(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ベルトテンショナー
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20220701BHJP
F16K 15/04 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
F16H7/08 Z
F16K15/04 C
(21)【出願番号】P 2019543384
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 FR2018050357
(87)【国際公開番号】W WO2018150137
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-19
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギヨ ブノア
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506976(JP,A)
【文献】特開2001-221306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-開口部(11)と底部(12)とを備えた中空体(10)であって、流体を備える、中空体(10)と、
-前記中空体の周りに配置されたスリーブ(20)と、
-軸(30)と、
‐前記軸(30)のための第1の案内手段(40)であって、前記中空体(10)の前記開口部(11)に取り付けられた、第1の案内手段(40)と、
-前記軸(30)のための第2の案内手段(50)であって、前記軸(30)が移動するように意図された内部容積(VI)と、前記中空体(10)内部の前記第2の案内手段(50)の外側にある外部容積(VE)とを画定する、チューブ(50)の形態である、第2の案内手段(50)と、
-前記軸(30)の第1の案内手段(40)と第2の案内手段(50)との間で、前記軸(30)に固定的に取り付けられた、第1のカップ(60)と、
-底部(12)に取り付けられた第2のカップ(124)と、
-弾性復帰手段(70)であって、前記第2の案内手段(50)との間に、半径方向に取られたゼロ以外の距離(D)があるように、前記第2の案内手段(50)の周りに配置され、前記第1のカップ(60)と前記第2のカップ(124)との間に保持されている、弾性復帰手段(70)と、
-前記第2の案内手段(50)の一方の端部(51)と、前記中空体の前記底部(12)との間に取り付けられたシート(83)を備えるバルブ(80、80’)であって、このバルブと少なくとも1つの流体連通チャネル(90)は関連付けられて、前記第2の案内手段(50)の前記外部容積(VE)と、前記第2の案内手段(50)の前記内部容積(VI)との間の、前記中空体(10)に含まれる流体の通過を可能にする、バルブ(80、80’)と、を備えるテンショナー(100、100’)において、
-前記底部(12)が、中央ゾーン(120)、前記中央ゾーン(120)に対して隆起した周辺ゾーン(121)、および前記中央ゾーン(120)を前記周辺ゾーン(121)に接続する中間ゾーン(122)を含み、
-前記第
2のカップ(124)が、前記周辺ゾーン(121)の前にある第1の部分(124A)と、前記中間ゾーン(122)の前にあり、前記シート(83)のベース(831)と接触している、第2の部分(124B)とを備え、このベース(831)自体は前記中央ゾーン(120)と接触しており、
-前記弾性復帰手段(70)が、前記第
2のカップ(124)の前記第1の部分(124A)を支えるように設計されており、
-前記少なくとも1つの流体連通チャネル(90)が、この第2の部分(124B)からゼロ以外の距離(d)を置いて、前記第
2のカップ(124)の前記第2の部分(124B)の前で開くように配置されており、この配置は、前記中空体(10)の流体領域が前記第2の案内手段(50)の周りで、少なくとも前記連通チャネル(90)まで画定されることを可能にし、前記流体領域には障害物がないことを特徴とする、長手方向軸線(AL)を備えたテンショナー(100、100’)。
【請求項2】
前記スリーブ(20)が、前記中空体(10)に対して移動可能に取り付けられ、前記軸(30)が、前記スリーブ(20)に対して固定的に取り付けられた、請求項1に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項3】
シース(F)が設けられ、その一方の端部(F1)は前記第
2のカップ(124)の前記第1の部分(124A)と接触しており、次に前記弾性復帰手段(70)が、前記シース(F)の前記端部(F1)を支え、前記シース(F)は、前記第2の案内手段(50)から半径方向に取られたゼロ以外の距離(D’)を置いて、前記弾性復帰手段(70)と前記第2の案内手段(50)との間で、前記第2の案内手段(50)の周りにさらに配置されているため、障害物のない前記中空体(10)の前記流体領域は、前記シース(F)と、前記少なくとも1つの流体連通チャネル(90)までの前記第2の案内手段(50)との間に画定される、請求項1または2に記載のテンショナー(100’)。
【請求項4】
前記弾性復帰手段(70)がつる巻きばねである、請求項1から3のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項5】
前記シート(83)の前記ベース(831)は、半径方向に取られた寸法が、前記中空体(10)の前記底部(12)の前記中央ゾーン(120)の、同様に半径方向に取られた寸法よりも厳密に小さいために、前記シート(83)と前記中間ゾーン(121)との間に隙間(J)がある、請求項1から4のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項6】
前記バルブ(80、80’)が、
前記ベース(83)に対して固定された専用の弾性復帰手段(82)と、
前記専用の弾性復帰手段(82)に取り付けられ、前記シート(83)に載置された、閉塞部材(81)と、をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項7】
前記閉塞部材(81)が50mgから700mgの間の質量を有し、前記専用の弾性復帰手段(82)が、前記閉塞部材(81)を前記シート(83)に押し付ける方向に、0.05Nから0.4Nの間の予圧を加えるように設計された、請求項6に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項8】
前記専用の弾性復帰手段(82)が、30N.m.から80N.m.の間の剛性kを有する、請求項7に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項9】
前記バルブ(80、80’)が、前記閉塞部材(81)の行程を制御するように設計された止め具(84、84’)を備える、請求項
6から8のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項10】
前記閉塞部材(81)の前記行程が0.3mmから2.5mmの間である、請求項9に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項11】
前記閉塞部材がボール(81)であり、前記シート(831)が、前記ボールと協働するための円錐台形の内側部分を備え、この円錐台形の内側部分は、30°から90°の間の角度(α)によって画定される、請求項6から10のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項12】
前記中空体(10)に含まれる前記流体が油である、請求項1から11のいずれか一項に記載のテンショナー(100、100’)。
【請求項13】
前記油が、ISO VG5規格からISO VG150規格の間で規定されるグレードを有し、これらの規格は、ISO 3448規格による動粘度によって規定される、請求項12に記載のテンショナー(100、100’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトテンショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のテンショナーは、特に自動車分野で見ることができる。
【0003】
こうしたテンショナーは、例えば、文献US5,967,923(D1)で提案されている。
【0004】
この文献で提案されているテンショナーは、
図1(a)と
図1(b)とを含む
図1に示されている。
【0005】
図1(a)は、テンショナーの縦断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の断面D‐Dの図である。
【0006】
このテンショナー100には、長手方向軸線ALが設けられている。テンショナー100は、開口部11と底部12とが設けられた中空体10を備え、この中空体は流体を備える。テンショナー100はまた、中空体10と軸30との周りに配置されたスリーブ20を含む。
【0007】
このテンショナーは、軸30のための第1の案内手段40を設け、この第1の案内手段は、中空体10の開口部に取り付けられている。
【0008】
このテンショナーはまた、軸30のための第2の案内手段50を備え、この第2の案内手段はチューブ50の形態であり、軸30が移動するように意図された内部容積VIと、中空体10内部のチューブ(50)の外側にある外部容積VEとを画定している。チューブ50の端部51(下端)は、カップ124内に固定的に取り付けられ(強制的に取り付けられ)、カップ124は、中空体10の底部12に、より正確には、底部12から突出する軸方向突起14に配置される。カップ124はさらに、中空体10に属する、他の半径方向の周辺の突起13によって、半径方向に保持される。
【0009】
このテンショナーはまた、軸30の第1の案内手段40と第2の案内手段50との間で、軸30に固定的に取り付けられた、別のカップ60を備える。
【0010】
テンショナーはまた、弾性復帰手段70を備え、この弾性復帰手段70は、チューブ50との間に半径方向に取られたゼロ以外の距離が存在するように、チューブ50の周りに配置される。弾性復帰手段70は、カップ60とカップ124との2つの間に保持されている。
【0011】
最後に、テンショナーは、チューブ50の下端51に取り付けられたバルブ80を備え、このバルブに流体連通通路90が関連付けられて、チューブ50の外部容積VEと、チューブ50(伸張)の内側の内部容積VIとの間の、中空体10に含まれる流体の通過を可能にする。
【0012】
この文献で提案されている軸30の二重案内は、チューブ50内の軸30の移動(テンショナーの伸張または圧縮)中に、軸30をテンショナーの長手方向軸線ALに沿って保持することを可能にする。
【0013】
これは、テンショナーの最適な動作を確保するのに役立つ。
【0014】
しかし、この文献D1で提案される設計では、外部容積VEから内部容積VIへ通過することができる流体は、弾性復帰手段70と、中空体10の内壁11との間を流れ、弾性復帰手段(障害物)の存在によって妨害される恐れがある。
【0015】
次いで、流れは妨害され、テンショナーの動作を最適化することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、伸張時と圧縮時との両方で、最適化された動作をするベルトテンショナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明は、
-開口部と底部とを備えた中空体であって、流体を備える、中空体と、
-中空体の周りに配置されたスリーブと、
-軸と、
-軸のための第1の案内手段であって、中空体の開口部に取り付けられた、第1の案内手段と、
-軸のための第2の案内手段であって、軸が移動するように意図された内部容積と、中空体内部の第2の案内手段の外側にある容積とを画定する、チューブの形態である、第2の案内手段と、
-軸の第1の案内手段と第2の案内手段との間で、軸に固定的に取り付けられた、第1のカップと、
-底部に取り付けられた第2のカップと、
-弾性復帰手段であって、第2の案内手段との間に、半径方向に取られたゼロ以外の距離があるように、第2の案内手段の周りに配置され、第1のカップと第2のカップとの間に保持されている、弾性復帰手段と、
-第2の案内手段の一方の端部と、中空体の底部との間に取り付けられたシートを備えるバルブであって、このバルブと少なくとも1つの流体連通チャネルは関連付けられて、第2の案内手段の外部容積と、前記第2の案内手段内部の内部容積との間の、中空体に含まれる流体の通過を可能にする、バルブと、を備えたテンショナーにおいて、
-底部が、中央ゾーン、中央ゾーンに対して隆起した周辺ゾーン、および中央ゾーンを周辺ゾーンに接続する中間ゾーンを含み、
-第1のカップが、周辺ゾーンの前にある第1の部分と、中間ゾーンの前にあり、シートのベースと接触している、第2の部分とを備え、このベース自体は中央ゾーンと接触しており、
-弾性復帰手段が、第1のカップの第1の部分を支えるように設計されており、
-少なくとも1つの流体連通チャネルが、この第2の部分からゼロ以外の距離を置いて、第1のカップの第2の部分の前で開くように配置されており、この配置は、中空体の流体領域が第2の案内手段の周りで、少なくとも連通チャネルまで画定されることを可能にし、流体領域には障害物がない、
長手方向軸線を備えたテンショナーを提案する。
【0018】
本発明によるテンショナーはまた、少なくとも1つの以下の特徴、すなわち、
-スリーブが、中空体に対して移動可能に取り付けられ、軸が、スリーブに対して固定的に取り付けられており、
-テンショナーはシースを備え、その一方の端部は第1のカップの第1の部分と接触しており、次に弾性復帰手段が、シースのこの端部を支え、シースは、第2の案内手段から半径方向に取られたゼロ以外の距離を置いて、弾性復帰手段と第2の案内手段との間で、第2の案内手段の周りにさらに配置されているため、障害物のない中空体の流体領域は、シースと、少なくとも1つの流体連通チャネルまでの第2の案内手段との間に画定され、
-弾性復帰手段がつる巻きばねであり、
-シートのベースは、半径方向に取られた寸法が、中空体の底部の中央ゾーンの、同様に半径方向に取られた寸法よりも厳密に小さいために、シートと中間ゾーンとの間に隙間があり、
-バルブは、シートに対して固定された専用の弾性復帰手段と、専用の弾性復帰手段に取り付けられ、ベースに載置された、閉塞部材と、をさらに備え、
-閉塞部材が50mgから700mgの間の質量を有し、専用の弾性復帰手段が、閉塞部材をシートに押し付ける方向に、0.05Nから0.4Nの間の予圧を加えるように設計されており、
-専用の弾性復帰手段が30N.m.から80N.m.の間の剛性kを有し、
-バルブが、閉塞部材の行程を制御するように配置された止め具を備え、
-閉塞部材の行程が0.3mmから2.5mmの間であり、
-閉塞部材がボールであり、シートが、ボールと協働するための円錐台形の内側部分を備え、この円錐台形の内側部分は、30°から90°の間の角度によって画定され、
-中空体に含まれる流体が油であり、
-油が、ISO VG5規格からISO VG150規格の間で規定されるグレードを有し、これらの規格は、ISO 3448規格による動粘度によって規定される、
という特徴を、単独で、または組み合わせて有することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、本発明がよりよく理解され、本発明の他の目的、利点および特徴がより明らかになるであろう。
【
図2】本発明によるテンショナーの縦断面図を示す。
【
図3】
図2に示される本発明によるテンショナーの実施形態の変形例を示す図である。
【
図4】
図4(a)と
図4(b)とを含み、
図3のテンショナーを2つの極限位置で示す図である。
【
図7】本発明によるテンショナーで使用されるバルブの実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるテンショナー100の第1の実施形態が
図2に示される。
【0021】
より正確には、
図2は、中間位置にあるこのテンショナー100の縦断面図である。
【0022】
テンショナー100は、開口部11と底部12とが設けられた中空体10、ならびに、中空体10の周りに配置されたスリーブ20を備える。
【0023】
テンショナー100はまた、軸30を備える。
【0024】
図2に示す場合では、スリーブ20は中空体10に対して移動可能に取り付けられており、軸30はスリーブ20に対して固定的に取り付けられている。ただし、そうでなくてもよい。すなわち、例えば文献D1の場合のように、スリーブ20を中空体10に固定的に取り付けることができ、軸をスリーブ20に対して移動可能に取り付けることができる。
【0025】
テンショナー100はまた、軸30のための第1の案内手段40を備える。第1の案内手段40は、中空体10の開口部11に固定されている。さらに、第1の案内手段40は、流体を備える中空体10を閉じるための構成要素を形成することに留意されたい。また、中空体の外側への流体の損失を防ぐために、案内手段40は、1つ(
図2に示すように)または複数のOリング42を収容して、中空体10の内壁と第1の案内手段40との間の液密性を確保することができる。同様に、同じ目的で、第1の案内手段40と軸30との間にシール44を設けて、流体の漏れを防いでもよい。
【0026】
さらに、案内手段40内で軸30を案内しやすくするために、軸30と、第1の案内手段40との界面に、滑り軸受43を設けることが有利である。
【0027】
テンショナー100は、軸30のための第2の案内手段50を備える。第2の案内手段50は、チューブ50の形態であり、中空体10内部で、軸30が移動するように意図された内部容積VIと、チューブ50の外側にある外部容積VEとを画定している。
【0028】
チューブ50は、中空体10の底部12に載置された、より正確には、この底部12の中央ゾーン120に載置された、シート83にクランプ取り付けされる。したがって、より一般的には、シート83は、チューブ50の端部51と中空体10の底部12との間に取り付けられる。
【0029】
実際、底部12は、中央ゾーン120、中央ゾーン120に対して隆起した周辺ゾーン121、および中央ゾーン120を周辺ゾーン121に接続する中間ゾーン122を含む。
【0030】
シート83の寸法は、少なくとも1つの流体連通チャネル90において半径方向に取られた寸法d1が、中空体10の底部12の中央ゾーン120の、同様に半径方向に取られた寸法d2よりも小さい。これにより、チャネル開口部90とカップ124との間に、ゼロ以外の距離dを定義することができる。したがって、カップ124は、底部12の中間ゾーン122と周辺ゾーン121との形状に広く一致する。さらに、シート83は、下部に、中空体10の底部12の中央ゾーン120と接触するベース831を備える。このベース831の幅(直径)は、厳密にd1からd2の間である。
【0031】
説明全体を通して、「半径方向に」とは、テンショナー100の長手方向軸線ALに垂直な方向、または実質的に垂直な方向を意味する、と理解されるべきである。
【0032】
カップ124は、中空体10の底部12に配置される。このカップ124は、より正確には、ゼロ以外の隙間JAを備え、底部12の周辺ゾーン121の前にある、第1の部分124Aと、中間ゾーン122の前にあり、シート83と接触している、より正確にはシート83のベース831と接触している、第2の部分124Bとを備える。カップ124の第2の部分124Bとシート83との接触は、ベース831において可能になる。さらに、カップ124はシート83のベース831に載置されていることが理解される。
【0033】
したがって、カップ124は、中空体10の底部12において、シート83のベース831に載置されていることが理解される。
【0034】
さらに、一般に、シート83は、有利には、半径方向に取られた、上記において定義された寸法d2よりも小さい最大寸法d3(ベース831の寸法に対応する)を有する。半径方向の隙間J(d2‐d3)の存在により、チューブ50と軸30との間の自動調心が可能になる。
【0035】
テンショナー100は、軸30の第1の案内手段40と軸30の第2の案内手段との間で、軸30に固定的に取り付けられたカップ60を備え、第2の案内手段はチューブ50によって形成される。
【0036】
テンショナー100は、弾性復帰手段70をさらに備え、この弾性復帰手段70は、チューブ50との間に半径方向に取られたゼロ以外の距離Dが存在するように、チューブ50の周りに配置される。弾性復帰手段70は、カップ60とカップ124との2つの間に保持されることに留意されたい。
【0037】
弾性復帰手段70は、
図2に示すように、つる巻きばねであることが有利である。
【0038】
シート83は、カップ124との接触によって軸方向に保持され、カップ124は、復帰手段70によって及ぼされる力を受ける。カップ124上の弾性復帰手段70の圧縮は、中央ゾーン120において、シート83が底部12と恒久的に接触し続けることを可能にする。この目的のために、カップ124と、底部12の周辺ゾーン121との間に、隙間を設けることが有利である。
【0039】
さらに、テンショナー100は、チューブ50の一方の端部51(下端)に取り付けられ、少なくとも1つの流体連通チャネル90が関連付けられた、バルブ80を備える。
【0040】
有利には、
図2の断面を断面A‐Aで示す
図6に見られるように、複数の流体連通チャネル90、91、92、および93が設けられている。この場合、バルブ80は中央のオリフィスOC上に開く。すべての流体連通チャネル90、91、92、93は、中央のオリフィスOCにおいて分布し、かつ収束する。
【0041】
バルブ80については、以下の説明部分でより詳細に説明する。
【0042】
少なくとも1つの流体連通チャネル90は、中空体10に含まれる流体が、チューブ50の外側にある外部容積VEと、チューブ50の内部容積VIとの間を通過することを可能にする。
【0043】
弾性復帰手段70は、カップ124を支えるように設計されている。これは、弾性復帰手段70とチューブ50とを半径方向に分離する、ゼロ以外の距離Dが存在するという事実と一致している。実際、チューブ50は、シート83によって底部12に配置され、かつ保持され、シート83は、チューブ50の上端部に取り付けられている。
【0044】
少なくとも1つの流体連通チャネル90は、この中間ゾーン122からゼロ以外の距離dを置いて、中間ゾーン122の前で開くように配置される。したがって、少なくとも1つの流体連通チャネル90は、外部容積VEにおいて、弾性復帰手段70の前で開かない。したがって、動作中、外部容積VEから内部容積VIへの流体の流れは、弾性復帰手段70によって妨害される恐れがない。
【0045】
有利な場合には、
図2に示されるように、少なくとも1つの流体連通チャネル90は、テンショナー100に関して実質的に半径方向に、有利には半径方向に、配置された長手方向軸線をさらに備える。言い換えれば、少なくとも1つの流体連通チャネル90は、有利には、テンショナー100の長手方向軸線に対して実質的に垂直である長手方向軸線を備える。この場合、少なくとも1つの流体連通チャネル90の長手方向軸線と、中空体10の底部12の周辺壁121上の弾性復帰手段70の軸受ゾーンとの間の、ゼロ以外の軸変位A(すなわち、テンショナー100の長手方向軸線に沿った)を有する弾性復帰手段70によって引き起こされる妨害の欠如を説明することが可能である。
【0046】
したがって、一般に、この配置(すなわち、カップ124、弾性復帰手段70、および個別に画定された底部に対する、少なくとも1つの流体連通チャネル90の配置)によって、チューブ50の周りで、少なくとも1つの連通チャネル90まで少なくとも画定され、障害物がない中空体10の領域を得ることが可能になることが理解されるであろう。適例では、この領域は、チューブ50(厚さDの)の周りの流体リングの形態であり、中空体10の底部12の中央ゾーン120(このレベルで厚さd)まで延びる。
【0047】
したがって、本発明の文脈において、特に文献D1で提案されるテンショナーの動作に関して、使用中のはるかに均一で乱れのない流れが実現し、これにより、テンショナーの動作が、特に伸張時において改善される。
【0048】
本発明によるテンショナーは、さらに改善することができる。
【0049】
可能な改善は、第2の実施形態に関する。
【0050】
本発明によるテンショナー100’の、この第2の実施形態が
図3に示されている。
【0051】
このテンショナー100’は、すべての点で
図2のテンショナー100と一致するが、シースFも有する。
【0052】
シースFは、カップ124に載置される端部F1を有する。
【0053】
次に、弾性復帰手段70は、シースFのこの端部F1を支える。
【0054】
シースFはまた、チューブ50から半径方向に取られたゼロ以外の距離D’を置いて、弾性復帰手段70とチューブ50との間で、チューブ50の周りに配置される。その結果、障害物のない中空体10の領域は、シースFとチューブ50との間で、少なくとも1つの流体連通チャネル90まで画定される。これらの解説から、距離D’は厳密に距離Dよりも小さいことが分かる。
【0055】
特に、距離D’は距離dに等しいことが想定され得る。
【0056】
変形例(図示せず)では、シースFとカップ124とが単一の部品のみを形成することが想定され得る。さらに、距離D’が距離dと等しい場合、この単一の部品の内径は、その全高にわたって一定であろう。
【0057】
これにより、特にチューブ50の外壁において、弾性復帰手段70の存在と移動とによって、その粘性のために流体が妨害される危険性が回避される。
【0058】
テンショナー100’の動作は、
図4(a)および
図4(b)を使用して明示することができる。
【0059】
図4(a)は、圧縮状態にある、より正確には最大圧縮位置にある、テンショナー100’の縦断面図である。この位置では、カップ60の下壁62が、端部51(下端)とは反対にある、チューブ50の端部52(上端)と接触(当接)していることに留意されたい。次に、軸30は、内部容積VIがゼロまたはほぼゼロであるように、バルブ80と接触しているか、またはバルブ80の近傍に存在する。したがって、中空体10に含まれるすべての流体は、外部容積VEにある。
【0060】
図4(b)は、伸張状態にある、より正確には最大伸張位置にある、テンショナー100’の縦断面図である。この位置では、第1の案内手段40が、カップ60と、より正確にはカップ60の上壁61と、接触(当接)していることに留意されたい。次に、内部容積VIが最大に満たされ、流体が内部容積VIと外部容積VEとの両方に存在する。
【0061】
図4(a)および
図4(b)の2つの図から、中空体10とスリーブ20との間の相対的な軸方向変位にも留意されたい。
【0062】
第2の実施形態(
図3)について、
図4(a)および
図4(b)を使用して上述した動作は、第1の実施形態(
図2)に十分に適用可能である。
【0063】
バルブ80の寸法を正確に合わせることによって、実施形態に関わらず、テンショナー100、100’の動作をさらに改善することも可能である。
【0064】
図5を参照すると、バルブ80は、例えばばねなどの専用の弾性復帰手段82に取り付けられた、例えばボールなどの閉塞部材81を含む。
【0065】
専用の弾性復帰手段82は、シート83に対して固定されている。より正確には、この
図5では、専用の弾性復帰手段82は、閉塞部材81のための止め具84に固定的に取り付けられ、止め具84はシート83にクランプ取り付けされる。この止め具84によって、閉塞部材81の行程を制御することが可能になり、これによってテンショナーの適切な動作に効果を及ぼすことができる。
【0066】
第1の実施形態と比較した
図2の拡大図である、
図5について上述したバルブ80は、バルブ80が両方の実施形態において同じであるため、第2の実施形態(
図3)に適用可能であることを理解されたい。
【0067】
図3の第2の実施形態に基づいて
図7に示される、バルブ80’の実施形態の変形例では、止め具84’は、チューブ50の中心に置かれ、シート83によってチューブ50に軸方向に固定されてもよい。次いで、止め具84’は止め具84と同じ機能を有する。
【0068】
これは1つの組立の変形例に過ぎない。
【0069】
これはバルブの機能性を変更しない。
【0070】
さらに、この実施形態の変形例は、第1の実施形態(
図2)に完全に適用可能である。
【0071】
専用の弾性復帰手段82は、一般に、静止時に特に有用な永久力を及ぼして、チューブ50の端部51に取り付けられたシート83に対して閉塞部材81を保持することを確実にするために、プレストレスがかけられている。したがって、シート83はバルブ80に属し、上述のように、チューブ50の端部と、中空体10の底部12の中央ゾーン120との間の接続を行うのにも役立つ。
【0072】
この力は、専用の弾性復帰手段82の剛性kに依存するが、その自然な平衡位置に対する専用の弾性復帰手段82の変形にも依存する。
【0073】
次に、バルブ80は通常閉じている。
【0074】
ボール81が閉塞部材として使用される場合、円錐台形のシート83が特に有利である。これにより、ボール81との最適な協働が可能になる。
【0075】
使用中、テンショナー100、100’は複数の拘束に直面する。
【0076】
テンショナー100、100’が静止位置から弛緩できる場合、比較的軽量な、例えばボール81などの閉塞部材を有することが有利である。実際、伸張中、チューブ50の内部容積VIの窪みによって、外部容積VEに存在する流体が内部容積VIに入ることが可能となり、ボールが軽くなるほど、この流体移動の速度が速くなる。
【0077】
同様に、圧縮中、バルブ80が閉じて、チューブ50が、及ぼされる応力に可能な限り迅速に反応することを確保し、結果として、内部容積VI内の圧力の急速な上昇を確保するために、ボールが軽量であることも有用である。
【0078】
ただし、専用の弾性復帰手段82によって閉塞部材81に及ぼされる力を考慮することも必要である。
【0079】
ここで、テンショナー100、100’が伸張時または圧縮時のいずれにおいて応力を受けるかによって、状況は対称的ではない。
【0080】
実際、伸張時には、閉塞部材81をそのシート83に押し付ける力を及ぼすことができる、専用の弾性復帰手段82の存在が乗り越えられる(予圧)。したがって、専用の弾性復帰手段82の剛性k、および/または自然な平衡位置に対する弾性復帰手段の位置決めの最小化を意味する、テンショナー100、100’が迅速に反応して、予圧を最小化させるのを確保することは最大の関心事である。
【0081】
逆に、圧縮時では、バルブ80の急速な閉塞を促進するため、高い予圧を与えることが最大の関心事である。
【0082】
したがって、予圧に関する限り、伸張時と圧縮時の両方におけるテンショナー100、100’の急速な反応のための要件は矛盾している。
【0083】
しかし、出願人は驚くべきことに、この予圧の値に対する有用な妥協点を見出して、予圧に対するこの妥協点はボールの質量にも依存するという理解と共に、バルブ80がより迅速に開く(拡張する)または閉じる(圧縮する)ことを確実にすることが可能であることを見出した。
【0084】
出願人によると、この理想的な妥協点は、
50mgから700mgの間の質量を備える閉塞部材81と、
閉塞部材81をシート83に押し付ける方向の、0.05Nから0.4Nの間の予圧と、によって得ることができる。
【0085】
実際には、特に30N.m.から80N.m.の間の剛性を有する、専用の弾性復帰手段82を使用することが可能である。次に必要なことは、専用の弾性復帰手段82の位置を適宜調整して、所望の予圧を得ることだけである。特に、従来のばねでは、予圧に対応する積k*ΔXが上記の値の範囲内になるように、ばねがその自然な平衡位置に対して適切な値ΔXだけ収縮する。
【0086】
閉塞部材81の行程を2つの限界値の間に保持することも有用である。最小の行程は、伸張中の閉塞部材81とシート83との間の流体の通過を促進する。一方、最大の行程は、閉塞時間が遅くなるのを防ぐ。
【0087】
実際には、0.3mmから2.5mmの間の閉塞部材81の行程が想定され得る。特に、1mmの範囲の行程が想定され得る。これにより、チューブ50の内部容積VIへの供給を改善し、同じチューブ50を正確に、かつ、より簡単に閉じることが可能になる。
【0088】
上述のように、この行程は、止め具84、84’の配置によって制御することができる。
【0089】
さらに、閉塞部材81としてボールが使用される場合、シート83がその内側部分に、ボール81と協働するための円錐台形状を有することが有用である。この場合、円錐の角度α(
図5または
図7を参照)は、30°から90°の間、特に約60°が有利である。
【0090】
最後に、テンショナー100、100’内の作動流体の選択は、テンショナーの動作に影響を与える場合もあることに留意されたい。
【0091】
実際には、テンショナー100、100’内の作動流体として油を使用することができる。
【0092】
有利には、この選択される油は、ISO 3448規格による動粘度によって定義された、ISO VG5からISO VG150の間のグレードから選択されたグレードを有する。有利には、ISO VG10からISO VG46までの範囲のグレードが選択される。これらのグレードにより、テンショナーは反応時間内および最も厳しい熱機械的条件下で適切に動作することが可能となる。