分は、親フッ素性尾部としての機能を果たし、油相に、例えばエマルジョンの連続油相、特に油相がフルオラス油、例えばフルオラス油相を含む場合、可溶である。本発明の界面活性剤のポリアルキレンオキシド単位は、親水性の頭部基としての機能を果たし、水性相、例えばエマルジョンの不連続水性相に可溶である。
【0101】
本発明の界面活性剤を、エマルジョンの調製に使用してもよい。したがって、本発明はまた、エマルジョンの調製において上で説明された界面活性剤の使用に関する。
【0102】
本発明はまた、上で説明された界面活性剤を含むエマルジョンに関する。本発明の好ましいエマルジョンは、上で説明された不連続水性相、連続油相及び界面活性剤を含む。該エマルジョンは、エマルジョンを形成するのに適した任意の量で水性相、油相及び界面活性剤を含んでもよい。当業者なら、このような量を容易に決定することができる。
【0103】
好ましくは、本発明のエマルジョンの連続油相はフルオラス油を含む。フルオラス油は、好ましくは、部分的にフッ素化された炭化水素、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物である。特に好ましくは、フルオラス油はヒドロフルオロエーテルである。本発明のエマルジョンの連続油相に存在する好ましいフルオラス油は、Novec(商標) 7500 (3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)、Novec(商標) 7300 (1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン)、Novec(商標) 7200 (C4F9OC2H5)、Novec(商標) 7100 (C4F9OCH3)、Fluorinert(商標) FC-72、Fluorinert(商標) FC-84、Fluorinert(商標) FC-77、Fluorinert(商標) FC-40、Fluorinert(商標) FC3283、Fluorinert(商標) FC-43、Fluorinert(商標) FC-70、ペルフルオロデカリン及びこれらの混合物である。より好ましいフルオラス油は、Novec(商標) 7500 (3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)、Fluorinert(商標) FC-40、Fluorinert(商標) FC3283及びペルフルオロデカリンであり、更に好ましいものは、Novec(商標) 7500 (3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ヘキサン)である。
【0104】
本発明の好ましいエマルジョンにおいて、不連続水性相は、複数の液滴を含む。該液滴は、好ましくは1μmから500μm、より好ましくは10から150μm及び更に好ましくは30から120μmの平均直径を有する。このことは、したがって液滴の体積が小さく、そのために必要な物質、例えば生物学的物質の量が少ないので有利である。液滴の少なくとも一部は、1種又は複数の被験物質を含むことが好ましい。各液滴は、好ましくは平均数0から100種、より好ましくは1から20種及び更に好ましくは1から5種の被験物質、例えば1種の被験物質を含む。
【0105】
複数の液滴を含む本発明の好ましいエマルジョンにおいて、該液滴の少なくとも一部は、水性相及び非水性相、化学緩衝剤、生化学的緩衝剤又は培養物若しくは他の培地を更に含む。適した化学緩衝剤の例には、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。適した生化学的緩衝剤の例には、HEPES、PBS及びTrizmaが含まれる。
【0106】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種又は複数の被験物質を含む本発明のエマルジョンにおいて、被験物質は対象とする任意の実体であってもよい。複数の液滴を含む本発明の一群のエマルジョンであって、液滴の少なくとも一部が1種又は複数の被験物質を含むエマルジョンにおいて、被験物質は、好ましくは、小分子、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、酵素、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、核酸、オリゴヌクレチド、ヌクレオチド、代謝産物、補助因子及び人工操作分子から選択される生物学的分子である。生物学的分子は、より好ましくは抗体、酵素、オリゴヌクレチド及び代謝産物から、及び更に好ましくは抗体及び代謝産物から選択される。場合により、生物学的分子は、細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母菌細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス又はプリオン中に含まれていてもよい。
【0107】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種又は複数の被験物質を含む本発明の別の群のエマルジョンにおいて、被験物質は、生物学的被験物質、例えば、細胞、細胞構成単位又は成分の細胞内の複合体である。生物学的被験物質は、好ましくは、細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、微生物細胞、酵母菌細胞)、一次B細胞、T細胞、ハイブリドーマ、微生物、ウイルス、細菌、若しくはプリオン、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)又はエキソソームから、より好ましくは、B細胞、T細胞、ハイブリドーマ及び微生物から、並びに更に好ましくは、ハイブリドーマ及び微生物から選択される。生物学的被験物質が細胞の場合、細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、微生物細胞から、より好ましくは、哺乳動物細胞及び微生物細胞から、及び更に好ましくは哺乳動物細胞から選択される。好ましくは、分子は、細胞中で生成され、細胞から排出され又は分泌され、例えば、分子は細胞から排出され又は分泌される。生物学的被験物質が細胞小器官の場合、細胞小器官は、好ましくは細胞核及びミトコンドリアから選択される。
【0108】
複数の液滴を含み、液滴の少なくとも一部が1種又は複数の被験物質を含む本発明の他の群のエマルジョンにおいて、被験物質は、アッセイ成分である。好ましくは、ビーズ、ナノ粒子、結晶、ミセル、量子ドット、検出試薬、抗体、酵素補助因子、核酸増幅試薬、オリゴヌクレチド配列決定試薬、細胞形質転換試薬、細胞伝達混合物及びゲノム編集試薬から選択される。より好ましくは、アッセイ成分は、ビーズ、検出試薬、核酸増幅試薬及びゲノム編集試薬、更に好ましくは検出試薬から選択される。
【0109】
液滴の少なくとも一部が、生きている実体、例えば細胞又は細菌を含有する場合、水性相は、好ましくは、培養培地又は増殖培地を含む。任意の従来の培地を使用してもよい。培地は、例えば、グルコース、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、塩、pH指示薬及び密度整合試薬、例えばFicollを含んでもよい。対象とする分析、反応又は他のプロセス、例えばマイクロ流体デバイス中での選別の間に該実体を生かしておくために、十分な培地を供給しなければならない。
【0110】
本発明はまた、
(i) 水性相を準備する工程と、
(ii) 油相を準備する工程と、
(iii) 水性相、油相及び上で説明した界面活性剤を混合して、エマルジョンを形成する工程と
を含む、上で説明したエマルジョンを調製する方法に関する。
【0111】
エマルジョンを調製する一群の好ましい方法において、界面活性剤は、前記水性相と混合する前に、油相と混合される(例えば、その中に溶解される)。好ましくは、界面活性剤は、油相中に、0.001%(質量/質量)から20%(質量/質量)、より好ましくは0.1%(質量/質量)から10%(質量/質量)及び更に好ましくは0.5%(質量/質量)から5%(質量/質量)の濃度で溶解される。好ましくは、該水性相は、少なくとも1種の被験物質を含む。いくつかの好ましい方法において、該油相は、フルオラス溶媒中の界面活性剤の溶液であってもよい。換言すると、該界面活性剤はフルオラス溶媒に溶解されて、油相が得られる。
【0112】
エマルジョンを調製する代替の好ましい方法において、界面活性剤は、油相と混合する前に、水性相と混合される(例えば、その中に溶解される)。
【0113】
エマルジョンを調製する他の好ましい方法において、界面活性剤は、水性相と混合され(例えば、その中に溶解され)、別個に、油相と混合され(例えば、その中に溶解され)、その後水性相と油相とを混合する。任意の従来の混合方法、例えば、T字型合流法、段階式乳化法、フローフォーカス型合流法等を使用してもよい。
【0114】
上で説明したエマルジョンを調製する好ましい方法において、混合は、マイクロ流体デバイス、例えば、WO 2012/022976及びWO 2015/015199に開示されているマイクロ流体デバイスのフローフォーカス型合流法による。この方法は、極めて小さい水性相、例えば、典型的にはピコリットル又はナノリットルのオーダーの体積を有する微小液滴を生成することができるので、有利である。
【0115】
エマルジョンを調製する方法の他の好ましい特徴は、上で説明したエマルジョンの好ましい特徴と同じである。したがって、好ましくは、エマルジョン、水性相及び油相は、エマルジョンに関して上で定義された通りである。
【0116】
実験、アッセイ、反応及びプロセスは、本発明のエマルジョンにおいて実施することができる。エマルジョンの不連続水性相、例えば水性液滴は、実験、アッセイ、反応及びプロセスの部位としての機能を果たしうる。本発明の界面活性剤は、エマルジョン、例えば、油相中の不連続水性相を安定化して、エマルジョン中で実験、アッセイ、反応又はプロセスを実施することを可能にする。実験、アッセイ、反応又はプロセスは、したがって、不連続水性相、例えば水性液滴が合体することなしに実施されうる。実験、アッセイ、反応又はプロセスには、エマルジョンの水性相中に存在する1種又は複数の被験物質が関与しうる。したがって、上で説明した、エマルジョン中、例えば、エマルジョンの不連続水性相(好ましくは水性液滴)において、1種又は複数の実験、アッセイ、反応及びプロセスを実施する方法は、本発明の別の態様を形成する。本発明のエマルジョン中で実施される実験、アッセイ、反応及びプロセスは、マイクロ流体流路中又はマイクロ流体デバイス中で実施してもよく、例えば、実験、アッセイ、反応及びプロセスは、マイクロ流体デバイスの1種又は複数の流路中で実施してもよい。
【0117】
したがって、本発明はまた、上で説明した、エマルジョンの不連続水性相中で、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法に関する。
【0118】
一態様において、上で説明した、エマルジョンの不連続水性相中で1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法は、好ましくは、1種又は複数の化学的及び/又は生物学的反応を実施する方法である。化学的及び/又は生物学的反応は、酵素的反応であってもよい。或いは、化学的及び/又は生物学的反応は、分子結合、分子相互作用、細胞相互作用又は測定可能なシグナルを生じる配座的変化である。好ましくは化学的及び/又は生物学的反応は、酵素反応、分子結合又は分子/細胞の相互作用である。
【0119】
別の態様において、上で説明した、エマルジョンの不連続水性相中の1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法は、好ましくは1種又は複数の生物学的プロセスを実施する方法である。生物学的プロセスは、細胞による抗体分泌又は酵素分泌又は細胞内の酵素産生であってもよい。或いは、生物学的プロセスは、抗体結合である。代替の方法において、生物学的プロセスは、核酸増幅プロセス、部分的若しくは全体の核酸複製プロセス又は、核酸転写プロセスであってもよい。或いは、生物学的プロセスは、細胞増殖、細胞代謝、細胞トランスフェクション、細胞伝達、細胞シグナル伝達、細胞アポトーシス又は細胞死であってもよい。好ましくは、生物学的プロセスはPCRである。使用される該プロセスは、デジタルPCRに関するものでありうる。
【0120】
1種又は複数の生物学的プロセスを実施する方法の別の態様において、生物学的プロセスは、ゲノム編集プロセスであってもよい。生物学的プロセスは、試料調製、例えば配列決定のためのオリゴヌクレチド試料調製プロセスであってもよい。生物学的プロセスは、核酸配列決定であってもよい。配列決定される分子は、RNA又はDNAでありえて、配列決定は、ゲノムレベル、エピゲノムレベル又はトランスクリプトームレベルでありうる。
【0121】
上で説明した、エマルジョンの不連続水性相において、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法は、1種又は複数の化学反応、1種又は複数の生物学的反応、1種又は複数の生物学的プロセス又はこれらの混合を含んでもよい。好ましい化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスは、上で説明した通りである。
【0122】
好ましくは、上で説明した、エマルジョンの不連続水性相において、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法は、マイクロ流体流路又はマイクロ流体デバイス中で実施される。これは、化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを、極めて少量の規模で、例えば微小液滴中で実施することを可能にし、それゆえ極めて少量の物質、例えば生物学的物質しか必要でない。マイクロ流体流路又はデバイスは、好ましくは自動化されたデバイス及びソフトウエアによって制御される。
【0123】
好ましくは、上で説明した、エマルジョンの不連続水性相において、1種又は複数の化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又は生物学的プロセスを実施する方法は、熱、pH又は環境のサイクル条件下で実施される。
【0124】
本発明の界面活性剤及びエマルジョンは、多数の有用な用途を有する。これらは、特にマイクロ流体用途において多数の潜在的な使用を有する。例えば、上で定義された界面活性剤及び/又はエマルジョンを、液滴の選別、液滴の合体又は液滴中への流体の導入の方法に使用してもよい。界面活性剤及び/又はエマルジョンは、流体からタンパク質を抽出する方法に使用してもよい。これらの方法は、好ましくはマイクロ流体デバイス中で実施される。
【0125】
したがって、本発明は、マイクロ流体デバイス中で液滴を選別する方法にも関する。マイクロ流体デバイス中で液滴を選別する好ましい方法は、
(i) 上で定義した、エマルジョン中の水性液滴のストリームを、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 該ストリームに第1の方向から光を当てる工程と;
(iii) 液滴中の被験物質からの光を、第2の方向において検出する工程と;
(iv) 液滴を、検出された光又は測定可能なシグナルに応じて複数の分別されたストリームの1つに選別する工程と、
を含む。好ましくは、該方法は、液滴を、検出された光に応じて複数の分別されたストリームの1つに選別する工程を含む。
【0126】
マイクロ流体デバイス中で液滴を選別する代替の方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の水性液滴のストリームを、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 液滴中の被験物質又は実体を測定及び検出する工程と;
(iii) 液滴を、検出された変化又は測定可能なシグナルに応じて複数の分別されたストリームの1つに選別する工程と
を含む。
【0127】
本発明はまた、マイクロ流体デバイス中で、液滴を合体させる方法に関する。マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる好ましい方法の1つは、
(i) 上で説明したように、エマルジョン中の少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を電界に曝露して、それによって少なくとも2個の水性液滴を、単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0128】
マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる別の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と; 及び
(ii) 水性液滴を物理的狭窄に曝露し、それによって、少なくとも2個の水性液滴を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0129】
マイクロ流体デバイス中で、液滴を合体させる代替の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の異なるサイズの少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 該水性液滴を極めて物理的に接近させて、それによって少なくとも2個の水性液滴を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0130】
マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる他の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 異なる流路からの水性試料を導入する工程と、
(iii) 水性液滴及び試料を極めて物理的に接近させて、それによって少なくとも2つの水性試料を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0131】
マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる更に別の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の異なるサイズの少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を音響エネルギーで処理して、それによって、少なくとも2個の水性液滴
を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0132】
マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる別の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性ストリームを導入する工程と;
(iii) 水性液滴及び水性試料を音響エネルギーで処理して、それによって少なくとも2つの水性試料を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0133】
マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる代替の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の異なるサイズの少なくとも2個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を光ピンセット及び/又は他のタイプの光操作で処理/操作して、それによって少なくとも2個の水性液滴を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0134】
マイクロ流体デバイス中で、液滴を合体させる他の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性ストリームを異なるマイクロ流体流路に導入する工程と;
(iii) 水性試料を光ピンセット及び/又は他のタイプの光操作で処理/操作して、それによって少なくとも2つの水性試料を単一の液滴に合体させる工程と
を含む。
【0135】
本発明はまた、マイクロ流体デバイスにおいて液滴中に流体を導入する方法であって、
(i) 上で説明したエマルジョン中の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路中に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を流体のストリームと接触させて、それによって流体を水性液滴中に導入する工程と
を含む方法に関する。
【0136】
本発明はまた、マイクロ流体デバイス中で液滴を分割する方法に関する。マイクロ流体デバイス中で液滴を分割する1つの好ましい方法は、
(i) 第1のマイクロ流体流路、第2のマイクロ流体流路及び第3のマイクロ流体流路を含むマイクロ流体合流点を備える、マイクロ流体デバイスを用意する工程と;
(ii) 上で定義されたエマルジョン中の水性液滴を、前記第1のマイクロ流体流路に供給する工程と;
(iii) 水性液滴をマイクロ流体合流点を通して通過させて、それによって前記水性液滴を、少なくとも第2のマイクロ流体流路中の第1の娘液滴と第3のマイクロ流体流路中の第2の娘液滴とに分割する工程と
を含む。
【0137】
マイクロ流体デバイス中で液滴を分割する第2の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴をマイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 水性液滴を電界を用いて分割して、少なくとも2個の液滴を生成し、それによって単一の液滴から少なくとも2個の水性液滴を形成させる工程と
を含む。
【0138】
マイクロ流体デバイス中で、液滴を分割する他の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴をマイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 物理的な衝突及び/狭窄及び/又は障壁及び/又は前記作用の任意の組合せを用いて、水性液滴を少なくとも2個の液滴が生成するように分割して、それによって、単一の液滴から少なくとも2個の水性液滴を形成させる工程と
を含む。
【0139】
マイクロ流体デバイス中で、液滴を分割する別の好ましい方法は、
(i) 上で定義されたエマルジョン中の少なくとも1個の水性液滴を、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と;
(ii) 光ピンセット及び/又は光エネルギーを用いて、水性液滴を2個の液滴が生成するように分割して、それによって、単一の液滴から少なくとも2個の水性液滴を形成させる工程と
を含む。
【0140】
本発明はまた、流体から分子を抽出する方法であって、
(i) 上で説明した界面活性剤を二酸化炭素に溶解して、二酸化炭素/界面活性剤混合物を形成する工程と;
(ii) 二酸化炭素/界面活性剤混合物に該分子を含む流体を添加して、それによって、流体から該分子を二酸化炭素中に抽出する工程と
を含む方法に関する。好ましくは、該方法は、マイクロ流体デバイス中で実施される。
【0141】
流体から分子を抽出する好ましい方法において、該分子は、タンパク質又は核酸である。より好ましくは、該分子はタンパク質である。
【0142】
本明細書に記載の本発明の方法(例えば、エマルジョンの調製方法、1種又は複数の、化学的及び/若しくは生物学的反応、並びに/又はエマルジョンの不連続相中の生物学的プロセスを実施する工程を含む方法、マイクロ流体デバイス中で液滴を選別する方法、マイクロ流体デバイス中で液滴を合体させる方法、マイクロ流体デバイスにおいて液滴中に流体を導入する方法、マイクロ流体デバイス中で液滴を分割する方法、流体から分子を抽出する方法)は、同時に又は逐次に(例えば逐次に)、任意の組合せ及び順序で実施してもよい。本発明の2つ以上の方法の実行は、機能のワークフローとして知ることができる。
【0143】
好ましい機能のワークフローは以下の工程を含む。
(i) 上で定義されたエマルジョンを調製する工程であって、a) 水性相を準備する工程と、b) 油相を準備する工程と、c) 前記水性相、前記油相及び上で定義された界面活性剤を混合して、前記エマルジョンをマイクロ流体デバイス中に形成する工程を含み、水性相は、生物学的媒体中に細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母菌細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス、又はプリオンを含み;油相は、上で定義されたフルオラス溶媒及び上で定義された界面活性剤から構成されており; 得られたエマルジョンは、複数の液滴を含み、各液滴は、最大1個の細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母菌細胞、ハイブリドーマ、微生物)、細胞小器官(例えば、細胞核、ミトコンドリア)、ウイルス、又はプリオンを含む工程と;
(ii) 工程(i)からの前記液滴の内部で、上で定義された第1の生物学的プロセスであって、細胞増殖、細胞による酵素分泌、細胞中の酵素産生及び酵素反応である生物学的プロセスを実施する工程と;
(iii) マイクロ流体デバイス中で、上で定義された液滴を選別する工程であって、a) 上で定義されたエマルジョン中の工程(ii)からの前記水性液滴のストリームを、マイクロ流体デバイスの流路に供給する工程と; b) 該ストリームに第1の方向から光を当てる工程と; c) 液滴中の被験物質からの光を、第2の方向において検出する工程であって、検出する光は被験物質からの散乱光又は蛍光である工程と; d) 液滴を、検出された光又は測定可能なシグナルに応じて複数の分別されたストリームの1つに選別する工程とを含む工程と;
(iv) マイクロ流体デバイスにおいて、上で定義された工程(iii)からの前記選別された液滴中に、場合により流体を導入する工程であって、該流体は、少なくとも1種の生物学的分子を含み、該生物学的分子は、小分子、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、多糖、オリゴ糖、二糖、単糖、核酸、オリゴヌクレチド、ヌクレオチド、補助因子、及び細胞溶解試薬から選択される工程と;
(v) 工程(iv)からの前記液滴の内部で、上で定義された第2の生物学的プロセスを場合により実施する工程であって、前記生物学的プロセスは、細胞溶解及び酵素反応であり、前記酵素は、工程(ii)において前記細胞によって分泌され又は前記細胞の内部で産生され、前記酵素反応は、工程(iv)において前記生物学的分子をその対応する産物に変換することである工程と;
(vi) a) 工程(v)からの前記液滴を、高温度において特定の時間処理する工程であって、該温度は50℃から98℃であり、時間は10秒から1時間である工程と; b) マイクロ流体デバイス中で、上で定義された工程(v)からの前記液滴中に液体を導入する工程であって、流体が酸、アルカリ又は酵素阻害薬を含む工程と; c) 工程(v)からの前記液滴を4℃から10℃の温度において保存する工程とによって、工程(v)の前記酵素反応を場合により反応停止する工程と;
(vii) マイクロ流体デバイス中で上で定義された工程(iii)又は(vi)からの液滴を分割する工程であって、a) マイクロ流体デバイスの3つのマイクロ流体流路を含むマイクロ流体合流点の第1のマイクロ流体流路に、工程(iii)又は(vi)からの液滴を供給する工程と; b) 該水性液滴をマイクロ流体合流点を通して通過させて、それによって前記液滴を2個の娘液滴、第2のマイクロ流体流路中の第1の娘液滴と第3のマイクロ流体流路中の第2の娘液滴とに分割する工程とを含む工程と;
(viii) 第1の娘液滴の内部の、工程(iii)又は(v)において前記酵素反応から産生された産物分子を、マイクロ流体エレクトロスプレーイオン化(即ちESI)エミッタを介して、第1の娘液滴の内容物を蒸発及びイオン化させた後、質量分析(MS)法を用いて分析する工程と;
(ix) 工程(viii)におけるMS分析結果に応じて、マイクロ流体デバイス中の対応する第2の娘液滴を選別する工程と
を含む工程。
【0144】
本発明はまた、液滴内部のシグナルを測定する方法、及び上で定義された更なる処理のために、液滴を個別に又はバルクで分配する工程に関する。
【0145】
本発明はまた、上で説明した界面活性剤及びエマルジョンの様々な使用に関する。
【0146】
したがって、本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスにおける、上で説明した界面活性剤の使用に関する。
【0147】
本発明はまた、より大きな流体デバイス、容器又はバットにおける分子の分離への、上で説明した界面活性剤の使用に関する。
【0148】
より大きな流体デバイス、容器又はバットは、マイクロ流体デバイスより大きなデバイス、容器又はバットを表す。当業者なら、マイクロ流体デバイスとより大きなデバイス、容器又はバットを区別することは容易に可能である。好ましくは、より大きな流体デバイス、容器又はバットは、数リットルのサイズであり、即ち、これらは数リットルの容量を有する。
【0149】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた自動化されたデバイスにおける、上で説明した界面活性剤の使用に関する。
【0150】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスにおける、上で説明したエマルジョンの使用に関する。
【0151】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた自動化されたデバイスにおける、上で説明したエマルジョンの使用に関する。
【0152】
上で説明した界面活性剤及びエマルジョンは、広範な様々な用途に使用するのに適している。
【0153】
したがって、本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスに使用するための、上で説明した界面活性剤に関する。
【0154】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスに使用するための、上で説明したエマルジョンに関する。
【0155】
本発明はまた、より大きな流体デバイス、容器又はバットにおける分子の分離に使用するための、上で説明した界面活性剤に関する。
【0156】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた、自動化されたデバイス中で使用するための上で説明した界面活性剤に関する。
【0157】
本発明はまた、マイクロ流体流路又はデバイスを制御する関連ソフトウエアを備えた、自動化されたデバイス中で使用するための上で説明したエマルジョンに関する。
【0158】
本発明の上記その他の態様を、ほんの一例として、付随の図面を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【
図1】Krytox 157 FSLとオキサリルクロリドとの反応から誘導されたアシルクロリド生成物のIRスペクトルである。
【
図2】メチルエステル(XII)のIRスペクトルである。
【
図3】メチルエステル(XII)の
1H NMRスペクトルである。
【
図4】アルコール(XIII)のIRスペクトルである。
【
図5】アルコール(XIII)の
1H NMRスペクトルである。
【
図6】トシル化ポリエチレングリコール(XIV)の
1H NMRスペクトルである。
【
図7】界面活性剤(IIa)の
1H NMRスペクトルである。
【
図8】活性化炭酸エステル生成物(XV)のIRスペクトルである。
【
図9】活性化炭酸エステル生成物(XV)の
1H NMRスペクトルである。
【
図10】界面活性剤(IIb)のIRスペクトルである。
【
図11】界面活性剤(IIb)の
1H NMRスペクトルである。
【
図12】アミド(XVI)のIRスペクトルである。
【
図13】アミド(XVI)の
1H NMRスペクトルである。
【
図14】アミン(XVII)の
1H NMRスペクトルである。
【
図15】界面活性剤(IIj)のIRスペクトルである。
【
図16】界面活性剤(IIj)の
1H NMRスペクトルである。
【
図17】40μm×40μmのフローフォーカシング交差合流ノズルを備えた、ポリジメチルシロキサン(PDMS)バイオチップの概略図である。
【
図18】40μm×40μmのフローフォーカシング交差合流ノズルを備えた、ポリジメチルシロキサン(PDMS)バイオチップ上に生成されたエマルジョン液滴の顕微鏡画像である。
【
図19】PCR熱サイクルの前(左側画像)及び後(右側画像)に採取した、界面活性剤(IIa)を含む液滴エマルジョン試料の顕微鏡画像である。
【
図20】PCR熱サイクルの前(左側画像)及び後(右側画像)に採取した、界面活性剤(IIb)を含む液滴エマルジョン試料の顕微鏡画像である。
【
図21】界面活性剤(IIa)を含む液滴エマルジョン試料から得られた、エマルジョンPCR産物の電気泳動分析の図である。
【
図22】界面活性剤(IIb)を含む液滴エマルジョン試料から得られた、エマルジョンPCR産物の電気泳動分析の図である。
【
図23a】37℃における2時間のインキュベーション後の、界面活性剤(IIa)で安定化された細胞を含む液滴の顕微鏡画像である。
【
図23b】37℃における2時間のインキュベーション後の、界面活性剤(IIa)で安定化された細胞を含む液滴中の生存細胞の百分率を示す棒グラフである。
【
図24a】37℃における2時間のインキュベーション後の、界面活性剤(IIb)で安定化された細胞を含む液滴の顕微鏡画像である。
【
図24b】37℃における2時間のインキュベーション後の、界面活性剤(IIb)で安定化された細胞を含む液滴中の生存細胞の百分率を示す棒グラフである。
【実施例】
【0160】
材料
使用されるすべての出発物質は市販されている。Krytox(商標)157 FSL (MW=2103ダルトン)は、DuPont社から得られた。Jeffamine (登録商標) 900及びポリエチレングリコール(MW=950から1050ダルトン)は、Sigma Aldrich社から入手した。
【0161】
FC72、無水Novec 7100 (商標)及びNovec 7500 (商標)は、3M社から入手した。オキサリルクロリド、ポリマー担持4-ジメチルアミノピリジン、DBU (1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン)、無水メタノール、水素化ホウ素ナトリウム、ジグリム、トリメチルアミン、メチルアミン、ピリジン、メチルモルホリン、ビス(3-アミノプロピル)を末端とするポリ(エチレングリコール)、p-ニトロフェニルオルトクロロホルマート、無水テトラヒドロフラン、無水トルエン、フェニルシラン、ポリマー担持ピペリジン、ジクロロメタン、4-トルエンスルホニルクロリド、水酸化アンモニウム及びFe3(CO)12は、Sigma Aldrich社から入手した。
【0162】
無水ジメチルホルムアミド(DMF)、無水硫酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、塩酸、無水硫酸マグネシウム、無水ジエチルエーテル、トルエン、ヘキサン、3-アミノプロピルシリカゲル、水素化ナトリウム及びメタノールは、Sigma Aldrich社から入手した。
【0163】
分析方法
赤外線(IR)分光分析は、ダイヤモンドATRアクセサリーを備えたPerkin Elmer社Spectrum One IR装置を用いて実施した。
核磁気共鳴(NMR)分光分析は、DCH-Cryoprobeを備えた500 MHz Bruker社AVANCE III HD NMR分光計を用いて実施した。
【0164】
(実施例1)界面活性剤(IIa)の合成
【0165】
【0166】
工程1
Krytox (商標)157 FSL (Mw=2103ダルトン) 90gを、磁気撹拌子を備え、ゴムシールで封止した250mL丸底フラスコに入れた。フラスコを排気し、Krytox (商標)ポリマーからガスを抜くために3回窒素を詰め替えた。75mLの無水Novec (商標) 7100を注射器によって添加して、Krytox(商標)を溶解した。次いで、室温で注射器によってオキサリルクロリド105mL、続いて触媒量の無水DMF(注射器針からの1滴)を添加した。反応物を室温で終夜撹拌し、清浄な250mL丸底フラスコ中にデカンテーションし、蒸発乾固させた。アシルクロリド(オフホワイトの不透明油状物)の収量: 定量的。IRカルボニル伸縮1807cm
-1。アシルクロリド生成物に対するIRスペクトルを
図1に示す
【0167】
工程2
工程1からのアシルクロリド生成物17gを、無水Novec (商標) 7100に溶解し、ポリマー担持4-ジメチルアミノピリジン(1.5当量) 2gを添加した。混合物を窒素で防護し、室温で無水メタノール5mLを注射器で加えた。反応物を室温で終夜撹拌した。ポリマー担持4-ジメチルアミノピリジンをろ別し、ろ液を蒸発乾固させた。メチルエステル(XI) (透明な油状物)の収量: 16.9g (99.4%)。IRカルボニル伸縮1792cm
-1。
1H NMRのピーク4.0(s)。メチルエステル生成物(XII)のIRスペクトルを
図2に示す。メチルエステル生成物(XII)の
1H NMRスペクトルを
図3に示す。
【0168】
工程3
水素化ホウ素ナトリウム3gを、100mL丸底フラスコに入れ、無水Novec (商標) 7100 5mL及びジグリム4mLを添加した。混合物を、窒素下氷浴中に置いた。工程2からのメチルエステル生成物(XII) 16.9gを無水Novec(商標) 7100 15mLに溶解し、懸濁された水素化ホウ素ナトリウムに注射器によって緩徐に添加した。次いでフラスコに還流凝縮器を取り付け、窒素で防護し、75℃まで1時間加熱した。反応物を室温まで冷却させておき、Novec (商標) 7100で150mLに希釈し、水性塩化アンモニウム/塩酸緩衝液100mL中に注いでクエンチした(クエンチ後pH=7であった)。該相を分離し、親フッ素性相を水100mLで抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。ろ過によって乾燥剤を除去し、ろ液を蒸発乾固させた。アルコール(XIII) (透明な油状物)の収量: 14.4g(86%)。
1H NMRのピーク3.8(s)及び4.25(dd)。アルコール生成物(XIII)に対するIRスペクトルを
図4に示す。アルコール生成物(XIII)に対する
1H NMRスペクトルを
図5に示す。
【0169】
工程4
ポリエチレングリコール(Mw=950から1050ダルトン) 50gをジクロロメタン300mLに溶解し、窒素で防護した。注射器によってピリジン16.2mL、続いてジクロロメタン100mL中の4-トルエンスルホニルクロリド25.7gを添加した。反応物を室温で終夜撹拌した。反応物を1M塩酸100mLで2回抽出し、飽和ブライン200mLで乾燥し、無水硫酸マグネシウムで脱水させた。乾燥剤をろ別し、透明なろ液を蒸発乾固させた。油性の残渣を無水ジエチルエーテル50mLで3回抽出し、次いで真空中で乾燥した。油性の残渣をディーンスターク装置においてトルエン100mL中で還流し、ここで更に水1mLを除去した。該溶液を蒸発乾固させた。トシル化ポリエチレングリコール(XIV) (オフホワイトの透明な油状物)の収量: 47g(72%)。トシル化ポリエチレングリコール生成物(XIV)の
1H NMRスペクトルを
図6に示す。
【0170】
工程5
水素化ナトリウム0.86gを無水Novec (商標) 7100 40mLに懸濁させ、窒素で防護した。工程3からのアルコール生成物(XIII) 75.2gを無水Novec (商標) 7100 35mLに溶解し、水素化ナトリウム懸濁液に添加した。懸濁液を40℃まで3時間、もはやガスが発生しなくなるまで加温した。反応物を室温まで冷却させておいた。工程4からのトシル化ポリエチレングリコール生成物(XIV) 22.6gを無水テトラヒドロフラン100mLに溶解し、懸濁液25mLアリコートに注射器によって添加した。反応物を室温で終夜撹拌し、次いで65℃まで1日加熱した。反応物を室温まで冷却し、メタノール75mLで2回抽出した。フルオラス層をほとんど濃縮乾固し、油性の残渣を、Novec (商標) 7100中の10%メタノールで溶離して、カラムクロマトグラフィーによって精製した。界面活性剤(IIa)の収量: 12.9g。界面活性剤生成物(IIa)の
1H NMRスペクトルを
図7に示す。
【0171】
(実施例2)界面活性剤(IIb)の合成
【0172】
【0173】
工程1から3を、実施例1と同様に実施した。
【0174】
工程4
工程3からのアルコール生成物(XIII) 10.5gを磁気撹拌子を備え、ゴムシールで封止された100mL丸底フラスコに入れ、排気し、窒素を3回詰め替えた。次いで注射器によって無水Novec (商標) 7100 20mL、続いてトリメチルアミン2.8mL及びピリジン0.12mLを添加した。該溶液を氷浴中で冷却し、無水テトラヒドロフラン10mL中のp-ニトロフェニルオルトクロロホルマートを注射器によって緩徐に添加した。オフホワイトの沈殿が形成された。反応物を室温まで加温しておいて、4日間撹拌した。反応物を水性炭酸アンモニウム溶液50mLでクエンチし、層を分離し、有機層を他の水性炭酸アンモニウム50mLで抽出した。フルオラス層を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーによって精製した。活性化炭酸エステル(XV) (透明な油状物)の収量: 6.15g (54%)。
1H NMRのピーク4.95(m)、7.4(d)及び8.85(d)。活性化炭酸エステル生成物(XV)に対するIRスペクトルを
図8に示す。活性化炭酸エステル生成物(XV)に対する
1H NMRスペクトルを
図9に示す。
【0175】
工程5
Jeffamine 900 1.08gを100mL丸底フラスコに入れた。工程4からの活性化炭酸エステル生成物(XV) 6gをNovec (商標) 7100 15mLに溶解し、Jeffamineに添加した。ポリマー担持ピペリジン1gを添加し、反応物を、窒素下で防護して室温で3日間撹拌した。ポリマー担持ピペリジンは、凝固/凝集され明るい黄色に変化していた。反応物をろ別し、透明なろ液を、溶離液としてNovec (商標) 7100中の10%メタノールによるカラムクロマトグラフィーによって精製した。界面活性剤(IIb) (黄色ワックス状固体)の収量: 2.84g (42%)。IRカルボニル伸縮1743cm
-1。界面活性剤生成物(IIb)に対するIRスペクトルを
図10に示す。界面活性剤生成物(IIb)に対する
1H NMRスペクトルを
図11に示す。
【0176】
(実施例3)界面活性剤(IIc)の合成
【0177】
【0178】
工程1を実施例1と同様に実施した。
【0179】
工程2
N
2下氷浴中で約4℃まで冷却された、Novec 7500 (50mL)中の工程1からのアシルクロリド生成物(45.14g; Mw=2329.5; 19.37mmol)の撹拌溶液に、水酸化アンモニウム(48.5mL、7.989M、20mol当量)を注射器を介して添加し、反応混合物を終夜高速で撹拌した。メタノール50mL及びTHF 20mLを反応溶液に、高速撹拌しながら添加し、次いで混合物を静置させておいた。上層(主に、水/メタノール/THFの混合物)を分離して分け、廃棄した。残りの下層に、高速撹拌しながらメタノール50mL及びTHF 20mLを再度添加し、続いて、大部分の揮発性成分を除去するように蒸発を行なった。残渣にNovec 7100 55mL及びメタノール20mLを添加した。得られた溶液を700rpmで10分間撹拌した。次いで、溶液を分液漏斗中で静置させておき、上層を分離し、廃棄した。収集したフルオラス相を水20mLで再度洗浄し、次いでメタノール50mL及びTHF 50mLに溶解した。得られた透明な溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、ろ液を真空中で濃縮乾固して、無色の油状物としてアミド生成物(XVI)を得た(収量: 47.537グラム、98%)。IR: 1740cm
-1。アミド生成物(XVI)に対するIRスペクトルを
図12に示す。アミド生成物(XVI)に対する
1H NMRスペクトルを
図13に示す。
【0180】
工程3
窒素下、固体Fe
3(CO)
12 (1.05g)を室温で撹拌しながら無水トルエン(52mL)に添加した。得られた暗緑色の溶液(約0.04M)を、無水Novec 7500 (92mL)中の工程2からのアミド生成物(XVI) (47.18グラム、Mw=2310、20.42mmol)の溶液に、注射器を介して添加し、続いて別個の注射器を用いてフェニルシラン(10.08mL、81.7mmol)を添加した。混合物を132℃において(アルミニウムブロック温度)2日間撹拌した。室温まで冷却すると直ちに、反応物中にメタノール15mL、5N HCl水性溶液7mL及び水8mLの混合物を、撹拌しながらパスツールピペットを用いて少しずつ添加し、続いてメタノール25mL及び2N NaOH水性溶液25mLの混合物、及び最後に2N NaOH 10mLを添加した。更に10分間撹拌後、得られた混合物をセライトでろ過した。分離漏斗中で赤色の水性上層及びフルオラス下層を分離し、水性相をNovec 7500 50mLで逆抽出した。組み合わせた有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、これを真空中で濃縮して、黄色-茶色の油状物、43.4グラムを得た。濃縮された残渣を80% Novec 7100/ヘキサン(65mL)に再度溶解し、Interchim SiHCカートリッジ(220g、50μm直径の球形シリカゲル)により精製し、以下の通り溶離した: 連続的に、(1) 80% Novec 7100/ヘキサン(700mL)、(2) Novec 7100 (2000mL)、(3) 0.5% MeOH/Novec 7100 (800mL)及び最後に(4) 純粋なNovec 7100 (1000mL)。画分を含有する生成物を組み合わせ、真空中で濃縮して、白色の濁った油状物としてアミン生成物(XVII)を得た(収量: 26.908グラム、57.37%)。アミン生成物(XVII)に対する
1H NMRスペクトルを
図14に示す。
【0181】
工程4
無水Novec 7100 (8.0mL)及びTHF (1.4mL)中の工程3からのアミン生成物(XVII) (4.313グラム、Mw=2231、1.933mmol)の撹拌溶液に、注射器を介してヒューニッヒ塩基(0.35mL、2.03mmol)を、続いてTHF(7mL)中のp-NO2Ph-OCOO-PEO-OCOO-p-NO2Ph(1グラム、Mn約1098、0.91mmol)の加温溶液をDBU (0.306mL、2.03mmol)と一緒に添加した。次いで混合物を40℃において2日間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残渣をNovec 7100 (50mL)に溶解し、該溶液を3-アミノプロピルシリカゲル4gで穏やかに10分間撹拌しながら処理した。固体をろ過後、ろ液を別の3-アミノプロピルシリカゲル2gで穏やかに10分間撹拌しながら処理した。この同じ手順を3-アミノプロピルシリカゲル0.7gで再度繰り返した。最終のろ液を真空中で濃縮乾固して、淡黄色の油状物を得て、油状物をInterchim SiHCカートリッジ(25g、50μm直径の球形シリカゲル)により精製した。カートリッジを以下の通り溶離した: 連続的に、(1) Novec 7100 (100mL)、(2) 3% MeOH/Novec 7100 (100mL)、(3) 6% MeOH/Novec 7100 (100mL)及び最後に(4) 10% MeOH/Novec 7100 (300mL)。画分を含有する生成物を組み合わせ、真空中で濃縮して、白色の濁った油状物としてカルバマート生成物(IIc)を得た(収量: 377mg)。
【0182】
(実施例4)界面活性剤(IIg)の合成
【0183】
【0184】
工程1から3を実施例3と同様に実施した。
【0185】
工程4
35℃の無水THF (10mL)中のPEG-ビス(イソシアナート)(0.988g、Mn約2000、0.49mmol)の撹拌溶液に、Novec 7500 (7.5mL)中の工程3からのアミン生成物(XVII) (4.536グラム、Mw=2231、1.976mmol)、及び続いてDBU (0.225mL、1.482mmol)を添加した。得られた混合物を35℃で終夜撹拌した。次いでこれに3-アミノプロピルシリカゲル(2.604g)及びNovec 7100 (5mL)を添加した。懸濁液を室温で20分間穏やかに撹拌した。固体をろ過後、ろ液を更に10分間穏やかに撹拌しながら、別の3-アミノプロピルシリカゲル1.06gで処理した。最終のろ液を真空中で濃縮乾固して、黄色油状物を得て、これをInterchim SiHCカートリッジ(25g、50μm直径の球形シリカゲル)により精製した。カートリッジを以下の通り溶離した: 連続的に、(1) Novec 7100 (100mL)、(2) 3% MeOH/Novec 7100 (100mL)、(3) 6% MeOH/Novec 7100 (100mL)及び最後に(4) 10% MeOH/Novec 7100 (300mL)。画分を含有する生成物を組み合わせ、真空中で濃縮して、淡黄色油状物として尿素生成物(IIg)を得た(収量: 477mg)。
【0186】
(実施例5)界面活性剤(IIj)の合成
【0187】
【0188】
工程1から4を、実施例1及び実施例2と同様に実施した。
【0189】
工程5
工程4からの活性化Krytoxカルボナートエステル生成物(XV) (38.09グラム、15.47mmol)を磁気撹拌子及びセプタム付き50mL滴下漏斗を備えた250mL丸底フラスコに入れた。該器具に真空を加え、窒素を3回詰め替えることによって脱気した。活性炭酸エステルを溶解するために、乾燥Novec 7100(無水Na2S04、30mL上に保管した)を注射器で、続いて無水テトラヒドロフラン(50mL)を注射器で添加した。セプタムを備えた100mL丸底フラスコにおいて、窒素防護下、ビス(3-アミノプロピル)を末端とするポリ(エチレングリコール) (Mn約1500、10.44グラム、6.96mmol)を、無水テトラヒドロフラン(25mL)及び乾燥Novec 7100 (無水Na2S04、15mL上に保管した)に溶解した。4-メチルモルホリン(2.8mL=2.58グラム、23.21mmol)を、ビス(3-アミノプロピル)を末端とするポリ(エチレングリコール)溶液に注射器で添加した。4-メチルモルホリンを有する溶液を、次いで滴下漏斗に加え、撹拌された活性化Krytoxカルボナートエステルに30分間にわたり緩徐に添加した。反応物を35℃の熱ブロック温度で17時間撹拌した。次いで、反応物を蒸発乾固させた。残渣をNovec 7100 200mL中に再溶解した。溶液に3-アミノプロピル官能化シリカゲル(15グラム、15mmol)を添加し、10分間撹拌し、フィルターフリットでろ過することによって除去した。別の15グラム(15mmol)の3-アミノプロピル官能化シリカゲルを更に4回添加し、フリットでろ過することによって除去した。3-アミノプロピル官能化シリカゲルの第5のアリコートの後、混合物を吸引下、セライト及びろ紙によりろ過した。少量の3-アミノプロピル官能化シリカゲル(20mg)が、数滴のろ液を添加した時、黄色の痕跡を示さない場合は、不純物関連の4-ニトロフェノールの除去は完了している。透明なろ液をロータリーエバポレータ(40℃、270mbar、次いで50℃、0から5mbar)により、不透明な無色の油性ワックス(15g)まで蒸発乾固させた。ワックス状残渣をNovec 7100 50mLに溶解した。
【0190】
フラッシュクロマトグラフィーカートリッジ(Puriflash HC Spherical Silica、50um、25g)をNovec 7100 (p=8psi) 100mLで満たした。粗製界面活性剤の溶液を注射器で添加した。カラムを無希釈のNovec 7100 100ml、次いでNovec 7100中5%メタノール100mL及び最後にNovec 7100中10%メタノール300mLで溶離した。各50mLの10個の画分を収集した。画分6から8を組み合わせ、ロータリーエバポレータ(40℃、270mbar、次いで70℃、0から5mbar)で蒸発乾固して、透明なワックス状固体IIj (総収量: 3.863グラム、9%)を得た。界面活性剤生成物(IIj)に対するIRスペクトルを
図15に示す。界面活性剤生成物(IIj)に対する
1H NMRスペクトルを
図16に示す。
【0191】
(実施例6)界面活性剤(IIh)の提案される合成
【0192】
【0193】
工程1を実施例1と同様に実施する。
【0194】
工程2
Novec 7100中の工程1からのアシルクロリド生成物の氷浴中で冷却された撹拌溶液に、冷たいメチルアミン水性溶液を添加する。次いで反応混合物を室温まで、途切れなく終夜撹拌しながら加温させておく。反応溶液を飽和ブラインと混合し、混合物をろ過する。水層を分離して分け、無水硫酸ナトリウムで乾燥した有機画分をろ過し、真空中で濃縮して、油状物を得て、これをFC72に溶解した。混合物を、セライトを通してろ過し、真空中で濃縮して、アミド生成物(XVIII)を得る。
【0195】
工程3
窒素下、固体Fe3(CO)12に無水トルエンを室温で撹拌しながら添加する。得られた暗緑色の溶液に、無水Novec 7500中の工程2からのアミド生成物(XVIII)の溶液を添加し、続いてフェニルシランを添加する。混合物を130℃で(アルミニウムブロック温度) 2日間撹拌する。室温まで冷却すると直ちに、反応物中にメタノール及びHCl水性溶液を添加する。生じた固体をろ別し、Novec 7100で洗浄する。次いで、水性相とフルオラス層を分離し、水性相をNovec 7500で逆抽出する。組み合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して、油状物を得て、これをヘキサン及びNovec 7100の混合物に溶解する。混合物をInterchim SiHCカートリッジ(25g、15μm直径の球形シリカゲル)により精製して、アミン生成物(XIX)を得る。
【0196】
工程4
無水Novec 7100及びTHF中の工程3からのアミン生成物(XIX)の撹拌溶液に、ヒューニッヒ塩基を、続いてTHF中のNO2PhOCOO-(CH2CH2O)eCO2PhNO2の加温溶液をDBUと一緒に添加する。次いで混合物を40℃で2日間撹拌し、蒸発乾固させる。残渣をNovec 7100に溶解し、溶液を3-アミノプロピルシリカゲルで穏やかに撹拌しながら処理する。混合物をろ過し、ろ液を真空中で濃縮する。得られた残渣をInterchim SiHCカートリッジにより精製して、カルバマート生成物(IIh)を得る。
【0197】
(実施例7)界面活性剤(IIi)の提案される合成
【0198】
【0199】
工程1から3を実施例6と同様に実施する。
【0200】
工程4
35℃の無水THF中のPEG-ビス(イソシアナート)の撹拌溶液に、Novec 7500中の工程3からのアミン生成物(XIX)を、続いてDBUを添加する。得られた混合物を35℃で終夜撹拌し、次いで、3-アミノプロピルシリカゲル及びNovec 7100を添加する。混合物を室温で撹拌し、次いでろ過する。ろ液を真空中で濃縮し、残渣をInterchim SiHCカートリッジにより精製して、尿素生成物(IIi)を得る。
【0201】
(実施例8)界面活性剤(IId)の提案される合成
【0202】
【0203】
工程1から3を実施例3と同様に実施する。
【0204】
工程4
工程3からのアミン生成物を、対応するイソシアナートに変換する。
【0205】
工程5
工程4からのイソシアナート生成物を、Jeffamine 900と反応させて、界面活性剤生成物(IId)を提供する。
【0206】
(実施例9)界面活性剤(IIe)の提案される合成
【0207】
【0208】
工程1から3を、実施例1と同様に実施する。
【0209】
工程4
工程3からのアルコール生成物を、スルホニルクロリドに変換する。
【0210】
工程5
工程4からのスルホニルクロリド生成物を、Jeffamine 900と反応させて、界面活性剤生成物(IIe)を提供する。
【0211】
(実施例10)界面活性剤(IIf)の提案される合成
【0212】
【0213】
工程1から3を実施例1と同様に実施する。
【0214】
工程4
工程3からのアルコール生成物を、対応するフェニルエーテルに変換する。
【0215】
工程5
工程4からのフェニルエーテル生成物を、スルホニルクロリドに変換する。
【0216】
工程6
工程5からのスルホニルクロリド生成物をJeffamine 900と反応させて、界面活性剤生成物(IIf)を提供する。
【0217】
(実施例11)界面活性剤を用いたエマルジョンの生成
エマルジョン液滴を、40μm×40μmのフローフォーカシング交差合流ノズルを備えたポリジメチルシロキサン(PDMS) Pico-Gen(商標)バイオチップ(Sphere Fluidics Limited社)により生成した。このバイオチップを
図17に図式的に例示する。図は、エマルジョン排出口(1) (図の上左に)、水性相注入口(2) (メイン図の左側の矢印に示す)、油相注入口(3) (メイン図の右側の矢印に示す)及びフローフォーカシング交差合流点(4) (拡大挿入図に矢印で示す)を示す。
【0218】
Novec (商標) 7500を連続油相として使用し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合溶液(下表を参照されたい)を水性相として使用した。5%(質量/質量)の、精製された、実施例1からの界面活性剤(IIa)又は実施例2からの界面活性剤(IIb)を、マイクロ流体デバイス中で油相と水性相を混合する前に、連続油相に溶解した。表1は、PCR混合溶液の組成を示す。
【0219】
PCR混合溶液
Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼキット(Life Technologies社、#10966)
JurkatゲノムDNA試料(Thermo Fisher Scientific社、#SD1111)
ACTBプライマーセット(Jena Bioscience GmbH社、#PCR-253)
dNTP Mix、各10mM (Thermo Fisher Scientific社、#R0191)
ヌクレアーゼフリー水、50mL (Life Technologies社、#AM9937)
【0220】
【0221】
油相の流速は300μL/hrであり、水性相の流速は300μL/hrであった。液滴生成頻度は、約1,000Hzであり、液滴の体積は、およそ80から87pL(直径53.5から55μm)であった。
図18は、油相(6) (垂直の矢印で示す)及び水性相(7) (水平の矢印で示す)が出会う、フローフォーカシング合流点(4)において生成された液滴(5)を示す。液滴は、マイクロ流体流路中で安定である。
【0222】
これは、界面活性剤(IIa)又は(IIb)を含むエマルジョンのマイクロ流体デバイス中での形成が成功であることを実証する。形成された液滴は、マイクロ流体流路中で安定であり、該界面活性剤は該液滴を成功裡に安定化させ、合体を防止したことを示している。
【0223】
(実施例12)エマルジョンPCR
界面活性剤(IIa)及び界面活性剤(IIb)を用いて、実施例11において生成された液滴エマルジョン試料をそれぞれ、G-Strom Thermal Cycler System (Labtech社)に入れ、表2に示された熱サイクルプログラムを実施した。
【0224】
【0225】
PCR熱サイクルの前後で、液滴画像をMikrotron社Hi-Speedカメラを備えたZeiss顕微鏡下で撮影した。
図19は、PCR熱サイクルを実行する前(左側の画像)及び後(右側の画像)の、界面活性剤(IIa)を含む液滴エマルジョン試料の顕微鏡画像を示す。
図20は、PCR熱サイクルを実行する前(左側の画像)及び後(右側の画像)の、界面活性剤(IIb)を含む液滴エマルジョン試料の顕微鏡画像を示す。該画像は、界面活性剤(IIa)及び界面活性剤(IIb)は、液滴を安定化し、たとえ熱サイクルの間でさえ合体を停止することによって、それぞれ機能的に活性であることを示す。
【0226】
次いで、PCR産物を標準的なアガロースゲルDNA電気泳動で分析した。液滴エマルジョン中で界面活性剤(IIa)又は(IIb)の代わりに、市販されているフルオラス界面活性剤Pico-Surf(商標)1 (Sphere Fluidics Limited社)も用いて、エマルジョンPCRを同じように実行し、該産物を電気泳動分析において、正の対照として使用した。
【0227】
図21は、界面活性剤(IIa)を含む液滴エマルジョン試料で得られたエマルジョンPCR産物に対する電気泳動の結果を示す。
図21において、レーン1: バルク中のPCR産物; レーン2: Pico-Surf(商標)1で安定化されたエマルジョン中のPCR産物; 及びレーン3: 界面活性剤(IIa)で安定化されたエマルジョン中のPCR産物。これは、界面活性剤(IIa)で安定化された液滴エマルジョン中のPCR産物は、Pico-Surf(商標)1で安定化された液滴エマルジョンからのPCR産物のバンドと同じような高輝度の明瞭な産物のバンドをもたらすことを示す。
【0228】
図22は、界面活性剤(IIb)を含む液滴エマルジョン試料で得られたエマルジョンPCR産物に対する電気泳動の結果を示す。
図22において、レーン1: 分子ラダー; レーン2: バルク中のPCR産物; レーン3: Pico-Surf(商標)1で安定化されたエマルジョン中のPCR産物; 及びレーン4: 界面活性剤(IIb)で安定化されたエマルジョン中のPCR産物。これは、界面活性剤(IIb)で安定化された液滴エマルジョン中のPCR産物は、Pico-Surf(商標)1で安定化された液滴エマルジョンからのPCR産物のバンドと同じような高輝度の明瞭な産物のバンドをもたらすことを示す。
【0229】
(実施例13)界面活性剤で安定化されたエマルジョン中の細胞生存率
懸濁液培養物からの、1.2×106個のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をペレット化し(300xg、5分)、カプセル化媒体(CHO細胞増殖媒体、16% OptiPrep(商標)、1% Pluronic(登録商標) F-68) 1mLに再懸濁させ、30μm CellTrics(登録商標)細胞ストレーナーを通した。細胞をNovec (商標) 7500中の5%(質量/質量)界面活性剤(IIa)、界面活性剤(IIb)又はPico-Surf(商標)1用いて、300pLの液滴中にカプセル化した。各試料に対して200μLのエマルジョンを収集し、収集後、処理する前に37℃のCO2インキュベータに2時間入れた。非カプセル化CHO細胞を生存率の対照として同時に保持した。
【0230】
生存率を評価するために、試料の脱エマルジョン化を、同体積のPico-Break(商標)(Sphere Fluidics Limited社)と混合し、続いて、水性相(CHO細胞を含む) 100μLを新たな1.5mL反応チューブに移すことにより行った。Solution 18 (AO・DAPI、Chemometec社、#910-3018) 5μLを細胞に添加し、混合し、各試料10μLをNC-Slide A8(商標)(Chemometec社、#942-0003)のチャンバーに装填した。非カプセル化CHO細胞(100μL)を、NC-Slide A8(商標)に装填する前に、5μLのSolution 18と直接混合した。細胞生存率を、NucleoCounter(登録商標) NC-250(商標)計測器によりViability and Cell Count Assayプログラムを用いて決定した。
【0231】
図23は、界面活性剤(IIa)を用いた液滴中にカプセル化された細胞に対する細胞生存率試験の結果を示す。
図23aは、37℃で2時間のインキュベーション後の、細胞を含む界面活性剤(IIa)で安定化された液滴の顕微鏡画像を示す。スケールバーは100μmを表す。矢印は、液滴中の細胞(これは小さい白色の円形のものに見える)を示している。
図23bは、37℃で2時間のインキュベーション後の、非カプセル化CHO細胞(バルク、左)、Pico-Surf(商標)1用いて液滴にカプセル化された細胞(中央)、及び界面活性剤(IIa)を用いて液滴にカプセル化された細胞(右)からの試料中の生存細胞の百分率を示す。これは、界面活性剤(IIa)を用いて液滴にカプセル化された細胞の生存率は、Pico-Surf(商標)1を用いて液滴にカプセル化された細胞の生存率、及び非カプセル化細胞の生存率に匹敵することを示す。
【0232】
図24は、界面活性剤(IIb)を用いて液滴にカプセル化された細胞の細胞生存率試験の結果を示す。
図24aは、37℃で2時間のインキュベーション後の、細胞を含む界面活性剤(IIb)で安定化された液滴の顕微鏡画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。矢印は、液滴中の細胞(これは小さい白色の円形のものに見える)を示している。
図24bは、37℃で2時間のインキュベーション後の、非カプセル化CHO細胞(バルク、左)、Pico-Surf(商標)1用いて液滴にカプセル化された細胞(中央)、及び界面活性剤(IIb)を用いて液滴にカプセル化された細胞(右)からの試料中の生存細胞の百分率を示す。これは、界面活性剤(IIb)を用いて液滴にカプセル化された細胞の生存率は、Pico-Surf(商標)1を用いて液滴にカプセル化された細胞の生存率、及び非カプセル化細胞の生存率に匹敵することを示す。
図24b中の挿入図は、細胞生存率測定に対する典型的な蛍光画像を示す。カラーで見ると、生存細胞は、緑色に見え、死細胞は赤色に見え、該画像は前述の結果を確証する。
【0233】
疑いもなく、当業者なら多数の他の有効な代替案を思い付こう。本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に添付する特許請求の範囲の精神及び範囲内で、当業者には明らかな修正を包含するものと理解される。
【符号の説明】
【0234】
1 エマルジョン排出口
2 水性相注入口
3 油相注入口
4 フローフォーカシング交差合流点、フローフォーカシング合流点
5 液滴
6 油相
7 水性相