IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシーの特許一覧

特許7097906PPSUを使用する3次元物体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】PPSUを使用する3次元物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20220701BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220701BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220701BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220701BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B29C64/153
B33Y70/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019555927
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018058317
(87)【国際公開番号】W WO2018197156
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】17171975.0
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/489,125
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】バン, ハイ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-531439(JP,A)
【文献】特表2006-525159(JP,A)
【文献】特表2017-502862(JP,A)
【文献】特表2016-522300(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物体の製造方法であって、
- 48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される際に)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料を提供する工程と、
- 部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含み、
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも50モル%の、式(K):
(式中、
- Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
- hは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の繰り返し単位(R PPSU )を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、
方法。
【請求項2】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、ホモポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
部品材料がまた、部品材料の総重量を基準として、最大で30重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤も含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
部品材料のポリマー成分が、部品材料のポリマー成分の総重量を基準として、少なくとも80重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
部品材料が、フィラメント又はマイクロ粒子の形態にある、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
層を印刷する工程が、部品材料を押し出すことを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも50モル%の、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも60モル%の、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも80モル%の、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも90モル%の、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも95モル%の、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)が、少なくとも90モル%の、式(L)及び/又は(K)の繰り返し単位(RPPSU)を含み、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される際に)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含むフィラメント材料。
【請求項14】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)がホモポリマーである、請求項13に記載のフィラメント材料。
【請求項15】
ポリマー成分が、フィラメント材料のポリマー成分の総重量を基準として、少なくとも80重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含む、請求項13又は14に記載のフィラメント材料。
【請求項16】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)中の少なくとも60モル%の繰り返し単位が、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)であり、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項13~15のいずれか一項に記載のフィラメント材料。
【請求項17】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)中の少なくとも80モル%の繰り返し単位が、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)であり、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項16に記載のフィラメント材料。
【請求項18】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)中の少なくとも90モル%の繰り返し単位が、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)であり、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項16に記載のフィラメント材料。
【請求項19】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)中の少なくとも95モル%の繰り返し単位が、式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)であり、モル%が、ポリマー中の全モル数を基準とする、請求項16に記載のフィラメント材料。
【請求項20】
付加製造システムを使用する3次元物体の製造のための、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される際に)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料の使用。
【請求項21】
部品材料がまた、部品材料の総重量を基準として、最大で30重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
部品材料のポリマー成分が、部品材料のポリマー成分の総重量を基準として、少なくとも80重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含む、請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
部品材料が、フィラメント又はマイクロ粒子の形態にある、請求項2022のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
3次元物体の製造での使用のためのフィラメントの製造のための、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される際に)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月24日出願の米国仮特許出願第62/489,125号に対する、及び2017年5月19日出願の欧州特許出願第17171975.0号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、付加製造システムを使用する3次元(3D)物体の製造方法であって、3D物体が、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含む部品材料から印刷される方法に関する。特に、本開示は、3D物体を印刷するための付加製造システムでの使用のための、例えばフィラメント又はマイクロ粒子の形態での、そのようなPPSU(コ)ポリマーを組み込んだ部品材料に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造システムは、1つ若しくは複数の付加製造技術を使用して3D部品のデジタル表現から3D部品を印刷する又は別のやり方で構築するために使用される。商業的に利用可能な付加製造技術の例としては、押出ベース技術、選択的レーザ焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム溶融及び光造形法(stereolithography processes)が挙げられる。これらの技術のそれぞれについて、3D部品のデジタル表現は、初期に複数の水平層へスライスされる。それぞれのスライス層について、次いで工具パスが生成され、それは、所与の層を印刷するように特定の付加製造システムに対して指示を与える。
【0004】
例えば、押出ベース付加製造システムにおいて、3D部品は、部品材料のストリップを押し出し、隣接させることによって層ごとに3D部品のデジタル表現から印刷され得る。部品材料は、システムの印刷ヘッドにより運ばれる押出チップを通して押し出され、x-y面の印字版上に一連の道として堆積される。押し出された部品材料は、前に堆積された部品材料に融合し、温度の降下時に固化する。そのとき、基材に対する印刷ヘッドの位置は、(x-y面に垂直の)z軸に沿ってインクリメントされ、次いで、このプロセスは、デジタル表示に類似する3D部品を形成するために繰り返される。フィラメントから出発する押出ベース付加製造システムの例は、溶融フィラメント製造(FFF)と呼ばれる。
【0005】
別の例として、粉末ベース付加製造システムにおいて、強力レーザが、粉末を局部的に焼結して固体部品にするために使用される。3D部品は、粉末の層を順次堆積させること、続いて、画像をその層上へ焼結するためのレーザパターンによって生み出される。粉末から出発する粉末ベース付加製造システムの例は、選択的レーザ焼結(SLS)と呼ばれる。
【0006】
さらに別の例として、炭素繊維複合材料3D部品は、連続繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)印刷方法を使用して調製することができる。この印刷は、熱溶解積層法(fused-deposition modeling)(FDM)に基づいており、ノズルにおいて繊維と樹脂とを組み合わせる。
【0007】
公知の付加製造方法に関連した基本的な制限の1つは、許容できる機械的特性の、結果として生じる3D部品の取得を可能にするポリマー材料の特定の欠如に基づくものである。
【0008】
それ故、付加製造システム、例えばFFF、SLS又はFRTP印刷方法に使用されるポリマー部品材料であって、改善されたセットの機械的特性(例えば、耐衝撃性、伸び及び引張特性)を示す3D物体の製造を可能にする部品材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様は、例えば付加製造システムを使用する、3次元(3D)物体の製造方法であって、
- 48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む方法を指向する。
【0010】
ある実施形態によれば、本方法はまた、溶融フィラメント製造技術(FFF)としても知られる、押出ベース付加製造システムでの、部品材料の押出を含む。
【0011】
本開示の別の態様は、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含む少なくとも1つのポリマー成分を含むフィラメント材料を指向する。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、3次元物体の製造のための、又は付加製造システム、例えばFFF、SLS又はFRTP印刷方法を使用する3次元物体の製造での使用のためのフィラメントの製造のための本明細書に記載される部品材料の使用を指向する。
【0013】
本出願人は、48,000~52,000g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)の選択が、改善された機械的特性(例えば引張特性及び耐衝撃性)を示す3次元物体の製造を可能にすることを見いだした。
【0014】
そのような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込装置、義歯、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品並びに自動車工業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、押出ベース付加製造システム(例えば、FFF)、粉末ベース付加製造システム(例えば、SLS)又は連続繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)印刷方法などの、付加製造システムを使用する3次元(3D)物体の製造方法に関する。
【0016】
本開示の方法は、
- 48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元(3D)物体の層を印刷する工程と
を含む。
【0017】
本出願人のメリットは、良好な機械的特性プロフィル(すなわち、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性)を有する3D物体の製造を可能にする、スルホンポリマーを意外にも特定したことであった。このスルホンポリマーは、48,000~52,000g/モル、例えば48,500g/モル~51,500g/モル(本明細書でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である。
【0018】
FFF又はFDMのために使用される材料が、押出温度で連続的に押し出されるためにできるだけ低い溶融粘度を持たなければならないことは、一般に知られているし、文献に記載されている。また、ポリマーの溶融粘度は、堆積されたフィラメントが巻き上がるよりもむしろ平らになるように十分に低いものでなければならない。溶融粘度は、材料が押し出される温度を上げることによって下げることができるが、余りにも高い温度は、加熱される材料を分解させ得、且つ、エネルギー消費を増加させる。
【0019】
本出願人は、PPSUが臨界分子量上限、すなわち、52,000g/モル超の分子量に近付く場合、印刷特性が下落し、印刷部品の機械的特性を測定することがもはや該当しないことを本明細書によって示す。本出願人はまた、48,000g/モル未満の分子量Mwを有するPPSUが、良好な品質で印刷できること、しかし当技術分野における共通の一般知識(とりわけ、ポリマーの溶融粘度が押出ポリマーフィラメントの融合を容易にするためにできるだけ低いべきであるという事実)を考慮して全く意外にも、このPPSUが、特許請求される範囲、48,000~52,000g/モル内のMwを有するPPSUと比較して、最良の機械的特性(弾性率、破断点伸び及び耐衝撃性)をもたらさないことを示す。
【0020】
「(コ)ポリマー」又は「ポリマー」という表現は、本明細書では、実質的に100モル%の同じ繰り返し単位を含有するホモポリマー及び少なくとも50モル%、例えば少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%の同じ繰り返し単位を含むコポリマーを指定するために用いられる。
【0021】
「部品材料」という表現は、本明細書では、3D物体の少なくとも一部を形成することを意図される、材料、とりわけ高分子化合物のブレンドを意味する。部品材料は、本開示によれば、3D物体又は3D物体の部品の製造のために使用される供給原料として使用される。
【0022】
本開示の方法は、フィラメント又はマイクロ粒子(球などの規則的な形状を持った、又はペレットの粉砕/ミリングによって得られる複雑な形状を持った)の形態で例えば造形することができる、部品材料の主要素としてスルホンポリマーを実際に用いて、3D物体(例えば、3Dモデル、3D物品又は3D部品)を構築する。
【0023】
本出願において:
- いずれの記載も、具体的な実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能である、及びそれらと交換可能である;
- 要素若しくは成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に熟慮される関連実施形態において、要素若しくは成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか一つであることができるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは成分の任意の2種以上からなる群から選択されることもでき;要素若しくは成分のリストに列挙されたいずれの要素若しくは成分も、そのようなリストから省略されてもよい;並びに
- 端点による数値範囲の本明細書でのいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数、並びに範囲の端点及び相当物を含む。
【0024】
ある実施形態によれば、部品材料は、フィラメントの形態にある。「フィラメント」という表現は、本開示によれば48,000~52,000g/モル、例えば48,500g/モル~51,500g/モル(本明細書でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量Mwを有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含む材料若しくは材料のブレンドから形成されたスレッド様物体又は繊維を意味する。
【0025】
フィラメントは、円筒幾何形状若しくは実質的に円筒状の幾何形状を有し得るか、又はリボンフィラメント幾何形状などの、非円筒幾何形状を有し得るし;さらに、フィラメントは、中空幾何形状を有し得るか、又はコア-シェル幾何形状を有し得、別のポリマー組成物がコア若しくはシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0026】
別の実施形態によれば、部品材料は、例えば、1~200μm、例えば10~100μm又は20~80μmに含まれるサイズを有し、例えばブレード、ロール又はオーガーポンププリントヘッドによって供給されるための、マイクロ粒子の形態に又は粉末形態にある。
【0027】
本開示のある実施形態によれば、付加製造システムを使用する3次元物体の製造方法は、部品材料を押し出すことに存する工程を含む。この工程は、例えば、部品材料のストリップ又は層を印刷する又は堆積させるときに生じ得る。押出ベース付加製造システムを使用する3D物体の製造方法はまた、溶融フィラメント製造技術(FFF)として知られる。
【0028】
FFF 3Dプリンターは、例えば、Indmatechから、Hyrelから、Robozeから又はStratasys、Inc.から(商品名Fortus(登録商標)で)市販されている。SLS 3Dプリンターは、例えば、商品名EOSINT(登録商標)PでEOS Corporationから入手可能である。FRTP 3Dプリンターは、例えば、Markforgedから入手可能である。
【0029】
部品材料
本開示の方法に用いられる部品材料は、48,000~52,000g/モル、例えば48,500g/モル~51,500g/モル(本明細書でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む。
【0030】
本開示の部品材料は、他の成分を含み得る。例えば、部品材料は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。充填剤は、これに関連して、本質的に強化性であることも非強化性であることもできる。
【0031】
充填剤を含む実施形態において、部品材料中の充填剤の濃度は、部品材料の総重量に対して、0.1重量%~30重量%の範囲である。好適な充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭化ケイ素、タングステン酸ジルコニウム、窒化ホウ素及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、部品材料は、ヒドロキシアパタイド、α-トリカルシウムホスフェート(α-TCP)、β-TCP及び硫酸バリウム(BaSO)からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。
【0033】
一実施形態によれば、本開示の部品材料は、
- 48,000~52,000g/モル、例えば48,500g/モル~51,500g/モル(本開示でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分と、
- 部品材料の総重量を基準として、0~30重量%の、例えば、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0034】
別の実施形態によれば、本開示の部品材料は、
- 48,000~52,000g/モル、例えば48,500g/モル~51,500g/モル(本明細書でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分と、
- 部品材料の総重量を基準として、0~30重量%、0.1~28重量%又は0.5~25重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤と
から本質的になる。
【0035】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマーは、ビフェニル部分を含むポリアリーレンエーテルスルホンである。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)はまた、ポリフェニルスルホン(PPSU)として知られており、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合の結果として生じる。
【0036】
本開示の目的のためには、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)は、少なくとも50モル%の、式(K):
(式中、
- Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され、
- hは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)
の繰り返し単位(RPPSU)を含む任意のポリマーを意味し、このモル%は、ポリマー中の全モル数を基準とする。
【0037】
ある実施形態によれば、Rは、上の式(K)におけるそれぞれの位置において、1つ若しくは2つ以上のヘテロ原子;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択により含むC1~C12部分からなる群から独立して選択される。
【0038】
ある実施形態によれば、hは、それぞれのRについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPPSU)は、式(K’):
の単位である。
【0039】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(K)及び/又は式(K’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0040】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、少なくとも50モル%の式(L):
の繰り返し単位(RPPSU)を含む任意のポリマー(モル%は、ポリマー中の全モル数を基準とする)を意味する。
【0041】
本開示のPPSUポリマーは、それ故、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。それがコポリマーである場合、それは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0042】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0043】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)がコポリマーである場合、それは、繰り返し単位(RPPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*PPSU)、例えば式(M)、式(N)及び/又は式(O):
(式中、
- Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
- iは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)
などからなることができる。
【0044】
ある実施形態によれば、Rは、上の式(M)~(O)におけるそれぞれの位置において、1つ若しくは2つ以上のヘテロ原子;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択により含むC1~C12部分からなる群から独立して選択される。
【0045】
ある実施形態によれば、iは、式(M)、(N)又は(O)のそれぞれのRについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R*PPSU)は、式(M’)、(N’)及び/又は(O’):
の単位である。
【0046】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M)、(N)、(O)、(M’)、(N’)及び/又は(O’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0047】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、コポリマーであり、繰り返し単位(RPPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*PPSU)、例えば式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’):
などを有する。
【0048】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の45モル%未満、40モル%未満、35モル%未満、30モル.%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0049】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)はまた、これらのPPSUポリマーの少なくとも1つが48,000~52,000g/モル、例えば48,500~51,500g/モル又は49,000~51,000g/モル(本明細書に記載されるGPC法による)の範囲のMwを有する限り、PPSUホモポリマーと、上に記載されたような少なくとも1つのPPSUコポリマーとのブレンドであり得る。PPSU(コ)ポリマーのブレンドの場合には、48,000~52,000g/モルの範囲のMwを有するPPSUポリマーが、ポリマーブレンド中の主成分として、例えば、ポリマー成分の総重量を基準として、少なくとも50重量%、例えば少なくとも55重量%又は少なくとも60重量%の量で使用される。
【0050】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。それは、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって生じることができる。モノマー単位の反応は、脱離基としてのハロゲン化水素の1単位の脱離を伴う求核芳香族置換によって起こる。しかしながら、結果として生じるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の構造は、脱離基の性質に依存しないことが留意されるべきである。
【0051】
欠陥、末端基及びモノマーの不純物は、本開示の(コ)ポリマー(PPSU)中に、有利にはそれの性能に悪影響を及ぼさないように、極めて微量に組み込まれてもよい。
【0052】
PPSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRadel(登録商標)PPSUとして市販されている。
【0053】
本開示によれば、部品材料は、48,000~52,000g/モル、例えば48,500~51,500g/モル又は49,000~51,000g/モル(本明細書に記載されるGPC法による)の範囲のMwを有する、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分を含む。
【0054】
一実施形態によれば、部品材料は、部品材料のポリマー成分の総重量を基準として、少なくとも60重量%、例えば、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%のそのようなポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)を含むポリマー成分を含む。
【0055】
別の実施形態によれば、部品材料は、上に定義されたようなポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)に本質的にあるポリマー成分を含む。
【0056】
PPSU(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準とともに、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0057】
ポリマーは、それらの重量平均分子量(Mw)によって特徴付けることができ、それらはまた、多分子性指数と呼ばれることもある、それらの多分散指数(本明細書により「PDI」又は「PDI指数」)によって特徴付けることができる。PDI指数は、ポリマー内の様々な高分子のモル重量分布に相当する。PDI指数は、Mnが数平均分子量である、比Mw/Mnに相当し、GPCによって測定される。
【0058】
本開示によれば、PPSUポリマーの重量平均分子量Mwは、48,000~52,000g/モル、例えば、48,500~51,500g/モル又は49,000~51,000g/モルである。
【0059】
本開示の別の実施形態によれば、PPSUポリマーのPDI指数は、1.8~2.5である。
【0060】
PPSU(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、移動相としての塩化メチレン及び以下のGPC設定を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってより正確に測定することができる:Agilent Technologies製の2×5μ混合Dカラム(ガードカラム付き);流量:1.5mL/分;注入量:20μLの0.2w/v%試料溶液。
【0061】
より正確には、PPSU(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、移動相として塩化メチレンを使用する、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。実験の部において、以下の方法が使用された:Agilent Technologies製の2つの5μ混合Dカラム(ガードカラム付き)が分離のために使用された。254nmの紫外線検出器が、クロマトグラムを得るために使用された。1.5mL/分の流量及び移動相中の20μLの0.2w/v%溶液の注入量が選択された。較正は、12の狭分子量ポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を使って行われた。重量平均分子量(Mw)が報告された。
【0062】
本開示のある実施形態によれば、部品材料は、
- 48,000~52,000g/モル、例えば48,500~51,500g/モル又は49,000~51,000g/モル(本明細書に記載されるGPC法による)の範囲のMwを有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分と、
- 部品材料の総重量を基準として、0~30重量%、0.5~28重量%又は1~25重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0063】
本開示の別の実施形態によれば、部品材料は、
- 48,000~52,000g/モル、例えば48,500~51,500g/モル又は49,000~51,000g/モルの範囲のMw及び1.8~2.5(本明細書に記載されるGPC法による)のPDI指数を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分と、
- 部品材料の総重量を基準として、0~30重量%、0.5~28重量%又は1~25重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0064】
そのような部品材料は、3D物体を製造するために使用された場合に、より高い又はより低いMwのPPSUポリマーよりも良好な機械的特性プロフィル(すなわち、引張強さ、引張伸び及び耐衝撃性)を示す。
【0065】
本開示の部品材料は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられるが、それらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。部品材料の調製プロセスにおいて、部品材料の成分、すなわちPPSU及び任意選択により添加剤は、溶融混合装置に供給され、その装置中で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給され得るし、又は別々に供給され得る。
【0066】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態において、成分は単一バッチで混合することができるので、所望量のそれぞれの成分が、一緒に添加され、続いて混合される。他の実施形態において、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合し、残りの成分の1つ若しくは複数を、さらなる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、それぞれの成分の全所望量を単一の量として混合する必要はない。例えば、1つ若しくは複数の成分について、部分量を最初に添加し、混合し、続いて、残りの一部又は全てを添加し、混合することができる。
【0067】
フィラメント材料
本開示はまた、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分を含むフィラメント材料に関する。
【0068】
このフィラメント材料は、3次元物体の製造方法において使用するのに好適である。
【0069】
部品材料に関して上に記載された実施形態の全てが、フィラメント材料に等しく適用される。
【0070】
例として、本開示のフィラメント材料は、他の成分を含み得る。例えば、フィラメント材料は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。
【0071】
フィラメントは、円筒幾何形状若しくは実質的に円筒状の幾何形状を有し得るか、又はリボンフィラメント幾何形状などの、非円筒幾何形状を有し得るし;さらに、フィラメントは、中空幾何形状を有し得るか、又はコア-シェル幾何形状を有し得、本開示の支持材料がコア若しくはシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0072】
フィラメントが円筒幾何形状を有する場合、その直径は、0.5mm~5mm、例えば0.8~4mm又は例えば1mm~3.5mmで変わり得る。フィラメントの直径は、特定のFFF 3Dプリンターに供給するために選択することができる。FFFプロセスにおいて広範囲にわたって使用されるフィラメント直径の例は、1.75mm又は2.85mm直径である。標準偏差が減少したフィラメントサイズの良好な制御は、本発明のPPSUポリマーで得ることができる。とりわけ、フィラメントは、円筒幾何形状と、0.5~5mm±0.15mm、例えば0.8~4mm±0.1mm又は例えば1~3.5mm±0.08mmに含まれる直径とを有することができる。
【0073】
本開示のフィラメントは、溶融混合プロセスなどの、しかしそれらに限定されない方法によって部品材料から製造することができる。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの最高溶融温度及びガラス転移温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。
【0074】
フィラメントの調製プロセスは、溶融混合装置で実施することができ、そのために、溶融混合によりポリマー組成物を調製する技術における当業者に公知の任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。フィラメントの調製プロセスにおいて、部品材料の成分、すなわち少なくともPPSU及び任意選択により添加剤が溶融混合装置に供給され、その装置中で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給され得るし、又は別々に供給され得る。
【0075】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態において、成分は単一バッチで混合することができるので、所望量のそれぞれの成分が、一緒に添加され、続いて混合される。他の実施形態において、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合し、残りの成分の1つ若しくは複数を、さらなる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、それぞれの成分の全所望量を単一の量として混合する必要はない。例えば、1つ若しくは複数の成分について、部分量を最初に添加し、混合し、続いて、残りの一部又は全てを添加し、混合することができる。
【0076】
フィラメントの製造方法はまた、例えば、ダイを使った、押出の工程も含む。この目的のためには、任意の標準的な成形技術を使用することができ;融解/軟化形態のポリマー組成物を造形することを含む標準的な技術を有利に適用することができ、標準的な技術は、とりわけ圧縮成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形などを含む。押出成形が好ましい。ダイを使用して物品を造形し得るし、物品が円筒幾何形状のフィラメントである場合、例えばダイは、円形オリフィスを有する。
【0077】
本方法は、異なる条件下での溶融混合又は押出のいくつかの連続工程を必要に応じて含み得る。
【0078】
プロセスはそれ自体、又は該当する場合プロセスのそれぞれの工程はまた、融解混合物の冷却に存する工程を含み得る。
【0079】
支持材料
本開示の方法はまた、組立中の3D物体を支持するために別のポリマー成分を用い得る。3D物体を構築するために使用される部品材料と同様の又はそれとは異なる、このポリマー成分は、本明細書では支持材料と呼ばれる。支持材料は、高温部品材料(例えば、約
320~400℃の処理温度を必要とするPPSU)にとって必要とされるより高い運転条件において垂直方向及び/又は横方向支持を提供するために3D印刷中に必要とされ得る。
【0080】
本方法との関連で場合により使用される、支持材料は、有利には、高温用途に耐えるために、高い溶融温度(すなわち260℃超)を有する。支持材料はまた、湿気への暴露時に十分に膨潤するか又は変形するために、110℃よりも低い温度で吸水挙動又は水への溶解性を有し得る。
【0081】
本開示のある実施形態によれば、付加製造システムを使用する3次元物体の製造方法は、
- 支持材料を提供する工程と、
- 支持構造物の層を支持材料から印刷する工程と、
- 支持構造物の少なくとも一部を3次元物体から取り除く工程と
をさらに含む。
【0082】
様々なポリマー成分を支持材料として使用することができる。とりわけ、支持材料は、例えば、同時係属米国仮特許出願第62/316,835号明細書及び同時係属米国仮特許出願第62/419,035号明細書に記載されたものなどの、ポリアミド又はコポリアミドを含むことができる。
【0083】
用途
本開示はまた、付加製造システム、例えばFFF、SLS又はFRTP印刷方法を使用する、3次元物体の製造のための、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料の使用に関する。
【0084】
本開示はまた、付加製造システム、例えばFFF、SLS又はFRTP印刷方法を例えば使用する、3次元物体の製造のための、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分を含むフィラメント材料の使用に関する。
【0085】
部品材料に対して上に記載された実施形態の全てが、部品材料の使用又はフィラメント材料の使用に等しく適用される。
【0086】
本開示はまた、付加製造システム、例えばFFF、SLS又はFRTP印刷方法を例えば使用する、3次元物体の製造での使用のためのフィラメントの製造のための、48,000~52,000g/モル(移動相としての塩化メチレン及びポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含むポリマー成分を含む部品材料の使用に関する。
【0087】
本開示はまた、本明細書に記載される部品材料を使用して、本開示の3D物体の製造方法から、少なくとも部分的に、得ることができる3D物体又は3D物品に関する。これらの3D物体又は3D物品は、射出成形物体又は物品に匹敵する密度を示す。それらはまた、匹敵するか又は改善された機械的特性、とりわけ衝撃強さ(又は耐衝撃性、例えばノッチ付耐衝撃性)、剛性(弾性率として測定される)、引張強さ又は伸びを示す。
【0088】
そのような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込装置、義歯、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品並びに自動車工業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【0089】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0090】
本開示は、以下の実施例に関連してより詳細にこれから記載されるが、それらの目的は例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0091】
出発材料
以下のポリマーを使用して実施例1及び2のフィラメントを調製した。
【0092】
PPSU#1:以下の方法に従って調製された、50,500g/モルのMwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU):
PPSUの合成は、66.5g(0.481mol)の乾燥KCOを添加した400gのスルホランの混合物中に溶解した83.8gの4,4’-ビフェノール(0.450mol)、131.17gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(0.457mol)の1Lフラスコ中での反応によって達成された。
反応混合物を210℃まで加熱し、ポリマーが予期されるMwを有するまでこの温度に維持した。次に、過剰の塩化メチルを反応物に添加した。
反応混合物を600gのMCBで希釈した。塩の濾過、凝固、洗浄及び乾燥によってポリ(ビフェニルエーテルスルホン)を回収した。GPC分析は、50,500g/モルの数平均分子量(Mw)、21,500g/モルの平均分子量(Mn)を示し、PDI指数は2.35である。
【0093】
PPSU#2:反応をより早期に停止したことを除いて、PPSU#1よりも同じ方法に従って調製された、46,500g/モルのMw、19,200g/モルのMn及び2.48のPDI指数のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)。PPSU#2は、米国特許出願公開第2002/0017743号明細書の実施例3に記載されたRadel(登録商標)R 5600 NT(Modeling Material)に相当する。
【0094】
PPSU#3:反応をより遅く停止したことを除いて、PPSU#1よりも同じ方法に従って調製された、55,000g/モルのMw、22,000g/モルのMnの及びPDI指数が2.5であるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)。
【0095】
フィラメント調製
0.75インチ32L/D汎用一軸スクリューと、フィラメントヘッドアダプターと、2.5mmノズルと、冷却タンク、ベルトプラー、及びデュアルステーションコイラーを含むESI-押出サービス下流装置とを備えたBrabender(登録商標)Intelli-Torque Plasti-Corde(登録商標)Torque Rheometer押出機を使用して、上で調製されたそれぞれのポリマーについて1.75±0.07mmの直径のフィラメントを調製した。Beta LaserMike(登録商標)DataPro 1000を使用してフィラメント寸法をモニターした。溶融ストランドを空気で冷却した。Brabender(登録商標)ゾーン設定点温度は、以下の通りであった:ゾーン1、350℃;ゾーン2、340℃;ゾーン3及び4、330℃。Brabender(登録商標)速度は、30~50rpmの範囲であり、プラー速度は、23~37fpmの範囲であった。
標準偏差が減少したフィラメントサイズの良好な制御は、例示されたPPSUで得ることができた。
【0096】
試験方法
*PPSUポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
移動相として塩化メチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2つの5μ混合Dカラムを分離のために使用した。254nmの紫外線検出器を使用してクロマトグラムを得た。1.5mL/分の流量及び移動相中の20μLの0.2w/v%溶液の注入量を選択した。較正は、12の狭分子量ポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を使って行った。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を報告した。
【0097】
*印刷品質及び衝撃強さ
2ftlbのハンマーを使用してASTM D256方法に従ってノッチ付衝撃強さを測定した。
【0098】
*引張強さ
タイプVバーを使ってASTM D638方法に従って引張強さ及び弾性率を測定した。
試験バー(本開示又は比較による)及びそれらの機械的特性を下の表1に報告する(5つの試験バー/平均値)。
【0099】
実施例1-Indmatec(登録商標)HPP 155 3Dプリンターでの印刷
溶融フィラメント製造(Fused Filament Fabrication)バー(FFFバー)
0.6mm直径ノズルを備えたIndmatec(登録商標)HPP155 3Dプリンターで直径が1.75mmの上記フィラメントから試験バー(すなわちASTM D638タイプVバー)を印刷した。印刷中、バーをビルドプラットホーム上にXY方向に配向させた。10mm幅の縁及び3つの外周を持った試験バーを印刷した。工具パスは、部品の長軸に対して45°の角度を持ったクロスハッチパターンであった。全てのバーについてのビルドプレート温度は、100℃であった。ノズル及び押出機温度は、385℃であった。ノズルの速度を8~18mm/秒で変えた。それぞれの場合の第1層の高さは0.3mmであり、後続の層は、0.1mmの高さ及び100%充填密度で堆積させた。
【0100】
【0101】
印刷品質は、ノッチ付衝撃試験及びそれから得られた破断のタイプにより評価した:
(-)は、試料が層間剥離を示すことを意味し;
(+)は、試料が射出成形部品に似たパターンに従って壊れることを意味する。
【0102】
表1に示されるように、PPSU#3のフィラメントを使用するFFFによって妥当な品質の試験バーを印刷することは可能ではなかった。PPSU#3は臨界分子量Mwを超えており、FFFによって印刷することができず;そのようなバーの機械的特性の値は、それ故非該当(NR)である。
【0103】
実施例1の試験バー(50,500g/モルのMwを有するPPSUのフィラメントを使ってFFFによって得られた)は、良好な印刷適性を維持しながら、実施例2の試験バー(より低いMw、46,500g/モルのPPSUのフィラメントを使ってFFFによって得られた)よりも高い弾性率、破断点伸び及び耐衝撃性を示す。
【0104】
50,500g/モルのMwを有するPPSUポリマーは、それ故、本開示による溶融フィラメント製造の要件に適合している。
【0105】
実施例2-Hyrel(登録商標)Hydra 430 3Dプリンターでの印刷
溶融フィラメント製造バー(FFFバー)
0.5mm直径ノズルを備えたHyrel Hydra 430 3Dプリンターで直径が1.75mmのフィラメントから試験バー(すなわちASTM D638タイプVバー)を印刷した。印刷中、バーをビルドプラットホーム上にXY方向に配向させた。ASTM Additive Manufacturing(付加製造)標準F2971-13に従って、10mm幅の縁及び3つの外周を持った試験バーを印刷した。工具パスは、部品の長軸に対して45°の角度を持ったクロスハッチパターンであった。全てのバーについてのビルドプレート温度は、180℃であった。ノズル及び押出機温度は、385℃であった。ノズルの速度は、第1層については20mm/秒、後続の層については40mm/秒であった。それぞれの場合の第1層の高さは0.1mmであり、後続の層は、0.1mmの高さ及び100%の充填密度で堆積させた。
【0106】
【0107】
異なる印刷条件下での実施例4の試験バー(50,500g/モルのMwを有するPPSUのフィラメントを使ってFFFによって得られた)は、射出成形によって得られる部品の性能に似ている、非常に良好な伸び及び破断点引張強さ、並びに耐衝撃性を示す。