(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】電気生理測定用電極キャリア
(51)【国際特許分類】
A61B 5/25 20210101AFI20220701BHJP
A61B 5/266 20210101ALI20220701BHJP
【FI】
A61B5/25
A61B5/266
(21)【出願番号】P 2019534873
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084215
(87)【国際公開番号】W WO2018115349
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-29
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519224971
【氏名又は名称】プロリラ ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】PROLIRA B.V.
【住所又は居所原語表記】Padualaan 8 3584 CH Utrecht The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】ソウホカ テッサ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デュルメン マーリーズ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-051505(JP,U)
【文献】特表2004-512864(JP,A)
【文献】特表2016-537068(JP,A)
【文献】米国特許第07206630(US,B1)
【文献】特開2014-008166(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/01
A61B 5/05- 5/0538
A61B 5/24- 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性
の基板と、
基
板表面に取り付けられ
た複数の接触パッドであって、各接触パッドが、電気生理測定用の電極を収容するための導電
性手段
を含む
、複数の接触パッドと、
前記基板に取り付けられて、
前記接触パッドと信号処理装置とを通信可能に接続する第1の接続手段と
、
を具備
する電気生理測定用の電極キャリアであって、
前記第1の接続手段は、
前記基板表面上に、前記複数の接触パッドを電気的に接続するため
の複数の導電性トラックを備え、前記導電性トラックのそれぞれは少なくとも1つの前記接触パッドに対応し、
前記基板は、前記接触パッドを収容するための少なくとも2つの非
伸長可能部分を有し、
前記少なくとも2つの非
伸長可能部分は、
伸長可能部分によって相互接続されており、
前記
伸長可能部分
の各々は、可撓性材料
からなる少なくとも1つの反り可能部材を含み、
前
記反り可能部材
のうちの少なくとも1つは、前記導電
性トラックの
うちの少なくとも1つを収容し、
前記少なくとも1つの反り可能部材は、前記基板のV字型部分を含み、
前記
伸長可能部分は、それぞれV字型部分を有する4つの反り可能部材
を含み、該4つの反り可能部材はX字型に配置され
ており、
前記4つの反り可能部材は、2つの
直列接続された反り可能部材の2つの並列接続されたストリングにグループ化され、
前記2つの直列接続され
た反り可能部材の中央部分が相互接続部材を用いて相互接続され
ている、ことを特徴とす
る電極キャリア。
【請求項2】
前記基板が可撓性材料の単一シートから形成されている
、請求項1記載の電極キャリア。
【請求項3】
前記基板
の前記非
伸長可能部分
のうちの少なくとも1つには2つの接触パッドが設けられ、前記基板の少なくとも1つの他の前記非
伸長可能部分には1つの接触パッドが設けられている、請求項1又は2記載の電極キャリア。
【請求項4】
前記接触パッド
には、電気生理測定のための取り外し可能な電極を取り付けるための第2の接続手段
が設けられている、請求項1乃至3のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項5】
前記接触パッドのうちの少なくとも1つは、電気生理測定のための1つ以上の電極ライニングを備える、請求項1乃至4のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項6】
前記少なくとも1つの接触パッド
には乾電極ライニング
が設けられている、請求項5記載の電極キャリア。
【請求項7】
前記少なくとも1つの接触パッド
には湿電極ライニング
が設けられている、請求項6記載の電極キャリア。
【請求項8】
前記少なくとも1つの接触パッドが導電性ゲル
ライニング又は導電性ヒドロゲルライニングを含む、請求項5記載の電極キャリア。
【請求項9】
前記導電性ゲル
ライニング又は導電性ヒドロゲルライニングが接着材料を含む、請求項8記載の電極キャリア。
【請求項10】
導電性ゲル又は導電性ヒドロゲルは粘着性であり、及び/又は高タック性を有する、請求項9記載の電極キャリア。
【請求項11】
前記少なくとも1つの接触パッドは、前記電極ライニングを露出させるための開口部を備えた接着層を周囲に有する、請求項5乃至10のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項12】
少なくとも1つの電極ライニングを覆う
導電性の接着層をさらに含む、請求項5乃至10のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項13】
前記接
着層が、取外し可能なカバー層によって覆われている、請求項11又は12記載の電極キャリア。
【請求項14】
前記導電性トラックが、金属、導電性プラスチック材料、及び金属含有インクのうちの少なくとも1つから選択される導電性材料を含む、請求項1乃至13のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項15】
前記導電性トラックが少なくとも部分的に絶縁層によって覆われている、請求項1乃至14のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項16】
前記電極キャリアが電磁シールド層によって覆われている、請求項1乃至15のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項17】
前記電磁シールド層が前記導電性トラックの
うちのいずれか
1つに接続されている、請求項16記載の電極キャリア。
【請求項18】
前記第1の接続手段が
、端子を有するコネクタを含み、前記端子が前記導電
性トラックに電気的に接続されている、請求項1乃至17のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項19】
前記第1の接続手段が
、前記導電性トラックに接続された信号処理手段を含み、前記信号処理手段は
、前記接触パッドからの電気信号を取り込み
且つ処理す
る手段を含む、請求項1乃至18のいずれか記載の電極キャリア。
【請求項20】
前記第1の接続手段が、前記導電性トラックに接続された信号処理手段を含み、前記信号処理手段は、前記接触パッドからの電気信号を取り込み且つ処理する手段を含み、
前記
信号処理手段が、前記コネクタに接続された出力手段を備える、請求項
18記載の電極キャリア。
【請求項21】
前記第1の接続手段が、前記信号
処理装置に通信可能に接続された無線データ転送装置をさらに含み、前記無線データ転送装置は、前記取り込まれた電気信号及び/又は前記取り込まれた電気信号から得られるデータを前記信号
処理装置に無線転送するように構成される、請求項19記載の電極キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理測定(電気生理学的測定)用の電極キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野における電極キャリアは、直接フィードバック、診断又はモニタリングのために使用される被験体の身体からの電気生理学的信号の測定のための適切な電極と組み合わせて利用される。この電気生理学的信号の例としては、脳波(EEG)を作成するための脳からの信号、心電図(ECG)を作成するための心臓からの信号、及び筋電図(EMG)を作成するための筋肉からの信号などがある。
【0003】
EEGモニタリングの例としては、せん妄、てんかん発作、又は類似の逸脱の発生について被験体をモニタリングすることが挙げられる。被験体のEEGでは、病気が明白である事例の電子的検出が可能になる。事例を検出するために長期間の監視が必要な場合がある。検出されると、病棟の看護師や医師、集中治療室(ICU)のスタッフなど、責任ある施術者が適切な措置を講じることができる。
【0004】
EEGを作成するために、電極が被験体の皮膚、すなわち脳の電気的活動の必要な測定を実行するための頭皮に配置される。しかしながら、正常なEEGからの逸脱を伴う事例の検出又は特定のEEGパターンの発見のためには、例えばいわゆる10/20測定セットアップに21個の電極位置を使用して完全なEEGを作成することが必要とされない場合もある。せん妄検出では、例えば3つの電極で十分であり得る。つまり、額に取り付けられた2つの前面電極と、頭の後ろに取り付けられた1つの前面電極である。
【0005】
この目的のための電極は当該技術分野において利用されており、それは個々に被験体に取り付けることができ、各電極は信号処理装置への電気的接続を必要とする。信号処理装置に接続可能な複数の電極を有する電極キャップ又はヘッドバンドも知られている。これらの電気的接続には、ケーブル又はワイヤが利用され得る。このようなキャップ又はヘッドバンドは、着用するのに不快であり、一般に、ヘッドサイズの測定、キャップ又はヘッドバンドのサイズ選択、ならびにいくつかのサイズ(例えばS-M-L)の保管及び製造を必要とし、及び/又はバックルのような調節手段、又は弾性もしくは弾性部材、すなわちクリップ、プラスター、又は特定の対象の頭に合うように固定する手段を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定する電極キャリアは、サイズの違う異なる被験体に対応するために、バックル又はクリップを有することでかさばることがある。このようなキャリアは、電極を信号処理機器に接続するための緩い配線を使用することがあるが、これは不快であり、セットアップに時間がかかり、そして被験者の邪魔をすることになり得る。
様々な被験体が再使用する電極キャリアは、臨床環境において徹底的な洗浄及び滅菌を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上記の不利益及び問題を克服する電気生理測定用の電極キャリアを提供することである。
【0008】
この目的を達成する電気生理測定用の電極キャリアは、可撓性基板と、基板表面に取り付けられた複数の接触パッドとを含み、各接触パッドが、電気生理測定用の電極を収容するための導電(導電性)手段と、基板に取り付けられて接触パッドと信号処理装置とを接続する第1の接続手段とを含む。第1の接続手段は、複数の接触パッドを電気的に接続するために基板表面上に複数の導電性トラックを含み、各導電性トラックは少なくとも1つの接触パッドに対応する。基板は、接触パッドを収容するための少なくとも2つの非伸縮性部分(非伸長可能部分)を有し、少なくとも2つの非伸縮性部分は、伸縮性部分(伸長可能部分)によって相互接続されている。伸縮性部分のそれぞれは、可撓性材料の少なくとも1つからなる反り可能部材を含む。反り可能部材の少なくとも1つは、導電性トラックのうちの少なくとも1つを収容する。
【0009】
伸縮性部分の元の状態では、少なくとも1つの反り可能部材は平坦である。反り可能部材の下地材は、反り可能部材の端部を引き離すことによって反ることができる。この伸張は、電極キャリアの非伸縮性部分が引き離されて、反り可能部材の反り、すなわち弾性的なねじれ、及び/又は曲げを引き起こすときに生じる。電極キャリアの非伸縮性部分が解放されると、反り、又はねじれ及び曲げが逆転し、少なくとも1つの反り可能部材、したがって伸縮性部分が元の平らな状態に戻ることが可能になる。
【0010】
したがって、ある部分が一方向に伸びる機能を容易にする柔軟なキャリアが提供され、それにより、異なる身体寸法、すなわち頭部又は四肢などの異なる身体部分、胴体、又は様々な被験者に電極キャリアを適応させることができる。これにより、EEG、EMG、ECGなどの電気生理測定を被験者の体全体にわたって容易に行うことできる。伸縮部分がサイズの違いを克服するので、バックルなどのサイズ調整部品は不要である。
【0011】
基板に着けられた接触パッド及び導電性トラックは、固定された一体型の電気的接続を提供し、それによって配置が容易であり、被験者に不快感を与え得る緩い配線を不要にする。電極キャリアは、異なる身体部分に普遍的にフィットし、より具体的には、小型、大型、及び異形の頭部に適用することができる。EEGを測定する場合は、座ったり横になっている被験者の頭の両側に装着することができる。電極は非伸縮性部分の接触パッド上に付けることができる。複数の非伸縮性部分を、伸縮性部分によって分離された他の非伸縮性部分に相互接続することができる。
【0012】
一実施形態では、基板は単一シートの可撓性材料から形成される。可撓性材料の単一シートの基板上に製造される電極キャリアは、接触パッド、導電性トラック、一つ又は複数の電極ライニング、絶縁体及び接着剤の層状構造を可能にし、それは電極キャリアを短期間の使用に特に適したものにする。被験者は、電極キャリアが別の短期間の使用のために準備されたか、又は配置された後に、電極キャリアを着用できる。薄層を含む設計では、最小の収納スペースが可能になる。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1つの反り可能部材は、基板のV字形又はループ形部分を含む。これにより、基板材料の一部の反り又は弾性変形によって反り可能部材の端部を延ばすことができる。したがって、電極キャリアの伸縮性部分の伸張性を達成するために、他の別個の伸張可能な構成要素をキャリアに一体化する必要はない。
【0014】
一実施形態では、伸縮性部分は、直列に相互接続された複数の反り可能部材を含む。反り可能部材を直列に相互接続することによって、単一部材の場合よりも大きな伸張範囲を達成することができる。これは、より大きな柔軟性又は拡張性が必要とされる可能性がある大きな身体部分、例えば腹部への電極キャリアの適用に特に有用であり得る。
【0015】
一実施形態では、伸縮性部分は、複数の平行に相互接続された反り可能部材を含む。反り可能部材を平行に相互接続することによって、単一部材の弾性率よりも高い弾性率を達成することができる。これは、運動中に使用されたときに動きにさらされる身体部分、又は例えば衣服又は寝具などの他の物体に対する摩擦を経験する身体部分への電極キャリアの適用に特に有用であり得る。
【0016】
一実施形態では、伸縮性部分は、X字状に配置された4つの反り可能部材を備える。これにより、コンパクトな設計及び、長手方向における複数の非伸縮性部分間の相対的な横方向の角度安定性を兼ね備えた拡張性が可能になる。
【0017】
一実施形態では、4つの反り可能部材が2つの反り可能部材が平行に接続された2つのストリングにグループ化され、2つの直列に接続された反り可能部材の中央部分は相互接続部材を用いて相互接続される。
これにより、反り可能部材が長手方向にねじれることが防止され、それによって、複数の非伸縮性部分間の横方向の角度安定性が向上する。
【0018】
一実施形態では、基板の少なくとも1つの非伸縮性部分には2つの接触パッドが設けられ、基板の少なくとも1つの他の非伸縮性部分には1つの接触パッドが設けられている。このことにより、2つの接触パッドを有する非伸縮性部分を被験者の額の上に有利に配置することができ、一方、1つの電極を有する伸張不可能な部分を、例えば被験者の後頭部又は被験者の頭頂部(Pzの位置)などの被験者の額の反対側の領域に配置できる。
【0019】
一実施形態では、接触パッドに、電気生理測定用の取り外し可能な電極を取り付けるための第1の接続手段が設けられる。このことにより、簡単に入手可能で、使用後に処分することができる大量生産の電極を使用することができる。電極キャリアは、使用済みの電極が取り外された後に、新しい電極で簡単に再利用できる。
【0020】
一実施形態では、接触パッドのうちの少なくとも1つは、電気生理測定のための電極ライニングを備える。接触パッドは電極ライニングのための導電性ベースを形成し、その組み合わせは電極キャリア基板上に直接電極を形成し、それは1つ又は複数の材料層からなり得る。電極キャリアの製造において電極ライニングを適用することによって、直ちに使用することができる電極キャリアを提供することができる。あるいは、電極ライニングは使用直前に適用することができる。これにより、最初の使用又は前の使用の電極ライニングの除去後に、電極キャリアを容易に再使用できるようになる。
【0021】
さらに、このように電極ライニングを備えた接触パッドは、臨床現場での使用とは無関係に電極の準備を可能にする。個々の電極を別々に準備することや(例えば、手動で電極を導電性ゲルで満たすこと、又は電極を水で濡らすこと)、被験者の皮膚からの電極からの残留物の除去、などはもはや必要ではない。これらのことから、臨床診療に合わない時間のかかる手順は避けられる。
電極ライニングは予め製造することができ、したがって制御された、オペレータに依存しない、そして再現可能な電極特性を提供できる。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1つの接触パッドが乾電極ライニングを備えている。これは、例えば、接着剤及び/又は他の機械的手段を使用して乾電極ライニングを接触パッドに取り付けることによって接触パッドに適用することができる。
【0023】
一実施形態では、少なくとも1つの接触パッドが湿電極ライニングを備えている。このような電極ライニングは、例えば電極ライニングをすすぐことによって、接触パッドから容易に除去することができる。新しい電極ライニングをつけるには、例えば、ライニングを液体容器から接触パッド表面に塗ることによって容易に提供され得る。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つの接触パッドが導電性ゲル又は導電性ヒドロゲルライニングを含む。
【0025】
一実施形態では、導電性ゲル又はヒドロゲルライニングは、接着材料を含むか、又は接着性及び/又は高タック性を有する導電性ゲル又はヒドロゲルを含み、それによって電極ライニングを有する接触パッドを対象の皮膚表面に取り付ける準備となる。
【0026】
一実施形態では、少なくとも1つの接触パッドは、電極ライニング付き又はなしの接触パッドを露出させるための開口部を備えた接着層を周囲に有する。これにより、電極キャリアを被験者の皮膚に取り付けることが可能になる一方で、接触パッド及び/又は電極ライニングを被験者との導電、すなわち電気的な接続から守ることができる。
【0027】
一実施形態では、電極キャリアは、少なくとも1つの電極ライニングを覆う接着性導電層をさらに含む。これにより、接触パッドの周りに接着層を備える代わりに、電極キャリアを被験者の皮膚表面に取り付けることが可能になる。
【0028】
一実施形態では、接着層が、取外し可能なカバー層によって覆われている。このことにより、電極キャリアは完全に準備され、すぐに使用することができ、使用するためにはカバー層を剥がすだけでよい。さらに、このことにより、清潔な保管及び輸送が可能となり、電極キャリアが使用前に他の物体、より具体的には包装に固着することを防止することが可能になる。
【0029】
一実施形態では、導電性トラックが、金属、導電性プラスチック材料、及び金属含有インクのうちの少なくとも1つから選択される導電性材料を含む。導電性トラックは、スクリーン印刷、他の印刷手段、又は積層によって導電層を基板の上に塗布し、エッチングなどのプロセスを使用して未使用部分を除去することによって基板に形成することができる。
【0030】
一実施形態では、導電性トラックが絶縁層によって覆われている。絶縁層は、例えば被験者の皮膚と導電性トラックとの望ましくない接触による干渉を防ぐ。
【0031】
一実施形態では、電極キャリアが電磁シールド層によって覆われている。電磁シールド層は、導電性トラックの周囲の空間に広がる電磁界による干渉を防ぐ。電磁シールド層は絶縁層上に配置することができる。代替的に又は追加的に、電磁シールド層は、導電性トラック及び接触パッドとは反対側の基板上に配置することもできる。このようにして、接触パッドを特に遮蔽することができる。
【0032】
一実施形態では、電磁シールド層は、電極キャリアを貫通する導電性ビアを用いて導電性トラックのいずれかに接続される。電磁シールド層は、このようにして、例えば第1の接続手段を介してアース線に接続することができる。
【0033】
一実施形態では、第1の接続手段が端子を有するコネクタを含み、端子が導電トラックに電気的に接続されている。このことにより、接触パッドからの電気信号を処理するための機器と電極キャリアとの有線接続が提供される。
【0034】
一実施形態では、第1の接続手段が導電性トラックに接続された信号処理手段を含み、その信号処理手段は接触パッドからの電気信号を取り込み、処理する。
このことにより、接触パッドからの電気信号を処理又は前処理してローカルでモニターすることが可能になる。さらに、パターンが検出されたときに接触パッドから被験者及び/又は担当スタッフに電気信号の状態を示すために、LEDなどの視覚的信号伝達手段、又はビープ音などの可聴信号伝達手段を基板上に収容することができる。
【0035】
一実施形態では、プロセッサが、コネクタに接続された出力手段を備える。これにより、接触パッドからの電気信号及びこれらの信号から導出されたデータのデジタル転送が可能になる。これにより、他の信号処理装置と長い間接続する必要がなくなり、そのことによって干渉とノイズが減少する。
【0036】
一実施形態では、第1の接続手段が、信号プロセッサに通信可能に接続された無線データ転送装置をさらに含む。無線データ転送装置は、接触パッドから取り込まれた電気信号及び/又は取り込まれた電気信号から得られるデータを信号プロセッサに無線転送するように構成される。このことにより、長い配線からの干渉を心配することなしに、電極キャリアを例えばICU内の監視デスクからより遠くで利用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態による電極キャリアの分解図を示す。
【
図2a】本発明の一実施形態による電極キャリアの概略図を示す。
【
図2b】本発明の一実施形態による電極キャリアの概略図を示す。
【
図2c】本発明の一実施形態による電極キャリアの概略図を示す。
【
図2d】本発明の一実施形態による電極キャリアの概略図を示す。
【
図2e】本発明の一実施形態による電極キャリアの概略図を示す。
【
図3】本発明の別の実施形態による電極キャリアの分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1には、可撓性材料からなる基板101を含む電極キャリア100が示されている。基板101は、例えば、絶縁性を有する可撓性プラスチック又はポリマー材料から作製され得る。基板101の材料は、伸張しにくいことが好ましい。基板はポリエステルフィルムで作製することができる。ポリエステルフィルムは、電極キャリア100の長手方向に最小限の弾性を有する二軸延伸フィルムが好ましい。基板101は、曲げ及び反りを許容する弾性特性を有することが好ましい。基板101は、伸縮性部分111で接続されている非伸縮性部分110a、110bを有する。
図1に示される伸縮性部分111は、X字型に並列及び直列に接続された部材113を有する。
【0039】
基板101上には、伸縮性部分111
の互いに反対側
にある基板101
の非伸縮性部分110a、110b上にそれぞれ配置された接触パッド112a、112bを有する導電層102が設けられる。導電層102は、銅もしくは銀などの金属、又は導電性インクもしくは導電性ポリマーから作製することができる。導電層は銀を含有する導電性コーティングから作製されると好適である。接触パッド112a、112bは、導電性トラック113a、113b、113cを介して、基板の接続部109上に設けることができるコネクタに電子的に接続可能である。導電性トラック113a、113b、113cは、接触パッド112aから基板101の接続部109まで延在する。接触パッド112bに対応する導電性トラック113bは、伸縮性部分111の反り可能部材を
通って接続部109に
至る。電極キャリア
100を処理装置(
図1には図示せず)に電気的に接続するためのコネクタが、基板の接続部109に設けられてもよい。さらに、導電性トラック113a、113b、113cは、基板101上のどこか(例えば接続部109上)に配置された信号プロセッサにも接続することができる。
【0040】
接続部は、例えば2つの接触パッドを有する非伸縮性部分から延ばされてもよいが、例えばX字形の伸縮性部分に面する短い非伸縮性部分の一端に設けることもできる。
【0041】
接触パッド112a、112bには、それぞれ接触パッド112a、112bの形状に対応する形状を有するように設計された電極ライニング103a、103bを設けることができる。電極ライニング103a、103bは、被験者の皮膚と接触パッドとの間の接触を確立するために1つ以上の層を含み得る。電極ライニング103a、103bは、銀-塩化銀(Ag/AgCl)コーティングなどの導電性コーティングを含むことができ、これは、炭素などの成分と配合させることができるスクリーン印刷層として設けて、乾電極を形成することができる。電極ライニング103a、103bはまた、AgCl溶液又は接触パッド112a、112bに塗布することができる吸収剤中の任意の他の適切な電解質によって形成して湿電極を形成してもよい。あるいは、電極ライニング103a、103bを導電性ヒドロゲルで形成して、やはり湿電極を形成することもできる。ヒドロゲルライニングは、接着剤成分を含むことができ、これによって接触パッド及びライニング、つまりは電極を形成することができ、被験者の皮膚に取り付けられることができる。
【0042】
導電性トラック113a、113b、113c、及び基板101の露出部分の上に、接触パッド112a、112bを露出させるための開口部を有する絶縁層104を設けることができる。接触パッド112a及び/又は電極ライニング103a、103bの上に、導電性の粘着パッチ105a、105bを設けることができる。粘着パッチ105a、105bは、電極キャリア100を被験体の皮膚に固定することを可能にする。電極キャリア100の被験者の皮膚への固定を強化するために追加の粘着パッチ106を設けてもよい。粘着パッチ105a、105b、106は、剥離カバー層107a、107bによって覆うことができる。これらの剥離カバー層107a、107bは、被験者に使用する直前に除去することができる。
【0043】
図には示されていない電磁シールド層を、導電性トラックを覆う絶縁層の上に配置することができる。あるいは、電磁シールド層は、接触パッドとは反対側の基板上に配置することができる。電磁シールド層は、金属などの導電性材料又は導電性ポリマーから作製することができる。電磁シールド層は、導電トラック113a、113b、113cのうちの1つであって電気アースに接続するものに接続することができる。接続は、絶縁層又は基板を貫通する1つ又は複数のビアを使用して行うことができる。
【0044】
信号プロセッサは、接触パッドからの信号を増幅するための1つ以上の増幅器と、接触パッドからの信号を捕捉しデジタル化するためのアナログ-デジタル変換器とを備えることができる。信号プロセッサは、接触パッドからのデジタル化信号を処理するためのメモリ及びプログラム命令を備えることができる。処理は、帯域幅フィルタなど用いたフィルタリング、及び測定又は監視に必要なパターンを検出するための信号の分析を含むことができる。信号プロセッサは、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、あるいは専用の高性能信号プロセッサであってもよい。
【0045】
信号プロセッサ及びそれをサポートする回路が、キャリアの少なくとも1つの非伸縮性部分上の電極キャリアの中又は上に一体化され得る。
【0046】
プロセッサは、その処理された信号を上述の接続部に出力することができ、したがってさらなる信号処理及びデータ処理へのデジタル接続を可能にする。有線構成の信号プロセッサが接続部から供給されてもよく、接続部はさらに別の信号及びデータ処理機器に接続される。電極キャリアはまた、基板に一体化された又は取り付けられた電池を備えていてもよい。
【0047】
あるいは、プロセッサは、処理された信号を、例えばBluetooth(登録商標)又は無線LAN又は近距離無線通信技術を使用して、接触パッドからの捕捉及び/又は処理された信号を無線通信するように構成できる無線通信装置に出力することができる。
【0048】
図2aには、伸縮性部分111を介して他の非伸縮性部分110bに接続された非伸縮性部分110aを有する電極キャリア100の概略図が示されている。伸縮性部分111は、基板の1つ以上のV字形部分201を含む。基板は弾力性のある柔軟な材料で作られているので、V字形部分201はそれによってねじれ又は曲げによって反ることができる。これにより、非伸縮性部分110aと110bとの間は、可変な距離dを有することが可能になる。
図2aの例における電極キャリア100は、部材201を一つだけ有する。
【0049】
複数の反り可能部材201が、伸張可能部111を形成することができる。反り可能部材201は、非伸縮性部分110a、110bの間に直列及び/又は並列に接続することができる。
図2bの例の伸縮性部分111は、6個の反り可能部材を有しており、対となって並列に接続され、その並列の対が直列に接続され、非伸縮性部分110a、110bに直列に接続されている。
図2bの反り変形部材201は、相互に相互接続されて示されており、部材間に交差接続を形成している。
【0050】
図2cでは、直列の2つの反り可能部材201のストリング202を有する電極キャリアが示されており、それぞれのストリング202は、非伸縮性部分110a、110bの間で互いに並列に接続されている。
【0051】
図2dには、
図1の伸縮性部分111の変形例であって、直列及び並列に接続された4つの反り可能部材201を有するものが示されている。各反り可能部材201はループ形状を有し、そのループは片側でそれぞれ非伸縮性部分110a又は110bに接続されており、ループは相互接続部材としてのクロスバー203によって相互接続されている。ループ形状の反り可能部材201は、
図2a~
図2cの直線状のV形状の部材201よりも長い延伸マージンを有する。クロスバー203は、伸張不能部分110a、110b間の横方向の角度安定性を高める。
【0052】
図2eには、
図2dの電極キャリアの変形例であって、非伸縮性部分210によって相互接続された2つの伸縮性部分111、211を有するものが示されている。非伸縮性部分及び伸縮性部分の数は、電極の配置及び伸張に関する特定の要件に応じて変わり得る。
【0053】
図3には、非伸縮性部分110a、110b及び伸縮性部分111を有する電極キャリア300が示されている。
図3に示すように、電極ライニング103a、103bの代替として、接触パッド112a、112bに、交換可能な電極を機械的なスナップ嵌合及び電気的接続で押し付けることができる導電接続を設けることができる。
図3における接触パッド112aは、交換可能な電極から導電性トラック113aを介して基板101の接続部109に電気信号を伝達する。
【0054】
図3では、接続ボタン302が接触パッド112aの上に設けられている。ボタン302は導電性材料を備えており、例えば導電性接着剤によって又はステープラーによって接触パッド112aに取り付けられている。接続ボタン302は、交換可能な電極301を受け入れるための開口部を有する。交換可能な電極301には、電極を機械的及び電気的に接続するために接続ボタン302の開口部に対応する導電性突起を設けることができる。
【0055】
あるいは、接触パッド112a、112bには、導電性の突起を設け、その上に、対応する接続ボタン302を有する交換可能な電極301が取り付けられ、それが押されて、電極に機械的及び電気的に接続するようにしてもよい。当業者であれば、
図3に示すように交換可能な電極301を電極キャリア300に接続するための様々な代替解決策が利用可能であろう。
【0056】
図3では、非伸縮性部分110bが、ボタンなしの接触パッド112bを有しており、導電性トラック113c及び113bを介して接続部に接続され、それによって、上述のように、湿電極ライニング又は乾電極ライニング、又は(ヒドロ)ゲル電極ライニングを受容するようになっている。
【0057】
本発明の範囲は上記の例に限定されず、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなくいくつかの修正及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。特に、本発明の様々な態様の特定の特徴の組み合わせがなされてもよい。本発明の一態様は、本発明の他の態様に関して説明した特徴を追加することによってさらに有利に強化することができる。本発明を図面及び明細書において詳細に例示及び説明してきたが、そのような例示及び説明は例示的にすぎず、限定的ではないと見なされるべきである。
【0058】
本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する変形は、図面、明細書及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され達成され得る。特許請求の範囲において、単語「有する」は他のステップ又は要素を排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照番号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
100 電極キャリア
101 基板
102 導電層
103a、103b 電極ライニング
104 絶縁層
105a、105b 導電性粘着パッチ
106 追加粘着パッチ
107a、107b 剥離カバー層
109 接続部
110a、110b 非伸縮性部分
111 伸縮性部分
112a、112b 接触パッド
113a、113b、113c 導電性トラック
201 反り可能部材
202 ストリング
203 クロスバー
210非伸縮性部分
211a-211e 伸縮性部分
300 電極キャリア
301 交換可能な電極
302 接続ボタン