(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】連結解除プーリ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/36 20060101AFI20220701BHJP
F16F 15/12 20060101ALI20220701BHJP
F16F 15/123 20060101ALI20220701BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
F16H55/36 H
F16F15/12 S
F16F15/123 Z
F16F1/12 A
F16F1/12 L
(21)【出願番号】P 2019524905
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2017079357
(87)【国際公開番号】W WO2018091550
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリン,エルベ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/149816(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3140677(JP,U)
【文献】特開2001-317567(JP,A)
【文献】特開2015-113810(JP,A)
【文献】特表2013-525707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16F 15/12
F16F 15/123
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸(AX)を備える連結解除プーリ(100、100'、100'')であって、前記プーリは、
-ホイールリムを第1の伝動要素に接続するベルトを受け入れるための第1の部位(11)と、前記第1の部位(11)の軸伸長方向、すなわち前記プーリの前記長手軸(AX)により画定される方向、に配置される第2の部位(12)とを備えるホイールリム(1)と、
-第2の伝動要素に強固に接続されるハブ(2)であって、前記伝動要素のうちの一方は駆動側であり、他方は被駆動側である、ハブ(2)と、
-前記ホイールリムの前記第2の部位(12)の
内周(110)の下に配置される第1の部分(31)と、前記第1の部分(31)から前記長手軸(AX)に沿って広がり、弾性であり、複数の長手方向スロット(F1、F2、F3)と、複数の前記スロットのうちの1つによって互いから分離される複数の部分(P1、P2、P3)とを含む少なくとも1つの円筒スカート(35、36)の形状で示される第2の部分(32)とを含むリングギヤ(3、3')であって、前記長手軸(AX)を中心として前記ホイールリム(1)および前記ハブ(2)に対して回転することができる、リングギヤ(3、3')と、
-前記リングギヤ(3)を前記ホイールリム(1)に対して駆動するための手段(5、50、13、14、33、34)と、
-弾性変形可能な要素(4)、例えば前記ハブ(2)に中心合わせされたねじりばねであって、その第1の端部(41)が前記ハブ(2)に固定され、その第2の端部(42)が前記リングギヤ(3)に固定される、弾性変形可能な要素(4)と、を含み、
前記少なくとも1つの円筒スカート(35、36)は、さらに、前記弾性変形可能な要素(4)に対向して配置され、よって、前記弾性変形可能な要素(4)は、前記少なくとも1つの円筒スカート(35、36)と接触することができる、
連結解除プーリ(100、100'、100'')。
【請求項2】
前記複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロット(F1、F2、F3)は、前記少なくとも1つの円筒スカート(35、36)の円周で測定された場合に、前記円筒スカート(35、36)の少なくとも1つの部分(P1、P2、P3)の幅より完全に小さい幅を有する、請求項1に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項3】
前記複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロット(F1、F2、F3)は、前記少なくとも1つの円筒スカート(35、36)の円周で測定された場合に、前記円筒スカート(35、36)の少なくとも1つの部分(P1、P2、P3)の幅以上の幅を有する、請求項
1に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項4】
前記リングギヤ(3、3')は、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)もしくはこれらのアロイ等のプラスチックまたは熱可塑性エラストマ(TPE)から選択される材料で製造される、請求項1から3のいずれか1項に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項5】
前記リングギヤ(3、3')の前記第2の部分(32)は、2つの同心円筒スカート(35、36)の形態であり、前記弾性変形可能な要素(4)は、前記2つの円筒スカートの間に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項6】
前記ホイールリム(1)と前記ハブ(2)との間の第1の相対的回転方向への、前記ホイールリム(1)による前記リングギヤ(3)の駆動を保証するための前記手段(13、14、33、34)は、
-前記第2の部位(12)の位置で、前記ホイールリム(1)の内周(110)に配置される少なくとも1つの停止部(13、14)と、
-前記第1の部分(31)の位置で、前記リングギヤ(3、3')の外周(330)に配置される少なくとも1つの停止部(33、34)と、を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載のプーリ(100)。
【請求項7】
-前記ホイールリム(1)の内周は、少なくとも1つの第2の停止部(14)を含み、
-前記リングギヤ(3)の外周は、少なくとも1つの第2の停止部(34)を含む、請求項6に記載のプーリ(100)。
【請求項8】
前記ホイールリム(1)と前記ハブ(2)との間の第1の相対的回転方向への、前記ホイールリム(1)による前記リングギヤ(3)の駆動を保証するための手段(5)は、一方向クラッチ(5)、例えばねじりばね、を含み、その一端部(51)は、前記リングギヤ(3)に固定され、その残りの部分(52)は、前記ホイールリム(1)の前記第2の部位(12)の
内周(110)と前記リングギヤ(3’)の
前記第1の部分(31)の外周(330)との間に取り付けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載のプーリ(100')。
【請求項9】
前記ホイールリム(1)と前記ハブ(2)との間の第1の相対的回転方向への、前記ホイールリム(1)による前記リングギヤ(3)の駆動を保証するための手段(5)は、一方では前記ホイールリム(1)の前記第2の部位(12)に力によって取り付けられ、他方では前記リングギヤ(3)の前記第1の部分(31)の周りに取り付けられる一方向フリーホイール(50)を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のプーリ(100')。
【請求項10】
前記ホイールリム(1)と前記ハブ(2)との間に配置される少なくとも1つのベアリング(6)を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項11】
前記少なくとも1つのベアリング(6)は、前記ハブ(2)と接触する半径方向に延びる面(61)を含む、請求項10に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項12】
前記少なくとも1つのベアリング(6)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二硫化モリブデン(MoS
2)を配合したポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合したポリアミド(PA)もしくはポリオキシメチレン(POM)から選択されるプラスチック材料、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合した外層で被覆される金属もしくは金属合金の内層の何れかで製造される、請求項10または11に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【請求項13】
前記ホイールリム(1)に固定的に取り付けられる、かつ好ましくは前記リングギヤ(3、3')と接触する、カバー(8)が設けられる、請求項1から12のいずれか1項に記載のプーリ(100、100'、100'、100'')。
【請求項14】
前記リングギヤの前記第1の部分(31)は、前記リングギヤの前記第2の部分(32)より剛性が高い、請求項1から13のいずれか1項に記載のプーリ(100、100'、100'')。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結解除プーリの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(D1)には、連結解除プーリが提案されている。
【0003】
特許文献1(D1)のプーリは、第1の伝動要素(例えば、エンジンに接続されるベルト)に強固に接続されるホイールリムと、第2の伝動要素(例えば、オルタネータのシャフト)に、具体的にはハブを介して強固に接続されるベルと、ベルの内部で中心合わせされたねじりばねとを備え、前記伝動要素の一方は、駆動要素であり、もう一方は、被駆動要素である。
【0004】
ホイールリムは、ホイールリムとベルとの間の第1の相対的回転方向へねじりばねと協働するように設計される駆動停止部を含む。
【0005】
ベルは、ホイールリムとベルとの間の第1の相対的回転方向におけるホイールリムとベルとの間の回転角(α1)を制限するための第1のベル停止部を有する。このベルは、ホイールリムとベルとの間の第2の相対的回転方向におけるホイールリムとベルとの間の回転角(α4)を制限するための第2のベル停止部も含み、この第2の回転方向は、ホイールリムとベルとの間の第1の相対的回転方向とは反対である。
【0006】
より精密に言えば、ねじりばねは、第1の端部と、第2の端部とを含み、これらは、第1の相対的回転方向において、ねじりばねの第1の端部がベルと協働しかつねじりばねの第2の端部がホイールリムの駆動停止部と協働して、ねじりばねの第2の端部が第1のベル停止部に当接されるまでベル上へばねを閉鎖するように配置される。よって、ベル停止部の角度位置は、ホイールリムとベルとの間のこの第1の相対的回転方向における、ばねの第1の端部からの最大角変位(α1)を画定する。
【0007】
この状況は、例えば、駆動側のホイールリムが、例えば始動段階の間にベルトがエンジンに接続されることにより、ねじりばねの閉鎖およびこれに次ぐ当接によって被駆動側のベルを駆動する際に生じる。
【0008】
【0009】
図1は、特許文献1(D1)に記載されるプーリの動作原理を示している。より精密に言えば、
図1は、ホイールリムとベルとの間で伝達されるトルクの発生をホイールリムとベルとの間の角度の発生の関数として表している。角度の原点は、ねじりばね上の応力とねじりばね上の応力の欠如との間の限界位置に対応する。
【0010】
角度がマイナスである部分において、トルクは、ねじりばねがベル内で閉鎖するにつれて増加し、よって、トルクがホイールリムとベルとの間、延ては2つの伝動要素間を通ることが可能にされる。最大角変位(α1)に達すると、次には当接が、非常に高いトルク通過を保証する。
【0011】
減速の間、かつ最大角変位(α1)である対応する当接位置から、ホイールリムおよびベルは、第2の相対的回転方向へ回転し、ねじりばねは、ベル内で解放されてそのニュートラル位置に至る。このニュートラル位置から、ホイールリムとベルとの間のトルクは、ゼロである(残留摩擦を除く)。その減速レベルに依存して、ホイールリムは、次に、ホイールリムの駆動停止部または場合によりホイールリムの別の停止部が第2のベル停止部と接触するまで、ベルに対して、その過程(フリーホイールモード)を続けることができる。
【0012】
それから、別の最大角変位(α4)に達する。
【0013】
これは、
図1の右側の、一定のトルク領域とこの他の最大角変位(α
4)における当接の効果とが観察される部分に示されている。
【0014】
特許文献1(D1)で提案されているデバイスは、完全に機能する。
【0015】
しかしながら、ホイールリムの、ベルに対する加速は、重要であり得る。よって、最大角変位(α1)での当接は、プーリの寿命に影響を与え得る衝撃を繰り返し発生させる。他の最大角変位(α4)についても、同様の状況が生じる可能性がある。これは特に、エンジン始動段階の間にエンジン燃焼の最初のサイクルに関連する加速および減速が非常に大きい所定のエンジン車両に当てはまる。
【0016】
これらの繰り返される衝撃は、伝動要素上の、例えばオルタネータ上のプーリを緩める可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的の1つは、上述の欠点のうちの少なくとも1つが存在しない連結解除プーリを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的に沿って、本発明は、長手軸を備える連結解除プーリを提案し、前記プーリは、
-ホイールリムを第1の伝動要素に接続するベルトを受け入れるための第1の部位と、第1の部位の軸伸長方向、すなわちプーリの長手軸により画定される方向、に配置される第2の部位とを備えるホイールリムと、
-第2の伝動要素に強固に接続されるハブであって、前記伝動要素のうちの一方は、駆動側であり、もう一方は、被駆動側である、ハブと、
-ホイールリムの第2の部位の下に配置される第1の部分と、第1の部分から前記長手軸に沿って広がる少なくとも1つの円筒スカートの形状で示される第2の部分とを含むリングギヤであって、前記長手軸を中心としてホイールリムおよびハブに対して回転することができるリングギヤと、
-リングギヤをホイールリムに対して駆動するための手段と、
-弾性変形可能な要素、例えばハブに中心合わせされたねじりばね、であって、その第1の端部がハブに固定され、その第2の端部がリングギヤに固定される、弾性変形可能な要素と、を含み、
前記少なくとも1つの円筒スカートは、さらに、弾性変形可能な要素に対向して配置され、よって、弾性変形可能な要素は、前記少なくとも1つの円筒スカートと接触することができる、
【0020】
本発明によるプーリは、単独または組み合わせて取り入れられる以下の特徴、すなわち、
-リングギヤの少なくとも1つの円筒スカートは、弾性であること、
-リングギヤの少なくとも1つの円筒スカートは、複数の長手方向スロットを含み、その結果、複数のスロットのうちの1つにより互いから分離される複数の部分を含むこと、
-複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロットは、少なくとも1つの円筒スカートの円周で測定した場合に、円筒スカートの少なくとも1つの部分の幅より完全に小さい幅を有すること、
-複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロットは、少なくとも1つの円筒スカートの円周で測定した場合に、円筒スカートの少なくとも1つの部分の幅以上の幅を有すること、
-リングギヤは、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドもしくはこれらのアロイ等のプラスチックまたは熱可塑性エラストマから選択される材料で製造されること、
-リングギヤの第2の部分は、2つの同心円筒スカートの形態であり、2つの円筒スカートの間に、弾性変形可能な要素が配置されること、
-ホイールリムとハブとの間の第1の相対方向回転への、ホイールリムによるリングギヤの駆動を保証するための手段は、ホイールリムの内周に配置される少なくとも1つの停止部を第2の部位の位置に、かつリングギヤの外周に配置される少なくとも1つの停止部を第1の部分の位置に含むこと、
-ホイールリムの内周は、少なくとも1つの第2の停止部を含み、リングギヤの外周は、少なくとも1つの第2の停止部を含むこと、
-ホイールリムとハブとの間の第1の相対的回転方向への、ホイールリムによるリングギヤの駆動を保証するための手段は、一方向クラッチ、例えばねじりばね、を含み、その一端部は、リングギヤに固定され、その残りの部分は、ホイールリムの第2の部位の下およびリングギヤの周りの双方に取り付けられること、
-ホイールリムとハブとの間の第1の相対的回転方向への、ホイールリムによるリングギヤの駆動を保証するための手段は、一方ではホイールリムの第2の部位に力によって取り付けられ、もう一方ではリングギヤの第1の部分の周りに取り付けられる一方向フリーホイールを含むこと、
-プーリは、ホイールリムとハブとの間に配置される少なくとも1つのベアリングを含むこと、
-少なくとも1つのベアリングは、ハブと接触している半径方向に延びる面を含むこと、
-少なくとも1つのベアリングは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、二硫化モリブデン(MoS2)を配合したポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンを配合したポリアミドもしくはポリオキシメチレンから選択されるプラスチック材料、またはポリテトラフルオロエチレンを配合した外層で被覆される金属もしくは金属合金の内層の何れかで製造されること、
-プーリは、ホイールリムに固定的に取り付けられる、かつ好ましくはリングギヤと接触するカバーを提供すること、
のうちの少なくとも1つも有し得る。
【0021】
下記のような添付図面を参照して行なう以下の説明において、本発明は、よりよく理解され、かつ本発明の他の目的、利点および特徴もより明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2-10】本発明による、及び様々な変形例における、連結解除プーリの一実施形態を表す。
【
図11-18】本発明による、及び様々な変形例における、連結解除プーリの第2の実施形態を表す。
【
図19-20】本発明による連結解除プーリの第3の実施形態を表す。
【
図21-22】様々な変形例による、本発明の第1の実施形態の機能図を表す。
【
図23-24】様々な変形例による、本発明の第2の実施形態の機能図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2~
図10を参照し、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0024】
本発明による連結解除プーリ100は、第1の伝動要素(不図示、例えば、車両エンジンのシャフトに接続される駆動ベルト)に強固に接続されるホイールリム1を有する。ホイールリム1は、外側に、第1の伝動要素との連結を可能にするベルト、この場合はpoly V(登録商標)型ベルト、を受けいれるための第1の部位11と、第1の部位11の軸伸長方向、すなわち、プーリの長手軸AXにより画定される方向に配置される第2の部位12とを備えている。
【0025】
ホイールリム1は、第2の部位12に、ホイールリム1の内周に配置される少なくとも1つの停止部13、14も有する。このような停止部13、14は、内側停止部とも呼ばれる。有利には、
図2~
図10に示すように、ホイールリムは、常にホイールリム1の第2の部位12であって、ホイールリム1の内周110に配置される少なくとも2つの停止部13、14を備えている。
【0026】
プーリ100は、第2の伝動要素(例えば、被駆動オルタネータシャフト)に強固に接続されるハブ2も有する。
【0027】
伝動要素の一方は、駆動側であり、他方は、被駆動側である。
【0028】
プーリ100は、リングギヤ3、30も含む。
【0029】
リングギヤ3、30は、ホイールリムの第2の部位12の下に配置される第1の部分31と、第1の部分31から前記長手軸AXに沿って延びる、少なくとも1つの円筒スカート35、36の形態の第2の部分32とを含む。より正確には、
図2~
図8において、第2の部分32は、2つの同心円状の円筒スカート35、36の形態である。一方で、先の図に示されているプーリ100の一変形例を表す
図9および
図10では、1つの円筒スカート35のみが設けられている。
【0030】
リングギヤの第1の部分31は、このリングギヤの第2の部分32より剛性が高いことに留意すべきである。これは、添付の図面に示されるように、2つの部分31、32の各々の幾何学的形状に関係し、具体的には、第2の部分32が、第1の部分31におけるその固定部位とは反対側に位置する自由端を有するという事実に関係する。
【0031】
リングギヤ3、30は、第1の部分31に、リングギヤ3の外周330に配置される少なくとも1つの停止部33、34も含む。このような停止部33、34は、外側停止部とも呼ばれる。有利には、
図2~
図10に示すように、リングギヤ3は、常にリングギヤ3の第1の部分31に、リングギヤの外周330に配置される少なくとも2つの停止部33、34を備えている。
【0032】
プーリ100は、第1の端部41でハブ2に、第2の端部42でリングギヤ3に固定される弾性変形可能な要素4、この場合は一例としてねじりばね4、も備えている。
【0033】
ねじりばね4は、ハブ2の内側で中心合わせ(心出し)されている。この目的のため、ハブ2は、伝統的に連結解除プーリ用と考えられているあらゆるハブのように、ねじりばね4の中心合わせのための環状部位ZAを含み、この環状部位ZAは、2つの壁によって、すなわちハブ2の半径方向内側の壁P1と、半径方向外側の壁P2とによって画定されている。
【0034】
さらに、リングギヤ3の円筒スカート35、36は、ねじりばね4とハブ2との間に挿入される。具体的には、2つの円筒スカート35、36が設けられる場合、ねじりばね4は、有利には、2つの円筒スカート35、36の間に配置され、2つの円筒スカート35、36自体は、ハブ2の2つの壁P1とP2との間に配置される。
【0035】
2つの円筒スカート35、36が設けられる場合、ねじりばね4のハブ2およびリングギヤ3、30への固定は、埋込みによって、または、ハブ2およびリングギヤ3、30内に設けられる保持形態部によって行われてもよい。
図2~
図8において、ねじりばね4の端部42は、曲がった形の端部42、すなわち半径方向に延びる端部42を収容するという目的に合わせて設けられたリングギヤのハウジング331内へ埋め込むことによって取り付けられる。
図9および
図10では、ねじりばねの端部42が曲がっておらず、よってリングギヤ3の保持形状部(
図9および10では不可視)に接触する。
【0036】
2つの円筒スカート35、36が設けられる場合、ねじりばね4は、2つの円筒スカート35、36間に配置される。
【0037】
円筒スカート35、36は、弾性変形可能な要素4に対向して配置される。
【0038】
リングギヤ3は、ハブ2に中心合わせされる。リングギヤ3、30は、ハブ2に対し、プーリ100の長手軸AXを中心にして回転することもできる。ねじりばね4は、ハブ2とリングギヤ3との間の弾性的連結を提供する。
【0039】
また、リングギヤ3は、リングギヤ3がホイールリム1に対し、プーリ100の長手軸AXを中心にして回転できるように、ホイールリム1の下に取り付けられ、より詳細には、リングギヤ3、30の第1の部分31が、ホイールリムの第2の部位12の下に配置される。これは、リングギヤ3、30の外周330とホイールリム1の内周110との間に隙間を設けることにより、容易に達成することができる。
【0040】
しかしながら、ホイールリム1によるリングギヤ3、30の駆動は、ホイールリム1の少なくとも1つの内側停止部13、14およびリングギヤ3、30の少なくとも1つの外側停止部33、34により形成される機械的リンクである手段を設けることによって保証される。ホイールリム1によるリングギヤ3、30の駆動は、実際に、これらの停止部によって保証することができる。動作の間、この駆動は、駆動要素に加わる応力に依存して、必ずしも使用されない。これについては、具体的には
図7および
図8を参照して、後により詳細に説明する。
【0041】
プーリ100は、ホイールリム1とハブ2との間に配置される少なくとも1つのベアリング6も含む。
【0042】
ベアリング6は、ハブ2に対するホイールリム1の相対回転を保証する。この目的のため、ベアリング6は、有利には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二硫化モリブデン(MoS2)を配合したポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合したポリアミド(PA)またはポリオキシメチレン(POM)から選択されるプラスチック材料で製造される。あるいは、ベアリング6は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配合層で被覆される金属または金属合金層によって作製される。これらの材料は、低い摩擦係数を可能にする。
【0043】
ベアリング6は、(AX軸に沿って)長手方向に延びかつハブ2と接触する半径方向の内面62と、長手方向に延びかつホイールリム1と接触する半径方向の外面63とを含む。効果的には、ベアリング6は、半径方向に延びる、すなわち面62および63に対し略垂直である、かつハブ2と接触する面61も含む。この面61は、ベアリング6を所定位置に取り付けて保持することをより容易にする。
【0044】
プーリ100は、カバー8を含む。カバー8は、ベルト受領部位11とは反対側でホイールリム1を覆うためのものである。有利には、カバー8は、リングギヤ3、30に接触して、より正確には、カバー8に面するリングギヤ3、30の側面37に接触して取り付けられる。
【0045】
カバー8には、封止プラグ9が取り付けられる。
【0046】
最後に、プーリ100は、密封を保証するために、封止プラグ9とは反対側でホイールリム1の側方開口OLに入る封止ジョイント10を含む。
【0047】
リングギヤに関して、いくつかの変形例を考えることができる。
【0048】
したがって、
図4に、リングギヤ3のその少なくとも1つの円筒スカート35、36が弾性であるリングギヤ3を示している。この場合、2つの同心スカート35、36は、弾性である。したがって、第2の部分32(円筒スカート)が弾性変形可能に製造されるという理由で、リングギヤの第1の部分31は、このリングギヤの第2の部分32よりはるかに剛性が高いことは理解される。
【0049】
この弾力性を得るために、幾つかの可能性が実現可能である。
図4において、リングギヤ3の前記少なくとも1つの円筒スカート35、36、この場合の各円筒スカート35、36は、各々複数の長手方向スロットF1、F2、F3、F’1、F’2、F’3と、スロットの1つにより必然的に互いから分離される複数の部分P1、P2、P3、P’1、P’2、P’3とを含む。スロットF1は、ねじりばね4の端部42がハウジング331まで通過することを可能にするために必要とされる。しかしながら、このスロットF1は、他のスロットとの組合せにより、各円筒スカート35、36に所望される弾性を提供することも可能にする。
図4のリングギヤ3は、
図2、
図3、および
図6~
図8に示すものでもある。
【0050】
しかしながら、少なくとも1つの弾性円筒スカート35、36の存在は、本発明の態様において必須ではない。
【0051】
したがって、弾力性のない、リングギヤ30の少なくとも1つの円筒スカート35、36を設けることは、可能である。これは
図5に示される。この
図5において、ねじりばね4の曲がった端部42がハウジング331まで通過することを可能にするスロットF1を除き、スロットは存在しない。
【0052】
当然ながら、ねじりばねの端部42が曲がっていなければ、非弾性のリングギヤ30を考慮する際にこのようなスロットF1は不要である。これは、
図9および
図10において観察することができる。しかしながら、
図9および
図10の変形例の場合に、円筒スカートが
図4に示すリングギヤ3の円筒スカート35に一致するリングギヤを提供することは可能であり、その場合、各スロットF1、F2、F3は、関係するスカートに弾性挙動を提供するためだけに使用される。別の変形例では、
図4のリングギヤ3と同一に設けることもできる。
【0053】
次に、弾性変形可能な要素4が縮小するように動作する場合の(
図2~
図8、弾性変形可能な要素4に曲がった端部が存在する場合)プーリ100の動作を、一方で、リングギヤ3に関し、
図21の非弾性支持円筒スカートである場合と、他方で、リングギヤ3に関し、非弾性円筒スカートである場合について説明する。
【0054】
説明のために、ホイールリム1が駆動側であり、ハブ2が被駆動側である事例について述べる。
【0055】
図21(非弾性円筒スカートの場合)は、ホイールリム1とハブ2との間で伝達されるトルクの発生を、ホイールリム1とハブ2との間に形成される角度の関数として示す。角度の原点(ゼロ角度)は、弾性変形可能な要素4上の応力と、弾性変形可能な要素4上の応力の不存在との間の限界位置(後述するように、少なくともある範囲の値に渡る)に対応する。
【0056】
ゼロ角度位置から、ホイールリム1は、時計回りに回転される(
図7における任意の慣例、連結モード)。これは、例えばエンジン始動時の加速状況に対応し得る。
【0057】
ホイールリム1の内側停止部13、14は、次に、その面13、14aで、リングギヤ3、30の外側停止部33、34と接触状態にされる。ホイールリム1は、次に、リングギヤ3、30を時計回りに回転させる。この場合はねじりばねである弾性変形可能な要素4は、リングギヤ3、30およびハブ2の双方へ固定されていることから、リングギヤ3は、次に、弾性変形可能な要素4を介してハブ2を同じく時計回りの方向へ駆動する。これは、
図21に示すように、ゼロ角度とR1角度との間の負の角度の領域で、トルクの上昇をもたらす。次に、トルクは、(ゼロ角度において)ゼロからC
0へ変化するが、これは、ハブ2とベアリング6との間の摩擦トルクに対応する。次に、これは、弾性変形可能な要素4が応力を受けるにつれて直線的に増加する。
【0058】
弾性変形可能な要素4の変形が十分に大きければ、これは、円筒スカート35、36の一方、この場合は最小直径を有する円筒スカート、すなわち円筒スカート36と接触する(この例では、弾性変形可能な要素4が、曲がった端部42が存在する
図2~8に示す縮小モードで動作することに起因する)。この接触は、
図21の角度R1によって規定される。
【0059】
角度R1より上では、弾性変形可能な要素4と円筒スカート36との接触により追加のトルクが生じることから、トルクは、角度R1の下より急速に増加する。
【0060】
この動作は、点R2まで続く。点R1から点R2までは、弾性変形可能な要素と円筒スカート36との接触面積が単に増加する。例えば、弾性変形可能な要素4がねじりばねである場合がこれに当てはまるが、その理由は、この場合、角度(絶対値)が増加するにつれて円筒スカート36に接触するねじりばね4のコイル数が増すためである。
【0061】
点R2において、弾性変形可能な要素4は、それ以上変形することができず、円筒スカート36によって完全にブロックされる。例えば、弾性変形可能な要素4がねじりばねである場合、これは、ばねコイルの全ての内面44が円筒スカート36に接触している状況に対応する。点R2から、ホイールリム1からハブ2へ向かうトルクは、リングギヤ3の第1の部分31を通過し、かつ弾性変形可能な要素4および円筒スカート36の双方により形成されるその時点で剛性であるアセンブリを通過する。この点R2は、
図7に示すプーリ100の構成に対応する。
【0062】
先行技術(文献D1)のプーリとは異なり、明確な当接は存在しない。
【0063】
さらに、文献D2(DE102015205612)と比較すると、弾性変形可能な要素4と円筒スカートとの接触は、リングギヤのホイールリムに対する駆動を保証するための手段に対する如何なる応力も伴うものではない。これは、リングギヤの第1の部分31がその第2の部分32より剛性であるという事実に起因する。
【0064】
したがって、プーリ100の寿命は、向上する。
【0065】
プーリ100が減速されると(例えば、エンジン始動中のエンジン停止または減速段階)、
図21の曲線は、反対方向へ斜行してゼロ角度に達する。このゼロ角度へ戻る間、内側停止部13、14および外側停止部33、34は、ハブ2と、自然とその平衡位置へ戻ろうとする弾性変形可能な要素4との抵抗トルクの作用下で接触状態のままである。
【0066】
減速が十分な強さであれば、正の角度領域となる。
【0067】
より正確には、ゼロ角度から、内側停止部13、14および外側停止部33、34は、もはや接触せず、ホイールリム1は、リングギヤ3と比較して、反時計回り(
図8の矢印F2)である相対回転運動を行なう。
【0068】
ゼロ角度と角度R3との間、トルクは、弾性変形可能な要素4上に応力が存在しないことから一定である。しかしながら、このトルクはゼロではなく、ベアリング6に対するホイールリム1の摩擦に、(ホイールリム1に固定される)カバー8とリングギヤ3の面37との摩擦を加えたものから成る。ゼロ角度を通過すると、トルクは、値C0からC1へ変化する(カバー/リングギヤの摩擦がベアリングと関連する摩擦に加わることから、│C1│>C0)。リングギヤ3とカバー8との接触力は、弾性変形可能な要素4の軸方向の予圧によって発生する。この予圧は、所望されるC1レベルに従って調整することができる。次に、カバー8とリングギヤ3の面37との摩擦が、ゼロ角度と角度R30との間でベアリング/ハブの摩擦のみをプレスする場合より迅速なハブ2の減速を可能にすることは、留意されるべきである。これは、ホイールリム1に対するハブ2の速度超過により生じるノイズをこうして制限できるという理由で、特に興味深い。
【0069】
当然ながら、カバー8がリングギヤ3に接触していなければ、このトルクC1は、C0に等しくなる。カバー/リングギヤの摩擦による寄与は、全くなくなる。
【0070】
角度R3からは、内側停止部13、14と外側停止部33、34とが、ホイールリム1の内側停止部の面13b、14bを介して再び接触する。
【0071】
この接触は、弾性変形可能な要素4の応力下に置かれることに助けられて、ホイールリム1の反時計回りの動きを減速させる。
図21では、これは、角度R3とR4との間のトルク減少をもたらす。実際に、この応力の影響下で、弾性変形可能な要素4は、拡大するよう変形して、より大きい直径の円筒スカート、すなわち円筒スカート35と接触するに至る。弾性変形可能な要素4間の接触面積は、角度R3とR4との間で増加し、よってトルクがますます増加する(制動効果)。
【0072】
角度R4は、弾性変形可能な要素4が円筒スカート35によりブロックされている状況に対応する。これは、特に、弾性変形可能な要素4がねじりばねである場合に当てはまり、角度R4は、ばねコイルの全ての外面43が円筒スカート35と接触している状況に対応する。角度R4において、弾性変形可能な要素4および円筒スカート35は、トルクが通る剛性アッセンブリを形成する。
【0073】
図22(弾性円筒スカートの場合)は、ホイールリム1とハブ2との間で伝達されるトルクの発生を、ホイールリム1とハブ2との間に形成される角度の関数として示す。角度の原点(ゼロ角度)は、弾性変形可能な要素4上の応力と、弾性変形可能な要素4上の応力の不存在との間の限界位置(後述するように、少なくともある範囲の値に渡る)に対応する。
【0074】
この場合、上述の動作を部分的に転用することができる。
【0075】
具体的には、
図22を
図21と比較すると、
-角度R10は、角度R1に対応し、
-角度R30は、角度R3に対応し、
-角度R20は、弾性変形可能な要素がそれ以上変形され得ない位置である限り、角度R2に対応し、かつ、
-角度R40は、弾性変形可能な要素がそれ以上変形され得ない位置である限り、角度R4に対応する。
【0076】
しかしながら、円筒スカート35、36が弾性であるという事実は、弾性変形可能な要素4がこれらの円筒スカート35、36の一方と接触しているときに円筒スカート35、36を変形させることを可能にする。
【0077】
したがって、角度R50は、弾性変形可能な要素4と円筒スカート36との接触に対応し、かつ角度R50と角度R20との間の領域は、円筒スカート36の変形領域に対応する。よって、角度R20は、円筒スカート36が、弾性変形可能な要素4の作用により押しつけられるその変形に起因して、ハブ2に、より具体的にはハブ2の壁P1に接触している位置に対応する。円筒スカート36がハブ2に接触すると、円筒スカート36、あるいは実際には弾性変形可能な要素は、それ以上変形し得ない。
【0078】
したがって、角度R60も、弾性変形可能な要素4と円筒スカート35との接触に対応し、かつ角度R60と角度R40との間の領域は、円筒スカート35の変形領域に対応する。よって、角度R40は、円筒スカート35が、弾性変形可能な要素の作用により押しつけられるその変形に起因して、ハブ2に、より具体的にはハブ2の壁P2に接触している位置に対応する。円筒スカート35がハブ2に接触すると、円筒スカート35、あるいは実際には弾性変形可能な要素4は、それ以上変形し得ない。
【0079】
しかしながら、
図9および
図10の変形例によれば、プーリ100が、連結モードにおいて拡大形態で動作できることは、想起されるべきである。
【0080】
この場合、プーリ100の動作は、負の角度領域において、
図21および
図22を参照して先に述べたものと同様である。しかしながら、拡大するよう動作する弾性変形可能な要素4は、直径が大きい方の円筒スカート、すなわち円筒スカート35に接触する。
【0081】
正のコーナ領域では、直径が小さい方の円筒スカート、すなわち円筒スカート36が、非弾性挙動(
図21)または弾性挙動(
図22、例えばスロットの存在)で設けられる場合、
図21および
図22に類似する動作が生じることも予想され得る。そして、この可能性が考慮される場合には、弾性変形可能な要素4の端部をハブ2およびリングギヤ3に埋め込むことが必要である。
【0082】
円筒スカート35、36が弾性であれば、これらは、先に説明したように変形する。
【0083】
先に説明した動作(縮小中に連結モードが実行される
図21または
図22、または拡大中に連結モードが実行される等価のもの)では、2つの円筒スカート35、36が使用される。
【0084】
第1の実施形態に対応するプーリ100のための2つの円筒スカート35、36の存在は、具体的には、これが
図1の従来技術とは異なり、この従来技術の2つの明確な停止部を回避できるという理由で、特に効果的である。
【0085】
しかしながら、文献D1に開示されている先行技術の機能を単に部分的に改良しようとする場合には、ただ1つの円筒スカート35、36だけが設けられ得る。例えば、負の角度側でのみ制動または減衰効果を得るために、円筒スカート36と共働する、連結モードにおいて縮小するよう動作する弾性変形可能な要素4と共に作動することは、可能である。
【0086】
図11~
図18を参照し、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0087】
第1の実施形態と比較した変更は、駆動がホイールリム1とリングギヤ3’、30’、300’との間で行われる点である。したがって、この第2の実施形態において、プーリ100’は、ホイールリム1が内側停止部を有しておらず、リングギヤ3’、30’、300’が外側停止部を有していない形態である。
【0088】
このプーリ100’の場合、ホイールリム1とリングギヤ3’、30’、300’との間の駆動は、一方向クラッチ5によって行われる。
【0089】
一方向クラッチ5は、例えばリングギヤ3’、30’、300’内に作製されるハウジング332内への挿入または埋込みによって、リングギヤ3’、30’、300’に固定される端部51を含む。したがって、プーリ100’のリングギヤ3’、30’、300’は、一方向クラッチ5の存在に適応できるように、プーリ100のリングギヤ3、30と比較して僅かに変更されている(
図13~15)。それでもなお、リングギヤ3’、30’、300’の第1の部分31は、このリングギヤの第2の部分32より剛性が高い。一方向クラッチ5の残りの部分52は、ホイールリム1の第2の部位12の下およびリングギヤ3’、30’、300’の周囲の双方に、すなわち、ホイールリム1の第2の部位12の内周110とリングギヤ3’、30’、300’の第1の部分31の外周330との間に取り付けられる。この部分52の全体形状が円筒であることは、留意されるべきである。
【0090】
効果的には、一方向クラッチ5の他端部53は、自由端にされ、よってリングギヤ3’、30’、300’またはホイールリム1の何れにも取り付けられない。この場合、一方向クラッチ5は、その自然状態において、この一方向クラッチ5の直径がホイールリム1の内径より大きいように選択され、これにより、一方向クラッチ5がホイールリム1とリングギヤ3’、30’、300’との間に挿入されるとき一方向クラッチ5の予圧が保証される。
【0091】
上記は、ねじりばね4の端部42が曲がっている
図11~
図15および
図17および
図18(第1の実施形態の
図2~
図8に類似)に当てはまるが、ねじりばねの端部42が曲がっていない
図16の変形例(第1の実施形態の
図9および
図10の変形例に類似)にも当てはまる。
【0092】
ねじりばね4の端部42が曲がっている場合(例えば、
図11~
図15参照)、一方向クラッチ5の端部51は、効果的には、かつ添付の図面に示されるように、アームによって示される。この端部またはアーム51は、効果的には、より良いトルク伝達を提供するためにねじりばね4の端部42に接触する。より正確には、一方向クラッチの端部51は、ねじりばね4の曲がった端部42の側面420に接触する(これは、例えば
図11および
図13に例示され得る)。
【0093】
これに対して、この端42が曲がっていない場合(
図16)、必然的に一方向クラッチ5の端部51との接触はない。
【0094】
効果的には、一方向クラッチ5の端部51の、軸伸長方向に配置される、すなわちプーリ100’の長手軸AXにより画定される方向に配置されるコーナ60が設けられ得ることは、留意されるべきである。このコーナ60は、トルクの伝達に際してアーム51を所定位置に保持することをより容易にする。コーナ60は、アーム51が、このアーム51を受け入れるためにリングギヤ3’、30’、300’’内に設けられるハウジング332内により良好に保持されることを可能にする。具体的には、コーナ60は、トルクが加えられた際にアーム51が曲がることを防止する。
【0095】
コーナ60により実行される機能が他の方法でも達成され得ることは、留意されるべきである。実際に、
図17および
図18に表されているように、カウンタリングギヤ3’bと、リングギヤ3’a自体の、カウンタリングギヤ3’bと協働することになる相補形状340との実装を考慮してもよい。プーリの取り付けに関して、この設計は、コーナ60を含むものに比べて容易である。
【0096】
一方向クラッチ5がねじりばね4と直列に、これらを接触状態に保つリングギヤ3’、30’、300’を介して連結されることは、理解される。
【0097】
第1の実施形態と同様に、リングギヤ3’、30’、300’についても幾つかの設計が可能である。
【0098】
図13のリングギヤ3’を、
図4のリングギヤ3と比較してみる。これらの2つのリングギヤの唯一の違いは、
図13では、一方向クラッチ5のアーム51用のハウジング332の存在および円筒スカート35の不存在である。実際に、
図21において後述するように、一方向クラッチが使用されることから、円筒スカート35は不要である。
【0099】
図14のリングギヤ30’は、円筒スカート26の幾何学的形状が
図13のリングギヤ3’と異なる。実際に、
図13では、
図4のように、複数のスロットF1、F2、F3は、少なくとも1つの円筒スカート36の円周で測定される場合、円筒スカート36の少なくとも1つの部分P’1、P’2、P’3の幅より完全に小さい幅を有する。これに対して、
図14における複数のスロットは、円筒スカート36の円周で測定される場合、円筒スカート36の少なくとも1つの部分P’1、P’2、P’3の幅以上の幅を有する。この
図14において、スロットの幅は、
図14の円筒スカート36が
図13の円筒スカートを反転させたもののように見えるものである。
【0100】
図14に提案されているような円筒スカートは、第1の実施形態のプーリ100において、円筒スカート36、円筒スカート35、または円筒スカート35、36双方の何れかを形成するために使用される可能性もあることは、留意されるべきである。
【0101】
第2の実施形態によるプーリ100’の他の構成要素は、第1の実施形態の構成要素と同一であり、詳述を省く。これは、具体的には、カバー8およびベアリング6、並びに、前記または場合により各円筒スカート35、36が弾性変形可能な要素4に対向して配置されるという事実に該当する。
【0102】
リングギヤ3’、30’は、共に弾性の円筒スカート36を有するリングギヤである。
【0103】
最後に、
図15に表されている変形例において、リングギヤ300’は、その円筒スカート36が弾性でないリングギヤである。この設計は、
図5のものに類似するが、一方向クラッチ5のアーム51用のハウジング332が存在し、直径が大きい方の円筒スカート、すなわち円筒スカート35がない。
【0104】
より大きい直径を有する円筒スカート35の存在がプーリ100’において必須でない場合であっても、これは、プーリ100’の動作における直接関係しないけれども、設けられ得ることは、留意されるべきである。とはいえ、これにより、リングギヤ3のハブ2における中心合わせを保証することができる。
【0105】
図23(非弾性円筒スカート26、すなわち具体的には
図15によるもの、の場合)は、ホイールリム1とハブ2との間で伝達されるトルクの発生を、ホイールリム1とハブ2との間に形成される角度の関数として示す。角度の原点(ゼロ角度)は、弾性変形可能な要素4上の応力と、弾性変形可能な要素4上の応力の不存在との間の限界位置に対応する。
【0106】
引き続き、ホイールリム1が駆動側、ハブ2が被駆動側である事例について考察する。ホイールリムが(慣例により、例えば加速に連動して時計回りに)回転されると、一方向クラッチ5に応力がかかり、次に、リングギヤ300’がホイールリム1により、次に弾性変形可能な要素4を介してハブ2により駆動されることが可能になる。すると、前記手段に伝達されるトルクが増加する。これは、
図23における、ゼロ角度と角度R’1との間の負の角度に対応する。
【0107】
角度R’1において、弾性変形可能な要素4は、円筒スカート36と接触している。
【0108】
角度R’1を超えると、弾性変形可能な要素4がそれ以上変形され得ない角度R’2に到達するまで、この接触の結果として追加のトルクが加わる。
【0109】
ホイールリム1が減速すると、
図23の曲線は、角度R’2からゼロ角度まで移動し、一方向クラッチ5は、それ以降作動されない。
【0110】
減速が十分に大きければ、
図23は、トルクが一定である正の角度範囲において示される。実際に、この領域では、一方向クラッチにもはや応力が印加されず、よって、リングギヤ300’とホイールリム1との間に相対運動が存在する(フリーホイールモード)。先に説明したように、この定トルクは、ベアリング/ハブ摩擦成分と、カバー8とリングギヤとの摩擦に関連する成分とを含み、合計でトルクC
1が提供される。
【0111】
図24(弾性円筒スカート26、すなわち具体的には
図13または
図14によるもの、の場合)は、ホイールリム1とハブ2との間で伝達されるトルクの発生を、ホイールリム1とハブ2との間に形成される角度の関数として示す。この場合もやはり、角度の原点(ゼロ角度)は、弾性変形可能な要素4上の応力と、弾性変形可能な要素4上の応力の不存在との間の限界位置に対応する。
【0112】
図24を
図22と比較すると、
-角度R’10は、角度R’1に対応し、
-角度R’20は、弾性変形可能な要素がそれ以上変形され得ない位置である限り、角度R’2に対応することが分かる。
【0113】
一方で、
図24は、弾性変形可能な要素4と円筒スカート36との接触に対応する角度R’30の存在を示している。角度R’30からR’20までの間は、円筒スカート36とハブ2との、この場合はハブ2の壁P1との接触に対応する角度R’20に至るまでの円筒スカート36の弾性変形に関連する動作に対応する。
【0114】
上述の動作説明は、弾性変形可能な要素がホイールリム1とハブ2との間のトルクの通過を保証するために縮小モードで動作する事例に関するものであった。
【0115】
当然ながら、より大きな直径の円筒スカート、すなわち円筒スカート35が用いられ、弾性変形可能な要素4が拡大するよう作動される場合でも(
図16参照)、動作は同様のものとなる。
【0116】
図19および
図20を参照し、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0117】
第1の実施形態と比較して、変更点は、駆動がホイールリム1とリングギヤ3との間で行われることである。したがって、この第3の実施形態において、プーリ100’’は、ホイールリム1が内側停止部を有しておらず、リングギヤ3’、30’、300’が外側停止部を有していないものである。
【0118】
このプーリ100’の場合、ホイールリム1とリングギヤとの間の駆動は、一方向フリーホイール50によって行われる。
【0119】
第2の実施形態と比較すると、一方向フリーホイール50は、一方向クラッチ5の代わりに、ホイールリム1によるリングギヤ3の駆動を保証する。
【0120】
より正確には、一方向フリーホイール50は、ホイールリム1の第2の部位12内に、ホイールリム1の内周110に当接し、かつ一方で、リングギヤ3の第1の部分31の周りに、強固に取り付けられる。一方向フリーホイール50の内壁510は、複数のローラ520を含み、これらのローラ520により、ホイールリム1とリングギヤ3との間の第1の相対的回転方向への、ホイールリム1によるリングギヤ3の駆動を保証し(連結モード)、かつ第1の相対的回転方向とは反対の、ホイールリム1とハブ2との間の第2の相対的回転方向へ、リングギヤ3をホイールリム1に対して自由にさせること(フリーホイールモード)が可能である。この場合もやはり、リングギヤの第1の部分31は、このリングギヤの第2の部分32より剛性が高い。
【0121】
したがって、結果は、第2の実施形態のプーリ100’の一方向クラッチに関して説明したことと同じである。
【0122】
また、
図23および
図24の動作曲線は、一方向フリーホイール50を備えたプーリ100’のこの事例にも転用可能である。
【0123】
最後に、プーリの寿命を向上させるのであれば、連結モードにおいて縮小(疲労)するよう作動する弾性変形可能な要素4を使用することが好ましい点は、留意されるべきである。一方で、この場合、製造は、より複雑になる。
【0124】
また、連結モードにおいて拡大するよう作動する弾性変形可能な要素4を使用するように選択することもできる。疲労に関する効果は劣るものの、費用が下がる。
【0125】
この作動方法に関してどのような選択がなされるにせよ、ここで提案する発明が何れの場合もプーリの寿命を向上させるという事実に変わりはない。
【0126】
最後に、考慮される実施形態が何であれ、リングギヤは、例えば、以下の材料、すなわち、
-ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはこれらのアロイ等のプラスチック(前記プラスチック材料は、配合型であっても、配合型でなくてもよい)、
-熱可塑性エラストマ(TPE)、
-アルミニウム、青銅、真鍮、鋼等の金属、およびその合金、
から選択される材料で製造されてもよい。