IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-水田作業機 図1
  • 特許-水田作業機 図2
  • 特許-水田作業機 図3
  • 特許-水田作業機 図4
  • 特許-水田作業機 図5
  • 特許-水田作業機 図6
  • 特許-水田作業機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A01C11/02 342C
A01C11/02 342J
A01C11/02 342Q
A01C11/02 342Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019021865
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020127385
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-080820(JP,A)
【文献】実開昭60-055313(JP,U)
【文献】実開昭58-007513(JP,U)
【文献】特開平08-140433(JP,A)
【文献】特開平07-039217(JP,A)
【文献】特開2005-143408(JP,A)
【文献】特開昭58-076009(JP,A)
【文献】特開平07-327428(JP,A)
【文献】実開昭58-062805(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、
前記作業装置の下部に設けられ、水田の泥面を整地する整地フロートと、を備え、
前記整地フロートは、右側フロートと、左側フロートと、前記右側フロートと前記左側フロートとの間に配置された中間フロートと、前記右側フロートと前記左側フロートと前記中間フロートとを一体に連結する一体連結部と、を備え
前記右側フロート及び前記左側フロートは前記作業装置に支持されており、前記中間フロートは前記作業装置及び前記一体連結部のうち前記一体連結部にのみ支持されている水田作業機。
【請求項2】
前記一体連結部は、前記右側フロートの前端部、前記左側フロートの前端部、及び前記中間フロートの前端部に取り付けられている請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記中間フロートの前後方向の長さは、前記右側フロートの前後方向の長さよりも小さく、前記左側フロートの前後方向の長さよりも小さい請求項1又は2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記中間フロートは、作溝器と、前記作溝器の後方であって前記中間フロートの後端部に設けられた覆土板と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記整地フロートと前記作業装置との間の距離を検知する検知部を備え、
前記検知部は、前記一体連結部に接続されている請求項1からのいずれか1項に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地フロートを備えた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、苗植付装置と、苗植付装置を昇降駆動する昇降機構と、センターフロート及びサイドフロートと、高さセンサーとを備えた水田作業機が記載されている。センターフロート及びサイドフロートは、上下揺動可能な状態で、苗植付装置の下部に支持されている。高さセンサーは、センターフロートから苗植付装置までの高さを検出する。高さセンサーの検出値が植付設定値に維持されるように、昇降機構が制御される。
これにより、田面に追従するセンターフロートに対して苗植付装置が設定高さに維持され、苗植付装置による苗の植え付け深さが所定の植え付け深さに維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-55704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水田作業機では、苗の植え付け深さの制御がセンターフロートのみの上下揺動量に応じて行われ、サイドフロートは苗の植え付け深さの制御に関与しない。センターフロートは苗植付装置の幅方向の中央部に配置されているので、苗の植え付け深さの制御が、苗植付装置の中央部に対応する田面の状況にのみ応じて行われることになる。その点で特許文献1の水田作業機には改善の余地がある。
【0005】
上述した実情に鑑みて、本発明の目的は、植え付け深さの制御が改善された水田作業機を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水田作業機は、作業装置と、前記作業装置の下部に設けられ、水田の泥面を整地する整地フロートと、を備え、前記整地フロートは、右側フロートと、左側フロートと、前記右側フロートと前記左側フロートとの間に配置された中間フロートと、前記右側フロートと前記左側フロートと前記中間フロートとを一体に連結する一体連結部と、を備え前記右側フロート及び前記左側フロートは前記作業装置に支持されており、前記中間フロートは前記作業装置及び前記一体連結部のうち前記一体連結部にのみ支持されていことを特徴とする。
【0007】
この特徴構成によれば、右側フロートと左側フロートと中間フロートとが一体に連結されているので、植え付け深さの制御が、従来よりも幅広い領域の田面の状況に応じて行われることになる。これにより、植え付け深さの制御において田面の状況をより的確に反映することが可能となる。なお「植え付け深さの制御」とは、作業装置により行われる苗の植え付け又は播種の深さの制御を示す。
また、この特徴構成によれば、中間フロートの作業装置への支持機構を省略することができ、作業装置の軽量化を実現することができる。
【0008】
本発明において、前記一体連結部は、前記右側フロートの前端部、前記左側フロートの前端部、及び前記中間フロートの前端部に取り付けられていると好適である。
【0009】
この特徴構成によれば、前進に伴って一つのフロートが上下揺動した際に、後端部において連結されている場合に比べ、一体となったフロート全体がより鋭敏に上下揺動することになる。これにより、田面の状況をより的確に反映して植え付け深さの制御を行うことができる。
【0010】
本発明において、前記中間フロートの前後方向の長さは、前記右側フロートの前後方向の長さよりも小さく、前記左側フロートの前後方向の長さよりも小さいと好適である。
【0011】
この特徴構成によれば、中間フロートが他のフロートよりも小さく構成されているので、整地フロート全体の重量を小さくすることができる。これにより、整地フロートが田面の状況を更に的確に検知するようになり、より的確に苗の植え付け深さの制御を行うことができる。加えて、作業装置の軽量化を実現することができる。
【0012】
本発明において、前記中間フロートは、作溝器と、前記作溝器の後方であって前記中間フロートの後端部に設けられた覆土板と、を備えると好適である。
【0013】
この特徴構成によれば、中間フロートにおいても作溝と覆土とを行わせることができ好ましい。また、覆土板が中間フロートの後端部に設けられるので、中間フロートの前後方向の長さが必要最低限の長さとなり、整地フロート全体の重量を小さくすることができる。これにより、整地フロートが田面の状況を更に的確に検知するようになり、より的確に苗の植え付け深さの制御を行うことができる。加えて、作業装置の軽量化を実現することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、前記整地フロートと前記作業装置との間の距離を検知する検知部を備え、前記検知部は、前記一体連結部に接続されていると好適である。
【0017】
この特徴構成によれば、一体に連結された整地フロートの挙動を検知部が的確に検知することができ、田面の状況をより的確に反映して植え付け深さの制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】乗用型田植機の左側面図である。
図2】乗用型田植機の上面図である。
図3】苗植付装置の左側面図である。
図4】整地フロートの付近の左側面図である。
図5】整地フロートの上面図である。
図6】整地フロートの下面図である。
図7】苗植付装置の昇降制御の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照しながら、水田作業機の一例である乗用型田植機について説明する。図1図6において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示している。Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0020】
(乗用型田植機の全体構成)
図1に示すように、乗用型田植機は、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた走行機体3の後部に、リンク機構4が上下に揺動可能に支持されて後側に延出されており、リンク機構4を昇降操作する油圧シリンダ5が設けられている。
【0021】
苗植付装置6(作業装置に相当)が、リンク機構4の後部に前後方向の軸芯P1(図3参照)周りにローリング可能に支持されている。走行機体3の後部及び苗植付装置6に亘って、田面Gに肥料を供給する施肥装置7が設けられており、苗植付装置6の前側の下部に、田面Gを整地する整地装置50が支持されている。
【0022】
(苗植付装置の全体構成)
図1,2,3に示すように、苗植付装置6に、支持フレーム8、フィードケース14、植付伝動ケース9、回転ケース10、植付アーム11、整地フロートF、苗のせ台13等が設けられている。本実施形態では整地フロートFは、図2に示すように、右側フロート70、左側フロート80、及び中間フロート90の、3つのフロートにより構成されている。
【0023】
支持フレーム8は、アルミの引き抜き工法によって製作されており、台形状の断面形状を備えている(図4参照)。支持フレーム8が左右方向に沿って配置されており、支持フレーム8の左右中央にフィードケース14が連結され、3個の植付伝動ケース9が支持フレーム8の右部、中央部及び左部に連結されて後側に延出されている。
【0024】
右及び左の植付伝動ケース9の後部の右部及び左部に、回転ケース10が回転可能に支持されている。中央の植付伝動ケース9の後部の右部に、回転ケース10が回転可能に支持されている。回転ケース10の両端に、植付アーム11が支持されている。苗のせ台13が、左右方向に往復移動可能に支持されている。つまり本実施形態では、苗植付装置6は、5条植えの装置として構成されている。
【0025】
リンク機構4の後部の下部の前後方向の軸芯P1周りに、フィードケース14がローリング可能に支持されており、苗植付装置6の全体が軸芯P1周りにローリング可能に支持されている。
【0026】
走行機体3の前部に搭載されたエンジン34の動力が、植付クラッチ(図示せず)から伝動軸35を介して、フィードケース14の内部の伝動機構(図示せず)に伝達されて、フィードケース14に設けられた横送り軸(図示せず)により、苗のせ台13が所定のストロークで左右方向に往復横送り駆動される。
【0027】
フィードケース14の伝動機構に伝達された動力が、植付伝動ケース9の内部のトルクリミッター(図示せず)、伝動チェーン(図示せず)及び少数条クラッチ(図示せず)を介して、回転ケース10に伝達される。苗のせ台13が左右方向に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース10が回転駆動され、苗のせ台13の下部から植付アーム11が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。
【0028】
(施肥装置の全体構成)
図1,2,3に示すように、施肥装置7として、ホッパー15、繰り出し部16、ブロア17、作溝器18及びホース19等が設けられている。
【0029】
走行機体3において運転座席20の後側に、肥料を貯留するホッパー15及び繰り出し部16が支持されており、繰り出し部16の左の横外側にブロア17が設けられている。
整地フロートFに作溝器18が取り付けられて、5個の作溝器18が設けられており、繰り出し部16と作溝器18とに亘って5本のホース19が接続されている。
【0030】
エンジン34の動力が、施肥クラッチ(図示せず)を介して繰り出し部16に伝達されて、ホッパー15の肥料が繰り出し部16により繰り出され、ブロア17の搬送風によりホース19を通って作溝器18に供給される。作溝器18により田面Gに溝が形成されながら、作溝器18から田面Gの溝に肥料が供給される。作溝器18により形成された田面Gの溝に対して、作溝器18の後方に設けられた覆土板18aにより、土(泥)が覆い被せられる。
【0031】
(整地フロートの全体構成)
水田の泥面を整地する整地フロートFが、苗植付装置6の下部に設けられている。図2図5図6に示されるように、整地フロートFは、右側フロート70、左側フロート80、及び中間フロート90の、3つのフロートにより構成されている。右側フロート70は平面視で右の後輪2の後方に位置し、左側フロート80は左の後輪2の後方に位置している。中間フロート90は、右側フロート70と左側フロート80との間に配置されている。右側フロート70、左側フロート80、及び中間フロート90は、側面視で植付伝動ケース9の下側に位置するように配置されている。
【0032】
図2図4図5図6に示されるように、右側フロート70と左側フロート80と中間フロート90とを一体に連結する一体連結部100が備えられている。一体連結部100は、中空の角柱状の部材であって、左右方向に沿って延びる姿勢にて配置されている。
一体連結部100は、右側フロート70の前端部の上面、左側フロート80の前端部の上面、及び中間フロート90の前端部の上面に取り付けられている。
【0033】
図2図4に示されるように、右側フロート70及び左側フロート80は、上面視でT字状の形状である。右側フロート70及び左側フロート80は、略同一の形状である。図4図5に示されるように、右側フロート70及び左側フロート80における下面に、2つの作溝器18と2つの覆土板18aが備えられている。覆土板18aは、作溝器18の後方に位置している。
【0034】
図2図4に示されるように、中間フロート90は、上面視で、矩形状の前方部分と、前方部分の左端において後方に突出する後方部分とを備えている。図4図5に示されるように、中間フロート90における下面に、1つの作溝器18と1つの覆土板18aが備えられている。覆土板18aは、中間フロート90における後方部分の後端部、すなわち、中間フロート90における後端部に設けられている。覆土板18aは、作溝器18の後方に位置している。
【0035】
図5に示されるように、右側フロート70の前後方向の長さL1と左側フロート80の前後方向の長さL2とは等しい。中間フロート90の前後方向の長さL3は、右側フロート70の前後方向の長さL1よりも小さく、左側フロート80の前後方向の長さL2よりも小さい。
【0036】
図5に示されるように、右側フロート70の左右方向の幅W1と左側フロート80の左右方向の幅W2とは等しい。中間フロート90の左右方向の幅W3は、右側フロート70の左右方向の幅W1よりも小さく、左側フロート80の左右方向の幅W2よりも小さい。
【0037】
(苗植付装置による整地フロートの支持構造)
図4に示すように、支持フレーム8の後部8bに、ブラケット27が連結されている。
フロートパイプ28が、植付伝動ケース9の下側に左右方向に沿って配置されており、左右方向の軸芯P2周りに回転可能にブラケット27に支持されている。
【0038】
図5に示されるように、フロートパイプ28の右端部から、2つの支持アーム28aが後方に延出されている。この2つの支持アーム28aの後端部に、左右方向の軸芯P3周りに揺動可能な状態で、右側フロート70の後部のブラケット71が取り付けられている。すなわち右側フロート70は、支持アーム28aを介して、苗植付装置6に支持されている。
【0039】
フロートパイプ28の左端部から、2つの支持アーム28aが後方に延出されている。
この2つの支持アーム28aの後端部に、左右方向の軸芯P3周りに揺動可能な状態で、左側フロート80の後部のブラケット81が取り付けられている。すなわち左側フロート80は、支持アーム28aを介して、苗植付装置6に支持されている。
【0040】
中間フロート90は、フロートパイプ28及び支持アーム28aに接続されていない。
すなわち中間フロート90は、一体連結部100にのみ支持されている。
【0041】
図4に示されるように、植付深さレバー29が、フロートパイプ28に連結されて、斜め前側の上側に延出されている。フィードケース14の右部にレバーガイド30(図3参照)が連結されており、植付深さレバー29がレバーガイド30に挿入されている。
【0042】
植付深さレバー29を上下に操作することにより、フロートパイプ28の支持アーム28aを上下に操作して、軸芯P3(右側フロート70及び左側フロート80の後部)の位置を上下に変更することができる。植付深さレバー29をレバーガイド30に係合させることより、軸芯P3(右側フロート70及び左側フロート80の後部)の位置を固定することができる。
【0043】
(苗植付装置の昇降制御に関する構成)
整地フロートFと苗植付装置6との間の距離を検知する検知部Sが設けられている。検知部Sは、検知部材40、接続部材41、ワイヤ43により構成されている。
【0044】
図4に示すように、正面視でチャンネル状の検知部材40が、一体連結部100の左部に連結されたブラケット101に、左右方向の軸芯P4周りに揺動可能な状態で支持されており、支持フレーム8とカバー55との間を通って上側に延出されている。すなわち、検知部Sはブラケット101を介して一体連結部100に接続されている。
【0045】
丸棒材を折り曲げて構成された接続部材41が設けられている。図4に示されるように、支持フレーム8の上部8aにブラケット42が設けられている。接続部材41の中間部が、左右方向の軸芯P5周りに揺動可能な状態で、ブラケット42に支持されている。
【0046】
上下方向に沿った長孔40aが検知部材40に開口されており、接続部材41の一方の端部41aが、検知部材40の長孔40aに挿入されている。フロートパイプ28から前斜め上方にステー32が延出されている。ステー32に長孔32aが開口されており、接続部材41の他方の端部41bが、ステー32の長孔32aに挿入されている。
【0047】
図7に示すように、油圧シリンダ5に作動油を給排操作する制御弁65が、走行機体3に設けられている。制御弁65は、油圧シリンダ5に作動油を供給して油圧シリンダ5を上昇作動(収縮作動)させる上昇位置、油圧シリンダ5から作動油を排出して油圧シリンダ5を下降作動(伸長作動)させる下降位置、及び油圧シリンダ5を停止させる中立位置に操作可能である。
【0048】
図7の左右方向にスライド操作可能なスプール65aが制御弁65に設けられており、制御弁65のスプール65aがバネ(図示せず)により下降位置に付勢されている。左右方向の軸芯P9周りに揺動可能な操作アーム66が設けられて、操作アーム66により制御弁65のスプール65aを上昇位置側に押し操作可能であり、操作アーム66はバネ(図示せず)により制御弁65のスプール65aから離れる側に付勢されている。
【0049】
図4及び図7に示すように、ワイヤ43のインナー43aの一方の端部が、操作アーム66に接続されている。ワイヤ43の他方の端部において、ワイヤ43のインナー43aが、接続部材41の端部41aに接続され、ワイヤ43のアウター43bが、検知部材40の上端部に接続されている。
【0050】
前述の(苗植付装置による整地フロートの支持構造)に記載のように、植付深さレバー29がレバーガイド30に係合されて、軸芯P3(右側フロート70及び左側フロート80の後部)の位置が固定されていると、接続部材41の姿勢も植付深さレバー29により固定されている。
【0051】
(苗植付装置の昇降制御の作動状態)
図4及び図7に示すように、走行機体3の進行に伴って整地フロートFは田面Gに接地追従するのであり、田面G(整地フロートF)に対して苗植付装置6が上下動すると、苗植付装置6に対して整地フロートFが軸芯P3周りに上下に揺動する状態となり、苗植付装置6(接続部材41)に対して検知部材40が上下動する状態となる。図4及び図7に示す状態は、制御弁65のスプール65aが中立位置に操作されて、油圧シリンダ5が停止している状態である。
【0052】
図4及び図7に示す状態から苗植付装置6が下降して田面Gに接近すると、苗植付装置6に対して整地フロートFが上昇する状態となり、接続部材41に対して検知部材40が上昇する状態となって、ワイヤ43のインナー43aが苗植付装置6側に引き操作される。
これにより、操作アーム66によって制御弁65のスプール65aが上昇位置に押し操作されて、油圧シリンダ5が上昇作動し、苗植付装置6が上昇操作される。
【0053】
図4及び図7に示す状態から苗植付装置6が上昇して田面Gから離れると、苗植付装置6に対して整地フロートFが下降する状態となり、接続部材41に対して検知部材40が下降する状態となって、ワイヤ43のインナー43aが操作アーム66側に押し操作される。
これにより、操作アーム66が制御弁65のスプール65aから離れ、制御弁65のスプール65aが下降位置に移動して、油圧シリンダ5が下降作動し、苗植付装置6が下降操作される。
【0054】
以上のようにして、苗植付装置6に対する整地フロートFの上下位置が、検知部Sにより、ワイヤ43を介して操作アーム66に伝達されて、制御弁65のスプール65aが操作される。検知部材40の上端部と接続部材41の端部41aとの位置関係(ワイヤ43のアウター43bから出るインナー43aの長さ)が、図4に示す状態に戻ると、操作アーム66により制御弁65のスプール65aが中立位置に押し操作されて、油圧シリンダ5が停止する。
【0055】
これによって、検知部材40の上端部と接続部材41の端部41aとの位置関係(ワイヤ43のアウター43bから出るインナー43aの長さ)が、図4に示す状態に維持されるように、制御弁65のスプール65aが操作され、苗植付装置6が自動的に昇降操作されて、苗植付装置6が田面Gから図6に示す設定高さH1に維持されるのであり、苗植付装置6(植付アーム11)による苗の植付深さが、設定植付深さに維持される。
【0056】
(苗の設定植付深さの変更)
図4に示す状態は、軸芯P3(右側フロート70及び左側フロート80の後部)の位置が、苗植付装置6に最も接近した状態であり、設定高さH1(図7参照)が、最も低い状態(苗の設定植付深さが最も深い状態)である。
【0057】
図4に示す状態から植付深さレバー29が操作されて、苗植付装置6に対する軸芯P3(右側フロート70及び左側フロート80の後部)の位置が下側に変更されていくと、設定高さH1が高くなっていき、苗の設定植付深さが浅くなっていく。
【0058】
植付深さレバー29が操作されて苗の設定植付深さが変更されると、苗植付装置6に対する整地フロートF及び検知部材40の位置が上下に変化する。植付深さレバー29に連動して、接続部材41が軸芯P5周りに揺動操作されるのであり、接続部材41の端部41aの位置が、以下の説明のように上下に変更される。
【0059】
植付深さレバー29により苗の設定植付深さが深側(設定高さH1の低側)に変更されると(苗植付装置6に対して検知部材40の位置が上昇すると)、これに伴ってワイヤ43のインナー43a(接続部材41の端部41a)の位置も上側に変更される。
【0060】
植付深さレバー29により苗の設定植付深さが浅側(設定高さH1の高側)に変更されると(苗植付装置6に対して検知部材40の位置が下降すると)、これに伴ってワイヤ43のインナー43a(接続部材41の端部41a)の位置も下側に変更される。
【0061】
これにより、植付深さレバー29が操作されて苗の設定植付深さが変更されても、検知部材40の上端部と接続部材41の端部41aとの位置関係(ワイヤ43のアウター43bから出るインナー43aの長さ)が、図4に示す状態に維持されるのであり、前述の(苗植付装置の昇降制御の作動状態)に記載のように、苗植付装置6が田面Gから設定高さH1に維持されて、苗植付装置6(植付アーム11)による苗の植付深さが、設定植付深さに維持される。
【0062】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、整地フロートFが右側フロート70、左側フロート80、及び中間フロート90の3つのフロートで構成される例が説明された。中間フロート90の数は2つ以上でもよい。すなわち、一体連結部100により連結されるフロートの数は4つ以上でもよい。また、右側フロート70よりも右側、又は左側フロート80の左側に、一体連結部100により連結されていないフロートが配置されてもよい。すなわち、全てのフロートが一体連結部100により連結されていなくてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、一体連結部100が中空の角柱状の部材である例が説明された。一体連結部100の形状はこれに限られず、例えば、中空の円柱状、中実の角棒や丸棒、板状の部材等であってもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、一体連結部100が1つの棒状の部材であり、この1つの部材によって3つのフロートが連結されている。一体連結部100が、複数の部材により構成されてもよい。例えば一体連結部100が、右側フロート70と中間フロート90とを連結する部材と、左側フロート80と中間フロート90とを連結する部材とによって構成されてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、検知部Sにより検知された整地フロートFと苗植付装置6との間の距離に基づいて、油圧シリンダ5が制御され、苗植付装置6が昇降された。検知部Sが、検知部材40、接続部材41、ワイヤ43により構成される例が説明された。検知部Sの構成はこれに限られず、例えば測距センサ等であってもよい。また、センサ等の出力に基づいて油圧シリンダ5が制御され、苗植付装置6が昇降される構成も可能である。
【0066】
(5)上記実施形態では、苗植付装置6が5条植えの装置である例が説明されたが、本発明は5条植えの苗植付装置6に限らず、4条植え、6条植え、8条植え、10条植えの苗植付装置6にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、乗用型田植機ばかりではなく、田面Gに種子を供給する播種装置(作業装置に相当)を備えた乗用型直播機にも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
6 :苗植付装置(作業装置)
18 :作溝器
18a :覆土板
70 :右側フロート
80 :左側フロート
90 :中間フロート
100 :一体連結部
F :整地フロート
S :検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7