(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】寄生波を減衰するための層を含むSAW共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220701BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
(21)【出願番号】P 2019550788
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 FR2018050559
(87)【国際公開番号】W WO2018167407
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トゥ・トラン・ヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-セバスチャン・ムレ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・フェト
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス・ドゥルーアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シンクイン
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/016532(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/027538(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/093377(WO,A1)
【文献】特開2001-053579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/25
H03H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-1つの基板(102)と;
-前記基板(102)上に配された圧電材料の1つの層(108)と;
-前記基板(102)と圧電材料の前記層(108)との間に配された1つの第1の減衰層(112)、及び/又は、前記基板(102)が少なくとも2つの別々の層(104、106)を含むとき、前記基板(102)の前記2つの層(104、106)の間に配された1つの第2の減衰層(114)と;
を少なくとも含み、
前記減衰層又は複数の減衰層(112、114)が、寄生音響波の少なくとも一部を拡散する又は吸収することができ、且つ、前記減衰層又は複数の減衰層(112、114)を不均質にするドープされた領域
が配された多孔質シリコン及び/又はポリシリコンを含む、表面音響波共振器、SAW、(100)。
【請求項2】
前記圧電材料が、LTO及び/又はLNO及び/又は石英及び/又はランガテイト及び/又はランガサイト及び/又はランガナイトを含む、請求項1に記載のSAW共振器(100)。
【請求項3】
前記領域が、前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の残りとは異なってドープされた、請求項1又は2に記載のSAW共振器(100)。
【請求項4】
前記第1の減衰層(112)及び/又は前記第2の減衰層(114)が、多孔(116)及び/又は空洞(118)及び/又は少なくとも部分的に粗い少なくとも1つの面を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のSAW共振器(100)。
【請求項5】
前記第1の減衰層(112)及び/又は前記第2の減衰層(114)が多孔(116)及び/又は空洞(118)を含むとき、前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の前記多孔(116)及び/又は前記空洞(118)が各々、実質的に球又は円筒形状を有する、請求項4に記載のSAW共振器(100)。
【請求項6】
-前記第1の減衰層(112)が、前記基板(102)とは及び圧電材料の前記層(108)とは別々である、又は、前記基板(102)の及び/又は圧電材料の前記層(108)の一部に対応し、及び/又は
-前記第2の減衰層(114)が、前記基板(102)の前記2つの層(104、106)とは別々である、又は、前記基板(102)の前記2つの層(104、106)の内の少なくとも1つの一部に対応する、請求項1から5の何れか一項に記載のSAW共振器(100)。
【請求項7】
圧電材料の前記層(108)上に配された電極(110)をさらに含む、請求項1から
6の何れか一項に記載のSAW共振器(100)。
【請求項8】
少なくとも以下のステップ:
-基板(102)上の第1の減衰層(112)の、及び/又は、前記基板(102)が少なくとも2つの別々の層(104、106)を含むとき、前記基板(102)の前記2つの層(104、106)の間の第2の減衰層(114)の、製造
であって、前記減衰層又は複数の減衰層(112、114)が多孔質シリコン及び/又はポリシリコンを含む、段階と;
-前記基板(102)上の、又は、前記第1の減衰層(112)が前記基板(102)上に存在するとき、前記第1の減衰層(112)上の、圧電材料の層(108)の製造と;
の実施を含み、
前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の前記製造が、前記減衰層又は複数の減衰層(112、114)を不均質にする前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の
多孔質シリコン及び/又はポリシリコンの領域のドーピングを含み、前記減衰層又は複数の減衰層(112、114)が、寄生音響波の少なくとも一部を拡散する又は吸収することが可能である、表面音響波共振器、SAW、(100)を製造するための方法。
【請求項9】
前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の前記製造が、前記第1の減衰層(112)及び/又は前記第2の減衰層(114)を形成する、少なくとも1つの多孔質材料の堆積の実施及び/又はフォトリソグラフィー及びエッチングのステップの実施による空洞(118)の製造及び/又は粗い表面上に材料の堆積の実施、及び/又は、前記第1の減衰層(112)の及び/又は前記第2の減衰層(114)の少なくとも1つの面上の粗さを形成する処理の実施、を含む、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にSAWフィルターを製造するために用いられる、SAW共振器(「表面音響波」)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
LTO(タンタル酸リチウム)の固体層からSAWフィルターを製造することが知られている。このようなフィルターは、その上に電極のセットが配される、圧電材料であるLTOの固体基板上で作製される。しかしながら、このタイプのフィルターは、LTOの熱膨張の高い係数(シリコンのそれの8倍大きい)に特に起因する周波数におけるかなりの熱ドリフト等の特定の不利な点を有する。
【0003】
この問題に対する解決法は、LTOの固体基板からではなく、しかしシリコンの基板上にLTOの薄層を追加することによって、直接又は基板と薄い圧電層との間に介在するSiO2の中間層を介して、SAWフィルターを製造することである。この追加はLTOを機械的に拘束するので、その高い熱膨張を制限し、それゆえ、フィルターの周波数における熱ドリフトを減少させる。この代替物は、SAWフィルターのために用いられる周波数バンドの増加に起因した益々厳しい要件を満足する可能性を提供する。これは、製造される構成要素の温度ドリフトにおける減少を可能にし、より低い温度ドリフトを元来有するBAW(「バルク音響波」)技術を現在利用するデバイスへSAWフィルターの適用を拡張することを可能にする。温度ドリフトを減少させるための他の技術と比較して、例えばシリコンで作製される基板上へ追加される圧電材料の薄層の使用は、追加の温度補償層を必要しないという優位点を有するので、品質係数又は電磁結合係数におけるいかなる劣化を引き起こさない。
【0004】
シリコンの基板上の圧電材料の層のこのような追加によって提供される優位点にも関わらず、これらのフィルターは、特に、圧電材料としての結晶断面Y+42°においてLTOを用いるものによっていまだに改善され得る。実際、この材料は、熱膨張のその係数と、それが獲得する電磁結合との間で非常に良い妥協を有するという優位点を有する。しかしながら、LTOの特定の結晶配向における励起された音響波(例えば携帯電話通信において非常に用いられる層Y+42°)は、体積波の形態において基板の深さ内へ放射される音響エネルギーの一部によって、基板の表面に沿った波の不完全な誘導をもたらす擬似表面波である。シリコン上へ追加されたLTOの薄層の場合では、これらの体積波は、様々な界面で反射され、追加された層において導かれたモードの励起を引き起こし、且つ共振器の電気的応答上で見える寄生を形成する。
【0005】
この問題は、圧電材料の結晶配向が擬似表面波の励起を促進するとき、LTO以外の圧電材料に関しても見出される。
【0006】
図1は、結合層として用いられるSiO
2のフィルムを有するシリコンの基板上に追加されたLiTaO
3の層上に作製されたSAW共振器の、周波数に従ったアドミタンスYを示す。この
図1では、参照10は、共振器の共振周波数で得られる共振ピークを指定し、参照12は、寄生周波数を指定する。
【0007】
その周波数応答がこれらの寄生共振を含まないフィルターを得ることが所望されているであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、共振器の周波数応答に存在する寄生音響波を抑制する、又は少なくとも制限する若しくは減少させるための解決法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これのために、本発明は:
-1つの基板と;
-前記基板上に配された圧電材料の1つの層と;
-前記基板と圧電材料の前記層との間に配された1つの第1の減衰層、及び/又は、前記基板が少なくとも2つの別々の層を含むとき、前記基板の前記2つの層の間に配された1つの第2の減衰層と;を少なくとも含み、
前記減衰層又は複数の減衰層が不均質である、SAW共振器を提案する。
【0010】
このような共振器では、圧電材料の層と基板との間の界面、及び/又は、異なる材料の少なくとも2つの層を基板が含むとき、基板の層間の界面は、圧電材料において生成される表面波と基板における導波モードとの間のカップリングのすべて又は一部を減衰させることが可能な少なくとも1つの減衰層によって置き換えられて、圧電材料の層におけるこれらの導波モードをもはや励起しない。減衰層は、例えば、寄生音響波の少なくとも一部を拡散する又は吸収する層に対応する。寄生波は、圧電材料の層と基板との間に、及び/又は基板の2つの層の間に存在する減衰層又は複数の減衰層によって、このように抑制される又は少なくとも減衰させられる。
【0011】
この共振器では、基板がN個の積み重ねられた層、ここでN≧2、を含むとき、基板の2つの連続した層の間に各々1つが配されるN-1個の減衰層を有することが可能である。加えて、基板の2つの連続した層の間に配されたいくつかの重ねられた減衰層を有することが可能である。
【0012】
有利には、減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の不均質は、減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の組成が不均質であるようであり得る。不均質組成の層は、その組成が、その体積全体を通して、化学的に及び/又は物理的に均質、又は一定、でない材料の層を指定する。言い換えると、不均質組成の層は、内部で化学的及び/又は物理的格差を有する材料の層に対応する。減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の組成のこの不均質は、共振器の共振周波数よりも高い周波数を有する寄生波が少なくとも減衰され、共振器の層の積み重ね内で減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の存在のおかげで抑制さえされるようであり得る。
【0013】
代わりに、不均質減衰層は、構造化、又は粗さを含むその面の内の少なくとも1つの少なくとも一部を有する層に対応し得る。言い換えると、不均質層は、粗さ又は構造化タイプの物理的変動を、これらの面の内の少なくとも1つの少なくとも一部上で、有する材料の層に対応し得る。減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の内の1つ又はいくつかの面のこの不均質は、共振器の共振周波数よりも高い周波数を有する寄生波が少なくとも減衰され、共振器の層の積み重ね内で減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の存在のおかげで抑制さえされるようであり得る。
【0014】
他の1つの代替によると、1つ又は複数の減衰層の不均質性質は、これ又はこれらの減衰層内の不均質組成及び1つの又は複数の不均質面(つまり、構造化又は粗さを含む)の両方に起因し得る。
【0015】
各減衰層は、単一層に又はいくつかの層の積み重ねに対応し得る。
【0016】
有利には、圧電材料は、LTO(LiTaO3)及び/又はLNO(LiNbO3)及び/又は石英(結晶化したSiO2)及び/又はランガテイト(LGT、La3Ga5.5Ta0.5O14)又はランガサイト(LGS、La3Ga5SiO14)又はランガナイト(LGN、La3Ga5.5Nb0.5O14)を含み得る。
【0017】
さらに、基板は、例えばシリコンを含み得る。基板が少なくとも2つの別々の層を含むとき、これらの層の内の1つは、シリコン及び他のSiO2を含み得る。代わりに、基板は、GaN、SiC、サファイア(Al2O3)を含み得る、又は例えばSOIタイプ等の絶縁体タイプ上のシリコンの基板に対応し得る。
【0018】
第1の減衰層及び/又は第2の減衰層は、多孔及び/又は空洞及び/又はドープされた領域及び/又は、少なくとも部分的に粗い又は構造化された少なくとも1つの面を含み得る。第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の組成は、それが多孔及び/又は空洞及び/又はドープされた領域を含むとき、不均質である。少なくとも部分的に構造化された面又は複数の面は、減衰(attention)層又は複数の減衰(attention)層の主面の内の1つ又はいくつかに対応し得、圧電材料の層と及び/又は基板と接触している。
【0019】
第1の減衰層及び/又は第2の減衰層が、ドープされた領域を含むとき、上記領域は、第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の残りとは異なってドープされ得る。
【0020】
第1の及び第2の減衰層の内の1つ又はそれらの内の各々1つは、少なくとも2つの異なる材料を含み得る。
【0021】
第1の減衰層及び/又は第2の減衰層が多孔及び/又は空洞を含むとき、第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の多孔及び/又は空洞が各々、実質的に球又は円筒形状を有し得る。しかしながら、完全に他の形態の空洞及び/又は多孔が、可能であり、且つ、第1の及び/又は第2の減衰層において製造され得る。
【0022】
SAW共振器は、以下の用であり得る:
-第1の減衰層が、基板とは及び圧電材料の層とは別々である、又は、基板の及び/又は圧電材料の層の一部に対応し、及び/又は
-第2の減衰層が、基板の2つの層とは別々である、又は、基板の2つの層の内の少なくとも1つの一部に対応する。
【0023】
第1の減衰層及び/又は第2の減衰層が、SiOC及び/又はSiOCH及び/又は多孔質シリコン及び/又は多孔質有機材料及び/又はポリシリコンを含み得る。
【0024】
共振器は、圧電材料の層上に配された電極をさらに含み得る。
【0025】
SAW共振器は、SAWフィルターを合成するために用いられ得る。
【0026】
他の用途もまた、例えばセンサー又は少なくとも1つのクロック信号を出力する回路において用いられるSAW共振器に関して可能である。
【0027】
本発明はまた、少なくとも以下のステップ:
-基板上の第1の減衰層の、及び/又は、基板が少なくとも2つの別々の層を含むとき、基板の2つの層の間の第2の減衰層の、製造と;
-基板上の、又は、第1の減衰層が基板上に存在するとき、第1の減衰層上の、圧電材料の層の製造と;の実施を含み、
減衰層又は複数の減衰層が不均質である、SAW共振器を製造するための方法に関する。
【0028】
第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の製造が、第1の減衰層及び/又は第2の減衰層を形成する、少なくとも1つの多孔質材料の堆積の実施及び/又はフォトリソグラフィー及びエッチングのステップの実施による空洞の製造、及び/又は第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の領域のドーピング、及び/又は粗い表面上に材料の堆積の実施、及び/又は、第1の減衰層の及び/又は第2の減衰層の少なくとも1つの面上の粗さを形成する処理の実施、を含み得る。
【0029】
本発明は、例示として純粋に与え、添付の図面を参照して決して限定的でない、実施形態の記載を読むときにより良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術のSAWフィルターの周波数応答を示す。
【
図2】特定の実施形態による、本発明の主題である、SAW共振器を示す。
【
図3A】本発明の主題である、SAW共振器内の不均質減衰層の例の実施形態を示す。
【
図3B】本発明の主題である、SAW共振器内の不均質減衰層の例の実施形態を示す。
【
図3C】本発明の主題である、SAW共振器内の不均質減衰層の例の実施形態を示す。
【
図4】本発明の主題である、SAW共振器を用いることによって得られる寄生波の減衰を示す。
【
図5A】本発明の主題である、SAW共振器の減衰層の代替実施形態である。
【
図5B】本発明の主題である、SAW共振器の減衰層の代替実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以後記載される様々な図面の同一、同様又は同等の部分は、1つの図面から他への受け渡しを容易にするために同じ参照番号を担う。
【0032】
図面に示される様々な部分は、図面をより読みやすくするために、必ずしも均一のスケールで示されない。
【0033】
様々な可能性(代替及び実施形態)は、互いに排他的でないと理解されなくてはならず、一緒に組み合わされることができる。
【0034】
図2は、特定の実施形態によるSAW共振器100を示す。
【0035】
共振器100は、基板102から製造される。基板102は、材料の1つ又はいくつかの層を含む。
図2に示される例では、基板102は、固体材料、例えばシリコンの第1の層104、及び、例えばSiO
2を含む第2の層106を含む。
【0036】
共振器100はまた、基板102上に、ここでは第2の層106上に配された圧電材料の層108を含む。この特定の実施形態では、圧電材料はLTOに対応する。代わりに、圧電材料は、LTO及び/又はLNO(LiNbO3)及び/又は石英(結晶化したSiO2)及び/又はランガテイト(LGT、La3Ga5.5Ta0.5O14)及び/又はランガサイト(LGS、La3Ga5SiO14)及び/又はランガナイト(LGN、La3Ga5.5Nb0.5O14)を含み得る。
【0037】
共振器100はまた、圧電材料の層108上に配された、共振器100の入力及び出力電極に対応する、電極110を含む。電極110は、1つ又はいくつかの電気伝導性材料、例えば金属材料を含む。
【0038】
共振器100はまた、基板102と圧電材料の層108との間、つまりここでは第2の層106と圧電材料の層108との間に配された第1の減衰層112を含む。
【0039】
共振器100はまた、基板102の2つの層104、106の間に配された第2の減衰層114を含む。
【0040】
ここで記載される特定の実施形態では、固体層104は、例えば数百マイクロメートルに等しい厚さを有し、例えばマイクロエレクトロニクスにおいて用いられるシリコンの基板の標準厚さに対応し、第2の層106は例えば約0(第2の層106がない)と10μmとの間の厚さを有し、圧電材料の層が108が例えば約5μmと50μmとの間の厚さを有し、電極110各々が例えば約数十ナノメートルと数百ナノメートルとの間の厚さを有し、第1の減衰層112が例えば約100nmと10μmとの間の厚さを有し、第2の減衰層114が例えば約100nmと10μmとの間の厚さを有する。
【0041】
減衰層112、114各々が例えば不均質組成を有する。そのため、減衰層112、114の内の各々1つが、内部で、物理的及び/又は化学的格差を含む。
【0042】
第1の実施形態によると、減衰層112、114の組成のこの不均質は、これらの層112、114の残りとは異なってドープされる領域又はゾーンを、減衰層112、114の内の各々1つの中で、形成することによって得られる。
【0043】
第2の実施形態によると、減衰層112、114の組成のこの不均質は、SiOC及び/又はSiOCH及び/又は多孔質シリコン及び/又は多孔質有機材料及び/又はポリシリコン等の、1つ又はいくつかの多孔質材料によってこれらの層を製造することによって得られる。有利な実施形態によると、減衰層112、114の内の少なくとも1つは、高度に粘弾性の材料に対応するポリマー、例えば樹脂の層によって形成され、その中で、空洞118のマトリックスを形成することによって層における局所的な且つ規則的に分布した穴が製造される。
【0044】
図3Aは、この図において参照116を有する細孔を有する、多孔質材料によって製造された減衰層112、114を図式的に示す。
【0045】
第3の実施形態によると、減衰層112、114の組成のこの不均質は、これらの層内で空洞118を製造することによって得られる。これらの空洞118は、層112、114の厚さの少なくとも一部を通して形成され得る。
図3Bは、このような空洞118を含む減衰層112、114を図式的に示す。これらの空洞118は例えば層112、114のフォトリソグラフィーの及びエッチングのステップを実施することによって製造される。
【0046】
第4の実施形態によると、代わりに又は減衰層112、114の不均質組成と組み合わされて、減衰層112、114の内の1つの又はいくつかの不均質もまた、減衰層112、114の内の1つの又はいくつかの粗い界面のおかげで得られ得る。
【0047】
図3Cは、基板102と圧電材料の層108との間に配された減衰層112を図式的に示す。
【0048】
減衰層112の不均質は、減衰層112の2つの主要面(減衰層112と圧電層108との間の界面でのもの、及び減衰層112と基板102との間の界面でのもの)が各々構造化120又は粗さを含むという事実によってこの場合では得られる。代わりに、減衰層112の2つの主要面の内のただ1つのみ(有利には圧電層108による界面を形成する1つ。なぜならこの面は、減衰されることになる寄生波に最も近いから。)が構造化120を含むことが可能である。
図3Cでは、これらの構造化120は、基板102の上面上で最初に製造され、その後、これらの構造化上のこの層の堆積のおかげで減衰層112の2つの面上に位置する。
【0049】
さらに、基板102の2つの層104、106の間に位置する減衰層114はまた、例えば構造化120と同様の構造化を含み得る。最後に、減衰層112、114の内の1つ又は各々1つに関して、これらの面の内の1つのみの又は各々1つの一部が構造化され得る。
【0050】
共振器100の他の層による減衰層112、114の固定は、直接結合、又は分子結合によって、又は所望のサポート(例えば層104又は層106)上のこれらの層の堆積によって直接的に、得られ得る。
【0051】
不均質組成の減衰層112、114を得ることを可能にする、又は粗い界面を含むこれらの異なる実施形態は、互いに対して排他的ではない。そのため、減衰層112、114の1つ又は両方は、場合によっては1つ又はいくつかの粗い界面を有する、同じ減衰層内で組み合わされることが可能なこれらの様々な不均質によって、これらの層112、114及び/又は細孔116及び/又は空洞118の残りとは異なってドープされる領域の存在のおかげで得られる不均質組成を有し得る。
【0052】
さらに、第1の減衰層112の不均質は、第2の減衰層114のものと同様の又はそれとは同じでない性質であり得る。例えば、第1の減衰層112を形成するために少なくとも1つの多孔質材料の使用のおかげで得られることになる第1の減衰層112の組成の不均質、及び第2の減衰層114内の空洞の製造のおかげで得られることになる第2の減衰層114の組成の不均質が可能である。
【0053】
第1の減衰層112の及び/又は第2の減衰層114の細孔116及び/又は空洞118及び/又はドープされたゾーンが各々例えば実質的に球又は円筒形状(多角形又は円形断面を有する)を有する。さらに、細孔116及び/又は空洞118は、有利には空気によって又は他の1つの材料によって満たされる。
【0054】
一般的に、細孔116の、空洞118の、及びドープされたゾーンのサイズ及び形状は、減衰される及び/又は吸収されることが意図された寄生音響波周波数又は複数の寄生音響波周波数に従って変動し得て、減衰層112、114によって寄生波のこの減衰及び/又はこの吸収を最大化する。減衰層112、114内で形成される細孔116及び/又は空洞118の、及び/又はドープされたゾーンの寸法は、例えば約10nmと10μmとの間であり、約1GHz又は例えば0.1と10GHzとの間の周波数の寄生音響波を減衰させることを可能にする。例えば、約500MHzの寄生周波数の吸収を実行するために、円筒形状の且つ約2μmに等しい直径の且つ約5μmと10μmとの間の高さの空洞118が製造され得る。
【0055】
一般的に、減衰層が構造化又は粗さを含むとき、これらの構造化又は粗さのパターンは、任意の形状及び例えばランダムであり得る。加えて、これらの構造化又は粗さの高さ、又は振幅(
図3Cに示される軸Zに平行な寸法)は、例えば少なくとも500nm、及び例えば約500nmと3μmとの間、又は有利には約1μmと2μmとの間である。2つの構造化間のピッチ、つまりこれらの構造化の繰り返し周期は、例えば少なくとも約100nmと10μmとの間である。この周期性は、2つの隣接する構造化の2つの頂点を分ける距離dによって
図3Cにおいて示される。
【0056】
図4に示される曲線20は、任意の減衰層を含まない参照SAW共振器のアドミタンスYに対応する。曲線22は、その2つの粗い面を有する減衰層112が圧電材料の層108と基板102との間に挿入されるときに得られるアドミタンスYに対応する。これらの曲線20及び22は、寄生波がこのような減衰層112の存在において減衰されることを示す。ここで記載される例では、減衰層112が効果的である周波数の範囲は0と1GHzとの間である。
【0057】
さらに、減衰層112、114の効果は、細孔116及び/又は空洞118を満たす空気の又は流体(水、窒素等)の音響共振効果が得られるときに改善される。これに関して、細孔116及び/又は空洞118の寸法は、対象の周波数で流体における音響波長の約半分に等しいことがある。例えば約1GHzの共振に関して、空気によって満たされた細孔116は、約100nmと200nmとの間の直径を有し得る。
【0058】
代わりに、基板102は、第1の層104に対応する材料の単一層を含み得る。この場合では、共振器100は、圧電材料の層108と第1の層104との間に配された単一の減衰層112を含む。
【0059】
他の1つの代替によると、基板102は、材料の2つより多い層を含み得る。この場合では、共振器100は、不均質組成の2つより多い減衰層を含み得、減衰層の各々1つは、これらの減衰層の内の1つに関して、基板102の2つの層の間に、又は圧電材料の層108と基板102との間のいずれかに配されている。
【0060】
各減衰層は、異なる材料及び/又は1つの層と他では異なる不均質組成を含むいくつかの異なる層の積み重ねに対応することも可能である。
【0061】
上記で記載された特定の実施形態では、減衰層112、114の内の各々1つは、基板102の及び圧電材料の層108の別々の層に対応する。代わりに、減衰層112、114の内の少なくとも1つが、基板102の及び/又は圧電材料の層108の性質における局所的な修正を受けた、基板102の及び/又は圧電材料の層108の一部に対応することが可能である。
【0062】
例えば、
図5Aの図形で示されるように、減衰層112は、フォトリソグラフィーの及びエッチングのステップを介して基板102の上面(圧電材料の層108の側面上に配されことが意図されたもの)を構造化したことによって形成される。基板102の構造化された上部は、その上に圧電材料の層108がその後例えば直接結合又は分子結合によって固定される減衰層112を形成する。
図5Bの図形上では、減衰層112は、フォトリソグラフィー及びエッチングのステップを介して圧電材料の層108の下面(基板102の側面上に配されることが意図されたもの)を構造化したことによって形成される。圧電材料の層108の構造化された下部は、例えば直接結合又は分子結合によって基板102上に固定される減衰層112を形成する。