(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】リシルオキシダーゼ様2阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20220701BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220701BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220701BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220701BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220701BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220701BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220701BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220701BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220701BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20220701BHJP
A61K 31/56 20060101ALN20220701BHJP
A61K 31/198 20060101ALN20220701BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20220701BHJP
A61K 39/155 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P11/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P17/00
A61P35/00
A61P7/00
A61P37/06
A61P3/10
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K31/56
A61K31/198
A61K31/519
A61K39/155
(21)【出願番号】P 2019512639
(86)(22)【出願日】2017-09-06
(86)【国際出願番号】 US2017050331
(87)【国際公開番号】W WO2018048942
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516079800
【氏名又は名称】ファーマケア,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】100208292
【氏名又は名称】清原 直己
(74)【復代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】バイン,グレッチェン
(72)【発明者】
【氏名】エバンズ,ジリアン フランシス
(72)【発明者】
【氏名】マッケンナ,デイドラ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン,ジョン ハワード
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502437(JP,A)
【文献】特許第6697809(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4439
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LOXL2活性の阻害または減少から
恩恵を受ける哺乳動物の疾患または疾病の治療で使用するための
、小分子LOXL2阻害剤
を含む医薬組成物であって、ここで、前記小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害または結合に少なくとも10倍選択的であり、
前記疾患または疾病は、肺疾患、肝疾患、腎臓病、心臓の線維症、眼の線維症、耳の線維症、骨髄線維症、強皮症、癌、自己免疫性の疾患または疾病、炎症性の疾患または疾病、あるいはそれらの
併発であり、
前記小分子LOXL2阻害剤は、トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対して少なくとも100倍選択的である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記小分子LOXL2阻害剤は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、あるいはその混合物である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記小分子LOXL2阻害剤は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である、請求項3に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない、請求項4に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンの薬学的に許容可能な塩は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、
ならびに、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタリン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
、2,2-ジクロロ酢酸
、2-ヒドロキシエタンスルホン酸
、2-オキソグルタール酸
、4-アセトアミド安息香酸
、4-アミノサリチル酸
、酢酸
、アジピン酸
、アスコルビン酸(L)
、アスパラギン酸(L)
、ベンゼンスルホン酸
、安息香酸
、樟脳酸(+)
、カンフル-10-スルホン酸(+)
、カプリン酸(デカン酸)
、カプロン酸(ヘキサン酸)
、カプリル酸(オクタン酸)
、炭酸
、桂皮酸
、クエン酸
、シクラミン酸
、ドデシル硫酸
、エタン-1,2-ジスルホン酸
、エタンスルホン酸
、ギ酸
、フマル酸
、ガラクタル酸
、ゲンチシン酸
、グルコヘプトン酸(D)
、グルコン酸(D)
、グルクロン酸(D)
、グルタミン酸
、グルタル酸
、グリセロリン酸
、グリコール酸
、馬尿酸
、イソ酪酸
、乳酸(DL)
、ラクトビオン酸
、ラウリン酸
、マレイン酸
、リンゴ酸(-L)
、マロン酸
、マンデル酸(DL)
、メタンスルホン酸
、フマル酸モノメチル
、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸
、ナフタレン-2-スルホン酸
、ニコチン酸
、オレイン酸
、シュウ酸
、パルミチン酸
、パモ酸
、リン酸
、プロピオン酸
、ピログルタミン酸(-L)
、サリチル酸
、セバシン酸
、ステアリン酸
、コハク酸
、硫酸
、酒石酸(+L)
、チオシアン酸
、トルエンスルホン酸(p)
、および、ウンデシレン酸からなる群から選択される酸から形成される、請求項4または5に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、または酢酸塩として哺乳動物に投与される、請求項4または5に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩として哺乳動物に投与される、請求項4または5に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記小分子LOXL2阻害剤は、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である、請求項3に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない、請求項9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンの薬学的に許容可能な塩は、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、
ならびに、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタリン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
、2,2-ジクロロ酢酸
、2-ヒドロキシエタンスルホン酸
、2-オキソグルタール酸
、4-アセトアミド安息香酸
、4-アミノサリチル酸
、酢酸
、アジピン酸
、アスコルビン酸(L)
、アスパラギン酸(L)
、ベンゼンスルホン酸
、安息香酸
、樟脳酸(+)
、カンフル-10-スルホン酸(+)
、カプリン酸(デカン酸)
、カプロン酸(ヘキサン酸)
、カプリル酸(オクタン酸)
、炭酸
、桂皮酸
、クエン酸
、シクラミン酸
、ドデシル硫酸
、エタン-1,2-ジスルホン酸
、エタンスルホン酸
、ギ酸
、フマル酸
、ガラクタル酸
、ゲンチシン酸
、グルコヘプトン酸(D)
、グルコン酸(D)
、グルクロン酸(D)
、グルタミン酸
、グルタル酸
、グリセロリン酸
、グリコール酸
、馬尿酸
、イソ酪酸
、乳酸(DL)
、ラクトビオン酸
、ラウリン酸
、マレイン酸
、リンゴ酸(-L)
、マロン酸
、マンデル酸(DL)
、メタンスルホン酸
、フマル酸モノメチル
、ナフタリン-1,5-ジスルホン酸
、ナフタレン-2-スルホン酸
、ニコチン酸
、オレイン酸
、シュウ酸
、パルミチン酸
、パモ酸
、リン酸
、プロピオン酸
、ピログルタミン酸(-L)
、サリチル酸
、セバシン酸
、ステアリン酸
、コハク酸
、硫酸
、酒石酸(+L)
、チオシアン酸
、トルエンスルホン酸(p)
、および、ウンデシレン酸からなる群から選択される酸から形成される、請求項9または10に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、または酢酸塩として哺乳動物に投与される、請求項9または10に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩として哺乳動物に投与される、請求項9または10に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
肺疾患は肺線維症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項15】
肺疾患は間質性肺疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項16】
肺疾患は、特発性間質性肺炎、結合組織病関連の間質性肺疾患、サルコイドーシス、過敏性肺炎、医原性の肺炎/線維症(薬剤性ILD、放射線障害)、エオシン好性のILD、職業性肺疾患、家族性肺線維症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、または肺性のランゲルハンス細胞組織球症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項17】
肺疾患は、特発性肺線維症(IPF)、非特異性の間質性肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)、呼吸の毛細気管支炎間質性肺疾患(RBILD)、剥離性間質性肺炎(DIP)、急性間質性肺炎(AIP)、またはリンパ球様間質性肺炎(LIP)である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項18】
肺疾患は特発性肺線維症(IPF)である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物は、哺乳動物中の血清LOXL2(sLOXL2)のレベルを低下させる、請求項1から18のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項20】
医薬組成物は、肺機能の低下を遅らせるか、肺疾患の増悪の頻度を減らすか、肺疾患を有する哺乳動物の生存を改善するか、またはこれらの組み合わせを行う、請求項1から19のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項21】
肺疾患は肺胞タンパク症(PAP)である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項22】
肝疾患は線維性肝疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項23】
肝疾患は、C型肝炎ウイルス(HCV)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、肝硬変、肝線維症、α1抗トリプシン欠乏症疾患、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびHIVに関連する脂肪性肝炎および肝硬変、ならびに慢性ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)または胆汁性肝硬変などの関連疾病に起因する線維性の肝疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項24】
肝疾患は、C型肝炎感染、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、ウィルソン病、および原発性胆汁性肝硬変、または硬化性胆管炎に起因する線維性の肝疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項25】
肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に起因するヒト線維性肝疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項26】
肝疾患は、ウイルス性肝炎の疾患または疾病に起因するヒト線維性肝疾患である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項27】
肝疾患は肝線維症であり、哺乳動物はNASHと診断されたヒトである、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項28】
肝疾患は肝線維症であり、哺乳動物は原発性硬化性胆管炎(PSC)と診断されたヒトである、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項29】
肝疾患はNASHによる肝硬変である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項30】
腎臓病は腎臓の線維症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項31】
腎臓病は慢性腎臓病である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項32】
腎臓病は、尿細管間質性の腎線維症、IgA腎症、糖尿病腎症、アルポート症候群、HIV関連の腎症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、膜性糸球体腎炎、間質性線維症、尿細管萎縮(IFTA)、急性腎傷害(AKI)、急性閉塞性腎症および薬物誘発性線維症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項33】
腎臓病はメタボリックシンドローム、膀胱尿管逆流、または糖尿病に関連する、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項34】
骨髄線維症は原発性骨髄線維症または続発性骨髄線維症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項35】
骨髄線維症は原発性の、真性多血症後または本態性血小板血後の骨髄線維症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項36】
強皮症は、限局性全身性硬化症またはびまん性全身性硬化症である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項37】
眼の線維症は、硝子体、虹彩、毛様体、レンズ、脈絡膜、網膜色素上皮、角膜、網膜、またはこれらの組み合わせの線維症を含む、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項38】
眼の線維症は、眼の手術の結果である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項39】
哺乳動物は、緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、角膜変性、ドライアイ症候群、角膜炎、角膜潰瘍、未熟児網膜症(ROP)、翼状片、白内障、網膜浮腫および新血管新生を伴う糖尿病網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、黄斑浮腫と診断される、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項40】
癌は、乳癌、結腸癌、胃癌、頭頚部癌、肺癌、黒色腫、またはこれらの
併発である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項41】
癌は、結腸癌、食道腫瘍、口の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮癌、および頭頸部の扁平上皮癌である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項42】
自己免疫性の疾患または疾病は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、スチル病、狼瘡、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、硬皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、全身性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経異常症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋緊張病、硬皮症、または外陰部痛である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項43】
自己免疫性の疾患または疾病は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、変形性関節症、または強直性脊椎炎である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項44】
炎症性の疾患または疾病は、喘息、炎症性腸疾患、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頚管炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ぶどう膜炎、膣炎、血管炎、または、外陰部炎である、請求項1から13のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年9月7日に出願された「USES OF A LYSYL OXIDASE-LIKE 2 INHIBITOR」と題される米国仮特許出願第62/384,542号、および2017年5月22日に出願された「USES OF A LYSYL OXIDASE-LIKE 2 INHIBITOR」と題される米国仮特許出願第62/509,460号の利益を主張し、その各々は、全体として参照により組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載されるのは、LOXL2活性に関連する疾病、疾患、または病気の処置あるいは予防において、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)阻害剤を使用するための方法である。
【背景技術】
【0003】
リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)は、細胞外マトリックスタンパク質の架橋を触媒するアミンオキシターゼ酵素である。LOXL2も、細胞の上皮間葉転換を媒介するような細胞内のプロセスにも関与する。LOXL2シグナル伝達は例えば、線維性疾患および癌に関係している。線維性疾患および癌を有する患者に利益を提供することができる療法に対する、満たされていない医学的ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載されるのは、LOXL2活性の阻害または減少から利益を受けることになる哺乳動物の疾患または疾病の処置における小分子LOXL2阻害剤の使用であって、ここで、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害または結合により選択的である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害または結合に少なくとも10倍選択的である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害または結合に、少なくとも10倍、少なくとも20度、少なくとも30倍、少なくとも40度、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、または100倍よりも多く選択的である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害または結合に少なくとも100倍選択的である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害に、少なくとも100倍、少なくとも120度、少なくとも140倍、少なくとも160倍、少なくとも180倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、少なくとも300倍、少なくとも350倍、または少なくとも400倍よりも多く選択的である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対する阻害に少なくとも400倍選択的である。
【0005】
一態様では、疾患または疾病は、肺疾患、肝疾患、腎臓病、心臓の線維症、眼の線維症、耳の線維症、骨髄線維症、強皮症、癌、自己免疫性の疾患または疾病、炎症性の疾患または疾病、あるいはそれらの組み合わせである。
【0006】
1つの態様では、小分子LOXL2阻害剤は、トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である。
【0007】
いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはその混合物である。いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンの薬学的に許容可能な塩は、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、および塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタリン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2,2-ジクロロ酢酸;2-ヒドロキシエタンスルホン酸;2-オキソグルタール酸;4-アセトアミド安息香酸;4-アミノサリチル酸;酢酸;アジピン酸;アスコルビン酸(L);アスパラギン酸(L);ベンゼンスルホン酸;安息香酸;樟脳酸(+);カンフル-10-スルホン酸(+);カプリン酸(デカン酸);カプロン酸(ヘキサン酸);カプリル酸(オクタン酸);炭酸;桂皮酸;;クエン酸;シクラミン酸;ドデシル硫酸;エタン-1,2-ジスルホン酸;エタンスルホン酸;ギ酸;フマル酸;ガラクタル酸;ゲンチシン酸;グルコヘプトン酸(D);グルコン酸(D);グルクロン酸(D);グルタミン酸;グルタル酸;グリセロリン酸;グリコール酸;馬尿酸;イソ酪酸;乳酸(DL);ラクトビオン酸;ラウリン酸;マレイン酸;リンゴ酸(-L);マロン酸;マンデル酸(DL);メタンスルホン酸;フマル酸モノメチル、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸;ナフタレン-2-スルホン酸;ニコチン酸;オレイン酸;シュウ酸;パルミチン酸;パモ酸;リン酸;プロピオン酸;ピログルタミン酸(-L);サリチル酸;セバシン酸;ステアリン酸;コハク酸;硫酸;酒石酸(+L);チオシアン酸;トルエンスルホン酸(p);およびウンデシレン酸からなる群から選択される酸から形成される。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、または酢酸塩として使用される。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩として使用される。
【0008】
いくつかの実施形態では、小分子LOXL2阻害剤は、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である。いくつかの実施形態では、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンの薬学的に許容可能な塩は、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、および塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタリン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸2,2-ジクロロ酢酸;2-ヒドロキシエタンスルホン酸;2-オキソグルタール酸;4-アセトアミド安息香酸;4-アミノサリチル酸;酢酸;アジピン酸;アスコルビン酸(L);アスパラギン酸(L);ベンゼンスルホン酸;安息香酸;樟脳酸(+);カンフル-10-スルホン酸(+);カプリン酸(デカン酸);カプロン酸(ヘキサン酸);カプリル酸(オクタン酸);炭酸;桂皮酸;;クエン酸;シクラミン酸;ドデシル硫酸;エタン-1,2-ジスルホン酸;エタンスルホン酸;ギ酸;フマル酸;ガラクタル酸;ゲンチシン酸;グルコヘプトン酸(D);グルコン酸(D);グルクロン酸(D);グルタミン酸;グルタル酸;グリセロリン酸;グリコール酸;馬尿酸;イソ酪酸;乳酸(DL);ラクトビオン酸;ラウリン酸;マレイン酸;リンゴ酸(-L);マロン酸;マンデル酸(DL);メタンスルホン酸;フマル酸モノメチル、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸;ナフタレン-2-スルホン酸;ニコチン酸;オレイン酸;シュウ酸;パルミチン酸;パモ酸;リン酸;プロピオン酸;ピログルタミン酸(-L);サリチル酸;セバシン酸;ステアリン酸;コハク酸;硫酸;酒石酸(+L);チオシアン酸;トルエンスルホン酸(p);およびウンデシレン酸からなる群から選択される酸から形成される。いくつかの実施形態では、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩、塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、または酢酸塩として使用される。いくつかの実施形態では、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩として使用される。
【0009】
本明細書で記載されるのは、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、あるいはその混合物である。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物か、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、あるいはそれらの混合物は、LOXL2活性に関連する疾病、疾患、または病気の処置あるいは予防において使用される。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物か、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはその混合物は、本明細書に記載される疾病あるいは疾患の処置または予防において使用される。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはその混合物の塩酸塩が使用される。いくつかの実施形態では、(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、またはその混合物のメシル酸塩が使用される。
【0010】
化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、LOXL2活性に関連する疾病または疾患の処置あるいは予防において使用される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、本明細書に記載される疾病または疾患の処置あるいは予防において使用される。いくつかの実施形態では、化合物Iの塩酸塩が使用される(つまり化合物1)。いくつかの実施形態では、化合物Iのメシル酸が使用される(つまり化合物2)。
【0011】
1つの態様では、本明細書に記載されるのは、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の肺疾患を処置または予防するための方法である。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩(化合物2)またはその溶媒和物として哺乳動物に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、肺疾患は肺線維症である。いくつかの実施形態では、肺疾患は間質性肺疾患(ILD)である。いくつかの実施形態では、肺疾患は、特発性間質性肺炎、結合組織病に関連する間質性肺疾患(CTD-ILD)、サルコイドーシス、過敏性肺炎、医原性の肺炎/線維症(薬剤性ILD、放射線障害)、エオシン好性のILD(例えば好酸球性肺炎)、職業性肺疾患、家族性肺線維症、ヘヘルマンスキー・パドラック症候群、または肺性のランゲルハンス細胞組織球症である。いくつかの実施形態では、肺疾患は、特発性肺線維症(IPF)、非特異性の間質性肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)、呼吸の毛細気管支炎間質性肺疾患(RBILD)、剥離性間質性肺炎(DIP)、急性間質性肺炎(AIP)またはリンパ球様間質性肺炎(LIP)である。いくつかの実施形態では、肺疾患は特発性肺線維症(IPF)である。いくつかの実施形態では、化合物は、哺乳動物中の血清LOXL2(sLOXL2)のレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、化合物は、肺機能の低下を遅らせるか、肺疾患の増悪の頻度を減らすか、肺疾患を有する哺乳動物の生存を改善するか、またはこれらの組み合わせを行う。
【0013】
肺疾患の処置または予防のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を哺乳動物に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬は、肺炎のワクチン接種、咳抑制薬、コルチコステロイド、免疫抑制薬、N-アセチルシステイン(NAC)、ピルフェニドン、ニンテダニブ、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、ヒトは成人である。
【0014】
いくつかの実施形態では、肺疾患は肺胞たんぱく症(PAP)である。肺疾患(例えばPAP)の予防または処置のいくつかの実施形態では、方法は、全肺洗浄、少なくとも1つの追加の治療薬の投与、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬は、コルチコステロイド、粘液溶解剤、またはプロティナーゼ阻害剤である。
【0015】
肺疾患の予防または処置のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に全身的に投与される。肺疾患の予防または処置のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に経口的に、注入によってまたは静脈内に投与される。肺疾患の予防または処置のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、経口溶液、経口懸濁液、粉体、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形で哺乳動物に投与される。肺疾患の予防または処置のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に肺に直接投与される。
【0016】
肺疾患の予防または処置のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、噴霧器、定量噴霧式吸入器、または乾燥粉末吸入器を用いて哺乳動物の肺に直接投与される。
【0017】
1つの態様では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の肝疾患を処置または予防するための方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩(化合物2)またはその溶媒和物として哺乳動物に投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、肝疾患は線維性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、C型肝炎ウイルス(HCV)、非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、肝硬変、肝線維症、α1抗トリプシン欠乏症疾患、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびHIVに関連する脂肪性肝炎および肝硬変、ならびに慢性ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性の脂肪性肝炎(ASH)、非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、または胆汁性肝硬変などの関連する疾病に起因する線維性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、C型肝炎感染、非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性の脂肪性肝炎(ASH)、ウィルソン病、および原発性胆汁性肝硬変、または硬化性胆管炎に起因する線維性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に起因するヒト線維性肝疾患(fibrotic human liver disease)である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、ウイルス性肝炎の疾患または疾病に起因するヒト線維性肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は肝線維症であり、哺乳動物はNASHと診断されたヒトである。いくつかの実施形態では、肝疾患は肝線維症であり、哺乳動物は原発性硬化性胆管炎と診断されたヒトである。いくつかの実施形態では、肝疾患はNASHによる肝硬変である。
【0019】
肺疾患の処置または予防のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を哺乳動物に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬は、PPARアゴニスト、インクレチン、Glut2-I、FXRアゴニスト、抗酸化剤、GLP-1モジュレーター、SGLT-2阻害剤、胆汁酸、カスパーゼプロテアーゼ阻害剤、合成脂肪酸/胆汁酸抱合体、二重のCCR2/CC5アンタゴニスト、免疫調節薬、サーチュイン刺激薬、脂肪酸阻害剤、DGAT1阻害剤、CD3抗原、PDE-4モジュレーター、AMPK刺激剤、ROCK2阻害剤、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、TLR-4アンタゴニスト、THRベータアゴニスト、カテプシンB阻害剤、ガレクチン-3モジュレーター、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
肺疾患の処置または予防のいくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に全身的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に経口的に、注入によってまたは静脈に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、経口溶液、経口懸濁液、粉体、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形で哺乳動物に投与される。
【0021】
1つの態様では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における腎臓の線維症、心臓の線維症、眼の線維症、耳の線維症、骨髄線維症、強皮症を処置または予防するための方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩、あるいはその溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩(化合物2)またはその溶媒和物として哺乳動物に投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、骨髄線維症は、原発性の骨髄線維症または続発性の骨髄線維症である。いくつかの実施形態では、骨髄線維症は原発性の、真性多血症後または本態性血小板血後の骨髄線維症である。骨髄線維症の処置または予防のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つのさらなる治療薬を哺乳動物に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬は、ルキソリチニブである。
【0023】
いくつかの実施形態では、強皮症は、限局性全身性硬化症またはびまん性全身性硬化症である。
【0024】
いくつかの実施形態では、眼の線維症は、硝子体、虹彩、毛様体、レンズ、脈絡膜、網膜色素上皮、角膜、網膜、またはこれらの組み合わせの線維症を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、眼の線維症は、眼の手術の結果である。
【0026】
いくつかの実施形態では、哺乳動物は、緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、角膜変性、ドライアイ症候群、角膜炎、角膜潰瘍、未熟児網膜症(ROP)、翼状片、白内障、網膜浮腫および新血管新生を伴う糖尿病網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離、黄斑浮腫と診断される。
【0027】
線維性疾患の処置または予防のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療薬を哺乳動物に投与する。
【0028】
いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に全身的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に経口的に、注入によってまたは静脈に投与される。
【0029】
1つの態様では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩、あるいはその溶媒和物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の癌を処置または予防するための方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩(化合物2)またはその溶媒和物として哺乳動物に投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、結腸癌、胃癌、頭頚部癌、肺癌、黒色腫、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、癌は、結腸癌、食道腫瘍、口の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮癌、および頭頸部の扁平上皮癌である。
【0031】
癌の処置または予防のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を哺乳動物に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬は抗癌剤である。
【0032】
いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩あるいは溶媒和物は、哺乳動物に全身的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に経口的に、注入によってまたは静脈に投与される。
【0033】
1つの態様では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の自己免疫性の疾患または疾病あるいは炎症性の疾患または疾病を処置または予防するための方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、(S,S)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、化合物(R,R)-トランス-(3-((4―(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンは、メシル酸塩(化合物2)またはその溶媒和物として哺乳動物に投与される。
【0034】
幾つかの実施形態において、自己免疫性の疾患または疾病は、炎症性腸疾患及びを、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、スチル病、狼瘡、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、硬皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、全身性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経異常症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋緊張病、硬皮症、または外陰部痛である。いくつかの実施形態では、自己免疫性の疾患または疾病は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、変形性関節症または強直性脊椎炎である。
【0035】
いくつかの実施形態では、炎症性の疾患または疾病は、喘息、炎症性腸疾患、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頚管炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ぶどう膜炎、膣炎、血管炎、または、外陰部炎である。
【0036】
自己免疫性の疾患または疾病の処置または予防のいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を哺乳動物に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0037】
いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に全身的に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物に経口的に、注入によってまたは静脈に投与される。いくつかの実施形態では、化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、経口溶液、経口懸濁液、粉体、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態で哺乳動物に投与される。
【0038】
1つの態様において、本明細書に記載されるのは、化合物I、または薬学的に可能なまたは溶媒和物、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、経口投与、吸入、経鼻投与、皮膚投与、または経眼投与による哺乳動物への投与のために製剤される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は静脈内投与、皮下投与、または経口投与による哺乳動物への投与のために製剤される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は経口投与による哺乳動物への投与のために製剤される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、液体、懸濁液、ゲル、分散剤、溶液、エマルジョン、軟膏、またはローション剤の形態である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、丸剤、またはカプセルの形態をしている。
【0039】
1つの態様において、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)活性の阻害または減少から利益を得ることになる哺乳動物の疾患または疾病を処置する方法であって、必要としている哺乳動物に、化合物I、あるいはその薬学的に可能な塩または溶媒和物を投与する工程を含む方法が本明細書で記載される。いくつかの実施形態において、疾患または疾病は、線維症または癌である。いくつかの実施形態において、線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症、腹膜線維症、目の線維症、耳の線維症、または皮膚の線維症を含む。いくつかの実施形態において、線維症は骨髄線維症である。
【0040】
1つの態様において、治療上有効な量の化合物I、あるいはその薬学的に可能な塩または溶媒和物を、必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、本明細書に記載される疾患あるいは疾病のいずれか1つを処置または予防する方法が本明細書に記載される。
【0041】
1つの態様おいて、治療上有効な量の化合物I、あるいはその薬学的に可能な塩または溶媒和物を、必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の線維症の処置または予防のための方法が本明細書に記載される。他の実施形態では、線維症はLOXL2阻害剤を用いる処置に適用可能である。いくつかの実施形態では、線維症は肺線維症である。いくつかの実施形態では、方法は、化合物I、あるいは薬学的に可能な塩または溶媒和物に加えて、哺乳動物へ第2の治療薬を投与する工程をさらに含む。
【0042】
前述の態様のいずれかにおいて、本明細書にされる化合物I、あるいはその薬学的に可能な塩または溶媒和物の有効な量が:(a)哺乳動物に全身に投与され、および/または、(b)哺乳動物に経口で投与され、および/または、(c)哺乳動物に静脈内投与され、および/または(d)吸入によって投与される、および/または、(e)経鼻投与によって投与され、あるいは、および/または、(f)哺乳動物へ注入によって投与され、および/または、(g)哺乳動物に局所的に投与され、および/または、(h)点眼によって投与され、および/または、(i)哺乳動物に直腸で投与され、および/または、(j)哺乳動物に非全身的にまたは局所的に投与される、さらなる実施形態がある。
【0043】
前述の態様のいずれかにおいて、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効量の一回投与を含むさらなる実施形態であり、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が、哺乳動物に1日に1回投与されるか、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が、哺乳動物に1日にわたって複数回投与されるさらなる実施形態を含む。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、連続的な服薬スケジュールで投与される。幾つかの実施形態では、化合物は、連続的な毎日の投薬スケジュールで投与される。
【0044】
PGD2の疾患または疾病の処置に関する上述の任意の態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与することに加え、少なくとも1つの追加の薬剤を投与することを含むさらなる実施状態がある。様々な実施形態では、それぞれの薬剤は同時を含む任意の順で投与される。
【0045】
本明細書に開示された実施形態のいずれかにおいて、哺乳動物はヒトである。
【0046】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、人間に投与される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、経口で投与される。いくつかの実施形態では、経口投与は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む錠剤の使用によって遂行される。
【0047】
包装材料と、包装材料内部の本明細書に記載される化合物あるいはその薬学的に許容可能な塩と、化合物I、あるいはその薬学的に可能な溶媒和物がLOXL2の活性の阻害のため、またはLOXL2活性の阻害または減少から利益を得る疾患または疾病の1つ以上の症状の処置、予防、または改善のために使用されることを示すラベルとを含む製品が提供される。
【0048】
本明細書に記載される化合物、方法、および組成物の他の目標、特徴、および利点は、以下の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、本開示の精神と範囲内の様々な変更と修正が詳細な説明から当業者に明らかとなるため、詳細な説明および特定の実施例は特定の実施形態を示しつつも一例として与えられるものに過ぎないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】トリクローム染色肺切片の組織病理学分析に由来するAshcroftスコア(Ashcroft scores)を示し、それは、肺線維症のブレオマイシン誘発マウスモデルにおける、Rac-1の予防的な14日間の用量反応試験での肺線維症を反映する(*p<0.05;**p<0.01;*** p<0.001)。データは、Rac-1が用量に関連して線維症を軽減したこと、および、30mg/kgのQDが最大の抗線維性の有効性を達成するための最小量であることを示す。
【
図2】肺線維症のブレオマイシン誘発マウスモデルにおける、トリクローム染色肺切片の組織病理学分析に由来するAshcroftスコアが示される。化合物1、Rac-1、およびEnt-1は、予防的な形態(Pro)と治療的な形態(Ther)の両方の形態で60mpkのQDで投与された(*p<0.05、および、**p<0.01、および、****p<0.0001)。
【
図3】28日間の回復試験における肺線維症を反映する、組織病理学分析由来のAshcroftスコアを示しており、ここで、ブレオマイシン投与後14日目で60mg/kgのQDで化合物1を投与した。
【
図4】肺線維症のブレオマイシン誘発マウスモデルにおける、化合物Rac-1の60mg/kgのQD、60mg/kgのQ2D、および60mg/kgのQ3Dでの投与について比較する、14日間の予防的な試験での肺線維症を反映する組織病理学分析由来のAshcroftスコアを示す(**p<0.01;**** p<0.0001)。
【
図5】60mg/kgのQDの化合物1とLOXL2の抗体である30mg/kgのrAB0023とを比較する、14日間の予防的な試験における肺線維症を反映する組織病理学分析由来のAshcroftスコアを示す。
【
図6a】アルポート症候群および慢性腎臓病のCol4A3欠損マウスモデルにおける腎線維症を反映する、糸球体硬化(左)および間質性線維症(右)のスコアを示す。2週齢または5週齢で30mg/kgのQDで化合物1を経口投与した後、サンプルは7週齢で採取された(** p<0.01)。
【
図6b】ヌードマウスの乳房脂肪体に移植されたMDA-MB-435-GFP細胞を有する同所性ヒト乳癌モデルにおける腫瘍体積を示す。腫瘍体積は、4週の試験の間、毎週測定された(*** p<0.001、および、**** p<0.0001)。
【
図7】ピクロシリウスレッド正の肝臓染色のパーセントによって測定されるような、Mdr2KOマウスにおけるコラーゲン面積率(area fraction)を示す。マウスは、6週齢で0または60mg/kgのQDの化合物1で経口的に処置された。サンプルは12週齢で採取された。
【
図8】マウスにおけるチオアセトイミド(TAA)誘発肝線維症モデルにおけるコラーゲン面積率を示す。マウスは、TAA開始後3週または6週で、30mg/kgのQDの化合物1で経口的に処置された。サンプルはTAA開始後、12週で採取された。
【
図9】ビオチン標識されたLOXL2阻害剤、および所有者のErenna(登録商標)ベースのアッセイを用いて測定された健康な男女と強皮症患者(n=それぞれ10)との被験体において測定された血漿LOXL2の濃度を示す(* SSc(女性)vs.健康(女性)のp=0.04の独立t検定)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)はリシルオキシダーゼ(LOX)ファミリーのメンバーであり、これはCu2+およびリジンチロシルキノン(LTQ)依存性のアミンオキシターゼを含む。このファミリーは5つの遺伝子を含む:lox(LOX)、loxl1(リシルオキシダーゼ様1、LOXL1)、loxl2(LOXL2)、loxl3(リシルオキシダーゼ様3、LOXL3)、およびloxl4(リシルオキシダーゼ様4、LOXL4)。LOXファミリーは、コラーゲンおよびエラスチン中のリジンとヒドロキシリシンのε-アミノ基の酸化的脱アミノを触媒して、これらの分子の架橋を促すことで知られている。コラーゲンおよびエラスチンの架橋は、細胞外マトリックスの引っ張り強さの維持にとって不可欠である。
【0051】
病理学的ストロマの開発は、疾患における重要な役割を果たす。病理学的のストロマは、活性化されたストロマ細胞、コラーゲンマトリックス、成長因子、および血管新生の構造からなる。線維形成などの病的状態の間は、線維芽細胞は動員および活性化され、これは、線維症の開発に結びつく細胞外マトリックスタンパク質の増加した合成および沈着を促進する微小環境の生成をもたらす。
【0052】
線維性疾患および癌における疾患関連の線維芽細胞の活性化は、細胞外マトリックスのリモデリングをもたらし、それは、コラーゲンIおよびII、増加した架橋、新しく体積されたコラーゲン、および増強された組織剛性を含む、過度の細胞外マトリックスタンパク質の沈着に最終的につながる。加えて、活性化された線維芽細胞は、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、結合組織成長因子(CTGF)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、および血管内皮増殖因子(VEGF)などの多数の血管新生促進性、血管原性促進性、増殖性促進性の成長因子、およびサイトカインを発現し、それによって、疾患の進行におけるパラクリン・シグナル伝達において重要な役割を果たす。線維芽細胞の活性化および動員、および/またはそれらのシグナル伝達経路の阻害することで、この病理学的ストロマの開発を妨害することは、線維性疾患における新規な治療方針を示す。
【0053】
類似の触媒能力にもかかわらず、各リシルオキシダーゼ酵素は、特有の発現および機能的な活性を有すると報告されている。LOXL2は、病理学的部位に対して線維芽細胞を活性化するか動員することによって、線維性疾患の病理学的ストロマの開発において主要な役割を果たす。
【0054】
LOXL2は細胞外マトリックスのリモデリングにおけるその役割に加えて、細胞内機能を有することが実証されている。LOXL2は、上皮間葉転換(EMT)トランスデューサー(Snail1)の安定性と機能的な活性を促進することにより、Snail1を正に調節する。LOXL2は、接着斑キナーゼ(FAK)シグナル伝達経路の活性化に正に寄与し、接着斑複合体の組織化に関与する。LOXL2遺伝子のサイレンシングにより上皮細胞極性が再獲得され、乳腺細胞株の移動および侵襲能力が減少する。細胞接着および細胞極性の調節は、細胞内のLOXL2によって媒介することが報告されている。LOXL2は、Snail1依存性のメカニズムとSnail1非依存性メカニズムによって、密着結合と細胞極性の遺伝子と同様に、転写的にE-カドヘリンを抑制する。LOXL2は最近では染色質に関連付けられると説明されており、LOXL2の触媒性ドメインに依存する機能であるヒストンH3トリメチル脱アミノに関与することが報告されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は細胞内のLOXL2を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は細胞外の(分泌された)LOXL2を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は細胞外および細胞内のLOXL2を阻害する方法である。
【0056】
繊維症
LOXL2は、線維症のプロセスに関連する。線維形成プロセスは、コラーゲンのような細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を含み、これは、不完全な臓器機能と臓器不全をもたらす身体的、生化学的、および生体力学的なマトリックス特性を変える。組織線維症もまた、細胞形質転および転移を直接的に促すことによって癌の進行に関係している。腫瘍は一般に正常組織より堅く、腫瘍の硬さは腫瘍の転移に影響を及ぼす。
【0057】
過剰なLOXL2酵素活性は、腫瘍の硬さの増大に関与している。高いLOXL2は、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変、およびNASHに苦しむ患者の肝臓由来の線維症の病変にも関与している。さらに、LOXL2に特異的なモノクローナル抗体AB0023の投与は、線維症のモデルにおいて疾患を減少させるのに効果的であった。AB0023は成長因子および架橋コラーゲンマトリックスとTGFベータのシグナル伝達の産生を阻害することが示された。
【0058】
LOXL2は、I型のコラーゲン架橋を促進し、かつ様々な病因および様々な器官の線維形成のコア制御因子である。循環LOXL2のレベルは、線維症の段階と相関する。LOXL2は、線維性疾患における中心の経路標的である。Mehal et al. “Expressway to the core of fibrosis,” Nat Med. 2011. 17: 552-553.
【0059】
健康な成人の組織においてLOXL2発現はほとんどなく、正常な(例えば無病)状態では、循環LOXL2の量は低い。特定の疾患状態では、循環LOXL2が増加する。例えば、LOXL2は、肺線維症および慢性肝炎を患う患者の血清において、例えば慢性C型肝炎患者において増加し得、線維症を患う患者におけるそのレベルが高いほど、線維症はより進行している。循環LOXL2の検出は、個人が、循環LOXL2のレベルの上昇をもたらす疾患を患っているかどうか判断するために有用である。そのような疾患は、線維症および癌を含む。
【0060】
循環LOXL2のレベルは、線維症の段階と関連することが発見されている。また、循環LOXL2のレベルは、線維症を有する個人が線維症の処置を受けられるか否かに関する指標を提供し、かつ処置に対する疾患の結果または応答性といった、特定のエンドポイント、結果、または事象の可能性、疾患に関する他の予後および予測的な情報を提供し得ることもわかっている。
【0061】
いくつかの実施形態では、哺乳動物の線維症の処置または予防における化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書に開示される。
【0062】
「線維症」は、本明細書で使用されるように、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞過形成、および異常増殖に続いて生じる、細胞外マトリックス成分の蓄積を指す。
【0063】
いくつかの実施形態において、線維症の細胞または組織を、線維症を減少させるか阻害するのに十分な量の本明細書に開示される化合物に接触させる工程を含む、組織中の線維症を減少させる方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、線維症は線維性疾患を含む。
【0064】
幾つかの実施形態では、線維症は、肺線維症、肝臓線維症、腎臓線維症、心臓線維症、腹膜線維症、眼の線維症または皮膚線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は肺線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は肝線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は腎線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は心線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は腹膜線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は目の線維症を含む。いくつかの実施形態では、線維症は皮膚の線維症を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、線維症の低減、または線維性の疾病の処置は、以下の1つ以上を低減または阻害することを含む:細胞外マトリックスタンパク質の形成または沈着;前線維症性の細胞タイプの数(例えば、線維芽細胞または免疫細胞の数);線維症の病変内の細胞のコラーゲンまたはヒドロキシプロリンの含有物;線維形成タンパク質の発現または活性;あるいは、炎症反応に関連する線維症の減少。
【0066】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は肺の線維性疾患である。
【0067】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は肝臓の線維性疾患である。
【0068】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は心臓の線維性疾患である。
【0069】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は腎臓の線維性疾患である。
【0070】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は皮膚の線維性疾患である。
【0071】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は目の線維性疾患である。
【0072】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は胃腸管の線維性疾患である。
【0073】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は骨髄の線維性疾患である。
【0074】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は耳の線維性疾患である。
【0075】
いくつかの実施形態では、線維性疾患は特発性である。いくつかの実施形態では、線維性疾患は、疾患(例えば、感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患、悪性または癌の疾患、および/または、結合性疾患);毒素;発作(例えば、環境ハザード(例えば、アスベスト、炭塵、多環式芳香族炭化水素)、たばこの煙、創傷);医学的処置(例えば、外科的切開、化学療法、または放射線)、あるいはこれらの組み合わせに関連付けられる(例えば、これらに続発する)。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の線維症の処置または予防のための方法が本明細書で開示される。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の肺機能を改善する方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は肺線維症を患っていると診断された。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の特発性肺線維症を処置する方法が本明細書で開示される。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の組織中の細胞、フィブロネクチン、コラーゲン、または増大した線維芽細胞動員の異常な蓄積または活性化を制御する方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、組織中の細胞、フィブロネクチン、コラーゲン、または増大した線維芽細胞動員の異常な蓄積または活性化は、線維症を生じさせる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物中の強皮症の処置または予防のための方法が本明細書で開示される。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における望ましくないまたは異常な皮膚の肥厚を減らすための方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、皮膚の肥厚は強皮症に関連付けられる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の組織中の細胞、フィブロネクチン、コラーゲン、または増大した線維芽細胞動員の異常な蓄積または活性化を制御する方法である。いくつかの実施形態では、真皮組織中の細胞、フィブロネクチン、コラーゲンあるいは増大した線維芽細胞動員の異常な蓄積または活性化は、線維症を生じさせる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるLOXL2阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩を、それを必要としている哺乳動物に投与する工程を含む、線維症を患う哺乳動物の組織中のヒドロキシプロリン含有物を減少させる方法が本明細書に記載される。
【0083】
いくつかの実施形態では、哺乳動物の線維症、または線維性の疾患か疾病の処置または予防における化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書に開示される。ある場合には、疾患または疾病は線異形成に関連する。線維症は、例えば、肉体的な怪我、炎症、感染、毒素への曝露、および他の原因に起因する損傷組織における、例えば創傷治癒プロセスの一部として生じ得る線維組織の異常な蓄積を含み得る。線維症の例としては、皮膚の瘢痕形成、ケロイド、肝線維症、肺線維症、腎線維症、糸球体硬化、尿細管間質性線維症、および強皮症が挙げられる。
【0084】
一態様では、LOXL2活性に関連する疾病、疾患、あるいは障害の予防および/または処置のために、化合物I、あるいは薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を使用する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載される疾患、疾病、または障害を患う被験体への、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載される疾患、疾患、または障害を有するか発症している疑いのある被験体への、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与を含む。
【0085】
1つの態様において、本明細書に記載される疾病、疾患、あるいは障害に起因する被験体の1つ以上の兆候、症状あるいは合併症の処置または予防のための方法が本明細書で提供され、該方法は、被験体への化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与を含む。
【0086】
1つの態様において、LOXL2活性に関連した疾病、疾患、あるいは障害の予防のための方法が本明細書に提供され、該方法は、別の予防的治療と組み合わせて化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与する工程を含む本明細書で提供される。
【0087】
1つの態様において、LOXL2活性に関連した疾病、疾患、あるいは障害の処置のための方法が本明細書に提供され、該方法は、別の治療と組み合わせて化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与する工程を含む方法が本明細書で提供される。
【0088】
1つの態様において、LOXL2活性に関連した疾病、疾患、あるいは障害の兆候、症状、あるいは合併症の減弱、回復、および/または阻害のための方法が本明細書で提供され、該方法は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与する工程を含む、方法が本明細書で提供される。
【0089】
1つの態様において、LOXL2活性に関連した疾病、疾患、あるいは障害の兆候、症状、あるいは合併症の減弱、回復、および/または停止のための方法が本明細書で提供され、該方法は、1つ以上の追加の治療と組み合わせて化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与する工程を含む方法が本明細書で提供される。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与、または、本明細書に記載される化合物I塩あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む医薬組成物の投与は、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の治療上有効な量での投与を含む。いくつかの実施形態では、治療上有効な量は約0.01mg-5000mgの間である。例えば、治療量は、約1mg-約5000mg、約50mg-約4000mg、約50mg-約4000mg、約150mg-約4000mg、約250mg-約2000mg、約50mg-約1000mg、あるいは前述の値の間の任意の整数である。いくつかの実施形態では、治療上有効な量は継続的に投与される。いくつかの実施では、治療上有効な量は、1日当たり4回、1日当たり3回、1日当たり2回、1日に一度、1週当たり6回、1週当たり5回、1週当たり4回、1週当たり3回、1週当たり2回、1週当たり1回、あるいはそれより少ない頻度で投与される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける治療上有効な時間で投与される。いくつかの例では、治療上有効な時間とは、本明細書に記載される疾病、疾患あるいは障害の1つ以上の徴候あるいは症状を減少させるか取り除くためにかかる時間である。例えば、治療上有効な時間は1日-1年の間である。前述の治療量の例は制限的なものではない。追加の治療レジメンがさらに本明細書に別記される。
【0091】
肺線維症
特発性肺線維症(IPF)は、肺に制限される原因不明の慢性、進行性、線維化性の間質性肺炎の特定形態である。100をはるかに超える様々な形態の間質性肺疾患(ILD)が記載される。これらのびまん性間質性肺疾患は、炎症および変化した肺間質の存在によって特徴付けられる。ILDを患う患者の肺における組織病理学的変化は、サルコイドーシスを患う患者における実質線維症を伴わない肉芽腫性炎症から、特発性肺線維症(IPF)を患う患者における構造的な乱れを伴う広範な肺線維症にまで及ぶ。ILDのいくつかの形態が特異的な遺伝的異常(例えばヘルマンスキー-プドゥラック症候群、家族性の肺線維症)と関連付けられ、あるいは、多くの遺伝子変異体がIPF、サルコイドーシスまたは慢性ベリリウム疾患(CBD)などのILD障害を発症するリスクの増加と関連する。
【0092】
間質性肺疾患はさらに、結合組織異常(CTD)を併発することがあり、肺の組織病理学的変化は、CTD関連のILDにおける通常型間質性肺炎(UIP)または非特異性の間質性肺炎(NSIP)パターンの特徴を有することがある。
【0093】
いくつかの実施形態では、間質性肺疾患(ILD)としては、以下に限定されないが、特発性間質性肺炎、強皮症関連ILD、結合組織病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)、サルコイドーシス、過敏性肺炎、医原性の肺炎/線維症(薬剤性ILD、放射性障害)、好酸球性ILD(例えば好酸球性肺炎)、職業性肺疾患、遺伝性の障害(例えば家族性の肺線維症、ヘルマンスキー-プドゥラック症候群)、および原発性疾患(例えば肺性のランゲルハンス細胞組織球症)が挙げられる。いくつかの実施形態では、特発性間質性肺炎としては、限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、非特異性の間質性肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)、呼吸性毛細気管支炎間質性肺疾患(RBILD)、剥離性間質性肺炎(DIP)、急性間質性肺炎(AIP)、リンパ球様間質性肺炎(LIP)が挙げられる。
【0094】
特発性肺線維症(IPF)は、気道上皮細胞の損害、線維芽細胞の活性化および増殖、ならびに過度のコラーゲンおよび他の細胞外マトリックス(ECM)成分の沈着を伴う、進行性かつ最終的に致命的な肺疾患である。ECM組成物および組織のこれらの修飾は、肺実質の生体力学の特質を変え、局所的な張力を増加させ、これはIPFの発病において重要な意味を持つ。
【0095】
マトリックス張力1つの重要なドライバーは、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)、線維性コラーゲンを含むECM分子の共有結合の架橋を触媒する酵素である。LOXL2タンパク質発現は、病的なIPF肺組織の線維芽細胞の病巣およびコラーゲン性領域で観察されるが、健康な肺組織では比較的発現が少ない(Barry-Hamilton et al. Nat Med 2010; 16: 1009-1017)。LOXL2もまた、肝線維症の活発な疾患界面に局在化されており、線維症におけるコアドライバー(core driver)であると考えられる(Mehal et al., Nat Med 2011;17:552-553)。LOXL2は、患部組織における活発な線維形成の領域と関連する。
【0096】
IPFは、原因不明の慢性、進行性、線維化性の間質性肺炎の特定形態であり、主に高齢者に発症し、肺に制限され、かつUIPの組織病理学的および/または放射線学的パターンと関連する。それは、呼吸困難および肺機能の進行性悪化によって臨床的に、および任意の既知の誘発がない場合は肺内の瘢痕組織の形成によって病理学的に特徴付けられる疾患である。患者は、通常、40歳から70歳の間にIPFの症状を示し、症状の年齢中位数は66歳である。
【0097】
IPFは、経時的な肺機能の低下によって特徴づけられる。IPFの最も顕著な症状は、患者の日常活動を妨害する運動誘発性の呼吸困難および慢性の乾性咳である。肺機能における拘束性障害は別に、IPFの他の頻繁な臨床的特徴として、両肺底部の吸気性クラックルおよび低酸素血症誘発性撥指形成が挙げられる。遡及研究は、症状が6ヶ月から2年の期間でIPF診断に先行することを示唆する。症状の発症はゆっくりではあるが、数か月から数年の期間にわたって症状は悪化して肺機能は徐々に低下し、低酸素症および最終的には呼吸不全による死に結びつく。IPFの3つの潜在的臨床経過がある:a)呼吸困難の重症度の悪化を伴うゆっくりとした生理的悪化(最も一般的である);b)急速な悪化および死亡への進行;または、c)呼吸不全のための入院治療によってしばしば顕在化する、急性の呼吸低下の期間に干渉された比較的安定した期間。IPFの生存期間中央値は、診断時から2年から5年の間であると推定される。
【0098】
IPFは、定義上、未知の病因の障害である考えられるが、多くの潜在的リスク因子が確認されている。たばこの喫煙は、IPFに強く関連する。加えて、金属ダスト、木材粉塵、農業、理髪、石材の切断/研磨、家畜、および野菜ダスト/動物ダストへの様々な他の環境的および職業性の曝露は、IPFの発症リスクの増加に関係している。
【0099】
通常型間質性肺炎は、IPFに関連する組織的パターン/放射線パターンである。UIPの組織的パターンは、密な線維組織のパッチと交互に出る正常な肺からなる。
【0100】
ハンマン-リッチ症候群もまた、急性間質性肺炎(すなわちAIP)として知られており、急速な臨床経過(数日から数週間)、高い死亡率、および生検における特殊な組織病理学的外観を有する;主な組織病理学的の特徴は、びまん性肺胞障害(DAD)である。公表された症例におけるAIPの年齢中位数は、50年である。免疫抑制療法の使用は、通常、高用量静脈内コルチコステロイドの形態で、AIP/DADを患う患者の管理において行われることが多い。これに対して、免疫抑制療法はIPFの維持療法として効果がないと知られている。
【0101】
ILDは、小児の間質性肺疾患(chILD)として知られ、18歳未満の患者における診断され得る。ILDを患う免疫適格の小児は、ある種の免疫抑制療法、最も一般的にはコルチコステロイドで、典型的に治療される。線維症は、持続炎症の結果として生じると考えられる。一般的に、chILDは2つの主なカテゴリー分けられる:それは、出生直後に現れる疾患および2歳以降に発症する疾患である。2歳以降に現れる疾患は、抗炎症療法、中でもとりわけ、コルチコステロイドで治療される傾向がある。これに対して、2歳未満の疾患は、間質性線維症(つまり成人のILDに類似しない)に関連する気腔充填疾患(airspace-filling diseases)である傾向があり、かつchILDを患う年長児と比べて予後不良である傾向がある。chILDを患う2歳未満の患者には、ATP結合カセット輸送体A3(ABCA3)およびサーファクタントタンパクCの突然変異を有する幼児の部分集合が含まれる。多くのサーファクタントの変異が急性新生児呼吸不全による死亡ヘとつながる一方で、それほど重症型でない変異を有する患者は、標準的治療への抵抗性がある慢性の間質性肺疾患を発症する。
【0102】
いくつかの実施形態では、哺乳動物における肺線維症を処置する方法が本明細書に記載され、選択的LOXL2阻害剤をそれを必要としている哺乳動物へ投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、選択的LOXL2阻害剤は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物でる。いくつかの実施形態では、選択的LOXL2阻害剤は、化合物I、塩酸塩である。いくつかの実施形態では、選択的LOXL2阻害剤は、化合物I、メシル酸塩である。
【0103】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症に関連する疾患または疾病の処置あるいは予防において使用される。肺の線維症は多くの症候群および疾患を含んでいる。例示的な疾患としては、特発性肺線維症(IPF)、特発性間質性肺炎、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が挙げられる。肺線維症としては、限定されないが、特発性線維化性肺胞隔炎、慢性線維化性間質性肺炎、間質性肺疾患(ILD)、および、びまん性実質性肺疾患(DPLD)がさらに挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩溶媒和物は、肺線維症の処置あるいは予防において使用される。
【0105】
前述の疾患を含むほとんどの肺繊維症の病因は、十分に理解されていないが、すべては炎症細胞の流入、ならびにそれに続くコラーゲンに富む細胞外マトリックスの合成および沈着の増加によって特徴付けられる。
【0106】
IPFは、肺組織の炎症、および最終的には線維症、によって特徴付けられる;しかし、これらの2つの症状もまた、別個のものとして考えられる。IPFの原因は不明である;それは自己免疫疾患から、または感染の結果として生じるかもしれない。IPFの症状としては、乾性咳、および疾患が進行するにつれて主要症状になる呼吸困難(つまり息切れ)が挙げられる。死亡は、低酸素血症、右心不全、心臓発作、肺塞栓症、脳卒中、または肺感染症に起因し得、それらの全ては該疾患によってもたらされ得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩溶媒和物は、肺の線維性疾患の処置あるいは予防において使用される。いくつかの実施形態では、肺の線維性疾患は以下の1つ以上から選択される:肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、特発性線維化性肺胞隔炎(CFA)、閉塞性細気管支炎、または気管支拡張症。いくつかの実施形態では、肺の線維症は、疾患、毒素、発作、医学的処置、またはこれらの組み合わせの二次的なものである。いくつかの実施形態では、肺の線維症は、以下の1つ以上に関連する:アスベスト肺と珪肺症のような疾患プロセス;職業上の危険;環境汚染物;たばこの煙;自己免疫性の結合組織障害(例えば、関節リウマチ、強皮症、および全身性エリテマトーデス(SLE));サルコイドーシスなどの結合組織障害;感染症、例えば感染、とりわけ、慢性感染症;限定されないが、放射線療法と薬物療法、例えば、化学療法を含む医学的処置(例えば、ブレオマイシン、メトトレキセート、アミオダロン、ブスルファン、および/またはニトロフラントインによる処置)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法で処置される肺の線維性疾患は、癌治療、例えば、癌(例えば、扁平上皮癌、精巣癌、ブレオマイシンを伴うホジキン病)の処置に関連する(例えば、二次的なものである)。
【0108】
IPFを患うヒトの中で、より高い血清LOXL2(sLOXL2)レベルは、IPF疾患進行のリスクの増加に関連する(Chien et al. Eur Respir J 2014; 43: 1430-1438)。いくつかの実施形態では、sLOXL2レベルは、選択的LOXL2阻害剤(例えば化合物I、またはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)を用いる標的療法に対するIPF患者の反応の予測するものである。高いベースラインのLOXL2レベルを有する患者は、IPF予後不良のリスクが高い。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、人間の線維症の疾患または疾病を処置するために使用され、それは線維症の疾患または疾病を患っていない人間のsLOXL2レベルの少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍高いsLOXL2レベルを有する。いくつかの実施形態では、線維症の疾患または疾病は肺線維症である。いくつかの実施形態では、線維症の疾患または疾病はIPFである。
【0109】
いくつかの実施形態では、特発性肺線維症の重症度は、症状、肺機能検査、運動能力、CTスキャンを使用した肺構造、およびセント・ジョージ呼吸器アンケート(SGRQ)の使用を評価することによって査定される。
【0110】
肺機能検査(PFT)はIPFの重症度を評価するのに重要なツールである。実施するのに最も容易な検査は肺活量測定であり、マウスピースを介した最大の呼気に続く、最大の吸気を含む。結果は、強制肺活量(FVC)である。これは、最大の吸入から吐き出される空気の量である。結果は年齢、性別、および人種が一致する正常値と比較される。結果は、予測されたパーセントと同様に空気量として表示される。正常値は、予測されたFVCの約80%かそれ以上である。FVCによるIPFのステージ分類のカットオフについて同意されているものは何もないが、多くの臨床医が以下を使用する:軽度のIPFは、約>75%の予測されたFVCであり、中程度のIPFは約50-75%の予測されたFVCであり、重度のIPFは約25-49%の予測されたFVCであり、非常に重度のIPFは約<25%の予測されたFVCである。FVCの特定値より重要なのは、FVCの経時的な変化である。FVCの>5-10%の減少は、死亡のリスクの増加に関連する。
【0111】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を肺線維症を患う人間に投与すること、人間のFVCを増加させる。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間のFVCを、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、または100%より多く増加させる。
【0112】
拡散能は、別のタイプの肺機能検査である。それは、肺にわたってガスを交換する方法の測定である。予測されたパーセントとして、結果が報告される。より低い値は、より進行した疾患を示す。40%より少ない値は、生存率の悪化と関連する。拡散量の減少もまた、より悪い結果と関連している。一酸化炭素(DLCO)に対する肺の拡散量は、肺の肺胞から血流への酸素の移動量を決定する。
【0113】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を肺線維症を患う人間に投与することは、DLCOを増加させる。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間のDLCOを、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、または100%より多く増加させる。
【0114】
6分間の歩行テストは、運動能力(歩行距離、運動中の酸素飽和度、ならびに心拍数および血圧)を測定する。
【0115】
高分解能CTスキャンは、線維症の構造的範囲の評価-どれだけの線維症が存在するか-を提供する。より進行したX線撮影の線維症は、より悪い結果に関連している。線維症の経時的に増加した範囲もまた、あまり良好でない結果と関連している。
【0116】
より悪い予後に関連付けられる他の因子としては、高齢、性別、過去の多量のタバコ歴、体重不足、肺高血圧症の進行および基礎疾患の増悪が挙げられる。IPF患者もまた、肺癌を発症するリスクが高くなり、それは予後に強力な影響を与える。
【0117】
セント・ジョージ呼吸器のアンケート(SGRQ)は、慣性的な気流制限を有する患者における健康関連の健康状態(health-related health)を測定し定量化することを設計された指標である。それは、症状レベル、疾患活動性、および身体障害の確立している測定によく相関することが示されている(Jones et al.,The St.George’s Respiratory Questionnaire.Resp Med 1991;85(suppl B):2531;Jones et al.,A self-complete measure of health status for chronic airflow limitation. Am Rev Respir Dis 1992;145;1321-1327;Barr et al., American translation, modification, and validation of the St. George’s Respiratory Questionnaire. Clin Ther. 2000 Sep,22(9):1121-45)。
【0118】
SGRQは自分で行う。SGRQの第1の部分(「症状」)は、咳の頻度、痰の生成、喘鳴、息切れ、および息切れまたは喘鳴の発作の持続時間と頻度を含む総体症状を評価する。評価は1、3、または12ヶ月のリコールで繰り返される。第2の部分は、2つの構成要素;「活性」および「影響」を有する。「活性」部分では、息切れを引き起こす、または息切れのために制限された活動を取り扱う。「影響」部分では、雇用への影響、健康管理、パニック、標徴存在、薬剤の必要性、処方された療法の副作用、健康への期待、および日常生活の妨害を含む様々な要因をカバーする。
【0119】
スコアは0-100の範囲であり、より高いスコアはより多くの制限を示す。経験的データおよび患者へのインタビューに基づいて、4単位の平均の変化スコアは、わずかに効果的な処置に関連し、8単位は適度に効果的な変化に関連し、および12単位は非常に効果的な処置に関連する(Jones PW.,Eur Respir J 1994,7:55-62;Jones PW.Eur Respir J.2002 Mar,19(3):398-404)。
【0120】
いくつかの実施形態では、肺線維症を患う人間への記載の化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与は、SGRQスコアにおける低下をもたらす。いくつかの実施形態では、SGRQスコアは、少なくとも1単位、少なくとも2単位、少なくとも3単位、少なくとも4単位、少なくとも5単位、少なくとも6単位、少なくとも7単位、少なくとも8単位、少なくとも9単位、少なくとも10単位、少なくとも11単位、少なくとも12単位、または12単位よりも多く低下する。
【0121】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間における肺機能の低下を遅らせるために使用される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間における疾患増悪の頻度を減らすために使用される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間における生存を改善するために使用される。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う人間における肺機能の低下を遅らせるため、増悪の頻度を減らすため、および生存を改善するために使用される。
【0122】
正常な肺が瘢痕組織によって置き換えられると、ガスを交換して血液中に酸素を運ぶ肺の能力が損なわれる。十分な肺が関与する場合、これは血液中の低酸素濃度をもたらす。これは、低酸素血症または低酸素症と呼ばれる。血中酸素濃度は2つの方法で測定される。
【0123】
非侵襲性酸素測定はパルスオキシメータを用いて行われる。パルスオキシメータは、酸素を運んでいるヘモグロビンの割合を測定する飽和度を読み取る。正常値は、96-100%の間である。
【0124】
血液中の酸素量を測定するためのより正確な方法は、動脈血ガスを用いる。これは、手首の動脈に針を刺して数ミリリットルの血液を取り除く必要がある。その後、酸素分圧は直接測定される。
【0125】
いくつかの実施形態では、安静時、活動時、または睡眠時のいずれかに飽和度が88-89%より低い場合、酸素が人間に投与される。安静時の酸素飽和度は、運動時の酸素飽和度より一般に高い。睡眠時の酸素飽和は通常その間である。
【0126】
酸素は鼻カニューレを介して、タンクまたは濃縮器から運ばれる。通常の流量は、毎分2リットルで始まり、必要に応じて増加することができる。オキシマイザーペンダント(oximizer pendants)などの高度なデリバリーシステムは、高流量を必要とする患者への酸素供給を改善することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、胃食道逆流症(GERD)はIPFの発症進行において役割を果たす。いくつかの実施形態では、酸抑制治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。酸抑制療法としては、制限されないが、H2遮断薬(例えば、シメチジン、ファモチジン、ラフチジン、ニザチジン、ラニチジン、ロキサチジン、チオチジン)およびプロトンポンプ阻害薬(例えばオメプラゾール)が挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態では、肺炎のワクチン接種は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。適切なワクチンとしては、限定されないが、多糖類ワクチンおよび結合型ワクチンが挙げられる。今日最も一般に使用される多糖類ワクチン(ニューモバックス)は、23血清型(1、2、3、4、5、6b、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、および33F)からの精製多糖類からなる。結合型ワクチンはジフテリアトキソイドCRM197に共有結合した莢膜多糖類からなる。結合型ワクチンの一例は、プレブナー13である。ニューモバックスは、少なくとも5年隔てられた、およびプレブナーの投与から少なくとも1年隔てられた2回の投与として与えられる。プレブナーは1回の投与として与えられる。
【0129】
いくつかの実施形態では、肺リハビリテーションは、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与と組み合わせて行なわれる。肺リハビリテーションは、有酸素トレーニングおよび筋力トレーニングの両方に焦点を当てた構造化された運動プログラムである。
【0130】
いくつかの実施形態では、1つ以上の鎮咳薬が、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。咳は、IPFの最も厄介な症状の1つであり得る。咳の処置としては、限定されないが、去痰薬、鎮咳剤または咳止め薬、抗ヒスタミン剤、うっ血除去薬、ステロイド、ベンゾナテート、サリドマイド、カンナビノイド、ハチミツ、およびシュガーシロップ。
【0131】
去痰薬としては、限定されないが、アセチルシステインおよびグアイフェネシンが挙げられる。
【0132】
鎮咳剤、または咳止め薬は、限定されないが、コデイン、フォルコジン、デキストロメトルファン、ノスカピン、およびブタミラートが挙げられる。
【0133】
抗ヒスタミン剤としては、限定されないが、メピラミン(ピリラミン)、アンタゾリン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ドキシラミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、フェニラミン、クロルフェナミン(クロルフェニラミン)、デクスクロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジン、セチリジン、シクリジン、クロルサイクリジン、ヒドロキシジン、メクリジン、ロラタジン、デスロラチジン(desloratidine)、プロメタジン、アリメマジン(トリメプラジン)、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン、アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、ミゾラスチン、テルフェナジン、アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、レボセチリジン、フェキソフェナジンが挙げられる。
【0134】
うっ血除去薬は、限定されないが、エフェドリンを含む。
【0135】
ステロイドとしては、限定されないが、ベータメタゾン、プレドニゾン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン/プレドニゾロン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、およびウロベタゾールが挙げられる。
【0136】
カンナビノイドとしては、限定されないが、カンナビス、マリノール、ドロナビノールが挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、ハチミツまたはシュガーシロップ は咳嗽を和らげる。
【0138】
本明細書に記載されるさらに別の実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、呼吸器の疾病の処置において使用される少なくとも1つの薬剤と同時投与される。呼吸器の疾病の処置において使用される薬剤としては、限定されないが、気管支拡張剤(例えば交感神経刺激剤およびキサンチン誘導体)、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、ロイコトリエン形成阻害剤、ロイコトリエンモジュレーター、抗鼻閉薬、呼吸酵素、肺サーファクタント、抗ヒスタミン剤(例えばメピラミン(ピリラミン)、アンタゾリン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ドキシラミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、フェニラミン、クロルフェナミン(クロルフェニラミン)、デクスクロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジン、セチリジン、シクリジン、クロルサイクリジン、ヒドロキシジン、メクリジン、ロラタジン、デスロラチジン、プロメタジン、アリメマジン(トリメプラジン)、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン、アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、ミゾラスチン、テルフェナジン、アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、レボセチリジン、フェキソフェナジン)、粘液溶解薬、コルチコステロイド、抗コリン作用薬、鎮咳剤、鎮痛剤、去痰薬、アルブテロール、エフェドリン、エピネフリン、ホモテロール(fomoterol)、メタプロテレノール、テルブタリン、ブデソニド、シクレソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、臭化イプラトロピウム、プソイドエフェドリン、テオフィリン、モンテルカスト、ザフィルルカスト、アンブリセンタン、ボセンタン、エンラセンタン(enrasentan)、シタクスセンタン、テゾセンタン、イロプロスト、トレプロスチニル、ピルフェニドン、ニンテダニブ、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)阻害剤、FLAPモジュレーター、および5-LO阻害剤が挙げられる。
【0139】
特定の実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、少なくとも1つの抗炎症薬と同時投与される。ある実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、限定されないが、エピネフリン、イソプロテレノール、オルシプレナリン、気管支拡張剤、グルココルチコイド、ロイコトリエン修飾物質(leukotriene modifiers)、肥満細胞安定剤、キサンチン、抗コリン作用薬、β-2アゴニスト、FLAP阻害剤、FLAPモジュレーター、または5-LO阻害剤から選択された少なくとも1つの追加の薬剤と同時投与される。β-2アゴニストとしては、限定されないが、短時間作用型のβ-2アゴニスト(例えば、サルブタモール(アルブテロール)、レブアルブテロール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、およびメシア酸ビトルテロール(bitolterol mesylat))、あるいは長時間作用性のβ-2アゴニスト(例えば、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、およびクレンブテロール)が挙げられる。FLAP阻害剤および/またはFLAPモジュレーターは、限定されないが、3-[3-tert-ブチルスルファニル-1-[4-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)-ベンジル]-5-(ピリジン-2-イルメトキシ)-1H-インドール-2-イル]-2,2-ジメチル-プロピオン酸、3-[3-tert-ブチルスルファニル-1-[4-(6-エトキシ-ピリジン-3-イル)-ベンジル]-5-(5-メチル-ピリジン-2-イルメトキシ)-1H-インドール-2-イル]-2,2-ジメチル-プロピオン酸、MK-886、MK-0591、-BAY-x1005、MN-001、および米国特許第2007/0225285号、米国特許第2007/0219206号、米国特許第2007/0173508号、米国特許第2007/0123522号、ならびに米国特許第2007/0105866号(それぞれが参照により本明細書に組み込まれている)に見られる化合物を含むが、これらに限定されない。グルココルチコイドは、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルチカゾン、およびモメタゾンを含むが、これらに限定されない。抗コリン剤は、イプラトロピウムおよびチオトロピウムを含むが、これらに限定されない。マスト細胞安定剤は、クロモグリク酸およびネドクロミルを含むが、これらに限定されない。キサンチンは、アミノフィリン、テオブロミン、およびテオフィリンを含むが、これらに限定されない。ロイコトリエンアンタゴニストは、モンテルカスト、トメルカスト、プランルカスト、およびザフィルルカストを含むが、これらに限定されない。5-LO阻害としては、限定されないが、ジロートン、VIA-2291(ABT761)、AZ-4407およびZD-2138、あるいは米国特許第2007/0149579、国際公開公報2007/016784で見られる化合物が挙げられる。
【0140】
一態様では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、喘息を処置するために使用される1つ以上の薬剤と同時投与され、それは以下のものを含むが、これらに限定されない:組み合わせ吸入器(フルチカゾンおよびサルメテロール経口吸入(例えばアドベア);吸入ベータ-2アゴニスト(アルブテロール吸入器;アルブテロール噴霧器溶液;ホルモテロール;イソプロテレノール経口吸入;レブアルブテロール;メタプロテレノール吸入;ピルブテロール酢酸塩経口吸入;サルメテロール・エアロゾル吸入;サルメテロール粉体吸入;テルブタリン吸入器);吸入コルチコステロイド(ベクロメタゾン経口吸入;ブデソニド吸入溶液;ブデソニド吸入器;フルニソリド経口吸入;フルチカゾン吸入エアロゾル;経口吸入用フルチカゾン粉体;モメタゾン吸入粉体;トリアムシノロン経口吸入);ロイコトリエン修飾薬(モンテルカスト;モンテルカスト;ジロートン);肥満細胞安定剤(クロモリン吸入器;ネドクロミル経口吸入);モノクローナル抗体(オマリズマブ);経口のベータ-2アゴニスト;(アルブテロール経口用シロップ;アルブテロールの経口用錠剤;メタプロテレノール;テルブタリン);気管支拡張剤(アミノフィリン;オクストリフィリン;テオフィリン)。
【0141】
一態様では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、アレルギー処置するために使用される1つ以上の薬剤と同時投与され、それは以下のものを含むが、これらに限定されない:抗ヒスタミン剤とうっ血除去薬の組み合わせ(セチリジンとプソイドエフェドリン;デスロラタジンとプソイドエフェドリン ER;フェキソフェナジンとプソイドエフェドリン;ロラタジンとプソイドエフェドリン);抗ヒスタミン剤(アゼラスチンの点鼻薬;ブロムフェニラミン;ブロムフェニラミンの経口懸濁液;カルビノキサミン;セチリジン;クロルフェニラミン;クレマスチン;デスロラタジン;デキスクロルフェニルアミン ER;デキスクロルフェニルアミンの経口シロップ;ジフェンヒドラミンの経口;フェキソフェナジン;ロラタジン;プロメタジン);うっ血除去薬(プソイドエフェドリン);ロイコトリエン修飾薬(モンテルカスト;モンテルカスト顆粒);経鼻の抗コリン作用薬(イプラトロピウム);経鼻のコルチコステロイド;(ベクロメタゾンの鼻腔吸入;ブデソニドの鼻吸入器;フルニソリドの鼻腔吸入;フルチカゾンの鼻腔吸入;モメタゾンの点鼻薬;トリアムシノロンの鼻腔吸入;トリアムシノロンの点鼻薬);鼻粘膜充血除去薬(フェニレフリン);経鼻の肥満細胞安定化薬(クロモリンの点鼻薬)。
【0142】
一態様では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)を処置するために使用される1つ以上の薬剤と同時投与され、それは以下のものを含むが、これらに限定されない:抗コリン作用薬-臭化イプラトロピウム経口吸入;組み合わせ吸入器(アルブテロールおよびイプラトロピウム(例えばコンビベント、デュオネブ);フルチカゾンおよびサルメテロール経口吸入(例えばアドベア);コルチコステロイド(デキサメタゾン錠剤;酢酸フルドロコルチゾン;ヒドロコルチゾン錠剤;メチルプレドニゾロン;プレドニゾロン液体;経口のプレドニゾン;経口のトリアムシノロン)吸入ベータ-2アゴニスト(アルブテロール吸入器;アルブテロール噴霧器溶液;ホルモテロール;イソプロテレノール経口吸入;レブアルブテロール;メタプロテレノール吸入;ピルブテロール酢酸塩経口吸入;サルメテロール・エアロゾル吸入;サルメテロール粉体吸入;テルブタリン吸入器);吸入コルチコステロイド(ベクロメタゾン経口吸入;ブデソニド吸入溶液;ブデソニド吸入器;フルニソリド経口吸入;フルチカゾン吸入エアロゾル;経口吸入用フルチカゾン粉体;トリアムシノロン経口吸入);粘液溶解薬(グアイフェネシン);経口のベータ-2アゴニスト;(アルブテロール経口用シロップ;アルブテロールの経口用錠剤;メタプロテレノール;テルブタリン);気管支拡張剤(アミノフィリン;オクストリフィリン;テオフィリン)。
【0143】
ある実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、吸入コルチコステロイドと同時投与される。
【0144】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。免疫抑制剤としては、限定されないが、プレドニゾンおよびアザチオプリンが挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、低用量のプレドニゾンは、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。
【0146】
いくつかの実施形態では、N-アセチルシステイン(NAC)は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。
【0147】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、IPFなどの肺線維症の処置に有用な他の治療薬と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、IPFなどの肺線維症の処置に有用な治療薬は、経時的な肺機能の低下を遅らせる薬を含む。経時的な肺機能の低下を遅らせる治療薬は、限定されないが、ピルフェニドンおよびニンテダニブが挙げられる。さらなる治療薬としては、イマチナブおよび他のチロシンキナーゼ阻害剤、PBI-4050、組み換え型ペントラキシン -2/SAP (PRM-151)、エアロゾルIFN-γ、CTGF活性の阻害剤(FG-3019)、LPA受容体アンタゴニスト(BMS-986020、SAR100842)、オートタキシン阻害剤(GLPG-1690、PAT-409)、ガレクチン-3阻害剤(TD 139)、チペルカスト(Tipelukast)(MN-001)、インテグリンアンタゴニスト(STX-100/BG00011、GSK3008348)、PI3K阻害剤(GSK2126458)、JNK阻害剤(CC-90001)、ROCK阻害剤(KD025)、抗-IL-13化合物(トラロキヌマブ、レブリキズマブ、QAX-576)、CCL2アンタゴニスト(CNTO888)、CCR2アンタゴニスト(セニクリビロク)、抗-CD20化合物(リツキシマブ)、抗凝固剤(ダビガトラン)、コラーゲンV処置薬(IW001)、およびASK1阻害剤(GS4997)などが考えられる。
【0148】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、ピルフェニドンと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、ピルフェニドンは、最大1日量2,403mgまで、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。
【0149】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、ピルフェニドンと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、ニンテダニブは、最大1日量300mgまで、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時投与される。
【0150】
そのような組み合わせの個々の化合物は、別々の医薬製剤または併用医薬製剤で順次にまたは同時に投与される。一実施形態では、個々の化合物は、併用医薬製剤で同時に投与されるだろう。既知の治療薬の適切な用量は、当業者によって理解されるだろう。
【0151】
本明細書において引用された組み合わせは、薬学的に許容可能な希釈剤または担体と一緒に医薬組成物の形態で使用されるのに都合よく示される。
【0152】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う成人に投与される。いくつかの実施形態において、肺線維症はIPFである。いくつかの実施形態では、成人は>18歳、>20歳、>25歳、>30歳、>35歳、>40歳、>45歳、>50歳、>55歳、>60歳、>65歳、>70歳、>75歳、>80歳、または>85歳である。いくつかの実施形態では、成人は、30~85歳、35~85歳、40~85歳、45~85歳、または40~80歳である。
【0153】
特発性肺線維症は、成人女性よりも成人男性で発症する。いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、肺線維症を患う成人男性に投与される。
【0154】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、ILDを患う小児に投与される。小児は≧18歳である。0歳~2歳の小児における慢性のILDは、2~18歳の小児に比べて異なる様々な状態を示す。気道に影響を与える遺伝的および発達性の障害は、0~2歳の小児に起こりやすい。2歳以降、chILD疾患は、成人のIPFに似る傾向がある(つまり、より繊維化する)。幼年期間質性肺疾患を引き起こす劣性のABCA3突然変異を有する幼児の部分集合もある。
【0155】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、≦18歳、0~<2歳、または≧2~≦18歳のILDを患う小児に投与される。
【0156】
肺胞タンパク症(PAP)
いくつかの実施形態では、肺胞タンパク症(PAP)の処置または予防における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書に開示される。肺胞タンパク症(PAP)は肺疾患であり、それは肺サーファクタントリン脂質およびタンパク成分の異常蓄積が肺胞で生じ、ガス交換を妨げる。PAPは、原発性の形態または二次的に、悪性腫瘍(特に骨髄性白血病)、肺感染症、あるいはダストまたは化学物への環境暴露の状況で起こり得る。まれな家族性の形態も認識され、場合によっては遺伝要素を示唆している。
【0157】
いくつかの実施形態では、LOXL2は、正常な肺組織ではなくPAP組織で発現される。いくつかの実施形態では、LOXL2は、PAPの進行の一因となる。
【0158】
PAPの2つの形態は、(1)原発性(特発性)および(2)二次性(肺感染症;血液系悪性腫瘍;シリカ、酸化チタン、アルミニウム、および殺虫剤などの鉱物ダストの吸入による)であることが認識される。PAPの発生率は、血液系悪性腫瘍およびAIDSを患う患者において増加し、免疫機能障害との関係を示唆する。
【0159】
PAPにおける肺胞は、広範囲に分析され、脂質およびサーファクタント関連のプロテインA、B、C、またD(SP-A、SP-C、SP-D)からなる正常なサーファクタントであると判定されたタンパク様物質で満たされている。サーファクタントの産生、または肺胞マクロファージおよび粘膜毛様体エレベーター(mucociliary elevator)によるクリアランスのいずれかの、恒常性維持機構における欠損の証拠が存在する。PAPと障害性マクロファージ成熟(impaired macrophage maturation)との間に明瞭な関係が証明されている。
【0160】
男性の発生率は女性より4倍高い。患者は、発症時、典型的に20~50歳ある。
【0161】
PAPを患う患者は、限定されないが、持続的乾性咳(または乏しい痰産生)、進行性呼吸困難、疲労および倦怠感、体重減少、断続的な微熱および/または寝汗、胸膜炎性胸痛、チアノーゼ、あるいは喀血を含む症状の緩やかな発症を典型的に示す。
【0162】
PAPの病因は不明である。原因としては、シリカダストの吸入(急性の珪肺蛋白症)、殺虫剤、アルミニウム粉末、二酸化チタン、および他の無機ダストへの曝露、血液系悪性腫瘍、骨髄性障害、リジン尿性蛋白不耐症、HIV感染症(AIDS)、レフルノミド-症例報告、ならびに疾患修飾性抗関節リウマチ治療が挙げられる。差異としては、過敏性肺炎、肺癌、非小細胞肺癌、燕麦細胞肺癌(小細胞)、ニューモシスティスカリニ肺炎、肺水腫、および心臓性のサルコイドーシスが挙げられる。
【0163】
PAPのための特異的療法は存在しない。連続的な全肺洗浄は、標準治療である。PAPの管理は、病気の進行、共感染(coexisting infections)、および生理的障害の程度に依拠する。PAPのための標準治療は、しばしば繰り返される全肺洗浄によるリポタンパク物質の機械的な除去である。歴史的に、患者は全身性ステロイド剤、粘液溶解薬(エアロゾル)およびプロティナーゼ(エアロゾル)で処置されてきたが、あまり成果を挙げられていない。二次性PAPでは、根本的な原因の適切な処置も保証される。先天性PAPは、肺移植に対して好意的に反応する。
【0164】
肺移植は、先天性PAPを患う患者および末期の間質性線維症を患う成人患者において選択される処置である。主な合併症は、ノカルジア・アステロイデス、ニューモシスティスカリニ、および/またはマイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレの肺感染症である。肺線維症もまた、PAPを悪化させることがある。
【0165】
肝疾患
リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)は、線維症の人間の肝臓組織において発現され、ここで、それはコラーゲンおよび他のマトリックス成分の架橋を実行し、剛性の増加、病理学的線維芽細胞の活性化、ならびにマトリックス・リモデリングおよび線維形成の動的な過程が結果としてもたらされる。LOXL2は、硬化性胆管炎のマウスモデル加えて、C型肝炎感染症非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、ウィルソン病、および原発性胆汁性肝硬変を含む、多様な病因のヒト疾患に起因する線維症の肝臓組織において発現される。
【0166】
慢性肝炎は、線維症および脂肪過多症などの様々な方法で肝臓組織に影響を与える。
【0167】
肝臓におけるあらゆる慢性的攻撃は炎症をもたらし、それは肝臓における線維の瘢痕組織を形成へとつながり、肝線維症を引き起こす。したがって、この線維症は損傷を受けた肝細胞を交換する瘢痕化プロセスである。この線維症の程度は様々であり得、それいくつかの数段階で記述される。正常な肝臓は、F0からF1の間の段階である。段階F2は軽度の線維症であり、F3は重度の線維症を表す。瘢痕組織が肝臓の全体にわたって存在する場合、「肝硬変」は段階F4から定義される。
【0168】
線維症は、肝臓の構造を解剖学的にまたは機能的に乱す。線維症が肝硬変の段階に達する場合、それは、最初は完全に無症候性である;これは、代償性肝硬変の段階(つまり複雑ではない)である。その後、肝硬変は代償不全になり、肝臓合併症が現われる。肝臓合併症としては、限定されないが、肝線維症に続発する門脈圧亢進症(静脈循環を妨害し、門脈における圧力の上昇を引き起こす)、腹水症(腹腔における液体の浸出の形成であって、感染することもある)黄化病(黄疸)、肝臓脳症(肝臓によって分解されない毒素の蓄積による神経異常に相当する)のある、肝臓の初期の癌(最終的な合併症で、さらに肝細胞癌と呼ぶことができる)が挙げられる。
【0169】
線維症の程度は、重要な予後のパラメータを構成する。線維症の程度は、治療に関する診断および決定、ならびに病気の進行および治療有効性を追跡するための判断基準に影響する要因の1つである。
【0170】
脂肪肝は、肝臓における脂肪の蓄積であり、「脂肪肝」を作る。それは、肝細胞(肝細胞)における脂質の蓄積(トリグリセリド)に相当し、アルコール中毒または2型糖尿病、肥満症、および脂肪過剰血症(dyslipemia)などの代謝障害を悪化させ得る。そのような脂肪過多症は、純粋な脂肪過多症にして単離することができ、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)にする肝炎に関連付けられる。脂肪過多症およびNASHは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を形成する。これらは通常無症候性の疾病であるが、過体重の患者数の増加によって現在ではより一般的になってきている。
【0171】
場合によっては、脂肪過多症は、肝硬変に結びつく可能性のある線維症へと発展することもある。
【0172】
いくつかの実施形態では、肝臓の疾患または疾病の処置または予防における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、線維性の肝臓の疾患または疾病、あるいは肝(肝性)線維症など、例えば、根本的な肝疾患にかかわらず、任意の肝線維症。線維症に関連する肝線維症および肝疾患としては、限定されないが、C型肝炎ウイルス(HCV)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、肝硬変、肝線維症、および門脈圧亢進症、さらに原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性肝炎、アルコール性肝硬変、α1抗トリプシン欠乏疾患、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、B型肝炎ウイルス(HBV)、ならびに、脂肪性肝炎および肝硬変に関連するHIV、および慢性ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および自己免疫性肝炎などに疾病に関連するHIVが挙げられる。特定の実施形態では、疾患または疾病は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)または原発性硬化性胆管炎(PSC)である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、急性か慢性のウイルス性肝炎の疾患あるいは疾病である。典型的な疾患および疾病は、HCV感染症またはHBV感染症-に関連する肝損傷を伴うまたは伴わない、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)である。したがって、提供される方法のうち、肝疾患を患う患者におけるウイルス性肝炎などの抗繊維化の治療のための方法がある。いくつかの態様では、肝疾患は代償性肝疾患である。他の態様では、それは腹水症に関連する肝疾患、食道静脈瘤、脳症、および/または黄疸などの非代償性肝疾患である。
【0173】
肝臓(肝性)線維症は多くの肝疾患の病原に関与しており、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルコール依存症、住血吸虫症、ウイルス性肝炎、胆管閉塞症、毒素への曝露、および代謝異常の合併症として、慢性的な肝臓損傷に対する創傷治癒反応の一部として生じ得る。肝線維症は、正常な肝臓中の細胞外マトリックスの蓄積とは質的に識別可能な細胞外マトリックスの蓄積を特徴とする。未検査のままの肝線維症は進行して肝硬変(被包化小結節の存在により定義される)、肝不全、および死へと至る。寄生虫およびウイルス感染(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、HCV、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、住血吸虫症)を含む源からの肝臓に対する慢性的な侵襲、あるいは、アルコール摂取に由来する長期的なストレスは、典型的には肝臓の再構築を引き起こして、損傷部位を被包するとともに残りの肝臓組織を損傷から防ぐと推測される。(Li and Friedman, Gastroenterol. Hepatol. 14:618-633,1999)。肝線維症は、合計して3-10倍のコラーゲン含有量の増加と、低密度基底膜の高密度マトリックスとの置き換えを含む細胞外マトリックスの変化を引き起こし、これは、肝細胞、肝星状細胞、および内皮細胞の代謝機能と合成機能を損なう。肝星状細胞(HSC)活性化は肝線維症に結びつく主要な事象である。HSCの活性化は、2つの工程、開始(「前炎症性段階(preinflammatory)」)と、複数の変化:増殖、走化性、線維形成、収縮性、マトリックス分解、レチノイド欠損、WBC化学誘引物質およびサイトカイン放出を含む永続化とを意味する(Girogescu, M., Non-invasive Biochemical Markers of Liver Fibrosis, J. Gastrointestin. Liver Dis., 15(2): 149-159 (2006))。
【0174】
肝臓実質組織中のコラーゲンの段階的な蓄積は慢性肝炎の最終共通路である。線維症のこの進行性の蓄積は最終的には肝臓の肝硬変と最終段階の肝疾患を引き起こしかねない。LOXL2発現は病気に罹患した肝臓組織で増える。
【0175】
肝臓損傷中に、HSCは、レチノイド豊富な周皮細胞様細胞から筋線維芽細胞様細胞への形質転換(活性化と名付けられたプロセス)を経験する。高度に活性化されたHSCは、筋線維芽細胞と形態学的に判別不能である。
【0176】
高度に活性化されたHSCはコラーゲンIを発現し、他の細胞外マトリックス遺伝子は定量的に、線維症の間に蓄積するマトリックスの主要な源である。活性化の間、HSCは細胞周期に入り、肝臓マトリックス蓄積は、HSC遺伝子発現の変化に加えてHSCの数の全体的な増加の結果である。
【0177】
肝線維症からの回復は、付近の正常な肝臓構造の反発をもたらす、過剰な肝臓マトリックスの再構築に関連付けられる。この回復プロセスの要素は活性化されたHSCのアポトーシスである。
【0178】
肝線維症の治療方針は、根本的な原因(例えば、毒素または感染因子)の除去、(例えば、コルチコステロイド、IL-1受容体アンタゴニスト、他の薬剤を用いる)炎症の抑制、(例えば、γインターフェロンまたは抗酸化剤)を用いる星状細胞活性化のダウンレギュレーション、マトリックス分解の促進、あるいは星状細胞アポトーシスの促進を含む。単に炎症を抑えることとは対照的に根本的な生化学的プロセスに取り組む処置が必要とされる。提供された方法の実施形態はこのニーズに対処する。
【0179】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を用いる肝線維症の処置のためのレジメンは、線維症の根本的な原因(既知の場合)の除去、炎症の抑制、星状細胞活性化のダウンレギュレーション、マトリックス分解の促進、星状細胞アポトーシスの促進、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0180】
肝線維症の程度と重症度の定量的評価をあたえる、多くの標準化されたスコアリングシステムが存在する。これらはMETAVIR、Knodell、Scheuer、Ludwig、およびIshakのスコアリングシステムを含む。肝線維症を抱える個体は、METAVIR、Knodell、Scheuer、Ludwig、およびIshakのスコアリングシステムのいずれかに基づいて、任意の程度あるいは重症度の肝線維症を抱える個体を含む。
【0181】
METAVIRスコアリングシステムは、線維症(門脈線維症、小葉中心付近の線維症(centrilobular fibrosis)、および肝硬変)を含む、肝生検の様々な特徴の分析に基づく;壊死(断片壊死および小葉壊死、好酸性退縮、ならびに気球状変性);炎症(門脈路炎症、門脈リンパ球凝集体、および門脈の炎症の分布);胆管変化;および、Knodellインデックス(門脈周囲壊死、小葉壊死、門脈炎症、線維症、および全体的な疾患活性のスコア)。METAVIRシステムでの各段階の定義は以下のとおりである:スコア:0-線維症はない;スコア:1-中隔の形成を伴わない門脈路の星状の拡大;スコア:2-まれに中隔の形成を伴う、門脈路の拡大;スコア:3-肝硬変を伴わない多くの中隔;スコア:4-肝硬変。
【0182】
組織学活性度指数(Histology Activity Index)とも呼ばれるKnodellのスコアリングシステムは、組織学的な特徴の4つのカテゴリーのスコアに基づいて検体を分類する:I.門脈周囲壊死および/または架橋壊死;II.小葉内変性および巣状壊死;III.門脈炎症;および、IV.線維症。Knodell分類システムでは、スコアが以下のとおりである:スコア:0 線維症はない;スコア:1 軽度の線維症(線維性の門脈の拡大);スコア:2 中程度の線維症;スコア:3 重症の線維症(架橋線維症);スコア:4 肝硬変。スコアが高ければ高いほど、肝臓の組織損傷は重症である。いくつかの実施形態において、スコアリングはKnodell 壊死性炎症性指数、および/または、Knodell炎症スコアおよび/または壊死スコアなどのその個々の要素を全体的に分析することを含む。
【0183】
Scheuerスコアリングシステムでは、スコアは以下のとおりである:スコア:0-線維症はない;スコア:1-拡大した線維性の門脈路;スコア:2-門脈周囲の中隔あるいは門脈間の中隔であるが、無傷の構造;スコア:3-構築の乱れを伴う線維症であるが、明らかな肝硬変はない;スコア:4-肝硬変の可能性が高いか、確実である。
【0184】
Ishakスコアリングシステムでは、ステージ0-線維症はない;ステージ1-短い線維中隔を伴う、または、伴わない、複数の門脈領域の線維性拡大;ステージ2-短い線維中隔を伴う、または、伴わない、最も門脈側の領域の線維性拡大;ステージ3-しばしば門脈間の(P-P)架橋を伴う、最も門脈側領域の線維性拡大;ステージ4-門脈中心部(P-C)と同様にマークされた架橋(P-P)を伴う門脈領域の線維性拡大;ステージ5-しばしば小結節(不完全な肝硬変)を伴うマークされた架橋(P-Pおよび/またはP-C);ステージ6-肝硬変の可能性が高いか、確実である。
【0185】
いくつかの態様では、肝疾患または線維症は末期の肝疾患(MELD)スコアのモデルを決定することにより評価される。いくつかの態様では、方法は、個体が特定のMELDスコアまたは少なくとも特定のMELDスコアを有すること、または個体が特定のMELDスコアまたは少なくとも特定のMELDスコアを有する可能性を予測または判定する。
【0186】
いくつかの態様では、肝疾患は代償性または非代償性の肝疾患である。例えば、非代償性肝疾患は、腹水症、食道静脈瘤、脳障害、および/または黄疸に関連付けられることがある。
【0187】
いくつかの実施形態において、肝線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、NASHを患うヒトの肝線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、PSCを患うヒトの肝線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。
【0188】
いくつかの実施形態において、ヒトにおいてNASHに次ぐ肝線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、ヒトにおいてNASHに進行性の肝線維症(だたし、肝硬変ではない)の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、処置は無イベント生存期間(EFS)の増大を含む。EFSは肝硬変までの無増悪期間である。いくつかの実施形態において、肝線維症を患っている大人は肝生検でのIshakスコアによってNASHとステージ3-4の線維症による慢性肝炎を抱えている。いくつかの実施形態において、進行性の肝線維症を患っている大人は肝生検でのIshakスコアによってNASHとステージ3-4の線維症による慢性肝炎を抱えている。
【0189】
いくつかの実施形態において、肝線維症の進行の予防における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、原発性硬化性胆管炎(PSC)を患う被験体の肝線維症の進行の予防における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、被験体は慢性的な胆汁鬱滞性肝疾患を抱える大人の被験体(≧18歳)である。
【0190】
いくつかの実施形態において、NASHによる肝硬変の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。
【0191】
いくつかの実施形態において、NASHによる代償性肝硬変の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。
【0192】
いくつかの実施形態において、処置は、NASHによる肝硬変の逆転、線維症の退行、肝臓静脈圧グラジエント(HVPG)の減少、および/または、無イベント生存期間(EFS)の増大を含む。EFSは最初の肝臓に関連するイベントまたは死までの時間である。肝臓関連のイベントは以下のいずれかを含む:肝移植、肝移植のための資格(MELD≧15)、事象を示す肝臓の代償不全、食道の静脈瘤出血、腹水症、肝性脳症、以前の静脈瘤を抱えていない被験体の新しく診断された静脈瘤。
【0193】
いくつかの実施形態において、ウイルスに感染したヒトの肝線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎(HCV)、またはHIV/HCV同時感染である。
【0194】
いくつかの実施形態において、NASHの処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。
【0195】
肝線維症のモデルにおいて、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を用いる処置は、ピクロシリウスレッド(コラーゲン)陽性染色法領域画分によって評価されるように線維症を有意に減少させ、一方で、rAB0023は減少の傾向を示すだけであった。
【0196】
いくつかの実施形態において、哺乳動物の肝疾患の処置のための第2の治療剤と組み合わせた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、哺乳動物の肝疾患の処置のための第2の治療剤と組み合わせた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示され、ここで、第2の治療剤は、PPARアゴニスト、インクレチン、Glut2-I、FXRアゴニスト、抗酸化剤、GLP-1モジュレーター、SGLT-2阻害剤、胆汁酸、カスパーゼプロテアーゼ阻害剤、ACC阻害剤、合成脂肪酸/胆汁酸抱合体、デュアルCCR2/CC5アンタゴニスト、免疫調節薬、サーチュイン刺激薬、脂肪酸阻害剤、DGAT1阻害剤、CD3抗原、PDE-4モジュレーター、AMPK刺激薬、ROCK2阻害剤、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、JNK阻害剤、TLR-4アンタゴニスト、THRベータアゴニスト、カテプシンB阻害剤、ガレクチン-3モジュレーター、抗-miR-21化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態において、哺乳動物の肝疾患の処置のための第2の治療剤と組み合わせた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示され、ここで、第2の治療剤は、PPARアゴニスト(例えば、サログリタザル、ピオグリタゾンGFT 505)、インクレチン、Glut2-I、FXRアゴニスト(例えば、フェキサラミン、PX102、PX 104 オベチコール酸(OCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、GW4064、WAY-362450(FXR-450あるいはXL335)、抗酸化剤(例えば、システイン枯渇剤(cysteine depleting agents)、ビタミンE、RP103、ミトキノン(Mitoquinone)、GLP-1モジュレーター(例えば、リラグルチド)、SGLT-2阻害剤(例えば、レモグリフロジンエタボン酸エステル(rernogliflozin etabonate)、胆汁酸(例えば、ウルソデオキシコール酸)、カスパーゼプロテアーゼ阻害剤(例えば、エムリカサン(Emricasan)イコサペント酸エチル)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害剤ACC阻害剤(例えば、NDI-010976)、合成脂肪酸/胆汁酸抱合体(例えば、アラリコール(Ararrichol))、デュアルCCR2/CC5アンタゴニスト(例えば、セニクリビロク)、免疫調節薬(例えば、IMM 124E)、サーチュイン刺激薬(例えば、MB 12065)、脂肪酸阻害剤(例えば、オルチプラズ)、DGAT1阻害剤(例えば、プラジガスタット(Pradigastat))、CD3抗原(例えば、TRX 318)、PDE-4モジュレーター(例えば、ロフルミラスト)、AMPKアクチベーター(例えば、MB 11055)、ROCK2阻害剤(例えば、KD 025)、ASBT阻害剤(例えば、SHP 626)、ASK1阻害剤(例えば、GS-4997)、TLR-4アンタゴニスト(例えば、JKB-121)、THRベータアゴニスト(例えば、MGL-3195)、カテプシンB阻害剤(例えば、SHP 626、VBγ-376)、ガレクチン-3モジュレーター(例えば、GR MD 02、LGPC-1010)、NC 101、DUR-928、DWP-10292、抗-miR-21化合物(RG-012)、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0198】
いくつかの実施形態において、哺乳動物の肝疾患の処置のための第2の治療剤と組み合わせた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示され、ここで、第2の治療剤はPPAR(α、γ)アゴニストまたはPPAR(α、δ)アゴニストである。
【0199】
腎線維症
いくつかの実施形態において、疾患または疾病は腎線維症であるか、腎線維症に関連付けられる。肝線維症のように、腎線維症は各種疾患や腎臓に対する損傷に由来し得る。こうした疾患および損傷の例としては、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、膀胱尿管逆流、尿細管間質性腎線維症、IgA腎症、糖尿病(糖尿病性腎症を含む)、アルポート症候群、HIV関連腎症、限定されないが、巣状分節性糸球体硬化症および膜性糸球体腎炎を含む結果として生じた糸球体腎炎(GN)、メサンギウム毛細管性糸球体腎炎、ならびに、限定されないが、急性腎傷害(AKI)、急性閉塞性腎症、および薬物誘発性線維症後の回復を含む、結果として生じた間質性線維症と尿細管萎縮(IFTA)を含む。
【0200】
メタボリックシンドロームは、中心性肥満または内臓肥満症や高血圧症と同様に、インスリン抵抗性などの糖尿病の特徴を含む一群の異常であることが認識されるようになった。ほぼすべての場合で、グルコースの調節異常は、サイトカイン放出の刺激および細胞外マトリックス沈着のアップレギュレーションを引き起こす。慢性腎臓病、糖尿病、メタボリックシンドローム、および糸球体腎炎の一員となる追加の因子は、高脂血症、高血圧症、高血糖症、およびタンパク尿を含み、これらはすべて腎臓へのさらなる損傷をもたらし、細胞外マトリックス沈着をさらに刺激する。したがって、根本的な原因にかかわらず、腎臓の損傷は腎線維症と同時に腎臓機能の喪失を引き起こすことがある。(Schena, F. and Gesualdo, L., Pathogenic Mechanisms of Diabetic Nephropathy, J. Am. Soc. Nephrol., 16: S30-33 (2005); Whaley-Connell, A., and Sower, J.R., Chronic Kidney Disease and the Cardiometabolic Syndrome, J. Clin. Hypert., 8(8): 546-48 (2006))。
【0201】
いくつかの実施形態において、哺乳動物の腎臓病の処置のための第2の治療剤と組み合わせた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示され、ここで、第2の治療剤は、限定されないが、アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)、アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤、およびカルシウムチャネル遮断薬、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤/グリフロジン(例えば、エンパグリフロジンまたはカナグリフロジン)、利尿薬(チアシド系利尿薬)、あるいは、PKC阻害剤(例えば、ルボキシスタウリン)、エンドセリン受容体アンタゴニスト(アトラセンタン)、アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ)、ステロイドミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト(例えば、フィネレノン(finerenone))、抗AGE治療薬(例えば、PYR-311)、ヤーヌスキナーゼ阻害剤(例えば、バリシチニブ)、DPP-4阻害剤(サキサグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、またはシタグリプチンなどのグリプチン)、GLP1受容体アンタゴニスト(例えば、リラグルチドまたはデュラグルチド)、ペントキシフィリンなどの抗炎症薬などの糖尿病性腎症において調査中の新規な治療薬を含む降圧薬から選択される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は透析を受けている。いくつかの実施形態では、哺乳動物は透析を受けていない。
【0202】
図6aで示されるように、リシルオキシダーゼ様2はAlport腎臓病の進行の一員となる。この腎線維症モデルでは、化合物1を用いる処置は糸球体硬化症と同様に両方の尿細管間質性線維症を有意に減少させた。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は腎臓病の処置で使用される。いくつかの実施形態において、腎臓病は腎線維症である。いくつかの実施形態では、腎臓病はAlport腎臟病である。いくつかの実施形態において、腎臓病は慢性腎臓病である。
【0203】
骨髄線維症
いくつかの実施形態において、疾患または疾病は骨髄線維症であるか、骨髄線維症に関連付けられる。原発性骨髄線維症における発病のプロセスは、原発性巨核球加重クローン性骨髄増殖、および骨髄線維症、骨硬化症、血管新生、および髄外造血を含む腫瘍随伴性の間質反応を含む。骨髄反応は、線維性コラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質の過剰沈着、低細胞性、骨髄線維芽細胞の活性化および動員、過度のサイトカインおよび増殖因子産生、ならびに造血能力の低下をもたらす他の変化を含む。二次性骨髄線維症は、真性赤血球増加症または本態性血小板増加症から結果として生じ得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、骨髄線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。
【0205】
いくつかの実施形態において、原発性の、真性多血症後の、または本態性血小板血症後の骨髄線維症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、処置は、骨髄線維症スコアの減少、臨床的改善、部分的な寛解、あるいは完全寛解を含む。
【0206】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、単独で、あるいはルキソリチニブと組み合わせて使用される。
【0207】
強皮症
強皮症または全身性硬化症は、主として現在利用可能な薬理学的な治療に耐性のある進行性の多臓器線維症を特徴とする、未知の病因の潜在的に不治の自己免疫疾患である。全身性硬化症は組織傷害によって始まると考えられており、これに応答する形で、調節不全の創傷治癒プロセスは線維症発生の一員になると考えられている。強皮症患者は健康な被験体と比較して、血漿LOXL2濃度を増大させている(
図9)。
【0208】
いくつかの実施形態において、強皮症の処置における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の使用が本明細書で開示される。2つの主要な形態の強皮症:限局性全身性硬化症(斑状強皮症あるいは皮膚強皮症としても知られている)とびまん性全身性硬化症がある。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は限局性全身性硬化症を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物はびまん性全身性硬化症を処置するために使用される。
【0209】
場合によっては、強皮症は遺伝である。したがって、いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、家族の無症状のメンバーに予防的に投与され、家族の少なくとも一人のメンバーが強皮症と診断されている。
【0210】
いくつかの実施形態において、強皮症は別の疾患または疾病の徴候である。別の疾患あるいは症状と診断されているこうした個体において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は強皮症の発症を防ぐために予防的に投与される。
【0211】
本明細書で使用されるように、「限局性全身性強皮症」とは、過度のコラーゲン沈着の皮膚および皮下組織の肥大と硬化を特徴とする障害を意味する。これにはしばしば以下を伴う:石灰沈着症、レイノー現象、食道機能不全、強指症、および毛細血管拡張症。さらに、限局性全身性硬化症に苦しむ個体は、肺高血圧症を示すことがある。
【0212】
本明細書で使用されるように、「びまん性全身性強皮症」とは、過度のコラーゲン沈着の皮膚および皮下組織の肥大と硬化を特徴とする皮膚と内臓の障害を意味する。ある例では、びまん性全身性強皮症にはレイノー現象と石灰沈着症が伴う。
【0213】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、哺乳動物における以下のいずれか1つの処置または予防で使用される:局所的な皮膚強皮症、局所的な斑状強皮症、斑状強皮症-硬化性萎縮性苔癬の重複、全身性斑状強皮症、パシニ-ピエリニ皮膚萎縮症、pansclerotic morphea、深在性斑状強皮症(morphea profunda)、線状強皮症、全身性強皮症、クレスト症候群、強指症、全身性硬化症、進行性全身性硬化症。
【0214】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、あるいはデュピュイトラン病を処置または予防するために投与される。デュピュイトラン病は、手のひらの皮下組織が肥厚化および短縮して、指に繋がれた腱を自由に動かすことができない移動することができなくなる疾患である。デュピュイトラン病は手掌筋膜の異常な線維症に起因する。
【0215】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、被膜拘縮を処置または予防するために哺乳動物に投与される。被膜拘縮は異物に対する免疫系の異常な反応である。豊胸手術、あるいは人工関節義肢などの他の異物も、身体内に置く場合には、身体はそのまわりに内膜を形成する。被膜拘縮は、異物のまわりのコラーゲン線維の被膜の形成を特徴とする。ある例では、被膜拘縮は豊胸手術および人工関節義肢に対する異常な免疫応答に由来する。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、豊胸手術の前に、その最中に、あるいは同時に投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、人工関節の移植の前に、その最中に、あるいは同時に投与される。
【0216】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、皮膚の放射線症候群を処置するために使用される。本明細書で使用されるように、「皮膚の放射線症候群」は、有意なレベルのイオン化放射能に対する皮膚と皮膚の付属器の病態生理学的反応を意味する。ある例では、皮膚の放射線症候群を抱える個体は異常な皮膚線維症を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される製剤は皮膚の放射線症候群を処置するために使用され、それを必要とする個体は、望ましくない/異常な皮膚線維症を示す。
【0217】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、瘢痕を処置するために哺乳動物に投与される。本明細書で使用されているように、瘢痕化は瘢痕の形成を指す。1つの態様では、瘢痕は、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、または、ざ瘡に由来する瘢痕である。特定の例において、瘢痕は、コラーゲンの過剰生産の結果生じる繊維組織の領域である。特定の例においては、創傷治癒は、損傷の部位への繊維芽細胞の移動を含む。特定の例においては、繊維芽細胞はコラーゲンを沈殿させる。特定の例においては、繊維芽細胞は創傷部位に過剰なコラーゲンを沈殿させ、瘢痕を結果として生じさせる。
【0218】
いくつかの実施形態において、瘢痕化は外傷(例えば、手術)に起因する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される製剤は手術の前、後、あるいは同時に投与される。
【0219】
いくつかの実施形態において、瘢痕化はやけどに起因する。いくつかの実施形態において、個体がやけどの処置をされている間に、本明細書に開示される製剤が投与される。
【0220】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される製剤は、瘢痕形成術の前、後、あるいは同時に投与される。
【0221】
眼線維症
健康な眼組織では、リシルオキシダーゼ活性は、硝子体、虹彩、毛様体、レンズ、脈絡膜、網膜色素上皮、および網膜の中に存在する。大半の失明性眼疾患は、血管の漏出および線維症によって引き起こされた眼の組織構造の破壊に関連付けられる(Friedlander M. Fibrosis and diseases of the eye. J Clin Invest. 2007;117:576-586)。進行性の線維症は緑内障の病因にだけ関連付けられるのではなく、IOPを低下させる外科手術の結果でもあり得る。手術の失敗は、その後の瘢痕化を伴う過度の手術後の創傷治癒反応を特徴とする。
【0222】
抑制モノクローナル抗体を用いるLOXL2の標的化は、緑内障手術のウサギモデルにおいて、病的な血管新生、炎症、および線維症を減少させた。(Van Bergen T, Marshall D, Van de Veire S, et al. The role of LOX and LOXL2 in scar formation after glaucoma surgery. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54:5788-5796)。同様に、LOXL2を標的とすることで、CNV関連AMD動物モデルにおいて、線維症に加えて、血管新生と炎症を減少させた(Van Bergen et al. The role of LOX and LOXL2 in the pathogenesis of an experimental model of choroidal neovascularization. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015;56:5280-5289)。
【0223】
いくつかの実施形態において、LOXL2は、眼組織における創傷治癒反応の一因となる。
【0224】
例によっては、角膜の瘢痕化は角膜に対する損傷(摩耗、裂傷、やけど、あるいは疾患)によって引き起こされる。表面磨耗は透明に治癒し、瘢痕を残さない。より深い摩耗および潰瘍/裂傷は、瘢痕組織にとって変えられる角膜組織の喪失を引き起こす。明瞭な角膜中の新しい血管の増殖は治癒プロセスを助ける。異常な創傷治癒は視覚の喪失を引き起こす。
【0225】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、眼の線維性疾患、炎症、および/または増殖性障害に関連する線維芽細胞の増殖および/または線維芽細胞のアポトーシスの増加を減少させるか阻害するために、哺乳動物に投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、線維症および/または眼組織中の異常な創傷治癒を減少、改善、または阻害する。
【0226】
他の態様では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、レーザー角膜切削形成術(LASIK)または白内障手術などの角膜手術によって引き起こされる角膜の感度減少、角膜変性によって引き起こされる角膜の感度減少、およびそれにより引き起こされるドライアイの症状を改善するために使用される。
【0227】
さらに別の態様では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、眼組織(例えば、角膜または網膜)を異常な創傷治癒および/または瘢痕を減少させるか、改善するか、阻害するために使用される。例によっては、瘢痕化は、疾患、例えば、角膜炎(例えば、単純ヘルペスまたは梅毒によって引き起こされた炎症)の結果である。例によっては、例えば、角膜移植(corneal graft, corneal transplant)、線維柱帯切除術、および/または放射線支援眼手術を含む外科手術は、角膜の瘢痕化を誘発する。ある例では、角膜損傷はレーザーによるインサイチュ角膜切削形成術(LASIK)による。いくつかの例では、角膜の瘢痕化は角膜潰瘍による。ある例では、後眼部増殖性膜は、断節性の線維組織の沈着と結果として生ずる瘢痕組織の生成を誘発する。例によっては、網膜の菲薄化と瘢痕化は、慢性的な嚢胞様黄斑浮腫(慢性的なCME)によって引き起こされた網膜の構造変化による。ある例では、早産の赤ん坊の網膜血管の無秩序な成長が、瘢痕および/または網膜剥離(未熟児網膜症(ROP))をもたらす。例によっては、年齢に関連する湿性黄斑変性症(湿性AMD)による、異常な血管成長(脈絡膜新生血管)の出血、漏出、および、瘢痕は、処置されないままだと光受容体に対して不可逆的損傷をもたらし、視力喪失を引き起こす。
【0228】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物で処置される眼組織の異常な創傷治癒および/または瘢痕に関連する障害の例は、緑内障濾過手術後の水疱(線維柱帯切除術)の失敗につながる強膜上線維症(episcleral fibrosis)、翼状片(手術後の創傷治癒/瘢痕を含む)、白内障(手術後の瘢痕)、角膜瘢痕、眼の瘢痕性類天疱瘡に関連する瘢痕、緑内障濾過手術(線維柱帯切除術)、人工角膜移植術手術に関連する線維症、血管新生および中心窩肥大を伴う年齢に関連する湿性の黄斑変性、網膜浮腫(および血管新生)を用いる糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、光凝固に関連する黄斑の肥大の予防および処置、末熟児網膜症(ROP)(原発性)網膜剥離、慢性的な網膜黄斑浮腫、慢性的な嚢胞様黄斑浮腫、手術後の黄斑浮腫、遺伝性の網膜疾患に関連する黄斑浮腫である。
【0229】
耳の線維症
いくつかの実施形態において、疾患または疾病は耳の線維症であるか、耳の線維症に関連付けられる。肝線維症のように、耳の線維症は各種疾患や耳に対する損傷に由来し得る。線維症は内耳でも中耳でも生じる場合がある。中耳の炎症は中耳管の線維症に引き起こす可能性があり、これは骨外耳道の線維症組織の形成を特徴とする(Ishii, Fluid and Fibrosis in the Human Middle Ear, Am. J. Otolaryngol, 1985: 6: 196-199)。内耳の線維症は、膜肥厚に由来する線条体(strial)機能不全が見られる障害を含む。これらの疾患はアルポート症候群、狼瘡、および糖尿病を含む。IV型コラーゲン障害(アルポート症候群患者で見られる)は、内耳の結合組織とマイクロメカニクスの構造変化を伴う感音難聴に関連付けられる。基底膜形態の詳細な評価は、血管条の基底膜の明らかな肥大を示すアルポート症候群のマウスモデルで測定された(Cosgrove, Ultrastructural, physiological, and molecular defects in the inner ear of a gene-knockout mouse model for autosomal Alport syndrome. Hear Res 1998; 121:84-98)。
【0230】
癌
LOXL2は、癌細胞の増殖、接着、運動、および浸潤に関連してシグナル伝達に関与することが示されている。具体的には、LOXL2は、腫瘍浸潤を促すために細胞の上皮間葉転換(EMT)を引き起こす。LOXL2はさらに、腫瘍細胞の浸潤を増強する低酸素性の腫瘍環境下でアップレギュレートされる。LOXL2は、低酸素性の腫瘍環境下で血管新生を促すことが示されている。
【0231】
LOXL2発現の増加は、結腸、食道腫瘍、口の扁平上皮細胞癌、喉頭の扁平上皮細胞癌、および頭頸部の扁平上皮癌を抱える患者の予後不良に関係している。LOXL2は、乳癌、結腸癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、および黒色腫に関与すると提唱されている。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される化合物を用いて癌を処置する方法が本明細書で開示される。
【0233】
本明細書で使用されるように、用語「癌」は、制御されない方法で増殖し、場合によっては転移する傾向がある細胞の異常な成長を指す。癌のタイプとしては、限定されないが、固形腫瘍(膀胱腫瘍、腸腫瘍、脳腫瘍、乳腫瘍、子宮内膜腫瘍、心臓腫瘍、腎臓腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、子宮腫瘍、リンパ組織腫瘍(リンパ腫)、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、または他の内分泌器官(甲状腺)腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍(黒色腫または基底細胞癌)、または転移のあるまたは転移のない疾患の任意の段階の血液の腫瘍(白血病とリンパ腫など)が挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態において、疾患または疾病は癌または腫瘍であるか、癌または腫瘍に関連付けられる。したがって、いくつかの実施形態では、被験体はがん患者である。そのような疾患および疾病と癌は、細胞腫、肉腫、良性腫瘍、原発性腫瘍、腫瘍転移、固形腫瘍、非固形腫瘍、血腫、白血病とリンパ腫、および原発性と転移性の腫瘍を含む。
【0235】
細胞腫は、限定されないが、食道癌、肝細胞癌、基底細胞癌(皮膚癌の形態)、有棘細胞癌(様々な組織)、移行上皮癌(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱癌、気管支原生癌、結腸癌、大腸癌、胃癌、小細胞癌と非小細胞肺癌を含む肺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、腎細胞癌、乳管内上皮内癌または胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、骨原性癌(osteogenic carcinoma)、上皮癌、および上咽頭癌などを含む。
【0236】
肉腫は、限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および他の軟部組織肉腫を含む。
【0237】
固形腫瘍は、限定されないが、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫を含む。
【0238】
白血病は、限定されないが、a)慢性骨髄増殖性症候群(多分化能造血幹細胞の腫瘍性疾患);b)急性骨髄性白血病(多分化能造血幹細胞あるいは系譜の可能性が限定されている造血細胞の腫瘍性形質転換);c)B細胞CLL、T細胞CLL前リンパ球白血病、およびヘアリー細胞白血病を含む慢性リンパ性白血病(CLL;免疫学的に未熟でかつ機能的に無能な小リンパ球のクローンの増殖);および、d)急性リンパ芽球性白血病(リンパ芽球の蓄積を特徴とする)を含む。リンパ腫は、限定されないが、B細胞リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫);ホジキンリンパ腫などを含む。
【0239】
良性腫瘍は、例えば、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経繊維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞種、繊維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、および化膿性肉芽腫を含む。
【0240】
主要なおよび転移性腫瘍は、例えば、肺癌(限定されないが、肺腺癌、有棘細胞癌、大細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、非小細胞癌、小細胞癌、中皮腫を含む);乳癌(限定されないが、腺管癌、小葉癌、炎症性乳癌、明細胞癌、粘液性癌腫を含む);大腸癌(限定されないが、結腸癌、直腸癌を含む);肛門癌;膵臓癌(限定されないが、膵臓の腺癌、島細胞癌、神経内分泌腫瘍を含む);前立腺癌;卵巣癌(限定されないが、漿液性腫瘍、子宮内膜性腫瘍、およびムチン性嚢胞腺癌、性器索間質腫瘍を含む、卵巣上皮癌、または表面上皮間質性腫瘍を含む);肝臓および胆管癌(限定されないが、肝細胞癌、肝内胆管癌、血管腫を含む);食道癌(限定されないが、食道の腺癌および有棘細胞癌を含む);非ホジキンリンパ腫;膀胱癌;子宮癌(限定されないが、子宮内膜腺癌、子宮体部漿液性腺癌、子宮明細胞癌、子宮肉腫、および平滑筋肉腫、ミュラー管混合腫瘍を含む);神経膠腫、膠芽腫、髄芽腫、および他の脳腫瘍;腎癌(限定されないが、腎細胞癌、明細胞癌、ウィルムス腫瘍を含む);頭頸部の癌(限定されないが、扁平細胞細胞腫を含む);胃癌(限定されないが、胃腺癌、消化管間質腫瘍を含む);多発性骨髄腫;精巣癌;胚細胞腫瘍;神経内分泌腫瘍;子宮頚部癌;消化管、乳房、および他の器官の癌;ならびに、印環細胞癌を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、化合物Iまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、皮膚癌を処置するために投与される。皮膚癌は黒色腫、有棘細胞癌、および基底細胞癌を含む。
【0242】
1つの態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、癌に関連付けられる細胞増殖および/または繊維症を減少し、改善し、あるいは、阻害する。
【0243】
いくつかの実施形態では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、黒色腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、メルケル細胞細胞腫、ヘッドと頚部の細胞腫、日光角化症、転移を伴うまたは伴わない疾患の任意のステージの扁平細胞癌または基底細胞癌を処置するために投与される。
【0244】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、身体の免疫系が、関節、および皮膚、眼、肺、ならびに血管などのさらなる臓器を攻撃する、慢性自己免疫疾患である。RAは、浸潤性免疫細胞および常在性滑膜線維芽細胞(SF)からなる滑膜の過形成を特徴とする慢性の炎症性疾患である。関節リウマチ滑膜線維芽細胞(RASF)は、RA滑膜で見られ、関節破壊でのキープレーヤーであり、インビトロとインビボで遊走することができる。浸潤性の免疫細胞の様々なサイトカインは、SFの増殖および活性化を引き起こす。活性化されたSFは、慢性炎症を保持するために病原性の間質を生成し、軟骨と骨破壊をもたらす。
【0245】
RASFはその形態および異常な遺伝子発現パターンによって健康な滑膜線維芽細胞と異なる。RASFは、抗アポトーシス分子の発現、癌原遺伝子、および癌抑制遺伝子の発現の不足を特徴とする。炎症促進性のサイトカインとケモカインを産生するその能力ゆえに、RASFはさらに滑膜に免疫系の炎症細胞を引きつける。加えて、RASFは、軟骨への浸潤と軟骨の破壊を促すマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの酵素を産生する。
【0246】
LOXL2はRASF中で発現および分泌され、TNF-αとIL-1βによってアップレギュレートされる。LOXL2のノックダウンとLOXL2に対する抗体は、RASFのコラーゲン沈着を弱めた。さらに、LOXL2ノックダウンはRASFの増殖と浸潤を減少させた。例えば、LOXL阻害剤β-アミノプロピオニトリル(BAPN)で改善されたコラーゲンは、インビボのCIAマウスモデルで関節炎(CIA)を誘導した(Tetsuya Saito, et al., Roles of collagen crosslinking enzyme, lysyl oxidase-like 2, in rheumatoid novial fibroblasts, Keystone Symposia on Molecular and Cellular Biology, February 7-11, 2016, abstract Q3 3014)。
【0247】
LOXL2はRASFの活性化された表現型に関与し、RAの治療用標的を表す。RASFの高悪性度の侵襲性の表現型は、安定した細胞活性化の結果として、RAで初期に現われる。炎症誘発性のサイトカイン、自然免疫、およびマトリックス分解生成物を含むRAの病因における複数の主要因はRASFの活性化を決定的に増幅する。
【0248】
いくつかの実施形態において、RAの処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、RAを処置するために使用される1以上の追加の薬剤と組み合わせた、RAの処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。
【0249】
若年性特発性関節炎
若年性関節リウマチ(JRA)としても知られている若年性特発性関節炎(JIA)は、子どもや若者において最も一般的な関節炎の形態である。この文脈における若年性とは16歳よりも前の発症を指す。いくつかの実施形態において、JIAの処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、JIAを処置するために使用される1以上の追加の薬剤と組み合わせた、JIAの処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。
【0250】
変形性関節症
変形性関節症(OA)は、関節軟骨と基礎となる骨の破壊に起因する一種の関節病である。LOXL2は、OA軟骨の損傷領域で高度に発現することがわかっている(T. Sato et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 54, No. 3, pp 808-817 (2006))。いくつかの実施形態において、変形性関節症の処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、変形性関節症を処置するために使用される1以上の追加の薬剤と組み合わせた、変形性関節症の処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。
【0251】
乾癬性関節炎
乾癬性関節炎は、乾癬を抱える人々の最大30パーセントで発症する炎症性関節炎の一種である。乾癬性関節炎は血清反応陰性脊椎関節炎として分類され、したがって、組織タイプHLA-B27を抱える患者でより一般に生じる。いくつかの実施形態において、乾癬性関節炎の処置におけるLOXL2阻害剤の使用が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、乾癬性関節炎を処置するために使用される1以上の追加の薬剤と組み合わせた、乾癬性関節炎の処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。
【0252】
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎(ベクテレフ病、マリー-ストリュムペル病、またはASとしても知られている)は、中軸骨格の慢性炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、強直性脊椎炎の処置におけるLOXL2阻害剤の使用が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、強直性脊椎炎を処置するために使用される1以上の追加の薬剤と組み合わせた、強直性脊椎炎の処置におけるLOXL2阻害剤(例えば、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物)の使用が本明細書に記載されている。
【0253】
(R,R)-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン(化合物I)
「化合物I」あるいは「(R,R)-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン」あるいは「(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)-ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3R,4R)-3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イルメタノン」、あるいは、他の類似の名称は、以下の構造を有する化合物を指す:
【0254】
【0255】
いくつかの実施形態において、化合物Iは、(S,S)-異性体を実質的に含まない(つまり、化合物Iは、「(S,S)-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン」、あるいは「(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)-ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3S,4S)-3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン、あるいは他の類似の名称を実質的に含まない)。
【0256】
エナンチオマーに対して「実質的に含まない」とは、参照されるエナンチオマーが存在していないか、あるいは、参照されるエナンチオマーの5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満であることを意味する。
【0257】
「化合物Ent-I」あるいは「(S,S)-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン」あるいは「(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)-ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3S,4S)-3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イルメタノン」、あるいは、他の類似の名称は、以下の構造を有する化合物を指す:
【0258】
【0259】
いくつかの実施形態では、ラセミ-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノンが化合物Iの代わりに用いられる。ラセミ化合物I(化合物Rac-I)は以下のように描かれる:
【0260】
【0261】
化合物Iは有力な、メカニズムに基づくLOXL2阻害剤である。化合物Iは、高親和性であり、選択的であり、不可逆であり、LOXL2の小分子阻害剤である。いくつかの実施形態において、化合物Iのアミノメチルピリジン部分は酵素活性部位と相互作用することにより、時間依存性の疑似不可逆な抑制的な複合体を形成する。プロファイリング研究によれば、化合物Iの2つのエナンチオマー(つまり、(R,R)と(S,S))は、薬理学的および薬物動態プロフィールにおいて、互いに、およびラセミ化合物Iに非常に類似していることが示唆されている。化合物Iは、インビトロのアッセイ中の(S、S)-異性体より有力だった。いくつかの実施形態において、化合物Iは、インビトロアッセイにおいて(S,S)-異性体よりも2倍未満強力であった。
【0262】
いくつかの実施形態において、化合物IはLOXL2を特異的に阻害し、および/またはLOXL2に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、化合物Iは、任意の他のリシルオキシダーゼを実質的に阻害せず、および/または任意の他のリシルオキシダーゼに実質的に結合しない。他のリシルオキシダーゼはLOX、LOXLl、LOXL3、およびLOXL4を含む。いくつかの実施形態において、化合物IはLOXL2に特異的である。いくつかの実施形態において、化合物Iは、LOXL2の活性を阻害し、LOXの活性を実質的に阻害しない。いくつかの実施形態において、化合物Iは、LOXL2の活性を阻害し、別のリシルオキシダーゼ様タンパク質の活性を実質的に阻害しない。
【0263】
本明細書で使用されるように、「選択的なLOXL2阻害剤」は、他のリシルオキシダーゼを実質的に阻害しない、および/または他のリシルオキシダーゼに実質的に結合しない、LOXL2の小分子阻害剤を指す。他のリシルオキシダーゼはLOX、LOXLl、LOXL3、およびLOXL4を含む。いくつかの実施形態において、選択的なLOXL2阻害剤は、LOXまたはLOXL3を実質的に阻害しない、および/またはLOXまたはLOXL3に実質的に結合しない。いくつかの実施形態において、選択的なLOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも120倍、少なくとも140倍、少なくとも160倍、少なくとも180倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、少なくとも300倍、少なくとも350倍、少なくとも400倍、少なくとも450倍、少なくとも500倍、少なくとも550倍、少なくとも600倍、少なくとも650倍、少なくとも700倍、少なくとも800倍、少なくとも900倍、または少なくとも1000倍選択的である。いくつかの実施形態では、選択的なLOXL2阻害剤は、LOXよりもLOXL2に対して少なくとも400倍選択的である。いくつかの実施形態において、選択的なLOXL2阻害剤は、LOXL3よりもLOXL2に対して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも120倍、少なくとも140倍、少なくとも160倍、少なくとも180倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、少なくとも300倍、少なくとも350倍、少なくとも400倍、少なくとも450倍、少なくとも500倍、少なくとも550倍、少なくとも600倍、少なくとも650倍、少なくとも700倍、少なくとも800倍、少なくとも900倍、または少なくとも1000倍選択的である。いくつかの実施形態では、選択的なLOXL2阻害剤は、LOXL3よりもLOXL2に対して少なくとも5倍選択的である。
【0264】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は以下と取り替えられる:a)低キラル純度の化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物;b)“(S,S)-トランス-(3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン”;あるいは、任意の光学純度の薬学的に許容可能な塩または溶媒和物;または、c)ラセミ-トランス-3-((4-(アミノメチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)フェニル)(3-フルオロ-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)メタノン;あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物。
【0265】
化合物Iに関連する用語「薬学的に許容可能な塩」は、投与される哺乳動物に対して著しい刺激作用を引き起こさず、化合物の生物学的活性および特性をほとんど抑制しない、化合物Iの塩を指す。Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use. International Union of Pure and Applied Chemistry, Wiley-VCH 2002. S.M. Berge, L.D. Bighley, D.C. Monkhouse, J. Pharm. Sci.1977,66,1-19.P.H.Stahl and C.G. Wermuth,editors,Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties,Selection and Use, Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA,2002。薬学的な塩は、典型的に、非イオン種よりも可溶性であり、胃液および腸液中でより即溶性であり、ゆえに、固体剤形に有用である。さらに、その溶解度がしばしばpHに応じたものであるため、消化管の1つまたは別の部分における選択的な溶解が可能であり、こうした能力は遅延放出および徐放の挙動の1つの態様として操作可能である。さらに、塩成形分子が中性の形態と平衡状態にあり得るため、生体膜の通過を調節することができる。
【0266】
薬学的に許容可能な塩に対する言及はその溶媒付加形態(溶媒和物)を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含み、水、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘプタンなどの薬学的に許容可能な溶媒を用いた生成物の生成または分離のプロセス中に形成される。1つの態様において、溶媒和物は、限定されないが、クラス3の溶媒和物を用いて形成される。溶媒のカテゴリーは、例えば、International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH),”Impurities: Guidelines for Residual Solvents,Q3C(R3),(November 2005)に定義されている。水和物は溶媒が水である場合に形成され、アルコラートは溶媒がアルコールの際に形成される。1つの実施形態では、化合物Iの溶媒和物あるいはその薬学的に許容可能な塩は、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩を調製するプロセスの間に都合よく調製または形成される。加えて、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩は、溶媒和されていない形態で存在する。いくつかの実施形態において、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩は水和される。
【0267】
化合物Iから形成される様々な薬学的に許容可能な塩は、次のものを含む:
【0268】
化合物Iが無機酸を用いて処理される際に形成される塩(つまり、遊離塩基形態)。無機酸としては、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、およびメタリン酸が挙げられる。
【0269】
化合物Iが有機酸を用いて処理される際に形成される塩(つまり、遊離塩基形態)。有機酸は、限定されないが、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2,2-ジクロロ酢酸;2-ヒドロキシエタンスルホン酸;2-オキソグルタール酸;4-アセトアミド安息香酸;4-アミノサリチル酸;酢酸;アジピン酸;アスコルビン酸(L);アスパラギン酸(L);ベンゼンスルホン酸;安息香酸;樟脳酸(+);カンフル-10-スルホン酸(+);カプリン酸(デカン酸);カプロン酸(ヘキサン酸);カプリル酸(オクタン酸);炭酸;桂皮酸;クエン酸;シクラミン酸;ドデシル硫酸;エタン-1,2-ジスルホン酸;エタンスルホン酸;ギ酸;フマル酸;ガラクタル酸;ゲンチシン酸;グルコヘプトン酸(D);グルコン酸(D);グルクロン酸(D);グルタミン酸;グルタル酸;グリセロリン酸;グリコール酸;馬尿酸;イソ酪酸;乳酸(DL);ラクトビオン酸;ラウリン酸;マレイン酸;リンゴ酸(-L);マロン酸;マンデル酸(DL);メタンスルホン酸;フマル酸モノメチル、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸;ナフタレン-2-スルホン酸;ニコチン酸;オレイン酸;シュウ酸;パルミチン酸;パモ酸;リン酸;プロピオン酸;ピログルタミン酸(-L);サリチル酸;セバシン酸;ステアリン酸;コハク酸;硫酸;酒石酸(+L);チオシアン酸;トルエンスルホン酸(p);および、ウンデシレン酸を含む。
【0270】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物Iあるいはその溶媒和物の塩酸塩が使用される。化合物I、塩酸塩(つまり化合物1)は以下の構造を有する:
【0271】
【0272】
化合物1の(S,S)-エナンチオマー(化合物Ent-1)は以下の構造を有する:
【0273】
【0274】
ラセミ化合物1(化合物Rac-1)は以下のように描かれる:
【0275】
【0276】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物Iのメタンスルホン酸あるいはその溶媒和物が使用される。化合物Iメタンスルホン酸塩(化合物2)、あるいは、化合物Iメシル酸塩、または任意の他の同様の名称は以下の構造を有する
【0277】
【0278】
化合物2の(S,S)-エナンチオマー(化合物Ent-2)は以下の構造を有する:
【0279】
【0280】
ラセミ化合物2(化合物Rac-2)は以下のように描かれる:
【0281】
【0282】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物Iは、塩化物塩、硫酸塩、臭化物塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩として調製される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物Iは塩酸塩として調製される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物Iはメシル酸塩として調製される。
【0283】
薬学的に許容可能な塩に対する言及が、溶媒付加形態を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、溶媒和物は溶媒の化学量論または非化学量論のいずれかを含み、水、エタノールなどのような薬学的に許容可能な溶媒を用いる結晶化のプロセスの間に形成される。溶媒が水であるときに水和物が形成されるか、あるいは溶媒がアルコールであるときにアルコラートが形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセスの間に都合よく調製されるか、または形成される。加えて、本明細書で提供される化合物は随意に、溶媒和形態と同様に非溶媒和形態で存在する。
【0284】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、非晶質の化合物Iが使用される。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、結晶化合物Iが使用される。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、部分結晶化合物Iが使用される。
【0285】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩は、化合物Iの活性代謝物あるいはその薬学的に許容可能な塩と取り替えられる。
【0286】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩は、化合物Iのプロドラッグあるいはその薬学的に許容可能な塩と取り替えられる。
【0287】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて(方法、使用、製剤、併用療法等を含む)、化合物Iあるいはその薬学的に許容可能な塩は、化合物Iの重水素化アナログあるいはその薬学的に許容可能な塩と取り替えられる。
【0288】
いくつかの実施形態において、化合物Iは同位体標識化され、ここで、1つ以上の原子は、通常自然に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子に置き換えられる。本発明の化合物に取り込むことが出来る同位体の例としては、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、および塩素の同位体が挙げられる。1つの態様では、本明細書に記載される同位体標識された化合物、例えば、3Hおよび14Cなどの放射性同位体が組み込まれる化合物は、薬物および/または基質組織の分布アッセイに有用である。1つの態様では、重水素などの同位体での置換は、例えば、インビボでの半減期の延長または必要用量の減少などの、より大きな代謝安定性に起因する特定の治療上の利点をもたらす。
【0289】
追加のあるいはさらなる実施形態では、化合物Iが哺乳動物への投与時に代謝されることで代謝産物が生成され、その後、これを用いて所望の治療効果を含む望ましい効果を発揮する。
【0290】
本明細書で開示される化合物の「代謝産物」は、化合物が代謝される際に形成されるその化合物の誘導体である。用語「活性代謝物」は、化合物が代謝されるときに形成される、化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。用語「代謝される(metabolized)」は、本明細書で使用されるように、有機体によって特定の物質が変化するプロセス(限定されないが、加水分解反応および酵素によって触媒される反応を含む)の全体を指す。したがって、酵素は、化合物への具体的な構造的変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化反応および還元反応を触媒する一方で、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、および遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の移動を触媒する。本明細書に開示される化合物の代謝産物は、随意に、宿主への化合物の投与および宿主からの組織サンプルの解析、または肝細胞を用いた化合物のインビトロでのインキュベーションおよびその結果生じる化合物の解析のいずれかによって特定される。
【0291】
特定の用語
別段の定めのない限り、本出願で使用される以下の用語の定義を下に示す。用語「含むこと(including)」に加えて、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、限定しない。本明細書に使用される段落の見出しは、組織化するためのものに過ぎず、記載される主題を制限するものと解釈されてはならない。
【0292】
本明細書で使用されるような、製剤、組成物、または成分に関する用語「許容可能な」は、処置されている被験体の健康状態に対して持続的な有害効果がないことを意味する。
【0293】
本明細書で使用されるような用語「調節する(modulate)」は、ほんの一例として、標的の活性を増強する、標的の活性を阻害する、標的の活性を制限する、または標的の活性を拡大することを含んで、標的の活性を変更するように、直接的または間接的に標的と相互作用することを意味する。
【0294】
本明細書で使用されるような用語「モジュレーター」は、直接的または間接的に標的と相互作用する分子を指す。相互作用は、限定されないが、アゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニスト、分解剤(degrader)、またはそれらの組み合わせの相互作用を含む。いくつかの実施形態では、モジュレーターはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、モジュレーターは分解剤である。
【0295】
本明細書で使用されるような用語「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」、「投与(administration)」などは、生物学的作用の望ましい部位への化合物または組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。これらの方法は、限定されないが、経口経路、十二指腸内経路、非経口注入(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内、または点滴を含む)、局所投与、および直腸投与を含む。当業者は、本明細書に記載される化合物および方法を用いて使用され得る投与技術に精通している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物および組成物は、経口で投与される。
【0296】
用語「同時投与」などは、本明細書で使用されるように、一人の患者に対する選択された治療薬の投与を包含することを意味しており、同じあるいは異なる投与経路によって、または同じあるいは異なるときに薬剤が投与される治療レジメンを含むことを意図している。
【0297】
「有効な量」あるいは「治療上有効な量」という用語は、本明細書で使用されるように、処置されている疾患または疾病の症状の1つ以上をある程度まで軽減する、投与されている十分な量の薬剤あるいは化合物を指す。結果は、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、あるいは生体系の他の所望の変化を含む。例えば、治療用途のための「有効な量」は、疾患症状を臨床的に有意に減少させるために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。個々のケースでの適切な「有効な」量は、用量漸増試験などの技術を使用して随意に決定される。
【0298】
用語は「増強する(enhance)」あるいは「増強すること(enhancing)」は、本明細書で使用されるように、効能または持続時間のいずれかにおいて所望の効果を増加させるか延長することを意味する。したがって、治療薬の効果を増強することに関して、用語「増強する」は、効能または持続時間のいずれかにおいて、系に対する他の治療薬の効果を増大させるまたは延長する能力を指す。本明細書で使用されるような「増強有効量」は、望ましい系において別の治療薬の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0299】
本明細書で使用されるように、用語「薬学的な組み合わせ(pharmaceutical combination)」は、1つを超える有効成分の混合または併用に起因し、かつ、有効成分の固定されたおよび固定されていない組み合わせを含む生成物を意味する。用語「固定された組み合わせ」は、有効成分、例えば、本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および助剤が、単一の実体または用量の形態で同時に患者に両方とも投与されることを意味する。用語「固定されていない組み合わせ」は、有効成分、例えば、本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および助剤が、特定の介在する時間制限なく、同時に、同時発生的に、また連続して、別々の実体として患者に投与されることを意味し、こうした投与は、患者の身体に有効レベルの2つの化合物を提供する。後者の用語はカクテル療法、例えば、3以上の有効成分の投与にも当てはまる。
【0300】
用語「キット」および「製品」は、同義語として使用される。
【0301】
用語「被験体」または「患者」は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例は、限定されないが、以下の哺乳動物のクラスのメンバーを含む:ヒト、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類、および他の類人猿ならびにサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物;ラット、マウスおよびモルモットなどの、げっ歯類を含む実験動物。1つの態様では、哺乳動物はヒトである。
【0302】
用語は「処置する」、「処置すること」、あるいは、「処置」は、本明細書で使用されるように、疾患または疾病の少なくとも1つの症状を緩和するか、軽減するか、あるいは改善すること、追加の症状を防ぐこと、疾患または疾病を阻害すること、例えば、疾患または疾病の発現を抑えること、疾患または疾病を軽減すること、疾患または疾病の退行を引き起こすこと、疾患または疾病によって引き起こされた状態を軽減すること、あるいは疾患または疾病の症状を予防的におよび/または治療的に止めることを含む。
【0303】
医薬組成物
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物は医薬組成物へ製剤される。医薬組成物は、薬学的に使用される調製物への活性化合物の処理を促進する1つ以上の薬学的に許容可能な不活性成分を使用して、従来の方法で製剤される。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。本明細書に記載される医薬組成物の要約は、例えば:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed(Easton,Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York,N.Y.,1980;および、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)これらは、そのような開示のための引用によって本明細書に組み込まれる。
【0304】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物は、単独で、あるいは、医薬組成物において、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて、投与される。本明細書に記載される化合物および組成物の投与は、作用部位への化合物の送達を可能にする方法によって達成され得る。これらの方法は、限定されないが、腸内経路(経口、胃または十二指腸の栄養管、肛門坐剤および直腸の浣腸を含む)、非経口経路(動脈内、心臓内、皮内、十二指腸内、髄内、筋肉内、骨内、腹腔内、鞘内、血管内、静脈内、硝子体内、硬膜外および皮下を含む、注射または注入)、吸入、経皮、経粘膜、舌下、頬側、および局所(上皮、真皮、浣腸、点眼、点耳、鼻腔内、膣を含む)の投与を介した送達を含むが、最も適切な経路は、例えばレシピエントの疾病または障害に左右され得る。ほんの一例として、本明細書に記載される化合物は、例えば、手術中の局所注入、クリーム剤または軟膏剤などの局所適用、注射、カテーテル、または移植によって、処置を必要としている領域へと局所的に投与され得る。投与は病変組織または臓器の部位での直接注射によるものでもあり得る。
【0305】
いくつかの実施形態では、経口投与に適した医薬組成物は、予め決められた量の有効成分を各々含有しているカプセル剤、カシェ剤、または錠剤などの個別のユニット(units)として;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油型エマルションまたは油液中の油中水型エマルションとして提示される。いくつかの実施形態では、有効成分は、ボーラス剤(bolus)、舐剤、あるいはペースト剤として提供される。
【0306】
経口で使用することができる医薬組成物は、錠剤、ゼラチンで作られた押し込み型カプセルの他に、ゼラチンで作られた柔軟な密閉カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。錠剤は、随意に1つ以上の副成分とともに、圧縮または成形によって作られてもよい。圧縮錠剤は、結合剤、不活性希釈剤、平滑剤、界面活性剤、または分散剤と随意に混合された、粉末または顆粒などの自由流動形態で有効成分を適切な機械において圧縮することによって調製され得る。湿製錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作られ得る。いくつかの実施形態では、錠剤は、コーティングまたはスコア化され、その中に有効成分の遅延放出または制御放出を提供するように製剤される。経口投与のための製剤はすべて、このような投与に適した用量でなければならない。押し出し型のカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/または滑石またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および随意に安定化剤と組み合わせて活性成分を含むことができる。軟カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体のポリエチレングリコールなどの、適切な液体中に溶解または懸濁されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤が加えられる。ドラジェ・コアには適切なコーティングが施される。この目的のために、濃縮した糖溶液が使用されてもよく、これは、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を随意に含有し得る。識別のために又は活性化合物の投与量の様々な組み合わせを特徴付けるために、染料または色素が錠剤またはドラゼーコーティングに加えられてもよい。
【0307】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注入によって、例えば、ボーラス注入または持続注入によって非経口投与のために製剤される。注入のための製剤は、追加の保存剤とともに、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回投与用容器で提供されてもよい。組成物は、油性または水性のビヒクル中で懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの調合剤を含有し得る。組成物は、単位投与用また複数回投与用の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアル中に提供されてもよく、使用の直前に、粉末形態で、あるいは無菌の液体担体、例えば、生理食塩水または発熱性物質を含まない蒸留水の付加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時の注射液および懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製されてよい。
【0308】
非経口投与のための医薬組成物は、製剤を、対象とするレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および溶質を含有し得る活性化合物の水性および非水性(油性)の滅菌した注射液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌の懸濁液を含む。適切な親油性溶媒またはビヒクルは、ごま油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成の脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性の注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有してもよい。随意に、懸濁液は、高濃度の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤も含んでもよい。
【0309】
医薬組成物はまた、デボー製剤として製剤されてもよい。そのような長時間作用型の製剤は、移植によって(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤され得る。
【0310】
頬側または舌下の投与のために、医薬組成物は、従来の方法で製剤された、錠剤、ロゼンジ、トローチ、またはゲルの形態をとり得る。そのような組成物は、スクロースおよびアカシアまたはトラガントなどの香味をつけた(flavored)主成分中の有効成分を含み得る。
【0311】
医薬組成物はまた、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、または他のグリセリドなどの従来の坐剤塩基を含有している、坐剤または停留浣腸剤などの直腸組成物中に製剤されてもよい。
【0312】
医薬組成物は、局所に、即ち、非全身に投与されてもよい。これは、外部の表皮または頬腔への本発明の化合物の投与、およびそのような化合物の耳、目、および鼻への滴下を含み、その結果、化合物は、血流に著しく入ることはない。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、および筋肉内の投与を指す。
【0313】
局所投与に適した医薬組成物は、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤またはペースト剤などの、皮膚を通る炎症の部位への浸透に適した液体または半液体の調剤、および目、耳または鼻への投与に適した滴剤を含む。有効成分は、局所投与のために製剤の0.001%乃至10%重量w/w、例えば、1%乃至2重量%を含み得る。
【0314】
吸入による投与のための医薬組成物は、注入器、噴霧器、加圧されたパック、あるいはエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から都合良く送達される。加圧されたパックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体などの、適切な噴霧剤(propellant)を含み得る。加圧したエアロゾルの場合において、投与単位は、計量した量を送達するためのバルブを用いることによって測定されてもよい。代替的に、吸入またはガス注入による投与のために、薬剤は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとってもよい。粉末組成物は、粉末が吸入器または注入器を用いて投与され得る単位剤形、例えば、カプセル剤、カートリッジ、ゼラチン、またはブリスターパックで提供され得る。
【0315】
例えば、特に上で言及された成分に加えて、本明細書に記載される化合物と組成物は、問題の製剤のタイプを考慮して当該技術分野で従来の他の薬剤を含むことがあり、例えば、経口投与に適した薬剤は香料を含むことがあることを理解されたい。
【0316】
投薬の方法および処置レジメン
1つの実施形態において、本明細書にされる化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、LOXL2活性の阻害あるいは減少から利益を得る哺乳動物の疾患あるいは疾病の治療のための薬物の調製に使用される。そのような処置を必要としている哺乳動物において、本明細書に記載される疾患または疾病のいずれかを処置する方法は、治療上有効な量で、化合物I、あるいはその薬学的に可能な塩または溶媒和物、活性代謝産物、プロドラッグ含む医薬組成物を、前記哺乳動物に投与する工程を含む。
【0317】
ある実施形態では、本明細書に記載される化合物を含む組成物は、予防的なおよび/または治療的な処置のために投与される。特定の治療用途では、組成物は、疾患または疾病の症状の少なくとも1つを治癒するまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、疾患または疾病に既に苦しんでいる患者に投与される。この使用に有効な量は、疾患または疾病の重症度および経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存する。治療上有効な量は、限定されないが、用量漸増試験及び/又は用量範囲の臨床試験を含む方法によって随意に決定される。
【0318】
予防的な用途では、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む組成物は、特定の疾患、障害、または疾病になりやすいか、そうでなければ危険性がある患者に投与される。このような量は、「予防に有効な量または用量」であると定義される。この用途では、正確な量は、また、患者の健康状態、体重などによって変わる。患者に使用される際、この使用のための有効な量は、疾患、障害、または疾病の重症度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存する。ある態様では、予防処置は、疾患又は疾病の症状の再発を防ぐために、処置されている疾患の少なくとも1つの症状を以前に経験し且つ現在は寛解状態にある哺乳動物に、化合物I、あるいは薬学的に可能な塩または溶媒和物を含む医薬組成物を投与する工程を含む。
【0319】
患者の症状が改善しない特定の実施形態では、医者の裁量によって、化合物I、あるいは薬学的に可能な塩または溶媒和物の投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するため、そうでなければ、それらを制御もしくは制限するために、習慣的に、すなわち、患者の生命が続く期間を含む長時間にわたって行われてもよい。
【0320】
患者の状態が改善する特定の実施形態では、投与されている薬の投与量は、一時的に減らされるか、あるいは一定の期間、一時的に止められる(つまり「休薬日」)。特定の実施形態では、休薬期間の長さは、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、または28日以上を含む、2日から1年の間である。休薬期間中の用量減少は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む、10%-100%である。
【0321】
いったん患者の状態が改善すると、必要に応じて維持量が投与される。続いて、具体的な実施形態では、投与の用量または頻度、あるいはその両方は、症状に応じて、改善された疾患、障害、または疾病が保持されるレベルまで減少される。しかしながら、特定の実施形態では、患者は、症状の再発で長期間にわたって断続的な処置を必要とする。
【0322】
一態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物による治療を必要とする被験体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1日1回投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1日2回投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1日3回投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1日おきに投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、週に2回投与される。
【0323】
一般的に、ヒトにおける本明細書に記載の疾患または疾病の処置に利用される、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与量は典型的に、1つの投与量あたり体重1kgにつき約0.1mg~約10mgの範囲にある。1つの実施形態において、所望の投与量は、単回投与で、または同時に(もしくは短時間にわたり)投与される分割用量で、あるいは適切な間隔(例えば一日に2回、3回、4回、またはそれ以上の下位投与量)で、都合よく提供される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、同時に(または短時間にわたり)1日1回投与される分割用量で都合よく提供される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、当分量で1日2回投与される分割用量で都合よく提示される。
【0324】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1つの投与量あたり体重1kgにつき約0,1mg~約10mgの投与量でヒトに経口投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、連続的な毎日の投薬スケジュールでヒトに投与される。
【0325】
用語「連続的な投薬スケジュール」は、規則的な間隔での特定の治療薬の投与を指す。いくつかの実施形態において、連続的な投薬スケジュールは、特定の治療薬の休薬期間を含まずに規則的な間隔を置いた特定の治療薬の投与を指す。他のいくつかの実施形態において、連続的な投薬スケジュールは、サイクルでの特定の治療薬の投与を指す。他のいくつかの実施形態において、連続的な投薬スケジュールは、薬物投与の後に特定の治療薬の休薬日(例えば、ウオッシュ・アウト期間、あるいは薬物が投与されない他のそのような時間)といったサイクルでの特定の治療薬の投与を指す。例えば、いくつかの実施形態において、治療薬は、1日1回、1日2回、1日3回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、1週間に7回、一日おき、二日おき、三日おきに投与され、一週間毎日投与され、その後、一週間治療薬を投与されず、二週間毎日投与され、その後一または二週間治療薬を投与されず、三週間毎日投与され、その後一、二、または三週間治療薬を投与されず、四週間毎日投与され、その後一、二、三、または四週間治療薬を投与されず、治療薬を毎週投与され、その後一週間治療薬を投与されず、あるいは、治療薬を隔週で投与され、その後二週間治療薬を投与されない。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日1回ある。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日2回である。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日3回である。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日3回よりも多い。
【0326】
用語「連続的な毎日の投薬スケジュール」とは、日ごとでほぼ同じ時間に毎日の治療薬の投与を指す。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日1回ある。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日2回である。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日3回である。いくつかの実施形態において、毎日の投与は1日3回よりも多い。
【0327】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の量は、1日1回投与される。他のいくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の量は、1日2回投与される。他のいくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の量は、1日3回投与される。
【0328】
ヒトの疾患または疾病の状況の改善が観察されない特定の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の毎日の投与量が増やされる。いくつかの実施形態において、1日1回の投薬スケジュールが1日2回の投薬スケジュールに変更される。いくつかの実施形態において、1日3回の投薬スケジュールが、投与される化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の量を増やすために用いられる。いくつかの実施形態において、吸入による投与の頻度は、定期的に反復高Cmaxレベルを与えるために増やされる。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物への一定の(maintained)またはより規則的な曝露をもたらすために増やされる。いくつかの実施形態において、投与の頻度は、定期的に反復高Cmaxレベルを与えるため、およびあるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物への一定の(maintained)またはより規則的な曝露をもたらすために増やされる。
【0329】
前述の態様の何れかにおいて、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効な量が、(a)哺乳動物に全身に投与され、および/または(b)哺乳動物に経口投与され、および/または(c)哺乳動物に静脈内投与され、および/または(d)哺乳動物に注射によって投与され、および/または(e)哺乳動物の局所に投与され、および/または(f)哺乳動物に非全身的または局所的に投与される、更なる実施形態がある。
【0330】
前述の態様の何れにおいても、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効な量の単一投与を含む更なる実施形態があり、そこには、(i)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が1日1回投与され;または(ii)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が1日の間隔にわたって複数回哺乳動物に投与される、更なる実施形態も含まれる。
【0331】
前述の態様の何れにおいても、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効な量の複数回投与を含む更なる実施形態があり、そこには、(i)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が連続的または断続的に単回投与として投与され;(ii)複数回投与の間隔が6時間ごとであり;(iii)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が8時間毎に哺乳動物に投与され;(iv)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が12時間毎に哺乳動物に投与され;(v)化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が24時間毎に哺乳動物に対する投与される、更なる実施形態も含まれる。更なるまたは代替的な実施形態において、前記方法は休薬期間を含み、ここで、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与は一時的に中止され、または、投与される化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与量が一時的に減らされ;休薬期間の終わりに、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与が再開される。1つの実施形態において、休薬期間の長さは2日から1年まで変動する。
【0332】
一般に、成人のヒトの処置に使用される投与量は典型的に、1日当たり1mg-5000mgの範囲である。いくつかの実施形態において、成人のヒトの処置に使用される投与量は、1日当たり約1mg~約4000mg、1日当たり約150mg~約4000mg、1日当たり約50mg~約2000mg、1日当たり約100mg~約2000mg、または1日当たり約150mg~約2000mgである。いくつかの実施形態において、50mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、1500mg、1550mg、1600mg、1650mg、1700mg、1750mg、1800mg、1850mg、1900mg、1950mg、または2000mgの化合物Iが、成人のヒトに投与される。いくつかの実施形態において、望ましい投与量は、単回投与で、あるいは、同時にまたは適切な間隔で投与される分割用量で、例えば、1日当たり2、3、4回またはそれ以上のサブ用量として好適に提供される。
【0333】
いくつかの実施形態において、剤形中の有効成分の毎日の用量は、個々の処置レジメンに関する多くの変数に基づいて、本明細書に示される範囲より少なくなるかまたは高くなる。様々な実施形態において、毎日のおよび単位の用量は、多くの変数に依存して変更され、この変数には、限定されないが、処置される疾患または疾病、投与の形態、個々の被験体の要件、処置される疾患または疾病の重症度、ヒトの同一性(例えば体重)、(適用可能な場合に)投与される特定の追加の治療薬、および医師の判断が含まれる。
【0334】
こうした治療レジメンの毒性と治療の有効性は、限定されないが、LD50とED50の決定を含む、細胞培養物または実験動物における標準的な製薬手順によって決定される。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これはLD50とED50との間の比率として表される。特定の実施形態において、細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータは、ヒトを含む哺乳動物に使用するための治療上有効な毎日の用量範囲および/または治療上有効な単位用量を製剤することに使用される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の毎日の用量は、毒性が最小のED50を含む循環濃度の範囲内にある。特定の実施形態において、毎日の用量範囲および/または単位用量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動する。
【0335】
いくつかの実施形態において、被験体への化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の治療上有効な投与量の投与後、無毒性量(NOAEL)は、体重の1キログラム当たり、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の少なくとも1、10、20、50、100、500、または1000ミリグラム(mpk)である。いくつかの例において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与されたラットに対する7日間のNOAELは、少なくとも約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000mpkである。いくつかの例において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与されたイヌに対する7日間のNOAELは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500mpkである。
【0336】
併用処置
特定の例において、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を投与することが適切である。
【0337】
1つの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の治療有効性は、アジュバントの投与によって増強される(つまり、アジュバントはそれ自体では最小限の治療的利点しか有していないが、別の治療薬と組み合わせると、患者への全体的な治療的利点は増強される)。または、いくつかの実施形態において、患者が受ける効果は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、同様に治療効果を有する別の薬剤(これは治療レジメンも含む)と共に投与することによって増加される。
【0338】
1つの特定の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、第2の治療薬と同時投与され、ここで、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、および第2の治療薬は、処置されている疾患、障害または疾病の異なる態様を調節し、それによって、治療薬単独の投与より大きな全体的な効果がもたらされる。
【0339】
どんな場合も、処置されている疾患、障害、または疾病にかかわらず、患者が経験する全体的な効果は単に2つの治療剤の相加的なものであり、あるいは患者は相乗的な効果を経験する。
【0340】
特定の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の異なる治療上有効な用量は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物が、追加の治療上有効な薬物やアジュバントなどの1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与される時、医薬組成物の処方、および/または処置レジメンにおいて利用される。併用療法レジメンで使用するための薬物および他の薬剤の治療上有効な量は随意に、有効成分自体に対して上に明記された手段と同様の手段によって決定される。更に、本明細書に記載される予防/処置の方法は、規則正しい(metronomic)投薬の使用を包含し、つまり、毒性の副作用を最小限に抑えるために、より頻繁且つ少ない投与量を提供する。いくつかの実施形態において、併用療法レジメンは、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与が、本明細書に記載される第2の薬剤での処置の前、間、または後に始められ、および、第2の薬剤での処置の間または第2の薬剤での処置の終了後のあらゆる時点まで継続する、処置レジメンを包含している。これはまた、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、および併用して使用されている第2の薬剤が、同時にまたは様々な時間に、および/または処置期間の間の減少するまたは増加する間隔で投与される処置を含む。併用処置は更に、患者の臨床管理を補助するために様々な時点で開始および停止される定期的処置も含む。
【0341】
救済が求められる疾病を処置するか、予防するか、改善するための投薬レジメンは、様々な要因(例えば、被験体が苦しんでいる疾患、障害、または疾病;被験体の年齢、体重、性別、食事および病状)に合わせて修正されることを理解されたい。従って、いくつかの例において、実際に利用される投薬レジメンは、本明細書で明記される投薬レジメンとは異なり、およびいくつかの実施形態においては、該投薬レジメンから逸脱している。
【0342】
本明細書に記載されている併用療法に関して、同時投与化合物の用量は、併用される薬物、利用される特定の薬物、処置される疾患または疾病などによって異なる。更なる実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1つ以上の他の治療薬と同時投与されたときに、1つ以上の他の治療薬と同時に、または連続してのいずれかで投与される。
【0343】
併用療法において、多数の治療薬(その1つは化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物である)は、任意の順序で、または同時にも投与される。投与が同時である場合、複数の治療薬は、ほんの一例ではあるが、単一の統一形態で、または複数の形態で(例えば、単一の丸剤として、または二つの別個の丸剤として)提供される。
【0344】
併用療法と同様に、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物も、疾患または疾病の発生の前、間、または後に投与され、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与のタイミングは変動する。故に、一実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、疾患または疾病の発症を防ぐために、予防薬として使用され、疾患または疾病を進行させる傾向のある被験体に継続的に投与される。別の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、症状の発症中、あるいはその後で可能な限り早期に、被験体に投与される。特定の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、疾患または疾病の発症が検知されたまたは疑われた後に実用可能となって早急に、および疾患の処置に必要な期間にわたって、投与される。いくつかの実施形態において、処置に必要な期間は様々であり、処置期間は各被験体の特定のニーズに合わせて調節される。例えば、特異的な実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、あるいは、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む製剤は、少なくとも2週間、約1ヶ月から約5年にわたり投与される。
【0345】
併用療法での使用のための典型的な薬剤
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、化学療法、ホルモン阻害療法、放射線療法、モノクローナル抗体、またはそれらの組み合わせと併用して投与される。
【0346】
特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と同時に投与される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物ほど頻繁には投与されない。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物よりも頻繁に投与される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与の前に投与される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療薬は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の投与の後に投与される。
【0347】
ホルモン遮断療法は、エストロゲンの産生を遮断するか、またはエストロゲン受容体を遮断する薬剤の使用を含む。いくつかの実施形態において、ホルモン遮断療法は、エストロゲン受容体調節因子および/またはアロマターゼ阻害剤の使用を含む。エストロゲン受容体調節因子は、トリフェニルエチレン誘導体(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、3-ヒドロキシタモキシフェン、イドキシフェン、TAT-59(4-ヒドロキシタモキシフェンのリン酸化した誘導体)、およびGW5638(タモキシフェンのカルボン酸誘導体));非ステロイド性エストロゲン受容体調節因子(例えば、ラロキシフェン、LY353381(SERM3)およびLY357489);ステロイド性エストロゲン受容体調節因子(例えばICI-182,780)を含む。アロマターゼ阻害剤は、ステロイド性アロマターゼ阻害剤および非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含む。ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、限定されないが、エキセメスタンなどを含む。非ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、限定されないが、アナストロゾール、およびレトロゾールなどを含む。
【0348】
化学療法は、抗癌薬の使用を含む。
【0349】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用での使用のための抗癌剤は、以下の1つ以上を含む:アビラテロン;アバレリックス;アブラキサン、アドリアマイシン;アクチノマイシン;アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アレムツズマブ;アロプリノール;アリトレチノイン;アルトレタミン;アメタントロンアセタート;アミノグルテチミド;アミノレブリン酸;アミホスチン;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アプレピタント;三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテーパ;アズトマイシン;バチマスタット;ベンダムスチン塩酸塩;ベンゾデパ;ベバシズマブ;ベキサロテン;ビカルタミド;ビサントレン(bisantrene)塩酸塩;ビアンサフィド(bisnafide)ジメシレート;ビセレシン;ブレオマイシン;硫酸ブレオマイシン;ボルテゾミブ;ブレキナーナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベティマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼルシン;カペシタビン;セデフィンガル;セツキシマブ;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クロファラビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダサチニブ;ダウノルビシン塩酸塩;ダクチノマイシン;ダルベポエチンアルファ、デシタビン;デガレリクス;デニロイキンジフチトクス;デクソロマプラティン;デクスラゾキサン塩酸塩;デザグアミン;デザグアミンメシレート;ジアジコン;ドセタキセル、ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトラート;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エルトロンボパグオラミン;エンロプラティン;エンプロメイト;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エポエチンアルファ;エルブロゾール;エルロチニブ塩酸塩;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;エベロリムス;エキセメスタン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロオシタビン;フォスクィダン;フォストリエシンナトリウム;フルベストラント;ゲフィチニブ;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ゲムシタビン-シスプラチン;ゲムツズマブオゾガマイシン;酢酸ゴセレリン;酢酸ヒストレリン;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イイモフォスティン;イブリツモマブチウクセタン;イダルビシン;イホスファミド;メシル酸イマチニブ;イミキモド;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII、またはrlL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-1a;インターフェロンガンマ-1b;イプロプラティン;イリノテカン塩酸塩;イキサベピロン;ランレオチドアセタート;ラパチニブ;レナリドミド;レトロゾール;レウプロリドアセタート;ロイコボリンカルシウム;レウプロリドアセタート;レバミソール;リポソーマルシタラビン;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロールアセテート;メレンゲスロロールアセテート;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトキサレン;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;ミトマルシン;マイトマイシンC;
ミトスペル;ミトタン;ミトザントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ナンドロロンフェンプロピオネート;ネララビン;ニロチニブ;ノコダゾイ;ノフェツモマブ(nofetumomab)、ノガラマイシン;オファツムマブ;オプレルベキン;オルマプラチン;オキサリプラチン;オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル;パリフェルミン;パロノセトロン塩酸塩;パミドロネート;ペグフィルグラスチム;ペメトレキセドジナトリウム;ペントスタチン;パニツムマブ;パゾパニブ塩酸塩;ペメトレキセドジナトリウム;プレリキサホル;プララトレキサート;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタマスティン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロクサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポマリドマイド、ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニマスチン;プロカルバジン塩酸塩;プロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;キナクリン;ラロキシフェン塩酸塩;ラスブリカーゼ、組み換えHPV二価ワクチン;組み換えHPV四価ワクチン;リボプリン;ログレチミド;リツキシマブ;ロミデプシン;ロミプロスチム;サフィンガル;サフィンガル塩酸塩;サルグラモスチム;セムスチン;シムトラゼーネ;シプロイセル-T;ソラフェニブ;スパルフォスエートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロマスティン;スピロプラティン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェナール;リンゴ酸スニチニブ;タリソマイシン;クエン酸タモキシフェン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸トレクサトロン;テモゾロミド;テモポルフィン;テムシロリムス;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;サリドマイド;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェン;トシツモマブおよびI131ヨウ素トシツモマブ;トラスツズマブ;酢酸トレストロン;トレチノイン;リン酸トリシビリン;トリメトレキサート;トリメトレキサートグルクロン酸塩;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バルルビシン;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロジン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾキジン;ボリノスタット;ボロゾール;ゼニプラティン;ジノスタチン(zinostatin);ゾレドロン酸;およびゾルビシン塩酸塩。
【0350】
モノクローナル抗体は、限定されないが、トラスツズマブ(ハーセプチン)およびリツキシマブ(リツキサン)を含む。
【0351】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の化学療法剤は、ほんの一例として、アレムツズマブ、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ(ペグ化したまたはペグ化していない)、ベバシズマブ、セツキシマブ、シスプラチン、クラドリビン、ダウノルビシン/ドキソルビシン/イダルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲムツズマブ、メトトレキセート、タキソール、テモゾロミド、チオグアニン、あるいはホルモン(抗エストロゲン、抗アンドロゲン、または性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ)を含む薬物のクラスなどの、白金ベースの化合物、アルファインターフェロンなどのインターフェロン、ブスルファン、メルファランまたはメクロレタミンなどのナイトロジェンマスタード、トレチノインなどのレチノイド、イリノテカンまたはトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、ゲフィチニブ(gefinitinib)またはイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、あるいはアロプリノール、フィルグラスチム、グラニセトロン/オンダンセトロン/パロノセトロン、ドロナビノールを含む、そのような治療薬によって引き起こされた徴候または症状を処置するための薬剤から選択される。
【0352】
一態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1つ以上の抗癌剤と組み合わせて投与または製剤される。いくつかの実施形態において、1以上の抗癌剤は、アポトーシス促進剤である。抗癌剤の例は、限定されないが、以下のいずれかを含む:ゴシポール、ゲナセンス、ポリフェノールE、クロロフシン(Chlorofusin)、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)、ブリオスタチン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)、5-アザ-2’-デオキシシチジン、オールトランス型レチノイン酸、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ、ゲルダナマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、フラボピリドール、LY294002、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、トラスツズマブ、BAY 11-7082、PKC412、またはPD184352、パクリタキセル、およびパクリタキセルのアナログ。共通の構造特徴として塩基性タキサン骨格を有する化合物も、安定した微小管が原因でG2-M相中で細胞を阻止する能力を有すると示され、これは、随意に、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と組み合わせて癌を処置するのに有用である。
【0353】
化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用での使用のための抗癌剤の更なる例は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達の阻害剤、例えば、U0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY-142886、SB239063、SP600125、BAY 43-9006、ウォルトマンニン、またはLY294002;Syk阻害剤;mTOR阻害剤;アクチビン阻害剤、PKM2阻害剤、c-fms阻害剤およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む。化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用での使用のための抗癌剤の更なる例は、アロマターゼ阻害剤を含む。アロマターゼ阻害剤は、ステロイド性アロマターゼ阻害剤および非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含む。ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、限定されないが、エキセメスタンを含む。非ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、限定されないが、アナストロゾール、およびレトロゾールを含む。
【0354】
化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用での使用のための更に他の抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然物、またはホルモン、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブチルなど)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチンなど)、またはトリアゼン(ダカルバジン(decarbazine)など)を含む。
代謝拮抗薬の例は、葉酸アナログ(例えばメトトレキサート)、またはピリミジンアナログ(例えば、シタラビン)、プリンアナログ(例えばメルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)を含むが、これらに限定されない。
【0355】
化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用での使用のための天然物の例としては、限定されないが、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド)、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、または生物学的応答修飾物質(例えば、インターフェロンアルファ)が挙げられる。
【0356】
化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物と併用して使用するためのアルキル化剤の例は、限定されないが、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブチル、メルファランなど)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルマスティン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなど)、またはトリアゼン(ダカルバジンなど)を含む。
【0357】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、以下と組み合わせて癌を処置するために使用される:抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド)、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(例えば、ロイプロリド)。
【0358】
癌の処置または予防のために本明細書に記載される方法および組成物において随意に使用される他の薬剤は、白金配位化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、置換された尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎皮質抑制薬(例えば、ミトタン、アミノグルテチミド)を含む。
【0359】
安定した微小管が原因でG2-M相中で細胞を阻止することによって作用する抗癌剤の例は、限定されないが、以下の市場に出ている薬物および開発中の薬物を含む:エルブロゾール、ドラスタチン10、イセチオン酸ミボブリン、ビンクリスチン、NSC-639829、ディスコデルモリド、ABT-751、アルトリルチン(Altorhyrtins)(アルトリルチンAおよびアルトリルチンCなど)、スポンジスタチン(Spongistatins)(スポンジスタチン1、スポンジスタチン2、スポンジスタチン3、スポンジスタチン4、スポンジスタチン5、スポンジスタチン6、スポンジスタチン7、スポンジスタチン8、およびスポンジスタチン9など)、セマドチン塩酸塩、エポチロン(エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、エポチロンB N-オキシド、エポチロンA N-オキシド、16-アザ-エポチロンB、21-アミノエポチロンB、21-ヒドロキシエポチロンD、26-フルオロエポチロンなど)、オーリスタチン(Auristatin)PE、ソブリドチン、硫酸ビンクリスチン、クリプトフィシン52、ビチレブアミド(Vitilevuamide)、チューブリシン(Tubulysin)A、カナデンソール(Canadensol)、センタウレイジン(Centaureidin)、オンコシジン(Oncocidin)A1、フィジアノリド(Fijianolide)B、ラウリマライド、ナルコシン、ナスカピン(Nascapine)、ヘミアステリン、バナドセンアセチルアセトネート(Vanadocene acetylacetonate)、インダノシン・エレウテロビン(Indanocine Eleutherobins)(デスメチルエロイテロビン(Desmethyleleutherobin)、デスエチルエロイテロビン(Desaetyleleutherobin)、イソエロイテロビン(lsoeleutherobin)A、およびZ-エロイテロビン(Eleutherobin)など)、カリバエオシド(Caribaeoside)、カリバエオリン(Caribaeolin)、ハリコンドリン(Halichondrin)B、ジアゾナミドA、タッカロノリド(Taccalonolide)A、ジオゾスタチン(Diozostatin)、(-)-フェニラヒスチン(Phenylahistin)、ミオセベリン(Myoseverin)B、リン酸レスベラスタチンナトリウム(Resverastatin phosphate sodium)。
【0360】
一態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、血栓溶解剤(例えば、アルテプラーゼアニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、または組織プラスミノーゲン活性化因子)、ヘパリン、チンザパリン、ワルファリン、ダビガトラン(例えば、ダビガトランエテキシラート)、第Xa因子阻害剤(例えば、フォンダパリヌクス、イドラパリナックス(draparinux)、リバーロキサバン、DX-9065a、オタミキサバン(otamixaban)、LY517717、またはYM150)、チクロピジン、クロピドグレル、CS-747(プラスグレル、LY640315)、キシメラガトラン、またはBIBR 1048と同時投与される。
【0361】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、抗癌剤および/または放射線療法の使用から結果として生じる、吐き気または嘔吐を処置するために、制吐薬と組み合わせて使用される。
【0362】
制吐薬は、限定されないが、ニューロキニン-1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、およびザチセトロン(zatisetron)など)、GABAB受容体アゴニスト(バクロフェンなど)、コルチコステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、または他のもの)、ドーパミン拮抗薬(限定されないが、ドンペリドン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、メトクロプラミド)、抗ヒスタミン薬(限定されないが、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン、プロメタジン、ヒドロキシジンなどの、H1ヒスタミン受容体拮抗薬)、カンナビノイド(限定されないが、カンナビス、マリノール、ドロナビノールなど)、および他のもの(限定されないが、トリメトベンズアミド;ショウガ、エメトロール(emetrol)、プロポフォール)、を含む。
【0363】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、貧血症の処置に有用な薬剤と組み合わせて使用される。そのような貧血症を処置する薬剤は、例えば、連続的な赤血球生成受容体活性化因子(eythropoiesis receptor activator)(エポエチン-αなど)である。
【0364】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、好中球減少症の処置に有用な薬剤と組み合わせて使用される。好中球減少症の処置に役立つ薬剤の例は、限定されないが、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの好中球の産生および機能を調節する血液生成の増殖因子を含んでいる。G-CSFの例はフィルグラスチムを含んでいる。
【0365】
一態様において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、1つ以上の免疫抑制薬と組み合わせて投与される。免疫抑制療法は、移植された臓器および組織(例えば、骨髄、心臓、腎臓、肝臓)の拒絶反応の処置または予防;自己免疫疾患または自己免疫を起源とする可能性が最も高い疾患(例えば、関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、クローン病、および潰瘍性大腸炎)の処置;並びにいくつかの他の非自己免疫性の炎症性疾患(例えば、長期アレルギー性喘息抑制)の処置、および線維性疾患の処置のために臨床的に使用される。免疫抑制薬は、限定されないが、グルココルチコイド、細胞分裂阻害薬、抗体、および、イムノフィリンに作用する薬物を含んでいる。グルココルチコイドの例としては、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、デオキシコルチコステロン、およびアルドステロンが挙げられる。細胞分裂阻害薬の例としては、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ニトロソ尿素、白金化合物などのナイトロジェンマスタード)と代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサートなどの葉酸アナログ、アザチオプリンおよびメルカプトプリンなどのプリンアナログ、フルオロウラシル、タンパク合成阻害薬などのピリミジンアナログ)が挙げられる。記載された方法において使用される薬物の例としては、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノール酸塩、およびフィンゴリモドが挙げられる。本明細書に記載の方法における、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との同時投与に有用な抗体の例として、以下が挙げられる:抗胸腺細胞グロブリン、1D09C3、アダリムマブ/D2E7(Humira;Trudexa)、アフェリモマブ、アフツズマブ/GA101(タイプII)、アレムツズマブ/キャンパス-1H(MabCampath)、アポリズマブ/Hu1D10、アセリズマブ、アトリズマブ(Atlizumab)、バシリキシマブ(シムレクト)、ベクツモマブ(Bectumomab)/IMMU-LL2、ベリムマブ(ベンリスタ、LymphoStat-B)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、BL22/CAT-3888、ブレンツキシマブ/cAC10/SGN-35、ブリアキヌマブ/ABT-874、カナキヌマブ/ACZ885(イラリス)、セルトリズマブペゴル/CDP870(シムジア)、クレノリキシマブ、ダセツズマブ/SGN-40、ダクリズマブ(Zenapax)、エクリズマブ/5G1.1(Soliris)、エファリズマブ(Raptiva、以前は、Xanelim)、エプラツズマブ/hLL2/IMMU-102(Lymphocyde(著作権))、フォントリズマブ、フレソリムマブ/GC-1008、ガリキシマブ/IDEC-114、ガビリモマブ/ABX-CBL、ゲムツズマブ、ゴリムマブ/CNTO148(Simponi)、HL2434P(IMMU-114)、イブリツモマブチウクセタン(MXDPTA)/IDEC Y2B8(Zevalin)、インフリキシマブ/キメラA2(cA2)(Remicade)、イノリモマブ/BT563、イノツズマブ、ケリキシマブ/IDEC CE9.1、レルデリムマブ/CAT-152、リンツズマブ/HuM195(Zamyl)、LMB-2、ロルボツズマブ・メルタンシン、ルミリキシマブ/IDEC-152、Lym-1(Oncolym)、MDX-060、メポリズマブ/SB-240563、メテリムマブ/CAT-192、モガムリズマブ/KW-0761/AMG-761、モキセツモマブシュードトクス/CAT-8015/HA22、ムロモナブ-CD3(オルソクローンOKT3)、ナタリズマブ(Tysabri、Antegren)、ネレリモマブ/CDP571、オクレリズマブ/PRO70769(タイプI)、オズリモマブ、オファツムマブ/2F2/HuMax-CD20(Arzerra)(タイプI)、オマリズマブ(Xolair)、オテリキシズマブ/TRX4、パスコリズマブ/SB240683、レスリズマブ/SCH55700(Cinquil)、リツキシマブ/キメラ2B8(IDEC-C2B8)(リツキサン、MabThera)(タイプI)、ルプリズマブ(Antova)、SAR-3419、セクキヌマブ/AIN-457、SGN30、シプリズマブ/MEDI-507、テプリズマブ/MGA031/hOKT3γ1(Ala-Ala)、トシリズマブ(Actemra)、トシツモマブ(タイプII)、ウステキヌマブ/CNTO1275(Stelara)、ベドリズマブ/MNL-0002、ベルツズマブ/IMMU-106/hA20(タイプI)、ビジリズマブ(Nuvion)、ザノリムマブ/HuMax-CD4、ゾリモマブアリトクス/H65、アバタセプト/CTLA4-Ig/BMS-188667(Orencia)、ベラタセプト/LEA29Y、アタシセプト/BLyS/APRIL-Ig、エタネルセプト/TNFR-Ig(Enbrel)、ペグスネルセプト/ペグ化TNFR-Ig、アレファセプト(Amevive)、およびリロナセプト(Arcalyst)。免疫抑制性抗体は、補体依存性タンパク質とインターロイキンを標的とする抗体を含んでいる。
【0366】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、コルチコステロイドとともに投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、以下の中から選択される治療薬とともに投与される:カルシニューリン阻害剤(限定されないが、シクロスポリン、タクロリムスなど);mTOR阻害剤(限定されないが、シロリムス、エベロリムスなど);細胞増殖阻害薬(限定されないが、アザチオプリン、ミコフェノール酸など);コルチコステロイド(限定されないが、プレドニゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン、ヒドロコルチゾンなど);抗体(限定されないが、モノクローナル抗-IL-2Rα受容体抗体(バシリキシマブ、ダクリズマブ)、ポリクローナル抗-T細胞抗体(抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)など)、B細胞拮抗薬、リツキシマブ、ナタリズマブ。
【0367】
本明細書に記載されるような化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物との併用に有用な他の治療薬には、限定されないが以下が挙げられる:シクロホスファミド、ペニシラミン、シクロスポリン、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メトトレキセート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ピリミジンアナログ、タンパク合成阻害剤、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、Atgam(登録商標)、Thymoglobuline(登録商標)、OKT3(登録商標)、バシリキシマブ、ダクリズマブ、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、インターフェロン(IFN-β、IFN-γ)、オピオイド、TNF結合タンパク質(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、レフルノミド、金チオグルコース、金チオリンゴ酸塩(gold thiomalate)、オーロフィン(aurofin)、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ミノサイクリン、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、FTY720の他、US7,060,697にリストされるもの。
【0368】
一実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、シクロスポリンA(CsA)またはタクロリムス(FK506)と組み合わせて投与される。
1つの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ホスホジエステラーゼ-4阻害剤を含む、抗炎症剤と組み合わせて哺乳動物に投与される。JNKキナーゼ阻害剤およびコルチコステロイド(グルココルチコイド)。
【0369】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、コルチコステロイドとともに投与される。コルチコステロイドは限定されないが以下を含む:ベータメタゾン、プレドニゾン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン/プレドニゾロン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、およびウロベタゾール。
【0370】
一実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と組み合わせて哺乳動物に投与される。エヌセイドとしては、限定されないが以下が挙げられる:アスピリン、サリチル酸、ゲンチシン酸、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、ジフルニサル、カルプロフェン、フェノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン(flurobiprofen)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブトン(nabutone)、ケトロラク、ケトロラクトロメタミン、ナプロキセン、オキサプロジン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、メクロフェナム酸塩、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、COX-2特異的インヒビター(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、CS-502、JTE-522、L-745,337およびNS398を含むが、これらに限定されない)。
【0371】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、鎮痛剤とともに投与される。
【0372】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、放射線療法(または放射線治療)と併用して使用される。放射線療法は、イオン化放射線を用いる癌および他の疾患の処置である。放射線療法は、随意に、皮膚、舌、喉頭、脳、乳房、前立腺、結腸、肝臓、子宮および/または頚部の癌などの局所的な固形腫瘍を処置するために使用される。放射線療法は、随意に、白血病およびリンパ腫(それぞれ、造血細胞とリンパ系の癌)を処置するためにも使用される。
【0373】
癌細胞に放射線を送達するための技術は、腫瘍または体腔に直接、放射性インプラント(radioactive implants)を入れる技術である。これは、内部放射線療法(近接照射療法、組織内照射および腔内照射は内部放射線療法の型である)と呼ばれる。内部放射線療法を使用すると、放射線量は小面積で集中され、患者は数日の間病院にとどまる。内部放射線療法は、舌、子宮、前立腺、結腸および頚部に頻繁に使用される。
【0374】
用語「放射線療法」または「イオン化放射線」は、限定されないが、α、β、およびγ放射線と紫外線を含む、放射線の全ての形態を含む。
【0375】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、血糖降下薬とともに投与される。いくつかの実施形態において、血糖降下薬は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト(ガンマ、デュアル、またはパン)、ジペプチジルペプチダーゼ-(IV)阻害剤、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-I)アナログ、インスリンまたはインスリンアナログ、インスリン分泌促進物質、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、グルコファージ(glucophage)、ヒトアミリンアナログ、ビグアニド、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、メグリチニド、チアゾリジンジオン、およびスルホニル尿素の中から選択される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、メトホルミン、シタグリプチン、サキサグリプチン(saxaglitpin)、レパグリニド、ナテグリニド、エキセナチド、リラグルチド、インスリンスリプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリンイソフェン、およびグルカゴン様ペプチド1、またはそれらの任意の組み合わせとともに投与される。いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、脂質降下薬とともに投与される。
【0376】
いくつかの実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物は、心血管疾患を処置するために使用される少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、心血管疾患を処置するために使用される治療薬は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、レニン・アンジオテンシン系(RAS)、抗凝血薬、スタチン、およびフィブラートの阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせである。
【0377】
キットおよび製品
本明細書には、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を固体に投与する工程を含む、LOXL2活性に関連する疾病、疾患、または障害の処置のためのキットが記載される。
【0378】
本明細書に記載される治療用途で使用するために、キットおよび製品も本明細書中に記載される。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するために区分化される運搬装置、パッケージ、または容器を備えており、容器の各々は、本明細書に記載される方法で使用される別個の要素の1つを含む。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0379】
本明細書で提供される製品は、包装材料を含む。医薬の包装材料としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、および、選択された製剤に、並びに投与および処置の意図した様式に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される化合物と組成物の多数の製剤は、LOXL2の阻害により利益を受け、または、LOXL2が症状あるいは原因の媒介物質または寄与体である、任意の疾患のための様々な処置であると考慮される。
【0380】
容器は随意に無菌のアクセスポートを有する(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルである)。このようなキットは随意に、本明細書中に記載の方法における使用に関する、同定についての記載、ラベル、または取扱説明書とともに、化合物を含む。
【0381】
キットは典型的に、本明細書中に記載される化合物の使用のための商業的な観点およびユーザの観点から望ましい1以上の様々な材料(例えば、試薬、随意に濃縮形式で、および/またはデバイスで)それぞれとともに、1以上の追加の容器を含む。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、フィルタ、針、シリンジ;担体、包装、容器、バイアル、および/または、内容物および/または使用の説明書を列挙したチューブラベル、および使用の説明書を含むパッケージインサートが挙げられる。1セットの説明書も典型的に含まれる。
【0382】
いくつかの実施形態において、ラベルは包装容器の上にある、または包装容器に付随する。ラベルを形成する文字、数字、または他の字が容器自体に結合しているか、成型されているか、あるいは、エッチングされている場合、ラベルは容器の上にあり得る;ラベルは、容器を保持する入れ物または運搬装置内に存在する場合、例えば、添付文書として容器に付けられる。ラベルは、内容物が特異的な治療用途に使用されることを示すために使用することができる。ラベルはまた、本明細書に記載される方法などによる内容物の使用のための指示を示すことができる。
【0383】
特定の実施形態において、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を含む医薬組成物は、1つ以上の単位投与形態を含有し得るパックまたはディスペンサー装置において提供される。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属ホイルまたはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与のための説明書を添付することが可能である。パックまたはディスペンサーはまた、薬の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に付随された通知が添えられることもあり、この通知は、ヒトまたは動物への投与のため薬物の形態に関する、政府機関による承認を反映する。こうした通知は、例えば、処方薬または承認された生成物の挿入物に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルである。適合可能な医薬担体の中で製剤される、本明細書に提供される化合物を含有する組成物も調製され、適切な容器に入れられ、且つ、示された疾病の処置についてラベル付けされ得る。
【実施例】
【0384】
以下の実施例は説明の目的のためにだけ提供され、本明細書で提供される請求項の範囲を限定するものではない。2016年3月3日出願の国際特許出願番号PCT/US2016/020732に概説されるように化合物Iを調製した。アセトニトリル中のメタンスルホン酸により化合物Iを処理することによってメシレート塩を調製した。
【0385】
実施例A-1:化合物1のカプセル製剤
化合物1を、サイズ9のカプセル(Torpac, Inc., New Jersey)に直接加えた。
【0386】
実施例A-2:錠剤製剤
2つの異なる錠剤製剤を、50mgおよび250mgの強度で製造した(化合物Iの量に基づく)。標準的な錠剤化技術に従って錠剤を製造する。
【0387】
【0388】
【0389】
2つの異なる錠剤強度製剤を、50mgおよび250mgの強度で製造した(化合物Iの量に基づく)。標準的な錠剤化技術に従って錠剤を製造し、20~25℃で保管した。錠剤を直接の混合として製剤し、900mgのカプセル形状の錠剤へと圧縮した。
【0390】
【0391】
【0392】
実施例A-3:経口溶液
水溶液中にクエン酸ナトリウム無水物、クエン酸無水物、FONAの苦味を隠す香味料(FONA Bitterness Masking Flavors)、およびスクラロースを含有する水性希釈液中に5mg/mL~50mg/mLの濃度の化合物2を有する、化合物2の経口溶液を調製した。
【0393】
溶液を以下のように調製した。必要な量の水を容器に加える(量については表3を参照)。必要な量のクエン酸ナトリウムおよびクエン酸を計量し、容器に加え、溶解するまで混合する。必要な量の香味剤(FONAの苦味を隠す香味料)を計量し、これを溶液に加え、均質になるまで混合する。必要な量のスクラロースを計量し、溶液にこれを加え、溶解するまで混合する。外観(無色~僅かに黄色)およびpH(3~5の範囲内のpH)を測定し、希釈液が確実に規格を満たすようにした。必要な量の化合物2を計量し、希釈液にゆっくり加える。全ての化合物2が溶解するまで混合する(必要ならば、超音波処理するか、温めるか、または撹拌する)。pHは3~5の範囲内であり、外観は無色~僅かに黄色である。ガラス容器中の最大80mLのバルク投与(bulk dosing)溶液を分配する。
【0394】
ガラス容器中で最大7日間、2℃~8℃、または25℃/60%RHで保管したとき、経口溶液の物理的な外観、効力、純度またはpHに著しい変化はなかった。経口溶液の推奨された保管は、ガラス容器中で最大7日間、2℃~8℃または20℃~25℃の何れかである。
【0395】
【0396】
実施例A-4:ラットにおける化合物1または2の薬物動態の研究
化合物1または2を、カプセル中に30mg/kgまたは15mg/kgの化合物1での溶液においてPO投与した[化合物1をサイズ9のカプセル(Torpac, Inc., New Jersey)に直接入れた]。
【0397】
投与の5または15分前、次いで投与の最大24時間後の様々な時点で、各ラットから血液サンプルを得た(1つの時点当たりのおよそ0.3mLの全血液)。カリウムEDTA(通常の食塩水中のw/v; BD Biosciences, Franklin Lakes, New Jersey)を含む管の中の湿った氷の上でサンプルを採取した。全血の遠心分離によって調製された血漿サンプルを、分析前に冷凍保存した(-80℃)。他の全ての試薬は分析等級であった。
【0398】
単一のAgilent 1200 Series Quaternaryシステムポンプ(Santa Clara, CA)およびLEAP PALオートインジェクター(Greenville, SC)から成るHPLCシステムにインターフェースされたSciex API-4000Qtタンデム型質量分析計(AB Sciex, Foster City, CA)で構成されたLC-MS/MSシステム上で、分析を行った。室温でのクロマトグラフィー分離のためにAgilent Zorbax SB-C8カラム(2.1×50mm;5μm)を使用して分析を行った。データを表6に記載する。
【0399】
【0400】
実施例A-5:イヌにおける化合物1または2の薬物動態の研究
100または300mg/kgの溶液において化合物1または2をPO投与した。1つのカプセルの他、2つの異なる錠剤製剤(製剤AまたはB)において化合物2をPO投与した。データを表5に記載する。悪阻が全ての投薬群において普及していたが、臨床観察により、経口カプセル剤および場合により錠剤が経口溶液と同等以上に耐用性があると結論付けられた。
【0401】
投与の5または15分後、次いで投与の最大24時間後の様々な時点で、各イヌから血液サンプルを得た(1つの時点当たりおよそ1mLの全血液)。カリウムEDTA(通常の食塩水中のw/v; BD Biosciences, Franklin Lakes, New Jersey)を含む管の中の湿った氷の上でサンプルを採取した。全血の遠心分離によって調製された血漿サンプルを、分析前に冷凍保存した(-80℃)。他の全ての試薬は分析等級であった。
【0402】
単一のAgilent 1200 Series Quaternaryシステムポンプ(Santa Clara, CA)およびLEAP PALオートインジェクター(Greenville, SC)から成るHPLCシステムにインターフェースされたSciex API-4000Qtタンデム型質量分析計(AB Sciex, Foster City, CA)で構成されたLC-MS/MSシステム上で、分析を行った。室温でのクロマトグラフィー分離のためにAgilent Zorbax SB-C8カラム(2.1×50mm;5μm)を使用して分析を行った。
【0403】
【0404】
実施例A-6:非経口医薬組成物
注入(皮下、静脈内)による投与に適した非経口医薬組成物を調製するために、1-1000mgの化合物(I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、滅菌水に溶解し、その後、10mLの0.9%滅菌塩と混合した。適切な緩衝液を随意に加え、同様に随意に酸または塩基を加えて、pHを調整する。混合物を、注入による投与に適した投与単位の形態で組み込む。
【0405】
実施例A-7:局所ゲル組成物
医薬用の局所ゲル組成物を調製するために、化合物(I)、あるいはその薬学的に許容可能な塩を、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、イソプロピルミリステート、および精製アルコールUSPと混合する。結果として生じたゲル混合物をその後、局所投与に適した、例えばチューブなどの容器に組み込む。
【0406】
実施例B-1:濃縮調整培地(CCM)の調製
ヒトLOXL2/CHOおよびヒトLOX/HEKの安定した細胞株を、細胞が~80%のコンフルエントになるまで15cmの組織培養プレートにおいて標準の成長条件下で培養した。その後、細胞をPBSで洗浄し、その後に25-30mLの無血清培地(Phenol red-free DMEM/F12 mix w/glutamax containing pen/strep、10-100μM CuCl2±0.1% BSA)を加えた。細胞を37℃、5%のCO2で、無血清培地の中で40-48時間インキュベートし、その後に調整培地を取り除き、4℃で5分間、2000rpmで遠心分離して、細胞/異物をペレット状にした。製造者の指示(EMD Millipore, Billerica, MA)に従い、10-30 MWCOセントリプレップカラムを使用して培地を10-20倍に濃縮し、その後に分割して-80℃で保管した。
【0407】
実施例B-2:ヒトLOXL2 CCMアッセイ
ヒトLOXL2を安定して発現するCHO細胞からの10-20倍濃縮した調整培地(BSAを含まない)を使用して、LOXL2アミンオキシダーゼ活性を、Amplex Red蛍光を測定することによって評価した。アミンオキシダーゼ活性を分析するために、10μLの濃縮した調整培地を、37℃で2時間、DMSO中の2μLの試験化合物および73μLのアッセイ緩衝液(Assay Buffer)(50mMのホウ酸塩緩衝液、pH8)でインキュベートした。2時間のインキュベーション後、アッセイ緩衝液中で希釈した5μlの10mM 1,5-ジアミノペンタン(DAP)および10μlのAmplex Red Mix(8.5μlのアッセイ緩衝液+10mMのAmplex Red0.5μl+1μLの500U/ml ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を加え、プレートを混合し、その直後に蛍光測定のためにFlexStation上に置いた。0.5-1時間かけて2分ごとに速度論様式で蛍光を読み取り、励起=544および発光=590であった。アミンオキシダーゼ活性を、曲線の線形部分の勾配から計算した。ビヒクルを含有するウェル(DMSO)は最大の活性を表わし、0%の阻害に設定され、および、100μMのβAPN(3-アミノプロピオニトリル)を含有するウェルは活性を表わさず、100%の阻害に設定された。
【0408】
【0409】
実施例B-3:ヒトLOX CCMアッセイ
ヒトLOXを安定して発現するHEK細胞からの10-20倍濃縮した調整培地(BSAを含まない)を使用して、ヒトLOXアミンオキシダーゼ活性を、Amplex Red蛍光を測定することによって評価した。アミンオキシダーゼ活性を分析するために、10μLの濃縮した調整培地を、37℃で2時間、DMSO中の2μLの試験化合物および73μLのアッセイ緩衝液(Assay Buffer)(50mMのホウ酸塩緩衝液、pH8)でインキュベートした。2時間のインキュベーション後、アッセイ緩衝液中で希釈した5μLの10mM 1,5-ジアミノペンタン(DAP)および10μlのAmplex Red Mix(8.5μlのアッセイ緩衝液+0.5μlの10mM Amplex Red+1μLの500U/ml ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を加え、プレートを混合し、その直後に蛍光測定のためにFlexStation上に置いた。1時間かけて2分ごとに速度論様式で蛍光を読み取り、励起=544および発光=590であった。アミンオキシダーゼ活性を、曲線の線形部分の勾配から計算した。ビヒクルを含有するウェル(DMSO)は最大の活性を表わし、0%の阻害に設定され、および、100μMのβAPN(3-アミノプロピオニトリル)を含有するウェルは活性を表わさず、100%の阻害に設定された。
【0410】
実施例B-4:ヒトLOXL2の精製された組換え型タンパク質のアッセイ
市販の精製された組み換え型ヒトLOXL2(Sino Biologicals, Beijing, China)を使用してAmplex Red蛍光を測定することによりアミンオキシターゼ活性を評価した。アミンオキシターゼ活性を分析するために、アッセイ緩衝液緩衝液(50mMのホウ酸塩緩衝液、pH8)において希釈された、10μLの0.025μg/μL 精製組換え型LOXL2を37℃で2時間、DMSOおよび73μLのアッセイ緩衝液中の2μLの試験化合物によりインキュベートした。2時間のインキュベーション後、アッセイ緩衝液中で希釈した5μlの10mM 1,5-ジアミノペンタン(DAP)および10μlのAmplex Red Mix(8.5μlのアッセイ緩衝液+0.5μLの10mM Amplex Red+1μLの500U/ml ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を加え、プレートを混合し、その直後に蛍光測定のためにFlexStation上に置く。0.5-1時間かけて2分ごとに速度論様式で蛍光を読み取り、励起=544および発光=590であった。アミンオキシダーゼ活性を、曲線の直線部分の勾配から計算する。ビヒクルを含有するウェル(DMSO)は最大の活性を表わし、0%の阻害に設定され、および、100μMのβAPN(3-アミノプロピオニトリル)を含有するウェルは活性を表わさず、100%の阻害に設定された。
【0411】
実施例B-5:ヒトLOXL3の精製された組換え型タンパク質のアッセイ
市販の精製された組み換え型ヒトLOXL3(R&D Systems, Minneapolis, MN)を使用してAmplex Red蛍光を測定することによりアミンオキシターゼ活性を評価した。アミンオキシターゼ活性を分析するために、アッセイ緩衝液緩衝液(50mMのホウ酸塩緩衝液、pH8)において希釈された、10μLの0.075μg/μL 精製組換え型LOXL3を37℃で2時間、DMSOおよび73μLのアッセイ緩衝液中の2μLの試験化合物によりインキュベートした。2時間のインキュベーション後、アッセイ緩衝液中で希釈した5μLの10mM 1,5-ジアミノペンタン(DAP)および10μlのAmplex Red Mix(8.5μlのアッセイ緩衝液+0.5μLの10mM Amplex Red+1μLの500U/ml ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を加え、プレートを混合し、その直後に蛍光測定のためにFlexStation上に置いた。0.5-1時間かけて2分ごとに速度論様式で蛍光を読み取り、励起=544および発光=590であった。アミンオキシダーゼ活性を、曲線の線形部分の勾配から計算した。ビヒクルを含有するウェル(DMSO)は最大の活性を表わし、0%の阻害に設定され、および、100μMのBAPN(3-アミノプロピオニトリル)を含有するウェルは活性を表わさず、100%の阻害に設定された。
【0412】
【0413】
実施例B-6:LOXL2ヒト血液アッセイ
ヒト全血に関するヒトLOXL2のアミンオキシダーゼ活性を、Amplex Redアッセイを使用して測定した。精製されたヒト組換え型LOXL2(Sino Biologicals, Beijing, China)を、滅菌水を使用して0.25μg/mLに再懸濁し、その後、16μLのLOXL2を、ヘパリンバキュテーナーチューブにおいて採取された182μLの新鮮なヒト血液に加えた。DMSO中の2μLの試験化合物(またはDMSOのみ)を加えて、37℃で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後、血液を室温で15分間、2000xgで遠心分離にかけ、血漿を分離した。50μlの血漿を除去し、25μlの40mM DAP(水中で希釈)および25μLのAmplex Red Mix(23.5μlの50mM ホウ酸塩緩衝液、pH8+0.5μLの10mM Amplex Red+1μLの500U/ml ホースラディッシュペルオキシダーゼ)と混合する。サンプルを混合し、その直後に蛍光測定のためにFlexStation上に置いた。1時間かけて2分ごとに速度論様式で蛍光を読み取り、励起=544および発光=590であった。アミンオキシダーゼ活性を、曲線の線形部分の勾配から計算した。ビヒクルを含有するウェル(DMSO)は最大の活性を表わし、0%の阻害に設定され、および、LOXL2でスパイクされていない(not spiked)血液を含有するウェルは活性を表わさず、100%の阻害に設定された。
【0414】
実施例B-7:肺線維症のマウス中咽頭のブレオマイシンモデル
中咽頭滴下を介してブレオマイシン(0.1-4U/kg)を投与することによって、肺線維症をC57Bl/6オスマウスに誘発させた。予防的(ブレオマイシン滴下前1時間~1日)あるいは治療的(ブレオマイシン滴下後7-14日)の何れかで、経口、腹腔内、静脈内、または皮下にビヒクルまたは試験化合物を投与することにより、マウスを予め処置した。投薬の経路および頻度は、マウスにおけるLOXL2阻害剤に関して以前に判定された薬物動態学的特性に基づいた。ブレオマイシン滴下後に、動物を、屠殺前に14-28日間、体重減少および臨床徴候に関して毎日モニタリングした。動物を研究終了時に安楽死させ、計量した。血液(血漿の単離のため)および気管支肺胞洗浄液を集め、後の分析のために冷凍した。肺を除去し、計量し、その後、10%のホルマリンの滴下によって膨張または固定し、組織学的検査のために調製するか、あるいはヒドロキシプロリンアッセイを使用するコラーゲン判定のために1mLのPBS中で均質化した。組織学的検査に関して、線維症の指標としての繊維状コラーゲンおよび判定された肺線維性と炎症性損傷のAshcroftスコアを測定するために、肺切片を、マッソントリクロームまたはピクロシリウスレッド(picrosirius red)で染色した。肺ヒドロキシプロリン含有量に関して、0.5mlの肺ホモジネートを除去して、0.5mLの12N HClに加え、サンプルを一晩120℃で加熱する。酸加水分解後に、25-100μLの上清を乾燥し、25μLの水中に再懸濁し、ヒドロキシプロリン含有量を、0.5mLのクロラミンT溶液(6.5mlのddH2O中の140mgのクロラミンT+1mlのn-プロパノール+2.5mLの1M 酢酸ナトリウム)の付加、および室温で20分間のインキュベーションによって判定する。インキュベーション後、0.5mLのErlichの溶液(7mLのn-プロパノール中の1.48gの4-(ジメチルアミノ(ベンズアルデヒド)+2.88mLの60%過塩素酸および0.12mLのddH2O)を加え、65℃で15分間インキュベートし、その後に550nmで吸光度を読み取る。
【0415】
実施例B-8:肺線維症における用量応答効果
化合物Rac-1を3、10、30または60mg/kg/日でブレオマイシンを滴下されたマウスへと予防的に経口投与して、14日目の組織学的評価のために肺を採取した。
図1は、肺線維症のマウスのブレオマイシンに誘導されたモデル中のRac-1の予防的な14日の用量応答研究における肺線維症を反映する組織病理学分析からのAshcroftスコアを示す(
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001)。Rac-1は用量相関性の様式で繊維症を減らし、このことは30mg/kgが最大の抗繊維症効果を達するための最小量であることを示唆している。
【0416】
実施例B-9:肺線維症における予防的vs治療的効果
化合物1、化合物Rac-1、および化合物Ent-1を、2つのパラダイム:予防的(-1日目に投与を開始)および治療的(7日目に投与を開始薬)の下でブレオマイシンを注入されたマウスへと60mg/kg/日で経口投与した。
図2は、肺線維症のブレオマイシンを注入されたマウスモデルにおける予防(Pro)様式および治療(Ther)様式療法での、化合物1、Rac-1、およびEnt-1の効果を比較する、肺線維症を反映する組織病理学分析からのAshcroftスコアを示す(
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001)。
【0417】
繊維症の状態を、肺線維症の第1の基準としてAshcroftスコアを使用して、21日目に組織学的に評価した。3つの化合物は全て、化合物が予防的または治療的に投与されたかどうかにかかわらず、同様の効果で肺線維症のマウスモデル中の繊維症を大幅に軽減した。
【0418】
実施例B-10:確立された肺線維症の逆転:
マウスのブレオマイシンで誘導されたた肺モデルは、最初の14~21日にわたって繊維症を徐々に進行させることがわかっているが、その後、次の数週間にわたり若いマウスにおいては自発的に回復する(Hecker et al., 2014)。LOXL2阻害剤が確立された繊維症の回復を速めることができるかどうか判定するために、ブレオマイシンの後に化合物1の経口投与を14日目に始めて、28日目に組織学的分析のために肺を採取した。繊維症の程度は、ビヒクルで処置したマウスにおいて14~28日目まで不変のままであった。化合物1は、Ashcroftスコアの73%の標準化で繊維症を減少させた(
図3)。
図3は、28日間の回復研究における肺線維症を反映する組織病理学分析からのAshcroftスコアを示し、そこでは化合物1が14日目から60mg/kgで投与される。
【0419】
実施例B-11:肺線維症における投薬頻度の効果
異なる投薬パラダイムを使用して、ブレオマイシンで誘導されたマウスへと、化合物Rac-1を60mg/kgの投与量で予防的に経口投与した。毎日(QD)の投薬の効果を、隔日(Q2D)および3日毎(Q3D)の投薬の効果と比較して、14日目に組織学的評価のために肺を採取した。投薬頻度にかかわらず、化合物Rac-1は、Q2DまたはQ3Dよりもわずかに効果的にQDを持つ肺線維症を軽減した(
図4)。
【0420】
図4は、肺線維症のマウスのブレオマイシンに誘導されたモデル中の化合物Rac-1のQD、Q2D、およびQ3Dの投薬を比較する、予防的な14日の研究における肺線維症を反映する組織病理学分析からのAshcroftスコアを示す(
*p<;
**p<0.01;
****p<0.0001)。
【0421】
実施例B-12:肺線維症における抗LOXL2抗体での効果の比較:
化合物1の効果を、rAB0023での研究において付き合わせて比較した。rAB0023は、マウスIgG2aバックボーンへとクローン化された抗LOXL2の抗体であるAB0023の重鎖可変領域、およびマウスIgG2バックボーンへとクローンされたAB0023の軽鎖可変領域を持つ、組み換えマウスハイブリッド抗体である。rAB0023は、AB0023、即ち肺線維症のマウスのブレオマイシンで誘導されたモデルを含む様々なインビボモデルにおける効果を実証した抗体に等しい親和性を持つLOXL2に結合する(Barry-Hamilton et al., Nat Med. 2010 Sep;16(9):1009-17)。化合物1は、-1日目から60mg/kg/日の投与量で予防的に経口投与され;rAB0023は、-4、-1、1、4、8および11日目(隔週)に30mg/kgで腹腔内(IP)投与され、14日目に組織学的分析のために肺を採取した。化合物1は、3.1から0.8の平均値からのAshcroftスコアの低下によって明示されるように、マウスブレオマイシンモデル中の肺線維症を著しく軽減した。rAB0023抗体は、Ashcroftスコア(3.1~1.7)を減少させる傾向を示したが、この傾向は統計的に有意ではなかった。結果は、肺線維症のマウスのブレオマイシンで誘導されたモデルにおいてrAB0023よりも化合物1に優れた効果があったことを実証する。
【0422】
図5は、60mg/kgの化合物1を30mg/kgのrAB0023、即ちLOXL2の抗体と比較する、14日間の予防的な研究における肺線維症を反映する組織病理学分析からのAshcroftスコアを示す。
【0423】
実施例B-13:肺線維症に関する他の抗繊維症薬剤との組み合わせ
LOXL2阻害剤は、肺線維症に関する他の抗繊維症薬物と組み合わせて使用することができる。ピルフェニドンおよびニンテダニブが、IPFを持つ患者の肺線維症の処置のために現在承認されている。LOXL2阻害剤を、14-28日間の予防的または治療的な投薬モダリティにおいて、単独で、およびピルフェニドンと組み合わせて試験する。LOXL2阻害剤を更に、14-28日間の予防的または治療的な投薬モダリティにおいて、単独で、およびニンテダニブと組み合わせて試験する。上述のように、繊維症をAshcroftスコアリングまたはヒドロキシプロリン濃度を使用して測定する。効果が薬剤単独より大きい場合、あるいは何れかの薬物に必要な投与量が減らされ、それにより副作用のプロファイルが改善する場合、併用療法は有利である。
【0424】
実施例B-14:腎線維症のマウスアルポートモデル
糸球体基底膜コラーゲン、即ちコラーゲンIV-α3/α4/α5のコラーゲンIV遺伝子の1つに突然変異を有するマウスには、腎臓繊維症の進行を伴う糸球体機能の欠陥がある。これらマウスは腎機能障害を進行させ、腎不全で早くに死亡し、具体的なタイミングは突然変異が存在する菌株バックグラウンドに依存する。129/Svバックグラウンド上のCol4A3欠損マウスに、予防的(およそ2-3週齢)または治療的(およそ4-6週齢)のいずれかで、化合物1を経口投与する。マウスを予め決められた時間(7-9週齢)に屠殺するか、あるいは体重の>15%を失いその後で1-3日で死亡するまで継続的に投薬する。明確に死亡させられた場合、マウスをPBSで経心的に灌流し、1つの腎臓を腎動脈でクランプし(clamped)、もう1つの腎臓を糸球体の磁気分離のためにDynabeadsで灌流した。もう1つの腎臓を半分にして、腎皮質の小さなサンプルを透過電子顕微鏡(TEM)解析のために固定し、腎皮質の第2のサンプルをRNA分離に使用する。二分された腎臓のもう半分を、免疫組織化学的分析のためにOCTに埋め込んだ。糸球体および腎皮質からのRNAを、MMP-10、MMP-12、IL6、MCP-1、TGF-b1、CTGF、MMP-2、およびMMP-9を含む、対象の遺伝子に対するリアルタイムRT-PCRによって分析した。免疫組織化学的分析は、コラーゲン1、CD45、フィブロネクチン、平滑筋アクチン、WT-1、およびインテグリンアルファ8/ラミニンα5に対する染色を含んでいた。コラーゲン1染色を、線維症のスコアリングのために盲検的に分析し、フィブロネクチン染色を糸球体硬化症のスコアリングのために盲検的に分析した。全ての研究に関して、アルブミン尿を毎週評価し、BUNを組織採取時に評価する。
【0425】
2週齢から30mg/kg/日の投与量で経口投与したとき(
図6a)、即ち腎臓がこのモデルにおいて極めて正常であるときに、化合物1はCol4A3を欠いたマウス中の糸球体線維症および間質性線維症の両方を改善した。コラーゲンおよびフィブロネクチンの免疫組織化学的検査の盲検的評価を使用して、線維症を7週齢で評価した。投薬を5週齢で始めたときに化合物1は更に繊維症を改善し、このことは治療的介入と考慮され得る。
【0426】
図6aは、アルポート症候群および慢性腎臓病のCol4A3を欠いたマウスモデル中の腎臓繊維症を反映する、糸球体硬化症(左)および間質性線維症(右)のスコアを示す。2週齢または5週齢から30mg/kgでの化合物1の投与後、サンプルを7週齢で採取した(
**p<0.01)。
【0427】
実施例B-15:腎線維症に関する他の抗繊維症薬剤との組み合わせ
LOXL2阻害剤は、アルポート症候群を含む慢性腎臓病に関する他の薬物と組み合わせて使用することができる。アンジオテンシンII転換酵素(ACE)阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、腎臓病患者において頻繁に使用される。LOXL2阻害剤は、2-3週齢から予防薬において単独で、および、ラミプリル(ACE阻害剤)またはカンデサルタン(ARB)と組み合わせて試験される。予防的投薬の後に効果的な場合、(4-6週齢からの)治療的投薬のモダリティにおける組み合わせの研究が実行される。上述のように組織学的に繊維症を測定し、タンパク尿および/または血清BUNを使用して腎機能を測定する。生存に対する併用療法の効果も上述のように測定する。効果が薬剤単独より大きい場合、あるいは何れかの薬物に必要な投与量が減らされ、それにより副作用のプロファイルが改善する場合、併用療法は有利である。
【0428】
実施例B-16:マウスの同所性乳癌モデル
化合物1を、ヒト乳癌の同所性のマウスモデルにおいて評価した。ヌードマウスの側腹部に5×106細胞/100μLの濃度のMDA-MB-435-GFP細胞を皮下(s.c.)注射することにより腫瘍ストックを作った。皮下腫瘍が50-100mm3に達すると、腫瘍を採取して1mm3断片へと切断した。2つの腫瘍断片を各マウスの乳房の脂肪パッドへと移植した。一旦平均原発性腫瘍体積が100mm3に達すると、化合物1を60mg/kg/日の投与量で経口投与した。陽性対照として、4週間かけて週に一回、ドセタキセルを10mg/kgで静脈内投与した。式(W2×L)X1/2を使用して垂直方向最小寸法(W)および最大寸法(L)の計測値から腫瘍サイズを算出し、WとLはデジタルカリパスを使用して測定された。マウスを4週間後に屠殺した。化合物1は、4週間で体積の統計的に有意な35%の減少と共に腫瘍増殖を減じた。
【0429】
図6bは、ヌードマウスの乳房の脂肪パッドに移植されたMDA-MB-435-GFP細胞を有する同所性のヒト乳癌モデルにおける腫瘍体積を示す。腫瘍体積は、4週間の研究にわたり毎週測定された(
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【0430】
実施例B-17:皮膚および肺の線維症のマウスの皮下ブレオマイシンモデル
メスC57Bl/6マウスにおいて、マウスの背中の1(50-100μgのブレオマイシン/部位)または2つ(50μgのブレオマイシン/部位)の部位に、皮下注射を介してブレオマイシンを投与することによって、皮膚および肺の線維症を誘発する。2つの部位のモデルに関して、皮膚および肺の線維症を誘発するために、イソフルランを用いて動物に麻酔をかけ、ブレオマイシン(100μl、またはPBS対照)を28日間毎日同じ部位に注射する。単一の部位のモデルにおいて、マウスを拘束し、消去不可能なマーカーを使用して同定された同じ位置に注入した。ブレオマイシン注射の前(予防的投薬)またはブレオマイシン注射の7-14日後(治療的投薬)に、マウスを、ビヒクルまたは試験化合物で(1日~1時間)、経口、腹腔内、静脈内、または皮下にて前処置する。研究終了時に動物を安楽死させ、計量し、血液(血漿の分離用)および気管支肺胞洗浄液を集め、後の分析のために冷凍する。ヒドロキシプロリンアッセイを使用するコラーゲン含有量の判定のために、肺を除去し、計量し、その後PBS中で均質化するか、あるいは10%のホルマリンの滴下によって膨張または固定し、トリクロームまたはピクロシリウスレッド染色による組織学的検査のために調製した。6mmの皮膚パンチ生検(dermal punch biopsy)(Acuderm)を使用して、各注射部位から皮膚生検を得る。1つのパンチ生検を、カセット中でスポンジで挟み、ホルマリンに入れ、H&E、トリクロームおよび/またはピクロシリウスレッドの組織学的染色による組織学的検査のために調製する。もう1つのパンチ生検を、0.5mlのPBSに入れ、微細な(fine)ハサミを使用して細かく刻む。その後、500μlの12N HClを加え、サンプルを120℃で一晩加熱する。酸加水分解後に、25-100μLの上清を乾燥し、25μLの水中に再懸濁し、ヒドロキシプロリン含有量を、0.5mLのクロラミンT溶液(6.5mLのddH2O中の140mgのクロラミンT+1mLのn-プロパノール+2.5mLの1M 酢酸ナトリウム)の付加、および室温で20分間のインキュベーションによって判定する。インキュベーション後、0.5mlのErlichの溶液(7mlのn-プロパノール中の1.48gの4-(ジメチルアミノ(ベンズアルデヒド)+2.88mlの60%過塩素酸および0.12mLのddH2O)を加え、550nmで吸光度を読み取る前に15分間65℃でインキュベートする。各皮膚生検におけるヒドロキシプロリンの濃度を、ヒドロキシプロリン(Sigmaから購入した)の標準曲線から判定する。
【0431】
実施例B-18:肝臓線維症のラット/マウスのCCl4モデル
マウス(Balb/cまたはC57Bl/6)において、漸増用量プロトコルを使用して、4-8週間毎週2回、トウモロコシ油中に希釈したCCl4(0.5-2ml/kg体重)を腹腔内投与することによって、あるいは、毎週2-3回経口投与することによって、肝臓線維症を誘発する(Popov et al. 2011 Gastroenetrology; 140(5): 1642-1652)。ラットにおいて、6-12週間毎週2回、腹腔内投与(1-2.5ml/kg)または油(鉱油、オリーブ油あるいはトウモロコシ油)中の経口投与によって、肝臓線維症を誘発する。最初のCCl4投薬の1日から1時間前(予防的投薬)、あるいは最初のCCl4投薬の1-4週間後(治療的投薬)に、LOXL2阻害剤を、経口、腹腔内、静脈内、または皮下で送達する。研究の終わりに、イソフルランの下で胸腔を開口することによってマウスを屠殺し、血液を心臓穿刺によってEDTAバキュテナーチューブへと抜き、肝臓を採取する。肝臓の一部を、続くH&E染色およびピクロシリウスレッド染色による炎症および線維症の組織病理学的分析のために、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定する。続く総コラーゲン含有量のヒドロキシプロリン分析のために、残りの組織を-80℃で急速凍結する。
【0432】
実施例B-19:胆汁線維症のマウスMdr2ノックアウトモデル
8週齢~12週齢の架橋線維症/早期肝硬変を有するBALB/c.Mdr2-/-マウスモデルにおいて、肝臓病が進行する(Ikenaga et al. 2015 Am J Pathology, 185: 325-334)。生後6週目から6週間毎日1回、BALB/c.Mdr2-/-マウスに、化合物1を30および60mg/kg/日の投与量で経口送達した。研究の終わりに、正確な気化器を介してイソフルラン(1.5%v/v)によりマウスに麻酔をかけた。開腹術後、高忠実度の圧力カテーテルを門脈に挿入し、5分間圧力信号を測定することによって、門脈圧を直接測定した。肝臓(ALT、ASTM、ALP、およびビリルビン)および腎臓(クレアチニン)の分析のために、血清を採取した。肝臓の一部を、続くH&E染色およびピクロシリウスレッド染色による、炎症、壊死、および線維症の組織病理学的分析のために、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定した。色の控除および処理した画像の閾値処理(thresholding)を介して非特異的染色から赤色染色コラーゲンを分離するアルゴリズムを用いて、ピクロシリウスレッド染色画像からコラーゲン領域分画を測定した。各セットについて同じ閾値を使用して、ランダムな順で切片を分析した。分析後にデータのデコンボリューションを行い、群の割り当てを同定した。ヒドロキシプロリン分析を使用して肝臓組織の一部からコラーゲン含有量を判定した。
【0433】
6週齢から始まり且つ12週齢全体にわたり継続する30または60mg/kgのQDの投薬時に、ピクロシリウスレッド染色の変化により測定されるように、化合物1は肝臓線維症を軽減した。両方の投与量レベルは、肝臓の繊維症領域における同様の低下を実証した。rAB0023による処置は、繊維症の軽減に向かう傾向を示す一方、統計的に有意な改善をもたらさなかった。
図7は、ピクロシリウスレッド染色により染色されるような線維症領域の定量化を示す(一元配置ANOVA、その後のDunnett検定vsビヒクルで処置したマウスを使用して、
**p<0.01)。
【0434】
実施例B-20:マウス中の肝臓繊維症のチオアセトアミド(TAA)モデル
200mg/kgの3x/週の投薬でチオアセトアミド(TAA)の腹腔内注入によってオスC57Bl/6マウスに肝臓線維症を引き起こした。TAA投与の開始の後に3または6週間から始まる30mg/kgのQDの投与量で、化合物1を経口投与した。肝臓繊維症はTAAの開始後に12週間研究した。研究の終わりに、イソフルランの下で開腹術を行うことによってマウスを屠殺し、血液を心臓穿刺によってEDTAバキュテナーチューブへと抜き、肝臓を採取した。肝臓の一部を、続くH&E染色およびピクロシリウスレッド染色による炎症および線維症の組織病理学的分析のために、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定した。総コラーゲン含有量の続くヒドロキシプロリン分析、またはmRNA分析のために、残りの組織を-80℃で急速凍結した。肝機能の測定のように、肝臓生化学(ALT、ASTM、ALP、およびビリルビン)の分析のために血清を採取した。
【0435】
TAAの開始後に3または6週間で始まる30mg/kg/日での投薬時に、ピクロシリウスレッド染色の変化により測定されるように、化合物1は肝臓繊維症を軽減した。TAA処置の12週間での線維症の減少は、投薬を3週間で始めたときよりも大きく、このことは、より早い段階で繊維症を処置するよりも優れていることを示している。
図8は、ピクロシリウスレッド染色によって染色されるような繊維症領域の定量化を示す。(一元配置ANOVA、その後のDunnett検定vsTAA-ビヒクルで処置したマウスを使用して、それぞれ、
**、
***p<0.01、p<0.001)。
【0436】
実施例B-21:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の食餌誘導モデル
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)表現型を、研究開始前26-35週間、および研究期間中に、オスC57Bl/6JマウスにAMLN食餌(D09100301, Research Diet, US)(40%の脂肪(18%のトランス脂肪)、40%の炭水化物(20%のフルクトース)および2%のコレステロール)を与えることで誘発した。マウスを麻酔の下で肝生検にさらし、顕著な脂肪過多症および繊維症を有するマウスを効果の研究へと動員する。12週間、30-100mg/kg/日で、LOXL2阻害剤を経口、腹腔内、静脈内、または皮下投与する。研究の終了時またはその前に、尾静脈を介して血液をサンプリングし、代謝状態の測定値としてALT、トリグリセリド、総コレステロール、血糖およびインスリンを測定する。研究の終わりに、イソフルランの下で胸腔を開口することによってマウスを屠殺し、血液を心臓穿刺によってEDTAバキュテナーチューブへと抜き、肝臓を採取する。肝臓の一部を、続くH&E、トリクローム、およびピクロシリウスレッドの染色による炎症および線維症の組織病理学的分析のために、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定する。続く総コラーゲン含有量のヒドロキシプロリン分析、総コレステロール分析、およびmRNA分析のために、残りの組織を-80℃で急速凍結した。
【0437】
実施例B-22:高脂肪含有量を補足したコリン欠乏アミノ酸置換(choline deficient, amino-acid defined)(CDAA)食を介して引き起こされたNASHのマウスモデル
肝臓繊維症を、6週齢からC57Bl/6マウスに、60%のkcal%の脂肪および0.1%のメチオニン(Research Diets C/N A06071302)を含有するコリン欠乏L-アミノ酸置換高脂肪食(CDAAHFD)を与えることで誘発した。一旦、4-6週齢の食餌において、マウスを、肝機能を下げるもの、および、ビリルビンレベルの上昇を除外したものについてスクリーニングした。残りのマウスを群に割り当て、投薬を始めた。更に8-12週間、30-100mg/kg/日で、LOXL2阻害剤を経口、腹腔内、静脈内、または皮下投与する。研究の終わりに、イソフルランの下で胸腔を開口することによってマウスを屠殺し、血液を心臓穿刺によってEDTAバキュテナーチューブへと抜き、肝臓を採取する。肝臓の一部を、続くH&E、トリクローム、および/またはピクロシリウスレッドの染色による炎症および線維症の組織病理学的分析のために、10%の中性緩衝ホルマリン中に固定する。続く総コラーゲン含有量のヒドロキシプロリン分析、総コレステロール分析、および/またはmRNA分析のために、残りの組織を-80℃で急速凍結した。
【0438】
実施例B-23:肝臓繊維症およびNASHにおける組み合わせの研究
LOXL2阻害剤は、肝臓繊維症およびNASHに関する他の薬物と組み合わせて使用することができる。ASK1阻害剤は、複数の繊維症の指標において医療機関で現在調査中であり、肝臓繊維症のげっ歯動物モデルにおける効果を実証する。LOXL2阻害剤は、TAAおよびCDAA-HFDモデルを含む上述の肝臓繊維症のモデルにおいて、単独で、およびASK1阻害剤と組み合わせて試験される。JNK1は、げっ歯動物モデルにおける抗繊維症の効果を実証する阻害剤である、ASK1の下流の繊維症促進性キナーゼである。JNK1の阻害剤はIPFについて臨床検査中である。LOXL2阻害剤は、TAAおよびCDAA-HFDモデルを含む上述の肝臓繊維症のモデルにおいて、単独で、およびJNK1阻害剤と組み合わせて試験される。更なる組み合わせは、LOXL2阻害剤を、FXRアゴニスト(OCA)、PPARα/δ/γアゴニストおよびアンタゴニスト(GFT505);CCR2/5デュアルアンタゴニスト(Cenicriviroc);ガレクチン-3(GR-MD-02)を標的とする薬物、ACC阻害剤(NDI-010976)と組み合わせたものを含む。予防的投与または治療的投与のモダリティ(4-6週齢から開始)のいずれかを使用して効果を評価する。上述のように組織学的に繊維症を測定し、肝酵素を使用して肝機能を測定する。効果が薬剤単独より大きい場合、あるいは何れかの薬物に必要な投与量が減らされ、それにより副作用のプロファイルが改善する場合、併用療法は有利である。
【0439】
実施例B-24:マウスの眼におけるレーザーで誘発された脈絡膜の新血管新生
レーザーで誘発された脈絡膜の新血管新生(CNV)は、加齢黄斑変性に関連付けられる繊維症に関する半急性モデルである。ケタミン/キシラジン・カクテルを使用してC57Bl/6マウスに麻酔をかけ、瞳孔をトロピカミドにより拡大した。スリットランプ送達システムにおいて緑色レーザーを使用して、光ディスクの周囲の多数の位置にレーザー熱傷を引き起こす。潤滑用の目薬を、疼痛および苦痛の兆候についてモニタリングされる各スポットと動物との間に適用する。各動物の片眼はレーザー治療にさらされ、反対の眼は損傷のない対照として使用する。研究の終わり(レーザー治療後14-42日)に、マウスをCO2窒息および頸椎脱臼にさらす。眼を摘出し、1%のパラホルムアルデヒドまたは10%のホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。組織学的切片を、標準のH&E染色、トリクロームまたはピクロシリウスレッド染色、および様々な免疫組織化学染色を含む多数のパラメータについて染色する:即ち、血管のための抗CD31、グリア細胞のための抗線維性酸性タンパク質、炎症細胞浸潤のための抗CD45。いくつかの研究において、血管新生および脈管の完全性を、2分間のFITCで標識したデキストランを用いる眼球後潅流を使用して評価し;RPE-コロイド(choiroid)/強膜の複合体を解剖し、スライドの上に平にして載せ、蛍光および血管の領域を分析する。眼に対しLOXL2阻害剤を溶液中で、30-100mg/kg/日で経口、腹腔内、静脈内、または皮下投与し、あるいは硝子体内または局所的に注入する。
【0440】
実施例B-25:線維芽細胞様滑膜細胞(FL)侵入に対するLOXL2阻害剤の効果
LOXL2阻害剤化合物の効果をFLS侵入の研究において検査する。FLS侵入の研究は2つのチャンバーモデルであり、そこでは細胞がマトリゲルを介して侵入する。このインビトロのアッセイは、インビボの関節損傷に関連する(Tolboom TC, et al. Invasiveness of fibroblast-like synoviocytes is an individual patient characteristic associated with the rate of joint destruction in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum 52: 1999-2002 (2005))。
【0441】
簡単に、FLS細胞株(RAおよびげっ歯FLSの細胞株)を上部チャンバーに置く。24時間の期間にわたり、細胞はマトリゲル層を介して侵入し、その後、上部チャンバーの基部にある孔を通る。上部チャンバーの底部を染色し、細胞を数えた。
【0442】
実験を繰り返すが、ここでFLS細胞株を、LOXL2阻害剤化合物の増大する濃度により前処理する。例えば、細胞株を約1-2時間LOXL2阻害剤化合物により前処理して、化合物による効率的な結合を可能にし、その後、マトリゲル層上の上部チャンバーに配する。
【0443】
実施例B-26:コラーゲンで誘発された関節炎(CIA)モデル系
LOXL2阻害剤化合物の効果の非限定的な例を後述する。
【0444】
この実施例では、マウスモデル系におけるコラーゲンで誘発された関節炎の進行に対するLOXL2阻害剤の効果を評価する。CIAに対して非常に影響を受けやすいことからDBA/1マウス菌株を使用する。0日目と21日目に、全ての動物は、0.1mlのタイプIIコラーゲン/完全フロインドアジュバント(CFA)エマルジョン中の200μgのコラーゲンを、尾部に皮内注射される。注射の位置は、尾部の基部から1cmの、およその尾部の距離である。
【0445】
6-7週齢、平均体重+20%以内の、オスDBA/1マウスを、3つの処置群へと無作為に割り当てる。群1はビヒクル対照群である。この群の動物は16日目から毎日1回、10ml/kgのビヒクル(0.5%のメチルセルロース)を経口(PO)で受ける。群2の動物(陽性対照群)は16日目から毎日1回、10ml/kg、POで、0.05mg/kgのデキサメタゾンを受ける。群3の動物は、16日目から1日1回または2回、0.5-60mg/kgのLOXL2阻害剤化合物を受ける。研究を35日目に終了し、残り全ての動物を、イソフルオラン、その後で頸椎脱臼の下、失血するまで出血させる。
【0446】
0日目と16日目、その後に研究の結論まで毎日、末梢関節における関節炎誘発性反応の兆候についてマウスを試験する。関節炎の反応を以下の通り、重症度の尺度で各足について等級付ける:
グレード0:反応なし、標準。
グレード1:影響を受けた2つの後足または前足の関節、あるいは軽度の拡散した紅斑および腫れ。
グレード2:影響を受けた3つの後足または前足の関節、あるいは中程度の拡散した紅斑および腫れ。
グレード3:影響を受けた4つの後足または前足の関節、あるいは著しい拡散した紅斑および腫れ。
グレード4:全ての足が影響を受け、重度の拡散した紅斑および重度の腫れ、指を曲げることができない。
【0447】
臨床検査を、0日目、16日目、その後毎日行う。観察には、皮膚、毛皮、眼、粘膜、分泌物および排泄物(例えば下痢)の発生、および自律神経性の活性(例えば流涕、流涎、起毛、瞳孔サイズ、および異常な呼吸パターン)における変化が挙げられる。歩行、姿勢、および処理に対する応答の他、奇妙な挙動、震え、痙攣、睡眠、および昏睡の変化も注目される。
【0448】
0日目、再び16日目、その後に研究収量まで毎週3回、尾部への注入の直前に動物を計量する。
【0449】
実験の関節炎の指標として、両後足の厚さを0日目、16日目、その後に毎日測定する。左足と右足を、ダイヤル・カリパス(Kroeplin, Munich, Germany)を使用して、つま先の真上および踵骨の真下で、背腹方向に測定する。
【0450】
研究の終わりの35日目に、残り全ての動物の足を取り除き、皮を剥ぎ、10%の中性緩衝ホルマリンに固定する。炎症、パンヌス形成、軟骨損傷、および骨吸収(bone resporption)についてH&E染色によって薄切片を組織学的に分析する。
【0451】
観察された効果の有意性を判定するためのデータの評価は主に、ANOVA、その後にTukey事後分析(Winsat 2005.1 for Excel)による関節炎スコア、体重、および足の厚み(全て上述されるようなもの)の測定に関する平均グループ値の比較に基づく。
【0452】
実施例B-27:肺線維症のための臨床試験
ヒトにおける肺線維症の臨床試験の限定しない例を以下に記載する。
【0453】
目的:この研究の目的は、肺繊維症の患者の処置において、単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効性を評価し、単一の薬剤としてまたは組み合わせで化合物が引き起こし得るあらゆる副作用についての情報を収集し、および単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの化合物の薬物動態学的特性を評価することである。
【0454】
介入:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日当たり100-2000mgの化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、患者に投与する。
【0455】
詳細な説明:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日に1回または2回、経口で、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を患者に与える。各投与サイクルの前に、健康診断、血液検査および任意の副作用の評価を行う。
【0456】
主要評価項目:死亡していないこと(free of death)または少なくとも10%のFVCにおけるベースラインからの減少として定義された、無増悪生存。
【0457】
副次的評価項目:IPFの急性増悪の数;健康に関連した生活の質;ベースラインからの休息および運動時のPO2;ベースラインからの休息および運動時のP(A-a)O2;ベースラインからの予測されたFEV1;ベースラインからのFVCに対する1秒の努力呼気量(FEV1);ベースラインからのプレチスモグラフの肺気量;ベースラインからの一酸化炭素(DLco)に対する拡散能力;ベースラインからの6分間歩行テスト:休息および6分間のSPO2、6分間歩行の終わりでの88%以下への不飽和化の存在または欠如、歩行距離;予め修正したおよび後に修正したBorg呼吸困難スコア;ベースラインからの、2人の独立した胸部放射線科医に従う、HRCTに関する肺線維症の範囲のスコア化;副作用の数および重症度。
【0458】
適格性:40~80歳の男性および女性の被験体。
【0459】
包含基準:少なくとも3か月間のIPFの臨床症状;予測値の50%から90%の間の努力肺活量(FVC);予測値の少なくとも35%でのDLco;休息時に周囲空気を呼吸する間にPaO2>55mmHg;IPFの明確なまたは推定の基準を示す高分解能CT(HRCT)。
【0460】
除外基準:既知の線維形成因子(肺線維症を引き起こすと知られる鳥、カビ、アスベスト、放射線および薬物(アミオダロン、ニトロフラントイン、ブレオマイシンなど))への臨床的に有意な曝露;神経線維腫症、ヘルマンスキー-プドゥラック症候群、代謝性蓄積症などの病歴;熱、体重減少、筋痛、関節痛、皮疹、関節炎の病歴;登録前1週間以内の活動性感染;間質性肺疾患の代替的原因;気管支拡張薬の使用後の0.6未満のFVCに対する1秒の努力呼気量(VEF1)の比率;予測値の120%を超える残気量(利用可能な場合);気管支肺胞洗浄(BAL)における20%を超えるリンパ球または好酸球(利用可能な場合);経気管支または外科生検における肉芽腫、感染あるいは悪性腫瘍(利用可能な場合);アザチオプリン、プレドニゾロン(少なくとも3か月間、>0.5mg/kg/日以上)、シクロホスファミドまたはバイオ新薬での前の治療;不安定な心血管疾患または神経疾患;抑制されていない糖尿病;妊娠;授乳;翌年以内の研究者によって予測された死亡の可能性;白血球数<4000/mm3;血小板数<100000/mm3;ヘマトクリット<30%または>59%;正常範囲の上限の3倍を超える肝酵素;クレアチニンレベル>1.5mg/dL;アルブミンレベル<3g/dL;患者または保護者によるインフォームド・コンセントへの署名に対する拒否。
【0461】
実施例B-28:肝臓線維症のための臨床試験
ヒトにおける肝臓線維症の臨床試験の非限定的な例を、以下に記載する。
【0462】
目的:この研究の目的は、肝臓繊維症の患者の処置において、単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効性を評価し、単一の薬剤としてまたは組み合わせで化合物が引き起こし得るあらゆる副作用についての情報を収集し、および単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの化合物の薬物動態学的特性を評価することである。
【0463】
介入:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日当たり100-2000mgの化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、患者に投与する。
【0464】
詳細な説明:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日に1回または2回、経口で、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を患者に与える。各投与サイクルの前に、健康診断、血液検査および任意の副作用の評価を行う。
【0465】
主要評価項目:肝酵素(ALT、AST、ALP)、肝生検
【0466】
副次的評価項目:薬力学的マーカーは、以下を含み得る:mRNA発現による組織PDマーカー、オートタキシン、LOXL2、LOX、他のLOXLタンパク質、αSMA、コラーゲン1A1、NF-κB1、カスパーゼ1、SMAD、およびNOD;血清および血漿のPDマーカーは、以下を含む:AST-血小板指数(APRI)、オートタキシン活性、LOXL2の濃度、オステオポンチン、ヒアルロン酸、CXCL9、10、および11、MMP1、MMP3、MMP9、TIMP1、CD40L、TGF-β1、ET-1、VEGF、GAL3、IL-6/IL-8/TNFα/IFNγ、α2-マクログロブリン、アポリポタンパク質A1、PINP、PIIINP、PVCP-1230、PDGF;肝臓構造および線維症マーカーに対する慢性投与の効果の評価;化合物の複数回投与に起因する有害事象の発生率。
【0467】
適格性:18歳~60歳の男性および女性の被験体。
【0468】
包含基準:肝生検に関するMetavirスコアによる段階1-3の線維症;肥満指数<36kg/m2。
【0469】
除外基準:過去あるいは現在の肝臓の代償不全の証拠;アンフェタミン、コカイン、オピエート、またはアルコールを現在乱用する被験体;臨床的に有意な心臓病;スクリーニング前の5年以内での非黒色腫皮膚癌以外の癌の病歴;抑制されていない、全身性の菌類、細菌、ウイルス、または他の感染症;前処置段階から28日以内の全身性の免疫抑制薬の使用;前処置段階から28日以内のC型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスに対する公認済の治療の使用;妊娠または授乳;研究の1日目から6か月以内の出血性素因の病歴。
【0470】
実施例B-29:脂肪肝疾患/脂肪変性(NAFLD、NASH)のための臨床試験
ヒトにおける脂肪肝疾患/脂肪変性の臨床試験の非限定的な例を、以下に記載する。
【0471】
目的:この研究の目的は、肝細胞癌の患者の処置において、単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効性を評価し、単一の薬剤としてまたは組み合わせで化合物が引き起こし得るあらゆる副作用についての情報を収集し、および単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの化合物の薬物動態学的特性を評価することである。
【0472】
介入:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日当たり10-2000mgの化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、患者に投与する。
【0473】
詳細な説明:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日に1回または2回、経口で、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を患者に与える。各投与サイクルの前に、健康診断、血液検査および任意の副作用の評価を行う。
【0474】
適格性:21歳~80歳の男性および女性の被験体。
【0475】
包含基準:非アルコール性脂肪肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎の臨床的に確証された診断を受けた患者;無作為化前90日以内に得た肝生検および4以上の非アルコール性脂肪肝疾患の活動性スコア(NAS)に基づいた、明確なまたは推定の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の組織学的証拠。
【0476】
除外基準:著しいアルコール摂取、無作為化の前年における2週間以上の非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に履歴的に関連した薬物(アミオダロン、メトトレキセート、全身性のグルココルチコイド、テトラサイクリン、タモキシフェン、ホルモン置換に使用されたものよりも多い投与量でのエストロゲン、アナボリックステロイド、バルプロ酸、および他の既知のヘパトトキシン)の使用、以前のまたは(研究期間中に)計画された肥満外科手術(例えば、胃形成術、ルーワイ胃バイパス術)、登録前60日以内にヘモグロビンA1c 9.5%以上として定義された抑制されていない糖尿病、肝生検に関する肝硬変の存在、100,000/mm3より下の血小板数、の現状あるいはその履歴;次の異常のいずれかの存在によって定義されるような肝臓の代償不全の臨床上の証拠:3.2グラム/デシリットル(g/dL)未満の血清アルブミン、1.3を超えるINR(国際正常化比)、1デシリットル当たり1.3ミリグラム(mg/dL)を超える直接ビリルビン、食道静脈瘤、腹水症、または肝性脳症の履歴;慢性肝疾患の他の形態の証拠:B型肝炎表面抗原(HBsAg)の存在によって定義されるようなB型肝炎、C型肝炎ウイルス(HCV)リボ核酸(RNA)または陽性C型肝炎抗体(抗HCV)の存在によって定義されるようなC型肝炎、適合性のある肝臓組織学的検査によって定義されるような進行中の自己免疫性肝臓病の証拠、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ウィルソン病、α1-アンチトリプシン(A1AT)欠乏症、血色素症または鉄過剰の病歴、典型的な曝露と履歴に基づいて定義されるような薬剤誘発性肝疾患、既知の胆管閉塞、疑いのあるまたは証明された肝臓癌、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)以外の他のタイプの肝臓病;1リットル当たり300ユニット(U/L)を超える血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);2.0mg/dL以上の血清クレアチニン;登録前90日以内のウルソデオキシコール酸(Ursodiol、Urso)の使用;肝生検を安全に得ることができない、胆汁分流の履歴、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対する既知の陽性;妊娠、計画された妊娠、妊娠の可能性、および試験の間に効果的な避妊を行おうとしない、授乳中
【0477】
主要評価項目:肝機能検査、肝生検、NASスコア。
【0478】
副次的評価項目:線維症バイオマーカー、肝イメージング(超音波、MRI)、HOMA-IRによる尺度としてのインスリン耐性、脂質パネル。
【0479】
実施例B-30:膵癌のための臨床試験
ヒトにおける膵癌の臨床試験の非限定的な例を、以下に記載する。
【0480】
目的:この研究の目的は、膵臓癌の患者の処置において、単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効性を評価し、単一の薬剤としてまたは組み合わせで化合物が引き起こし得るあらゆる副作用についての情報を収集し、および単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの化合物の薬物動態学的特性を評価することである。
【0481】
介入:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日当たり100-2000mgの化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、患者に投与する。
【0482】
詳細な説明:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日に1回または2回、経口で、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を患者に与える。各投与サイクルの前に、健康診断、血液検査および任意の副作用の評価を行う。
【0483】
適格性:進行した膵癌を患う21歳~80歳の男性および女性の被験体。
【0484】
包含基準:測定可能な進行した膵癌(II、III、IV期)のX線検査または臨床上の証拠。被験体は、直径で少なくとも2cmの測定可能な疾患を有していなければならない。0または1のECOGパフォーマンスステータス。
【0485】
除外基準:1年以上にわたり被験体が悪性腫瘍を患っていない場合の悪性腫瘍の前の病歴(胸部の基底細胞癌または扁平上皮癌あるいは上皮内癌を除く)。中程度または重度の心臓病;活動性感染;妊娠していないまたは授乳していない;陰性妊娠検査;妊娠可能な患者は、研究処置の終了後3か月間、および3か月以上、有効な避妊を行わなければならない;経口の薬剤を呑み込むことができる;皮膚の上皮内癌または基底細胞癌あるいは扁平上皮癌を除いて過去5年以内に他の悪性腫瘍がない;スタチンに対する過敏性または不耐性がない;ロスバスタチン投与または延長されたフォローアップを妨げる他の非悪性の全身性疾患がない。
【0486】
主要評価項目:無増悪生存、全生存、疼痛の悪化、疼痛の発症
【0487】
副次的評価項目:腫瘍サイズ/反応(RECIST)
【0488】
実施例B-31:肝細胞癌(HCC)のための臨床試験
ヒトにおける肝細胞癌の臨床試験の非限定的な例を、以下に記載する。
【0489】
目的:この研究の目的は、肝細胞癌の患者の処置において、単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の有効性を評価し、単一の薬剤としてまたは組み合わせで化合物が引き起こし得るあらゆる副作用についての情報を収集し、および単一の薬剤としてのまたは組み合わせでの化合物の薬物動態学的特性を評価することである。
【0490】
介入:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日当たり100-2000mgの化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を、患者に投与する。
【0491】
詳細な説明:単一の薬剤としてまたは組み合わせで、1日に1回または2回、経口で、化合物I、あるいはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和物を患者に与える。各投与サイクルの前に、健康診断、血液検査および任意の副作用の評価を行う。
【0492】
適格性:21歳~80歳の男性および女性の被験体。
【0493】
包含基準:肝細胞癌の組織病理学的または臨床的に確証された診断を受けた患者;標準的治療に反応がないまたは標準的治療への耐性がない、あるいは適切な治療がない;0-2のECOGパフォーマンスステータススコア。
【0494】
除外基準:原発性悪性腫瘍の患者;肝移植の病歴;脳転移;インフォームド・コンセントの獲得または試験の実施が困難となりかねない精神障害;妊娠していないまたは授乳していない;妊娠可能な患者は、研究処置の終了後3か月間、および3か月以上、有効な避妊を行わなければならない;皮膚の上皮内癌または基底細胞癌あるいは扁平上皮癌を除いて過去5年以内に他の悪性腫瘍がない;スタチンに対する過敏性または不耐性がない;ロスバスタチン投与または延長されたフォローアップを妨げる他の非悪性の全身性疾患がない。
【0495】
主要評価項目:腫瘍増殖停止時間、無増悪生存、総合効果(overall response)(RECIST)
【0496】
副次的評価項目:肝機能検査、腫瘍バイオマーカー
【0497】
本明細書中に記載される例および実施形態は、単に例示を目的とするものであり、当業者に提示される様々な改良または変更が、本出願の、および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲の中に包含される。