(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】異なる検出温度及び基準値を使用したターゲット核酸配列の検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220701BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2019148862
(22)【出願日】2019-08-14
(62)【分割の表示】P 2017530708の分割
【原出願日】2015-12-09
【審査請求日】2019-08-14
(32)【優先日】2014-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507292955
【氏名又は名称】シージーン アイエヌシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ユーン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン チョ・リ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0053950(US,A1)
【文献】特表2013-538041(JP,A)
【文献】国際公開第2012/048207(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/147370(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147377(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147382(WO,A1)
【文献】特表2017-518028(JP,A)
【文献】特表2018-504097(JP,A)
【文献】BMC Biotechnology,2006年12月04日,Vol.6:44
【文献】Scientific Reports,2014年12月11日,Vol.4:7439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列を検出する方法:
(a)(i)第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を示す第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値、及び/または(ii)第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を示す第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値を提供する段階であって;前記第1基準値は、前記第2基準値とは異なり;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段は、それぞれ異なる配列のオリゴヌクレオチドを含み;前記第1基準値は、(i)前記第1ターゲット核酸配列を、前記第1ターゲット核酸配列を検出するための前記第1シグナル-発生手段とインキュベーションし、(ii)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルを検出し、及び(iii)以後、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を得ることで収得され;前記第2基準値は、(i)前記第2ターゲット核酸配列を、前記第2ターゲット核酸配列を検出するための前記第2シグナル-発生手段とインキュベーションし、(ii)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルを検出し、及び(iii)以後、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を得ることで収得され;
(b)2つのターゲット核酸配列の検出のための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段と共にサンプルをインキュベーションし、1つの反応容器で相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で前記第1シグナル-発生手段からのシグナル及び前記第2シグナル-発生手段からのシグナルを検出する段階であって;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;
(c)(i)前記第2基準値が、前記段階(a)において、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)×(第2基準値)];
(ii)前記第2基準値が、前記段階(a)において、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)/(第2基準値)];
(iii)前記第2基準値が、前記段階(a)において、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)×(第2基準値)];又は
(iv)前記第2基準値が、前記段階(a)において、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)/(第2基準値)]
によって前記第1ターゲット核酸配列の存在を決定する段階;及び
(i)前記第1基準値が、前記段階(a)において、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)×(第1基準値)];
(ii)前記第1基準値が、前記段階(a)において、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)/(第1基準値)];
(iii)前記第1基準値が、前記段階(a)において、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)×(第1基準値)];又は
(iv)前記第1基準値が、前記段階(a)において、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)/(第1基準値)]
によって前記第2ターゲット核酸配列の存在を決定する段階。
【請求項2】
段階(b)は、核酸増幅が伴われる、又は核酸増幅が伴われないシグナル増幅過程で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段のうち少なくとも1つは、二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段のうち少なくとも1つは、検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つの反応容器が2つのターゲット核酸配列以外のターゲット核酸配列の検出のための追加的な2つのシグナル-発生手段をそれぞれ含有する少なくとも1つの追加的なセットをさらに含み;容器内の2つのシグナル-発生手段のうち、各セットによって発生したシグナルは、互いに区別され、前記シグナルは、それぞれ異なる類型の検出器によって検出される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記2つのターゲット核酸配列は、ヌクレオチド変異を含み、前記2つのターゲット核酸配列のうち1つは、一種の類型のヌクレオチド変異を含み、他の1つは、他の類型のヌクレオチド変異を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する方法を実行するためのプロセッサを具現する指示を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体であって、前記方法は、下記の段階を含む:
(a)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で第1ターゲット核酸配列のための第1シグナル-発生手段及び第2ターゲット核酸配列のための第2シグナル-発生手段から発生したサンプル内のシグナルを受信する段階であって;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2シグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;前記第1シグナル-発生手段及び前記第2
シグナル-発生手段は、それぞれ異なる配列のオリゴヌクレオチドを含み:及び
(b)(i)第2基準値が、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)×(第2基準値)];
(ii)第2基準値が、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)/(第2基準値)];
(iii)第2基準値が、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)×(第2基準値)];又は
(iv)第2基準値が、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)/(第2基準値)]
によって前記第1ターゲット核酸配列の存在を決定する段階;及び
(i)第1基準値が、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)×(第1基準値)];
(ii)第1基準値が、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的低温検出温度でのシグナル強度)-(相対的高温検出温度でのシグナル強度)/(第1基準値)];
(iii)第1基準値が、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)×(第1基準値)];又は
(iv)第1基準値が、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率である場合、[(相対的高温検出温度でのシグナル強度)-(相対的低温検出温度でのシグナル強度)/(第1基準値)]
によって前記第2ターゲット核酸配列の存在を決定する段階であって;
前記第1基準値は、前記第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を示し、前記第2基準値は、前記第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を示し;前記第1基準値は、前記第2基準値と異なり;前記第1基準値は、(i)前記第1ターゲット核酸配列を、前記第1ターゲット核酸配列を検出するための前記第1シグナル-発生手段とインキュベーションし、(ii)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルを検出し、及び(iii)以後、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を得ることで収得され;前記第2基準値は、(i)前記第2ターゲット核酸配列を、前記第2ターゲット核酸配列を検出するための前記第2シグナル-発生手段とインキュベーションし、(ii)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルを検出し、及び(iii)以後、相対的高温検出温度から提供されたシグナル対相対的低温検出温度から提供されたシグナルの比率、又は、相対的低温検出温度から提供されたシグナル対相対的高温検出温度から提供されたシグナルの比率を得ることで収得される
、
コンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項8】
(a)コンピュータプロセッサ、及び(b)前記コンピュータプロセッサにカップリングされた請求項7のコンピュータ読取り可能な記録媒体を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を検出するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる検出温度及び基準値を使用したターゲット核酸配列の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲット核酸配列の検出のために、リアルタイム検出方法がリアルタイム方式でターゲット増幅をモニタリングしながら、ターゲット核酸配列の検出に広く使われる。リアルタイム検出方法は、一般的にターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされる標識されたプローブまたはプライマーを使用する。標識されたプローブとターゲット核酸配列との間のハイブリダイゼーションを使用する例示的な方法は、ヘアピン構造を有する二重標識されたプローブを使用する分子ビーコン(Molecular beacon)方法(非特許文献1)、ハイビーコン(HyBeacon)方法(非特許文献2)、供与体及び受容体でそれぞれ標識された2つのプローブを使用するハイブリダイゼーションプローブ方法(非特許文献3)、及び単一標識されたオリゴヌクレオチドを使用するルクス(Lux)方法(特許文献1)を含む。二重標識されたプローブ及びDNA重合酵素の5’-ヌクレアーゼ活性による前記プローブの切断を使用したTaqMan方法(特許文献2~3)が、また当該技術分野で広く用いられている。
【0003】
標識されたプライマーを使用する例示された方法は、サンライズ(Sunrise)プライマー方法(非特許文献4、特許文献4)、スコーピオン(Scorpion)プライマー方法(非特許文献5、特許文献5)、及びTSGプライマー方法(特許文献6)を含む。
【0004】
代案的な接近法として、ターゲット核酸配列の存在に依存的に形成される二量体(デュープレックス)を使用するリアルタイム検出方法が提案された:インベーダー(Invader)分析(特許文献7~9)、PTOCE(PTO cleavage and extension)方法(特許文献10)、PCE-SH(PTO Cleavage and Extension-Dependent Signaling Oligonucleotide Hybridization)方法(特許文献11)、PCE-NH(PTO Cleavage and Extension-Dependent Non-Hybridization)方法(特許文献12)。
【0005】
前記記述された従来のリアルタイム検出技術は、ターゲット増幅と関連するか、関係のないシグナル増幅過程で1つの選択された検出温度で蛍光標識から発生したシグナルを検出する。従来のリアルタイム検出技術によって単一反応チューブで単一類型の標識を使用して複数のターゲット核酸配列を検出する場合、ターゲット核酸配列に対して発生したシグナルは、互いに区別されない。したがって、従来のリアルタイム検出技術は、複数のターゲット核酸配列を検出するために、一般的に異なる類型の標識を用いる。Tm差を使用するメルティング分析は、単一類型の標識を使用する場合にも、複数のターゲット核酸配列を検出することができる。しかし、メルティング分析は、リアルタイム技術よりも実施時間がさらに長く、ターゲット核酸配列が増加するほど異なるTm値を有するプローブの設計がさらに難しくなるという深刻な短所がある。
【0006】
したがって、メルティング分析に依存せず、1つの反応容器及び単一類型の検出器で単一類型の標識を使用して複数のターゲット核酸配列を検出するための新規方法または接近法が開発される場合、非常に向上した便宜性、コスト効果及び効率で複数のターゲット核酸配列を検出することができる。また、前記新規の方法を他の検出方法(例えば、メルティング分析)と組み合わせれば、非常に向上した効率で1つの反応容器で単一類型の標識を使用して複数のターゲット核酸配列を検出することができる。
【0007】
本明細書の全般に亘って、多数の特許及び文献が参照され、その引用がカッコで囲まれている。このような特許及び文献の開示内容は、本発明及び本発明が属する技術分野のレベルをより明確に説明するために、その全体として本明細書に参照して含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7,537,886号
【文献】米国特許第5,210,015号
【文献】米国特許第5,538,848号
【文献】米国特許第6,117,635号
【文献】米国特許第6,326,145号
【文献】WO第2011/078441号
【文献】米国特許第5,691,142号
【文献】米国特許第6,358,691号
【文献】米国特許第6,194,149号
【文献】WO第2012/096523号
【文献】WO第2013/115442号
【文献】PCT/KR2013/012312号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Tyagi et al,Nature Biotechnology v.14 MARCH 1996
【文献】French DJ et al.,Mol.Cell Probes,15(6):363-374(2001)
【文献】Bernad et al,147-148 Clin Chem 2000;46
【文献】Nazarenko et al,2516-2521 Nucleic Acids Research,1997,v.25 no.12
【文献】Whitcombe et al,804-807,Nature Biotechnology v.17 AUGUST 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、ターゲット核酸配列、特に、複数のターゲット核酸配列をより正確かつ簡便な方式で定性的または定量的に検出する新規方法を開発するために鋭意努力した。その結果、本発明者らは、調節された検出温度でターゲット核酸配列に対するシグナルを収得した後、検出結果を、基準値をもって適合に解釈することによって、非常に向上した便宜性、コスト効果及び効率性で1つの反応容器で単一類型の標識及び単一類型の検出器を使用して複数のターゲット核酸配列を検出することができるということを確認した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列を検出するための方法及びキットを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型を分析する方法及びキットを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する方法を実行するためのプロセッサを具現する指示を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型を分析する方法を実行するためのプロセッサを具現する指示を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定するための装置を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型を分析する装置を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する方法を実行するためのプロセッサを具現するコンピュータ読取り可能な記録媒体に保存されるためのコンピュータプログラムを提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型を分析する方法を実行するためのプロセッサを具現するコンピュータ読取り可能な記録媒体に保存されるためのコンピュータプログラムを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は、添付した特許請求の範囲及び図面と共に下記の詳細な説明から明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の最大の特徴は、1つのシグナル反応容器で単一類型の標識及び単一類型の検出器を使用して複数のターゲット核酸配列を検出することである。異なる検出温度及び基準値を用いる本発明は、1つの反応容器で単一類型の標識を用いる場合にも、複数のターゲット核酸配列を検出することができる。また、本発明は、それぞれのターゲット核酸配列が異なる検出温度いずれもでシグナルを発生させる場合にも、複数のターゲット核酸配列を検出することができる。本発明の構成要素は、本発明の特徴に合わせて選択され、ターゲット核酸配列を検出する驚くべきプロセスになる。
【0021】
従来のリアルタイムPCR方法は、1つの反応容器で2つのターゲット核酸配列を検出するために、2種の類型の蛍光標識またはメルティング分析が必要である。
【0022】
本発明は、1つの反応容器で単一類型の蛍光標識を使用して2つのターゲット核酸配列を検出するリアルタイムPCRプロトコルを可能にする。
【0023】
本発明は、2つのターゲット核酸配列のうち、1つに対して相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を反映する基準値が、他のターゲット核酸配列の存在の検出に使われるという興味深い発見を用いる。本発明で使われるターゲット核酸配列に係わる基準値は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナル-発生手段からシグナルを発生させ、検出することによって、実験的に収得される一定の値である。基準値は、ターゲット核酸配列の検出に直接使われる。選択的に、基準値は、ターゲット核酸配列の存在及び不在を立証するために、シグナルを処理する式に多様に適用可能である。
【0024】
特に、本発明は、複数のターゲット核酸配列の検出のためのシグナル-発生手段が異なる検出温度いずれもでシグナルを発生させる場合にも、複数のターゲット核酸配列を検出することができる。
【0025】
本発明は、下記のように多様な態様として具現可能である:
(a)異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の検出;及び
(b)異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型分析。
【発明の効果】
【0026】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
(a)異なる検出温度を用いる本発明は、1つの反応容器で単一類型の標識のみでも従来のリアルタイム方式で複数のターゲット核酸配列を検出することができる。従来の技術は、ターゲット増幅後、メルティング分析によって複数のターゲット核酸配列を検出する。これとは異なって、本発明は、ターゲット増幅後、メルティング分析が不要であるので、分析時間が画期的に短縮される。
(b)2つのターゲット核酸配列に対するシグナルが2つの検出温度で発生する場合にも、本発明は、それぞれのターゲット核酸配列を検出することができる。このような利点は、それぞれのターゲット核酸配列に対して切断によってシグナルを発生させるシグナル-発生手段を使用可能にする。
(c)異なる検出温度を使用する本発明で、それぞれのターゲット核酸配列に対して、ターゲット核酸配列と特異的にハイブリダイズされる媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成される二量体によってシグナルを提供するシグナル-発生手段の使用(例えば、PTOCE-基盤の方法)は、予期せぬ結果を誘導することができる。第一に、PTOCE-基盤の方法のように媒介オリゴヌクレオチドを使用する方法は、形成された二量体のTm値を容易に調節して検出温度を簡便に選択可能にする。前記特徴によって、所望の基準値(または、基準値の差)を有するようにさらに簡便に調節可能になる。さらに、PTOCE-基盤の方法のように媒介オリゴヌクレオチドを使用する方法で、特定Tm値を有する二量体が形成されうるが、前記二量体が、ターゲット核酸配列と関係のない配列を有するためである。これとは異なって、ターゲット核酸配列と直接ハイブリダイズされるプローブを使用する方法で、形成された二量体のうち少なくとも1本の鎖がターゲット核酸配列に相補的な配列を含むために、ターゲット核酸配列上に変異が存在する場合に、意図していないTm値を有する二量体が形成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aは、相対的高温検出温度(72℃)及び相対的低温検出温度(60℃)でターゲット核酸配列(クラミジア・トラコマチスのゲノムDNA、CT)、ターゲット核酸配列(ナイセリア・ゴノレアのゲノムDNA、NG)、及びこれらの組合せの検出結果を示す。CT及びNGに対するシグナルは、TaqManプローブ方法によって発生した。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの検出結果に基づいて基準値を収得することを示す。相対的低温検出温度から検出されたシグナル対相対的高温検出温度から検出されたシグナルの比率が基準値として使われた。
【
図1C】
図1Cは、
図1Bから収得されたCTの基準値及び
図1Aから検出されたシグナルを使用してターゲット核酸配列(ナイセリア・ゴノレアのゲノムDNA、NG)の存在を決定することを図式的に示す。点線は、閾値を示す。
【
図1D】
図1Dは、
図1Bから収得されたNGの基準値及び
図1Aから検出されたシグナルを使用してターゲット核酸配列(クラミジア・トラコマチスのゲノムDNA、CT)の存在を決定することを図式的に示す。点線は、閾値を示す。
【
図2A】
図2Aは、相対的高温検出温度(67.8℃)及び相対的低温検出温度(60℃)でターゲット核酸配列(クラミジア・トラコマチスのゲノムDNA、CT)、ターゲット核酸配列(ナイセリア・ゴノレアのゲノムDNA、NG)、及びこれらの組合せの検出結果を示す。CT及びNGに対するシグナルは、PTOCE方法によって発生した。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの検出結果に基づいて基準値を収得することを示す。相対的低温検出温度から検出されたシグナル対相対的高温検出温度から検出されたシグナルの比率が基準値として使われた。
【
図2C】
図2Cは、
図2Bから収得されたCTの基準値及び
図2Aから検出されたシグナルを使用してターゲット核酸配列(ナイセリア・ゴノレアのゲノムDNA、NG)の存在を決定することを図式的に示す。点線は、閾値を示す。
【
図2D】
図2Dは、
図2Bから収得されたNGの基準値及び
図2Aから検出されたシグナルを使用してターゲット核酸配列(クラミジア・トラコマチスのゲノムDNA、CT)の存在を決定することを図式的に示す。点線は、閾値を示す。
【
図3A】
図3Aは、相対的高温検出温度(64℃)及び相対的低温検出温度(60℃)でそれぞれのSNP遺伝子型(野生型同型接合体、突然変異同型接合体、及び異型接合体)の検出結果を示す。シグナルは、PTOCE方法によって発生した。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの検出結果に基づいて基準値を収得することを示す。相対的低温検出温度から検出されたシグナル対相対的高温検出温度から検出されたシグナルの比率が基準値として使われた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の少なくとも1つのターゲット核酸配列の検出
本発明の一態様において、下記を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列を検出する方法が提供される:
(a)(i)第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナルの変化の関係を示す第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値、及び/または(ii)第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されるシグナルの変化の関係を示す第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値を提供する段階であって;前記第1基準値は、前記第2基準値とは異なり;
(b)2つのターゲット核酸配列の検出のための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段と共にサンプルをインキュベーションし、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で前記2つのシグナル-発生手段からのシグナルを検出する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;
(c)前記基準値のうち少なくとも1つ及び前記段階(b)から検出されたシグナルによって2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する段階。
【0029】
増幅曲線を使用する従来のリアルタイムPCR方法によれば、区別されない同じシグナルを提供するシグナル-発生手段を使用して複数のターゲット核酸配列を区別して検出することができないということが、当業者の一般的な常識である。
【0030】
本発明は、当該技術分野の一般的な常識と関連した限界を克服し、非常に改善された方式でターゲット核酸配列を検出する予期せぬ結果をもたらす。
【0031】
本発明は、次のように詳しく説明される:
【0032】
段階(a):基準値提供
第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値及び第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値を提供する。
【0033】
興味深くも、本発明者らは、単一ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルが既定の2つの検出温度で1つの反応容器から検出される場合、特定関係(パターンまたは規則)でシグナル変化があることを確認した。例えば、ターゲット核酸配列に対して相対的高温検出温度から検出されたシグナル及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間のシグナル変化は、特定関係(パターンまたは規則)を示す。例えば、前記シグナルの強度は、互いに同一であるか、実質的に同一であり得るか、または前記シグナルの強度は、2つの検出温度で特定の範囲で互いに異なる。
【0034】
本発明の特徴は、前記結果を基準値を得て、ターゲット核酸配列の検出に適用することである。1つの反応容器でターゲット核酸配列に対するシグナルは、検出温度のみを異ならせて(例えば、ターゲット含量の変化なしに、またはバッファ条件の変化なし)検出されるために、2つの検出温度間のシグナル変化には特定関係(パターンまたは規則)がある。シグナル変化での特定関係(パターンまたは規則)に基づいて、相対的高温検出温度から検出されたシグナルは、相対的低温検出温度から検出されたシグナルの分析に使われ、その反対も同様である。一具現例によれば、本発明の方法は、2つの検出温度間でのターゲット核酸配列に対するシグナル変化に特定関係(パターンまたは規則)を許容する条件で実施される。
【0035】
ターゲット核酸配列の“基準値(reference value、RV)”は、2つの検出温度でターゲット核酸配列の検出のためのシグナル-発生手段によって提供されたシグナル変化の関係を示す。
【0036】
一具現例によれば、各基準値は、ターゲット核酸配列に相応する標準物質及びシグナル-発生手段をインキュベーションし、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出した後、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を得ることで収得される。
【0037】
一具現例によれば、(i)第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値は、(i-1)第1ターゲット核酸配列を第1ターゲット核酸配列を検出するための第1シグナル-発生手段とインキュベーションし、(i-2)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルを検出し、(i-3)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を得ることで収得され、(ii)第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値は、第2ターゲット核酸配列を第2ターゲット核酸配列を検出するための第2シグナル-発生手段とインキュベーションし、(ii-2)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出し、(ii-3)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を得ることで収得され;前記第1基準値は、第2基準値と異なる。
【0038】
各基準値は、多様な方式によって提供されうる。
【0039】
一具現例によれば、各基準値は、本発明の方法を実施する者の実験によって提供される。
【0040】
選択的に、各基準値は、本発明のキット、コンピュータ読取り可能な記録媒体、装置またはコンピュータプログラムの製作社によって提供される。前記キット、コンピュータ読取り可能な記録媒体製品、装置またはコンピュータプログラムに包装された説明書に関心のあるターゲット核酸配列に係わる基準値が含まれうる。
【0041】
一具現例によれば、基準値は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナルを数学的に処理することで収得される。
【0042】
このような数学的処理は、シグナルの関数である。基準値を収得するために使われる関数は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナル-発生手段によって提供されるシグナル変化の関係を提供する限り、任意の関数を含む。例えば、関数は、シグナルの加算、乗算、減算及び除算のような数学的処理として提示されうる。
【0043】
相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されるシグナルの特徴が、それ自体で相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナル変化の関係の収得に使われる。選択的に、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナルは、前記シグナルの特徴を数学的に処理することで変形され、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナル変化の関係の収得に使われる。
【0044】
選択的に、初期に収得された基準値は、変形され、基準値として使われる。
【0045】
一具現例によれば、基準値と関連して用語“シグナル”は、検出温度から収得されたシグナル自体だけではなく、シグナルを数学的に処理することによって、提供された変形されたシグナルを含む。
【0046】
本発明で使われる基準値は、多様な方式で収得されうる。例えば、基準値は、予測された値で提供されうる。ターゲット配列、シグナル-発生手段及び検出温度を考慮して、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナル変化の関係を示す基準値が予測されうる。
【0047】
基準値の収得時に、用語“第1検出温度及び第2検出温度から検出されたシグナル間の差”は、第1検出温度及び第2検出温度でのシグナル変化の関係の一具現例である。
【0048】
一具現例によれば、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差は、相対的高温検出温度から検出されたシグナル及び相対的低温検出温度から検出されたシグナルを数学的に処理することで収得される差を含む。
【0049】
一具現例によれば、数学的処理が行われる場合、シグナルの特徴は、数学的処理が容易ではなければならない。特定の具現例で、数学的処理は、シグナルを使用した計算(例えば、加算、乗算、減算及び除算)またはシグナルから由来の他の値を収得することを含む。
【0050】
相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナル間の差は、多様な態様として表現される。例えば、前記差は、数値、シグナルの存在/不在またはシグナル特徴を有するプロットとして表現される。
【0051】
差を収得するためのシグナルの数学的処理は、多様な計算方法及びこれらの変形によって行われる。
【0052】
特に、差を収得するためのシグナルの数学的処理は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でのシグナル間の比率を計算することで行われる。
【0053】
例えば、第2検出温度から検出されたシグナルのエンドポイント(end-point)強度対第1検出温度から検出されたシグナルのエンドポイント強度の比率が基準値として使われる。
【0054】
本発明の一具現例によれば、シグナル間の差を収得するためのシグナルの数学的処理は、相対的低温検出温度から検出されたシグナル対相対的高温検出温度から検出されたシグナルの比率の計算である。本発明の一具現例によれば、シグナル間の差を収得するためのシグナルの数学的処理は、相対的高温検出温度から検出されたシグナル対相対的低温検出温度から検出されたシグナルの比率の計算である。
【0055】
一具現例によれば、基準値は、相対的高温検出温度から検出されたシグナル及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の減算を計算することで収得されうる。
【0056】
差を収得するための数学的処理は、多様な方式で行われる。数学的処理は、機械を使用して行われる。例えば、シグナルは、検出器またはリアルタイムPCR装置内のプロセッサによって数学的に処理されうる。選択的に、シグナルは、特に、既定のアルゴリズムによって手作業で数学的に処理されうる。
【0057】
本発明の一具現例によれば、第1基準値は、第2基準値と異なる。本発明の一具現例によれば、第1基準値が第2基準値と異なるように、第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段が設計される。
【0058】
RV値が互いに異なる場合、差の程度を記述する定量的表現は、RV値を計算する接近法によって変わりうる。
【0059】
一具現例によれば、基準値を収得するためのシグナルは、共通の計算方法によって処理されて、比較のための基準値を提供し、以後、前記比較のための基準値を使用して2つの基準値間の差の程度を収得することができる。一具現例によれば、共通計算方法は、2つのシグナルの除算である。
【0060】
例えば、本方法の方法によってシグナルの分析に使われる基準値を収得するために、2つのシグナルが減算によって処理される場合、前記2つのシグナルは、比較のための基準値を収得するために、除算によって処理されうる。
【0061】
本発明の一具現例によれば、第1基準値は、第2基準値よりも少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.5倍、1.7倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、または10倍さらに大きい。本発明の一具現例によれば、第2基準値は、第1基準値よりも少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.5倍、1.7倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、または10倍さらに大きい。
【0062】
一具現例によれば、第1基準値が、第2基準値と異なるか否かを決定するために比較する場合、前記基準値は、シグナルの除算によって計算される。一具現例によれば、第1基準値が、第2基準値と異なるか否かを決定するために基準値を計算する方法は、ターゲット核酸配列を検出するために基準値を計算する方法と同一または異なる。
【0063】
本発明の一具現例によれば、基準値のためのシグナル-発生手段は、ターゲット核酸配列の検出のためのシグナル-発生手段と同一であり得る。
【0064】
一具現例によれば、基準値を収得するためのインキュベーション条件は、サンプルの分析のためのインキュベーション条件と同一である。
【0065】
ターゲット核酸配列に対して、基準値は、成分(例えば、ターゲット核酸配列、シグナル-発生手段、酵素、またはdNTP)の量、バッファpHまたは反応時間を含む多様な反応条件で収得されうる。本発明の一具現例によれば、基準値は、反応完了時に飽和シグナルの提供には十分な反応条件下で収得されうる。本発明の一具現例によれば、基準値計算時に収得されたシグナル間の差は、特定の範囲を有し、基準値は、前記特定の範囲内で、または前記特定の範囲を参照して選択される。本発明の一具現例によれば、基準値は、前記特定の範囲の最大値または最小値で選択されうるか、または前記特定の範囲の最大値または最小値を参照して選択されうる。特に、基準値は、多様な条件から収得された基準値の標準偏差、許容誤差範囲、特異度、または敏感度を考慮して変形されうる。
【0066】
本発明は、ターゲット核酸配列に対するシグナルを提供するために、シグナル-発生手段を用いる。それぞれのターゲット核酸配列は、相応するシグナル-発生手段によって検出される。
【0067】
本願に使われた用語“シグナル-発生手段”は、ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルの発生に使われる任意の物質を意味し、これは、例えば、オリゴヌクレオチド、標識及び酵素を含む。選択的に、本願に使われた用語“シグナル-発生手段”は、シグナル発生のための物質を使用する任意の方法を意味する。
【0068】
本発明の一具現例によれば、インキュベーションは、シグナル-発生手段によるシグナルが発生する条件下に実施される。このような条件は、温度、塩の濃度、及び溶液のpHを含む。
【0069】
シグナル-発生手段として使われるオリゴヌクレオチドの例は、ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチド(例えば、プローブ及びプライマー)を含み;ターゲット核酸配列にハイブリダイズされたプローブまたはプライマーが切断されて断片を放出する場合、シグナル-発生手段として使われるオリゴヌクレオチドは、前記断片に特異的にハイブリダイズされるキャプチャーオリゴヌクレオチドを含み;前記キャプチャーオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされた断片が延びて、延長鎖を形成する場合、シグナル-発生手段として使われるオリゴヌクレオチドは、前記延長鎖に特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドを含み;シグナル-発生手段として使われるオリゴヌクレオチドは、前記キャプチャーオリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドを含み;及びシグナル-発生手段として使われるオリゴヌクレオチドは、その組合せを含む。
【0070】
シグナル発生原理は、同一であるとしても、使われた異なる配列のオリゴヌクレオチドを含むシグナル発生手段は、互いに異なると見なされる。
【0071】
標識は、オリゴヌクレオチドに連結されるか、自在な形態であり得る。標識は、延長反応の間に延長産物に挿入されうる。
【0072】
シグナル発生でオリゴヌクレオチドの切断が使われる場合、酵素の例は、5’-ヌクレアーゼ及び3’-ヌクレアーゼ、特に、5’-ヌクレアーゼ活性を有する核酸重合酵素、3’-ヌクレアーゼ活性を有する核酸重合酵素、またはFENヌクレアーゼを含む。
【0073】
本発明で、シグナルは、前記記載の多様な物質を使用して多様な方式で発生しうる。
【0074】
一具現例によれば、2つのシグナル-発生手段のうち少なくとも1つは、二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である。
【0075】
一具現例によれば、それぞれのターゲット核酸配列に対するシグナル-発生手段は、二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である。
【0076】
一具現例によれば、前記二量体は、二本鎖のターゲット核酸配列を含む。
【0077】
シグナル-発生手段と関連して、本願に使われた用語“二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させる”とは、検出されるシグナルが2つの核酸分子の結合または解離に依存的に提供されることを意味する。前記表現は、ターゲット核酸配列の存在に依存的に形成された二量体(例えば、標識を有する検出オリゴヌクレオチド及び核酸配列)によってシグナルが提供されることを含む。また、前記表現は、二量体(例えば、標識を有する検出オリゴヌクレオチド及び核酸配列)のハイブリダイゼーションの抑制によってシグナルが提供されることを含み、前記抑制は、他の二量体の形成によって起こる。
【0078】
特に、シグナルは、ターゲット核酸配列及び前記ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされた検出オリゴヌクレオチド間の二量体の形成によって発生する。
【0079】
本願に使われた用語“検出オリゴヌクレオチド”は、検出されるシグナルの発生に関与するオリゴヌクレオチドである。本発明の一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは、実際にシグナル発生に関与するオリゴヌクレオチドを含む。例えば、他のオリゴヌクレオチド(例えば、ターゲット核酸配列、または検出オリゴヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド)と検出オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションまたは非ハイブリダイゼーションがシグナル発生を決定する。
【0080】
本発明の一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識を含む。
【0081】
ターゲット核酸配列及び検出オリゴヌクレオチド間の二量体の形成によるシグナルは、スコーピオン方法(Whitcombe et al,Nature Biotechnology 17:804-807(1999))、サンライズ(または、Amplifluor)方法(Nazarenko et al,Nucleic Acids Research,25(12):2516-2521(1997)、及び米国特許第6,117,635号)、ルクス方法(米国特許第7,537,886号)、プレクサー(Plexor)方法(Sherrill C B,et al.,Journal of the American Chemical Society,126:4550-45569(2004))、分子ビーコン方法(Tyagi et al,Nature Biotechnology v.14 MARCH 1996)、ハイビーコン(HyBeacon)方法(French DJ et al.,Mol.Cell Probes,15(6):363-374(2001))、隣接したハイブリダイゼーションプローブ方法(Bernard,P.S.et al.,Anal.Biochem.,273:221(1999))、及びLNA方法(米国特許第6,977,295)を含む多様な方法によって発生しうる。
【0082】
特に、シグナルは、ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によって発生する。
【0083】
本願に使われた用語“媒介オリゴヌクレオチド”は、ターゲット核酸配列を含まない二量体の生産を媒介するオリゴヌクレオチドである。
【0084】
本発明の一具現例によれば、媒介オリゴヌクレオチドの切断自体は、シグナルを発生させず、媒介オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及び切断後に、前記切断によって形成された断片がシグナル発生のための連続した反応に関与する。
【0085】
一具現例によれば、媒介オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションまたは切断自体は、シグナルを発生させない。
【0086】
本発明の一具現例によれば、媒介オリゴヌクレオチドは、ターゲット核酸配列にハイブリダイズされ、切断されて断片を放出することによって、二量体の生産を媒介するオリゴヌクレオチドを含む。特に、前記断片は、キャプチャーオリゴヌクレオチド上で前記断片の延長によって二量体の生産を媒介する。
【0087】
本発明の一具現例によれば、媒介オリゴヌクレオチドは、(i)ターゲット核酸配列に相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含む3’-ターゲティング部位、及び(ii)ターゲット核酸配列に非相補的なヌクレオチド配列を含む5’-タギング部位を含む。
【0088】
本発明の一具現例によれば、媒介オリゴヌクレオチドの切断は、断片を放出し、前記断片は、キャプチャーオリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズされ、キャプチャーオリゴヌクレオチド上で延びる。
【0089】
本発明の一具現例によれば、ターゲット核酸配列にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドは、切断されて断片を放出し、前記断片は、キャプチャーオリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズされ、前記断片は、延びて延長鎖を形成し、これは、前記延長鎖及びキャプチャーオリゴヌクレオチド間の延長二量体の形成を引き起こして、ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルを提供する。
【0090】
本発明の一具現例によれば、前記延長鎖に相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含む第3オリゴヌクレオチドが使われる場合、前記第3オリゴヌクレオチド及び延長鎖のハイブリダイゼーションは、他の類型の二量体を形成して、ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルを提供する。
【0091】
本発明の一具現例によれば、キャプチャーオリゴヌクレオチドに相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含む第3オリゴヌクレオチドが使われる場合、第3オリゴヌクレオチド及び前記キャプチャーオリゴヌクレオチド間の二量体の形成は、前記延長鎖及び前記キャプチャーオリゴヌクレオチド間の二量体の形成によって抑制されて、ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルを提供する。
【0092】
本発明の一具現例によれば、前記断片、延長鎖、キャプチャーオリゴヌクレオチド、第3オリゴヌクレオチド、またはこれらの組合せが検出オリゴヌクレオチドとして作用する。
【0093】
媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によるシグナルは、PTOCE方法(WO2012/096523)、PCE-SH方法(WO2013/115442)、及びPCE-NH方法(PCT/KR2013/012312)を含む多様な方法によって発生しうる。
【0094】
前記文献に開示された用語と関連して、オリゴヌクレオチドの相応する例は、下記の通りである:媒介オリゴヌクレオチドは、PTO(プロービングアンドタギングオリゴヌクレオチド)に相応し、キャプチャーオリゴヌクレオチドは、CTO(キャプチャリングアンドテンプレーティングオリゴヌクレオチド)に相応し、第3オリゴヌクレオチドは、SO(シグナリングオリゴヌクレオチド)、またはHO(ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド)に相応する。SO、HO、CTO、延長鎖、またはこれらの組合せは、検出オリゴヌクレオチドとして役割を果たせる。
【0095】
媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によるシグナルは、媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によって他の二量体の形成が抑制されることによって、提供されたシグナル(例えば、PCE-NH)を含む。
【0096】
例えば、媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によるシグナルが、PTOCE方法によって発生する場合、シグナル-発生手段は、ターゲット核酸配列に相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含むアップストリームオリゴヌクレオチド及びPTO(プロービングアンドタギングオリゴヌクレオチド)、CTO(キャプチャリングアンドテンプレーティングオリゴヌクレオチド)、適した標識、及び5’-ヌクレアーゼ活性を有する鋳型-依存的核酸重合酵素を含む。PTOは、(i)ターゲット核酸配列に相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含む3’-ターゲティング部位、及び(ii)ターゲット核酸配列に非常補的なヌクレオチド配列を含む5’-タギング部位を含む。CTOは、3’から5’方向に、(i)PTOの5’-タギング部位または5’-タギング部位の一部に相補的なヌクレオチド配列を含むキャプチャリング部位、及び(ii)PTOの5’-タギング部位及び3’-ターゲティング部位に非常補的なヌクレオチド配列を含むテンプレーティング部位を含む。
【0097】
PTOCE方法によるシグナル発生の特定の例は、下記の段階を含む:
(a)ターゲット核酸配列をアップストリームオリゴヌクレオチド及びPTOとハイブリダイズさせる段階;(b)前記PTOの切断のための条件下で5’-ヌクレアーゼ活性を有する酵素に段階(a)の結果物を接触させる段階であって;前記アップストリームオリゴヌクレオチドまたはその延長鎖は、前記5’-ヌクレアーゼ活性を有する酵素によるPTOの切断を誘導し、前記切断は、前記PTOの5’-タギング部位または5’-タギング部位の一部を含む断片を放出し;(c)前記PTOから放出された断片とCTOとをハイブリダイズさせる段階であって;前記PTOから放出された断片は、前記CTOのキャプチャリング部位にハイブリダイズされ;(d)前記段階(c)の結果物及び鋳型-依存的核酸重合酵素を使用して延長反応を実施する段階であって;前記CTOのキャプチャリング部位にハイブリダイズされた断片は、延びて延長二量体が形成され;前記延長二量体は、(i)前記断片の配列及び/または長さ、(ii)前記CTOの配列及び/または長さ、または(iii)前記断片の配列及び/または長さ、及び前記CTOの配列及び/または長さによって調節可能なTm値を有し;前記延長二量体は、(i)前記断片及び/または前記CTOに連結された少なくとも1つの標識、(ii)延長反応の間に延長二量体内に挿入された標識、(iii)延長反応の間に延長二量体内に挿入された標識及び断片及び/またはCTOに連結された標識、または(iv)インターカレーティング標識によってターゲットシグナルを提供し;及び(e)前記延長二量体が、その二本鎖の形態を保持する既定の温度でターゲットシグナルを測定することによって、前記延長二量体を検出する段階であって、前記延長二量体の存在は、ターゲット核酸配列の存在を示す。このような場合、前記方法は、反復サイクルの間に変性を含み、前記段階(a)~(e)の全部または一部を繰り返すことをさらに含む。
【0098】
文言“反復サイクルの間に変性”で、用語“変性”は、二本鎖核酸分子を一本鎖核酸分子に分離することを意味する。
【0099】
PTOCE方法の段階(a)で、アップストリームオリゴヌクレオチドの代わりに、ターゲット核酸配列の増幅のためのプライマーセットが使われる。このような場合、前記方法は、反復サイクルの間に変性を含み、前記段階(a)~(e)の全部または一部を繰り返すことをさらに含む。
【0100】
PTOCE方法は、CTOにハイブリダイズされたPTO断片が延びて、延長鎖を形成した後、前記延長が検出される過程として分類される。PTOCE方法は、延長鎖及びCTOの間の二量体を使用して延長鎖の形成を検出することを特徴とする。
【0101】
延長鎖の形成を検出する他の接近法がある。例えば、延長鎖の形成は、前記延長鎖に特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドを使用して検出されうる(例えば、PCE-SH方法)。この方法で、シグナルは、(i)延長鎖に特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドに連結された標識、(ii)延長鎖に特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドに連結された標識及びPTO断片に連結された標識、(iii)延長鎖に特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドに連結された標識及び延長反応の間に延長鎖に挿入された標識、または(iv)延長鎖に特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドに連結された標識及びインターカレーティング染料から提供されうる。選択的に、シグナルは、(i)延長鎖に連結された標識、または(ii)インターカレーティング染料から提供されうる。
【0102】
選択的に、延長鎖の形成の検出は、CTO及び前記CTOに特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの抑制を検出する他の方法(例えば、PCE-NH方法)によって実施される。このような抑制は、ターゲット核酸配列の存在を示すものと見なされる。シグナルは、(i)CTOにハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドに連結された標識、(ii)CTOに連結された標識、(iii)CTOにハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドに連結された標識及びCTOに連結された標識、または(iv)インターカレーティング標識から提供されうる。
【0103】
一具現例によれば、CTOに特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは、PTO断片と重なる配列を有する。
【0104】
一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは、延長鎖に特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド(例えば、PCE-SH方法)及びCTOに特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド(例えば、PCE-NH方法)を含む。一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは、反応の間に生成された延長鎖またはCTOを含む。
【0105】
PTOCE-基盤の方法は、一般的にターゲット核酸配列の存在に依存的な延長鎖の形成を伴う。用語“PTOCE-基盤の方法”は、PTOの切断及び延長を通じる延長鎖の形成を含む、シグナルを提供する多様な方法を包括するために本願で使われる。
【0106】
PTOCE-基盤の方法によるシグナル発生の例は、下記の段階を含む:(a)ターゲット核酸配列をアップストリームオリゴヌクレオチド及びPTOとハイブリダイズさせる段階;(b)前記PTOの切断のための条件下で5’-ヌクレアーゼ活性を有する酵素に前記段階(a)の結果物を接触させる段階であって;前記アップストリームオリゴヌクレオチドまたはその延長鎖は、5’-ヌクレアーゼ活性を有する酵素によるPTOの切断を誘導し、前記切断は、PTOの5’-タギング部位または5’-タギング部位の一部を含む断片を放出し;(c)前記PTOから放出された断片をCTOとハイブリダイズさせる段階であって;前記PTOから放出された断片は、CTOのキャプチャリング部位にハイブリダイズされ;(d)段階(c)の結果物及び鋳型-依存的核酸重合酵素を使用して延長反応を実施する段階であって;前記CTOのキャプチャリング部位にハイブリダイズされた断片は、延びて延長鎖を形成し;及び(e)延長鎖の存在に依存的に発生するシグナルを検出して、前記延長鎖の形成を検出する段階。段階(a)で、アップストリームオリゴヌクレオチドの代わりに、ターゲット核酸配列の増幅のためのプライマーセットが使われる。この場合、前記方法は、反復サイクルの間に変性を含み、前記段階(a)~(e)の全部または一部を繰り返すことをさらに含む。
【0107】
一具現例によれば、二量体の形成によって発生したシグナルは、二量体のハイブリダイゼーション(例えば、二量体自体のハイブリダイゼーションまたは第3オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション)によって誘導されたシグナルまたは二量体の形成による第3オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの抑制によって誘導されたシグナルを含む。
【0108】
一具現例によれば、ターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列に対するシグナル-発生手段は、ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で二量体が形成されることによるシグナル-発生手段である。
【0109】
一具現例によれば、各ターゲット核酸配列に対するシグナル-発生手段は、ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で二量体が形成されることによるシグナル-発生手段である。
【0110】
一具現例によれば、2つのシグナル-発生手段のうち少なくとも1つのシグナル-発生手段は、検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である。
【0111】
一具現例によれば、2つのシグナル-発生手段いずれもは、検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段である。
【0112】
特に、シグナルは、検出オリゴヌクレオチドとターゲット核酸配列とのハイブリダイゼーション以後、検出オリゴヌクレオチドの切断によって発生する。
【0113】
検出オリゴヌクレオチドとターゲット核酸配列とのハイブリダイゼーション以後、検出オリゴヌクレオチドの切断によるシグナルは、TaqManプローブ方法(米国特許第5,210,015号、及び第5,538,848号)を含む多様な方法によって発生しうる。
【0114】
シグナルがTaqManプローブ方法によって発生する場合、シグナル-発生手段は、ターゲット核酸配列の増幅のためのプライマーセット、適した標識(例えば、相互作用的二重標識)を有するTaqManプローブ及び5’-ヌクレアーゼ活性を有する核酸重合酵素を含む。ターゲット核酸配列にハイブリダイズされたTaqManプローブは、ターゲット増幅の間に切断されて、ターゲット核酸配列の存在を示すシグナルを発生させる。
【0115】
TaqManプローブ方法によってシグナルを発生させる特定の例は、(a)プライマーセット及び適した標識(例えば、相互作用的二重標識)を有するTaqManプローブをターゲット核酸配列とハイブリダイズさせる段階;(b)前記段階(a)の結果物及び5’-ヌクレアーゼ活性を有する核酸重合酵素を使用してターゲット核酸配列を増幅させる段階であって、前記TaqManプローブは、切断されて標識を放出し;及び(c)前記放出された標識からシグナル発生を検出する段階を含む。
【0116】
特に、シグナルは、ターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で検出オリゴヌクレオチドの切断によって発生する。
【0117】
本発明の一具現例によれば、ターゲット核酸配列にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドが切断されて断片を放出する場合、前記断片は、検出オリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズされ、前記断片は、検出オリゴヌクレオチドの切断を誘導する。
【0118】
本発明の一具現例によれば、ターゲット核酸配列にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドが切断されて断片を放出する場合、前記断片は、延びてキャプチャーオリゴヌクレオチドに相補的なハイブリダイジングヌクレオチド配列を含む検出オリゴヌクレオチドを切断する。
【0119】
媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式の検出オリゴヌクレオチドの切断によるシグナルは、インベーダー分析(米国特許第5,691,142号)、PCEC(PTO Cleavage and Extension-Dependent Cleavage)方法(WO第2012/134195号)、及び米国特許第7,309,573号に記載の方法を含む多様な方法によって発生しうる。特に、米国特許第7,309,573号に記載の方法は、切断によるシグナル発生を使用するPTOCE-基盤の方法の1つと見なされ、前記方法で、延長鎖の形成によってCTOに特異的にハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドの切断を検出することによって、前記延長鎖の形成が検出されうる。インベーダー分析は、媒介オリゴヌクレオチドの切断によって断片を形成し、断片の延長なしに連続した切断反応を誘導する。
【0120】
本発明の一具現例によれば、シグナルが検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で発生する場合、検出オリゴヌクレオチドの切断は、シグナル変化を誘導するか、検出される標識された断片を放出させる。
【0121】
シグナル-発生手段が検出オリゴヌクレオチドの切断によってのみではなく、二量体の形成によってシグナルを発生させる場合、前記シグナル-発生手段は、切断によってシグナルを発生させるのに使われる限り、切断によってシグナルを提供するシグナル発生手段として見なされる。
【0122】
検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段が、検出オリゴヌクレオチドの切断時にシグナルを発生させるが、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されるシグナルは、互いに異なる。前記検出されたシグナルの差(例えば、シグナル強度の差)は、検出オリゴヌクレオチドとターゲット核酸配列とのハイブリダイゼーション及び/または標識(例えば、染料)のシグナル発生に対する温度影響によるシグナルのためであり得る。このような差は、TaqManプローブ方法を使用した実施例で扱われる。
【0123】
興味深くも、本発明は、異なる検出温度及び検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段を使用して(例えば、TaqManプローブ方法)2つのターゲット配列を検出することができる。
【0124】
本発明の具現例によれば、ターゲット核酸配列に対するシグナル-発生手段は、検出オリゴヌクレオチドの切断によるシグナル-発生手段、及び二量体の形成によるシグナル-発生手段の組合せである。
【0125】
一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識を含む。
【0126】
本発明の一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含みうる。本発明の一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドが複数のオリゴヌクレオチドを含む場合、これは、多様な方式で標識を有しうる。例えば、複数のオリゴヌクレオチドのうち、1つのオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの標識を有しうるか、複数のオリゴヌクレオチドいずれもが少なくとも1つの標識を有しうるか、またはオリゴヌクレオチドの1つの部位が少なくとも1つの標識を有し、他の部位は、標識を有さない。
【0127】
2つのシグナル-発生手段によって発生したシグナルは、単一類型の検出器によって区別されない。用語“単一類型の検出器によって区別されないシグナル”は、これらの同一であるか、実質的に同一なシグナル特性(例えば、光学的特性、放出波長及び電気的シグナル)によってシグナルが単一類型の検出器によって互いに区別されないことを意味する。例えば、2つのターゲット核酸配列に対して同じ標識(例えば、FAM)が使われ、FAMからの放出波長を検出するために単一類型の検出器が使われる場合、シグナルは、区別されるように検出されない。
【0128】
本願に使われた用語“単一類型のシグナル”は、同一であるか、実質的に同一なシグナル特性(例えば、光学的特性、放出波長及び電気的シグナル)を提供するシグナルを意味する。例えば、FAM及びCAL Fluor 610は、異なる類型のシグナルを提供する。
【0129】
本願に使われた用語“単一類型の検出器”は、単一類型のシグナルのための検出手段を意味する。幾つかの異なる類型のシグナルのための幾つかのチャネル(例えば、光ダイオード)を含む検出器で、各チャネル(例えば、光ダイオード)が“単一類型の検出器”に該当する。
【0130】
本発明の一具現例によれば、2つのシグナル-発生手段は、同じ標識を含み、前記標識からのシグナルは、単一類型の検出器によって区別されない。
【0131】
本発明で有用な標識は、当該技術分野で知られた多様な標識を含む。例えば、本発明で有用な標識は、単一標識、相互作用二重標識、インターカレーティング染料、及び挿入(incorporating)標識を含む。
【0132】
単一標識は、例えば、蛍光標識、発光標識、化学発光標識、電気化学標識、及び金属標識を含む。一具現例によれば、単一標識は、二本鎖に存在するか、または一本鎖に存在するかによって異なるシグナル(例えば、異なるシグナル強度)を提供する。一具現例によれば、単一標識は、蛍光標識である。本発明で使われる単一蛍光標識の望ましい類型及び結合サイトは、米国特許第7,537,886号及び第7,348,141号に開示されており、その教示内容は、その全体が参考として本願に含まれている。例えば、単一蛍光標識は、JOE、FAM、TAMRA、ROX、及びフルオレセイン-ベース標識を含む。単一標識は、多様な方法によってオリゴヌクレオチドに連結されうる。例えば、標識は、炭素原子を含有するスぺーサ(例えば、3-カーボンスぺーサ、6-カーボンスぺーサ、または12-カーボンスぺーサ)を通じてプローブに連結される。
【0133】
大ターゲットである相互作用的標識システムであって、FRET(fluorescence resonance energy transfer)標識システムは、蛍光レポーター分子(供与体分子)及びクエンチャー分子(受容体分子)を含む。FRETで、エネルギー供与体は、蛍光性であるか、エネルギー受容体は、蛍光性または非蛍光性であり得る。相互作用的標識システムの他の形態で、エネルギー供与体は、非蛍光性、例えば、発色団(chromophore)であり、エネルギー受容体は、蛍光性である。相互作用的標識システムのさらに他の形態で、エネルギー供与体は、発光性、例えば、生物発光性、化学発光性、電気化学発光性であり、受容体は、蛍光性である。相互作用的標識システムは、“接触-媒介クエンチング(on contact-mediated quenching)”に基づいた二重標識を含む(Salvatore et al.,Nucleic Acids Research,2002(30)no.21 e122、及びJohansson et al.,J.AM.CHEM.SOC 2002(124)pp 6950-6956)。相互作用的標識システムは、少なくとも2つの分子(例えば、染料)間の相互作用によってシグナル変化を誘導する任意の標識システムを含む。
【0134】
本発明に有用なレポーター分子及びクエンチャー分子は、当該技術分野に知られた任意の分子を含みうる。これらの例は、下記の通りである:Cy2TM(506)、YO-PROTM-1(509)、YOYOTM-1(509)、Calcein(517)、FITC(518)、FluorXTM(519)、AlexaTM(520)、Rhodamine 110(520)、Oregon GreenTM 500(522)、Oregon GreenTM 488(524)、RiboGreenTM(525)、Rhodamine GreenTM(527)、Rhodamine 123(529)、Magnesium GreenTM(531)、Calcium GreenTM(533)、TO-PROTM-1(533)、TOTO1(533)、JOE(548)、BODIPY530/550(550)、Dil(565)、BODIPY TMR(568)、BODIPY558/568(568)、BODIPY564/570(570)、Cy3TM(570)、AlexaTM 546(570)、TRITC(572)、Magnesium OrangeTM(575)、Phycoerythrin R&B(575)、Rhodamine Phalloidin(575)、Calcium OrangeTM(576)、Pyronin Y(580)、Rhodamine B(580)、TAMRA(582)、Rhodamine RedTM(590)、Cy3.5TM(596)、ROX(608)、Calcium CrimsonTM(615)、AlexaTM 594(615)、Texas Red(615)、Nile Red(628)、YO-PROTM-3(631)、YOYOTM-3(631)、R-phycocyanin(642)、C-Phycocyanin(648)、TO-PROTM-3(660)、TOTO3(660)、DiD DilC(5)(665)、Cy5TM(670)、Thiadicarbocyanine(671)、Cy5.5(694)、HEX(556)、TET(536)、Biosearch Blue(447)、CAL Fluor Gold 540(544)、CAL Fluor Orange 560(559)、CAL Fluor Red 590(591)、CAL Fluor Red 610(610)、CAL Fluor Red 635(637)、FAM(520)、Fluorescein(520)、Fluorescein-C3(520)、Pulsar 650(566)、Quasar 570(667)、Quasar 670(705)、及びQuasar 705(610)。カッコ内の数字は、nm単位の最大放出波長である。望ましくは、レポーター分子及びクエンチャー分子は、JOE、FAM、TAMRA、ROX、及びフルオレセイン-ベース標識を含む。
【0135】
適した蛍光分子及び適したレポーター-クエンチャー対は、下記のように多様な文献に開示されている:Pesce et al.,editors,Fluorescence Spectroscopy(Marcel Dekker,New York,1971);White et al.,Fluorescence Analysis:A Practical Approach(Marcel Dekker,New York,1970);Berlman,Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules,2nd Edition(Academic Press,New York,1971);Griffiths,Color AND Constitution of Organic Molecules(Academic Press,New York,1976);Bishop,editor,Indicators(Pergamon Press,Oxford,1972);Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(Molecular Probes,Eugene,1992);Pringsheim,Fluorescence and Phosphorescence(Interscience Publishers,New York,1949);Haugland,R.P.,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,6th Edition(Molecular Probes,Eugene,Oreg.,1996);米国特許第3,996,345号及び第4,351,760号。
【0136】
幅広い波長または特定波長の蛍光をクエンチングすることができる非蛍光クエンチャー分子(例えば、ブラッククエンチャーまたはダーククエンチャー)が、本発明で使われうるということに留意する。
【0137】
レポーター及びクエンチャー分子を含むシグナリングシステムで、レポーターは FRETの供与体を含み、クエンチャーは、FRETの他のパートナー(受容体)を含む。例えば、フルオレセイン染料がレポーターとして使われ、ローダミン染料が、クエンチャーとして使われる。
【0138】
相互作用的二重標識は、二量体のうち、1本の鎖に連結されうる。相互作用的二重標識を含有する鎖が一本鎖の状態を保持する場合、前記鎖は、ヘアピンまたはランダムコイル構造を形成して、相互作用的二重標識間のクエンチングを誘導する。前記鎖が二量体を形成する場合、クエンチングは減る。選択的に、相互作用的二重標識が鎖上に近接して位置したヌクレオチドに連結される場合、相互作用的二重標識の間にクエンチングが起こる。前記鎖が二量体を形成した後、切断される場合、クエンチングは減る。
【0139】
相互作用的二重標識のそれぞれは、二量体の2本の鎖のそれぞれに連結されうる。二量体の形成は、クエンチングを誘導し、二量体の変性は、アンクエンチングを誘導する。選択的に、2本の鎖のうち、1つが切断される場合、アンクエンチングが誘導されうる。
【0140】
本発明で有用な例示されたインターカレーティング染料は、SYBRTM Green I、PO-PROTM-1、BO-PROTM-1、SYTOTM43、SYTOTM44、SYTOTM45、SYTOXTMBlue、POPOTM-1、POPOTM-3、BOBOTM-1、BOBOTM-3、LO-PROTM-1、JO-PROTM-1、YO-PROTM1、TO-PROTM1、SYTOTM11、SYTOTM13、SYTOTM15、SYTOTM16、SYTOTM20、SYTOTM23、TOTOTM-3、YOYOTM3、GelStarTM、及びチアゾールオレンジを含む。インターカレーティング染料は、二本鎖核酸分子に特異的に挿入されてシグナルを発生させる。
【0141】
挿入標識がプライマー延長の間に標識を挿入してシグナルを発生させる過程に使われる(例えば、Plexor方法、Sherrill C B,et al.,Journal of the American Chemical Society,126:4550-45569(2004))。また、挿入標識は、ターゲット核酸配列にハイブリダイズされた媒介オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式で形成された二量体によるシグナル発生で使われる。
【0142】
挿入標識は、一般的にヌクレオチドに連結されうる。また、非自然塩基を有するヌクレオチドが使われる。
【0143】
本願に使われた用語“非自然塩基”は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(c)、及びウラシル(U)のような自然塩基の誘導体を意味し、これらは、水素-結合塩基対を形成しうる。本願に使われた用語“非自然塩基”は、例えば、米国特許第5,432,272号、第5,965,364号、第6,001,983号、及び第6,037,120号に記載のように、親化合物として自然塩基から異なる塩基対形成パターンを有する塩基を含む。非自然塩基間の塩基対形成は、自然塩基のように2つまたは3つの水素結合を含む。また、非自然塩基間の塩基対形成は、特定の方式で形成される。非自然塩基の特定の例は、塩基対組合せで下記の塩基を含む:iso-C/iso-G、iso-dC/iso-dG、K/X、H/J、及びM/N(米国特許第7,422,850号参照)。
【0144】
PTOCE方法によってシグナルが発生する場合、延長反応の間に挿入されたヌクレオチドは、第1非自然塩基を有し、CTOは、前記第1非自然塩基に特異的結合親和性がある第2非自然塩基を有するヌクレオチドを有しうる。
【0145】
本願に使われた用語“ターゲット核酸”、“ターゲット核酸配列”または“ターゲット配列”は、検出または定量のための関心のある核酸配列を称する。ターゲット核酸配列は、一本鎖だけではなく、二本鎖の配列を含む。ターゲット核酸配列は、核酸サンプル内に初期に存在する配列だけではなく、反応で新たに生成された配列を含む。
【0146】
ターゲット核酸配列は、任意のDNA(gDNA及びcDNA)、RNA分子、これらのハイブリッド(キメラ核酸)を含みうる。前記配列は、二本鎖または一本鎖の形態であり得る。出発物質として核酸が二本鎖である場合、前記2本の鎖を一本鎖または部分的に一本鎖の形態で作ることが望ましい。鎖を分離する公知の方法は、加熱、アルカリ、ホルムアミド、ウレア、及びグリコール酸処理、酵素的方法(例えば、ヘリカーゼ作用)、及び結合タンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、鎖分離は、80℃~105℃の範囲の温度で加熱することで達成されうる。このような処理を果たすための一般的な方法は、文献[Joseph Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)]によって提供される。
【0147】
mRNAを出発物質として用いる場合、アニーリング段階を実施する前に逆転写段階が必要であり、その詳細な内容は、文献[Joseph Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001);及びNoonan,K.F.et al.,Nucleic Acids Res.16:10366(1988))]から確認される。逆転写のために、mRNAのポリA末端にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドdTプライマー、ランダムプライマーまたはターゲット-特異的プライマーが使われる。
【0148】
ターゲット核酸配列は、任意の自然原核細胞核酸、眞核細胞核酸(例えば、原生動物及び寄生虫、真菌類、酵母、高等植物、下等及び哺乳動物及びヒトを含む高等動物)、ウイルス(例えば、ヘルペスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、エプスタインバーウイルス、肝塩ウイルス、ポリオウイルスなど)核酸、またはウィロイド核酸を含む。また、核酸分子は、組替えによって生産または生産されうるか、または化学的に合成または合成されうる任意の核酸分子であり得る。したがって、核酸分子は、自然で発見または発見されないこともある。ターゲット核酸配列は、公知または公知されていない配列を含みうる。
【0149】
段階(b):サンプルとシグナル-発生手段のインキュベーション及びシグナル検出
分析するサンプルを2つのターゲット核酸配列を検出するための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段と共にインキュベーションし、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で、前記2つのシグナル-発生手段からのシグナルを検出する。
【0150】
一具現例によれば、相応するターゲット核酸配列が存在する相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度いずれもでシグナルを発生させるように、それぞれの相応するターゲット核酸配列の検出のためのそれぞれのシグナル-発生手段が設計される。
【0151】
前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ、前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されない。
【0152】
一具現例によれば、サンプルの分析のためのインキュベーション条件は、第1基準値及び第2基準値を収得するためのインキュベーション条件と同一である。
【0153】
シグナルは、シグナル検出からの多様なシグナル特徴、例えば、シグナル強度[例えば、RFU(相対的蛍光単位)値、または増幅を実施する場合、特定サイクル、選択されたサイクルまたはエンドポイントでのRFU値]、シグナル変化形状(または、パターン)またはCt値、または前記特徴を数学的に処理することで収得された値を含む。
【0154】
一具現例によれば、基準値またはサンプル分析と関連した用語“シグナル”は、検出温度から収得されたシグナル自体だけではなく、前記シグナルを数学的に処理することによって、提供された変形されたシグナルを含む。
【0155】
本発明の一具現例によれば、リアルタイムPCRによって増幅曲線が収得される場合、増幅曲線からの多様なシグナル値(または、特徴)が、ターゲット存在の決定のために選択されて使われる(強度、Ct値、または増幅曲線データ)。
【0156】
一具現例によれば、ターゲット核酸配列の存在に使われるシグナルは、有意なシグナルである。すなわち、前記シグナルは、ターゲット核酸配列の存在に依存的に発生するシグナルである。一具現例によれば、検出されたシグナルの有意性は、閾値を使用して決定されうる。例えば、閾値は、検出器のバックグラウンドシグナル、敏感度または使われた標識を考慮して、陰性対照群からあらかじめ決定された後、シグナルの有意性が決定されうる。
【0157】
本発明の一具現例によれば、段階(b)は、核酸増幅が伴われるシグナル増幅過程で実施される。本発明の一具現例によれば、段階(b)は、核酸増幅なしにシグナル増幅過程で実施される。
【0158】
本発明で、シグナル-発生手段によって発生するシグナルは、ターゲット増幅と同時に増幅されうる。選択的に、シグナルは、ターゲット増幅なしに増幅されうる。
【0159】
本発明の一具現例によれば、シグナル発生は、ターゲット増幅と共にシグナル増幅を含む過程で実施される。
【0160】
本発明の一具現例によれば、ターゲット増幅は、PCR(重合酵素連鎖反応)によって実施される。PCRは、ターゲット増幅のために当業者に広く用いられ、これは、ターゲット配列の変性、ターゲット配列とプライマーとの間のアニーリング(ハイブリダイゼーション)及びプライマー延長のサイクルを含む(Mullis et al.米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,800,159号;Saiki et al.,(1985)Science 230,1350-1354)。シグナルは、前述したシグナル発生方法(例えば、TaqMan方法及びPTOCE-基盤の方法)をPCR過程に適用することで増幅されうる。一具現例によれば、本発明は、リアルタイムPCR方法によってシグナルを提供する。一具現例によれば、ターゲット核酸配列の増幅は、PCR(重合酵素連鎖反応)、LCR(リガーゼ連鎖反応、Wiedmann M,et al.,“Ligase chain reaction(LCR)-overview and applications.”PCR Methods and Applications 1994 Feb;3(4):S51-64参照)、GLCR(ギャップフィリングLCR、WO第90/01069号、EP第439182号、及びWO第93/00447号参照)、Q-beta(Q-βレプリカーゼ増幅、Cahill P,et al.,Clin Chem.,37(9):1482-5(1991)、米国特許第5556751号参照)、SDA(鎖置換増幅、G T Walker et al.,Nucleic Acids Res.20(7):1691-1696(1992)、EP第497272号参照)、NASBA(核酸配列-ベース増幅、Compton,J.Nature 350(6313):912(1991))、TMA(転写-媒介増幅、Hofmann WP et al.,J Clin Virol.32(4):289-93(2005);米国特許第5888779号参照)、またはRCA(ローリングサークル増幅、Hutchison C.A.et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA.102:1733-217336(2005)参照)によって行われる。
【0161】
前記記載の増幅方法は、温度を変化または変化させない一連の反応の繰り返しを通じてターゲット配列を増幅させることができる。一連の反応の繰り返しを含む増幅の単位は、“サイクル”と表現される。サイクルの単位は、増幅方法によって繰り返し回数または時間として表現される。
【0162】
例えば、シグナルの検出は、増幅の各サイクル、選択された幾つかのサイクルまたは反応のエンドポイントで実施される。一具現例によれば、少なくとも2つのサイクルでシグナルが検出される場合、それぞれのサイクルでのシグナルの検出は、あらゆる検出温度または一部選択された検出温度で実施される。本発明の一具現例によれば、検出は、奇数サイクルでは相対的高温検出温度で実施され、偶数サイクルでは相対的高温検出温度で実施される。
【0163】
本発明の一具現例によれば、インキュベーションは、シグナル-発生手段によるシグナル発生だけではなく、ターゲット増幅が可能な条件で行われる。
【0164】
ターゲット核酸配列の増幅は、増幅のためのプライマーセット及び核酸重合酵素を含むターゲット増幅手段によって達成される。
【0165】
本発明の一具現例によれば、ヌクレアーゼ活性(例えば、5’-ヌクレアーゼ活性または3’-ヌクレアーゼ活性)を有する核酸重合酵素が使われる。本発明の一具現例によれば、ヌクレアーゼ活性のない核酸重合酵素が使われる。
【0166】
本発明で有用な核酸重合酵素は、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(Tth)、Thermus filiformis、Thermis flavus、Thermococcus literalis、Thermus antranikianii、Thermus caldophilus、Thermus chliarophilus、Thermus flavus、Thermus igniterrae、Thermus lacteus、Thermus oshimai、Thermus ruber、Thermus rubens、Thermus scotoductus、Thermus silvanus、Thermus species Z05、Thermus species sps 17、Thermus thermophilus、Thermotoga maritima、Thermotoga neapolitana、Thermosipho africanus、Thermococcus litoralis、Thermococcus barossi、Thermococcus gorgonarius、Thermotoga maritima、Thermotoga neapolitana、Thermosipho africanus、Pyrococcus woesei、Pyrococcus horikoshii、Pyrococcus abyssi、Pyrodictium occultum、Aquifex pyrophilus、及びAquifex aeolieusを含む、多様なバクテリア種から収得された熱安定性DNA重合酵素である。特に、熱安定性DNA重合酵素は、Taq重合酵素である。
【0167】
本発明の一具現例によれば、ターゲット核酸配列の増幅は、非対称PCRによって達成される。プライマーの比率は、ダウンストリームオリゴヌクレオチドの切断またはハイブリダイゼーションを考慮して選択されうる。
【0168】
本発明の一具現例によれば、段階(a)及び/または段階(b)は、核酸増幅のないシグナル増幅工程で実施される。
【0169】
シグナルがオリゴヌクレオチドの切断を含む方法によって発生する場合、シグナルは、ターゲット増幅なしに増幅されうる。例えば、段階(a)及び/または段階(b)は、CPT方法(Duck P,et al.,Biotechniques,9:142-148(1990))、インベーダー分析(米国特許第6,358,691号、及び第6,194,149号)、PTOCE-基盤の方法(例えば、PCE-SH方法、PCE-NH方法、及びPCEC方法)またはCER方法(WO第2011/037306号)によってターゲット配列の増幅ないシグナル増幅で実施される。
【0170】
前述したシグナル増幅方法は、温度を変化または変化させない一連の反応の繰り返しを通じてシグナルを増幅させることができる。一連の反応の繰り返しを含むシグナル増幅の単位は、“サイクル”として表現される。サイクルの単位は、増幅方法によって繰り返し回数または時間として表現される。
【0171】
例えば、シグナルの発生及び検出は、増幅の各サイクル、選択された幾つかのサイクルまたは反応のエンドポイントで実施される。
【0172】
シグナルを発生させるために、サンプルを2つのシグナル-発生手段とインキュベーション(反応)する間に、または後に、発生したシグナルは、単一類型の検出器を使用して検出されうる。
【0173】
一具現例によれば、ターゲット核酸配列に対する検出温度は、シグナル-発生手段によってシグナル発生を可能にする温度範囲を考慮してあらかじめ決定される。
【0174】
本発明は、シグナル-発生手段に依存的な方式でシグナル発生を可能にする特定温度範囲が存在するということを用いる。
【0175】
例えば、シグナル-発生手段が2つの核酸分子間のハイブリダイゼーション(または、結合)時には、シグナルを発生させ、これら間の非ハイブリダイゼーション(または、解離)時には、シグナルを発生しない場合、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションを可能にする温度では、シグナルが発生するが、2つの核酸分子間にハイブリダイズされない温度では、シグナルが発生しない。このように、シグナル発生(すなわち、シグナル検出)を可能な特定温度範囲とシグナル発生が不可能な他の温度範囲とが存在する。前記温度範囲は、シグナル-発生手段で使われる2つの核酸分子のハイブリッドのTm値によって影響を受ける。
【0176】
切断後、標識を有する切断された断片を使用するシグナル発生方法が用いられる場合、シグナルは、理論的に任意の温度(例えば、30℃~99℃)から検出されうる。
【0177】
検出温度は、シグナル発生手段によってシグナル発生が可能な温度範囲から選択される。
【0178】
一具現例によれば、ターゲット核酸配列を検出するためのシグナル-発生手段は、2つの検出温度で互いに異なるシグナル(例えば、シグナル強度)を提供するシグナル-発生手段であり得る。
【0179】
一具現例によれば、検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段(例えば、TaqManプローブ方法)が用いられる場合、シグナル-発生手段からのシグナルは、検出オリゴヌクレオチドとターゲット核酸配列とのハイブリダイゼーション及び染料からのシグナル発生が温度に影響を受けることができるという点で検出温度によって異なる。例えば、蛍光レポーター分子及びクエンチャー分子で標識されたプローブは、検出温度によって異なるシグナルを発生させ、プローブは、相対的高温検出温度よりも相対的低温検出温度でさらに高いシグナルを発生させることができる。
【0180】
これと関連して、本発明は、異なる検出温度及び検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させるシグナル-発生手段を使用することによって、2つのターゲット配列を検出することができる。本発明の具現例によれば、2つのシグナル-発生手段いずれもは、検出オリゴヌクレオチドの切断によるシグナル-発生手段である。
【0181】
検出温度は、シグナル発生手段によってシグナル発生が可能な温度範囲から選択される。用語“検出温度範囲”は、特に、シグナル発生(すなわち、シグナル検出)が可能な温度範囲を特に記述するために本願で使われる。
【0182】
本発明によれば、それぞれのターゲット核酸配列の存在を検出するための温度は、シグナル-発生手段を考慮して割り当てられる。
【0183】
一具現例によれば、検出が実施される相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度は、あらかじめ決定されうる。例えば、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度は、それぞれ72℃及び60℃にあらかじめ決定された後、前記検出温度に適したシグナル-発生手段が製作される。
【0184】
本発明の一具現例によれば、シグナル-発生手段が二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させる場合、検出温度は、二量体のTm値に基づいて選択される。
【0185】
本発明の一具現例によれば、シグナル-発生手段が二量体の形成に依存的な方式でシグナルを発生させる場合、検出温度は、二量体のTm値を調節することで制御される。
【0186】
例えば、シグナルがターゲット核酸配列に特異的にハイブリダイズされる検出オリゴヌクレオチド(例えば、ルクスプローブ、分子ビーコンプローブ、ハイビーコンプローブ、及び隣接したハイブリダイゼーションプローブ)によって発生する場合、シグナルの検出は、オリゴヌクレオチドのTm値を調節することによって、既定の温度で成功的になされる。スコーピオンプライマーが使われる場合、シグナルの検出は、延長鎖とハイブリダイズされる部位のTm値を調節することによって、既定の温度で成功的になされる。
【0187】
シグナルがターゲット核酸配列の存在に依存的に形成される二量体によって発生する場合、シグナルの検出は、二量体のTm値を調節することによって、既定の温度で成功的になされる。例えば、シグナルがPTOCE方法によって発生する場合、シグナルの検出は、CTO上でPTO断片の延長によって形成された延長二量体のTm値を調節することによって、既定の温度で成功的になされる。
【0188】
PTOCE-基盤の方法は、二量体及び前記二量体によってハイブリダイゼーションが影響を受ける第3ハイブリッドのTm値を容易に調節する利点がある。
【0189】
本発明の一具現例によれば、シグナル-発生手段が検出オリゴヌクレオチドの切断に依存的な方式でシグナルを発生させる場合、切断によって放出された標識がシグナルを放出するにもかかわらず、検出オリゴヌクレオチドとターゲット核酸配列とのハイブリダイゼーションがシグナル発生を誘導するために、検出オリゴヌクレオチドのTm値に基づいて選択されうる。
【0190】
本発明で使われた検出器は、シグナルを検出することができる任意の手段を含む。例えば、蛍光シグナルが使われる場合、蛍光シグナルの検出に適した光ダイオードが検出器として用いられうる。単一類型の検出器を使用した検出は、単一類型のシグナルを検出することができる検出器を使用して、または幾つかのチャネル(すなわち、光ダイオード)を有する検出器のそれぞれのチャネル(すなわち、光ダイオード)を使用して検出が実施されることを意味する。
【0191】
一具現例によれば、シグナルの発生は、標識からの“シグナル発生または消滅”及び“シグナル増加または減少”を含む。
【0192】
本願に使われた用語“サンプル”は、生物学的サンプル(例えば、生物学的供給源からの細胞、組織、及び流体)及び非生物学的サンプル(例えば、食品、水及び土壌)を含む。生物学的サンプルは、ウイルス、細菌、組織、細胞、血液、血清、血しょう、リンパ、喀痰、スワップ、吸引物、気管支肺胞洗浄液、牛乳、小便、糞便、眼球液、唾液、精液、脳抽出物、脊髄液(SCF)、虫垂、脾臓及び扁桃組織抽出物、羊水及び腹水を含むが、これらに限定されるものではない。また、サンプルは、生物学的供給源から単離された自然核酸分子及び合成核酸分子を含みうる。
【0193】
段階(a)を実施する前に段階(b)を実施することができるということが当業者に自明である。したがって、そのような変化及び変形は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲によって決定される本発明の範囲に属する。
【0194】
段階(c):基準値及びシグナルによるターゲット核酸配列の存在の決定
最後に、2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を基準値のうち少なくとも1つ、及び段階(b)から検出されたシグナルによって決定する。
【0195】
一具現例によれば、本発明の方法は、2つの基準値(すなわち、第1基準値及び第2基準値)によって2つのターゲット核酸配列の検出に使われる。
【0196】
ターゲット核酸配列の存在の決定と関連して、本願に使われた用語“基準値及びシグナルによって”は、段階(a)から提供される基準値及びシグナル-発生手段から発生したシグナルを直接または間接的に使用または変形させるか、数学的に処理することによって(基準値及びシグナルの数値またはこれらの変形を使用すること、基準値の範囲を使用すること、基準値及びシグナルをフローティングすること、及びシグナルの存在/不在を使用することを含む)、ターゲット核酸配列の存在が決定されることを意味する。用語“基準値及びシグナルによって”及び“基準値及びシグナルを使用して”間には、如何なる意図された差もなく、これら用語は、相互交換的に使われる。
【0197】
2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在は、段階(a)から提供された2つの基準値のうち少なくとも1つ、及び段階(b)から検出されたシグナルを使用して決定され、これにより、より正確な決定が下記のようになされる:
【0198】
一具現例によれば、サンプル内の第1ターゲット核酸配列の存在は、第2基準値及び相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で段階(b)から検出されたシグナルによって決定され、サンプル内の第2ターゲット核酸配列の存在は、第1基準値及び相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で段階(b)から検出されたシグナルによって決定される。
【0199】
一具現例によれば、サンプル内の第1ターゲット核酸配列の存在は、第2基準値及び段階(b)から検出されたシグナルを用いて計算された差によって決定され、サンプル内の第2ターゲット核酸配列の存在は、第1基準値及び段階(b)から検出されたシグナルを用いて計算された差によって計算される。
【0200】
さらに、特に、第1ターゲット核酸配列の存在の決定は、第2基準値及び段階(b)から検出されたシグナルを処理して、第2シグナル発生手段によって発生したシグナルを除去し、第1シグナル発生手段によるシグナルの発生を決定することを含み;第2ターゲット核酸配列の存在の決定は、第1基準値及び段階(b)から検出されたシグナルを処理して、第1シグナル発生手段によって発生したシグナルを除去し、第2シグナル発生手段によるシグナルの発生を決定することを含む。
【0201】
さらに、特に、第2シグナル発生手段によって発生したシグナルの除去は、段階(b)から検出されたシグナルから第2シグナル発生手段によって発生したシグナルを数学的に除去することであり、第1シグナル発生手段によって発生したシグナルの除去は、段階(b)から検出されたシグナルから第1シグナル発生手段によって発生したシグナルを数学的に除去することである。
【0202】
さらに、特に、第2シグナル発生手段によって相対的低温検出温度から発生したシグナルは、第2基準値及び相対的高温検出温度から検出されたシグナルによって相対的低温検出温度から検出されたシグナルから除去され、これにより、第1シグナル発生手段が相対的低温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定し、これは、第1ターゲット核酸配列の存在または不在を立証する。
【0203】
例えば、第2基準値が2つの検出温度で第2シグナル-発生手段によって提供されたシグナル間の比率を計算することで収得される場合、第1シグナル発生手段による相対的低温検出温度でのシグナルの発生は、相対的低温検出温度から検出されたシグナルで値を差し引くことで決定され;前記値は、相対的高温検出温度から検出されたシグナルに第2基準値を乗算するか、相対的高温検出温度から検出されたシグナルを第2基準値で割ることで収得される。
【0204】
一具現例によれば、検出温度から検出されたシグナルを基準値によって“乗算するか、”または“割る”ことは、前記比率を計算する方法によって変わる。
【0205】
さらに、特に、第2シグナル発生手段によって相対的高温検出温度から発生したシグナルは、第2基準値及び相対的低温検出温度から検出されたシグナルによって相対的高温検出温度から検出されたシグナルから除去され、これにより、第1シグナル発生手段が相対的高温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定し、これは、第1ターゲット核酸配列の存在または不在を立証する。
【0206】
例えば、第2基準値が2つの検出温度で第2シグナル-発生手段によって提供されたシグナル間の比率を計算することで収得される場合、第1シグナル発生手段による相対的高温検出温度でのシグナルの発生は、相対的高温検出温度から検出されたシグナルから値を差し引くことで決定され;前記値は、相対的低温検出温度から検出されたシグナルに第2基準値を乗算するか、相対的低温検出温度から検出されたシグナルを第2基準値で割ることで収得される。
【0207】
さらに、特に、第1シグナル発生手段によって相対的低温検出温度から発生したシグナルは、第1基準値及び相対的高温検出温度から検出されたシグナルによって相対的低温検出温度から検出されたシグナルから除去され、これにより、第2シグナル発生手段が相対的低温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定する。
【0208】
例えば、第1基準値が2つの検出温度で第1シグナル-発生手段によって提供されるシグナル間の比率を計算することで収得される場合、第2シグナル発生手段による相対的低温検出温度でのシグナルの発生は、相対的低温検出温度から検出されたシグナルから値を差し引くことで決定され;前記値は、相対的高温検出温度から検出されたシグナルに第1基準値を乗算するか、相対的高温検出温度から検出されたシグナルを第1基準値で割ることで収得される。
【0209】
さらに、特に、第1シグナル発生手段によって相対的高温検出温度から発生したシグナルは、第1基準値及び相対的低温検出温度から検出されたシグナルによって相対的高温検出温度から検出されたシグナルから除去され、これにより、第2シグナル発生手段が相対的高温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定する。
【0210】
例えば、第1基準値が2つの検出温度で第1シグナル-発生手段によって提供されたシグナル間の比率を計算することで収得される場合、第2シグナル発生手段による相対的高温検出温度でのシグナルの発生は、相対的高温検出温度から検出されたシグナルから値を差し引くことで決定され;前記値は、相対的低温検出温度から検出されたシグナルに第1基準値を乗算するか、相対的低温検出温度から検出されたシグナルを第1基準値で割ることで収得される。
【0211】
本発明の基本となる実施原理が、下記のように実施例1を参照して説明される:
実施例1で、第1ターゲット核酸配列(NG)及び第1シグナル-発生手段をインキュベーションした後、相対的低温検出温度(L)及び相対的高温検出温度(H)でシグナルを測定する。第1シグナル-発生手段によって提供された相対的低温検出温度での検出されたシグナル(FTL)対第1シグナル-発生手段によって提供された相対的高温検出温度での検出されたシグナル(FTH)の比率を計算し、それを、結局第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値(NGのRV=RVF=(FTL)÷(FTH)=1.8)として使用する。
【0212】
第2ターゲット核酸配列(CT)及び第2シグナル-発生手段をインキュベーションした後、相対的低温検出温度(L)及び相対的高温検出温度(H)でシグナルを測定する。第2シグナル-発生手段によって提供された相対的低温検出温度の検出されたシグナル(STL)対第2シグナル-発生手段によって提供された相対的高温検出温度での検出されたシグナル(STH)の比率を計算し、これは、結局第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値(CTのRV=RVS=(STL)÷(STH)=5.8)として使用する。
【0213】
サンプルを第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段とインキュベーションする場合、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出される蛍光シグナルは、それぞれFH及びFLに表示される。
【0214】
実施例1でのように、ターゲット核酸配列に係わる基準値が比率によって提供される場合、第1シグナル発生手段が相対的低温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定するために、下記式が提供されうる(
図1C及び(ii)参照):F
L-[F
HxRV
S]。
【0215】
サンプル内のFHは、相対的高温検出温度で第1ターゲット核酸配列からのシグナル(FTH)及び第2ターゲット核酸配列からのシグナル(STH)の和として表現され、サンプル内のFLは、相対的低温検出温度で第1ターゲット核酸配列からのシグナル(FTL)及び第2ターゲット核酸配列からのシグナル(STL)の和として表現される:FH=FTH+STH及びFL=FTL+STL。
FL-[FHxRVS]は、下記のように表現される:
FL-[FHxRVS]=(FTL+STL)-[(FTH+STH)xRVS]
=FTL-RVSxFTH+STL-RVSxSTH
=FTL-5.8xFTH+STL-5.8xSTH。
【0216】
サンプルが第2ターゲット核酸配列を含む場合、(STL-5.8xSTH)は、実質的に0の値を示すことができるが、RVS=STL/STH=5.8であるためである。
【0217】
第2ターゲット核酸配列がサンプルに存在しない場合にも、(STL-5.8xSTH)は、実質的に0の値を示すことができるが、STL及びSTHが実質的に0の値であるためである。
【0218】
サンプルが第1ターゲット核酸配列を含む場合、(FTL-5.8xFTH)は、負の値を示すが、(FTL-5.8xFTH)で5.8の基準値が使われる一方、第1ターゲット核酸の第1基準値は、1.8であるためである。
【0219】
したがって、(FT
L-5.8xFT
H)が負の値を示す場合、サンプルは、第1ターゲット核酸配列を含むものと決定される(
図1C参照)。
【0220】
第1ターゲット核酸配列がサンプル内に存在しない場合、(FT
L-5.8xFT
H)は、実質的に0の値を示すことができる(
図1C参照)。
【0221】
選択的に、サンプル内の第2ターゲット核酸配列の存在を決定するために、すなわち、第2シグナル発生手段が相対的低温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定するために、下記式がまた提供されうる(
図1D及び(ii)参照):F
L-[F
HxRV
F]。
F
L-[F
HxRV
F]は、下記のように表現される:
F
L-[F
HxRV
F]=(FT
L+ST
L)-[(FT
H+ST
H)xRV
F]
=FT
L-RV
FxFT
H+ST
L-RV
FxST
H
=FT
L-1.8xFT
H+ST
L-1.8xST
H。
【0222】
サンプルが第1ターゲット核酸配列を含む場合、FTL-1.8xFTHは、実質的に0の値を示すことができるが、RVF=FTL/FTH=1.8であるためである。
【0223】
第1ターゲット核酸配列がサンプル内に存在しない場合にも、(FTL-1.8xFTH)は、実質的に0の値を示すことができるが、FTL及びFTHが実質的に0の値であるためである。
【0224】
サンプルが第2ターゲット核酸配列を含む場合、(STL-1.8xSTH)は、正の値を示すが、(STL-1.8xSTH)で1.8の基準値が使われた一方、第2ターゲット核酸に対する第2基準値は、5.8であるためである。
【0225】
したがって、(ST
L-1.8xST
H)が正の値を示す場合、サンプルは、第2ターゲット核酸配列を含むものと決定される(
図1D参照)。
【0226】
第2ターゲット核酸配列がサンプル内に存在しない場合、(ST
L-1.8xST
H)は、実質的に0の値を示すことができる(
図1D参照)。
【0227】
前述した相対的低温検出温度でシグナルを分析することによって、ターゲット核酸配列を検出する原理を考慮する時、ターゲット核酸配列の検出は、下記のように相対的高温検出温度でのシグナルを分析することで達成されうる:
【0228】
例えば、第1シグナル発生手段が相対的高温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定するために、下記式が提供される(
図1C及び(i)参照):F
H-[F
L÷RV
S]。
【0229】
選択的に、サンプル内の第2ターゲット核酸配列の存在を決定するために、すなわち、第2シグナル発生手段が相対的高温検出温度でシグナルを発生させるか否かを決定するために、下記式がまた提供されうる(
図1D及び(i)参照):F
H-[F
L÷RV
F]。
【0230】
前述した具現例を考慮する時、当業者は、シグナル-発生手段によって提供された相対的高温検出温度での検出されたシグナル(FTH)対シグナル-発生手段によって提供された相対的低温検出温度での検出されたシグナル(FTL)の比率を計算し、それを基準値(すなわち、RV=(FTH)÷(FTL))として使用して、本発明の方法によって核酸配列の存在または不在を決定するということを理解できるであろう。
【0231】
一具現例によれば、本発明は、前述した式による計算結果の有意性を決定するために、閾値をさらに使用する。選択された式によって、異なる閾値が適用可能である。一具現例によれば、閾値は、基準値を互いに補完するために選択されうる。
【0232】
一具現例によれば、シグナルがPCRによるターゲット増幅と関連してリアルタイム方式で発生する場合、各増幅サイクルまたは一部選択されたサイクルでのシグナルが基準値を用いて処理され、計算結果が、サイクルに対してプロッティングされてターゲット核酸配列の存在の決定に使われる。
【0233】
一具現例によれば、1つの反応容器は、2つのターゲット核酸配列以外のターゲット核酸配列の検出のための追加的な2つのシグナル-発生手段をそれぞれ含有する少なくとも1つの追加的なセットをさらに含み;容器内の2つのシグナル-発生手段のうち、各セットによって発生したシグナルは、互いに区別され、前記シグナルは、それぞれ異なる類型の検出器によって検出される。例えば、段階(b)で2つのシグナル-発生手段がFAMに標識され、追加的な2つのシグナル-発生手段がQuasar 570に標識される場合、前記容器でFAM-標識されたシグナル-発生手段によって発生したシグナルは、Quasar 570-標識されたシグナル-発生手段によって発生したシグナルと区別されるので、2つの異なる放出光を検出するために、2つの類型の検出器が必要である。
【0234】
本発明の一具現例によれば、前記2つのターゲット核酸配列は、ヌクレオチド変異を含み、前記2つのターゲット核酸配列のうち1つは、一種の類型のヌクレオチド変異を含み、他の1つは、他の類型のヌクレオチド変異を含む。
【0235】
本願に使われた用語“ヌクレオチド変異”は、配列が類似した連続したDNAセグメントのうち、特定位置のDNA配列での任意の単一または複数のヌクレオチド置換、欠失または挿入を意味する。このような連続したDNAセグメントは、1つの遺伝子または1つの染色体の任意の他の部位を含む。このようなヌクレオチド変異は、突然変異または多型対立遺伝子変異であり得る。例えば、本発明から検出されたヌクレオチド変異は、SNP(単一ヌクレオチド多型)、突然変異、欠失、挿入、置換、及び転座を含む。例示されたヌクレオチド変異は、ヒトゲノム内の多様な変異(例えば、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子での変異)、病原体の薬剤耐性と関連した変異及び腫瘍形成誘発変異を含む。本願に使われた用語“ヌクレオチド変異”は、核酸配列の特定位置での任意の変異を含む。すなわち、用語“ヌクレオチド変異”は、核酸配列の特定位置での野生型及びその任意の突然変異型を含む。
【0236】
本発明の一具現例によれば、本発明から検出されるヌクレオチド変異は、SNP(単一ヌクレオチド多型)である。
【0237】
本発明の一具現例によれば、第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体は、第1シグナル-発生手段を使用して検出され、第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体は、第2シグナル-発生手段を使用して検出され、第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体は、第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段を使用して検出される。
【0238】
本発明の基礎となる実施原理下に、本発明の方法は、3つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の検出に適用可能である。
【0239】
例えば、3つのターゲット核酸配列は、第1ターゲット核酸配列、第2ターゲット核酸配列、及び第3ターゲット核酸配列を含む。これらのうち、第1ターゲット核酸配列は、下記のように検出されうる:
【0240】
第2ターゲット核酸配列及び第3ターゲット核酸配列が総合的に単一ターゲットとして考慮される場合、第2ターゲット核酸配列及び第3ターゲット核酸配列を第2シグナル-発生手段及び第3シグナル-発生手段と共にインキュベーションすることによって、前記単一ターゲットに対する総合的基準値を収得することができる。選択的に、第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値または第3ターゲット核酸配列に対する第3基準値のうち1つが、総合的基準値として用いられうる。
【0241】
そして、前記総合的基準値及び2つの検出温度から検出されたシグナルによって第1ターゲット核酸配列の存在または不在を決定することができる。
【0242】
また、第2ターゲット核酸配列及び第3ターゲット核酸配列のそれぞれの存在または不在は、第1ターゲット核酸配列に対する検出接近法によって決定されうる。
【0243】
II.異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型分析
本発明のさらに他の態様において、下記の段階を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP(単一ヌクレオチド多型)遺伝子型を分析する方法が提供される:
(a)(i)第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示す第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値;(ii)第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示す第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値;及び(iii)第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示す第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値を提供する段階であって;前記3つの基準値は、互いに異なり;
(b)前記SNP対立遺伝子のための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段と共にサンプルをインキュベーションし、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で2つのシグナル-発生手段からのシグナルを検出する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;及び
(c)前記基準値及び前記段階(b)で相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差によってSNP遺伝子型を決定する段階。
【0244】
本発明は、原則的に前述した本発明の第1態様に従うので、両者間の共通説明は、本明細書の複雑性をもたらす過度な重複を避けるために省略する。本態様を説明するために、第1態様についての説明を言及する場合、本態様は、第1態様と一部異なるという点に留意しなければならない。したがって、当業者は、第1態様についての一部説明が、本態様についての説明に直接に適用可能であり、変形された他の説明が、本態様についての説明に適用可能であるということを理解できるであろう。
【0245】
段階(a):基準値の提供
第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値、第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値、及び第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値を提供する。
【0246】
本発明は、3つの遺伝子型に係わる基準値を用いる特徴を有する。
【0247】
それぞれの基準値は、相応するSNP類型及びシグナル-発生手段をインキュベーションし、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出した後、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を得ることで収得されうる。
【0248】
一具現例によれば、シグナル-発生手段は、3つの基準値が互いに異なるように設計される。
【0249】
一具現例によれば、(i)第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値は、(i-1)第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体を第1SNP対立遺伝子の検出のための第1シグナル-発生手段と共にインキュベーションする段階、(i-2)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出する段階、及び(i-3)以後、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を収得する段階によって収得され、(ii)第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値は、(ii-1)第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体を第2SNP対立遺伝子の検出のための第2シグナル-発生手段と共にインキュベーションする段階、(ii-2)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出する段階、及び(ii-3)以後、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を収得する段階によって収得され;及び(iii)第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値は、(iii-1)第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体を第1SNP対立遺伝子の検出のための第1シグナル-発生手段及び第2SNP対立遺伝子の検出のための第2シグナル-発生手段と共にインキュベーションする段階、(iii-2)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを検出する段階、及び(iii-3)以後、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を収得する段階によって収得される。
【0250】
一具現例によれば、シグナル-発生手段は、第1SNP対立遺伝子に係わる基準値が第2SNP対立遺伝子に係わる基準値と異なるように設計される。
【0251】
SNPサイトを含有する核酸配列は、ヒトの染色体対を含みうる。
【0252】
一具現例によれば、基準値収得時に検出されたシグナル間の差は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示す。
【0253】
一具現例によれば、基準値収得時に検出されたシグナル間の差は、シグナル間の比率である。
【0254】
本発明の一具現例によれば、基準値収得時に検出されたシグナル間の差は、特定の範囲を有し、前記基準値は、前記特定の範囲内で、または前記特定の範囲を参照して選択される。本発明の一具現例によれば、基準値は、前記特定の範囲の最大値または最小値で、または前記特定の範囲の最大値または最小値を参照して選択されうる。
【0255】
本発明の一具現例によれば、基準値は、反応完了時に飽和シグナルの提供には十分な反応条件下で収得されうる。例えば、第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子いずれもで構成された異型接合体に係わる基準値を収得するために、それぞれのSNP対立遺伝子の含量のような反応条件は、反応完了時にそれぞれのSNP対立遺伝子に係わる飽和シグナルが提供されるように選択される。本発明の一具現例によれば、基準値計算時に収得されたシグナル間の差は、特定の範囲を有し、前記基準値は、前記特定の範囲内で、または前記特定の範囲を参照して選択される。本発明の一具現例によれば、基準値は、前記特定の範囲の最大値または最小値で、または前記特定の範囲の最大値または最小値を参照して選択されうる。
【0256】
段階(b):サンプルとシグナル-発生手段及びシグナル検出とのインキュベーション
SNP(単一ヌクレオチド多型)サイトを含有する核酸配列を含むサンプルを核酸配列のSNP遺伝子型を分析するための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段と共にインキュベーションし、前記2つのシグナル-発生手段からのシグナルを相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で検出する。前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ、前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されない。
【0257】
本発明の一具現例によれば、段階(b)は、核酸増幅が伴われるシグナル増幅過程で行われる。
【0258】
本発明の一具現例によれば、段階(b)は、核酸増幅のないシグナル増幅過程で行われる。
【0259】
段階(c):SNP遺伝子型の決定
最後に、基準値及び段階(b)で相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差によってSNP遺伝子型を決定する。
【0260】
本発明は、サンプル内に如何なるSNP対立遺伝子が存在するかを決定せず、単に相応するSNP遺伝子型の基準値及び相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差によってSNP遺伝子型を分析することができる。
【0261】
個別的なSNP対立遺伝子の存在を決定することが必要ではない理由は、3つのSNP遺伝子型があり、SNPに対する異型接合体が野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子を1:1の比率で含むという点である。また、前記理由は、サンプルインキュベーションで核酸分子の量が容易に調節されるという点である。
【0262】
一具現例によれば、段階(b)から検出されたシグナル間の差は、相対的高温検出温度から検出されたシグナル及び相対的低温検出温度から検出されたシグナルを数学的に処理することで収得される差を含む。
【0263】
一具現例によれば、段階(b)から検出されたシグナル間の差は、前記シグナル間の比率を計算することで収得されうる。
【0264】
本発明の一具現例によれば、第1SNP対立遺伝子を含有する同型接合体サンプルは、特定の範囲内の差(例えば、比率)を示し、異型接合体サンプルは、さらに他の範囲内の差(例えば、比率)を示し、第2SNP対立遺伝子を含有する同型接合体サンプルは、他の特定の範囲内の差(例えば比率)を示す。
【0265】
一具現例によれば、SNP遺伝子型は、シグナル間の差を基準値と比較することで決定される。例えば、第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値が、1.0であり、第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値が、5.2であり、第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値が、3.2であり、段階(b)でシグナル間の差が実質的に1.0である場合、サンプルは、第1SNP対立遺伝子の同型接合体であると決定される。
【0266】
一具現例によれば、各遺伝子型に係わる基準値の範囲を考慮して2つのカットオフ値が確立され、遺伝子型分析に使われる。
【0267】
IV.ターゲット核酸配列の検出のためのキット
本発明のさらなる態様において、下記を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列を検出するためのキットが提供される:
(a)2つのターゲット核酸配列の検出のための2つのシグナル-発生手段;及び
(b)異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の2つのターゲット核酸配列の検出という題目の態様Iの本発明の方法を記載する説明書。
【0268】
本発明のさらなる態様において、下記を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列を検出するためのキットが提供される:
(a)2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つの検出のための2つのシグナル-発生手段;及び
(b)異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の少なくとも1つのターゲット核酸配列の検出という題目の態様IIの本発明の方法を記載する説明書。
【0269】
本発明のさらに他の態様において、下記を含む、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP(単一ヌクレオチド多型)遺伝子型を分析するキットが提供される:
(a)第1SNP対立遺伝子のためのシグナル-発生手段;
(b)第2SNP対立遺伝子のためのシグナル-発生手段;及び
(c)異なる検出温度及び基準値を使用したサンプル内の核酸配列のSNP遺伝子型分析という題目の態様IIIの本発明の方法を記載する説明書。
【0270】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するために製造されるので、両者間の共通説明は、本発明の複雑性をもたらす過度な重複を避けるために省略する。
【0271】
前述した本発明のあらゆるキットは、バッファ、DNA重合酵素補助因子、及びデオキシリボヌクレオチド-5-トリホスフェートのようなターゲット増幅PCR反応(例えば、PCR反応)の実施に必要な試薬を選択的に含みうる。選択的に、キットは、また多様なポリヌクレオチド分子、逆転写酵素、多様なバッファ及び試薬、及びDNA重合酵素活性を抑制する抗体を含みうる。また、キットは、陽性対照群及び陰性対照群の実施に必要な試薬を含みうる。特定反応で使われる試薬の最適量は、本開示事項の利点が分かっている当業者によって容易に決定されうる。キットの構成成分は、個別容器内に存在するか、複数の構成要素が、1つの容器内に存在することができる。
【0272】
本発明の方法を記述または実施するための説明書は、適した記録媒体に記録されうる。例えば、説明書は、紙及びプラスチックのような、基板上に印刷されうる。他の具現例で、説明書は、CD-ROM及びディスケットのような適したコンピュータ読取り可能な記録媒体上に存在する電子保存データファイルとして存在することができる。さらに他の具現例で、キット内に実質的な説明書が含まれないこともあるが、遠隔ソースから、例えば、インターネットを通じて、説明書を得る手段が提供される。前記具現例の1種の例は、説明書が見られるか/あるいは説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。
【0273】
V.ターゲット核酸配列の検出のための記録媒体及び装置
下記の記載の本発明の記録媒体、装置及びコンピュータプログラムは、コンピュータで本発明の方法を実施するためのものなので、両者間の共通説明は、本明細書の複雑性をもたらす過度な重複を避けるために省略する。
【0274】
本発明のさらに他の態様において、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する方法を実行するためのプロセッサを具現する指示を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体が提供され、前記方法は、下記の段階を含む:
(a)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で第1ターゲット核酸配列のための第1シグナル-発生手段及び第2ターゲット核酸配列のための第2シグナル-発生手段から発生したサンプル内のシグナルを受信する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;及び
(b)段階(a)から受信されたシグナル、及び第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値及び/または第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値によって少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する段階であって;前記第1基準値は、第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、前記第2基準値は、第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し;前記第1基準値は、前記第2基準値と異なる。
【0275】
本発明の一具現例によれば、第1基準値及び/または第2基準値は、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存される。本発明の一具現例によれば、コンピュータ読取り可能な記録媒体は、本方法を実行時に第1基準値及び/または第2基準値を入力する指示を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータ読取り可能な記録媒体は、第1基準値及び/または第2基準値を収得するための方法を実行するためのプロセッサを具現する指示をさらに含む。
【0276】
本発明のさらに他の態様において、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する方法を実行するためのプロセッサを具現する、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存されるためのコンピュータプログラムが提供され、前記方法は、下記の段階を含む:
(a)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度で第1ターゲット核酸配列のための第1シグナル-発生手段及び第2ターゲット核酸配列のための第2シグナル-発生手段から発生したサンプル内のシグナルを受信する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;及び
(b)段階(a)から受信されたシグナル、及び第1ターゲット核酸配列に対する第1基準値及び/または第2ターゲット核酸配列に対する第2基準値によって少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を決定する段階であって;前記第1基準値は、第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、前記第2基準値は、第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し;前記第1基準値は、前記第2基準値と異なる。
【0277】
本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、第1基準値及び/または第2基準値を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、本方法を実行時に第1基準値及び/または第2基準値を入力する指示を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、第1基準値及び/または第2基準値を収得するための方法を実行するためのプロセッサを具現する指示をさらに含む。
【0278】
前記プロセッサによって実行される場合、前記プログラム指示が作動して、プロセッサが前述した本発明の方法を実行させる。プログラム指示は、第1シグナル及び第2シグナルを受信する指示を含み、前記受信されたシグナルを用いて前記2つのターゲット核酸配列の存在を決定するための指示を含みうる。
【0279】
前述した本発明の方法は、プロセッサ、例えば、独立型コンピュータ(stand-alone computer)、ネットワークに連結されたコンピュータ(network attached computer)またはリアルタイムPCR機器のようなデータ収集装置(data acquisition device)にあるプロセッサで実行される。
【0280】
コンピュータ読取り可能な記録媒体は、CD-R、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、携帯用HDD、USB、マグネチックテープ、MINIDISC、不揮発性メモリカード、EEPROM、光学ディスク、光学記録媒体、RAM、ROM、システムメモリ、及びウェブサーバのような多様な記録媒体を含む。
【0281】
シグナルと関連したデータ(例えば、強度、増幅サイクル数、及び検出温度)は、幾つかの機器を通じて受信されうる。例えば、データは、PCRデータ収集装置にあるプロセッサによって収集されうる。データは、データが収集されている間にリアルタイムで提供されうるか、またはメモリユニットやバッファに保存され、実験完了後、プロセッサに提供されうる。同様に、前記データセットは、前記収集装置とのネットワーク連結(例えば、LAN、VPN、インターネット、及びイントラネット)または直接連結(例えば、USBまたは他の直接有線連結または無線連結)によってデスクトップコンピュータシステムのような別途のシステムに提供され、または、CD、DVD、フロッピー(登録商標)ディスク、携帯用HDDのような携帯用媒体上で独立型コンピュータシステムに提供されうる。同様に、前記データセットは、ノート型パソコンまたはデスクトップコンピュータシステムのようなクライアントにネットワーク連結(例えば、LAN、VPN、インターネット、イントラネット、及び無線通信ネットワーク)を通じてサーバシステムに提供されうる。相対的高温検出温度でシグナルが検出される場合、データが受信されるか、収集された後に、前記データ分析過程は、ターゲット核酸配列の存在決定のためのシグナル間の差から得た処理されたシグナルを提供する。プロセッサは、シグナルと関連した受信されたデータを処理して、2つの検出温度でのシグナル間の差を反映する処理されたシグナルを提供する。例えば、プロセッサは、受信されたデータを処理して、相対的低温検出温度から検出されたシグナル対相対的高温検出温度から検出されたシグナルの比率を収得する。
【0282】
本発明を実行するプロセッサを具現する指示は、ロジックシステムに含まれうる。前記指示は、たとえ携帯用HDD、USB、フロッピー(登録商標)ディスク、CD及びDVDのような如何なるソフトウェア記録媒体上に提供されうるが、ダウンロードされてメモリモジュール(例えば、ハードドライブまたはローカルまたは付着RAMやROMのような他のメモリ)に保存することができる。本発明を実行するためのコンピュータコードは、C、C++、Java(登録商標)、Visual Basic、VBScript、JavaScript(登録商標)、Perl、及びXMLのような多様なコーディング言語で実行可能である。また、多様な言語及びプロトコルは、本発明によるデータと命令の外部及び内部保存と伝送に用いられうる。
【0283】
本発明のさらに他の態様において、本発明は、(a)コンピュータプロセッサ、及び(b)前記コンピュータプロセッサにカップリングされた前述したコンピュータ読取り可能な記録媒体を含む、異なる検出温度及び基準値を使用して試料内の第1ターゲット核酸配列及び第2ターゲット核酸配列を含む2つのターゲット核酸配列のうち少なくとも1つのターゲット核酸配列の存在を検出するための装置が提供される。
【0284】
一具現例によれば、前記装置は、試料及びシグナル-発生手段を収容することができる反応容器、前記反応容器の温度を調節する温度調節手段及び/または前記シグナル-発生手段によって発生するシグナルを検出するための単一類型の検出器をさらに含む。
【0285】
一具現例によれば、コンピュータプロセッサは、単一類型の検出器が相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナル-発生手段によって発生するシグナルを検出可能にするだけではなく、相対的高温検出温度から検出されたシグナル及び相対的低温検出温度から検出されたシグナル間の差を計算可能にする。前記プロセッサは、1つのプロセッサが2種の行為を行う方式で製作することができる:2つの検出温度での検出及び差計算の命令、選択的に、プロセッサユニットは、2つのプロセッサが2種の行為をそれぞれ行う方式で製作することができる。
【0286】
前記装置の第1の必須的な特徴は、前記装置が、前記2つの検出温度で発生するシグナルを検出可能にするプロセッサを有しているということである。一具現例によれば、シグナルが、ターゲット核酸配列の増幅と共に発生する場合、前記装置は、毎増幅サイクルごとに前記2つの検出温度で発生するシグナルを検出可能にするプロセッサを含む。
【0287】
前記装置の第2の必須的な特徴は、前記装置が、前記2つの検出温度から検出されたシグナルを処理して、前記シグナル間の差を得るプロセッサを有しているということである。一具現例によれば、前記シグナル間の差は、数学的な処理によって数値として表現される。
【0288】
一具現例によれば、前記プロセッサは、ターゲット核酸配列の検出のための従来の装置(例えば、リアルタイムPCR装置)にソフトウェアが設けられて具現可能である。一具現例によれば、前記装置は、少なくとも2つの検出温度でシグナルを検出可能にし、少なくとも2つの検出結果を数学的に処理可能にするプロセッサを含む。
【0289】
本発明のさらに他の態様において、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP(単一ヌクレオチド多型)遺伝子型を分析する方法を実行するためのプロセッサを具現する指示を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体が提供され、前記方法は、下記の段階を含む:
(a)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でSNP対立遺伝子のための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段から発生したサンプル内のシグナルを受信する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;及び
(b)段階(a)から受信されたシグナル間の差、及び第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値、第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値、及び第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値によってSNP遺伝子型を決定する段階であって;前記第1基準値は、第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、第2基準値は、第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、第3基準値は、第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し;前記3つの基準値は、互いに異なる。
【0290】
本発明の一具現例によれば、第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値は、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存される。本発明の一具現例によれば、コンピュータ読取り可能な記録媒体は、本方法を実行時に第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値を入力する指示を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータ読取り可能な記録媒体は、第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値を収得するための方法を実行するためのプロセッサを具現する指示をさらに含む。
【0291】
本発明のさらに他の態様において、異なる検出温度及び基準値を使用してサンプル内の核酸配列のSNP(単一ヌクレオチド多型)遺伝子型を分析するための方法を実行するためのプロセッサを具現するコンピュータ読取り可能な記録媒体に保存されるためのコンピュータプログラムが提供され、前記方法は、下記の段階を含む:
(a)相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でSNP対立遺伝子のための第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段から発生したサンプル内のシグナルを受信する段階であって;前記2つのシグナル-発生手段は、相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度でシグナルを発生させ;前記2つのシグナル-発生手段によって発生するシグナルは、単一類型の検出器によって区別されず;及び
(b)段階(a)から受信されたシグナル間の差、及び第1SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第1基準値、第2SNP対立遺伝子で構成された同型接合体に対する第2基準値、及び第1SNP対立遺伝子及び第2SNP対立遺伝子で構成された異型接合体に対する第3基準値によってSNP遺伝子型を決定する段階であって;前記第1基準値は、第1シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、第2基準値は、第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し、第3基準値は、第1シグナル-発生手段及び第2シグナル-発生手段によって相対的高温検出温度及び相対的低温検出温度から提供されたシグナル変化の関係を示し;前記3つの基準値は、互いに異なる。
【0292】
本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、方法を実行時に第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値を入力する指示を含む。本発明の一具現例によれば、コンピュータプログラムは、第1基準値及び/または第2基準値及び/または第3基準値を収得するための方法を実行するためのプロセッサを具現する指示をさらに含む。
【0293】
本発明のさらなる態様において、(a)コンピュータプロセッサ、及び(b)前記コンピュータプロセッサにカップリングされた前述したコンピュータ読取り可能な記録媒体を含む、サンプル内の核酸配列のSNP(単一ヌクレオチド多型)遺伝子型を分析するための装置が提供される。
【0294】
本発明は、実施例によってより詳しく説明される。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、添付の特許請求の範囲に提示された本発明の範囲が、これら実施例によって制限されるものではないということは、当業者に自明である。
【実施例】
【0295】
実施例1:異なる検出温度及び基準値を使用したTaqManリアルタイムPCRによる多数のターゲット検出
本発明者らは、単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器でサンプル内の2つのターゲット核酸を検出できるか否かを調査した。異なる検出温度及び基準値を使用して、下記の検出過程を行い、TaqManリアルタイムPCRをシグナル発生手段として適用した。
【0296】
5’-ヌクレアーゼ活性を有するTaq DNA重合酵素をアップストリームプライマー及びダウンストリームプライマーの延長、及びTaqManプローブの切断のために使用した。ナイセリア・ゴノレア(NG)のゲノムDNA及びクラミジア・トラコマチス(CT)のゲノムDNAをターゲット核酸配列として使用した。4種の類型のサンプル(NG、CT、NG+CT、及びターゲットのない対照群)を準備して分析した。
【0297】
TaqManリアルタイムPCRを用いてNG及びCTを検出した。ターゲット核酸が存在する場合、TaqManプローブは切断され、標識された断片が放出される。増幅曲線は、標識された断片からシグナルを測定することで収得されうる。
【0298】
NGに対するTaqManプローブは、その5’末端に蛍光レポーター分子(Quasar 670)及びその3’末端にクエンチャー分子で標識され(配列番号:3)、CTに対するTaqManプローブは、その5’末端に蛍光レポーター分子(Quasar 670)及び内部部分にクエンチャー分子(BHQ-2)で標識された(配列番号:6)。
【0299】
本実施例で、TaqManプローブからのシグナルが互いに区別されないにもかかわらず、各ターゲット配列に係わる基準値及び2つの検出温度(72℃及び60℃)からのシグナルを使用したプロッティング方法は、各ターゲット核酸配列の存在を示す増幅曲線を提供する。
【0300】
基準値に対する計算式及び各ターゲット核酸配列に対する増幅曲線を収得するためのプロッティング式は、下記の通りである:
(1)NGまたはCTの基準値(RV)
エンドポイントで60℃でのRFU÷72℃でのRFU
(2)NGターゲットに対するプロッティング式:
(i)72℃でのRFU-(60℃でのRFU÷CTターゲットのRV)
または(ii)60℃でのRFU-(72℃でのRFUxCTターゲットのRV)
(3)CTターゲットに対するプロッティング式:
(i)72℃でのRFU-(60℃でのRFU÷NGターゲットのRV)
または(ii)60℃でのRFU-(72℃でのRFUxNGターゲットのRV)
前記式において、RFU(相対的な蛍光単位)値は、リアルタイムPCRの各サイクルから測定された値であり、RVは、基準値を示す。
【0301】
本実施例で使われたアップストリームプライマー、ダウンストリームプライマー、及びプローブの配列は、次の通りである:
NG-F 5’-TACGCCTGCTACTTTCACGCTIIIIIGTAATCAGATG-3’(配列番号:1)
NG-R 5’-CAATGGATCGGTATCACTCGCIIIIICGAGCAAGAAC-3’(配列番号:2)
NG-P 5’-[Quasar 670]TGCCCCTCATTGGCGTGTTTCG[BHQ-2]-3’(配列番号:3)
CT-F1 5’-TCCGAATGGATAAAGCGTGACIIIIIATGAACTCAC-3’(配列番号:4)
CT-R1 5’-AACAATGAATCCTGAGCAAAGGIIIIICGTTAGAGTC-3’(配列番号:5)
CT-P 5’-[Quasar 670]CATTGTAAAGA[T(BHQ-2)]ATGGTCTGCTTCGACCG[C3 spacer]-3’(配列番号:6)
(I:デオキシイノシン)
【0302】
リアルタイムPCRは、ターゲット核酸(1pgのNGゲノムDNA、10pgのCTゲノムDNA、または1pgのNGゲノムDNA及び10pgのCTゲノムDNAの混合物)、NGターゲット増幅のための5pmoleのアップストリームプライマー(配列番号:1)及び10pmoleのダウンストリームプライマー(配列番号:2)、1.5pmoleのTaqManプローブ(配列番号:3)、CTターゲット増幅のための5pmoleのアップストリームプライマー(配列番号:4)及び10pmoleのダウンストリームプライマー(配列番号:5)、3pmoleのTaqManプローブ(配列番号:6)、及び5μlの4X マスターミックス[最終、200μM dNTPs、2mM MgCl2、2U of Taq DNA重合酵素]を含有する20μlの最終体積で実施した。前記反応混合物を含有するチューブを50℃で5分間リアルタイム熱循環器(CFX96、Bio-Rad)に入れ、95℃で15分間変性させ、95℃で30秒、60℃で60秒、72℃で30秒の50サイクルを実施した。シグナルを毎サイクルごとに60℃及び72℃で検出した。
【0303】
図1Aに示されたように、NG、CT、またはNG+CTの存在時に、60℃及び72℃いずれもでシグナルが検出された。ターゲット核酸の不在時に、シグナルが検出されなかった。各ターゲット配列に係わる基準値は、NG単独サンプルまたはCT単独サンプルのシグナルを使用して計算した。
図1Bに示されたように、NG及びCTターゲットに係わる基準値は、それぞれ1.8及び5.8であった。
【0304】
以後、ターゲット配列を確認するために、相応する基準値及び72℃及び60℃でのRFUをプロッティング式(
図1C及び
図1Dで、(i)または(ii)式)に適用し、各ターゲット配列の増幅曲線を収得した。前記収得された増幅曲線の有意性を確保するために、NG単独サンプル及びCT単独サンプルの結果を参照して適切な閾値を選択した。
【0305】
図1C及び
図1Dに示されたように、プロッティング方法から由来の増幅曲線は、各サンプル内のNGまたはCTの存在または不在を確認することができる。
【0306】
したがって、異なる検出温度及び基準値を使用したTaqManリアルタイムPCRによって単一検出チャネルを使用する場合にも、1つの反応容器で2つのターゲット核酸が検出されうるということが理解されうる。
【0307】
実施例2:異なる検出温度及び基準値を使用することを含むPTOCEリアルタイムPCRによる多数のターゲット検出
本発明者らは、単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器でサンプル内の2つのターゲット核酸を検出できるか否かを調査した。下記の検出過程は、異なる検出温度及び基準値を使用して行い、PTOCEリアルタイムPCRをシグナル発生手段として適用した。
【0308】
5’-ヌクレアーゼ活性を有するTaq DNA重合酵素をアップストリームプライマー及びダウンストリームプライマーの延長、PTOの切断、及びPTO断片の延長のために使用した。ナイセリア・ゴノレア(NG)のゲノムDNA及びクラミジア・トラコマチス(CT)のゲノムDNAをターゲット核酸配列として使用した。4つの類型のサンプル(NG、CT、NG+CT、及び鋳型のない対照群)を準備して分析した。
【0309】
PTOCEリアルタイムPCRを使用してCT及びNGを検出した。ターゲットが存在する場合、PTOが切断され、PTO断片が生産される。前記PTO断片は、CTOのキャプチャリング部位にアニーリングされ、CTOのテンプレーティング部位上で延びて、CTOと延長二量体(二量体化したCTO)とを形成する。延長二量体の形成は、シグナルを提供し、延長二量体-形成温度でシグナルを測定することによって、増幅曲線を収得することができる。
【0310】
PTO及びCTOは、それらの延長を防止するために、それらの3’末端にカーボンスぺーサでブロッキングされている。CTOは、そのテンプレーティング部位にクエンチャー分子(BHQ-2)及び蛍光レポーター分子(CAL Fluor Red 610)で標識されている(配列番号:8及び12)。
【0311】
本実施例で、67.8℃及び60℃をシグナル検出温度として選択した。ターゲット核酸配列の存在に依存的に生成された延長二量体は、それらの配列及び長さによって調節された制御可能なTm値を有する。本実施例で、NG及びCTに対する延長二量体の配列及び長さは、67.8℃及び60℃いずれもでシグナルを提供するように設計される。シグナル-発生手段からのシグナルが互いに区別されないにもかかわらず、各ターゲットに係わる基準値及び2つの検出温度(67.8℃及び60℃)からのシグナルを使用したプロッティング方法は、各ターゲット核酸配列の存在を示す増幅曲線を提供する。
【0312】
基準値に対する計算式及び各ターゲット核酸配列に対する増幅曲線を収得するためのプロッティング式は、下記の通りである:
(1)NGまたはCTの基準値(RV)
エンドポイントで60℃でのRFU÷67.8℃でのRFU
(2)NGターゲットに対するプロッティング式:
(i)67.8℃でのRFU-(60℃でのRFU÷CTターゲットのRV)
または(ii)60℃でのRFU-(67.8℃でのRFUxCTターゲットのRV)
(3)CTターゲットに対するプロッティング式:
(i)67.8℃でのRFU-(60℃でのRFU÷NGターゲットのRV)
または(ii)60℃でのRFU-(67.8℃でのRFUxNGターゲットのRV)
前記式において、RFU(相対的な蛍光単位)値は、リアルタイムPCRの各サイクルから測定された値であり、RVは、基準値を示す。
【0313】
本実施例で使われたアップストリームプライマー、ダウンストリームプライマー、PTO、及びCTOの配列は、次の通りである:
NG-F 5’-TACGCCTGCTACTTTCACGCTIIIIIGTAATCAGATG-3’(配列番号:1)
NG-R 5’-CAATGGATCGGTATCACTCGCIIIIICGAGCAAGAAC-3’(配列番号:2)
NG-PTO 5’-GTACGCGATACGGGCCCCTCATTGGCGTGTTTCG[C3 spacer]-3’(配列番号:7)
NG-CTO 5’-[BHQ-2]TTTTTTTTTTTTTTTTTTTG[T(Cal Fluor Red 610)]ACTGCCCGTATCGCGTAC[C3 spacer]-3’(配列番号:8)
CT-F2 5’-GAGTTTTAAAATGGGAAATTCTGGTIIIIITTTGTATAAC-3’(配列番号:9)
CT-R2 5’-CCAATTGTAATAGAAGCATTGGTTGIIIIITTATTGGAGA-3’(配列番号:10)
CT-PTO 5’-GATTACGCGACCGCATCAGAAGCTGTCATTTTGGCTGCG[C3 spacer]-3’(配列番号:11)
CT-CTO 5’-[BHQ-2]GCGCTGGATACCCTGGACGA[T(Cal Fluor Red 610)]ATGTGCGGTCGCGTAATC[C3 spacer]-3’(配列番号:12)
(I:デオキシイノシン)
(下線を引いた文字は、PTOの5’-タギング部位を示す)
【0314】
リアルタイムPCRをターゲット核酸(10pgのNGゲノムDNA、10pgのCTゲノムDNA、または10pgのNGゲノムDNA及び10pgのCTゲノムDNAの混合物)、NGターゲット増幅のための5pmoleのアップストリームプライマー(配列番号:1)及び5pmoleのダウンストリームプライマー(配列番号:2)、3pmoleのPTO(配列番号:7)、1pmoleのCTO(配列番号:8)、CTターゲット増幅のための5pmoleのアップストリームプライマー(配列番号:9)及び5pmoleのダウンストリームプライマー(配列番号:10)、3pmoleのPTO(配列番号:11)、1pmoleのCTO(配列番号:12)、及び5μlの4X マスターミックス[最終、200uM dNTPs、2mM MgCl2、2U of Taq DNA重合酵素]を含有する20μlの最終体積で実施した。前記反応混合物を含有するチューブを50℃で5分間リアルタイム熱循環器(CFX96、Bio-Rad)に入れ、95℃で15分間変性させ、95℃で30秒、60℃で60秒、72℃で30秒、67.8℃で5秒の50サイクルを実施した。シグナルを毎サイクルごとに60℃及び67.8℃で検出した。
【0315】
図2Aに示されたように、NG、CT、またはNG+CTの存在時に、60℃及び67.8℃いずれもでシグナルが検出された。ターゲット核酸の不在時に、シグナルが検出されなかった。各ターゲットの基準値をNG単独サンプルまたはCT単独サンプルのシグナルを使用して計算した。
図2Bに示されたように、NG及びCTターゲットに係わる基準値は、それぞれ6.1及び1.0であった。
【0316】
そして、各サンプルを確認するために、相応する基準値及び67.8℃及び60℃でのRFUをプロッティング式(
図2C及び
図2Dで、(i)または(ii)式)に適用し、各ターゲット配列の増幅曲線を収得した。該収得された増幅曲線の有意性を確保するために、NG単独サンプル及びCT単独サンプルの結果を参照して適切な閾値を選択した。
【0317】
図2C及び
図2Dに示されたように、プロッティング方法から由来の増幅曲線は、各サンプル内のNGまたはCTの存在または不在を確認することができる。
【0318】
したがって、異なる温度でのシグナル検出を含むPTOCEリアルタイムPCRによって単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器で2つのターゲット核酸を検出することができる。
【0319】
したがって、異なる検出温度及び基準値を使用したPTOCEリアルタイムPCRによって単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器で2つのターゲット核酸を検出することができるということが理解されうる。
【0320】
実施例3:異なる検出温度及び基準値を使用したSNP遺伝型分析
本発明者らは、本発明の方法が単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器でSNP遺伝子型の分析に適用可能であるか否かを調査した。PTOCEリアルタイムPCRをシグナル発生手段として適用した。
【0321】
5’-ヌクレアーゼ活性を有するTaq DNA重合酵素をアップストリームプライマー及びダウンストリームプライマー、PTOの切断、及びPTO断片の延長のために使用した。MTHFR(C677T)ヒトゲノムDNAの野生型(c)同型接合体、突然変異型(T)同型接合体、及び異型接合体をターゲット核酸配列として使用した。
【0322】
PTOCEリアルタイムPCRを使用してMTHFR(C677T)ヒトゲノムDNAの野生型(c)対立遺伝子及び突然変異型(T)対立遺伝子を検出した。ターゲット対立遺伝子が存在する場合、PTOが放出され、PTO断片が生産される。前記PTO断片は、CTOのキャプチャリング部位にアニーリングされ、CTOのテンプレーティング部位上で延びて、CTOと延長二量体(二合したCTO)とを形成する。前記延長二量体の形成は、シグナルを提供し、延長二量体-形成温度でシグナルを測定することによって、増幅曲線が収得されうる。
【0323】
PTO及びCTOは、これらの延長を防止するために、これらの3’末端にカーボンスぺーサでブロッキングされた。野生型(c)対立遺伝子または突然変異型(T)対立遺伝子に対するCTOは、その5’末端にクエンチャー分子(BHQ-2)及びそのテンプレーティング部位に蛍光レポーター分子(CAL Fluor Red 610)で標識された(配列番号:16及び18)。
【0324】
本実施例で、64℃及び60℃をシグナル検出温度として選択した。野生型(c)対立遺伝子または突然変異型(T)対立遺伝子の存在に依存的に生成された延長二量体は、これらの配列及び長さに調節された制御可能なTm値を有する。本実施例で、野生型(c)対立遺伝子及び突然変異型(T)対立遺伝子に対する延長二量体の配列及び長さは、64℃及び60℃いずれもでシグナルを提供するように設計された。延長二量体及び2つの検出温度を含む反応条件は、野生型(c)対立遺伝子の基準値が突然変異型(T)対立遺伝子の基準値と異なるように設計及び選択した。
【0325】
MTHFR(C677T)遺伝子を含む知られていないサンプルの遺伝子型は、2つの検出温度から検出されたシグナル間の差を前記3つの遺伝子型に係わる基準値と比較することで決定されうる。
【0326】
MTHFR(C677T)遺伝子のSNP遺伝子型を確認するために、各遺伝子型に係わる基準値を計算した。各遺伝子型に係わる基準値は、区別されることができるために、本発明者らは、2つのカットオフ値を用いて、各遺伝子型に係わる基準値の範囲を分けることができる。本実施例で使われた各遺伝子型に係わる基準値を、下記のように計算した:
野生型同型接合体、突然変異同型接合体及び異型接合体に係わる基準値
エンドポイントで60℃でのRFU÷64℃でのRFU
前記式において、RFU(相対的な蛍光単位)値は、リアルタイムPCRのエンドポイントから測定された値である。
【0327】
本実施例で使われたアップストリームプライマー、ダウンストリームプライマー、PTO、及びCTOの配列は、次の通りである:
M677-F 5’-CCACCCCGAAGCAGGGAIIIIIGAGGCTGACC-3’(配列番号:13)
M677-R 5’-CAAGTGATGCCCATGTCGGIIIIIGCCTTCACAA-3’(配列番号:14)
M677-W-PTO 5’-GGTCCCGACGTTAGCTCCCGCAGACACCTTCTCCTTC[C3 spacer]-3’(配列番号:15)
M677-W-CTO 5’-[BHQ-2]CCTCGGTGCCACGCCATCGG[T(CAL Fluor Red 610)]TCTTCTAACGTCGGGACC[C3 spacer]-3’(配列番号:16)
M677-M-PTO 5’-ACGTCGATTCGCACTCCCGCAGACACCTTCTCCTTCAA[C3 spacer]-3’(配列番号:17)
M677-M-CTO 5’-[BHQ-2]TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT[T(CAL Fluor Red 610)]ATTCTGCGAATCGACGT[C3 spacer]-3’(配列番号:18)
(I:デオキシイノシン)
(下線を引いた文字は、PTOの5’-タギング部位を示す)
【0328】
リアルタイムPCRをターゲット核酸(10ngの野生型(c)同型二量体MTHFR(C677T)ヒトゲノムDNA、10ngの突然変異(T)同型二量体MTHFR(C677T)ヒトゲノムDNA、または10ngの異型二量体MTHFR(C677T)ヒトゲノムDNA)、5pmoleのアップストリームプライマー(配列番号:13)及び5pmoleのダウンストリームプライマー(配列番号:14)、3pmoleのそれぞれのPTO(配列番号:15及び17)、1pmoleのそれぞれのCTO(配列番号:16及び18)、及び5μlの4X マスターミックス[最終、200μM dNTPs、2mM MgCl2、2U of Taq DNA重合酵素]を含有する20μlの最終体積で行った。前記反応混合物を含有するチューブを50℃で5分間リアルタイム熱循環器(CFX96、Bio-Rad)に入れ、95℃で15分間変性させ、95℃で30秒、60℃で60秒、72℃で30秒、64℃で5秒の50サイクルを行った。シグナルを毎サイクルごとに60℃及び64℃で検出した。
【0329】
図3Aに示されたように、野生型(c)同型接合体、突然変異(T)同型接合体、または異型接合体の存在時に、60℃及び64℃いずれもで蛍光シグナルが検出された。ターゲット核酸の不在時に、シグナルが検出されなかった。3つの遺伝子型に係わる基準値を計算し、各遺伝子型がカットオフ値によって区別されうるということを確認した。
【0330】
図3Bに示されたように、野生型(c)同型接合体、異型接合体、及び突然変異(T)同型接合体に係わる基準値は、それぞれ1.0、1.3、及び2.7であった。各遺伝子型に係わる基準値は、各遺伝子型が区別されうるということを確認させてくれた。
【0331】
これら結果は、本発明の方法が単一検出チャネルを使用して、1つの反応容器でSNP遺伝子型の分析に適用可能であるということを示す。興味深くも、対立遺伝子からのシグナルが互いに区別されることができないにもかかわらず、本発明の方法は、単一検出チャネルを使用してSNP遺伝子型の分析を正確に実施することができる。
【0332】
本発明の望ましい具現例が記述されたにもかかわらず、本発明の精神に属するその変化及び変形が当業者に明白であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とその均等物とによって決定されるものと理解しなければならない。
【配列表】