(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】抗プロタンパク質変換酵素サブチリシン ケキシン タイプ9(Subtilisin Kexin Type 9)(抗PCSK9)化合物および心血管疾患の治療および/または予防にこれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20220701BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20220701BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20220701BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220701BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K31/343
A61K31/421
A61K31/423
A61P3/06
A61P9/10 103
A61P9/10 101
(21)【出願番号】P 2018566896
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 US2017038069
(87)【国際公開番号】W WO2017222953
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-30
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516104010
【氏名又は名称】シファ バイオメディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】アブデル ミギード シェリン サラヘルディン
(72)【発明者】
【氏名】エルショーバギー ナビル エイ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤーズ ハロルド ヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ シェーカー エイ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512825(JP,A)
【文献】特表2001-505585(JP,A)
【文献】Arch. Pharm. Chem. Life Sci.,(2012), 345, 401-406
【文献】Molecules,(2011), 16(10), 8292-8304
【文献】J. Enzym. Inhib. Med. Ch.,2010年,25(6),751-755
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61K 31/421
A61K 31/423
A61P 3/06
A61P 9/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化2】
の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を含む、高コレステロール血症(hypercholesterolemia)、および/または、脂質異常症(dyslipidemia)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、
心血管疾患または冠状動脈性心臓病(coronary heart disease)の少なくとも1つの症状を治療するための組成物。
式中、
R
1は、H、またはCH
3であり;
R
3は、Hおよび(C
1-C
3)-アルコキシからなる群より独立して選択され;
R
6およびR
7は、H、置換されていてもよい(C
1-C
3)-アルキル、および
からなる群から独立して選択され、
ここで、R
6およびR
7の少なくとも1つは、
であり、
ここで、R
8は、CO
2H、CONHR
9、2-オキサゾール、2-オキサゾリン、および、2-ベンゾオキサゾールからなる群から選択され;そして
R
9は、Hまたは置換されていてもよい(C
1-C
3)-アルキルである。
【請求項2】
化合物が、下記からなる群から選択される、請求項1の組成物。
N-(4-{[4-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル](メチル)カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,423);
N-(4-{[4-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,337);
N-(4-{[4-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-5-メトキシ-3-メチル-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,418);
N-{4-[(4-カルバモイルフェニル)カルバモイル]フェニル}-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,424);
N-(4-{[4-(4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,432);
N-(4-{[4-(1,3-オキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,433);および
7-メトキシ-3-メチル-N-(4-{[4-(1,3-オキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,445)および、
その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
化合物が、N-(4-{[4-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル]カルバモイル}フェニル)-5-メトキシ-3-メチル-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,418)または、その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
化合物が、N-(4-{[4-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル](メチル)カルバモイル}フェニル)-1-ベンゾフラン-2-カルボキサミド(SBC-115,423)または、その薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連アプリケーションへの相互参照
本出願は、2016年6月21日に出願された、米国仮特許出願番号第62/352,701号の利益を主張する。
連邦支援の研究または開発に関する声明
本発明は、SBIRのグラント番号HL096167の下、国立心肺血液研究所(NHLBI)の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)とのその相互作用を含む、プロタンパク質転換酵素サブチリシン ケキシン タイプ9(PCSK9)の生理学的作用を調節する化合物に関する。
より具体的には、本発明は、PCSK9機能の低分子モジュレーターを含む組成物、およびこれらのモジュレーターを医薬品として使用する方法に関する。
PCSK9機能の低分子モジュレーターは、血液中のLDLコレステロールレベルを低下させるために治療に使用することができ、そして、家族性高コレステロール血症、アテローム発生性異脂肪血症、アテローム性動脈硬化症、そして、より一般的に、心血管疾患(CVD)を含むコレステロールおよびリポタンパク代謝障害の予防および/または治療に用いることができる。
【0003】
発明の背景
心臓血管疾患は主要な死因であり、アテローム性動脈硬化症は、心臓血管疾患の主要な原因である。
アテローム性動脈硬化症は、動脈の疾患であり、そして、先進工業国における多くの死に関連する冠状動脈性心疾患の原因である。
冠状動脈性心臓病のいくつかの危険因子、すなわち、異常脂質血症、高血圧、糖尿病、喫煙、食餌不足、不活動およびストレスが現在確認されている。
異常脂質血症は、アテローム性動脈硬化症の発症に寄与する、血漿コレステロール(高コレステロール血症)および/またはトリグリセリド(TG)または低HDLレベルの上昇である。
それは、心臓血管疾患に寄与することが証明されている代謝障害である。
血液中では、コレステロールは、リポタンパク質粒子中で輸送され、HDL-コレステロール(HDL-C)は「良い」コレステロールとして知られている一方、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL-C)は、「悪い」コレステロールと考えられている。
脂質およびリポタンパク質の異常は、一般の集団において極めて一般的であり、そして、コレステロールがアテローム性動脈硬化症に及ぼす影響により、心血管疾患の高度に修飾可能な危険因子とみなされている。
スタチンを用いた治療(アテローム性動脈硬化症の現行の標準治療)にもかかわらず発生する、心臓血管イベント、心臓発作および脳卒中の60~70%が、心臓血管系(CVD)に関して長い間認識されていた重要な未達成のニーズがある。
さらに、新しいガイドラインでは、高リスク患者を、早期CVDから保護するために、より低いLDLレベルを達成すべきであることが示唆されている(1)。
【0004】
PCSK9とコレステロール代謝との間の関連性の確立は、PCSK9遺伝子の選択された突然変異が、常染色体優性高コレステロール血症引き起こすという発見が、直ぐに齎され(2)、これは、突然変異がPCSK9の正常な活性を増加させることによって、機能獲得をもたらすことを示唆している(3)。
【0005】
これは、野生型および突然変異体PCSK9(S127RおよびF216L)が、マウスの肝臓において、高レベルで発現された実験によって支持された;肝臓LDLRタンパク質レベルは、野生型または突然変異体PCSK9のいずれかを受けたマウスにおいて劇的に低下した(4、5)。
LDLRmRNAレベルの関連する低下は観察されず、突然変異体であろうと野生型であろうと、PCSK9の過剰発現が、転写後のメカニズムによって、LDLRを減少させることを示した。
PCSK9の機能獲得変異(gain-of-function mutation)が、高コレステロール血症の原因であることを考慮すると、機能喪失変異が逆効果をもたらし、そして、低コレステロール血症をもたらすかどうかを尋ねることは合理的であった。
PCSK9(Y142X、L253F、およびC679X)における3つの機能喪失変異が、アフリカ系アメリカ人において同定された(6)。
これらの突然変異は、LDL-Cレベルを28%低下させ、そして、(心筋梗塞、心臓死、または冠動脈再建術)として定義されるCHDの頻度を88%減少させることが示された。
ラシッド(Rashid)ら(7)は、PCSK9が不活性化されたマウスにおける機能喪失突然変異のメカニズムを研究した。
彼らは、これらのノックアウトマウスが、肝臓LDLRタンパク質(mRNAではなく)の増加、循環リポタンパク質のクリアランスの増加、および、血漿コレステロールレベルの低下を示したと報告した。
PCSK9における天然突然変異の構造-機能関係分析はまた、PCSK9の作用機序についての洞察を提供した。
興味深いことに、LDL-C血漿レベルの最大の低下に関連することが見出された、PCSK9における突然変異は、その合成(Y142X)、自己触媒処理(L253F)、または折りたたみ(C679X)を破壊することによって、成熟PCSK9の分泌を妨げるものである(8)。
Y142X突然変異は、転写の早期に起こり、そして、ナンセンス媒介性のmRNA崩壊(nonsense-mediated mRNA decay)を開始すると予測されるため、検出可能なタンパク質を産生しない。
【0006】
触媒ドメイン(L253F)の突然変異は、タンパク質の自己触媒的切断を妨害する。
PCSK9-253Fを発現する細胞では、成熟タンパク質の量は、PCSK9-WTを発現する細胞におけるものと比較して減少し、突然変異が自己触媒的切断を阻害することが示唆された。
L253F突然変異は、触媒トリアッド(triad)(PCSK9はセリンプロテアーゼである)の近くに存在し、したがって、活性部位を破壊する可能性がある(8)。
PCSK9の自己触媒的切断が、ERからタンパク質を輸出するために必要である限り、L253F突然変異は、PCSK9の、ERから細胞表面への輸送を遅延させる。
タンパク質を、14のアミノ酸毎に切断する、PCSK9におけるナンセンス突然変異(C679X)は、タンパク質プロセシングを妨げないが、成熟タンパク質は細胞内に蓄積し、そして、何も分泌されないので、タンパク質は正常に切断され、しかし、ミスフォールディングされ、そして、ERに保持されることが示唆された(8、9)。
【0007】
PCSK9が、LDLRの分解を引き起こすメカニズムは、完全に解明されていない。しかし、PCSK9のプロテアーゼ活性は、LDLR分解に必要ではないことは明らかである(10、11)。
Liら(10)は、プロドメインおよび触媒ドメインをトランスで(in trans)同時発現し、そして、分泌されたPCSK9が触媒的に不活性であることを示したが、細胞のLDL取り込みおよびLDLRレベルを低下させることにおいて、まだ、野生型タンパク質と機能的に同等であることを示した。同様の研究は、McNuttらによっても報告されていた(11)。
【0008】
さらに、Zhangら(12)は、LDLRのEGF-A反復に対するPCSK9の結合をマッピングし、そして、このような結合が、受容体の再循環を減少させ、そして、その分解を増加させることを示した。また、EGF-Aドメインへの結合は、カルシウム依存性であり、そして、pHを7から5.2に低下させると、劇的に増加することも報告している。
クォンら(13)は、LDLR-EGF-AB(EGF-AおよびEGF-B)と複合体化したPCSK9の結晶構造を決定した。構造は、明確に定義されたEGF-Aドメインを示すが、EGF-Bドメインは無秩序であり、電子密度マップには存在しない。EGF-Aドメインは、触媒部位から離れた部位で、PCSK9触媒ドメインに結合し、そして、C末端ドメインまたはプロドメインのいずれとも接触しない(14)。
【0009】
PCSK9を標的とする、いくつかの戦略が提案されている(15)。
戦略1:mRNAノックダウンアプローチには、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAiの使用が含まれる。マウスに投与されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PCSK9発現を、>90%低下させ、そして、血漿コレステロールレベルを53%低下させた(16)。カニクイザルにリピドイド ナノ粒子内で送達された、RNAiの単回静脈内注射は、血漿PCSK9レベルを70%、および血漿LDL-Cレベルを56%低下させた(17)。
【0010】
戦略2:PCSK9に対する、低分子、ペプチド、又は抗体を用いて、細胞表面上のLDLRへのPCSK9の結合を防止するものである。EGF-A断片を培養細胞に添加すると、外因性に添加されたPCSK9がLDLR分解を媒介する能力が阻害される。
【0011】
戦略3:PCSK9プロセシングの低分子阻害剤を開発することである。PCSK9の触媒活性がLDLR分解(11)に必要でないという証拠にもかかわらず、PCSK9の自己触媒的プロセッシングがERからのタンパク質の分泌に必要であるので、PCSK9の触媒活性の細胞内阻害剤が有効であるはずである。その合成後、PCSK9は、プロドメインを切断する(clips off)自己触媒的切断反応を受けるが、プロドメインは触媒ドメインに結合したままである(18、19)。
自己触媒処理工程は、おそらく、プロドメインが、シャペロン(chaperone)として働き、そして、折りたたみを容易にするために、PCSK9(20)の分泌に必要である。
プロドメインの継続した結合は、PCSK9の基質結合ポケットを部分的にブロックする(18、19)。McNuttら(21)は、分泌されたPCSK9の拮抗作用が、HepG2細胞におけるLDLR発現を増加させることを実証した。彼らは、機能獲得型突然変異を生じる、FH関連LDLR対立遺伝子(H306Y)が、LDLRへのPCSK9の親和性の増加によるものであり、これはLDLR破壊の増強、そして、血漿LDL-Cクリアランスの低下に導くことを示す。
さらに、彼らは、LDLR(H306Y)サブ-断片を用いて、分泌PCSK9を遮断することにより、培養HepG2細胞におけるLDLRのレベルの増加をもたらしたことを、エレガントに示すことができた。
したがって、PCSK9は、LDLRの分解を引き起こす分泌因子として作用し、そして、自己触媒プロセスと干渉する、低分子阻害剤は、成熟分泌PCSK9の量を減少させる。
本発明は、戦略2を用いてPCSK9の機能をダウンレギュレートする低分子の同定に関する。
【0012】
現在(22-24)、FDA承認の、注射用PCSK9モノクローナル抗体アンタゴニストが市販されている。
これらは、共に、完全にヒト抗PCSK9モノクローナル抗体である、Regeneron/SanofiのPRALUENT(アリロクマブ、alirocumab)およびAmgenのREPATHA(エボロクマブ、evolocumab)である。
Halozymeと協力して開発されている、ファイザーのbococizumabは、フェーズIIIで最も進んでいる。
Eli Lilyのヒト化mAbは、第2相試験を開始した。
これらのモノクローナル抗体は、低分子の代わりに注射用抗体を用いて、戦略2に従う。戦略2はまた、他のいくつかの企業によっても追求されている(25)。
【0013】
発明の概要
本発明は、選択的に相互作用し、そして、PCSK9の機能を下方調整する、低分子の治療用途に関する。
【0014】
第1の実施形態において、本発明の実施において使用される薬剤は、一般式Iを有する:
【化1】
式中、Aは、以下からなる群から選択され:
【化2】
Raは、独立して、H及び低級アルキルからなる群から選択され:
R
1は、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、および置換されてもよい、アミノ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシアルキル、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アシル、カルボキシ、アミド、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、モノアルキルアミノスルフィニル、ジアルキルアミノスルフィニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、モノアルキルアミノスルホニルアルキル、ジアルキルアミノスルホニルアルキル、及び、置換されてもよい、低級アルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアリール、または隣接するR
1と一緒になって、置換されていてもよい、5~7員炭素環、アリール、複素環またはヘテロアリールを形成する。
R
2は、Hおよび、置換されていてもよい低級アルキルからなる群から選択され;
但し、Aは、2-置換インドールではない。
Bは、置換されてもよい、シクロアルキル、アリール、複素環、およびヘテロアリールからなる群から選択され、
そして、その化合物の薬学的に許容される塩および全ての立体異性体である。
【0015】
一実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする患者において、高コレステロール血症および/または異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、CVDまたは冠状動脈性心疾患の少なくとも1つの症状を、上記式Iの化合物の治療上の有効量を、そのような患者に投与することを含む、治療または予防する方法を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明の方法は、以下の式IIの少なくとも1つの化合物の投与を含む:
【化3】
式中、
R
1は、独立して、H、および、置換されていても良い、(C
1-C
3)-アルキル、(C
1-C
3)-アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、(C
1-C
3)-アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
R
3は、独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C
1-C
3)-アルコキシ、(C
1-C
3)-アルコキシカルボニル、(C
1-C
3)-アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、(C
1-C
3)-アルキルチオ、(C
1-C
3)-アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、(C
1-C
3)-アシル、カルボキシ、アミド、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、モノアルキルアミノスルホニル、、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、アルコキシスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、モノアルキルアミノスルホニルアルキル、ジアルキルアミノスルホニルアルキル、および、置換されてもよい、低級アルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアリールからなる群から独立して選択されるか、または、隣接するR
3と一緒になって、置換されてもよい5~7員炭素環、アリール、複素環、またはヘテロアリールを形成し;
R
4は、H、ハロゲン、(C
1-C
3)アルキルおよび(C
1-C
3)アルコキシからなる群から独立して選択され;
R
5は、独立して、HおよびCONR
6R
7からなる群から選択され、
ここで、R
6およびR
7は、Hおよび、置換されてもよい、アルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環およびヘテロアリールからなる群から、独立して、選択されるか、または
i)一緒になって、置換されてもよい、ヘテロ原子を1又はそれ以上を含む、5~7員複素環を形成するか、または
ii)隣接するR
4と一緒になって、置換されてもよい5~7員複素環を形成する。
【0017】
より好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下の式IIIの少なくとも1つの化合物の投与を含む:
【化4】
式中、
R
1は、独立して、HまたはCH
3からなる群から選択され;
R
3は、独立して、H、または(C
1-C
3)-アルコキシからなる群から選択され;
R
6およびR
7は、独立して、H、CH
3および、置換されてもよいアリールからなる群から選択され、
アリールは、
【化5】
からなる群から選択され;
式中、
R
8は、CO
2H、CONHR
9、2-オキサゾール、2-オキサゾリン、2-ベンゾオキサゾールからなる群から選択され;
R
9は、HまたはCH
3である。
【0018】
さらに別の実施形態において、本発明の方法は、以下の式IVの少なくとも1つの化合物の投与を含む:
【化6】
式中、
R
1が、Hまたは、置換されてもよい(C
1-C
3)-アルキルであり;
R
3は、独立して、H、ハロゲン、または置換されてもよい(C
1-C
3)-アルコキシからなる群から選択され;
R
4は、Hであり;および
R
9は、(C
1-C
3)-アルキルである。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明は、式Vの化合物、その化合物の薬学的に許容される塩および立体異性体を含む。
【化7】
式中、
X
aおよびX
bは、独立して、HまたはCH
3の群から選択され;
Y
a、Y
bおよびY
cは、同じであっても異なっていてもよく、そして、H、ハロゲンまたは(C
1-C
3)-アルコキシの群から選択され;
Z
a、Z
bを及びZ
cは、同一または異なって、そして、H、ハロゲン、(C
1-C
3)アルコキシ、(C
1-C
4)-アルキル、COOH、CONR
10R
11、2-オキサゾール、2-オキサゾリン、および2-ベンズオキサゾールの群から選択され;
R
10およびR
11は、H、置換されてもよい(C
1-C
3)-アルキルおよび、置換されてもよいアリールの群から独立して選択され;
nは1または2であり、そして、
n=1の場合、CONR
10R
11は、前記CONR
10R
11が、置換した前記ベンゼン環に縮合したN-置換スクシンイミド環を形成していてもよい。
ここで、スクシンイミドの置換基は、置換されてもよい(C
1-C
3)-アルキルまたはアリールである。
ただし、前記式は、
【化8】
を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1-1】
図1は、式Iの選択された化合物、すなわち2-カルボキサニリドピロールおよび2-カルボキサニリドインドールの構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、100μMで、>20のPCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図1-2】
図1は、式Iの選択された化合物、すなわち2-カルボキサニリドピロールおよび2-カルボキサニリドインドールの構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、100μMで、>20のPCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図2-1】
図2は、式II-IVの好ましい化合物、すなわち2-カルボキサニリドベンゾフラン、の構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、(IC
50、μM)>10μMで、しかし£50μMで、PCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図2-2】
図2は、式II-IVの好ましい化合物、すなわち2-カルボキサニリドベンゾフラン、の構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、(IC
50、μM)>10μMで、しかし£50μMで、PCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図3-1】
図3は、式II-IVの最も好ましい化合物の構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、(IC
50、μM)<10μMで、PCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図3-2】
図3は、式II-IVの最も好ましい化合物の構造を記載する。それらの化合物は、PCSK9プロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさない一方、対照と比較して、LDLRアップレギュレーションに影響を及ぼし、そして、(IC
50、μM)<10μMで、PCSK9/LDLR相互作用のインビトロでの阻害を示す。
【
図4】
図4は、PCSK9/LDLR相互作用に対する、異なる化合物の効果を示す:インビトロのELISAアッセイキットを利用した(CIRCULEX)。PCSK9/LDLRの相互作用の阻害剤をスクリーニングするために、選択された化合物の様々な濃度(0.01nM-100μM)を、Hisタグ付きPCSK9と共にインキュベートし、そして、次いで組換えLDLR-ABドメインでプレコーティングしたウェルに添加した。インキュベーション後、プレートを洗浄し、そして、組換えHisタグ付きPCSK9の量を、ビオチン化抗Hisタグおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ融合ストレプトアビジンを用いて測定し、そして、BioTek Synergy 2プレートリーダーを用いて定量した。組換えLDLR-ABドメインへのPCSK9結合に対する各化合物の効果を計算した。
【
図5】
図5は、HEK293トランスフェクト細胞におけるPCSK9合成、プロセシングおよび分泌に対する種々の化合物の効果を示す。HEK-293T細胞を、10%ウシ胎仔血清培地を含むDMEM中、96ウェルプレートに播種し、そして、37℃で一晩インキュベートした。細胞を、Lipofectamine-LTXを用いてcDNA構築物で一過的にトランスフェクトした。化合物(25μM)またはビヒクルを添加し、続いてさらに43時間インキュベートした。細胞性PCSK9、分泌されたPCSK9、および細胞生存率を、以下の実施例2に記載のように分析した。
【
図6】
図6は、PCSK9によるLDLRの増加した分解を示している。HEK-293T細胞を、10%ウシ胎仔血清培地を含むDMEMに播種し、37℃で一晩インキュベートした。Mock(レーン1および2)、PCSK9(レーン3および4)、LDLR&PCSK9(レーン5および6)およびLDLR(レーン7および8)cDNA構築物を、Lipofectamine-LTXを用いて、細胞を、一過性にトランスフェクトした。細胞をさらに72時間インキュベートし、そして、細胞および培地を本文のように分析した。
【
図7】
図7は、PCSK9アンタゴニストによるLDLRのアップレギュレーションを示す。HEK-293T細胞を、10%ウシ胎仔血清培地を含むDMEMに播種し、そして、37℃で一晩インキュベートした。上記のように、Lipofectamine-LTXを用いて、細胞をLDLR&PCSK9 cDNA構築物で、一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を異なる化合物で処理し、そして、さらに48時間インキュベートした。LDLR発現に関して、上記のように、細胞をアッセイした。
【
図8】
図8は、HepG2細胞における、LDLRアップレギュレーションに対する種々の化合物の効果を示す。HepG2細胞を、10%ウシ胎仔血清培地を含むMEM中で、96ウェルプレートに播種し、そして、37℃で一晩インキュベートした。細胞を、Lipofectamine-LTXを用いて、PCSK9 cDNA構築物で、一過性にトランスフェクトした。化合物を添加し、続いてさらに43時間インキュベートした。細胞を溶解し、そして、LDLR発現について分析し、そして、細胞生存率を、上記のように決定した。
【
図9】
図9は、HepG2細胞の4つの阻害剤を用いた、蛍光のDiI-LDLの取り込みの増加を示す。SBC化合物は、HepG2細胞における蛍光Dil-LDLの取り込みを増加させる能力について検証された。このデータは、化合物の1.2μMを使用した、蛍光Dil-LDL摂取の増加を示す。
【
図10】
図10は、通常の食餌を与えた動物と比較して、リポポリサッカライド(LPS)を含む、または含まない、高脂肪食(HFD)を与えた、8匹のマウスのLDLコレステロールレベルに対する、SBC-115,337の効果を示す。C57/Black6マウスおよびBalB/Cマウスを、HFD上で、4週間維持した。SBC化合物の注射前の1日目に血漿を採取した。血漿は、4日目、リポポリサッカライド(LPS)注射の4時間後、およびリポポリサッカライド(LPS)注射の24時間後に、再び収集した。血漿コレステロール、LDL-C、HDL-C、およびトリグリセリドレベルを酵素的に測定した。
【
図11】
図11は、PCSK9/LDLR相互作用に対する、SBC-115,337の近辺のSARを示す:
図4に記載されているように、インビトロELISAアッセイキットを利用した。
【
図12】
図12は、HepG2細胞における種々の阻害剤を使用する、蛍光Dil-LDLの取り込みの増加を示す。SBC化合物は、
図9に記載されているように、HepG2細胞における蛍光Dil-LDLの取り込みを増加させる、それらの能力について検証された。
【
図13】
図13は、HEK293/PCSK9トランスフェクト細胞における、PCSK9合成、プロセッシングおよび分泌に対する異なる化合物の効果を示す。SBC化合物は、
図5に関して記載したように、PCSK9合成、プロセシングおよび分泌に影響を与えるそれらの能力について検証された。
【
図14】
図14は、PCSK9アンタゴニストによるLDLRのアップレギュレーションを示す。HEK-293T細胞を、
図7に関して記載したようにアッセイした。
【
図15】
図15A~
図15Bは、高脂肪食を摂取したC57/Black6マウスの、LDLコレステロールレベルに対する、SBC-115,418の効果を示す:C57BL/6マウスを、それぞれ、5匹ずつ2群に分けた。コントロール群にPBSを投与した;SBC群は、5日間、毎日10mg/kgの経口投与を受けた。化合物の注射前1日目に血漿を採取した。5日目に再び血漿を採取した。血漿LDL-Cレベルを酵素的に測定した。
図5Aは、mg/dLでの、LDL-Cの実際の変化を表す。そして、
図5Bは、5日間、SBC-115,418の投与後の、LDL-Cの%減少を表す。
【
図16】表1は、SBC-115,337及び11の類似体のIC
50のまとめを示す。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)との、その相互作用を含む、細胞外プロプロティンコンバーターゼ サブチリシン ケキシン タイプ9(PCSK9)の機能を、ダウンレギュレートする低分子、およびおよびこれらの拮抗薬を医薬として用いる方法に関連する。
PCSK9機能の低分子モジュレーターは、血液中で、LDLコレステロールレベルを下げて、治療的に用いることができ、そして、家族性高コレステロール血症、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、及びより一般的には、心臓血管疾患(CVD)を含む、コレステロールおよびリポタンパク質の代謝障害の予防および/または治療に使用することができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、分枝または非分枝の飽和炭化水素鎖部分である。「低級アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-メチルペンチルペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチルなどの1乃至約8個の炭素鎖を有する、分枝または非分枝の炭化水素鎖が挙げられる。
【0023】
「置換アルキル」には、ヒドロキシ、ハロゲン、メルカプトまたはチオ、シアノ、アルキルチオ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシなどの、そのような鎖に、通常結合している1個またはそれ以上の置換基で置換されていてもよいアルキル基;または、トリフルオロメチル、3-ヒドロキシヘキシル、2-カルボキシプロピル、2-フルオロエチル、カルボキシメチル、シアノブチル、フェネチル、ベンジルなどのようなアルキル基を形成する、置換されていてもよい、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールなどを含む。
【0024】
本明細書で単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を指す。
【0025】
用語「アルコキシ」は、アルキル-O-を意味し、ここで、アルキルは、上で定義したとおりである。
【0026】
「アルキルチオ」という用語は、アルキル-S-を意味し、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0027】
用語「アミノ」、「モノアルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」は、部分-NR’R”を指し、R’及びR”は、全て、本明細書中で定義されたように、それぞれが独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0028】
「カルボキシ」という用語は、-C(=O)OH部分を意味する。
【0029】
「カルボアルコキシ」という用語は、-C(=O)O-アルキル(ここで、アルキルは上記で定義した通りである)部分を意味する。
【0030】
用語「アミノ(モノアルキルアミノ-、ジアルキルアミノ)カルボニルアミノ」は、「部分-NHC(=O)NR’R”を意味し、ここで、「R’R”において、それぞれ独立に、本明細書に全て定義されているように、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0031】
「カーバマート」という用語は、-NR’C(=O)OR”部分(ここで、R’およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを意味する)を指す。
【0032】
「アミノ(モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ)カルボニル」(「カルボキサミド」ともいう)という用語は、部分-C(=O)NR’R”(ここで、R’およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0033】
「アミド」という用語は、部分-NRC(=O)-R“(ここで、本明細書に全て定義されているように、R’およびR”は、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す)を指す。
【0034】
用語「アルキルスルホニル」は、部分-S(=O)2-アルキル(ここで、アルキルは、先に定義した通りである)を意味する。
【0035】
用語「アルキルスルホニルオキシ」は、-OS(=O)2-アルキル部分(ここで、アルキルは、先に定義した通りである。)を指す。
【0036】
用語「アミノ」(モノアルキルアミノ-、ジアルキルアミノ-)スルフィニルは、―S(=O)NR’R”部分を指し、ここで、R’およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0037】
用語「アミノ」(モノアルキルアミノ-、ジアルキルアミノ-)スルホニルは、部分-S(=O)2NR’R”を示し、ここで、R’およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0038】
用語「アルキルスルホニルアミノ」は、-NHS(=O)2-アルキル部分を意味し、ここで、アルキルは、先に定義した通りである。
【0039】
用語「ヒドロキシスルホニルオキシ」は、-OS(=O)2OHの部分を指す。
【0040】
用語「アルコキシスルホニルオキシ」は、-OS(=O)2O-アルキル部分、を意味し、ここで、アルキルが先に定義したとおりである。
【0041】
用語「アルキルスルホニルオキシ」は、-OS(=O)2-アルキルの部分を指し、ここで、アルキルは、先に定義した通りである。
【0042】
用語「ヒドロキシスルホニル」は、-S(=O)2OH部分を指す。
【0043】
用語「アルコキシスルホニル」は、-S(=O)2O-アルキル部分を指し、ここで、アルキルは、先に定義した通りである。
【0044】
「アルキルスルホニルアルキル」という用語は、-アルキル-S(=O)2-アルキル部分を意味し、ここで、アルキル(それぞれの場合)が先に定義した通りである。
【0045】
用語「アミノ(モノアルキルアミノ-、ジアルキルアミノ-)スルホニルアルキル」は、-アルキル-S(=O)2NR’R” 部分を意味し、ここで、アルキルは、先に定義した通りであり、そして、R’、およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0046】
用語「アミノ」(モノアルキルアミノ-、ジアルキルアミノ-)スルフィニルアルキルは、-アルキル-S(=O)-NR’R” 部分を指し、ここで、アルキルは先に定義した通りであり、そして、R’およびR”は、本明細書に全て定義されているように、それぞれ独立して、H、アルキルまたはアリールを表す。
【0047】
特に断りのない限り、本明細書において、単独でまたは別の基の一部として使用される用語「シクロアルキル」とは、飽和又は部分的に不飽和(1またはそれ以上の二重結合を含む)の1~3個の環を含有する環状炭化水素基を含み、モノ環状アルキル、2環状アルキルおよび3環状アルキルを含み、環状の炭化水素基(炭素環式)を含み、合計で、環を形成する3~20個の炭素原子、好ましくは、環を形成する3~10個の炭素原子を含み、そして、アリール基で記載した通り、1又は2個の芳香環と縮環していてもよく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシルおよびシクロヘキセニルを含む。
【0048】
「置換シクロアルキル」は、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオールおよび/またはアルキルチオおよび/または「置換アルキル」の定義に含まれる置換基のいずれかのような、1又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基を含む。
【0049】
別段の指示がない限り、本明細書で使用する「アルケニル」という用語は、それ自体または別の基の一部として、通常鎖中に、2~20個の炭素、好ましくは2~12個の炭素、より好ましくは2~8個の炭素の直鎖または分枝鎖を指し、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル、4,8,12-テトラデカトリエニルなどの、通常鎖中の、1又はそれ以上の2重結合を含む。
【0050】
「置換アルケニル」には、上記「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいアルケニル基が含まれる。
【0051】
別段の指示がない限り、本明細書において、それ自体または別の基の一部として使用される「アルキニル」という用語は、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、2-ヘプチニル、3-ヘプチニル、4-ヘプチニル、3-オクチニル、3-ノニニル、4-デシニル、3-ウンデシニル、4-ドデシニルなどの、通常鎖中に、1以上の3重結合を含み、通常鎖中に、2~20個の炭素、好ましくは2~12個の炭素、そして、より好ましくは2~8個の炭素の直鎖または分枝鎖を指す。
【0052】
「置換アルキニル」には、上記「置換アルキル」および「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基のような、1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよいアルキニル基が含まれる。
【0053】
別段の指示がない限り、本明細書で、単独または別の基の一部として使用されている、用語「アリール」または「Ar」は、環部分に6~10個の炭素を含む単環式および多環式芳香族基(1-ナフチルおよび2-ナフチルを含むフェニルまたはナフチルのような)、および所望により、シクロアルキル環などの炭素環式環に縮合した1~3個の追加の環を含み、またはアリールまたは複素環式環またはその置換形態を含むに縮合していてもよい。
【0054】
「置換アリール」は、ハロ、アルキル、ハロアルキル(たとえば、トリフルオロメチル)、アルコキシ、ハロアルコキシ(たとえば、ジフルオロメトキシ)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル-アルキル、複素環-アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルケニル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルアリール、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールアゾ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、置換アミノ(ここで、アミノは1又は2個の置換基を含む(置換していてもよい、アルキル、アリールまたは定義に記載の他の置換基のいずれかである)、チオール、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アリールチオアルキル、アルコキシアリールチオ、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアミノまたはアリールスルホンアミノカルボニルおよび/または上記アルキル置換基のいずれかのような、1個のまたは複数の置換基で置換されていてもよいアリール基を含む。
【0055】
別段の指示がない限り、本明細書で単独または別の基の一部として使用される「ヘテロアリール」または「Het」という用語は、5-または7-員芳香環を指し、1,2,3または4個の、たとえば、窒素、酸素又は硫黄のようなヘテロ原子を含み、そして、そのような環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル環に縮合されており、そして、可能なN-オキシドを含む。
ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリルおよびオキサジアゾリルを含む。
縮合ヘテロアリール基の例としては、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、カルバゾール、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、フェナンスロリン、プリン、等を含む。
「置換ヘテロアリール」には、上記「置換アルキル」、「置換シクロアルキル」および「置換アリール」の定義に含まれる置換基のような、1~4個の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール基が含まれる。
【0056】
用語「ヘテロシクロ(heterocyclo)」、「複素環(heterocycle)」または「複素環(heterocyclic ring)」は、本明細書中で、単独でまたは別の基の一部として、非置換または置換された、安定な5~7員単環式を表し、飽和または部分的に不飽和であり得る、そして、炭素原子および、N、OまたはSから選択される1~4個のヘテロ原子からなり、そして、窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により、酸化されていてもよく、そして、窒素ヘテロ原子は、所望により四級化されていてもよい。
「置換されたヘテロシクロ(heterocyclo)(または、複素環(heterocycle)または複素環(heterocyclic ring))」は、上記、「置換されたアルキル」、「置換されたシクロアルキル」および「置換されたアリール」の定義に含まれる置換基のような、1~4個の置換基で置換されていてもよい複素環式基を含む。
複素環は、安定な構造の生成をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子に結合していてもよい。このような複素環基の例としては、これらに限定されないが、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド及びチアモルホリニルスルホンを含む。
【0057】
用語「置換されてもよい」は、たとえば、アルキル、アリール、複素環に言及されている化学的部分が、無置換または、以下を含むが、これらに限定されない、1またはそれ以上の基で置換されていてもよいことを意味するために本明細書で使用されている。
低級アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロアリール、複素環、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルコキシアリール、カルボキシ、カルボアルコキシ、カルボキサミド、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、モノアルキルアミノスルフィニル、ジアルキルアミノスルフィニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、アルコキシスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヒドロキシスルホニル、アルコキシスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、モノアルキルアミノスルホニルアルキル、ジアルキルアミノスルホニルアルキル、モノアルキルアミノスルフィニルアルキル、ジアルキルアミノスルフィニルアルキル、など。
置換されていてもよい、上記の式I~Vの化学的部分は、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリール、複素環、およびヘテロアリールを含む。例えば、置換されてもよいアルキルは、プロピルおよび2-クロロ-プロピルの両方を含むであろう。
さらに、「置換されてもよい」はまた、記載された、1つまたは複数の指定された置換基が、単に単一の置換ではなく、複数の置換を有する実施形態も含む。たとえば、置換されてもよいアリールは、フェニルおよび3-ブロモ-4-クロロ-6-エチル-フェニルの両方を含むであろう。
【0058】
他に明確に示されない限り、本明細書中のアルキルおよびアリール基に対する全ての参照はまた、その置換形態も含む。
【0059】
上記式I中のR1で表されるA部分の置換基のうち、3位が、Hまたは置換されてもよい(C1-C3)-アルキルであり、そして、4位および5位が一緒になって置換されていてもよい6員芳香族環を形成する場合;そして、特に好ましい置換基は、3位のHまたはCH3であり、そして、4位および5位で縮合ベンゼン環は、ハロゲンおよび(C1-C3)-アルコキシで置換されていてもよい。
【0060】
上記、式II、IIIおよびIVにおける、R3で表される置換基のうち、好ましいものは、H、ハロゲンまたは(C1-C3)-アルコキシであり;および、特に好ましくは、Hおよび(C1~C3)アルコキシである。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、ヒトおよび動物の両方を含む。本明細書で使用する場合、用語「PCSK9」は、PCSK9突然変異体および変異体を含む、タンパク質PCSK9の任意の形態を意味し、PCSK9活性または機能の少なくとも一部を保持する。他に指示しない限り、ヒトPCSK9に特異的な参照によって、PCSK9は、天然配列PCSK9、たとえば、ヒト、ブタ、ウシ、ウマ、イヌおよびネコの、すべての哺乳動物種を指す。
1つの例示的なヒトPCSK9配列は、ユニプロアクセッション番号(Uniprot Accession Number)Q8NBP7(配列番号16)として見出される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「PCSK9機能のモジュレーター」は、PCSK9の生物学的活性または機能、および/またはPCSK9シグナル伝達によって媒介される、ダウンストリームの経路(LDLRのPCSK9媒介性のダウンレギュレーション、およびLDLの血中クリアランスの減少のPCSK9媒介の阻害を含む)を阻害することができる、低分子を指す。
「PCSK9機能のモジュレーター」は、PCSK9シグナル伝達(例えば、LDLR相互作用)および/またはPCSK9に対する細胞応答の誘発などを介して下流の経路を含む、PCSK9の生物学的活性を、ブロック、拮抗、抑制または低減する(著しく含む任意の程度で)化合物を含む。
本発明の目的のために、用語「PCSK9機能のモジュレーター」という用語は、それによって、PCSK9自体、PCSK9生物学的活性(LDLRとの任意の態様の相互作用、LDLRのダウンレギュレーションを媒介する、および、LDLの血中クリアランスの減少を阻害するその能力を含み、これに限定されない、を含む。)、または、生物学的活性の結果が、任意の測定可能な程度に、実質的に、無効化され、減少し、または中和される、以前に特定された、用語、タイトルおよび機能状態及び特徴の全てを含むことが、明確に理解されるであろう。
いくつかの実施形態において、PCSK9機能のモジュレーターは、PCSK9に結合し、そして、LDLRまたはその分泌とのその相互作用を阻止する。
他の実施形態において、PCSK9機能のモジュレーターは、そのチモーゲン(zymogen)を安定化させ、そして、自動プロセシングを阻止するために、PCSK9の活性部位に結合する。
さらなる実施形態では、PCSK9機能のモジュレーターは、LDLRのPCSK9媒介性ダウンレギュレーションを減少または遮断し;
LDL血中クリアランスのPCSK9媒介性の低下を阻害し;
培養肝細胞による、培地中のLDLクリアランスを増加し;
インビボでの、肝臓による、血液LDLを増加し;
スタチンを含む他のLDL低下薬に対する患者の感受性を改善し;
スタチンを含む他のLDL低下薬と相乗的であり;そして、
まだ同定されていない他の因子とPCSK9相互作用をブロックする。
PCSK9機能のモジュレーターの例は、本明細書中に提供される。
【0063】
本発明の方法において使用される化合物はまた、本発明の範囲内である、塩として投与することができる。薬学的に許容される(すなわち、非毒性の、生理学的に適合性の)塩が好ましい。
本発明の方法化の合物が、たとえば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、それらは酸付加塩を形成することができる。
これらは、たとえば、
・無機強酸(たとえば、硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸のような無機酸)で、
・強い有機カルボン酸(たとえば、非置換または置換(たとえば、ハロゲン)の炭素数1~4のアルカンカルボン酸(たとえば、酢酸)のような)で、
・飽和または不飽和ジカルボン酸(たとえば、オキザル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸のような)で、
・ヒドロキシカルボン酸(たとえば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸など)で、
・アミノ酸(たとえば、アスパラギン酸またはグルタミン酸またはリジンまたはアルギニンなど)で、または、
・安息香酸で、
・有機スルホン酸(たとえば、非置換であるかまたは例えばハロゲンによって置換された、(C1~C4)アルキルもしくはアリールスルホン酸(たとえば、メチルもしくはパラトルエンスルホン酸)で形成される。
対応する酸付加塩はまた、所望により、複数の塩基中心を有して形成される。
少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する、本発明の方法で使用される化合物はまた、適切な塩基との塩を形成することもできる。
このような塩の代表的な例には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩などの金属塩)、または、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ-、ジ-またはトリ-低級アルキルアミン(たとえば、エチル、tert-ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルまたはジメチル―プロピルアミン)、または、モノ-、ジ-またはトリ-ヒドロキシ低級アルキルアミン(例えばモノ、ジまたはトリエタノールアミン)のような、アンモニアまたは有機アミンとの塩を含む。
対応する内部塩もまた形成され得る。
【0064】
塩基性基を含む、本明細書に記載の化合物の好ましい塩としては、一塩酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩または硝酸塩を含む。
【0065】
酸性基を含む、本明細書に記載の化合物の好ましい塩には、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩および薬学的に許容される有機アミンが含まれる。
【0066】
本明細書に記載の方法において、混合物中または純粋なまたは実質的に純粋な形態のいずれかで使用され得る化合物のすべての立体異性体は、本発明の範囲内であるとみなされる。本発明の化合物は、R置換基の任意の1つを含む、任意の炭素原子に不斉中心を有することができる。
結果として、本発明の方法で使用される化合物は、エナンチオマーまたはジアステレオマーの形態またはその混合物で存在することができる。
そのような化合物の製造方法は、出発物質として、ラセミ体、エナンチオマーまたはジアステレオマーを利用することができる。ジアステレオマーまたはエナンチオマー生成物を調製する場合、それらは、従来の方法、例えば、クロマトグラフィー、キラルHPLCまたは分別結晶によって分離することができる。
【0067】
本明細書で使用される「ファーマコフォア」という用語は、場合によっては、特定の生物学的標的構造との最適な超分子(supramolecular)相互作用を確実にし、そして、生物学的標的の生物学的活性を誘発、活性化、ブロック、阻害、または調節するために必要な、立体的および電子的特徴のアンサンブル(supramolecular)を意味する。IUPAC、Pure and Applied Chemistry(1998)70:1129-1143を参照されたい。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「ファーマコフォアモデル」とは、定義された座標系における点の表現をいい、ここで、点は、リガンドおよび/または相互作用するポリペプチド、タンパク質、または規則正しい水分子の結合立体配座における、原子または化学部分の位置または他の特徴に対応する。
規則正しい水分子は、ポリペプチドまたはタンパク質の構造決定に由来するモデルにおいて観察可能な水である。
ファーマコフォアモデルは、例えば、リガンドまたはその一部の結合コンフォメーションの原子を含み得る。
ファーマコフォアモデルは、リガンドまたはその一部の結合コンホメーションおよびリガンドと相互作用し、そして、結合ポリペプチドまたはタンパク質由来の1つ以上の原子の両方を含み得る。
したがって、リガンドの結合コンホメーションの幾何学的特性に加えて、ファーマコフォアモデルは、例えば、原子または化学的部分の電荷または疎水性を含む他の特性を示すことができる。
【0069】
ファーマコフォアモデルは、リガンドの結合コンホメーション内の内部相互作用、または、リガンドと、例えば、ファンデルワールス相互作用、水素結合、イオン結合、および疎水相互作用を含む、ポリペプチド、タンパク質または他の受容体との間の相互作用を組み込むことができる。
【0070】
ファーマコフォアモデルは、リガンドの2つ以上の結合したコンフォメーションから得ることができる。
【0071】
本明細書で使用する「リガンド」という用語は、受容体のリガンド結合ドメインと相互作用し、そして、その活性を調節する任意の化合物、組成物または分子を指す。「リガンド」という用語はまた、それに直接結合することなく、受容体を調節する化合物を含み得る。
【0072】
本発明の方法の実施において、上記化合物は、そのまま、または活性化剤が由来する形態(プロドラッグのような)として、投与することができる。プロドラッグは、本明細書に記載の化合物の誘導体であり、その薬理学的作用は、生体内で、活性化合物への化学的または代謝過程による変換から生じる。本明細書で使用されている、用語「プロドラッグエステル」は、本発明の方法で使用されている、化合物の、一つ以上のヒドロキシルを、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエートなどを形成されるものとして、当業者に公知の手順を採用する、アルキル、アルコキシ、又はアリール置換のアシル化剤と反応させることによって形成される、エステルおよびカーボネートを含む。in vivoで、生物活性剤を提供するように、変換することができる任意の化合物(すなわち、式Iの化合物)は、本発明の範囲および精神内のプロドラッグである。様々な形態のプロドラッグが当技術分野で周知である。
【0073】
プロドラッグおよびプロドラッグ誘導体の包括的な説明は、以下に記載されている:
(a)医薬品化学の実践、カミーユ G.Wermuthら、Ch31(Academic Press、1996);
(b)プロドラッグの設計、H.Bundgaard編、(Elsevier、1985年);
(c)医薬品設計と開発の教科書、P.Krogsgaard・Larson及びH.Bundgaard編、Ch.5、113-191頁(Harwood Academic Publishers、1991)。
【0074】
本発明の方法の実施において使用される治療剤は、そのレシピエントにおいて、所望の治療効果を誘導するのに十分な量で投与される。したがって、本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、式の化合物のI―Vの化合物またはそのプロドラッグの1つまたはそれ以上の投与により治療可能な状態を、治療または予防するのに十分である治療薬の量を指す。
好ましくは、治療有効量は、PCSK9に関連する状態を治療するのに、すなわち、ほとんど検出可能な治療効果または予防効果または改善効果をもたらす、適切な量を指す。
この効果は、例えば、本明細書に記載の状態の治療または予防を含み得る。
【0075】
本明細書に記載されている化合物は、1日当たり体重1kg当たり、約0.01mg~約200mgの範囲の用量で投与することができる。1日当たり1回以上の適用において、1日当たり1~100、そして、好ましくは1~30mg/kgは、所望の結果を生じるのに有効であるべきである。例として、経口投与のための適切な用量は、1日当たり1~30mg/kg体重の範囲であるのに対して、静脈内投与のための典型的な用量は、1日あたり1~10mg/体重kg体重の範囲である。もちろん、当業者には理解されるように、実際に投与される投薬量は、治療される状態、レシピエントの年齢、健康状態および体重、もしあれば同時治療の種類、および、治療頻度に依存する。
さらに、有効な投薬量は、バイオアッセイにおいて、化合物の生物活性を測定し、そして、したがって、投与される適切な投薬量を確立するために、日常の経験的活性試験に基づいて、当業者によって決定され得る。
【0076】
本発明の方法において使用される化合物は、典型的には、上記の1日量を送達するように、1日1~4回投与される。しかしながら、本明細書に記載の化合物を投与するための正確なレジメンは、必然的に、治療されている個々の患者の必要性、投与される治療の種類、および主治医の判断に左右されるであろう。
一態様において、本発明は、高コレステロール血症、および/または脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、CVDまたは冠状動脈性心臓病の少なくとも1つの症状を治療または予防するために、循環PCSK9に拮抗するPCSK9の機能のモジュレーターの有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、個体における、高コレステロール血症、および/または脂質代謝異常症、アテローム性動脈硬化症、CVDまたは冠状動脈性心臓病の少なくとも1つの症状の治療または予防における使用のための、循環PCSK9に拮抗する有効量のPCSK9機能調節剤を提供する。
【0077】
一態様において、本発明は、個体に、高コレステロール血症、および/または脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、CVDまたは冠状動脈性心臓病の少なくとも1つの症状を治療または予防する、循環PCSK9に拮抗する有効量のPCSK9機能モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0078】
本発明の方法は、PCSK9への細胞応答の誘発(elicitation)のような、PCSK9シグナル伝達によって媒介される下流の経路(downstream pathways)を含む、PCSK9の生物学的活性をブロック、抑制、または低減する(顕著に低下させるを含む)任意の分子を指す、PCSK9機能のモジュレーターを使用する。
【0079】
PCSK9機能のモジュレーターは、任意の1つまたは複数の以下の特性を示す:
(a)PCSK9に結合する;
(b)LDLRとのPCSK9相互作用を減少またはブロックする;
(c)PCSK9の分泌を減少またはブロックする;
(d)LDLRのPCSK9媒介性ダウンレギュレーションを減少または遮断する;
(e)LDL血中クリアランスのPCSK9媒介性の低下を阻害する;
(f)培養肝細胞による、培地中のLDLクリアランスを増加させる;
(g)インビボで、肝臓による血中LDLクリアランスを増加させる;
(h)スタチンを含む他のLDL低下薬に対する、患者の感受性を改善する;
(i)スタチンを含む他のLDL低下薬と相乗的であり;そして
(j)まだ同定されていない他の要素を用いて、PCSK9相互作用をブロックする。
【0080】
一般に、本発明の方法で使用される化合物は、単独で、または1つまたはそれ以上の他の治療剤との組み合わせで、当該分野で公知の任意の許容可能な経路を使用することによって、PCSK9機能の調節を達成するために投与することができる。
したがって、活性薬剤は、経口、バッカル、静脈内または動脈内注入、筋肉内、腹腔内、髄腔内または皮下注射によるような非経口投与、リポソーム媒介送達、直腸、膣内によって、吸入または吹送、経皮的によってまたは耳内送達によって、投与することができる。
【0081】
経口投与される投薬単位は、錠剤、カプレット、糖衣錠、丸薬、半固体、軟質または硬質ゼラチンカプセル、水性または油性溶液、エマルジョン、懸濁液またはシロップの形態であり得る。
非経口投与のための適切な剤形には、注射可能な溶液または懸濁液、坐剤、粉末製剤(例えば、微結晶またはエアロゾルスプレー)が含まれる。活性薬剤はまた、従来の経皮送達システムに組み込むこともできる。
【0082】
本明細書で使用される表現「生理学的に適合性の担体媒体」は、所望の特定の剤形に適した、任意のおよび全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、表面作用剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤、増量剤などを含む。
【0083】
レミントン:薬学の科学と実践、20版(A.R.Genaroら、パート5、医薬品製造、669から1015頁(リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス、ボルチモア、MD/フィラデルフィア、PA)(2000年))には、医薬組成物を製剤化するのに使用される種々の担体およびその調製のための公知の技術が開示されている。
【0084】
任意の従来の薬学的担体媒体が、望ましくない生物学的効果を生じさせるか、そうでなければ、このような化合物を含む製剤の任意の他の成分と有害な様式で相互作用するなどして、本発明で使用されるPCSK9モジュレーターと不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0085】
硬質および軟質カプセルを含む、固体剤形の製造のために、治療剤は、乳糖、ショ糖、グルコース、ゼラチン、麦芽、シリカゲル、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩、乾燥脱脂乳、植物油、ペトロローム、動物油または合成油、ワックス、脂肪、ポリオールなどの医薬的に不活性な無機または有機賦形剤などと混合されても良い。
液体溶液、エマルジョンまたは懸濁液またはシロップの製造のために、水、アルコール、水性生理食塩水、水性デキストロース、ポリオール、グリセリン、脂質、リン脂質、シクロデキストリン、植物油、ペトロローム、動物油または合成油などの賦形剤を使用することができる。
坐剤については、植物油、ペトロローム、動物油または合成油、ワックス、脂肪およびポリオールなどの賦形剤を使用することができる。
エアロゾル製剤では、酸素、窒素および二酸化炭素のようなこの目的に適した圧縮ガスを使用することができる。
【0086】
医薬組成物または製剤はまた、1つまたは複数の、制限なしに、防腐剤、安定剤(たとえば、紫外線安定剤)、乳化剤、甘味料、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤、コーティング剤および抗酸化剤を含む添加剤を含んでいても良い。
【0087】
本発明はさらに、活性薬剤の投与のための、制御放出、持続放出または徐放治療剤形を含み、これには、活性薬剤の適切な送達系への組み込みが含まれる。
この投薬形態は、血流中の活性薬剤の有効濃度が長期間にわたって維持され、血液中の濃度が比較的一定に維持され、治療結果を改善し、および/または副作用を最小限にするように、活性薬剤の放出を制御する。さらに、放出制御システムは、活性薬剤の血漿中濃度の変動を最小限に抑えることができる。
【0088】
本発明の方法を実施するのに使用される医薬組成物において、活性薬剤は、少なくとも0.5の量で存在していてもよく、そして、存在する場合には、担体媒体および/または補助活性薬剤を含む、組成物の総重量に基づいて、一般に95重量%以下である。
好ましくは、活性薬剤の割合は、組成物の30~90重量%の間で変動する。
【0089】
本発明を実施する際に使用するための化合物は、上記式I-IVの化合物を含む。より好ましいのは、
図2に示す化合物である。最も好ましいのは、
図3に示す化合物である。
【0090】
本明細書に記載の化合物のいくつかは、Life Chemicals(SBC-115,202)、Enamine(SBC-115,270およびSBC-115,271)、ChemBridge(SBC-115,337)およびPrinceton Biomolecular(SBC-115,341)などの商業的供給源から得ることができる。
【0091】
他の好ましい化合物およびほとんどすべての最も好ましい化合物は、商業的供給元から入手可能ではなく、有機合成の当業者に公知の方法を用いて合成された。
【0092】
本発明の方法は、通常、本明細書に記載の化合物および/または組成物による治療を受ける対象においてもたらされる治療または予防効果を決定するための医学的フォローアップを含む。本明細書に記載の化合物の活性は、実験的に実証されている。
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。これらの実施例は、説明の目的のみのために提供され、決して本発明を限定するものではない。
【0093】
実施例1
LDLR/PCSK9結合の試験
商業的供給源から取得をした化合物の試験は、PCSK9/LDLRの相互作用を阻害するそれらの可能性のために、私たちの結合アッセイで行った。最初のスクリーニングは、100μMの化合物を用いて行った。各化合物を、3つの結合反応混合物に加え、上記のようにアッセイした。
スクリーニングから、いくつかの化合物が、PCSK9のプロセッシングおよび分泌に影響を及ぼさなかった(下記の実施例2参照)が、対照と比較してLDLRアップレギュレーションに影響を及ぼすことが確認された(以下の実施例3参照)。
100μMで、>20%の阻害を有する式Iの例示的な、2-カルボキシアニリドインドールおよび2-カルボキシアニリドピロールを
図1に示す。構造的に関連する2-カルボキシアニリドベンゾフラン類(式II~IVの化合物)も55個も入手した。
PCSK9/LDLR相互作用を阻害した化合物を選択し、そして、100μM~0.01nMの範囲の異なる化合物濃度を用いて分析した。
【0094】
最も強力なベンゾフラン化合物は、SBC-115,270、SBC-115,271、SBC-115,337およびSBC-115,202であり、それぞれ、IC50は、7、7.3、0.5、および9.5μMであった(
図4)。
この予備的なSARに基づいて、SBC-115,337近傍の追加の34種類の化合物を設計し、そして、合成し、そして、化合物を
図4に記載されたように我々の結合アッセイで試験した。
スクリーニングから、一連のベンゾフラン化合物が、IC50が>10μMで、しかし、</=50μM未満を有すると決定された(
図2)。
さらにより強力な化合物は、IC50 <10μMを有した(
図3)。
図11および表1は、これらの化合物のうち最良の10種のIC50を示す。
低い、またはサブマイクロモルの効力を示す化合物を、複数の異なる細胞ベースのアッセイにおいてさらなる評価のために選択した。
【0095】
実施例2
分泌されたPCSK9のテスト
上記の化合物による、PCSK9の存在下における、組換えLDLRのレベルの増加は、LDLRへのPCSK9の結合を阻害すること、または、PCSK9のプロセッシングおよび分泌を阻害することによってのいずれかの原因であり得る。
これらの化合物が、PCSK9の合成、プロセシングまたは分泌を妨げる可能性を排除するために、本発明者らは、上記のような、PCSK9のプロセッシングおよび分泌に対するこれらの化合物の効果を試験した。
HEK-293T細胞を、10%ウシ胎仔血清培地を含むDMEM中の96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。
細胞を、Lipofectamine-LTXを用いて、cDNA構築物で一過的にトランスフェクトした。
化合物(25μM)またはビヒクルを加え、続いてさらに43時間インキュベートした。
細胞性PCSK9、分泌型PCSK9、および細胞生存性を、LAS-4000(GE)を用いて、ウェスタンブロット分析、画像化、および定量し、PCSK9の分泌について分析した。
【0096】
選択された4つの化合物の結果を
図5に示す。
これらの全ての化合物は、細胞または培地中にいずれかにおいて、PCSK9の合成、プロセシングおよび分泌に影響を示さなかった(
図5)。
【0097】
実施例3
LDLRアップレギュレーションの試験
本発明者らは、HEK-293細胞における、PCSK9とLDLR DNAとの同時発現が、細胞内LDLRの発現レベルの低下をもたらすことを示す、独自の組換えアッセイを使用した。
本発明者らは、サイトメガロウイルスプロモーターエンハンサー(pCMV-LDLR)の制御下で、ヒトLDLRの発現ベクターを構築した。
【0098】
さらに、PCSK9(pCMV-PCSK9-FLAG)を含む構築物は上記の通りであった。これらの構築物を用いて、哺乳動物細胞を一過性にトランスフェクトし、そして、細胞溶解物および上清の両方を、抗PCSK9またはLDLR抗体を用いたSDS-PAGEおよびイムノブロット分析に供した。
ブロットからのデータは、pCMV-PCSK9-FLAGのみでトランスフェクトされた細胞が、未処理(unprocessed)の(細胞)および処理した(processed)(培地)PCSK9の両方を発現することを示した(
図6)。
【0099】
pCMV-LDLRのみでトランスフェクトされた細胞は、細胞において、LDLRの発現を示した(
図6)。
【0100】
ただし、pCMV-PCSK9-FLAGとpCMV-LDLRの両方でトランスフェクトされた細胞は、細胞内のLDLRバンドの消失を示し(
図6)、それは、PCSK9の存在が、LDLRの分解を齎すか、又は分解経路にそれをシャペロンする(chaperone)というさらなる証拠を提供する。
【0101】
後者の細胞にPCSK9プロセッシングの阻害剤を添加すると、LDLRの分解が減少し、そして、ゲル上の160Kダルトンバンドの出現がもたらされる。このアッセイを用いて、LDLRの分解を低下させる能力について、自らの化合物を試験した。HEK-293細胞をこのアッセイに使用した。それらを、96ウェルプレートで一晩増殖させ、そして、LDLR/PCSK9でトランスフェクトした。
【0102】
DMSOに溶解した化合物またはビヒクルを培養培地に添加し、そして、24~48時間インキュベートし、細胞を溶解した。細胞溶解物を、上記のイムノアッセイを使用した定量に供した。
【0103】
図7は、4つの化合物の細胞内組換えLDLRのアップレギュレーションに対する効果を示す。化合物SBC-115,270、SBC-115,271、SBC-115,337およびSBC-115,202は、1.2μMで、5乃至10倍のアップレギュレーションを示した。
【0104】
試験は、これらの化合物は、HepG2細胞において内因的に発現されたLDLRをアップレギュレートすることが可能であることを確認した。
【0105】
PCSK9でトランスフェクトされたHepG2細胞を、ウェル当たり30,000細胞の密度で、96ウェルプレートで培養した。翌日、選択されたスクリーニング化合物またはビヒクルで、細胞を処理する。細胞を、48時間インキュベートし、次いで、LDL受容体-ポリクローナル抗体を用いて定量し、そして、上記のように分析した。
【0106】
図8のデータは、これらの化合物が、DMSOの同じ体積で処理した細胞と比較して、4-8倍のLDLRのアップレギュレーションで、LDLRのレベルが増加したことを示す。
【0107】
実施例4
in situでの、HepG2細胞におけるDil-LDLの取り込み
これらPCSK9アンタゴニストが、機能的LDLRをアップレギュレートすることを確認するために、我々は、HepG2細胞における、蛍光Dil-LDLの取り込み強化するために、これらの化合物の能力を試験した。簡潔には、PCSK9でトランスフェクトしたHepG2細胞(
図4)を播種し、そして、一晩増殖させた。
化合物を、細胞に添加し、続いて、蛍光DiI-LDLを追加した。細胞を十分に洗浄し、そして、細胞によって取り込まれた蛍光Dil-LDLを、シナジー2プレートリーダーを用いて測定した(
図9及び
図12)。
図9に示すように、本発明者らの化合物(SBC-115,337、SBC-115,270、SBC-115,271およびSBC-115,202)は、1.2μMで、HepG2で処理した細胞に取り込まれた蛍光標識LDLの増加を示した。
我々の結合研究(表1)由来の追加で選択された化合物の更なる分析は、4つの化合物(SBC-115,418、SBC-115,424、SBC-115,432およびSBC-115,433)が、1.2uMの化合物濃度で、Dil-LDL摂取量の有意な増加を示したことを示した(
図12)。
【0108】
これらの化合物は、インビボ研究においてさらなる分析のために選択された。
【0109】
実施例5
LDLRアップレギュレーションの試験
DMSOの同じ体積で処理した細胞と比較して、SBC-115,418、SBC-115,424、SBC-115,432及びSBC-115,433が、有意にLDLRのレベルの上昇を示したことを検証するために、我々は、我々の組換えLDLRアップレギュレーションアッセイ(実施例3)を使用した(
図13)。
【0110】
実施例6
分泌されたPCSK9のテスト
図14に示された、4つの選択された化合物(SBC-115,418、SBC-115,424、SBC-115,432及びSBC-115,433)の組換えLDLRのレベルの上昇は、PCSK9の合成および分泌に対する効果に起因するのではなく、むしろ、LDLR/PCSK9の相互作用に対するその効果に起因する(実施例2参照)。
【0111】
実施例7
細胞生存率の試験
内因的に発現されたLDLRをアップレギュレートする全ての化合物は、in situにおける細胞生存率のためのテストに使用された。HEK-293T細胞またはHepG2細胞は、10%ウシ胎仔血清を含む細胞培地中の96ウェルプレートに播種し、そして、37℃で一晩インキュベートした。化合物(25μM)を24時間後に細胞に添加し、そして、さらに48時間インキュベートした。
Resazurin(Sigma 199303)およびSynergy-IIプレートリーダーを用いて、細胞生存率をアッセイした。細胞毒性を示した化合物は除外した。
【0112】
実施例8
動物モデルにおける有効性のテスト
SBC-115,337を、雄マウス(C57BL/6マウス)における有効性について試験した。マウスを、ケージあたり4匹の動物として、温度(20~24℃)、湿度(60~70%)、および交互に12時間の明/暗サイクルの気候制御条件下で飼育した。
マウスを、
図10に示すように5つのグループに分けた。1つのグループには、市販の固形飼料(Prolab RMH3000、PMI飼料、ミズーリ州セントルイス)を、ネガティブコントロールとして与え、他の4つのグループには、脂肪から、カロリーの60%を提供する、高脂肪飼料(TD.06414)を与えた。
【0113】
水は自由に与えた。LDLのレベルをモニターするために、血漿を週1回収集した。高脂肪食を与えて4週間後、平均LDLレベルが、異なる群の間で等しくなるように、マウスをいくつかの群のうちの1つに無作為に割り当てた。高脂肪食を与えた4つの群のマウスのうちの1つはビヒクルで処置し、ポジティブコントロールとして用いたが、第2の群は4日間3mg/kgのSBC-115、337で毎日処置した。
高脂肪食餌を与えた第3群のマウスを、ビヒクルおよびリポポリサッカライド(LPS)(5mg/Kg)で処理し、リポポリサッカライド(LPS)ポジティブコントロールとして供した。
一方、第4群は、毎日、3mg/kgのSBC-115,337+リポポリサッカライド(LPS)(5mg/kg)で、皮下に4日間投与した。
血液試料(75μl)を、薬物投与の4日後に、チューブ当たり、2USP単位のヘパリンアンモニウムを含むヘパリン化毛細管(Carolina、Burlington、NC)を介して、後眼窩静脈叢から回収した。室温で、5分間、遠心分離(5,000×g)によって直ちに、血漿を分離し、次いで、脂質プロフィールについてアッセイするまで、-80℃で保存した。
血漿コレステロール、LDL-C、HDL-C、およびトリグリセリドレベルを酵素的に測定した。
【0114】
我々のデータは、SBC-115,337が、高脂肪食を給餌し、そして、リポポリサッカライド(LPS)で処理または未処理のマウスの、LDL-Cのレベルを低下させたことを実証した。
【0115】
図10は、SBC-115,337を用いて得られたデータを示し、高脂肪食動物のレベルと比較して、4日後のLDL-Cレベルの20~25%減少を示す。同様に、SBC-115,418を上記のようにマウスで試験した。C57BL/6マウスを、それぞれ5匹の4群に分けた:2つのベースライン群、PBSを受けた対照群、および5日間、毎日10mg/kgの経口投与を受けたSBC群。
【0116】
化合物の注射前1日目に血漿を採取した。5日目に再び血漿を採取した。血漿LDL-Cレベルは、酵素的に測定した。
【0117】
(A)LDL-Cの実際の変化を、mg/dLで表した。そして、
(B)5日間、SBC-115,418を投与後、LDL-Cの%減少を表す。
【0118】
我々のデータは、SBC-115,418が、高脂肪食を与えられたマウスで、LDL-Cレベルを低下させることを実証した。
図15Aおよび
図15Bは、SBC-115,418で得られたデータを示し、高脂肪食餌動物レベルに対して、10mg/kgのSBC-115,418を、毎日、経口投与した5日後のLDL-Cレベルの20~25%の低下を示す。
【0119】
前述の明細書は、本発明が関係する技術水準を示すために提供される特定の刊行物の引用を含む。引用された刊行物の各々の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。以上、本発明の特定の実施形態について記載および/または説明してきたが、当業者であれば、前述の開示から様々な他の実施形態が明らかであろう。
【0120】
したがって、本発明は、説明および/または例示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、かなりの変更および修正が可能である。
【0121】
「含む“comprising”」という用語は、包括的であるかまたは無制限であることを意図しており、いかなる列挙されていない要素、方法、ステップまたは材料を排除するものではない。「からなる“consisting of”」という用語は、特許請求の範囲で特定されたもの以外の任意の要素、工程または材料を排除し、後者の場合、通常、特定の材料と関連する不純物を排除する。
「から本質的になる“consisting essentially of”」という用語は、特許請求の範囲を、特定の要素、工程または材料、ならびに特許請求の範囲に記載された発明の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本発明を具体化するすべての組成物およびその使用方法は、代替の実施形態において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という遷移用語のうちのいずれかによってより具体的に定義することができる。
【0122】
参考文献
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