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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】試料分析のための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20220701BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220701BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220701BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220701BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B01J19/00 321
B81C1/00
B81B1/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019537211
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018014047
(87)【国際公開番号】W WO2018136509
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】62/447,672
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(73)【特許権者】
【識別番号】519243743
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシテイト ルーヴェン
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン,マーク エー.
(72)【発明者】
【氏名】レアーズ,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス-ルイス,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ランメルティン,ジェローン
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/161400(WO,A1)
【文献】特開2006-317299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
B01J 19/00
B81C 1/00
B81B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェルのアレイ上に非混和性流体の層を配置することにより水性流体が中に配置された前記ウェルのアレイを封止する方法であって、
デジタルマイクロ流体(DMF)電極を使用することにより非混和性流体の液滴に向けた水性流体の液滴の移動を駆動することにより、前記2つの液滴を互いに接触させることによって、水性流体の液滴から形成された水相および非混和性流体の液滴から形成された非水相を含む二相液滴を形成すること、
DMF電極を使用して前記二相液滴の水相の移動を駆動することにより、前記二相液滴中に存在する非水相をウェルのアレイに向けて引き出すこと、
DMF電極を使用してウェルのアレイ上への前記二相液滴の水相の移動を駆動することにより、前記ウェルのアレイを前記二相液滴の水相と接触させること、及び、
DMF電極を使用して前記ウェルのアレイに隣接する位置への前記二相液滴の水相の移動を駆動することにより、前記ウェルのアレイを前記二相液滴の非水相と接触させることによって、前記非水相を前記ウェルのアレイ上に引き出すこと、を含み、
前記ウェルのアレイを前記二相液滴の非水相と接触させることで、前記ウェルのアレイを非混和性流体で被覆して当該ウェルのアレイを封止する方法。
【請求項2】
前記非混和性流体が、DMF電極により直接駆動可能ではない疎水性流体であり、前記非混和性流体が、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーン油、パーフルオロカーボン、ハロゲン溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非混和性流体が、シリコーン油および鉱物油からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
駆動するステップの前に、前記非混和性流体の液滴をマイクロ流体デバイス内に配置することをさらに含み、前記マイクロ流体デバイスが、
第1の基板および第2の基板を備え、前記第2の基板が、ギャップにより前記第1の基板から分離され、前記第1の基板は、前記水性流体の液滴に対する電気的駆動力を生成するための複数のDMF電極を備え、
前記第2の基板上に配置されたウェルのアレイを備え、当該ウェルのアレイが前記非混和性流体の前記液滴により被覆されるような寸法である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ流体デバイスが、前記水性流体が充填された貯蔵部を含み、前記方法が、前記貯蔵部からの液滴の移動を駆動することにより前記水性流体の液滴を生成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水性流体が、基質を含み、前記方法が、前記ウェルのアレイへの前記基質の拡散に十分な時間、前記ウェルのアレイを前記二相液滴の水相と接触させることを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検体関連信号の存在を検出するために前記ウェルのアレイを分析することを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも第1または第2の基板が、検体関連信号の存在の検出を促進するために実質的に透明である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)対象となる検体を含有する第1の液体の液滴を提供すること、
(b)前記対象となる検体に結合する特異的結合メンバーを含有する少なくとも1種の固体担体を含有する第2の液体の液滴を提供すること、
(c)前記第1の液体の液滴を前記第2の液体の液滴と一緒に操作して混合物を形成するための力を作用させるために、エネルギーを利用すること、
(d)前記混合物の全てまたは少なくとも一部をウェルのアレイに移動させることであって、前記アレイの1以上のウェルは、前記少なくとも1種の固体担体を収容するのに十分なサイズである、移動させること、
(e)前記ウェルのアレイに混合物の一部を移動させる前または移動させた後に、前記混合物に検出可能な標識を添加すること、
(f)請求項1の駆動するステップを実行すること、
(g)請求項1の接触させるステップを実行すること、
(h)前記ウェル内の前記対象となる検体を検出すること、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の固体担体が、前記対象となる検体に特異的に結合する少なくとも1つの結合メンバーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ウェルのアレイに前記混合物の少なくとも一部を移動させた後に、前記混合物に検出可能な標識を添加することをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出可能な標識が、水性液滴中に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出可能な標識が、前記対象となる検体に特異的に結合する少なくとも1つの結合メンバーを含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記検出可能な標識が、色原体、蛍光性化合物、酵素、化学発光化合物または放射性化合物を含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合メンバーが、受容体または抗体である、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギーが、電気的駆動力である、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の液体の液滴が分極性液体であり、前記第2の液体の液滴が分極性液体であり、前記混合物が分極性液体である、または前記第1の液体の液滴および第2の液体の液滴の両方が各々分極性液体であり、DMF電極により生成された電力によって直接駆動可能である、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記固体担体が磁性粒子を含む、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
磁場を印加して、前記アレイの1つ以上のウェルへの少なくとも1種の固体担体の移動を促進することにより、前記アレイの前記1つ以上のウェルに少なくとも1種の固体担体が充填される、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
液滴の移動を駆動することが、交流を含む電気的駆動力を使用することを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記交流が、10V以上の二乗平均平方根(rms)電圧を有する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月18日に出願された米国仮特許出願第62/447,672号に基づく利益を主張し、その出願は参照により全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
マイクロウェルアレイを使用したデジタル検出には、通常、アレイのチャンバを外部環境から遮断するための封止方法が必要とされる。従来は、手作業で、またはアレイ全体にわたる均一な被覆を確保する真空システムと連結したロボットアームを使用して、非混和性流体(例えば油)がアレイ上に広げられていた。しかしながら、手作業による油の添加は、操作者の技術の差によってアッセイに誤差を生じ得ることから望ましくない。ロボット工学は、不正確さに関係する誤差を低減し得るが、複雑で高価な工作(engineering)を必要とする。
【0003】
したがって、低濃度の検体の検出に使用されるものなどのウェルのアレイを封止するための改善された費用効率の良い方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
デジタルマイクロ流体(DMF)の使用方法であって、DMFチップ上に配置されたウェルのアレイの開口上に、水性流体および非混和性流体を含む二相液滴を引き出すための方法が提供される。本明細書で開示される方法は、ウェルの開口を効率的に封止する非混和性流体をウェルのアレイ上に配置する。ある実施形態において、本明細書で開示される方法は更に、ウェルを非混和性流体で封止するのに先立って、アッセイ試薬(例えば化学物質)をウェルに導入するために利用され得る。ある実施形態において、アッセイ試薬は、二相液滴の水性部分に存在してよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】上部プレートと下部プレートとの間に非混和性流体(例えば封止油)の液滴および水性流体(例えば酵素基質)の液滴を含有するデジタルマイクロ流体デバイスの図である。デバイスは、上部プレートの下面にウェルのアレイ(四角の枠でマークされている)を含む。
図2】デジタルマイクロ流体デバイス内での非混和性流体の液滴への水性液滴の移動および二相液滴の生成を示す図である。
図3】デジタルマイクロ流体デバイス内でのウェルのアレイに向かう二相液滴の移動を示す図である。
図4】二相液滴の水相部分の一部のウェルのアレイ上への配置を示す図であり、二相液滴の非混和性部分は、ウェルのアレイのすぐ隣に配置されている。
図5】二相液滴の非混和性部分の一部のウェルのアレイ上への配置を示す図であり、二相液滴の水性部分は、ウェルのアレイのすぐ隣に配置されている。
図6】ウェルのアレイから離れて廃棄領域に向かう二相液滴の移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
デジタルマイクロ流体(DMF)のチップ上に配置されたアレイウェルを被覆するために、水性流体および非混和性流体から形成される二相液滴を引き出すための、DMFの使用方法が提供される。本明細書で開示される方法は、非混和性流体をウェルのアレイ上に配置し、それはチャンバを効率的に封止する。ある実施形態において、本明細書で開示される方法は更に、非混和性流体で封止するのに先立って、試薬をウェルに導入するために利用され得る。そのような実施形態において、試薬は、二相液滴の水性流体部分に含まれてもよい。
【0007】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって当然ながら変化し得ると理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定を意図しないことが理解されるべきである。
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形は複数形の呼称も含むことが留意されなければならない。したがって、例えば、「一つの(a)電極」の言及は、複数のそのような電極を含み、「一つの(a)液滴」の言及は、1つ以上の液滴および当業者に知られているその等価物を含む。
【0009】
本明細書において言及される全ての出版物は、出版物がそれに関連して引用される方法および/または材料を開示および説明するように、参照により本明細書に援用される。本開示と参照により援用される出版物との間に矛盾が生じる場合は、本開示が優先される。
【0010】
ウェルのアレイを封止する方法
本開示は、非混和性流体を付随する水相の電気的駆動により非混和性流体でウェルのアレイを封止するための方法を提供する。電気的駆動は、1つ以上の電極、例えば電極のアレイ、例えばデジタルマイクロ流体デバイス内の電極を使用して行うことができる。
【0011】
ある実施形態において、本方法は、2つの液滴が互いに接触し、それにより水性流体の液滴により形成された水相および非混和性流体の液滴により形成された非水相を含む二相液滴を形成するように、デジタルマイクロ流体(DMF)デバイス内のDMF電極を使用することによって、非混和性流体の液滴に向かう水性流体の液滴の移動を電気的に駆動すること;DMF電極を使用して二相液滴の水相の移動を電気的に駆動し、それにより二相液滴中に存在する非水相をウェルのアレイに向けて引き出すこと;DMF電極を使用することによってウェルのアレイ上への二相液滴の水相の移動を駆動することにより、ウェルのアレイを二相液滴の水相と接触させること;非水相がウェルのアレイ上に引き出されるように、DMF電極を使用することによってウェルのアレイに隣接する位置への二相液滴の水相の移動を駆動することにより、ウェルのアレイを二相液滴の非水相と接触させることを含み、ウェルのアレイを二相液滴の非水相と接触させることは、ウェルのアレイを非混和性流体で被覆し、それによりウェルのアレイを封止する。
【0012】
本発明の方法において有用な非混和性流体は、水系(water-based)または水性(aqueous)の溶液に実質的に溶解せず、電気力により大きく駆動され得ない任意の流体であってよい。ある特定の場合において、非混和性流体は、疎水性液体、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコーン油、パーフルオロカーボン、ハロゲン溶媒、またはそれらの混合物であってよい。一般に、非混和性流体は、非水系または非水性の液体である。非混和性流体は、これらに限定されないが、シリコーン油、鉱物油、植物油、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、長鎖アルコール、例えばヘキサノールもしくはデカノール、炭化水素、例えばデカン、または、水系の溶液に実質的に溶解せず、電気力により大きく駆動され得ない、例えばエレクトロウェッティングにより移動され得ない(例えば、DMF電極によって生成された電気力により直接移動され得ない)任意の流体/溶媒を含む。ある特定の実施形態において、非混和性流体は、シリコーン油または鉱物油(例えばGE Healthcare(商標)IMMOBILINE(商標)DryStrip Cover Fluid)等の油であってもよい。
【0013】
ある特定の場合において、水性流体の液滴は、水性流体を含む貯蔵部(リザーバ)から液滴を分注(ディスペンス)することにより生成されてもよく、貯蔵部は、DMFデバイス内に存在し、分注は、DMFデバイスのDMF電極による電気的駆動によって行われる。水性流体の液滴は、ウェル内の検体または検体関連信号の検出に適合する緩衝液の液滴であってよい。ある特定の場合において、緩衝液は、洗浄緩衝液であってよく、または、検体関連信号を生成するための1種以上の試薬を含んでもよい。ある特定の例において、水性流体の液滴は、追加的なアッセイ試薬を含む又は含まない緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってよい。水性流体の液滴は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、イオン性または非イオン性界面活性剤であってよい。ある特定の場合において、水性流体の液滴は、非イオン性界面活性剤、例えばPluronic F-68を含んでもよい。水性流体中の界面活性剤の量は、0.01%~5%、例えば0.05%~3%、0.05%~2%、0.05%~1%、0.05%~0.5%、または0.1%~0.5%の範囲であってもよい。いくつかの場合において、試薬は、標的検体、ウェル内に存在する酵素の基質等に直接的または間接的に結合する抗体であってよい。
【0014】
非混和性流体の液滴は、任意の好適な手段により、本発明の方法を実行するために使用されるDMFデバイス内に導入され得る。ある特定の場合において、非混和性流体の液滴は、毛管力を使用して、または圧力を印加して(例えば真空を適用して)非混和性流体をDMFデバイスのチャンバ内に放出させることにより、DMFデバイスのチャンバを形成する基板の間のギャップにチャンバの入口から配置してもよい。
【0015】
非混和性流体の液滴および水性流体の液滴の体積は、ウェルのアレイサイズ等の因子に基づいて決定できる。ある特定の場合において、体積は、アレイのウェルの開口を完全に被覆する、または実質的に完全に被覆するのに十分なものとしてよい。ある特定の場合において、液滴は、液滴の体積全体を実質的に増加させずにウェルのアレイの被覆率を増加させるために、液滴の高さを減少させながら液滴の長さおよび幅を増加させるように変形、例えば平坦化してもよい。ある特定の場合において、液滴の形状は、疎水性/親水性が異なる領域を有する基板を使用することにより制御できる。例えば、非混和性流体のより球形の液滴の形成を促進して水性流体のより球形でない液滴の形成を促進するDMFチップの領域は、実質的に親水性であり、またウェルのアレイを含むDMFチップの領域は、ウェルのアレイ上に非混和性流体が広げることができる疎水性表面を含んでもよい。
【0016】
二相液滴は、水性液滴および非混和性流体の液滴を組み合わせることにより形成され、2つの液滴の体積は等しい又は実質的に等しい。いくつかの場合において、1以上の水性液滴が、非混和性流体の単一の液滴と組み合わされてもよい。いくつかの場合において、1以上の非混和性流体の液滴が、単一の水性液滴と組み合わされてもよい。例えば、第1の二相液滴は、非混和性流体の単一の液滴および水性流体の単一の液滴を組み合わせ、続いて二相液滴を追加的な液滴(複数可)と、例えば非混和性流体の1つ以上の液滴および/または水性流体の1つ以上の液滴と組み合わせることによって形成されてもよい。ある特定の場合において、そのような方法は、二相液滴中の水性および/または非混和性流体の体積を制御するために使用される。ある特定の実施形態において、二相液滴は、非水相(非水性混和性流体により形成される)と接触した水相を含み、2つの相は、界面で互いに関連している。本開示の二相液滴はまた、非水相とDMFデバイスのチャンバ内の周囲環境(例えば空気)との間に第2の界面を含んでもよく、また水相とDMFデバイスのチャンバ内の周囲環境(例えば空気)との間に第3の界面を含んでもよい。換言すれば、水相は非混和性流体に取り込まれておらず、またその逆も成り立つ。ある特定の場合において、二相液滴は、2つの異なる相で占有され曲面界面で分離された2つの部分体積で構成される球状液滴である、Janus液滴の形態をとってもよい。他の場合において、二相液滴は、Janus液滴の形態をとらなくてもよく、その代わりに細長/平坦球形状を有してもよい。
【0017】
DMF電極を使用して二相液滴の水相の移動を電気的に駆動し、それにより二相液滴中に存在する非水相をウェルのアレイに向けて引き出すことは、DMF電極に通電し、二相液滴の水相に電力を作用させ、それにより二相液滴中に存在する非混和性(非水)相の移動を間接的にもたらすことによって実行される。
【0018】
次いで、電気的駆動を使用して、二相液滴をウェルのアレイに誘引することができる。二相液滴の水性部分は、液滴の先頭部分を形成するため、二相液滴の非混和性部分がアレイに接触する前に水性部分が最初にアレイに接触する。アレイと二相液滴の水性部分および非水性部分との接触時間は、DMF電極の活性化により媒介される二相液滴の移動によって制御される。第1の実施形態において、方法は、ウェルが水性流体に曝露される時間の長さを短縮するために、比較的高い速度でアレイ上に二相液滴の水性部分を移動させることを含んでもよい。第2の実施形態において、方法は、ウェルが水性流体に曝露される時間の長さを延長するために、比較的遅い速度でウェルのアレイ上に二相液滴の水性部分を移動させる、またはさらにはアレイ上で水性部分を保持することを含んでもよく、またDMF電極を不活性化することを含んでもよい。本発明の方法の第2の実施形態は、二相液滴の水性流体部分に存在する試薬のウェル内への拡散を可能にするのに有用となる。
【0019】
非水相がウェルのアレイ上に引き出されるように、DMF電極を使用することによってウェルのアレイに隣接する位置への二相液滴の水相の移動を駆動することにより、ウェルのアレイを二相液滴の非水相と接触させるステップは、液滴の水相がウェルのアレイから移動し、一方でウェルのアレイ上に二相液滴の非混和性流体部分を引き出すように、DMF電極を活性化することによって実行され得る。この時点で、DMF電極は、液滴が静止状態となるように通電が解除されてもよい。ウェルのアレイは、非混和性流体により効果的に封止され、ウェルのアレイから検体関連信号を検出/測定するために分析され得る。液滴の外側端部がウェルのアレイの周縁部と接触したとき、および/または、電極の活性化/不活性化の次のサイクルが液滴をウェルのアレイに移動させ得るように、液滴もしくはその少なくとも一部が、ウェルのアレイがその上に位置付けられる電極のすぐ隣の電極上に位置付けられたとき、液滴は、本明細書に記載のようにウェルのアレイに隣接しているとみなされる。二相液滴の場合、水相がウェル上に位置付けられた時、液滴の非水相はウェルのアレイに隣接しており、また非水相がウェル上に位置付けられた時、液滴の水相はウェルのアレイに隣接している。
【0020】
図1は、上部プレートおよび下部プレートがDMFチャンバを画定するギャップにより分離されているDMFデバイスを示す。個々に駆動可能な電極のアレイは、デバイスに動作可能に接続され、水性流体の液滴の移動を誘引する。デバイスは、酵素基質を含む貯蔵部に動作可能に接続される。非混和性流体(例えば油)の液滴が、デバイス内に配置される。油滴が移動されるウェルのアレイを含む標的エリアは、四角でマークされている。ウェルのアレイは、上部プレートの下面に位置し、ウェルの開口は、チャンバ内の空間(上部および下部プレートの離間構成(space-apart configuration)により画定される)および下プレートの上面と対向した構成である。DMF電極は、下プレートに位置している。DMF電極を含む基板と対向構成にあるウェルのアレイを有するDMFデバイスを製造するための方法は、参照により本明細書に援用されるWO2016/161400に記載されている。例えば、WO2016/161400の図22~26は、第1の基板上にDMF電極を含み、第2の基板上にウェルのアレイを含むDMFデバイスを作製するための方法を示しており、第1および第2の基板は、互いに離間した様式で配置されてその間の空間を画定し、ウェルのアレイのチャンバの開口が空間に面している。DMFデバイスは、いずれの方位で使用されてもよく、すなわち、第1の基板は下部または上部にある。
【0021】
ある特定の場合において、ウェルのアレイは、マイクロ粒子(例えば標的検体が固定されたビーズ)または他の分子で事前に充填されていてもよい。ウェルのアレイ、例えばDMFデバイスの上部プレート上に位置してウェルの開口が下を向いている(例えばウェルが上下逆の方位にある)ウェルのアレイ内にマイクロ粒子を充填するための方法は、WO2016/161400において開示されている(例えば図29~30を参照されたい)。いくつかの場合において、ウェルは、磁石を利用して磁性ビーズで充填されてもよい。
【0022】
図2は、アッセイ試薬(例えば酵素基質)を含む水性液滴の、油滴が配置されるデバイスのエリアへの駆動を示している。油滴は水性液滴と合わさって二相液滴を形成し、油滴は水性液滴に付随し、水性部分の移動が液滴の油部分の移動をもたらす。
【0023】
図3は、ウェルのアレイを含むデバイス内のエリアに向かう二相液滴の移動を示す。二相液滴は、二相液滴の水相に対する標準的DMF駆動電圧を使用して移動され、油相は水相の後ろで引きずられる。
【0024】
図4は、二相液滴の水相部分の標的エリアへの配置を示す。このステップは、任意選択で、酵素基質を標的エリアに存在するウェルのアレイ内に堆積させるために使用されてもよい。利用される場合、二相液滴は、酵素基質がウェルのアレイ内に拡散するのに十分な期間、標的エリアで保持される。
【0025】
図5は、液滴の油相が標的エリア上に移動するのを可能にするための、駆動による二相液滴の移動を示す。標的エリアに含まれるウェルのアレイは、油で被覆される。標的エリア上に二相液滴の油相が配置されたら、誘引電圧がオフにされる。図5において、二相液滴は、液滴の水性部分をアレイから移動させ、二相液滴の非混和性部分をアレイ上に引きずり込むのに十分な距離だけ移動される。
【0026】
図6は、標的エリアから廃棄物貯蔵部へと離れる二相液滴の駆動を示す。そのようなステップは、任意選択で、油で封止されたウェルのアレイがウェルからの検体関連信号を検出するために分析された後に行われてもよい。
【0027】
ある特定の実施形態において、1つ以上の二相液滴が生成され、ウェルの単一アレイまたはウェルの複数アレイを被覆するために同時にまたは逐次駆動されてもよい。ある特定の実施形態において、方法は、単一の液滴がアレイを被覆するのに不十分な体積である場合、アレイを完全に被覆するために単一アレイ上に位置付けられ得る複数の二相液滴を生成することを含んでもよい。ある特定の実施形態において、DMFデバイスは、ウェルの複数のアレイを含んでもよく、個々の二相液滴は、アレイを被覆するために同時にまたは逐次移動されてもよい。
【0028】
ある特定の場合において、非混和性液体によるウェルのアレイの封止は、試料中の検体の存在または非存在を検出するための方法の一部として行われてもよい。試料は、まず試料から液体の液滴を生成することにより分析され得る。対象となる検体を含む、または含むと見られるそのような第1の液滴は、DMFデバイス内のDMF電極により操作され得る。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、a)対象となる検体を含有する第1の液体の液滴を提供することと;(b)対象となる検体に結合する特異的結合メンバーを含有する少なくとも1種の固体担体を含有する第2の液体の液滴を提供することと;(c)エネルギーを使用して、第1の液体の液滴を第2の液体の液滴と一緒に操作して混合物を形成するための力を作用させることと;(d)混合物の全てまたは少なくとも一部をウェルのアレイに移動させることであって、アレイの1つ以上のウェルは、少なくとも1種の固体担体を収容するのに十分なサイズである、移動させることと;(e)ウェルのアレイに混合物の一部を移動させる前または移動させた後に、混合物に検出可能な標識を添加することと;(f)本明細書に記載のような駆動するステップを実行することと;(g)本明細書に記載のような接触させるステップを実行することと;(h)ウェル内の対象となる検体を検出することとを含んでもよい。
【0029】
ある特定の場合において、少なくとも1種の固体担体は、対象となる検体に特異的に結合する少なくとも1種の結合メンバーを含んでもよい。ある特定の実施形態において、方法は、ウェルのアレイに混合物の少なくとも一部を移動させた後に、混合物に検出可能な標識を添加することを含んでもよい。ある特定の場合において、水性液滴は、検出可能な標識を含んでもよい。ある特定の実施形態において、検出可能な標識は、対象となる検体に特異的に結合する少なくとも1種の結合メンバーを含んでもよい。ある特定の場合において、検出可能な標識は、色原体、蛍光性化合物、酵素、化学発光化合物または放射性化合物であってもよい。ある特定の場合において、結合メンバーは、受容体または抗体であってもよい。ある特定の場合において、エネルギーは、電気的駆動力であってもよい。ある特定の場合において、第1の液体の液滴が分極性液体であってもよく、第2の液体の液滴が分極性液体であってもよく、混合物が分極性液体であってもよく、または第1の液体の液滴および第2の液体の液滴の両方がそれぞれ分極性分極性液体であり、DMF電極により生成された電気力によって直接駆動可能であってもよい。
【0030】
ある特定の場合において、固体担体は、磁性粒子であってもよい。磁場を印加して、アレイの1つ以上のウェルへの少なくとも1種の固体担体の移動を促進することにより、アレイの1つ以上のウェルに少なくとも1種の固体担体が充填され得る。ある特定の実施形態において、液滴の移動を駆動することは、交流を含む電気的駆動力を使用することを含んでもよい。交流は、10V以上の二乗平均平方根(rms)電圧を有してもよい。いくつかの実施形態において、交流は、5KHz以上、例えば5KHz~50KHz、5KHz~40KHz、5KHz~30KHz、5KHz~20KHz、5KHz~15KHz、例えば5KHz、10KHz、15KHz、または20KHzの周波数を有してもよい。他の実施形態において、交流は、無線周波数帯域内の周波数を有してもよい。
【0031】
ある特定の実施形態において、液滴を移動させるためのDMF電極により生成される電気的駆動力は、交流であってもよい。例えば、交流は、10V~100V、例えば30V~70V、30V~50V、20V~70V、20V~50V、20V~100V、30V~100V、40V~100V、50V~100V、60V~100V、70V~100V、80V~100V、例えば10V、15V、20V、25V、30V、35V、50V、70V、80V、90V、またはそれを超える二乗平均平方根(rms)電圧を有してもよい。
【0032】
デジタルマイクロ流体デバイスおよびシステム
本明細書で開示される方法は、対象の方法を自動的または半自動的に実行し得る様々なデバイスおよび関連システムで行うことができる。ある特定の実施形態において、デジタルマイクロ流体デバイスは、第1の基板および第2の基板であって、第2の基板は、第1の基板上に位置付けられ、ギャップにより第1の基板から分離され、第1の基板は、第1の基板の上面上に位置付けられた一連の電極を備える、第1の基板および第2の基板と;第1の基板の上面上に配置され、一連の電極を被覆する第1の層と;DMFデバイスのあるエリアに位置付けられたウェルのアレイとを含んでもよく、ウェルのアレイは、第1の基板または第2の基板上に位置付けられる。ある特定の場合において、第2の層が第1の層の上面上に配置されてもよい。第1の層は、誘電性および疎水性の材料で作製されてもよい。ウェルのアレイは、第1の層に位置付けられてもよい。他の場合において、第1の層は、誘電体層で作製されてもよく、第2の層は、疎水性層であってもよい。ウェルのアレイは、第2の層に位置付けられてもよい。ある特定の場合において、ウェルのアレイは、親水性表面を有してもよい。
【0033】
第1の層は、誘電性および疎水性材料である材料で作製されてもよい。誘電性および疎水性である材料の例は、プラスチック(例えばPETもしくはPMMA)、ポリテトラフルオロエチレン材料(例えばTeflon(登録商標))またはフルオロ界面活性剤(例えばFluoroPel(商標))を含む。第1の層は、実質的に平面の表面を提供するような様式で堆積されてもよい。ウェルのアレイは、一連の電極の一部の上の第1の基板の一部に位置付けられてもよい。ウェルのアレイは、第1の層に位置付けられてもよく、また疎水性であってもよい。ある特定の実施形態において、第1の層におけるウェルのアレイの製造前または製造後、親水性表面を有するウェルのアレイを提供するために、第1の層の上に親水性層が配置されてもよい。第1の基板と第2の基板との間の空間/ギャップは、空気で満たされてもよい。
【0034】
ある特定の場合において、第1の層は、誘電体層であってもよく、疎水性材料の第2の層は、誘電体層の上に配置されてもよい。ウェルのアレイは、疎水性層に位置付けられてもよい。疎水性層におけるウェルのアレイの製造前または製造後、疎水性層の上に親水性層が配置されてもよい。
【0035】
ある特定の場合において、第2の基板は、電極を形成する導電層を含んでもよい。導電層は、第2の基板の下面に配置されてもよい。導電層は、上述のようにプラスチック(例えばPETまたはPMMA)等の誘電性/疎水性材料によって作製された第1の層により被覆されてもよい。ある特定の場合において、導電層は、誘電体層により被覆されてもよい。誘電体層は、疎水性層により被覆されてもよい。導電層およびそれを被覆する任意の層は、第2の基板の下面にわたり配置されてもよい。ある特定の実施形態において、第2の基板およびその上に配置された任意の層(例えば、導電層、誘電体層等)は、少なくともウェルのアレイに重なる領域において実質的に透明であってもよい。他の場合において、第1の基板上の電極のアレイは、同一平面上の電極として構成されてもよく、第2の基板は、電極を含まなくてもよい。
【0036】
ある特定の場合において、第1の層および/または第2の層に存在する電極は、例えばインジウムスズ酸化物、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ドープ酸化亜鉛等の実質的に透明な材料から製造されてもよい。ある特定の場合において、第1の基板および/または第2の基板の少なくとも一部は、ウェルのアレイの光学的検査を容易化するために実質的に透明であってもよい。DMF電極は、DMFデバイスにおける1つ以上の電極がオンにされ得る一方でDMFデバイスにおける他の電極がオフにされ得るように、個々に制御されてもよい。DMF電極は、同一平面上にあってもよく、または対向構成にあってもよい。例えば、電極のアレイがデバイスの1つの基板上に存在してもよく、同じ基板に、または第1の基板から離間した様式で配置されてその間にチャンバを形成する第2の基板に接地電極が配置されてもよい。
【0037】
本明細書に記載のデバイスは、平面状(実質的に平坦)であってもよく、例えば長方形または正方形、丸まった角を有する長方形または正方形等の任意の形状を有してもよい。
【0038】
液滴ベースのマイクロ流体工学は、能動的または受動的力により液体の液滴を生成および駆動すること(例えば移動させる、融合する、分割する等)を指す。能動的力の例は、これらに限定されないが、電場を含む。例示的な能動的力の技術は、エレクトロウェッティング、誘電泳動、オプトエレクトロウェッティング、電極媒介、電場媒介、静電駆動等、またはそれらの組合せを含む。いくつかの例において、デバイスは、液滴ベースのマイクロ流体工学、例えばエレクトロウェッティングにより、またはエレクトロウェッティングおよび液体の液滴の連続流体流動の組合せにより、ギャップ内で第1の層の上面(例えば、第2の層の下面と第1の基板の上面との間)にわたり液体の液滴を駆動させてもよい。エレクトロウェッティングは、表面に電場を印加し、表面上に存在する液体の液滴と表面との間の表面張力に影響を与えることによって、表面の湿潤特性を変化させることを含み得る。連続流体流動は、外部圧力源、例えば外部機械ポンプもしくは統合機械マイクロポンプ、または毛管力および動電機構の組合せにより、液体の液滴を移動させるために使用され得る。受動的力の例は、これらに限定されないが、T字接合および流動集束法を含む。受動的力の他の例は、より高密度の非混和性液体、例えば重質油流体の使用を含み、これは、第1の基板の表面上の液体の液滴に結合して、表面にわたり液体の液滴を置き換えることができる。より濃い非混和性液体は、水より高密度であり、認識可能な程度まで水と混合しない任意の液体であってもよい。例えば、非混和性液体は、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、極性油、非極性油、フッ素化油、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1-ヘキサノール等であってもよい。他の実施形態において、電気的駆動は、非電気的または受動的力の非存在下で、水性および非混和性相を含む二相液滴を移動させるために使用される。電気的駆動は、非電気力の印加なしに、二相液滴の水相の移動をもたらし、この移動が一方で非混和性相を引き出すことにより非混和性相の移動を間接的にもたらす。したがって、いくつかの実施形態において、油滴を使用して水性液滴を押し出すことができ、油滴は、例えば試料液滴を試薬液滴等と融合させるための方法の間、電気力の印加なしに圧力を印加することにより移動される。
【0039】
第1の基板と第2の基板との間の空間は、1mmまで、例えば0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、140μm、200μm、300μm、400μm、500μm、1μm~500μm、100μm~200μm等の高さであってもよい。本明細書に記載のデバイスにおいて生成および移動される液滴の体積は、約10μl~約5pl、例えば10μl~1pl、7.5μl~10pl、5μl~1nL、2.5μl~10nL、または1μl~100nL、800~200nL、10nL~0.5μlの範囲であってもよく、例えば、10μl、1μl、800nL、100nL、10nL、1nL、0.5nL、10plまたはそれ未満であってもよい。理解されるように、二相液滴の体積は、水性液滴および非混和性液滴の体積の合計である。二相液滴の体積は、10μl~約5plの範囲内であってもよい。
【0040】
WO2016/161400の図1Aは、主題の方法を実行するために使用され得るデバイス10を例示している。WO2016/161400に記載のように、デバイス10は、第1の基板11および第2の基板12を含み、第2の基板12は、第1の基板11の上に位置付けられ、ギャップ13だけ第1の基板から離れている。図1Aに例示されるように、第2の基板12は、第1の基板11と同じ長さである。しかしながら、他の例示的デバイスにおいて、第1の基板および第2の基板は、異なる長さであってもよい。第2の基板は、電極を含んでもよく、または含まなくてもよい。第1の基板11は、第1の基板の上面上に位置付けられた一連の電極17を含む。誘電性/疎水性材料(例えば、誘電性であると共に疎水性であるTeflon)の相18は、第1の基板の上面上に配置され、一連の電極17を被覆する。ウェルのアレイ19は、第1の基板16上の誘電体層18に位置付けられる。ある特定の場合において、本開示の方法において使用される非混和性流体の液滴は、デバイスの近位領域に、例えばデバイスの周縁部近くに導入されてもよい。
【0041】
WO2016/161400の図2Aは、本明細書で開示される方法を実行するために使用され得る別の例示的デジタルマイクロ流体デバイス30を例示している。デバイス30は、第1の基板31および第2の基板32を含み、第2の基板32は、第1の基板31の上に位置付けられ、ギャップ33だけ第1の基板の上面から離れている。第1の基板31は、液体の液滴、例えば試料液滴、試薬液滴等が、第1の基板31上に導入される部分35を含む。第1の基板31は、遠位部分36を含み、これに向かって液体の液滴が移動する。第1の基板31は、第1の基板の上面上に位置付けられた一連の電極37を含む。誘電性材料の層38は、第1の基板の上面上に配置され、一連の電極37を被覆する。疎水性材料の層34が、誘電体層38の上に重ねられる。ウェルのアレイ39は、第1の基板31の遠位部分上の疎水性層34に位置付けられる。ウェルのアレイは、親水性または疎水性表面を有してもよい。
【0042】
いくつかの例において、水性液滴は、液滴駆動部(図示せず)を介してギャップ内に導入されてもよい。他の例において、水性液滴または非混和性流体の液滴は、流体入口、ポート、またはチャネルを介してギャップ内に導入されてもよい。デバイスの追加的な関連構成要素は、図に示されていない。そのような構成要素は、試料、洗浄緩衝液、結合メンバー、酵素基質、廃棄流体等を保持するためのチャンバを含み得る。アッセイ試薬は、デバイスの一部としての外部貯蔵部内に格納されてもよく、特定のアッセイステップに必要な場合、貯蔵部からデバイス表面に所定の体積が移動され得る。さらに、アッセイ試薬は、乾燥、印刷、または凍結乾燥された試薬の形態でデバイス上に堆積されてもよく、それらは活性を失うことなく長期間保存され得る。そのような乾燥、印刷または凍結乾燥された試薬は、検体分析の前またはその間に再水和されてもよい。
【0043】
いくつかの例において、第1の基板は、紙(インクジェット印刷電極を有する)、ポリマー等の可撓性材料で作製され得る。他の例において、第1の基板は、例えばプリント基板、プラスチックまたはガラスもしくはシリコン等の非可撓性材料で作製され得る。いくつかの例において、第1の基板は、単一のシートで作製され、次いでこれが後続の処理に供されて一連の電極を形成し得る。いくつかの例において、第1の基板上に複数の一連の電極が製造されてもよく、これが切断されて一連の電極が重ねられた複数の第1の基板を形成し得る。いくつかの例において、電極は、一般的な接着剤またははんだにより導電層の表面に結合され得る。第2の基板は、これらに限定されないが、例えば紙(インクジェット印刷電極を有する、または有さない)、ポリマー、プリント基板等の可撓性材料を含む任意の好適な材料で作製され得る。他の例において、第2の基板は、例えばプリント基板、プラスチックまたはガラスもしくはシリコン等の非可撓性材料で作製され得る。いくつかの例において、第1の基板および第2の基板は、ガラス、シリコン、またはプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリメチルメタクリレート(PMMA))からなる群から独立して選択される材料で作製される。いくつかの例において、両方の基板がPMMAで作製されてもよい。
【0044】
いくつかの例において、電極は、金属、金属混合物もしくは合金、金属-半導体混合物もしくは合金、または導電性ポリマーを含む。金属電極のいくつかの例は、銅、金、インジウム、スズ、インジウムスズ酸化物、およびアルミニウムを含む。いくつかの例において、誘電体層は、低い電気伝導性を有する、または静電場を維持することができる絶縁材料を含む。いくつかの例において、誘電体層は、磁器(例えばセラミック)、ポリマーまたはプラスチック(例えばPETもしくはPMMA)で作製されてもよい。いくつかの例において、疎水性層は、疎水性特性を有する材料、例えばプラスチック(例えばPETまたはPMMA)、Teflon、ポリ(p-キシリレン)ポリマー、および包括的なフルオロカーボン等で作製されてもよい。別の例において、疎水性材料は、フルオロ界面活性剤(例えばFluoroPel)であってもよい。誘電体層上に堆積された親水性層を含む実施形態において、それは、ガラス、石英、シリカ、金属水酸化物、または雲母であってもよい。
【0045】
当業者には、一連の電極が、第1の基板の単位面積当たりある特定の数の電極を含んでもよく、この数は、電極のサイズおよび相互に嵌合した電極の存在または非存在に基づいて増加または減少させることができることが理解される。電極は、フォトリソグラフィー、原子層堆積、レーザスクライブまたはエッチング、レーザアブレーション、および電極のインクジェット印刷を含む様々なプロセスを使用して製造され得る。
【0046】
いくつかの例において、第1の基板の上面上に配置された導電層に特殊マスクパターンが適用され、続いて露出した導電層のレーザアブレーションにより第1の基板上に一連の電極が生成されてもよい。
【0047】
いくつかの例において、一連の電極により生成された電位は、ウェルのアレイにより受容されるデジタルマイクロ流体デバイスの表面にわたり、一連の電極を被覆する第1の層(または存在する場合には第2の層)の上面上に形成された水性液滴を移送する。各電極は、デジタルマイクロ流体デバイスの表面にわたり液滴を独立して移動させることが可能であってもよい。
【0048】
WO2016/161400の図3Aは、例示的な統合デジタルマイクロ流体デバイス100の側面図を例示しており、液滴はギャップ170内に移動している。WO2016/161400の図3Aにおいて、液体の液滴は、近位部分115からウェルのアレイ160を含む遠位部分130へと駆動されるように示されている。複数のナノビーズまたはナノ粒子190を含む液体の液滴180は、一連の電極145を使用して、能動的な指向性移動により、近位部分115を通って遠位部分130に移動している。矢印は、液体の液滴の運動の方向を示す。ここではナノビーズ/ナノ粒子が示されているが、液滴は、ナノビーズ/ナノ粒子の代わりに、またはそれに追加して、検体分子を含んでもよい。
【0049】
ある特定の実施形態において、ウェルを封止するために使用され、二相液滴の水相を電気的に駆動することにより移動される非混和性液体は、約0.9D未満の分子双極子モーメント、約3未満の誘電率、および/または約10-9S m-1未満の導電率を有してもよい。ある特定の実施形態において、ウェルを封止するために使用され、二相液滴の水相を電気的に駆動することにより移動される非混和性液体は、DMF電極による電気力の印加により移動可能な水相と関連していないと、DMF電極による電気力の印加により大きく移動可能ではない。ある特定の実施形態において、ウェルを封止するために使用され、二相液滴の水相を電気的に駆動することにより移動される非混和性液体は、著しく分極性ではない。
【0050】
WO2016/161400の図4Aは、デバイスの遠位部分に移動し、ウェルのアレイ160上に位置付けられた、ナノビーズまたはナノ粒子190を含む液体の液滴180を例示している。液滴は、ウェルのアレイ上を連続的に移動してもよく、または、移動は、ウェルのアレイ上で停止されてもよい。ウェルのアレイ上の液滴の移動、および/または液滴の停止は、ウェルのアレイ160内へのナノ粒子またはナノビーズ190の堆積を容易にする。ウェルは、1つのナノビーズ/ナノ粒子を含むような寸法である。WO2016/161400の図4Aに例示されるデバイスにおいて、液滴は、一連の電極145を使用してウェルのアレイ上を移動される。ここではナノビーズ/ナノ粒子が示されているが、検体分子を含む液滴が同様にして、また非混和性流体がウェルを封止する前に検体分子をウェル内に拡散させるのに十分な期間、検体分子を含む液滴をウェルの上で停止させることにより、移動されてもよい。ウェルは、1つのナノビーズ/ナノ粒子を含むような寸法である。ウェルはまた、ウェル当たり1つの検体分子を含むような寸法であってもよい。
【0051】
本明細書において使用される場合、デジタルマイクロ流体工学は、第1の基板と第2の基板との間に画定される空間等の微小空間内で例えば液滴を移動させる、液滴を分割する、液滴を融合する等、マイクロ流体デバイス内で液滴を操作するための電極のアレイの使用を指す。本明細書において使用される場合、「液滴」および「流体液滴」という用語は、同義的に使用され、形状がほぼ球形であり、少なくとも片側がマイクロ流体デバイスの壁または基板に結合した別個の体積の液体を指す。液滴に関連するほぼ球形とは、球形、部分的に平坦な球、例えばディスク形状、スラグ形状、切頭球、楕円体、半球形、または卵形等の形状を指す。本明細書で開示されるデバイス内の液滴の体積は、約10μl~約5pL、例えば10μl~1pL、7.5μl~10pL、5μl~1nL、2.5μl~10nL、または1μl~100nLの範囲であってもよく、例えば10μl、5μl、1μl、800nL、500nL、またはそれ未満であってもよい。
【0052】
いくつかの例において、ウェルのアレイは、複数の個々のウェルを含む。ウェルのアレイは、1mm当たり10~10個の範囲であってもよい複数のウェルを含んでもよい。ある特定の場合において、約12mmの面積を覆う約100,000~500,000個のウェル(例えばフェムトリットルウェル)のアレイが製造され得る。各ウェルは、幅約4.2μm×深さ3.2μm(体積約50フェムトリットル)であってもよく、単一のビーズ/粒子(直径約3μm)を保持することが可能であってもよい。この密度では、フェムトリットルウェルは、互いに約7.4μmの距離だけ離間している。いくつかの例において、10nm~10,000nmの直径を有する個々のウェルを有するように、ナノウェルアレイが製造されてもよい。
【0053】
ある特定の場合において、試料中に存在する検体の量に関連する信号を測定するために光学的に検査されるウェルのアレイは、サブフェムトリットル体積、フェムトリットル体積、サブナノリットル体積、ナノリットル体積、サブマイクロリットル体積、またはマイクロリットル体積を有してもよい。例えば、ウェルのアレイは、フェムトリットルウェルのアレイ、ナノリットルウェルのアレイ、またはマイクロリットルウェルのアレイであってもよい。ある特定の実施形態において、アレイ内のウェルは、全て実質的に同じ体積を有してもよい。ウェルのアレイは、100μlまで、例えば約0.1フェムトリットル、1フェムトリットル、10フェムトリットル、25フェムトリットル、50フェムトリットル、100フェムトリットル、0.1pL、1pL、10pL、25pL、50pL、100pL、0.1nL、1nL、10nL、25nL、50nL、100nL、0.1マイクロリットル、1マイクロリットル、10マイクロリットル、25マイクロリットル、50マイクロリットル、または100マイクロリットルの体積を有してもよい。
【0054】
ウェル内に単一のナノビーズ/ナノ粒子/検体分子を入れると、デジタル読出しまたはアナログ読出しのいずれかが可能になる。例えば、少数陽性ウェル(約70%未満が陽性)の場合、ポアソンの統計を使用してデジタル形式で検体濃度を定量することができ、多数陽性ウェル(約70%超)の場合、信号保持ウェルの相対強度が単一のナノビーズ/ナノ粒子/検体分子のそれぞれから生成された信号強度と比較され、アナログ信号を生成するために使用される。デジタル信号は、より低い検体濃度に使用され得、一方アナログ信号は、より高い検体濃度に使用され得る。デジタル定量化とアナログ定量化との組合せが使用されてもよく、これは線形ダイナミックレンジを拡張し得る。本明細書において使用される場合、「陽性ウェル」は、ナノビーズ/ナノ粒子/検体分子の存在に関連した信号を有するウェルを指し、この信号は閾値を超える。本明細書において使用される場合、「陰性ウェル」は、ナノビーズ/ナノ粒子/検体分子の存在に関連した信号を有し得ないウェルを指す。ある特定の実施形態において、陰性ウェルからの信号は、バックグラウンドレベル、すなわち閾値未満であってもよい。
【0055】
ウェルは、平坦な底面を有する円筒形状、丸い底面を有する円筒形状、立方体、直方体、円錐台形、倒立円錐台形、または円錐形等の様々な形状のいずれであってもよい。ある特定の場合において、ウェルは、ウェルアレイ上を移動した液体の液滴中に存在するナノビーズまたはナノ粒子を受容および保持するのを容易化するように配向していてもよい側壁を有してもよい。いくつかの例において、ウェルは、第1の側壁および第2の側壁を有してもよく、第1の側壁は、第2の側壁に対向していてもよい。いくつかの例において、第1の側壁は、ウェルの底部に対して鈍角を有するように配向し、第2の側壁は、ウェルの底部に対して鋭角を有するように配向している。液滴の移動は、ウェルの底部に平行で第1の側壁から第2の側壁に向かう方向であってもよい。
【0056】
いくつかの例において、ウェルのアレイは、成形、圧力、熱、もしくはレーザ、またはそれらの組合せの1つ以上によって製造され得る。いくつかの例において、ウェルのアレイは、ナノインプリント/ナノスフェアリソグラフィーを使用して製造され得る。
【0057】
本明細書に記載のデバイスは、いくつかの方法によって製造され得る。ある特定の場合において、方法は、第1の基板、一連の電極、誘電体層および疎水性層を構築するために、レーザアブレーション、噴霧コーティング、ロールツーロール、およびナノインプリントリソグラフィー(NIL)の組合せを含んでもよい。例示的な方法は、参照により本明細書に援用されるWO2016/161400に開示されている。
【0058】
ある特定の実施形態において、DMFチップは、第1の基板および第2の基板を使用して形成されてもよく、ウェルのアレイは、第1の基板に位置し、上下逆の構成で使用される。例えば、第1の基板は、DMFチップの上部プレートを形成し、第1の表面および第1の表面とは反対の第2の表面を含み、第2の基板は、DMFチップの下部プレートを形成し、第1の表面および第1の表面とは反対の第2の表面を含み、下部プレートの第1の表面は、上部プレートの第2の表面と対向構成にあり、ウェルのアレイは、上部プレートの第2の表面に位置付けられる。ある特定の実施形態において、ウェルのアレイは、少なくともウェル間の領域が疎水性であるように疎水性層に位置付けられてもよい。ウェルの内部は、疎水性であってもよく、または疎水性でなくてもよい。いくつかの場合において、ウェルの外側の領域は疎水性であり、ウェルの内側の領域は親水性である。ある特定の場合において、上部基板は、複数の層を含んでもよい。例えば、上部基板は、上部から下部に向かって、ガラスまたはプラスチック(例えば、PET、シクロオレフィンポリマー(COP)、もしくはPMMA)等のポリマーの層、単一電極または個々に駆動可能な電極のアレイを形成する導電性材料(例えばインジウムスズ酸化物(ITO))の層、絶縁材料の層、絶縁性材料の層に位置付けられたウェルのアレイを含んでもよい。ある特定の場合において、絶縁性材料の層は、ウェルの内部に配置されてもよい、または配置されなくてもよい疎水性材料でコーティングされてもよい。上部基板は、チャンバの側面を画定する切り欠きを含むスペーサーで下部基板から分離されてもよく、上部プレートの第2の表面および下部プレートの第1の表面は、チャンバの上部および下部を画定する。下部基板は、複数の層を含んでもよい。例えば、下部基板は、上部から下部に向かって、疎水性層、誘電体層、個々に駆動可能な電極のアレイまたは単一の電極を形成する導電層、ガラスまたはプラスチック(例えば、PET、シクロオレフィンポリマー(COP)もしくはPMMA)等のポリマーの層を含んでもよい。
【0059】
そのようなDMFチップの上部基板、スペーサーおよび下部基板を作製するために、任意の標準的方法が利用され得る。例えば、PMMA、PET、またはCOPロールは、単一の電極(例えば接地電極)を形成する導電性材料の層でコーティングされてもよい。導電性材料は、絶縁性材料でコーティングされてもよく、ミクロンサイズのピラーを有するドラムローラによるエンボス加工に続く、UVによる絶縁性材料の硬化により、絶縁性材料にウェルのアレイが形成されてもよい。絶縁性材料は、疎水性材料でコーティングされてもよい。スペーサーは、所望の形状のDMFチャンバを形成するためにレーザ切断され得る任意の不活性材料を使用して形成されてもよい。下部基板は、導電性材料が上に配置されたプラスチックのロールであってもよい。下部基板上の導電性材料は、複数の個々に駆動可能な電極を含むDMF電極のアレイを形成するためにレーザアブレーションされてもよい。誘電性材料が電極上に配置されてもよく、続いて誘電性材料が疎水性コーティングでコーティングされてもよい。上部基板、スペーサー、および下部基板は、手作業で、半自動的に、または自動的に整列され、DMFチップに組み立てられてもよく、上部基板、スペーサー、および下部基板により画定されるチャンバは、上部基板の疎水性の第2の表面および下部プレートの疎水性の第1の表面により画定される実質的に疎水性の内部を含む。したがって、いくつかの実施形態において、液滴は、DMFチャンバの2つの疎水性表面の間を移動する。DMFチップの組立てのために、上部基板の第2の表面は、下部基板の第1の表面と対向構成で設置され、その結果、上下逆の構成で、および下部基板の疎水性層と対向してDMFチップの内部にウェルのアレイが設置される。
【0060】
DMFチップを形成するために使用される材料は、本明細書に記載されており、任意の標準的材料であってもよい。ある特定の場合において、上部基板は、上部から下部に向かって、導電性材料(例えばITO)の層でコーティングされ、ウェルのアレイがNILにより形成されたNalex等の絶縁性材料の層でコーティングされたPETの層を含んでもよく、絶縁性材料の層は、FluoroPel等の疎水性材料でコーティングされる。ある特定の場合において、下部基板は、上部から下部に向かって、疎水性コーティング(例えばFluoroPel)の層、その下に誘電性コーティング(例えばCyanoethyl Pullulan(CEP))、その下にアルミニウムの層(個々に制御可能な電極のアレイを形成するためにレーザアブレーションされた)、その下に配置されたプラスチック(例えばPETもしくはPMMA)またはガラスの層を含んでもよい。
【0061】
本開示のデバイスは、手作業で、または自動的もしくは半自動的に操作され得る。ある特定の場合において、デバイスは、検体関連信号の生成、本明細書に記載のようなウェルの封止、および/または信号の検出に必要なステップを行うためのプログラムを実行するプロセッサによって操作されてもよい。本明細書において使用される場合、「検体関連信号」または「検体関与信号」という語句は、検体の存在を示し、試料中の検体の量に比例する信号を指す。信号は、蛍光、化学発光、比色、比濁等であってもよい。ある特定の場合において、読出しは、デジタルであってもよく、例えば、デジタルカウントを得るために陽性カウント(例えばウェル)の数が、陰性カウント(例えばウェル)の数と比較される。
【0062】
ナノウェルアレイは、誘電体/疎水性層、疎水性層(存在する場合)、または親水性層(存在する場合)上に製造され得る。第1の基板の疎水性層上にナノウェルアレイを製造するための1つの例示的方法は、熱または紫外線ナノインプリントリソグラフィーを使用する。本明細書で説明される場合、「ロールツーロール」は、「リールツーリール(R2R)」という同等の用語を含み、例えばメートル毎秒の速度を含む高速度で基板を様々な構成要素を通して移動させることにより動作する。ロールツーロールの組立ては、ロール基板の巻き出し、構成要素を通した基板の送り出し、および処理された基板のロールへの巻き戻しを容易にする。
【0063】
いくつかの例において、対象となる検体または生体試料の検出は、光信号検出により行うことができる。例えば、信号強度結果を測定するための励起光(例えばレーザ)の発光がある。他の例において、所望の検体は、各ウェルチャンバから発せられる光信号を測定することにより検出され、結果を定量することにより定量され得る。例えば、デジタル分析により、陽性カウント(例えばウェル)の数が陰性カウント(例えばウェル)の数と比較される。デバイスのウェルからの様々な信号が検出され得る。例示的な信号は、蛍光、化学発光、比色、比濁等を含む。
【0064】
ウェルのアレイ上に位置付けられた液滴からウェル内への粒子/ビーズの移動を容易化するために、いくつかの力が利用され得る。そのような力は、重力、電気力、磁力等を含む。永久磁石または電磁石が、磁力の源として使用され得る。検体分子は、拡散によりウェル内に堆積され得る。
【0065】
検体試料および検体検出アッセイ
検出可能な信号を生成するために任意のアッセイ形式を使用することができ、その信号は、試料中の対象となる検体の存在を示し、試料中の検体の量に比例する。例えば免疫測定法、臨床化学アッセイ、細胞ベースアッセイ、蛍光発生反応、酵素アッセイ等のアッセイは、検体関連信号を生成し得る。
【0066】
本明細書において提供されるデバイスは、試料中の対象となる検体の量を測定するために使用され得る。本明細書において使用される場合、「検体」、「標的検体」、「対象となる検体」という用語は、本明細書で開示される方法およびデバイスにおいて測定される検体を指す。検体は、小分子、ペプチド、タンパク質、RNA、DNA、脂質、炭水化物、毒素、または細胞であってもよい。試料中に存在する検体の量を決定するために分析され得る試料は、例えば血液、血漿、血清、唾液、汗、尿等の生体液試料を含み得る。
【0067】
本明細書において使用される場合、「試料」、「試験試料」、「生体試料」という用語は、対象となる検体を含む、または含むと見られる流体試料を指す。試料は、任意の好適な源から得ることができる。いくつかの場合において、試料は、液体、流動性の粒子状固体、または固体粒子の懸濁流体を含み得る。いくつかの場合において、試料は、本明細書に記載の分析の前に処理されてもよい。例えば、試料は、分析の前にその源から分離または精製されてもよいが、ある特定の実施形態において、検体を含む未処理試料が直接分析されてもよい。検体分子の源は、合成物(例えば研究室内で生成された)、環境物質(例えば空気、土壌等)、動物、例えば哺乳動物、植物、またはそれらの任意の組合せであってもよい。具体例において、検体の源は、人体内物質(例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙液、リンパ液、羊水、肺洗浄液、脳脊髄液、便、組織、器官等)である。組織は、これらに限定されないが、骨格筋組織、肝組織、肺組織、腎組織、心筋組織、脳組織等を含み得る。試料は、液体試料または固体試料の液体抽出物であってもよい。ある特定の場合において、試料の源は、器官または組織、例えば生検試料であってもよく、これは組織分解/細胞溶解により可溶化されてもよい。試料に対して免疫測定法を行う前に、試料は処理されてもよい。例えば、試料は、濃縮、希釈、精製、増幅等がなされてもよい。
【0068】
検体関連信号を生成するいくつかの免疫測定形式が使用され得る。いくつかの実施形態において、標的検体を含む試料液滴が、試料中に存在する標的検体に特異的に結合する第1の結合メンバーが付着した磁性ビーズを含む液滴と融合されてもよい。融合すると、単一の液滴が形成され、これは試料液滴中に存在する検体への第1の結合メンバーの結合を可能にするのに十分な時間インキュベートされ得る。任意選択で、単一の液滴は、試料と第1の結合メンバーとの混合を促進するために撹拌されてもよい。混合は、単一の液滴を前後に移動させ、単一の液滴を複数の電極上で移動させ、液滴を分割し、次いで液滴を融合することにより達成され得る。次に、単一の液滴は、ビーズをデバイス内の場所に保持するために磁力に供されてもよく、一方で液滴は、廃棄物チャンバまたはパッドまで移動され、第2の結合メンバーを含む液滴と置換されてもよい。第2の結合メンバーは、検出可能に標識化されてもよい。標識は、光学的に検出され得る任意の標識であってもよい。標識は、蛍光標識であってもよい。第2の結合メンバーを添加する前に、洗浄緩衝液の液滴を磁力を使用してビーズが保持される場所まで移動させることにより、任意選択の洗浄ステップが行われてもよい。ビーズは、洗浄緩衝液中に再懸濁されてもよく、またはされなくてもよく、磁力が磁性ビーズに印加され、洗浄緩衝液が廃棄場所に運搬される。第1の結合メンバーに結合した検体に第2の結合メンバーが結合するのに十分な期間の後、ビーズがその場所に保持される一方で第2の結合メンバーを含む液滴がそこから移動され得る。ビーズは、洗浄緩衝液の液滴を使用して洗浄され得る。洗浄ステップの後、磁力が取り除かれてもよく、第1の結合メンバー、検体および第2の結合メンバーの複合体を有する標識化ビーズを含む液滴が、ウェルのアレイ上に移動され得る。標識化ビーズは、検出モジュール内のウェルのアレイ内に導入され得る。ビーズは、重力を用いて、または電気力もしくは磁力を印加することにより導入され得る。ウェル内に位置していない任意のビーズを除去するための任意選択の洗浄ステップの後、ウェルは、本明細書に記載のように、疎水性液体を用いて封止され得る。
【0069】
別の実施形態において、第2の結合メンバーは、開裂性リンカーにより粒子またはビーズに付着してもよい。任意の結合していない第2の結合メンバーを除去するための洗浄ステップの後、第2の結合メンバーに付着した粒子またはビーズは、化学的に、または光開裂により開裂され得る。開裂した粒子/ビーズは、ウェルのアレイに移動されてもよく、ウェル内に存在する粒子/ビーズは、本明細書に記載のようにウェルを封止した後に定量されてもよい。いくつかの場合において、第2の結合メンバーに付着した粒子/ビーズは、標識化されてもよい。例えば、粒子/ビーズは、色分けされてもよい、または蛍光性であってもよい。
【0070】
別の実施形態において、第2の結合メンバーは、開裂性標識に付着してもよい。任意の結合していない第2の結合メンバーを除去するための洗浄ステップの後、第2の結合メンバーに付着した標識は、化学的に、または光開裂により開裂され得る。開裂した標識は、検出モジュールに移動されてもよく、そこで標識はウェル内に拡散させられる。ウェルに堆積していない任意の標識の除去後、ウェルは、本明細書に記載のように疎水性流体で封止されてもよく、標識が定量されてもよい。
【0071】
検体関連信号を生成し得る第2の免疫測定形式が使用されてもよい。いくつかの実施形態において、標的検体を含む試料液滴が、標識化検体または標識化競合分子を含む液滴と融合され、単一の液滴が生成されてもよい。標識化検体または標識化競合分子は、第1の結合メンバーへの結合に関して標的検体と競合する。標識は、光学的に検出され得る任意の標識であってもよい。標識は、蛍光標識であってもよい。単一の液滴は、混合を促進するために撹拌されてもよく、混合は、単一の液滴を前後に移動させ、単一の液滴を複数の電極上で移動させ、液滴を分割し、次いで液滴を融合することにより、またはSAWを使用する等により達成され得る。次いで、単一の液滴は、標的検体および標識化検体(または標識化競合分子)に特異的に結合する第1の結合メンバーが付着した磁性ビーズを含む液滴と融合されてもよい。融合すると、第2の単一の液滴が形成され、これは液滴中に存在する標的検体または標識化検体(または標識化競合分子)を第1の結合メンバーに競合的に結合させるのに十分な時間インキュベートされ得る。任意選択で、第2の単一の液滴は、標的検体-標識化検体混合物と第1の結合メンバーとの混合を促進するために撹拌されてもよい。次に、第2の単一の液滴は、ビーズをデバイス内の場所に保持するために磁力に供されてもよく、一方で液滴は、次いで廃棄物貯蔵部/パッドまで移動され、ビーズは、洗浄緩衝液を含む液滴と接触されてもよい。蛍光標識が使用される場合、ビーズは洗浄緩衝液中に再懸濁されてもよく、次いでビーズは、検出モジュールに移動されてもよい。使用される標識が酵素である場合、磁性ビーズを捕捉するために磁力が印加され、洗浄緩衝液は廃棄物場所に運搬される。酵素基質を含む液滴を、第1の結合メンバー、検体および標識化検体の複合体を有する磁性ビーズと接触させてもよい。任意選択の混合が行われてもよく、その後、ビーズが検出モジュールに移動されてもよい。標識化ビーズは、ウェルのアレイ内に導入され得る。ビーズは、重力を用いて、または電気力もしくは磁力を印加することにより導入され得る。ウェル内に位置していない任意のビーズを除去するための任意選択の洗浄ステップの後、ウェルは、本明細書に記載のように、非混和性液体を用いて封止され得る。
【0072】
当業者に理解されるように、結合メンバーは、分析される検体によって決定される。広範な標的分子に対する結合メンバーが知られており、または、既知の技術を使用して容易に発見もしくは開発され得る。例えば、標的検体がタンパク質である場合、結合メンバーは、タンパク質、特に抗体またはその断片(例えば、抗原結合断片(Fab)、Fab’断片、F(ab’)断片、全長ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、抗体様断片等)、他のタンパク質、例えば受容体タンパク質、タンパク質A、タンパク質C等を含み得る。検体が小分子、例えばステロイド、ビリン、レチノイド、および脂質である場合、第1および/または第2の結合メンバーは、骨格タンパク質(例えばリポカリン)であってもよい。いくつかの場合において、タンパク質検体に対する結合メンバーは、ペプチドであってもよい。例えば、標的検体が酵素である場合、好適な結合メンバーは、酵素基質、および/またはペプチド、小分子等であってもよい酵素阻害剤を含み得る。いくつかの場合において、標的検体がリン酸化種である場合、結合メンバーは、ホスフェート結合剤を含んでもよい。例えば、ホスフェート結合剤は、米国特許第7,070,921号および米国特許出願公開第2006/0121544号に記載のもの等の金属イオン親和性媒体を含んでもよい。ある特定の場合において、結合メンバーの少なくとも1つは、アプタマー、核酸、例えばDNA、RNA、オリゴヌクレオチド等であってもよい。
【0073】
ある特定の実施形態において、結合メンバーは、検体に特異的に結合する。「特異的に結合する」または「結合特異性」とは、結合メンバーが、試験試料の検体分子と他の構成要素または汚染物質とを区別するのに十分な特異性をもって検体分子に結合することを意味する。例えば、一実施形態によれば、結合メンバーは、検体上のエピトープに特異的に結合する抗体であってもよい。
図1
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図3
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図5
図6