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特許7097876バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220701BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61M25/10 500
A61M25/14 518
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019518770
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2018018510
(87)【国際公開番号】W WO2018212126
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017096740
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-191412(JP,A)
【文献】特開2004-216175(JP,A)
【文献】特開2006-158766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔を有する外管シャフトと、
前記外管シャフトの内腔に配置された内管シャフトと、
前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に固定されたバルーンと、を備え、
前記内管シャフトは、第1層と、前記第1層の内表面側に配置された第2層と、を有し、
前記外管シャフトは、前記内管シャフト側に向かって凹みつつ、前記第1層と融着されており、
前記第1層は、前記外管シャフトおよび前記第2層よりも光吸収性が高い材料で構成され、
前記第2層は、前記第1層よりも融点が高い材料で構成されており、
前記内管シャフトは、前記第1層と前記第2層との間に第3層を有し、
前記第3層は、前記第2層に対する接合性が前記第1層よりも高い、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記第2層の肉厚は、前記内管シャフトの軸方向に垂直な断面において、前記第1層の肉厚と略同一である、もしくは前記第1層の肉厚よりも薄い、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記第2層は、前記第1層よりも融点が10度以上高い材料で構成される、請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記第1層は、前記内管シャフトの最外層を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記第1層の肉厚は、前記内管シャフトの軸方向に垂直な断面において、前記外管シャフトと前記内管シャフトの融着部に向かって増加する、請求項1~4のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
内腔を有する外管シャフトと、
前記外管シャフトの内腔に配置された内管シャフトと、
前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に固定されたバルーンと、を備え、
前記内管シャフトは、第1層と、前記第1層の内表面側に配置された第2層と、を有し、
前記外管シャフトは、前記内管シャフト側に向かって凹みつつ、前記第1層と融着されており、
前記第1層は、前記外管シャフトおよび前記第2層よりも光吸収性が高い材料で構成されており
前記第2層は、前記第1層よりも融点が高い材料で構成されており、
前記外管シャフトは、ポリアミド樹脂を含有する材料で形成されており、
前記第1層は、カーボンブラックを含有するポリアミド層で形成されており、
前記第2層は、フッ素樹脂層又は接着性フッ素樹脂層で形成されており、
前記外管シャフトは、無色透明であり、
前記第1層は、黒色であり、
前記第2層は、無色透明である、バルーンカテーテル。
【請求項7】
外管シャフトと、内管シャフトと、前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に固定されるバルーンと、を供給し、
前記内管シャフトは、第1層と、前記第1層の内表面側に配置される第2層と、を有し、
前記第1層は、前記外管シャフトおよび前記第2層よりも光吸収性が高い材料で構成され、前記第2層は、前記第1層よりも融点が高い材料で構成されており、
前記外管シャフトは、ポリアミド樹脂を含有する材料で形成されており、
前記第1層は、カーボンブラックを含有するポリアミド層で形成されており、
前記第2層は、フッ素樹脂層又は接着性フッ素樹脂層で形成されており、
前記外管シャフトは、無色透明であり、
前記第1層は、黒色であり、
前記第2層は、無色透明であり、
前記内管シャフトの先端部が前記外管シャフトの先端から突出するように前記内管シャフトを配置し、前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に前記バルーンを固定し、
前記内管シャフトの外表面の一部を前記外管シャフトの内表面に接触させた状態で、前記内管シャフトと前記外管シャフトの接触箇所に前記外管シャフトの外表面側から発熱用光を照射し、
前記第1層の一部が前記発熱用光を吸収して発熱することにより、前記第1層が融解し、前記外管シャフトと前記内管シャフトが融着する、バルーンカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔に形成された狭窄部等の病変部を拡張する医療装置としてバルーンカテーテルが広く知られている。
【0003】
一般的なバルーンカテーテルは、ガイドワイヤルーメンを形成する内腔を備える内管シャフトと、加圧媒体を流通させる内腔(拡張ルーメン)を備える外管シャフトと、内管シャフトおよび外管シャフトに固定されたバルーンと、を備えている。このようなバルーンカテーテルにおいて、内管シャフトは、当該内管シャフトの先端が外管シャフトの先端側から突出するように外管シャフトの内腔に挿入された状態で、外管シャフトと同軸上に配置されている。
【0004】
術者等は、バルーンカテーテルを使用した手技において、狭窄部等の病変部にバルーンカテーテルを通過させる際、バルーンカテーテルを基端側から押し込む操作を行うことがある。例えば、バルーンカテーテルは、バルーンカテーテルの先端が狭窄部等に対して突き当たった状態で上記のような押し込む操作がなされると、内管シャフトは押し込みに対する反力を受ける。これにより、内管シャフトは、外管シャフトと同軸性を保ちつつ並行な状態で移動することができず、たわんでしまうことがある。バルーンカテーテルは、内管シャフトにたわみが生じると、内管シャフトに固定されたバルーンが座屈してしまう可能性がある。また、バルーンカテーテルは、内管シャフトにたわみが生じることにより、プッシャビリティ(押し込み性)が低下する可能性がある。
【0005】
例えば、上記のような課題に関連して、下記特許文献1では、バルーンよりも基端側に離間した位置で内管シャフトの外表面と外管シャフトの内表面とを融着したバルーンカテーテルが提案されている。また、特許文献1には、内管シャフトの外表面と外管シャフトの内表面を融着する方法として、外管シャフトの外表面に超音波発振ホーンを押し付けつつ超音波を発振する超音波融着法を開示している。
【0006】
上記のように特許文献1に記載のバルーンカテーテルは、内管シャフトの外表面と外管シャフトの内表面が部分的に融着されることにより、バルーンカテーテルの先端が狭窄部等に対して突き当たった状態で押し込む操作がなされた場合においても、内管シャフトは外管シャフトとともに同軸性を保ちつつ並行な状態で移動できる。
【0007】
また、特許文献1に記載のバルーンカテーテルの製造方法では、内管シャフトの外表面と外管シャフトの内表面を融着する方法として超音波融着法を採用することにより、融着作業時に接合部以外の部分へ熱の影響が及ぶのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-149480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の製造方法であれば、製造作業を行う作業者は、超音波発振ホーンから発振される超音波の出力を調整することにより、接合部以外の部分まで熱の影響が及ぶのを抑制できる。
【0010】
しかしながら、超音波融着により内管シャフト及び外管シャフトを融着する場合、内管シャフト及び外管シャフトの融着に寄与する融着熱量は、内管シャフトと外管シャフトを接触させる力や内管シャフトと外管シャフトの間に働く摩擦抵抗に依存する。そのため、超音波融着による内管シャフト及び外管シャフトの融着は、内管シャフトと外管シャフトの接触状態や内管シャフト及び外管シャフトの材料等によっては変化する。
【0011】
このため、超音波発振ホーンを用いる超音波融着法を採用する場合、作業者は、内管シャフト及び外管シャフトの摩擦抵抗等を考慮して材料を検討する必要がある。また、作業者は、内管シャフトおよび外管シャフトを接合する際、各シャフトの接触状態を正確に調整しつつ、超音波発振ホーンから発振される超音波の出力、超音波発振ホーンを外管シャフトの外表面に押し付ける力や位置等を精密に制御しなければならない。そのため、内管シャフトや外管シャフトの形状や材料によっては、超音波融着を適用しにくい場合がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、内管シャフト及び外管シャフトをより簡便に融着できるとともに、狭窄部を通過する際などに内管シャフトにたわみが生じるのを防止できるバルーンカテーテル、および当該バルーンカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るバルーンカテーテルは、内腔を有する外管シャフトと、前記外管シャフトの内腔に配置された内管シャフトと、前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に固定されたバルーンと、を備え、前記内管シャフトは、第1層と、前記第1層の内表面側に配置された第2層と、を有し、前記外管シャフトは、前記内管シャフト側に向かって凹みつつ、前記第1層と融着されており、前記第1層は、前記外管シャフトおよび前記第2層よりも光吸収性が高い材料で構成され、前記第2層は、前記第1層よりも融点が高い材料で構成される。
【0014】
また、本発明に係るバルーンカテーテルの製造方法は、外管シャフトと、内管シャフトと、前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に固定されるバルーンと、を供給し、前記内管シャフトは、第1層と、前記第1層の内表面側に配置される第2層と、を有し、前記第1層は、前記外管シャフトおよび前記第2層よりも光吸収性が高い材料で構成され、前記第2層は、前記第1層よりも融点が高い材料で構成されており、前記内管シャフトの先端部が前記外管シャフトの先端から突出するように前記内管シャフトを配置し、前記内管シャフトの先端側と前記外管シャフトの先端側に前記バルーンを固定し、前記内管シャフトの外表面の一部を前記外管シャフトの内表面に接触させた状態で、前記内管シャフトと前記外管シャフトの接触箇所に前記外管シャフトの外表面側から発熱用光を照射し、前記第1層の一部が前記発熱用光を吸収して発熱することにより、前記第1層が融解し、前記外管シャフトと前記内管シャフトが融着する。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成したバルーンカテーテルは、その製造において、外管シャフトの外表面側から発熱用光を照射することにより、発熱用光が外管シャフト及び内管シャフトの第2層よりも光吸収性が高い内管シャフトの第1層で吸収されることにより、内管シャフトの第1層が融解し、内管シャフトと外管シャフトが融着する。そして、内管シャフトと外管シャフトを融着する際、外管シャフトの外表面および内管シャフトの内表面は、第1層の発熱による熱的な影響が及びにくいため、内管シャフトの内腔を通るガイドワイヤの摺動性が低下したり、外管シャフトの内腔にリークが発生したりすることを防止できる。
【0016】
上記のバルーンカテーテルの製造方法は、外管シャフトと内管シャフトを融着する際、外管シャフトの外表面側から発熱用光を照射して、外管シャフトの内表面と内管シャフトの外表面の接触箇所で発熱用光を吸収させる。内管シャフトの第1層は、発熱用光を吸収すると、融解して、内管シャフトと外管シャフトを融着させる。このため、バルーンカテーテルを製造する作業者は、外管シャフトおよび内管シャフトへ向けて発熱用光を照射する比較的簡単な作業により、外管シャフトの外表面および内管シャフトの内表面に熱的な影響が過度に及ぶのを防止しつつ、内管シャフトと外管シャフトを融着できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るバルーンカテーテルを示す図である。
図2図2(A)は、図1において破線部2Aで囲んだ部分の拡大断面図であり、図2(B)は、図1において破線部2Bで囲んだ部分の拡大断面図である。
図3図2(B)において破線部3Aで囲んだ部分を拡大して示す図である。
図4図2(B)に示す矢印4A-4A線に沿う断面図である。
図5】実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法を説明するための断面図である。
図6】実施形態に係るバルーンカテーテルの製造方法を説明するための断面図である。
図7】変形例に係るバルーンカテーテルのシャフトを示す断面図である。
【0018】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、シャフト100の先端側に配置されたバルーン160を生体管腔に形成された狭窄部等の病変部位において拡張させることにより、病変部位を押し広げて治療する医療装置である。
【0020】
バルーンカテーテル10は、冠動脈の狭窄部を広げるために使用されるPTCA治療用バルーンカテーテルとして構成している。ただし、バルーンカテーテル10は、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、その他消化管、尿道、耳鼻内腔、その他の臓器等の生体器官に形成された狭窄部等の病変部位の治療を目的としたバルーンカテーテルとして構成することもできる。
【0021】
以下、バルーンカテーテル10について説明する。
【0022】
図1に示すように、バルーンカテーテル10は、長尺状のシャフト100と、シャフト100の先端側に配置されたバルーン160と、シャフト100の基端側に配置されたハブ190と、を有している。
【0023】
実施形態の説明において、バルーン160を配置した側をバルーンカテーテル10の先端側とし、ハブ190を配置した側をバルーンカテーテル10の基端側とし、シャフト100が延伸する方向を軸方向とする。
【0024】
図1に示すように、バルーンカテーテル10は、シャフト100の先端部側寄りにガイドワイヤ200が出入り可能な基端開口部(ガイドワイヤポート)105が形成された、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとして構成している。
【0025】
図2(A)および図2(B)に示すように、シャフト100は、内腔(拡張ルーメン)115を備える外管シャフト110と、外管シャフト110の内腔115に配置され、かつ、ガイドワイヤ200が挿通されるガイドワイヤルーメン155を備える内管シャフト130と、を有している。
【0026】
図1および図2(B)に示すように、シャフト100は、内管シャフト130のガイドワイヤルーメン155に連通する基端開口部(内管シャフト130の基端開口部)105を有している。基端開口部105は、内管シャフト130の基端部133(内管シャフト130の第1層140および第2層150の基端部)付近に形成している。
【0027】
図2(B)に示すように、外管シャフト110は、先端側シャフト110Aと、先端側シャフト110Aの基端側に接続された基端側シャフト110Bと、を有している。
【0028】
先端側シャフト110Aおよび基端側シャフト110Bは、シャフト100の基端開口部105付近において内管シャフト130と一体的に接続(融着)している。
【0029】
先端側シャフト110Aの内腔(図示省略)および基端側シャフト110Bの内腔(図示省略)は、先端側シャフト110Aと基端側シャフト110Bとが接続された状態において、バルーン160の拡張空間167と連通する内腔(拡張ルーメン)115を形成する。
【0030】
図2(A)に示すように、内管シャフト130は、先端側に配置された先端部材180を有している。先端部材180は、ガイドワイヤ200を挿通可能な内腔181を有している。
【0031】
内管シャフト130は、先端側に先端部材180を備えることにより、バルーンカテーテル10の先端が生体管腔(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷が生じるのを防止できる。先端部材180は、例えば、柔軟な樹脂材料で形成できる。ただし、先端部材180の材質は、内管シャフト130に対して固定が可能なものであれば特に限定されない。
【0032】
図2(A)に示すように、ガイドワイヤルーメン155は、内管シャフト130の先端側で先端部材180の内腔181と連通している。また、図2(B)に示すように、ガイドワイヤルーメン155は、内管シャフト130の基端側で基端開口部105と連通している。なお、ガイドワイヤルーメン155は、後述する内管シャフト130の第2層150の内表面側に形成している。
【0033】
図2(A)に示すように、バルーン160は、内管シャフト130の先端部131に固定された先端部161と、外管シャフト110の先端部111に固定された基端部163と、バルーン160の先端部161と基端部163との間に形成された最大外径部を形成する中間部166と、を有している。また、バルーン160は、先端部161と中間部166との間に形成された先端側テーパー部164と、基端部163と中間部166との間に形成された基端側テーパー部165と、を有している。
【0034】
バルーン160は、シャフト100の外周面との間に、内腔115と連通する拡張空間167を形成している。バルーン160は、拡張空間167内に流体が流入すると、軸方向と交差する放射方向へ拡張する。
【0035】
図2(A)に示すように、内管シャフト130は、バルーン160の中間部166の軸方向の略中心位置を示す造影マーカー170を有している。造影マーカー170は、例えば、白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等により形成できる。なお、造影マーカー170は、内管シャフト130において先端側テーパー部164と中間部166との間の境界部を示す位置、および、内管シャフト130において基端側テーパー部165と中間部166との間の境界部を示す位置に配置してもよい。
【0036】
図1に示すように、ハブ190は、流体(例えば、造影剤や生理食塩水)を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能なポート191を有している。ハブ190のポート191は、例えば、チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成することができる。
【0037】
次に、外管シャフト110および内管シャフト130について詳述する。
【0038】
図2(A)および図2(B)に示すように、内管シャフト130は、第1層140と、第1層140の内表面側に配置される第2層150と、を有している。具体的には、内管シャフト130は、第1層140と、第1層140の内表面側に配置され、かつ、第1層140と同軸上に存在する第2層150と、を有している。
【0039】
なお、上記の同軸上とは、第1層140の先端側を通る軸線および第2層150の先端側を通る軸線が略平行に延在するように各層140、150が配置されていることを意味するものであり、各層140、150の軸線同士が厳密に重なる状態のみを意味するものではない。
【0040】
内管シャフト130の第1層140は、外管シャフト110および内管シャフト130の第2層150よりも光吸収性が高い材料で構成している。また、内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の第1層140よりも融点が高い材料で構成している。外管シャフト110の構成材料および内管シャフト130の構成材料の具体例は、後述する。
【0041】
図2(B)、図3図4に示すように、外管シャフト110は、内管シャフト130側(シャフト100の軸心側)に向かって凹みつつ、内管シャフト130の第1層140と融着している。なお、図3は、図2(B)において破線部3Aで囲んだ部分の拡大図、図4は、図2(B)に示す矢印4A-4A線に沿う断面図(内管シャフト130の軸方向に垂直な断面図)である。
【0042】
図3および図4に示すように、シャフト100は、外管シャフト110が内管シャフト130側に向かって凹んだ状態で融着された部分に融着部106を有している。
【0043】
融着部106は、例えば、バルーン160の基端部163から軸方向において5mm~220mmだけ基端側に離れている。
【0044】
なお、融着部106を形成する軸方向の位置、軸方向の長さ(範囲)、一つのシャフト100に形成する融着部106の個数等は、融着部106により外管シャフト110の内腔115が閉塞される等がない限り、特に制限されない。
【0045】
図4に示すように、内管シャフト130の第1層140の肉厚は、内管シャフト130の軸方向に垂直な断面において、融着部106に向かって増加している。
【0046】
内管シャフト130の第1層140は、外管シャフト110と内管シャフト130を融着した融着部106を形成する際、外管シャフト110に対してその一部が接触した状態で融着される。融着された後の内管シャフト130の第1層140には、凹部146と、肉厚増加部147と、肉厚維持部148が存在する。
【0047】
凹部146は、融着部106およびその周辺部に形成される。凹部146は、第1層140が外管シャフト110に対して接触した状態(押し付けた状態)で熱が付与されることにより、第1層140と外管シャフト110との接触箇所106a(図6を参照)からその周囲へ第1層140を構成する樹脂が流れ込むことで形成される。このため、凹部146は、融着部106が形成された後の第1層140において、最も肉厚が薄い部分を形成している。
【0048】
第1層140の肉厚増加部147は凹部146の形成に伴って第1層140の周方向側に流れ込んだ第1層140を構成する樹脂を含む。つまり、第1層140の肉厚増加部147は、第1層140の元々の肉厚(図中のt1で示す肉厚)に対して、第1層140の凹部146を形成していた部分の樹脂が流れ込んで形成されている。このため、肉厚増加部147は、第1層140の周方向に沿って第1層140の融着部106へ近付くにしたがって、肉厚が徐々に大きくなっている。
【0049】
第1層140の肉厚維持部148は、融着部106を形成する際、内管シャフト130の第1層140に付与した熱の影響がほとんど及ぼされなかった部分で形成される。つまり、肉厚維持部148は、第1層140の周方向において、肉厚増加部147よりも融着部106から離れる方向に形成されている。
【0050】
図3に示すように、外管シャフト110は、凹部116と凸部117を有している。
【0051】
外管シャフト110の凹部116は、外管シャフト110の外表面が内管シャフト130側に凹んで形成されている。外管シャフト110の凸部117は、外管シャフト110の内表面が内管シャフト130側に突出して形成されている。外管シャフト110の凹部116および凸部117は、融着部106を形成する際に、外管シャフト110と内管シャフト130とを接触させた状態で熱を付与することで形成される。
【0052】
図4に示すように、内管シャフト130の第1層140は、内管シャフト130の最外層を形成している。このため、内管シャフト130の第1層140は、外管シャフト110の内表面と内管シャフト130の第2層150の外表面との間に介在している。
【0053】
図4に示すように、内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の軸方向に垂直な断面において、内管シャフト130の第1層140よりも肉厚が薄い。
【0054】
上記の内管シャフト130の肉厚が薄いとは、融着部106を形成する前の状態における第2層150の肉厚が、融着部106を形成する前の状態における第1層140の肉厚よりも薄いことを意味する。なお、融着部106を形成する前の状態における第1層140の肉厚は、肉厚維持部148の肉厚と実質的に同一である。
【0055】
内管シャフト130の第1層140の肉厚(肉厚維持部148の肉厚)t1は、例えば、0.01~0.1mmに形成できる。また、内管シャフト130の第2層150の肉厚t2は、例えば、0.005~0.01mmに形成できる。
【0056】
なお、内管シャフト130の第2層150は、主にガイドワイヤルーメン155を挿通するガイドワイヤ200の摺動抵抗の低下に寄与するものである。このため、第2層150の肉厚t2を比較的小さく形成したとしても、バルーンカテーテル10の性能への不具合は生じない。
【0057】
次に、バルーンカテーテル10の構成材料について説明する。
【0058】
バルーン160は、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、PETなどの熱可塑性樹脂、ゴム、シリコーンエラストマーなどの熱硬化性樹脂のほか、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂またはそのブレンドで形成できる。また、バルーン160は、2層以上の多層バルーンであってもよい。なお、バルーン160は、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂またはそのブレンドで形成することが好ましい。このような場合、バルーン160は、外管シャフト110がポリアミド樹脂で形成され、かつ、内管シャフト130の第1層140がポリアミド層で形成される場合、外管シャフト110及び内管シャフト130との固定力(融着力)を高めることができる。
【0059】
先端部材180は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成できる。なお、先端部材180は、内管シャフト130の第1層140および第2層150を形成する材料よりも柔軟な材料で形成することが好ましい。
【0060】
外管シャフト110は、例えば、ポリアミド樹脂(ポリアミド系樹脂)を含有する材料で形成できる。ポリアミド樹脂としては、主鎖に酸アミド結合(-CO-NH-)を有するものであれば、特に限定されることはない。ポリアミド樹脂は、通常、好適な触媒存在下において、環構造のラクタムまたはアミノ酸の重合(単独重合)、または、ジカルボン酸およびジアミンの縮重合により製造される。
【0061】
単独で重合可能な単量体としては、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、9-アミノノナン酸、ピペリドン等が挙げられる。
【0062】
また、ジカルボン酸及びジアミンを縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミドエラストマー樹脂を用いても良い。ポリアミドエラストマー樹脂としては、例えば、ポリアミド(ハードセグメント)とポリエーテル(ソフトセグメント)とのブロック共重合体が例示でき、より具体的には、ナイロン11とポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体、ナイロン12とポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体等が挙げられる。
【0064】
ポリアミド樹脂としては、好ましくは、ポリアミド以外のセグメントを有していないものであり、例えば、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が用いられる。ポリアミド系樹脂としては、上記のうち特にナイロン11、ナイロン12(ポリアミド12)がより好ましい。
【0065】
なお、ポリアミド樹脂の末端は、カルボキシル基、アミノ基等で封止されていてもよい。上記ポリアミド樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
上記のようなポリアミド樹脂としては市販品を用いてもよく、例えば、ダイアミド(登録商標)シリーズ(L1640、L1840、L1940、L1940W、L2140、L2140W、L2121等)、ベスタミド(登録商標)シリーズ(以上、ダイセル・エボニック株式会社)、ペバックス(登録商標)シリーズ(アルケマ社)、アミラン(登録商標)シリーズ(東レ株式会社)、レオナ(登録商標)シリーズ(旭化成せんい株式会社)、UBEナイロン(登録商標)シリーズ(宇部興産株式会社)、レニー(登録商標)シリーズ(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社)、ザイテル(登録商標)シリーズ(デュポン株式会社)、グリルアミド(登録商標)、グリルフレックス(登録商標)(以上、EMSケミー・ジャパン株式会社)、リルサミド(登録商標)(アルケマ株式会社)等が例示できる。また、上述した市販品のポリアミド系樹脂は、単体で使用してもよいし、2以上のポリアミド系樹脂をブレンドして使用してもよい。
【0067】
ポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000~500000であり、より好ましくは15000~300000である。本発明において、ポリアミド系樹脂の「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用する。
【0068】
なお、外管シャフト110は、内管シャフト130の第1層140よりも光吸収性が低い限り特に限定されないが、例えば、透明(有色透明を含む)に形成できる。外管シャフト110は、外管シャフト110と内管シャフト130の第1層140とを融着する際、外管シャフト110を透過して発熱用光が内管シャフト130の第1層140に効率的に照射できるようにするために、透明(特に、無色透明)の樹脂で形成されることが好ましい。
【0069】
内管シャフト130の第1層140は、例えば、顔料を含むポリアミド層で形成できる。内管シャフト130の第1層140において好適に使用できるポリアミド樹脂やその分子量については、外管シャフト110の構成材料として説明したものを適用できる。なお、融着性の観点から、外管シャフト110と内管シャフト130の第1層140には、同じポリアミド系樹脂が用いられることが好ましい。
【0070】
内管シャフト130の第1層140に含まれる顔料は、黒、赤、緑、青、黄、紫、白などの多様な色を第1層140に付加するものである。顔料により色付けされる第1層140の色は、第1層140が外管シャフト110および第2層150よりも光吸収性が高くなる限り特に限定されないが、例えば、光吸収性を高める観点より、黒色であることが好ましい。
【0071】
顔料は、例えば、無機顔料として、カーボンブラック、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化鉄(黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄)、酸化クロム、群青(群青系青色、群青系バイオレット色)、ニッケルチタンイエロー、プルシアンブルー、ミロリーブルー、コバルトブルー、ヴィリジアン、モリブデン赤等を例示できる。また、顔料は、例えば、有機顔料として、キナクリドン系(例えば、キナクリド系レッド)、ペリレン系(例えば、ペリレンレッド)、アントラキノン系(例えば、アントラキノン系黄色)、アゾ系(例えば、縮合アゾ系黄色有機顔料)、フタロシアニン系(例えば、銅フタロシアニン、高塩化銅フタロシアニン等のハロゲン化フタロシアニン)の顔料等を例示できる。上記の顔料を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
また、顔料は、当該顔料と、当該顔料を樹脂に分散させる所定の分散剤を含む着色剤の形態で内管シャフト130の第1層140に含まれるようにしてもよい。
【0073】
内管シャフト130の第2層150は、例えば、PTEF、ETFE、PFA等のフッ素樹脂で形成できる。内管シャフト130の第2層150は、これらのフッ素樹脂を1種単独で用いても2種以上併用してもよい。また、内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の第1層140がポリアミド系樹脂で形成される場合、接着性フッ素樹脂(摩擦係数が低いフッ素樹脂の特性を有しつつ、フッ素樹脂に官能基を持たせることによりポリアミド樹脂との接合性を高めた樹脂)で形成してもよい。接着性フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン単位を有するホモポリマーまたはコポリマーであり、末端あるいは側鎖に、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。市販品としては、例えば、ネオフロンEFEP(ダイキン工業株式社)、ネオフロンCPT(ダイキン工業株式社)、LM-ETFE AH2000(旭硝子株式社)が挙げられる。内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の第1層140がポリアミド系樹脂で形成される場合、これらの接着性フッ素樹脂を1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0074】
内管シャフト130の第2層150(第2層150を形成する主原料となる樹脂)は、内管シャフト130の第1層140(第1層140を形成する主原料となる樹脂)よりも融点が10℃(度)以上高い材料であることが好ましく、12℃以上高い材料であることがより好ましい。後述する実施例で説明するように、上記のように融点の差が10℃以上あると、融着部106を形成する際、第2層150が溶融することを好適に防止できる。なお、内管シャフト130の第2層150の融点と内管シャフト130の第1層140の融点との差は、例えば、80℃以下であることが好ましい。共押出成形により第1層140及び第2層150を有する内管シャフト130を成形する場合、内管シャフト130の第2層150の融点と内管シャフト130の第1層140の融点の差が80℃以下であると、内管シャフト130を容易に形成することができる。
【0075】
内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の第1層140よりも光吸収性が低い限り特に限定されないが、例えば、無色透明に形成できる。
【0076】
第1層140および第2層150を備えた内管シャフト130は、例えば、内管シャフト130の第2層150を形成する樹脂材料を芯金に被覆した後、第2層150を形成する樹脂材料を被覆した芯金に内管シャフト130の第1層140を形成する樹脂材料を被覆する。その後、第1層140及び第2層150を有する内管シャフト130から芯金を抜去することで成形することができる。同様に、第1層140および第2層150を備えた内管シャフト130は、例えば、内管シャフト130の第1層140を構成する樹脂材料および内管シャフト130の第2層150を構成する樹脂材料のファインパウダーやコーティング用ディスパージョン等(第1層140については、さらに顔料を含む)を準備し、共押出成形により形成することもできる。なお、後述する変形例において説明する第3層450についても、第2層150を形成する樹脂材料を芯金に被覆した後、第1層140を形成する樹脂材料を被覆する前に、第2層150を形成する樹脂材料が被覆された芯金に第3層450を形成する樹脂材料を被覆することにより形成できる。同様に、後述する変形例において説明する第3層450についても、第1層140および第2層150とともに共押出成形により形成できる。
【0077】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法を説明する。
【0078】
まず、バルーンカテーテル10を製造する作業者は、外管シャフト110、内管シャフト130、およびバルーン160を供給(準備)する。
【0079】
作業者は、図5に示すように、内管シャフト130の先端部131が外管シャフト110の先端(先端開口部)から突出するように内管シャフト130を配置し、内管シャフト130の先端側と外管シャフト110の先端側にバルーン160を固定(例えば、融着)する。
【0080】
なお、外管シャフト110(先端側シャフト110A、基端側シャフト110B)および内管シャフト130は、内管シャフト130が外管シャフト110の先端から突出しつつ、シャフト100の基端開口部105付近で互いに固定(融着)した状態で準備してもよいし、両シャフト110、130同士を固定していない状態で準備し、その後、両シャフト110、130同士を固定して、バルーン160の固定作業に移るようにしてもよい。また、先端部材180は、バルーン160を固定する作業の前に、図5に示すように、内管シャフト130の先端に固定しておくことが好ましい。
【0081】
次に、作業者は、図6に示すように、内管シャフト130の外表面の一部を外管シャフト110の内表面に接触させた状態で、内管シャフト130と外管シャフト110の接触箇所(内管シャフト130の外表面のうち外管シャフト110の内表面と接触する境界面を含む箇所)106aに、外管シャフト110の外表面側から発熱用光Lを照射する。内管シャフト130の外表面と外管シャフト110の内表面の接触は、例えば、内管シャフト130の内表面側に配置した所定の治具(例えば、図6に示す芯金300)等を使用して内管シャフト130を外管シャフト110側に押し付けつつ、外管シャフト110の外表面側に配置した所定の治具により外管シャフト110を内管シャフト130側に押し付けることで行うことができる。
【0082】
発熱用光Lは、内管シャフト130の第1層140を溶融させることが可能であれば特に限定されないが、例えば、ファイバーレーザー(波長1070nm)、YAGレーザー(波長1064nm)、レーザーダイオード(808nm、840nm、940nm)などを用いることができる。
【0083】
外管シャフト110の外表面側から照射された発熱用光Lは、外管シャフト110を透過して、接触箇所106aに照射される。なお、上記の透過とは、発熱用光Lが外管シャフト110に完全に吸収されないことを意味するものではなく、例えば、外管シャフト110に過度な溶融が生じない程度に外管シャフト110で発熱用光の一部が吸収されてもよい。
【0084】
内管シャフト130の第1層140の一部(接触箇所106aおよびその周辺部)は、発熱用光Lを吸収して発熱し、溶融する。第1層140の融解した部分は、内管シャフト130と外管シャフト110を融着する融着部106を形成する(図4を参照)。
【0085】
前述したように、外管シャフト110は、内管シャフト130の第1層140よりも光吸収性が低い材料で構成している。このため、外管シャフト110は、外管シャフト110の外表面側から照射された発熱用光Lの吸収性が比較的小さく、発熱用光Lによる融解が生じ難い。内管シャフト130の第2層150は、外管シャフト110と同様に、内管シャフト130の第1層140よりも光吸収性が低い材料で構成している。このため、内管シャフト130の第2層150は、発熱用光Lの吸収性が比較的小さく、発熱用光Lによる融解が生じ難い。さらに、内管シャフト130の第2層150は、第1層140よりも融点が高い材料で構成しているため、発熱用光Lや第1層140の発熱の影響により第2層150が融解するのを好適に防止できる。
【0086】
図4に示すように、シャフト100に融着部106が形成されると、内管シャフト130の第1層140には、融着部106付近に凹部146が形成され、凹部146から周方向の一定の範囲には凹部146に向けて肉厚が増加する肉厚増加部147が形成される。また、凹部146および肉厚増加部147から周方向へ一定の距離だけ離れた位置には、融着部106の形成の有無に関わらず、第1層140の肉厚が維持された肉厚維持部148が形成される。
【0087】
作業者は、融着部106を形成した後、例えば、ハブ190やストレインリリーフ部等を取り付けることにより、バルーンカテーテル10を製造できる。
【0088】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10およびバルーンカテーテル10の製造方法の作用を説明する。
【0089】
本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、内腔115を有する外管シャフト110と、外管シャフト110の内腔115に配置された内管シャフト130と、内管シャフト130の先端側と外管シャフト110の先端側に固定されたバルーン160と、を備えている。また、内管シャフト130は、第1層140と、第1層140の内表面側に配置された第2層150と、を有している。外管シャフト110は、内管シャフト130側に向かって凹みつつ、第1層140と融着されており、第1層140は、外管シャフト110および第2層150よりも光吸収性が高い材料で構成されている。そして、第2層150は、第1層140よりも融点が高い材料で構成されている。
【0090】
上記のように構成したバルーンカテーテル10は、その製造において、外管シャフト110の外表面側から発熱用光を照射することにより、発熱用光が外管シャフト110及び内管シャフト130の第2層150よりも光吸収性が高い内管シャフト130の第1層140で吸収されることにより、内管シャフト130の第1層140が融解し、内管シャフト130と外管シャフト110が融着する。そして、内管シャフト130と外管シャフト110を融着する際、外管シャフト110の外表面および内管シャフト130の内表面(第2層150の内表面)は、第1層140の発熱による熱的な影響が及びにくいため、内管シャフト130のガイドワイヤルーメン155を通るガイドワイヤ200の摺動性が低下したり、外管シャフト110の内腔115にリークが発生したりすることを防止できる。
【0091】
また、内管シャフト130の第2層150は、内管シャフト130の軸方向に垂直な断面において、内管シャフト130の第1層140よりも肉厚が薄い。このため、内管シャフト130の第2層150の肉厚が大きくなって、ガイドワイヤルーメン155の径が狭められることを防止できる。
【0092】
また、内管シャフト130の第2層150は、第1層140よりも融点が10℃以上高い材料で構成している。このため、内管シャフト130の第2層150は、発熱用光や第1層140の発熱の影響により第2層150が溶融することをより一層好適に防止できる。
【0093】
また、内管シャフト130の第1層140は、内管シャフト130の最外層を形成している。このため、バルーンカテーテル10を製造する作業者は、外管シャフト110の外表面側から照射した発熱用光を第1層140へより確実に到達させることができ、内管シャフト130の第1層140を容易に融解させることができる。
【0094】
また、内管シャフト130の第1層140の肉厚は、内管シャフト130の軸方向に垂直な断面において、外管シャフト110と内管シャフト130の融着部106に向かって増加する。このため、バルーンカテーテル10は、融着部106付近において応力集中が生じた際に、融着部106付近を起点にして第1層140の破断等が生じるのを防止できる。
【0095】
本実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法は、外管シャフト110と、内管シャフト130と、内管シャフト130の先端側と外管シャフト110の先端側に固定されるバルーン160と、を供給する。また、内管シャフト130は、第1層140と、第1層140の内表面側に配置される第2層150と、を有しており、第1層140は、外管シャフト110および第2層150よりも光吸収性が高い材料で構成され、第2層150は、第1層140よりも融点が高い材料で構成されている。また、内管シャフト130の先端部131が外管シャフト110の先端から突出するように内管シャフト130を配置し、内管シャフト130の先端側と外管シャフト110の先端側にバルーン160を固定する。また、内管シャフト130の外表面の一部を外管シャフト110の内表面に接触させた状態で、内管シャフト130と外管シャフト110の接触箇所106aに外管シャフト110の外表面側から発熱用光を照射し、第1層140の一部が発熱用光を吸収して発熱することにより、第1層140が融解し、外管シャフト110と内管シャフト130が融着する。
【0096】
上記のバルーンカテーテル10の製造方法は、外管シャフト110と内管シャフト130を融着する際、外管シャフト110の外表面側から発熱用光を照射して、外管シャフト110の内表面と内管シャフト130の外表面の接触箇所106aで発熱用光を吸収させる。内管シャフト130の第1層140は、発熱用光を吸収すると、融解して、内管シャフト130と外管シャフト110を融着させる。このため、バルーンカテーテル10を製造する作業者は、外管シャフト110および内管シャフト130へ向けて発熱用光を照射する比較的簡単な作業により、外管シャフト110の外表面および内管シャフト130の内表面に熱的な影響が過度に及ぶのを防止しつつ、内管シャフト130と外管シャフト110を融着できる。
【0097】
次に、上述した実施形態の変形例を説明する。なお、変形例において特に言及しない部材や製造工程等については、前述した実施形態と同様のものとすることができ、その説明を省略する。
【0098】
図7は、変形例に係るバルーンカテーテルのシャフト400を示す図である。図7は、シャフト400の軸直交断面図(図4に対応する断面図)である。
【0099】
変形例に係るシャフト400は、内管シャフト130の構成が前述した実施形態と相違する。
【0100】
具体的には、内管シャフト130は、第1層140と第2層150との間に第3層450を有している。第3層450は、第2層150に対する接合性が第1層140よりも高い材料で構成している。なお、第3層450は、第2層150に対する接合性が第1層140よりも高く、かつ、第1層140に対する接合性が第2層150と同等又は第2層150よりも高い材料で構成していることが好ましい。
【0101】
第1層140および第2層150は、例えば、前述した実施形態において例示した材料と同様の材料で形成できる。
【0102】
第3層450は、例えば、前述した第1層140の材料として例示したポリアミド樹脂や、その他のポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂(例えば、ポリアミドエラストマー樹脂であるPebax等)で形成できる。なお、第3層450の構成材料は、第1層140よりも顔料の含有量が少ない。
【0103】
第3層450は、例えば、第1層140と同様に顔料等により所定の色が付されたものであってもよいし、透明(有色透明や無色透明を含む)であってもよい。ただし、第3層450は、第1層140よりも光吸収性が低い材料で形成されることが好ましい。このように第3層450が形成される場合、第3層450は、第2層150への熱の伝達を抑制し、融着部106を形成する際に第2層150の内表面が溶融するのを好適に防止できる。
【0104】
第3層450の肉厚t3は、例えば、第1層140の肉厚t1および第2層150の肉厚t2よりも大きく形成できる。第3層450が設けられる場合、内管シャフト130の第1層140の肉厚(肉厚維持部148の肉厚)t1は、例えば、0.01~0.08mmに形成でき、内管シャフト130の第2層150の肉厚t2は、例えば、0.005~0.050mmに形成でき、第3層450の肉厚t3は、例えば、第1層140の肉厚t1および第2層150の肉厚t2よりも大きくなるように形成できる。
【0105】
以上説明したように、本変形例に係る内管シャフト130は、第1層140と第2層150との間に第3層450を有している。第3層450は、第2層150に対する接合性が第1層140よりも高い。このため、第2層150と第3層450との間で剥離(剥がれ)等が生じるのを好適に防止できる。
【0106】
次に、本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行った。
【0107】
<第1層と第2層の実施例>
本実施例では、外管シャフトと第1層および第2層の二つの層を有する内管シャフトとを準備し、実施形態で説明した融着部が形成されるように発熱用光を照射した。発熱用光は、YAGレーザー発振器による光レーザーを用いた。融着部を形成した後、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じたか否かを確認した。
【0108】
実施例および比較例として、以下の外管シャフトおよび内管シャフトを準備した。
【0109】
(実施例1)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、外径0.44mmの芯金に第2層(フッ素樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した後、被覆された第2層の樹脂材料の外表面にテトラエッチ処理を施した。その後、テトラエッチ処理が施された第2層の樹脂材料の外表面に第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した。そして、第1層を構成する樹脂材料及び第2層を構成する樹脂材料が被覆された芯金を各層から抜去することで、内径0.44mmで、肉厚0.07mmの2層チューブを成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.06mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、フッ素樹脂層(PTFE)で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約320~330℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が10℃以上高い。第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0110】
(実施例2)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、外径0.44mmの芯金に第2層(フッ素樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した後、被覆された第2層の樹脂材料の外表面にテトラエッチ処理を施した。その後、テトラエッチ処理が施された第2層の樹脂材料の外表面に第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した。そして、第1層を構成する樹脂材料及び第2層を構成する樹脂材料が被覆された芯金を各層から抜去することで、内径0.44mmで、肉厚0.07mmの2層チューブを成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.06mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、フッ素樹脂層(ETFE)で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約260~270℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が10℃以上高い。第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0111】
(実施例3)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)および第2層(接着性フッ素樹脂層)を有する2層チューブを共押出成形し、内径0.44mmで、肉厚0.07mmのチューブ形状に成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.06mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、接着性フッ素樹脂層(ネオフロンEFEP)で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約190~200℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が10℃以上高い。なお、第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0112】
(比較例1)
実施例1において、内管シャフトの第1層を構成するポリアミド層に顔料を含有させていないものを比較例1として準備した。つまり、比較例1は、第1層および第2層の各層に顔料が含有されてない。
【0113】
(比較例2)
実施例2において、内管シャフトの第1層を構成するポリアミド層に顔料を含有させていないものを比較例2として準備した。つまり、比較例2は、第1層および第2層の各層に顔料が含有されてない。
【0114】
(比較例3)
実施例3において、内管シャフトの第1層を構成するポリアミド層に顔料を含有させていないものを比較例3として準備した。つまり、比較例3は、第1層および第2層の各層に顔料が含有されてない。
【0115】
(比較例4)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)および第2層(マレイン化変性ポリオレフィン樹脂層)を有する2層チューブを共押出成形し、内径0.44mmで、肉厚0.07mmのチューブ形状に成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.06mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、マレイン化変性ポリオレフィン樹脂層(MODIC_H503(三菱化学株式会社))で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約100~130℃である。つまり、第2層の構成材料は第1層よりも融点が低い。なお、第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0116】
(比較例5)
比較例4において、内管シャフトの第1層を構成するポリアミド層に顔料を含有させていないものを比較例5として準備した。つまり、比較例5は、第1層および第2層の各層に顔料が含有されてない。
【0117】
(融着結果)
表1に示すように、実施例1、実施例2および実施例3では、第1層と第2層が良好に融着されていることを確認できた。また、実施例1、実施例2、および実施例3においては、第2層の融点が第1層の融点よりも高い(10℃以上高い)ため、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていないことを確認できた。
【0118】
比較例4は、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていた。これは、第2層の融点が第1層の融点よりも低いことが原因であると考えられる。
【0119】
比較例1、比較例2、比較例3および比較例5は、融着部の形成を確認できなかった。これは、第1層および第2層の両方に顔料が含有されていないため、内管シャフトの一部が光レーザーを吸収し、内管シャフトの一部に発熱が起こらなったことが原因であると考えられる。
【0120】
【表1】
【0121】
上記結果より、内管シャフトの第1層が外管シャフトおよび内管シャフトの第2層よりも光吸収性が高い材料で構成され、かつ、内管シャフトの第2層が内管シャフトの第1層よりも融点が高い材料で構成されることにより、光レーザーにより内管シャフト及び外管シャフトを融着でき、かつ、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じることを防止できることを確認できた。
【0122】
<第1層、第2層、第3層の実施例>
本実施例では、外管シャフトと、第1層、第2層、第3層の三つの層を有する内管シャフトとを準備し、実施形態で説明した融着部が形成されるように発熱用光を照射した。なお、特に説明のない条件等については、前述した第1層と第2層の二つの層を有する内管シャフトの実施例と同様である。
【0123】
(実施例1)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、外径0.44mmの芯金に第2層(フッ素樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した後、被覆された第2層の樹脂材料の外表面にテトラエッチ処理を施した。その後、テトラエッチ処理が施された第2層の樹脂材料の外表面に第3層(ポリアミド樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した後、第3層の樹脂材料の外表面に第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)を形成する樹脂材料を被覆した。そして、第1層を構成する樹脂材料、第2層を構成する樹脂材料及び第3層を構成する樹脂材料が被覆された芯金を各層から抜去することで、内径0.44mmで、肉厚0.07mmの3層チューブを成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.015mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、フッ素樹脂層(PTFE)で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約320~330℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が10℃以上高い。第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
(5)内管シャフトの第3層は、ポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.045mmである。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の融点は、約178℃である。また、第3層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0124】
(実施例2)
実施例1において、第2層の構成材料をフッ素樹脂(ETFE)にしたものを実施例2として準備した。第2層の構成材料の融点は、約260~270℃である。
【0125】
(実施例3)
実施例1において、第3層の構成材料をPebax7033(アルケマ株式会社)にしたものを実施例3として準備した。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の構成材料の融点は、約170~178℃である。また、第3層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0126】
(実施例4)
実施例1において、第3層にカーボンブラック(顔料)を含有させたものを実施例4として準備した。つまり、実施例2は、第1層および第3層に顔料が含有されている。
【0127】
(実施例5)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)、第2層(接着性フッ素樹脂層)、第3層(ポリアミド樹脂層)を有する3層チューブを共押出成形し、内径0.44mmで、肉厚0.07mmのチューブ形状に成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.015mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、接着性フッ素樹脂層(ネオフロンETFP)で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約190~200℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が10℃以上高い。第2層の構成材料には顔料を含有させていない。
(5)内管シャフトの第3層は、ポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.045mmである。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の融点は、約178℃である。また、第3層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0128】
(実施例6)
実施例5において、第3層の構成材料をPebax7033(アルケマ株式会社)にしたものを実施例6として準備した。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の構成材料の融点は、約170~178℃である。また、第3層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0129】
(実施例7)
実施例5において、第3層にカーボンブラック(顔料)を含有させたものを実施例7として準備した。つまり、実施例7は、第1層および第3層に顔料が含有されている。
【0130】
(比較例1)
実施例1において、第1層に顔料を含有させていないものを比較例1として準備した。つまり、比較例1は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されてない。
【0131】
(比較例2)
実施例5において、第1層に顔料を含有させていないものを比較例2として準備した。つまり、比較例2は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されてない。
【0132】
(比較例3)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)、第2層(ポリオレフィン樹脂層)、第3層(マレイン化変性ポリオレフィン樹脂層)を有する3層チューブを共押出成形し、内径0.44mmで、肉厚0.07mmのチューブ形状に成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.045mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、ポリオレフィン樹脂層(高密度ポリエチレン(HB530、三菱化学株式会社))で、肉厚は0.01mmである。また、第2層の融点は、約90~140℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が低い。第2層にはカーボンブラック(顔料)を含有させた。
(5)内管シャフトの第3層は、マレイン化変性ポリオレフィン層(MODIC_H503(三菱化学株式会社))で、肉厚は0.015mmである。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の融点は、約100~130℃である。つまり、第3層は第1層よりも融点が低い。なお、第3層には顔料を含有させていない。
【0133】
(比較例4)
比較例3において、第2層に顔料を含有させていないものを比較例4として準備した。つまり、比較例4は、第1層に顔料が含有されており、第2層、第3層には顔料が含有されてない。
【0134】
(比較例5)
比較例3において、第1層に顔料を含有させていないものを比較例5として準備した。つまり、比較例5は、第3層に顔料が含有されており、第1層、第2層には顔料が含有されてない。
【0135】
(比較例6)
比較例3において、第1層および第2層に顔料を含有させていないものを比較例6として準備した。つまり、比較例6は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されてない。
【0136】
(比較例7)
(1)外管シャフトは、ポリアミド樹脂(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))を押出成形し、内径0.76mmで、肉厚0.06mmのチューブ形状に成形した。なお、成形された外管シャフトは、無色透明であった。
(2)内管シャフトは、第1層(顔料を含むポリアミド樹脂層)、第2層(マレイン化変性ポリオレフィン樹脂層)、第3層(ポリアミド樹脂層)を有する3層チューブを共押出成形し、内径0.44mmで、肉厚0.07mmのチューブ形状に成形した。
(3)内管シャフトの第1層は、第1層のポリアミド樹脂層の固形分全体に対して0.25重量%のカーボンブラック(顔料)を含有するポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.045mmである。なお、内管シャフトの第1層は、黒色であった。また、第1層の構成材料の融点は、約178℃である。
(4)内管シャフトの第2層は、マレイン化変性ポリオレフィン層(MODIC_H503(三菱化学株式会社))で、肉厚は0.01mmである。なお、内管シャフトの第2層は、無色透明であった。また、第2層の融点は、約100~130℃である。つまり、第2層は第1層よりも融点が低い。なお、第3層には顔料を含有させていない。
(5)内管シャフトの第3層は、ポリアミド層(ナイロン12(ダイアミド_L1940W、ダイセル・エボニック株式会社))で、肉厚は0.015mmである。なお、内管シャフトの第3層は、無色透明であった。また、第3層の融点は、約178℃である。また、第3層の構成材料には顔料を含有させていない。
【0137】
(比較例8)
比較例7において、第1層に顔料を含有させていないものを比較例8として準備した。つまり、比較例8は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されてない。
【0138】
(融着結果)
表2に示すように、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6および実施例7では、第1層、第2層及び第3層が良好に融着されていることを確認できた。また、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6および実施例7では、第2層の融点が第1層の融点よりも高い(10℃以上高い)ため、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていないことを確認できた。
【0139】
さらに、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6および実施例7では、第3層が第1層と第2層の間で熱の伝達を抑制する緩衝層として機能することにより、第2層に変形が生じるのをより好適に防止できるのを確認できた。また、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6は、第3層に顔料が含有されていないため、第3層が発熱用光を吸収し難い。このため、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6は、実施例4及び実施例7よりも第2層の変形をより好適に防止できることを確認できた。
【0140】
比較例1および比較例2は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されていないため、融着部が形成されていなかった。
【0141】
比較例3および比較例4は、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていた。これは、第2層及び第3層の融点が第1層の融点よりも低いことが原因であると考えられる。また、比較例3は、第2層に顔料が含有されていたため、変形(融解)がより顕著に生じていることを確認できた。
【0142】
比較例5は、第1層と第2層の間に配置される第3層に顔料が含有されているため、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていた。なお、比較例5では、内管シャフトの内周面を形成する第2層の融点が第1層の融点よりも低く、かつ、第3層の融点と同程度である。そのため、比較例5は、融着部が形成されるように発熱用光を照射した際、第3層の熱が第2層に伝達し、第2層を変形させたと推察できる。
【0143】
比較例6は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されていないため、融着部が形成されていなかった。
【0144】
比較例7は、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じていた。これは、第2層の融点が第1層の融点よりも低いことが原因であると考えられる。
【0145】
比較例8は、第1層、第2層、第3層の各層に顔料が含有されていないため、融着部が形成されていなかった
【0146】
【表2】
【0147】
上記結果より、内管シャフトの第1層と第2層の間に第3層が設けられることにより、リークやガイドワイヤの摺動性の低下の要因となり得る変形(融解)が第2層に生じることをより効果的に防止できることを確認できた。
【0148】
以上、実施形態を通じて本発明に係るバルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルの製造方法を説明したが、本発明は説明した実施形態で説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0149】
例えば、実施形態において説明したバルーンカテーテルの構造や部材の配置等は適宜変更することができ、図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、特に説明されなかったその他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。同様に、バルーンカテーテルの製造方法に関する各工程や製造に使用される器具等についても適宜変更し得る。
【0150】
本出願は、2017年5月15日に出願された日本国特許出願第2017-096740号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0151】
10 バルーンカテーテル、
100、400 シャフト、
105 基端開口部、
106 融着部、
106a 接触箇所、
110 外管シャフト、
115 内腔、
116 凹部、
117 凸部、
130 内管シャフト、
140 第1層、
146 凹部、
147 肉厚増加部、
148 肉厚維持部、
150 第2層、
155 ガイドワイヤルーメン、
160 バルーン、
200 ガイドワイヤ、
450 第3層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7