(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ストーマ用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220701BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220701BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220701BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220701BHJP
A61L 28/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/31
A61K8/73
A61Q19/00
A61L28/00
(21)【出願番号】P 2019562188
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048277
(87)【国際公開番号】W WO2019131920
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017253873
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】笈田 多加史
(72)【発明者】
【氏名】西堀 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057189(JP,A)
【文献】Sisley, France,Restorative Body Cream,Mintel GNPD [online],2017年05月,Internet <URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#4826529, [検索日:2019年2月14日], 製品詳細, 製品情報
【文献】Techonolabo, Japan,Body Cream,Mintel GNPD [online],2017年10月,Internet <URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#5165503, [検索日:2019年2月14日], 製品詳細, 製品情報
【文献】L'Oreal, France,BB Summer Legs,Mintel GNPD [online],2015年04月,Internet <URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#3080167, [検索日:2019年2月14日], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61L 15/00-33/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド又はアクリル酸塩と、アクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体を0.03~0.3質量%、
(b)38℃における動粘度が2~50mm
2/Sである炭化水素油を1~10質量%、及び
(c)水を含有する、ストーマ用化粧料。
【請求項2】
さらに、(d)水溶性多糖類を0.05~5質量%含有する、請求項1に記載のストーマ用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストーマ用化粧料に関し、特に、保湿性に優れ、ストーマ装具の貼り付き性を阻害することがなく、塗布性(塗布時の伸び広がり性)にも優れた、ストーマ用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥肌は、皮脂分泌量の低下や角質細胞間脂質の減少などによって、角質層における水分の含有量が低下している状態の肌であり、乾燥肌になると、肌のバリア機能が低下して、肌の内部の水分が蒸発して更に肌が乾燥してしまったり、刺激に対する抵抗力が低下して肌荒れなどのトラブルに発展してしまったりする。
【0003】
特に、大腸がんなどで人工肛門(ストーマ)を造設した患者等におけるストーマ近接部の皮膚は、排泄物、浸出液等によって刺激を受けやすい環境にあり、また、日常のストーマ装具の装着と取り外しや、ストーマ装具の装着補助のための医療用粘着テープ等の各種粘着製品の貼付が行われるため、肌荒れを起こしやすい。特に、肌が乾燥する冬場においては、刺激をより感じ易くなるために、肌荒れが生じ、ストーマ装具の付きが悪い、剥がれやすいなどのトラブルを生じることが多くなる。
【0004】
ところで、乾燥肌の改善やその発生の予防のために、従来から様々な技術が検討されてきた。例えば、特許文献1~3の様なヒアルロン酸やコラーゲンといった保湿剤を含有する皮膚外用剤が該当する。しかし、これらの皮膚外用剤は、保湿性には優れるものの、ストーマ近接部に適用すると、ストーマ装具やストーマ装具の装着補助のための粘着製品が、貼り付きにくくなったり、剥がれ易くなったりする場合があった。
【0005】
また、皮膚に適用する粘着製品の粘着性を考慮した技術としては、特許文献4に示されているような、アルキル基がC4~C18アルキル基からなるアクリル酸アルキルエステルを単量体成分とするアクリレートポリマーとシリコーン樹脂を配合した皮膚治療用組成物がある。この組成物は、医療用粘着テープの貼り付き性及び皮膚保護性について考慮されているものの、保湿性が十分ではなく、また、塗布時の伸び広がり性に関しても満足のいくものではなかった。
【0006】
従来の保湿剤は、塗布後すぐにストーマ装具を装着すると、剥がれやすい感覚を受け不安になったり、排泄物が間から漏れ出る等の不安感を生じさせる虞があり、また、そのために保湿剤が乾燥するまで待つ必要があったりと、使い勝手が良いものがなかった。これは、ストーマ装具はパウチ(袋)とパウチを保持する面板とからなり、面板には腹部の皮膚を排泄物から保護し、かつ、面板を腹部の皮膚に貼り付けるための皮膚保護剤からなる粘着部分が設けられており、皮膚保護剤に含まれるカラヤガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなどの多糖類系又はゼラチンなどの動物系の親水性ポリマーが汗、滲出液等の水分を吸収して皮膚の皮溝に沿って移行することで、皮膚に貼り付くが、保湿剤を皮膚に塗布すると、親水性ポリマーが保湿剤に含まれる水分を吸収することで過飽和の状態になり、崩壊したり膨潤したりして、粘着作用が低下してしまうためである。一方で、保湿剤の水分量を減らして油分成分を多くすると、油分成分が皮膜を作り、皮膜の潤滑性により、粘着部分(皮膚保護剤)が皮膚に貼り付かなくなる。
【0007】
従って、従来の保湿剤と同等以上の保湿性を有し、ストーマ装具の貼り付き性を阻害せず、しかも、優れた塗布性(塗布時の伸び広がり性)も良好なストーマ装具化粧料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-099703号公報
【文献】特開2013-053088号公報
【文献】特開2014-129337号公報
【文献】特表2017-519773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、優れた保湿性を有し、ストーマ装具の貼り付き性を阻害することがなく、しかも、皮膚への塗布性(塗布時の伸び広がり性)に優れた、ストーマ用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、構成単位としてアクリロイルジメチルタウリン塩を含む特定のアクリル系共重合体と、38℃における動粘度が2~50mm2/Sである炭化水素油と、水とを含む組成物は、その成分比率を調整することで、皮膚に対して優れた保湿性を与え、かつ、塗布時の伸び広がり性も良好で、ストーマ装具の貼り付き性を阻害しない組成物に成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1](a)アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド又はアクリル酸塩と、アクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体を0.03~0.3質量%、
(b)38℃における動粘度が2~50mm2/Sである炭化水素油を1~10質量%、及び
(c)水を含有する、ストーマ用化粧料。
[2]さらに、(d)水溶性多糖類を0.05~5質量%含有する上記[1]に記載のストーマ用化粧料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた保湿性及び塗布時の伸び広がり性を有し、しかも、ストーマ装具の貼り付き性を阻害することがない、ストーマ用化粧料を提供することができる。また、本発明のストーマ用化粧料は、医療用粘着テープ等の粘着製品の皮膚への粘着性を低下させることもない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳しく説明する。
本発明のストーマ用化粧料(以下、単に「化粧料」とも略称する)は、下記(a)、(b)及び(c)の各成分を少なくとも含有する組成物であり、「ストーマ用」とは、ストーマ装具が装着されるストーマ近接部の皮膚に適用することを意味する。
【0014】
なお、本発明でいう「ストーマ装具」とは、パウチと面板が一体化したワンピースタイプ、パウチと面板が別々のツーピースタイプ、パウチと面板以外の皮膚保護性や皮膚への貼り付き性の補助や増強のために使用される皮膚保護テープ等のアクセサリー(粘着性製品)も包含する概念である。
【0015】
以下、(a)成分から順次説明する。
【0016】
[(a)成分]
本発明に用いられる(a)成分は、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド又はアクリル酸塩と、アクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体である。
【0017】
すなわち、(a)成分は、(i)アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体か、(ii)アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体か、或いは、(iii)アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体のいずれであってもよい。また、これらから選択される2種以上であってもよい。
【0018】
なお、(i)~(iii)の共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0019】
上記のアクリロイルジメチルタウリン塩及びアクリル酸塩は、それぞれ、アンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩又は塩基性アミノ酸塩のいずれであってもよく、これらから選択される2種以上であってもよい。塩を構成する有機アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。4級アンモニウムとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム等が挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、リジン等が挙げられる。
【0020】
アクリロイルジメチルタウリン塩及びアクリル酸塩は、それぞれ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0021】
(a)成分の特に好ましい具体例としては、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体が挙げられる。これらの共重合体は、化粧品原料として市販されているものを使用することができる。具体的な製品としては、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を35~40質量%含む、SEPPIC社製の「SIMULGEL EG」、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を35~40質量%含む、SEPPIC社製の「SIMULGEL NS」が挙げられる。
【0022】
本発明の化粧料中の(a)成分の含有量は、0.03~0.3質量%であり、好ましくは0.05~0.25質量%、さらに好ましくは0.1~0.2質量%である。(a)成分の含有量が0.03質量%未満では、安定した乳化形化粧料を調製することができないおそれがあり、0.3質量%を超えると、ストーマ装具の貼り付き性、塗布時の伸び広がり性が低下する。
【0023】
[(b)成分]
本発明に用いられる(b)成分は、38℃における動粘度が2~50mm2/Sである炭化水素油である。当該炭化水素油は38℃における動粘度が2~50mm2/Sであれば特に限定されず、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ミネラルオイル、ポリイソブテン、水添ポリイソブテンなどが挙げられる。中でも、流動イソパラフィン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテンが好ましく、より好ましくは、水添ポリイソブテンである。また、38℃における動粘度が2~40mm2/Sのものが好ましく、2~25mm2/Sのものがより好ましい。(b)成分は1種又は2種以上を使用することができる。なお、38℃における動粘度は、JIS K2283の動粘度試験方法に準拠する方法で測定される。
【0024】
(b)成分は、市販されているものを使用することができる。具体的な製品としては、日油株式会社製の水添ポリイソブテンである「パールリーム4」(38℃における動粘度:3.1mm2/S)や「パールリーム6」(38℃における動粘度:20.1mm2/S)、日光ケミカルズ株式会社製の「シュガースクワラン」(38℃における動粘度:35mm2/S)等が挙げられる。
【0025】
38℃における動粘度が2mm2/S未満の炭化水素油では、保湿性、ストーマ装具の貼り付き性が低下するおそれがあり、動粘度が50mm2/Sを超える炭化水素油では、ストーマ装具の貼り付き性、塗布時の伸び広がり性が低下する。
【0026】
本発明の化粧料中の(b)成分の含有量は、1~10質量%であり、好ましくは1.5~8質量%、さらに好ましくは2~5質量%である。成分(b)の含有量が1質量%未満では、保湿性が低下するおそれがあり、10質量%を超えると、安定した乳化系の化粧料に調製することが難しくなり、また、ストーマ装具の貼り付き性も低下する。
【0027】
[(c)成分]
本発明に用いられる(c)成分は水である。本発明の化粧料の剤型は水中油型の乳化物であり、そのために、水が使用される。水としては、化粧品や医薬品等で一般に使用されているイオン交換水や精製水が使用される。
【0028】
本発明の化粧料中の(c)成分の含有量は、好ましくは70~98質量%であり、より好ましくは75~85質量%である。
【0029】
成分(c)の含有量が70質量%未満であったり、98質量%を超えると、剤型が水中油型の乳化系の安定性の高い化粧料を調製することは困難になる。
【0030】
[(d)成分]
本発明に用いられる(d)成分は水溶性多糖類である。本発明の化粧料には、上記の(a)~(c)成分に加えて、さらに(d)成分を含有させてもよい。(d)成分を含有させると、さらに保湿性を高めることが可能である。水溶性多糖類としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、クインスシードガム、マルメロエキス、寒天、キサンタンガム、フルクタンなどが挙げられる。これらの中でも、保湿感を高める作用に優れる点からキサンタンガム、グアーガムが好ましい。(d)成分は1種又は2種以上を使用することができる。
【0031】
本発明の化粧料中の(d)成分の含有量は、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。(d)成分の含有量がこの範囲であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0032】
本発明の化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意の添加成分を含有させることができる。例えば、増粘剤((a)および(d)成分を除く)、防腐剤(例えば、フェノキシエタノール、メチルパラベン等)、安定化剤(例えば、エチドロン酸、EDTA等)、保湿剤(例えば、グリセリン、ジグリセリン等)、アミノ酸、各種油剤((b)成分を除く)、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、香料などを適宜含有させることができる。
これらの任意成分の中でも、特にアクリル酸と、アルキル基の炭素数が10~30であるアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルとの共重合体を増粘剤としてさらに含有させることが好ましい。その場合、本発明の化粧料における含有量は、好ましくは0.01~0.5質量%であり、より好ましくは0.05~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.2質量%である。
【0033】
本発明の化粧料の剤型は、水中油型の乳化物であり、水中油型の乳化化粧料とするために、(a)成分((d)成分を使用する場合は(a)成分及び(d)成分)と他の成分を(c)成分に溶解させた水相に、(b)成分及び他の油溶性成分をゆっくり混合して調製する。その際、水相及び油溶性成分をそれぞれ50~90℃程度に加温しておくことが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1~7及び比較例1~8〕
表1(実施例1~7及び比較例1~8)に示すストーマ用化粧料を調製し、下記の試験により評価した。表1において、各成分の数値は組成物全量中の含有量(質量%)を示す。なお、ストーマ用化粧料は、(a)成分、(c)成分、及びその他の成分を混合した水相に、(b)成分および他の油溶性成分をゆっくり混合して、水中油型の乳液状の化粧料を調製した。
表1中の「その他成分」とは、表2に示す5種の成分を組み合わせた本発明における共通成分を示している。
【0036】
調製した化粧料について、(1)安定性、(2)保湿性、(3)ストーマ装具の貼り付き性、(4)塗布時の伸び広がり性を下記の試験によって評価した。ストーマ装具の貼り付き性の試験で使用した皮膚保護テープ(「ブラバ伸縮性皮膚保護テープ」コロプラスト株式会社製)は、ストーマ装具の皮膚保護性や皮膚への貼り付き性の補助や増強のために使用される市販品であり、ストーマ装具の面板が有する粘着部(皮膚保護剤)と同様の皮膚保護剤による粘着部分が形成されている。
【0037】
[安定性]
調製した化粧料を透明ガラス製のスクリュー管(容量50ml)に詰めて、保存試験(保存温度:40℃、保存期間:6ヶ月)を行った。その後、室温に戻した時の外観について、下記の基準に従って判定した。
【0038】
〈判定基準〉
○:調製した時点と変化無く、乳液状である。
×:分離、沈殿等が起き、調製時と変化している。
【0039】
[保湿性]
10名の男性および女性をパネラーとした。パネラーの両腕前腕部を石鹸で洗い、20分間安静にした後、皮表角層水分量測定装置((株)ヤヨイ製、SKICON-200EX)により、角層水分量を測定した(初期)。その後、調製した化粧料を塗布し、塗布後30分後の保湿感について再度、角層水分量を測定し、その値の平均値により以下の基準で性能判定をした。
【0040】
〈判定基準〉
◎:初期と比較して30分後の値が250%以上
○:初期と比較して30分後の値が200%以上250%未満
△:初期と比較して30分後の値が150%以上200%未満
×:初期と比較して30分後の値が150%未満
【0041】
[ストーマ装具の貼り付き性]
10名の男性および女性をパネラーとした。パネラーの両腕前腕部を石鹸で洗い、20分間安静にした後、調製した化粧料を塗布しストーマ用化粧料を塗布した。10秒間馴染ませた後、皮膚保護テープ(「ブラバ伸縮性皮膚保護テープ」コロプラスト株式会社)を貼り付けた。1分後、皮膚に対して水平方向に剥がし、その抵抗力(粘着性)について以下の基準で評価し、10名の合計点により以下の基準で性能判定をした。
【0042】
〈評価基準〉
2点・・・十分に抵抗を感じた。
1点・・・抵抗を感じた。
0点・・・容易に剥がれた。
【0043】
〈判定基準〉
◎:合計点が16~20点
○:合計点が11~15点
△:合計点が6~10点
×:合計点が0~5点
【0044】
〔塗布時の伸び広がり性〕
離形フィルム上に調製した化粧料0.2mlを塗布し、フィルム塗工用アプリケーター(100μm)で塗工した。その伸び具合に関して、以下の基準で性能判定をした。
【0045】
〈判定基準〉
◎:20cm以上
○:15~19cm
△:10~14cm
×:9cm以下
【0046】
【0047】
【0048】
表1に示すように、本発明のストーマ用化粧料に係る実施例1~7によれば、本発明のストーマ用化粧料は、十分な安定性を有し、ストーマ装具の貼り付き性を阻害することがなく、塗布時の伸び広がり性および保湿性に優れるという効果が得られる。
【0049】
一方、比較例1では、a成分の量が規定範囲よりも多いため、ストーマ装具の貼り付き性を阻害し、十分な貼り付き性が得られなかった。また、塗布時の伸び広がり性も十分なものではなかった。
【0050】
比較例2では、a成分の量が規定範囲よりも少ないため、安定的なストーマ用化粧料を調製出来なかった。
【0051】
比較例3では、a成分とは異なる水溶性ポリマーを配合したため、塗布時の伸び広がり性が悪く、かつ安定的なストーマ用化粧料を調製出来なかった。
【0052】
比較例4では、a成分とは異なるアクリル系コポリマー(単量体単位としてアクリロイルジメチルタウリン塩を含まないアクリル系コポリマー)を配合したため、塗布時の伸び広がり性が悪く、かつ十分なストーマ装具の貼り付き性が得られなかった。
【0053】
比較例5では、b成分の量が規定範囲よりも多く、また、c成分の量が少ない傾向にあることから、ストーマ装具の貼り付き性が悪く、かつ安定的なストーマ用化粧料を調製出来なかった。
【0054】
比較例6、7では、b成分とは異なる油性成分を配合したため、保湿性及びストーマ装具の貼り付き性が十分なものではなかった。
【0055】
比較例8では、b成分とは異なる油性成分を配合したため、ストーマ装具の貼り付き性、及び塗布時の伸び広がり性が十分なものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、保湿性に優れ、ストーマ装具の貼り付き性を阻害することがなく、塗布性(塗布時の伸び広がり性)にも優れた、ストーマ用化粧料に関するものであり、医薬の分野で有用である。
【0057】
本出願は、日本で2017年12月28日に出願された特願2017-253873号を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。