(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】より多くのプロピレンを生成するためのメソポーラスZSM-22
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20220701BHJP
C10G 11/05 20060101ALI20220701BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B01J29/80 M
C10G11/05
B01J35/10 301H
(21)【出願番号】P 2018567149
(86)(22)【出願日】2017-06-24
(86)【国際出願番号】 US2017039158
(87)【国際公開番号】W WO2017223546
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-04
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カノス,アベリノ・コルマ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス-トリゲロ,ホアキン
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-542929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 11/05
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料からプロピレンを製造する方法であって、
(a)微粒子を含むFCC触媒組成物を提供する工程であって、前記微粒子が前記微粒子の重量を基準として5~50重量%の範囲のZSM-22を含み、前記ZSM-22がそのメソ多孔質度を増加させるように
塩基性溶液で処理が施されている、工程と、
(b)400℃~650℃の範囲内の1つ以上の温度で、0.5~12秒の範囲の滞留時間にて、前記FCC触媒組成物を前記炭化水素供給原料と接触させる工程とを含み、かつ、前記ZSM-22
の処理は該ZSM-22のメソ多孔質容積(cm
3/g)を
少なくとも1.5倍に増加させる、前記方法。
【請求項2】
前記処理されたZSM-22は、V
mesopore(cm
3/g)として測定したメソ多孔質度が少なくとも0.075cm
3/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FCC触媒組成物が、前記ZSM-22を含む少なくとも1種の第1の微粒子と、ZSM-5ゼオライトを含む少なくとも1種の第2の微粒子の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記FCC触媒組成物が、前記ZSM-22と同一の粒子中にZSM-5を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)における接触を流動床反応器中で行う、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素、例えば原油の処理から得られる炭化水素からなる供給材料を高いプロピレン率を有する混合物に分解または変換するための方法における、メソポーラスZSM-22ゼオライトの使用に関する。更に、本発明は、流動接触分解(FCC)方法の分野に関し、変性ZSM-22のような、メソ多孔質度のより高いゼオライトに基づく添加剤の調製及び使用に関する。より詳細には、本発明は、FCC装置におけるプロピレンの製造を改善する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(FCC)は、管状反応ゾーンまたはライザ内にて、炭化水素を微粒子材料で構成される触媒と接触させることによって行われる。FCCプロセスに最も一般的に供される供給原料としては、概して、石油精製において減圧塔のサイドカットから得られる流体、いわゆる重質減圧軽油(HVGO)、または常圧塔の底部から得られる重流体、いわゆる常圧残油(RAT)、あるいはこれらの流体の混合物が挙げられる。前記流体は典型的な密度が8°APIから28°APIの範囲にあるため、その組成を根本的に改質し、経済的な価値の高いより軽質の炭化水素の流体に変換する、接触分解方法などの化学プロセスを施す必要がある。
【0003】
分解反応中に、反応の副生成物である相当量のコークスが触媒上に析出する。使用済み触媒は、コークスを触媒から燃焼除去する再生ゾーンに導かれる。燃焼によりコークスを排除することによって、接触分解反応の熱的な必要条件を得るのに十分な量の、触媒活性の回復と熱の放出を可能にする。
【0004】
最初の概念から、FCCプロセスは本質的に高オクタン価ガソリンを対象としており、LPG製造も担っている。生成される中間蒸留物(LCO)は本質的に芳香族であり、この事実によってこの中間蒸留物をディーゼルプールに取り込みにくくなっている。しかしながら、現在及び将来のシナリオは、ガソリンの消費を低減し、ディーゼル油の需要を増加させることを示している。流動接触分解装置は、プロピレン製造においてますます重要な役割を果たしている。
【0005】
FCCの実施においては、2つの方法で軽質オレフィンの選択性を高めることができる。第1の方法は、反応温度を上昇させることである。これにより、熱分解の寄与を高め、軽質生成物の形成を増加させることができる。例えば、DCC(Deep Catalytic Cracking)DCCとよばれる特定のタイプのFCCプロセスでは、より高い温度及びより多くの蒸気を使用する。しかしながら熱分解はそれほど選択的ではなく、「湿式ガス」(H2及びC1~C4生成物を含む)中の水素、メタン、エタン及びエチレンなどの、比較的炭素数の小さい生成物を大量に生成する。湿式ガスの圧縮により、しばしば製油所の稼働が制限される。
【0006】
第2の方法は、ZSM-5含有添加剤などの、オレフィン選択性ゼオライト含有添加剤を添加することである。従来の添加剤は、通常、一次分解生成物(例えばガソリンオレフィン)をC3オレフィン及びC4オレフィンに選択的に変換するリン活性化ZSM-5を含む。リンによる活性または選択性の改善によって、ZSM-5の効率が高められることが知られている。例えば、欧州公開特許公報第511013号には、ZSM-5をリンで処理してプロピレン選択性を高めることが記載されている。また更に、米国特許第5,472,594号には、ゼオライトYを含有する触媒組成物及びZSM-5などのリン含有中孔ゼオライトを含む添加剤を用いて、炭化水素原料をC4/C5オレフィンの収率のよ
り高い生成物に変換する方法が記載されている。また、モービル社のWO98/41595号には、ゼオライトYのような細孔径が大きいモレキュラーシーブを含む触媒組成物と、ゼオライトYを含有するベース触媒と混合したリン含有ZSM-5を含む添加剤を使用して、C3~C5オレフィンの収率を向上させる炭化水素原料の接触分解方法が記載されている。同様の方法について米国特許第5,456,821号にも記載されている。WO94/13754号には、細孔径が大きいモレキュラーシーブを含有する触媒組成物と、場合により1.5~5.5重量%のリン元素を含有する特定のZSM-5を含有する添加剤とを使用した、同様の方法が記載されている。また、米国特許第5,521,133号には、噴霧乾燥の前にZSM-5及びカオリンスラリーにリン酸を注入することによってZSM-5添加剤を調製することが記載されている。
【0007】
欧州特許第1445297号には、超安定化とされる市販のUSYゼオライトよりも減圧軽油の変換活性が高くかつプロピレン選択性に優れている、非常に開いた構造を有する三次元の大細孔ゼオライトであるゼオライトITQ-21を使用することが記載されている。WO2008/014920号には、超大細孔の18MR(12.2Å)及び10MRのチャネルが相互連結した平均細孔を有するITQ-33ゼオライトにより、ディーゼル及び軽質オレフィン、特にプロピレンを、高収率で同時に生成することが示されている。しかしながら、これらの新規材料の実際的な応用は、その高い製造コストによって限定されている。
【0008】
FCCにおけるプロピレンの生成は、反応器の温度を上昇させるなど、装置の操作条件を変更することによって高めることができる。しかしながら、この解決策では、ガス、特に望ましくない乾燥ガスをかなり増加させてしまう。FCC触媒に、添加剤としてゼオライトZSM-5を使用することにより、オレフィンC3及びC4の増加につながる(例えば、US-3758403、US-3769202、US-3894931、US-3894933、US-3894934;US-3926782、US-4309280、US-4309279、US-437458、及びBuchanan,JS and Adewuyi,YG,Applied Catalysis: A General,134,247(1996),Madon、RJ,Journal of Catalysis 129(1)、275(1991)を参照)。
【0009】
したがって、プロピレンの生成量を増加させるために選択的であり、芳香族分の生成が少なくし、費用対効果の高い新規な触媒添加剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、更なるメソ多孔質度を有することをその構造の特徴とする変性ゼオライト材料を使用した、有機化合物の分解方法、好ましくは石油留分または合成炭化水素からの分解方法について記載する。ZSM-22はメソ多孔質度を与えるように変性されている。最適な構造は、芳香族化を伴わないオレフィンの分解反応を実施するのに十分な空間を与える。これは、単分子と二分子分解の比率と、分解して水素移動することの間の妥協点を意味する。メソ多孔質度が増加したZSM-22は、次に、FCC方法において添加剤として利用される。
【0011】
本発明の、これらの実施形態及び更に他の実施形態、利点及び特徴について、添付の特許請求の範囲を含む以下の詳細な説明からさらに明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】0.3gのメソ-ZSM-22と1gの市販のZSM-5の、520℃、30秒でのTOSにおけるC5-C6-C7オレフィンの分解についてのプロピレン及び芳香族選択性プロットを示す図である。
【
図2】FCC+市販ZSM-5と、FCC+市販ZSM-5+メソ-ZSM-22の、520℃、30秒でのTOSにおけるC5-C6-C7オレフィンの分解についてのプロピレン及び芳香族選択性プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に断りのない限り、本明細書で使用する重量パーセント(重量%)の記載は、特定の物質または物質の特定の形態が構成要素または構成成分である製品の全重量を基準とした重量パーセントとする。更に、本明細書で何らかの方法で好ましい工程または構成成分または要素を記述する場合、それらは本開示の最初の日付の時点で好ましいものであり、当然のことながら、このような好ましい態様(複数可)は、当該技術分野における所与の状況または将来の発展に応じて変化し得ることを理解されたい。
【0014】
重質炭化水素供給原料を、軽質生成物、例えばガソリンや蒸留範囲留分に変換するための最も好ましい方法の1つが流動接触分解(FCC)である。しかしながら、接触分解プロセスから得られる生成物スレート中の低級オレフィン、LPG、プロピレン及び他の軽質オレフィン収率(C2~C4炭化水素)の収率を高める必要性が高まっている。本発明は、特定の触媒組成物によって、炭化水素供給原料を供給炭化水素より小さい分子量に変換した変換生成物炭化水素化合物、例えば高プロピレン留分及び増加したLPGなど、を生成する分解方法において使用することを特に意図した添加剤に関する。
【0015】
本発明は、LPG及び軽質オレフィンの生成を増加させ、低芳香族性の中間蒸留物を最大限にして、これらをディーゼル油プールに組み込むことを目的とした、厳格性の低い運転条件によるFCC装置用の流動接触分解(FCC)を提供する。前記方法は、オリジナルの触媒系を使用することによって、従来技術に見られる方法とは異なるものである。更に、本発明は触媒系のための添加剤を提供し、その調製方法を以下に開示する。前記触媒は軽質オレフィンに対して選択的なFCC触媒、すなわちZSM-22タイプのゼオライトのような、軽質オレフィンに対して選択的なゼオライトを含むFCC触媒である。
【0016】
本発明で用いる主なゼオライトは、典型的にはZSM-22である。ZSM-22は、キャビティまたは交差のない10員環によって画定されたチャネルの一次元系を有するTON構造のゼオライトである。典型的には、ZSM-22は乾燥基準で約5~60重量%の量で用いる。
【0017】
オレフィンを分解すると、芳香族化及び水素移動反応が制限される場合にプロピレンが最大になることが判明した。このように、一次元の10MRゼオライトの構造は芳香族化合物及びパラフィンを生成する二分子反応を可能にするのに十分な空間を示さない。しかしながら、一次元の10MRゼオライトは、制限的な拡散を示すことがあり、ZSM-5のような三次元10MRゼオライトと比較して活性が低くなることがある。全体の活性を低下させてしまう一次元構造の拡散の問題により、所望の活性を得るためにより多くの量のゼオライトが必要となる。しかしながら、ZSM-22内のメソ多孔質度が増加することを利用して、これらの欠点を克服することができる。
【0018】
メソ多孔質度は、当該技術分野で公知の様々な方法によって得ることができる。結晶子のサイズを低減させる合成手順によって得ることができる。この場合、チャネルの長さが短くなり、反応物及び生成物が自由に拡散し、二次反応が減少する。当該技術分野で述べられているように、合成する代わりに、NaOH処理によって合成後にメソ多孔質度を発現させることもできる。本発明の目的のためには、処理後のZSM-22のVmesopore(cm3/g)が約0.075cm3/gより大きいことが好ましく、より好ましくは約0.100cm3/gより大きい。更に、メソ多孔質度を生成する処理により、好ま
しくはVmesopore(cm3/g)を少なくとも約1.5倍に、より好ましくはVmesopore(cm3/g)を少なくとも約2倍に増加させることが好ましい。
【0019】
触媒的な観点からは、その効果は合成による結晶の大きさの低減と非常に類似している。「脱シリカ」とも呼ばれるメソ多孔の生成手順は、水性塩基性条件のpH及び中程度の温度で行われる。シリカが溶解し、そのサイズが(溶解しない)Alの含有量と、温度と、時間及び添加剤の添加によって決定するメソ細孔を生成する。続いて中程度の酸処理によって、メソ細孔中にデブリとして堆積した過剰のアルミニウムを除去する。
【0020】
塩基性媒体中で制御された脱シラン化は、経済的で効果的なプロセスとして文献に記載されており、ゼオライトミクロ多孔質構造中に更なるメソ多孔質度を生成する(Groen et.al.,Micro.Meso.Mater.69(2004)29、Perez-Ramirez et.al.,Chem Soc Rev.37(2008)2530参照)。WO2008/147190号には、アルカリ抽出シリコンメソ多孔質度を生成する処理によってメソポーラスゼオライトモルデナイトを調製する方法が記載されている。アルカリ処理は、単独で、または合成後処理と組み合わせて使用することができる。例えば、連続的に塩基処理及び酸処理を行うことは、ゼオライト材料の触媒性能を高めるために効果的となり得る。塩基処理によりメソポアを生成するとともに、酸処理によりアルミニウム豊富な余分なネットワーク種を溶解し、試料の表面酸性度を変性する(例えば、Fernandez et.al.,Chem.Eur J 16(2010)6224、Verboekend et.al.J.Phys Chem A 115(2011)14193、Catal.Technol.1(2011)1331参照)。
【0021】
ZSM-22前駆体材料は、当該技術分野で既知である通りに製造することができる。例えば米国特許第7,094,390号に記載されている。典型的なZSM-22試料は、長さ約2ミクロンのロッドまたはニードルのSEM形態によって示されるが、当業者に公知のサイズであり得る。Si/Al比は25~75の範囲にあり、酸性度はZSM-22-Cにむけてより高く変化し、ピリジン吸着によって測定されるブレンステッド酸度がより高くなる。ZSM-22の特性評価は下記の通りである。
【表1】
【0022】
典型的な一例として、0.2MのNaOH溶液を用いて、液体対固体比33:1にて65℃で30分間攪拌しながらZSM22-Cに塩基処理を施した。pH=7になるまで洗浄及び濾過を行った後、固体をシュウ酸(1gのゼオライト2.55のシュウ酸25.5gの水)の溶液に70℃で2時間再懸濁し、その後、洗浄、濾過及び375℃で3時間の焼成を行った。試料をメソポーラス-ZSM-22とした。下の表に示すように、メソ細孔体積が2倍に増加したと同時にミクロ多孔質度が保持されており、結晶構造も維持されて
いることが示されている。最終的なSi/Al比は元の試料に非常に近い値であった。細孔の体積は、当該技術分野において知られているようにN2吸着を用いて測定した。
【表2】
【0023】
オレフィンの分解においてメソポーラス試料を試験したところ、このメソポーラス試料はプロピレンに対してより高い収率を有し、より優れた特性を示した。親試料と比較して得られた変換率は同様であるにもかかわらず、オレフィンの分布は熱力学的平衡に近く、より高いC3/C4比、及びより高いエチレン収率を備えていた。
【0024】
以下の結果は、メソ多孔質度がより高いZSM-22を用いて得られるプロピレンの収率が、ZSM-5の場合よりも高いことを示している。ZSM-5ベースの触媒と比較してプロピレンの量が多いことは、芳香族化合物に至る二分子反応を制限するZSM-22の一次元チャネルで形成される芳香族化合物類の量の減少に起因すると考えられる。実際に、ZSM-5で得られた芳香族化合物類の収率は、ZSM-22で得られた収率の2倍以上である。また、ZSM-5中よりも拡散が制限されているZSM-22での、低減したイソブタン及びより少量のイソブテンにより、プロピレンへの上限が高いC2~C6オレフィンの熱力学的分布が変化する。
【0025】
この結果から、メソ多孔質度がより高いゼオライトZSM-22は、プロピレンを増加させる良好な特性を示す。しかしながら、メソ多孔質度の増加にともない、水熱安定性を損なわないように注意しなければならない。拡散が制限されるため、ZSM-22はZSM-5よりも多く添加する必要がある。換言すれば、最適な構造により、芳香族化を伴わないオレフィンの分解反応を実施するのに十分な空間がもたらされることになろう。これは、二分子分解に対する一分子の比の妥協点を意味する。空間が制限されていると、分解はより遅くなり、単分子になり、ペンテン類はエチレンに対して高い収率となる。他方、空間が多すぎる場合、チャネルまたはキャビティを横切ることによって、分解は二分子(オリゴマー化-分解)となりはるかに速いが、この場合も、環化反応、芳香族化反応及び水素移動によってプロピレンの収率を低下させてしまう。このように、メソ多孔質度のより高いZSM-22が有望なゼオライト構造として示される。
【0026】
本発明のメソポーラスZSM-22を添加剤として使用する場合、またはFCC触媒内で使用する場合、他のオレフィン選択性ゼオライトや他の材料と併用することができる。例えば、FCC触媒の一部として、典型的なYゼオライト化合物と組み合わせることができる。別の例として、ZSM-22をZSM-5と併用した場合、個々の成分の場合よりも、プロピレンの生成量の増加が見られる。適切なオレフィン選択性ゼオライトとしては、MFI型ゼオライト、ZSM-11などのMEL型ゼオライト、ZSM-12などのMTW型ゼオライト、MCM-22、MCM-36、MCM-49、MCM-56などのMWW型ゼオライト、及びゼオライトベータなどのBEA型ゼオライトが挙げられる。MFI型ゼオライトが好ましい。MFI型ゼオライトはATLAS OF ZEOLITE STRUCTURE TYPES, W.M.Meier and D.H.Olson,3rd revised edition(1992),Butterworth-Heinemannに定義されたものであり、ZSM-5、ST-5、ZSM-8、ZSM-11、シリカライト、LZ-105、LZ-222、LZ-223、LZ-241、L
Z-269、L2-242、AMS-1B、AZ-1、BOR-C、ボラライト、エンシライト(Encilite)、FZ-1、NU-4、NU-5、T5-1、TSZ、TSZ-III、TZ01、TZ、USC-4、USI-108、ZBH、ZB-11、ZBM-30、ZKQ-1B、ZMQ-TBなどが挙げられる。更に、メソポーラスZSM-22は、当該技術分野において知られているリン化合物の使用によって安定化することができる。用いる場合、追加のゼオライトは約2重量%~約60重量%の量で追加することができる。
【0027】
本発明にかかる添加剤は、炭化水素供給原料と共に1種以上の触媒と同時にFCC装置に添加してもよく、またはFCC装置に炭化水素供給原料及び1種以上の触媒を添加した後に添加してもよい。一実施形態では、本発明にかかる添加剤は、1種以上のFCC触媒と組み合わされる。前記触媒組成物は、炭化水素供給原料の接触分解に適切に用いることができ、最低の変換率を維持しつつ軽質オレフィンの製造において高い効率を有する。また、触媒組成物は、DCCプロセスにおいて通常よりも低い温度を用いる場合であっても、いわゆるDCCプロセスにおいて使用することもできる。
【実施例】
【0028】
すべての反応は、出てくるガスを分析するために取り付けられたガスGCと、反応が完了した後にGCによって分析される冷却液体コレクタとを備えた、典型的なMAT反応器(固定床)にて520℃で行う。一定量の供給原料に対して、様々な量の触媒を反応器に導入する。供給原料は、C5~C7オレフィンの等重量混合物または典型的なVGO粗原料のいずれかからなる。ZSM-5が主にガソリン範囲のオレフィンを分解してLPGガスを生成するため、オレフィン混合物をプローブ分子として使用することができる。典型的なFCC触媒を100%蒸気中にて788℃で20時間蒸気に当てて、不活性化FCC触媒を生成した。ZSM-5添加剤はAlbemarleの市販品であり、FCC触媒の場合と同様に新しいものまたは水蒸気不活性化物のいずれかを使用した。ZSM-22は、新しいもの、または蒸気を当てたきれいなものを使用したが、加圧してふるい分けし、触媒の典型的な分布内の粒子を生成した。添加剤及びZSM-22について、供給原料と共にFCC触媒を用いる場合及び用いない場合について試験した。生成物をGCで分析し、収率を正規化した。
【0029】
ZSM-22では、アルミナに対するシリカの初期の比(Si/Al)は25~40であり、そのまま、及び塩基/酸での変性によるメソ細孔生成後に試験した。まずZSM-22を、0.2Mの苛性溶液の塩基性溶液を用いて、液体対固体33:1の比で、65℃で30分間攪拌しながら処理した。濾過及び洗浄を行い過剰のナトリウムを除去(pH7になるまで)した後、固体をシュウ酸の溶液(水25.5g中シュウ酸2.5gに対してゼオライト1g)中に70℃で2時間懸濁させ、その後、濾過及び洗浄を行った。試料を375℃で3時間焼成し、メソポーラス-ZSM-22とした。実験の結果を以下の表1及び表2、ならびに
図1及び
図2に示した。
【0030】
表1は、メソ-ZSM-22及び市販のZSM-5について、520℃、30秒でのTOSにおける、C5-C6-C7オレフィンの分解についての選択性データを示すものである。この実施例では、0.3gのメソ-ZSM-22及び1gの市販のZSM-5を、上記プロセスを用いて比較した。結果から、ZSM-22はZSM-5含有添加剤よりも、プロピレンに対する選択性が高く、芳香族化合物の生成が少ないことがはっきりとわかった。
【表3】
【0031】
表2及び
図2を参照すると、520℃、30秒でのTOSにおける、C5-C6-C7オレフィンの分解についてのFCC+市販ZSM-5及びFCC+市販ZSM-5+メソ-ZSM-22のプロピレン及び芳香族選択性プロットが示されている。2つの試料を上記のプロセスを用いて比較した。このデータから、典型的なFCC+ZSM-5含有添加剤においてZSM-22を併用することにより、芳香族化合物の生成がより少なく、より多量のプロピレンをもたらすことが分かる。
【表4】
【0032】
本明細書中において、本発明の組成物または本発明の方法において使用される成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界で濃縮液や溶液を作製するのに使われる典型的な測定及び液体取り扱い手順において発生しうる数値量の変動を指し、これらの手順での不注意によるエラーによるものが挙げられ、組成物を製造するために、または方法を実施するために使用される成分の製造、供給源、または純度の差異等が挙げられる。また、「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物についての平衡条件が異なることによって異なる量も、その意味に包含する。「約」という用語によって修飾されているかどうかに関わらず、請求項はその量と同等の量を含む。
【0033】
特に明記されている場合を除き、「a」、「an」という冠詞を本明細書で使用する場合、これらは限定を意図するものではなく、明細書または特許請求の範囲を、その冠詞が
参照する単一の要素に限定するものとして解釈すべきではない。むしろ、「a」、「an」という冠詞を本明細書で使用する場合、明示的な指示がない限り、1または複数の同様の要素を含包することを意図する。本発明は、その実施においてかなりの変形例を許容できる。従って、前述の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明を上記の特定の例示に限定するものと解釈すべきではない。