(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】建物構造物
(51)【国際特許分類】
E04C 3/26 20060101AFI20220701BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20220701BHJP
E01D 2/04 20060101ALI20220701BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220701BHJP
E04C 5/08 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
E04C3/26
E01D1/00 D
E01D2/04
E04B5/02 C
E04C5/08
(21)【出願番号】P 2019567765
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 AU2018050164
(87)【国際公開番号】W WO2018152590
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-22
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519307229
【氏名又は名称】パークド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マカッチェン,ピーター ジェームズ スターリング
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-158812(JP,A)
【文献】特開2011-094335(JP,A)
【文献】米国特許第04644727(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/26
E01D 1/00
E01D 2/04
E04B 5/02
E04C 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床構造物を規定するための鋼線で補強された構造ビームであって、当該ビームは、
上面及び下面と第1及び第2の側面とを有する本体であって、前記上面及び前記下面は、当該ビームの深さを規定する特定の距離だけ互いに離間されている、本体と、
当該ビームに沿って長手方向に延びる複数の通路と、を含んでおり、
該複数の通路は、互いに離間した関係で配置されており、
当該ビームは、当該ビームの長さに沿って互いに離間した関係で配置された複数の支持部材をさらに含み、該支持部材は、中央部と、該中央部の各端部から延びる2つのフィンプレートとを含み、前記支持部材は、該支持部材を当該ビーム内に含めるように当該ビームを横方向に横断しており、それによって、前記支持部材の前記中央部は、当該ビーム内に含まれ、前記フィンプレートは当該ビームの両側から外側に延びる、
ビーム。
【請求項2】
前記複数の通路は、隣接する通路の間に複数の第1のウェブと、当該ビームの前記第1及び第2の側面と最も外側の前記通路との間に一対の第2のウェブとを規定し、
前記第1のウェブは、隣接する通路の間の距離に等しい幅を有し、前記第2のウェブは、当該ビームの前記第1及び第2の側面と前記最も外側の通路との間の距離に等しい幅を有しており、前記第1のウェブ及び前記第2のウェブの幅の合計は、当該ビームの前記深さ以上である、
請求項1に記載のビーム。
【請求項3】
前記通路は、中空通路を含む、請求項1又は2に記載のビーム。
【請求項4】
複数のグループのストランドが、互いに離間した関係で配置され且つ当該ビームに沿って長手方向に延びる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項5】
当該ビームは、当該ビームの前記上面に隣接する第1グループの支持ケーブルと、当該ビームの前記下面に隣接して配置された第2グループの複数組の第2のストランドと、第3グループの2対の第3のストランドとを含み、各対は当該ビームの1つの下コーナー部に位置する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項6】
当該ビームは、当該ビームの上部に位置しており、互いに離間した関係で配置され且つ当該ビームの一方の側から他方の側へ延びる5本の支持ケーブルを含む、請求項5に記載のビーム。
【請求項7】
第2グループの第2のストランドは3組の第2のストランドを含み、各組の第2のストランドは、当該ビームの下部に位置する台形アレイとして配置された5本の第2のストランドを含み、第3グループの第3のストランドは、L字型アレイとして配置された2組の3本のストランドを含み、各組の3本のストランドは、当該ビームの1つの下コーナー部に位置する、請求項5又は6に記載のビーム。
【請求項8】
各支持ケーブルは、並んで配置され、且つ第1のストランドの長さに沿って互いに離間した関係で配置された複数のクリップによって互いに接合されたバー及びワイヤを含み、各クリップは、各第1のストランドの特定の部分を取り囲む、請求項6又は7に記載のビーム。
【請求項9】
前記バー及び前記ワイヤは、互いに当接しており、且つ前記クリップのみによって互いに接合される、請求項8に記載のビーム。
【請求項10】
前記ワイヤはストランドを含む、請求項9に記載のビーム。
【請求項11】
前記バーは、変形した補強鉄筋を含む、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項12】
前記第2及び第3のストランドのそれぞれが、互いに束ねられた複数のワイヤを含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項13】
前記支持部材は、互いに最大3メートル離間している、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項14】
当該ビームの側部から延びる各支持部材の前記フィンプレートは、当該ビームの側部に取り付けられる床パネルの側部を受容するように適合される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項15】
当該ビームの各側部は、当該ビームに沿って互いに離間した関係で配置された複数の支持アングルを含み、該支持アングルは、床パネルの側部を当該ビームの側部に取り付けるための取付け手段を規定する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項16】
当該ビームの端部が、前記通路を密封するために少なくとも部分的に前記通路内に延びるコンクリートプラグを含む、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のビーム。
【請求項17】
バー及びワイヤを含む支持ケーブルであって、前記バー及び前記ワイヤは、並んで配置され、且つ前記支持ケーブルに沿って互いに離間した関係で配置された複数のクリップのみによって互いに接合され、各クリップは、当該支持ケーブルの特定の部分を取り囲み、前記バー及び前記ワイヤは、該ワイヤが前記バーの長さに沿って延びて前記支持ケーブルを規定する際に、互いに連続して当接する、
支持ケーブル。
【請求項18】
前記ワイヤはストランドを含む、請求項17に記載の支持ケーブル。
【請求項19】
前記バーは、変形した補強鉄筋を含む、請求項17又は18に記載の支持ケーブル。
【請求項20】
床構造物を規定するための鋼線で補強された構造ビームであって、当該ビームは、
上面及び下面と第1及び第2の側面とを有する本体であって、前記上面及び前記下面は、当該ビームの深さを規定する特定の距離だけ互いに離間されている、本体と、
当該ビームに沿って長手方向に延びる複数の通路と、を含んでおり、
該複数の通路は、互いに離間した関係で配置され、隣接する通路の間に複数の第1のウェブと、当該ビームの前記第1及び第2の側面と最も外側の前記通路との間に一対の第2のウェブとを規定し、
当該ビームは、当該ビームの前記上面に隣接する第1グループの支持ケーブルと、当該ビームの下面に隣接して配置された第2グループの複数組の第2のストランドと、第3グループの2対の第3のストランドであって、各対が当該ビームの1つの下コーナー部に位置する、第3のストランドとをさらに含み、前記支持ケーブルは、請求項17乃至19のいずれか一項に記載の支持ケーブルを含む、
ビーム。
【請求項21】
当該ビームは、当該ビームの上部に位置しており、互いに離間した関係で配置され且つ当該ビームの一方の側から他方の側へ並んで延びる5本の支持ケーブルを含む、請求項20に記載のビーム。
【請求項22】
第2グループの第2のストランドは3組の第2のストランドを含み、各組の第2のストランドは、当該ビームの下部に位置する台形アレイとして配置された5本の第2のストランドを含み、第3グループの第3のストランドは、L字型アレイとして配置された2組の3本のストランドを含み、各組の3本のストランドは、当該ビームの1つの下コーナー部に位置する、請求項20又は21に記載のビーム。
【請求項23】
請求項1乃至16又は請求項20乃至22のいずれか一項に記載の第1及び第2
のビームと、1つの第1の充填パネルとを含む床構造物であって、前記第1及び第2
のビームは、互いに離間した関係で配置され、前記充填パネルを受容するためのスペースを規定する、床構造物。
【請求項24】
前記充填パネルは、軽量パネルを含み、該軽量パネルは、上げ床システムを含む軽量ジョイストを含む、請求項23に記載の床構造物。
【請求項25】
前記充填パネルは、コンクリートスラブに包まれたメッシュ構造を含む、請求項23又は24に記載の床構造物。
【請求項26】
前記充填パネルは、その長さに沿って間を置いて打ち抜かれ、ジョイストを接続するためのタブを形成する周辺チャネルを含み、前記ジョイストは、前記
充填パネルの一方の側から他方の側へ横方向に延び且つ互いに離間した関係で配置され、前記周辺チャネルは前記
充填パネルに沿って長手方向に延びる、請求項23乃至25のいずれか一項に記載の床構造物。
【請求項27】
前記周辺チャネルは、互いに離間した関係で配置された吊上げ用アイを含む、請求項26に記載の床構造物。
【請求項28】
前記周辺チャネルは、当該ビームの内面への取り付けに適合される、請求項26又は27に記載の床構造物。
【請求項29】
当該床構造物は、第3のビームと第2の充填パネルとをさらに含み、前記第3のビームは、前記第1のビームとの配置関係で離間して配置され、前記第2の充填パネルを受容するためのスペースを規定し、前記第3のビームは、前記第2の充填パネルの一側の取り付けに適合した内側を含み、前記第2の充填パネルの他方の側は、前記第1のビームの外側への取り付けに適合される、請求項23乃至28のいずれか一項に記載の床構造物。
【請求項30】
当該床構造物は、第4のビームと第3の充填パネルとをさらに含み、前記第4のビームは、前記第2の
充填パネルとの配置関係で離間して配置され、前記第3の充填パネルを受容するためのスペースを規定し、前記第4のビームは、前記第3の充填パネルの一側の取り付けに適合した内側を含み、前記第3の充填パネルの他方の側は、前記第2のビームの外側への取り付けに適合される、請求
項29に記載の床構造物。
【請求項31】
互いに離間した関係で配置された複数の支柱と、地面から離間し且つ前記支柱に沿って特定の位置で該支柱に取り付けられる請求項23乃至30のいずれか一項に記載の少なくとも1つの床構造物とを有する、建物構造物。
【請求項32】
前記建物構造物は、前記支柱同士の間に延びる複数の補強ビームを含む、請求項31に記載の建物構造物。
【請求項33】
前記建物構造物は、前記支柱同士の間に延びる対角部材を含む、請求項31又は32に記載の建物構造物。
【請求項34】
前記建物構造物は、外側支柱と内側支柱とを含む、請求項31乃至33のいずれか一項に記載の建物構造物。
【請求項35】
前記内側支柱は、前記外側支柱から離間しており、筋交部材が、前記内側支柱と前記外側支柱との間に延びる、請求項34に記載の建物構造物。
【請求項36】
前記外側支柱に取り付けられ、且つ前記支柱に沿って互いに離間した関係で配置された複数の床構造物がある、請求項34又は35に記載の建物構造物。
【請求項37】
前記内側支柱は、床構造物同士の間に延びる複数の支柱セグメントを含み、各支柱セグメントの端部が、前記床構造物に取り付けられ、該床構造物同士の間に前記支柱セグメントが挟み込まれる、請求項34乃至36のいずれか一項に記載の建物構造物。
【請求項38】
前記支柱セグメントは前記外側支柱から離間しており、筋交部材は、前記外側支柱と前記支柱セグメントとの間に延びる、請求項37に記載の建物構造物。
【請求項39】
前記内側支柱は、各対の筋交部材が前記外側支柱と互いに接合するように、互いに離間しており、特定の床構造物の前記内側支柱の前記支柱セグメントは、少なくとも1つの駐車区画を含む部分を規定する、請求項38に記載の建物構造物。
【請求項40】
前記建物構造物は、前記支柱同士の間に延びるガードレールを含む、請求項31乃至39のいずれか一項に記載の建物構造物。
【請求項41】
前記建物構造物は、メインエリアとアクセスエリアとを含み、該アクセスエリアは、車両及び歩行者が前記建物構造物の前記メインエリアにアクセスするのを可能にする階段及び傾斜路を含み、該傾斜路は、請求項1乃至16又は請求項20乃至22のいずれか一項に記載の少なくとも1つのビームを含む、請求項31乃至40のいずれか一項に記載の建物構造物。
【請求項42】
請求項31乃至41のいずれか一項に記載の建物構造物を建てる方法であって、当該方法は、
基礎並びに電気及び消防設備を含む設備の穴を掘ること、
鉄筋の固定の準備及びコンクリートの基礎を打つこと、
支柱の現場への運搬及びその支柱を設置すること、
請求項1乃至16又は請求項20乃至22のいずれか一項に記載のビーム及び
請求項23乃至30のいずれか一項に記載の床構造物を規定するための
充填パネルを現場に運搬し、それらビーム及び
充填パネルを吊り上げ、互いに取り付け、且つ直立支柱に取り付けること、
筋交部材で各床構造物を補強すること、
自動車甲板を用いて互いに傾斜路を設置すること、
1階及び階段への舗装と該当する場合にエレベータの設置をすること、及び
設備及び駐車支払い装置を設置すること、を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造物、及びこの建物構造物を建てるための方法に関する。
【0002】
本発明は、必ずしもそうとは限らないが、特に駐車施設のための恒久的又は一時的な建物構造物に関して考え出された。
【背景技術】
【0003】
背景技術に関する以下の議論は、本発明の理解を容易にすることのみを目的としている。この議論は、言及された資料のいずれもが、本願の優先日において共通の一般的知識の一部であるか、又はその一部であったという自認又は認容ではない。
【0004】
世界の殆どの都市での駐車は、益々大きな問題である。大都市では、(1)大勢の人々が仕事を行うために車両を使用して都市に入り、仕事を終えた後に家に戻るために車両を使用すること、(2)典型的には、大都市では、例えば建物構造物を建てるために利用可能な土地のコストが高いために、駐車に関して十分な解決策がないことの理由から、駐車場のひっ迫は比較的大きい。
【0005】
場合によっては、例えば、壊れた(damaged)建物構造物の解体によって、市内の多くの土地が整地されてきた。解体プロセス後のこれら多くの土地は、新しい建物構造物10の建設が始まるまで比較的長期間に亘って空き地のままである。
【0006】
都市の空き地は、少なくとも一時的に、平置き(single-story)の駐車施設等の特定の用途のために貸し出され得る。しかしながら、いくつかの空き地に比較的小さい駐車区画があるため、市内のひっ迫した駐車を緩和するのに十分な駐車区画が得られていない。また、立体駐車場を空き地に一時的に建設するのは、現在比較的費用がかかる。これは特に、多層の建物構造物を建てるには比較的高いコストがかかるためである。
【0007】
さらに、オーストラリアのいくつかの主要都市では、市内の歓楽街での駐車料金は殆ど収拾がつかなくなっている。シドニーでのコストは、普通の駐車場で1時間あたり59ドルに達し、市内中心部の平均は1時間あたり40ドル以上になる。駐車場の問題はオーストラリアだけの問題ではなく、世界中の多くの都市の歓楽街や大規模なプロジェクトが進行中である中心部でひっ迫している。
【0008】
さらに、世界中の政府が高パフォーマンスの公共交通機関の使用を奨励しようとしているが、多くの場合自動車は依然として好まれる交通機関である。実際に、市議会や規制当局は車の使用を阻止したいと考えているが、人々は運転して仕事にいくことを好み、自分の車の便利さを感じている。これは、例えば、公共交通機関が家や職場への直接の輸送を提供していないという事実のために特に当てはまる。また、公共交通機関は特定の時間帯にのみ利用可能である。
【0009】
電車サービス等の公共交通機関の使用を促すために、公共交通機関サービスは電車の駅に隣接する駐車場を(解決策として)開発してきた。通勤者が自宅から電車の駅まで運転し、電車サービスを利用することができ、その逆も同様である。
【0010】
これらの駐車場の解決策を電車の駅に隣接して提供するために、電車の駅近くの多くの土地が、電車サービスのユーザに駐車区画を提供するために整地されている。これにより、通勤者が、電車の駅に運転して行き自分の車を駐車することができ、それによって電車サービスを利用して特定の電車の駅と、例えば市内にある職場との間で通勤することができる。
【0011】
しかしながら、立体駐車施設の建設には比較的高い費用がかかるため、電車の駅に隣接して位置する駐車施設は立体的な建物構造物ではない。代わりに、典型的には、電車の駅の駐車施設は、駐車施設として配置された多くの土地の地面に規定された複数の駐車区画のみを含む。こうして、現在、これらの駐車施設は、電車サービスを利用するためにこれらの駐車施設に自分の車を駐車し、自分の車で市内に運転して行くことを回避し、且つ市内の比較的高いコストの駐車施設に車両を駐車することを回避する必要がある比較的大勢の通勤者と比して、比較的少ない駐車区画を提供する。
【0012】
さらに、従来の建物構造物(例えば、通常駐車施設として使用され、こうして比較的大きな荷重を支えることができる構造物)において、床構造物は、スラブ構造を形成するために互いに接合された複数の中空コア厚板から構成される床パネルによって規定され得る。これらの従来の建物構造物では、(1)中空コア厚板は、比較的大きな荷重を支えるように設計されていないが、典型的には床パネルを規定する2次支持構造物として作用する、(2)床パネルは、コンクリートトッピングを中空コア厚板の上部に流し込み、解体せずには再利用又は適合させることができない複合構造物を形成することによって比較的大きな荷重を支えるように適合されることにより、1次支持構造物として作用する。従って、従来の建物構造物の現在の組立て及び分解は面倒で時間がかかる。
【0013】
この背景技術に対して本発明が開発された。
【発明の概要】
【0014】
本発明の特定の実施形態によれば、容易に設置することができ、比較的短期間で運転可能にすることができ、迅速に撤去し且つ必要に応じて新しい場所に容易に再配置することができる、モジュール化されたコンクリート立体駐車構造が提供される。
【0015】
本発明の特定の実施形態の一構成によれば、1つ又は複数の構造ビームと、構造ビームに取り付けるための1つ又は複数の軽量パネルとを含む床構造物が提供される。床構造物は、1つ又は複数の構造ビームと1つ又は複数の軽量パネルとを互いに接合することによって規定される。この特定の構成は、軽量パネルを使用して(多数の車両等の)比較的大きな荷重を支えることができる床構造物を規定することを可能にするので、特に有用である。比較的大きな荷重を支えることができる床構造物ができる理由は、軽量パネルが構造ビームを介して互いに接合されて床構造物を規定することにある。
【0016】
好ましくは、1つ又は複数の構造ビームは、本発明のこの実施形態による1つ又は複数のビームを含む。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、床構造物を規定するためのビームが提供され、ビームは、
上面及び下面と第1及び第2の側面とを有する本体であって、上面及び下面は、ビームの深さを規定する特定の距離だけ互いに離間されている、本体と、
ビームに沿って長手方向に延びる複数の通路と、を含んでおり、
複数の通路は、互いに離間した関係で配置されており、
ビームは、ビームの長さに沿って互いに離間した関係で配置された複数の支持部材をさらに含み、支持部材は、中央部と、中央部の各端部から延びる2つのフィンプレートとを含み、支持部材は、支持部材をビーム内に含めるようにビームを横方向に横断しており、それによって、支持部材の中央部は、ビーム内に含まれ、フィンプレートはビームの両側から外側に延びる。
【0018】
好ましくは、ビームは鋼線で補強された(pre-stressed)構造ビームを含む。
【0019】
好ましくは、複数の通路は、隣接する通路の間に複数の第1のウェブと、ビームの第1及び第2の側面と最も外側の通路との間に一対の第2のウェブとを規定し、
第1のウェブは、隣接する通路の間の距離に等しい幅を有し、第2のウェブは、ビームの第1及び第2の側面と最も外側の通路との間の距離に等しい幅を有しており、第1のウェブ及び第2のウェブの幅の合計は、ビームの深さ以上である。
【0020】
好ましくは、通路は、中空(voided)通路を含む。
【0021】
好ましくは、複数のグループのストランドが、互いに離間した関係で配置され且つビームに沿って長手方向に延びる。
【0022】
好ましくは、ビームは、ビームの上面に隣接する第1グループの支持ケーブルと、ビームの下面に隣接して配置された第2グループの複数組の第2のストランドと、第3グループの2対の第3のストランドとを含み、各対はビームの1つの下コーナー部に位置する。
【0023】
好ましくは、ビームは、ビームの上部に位置しており、互いに離間した関係で配置され且つビームの一方の側からビームの他方の側へ延びる5本の支持ケーブルを含む。
【0024】
好ましくは、第2グループの第2のストランドは3組の第2のストランドを含み、各組の第2のストランドは、ビームの下部に位置する台形アレイとして配置された5本の第2のストランドを含み、第3グループの第3のストランドは、L字型アレイとして配置された2組の3本のストランドを含み、各組の3本のストランドは、ビームの1つの下コーナー部に位置する。
【0025】
好ましくは、各支持ケーブルは、並んで配置され、且つ第1のストランドの長さに沿って互いに離間した関係で配置された複数のクリップによって互いに接合されたバー(bar)及びワイヤを含み、各クリップは、各第1のストランドの特定の部分を取り囲む。
【0026】
好ましくは、バー及びワイヤは、互いに当接しており、且つクリップのみによって互いに接合される。
【0027】
好ましくは、ワイヤはストランドを含む。
【0028】
好ましくは、バーは変形した補強鉄筋を含む。
【0029】
好ましくは、第2及び第3のストランドのそれぞれが、互いに束ねられた複数のワイヤを含む。
【0030】
好ましくは、ビームは、ビームを横方向に横断する複数の支持部材をさらに含み、支持部材は、ビームの長さに沿って互いに離間した関係で配置される。
【0031】
特定の構成では、支持部材は互いに最大3メートル離間している。
【0032】
好ましくは、各支持部材は、中央部と、中央部の各端部から延びる2つのフィンプレートとを含み、支持部材の中央部はビーム内に含まれ、フィンプレートはビームの両側から外側に延びる。
【0033】
好ましくは、各支持部材は、床パネルをビームの各側に取り付けるための固定手段を含む。
【0034】
特定の構成では、支持ビームは、互いに3メートル離間される。
【0035】
好ましくは、ビームの各側部が床パネルを受容するように適合される。
【0036】
好ましくは、ビームの側部が、支持アングル(angle)等の取付け手段を受容するように構成される。
【0037】
好ましくは、ビームの各側部は、ビームに沿って互いに離間した関係で配置された複数の支持アングルを含み、支持アングルは、床パネルの受容側の取付け手段を規定するように適合される。
【0038】
好ましくは、ビームの端部が、通路を密封するために少なくとも部分的に通路内に延びるコンクリートプラグを含む。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、バー及びワイヤを含む支持ケーブルが提供され、バー及びワイヤは、並んで配置され、且つ各支持ケーブルに沿って互いに離間した関係で配置された複数のクリップによって互いに接合され、各クリップは、支持ケーブルの特定の部分を取り囲む。
【0040】
好ましくは、バー及びワイヤは、ワイヤがバーの長さに沿って延びて支持ケーブルを規定する際に、互いに連続して当接する。
【0041】
好ましくは、バー及びワイヤは、互いに当接しており、且つクリップのみによって互いに接合される。
【0042】
好ましくは、ワイヤはストランドを含む。
【0043】
好ましくは、バーは、変形した補強鉄筋を含む。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、床構造物を規定するためのビームが提供され、ビームは、
上面及び下面と第1及び第2の側面とを有する本体であって、上面及び下面は、ビームの深さを規定する特定の距離だけ互いに離間されている、本体と、
ビームに沿って長手方向に延びる複数の通路と、を含んでおり、
複数の通路は、互いに離間した関係で配置され、隣接する通路の間に複数の第1のウェブと、ビームの第1及び第2の側面と最も外側の通路との間に一対の第2のウェブとを規定し、
ビームは、ビームの上面に隣接する第1グループの支持ケーブルと、ビームの下面に隣接した配置された第2グループの複数組の第2のストランドと、第3グループの2対の第3のストランドであって、各対がビームの1つの下コーナー部に位置する、第3のストランドとをさらに含み、支持ケーブルは、本発明の第2の態様による支持ケーブルを含む。
【0045】
好ましくは、ビームは鋼線で補強された構造ビームを含む。
【0046】
好ましくは、ビームは、ビームの上部に位置しており、互いに離間した関係で配置され且つビームの一方の側からビームの他方の側へ延びる5本の支持ケーブルを含む。
【0047】
好ましくは、支持ケーブルは、本発明の第2の態様で規定される支持ケーブルを含む。
【0048】
好ましくは、第2グループの第2のストランドは3組の第2のストランドを含み、各組の第2のストランドは、ビームの下部に位置する台形アレイとして配置された5本の第2のストランドを含み、第3グループの第3のストランドは、L字型アレイとして配置された2組の3本のストランドを含み、各組の3本のストランドは、ビームの1つの下コーナー部に位置する。
【0049】
本発明の第4の態様によれば、第1及び第2の構造ビームと、1つの第1の充填パネルとを含む床構造物が提供され、第1及び第2のビームは、互いに離間した関係で配置され、充填パネルを受容するためのスペースを規定し、各ビームは、充填パネルの各側面を取り付けるのに適合した内面と、別の充填パネルの側面を受容するための外面とを含む。
【0050】
好ましくは、ビームは鋼線で補強された構造ビームを含む。
【0051】
好ましくは、構造ビームは、本発明の第1の態様又は本発明の第3の態様のいずれかによる第1及び第2のビームを含む。
【0052】
好ましくは、充填パネルは軽量パネルを含む。
【0053】
好ましくは、軽量パネルは、上げ床システムを含む軽量ジョイスト(joist)を含む。
【0054】
好ましくは、充填パネルは、コンクリートスラブに包まれたメッシュ構造を含む。
【0055】
好ましくは、充填パネルは、その長さに沿って間を置いて打ち抜かれ、ジョイストを接続するためのタブを形成する周辺チャネルを含み、ジョイストは、パネルの一方の側からパネルの他方の側へ横方向に延び且つ互いに離間した関係で配置され、周辺チャネルはパネルに沿って長手方向に延びる。
【0056】
好ましくは、周辺チャネルは、互いに離間した関係で配置された吊上げ用アイを含む。
【0057】
好ましくは、周辺チャネルは、ビームの内面への取り付けに適合される。
【0058】
好ましくは、床構造物は、第3のビームと第2の充填パネルとをさらに含み、第3のビームは、第1のビームとの配置関係で離間して配置され、第2の充填パネルを受容するためのスペースを規定し、第3のビームは、第2の充填パネルの一側の取り付けに適合した内側を含み、第2の充填パネルの他方の側は、第1のビームの外側への取り付けに適合される。
【0059】
好ましくは、床構造物は、第4のビームと第3の充填パネルとをさらに含み、第4のビームは、第2のパネルとの配置関係で離間して配置され、第3の充填パネルを受容するためのスペースを規定し、第4のビームは、第3の充填パネルの一側の取り付けに適合した内側を含み、第3の充填パネルの他方の側は、第2のビームの外側への取り付けに適合される。
【0060】
本発明の第5の態様によれば、建物構造物が提供され、建物構造物は、互いに離間した関係で配置された複数の支柱と、地面から離間し且つ支柱に沿って特定の位置でこの支柱に取り付けられる本発明の第4の態様による少なくとも1つの床構造物とを含む。
【0061】
好ましくは、建物構造物は、支柱同士の間に延びる複数の補強ビームを含む。
【0062】
好ましくは、建物構造物は、支柱同士の間に延びる対角部材を含む。
【0063】
好ましくは、建物構造物は、外側支柱と内側支柱とを含む。
【0064】
好ましくは、内側支柱は、外側支柱から離間しており、筋交部材が、内側支柱と外側支柱との間に延びる。
【0065】
好ましくは、外側支柱に取り付けられ、且つ支柱に沿って互いに離間した関係で配置された複数の床構造物がある。
【0066】
好ましくは、内側支柱は、床構造物同士の間に延びる複数の支柱セグメントを含み、各支柱セグメントの端部が、床構造物に取り付けられ、床構造物同士の間に支柱セグメントが挟み込まれる。
【0067】
好ましくは、支柱セグメントは外側支柱から離間しており、筋交部材は外側支柱と支柱セグメントとの間に延びる。
【0068】
好ましくは、内側支柱は、各対の筋交部材が外側支柱と互いに接合するように、互いに離間しており、特定の床構造物の内側支柱の支柱セグメントは、少なくとも1つの駐車区画を含む部分を規定する。
【0069】
好ましくは、建物構造物は、支柱同士の間に延びるガードレールを含む。
【0070】
好ましくは、建物構造物は、メインエリアとアクセスエリアとを含み、アクセスエリアは、車両及び歩行者が建物構造物のメインエリアにアクセスするのを可能にする階段及び傾斜路を含み、傾斜路は、本発明の第1の態様による少なくとも1つのビームを含む。
【0071】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第5の態様による建物構造物を建てる方法が提供され、この方法は、
a.基礎並びに電気及び消防設備を含む設備の穴を掘ること、
b.鉄筋の固定の準備及びコンクリートの基礎を打つこと、
c.支柱の現場への運搬及びその支柱を設置すること、
d.本発明の第1の態様によるビーム及び本発明の第3の態様による床構造物を規定するためのパネルを現場に運搬し、それらビーム及びパネルを吊り上げ、互いに取り付け且つ直立支柱に取り付けること、
e.筋交部材で各床構造物を補強すること、
f.自動車甲板を用いて互いに傾斜路を設置すること、
g.1階及び階段への舗装と(該当する場合に)エレベータの設置をすること、及び
h.設備及び駐車支払い装置を設置すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0072】
本発明の更なる特徴について、そのいくつかの非限定的な実施形態の以下の説明においてより完全に説明する。この説明は、単に本発明を例示する目的で含まれている。その実施形態は、上に述べたような本発明の広い概要、開示、又は説明に対する制限として理解すべきではない。添付の図面を参照して説明を行う。
【
図1】駐車構造物として使用される本発明の一実施形態による建物構造物体の特定の構成の概略断面図である。
【
図2】駐車構造物として使用される本発明のこの実施形態による建物構造物の別の特定の構成の概略斜視側面図である。
【
図3】本発明のこの実施形態による建物構造物の概略断面図である。
【
図4】本発明のこの実施形態による建物構造物の概略側面図である。
【
図5】本発明のこの実施形態による建物構造物の床構造物の概略平面図である。
【
図7b】ビームが床構造物を規定していない、
図3に示される細部Aの概略図である。
【
図7c】ビームが床構造物を規定していない、
図3に示される細部Aの概略図である。
【
図8b】ビームが床構造物を規定していない、
図3に示される細部Bの概略図である。
【
図10】支柱の断面を示す、
図4に示される細部Eの概略上断面図である。
【
図11】
図4に示される細部Eの概略側面図である。
【
図12】本発明のこの実施形態による建物構造物の支柱の概略上断面図である。
【
図16c】本発明のこの実施形態によるケーブル支持体の一部の概略側面図である。
【
図17】
図3に示される細部Cの概略断面図である。
【
図18】パネルとビームとを互いに固定するための支持部材の概略側面図である。
【
図19】ボルトを組み込んだ又はパネルとビームとを互いに固定した、
図6に示される細部Iの概略図である。
【
図20】ビームを除いて、パネルとビームとを互いに固定するための支持アングルの概略図である。
【
図21】本発明のこの実施形態による建物構造物の床パネルの概略平面図である。
【
図22】
図21に示される床パネルの線A-A’に沿った断面の概略断面図である。
【
図23】
図22に示される床パネルの線B-B’に沿った断面の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1及び
図2は、車両用の駐車施設として使用するために構成された建物構造物10の特定の構成を示す。建物構造物10は、組み立てられた状態と分解された状態との間で選択的に移動するように適合される。建物構造物が組み立てられた状態と分解された状態との間で選択的に移動するように適合されるという事実は、特定の期間の間に建物構造物を特定の土地で組み立てて一時的な建物構造物10として使用することを可能にするので、特に有利である。建物構造物10がもはや必要とされない、又は特定の土地が別の用途のために必要とされた後に、建物構造物10は、比較的速く分解され、その土地を恒久的な建物構造物の建設等の他の用途に利用することができる。
【0074】
本発明のこの実施形態によれば、ビーム(beam)46同士の間に跨る軽量床パネル48を含む、鋼線で補強した(pre-stressed)軽量構造ビーム46を使用する軽量コンクリート構造物を含む駐車システムが提供される。特定の構成では、建物構造物10を使用する駐車システムは、従来の駐車建物構造物よりも約半分の重量未満であり得る。
【0075】
本発明の特定の実施形態の一構成によれば、建物構造物は、1つ又は複数の構造ビームを有する床構造物と、構造ビームに取り付けるための1つ又は複数の軽量パネルとを含み、床構造物は、1つ又は複数の構造ビームと1つ又は複数の軽量パネルとを互いに接合することによって規定される。この特定の構成は、軽量パネルを使用して(多数の車両等の)比較的大きな荷重を支えることができる床構造物を規定することを可能にするので、特に有用である。この理由は、軽量パネルが1つ又は複数の構造ビームを介して互いに接合され、床構造物を規定するためである。一構成では、1つ又は複数のビームは、本発明のこの実施形態によるビーム等の構造ビームである。構造ビームは、建物構造物、特に駐車施設として使用される建物構造物に見られるような比較的大きな荷重を支えるように設計及び製造される。これは、比較的大きな荷重を支えることができない軽量スラブである中空コアスラブ等のスラブとは対照的である。
【0076】
図1に示されるように、建物構造物10は、メインエリア12とアクセスエリア14とを含む。アクセスエリア14は、車両及び歩行者が建物構造物10のメインエリア12にアクセスするのを可能にする階段及び傾斜路を含む。
【0077】
メインエリア12は、車両を駐車するための駐車区画18、並びに車両及び歩行者が駐車区画にアクセスして車両を駐車し且つ車両を回収するのを可能にする通路20及び歩道22を規定する床構造物16含む。
図1及び
図2に示される特定の構成は、それぞれ6つ及び5つの床構造物16を含む。
【0078】
床構造物16のそれぞれは、床構造物16を取り囲むガードレール24を含む。
図1及び
図2に示される特定の構成では、いくつかのガードレール24は説明のために取り除かれている。
【0079】
建物構造物10は、土地に据え付けられた土台(foundation)26を含み、その土地の上に建物構造物10が建てられている。土台26はまた、車両のための駐車区画を可能にするように適合され得る。
【0080】
さらに、複数の支柱28が、土台26の上に互いに離間した関係で配置される。支柱28は、それら支柱の下端に、支柱28を地面に固定し支柱28を直立した状態に維持するための基礎(footing)30を含む。
図13は、基礎30に取り付けられた特定の支柱28の下端を示す。
【0081】
外側支柱28aと内側支柱28bとが設けられる。
図3及び
図4に示される特定の構成では、建物構造物10の一方の側から建物構造物10の他方の側まで、互いに離間した関係で配置された複数対の外側支柱28a及び内側支柱28bが設けられる。
【0082】
支柱28は、各床構造物16を地面に対して特定の高さに固定するように適合される。これにより、例えば
図3及び
図4に示されるように、床構造物16を互いに離間した関係で配置することが可能になる。
【0083】
さらに
図12を参照すると、特定の構成では、支柱28は内側コア88と外側スリーブ90とを含む。内側コア88は、スリーブ90内の打設コンクリートに埋め込まれた内側ビーム92(例えば、Iビーム)を含む。
【0084】
【0085】
図3は、建物構造物10の概略断面図である。
図3に示されるように、各床構造物16は、支柱28に沿った特定の位置でこの支柱28に固定される。支持面16の支柱28への固定は、固定手段32,34を介して達成される。
【0086】
固定手段32は、支持面16の外側エッジを最も外側の支柱28aに固定するように適合され、
図8a及び
図8bは固定手段32を示す。固定手段32は、上部32aと下部32bとを含む。固定手段34は、内側支柱28bを支持面16に固定するように適合され、
図7は固定手段34を示す。固定手段34は、上部34aと下部34bとを含む。
【0087】
特定の構成では、内側支柱28bは、床構造物16同士の間に延びる複数の支柱セグメント28cによって規定することができる。
図3はこの特定の構成を示す。各支柱セグメント28cの端部は、床構造物16に取り付けられ、その床構造物16同士の間に支柱セグメント28cが挟み込まれる。
図7a~
図7cは、特定の支柱セグメント28cの下端と、この特定の支柱セグメント28cの下に位置する別の支柱セグメント28cの上端とを固定するための取付け手段34を示す。
【0088】
取付け手段34はプレート35とボルト37とを含む。プレート35は、支柱28cに取り付けられ、且つ支柱28cの端部を取り囲む。支柱28の床構造物16への取付けは、パネル48と共に床構造物16を規定するプレート35及びビーム46を横切るボルト37を介して行われる。
【0089】
さらに、建物構造物10は、建物構造物10を補強するための対角部材40を含む。
【0090】
対角部材40は、互いに交差する支持部材42を含む。
図7a及び
図8aに示される構成では、支持部材42aが、固定手段34の下部34b(
図7参照)から固定手段32の上部32a(
図8a参照)に延びる。別の支持部材42bが、固定手段34の上部34a(
図7参照)から別の固定手段32の下部32bに延びる。
【0091】
さらに、支持部材42の端部が支柱28に取り付けられる。例えば
図8bに示されるように、支柱28は、支柱28の内側コア88に取り付けられたウイング29を含む。各ウイングは、対角部材40の支持部材42の端部を取り付けるのに適合した表面を有する。
【0092】
代替の構成では、筋交部材40をガードレール25に固定してもよい。
図14に示されるように、筋交部材の支持部材42は、ガードレール24のガードレール25に取り付けられたウイング29に取り付けてもよい。
【0093】
図3及び
図4に示される建物構造物10の特定の構成を参照する。
図3及び
図4に示されるように、支柱28a,28bの各対は、対角部材40aを介して互いに接合される。そして、一対の隣接する支柱28aは、対角部材40bを介して互いに結合される。この特定の構成では、建物構造物10の各コーナー部は、互いに直交して配置された2本の筋交部材40を含む。
【0094】
さらに、建造物構造10の代替の構成では、例えば建造物構造10の特定の用途に応じて、複数の筋交部材40を他の種類の構成で配置することができる。別の種類の筋交の構成の例については、
図5及び
図6に関連して以下で説明する。この特定の構成では、一対の筋交部材40が、床構造物16を別々のグループの駐車区画に分割する仕切りを規定する。
【0095】
さらに、
図4(例えば細部E)に示されるように、建物構造物10は、支柱28a同士の間に延びる複数の補強ビーム84を含む。各床構造物16に対して、複数の補強ビーム84がある。補強ビーム84は、固定手段86を介して支柱28aに取り付けられる(
図8b及び
図11を参照)。筋交部材40と同様に、補強ビーム86の存在によって、建物構造物10が補強される。
【0096】
【0097】
図5は、例えば床構造物16を規定するための支持面44の特定の構成を示している。前述したように、建物構造物10は、互いの上に配置され、且つ互いに離間した関係で配置された複数の床構造物16を含み、多層の建物構造物10を規定する。代替の構成では、支持面44は、例えば、建物構造物10の異なるレベルへのアクセスを提供する傾斜路を規定するように構成され得る。
【0098】
図5に示される支持面44は、並んで配置された2つの部分54,56を含む。各部分54,56は、本発明のこの実施形態によれば、複数のビーム46を含む。ビーム46は、互いに離間した関係で配置され、パネル48(充填パネル48とも呼ばれる)を受容するためのスペースを規定する。各ビーム46は、各ビームに隣接するパネル48の各面を取り付けるように適合した面を含み、このようにして、床構造物が規定される。
【0099】
パネル48は、支持アングル66を介して各部分54,56のビーム46を互いに接合する。
図16及び
図19~
図21は、支持アングル66を示す。
【0100】
充填パネル48としては、例えば軽量構造物等のあらゆるタイプのパネルを使用することができる。
【0101】
【0102】
充填パネル48は、コンクリートスラブ52に包まれたメッシュ構造50を含む。パネル48は、軽量ジョイスト(joist:根太)と上げ床システム(RFS)とを組み合わせた軽量パネル48である。パネル48の特定の構成は、厚さ60ミリメートル(mm)のコンクリートを有し、且つ4台の車両を保持することができる。
【0103】
パネル48の構成要素は、寸法精度のためロール成形プロセスを使用して製造される。構成要素は、ロール成形プロセス中に、打ち抜き、プレス、且つ所定の長さに切断される。パネル48の組立ては、構成要素を互いにボルト締めし、補強メッシュ上の平らなキャスティング(コンクリート打ちされた)ベッドを上下逆さまに配置することによって行われる。
【0104】
特に、
図22~
図25に示されるように、パネル48は、その長さに沿って間を置いて打ち抜かれ、ジョイスト98を接続するためのタブ96を形成する周辺チャネル94を含む。タブ96は、設計制限を使用して特定の設計で配置され、且つ設計ソフトウェアにプログラムされる。
【0105】
吊上げコード102を取り付けるための吊上げ用アイ100を受け入れるために、特別な孔がパネル48の周辺チャネルに穿孔される。特別な孔の位置は、ロール形成ソフトウェアに入力された設計情報から計算される。吊上げ用アイ100は、補強手段によってコンクリートスラブに固定される。
【0106】
さらに、ビーム46を横方向に横断する支持部材68は、パネル48の側面をビーム46の側面に固定するのを可能にする(
図16及び
図19~
図21を参照)。
図5及び
図6に示される特定の構成では、各ビーム46に対して、支持面44の部分56、58の各側面に隣接して配置された1つの支持部材68aと、互いに離間した関係で配置され、部分56,58の一方の側面から延びる4対の支持部材68bとがある。
【0107】
図6は、支持面44の細部Hとして示される部分54の特定の支持部62を示す。各支持部62は、1つ又は複数の駐車区画18とすることができる。
【0108】
支持部62は、3枚のパネル48a~48cによって互いに接合された4本のビーム46a~46dを含む。特に、2本の外側ビーム46a,46bと、2本の中央ビーム46b,46cがある。
図6及び
図8に示されるように、各ビーム46は、固定手段32を介して支柱28a,28bに取り付けられる。
図8a及び
図8bは固定手段32を示している。
【0109】
各ビーム46は、内側端部58と外側端部60とを含む。外側端部60は外側支柱28aに取り付けられ、内側端部58は内側支柱28bに取り付けられる。
【0110】
図6に示されるように、2本の支柱28cが外側ビーム46a,46dに取り付けられる。各支柱28cは、ビーム46a,46dの端部から離間している。支柱28cは、
図7a~
図7cに示される固定手段34を介してビーム46に取り付けられる。
【0111】
さらに、支持部62は、そのコーナー部に2本の筋交部材40を含む。一方の筋交部材40は、外側支柱28aから内側支柱セグメント28c,28dに延びる。他方の筋交部材40は、外側支柱28aから隣接支柱28aに延びる。
【0112】
さらに、前述したように、
図6は、支持面44の細部Hとして示される特定の支持部62を示す。
図5から理解され得るように、支持面44は複数の支持部62を含む。
【0113】
特定の構成では、各支持部62は、車両を駐車するための1つ又は複数の駐車区画を含み得る。特に、
図6に示されるビーム46及びパネル48は、5.5メートル(m)~7.5mの双方向車線の両側の2.5mの区画に4台の車を駐車できるようにする5mの駐車区画を規定するように配置される。
【0114】
異なる構成によれば、パネル48の幅は、パネル48及びこのパネルを含む建物構造物10に与えられる特定の用途に応じて変わり得る。
【0115】
【0116】
図16及び
図20は、本発明のこの実施形態によるビーム46の第1の構成を示す。ビームは、互いに離間した関係で配置され且つビーム46に沿って長手方向に延びる複数の通路72を有する本体70を含む。
【0117】
ビーム46は、上面49及び下面51と第1の側面53及び第2の側面55とを有する本体47を含む。上面49及び下面51は、ビームの深さを規定する特定の距離だけ互いに離間している。複数の通路72が、ビーム46に沿って長手方向に延び、且つ互いに離間した関係で配置されており、(1)隣接する通路72a,72bの各対の間のウェブ57aと、(2)隣接する通路72b,72cの各対の間のウェブ57bと、(3)隣接する通路72c,72dの各対の間のウェブ57cと、を規定する。そして、2つのウェブ59a,59bが、ビーム46の側面53,55と、通路72a,72dの外側面73との間に規定される。
【0118】
さらに、ウェブ57は、ウェブ57の最も薄い部分で測定された、隣接する通路の間の距離に等しい幅を有し、ウェブ59は、最も薄い部分で測定された、ビーム46の側面53,55と通路72a,72dとの間の距離に等しい幅を有する。
【0119】
本発明のこの実施形態によれば、ウェブの累積幅(すなわち、ウェブ57a~57cと59a,59bとの幅の合計)はビーム46の深さ以上である。
【0120】
【0121】
図19に示されるように、各ビーム46は、互いに離間した関係で配置され且つビーム46に沿って長手方向に延びる複数のストランド74と複数の支持ケーブル75とを含む。
【0122】
特に、ビーム46は、ビーム46の上面49に隣接する第1グループの支持ケーブル75と、ビーム46の下面51に隣接して配置された第2グループの複数組の第2のストランド77と、ビーム46の1つの下コーナー部に位置する第3グループの2組の第3のストランド77とを含む。
【0123】
ビーム46は、ビーム46の上面49に位置しており、互いに離間した関係で配置され、且つビーム46の一方の側53からビーム46の他方の側54に延びる5本の支持ケーブル75を含む。
【0124】
次に
図16cを参照すると、各支持ケーブル75は、並んで配置され、且つ各支持ケーブル75に沿って互いに離間した関係で配置された複数のクリップ108によって互いに接合されたバー(bar)104及びワイヤ106を含み、各クリップ108は、各支持ケーブル75の特定の部分を取り囲む。特定の構成では、隣接するクリップ108は互いに100mm離間している。
【0125】
特に、支持ケーブルに沿って延びるワイヤ106及びバー104は、互いに当接し、且つクリップ108のみによって接合される。このようにして、圧縮補強が形成される。
【0126】
特定の構成では、バー104は変形した補強鉄筋を含み、ワイヤ106はストランドを含む。
【0127】
さらに、第2グループの第2のストランド77は、3組の第2のストランド77を含み、各組の第2のストランド77は、ビームの下部に位置する台形アレイとして配置された5本の第2のストランド77を含む。第3グループの第3のストランド79は、L字型アレイとして配置された2組の3本のストランド79を含み、各組の3本のストランド79は、ビームの1つの下コーナー部に位置する。
【0128】
好ましくは、第2のストランド77及び第3のストランド79のそれぞれは、互いに束ねられた複数のワイヤを含む。
【0129】
さらに、各ビーム46の各端部が、通路72内に延びるコンクリートプラグで封止される。
【0130】
さらに、ビーム46は、ビーム46を横方向に横断する支持部材68を含む。特に、互いに離間した関係で配置された複数の支持部材68のビームがあり、特定の構成では、隣接する支持部材68は、互いに最大3m離間される。
【0131】
図18は、支持部材68の特定の構成を示す。支持ビーム68は、中央部76と、中央部76の各端部から延びる2つのフィンプレート78とを含む。使用中に、支持部材68は、支持部材68の中央部分76がビーム46内に含まれ、支持ビーム68のフィンプレート78がビーム68の両側から外側に延びるように、ビーム内に設置される。各フィンプレート78は、ビーム46とパネル48とを互いに取り付けるための支持アングル66を規定する開口部80を含む。
【0132】
建物構造物10の組立て方法で説明するように、ビーム46の側面に当接したときのパネル48の側面はフィンプレート78上に載り、パネル48及びフィンプレート78の面を横切るボルト82によって、パネル48とビーム46とを互いにボルト締めすることを可能にする(
図21参照)。
【0133】
ビーム46の側面は、支持アングル66のブラケット84等の取付け手段を受容するように構成される。
図19に示されるように、支持アングル66のブラケット84は、パネル46の側面を受容するためにビーム46の各側面に取り付けられ得る。これは、
図20及び
図21で確認することができる。
【0134】
さらに、ビーム46の特定の構成は、全長が最小22m、幅が1200mm、深さが最小500mmであり、12トンの荷重を支えることができる。各ビームは、静止荷重で4台の車両、移動する2台の車両を保持することができる。
【0135】
さらに、ビーム46は、高強度コンクリートを含む鋼線で補強した(pre-stressed)ストランド74を含む。ビームは、150mの長さで送られ(poured)、ヒートベッド(head bed)で硬化される。熱硬化後に、ビームは現場への運搬のために所望の長さに切断される。
【0136】
特定の構成では、建物構造物10の組立ては、
a.基礎並びに電気及び消防設備を含む設備の穴を掘ること、
b.鉄骨の固定の準備及びコンクリートの基礎を打つこと、
c.支柱28の現場への運搬及びその支柱を設置すること、
d.ビーム46及びパネル48を現場に運搬し、それらビーム及びパネルを吊り上げ、互いに取り付け、且つ支柱28に取り付けること、
e.特定の構成では、4本のビーム毎に3mの筋交40で支えること、
f.自動車甲板を用いて互いに傾斜路を設置すること、
g.1階及び階段への舗装と(該当する場合に)エレベータの設置をすること、及び
h.設備及び駐車場支払い装置を設置すること、を含む。
【0137】
本発明の特定の実施形態の床構造物の前述した構成は、建物構造物の組立て及び分解を容易にする軽量の床パネルを使用して比較的大きな荷重(多数の車両等)を支えることができる建物構造物を規定することを可能にするので、特に有用である。これは、本発明のこの実施形態による構造ビーム等の1つ又は複数の構造ビームを床構造物に組み込むことによって可能となる。
【0138】
比較的重い構造床パネルの代わりに軽量床パネルを使用できる理由は、本発明のこの実施形態による1つ又は複数の構造ビームを床構造物に組み込むためである。これは、例えば比較的大きな荷重を支えることができる駐車施設として使用される従来の建物構造物とは著しく対照的である。これらの従来の駐車施設では、床構造物は、例えば、スラブ構造を形成するために互いに接合される複数の中空コア厚板から構成される床パネルによって規定される。従来技術では、中空コア厚板は大きな荷重を支えるようには設計されていないので、コンクリートトッピングが中空コア厚板上に打たれて、解体せずには再使用又は適合することができない複合構造物を形成する。
【0139】
当業者に明らかであるような修正及び変形は、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0140】
さらに、本発明の範囲は、開示された実施形態の範囲に限定されないことを理解されたい。例として、本実施形態は、駐車施設として使用するために構成された建物構造物10に関する。しかしながら、本発明の他の実施形態によれば、建物構造物10は、住宅用、商業用、及び工業用の建物構造物10としての用途のために構成してもよい。
【0141】
本明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、用語「備える、有する、含む(comprise)」又はその変形(comprises, comprising)は、記載された整数又は整数のグループを含むことを意味するが、他の整数又は整数のグループを排除するものではないことが理解されよう。