(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】免疫原性WT-1ペプチドおよびその使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20220701BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220701BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220701BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220701BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020209931
(22)【出願日】2020-12-18
(62)【分割の表示】P 2019027238の分割
【原出願日】2014-01-15
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2013-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャインバーグ、デヴィット・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ダオ、タオ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/106682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成
物であって、
少なくとも2種類の単離ペプチドを含み、
前記少なくとも2種類の単離ペプチドが、
1種類以上の第1のペプチドであって、前記第1のペプチドの各々は、配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、かつ10~30個のアミノ酸からなる長さを有する、該1種類以上の第1のペプチド、
1種類以上の第2のペプチドであって、前記第2のペプチドの各々は、配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、30を超える個数のアミノ酸からなる長さを有し、9~11個のアミノ酸からなる長さにプロセシングされるように適合されている、該1種類以上の第2のペプチド、
配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号10(CMTWNYMNLGATLKG)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号19(MTWNYMNLGATLKGV)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号23(CMTWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号11(WNYMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号20(TWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類の単離ペプチドが、前記1種類以上の第1のペプチドを含み、
前記1種類以上の第1のペプチドの少なくとも1つが、
配列番号14(CMTWNLMNLGATLKG)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号15(MTWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号16(TWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号17(WNLMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号22(CMTWNLMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類の単離ペプチドが、
配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号14(CMTWNLMNLGATLKG)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号15(MTWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号16(TWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号17(WNLMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号22(CMTWNLMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列からなるペプチド
配列番号10(CMTWNYMNLGATLKG)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号19(MTWNYMNLGATLKGV)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号23(CMTWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号11(WNYMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号20(TWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類の単離ペプチドが、2種類、3種類、4種類、または4種類以上のペプチドである、医薬組成
物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成
物であって、
免疫調節性化合物をさらに含む、医薬組成
物。
【請求項6】
請求項5に記載の医薬組成
物であって、
前記免疫調節性化合物は、(i)サイトカイン、サイトカイン受容体、ケモカイン、補体成分、インターロイキン1~15のいずれか、インターフェロンα、βもしくはγ、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引物質および活性化因子(MCAF)、ランテス(RANTES)、またはマクロファージ炎症性ペプチドMIP-1aおよびMIP-1bであるか、若しくは(ii)OX40、OX40L(gp34)、リンホタクチン、CD40、CD40L、B7.1、B7.2、トラップ(TRAP)、ICAM-1、2もしくは3、CD28、CTLA-4、熱安定性抗原(HSA)、またはコンドロイチン硫酸修飾MHC不変鎖(Ii-CS)の発現を刺激または増強する、医薬組成
物。
【請求項7】
医薬組成
物であって、
少なくとも2種類のペプチドをコードする少なくとも2種類の核酸または発現ベクターを含み、
前記少なくとも2種類のペプチドは、
1種類以上の第1のペプチドであって、前記第1のペプチドの各々は、配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、かつ10~30個のアミノ酸からなる長さを有する、該1種類以上の第1のペプチド、
1種類以上の第2のペプチドであって、前記第2のペプチドの各々は、配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、30を超える個数のアミノ酸からなる長さを有し、9~11個のアミノ酸からなる長さにプロセシングされるように適合されている、該1種類以上の第2のペプチド、
配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号10(CMTWNYMNLGATLKG)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号19(MTWNYMNLGATLKGV)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号23(CMTWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号11(WNYMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号20(TWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項8】
請求項
7に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類の核酸または発現ベクターがコードする前記少なくとも2種類のペプチドが、前記1種類以上の第1のペプチドを含み、
前記1種類以上の第1のペプチドの少なくとも1つが、
配列番号14(CMTWNLMNLGATLKG)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号15(MTWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号16(TWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号17(WNLMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号22(CMTWNLMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項9】
請求項
7に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類の核酸または発現ベクターがコードする前記少なくとも2種類のペプチドが、
配列番号6(NLMNLGATL)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号14(CMTWNLMNLGATLKG)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号15(MTWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号16(TWNLMNLGATLKGV)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号17(WNLMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号22(CMTWNLMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列からなるペプチド
配列番号10(CMTWNYMNLGATLKG)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号19(MTWNYMNLGATLKGV)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号23(CMTWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
配列番号11(WNYMNLGATLKGVAA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、および
配列番号20(TWNYMNLGATLKGVA)のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド
からなる群から選択される、医薬組成
物。
【請求項10】
請求項
7~9のいずれか一項に記載の医薬組成
物であって、
前記少なくとも2種類のペプチドが、2種類、3種類、4種類、または4種類以上のペプチドである、医薬組成
物。
【請求項11】
請求項
7~10のいずれか一項に記載の医薬組成
物であって、
免疫調節性化合物をさらに含む、医薬組成
物。
【請求項12】
請求項
11に記載の医薬組成
物であって、
前記免疫調節性化合物は、(i)サイトカイン、サイトカイン受容体、ケモカイン、補体成分、インターロイキン1~15のいずれか、インターフェロンα、βもしくはγ、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引物質および活性化因子(MCAF)、ランテス(RANTES)、またはマクロファージ炎症性ペプチドMIP-1aおよびMIP-1bであるか、若しくは(ii)OX40、OX40L(gp34)、リンホタクチン、CD40、CD40L、B7.1、B7.2、トラップ(TRAP)、ICAM-1、2もしくは3、CD28、CTLA-4、熱安定性抗原(HSA)、またはコンドロイチン硫酸修飾MHC不変鎖(Ii-CS)の発現を刺激または増強する、医薬組成
物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の医薬組成
物であって、
薬剤的に許容できる担体、ビヒクル、賦形剤、抗原提示細胞、アジュバント、または担体をさらに含
む、
医薬組成
物。
【請求項14】
請求項
13に記載の医薬組成
物であって、
前記アジュバントを含み、
前記アジュバントが、QS21、フロイント不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCG、ミョウバン、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、モンタナイドISA51、またはGM-CSFである、医薬組成
物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、ワクチンとして使用される、医薬組成物。
【請求項16】
WT1を発現するがんを有する対象を治療するか、もしくはWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる医薬を製造するための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の医薬組成
物の使用。
【請求項17】
請求項
16に記載の使用であって、
前記WT1を発現するがんが、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃がん、結腸がん、肺がん、乳がん、胚細胞性腫瘍、卵巣がん、子宮がん、甲状腺がん、肝臓がん、腎がん、カポジ肉腫、肉腫、肝細胞がん、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、中皮腫、または非小細胞肺がん(NSCLC)である、使用。
【請求項18】
WT1を発現するがんの細胞に特異的なCTLの形成および増殖を誘導する医薬を製造するための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の医薬組成
物の使用。
【請求項19】
請求項
18に記載の使用であって、
前記WT1を発現するがんが、白血病、線維形成性小円形細胞腫瘍、胃がん、結腸がん、肺がん、乳がん、胚細胞性腫瘍、卵巣がん、子宮がん、甲状腺がん、肝臓がん、腎がん、カポジ肉腫、肉腫、肝細胞がん、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、中皮腫、または非小細胞肺がん(NSCLC)である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本願は、アメリカ国立衛生研究所からのグラント(研究助成金)P01 23766によって支援を受けた。アメリカ合衆国政府は、本発明に権利を有する。
【0002】
本発明は、ペプチド、ペプチドを含む組成物およびワクチンを提供し、かつ、それらを投与するステップを含む、WT1を発現するがんを治療する方法、当該がんの発生率を減少させる方法、および当該がんに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ウィルムス腫瘍(WT)は、出生1万回に1人の頻度で発生する小児腎芽細胞腫であり、ここ数年の精力的な臨床研究および基礎研究の対象となっている。前記腫瘍は、胎生期起源であり、通常は生後5年間に小児において検出され、一側性または両側性に発生し得る。WTは、発生中の腎臓の濃縮された後腎間葉系細胞が適切に分化できなかった際に生じる。ウィルムス腫瘍1(WT1)腫瘍抑制遺伝子をWTの病因に関連付けることで、遺伝子変化が発生および腫瘍形成の両方に与え得る影響が明らかにされた。
【0004】
ウィルムス腫瘍タンパク質I(WT1)は、胎児の腎臓、精巣および卵巣等における正常な個体発生の間に発現されるZnフィンガー転写因子である。成人においては、WTI発現は、造血幹細胞、筋上皮前駆細胞、腎有足細胞並びに精巣および卵巣内のいくつかの細胞上で、低レベルにまで制限されている。WTIが数種類の白血病において過剰発現されるという最近の実証により、WTIが種々のがんに対する免疫療法の格好の標的になるであろうことが示唆されている。
【0005】
ウィルムス腫瘍癌遺伝子タンパク質(WT1)は、白血病および広範ながんに対する免疫療法の格好の標的である。腫瘍細胞を殺傷することが可能な、HLA-A0201制限細胞傷害性CD8 T細胞を誘導する、WT1タンパク質由来ペプチドが特定されている。HLA-A0201(RMFPNAPYL;配列番号56)またはHLA-A2402(CMTWNQMNL;配列番号57)に結合する2つのペプチドが、世界中で広く研究されており、白血病および他の固形腫瘍を有する患者において臨床試験されている(Oka et al., Scientific World Journal 2007; 7: 649-665; Mundlos et al. Development 1993;119:1329-41; Keilholz et al. Leukemia 2005; 19: 1318-1323)。これらの結果は、WT1由来T細胞エピトープを白血病および広範なヒトがんの治療標的とすることを奨励し、それに対する有力な証拠および理論的根拠を与えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記2つのWT1由来ペプチドの治療への応用は、HLA-A0201タイプ(コーカサス人種の約40%にみられるHLAハプロタイプ)およびHLA-A2402タイプ(日本人および他のアジア人の約40%にみられるハプロタイプ)の人々に限定される。そのため、世界の人口の大部分に使用することができるWT1由来ペプチドが必要とされているが、未だにかなえられていない。治療適応をより多様な集団に拡大するために、複数のHLAハプロタイプに結合する、WT1タンパク質由来の新規ペプチドが求められている。従って、そのようなペプチドは、より高い割合の標的集団に由来するT細胞を刺激することが可能であり、永続性のある細胞傷害性免疫記憶細胞によって大部分の集団に対処するワクチン戦略を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、免疫原性ペプチドを含む、ペプチド、組成物、およびワクチン等の免疫原性組成物を提供し、かつ、免疫原性ペプチドを投与するステップ、または治療のために患者に後に注入することができるT細胞をヒト患者の外部で刺激するステップを含む、WT1を発現するがんを治療する方法、それの発生率を減少させる方法、およびそれに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離ペプチドを提供する。一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスI結合ペプチドを提供する。一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスII結合WT1ペプチドを提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離ペプチド、または上記のうちのいずれか1つの断片を提供する。一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスI結合ペプチド、または上記のうちのいずれか1つの断片を提供する。一実施形態では、本発明は、以下の配列:配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスII結合WT1ペプチド、または上記のうちのいずれか1つの断片を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞並びに(b)配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択されるペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞並びに(b)配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から選択されるHLAクラスI結合ペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞並びに(b)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択されるHLAクラスII結合ペプチドを含む組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中の1若しくは複数のペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から選択される1若しくは複数のHLAクラスI結合ペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択される1若しくは複数のHLAクラスII結合ペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される1若しくは複数のHLAクラスI結合ペプチド、並びに配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択される1若しくは複数のHLAクラスII結合ペプチドを含むワクチンを提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に本発明のペプチドまたはワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に本発明のペプチドまたはワクチンを投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、対象において抗がん免疫応答を誘導する方法であって、対象を、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の改変断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の改変断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物と接触させることにより、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の改変断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中の1つのペプチドから成るか、またはそれを含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の改変断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の改変断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、中皮腫を有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の改変断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中の1つのペプチドである。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の改変断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の改変断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中の1つのペプチドである。
【0017】
別の実施形態では、がんはWT1を発現するがんである。一実施形態では、WT1を発現するがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、MDSである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、ウィルムス腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、白血病である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、血液がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、リンパ腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、線維形成性小円形細胞腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、悪性中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胃がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、結腸がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、乳がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胚細胞性腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、卵巣がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、子宮がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝細胞癌である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝臓がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、腎がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、カポジ肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、他の癌腫または肉腫である。
【0018】
別の実施形態では、WT1を発現するがんは、固形腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は、WT1を発現するがんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、肺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、乳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、前立腺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、卵巣がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、腎がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、膵がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、脳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、胃腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、皮膚がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、メラノーマと関連している。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、本発明の単離ペプチドを少なくとも1つの追加のペプチドと一緒に含む、組成物を提供する。ある実施形態では、少なくとも2つの異なる本発明の単離ペプチドを含む組成物が提供される。ある実施形態では、少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる本発明の単離ペプチドを含む組成物が提供される。各可能な形態は本発明の別々の実施形態を表す。ある実施形態では、本発明の組成物はワクチンである。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に本発明のペプチドまたは組成物を投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に本発明のペプチドまたは組成物を投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、WT1タンパク質に特異的なCTLの形成および増殖を誘導する方法であって、リンパ球集団を本発明のペプチドまたは組成物と接触させることにより、WT1タンパク質に特異的なCTLの形成および増殖を誘導するステップを含む方法を提供する。この方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実行することが可能である。インビトロまたはエキソビボで実行される場合、これらのCTLはその後に治療効果を求めて患者に注入され得る。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、(a)WT1タンパク質に特異的なCD8+リンパ球;もしくは(b)WT1タンパク質に特異的なCD4+リンパ球、またはそれらの組み合わせの形成および増殖を誘導する方法であって、リンパ球集団を本発明のペプチドまたは組成物と接触させることにより、(a)WT1タンパク質に特異的なCD8+リンパ球;もしくは(b)WT1タンパク質に特異的なCD4+リンパ球;またはそれらの組み合わせの形成および増殖を誘導するステップを含む方法を提供する。この方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実行することが可能である。インビトロまたはエキソビボで実行される場合、これらのCTLはその後に治療効果を求めて患者に注入され得る。
【0024】
本発明の上記の特徴、利点および目的、並びに以下で明らかとなる他のものを、実現し、詳細に理解できるように、本発明のより具体的な説明を簡潔にまとめる。上記の詳細は、添付の図面に図示される、それのある特定の実施形態を参照することにより得ることができる。これらの図面は明細書の一部となる。しかしながら、添付の図面が、本発明の好ましい実施形態を図示するものであり、これらの範囲の限定とみなされるべきではないことは留意すべきである。本明細書の図面では、各ペプチドについてのグラフ中の一連のデータバーは、図の説明文の全体にわたって示されるように、左から右に同じ順で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】NLMNLGATLペプチドのHLA-A2分子への結合がNQMNLGATLペプチドおよびNYMNLGATLペプチドよりも強いことを示すT2安定化アッセイの結果を示す。天然NQMNLGATL、ヘテロクリティックNLMNLGATLまたはNYMNLGATLを、材料および方法に記載される通りに、表示の濃度でT2細胞上にパルスした。前記ペプチドによるHLA-A2分子の安定化をHLA-A2分子の発現によって測定した。
【
図2A】NLMNLGATLペプチドが、その天然配列NQMNLGATLに交差反応する強いペプチド特異的T細胞応答を誘導することを示す。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然ペプチド、NLMNLGATLおよびPSMAをそれぞれ表している。健常なHLA-A0201ホモ接合性ドナー由来のCD3T細胞を、NQMペプチドまたはNLMNLGATLペプチドのいずれかで3回(A)または5回(B)刺激した。個々のペプチドに暴露した後のIFN-g分泌によって、ペプチド特異的応答を測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±SDを表している。
【
図2B】NLMNLGATLペプチドが、その天然配列NQMNLGATLに交差反応する強いペプチド特異的T細胞応答を誘導することを示す。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然ペプチド、NLMNLGATLおよびPSMAをそれぞれ表している。健常なHLA-A0201ホモ接合性ドナー由来のCD3T細胞を、NQMペプチドまたはNLMNLGATLペプチドのいずれかで3回(A)または5回(B)刺激した。個々のペプチドに暴露した後のIFN-g分泌によって、ペプチド特異的応答を測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±SDを表している。
【
図3】NLMNLGATLペプチドがWT1+HLA-A0201+白血病細胞に対するT細胞の細胞毒性を誘導することを示す。HLA-A0201陽性ドナー由来のT細胞をNLMNLGATLペプチドで5回刺激した。細胞の細胞毒性を、AML細胞株SET-2(WT1+、HLA-A0201+)、HL-60(WT1+、HLA-A0201-)またはHLA-A2陽性患者由来の初代白血病芽球(primary leukemia blast)に対する5時間の
51Cr放出アッセイによって測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±SDを表している。
【
図4A】HLA-A2402ドナーにおけるペプチド特異的T細胞応答を示す。健常なHLA-A2402ホモ接合性ドナー由来のCD3T細胞を、NQMNLGATL、NLMNLGATLまたはNYMNLGATLペプチドで3回刺激した。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然ペプチド、NLMNLGATL、NYMNLGATLおよび無関係なペプチドをそれぞれ表している。個々のペプチドに暴露した後のIFN-g分泌によって、ペプチド特異的応答を測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±を表している。
【
図4B】HLA-A2402ドナーにおけるペプチド特異的T細胞応答を示す。健常なHLA-A2402ホモ接合性ドナー由来のCD3T細胞を、NQMNLGATL、NLMNLGATLまたはNYMNLGATLペプチドで5回刺激した。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然ペプチド、NLMNLGATL、NYMNLGATLおよび無関係なペプチドをそれぞれ表している。個々のペプチドに暴露した後のIFN-g分泌によって、ペプチド特異的応答を測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±を表している。
【
図5A】HLA-DR.B1ペプチド特異的T細胞応答を示す。CD3T細胞をDR-ヘテロクリティック-1ペプチド(DR-het-1 peptide)またはDR-ヘテロクリティック-2ペプチド(DR-het-2 peptide)で5回刺激し、IFN-g Elispotアッセイによってエピトープ特異的応答を測定した。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然ペプチド、NLMNLGATL、WT1-CMT、PSMA、DR-天然-1/天然-2(DR-Nat-1/Nat-2)、DR-ヘテロクリティック-1/ヘテロクリティック-2(DR-het-1/het-2)、B2A2L、BA25およびHL-60をそれぞれ表している。
【
図5B】HLA-DR.B1ペプチド特異的T細胞応答を示す。CD3T細胞を短ペプチドのNQMNLGATL、NLMNLGATLおよび長ペプチドのDR-天然-1、DR-天然-2、DR-ヘテロクリティック-1またはDR-ヘテロクリティック-2ペプチドで5回刺激し、白血病細胞株BA-25(HLA-A2+/A24+、WT1+)および対照HL-60細胞に対する
51Cr放出アッセイによって細胞毒性を測定した。各データポイントは、3連の培養物から得られた平均値±SDを表している。
【
図6】HLA-B0702陽性ドナー由来のCD3T細胞を、インビトロにおいて、2セットのペプチド(合計5)で5回刺激したことを示す。個々のペプチドに対するIFN-γELISPOTアッセイによって、ペプチド特異的応答を測定した。試験されたペプチドは、左から右に、配列番号:34、37、38、30および31である。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、天然-1ペプチド(Native-1 peptide)、ヘテロクリティック-1対天然-1(Het-1 to Native-1)、ヘテロクリティック-2対天然-1(Het-2 to Native-1)、天然-2(Native-2)、ヘテロクリティック-1対天然-2(Het-1 to Native-2)および対照に対する応答をそれぞれ表している。
【
図7】天然配列(配列番号5)との比較における、Het-1(配列番号6)およびHet-2(配列番号7)A24ペプチドについての、ドナーSA(5回刺激)を用いたELISPOTアッセイの結果を示す。各ペプチドについて、バーは、左から右に、CD14、A24-天然ペプチド、A24-ヘテロクリティック-1、A24-ヘテロクリティック-2、A24-235、およびPSMAをそれぞれ表している。ヘテロクリティックペプチドは交差反応を起こす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、免疫原性ペプチド、並びに免疫原性ペプチドを含む組成物およびワクチン、並びに1若しくは複数の免疫原性ペプチドを投与するステップを含む、WT1を発現するがんを治療する方法、その発生率を減少させる方法、およびそれに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0027】
本発明は、免疫原性ペプチドを含む、合成ペプチド並びにWT1を発現するがんを治療する方法、その発生率を減少させる方法、およびそれに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0028】
本発明のペプチドが由来するWT1分子は、別の実施形態では、以下の配列を有する:
1 SRQRPHPGAL RNPTACPLPH FPPSLPPTHS PTHPPRAGTA AQAPGPRRLL
51 AAILDFLLLQ DPASTCVPEP ASQHTLRSGP GCLQQPEQQG VRDPGGIWAK
101 LGAAEASAER LQGRRSRGAS GSEPQQMGSD VRDLNALLPA VPSLGGGGGC
151 ALPVSGAAQW APVLDFAPPG ASAYGSLGGP APPPAPPPPP PPPPHSFIKQ
201 EPSWGGAEPH EEQCLSAFTV HFSGQFTGTA GACRYGPFGP PPPSQASSGQ
251 ARMFPNAPYL PSCLESQPAI RNQGYSTVTF DGTPSYGHTP SHHAAQFPNH
301 SFKHEDPMGQ QGSLGEQQYS VPPPVYGCHT PTDSCTGSQA LLLRTPYSSD
351 NLYQMTSQLE CMTWNQMNLG ATLKGVAAGS SSSVKWTEGQ SNHSTGYESD
401 NHTTPILCGA QYRIHTHGVF RGIQDVRRVP GVAPTLVRSA SETSEKRPFM
451 CAYPGCNKRY FKLSHLQMHS RKHTGEKPYQ CDFKDCERRF SRSDQLKRHQ
501 RRHTGVKPFQ CKTCQRKFSR SDHLKTHTRT HTGKTSEKPF SCRWPSCQKK
551 FARSDELVRH HNMHQRNMTK LQLAL(配列番号51)。
【0029】
WT-1タンパク質の上記配列は、Gessler et al.(Gessler M, Poustka A, Cavenee W, Neve RL, Orkin SH, Bruns GA. Homozygous deletion in Wilms tumours of a zinc-finger gene identified by chromosome jumping. Nature. 1990;343(6260):774-778、1990/02/22にDOI 10.1038/343774a0.として発表)によって公開されたものであり、575個のアミノ酸を含んでなり、WT-116の(Exon5+、KTS+)アイソフォームでは欠損しているN末端の最初の126個のアミノ酸を含む。
【0030】
別の実施形態では、WT1配列は、MGSDVRDLNALLPA VPSLGGGGGCALPVSGAAQWAPVLDFAPPGASAYGSLGGPAPPPAPP PPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQFTGTAGACRYGPFGPPPPSQASSGQA RMFPNAPYLPSCLESQPAIRNQGYSTVTFDGTPSYGHTPSHHAAQFPNHSFKHEDPMGQQGS LGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDNLYQMTSQLECMTWNQMNLGATLK GVAAGSSSSVKWTEGQSNHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRVPGVAPTL VRSASETSEKRPFMCAYPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTGEKPYQCDFKDCERRFSRSDQLK RHQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGKTSEKPFSCRWPSCQKKFARSDELVR HHNMHQRNMTKLQLAL(GenBankアクセッション番号AY245105;配列番号52)である。
【0031】
別の実施形態では、WT1分子は以下の配列を有する:AAEASAERLQGRRSRGASGSEPQQMGSDVRDLNALLPAVPSLGGGGGCALPVSGAAQWAP VLDFAPPGASAYGSLGGPAPPPAPPPPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQF TGTAGACRYGPFGPPPPSQASSGQARMFPNAPYLPSCLESQPAIRNQGYSTVTFDGTPSYGHT PSHHAAQFPNHSFKHEDPMGQQGSLGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDN LYQMTSQLECMTWNQMNLGATLKGHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRV PGVAPTLVRSASETSEKRPFMCAYPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTGEKPYQCDFKDCERRF SRSDQLKRHQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEKPFSCRWPSCQKKFARS DELVRHHNMHQRNMTKLQLAL (GenBankアクセッション番号NM_000378;配列番号53)。
【0032】
別の実施形態では、WT1分子は以下の配列を有する:MQDPASTCVPEPASQHTLRSGPGCLQQPEQQGVRDPGGIWAKLGAAEASAERLQGRRSRGA SGSEPQQMGSDVRDLNALLPAVPSLGGGGGCALPVSGAAQWAPVLDFAPPGASAYGSLGGP APPPAPPPPPPPPPHSFIKQEPSWGGAEPHEEQCLSAFTVHFSGQFTGTAGACRYGPFGPPPPSQ ASSGQARMFPNAPYLPSCLESQPAIRNQGYSTVTFDGTPSYGHTPSHHAAQFPNHSFKHEDP MGQQGSLGEQQYSVPPPVYGCHTPTDSCTGSQALLLRTPYSSDNLYQMTSQLECMTWNQM NLGATLKGVAAGSSSSVKWTEGQSNHSTGYESDNHTTPILCGAQYRIHTHGVFRGIQDVRRV PGVAPTLVRSASETSEKRPFMCAYPGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTGEKPYQCDFKDCERRF SRSDQLKRHQRRHTGVKPFQCKTCQRKFSRSDHLKTHTRTHTGEKPFSCRWPSCQKKFARS DELVRHHNMHQRNMTKLQLAL(GenBankアクセッション番号NP_077742;配列番号54)。
【0033】
別の実施形態では、WT1タンパク質は、GenBankアクセッション番号NM_024426に記載の配列を有する。他の実施形態では、WT1タンパク質は、以下の配列エントリーの1つに記載される配列の1つを有するかまたは含む:NM_024425、NM_024424、NM_000378、S95530、D13624、D12496、D12497、またはX77549。別の実施形態では、WT1タンパク質は、当技術分野において公知の他のWT1配列を有する。本発明は、免疫原性ペプチドを含む、ペプチド、組成物、およびワクチン等の免疫原性組成物、並びに免疫原性ペプチドを投与するステップを含む、WT1を発現するがんを治療する方法、それの発生率を減少させる方法、およびそれに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。場合によっては、本明細書に記載のペプチドは、WT1の天然配列であるペプチドから得られ、WT1由来ペプチドまたはWT1ペプチドと称され得る。
【0034】
一実施形態では、本発明は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の配列のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離WT1ペプチドを提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48の配列のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスI結合WT1ペプチドを提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の配列のいずれか1つから成るアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスII結合WT1ペプチドを提供する。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0035】
一実施形態では、本発明は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の配列のいずれか1つを含むアミノ酸(AA)配列を有する単離WT1ペプチド、またはその断片を提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48の配列のいずれか1つを含むアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスI結合WT1由来ペプチドを提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の配列のいずれか1つを含むアミノ酸(AA)配列を有する単離されたHLAクラスII結合WT1ペプチドを提供する。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞、並びに(b)配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択されるペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞、並びに(b)配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から選択されるHLAクラスI結合ペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、(a)抗原提示細胞、並びに(b)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択されるHLAクラスII結合ペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中の1若しくは複数のペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から選択される1若しくは複数のHLAクラスI結合ペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択される1若しくは複数のHLAクラスII結合ペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から選択される1若しくは複数のHLAクラスI結合ペプチド、並びに配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から選択される1若しくは複数のHLAクラスII結合ペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に、本発明のWT1ペプチドまたはワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に本発明のWT1ペプチドまたはワクチンを投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、対象において抗がん免疫応答を誘導する方法であって、対象を、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物と接触させることにより、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドから成るか、またはそれを含む。別の実施形態では、前記断片は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48、または配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の中のペプチドから成るか、またはそれを含む。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、中皮腫を有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドである。別の実施形態では、前記断片は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48、または配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の中のペプチドから成るか、またはそれを含む。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドである。別の実施形態では、前記断片は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48、または配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の中のペプチドから成るか、またはそれを含む。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に、本発明のWT1ペプチドまたはワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、本発明のWT1ペプチドまたはワクチンを投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、対象において抗がん免疫応答を誘導する方法であって、対象を、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物と接触させることにより、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドである。別の実施形態では、前記断片は、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48、または配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55の中のペプチドから成るか、またはそれを含む。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含む。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、中皮腫を有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドである。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質;(b)WTタンパク質の断片;(c)WT1タンパク質をコードするヌクレオチド分子;または(d)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、WT1タンパク質の断片は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55の中のペプチドである。
【0048】
別の実施形態では、がんは、WT1を発現するがんである。一実施形態では、WT1を発現するがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、WT1を発現するがんはMDSである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、ウィルムス腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、白血病である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、血液がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、リンパ腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、線維形成性小円形細胞腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、悪性中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胃がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、結腸がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、乳がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胚細胞性腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、卵巣がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、子宮がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝細胞癌である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝臓がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、腎がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、カポジ肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、他の癌腫または肉腫である。
【0049】
別の実施形態では、WT1を発現するがんは、固形腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は、WT1を発現するがんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、肺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、乳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、前立腺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、卵巣がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、腎がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、膵がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、脳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、胃腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、皮膚がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、メラノーマと関連している。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、本発明の単離ペプチドを、少なくとも1つの追加のWT1由来ペプチドと一緒に含む組成物を提供する。ある実施形態では、少なくとも2つの異なる本発明の単離ペプチドを含む組成物が提供される。ある実施形態では、少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる本発明の単離ペプチドを含む組成物が提供される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。ある実施形態では、本発明の組成物はワクチンである。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に本発明のペプチドまたは組成物を投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に本発明のペプチドまたは組成物を投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、WT1タンパク質に特異的なCTLの形成および増殖を誘導する方法であって、リンパ球集団を本発明のペプチドまたは組成物と接触させることにより、WT1タンパク質に特異的なCTLの形成および増殖を誘導するステップを含む方法を提供する。この方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実行することが可能である。インビトロまたはエキソビボで実行される場合、これらのCTLはその後に治療効果を求めて患者に注入され得る。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、(a)WT1タンパク質に特異的なCD8+リンパ球;もしくは(b)WT1タンパク質に特異的なCD4+リンパ球、またはそれらの組み合わせの形成および増殖を誘導する方法であって、リンパ球集団を本発明のペプチドまたは組成物と接触させることにより、(a)WT1タンパク質に特異的なCD8+リンパ球;もしくは(b)WT1タンパク質に特異的なCD4+リンパ球;またはそれらの組み合わせの形成および増殖を誘導するステップを含む方法を提供する。この方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで実行することが可能である。インビトロまたはエキソビボで実行される場合、これらのCTLはその後に治療効果を求めて患者に注入され得る。
【0055】
「ペプチド」は、本発明の方法および組成物の別の実施形態では、ペプチド結合によって連結されたサブユニットAAという化合物を指す。別の実施形態では、ペプチドは、AA類似体を含む。別の実施形態では、ペプチドは、ペプチド模倣薬を含む。本発明の方法および組成物のペプチドに含まれ得る様々なAA類似体およびペプチド模倣薬が、以下に列挙される。サブユニットは、別の実施形態では、ペプチド結合によって連結されている。別の実施形態では、サブユニットは、別の種類の結合(例えばエステル、エーテル等)によって連結されている。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0056】
本発明の未変化ペプチド(上記および下記の両方に記載)は、本明細書ではまとめて「WT1ペプチド」と呼ぶ。「WT1ペプチド」について以下に列挙される実施形態のそれぞれは、本発明の未変化WT1ペプチド並びにHLAクラスIおよびクラスIIヘテロクリティックペプチドに当てはまる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0057】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドは、HLAクラスI分子またはHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、クラスI分子およびクラスII分子の両方に結合する。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA-DRB分子である。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、HLA-DRA分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DQA1分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DQB1分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DPA1分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DPB1分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DMA分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DMB分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DOA分子である。別の実施形態では、HLA分子は、HLA-DOB分子である。別の実施形態では、HLA分子は、当技術分野において公知の他のHLAクラスII分子である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0058】
別の実施形態では、その結合モチーフが本発明のペプチドに含有される、または本発明のペプチドを構成するHLAクラスI分子は、別の実施形態では、HLA-A分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-C分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A0201分子である。別の実施形態では、前記分子は、HLA A1である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A2である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A2.1である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A3である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A3.2である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A11である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA A24である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA B7である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA B27である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA B8である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0059】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のHLAクラスI分子結合性WT1由来ペプチドは、HLAクラスI分子のスーパーファミリーに結合する。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A2スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A3スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、A24スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B7スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B27スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、B44スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、C1スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、C4スーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーは、当技術分野において公知の他のあらゆるスーパーファミリーである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0060】
別の実施形態では、HLA分子は、A0101分子、A0201分子、A0203分子、A2402分子、A6901分子、B0702分子、A3101分子、B3501分子、B3503分子、B3508分子、B3802分子、B3801分子、B3901分子、B4001分子、B4402分子、B4701分子、B5701分子、C0401分子、C1701分子、DRB10101分子、DRB10402分子、DRB10402分子、DRB10401分子またはDRB11104分子である。別の実施形態では、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48のペプチド、並びに配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55のペプチドは、下記の表において各ペプチドについて記載されるHLAクラスI分子またはクラスII分子に結合する。別の実施形態では、HLAクラスIペプチドは、配列番号6、7、30、31、32、33、34、35、36、37、38、41、42、47および48から成るか、またはそれを含み、HLAクラスIIペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、39、43、44、46、49、50および55から成るか、またはそれを含み、対応するHLA分子または下記の表において各ペプチドについて示される分子に結合する。一実施形態では、ある特定のペプチドは2つ以上のHLA対立遺伝子に結合し得る。
【0061】
別の実施形態では、本発明のペプチドの変更形態が提供される。一実施形態では、前記変更形態は、少なくとも1つのヘテロクリティックな(heteroclitic)アミノ酸変化を含み、変異体もしくは変異型、またはアンカー残基変異体とも称される(下記参照)。本発明の改変ペプチドのHLAクラスI分子結合性モチーフは、前記ペプチドの未変異対応物と比較して、HLAクラスI分子に対する親和性の増加を示す。別の実施形態では、前記点変異は、HLAクラスI分子に対する単離された変異型WT1由来ペプチドの親和性を増加させる。別の実施形態では、親和性の増加は、単離された変異型WT1由来ペプチドが由来する単離された未変異WT1由来ペプチドの(同一のHLAクラスI分子に対する)親和性に関連がある。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0062】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドの方法および組成物は、HLA分子に対して親和性を示すようにデザインされる。別の実施形態では、親和性は、本明細書に記載のように、高親和性である。
【0063】
HLA分子は、別の実施形態では主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子とも呼ばれるが、これは、ペプチドと結合してそれらを免疫細胞に提示する。従って、別の実施形態では、ペプチドの免疫原性は、HLA分子に対するその親和性によって部分的に決定される。HLAクラスI分子は、一般に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)上に存在するCD8分子と相互作用する。HLAクラスII分子は、一般にヘルパーTリンパ球上に存在するCD4分子と相互作用する。
【0064】
別の実施形態では、本発明のペプチドは免疫原性である。別の実施形態では、「免疫原性」とは、免疫応答を刺激する、それを誘発するかまたはそれに関与する能力を指す。別の実施形態では、誘発された免疫応答は細胞性免疫応答である。別の実施形態では、免疫応答は、細胞性応答および体液性応答を組み合わせたものである。
【0065】
別の実施形態では、MHC分子-ペプチド複合体に結合するT細胞は、活性化および誘導されることで、増殖し、前記ペプチドを含むタンパク質を発現する細胞を溶解する。T細胞は通常、アネルギーまたはアポトーシスの対語としてのT細胞活性化を促進する副刺激分子を提示している、「プロフェッショナルな」抗原提示細胞(「APC」;例えば樹状細胞、単球、およびマクロファージ)によって最初に活性化される。別の実施形態では、前記応答は、CTLが本発明のペプチドまたは最初のT細胞刺激に用いられたものと異なるペプチドと相同なAA配列を有するタンパク質を発現している新生細胞を溶解する程、本明細書に記載されるように、ヘテロクリティックである。
【0066】
別の実施形態では、T細胞が本発明のペプチドと遭遇すると、T細胞の、エフェクターT細胞および/またはメモリーT細胞への分化が誘導される。エフェクターT細胞またはメモリーT細胞が後に、同一ペプチドと、または、別の実施形態では、本発明の関連ペプチドと遭遇すると、より速くより強い免疫応答がもたらされる。別の実施形態では、このような応答は、前記ペプチドに暴露されたT細胞集団の増殖の程度を測定することによって評価される。別の実施形態では、このような応答は、以下に列挙される方法のいずれかによって評価される。
【0067】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のペプチドは、高い親和性でHLAクラスII分子と結合する。他の実施形態では、HLAクラスII分子は、本明細書において列挙されるあらゆるHLAクラスII分子である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0068】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のペプチドの誘導体は、高い親和性でHLAクラスI分子と結合する。他の実施形態では、MHCクラスI分子は、本明細書において列挙されるあらゆるMHCクラスI分子である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0069】
別の実施形態では、本発明のペプチドの方法および組成物はかなりの親和性でHLAクラスII分子と結合し、一方、その元のペプチドに由来するペプチドはかなりの親和性でHLAクラスI分子と結合する。
【0070】
別の実施形態では、「親和性」とは、標準ペプチドの示されたMHC分子への結合を50%阻害するのに必要なペプチドの濃度を指す。別の実施形態では、「高親和性」とは、標準ペプチドの結合の50%阻害のために約500ナノモル(nM)以下のペプチド濃度が必要とされるような、親和性を指す。別の実施形態では、約400nM以下のペプチド濃度が必要とされる。別の実施形態では、結合親和性は300nMである。別の実施形態では、結合親和性は200nMである。別の実施形態では、結合親和性は150nMである。別の実施形態では、結合親和性は100nMである。別の実施形態では、結合親和性は80nMである。別の実施形態では、結合親和性は60nMである。別の実施形態では、結合親和性は40nMである。別の実施形態では、結合親和性は30nMである。別の実施形態では、結合親和性は20nMである。別の実施形態では、結合親和性は15nMである。別の実施形態では、結合親和性は10nMである。別の実施形態では、結合親和性は8nMである。別の実施形態では、結合親和性は6nMである。別の実施形態では、結合親和性は4nMである。別の実施形態では、結合親和性は3nMである。別の実施形態では、結合親和性は2nMである。別の実施形態では、結合親和性は1.5nMである。別の実施形態では、結合親和性は1nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.8nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.6nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.5nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.4nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.3nMである。別の実施形態では、結合親和性は0.3nM未満である。
【0071】
別の実施形態では、「親和性」とは、MHC分子に対する結合強度の測定値を指す。別の実施形態では、親和性は、競合的な結合親和性を測定するための当技術分野において公知の方法を用いて測定される。別の実施形態では、親和性は、相対的な結合親和性を測定するための当技術分野において公知の方法を用いて測定される。別の実施形態では、前記方法は競合的結合アッセイである。別の実施形態では、前記方法はラジオイムノアッセイまたはRIAである。別の実施形態では、前記方法はBiaCore解析である。別の実施形態では、前記方法は当技術分野において公知の他のあらゆる方法である。別の実施形態では、前記方法は、親和性が既知である基準ペプチドのIC50との関連において、IC50を得る。
【0072】
各種の親和性および親和性測定法は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0073】
別の実施形態では、「高親和性」は、0.5~500nMのIC50を指す。別の実施形態では、IC50は1~300nMである。別の実施形態では、IC50は1.5~200nMである。別の実施形態では、IC50は2~100nMである。別の実施形態では、IC50は3~100nMである。別の実施形態では、IC50は4~100nMである。別の実施形態では、IC50は6~100nMである。別の実施形態では、IC50は10~100nMである。別の実施形態では、IC50は30~100nMである。別の実施形態では、IC50は3~80nMである。別の実施形態では、IC50は4~60nMである。別の実施形態では、IC50は5~50nMである。別の実施形態では、IC50は6~50nMである。別の実施形態では、IC50は8~50nMである。別の実施形態では、IC50は10~50nMである。別の実施形態では、IC50は20~50nMである。別の実施形態では、IC50は6~40nMである。別の実施形態では、IC50は8~30nMである。別の実施形態では、IC50は10~25nMである。別の実施形態では、IC50は15~25nMである。それぞれの親和性および親和性の範囲は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0074】
別の実施形態では、本発明のペプチドの方法および組成物は、HLA分子のスーパーファミリーに結合する。HLA分子のスーパーファミリーは、非常に類似した、または同一の結合モチーフを共有している。別の実施形態では、前記スーパーファミリーはHLAクラスIスーパーファミリーである。別の実施形態では、前記スーパーファミリーはHLAクラスIIスーパーファミリーである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0075】
用語「HLA結合ペプチド」、「HLAクラスI分子結合性ペプチド」、および「HLAクラスII分子結合性ペプチド」とは、別の実施形態では、測定可能な親和性でHLA分子と結合するペプチドを指す。別の実施形態では、前記用語は、高い親和性でHLA分子と結合するペプチドを指す。別の実施形態では、前記用語は、かなりの親和性でHLA分子と結合してT細胞前駆体を活性化するペプチドを指す。別の実施形態では、前記用語は、かなりの親和性でHLA分子と結合してT細胞による認識を媒介するペプチドを指す。HLA分子は、他の実施形態では、本明細書において列挙されるHLA分子のいずれかである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0076】
別の実施形態では、「ヘテロクリティック」とは、ヘテロクリティックペプチドが由来する元のペプチド(例えば、アンカー残基または他の残基の変異を含有しないペプチド)を認識する免疫応答を起こすペプチドを指す。別の実施形態では、「元のペプチド」とは、本発明のペプチドを指す。別の実施形態では、「ヘテロクリティック」とは、ヘテロクリティックペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答が、元のペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答よりも大きい、ヘテロクリティックペプチドが由来する元のペプチドを認識する免疫応答を起こすペプチドを指す。別の実施形態では、「ヘテロクリティックな」免疫応答とは、改良されたペプチドが由来する元のペプチド(例えば、アンカー残基変異を含有しないペプチド)を認識する免疫応答を指す。別の実施形態では、「ヘテロクリティックな」免疫応答とは、ヘテロクリティックペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答の規模が元のペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答よりも大きい、ヘテロクリティックペプチドが由来する元のペプチドを認識する免疫応答を指す。別の実施形態では、ヘテロクリティックペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答の規模は、元のペプチドによるワクチン接種に対する応答と実質的に同程度の免疫応答よりも大きい。別の実施形態では、ヘテロクリティックペプチドによるワクチン接種によって生じた免疫応答の規模は、元のペプチドによるワクチン接種に対する応答よりも小さな免疫応答よりも大きい。別の実施形態では、本発明のヘテロクリティックペプチドは、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドである。HLAクラスIおよびクラスII残基を特定するための方法、並びに前記残基を変異させることによりHLA結合性を向上させるための方法は、以下に記載されるように、当技術分野において周知である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0077】
別の実施形態では、本発明のヘテロクリティックペプチドは、ヘテロクリティックペプチドが由来するWT1ペプチド(「天然ペプチド」)と比較して少なくとも2倍に増加された免疫応答を誘導する。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して3倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して5倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して7倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して10倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して15倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して20倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して30倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して50倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して100倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して150倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して200倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して300倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して500倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して1000倍である。別の実施形態では、前記増加は天然ペプチドと比較して1000倍以上大きい。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0078】
別の実施形態では、本発明は、本発明の単離WT1ペプチドに由来するHLAクラスIIヘテロクリティックペプチドを提供する。別の実施形態では、その誘導プロセスは、前記ペプチドのHLAクラスII分子への結合を増強する変異の導入を含む。別の実施形態では、その誘導プロセスは、前記ペプチドのHLAクラスI分子への結合を増強する変異の導入から成る。別の実施形態では、変異はHLAクラスIIアンカー残基内である。別の実施形態では、本発明のヘテロクリティッククラスIIペプチドは、本明細書で例示されるように、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドの同定および試験と同様に同定および試験される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0079】
別の実施形態では、本発明のペプチド内のHLAクラスII結合部位は、HLAクラスIIモチーフアンカー残基の変異によって作製または改善される。別の実施形態では、改変されるアンカー残基はP1位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP2位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP6位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP9位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP1、P2、P6、およびP9位から選択される。別の実施形態では、アンカー残基はP3位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP4位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP5位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP6位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP8位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP10位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP11位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP12位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP13位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基は、当技術分野において公知のHLAクラスII分子の他のあらゆるアンカー残基に存在する。別の実施形態では、P1、P2、P6、およびP9以外の残基は第二のアンカー残基として機能し;そのため、それらを変異させることでHLAクラスII結合を向上させることができる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0080】
別の実施形態では、ヘテロクリティックペプチドは、アンカーモチーフを生み出す変異の導入によって作製される。別の実施形態では、「アンカーモチーフ」または「アンカー残基」とは、HLA結合配列内の特定の位置にある1個または一連の好適な残基を指す。
【0081】
別の実施形態では、HLA結合配列はHLAクラスII結合配列である。別の実施形態では、HLA結合配列はHLAクラスI結合配列である。別の実施形態では、アンカーモチーフに対応する位置は、HLA分子との結合において重要な役割を果たす位置である。別の実施形態では、アンカー残基は第一のアンカーモチーフである。別の実施形態では、アンカー残基は第二のアンカーモチーフである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0082】
MHCクラスIおよびIIエピトープを予測するための方法は、当技術分野において周知である。一実施形態では、http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken parker comboformで利用可能な、アメリカ国立衛生研究所(ワシントンDC)のバイオインフォマティクス・分子解析部門(Bioinformatics & Molecular Analysis Section)のソフトウェアが有用である。このソフトウェアは、HLAクラスI分子からの予測された半減期解離定数(half-time dissociation coefficient)に基づいて、9塩基長または10塩基長のペプチドを順位付けする(Pinilla, et al. Curr Opin Immunol, 11 (2): p.193-202 (1999))。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、TEPITOPEを用いて予測される(Meister GE, Roberts CG et al, Vaccine 1995 13: 581-91)。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、EpiMatrixを用いて予測される(De Groot AS, Jesdale BM et al, AIDS Res Hum Retroviruses 1997 13: 529-31)。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、予測法(Predict Method)を用いて予測される(Yu K, Petrovsky N et al, Mol Med. 2002 8: 137- 48)。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、SYFPEITHIエピトープ予測アルゴリズムを用いて予測される(実施例)。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、Rankpepを用いて予測される。別の実施形態では、MHCクラスIIエピトープは、当技術分野において公知の他のあらゆる方法を用いて予測される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0083】
別の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチド(例えば、HLA-DR結合ペプチド)の場合、改変されるアンカー残基はP1位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP2位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP6位に存在する。別の実施形態では、アンカー残基はP9位に存在する。他の実施形態では、アンカー残基はP3、P4、P5、P6、P8、P10、P11、P12、またはP13位である。別の実施形態では、アンカー残基は、当技術分野において公知の、HLAクラスII分子の他のあらゆるアンカー残基である。別の実施形態では、P1、P2、P6、およびP9以外の残基は第二のアンカー残基として機能し;そのため、それらを変異させることでHLAクラスII結合を向上させることができる。別の実施形態では、上記残基のあらゆる組み合わせが変異される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0084】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドは、2つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、3つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、4つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、5つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、6つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、7つ以上の別個のHLAクラスII分子に結合する。
【0085】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、所与のHLAクラスII遺伝子座における2つ以上の別個の対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座における3つの別個の対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座における4つの別個の対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座における5つの別個の対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座における6つの別個の対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLAクラスII分子は、1つの遺伝子座における7つ以上の別個の対立遺伝子にコードされる。
【0086】
別の実施形態では、WT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子は、2つの別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、2以上の別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、3つの別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、3以上の別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、4つの別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、4以上の別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLA分子は、4より多い別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。他の実施形態では、遺伝子座はHLA-DRB遺伝子座から選択される。別の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドはHLA-DRA結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DQA1結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DQB1結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DPA1結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DPB1結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DMA結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DMB結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DOA結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドはHLA-DOB結合ペプチドである。別の実施形態では、前記ペプチドは、当技術分野において公知の他のあらゆるHLAクラスII分子に結合する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0087】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドは、2つの別個のHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、3つの別個のHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、4つの別個のHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、5つの別個のHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、6つの別個のHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、7つ以上の別個のHLA-DRB分子に結合する。
【0088】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドは、2つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされるHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、3つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、4つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、5つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、6つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、7つ以上の別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0089】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401、DRB701、DRB1101、およびDRB1501から選択される2つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされるHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401、DRB701、DRB1101、およびDRB1501から選択される3つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされるHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401、DRB701、DRB1101、およびDRB1501から選択される4つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされるHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドは、DRB101、DRB301、DRB401、DRB701、DRB1101、DRB1104およびDRB1501から選択される5つの別個のHLA-DRB対立遺伝子にコードされるHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドは、以下のHLA-DRB対立遺伝子のそれぞれにコードされるHLA-DRB分子に結合する:DRB101、DRB301、DRB401、DRB701、DRB1101、およびDRB1501。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、2つの別個の本発明のWT1ペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、2つの別個のWT1ペプチドは共に、未変化のものである。別の実施形態では、WT1ペプチドの一方は未変化のものであり、もう一方はヘテロクリティックなものである。別の実施形態では、WT1ペプチドの両方がヘテロクリティックなものである。
【0091】
別の実施形態では、前記組成物は、3つの別個の本発明のWT1ペプチドを含む。別の実施形態では、前記組成物は、4つの別個の本発明のWT1ペプチドを含む。別の実施形態では、前記組成物は、5つの別個の本発明のWT1ペプチドを含む。別の実施形態では、前記組成物は、5より多い別個の本発明の単離WT1ペプチドを含む。
【0092】
別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち2つが未変化のものである。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち2つがヘテロクリティックなものである。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち2つが未変化なものであり、2つがヘテロクリティックなものである。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち3つ以上が未変化なものである。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち3つ以上がヘテロクリティックなものである。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドのうち3つ以上が未変化なものであり、3つ以上がヘテロクリティックなものである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0093】
別の実施形態では、本発明の組成物中の追加のWT1ペプチドのうちの1つは、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55に記載の配列から選択された配列を有する。別の実施形態では、追加のWT1ペプチドのうちの2つは、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55に記載の配列から選択された配列を有する。別の実施形態では、追加のWT1ペプチドのうちの3つは、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55に記載の配列から選択された配列を有する。
【0094】
別の実施形態では、当技術分野において公知の他のあらゆる免疫原性WT1ペプチドが追加のWT1ペプチドとして利用される。別の実施形態では、当技術分野において公知の免疫原性WT1ペプチドのあらゆる組み合わせが利用される。他のWT1ペプチドの非限定的な情報源としては、国際公開第2005053618号、国際公開第2007047764号および国際公開第2007120673号が挙げられる。
【0095】
追加のWT1ペプチドのそれぞれ、およびそれらの組み合わせのそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0096】
別の実施形態では、本発明の組成物は、同一の本発明の単離WT1ペプチドに由来する2つのHLAクラスIIヘテロクリティックペプチドを含有する。別の実施形態では、2つのHLAクラスIIヘテロクリティックペプチドは、異なるHLAクラスII分子アンカー残基に変異を含有する。別の実施形態では、2つのHLAクラスIIヘテロクリティックペプチドは、同一のアンカー残基に異なる変異を含有する。別の実施形態では、HLAクラスIIヘテロクリティックペプチドのうちの2つは、異なる本発明の単離WT1ペプチドに由来する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0097】
別の実施形態では、2つの本発明のWT1ペプチド、または本発明の2つのHLAクラスIIヘテロクリティックペプチドに対応するWT1ペプチドは、互いに重複している。別の実施形態では、前記ペプチド間の重複は少なくとも7個のアミノ酸(AA)である。別の実施形態では、重複は少なくとも8個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも9個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも7個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも8個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも9個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも10個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも11個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも12個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも13個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも14個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも15個のAAである。別の実施形態では、重複は少なくとも16個のAAである。別の実施形態では、重複は17AA以上である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0098】
別の実施形態では、本発明の組成物中の前記ペプチドは、2つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、3つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、4つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、5つの別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、前記ペプチドは、6つ以上の別個のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、組成物中のペプチドは同一のHLAクラスII分子に結合する。
【0099】
別の実施形態では、本発明の組成物中のWT1ペプチドのそれぞれは、一連のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドのそれぞれは、別個の一連のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、組成物中のWT1ペプチドは、同一の一連のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドのうちの2つは、別個であるが重複している一連のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドのうちの2つ以上は、同一の一連のHLAクラスII分子に結合し、WT1ペプチドのその他は、別個の一連のHLAクラスII分子に結合する。別の実施形態では、WT1ペプチドのうちの2つ以上は、重複した一連のHLAクラスII分子に結合し、WT1ペプチドのその他は、別個の一連のHLAクラスII分子に結合する。
【0100】
別の実施形態では、本発明の組成物中のWT1ペプチドのうち2つ以上は、それぞれ、1より多いHLA-DRB分子に結合する。別の実施形態では、組成物中のペプチドが結合する4つ以上のHLA-DRB分子は、互いに異なる形態である。別の実施形態では、HLA-DRB分子は、異なるHLA-DRB対立遺伝子にコードされる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0101】
別の実施形態では、本発明の組成物中のWT1ペプチドが結合するHLAクラスII分子のうち2つ以上はHLA-DRB分子である。別の実施形態では、結合されるHLAクラスII分子のうち3つ以上はHLA-DRB分子である。他の実施形態では、結合されるHLAクラスII分子は、本明細書において列挙されるHLAクラスII分子のうちのいずれかであり得る。別の実施形態では、結合されるHLAクラスII分子は、所与の遺伝子座における2つ以上の別個のHLAクラスII対立遺伝子にコードされる。別の実施形態では、結合されるHLAクラスII分子は、2つ以上の別個の遺伝子座におけるHLAクラスII遺伝子にコードされる。
【0102】
上記組成物のそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0103】
別の実施形態では、「一連のHLAクラスII分子」とは、特定の遺伝子座における異なる対立遺伝子にコードされるHLAクラスII分子を指す。別の実施形態では、前記用語は、特定の結合特異性を有するHLAクラスII分子を指す。別の実施形態では、前記用語は、特定のペプチドコンセンサス配列を有するHLAクラスII分子を指す。別の実施形態では、前記用語は、HLAクラスII分子のスーパーファミリーを指す。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0104】
別の実施形態では、本発明は、本発明の未変化のHLAクラスII分子結合性WT1ペプチドおよび第二のHLAクラスI分子結合性WT1ペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドに加えて、2つ以上の本発明のHLAクラスII分子結合性WT1ペプチドを含む。別の実施形態では、前記組成物は、HLAクラスII分子結合性WT1ペプチドに加えて、2つ以上のHLAクラスI分子結合性WT1ペプチドを含む。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0105】
別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドのAA配列は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択された配列を含む。別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドのAA配列は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55に記載される配列から選択される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0106】
別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドは、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドである。別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドは、本明細書においてさらに説明されるように、そのHLAクラスI分子アンカー残基に変異を含有する。本明細書で示されるように、WT1由来ペプチドをHLAアンカー残基において改変することで、HLA-A0201およびHLA-A0301に対する予測結合性が増加したヘテロクリティックペプチドを作製した。予測結合性が増加したペプチドは、HLAクラスI分子との結合能の増強および免疫原性の増加も示した。
【0107】
別の実施形態では、MHC結合を増強する変異は、HLAクラスIヘテロクリティックペプチドの1位の残基に存在する。別の実施形態では、前記残基はチロシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はグリシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はスレオニンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はフェニルアラニンに変化されている。別の実施形態では、前記残基は当技術分野において公知の他のあらゆる残基に変化されている。別の実施形態では、1位における(例えばチロシンへの)置換は、2位のアンカー残基の結合を安定化する。
【0108】
別の実施形態では、変異はHLAクラスIヘテロクリティックペプチドの2位に存在する。別の実施形態では、前記残基はロイシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はバリンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はイソロイシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はメチオニンに変化されている。別の実施形態では、前記残基は当技術分野において公知の他のあらゆる残基に変化されている。
【0109】
別の実施形態では、変異はHLAクラスIヘテロクリティックペプチドの6位に存在する。別の実施形態では、前記残基はバリンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はシステインに変化されている。別の実施形態では、前記残基はグルタミンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はヒスチジンに変化されている。別の実施形態では、前記残基は当技術分野において公知の他のあらゆる残基に変化されている。
【0110】
別の実施形態では、変異はHLAクラスIヘテロクリティックペプチドの9位に存在する。別の実施形態では、前記変異は、そのC末端位の残基を変化させる。別の実施形態では、前記残基はバリンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はスレオニンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はイソロイシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はロイシンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はアラニンに変化されている。別の実施形態では、前記残基はシステインに変化されている。別の実施形態では、前記残基は当技術分野において公知の他のあらゆる残基に変化されている。
【0111】
別の実施形態では、点変異が第一のアンカー残基に存在する。別の実施形態では、HLAクラスIの第一のアンカー残基は2位および9位である。別の実施形態では、点変異が第二のアンカー残基に存在する。別の実施形態では、HLAクラスIの第二のアンカー残基は1位および8位である。別の実施形態では、HLAクラスIの第二のアンカー残基は1位、3位、6位、7位、および8位である。別の実施形態では、点変異が4位、5位、および8位から選択される位置に存在する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0112】
別の実施形態では、点変異が、HLAクラスI結合モチーフの1、2、8、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、1、3、6、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、1、2、6、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、1、6、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、1、2、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、1、3、および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、2および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。別の実施形態では、点変異が、6および9位から選択される位置における1つ以上の残基に存在する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0113】
上記アンカー残基および置換体のそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0114】
別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WTペプチドは9AAの長さを有する。別の実施形態では、前記ペプチドは10AAの長さを有する。本明細書で示されるように、9~10AAの天然ペプチドおよびヘテロクリティックペプチドは、HLAクラスI分子へのかなりの結合性、並びにCTLによるサイトカイン分泌および細胞溶解を誘発する能力を示した。
【0115】
別の実施形態では、HLAクラスI分子結合性WT1ペプチドが結合するHLAクラスI分子は、HLA-A分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子はHLA-A2分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子はHLA-A3分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子はHLA-A1 1分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子はHLA-B8分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子はHLA-0201分子である。別の実施形態では、HLAクラスI分子は、当技術分野において公知の他のあらゆるHLAクラスI分子と結合する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0116】
別の実施形態では、本発明のWT1ペプチドの方法および組成物は、8~30アミノ酸(AA)の長さを有する。別の実施形態では、前記ペプチドは、9~11AAの長さを有する。別の実施形態では、前記ペプチドは、サイズが7~25AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが8~11AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが8~15AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが9~20AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが9~18AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが9~15AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが8~12AAの範囲にあり、あるいは別の実施形態では、サイズが9~11AAの範囲にある。別の実施形態では、前記ペプチドは、長さが8AAであり、あるいは別の実施形態では9AAであり、あるいは別の実施形態では10AAであり、あるいは別の実施形態では12AAであり、あるいは別の実施形態では25AAであり、あるいは別の実施形態では、それらの間の任意の長さである。別の実施形態では、前記ペプチドは、より大きな長さ(例えば50または100、もしくはそれ以上)を有する。本実施形態では、細胞は、ペプチドを7AAおよび25AAの長さにプロセシングする。本実施形態では、細胞は、ペプチドを9~11AAの長さにプロセシングする。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0117】
別の実施形態では、前記ペプチドは長さが15~23AAである。別の実施形態では、前記長さは15~24AAである。別の実施形態では、前記長さは15~25AAである。別の実施形態では、前記長さは15~26AAである。別の実施形態では、前記長さは15~27AAである。別の実施形態では、前記長さは15~28AAである。別の実施形態では、前記長さは14~30AAである。別の実施形態では、前記長さは14~29AAである。別の実施形態では、前記長さは14~28AAである。別の実施形態では、前記長さは14~26AAである。別の実施形態では、前記長さは14~24AAである。別の実施形態では、前記長さは14~22AAである。別の実施形態では、前記長さは14~20AAである。別の実施形態では、前記長さは16~30AAである。別の実施形態では、前記長さは16~28AAである。別の実施形態では、前記長さは16~26AAである。別の実施形態では、前記長さは16~24AAである。別の実施形態では、前記長さは16~22AAである。別の実施形態では、前記長さは18~30AAである。別の実施形態では、前記長さは18~28AAである。別の実施形態では、前記長さは18~26AAである。別の実施形態では、前記長さは18~24AAである。別の実施形態では、前記長さは18~22AAである。別の実施形態では、前記長さは18~20AAである。別の実施形態では、前記長さは20~30AAである。別の実施形態では、前記長さは20~28AAである。別の実施形態では、前記長さは20~26AAである。別の実施形態では、前記長さは20~24AAである。別の実施形態では、前記長さは22~30AAである。別の実施形態では、前記長さは22~28AAである。別の実施形態では、前記長さは22~26AAである。別の実施形態では、前記長さは24~30AAである。別の実施形態では、前記長さは24~28AAである。別の実施形態では、前記長さは24~26AAである。
【0118】
上記のペプチド、ペプチドの長さ、およびペプチドの種類のそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0119】
別の実施形態では、当技術分野において周知の原理を利用して、HLA分子に対するそれらの親和性を減少させることもそれらのTCR特異性を変化させることもなく、小さな変更が本発明のペプチドになされている。別の実施形態では、HLAクラスI結合ペプチドの場合、「小さな変更」は、例えば、1つのAAの挿入、欠失、または置換を包括的に指すか、または、2および9の間の残基の外側の1~3個のAAの欠失もしくは付加を包括的に指す。本明細書に記載のコンピューターアルゴリズムはペプチドのMHCクラスI結合能を予測するのに有用であるが、それらが有するのは60~80%の予測精度であるため;ペプチドは、MHCクラスI結合親和性の最終決定がなされるに先立ち、経験的に評価されるべきである。従って、本発明のペプチドは、強いMHCクラスI結合親和性を示すことがアルゴリズムによって予測されたペプチドに限定されない。なされ得る変更の種類は以下に列挙される。それぞれの変更形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0120】
別の実施形態では、本発明の実施例で列挙されるペプチドは、アンカー残基をMHCクラスIに好適なアンカー残基(これは、他の実施形態では、本明細書において列挙されるアンカー残基のうちの任意のものであってよい)に変異させることによって、さらに変更されている。別の実施形態では、MHCクラスIに好適なアンカー残基を含有する本発明のペプチドは、アンカー残基をその位置が異なるMHCクラスIに好適な残基に変異させることによって、さらに変更されている。他の実施形態では、異なる好適な残基は、本明細書において列挙される好適な残基の任意のものであってよい。
【0121】
別の実施形態では、さらに変更されたアンカー残基は1位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は2位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は3位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は4位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は5位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は6位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は7位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は8位に存在する。別の実施形態では、前記アンカー残基は9位に存在する。HLAクラスI結合ペプチドの場合、2および9以外の残基は第二のアンカー残基として機能し得ることから;それらを変異させることによって、MHCクラスI結合性は向上され得る。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0122】
別の実施形態では、本発明のペプチドの方法および組成物は、実施例に列挙されるペプチドの長さ改変体(length variant)である。別の実施形態では、長さ改変体は、実施例のペプチドよりも1アミノ酸(AA)短い。別の実施形態では、長さ改変体は、実施例のペプチドよりも2アミノ酸(AA)短い。別の実施形態では、長さ改変体は、実施例のペプチドよりも3アミノ酸(AA)以上短い。別の実施形態では、より短いペプチドは、N末端で切断されている。別の実施形態では、より短いペプチドは、C末端で切断されている。別の実施形態では、切断されたペプチドは、N末端およびC末端の両方で切断されている。別の実施形態では、ペプチドは、当技術分野において周知の、HLA分子に対する親和性を変化させない切断に適したものである。
【0123】
上記切断ペプチドのそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0124】
別の実施形態では、長さ改変体は、本発明の実施例で列挙されるペプチドよりも長い。別の実施形態では、より長いペプチドは、周囲のWT1配列に応じて、N末端において延長されている。別の実施形態では、ペプチドは、当技術分野において周知の、HLA分子に対する親和性を変化させなることのないN末端における延長に適したものである。従って、このようなペプチドは、実施例で列挙されるペプチドの等価物である。別の実施形態では、N末端において延長されたペプチドは、1残基だけ延長されている。別の実施形態では、N末端延長ペプチドは、2残基だけ延長されている。別の実施形態では、N末端延長ペプチドは、3残基だけ延長されている。別の実施形態では、N末端延長ペプチドは、4残基以上延長されている。
【0125】
別の実施形態では、より長いペプチドは、周囲のWT1配列に応じて、C末端において延長されている。別の実施形態では、ペプチドは、当技術分野において周知の、HLA分子に対する親和性を変化させなることのないC末端における延長に適したものである。従って、このようなペプチドは、本発明の実施例で列挙されるペプチドの等価物である。別の実施形態では、C末端において延長されたペプチドは、1残基だけ延長されている。別の実施形態では、C末端延長ペプチドは、2残基だけ延長されている。別の実施形態では、C末端延長ペプチドは、3残基だけ延長されている。別の実施形態では、C末端延長ペプチドは、4残基以上延長されている。
【0126】
別の実施形態では、延長ペプチドは、周囲のWT1配列に応じて、N末端およびC末端の両方において延長されている。
【0127】
上記の延長ペプチドのそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0128】
別の実施形態では、本発明の切断ペプチドは、HLAアンカー残基(例えば、HLAクラスIアンカー残基)を、第2の残基およびC末端残基に接して、本発明の実施例で列挙されるペプチドよりもよりも少ない介在残基(例えば、5個)を伴って保持している。別の実施形態では、ペプチドは、HLA分子に対する親和性を変化させることのないこのような変異に適したものである。
【0129】
別の実施形態では、このような切断ペプチドは、上記配列のうちの1つの介在残基のうちの1つを除去することによってデザインされる。別の実施形態では、HLAアンカー残基が第2および第8残基に接して保持されている。別の実施形態では、HLAアンカー残基が第1および第8残基に接して保持されている。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0130】
別の実施形態では、本発明の延長ペプチドは、HLAアンカー残基(例えば、HLAクラスIアンカー残基)を、第2残基およびC末端残基に接して、本発明の実施例で列挙されるペプチドよりもよりも多い介在残基(例えば、7または8個)を伴って保持している。別の実施形態では、このような延長ペプチドは、上記配列のうちの1つの介在残基のうちの2つの間に1若しくは複数の残基を付加することによってデザインされる。HLAに対する親和性を変化させることなく、HLA結合ペプチドの介在配列の間から残基を除去することができること、あるいは前記介在配列の間に残基を付加できることは、当技術分野において周知である。従って、このようなペプチドは、本発明の実施例で列挙されるペプチドの等価物である。別の実施形態では、HLAアンカー残基が第2および第9残基に接して保持されている。別の実施形態では、HLAアンカー残基が第1および第9残基に接して保持されている。別の実施形態では、HLAアンカー残基が、6個の介在残基によって隔てられた2つの残基に接して保持されている。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0131】
別の実施形態では、「断片」は、長さが11AA以上のペプチドを指す。別の実施形態では、本発明のペプチド断片は長さが16AA以上である。別の実施形態では、前記断片は長さが12AA以上である。別の実施形態では、前記断片は13AA以上である。別の実施形態では、前記断片は14AA以上である。別の実施形態では、前記断片は15AA以上である。別の実施形態では、前記断片は17AA以上である。別の実施形態では、前記断片は18AA以上である。別の実施形態では、前記断片は19AA以上である。別の実施形態では、前記断片は22AA以上である。別の実施形態では、前記断片は8~12AAである。別の実施形態では、前記断片は約8~12AAである。別の実施形態では、前記断片は16~19AAである。別の実施形態では、前記断片は約16~19AAである。別の実施形態では、前記断片は10~25AAである。別の実施形態では、前記断片は約10~25AAである。別の実施形態では、前記断片は他のあらゆる長さを有する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0132】
別の実施形態では、「WT1タンパク質の断片」は、本明細書に存在する「断片」の定義のいずれかを指す。それぞれの定義は本発明の別々の実施形態を表す。
【0133】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、実施例で列挙されるペプチドと相同である。別の実施形態では、「相同性」、「相同な」等の用語は、いかなるタンパク質またはペプチドに関する場合でも、配列をアラインメントし必要であればギャップを導入することで最大相同%を達成した後の、且つ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なさない、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合を指す。アラインメントのための方法およびコンピュータプログラムは当技術分野において周知である。
【0134】
別の実施形態では、用語「相同性」は、いかなる核酸配列に関する場合でも、同様に、対応する天然核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列内のヌクレオチドの割合を表す。
【0135】
別の実施形態では、相同性は、当技術分野において十分に記載がなされている方法によって、配列アラインメント用コンピューターアルゴリズムにより決定される。他の実施形態では、核酸配列相同性のコンピューターアルゴリズム解析には、例えば、BLAST、DOMAIN、BEAUTY(BLAST Enhanced Alignment Utility)、GENPEPTおよびTREMBLパッケージ等の、任意の数の利用可能なソフトウェアパッケージの利用が含まれる。
【0136】
別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との70%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との72%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの75%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との78%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの80%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの82%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との83%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの85%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの87%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との88%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの90%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの92%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との93%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの95%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55から選択される配列との96%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの97%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの98%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの99%以上の同一性を指す。別の実施形態では、「相同性」は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、30、31、32、33、35、36、37、38、39、41、42、43、44、46、47、48、49、50および55のうちの1つとの100%の同一性を指す。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。別の実施形態では、相同性は、候補配列ハイブリダイゼーション法(candidate sequence hybridization)という定量によって決定され、この方法は当技術分野において十分に記載がなされている(例えば、"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1985); Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N. Y.;およびAusubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Yを参照)。別の実施形態では、ハイブリダイゼーションの方法は、天然カスパーゼペプチドをコードするDNAの相補体に対して、適度~ストリンジェントな条件下で実行される。ハイブリダイゼーション条件は、例えば、10~20%のホルムアミド、5倍濃度のSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍濃度のデンハート液、10%のデキストラン硫酸、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での42℃での一晩のインキュベーションである。
【0137】
実施例で列挙されるペプチドの上記の相同体および変更形態のそれぞれは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、本発明のペプチドを含む組成物を提供する。別の実施形態では、前記組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含んでいる。別の実施形態では、前記組成物はアジュバントをさらに含んでいる。別の実施形態では、前記組成物は2以上の本発明のペプチドを含んでいる。別の実施形態では、前記組成物は、以下に記載される添加物、化合物、または賦形剤のいずれかをさらに含んでいる。別の実施形態では、アジュバントはKLH、QS21、フロイント完全または不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、BCGまたはミョウバンである。他の実施形態では、担体は本明細書において列挙される任意の担体である。他の実施形態では、アジュバントは本明細書において列挙される任意のアジュバントである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0139】
別の実施形態では、本発明は、本発明のペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、抗原提示細胞(APC)および本発明のペプチドを含むワクチンを提供する。別の実施形態では、ワクチンは担体をさらに含んでいる。別の実施形態では、ワクチンはアジュバントをさらに含んでいる。別の実施形態では、ワクチンはAPCをさらに含んでいる。別の実施形態では、ワクチンは、抗原、担体、および/またはAPCのうちの2つ以上の組み合わせをさらに含んでいる。別の実施形態では、ワクチンは細胞ベースの組成物である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0140】
別の実施形態では、用語「ワクチン」は、対象に導入された際に、対象の特定の疾患、状態、または症状に対して予防的または治療的な反応を与える物質または組成物を指す。別の実施形態では、本発明は、ペプチドベースのワクチンを含んでおり、ここで、前記ペプチドは、サイトカイン、アジュバント等の免疫調節性化合物を包含する、本明細書に列挙される任意の実施形態を含む。
【0141】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のワクチンは、アジュバントをさらに含んでいる。別の実施形態では、アジュバントはモンタナイドISA51である。モンタナイドISA51は、代謝可能な天然油および精製された乳化剤を含有している。別の実施形態では、アジュバントはGM-CSFである。別の実施形態では、組換えGM-CSFは、酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)ベクター内に生じさせたヒトタンパク質である。GM-CSFは、造血前駆細胞、APC、および樹状細胞およびT細胞のクローン増殖および分化を促進する。
【0142】
別の実施形態では、アジュバントはサイトカインである。別の実施形態では、アジュバントは増殖因子である。別の実施形態では、アジュバントは細胞集団である。別の実施形態では、アジュバントはQS21である。別の実施形態では、アジュバントはフロイント不完全アジュバントである。別の実施形態では、アジュバントはリン酸アルミニウムである。別の実施形態では、アジュバントは水酸化アルミニウムである。別の実施形態では、アジュバントはBCGである。別の実施形態では、アジュバントはミョウバンである。
【0143】
別の実施形態では、アジュバントはインターロイキンである。別の実施形態では、アジュバントはケモカインである。別の実施形態では、アジュバントは、当技術分野において公知の他の種類のアジュバントである。別の実施形態では、WT1ワクチンは2つの上記アジュバントを含む。別の実施形態では、WT1ワクチンは3つ以上の上記アジュバントを含む。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0144】
他の実施形態では、本発明のワクチンまたは組成物は、本発明のWT1ペプチドの実施形態のいずれかおよびそれらの組み合わせを含んでいることがある。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0145】
本発明のペプチド、ワクチンおよび組成物に関して、本明細書に記載されるいかなる実施形態も、本発明の方法のいずれにおいても使用可能であることを理解されたい。ペプチド、ワクチン、または組成物のある方法との組み合わせは、それぞれ、その一実施形態を表す。
【0146】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0147】
別の実施形態では、本発明は、MDSを有する対象を治療する方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、MDSを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0148】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの進行を抑制するかまたは停止させる方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんの進行を抑制するかまたは停止させるステップを含む方法を提供する。
【0149】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの発生率を減少させる方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの発生率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0150】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるAMLの発生率を減少させる方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、AMLの発生率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0151】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるWT1を発現するがんの再発率を減少させる方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、対象におけるWT1を発現するがんの再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0152】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるAMLの再発率を減少させる方法であって、対象に、本発明のWT1ワクチンを投与することにより、対象におけるAMLの再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。
【0153】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんに対する対象のT細胞寛容を破壊する方法であって、対象に本発明のWT1ワクチンを投与することにより、WT1を発現するがんに対するT細胞寛容を破壊するステップを含む方法を提供する。
【0154】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、(a)本発明の方法によって、がんの悪性細胞を認識するヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の形成および増殖をドナーにおいて誘導するステップと、(b)前記ヒトCTLを対象に注入することにより、がんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0155】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんを有する対象を治療する方法であって、(a)本発明の方法によって、ドナーから得られたがんの悪性細胞を認識するヒトCTLの形成および増殖をエキソビボで誘導するステップと、(b)前記ヒトCTL対象に注入することにより、がんを有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。
【0156】
エキソビボ免疫療法の方法は当技術分野において周知であり、例えば、米国特許出願第2006/0057130号、同第2005/0221481号、同第2005/0214268号、同第2003/0175272号、同第2002/0127718号、および米国特許第5,229,115号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。さらなる方法が当技術分野において周知であり、例えば、Davis ID et al (Blood dendritic cells generated with Flt3 ligand and CD40 ligand prime CD8+ T cells efficiently in cancer patients. J Immunother. 2006 Sep-Oct;29(5):499-511)およびMitchell MS et al (The cytotoxic T cell response to peptide analogs of the HLA-A*0201 -restricted MUCl signal sequence epitope, Ml.2. Cancer Immunol Immunother. 2006 JuI 28)に記載されている。それぞれの方法は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0157】
別の実施形態では、本発明は、WT1を発現するがんの細胞に特異的なCTLの形成および増殖を誘導する方法であって、リンパ球集団を本発明のワクチンと接触させるステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、ワクチンは、本発明のペプチドと関連付けられたAPCである。別の実施形態では、ワクチンは、本発明のペプチドの混合物と関連付けられたAPCである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、対象においてヘテロクリティックな免疫応答を起こす方法であって、ヘテロクリティックな免疫応答がWT1を発現するがんに対するものであり、対象に本発明のワクチンを投与することにより、ヘテロクリティックな免疫応答を起こすステップを含む方法を提供する。
【0159】
別の実施形態では、本発明は、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、対象を、(a)WT1タンパク質または(b)WTタンパク質の断片を含む免疫原性組成物と接触させることにより、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0160】
別の実施形態では、本発明は、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導する方法であって、対象を、(a)WT1タンパク質または(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物と接触させることにより、対象において抗中皮腫免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0161】
別の実施形態では、本発明は、中皮腫を有する対象を治療する方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質または(b)WTタンパク質の断片を含む免疫原性組成物を投与することにより、中皮腫を有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0162】
別の実施形態では、本発明は、中皮腫を有する対象を治療する方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質または(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、中皮腫を有する対象を治療するステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0163】
別の実施形態では、本発明は、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質または(b)WTタンパク質の断片を含む免疫原性組成物を投与することにより、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0164】
別の実施形態では、本発明は、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させる方法であって、対象に、(a)WT1タンパク質または(b)WT1タンパク質の断片をコードするヌクレオチド分子を含む免疫原性組成物を投与することにより、対象における中皮腫の発生率または再発率を減少させるステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、中皮腫は悪性中皮腫である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0165】
別の実施形態では、本発明の方法によって誘起される免疫応答の標的細胞は、HLA分子上に、本発明のWT1ペプチド、または対応するWT1断片を提示している。別の実施形態では、HLA分子はHLAクラスI分子である。他の実施形態では、HLA分子は当技術分野において公知のHLAクラスIサブタイプまたはHLAクラスI分子である。別の実施形態では、WT1ペプチドまたは断片に対する免疫応答は、ヘテロクリティックな免疫応答である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0166】
別の実施形態では、WT1を発現するがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、MDSである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、ウィルムス腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、白血病である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、血液がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、リンパ腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、線維形成性小円形細胞腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、悪性中皮腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胃がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、結腸がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、乳がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、胚細胞性腫瘍である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、卵巣がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、子宮がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝細胞癌である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、甲状腺がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肝臓がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、腎がんである。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、カポジ肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、肉腫である。別の実施形態では、WT1を発現するがんは、他の癌腫または肉腫である。
【0167】
別の実施形態では、WT1を発現するがんは、固形腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は、WT1を発現するがんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、骨髄異形成症候群(MDS)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)と関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、肺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、乳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、前立腺がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、卵巣がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、腎がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、膵がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、脳がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、胃腸がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、皮膚がんと関連している。別の実施形態では、固形腫瘍は、メラノーマと関連している。
【0168】
別の実施形態では、本発明の方法によって治療されるがんまたは腫瘍は、WT1を発現する疑いがあるものである。別の実施形態では、WT1発現は、実際の腫瘍試料の試験によって確認されていない。別の実施形態では、がんまたは腫瘍は、多くの症例でWT1を発現することが知られている種類のものである。別の実施形態では、前記種類は、症例の大多数でWT1を発現するものである。
【0169】
WT1を発現するがんまたは腫瘍、およびWT1を発現する疑いがあるがんまたは腫瘍のそれぞれの種類は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0170】
本発明のペプチド、ワクチンおよび組成物に関して本明細書において列挙されるいかなる実施形態も、本発明のいずれの方法においても使用可能であり、それぞれはその一実施形態を表す。
【0171】
別の実施形態では、複数の本発明のペプチドが、本発明の方法において免疫応答を刺激するために使用されている。
【0172】
本明細書で開示される方法は、他のWT1由来ペプチドのデザインを可能にすると当業者に理解される。前記方法はさらに、他のHLA分子に結合するペプチドのデザインを可能にする。前記方法はさらに、本発明のWT1由来ペプチドを併有するワクチンのデザインを可能にする。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0173】
別の実施形態では、本発明のワクチンは、種々の異なるHLAクラスII対立遺伝子を含有するWT1特異的CD4+T細胞を活性化または誘起するという利点を有する。別の実施形態では、前記ワクチンは、人口の相当な割合(例えば、異なる実施形態では、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%.85%、90%、95%、または95%超)において、WT1特異的CD4+T細胞を活性化または誘起するという利点を有する。別の実施形態では、前記ワクチンは、特定の人種(例えば、アメリカのコーカサス人種)の相当な割合において、WT1特異的CD4+T細胞を活性化または誘起する。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0174】
別の実施形態では、本発明の方法は、対象によって既に開始されている免疫応答の向上をもたらす。別の実施形態では、本発明の方法は、ペプチド、組成物、またはワクチンを2回以上投与するステップを含む。別の実施形態では、前記ペプチドは、それらの組成、濃度、またはその組み合わせが多様である。別の実施形態では、前記ペプチドは、目的抗原に対する免疫応答をまだ開始していない対象内の前記抗原に対する免疫応答の開始をもたらす。別の実施形態では、誘導されたCTLは、APCまたはがん細胞に対する前記ペプチドの提示に応答して増殖する。他の実施形態では、免疫応答の改変への言及には、それぞれTh2ヘルパーT細胞およびTh1ヘルパーT細胞の存在を伴う体液性免疫および細胞性免疫の一方または両方が含まれ、あるいは、別の実施形態では、各免疫が個々に含まれる。
【0175】
他の実施形態では、腫瘍の成長に影響を及ぼす方法は、(1)腫瘍細胞の分裂の直接的な阻害、もしくは(2)免疫細胞によって媒介される腫瘍細胞の溶解、または両方をもたらし、これにより、腫瘍細胞の正味の増殖が抑制される。
【0176】
これら2つの機構のいずれかによる腫瘍成長の阻害は、いくつかの周知の方法に基づき、当業者によって容易に決定され得る。別の実施形態では、腫瘍阻害は、一定期間にわたり実際の腫瘍サイズを測定することによって決定される。別の実施形態では、腫瘍阻害は、当業者に周知の方法を利用して、(一定期間にわたって)腫瘍のサイズを推定することによって、決定され得る。より具体的には、種々の放射線学的イメージング法(例えば、単一光子放射断層撮影法(SPECT);一般的には、"Nuclear Medicine in Clinical Oncology," Winkler, C. (ed.) Springer- Verlag, New York, 1986を参照)を利用して、腫瘍サイズを推定することができる。また、このような方法は、例えば、従来のイメージング剤(例えば、クエン酸ガリウム-67)、並びに代謝産物イメージング、受容体イメージング、または免疫イメージングに特化した試薬(例えば、放射性標識されたモノクローナル抗体に特異的な腫瘍マーカー)を含む、種々のイメージング剤を利用することができる。さらに、超音波等の非放射性方法("Ultrasonic Differential Diagnosis of Tumors", Kossoff and Fukuda, (eds.), Igaku-Shoin, New York, 1984を参照)も、腫瘍サイズの評価に利用することができる。
【0177】
上記の腫瘍阻害を決定するためのインビボ法の他に、種々のインビトロ法をインビボにおける腫瘍阻害を予測するために利用することができる。代表的な例としては、例えば51Cr放出アッセイ(実施例)によって決定される、リンパ球によって媒介される抗腫瘍の細胞溶解活性、腫瘍依存性リンパ球増殖(Ioannides, et al., J. Immunol. 146(5):1700-1707, 1991)、腫瘍特異的抗体のインビトロ生産(Herlyn, et al., J. Immunol. Meth. 73:157-167, 1984)、細胞性(例えば、CTL、ヘルパーT細胞)または体液性(例えば、抗体)のインビトロ細胞成長阻害(Gazit, et al., Cancer Immunol Immunother 35:135-144, 1992)、および、これらのアッセイのいずれかについての、細胞前駆体の頻度の決定(Vose, Int. J. Cancer 30:135-142 (1982))等が挙げられる。
【0178】
別の実施形態では、腫瘍成長を抑制する方法によって、本発明のペプチドとの接触または本発明のペプチドへの暴露無しでの増殖と比較して、短縮された増殖期が示されている。腫瘍細胞増殖は、当技術分野において公知のいかなる手段、例えば、限定はされないが、腫瘍サイズ測定、3H-チミジン取り込みアッセイを用いた腫瘍細胞が増殖中であるかどうかの決定、または腫瘍細胞計数によってアッセイすることができる。他の実施形態では、腫瘍細胞増殖の「抑制」は、腫瘍成長を遅くすること、遅延させること、もしくは停止させること、または腫瘍の縮小を指す。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0179】
本発明の方法および組成物の別の実施形態では、WT1発現が測定される。別の実施形態では、WT1転写物の発現が測定される。別の実施形態では、腫瘍内のWT1タンパク質レベルが測定される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0180】
免疫応答の存在および規模を決定する方法は当技術分野において周知である。別の実施形態における、放射性物質(例えば3H-チミジン)のT細胞による取り込みが細胞増殖の関数として測定される、リンパ球増殖アッセイ。他の実施形態では、T細胞増殖の検出は、インターロイキン-2(IL-2)産生、Ca2+流出、または3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾリウム等の色素取り込みの増加を測定することによって達成される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0181】
別の実施形態では、CTL刺激は、細胞増殖およびサイトカイン産生等の検出を含む当業者に公知の手段によって決定される。リガンドをパルスした標的に接触させた後にT細胞によって分泌されるサイトカインの種類および量の分析が、機能活性の測定になり得る。サイトカインをELISAアッセイまたはELISPOTアッセイによって測定することで、サイトカイン産生の速度および総量を決定することができる(Fujihashi K. et al. (1993) J. Immunol. Meth. 160: 181 ; Tanguay S. and Killion J. J. (1994) Lymphokine Cytokine Res. 13:259)。
【0182】
別の実施形態では、CTL活性は、51Cr放出溶解アッセイによって決定される。ペプチドによってパルスされた51Cr標識標的の抗原特異的T細胞による溶解が、標的ペプチドでパルスされた標的細胞と比較され得る。別の実施形態では、T細胞が本発明のペプチドで刺激され、MHCとの関連における天然ペプチドを発現する標的細胞の溶解が決定され得る。別の実施形態では、固定時点(例えば、4時間)における溶解並びに標的溶解全体の速度論が、リガンド性能の評価に用いられる(Ware C. F. et al. (1983) J Immunol 131: 1312)。
【0183】
HLA分子に対するペプチドの親和性を決定する方法は、当技術分野において周知である。別の実施形態では、親和性はTAP安定化アッセイによって決定される。
【0184】
別の実施形態では、親和性は競合ラジオイムノアッセイによって決定される。別の実施形態では、以下のプロトコルが利用される:標的細胞を1%ウシ血清アルブミン(BSA;フィッシャー・ケミカルズ社(Fisher Chemicals)、ニュージャージー州フェアローン)を含有するPBS中で2回洗浄する。細胞を氷上で107/mlに再懸濁し、元からある細胞表面に結合したペプチドを、3mg/mlのβ2ミクログロブリンの存在下、クエン酸-リン酸緩衝液を用い、0℃で2分間剥がす。ペレットを、3mg/mlのβ2ミクログロブリンおよび30mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼの存在下、PBS/1%BSA中で5×106細胞/mlに再懸濁し、200mlの分割量をHLA特異的ペプチドの存在下または非存在下で20℃で10分間インキュベートし、その後、125I標識ペプチドと一緒に20℃で30分間インキュベートする。PBS/2%BSAで2回洗浄し、PBSで1回洗浄した後、結合した総125Iを決定する。段階的に濃度を増加させる試験ペプチドと既知の結合ペプチドとの比較によって、相対親和性を決定する。
【0185】
別の実施形態では、生細胞(例えばSKLY-16細胞)表面上のHLAに対するペプチド結合の特異性解析が行われ、前記結合が適切なHLA分子に対してのものであることが確認され、その制限が特徴付けられている。別の実施形態では、これには、同じまたは異なるHLA分子に結合することが知られている過剰な非標識ペプチドとの競合、および同じまたは異なるHLA型を発現する標的細胞の使用が含まれる。別の実施形態では、このアッセイは、生きている新鮮な、または0.25%のパラホルムアルデヒドで固定した、特定のHLA型の、ヒトPBMC、白血病細胞株およびEBV形質転換T細胞株に対して行われている。これらの特定の細胞上のMHC分子と結合することが判明しているこれらのペプチドの相対的な結合活性が、関連HLA分子、例えば、チロシナーゼまたはHBVペプチド配列に対し高親和性であることが知られている125I標識ペプチドに対する上記のような競合アッセイによってアッセイされる。別の実施形態では、本発明の方法および組成物のHLAクラスII結合ペプチドは、HLAクラスII分子に結合するための最低限の長さよりも長く、別の実施形態では、これは約12AAである。別の実施形態では、HLAクラスII結合ペプチドの長さを延長させることにより、2つ以上のHLAクラスII分子に対する結合を可能にしている。別の実施形態では、長さを延長させることにより、その結合モチーフが不明であるHLAクラスII分子に対する結合を可能にしている。別の実施形態では、長さを延長させることにより、HLAクラスI分子に対する結合を可能にしている。別の実施形態では、HLAクラスI分子の結合モチーフは既知である。別の実施形態では、HLAクラスI分子の結合モチーフは不明である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0186】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物で利用されるペプチドは、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート(Kazmierski et al. (1991) J. Am Chem. Soc. 113:2275-2283);(2S,3S)-メチル-フェニルアラニン、(2S,3R)-メチル-フェニルアラニン、(2R,3S)-メチル-フェニルアラニンおよび(2R,3R)-メチル-フェニルアラニン(Kazmierski and Hruby (1991) Tetrahedron Lett. 32(41): 5769-5772);2-アミノテトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸(Landis (1989)博士論文、アリゾナ大学);ヒドロキシ-1,2,3、4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシレート(Miyake et al. (1984) J. Takeda Res. Labs.43:53-76)ヒスチジンイソキノリンカルボン酸(Zechel et al. (1991) Int. J. Pep. Protein Res. 38(2):131-138);並びにHIC(ヒスチジン環式尿素(histidine cyclic urea))、(Dharanipragada et al.(1993) Int. J. Pep. Protein Res.42(l):68-77)および((1992) Acta. Crst., Crystal Struc. Comm. 48(IV): 1239-124)等の非古典アミノ酸(non-classical amino acid)を含む。
【0187】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、AA類似体またはペプチド模倣体を含み、これは、他の実施形態では、特定の二次構造を誘導するかまたは選択する。他の実施形態では、このようなペプチドは、以下を含む:LL-Acp(LL-3-アミノ-2-プロペニドン(propenidone)-6-カルボン酸)、βターン誘導性ジペプチド類似体(Kemp et al. (1985) J. Org. Chem. 50:5834-5838);βシート誘導性類似体(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Lett. 29:5081-5082);βターン誘導性類似体(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Lett. 29:5057-5060);αヘリックス誘導性類似体(Kemp et al. (1988) Tetrahedron Lett. 29:4935-4938);γターン誘導性類似体(Kemp et al. (1989) J. Org. Chem. 54:109:115);以下の参考文献において提供される類似体:Nagai and Sato (1985) Tetrahedron Lett.26:647-650;およびDiMaio et al. (1989) J. Chem. Soc. Perkin Trans, p. 1687;GIy-Alaターン類似体(Kahn et al. (1989) Tetrahedron Lett. 30:2317);アミド結合同配体(Jones et al. (1988) Tetrahedron Lett. 29(31):3853-3856);トレトラゾール(tretrazol)(Zabrocki et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:5875-5880);DTC(Samanen et al. (1990) Int. J. Protein Pep. Res. 35:501:509);およびOlson et al. (1990) J. Am. Chem. Sci. 112:323-333およびGarveyet al. (1990) J. Org. Chem. 55(3):936-940において教示される類似体。立体構造的に制限されたβターン模倣体およびβバルジ模倣体、並びにそれらを含有するペプチドは、1995年8月にKahnに発行された米国特許第5,440,013号に記載されている。
【0188】
他の実施形態では、本発明のペプチドは、下記に記載されるような種々の他の分子のうちの1つと結合しており、その結合は共有結合または非共有結合(複合型)を介してであり得、別の実施形態では、その性質は特定の目的に応じて変化する。別の実施形態では、前記ペプチドは、天然高分子および合成高分子、タンパク質、多糖類、ポリペプチド(アミノ酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および脂質を含むがこれらに限定はされない、高分子担体(例えば、免疫原性担体)と共有結合的または非共有結合的に複合体化されている。別の実施形態では、本発明のペプチドは基質に連結されている。別の実施形態では、前記ペプチドはリポソーム中への導入のために、脂肪酸と結合されている(米国特許第5,837,249号)。別の実施形態では、本発明のペプチドは、固相と共有結合的または非共有結合的に複合体化されており、種々の固相が当技術分野において公知である。別の実施形態では、前記ペプチドの担体、基質、脂肪酸、または固相への連結は、免疫応答の誘起を増大させる働きをする。
【0189】
他の実施形態では、担体は、チログロブリン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミン酸)等のポリアミノ酸、インフルエンザタンパク質、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン、アルブミン、または別の担体タンパク質もしくは担体ペプチド;B型肝炎ウイルス組換えワクチン、またはAPCである。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0190】
別の実施形態では、用語「アミノ酸」(AA)は、天然AAまたは、別の実施形態では、非天然AAもしくは合成AAを指し、他の実施形態では、グリシン、D-光学異性体もしくはL光学異性体、AA類似体、ペプチド模倣体、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0191】
別の実施形態では、用語「がん」、「新生物」、「新生物の」または「腫瘍」は同義的用いられており、細胞を宿主生物にとって病理的なものにする悪性転換を経た細胞を指している。原発性がん細胞(すなわち、悪性転換部位付近から得られた細胞)は、確立した技術、特に組織学的検討によって、非がん性細胞と容易に区別することができる。本明細書で使用される場合、がん細胞の定義には、原発性がん細胞だけでなく、がん細胞祖先に由来するいかなる細胞も含まれる。これには、転移がん細胞、並びにがん細胞由来のインビトロ培養物および細胞株が含まれる。別の実施形態では、腫瘍は、腫瘍体積に基づいて;例えば、CATスキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波または触診等の方法によって検出可能であり、別の実施形態では、生化学的知見または免疫学的知見によって特定され、他の実施形態では、免疫学的知見はがん性細胞の特定にも用いられている。
【0192】
ペプチド合成法は当技術分野において周知である。別の実施形態では、本発明のペプチドは、適切な固体合成法を用いて合成される(例えば、Steward and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, Freemantle, San Francisco, Calif. (1968); Merrifield (1967) Recent Progress in Hormone Res 23: 451を参照)。他の実施形態では、これらのペプチドの活性は、本明細書に記載されているようなアッセイを用いて試験される。
【0193】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、およびサイジング(sizing)カラムクロマトグラフィ)、遠心分離、溶解度差(differential solubility)を含む標準方法によって、またはタンパク質精製のための他の標準的な技術によって、精製される。別の実施形態では、イムノアフィニティクロマトグラフィが用いられ、イムノアフィニティクロマトグラフィでは、エピトープが、そのペプチド、または本発明の関連ペプチドに対して産生され不動支持体に固定された抗体を含むアフィニティカラムに結合されることによって、単離される。
【0194】
別の実施形態では、ヘキサ-His(インビトロジェン社)、マルトース結合性ドメイン(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs)、インフルエンザ外被配列(Kolodziej et al. (1991) Meth. Enzymol. 194:508-509)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ等の親和性タグを本発明のペプチドに付着することで、適切なアフィニティカラム上の通過による容易な精製を可能にしている。他の実施形態では、単離ペプチドは、タンパク質分解、核磁気共鳴、およびX線結晶解析等の技術を用いた物理的な特徴付けもされ得る。
【0195】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、当業者には明らかなように、公知の技法を通じて、インビトロにおける翻訳によって生成される。別の実施形態では、前記ペプチドは、翻訳中または翻訳後に、例えば、リン酸化、グリコシル化、架橋結合、アシル化、タンパク質切断、抗体分子、膜分子または他のリガンドへの連結(Ferguson et al. (1988) Ann. Rev. Biochem. 57:285-320)によって、別様に改変される。
【0196】
別の実施形態では、本発明のペプチドは検出可能な標識をさらに含んでおり、この検出可能な標識は、別の実施形態では、蛍光標識であり、あるいは別の実施形態では、発光標識であり、あるいは別の実施形態では、放射性標識であり、あるいは別の実施形態では、高電子密度標識である。他の実施形態では、検出可能な標識は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、DS-Red(赤色蛍光タンパク質)、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、32P、125I、3Hおよび14C、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシルおよびウンベリフェロン、ルシフェリンまたは当業者に公知の多くの他の標識を含んでいる。使用される具体的な標識は、使用される免疫学的検定の種類に依存する。
【0197】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、基質に連結されており、別の実施形態では、基質は担体として働く。別の実施形態では、前記ペプチドの基質への連結は、免疫応答の誘起を増大させる働きをする。
【0198】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、カルボジイミド等の従来の架橋剤を用いて、本明細書に記載されるような他の分子に連結されている。カルボジイミドの例は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミド(CMC)、1-エチル-3-(3-ジメチアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および1-エチル-3-(4-アゾニア-44-ジメチルペンチル)カルボジイミドである。
【0199】
他の実施形態では、架橋剤は臭化シアン、グルタルアルデヒドおよび無水コハク酸を含んでいる。一般的に、ホモ二機能性アルデヒド、ホモ二機能性エポキシド、ホモ二機能性イミド-エステル、ホモ二機能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ホモ二機能性マレイミド、ホモ二機能性ハロゲン化アルキル、ホモ二機能性ピリジルジスルフィド、ホモ二機能性アリールハロゲン化物、ホモ二機能性ヒドラジド、ホモ二機能性ジアゾニウム誘導体およびホモ二機能性光反応性化合物を含む、多くのホモ二官能性物質のいずれをも用いることができる。他の実施形態では、ヘテロ-二機能性化合物、例えば、アミン反応性基およびスルフヒドリル反応性基を有する化合物、アミン反応性基および光反応基を有する化合物、並びにカルボニル反応性基およびスルフヒドリル反応性基を有する化合物も想定される。
【0200】
他の実施形態では、ホモ二機能性架橋剤には、二機能性N-ヒドロキシサクシンイミドエステルのジチオビス(サクシニミジルプロピオネート)、スベリン酸ジサクシニミジル、および酒石酸ジサクシニミジル;二機能性イミド-エステルのアジプイミド酸ジメチル、ピメルイミド酸ジメチル、およびスベルイミド酸ジメチル;二機能性スルフヒドリル反応性架橋剤の1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン、ビスマレイミドヘキサン、およびビス-N-マレイミド-1,8-オクタン;二機能性ハロゲン化アリールの1,5-ジフルオロ-2,4-ジベンゼンおよび4,4'-ジフルオロ-3,3'-ジニトロフェニルスルホン;ビス-[b-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド等の二機能性光反応性作用剤;二機能性アルデヒドのホルムアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびアジポアルデヒド;1,4-ブタンジオール(butaneodiol)ジグリシジルエーテル等の二機能性エポキシド;二機能性ヒドラジドのアジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、およびコハク酸ジヒドラジド;二機能性ジアゾニウムのo-トリジン、ジアゾ化ベンジジンおよびビス-ジアゾ化ベンジジン;二機能性アルキルハロゲン化物のNlN'-エチレン-ビス(ヨードアセトアミド)、NlN'-ヘキサメチレン-ビス(ヨードアセトアミド)、NlN'-ウンデカメチレン-ビス(ヨードアセトアミド)、並びにそれぞれala'-ジヨード-p-キシレンスルホン酸およびトリ(2-クロロエチル)アミン等のハロゲン化ベンジルおよびハロマスタード(halomustard)が含まれる。
【0201】
他の実施形態では、前記ペプチドを本明細書に記載されるような他の分子に連結するのに使用されるヘテロ二機能性架橋剤には、限定はされないが、SMCC(サクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、MBS (m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SIAB(N-サクシニミジル(4-ヨードアセチル(iodoacteyl))アミノベンゾエート)、SMPB(サクシニミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート)、GMBS(N-(.γ.-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル)、MPBH(4-(4-N-マレイミドフェニル(maleimidopohenyl))酪酸ヒドラジド)、M2C2H(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシル-ヒドラジド)、SMPT(サクシニミジルオキシカルボニル-a-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルエン)、およびSPDP (N-サクシニミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)が含まれる。
【0202】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、イオン性、吸着性、または生体分子特異的な相互作用を介して単量体の非共有結合物として製剤化される。別の実施形態では、ペプチドと高度に正または負に帯電している分子との複合体が、脱イオン水中等の低イオン強度環境下での塩橋形成を通じて、得られ得る。別の実施形態では、巨大複合体が、多数の負電荷および正電荷をそれぞれ含有するポリ-(L-グルタミン酸)またはポリ-(L-リジン)等の荷電重合体を用いて作製され得る。別の実施形態では、ペプチドが微小粒子ラテックスビーズ等の表面または他の疎水性重合体に吸着され、架橋結合型タンパク質または他の実施形態では化学重合型タンパク質を効率的に模倣する非共有結合型ペプチド-スーパー抗原複合体が形成される。別の実施形態では、ペプチドは、他の分子間の生体分子特異的な相互作用の利用によって、非共有結合的に連結されている。例えば、アビジンもしくはストレプトアビジン等のタンパク質またはそれらの誘導体に対するビオチンの強い親和性の利用が、ペプチド複合体の形成に用いられ得る。この態様における、および別の実施形態におけるペプチドは、利用可能なアミン基と反応するD-ビオチン(NHS-ビオチン)のN-ヒドロキシサクシニミジルエステル等の通常のビオチン化試薬を用いて、ビオチン基を有するように改変され得る。
【0203】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、担体に連結されている。別の実施形態では、担体はKLHである。他の実施形態では、担体は、当技術分野において公知の他の担体であり、例えば、チログロブリン、ヒト血清アルブミン等のアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミン酸)等のポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質、B型肝炎ウイルス組換えワクチン等が挙げられる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0204】
別の実施形態では、本発明のペプチドはP3CSS等の脂質に結合されている。別の実施形態では、本発明のペプチドはビーズに結合されている。
【0205】
別の実施形態では、本発明の組成物は免疫調節性化合物をさらに含んでいる。他の実施形態では、免疫調節性化合物は、サイトカイン、ケモカイン、または免疫系のアクセサリー分子もしくは接着分子の発現を増強する補体成分、それらの受容体、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、免疫調節性化合物には、インターロイキン、例えば、インターロイキン1~15、インターフェロンα、βもしくはγ、腫瘍壊死因子(tumour necrosis factor)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ケモカイン、例えば、好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ化学誘引活性化因子(macrophage chemoattractant and activating factor)(MCAF)、ランテス、マクロファージ炎症性ペプチド(macrophage inflammatory peptide)のMIP-IaおよびMIP-Ib、補体成分、またはこれらの組み合わせが含まれる。他の実施形態では、免疫調節性化合物は、OX40、OX40L(gp34)、リンホタクチン、CD40、CD40L、B7.1、B7.2、TRAP、ICAM-1、2もしくは3、サイトカイン受容体、またはこれらの組み合わせの発現を刺激または増強する。
【0206】
別の実施形態では、免疫調節性化合物は、免疫応答に関与する共起刺激分子の発現を誘導または増強し、いくつかの実施形態では、CD40もしくはそのリガンド、CD28、CTLA-4またはB7分子が含まれる。別の実施形態では、免疫調節性化合物は、熱安定性抗原(HSA)(Liu Y. et al. (1992) J. Exp. Med. 175:437-445)、コンドロイチン硫酸修飾MHCインバリアント鎖(Ii-CS)(Naujokas M. F. et al (1993) Cell 74:257-268)、または細胞内接着分子1(ICAM-I)(Van R. H. (1992) Cell 71 : 1065-1068)の発現を誘導または増強するものであり、別の実施形態では、T細胞上のそれらの同族リガンドと相互作用することで同時刺激を補助する。
【0207】
別の実施形態では、前記組成物は、溶媒(例えば、水)、分散媒、細胞培地、等張剤等を含んでいる。別の実施形態では、溶媒は、pHが約7.0である等張性緩衝水溶液である。別の実施形態では、前記組成物は、水、リン酸緩衝食塩水、または食塩水等の希釈剤を含んでいる。別の実施形態では、前記組成物は、プロピルエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよび植物油等の非水系の溶媒を含んでいる。
【0208】
別の実施形態では、前記組成物は、当業者に公知の多くの技術によって、投与用に製剤化されている。例えば、本発明は、非経口的、静脈内、皮下、皮内、粘膜内、局所的、経口的な、または吸入による、医薬組成物の投与を提供する。
【0209】
別の実施形態では、本発明のペプチドを含むワクチンは細胞集団をさらに含んでおり、別の実施形態では、前記細胞集団はリンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞、幹細胞またはこれらの組み合わせを含んでおり、別の実施形態では、これらの細胞は互いに関して自家性、同系間または同種間である。別の実施形態では、前記細胞集団は本発明のペプチドを含んでいる。別の実施形態では、前記細胞集団は前記ペプチドを取り込む。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0210】
別の実施形態では、本発明の細胞集団は、インビボの供給源、例えば、末梢血、白血球フェレーシス血液製剤、アフェレーシス血液製剤、末梢リンパ節、消化管関連リンパ系組織、脾臓、胸腺、臍帯血、腸間膜リンパ節、肝臓、免疫性病変部、例えば、滑液、膵臓、脳脊髄液、腫瘍の試料、肉芽腫組織、またはこのような細胞を得ることが可能な他の供給源から得られる。別の実施形態では、前記細胞集団はヒト供給源から得られ、他の実施形態では、このヒト供給源は、ヒトの胎児、新生児、小児、または成人供給源から得られる。別の実施形態では、本発明の細胞集団は、動物供給源、例えば、ブタもしくはサル、または他の目的動物から得られる。別の実施形態では、本発明の細胞集団は、正常な対象から、あるいは別の実施形態では、疾患を有する対象から、あるいは別の実施形態では、目的の疾患に罹患し易い対象から得られる。
【0211】
別の実施形態では、本発明の細胞集団は、親和性に基づく分離法によって分離される。他の実施形態では、アフィニティ分離のための技術には、抗体で被覆した磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティクロマトグラフィ、モノクローナル抗体に結合された、またはモノクローナル抗体と併せて使用される細胞傷害性薬物(例えば、補体および細胞毒)、並びにプレート等の固体マトリクスに付着した抗体を用いる「パニング」、または他の好都合な技術が含まれる。他の実施形態では、分離技術には、多色チャネル、低角および鈍角の光散乱を検出するチャネル、インピーダンスチャネル等の、様々な程度の精巧さを有し得る蛍光標示式細胞分取器の使用が含まれる。他の実施形態では、本発明の細胞集団の分離を可能にするいかなる技術も使用可能であり、本発明の一部とみなされるべきである。
【0212】
別の実施形態では、樹状細胞は、そのようなものに適した、種々のリンパ系組織および非リンパ系組織に存在する、形態学的に類似した細胞型の多種多様な集団から得られる(Steinman (1991) Ann. Rev. Immunol.9:271-296)。別の実施形態では、本発明で使用される樹状細胞は骨髄から単離され、あるいは別の実施形態では、骨髄前駆細胞に由来し、あるいは別の実施形態では、末梢血からの単離/由来によるものであり、あるいは別の実施形態では、ある細胞株であるかまたは該細胞株に由来する。
【0213】
別の実施形態では、本明細書に記載される細胞集団は、マウス、サルまたはヒト等の哺乳動物の白血球画分から単離される(例えば、国際公開第96/23060号を参照されたい)。別の実施形態では、白血球画分は哺乳動物の末梢血から単離され得る。
【0214】
樹状細胞(DC)を単離する方法は当技術分野において周知である。別の実施形態では、以下のステップ、すなわち、
(a)白血球分離等の当技術分野において公知の方法によって、哺乳類供給源から得られる白血球画分を提供するステップと、
(b)向流遠心分離法によって、(a)のステップの白血球画分を4つ以上の細画分に分離するステップと、
(c)(b)のステップから得られた1若しくは複数の画分内の単球の、樹状細胞への転換を、前記細胞をカルシウムイオノホア、GM-CSFおよびIL-13またはGM-CSFおよびIL-4と接触させることで、刺激するステップと、
(d)(c)のステップから得られた、樹状細胞が濃縮された画分を特定するステップと、
(e)(d)のステップの濃縮画分を、好ましくは約4℃で収集するステップとを含む方法によって、DCが単離される。
【0215】
別の実施形態では、樹状細胞が濃縮された画分は、蛍光標識細胞分取によって特定され、この蛍光標識細胞分取は、以下のマーカー:HLA-DR、HLA-DQ、またはB7.2のうちの少なくとも1つ、並びに以下のマーカー:CD3、CD14、CD16、CD56、CD57、およびCD19、CD20の同時の非存在を特定する。
【0216】
別の実施形態では、前記細胞集団はリンパ球を含んでおり、このリンパ球は、別の実施形態ではT細胞であり、あるいは別の実施形態では、B細胞である。他の実施形態では、前記T細胞は、NK細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、TBL、ナイーブT細胞、またはこれらの組み合わせとして特徴付けられる。初代、または細胞株、クローン等であるT細胞が本発明の一部とみなされるべきであることを理解されたい。別の実施形態では、前記T細胞は、CTL、またはCTL株、CTLクローン、または腫瘍、炎症性浸潤、もしくは他の浸潤から単離されたCTLである。
【0217】
別の実施形態では、造血性の幹細胞または初期前駆細胞は、本発明で用いられる細胞集団を含む。別の実施形態では、このような集団は白血球分離によって、単離または派生される。別の実施形態では、白血球分離は、骨髄、末梢血(PB)または新生児臍帯血から、サイトカイン投与の後に行われる。別の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、CD34+として知られる表面抗原マーカーの細胞表面発現、および表面系譜抗原マーカー(surface lineage antigen marker)Lin-の発現除外によって特徴づけられる。
【0218】
別の実施形態では、前記対象は、本発明のペプチド、組成物またはワクチンを、骨髄細胞と共に投与される。別の実施形態では、骨髄細胞実施形態と併せた投与は、対象におけるがんを抑制、阻害または治療するために、治療過程の一部として、対象の事前の照射の後に行われる。
【0219】
別の実施形態では、句「細胞を接触させる」または「集団を接触させる」は、暴露の1つの方法を指しており、他の実施形態では、直接的または間接的なものであり得る。別の実施形態では、このような接触は、マイクロインジェクション等の、当技術分野において周知の手段による細胞の直接注射を含む。別の実施形態では、細胞への供給は、細胞を取り囲む培地中の供給、または当技術分野において周知の、および本明細書に記載されるような、任意の経路を介した対象への投与等、間接的なものであることも企図される。
【0220】
別の実施形態では、本発明の方法のCTLの発生は、インビボで達成され、対象に、インビトロで本発明のペプチドと接触された抗原提示細胞を投与することによって達成される(例えば、Paglia et al. (1996) J. Exp. Med. 183:317-322を参照)。
【0221】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のペプチドは、APCに送達される。別の実施形態では、ペプチドでパルスされたAPCが対象に投与されて、免疫応答が誘起される、または腫瘍の成長もしくは再発が阻害される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0222】
別の実施形態では、前記ペプチドは、該ペプチドをコードするcDNAの形態でAPCに送達される。別の実施形態では、用語「抗原提示細胞」(APC)は、必要なMHC/共起刺激分子を発現する、樹状細胞(DC)、単球/マクロファージ、Bリンパ球または他の細胞型を指しており、このMHC/共起刺激分子は、提示されたペプチドのT細胞認識を効率的に可能にする。別の実施形態では、APCはがん細胞である。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0223】
別の実施形態では、CTLは2以上のAPC集団と接触される。別の実施形態では、2以上のAPC集団は異なるペプチドを提示している。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0224】
別の実施形態では、APC(例えばDC)の細胞質ゾル内での抗原の発現をもたらす手法が用いられ、ペプチドがAPCに送達される。APC上で抗原を発現させるための方法は、当技術分野において周知である。別の実施形態では、前記手法には、(1)本発明のペプチドをコードする裸のDNAの、APC内への導入、(2)本発明のペプチドを発現する組換えベクターによるAPCの感染、および(3)リポソームを用いる、APCの細胞質ゾル内への本発明のペプチドの導入が含まれる(Boczkowski D. et al. (1996) J. Exp. Med. 184:465-472; Rouse et al. (1994) J. Virol. 68:5685-5689;およびNair et al. (1992) J. Exp. Med. 175:609-612を参照)。
【0225】
別の実施形態では、その抗原プロセシング経路内に内在ペプチドと細胞表面MHCクラスI分子との結合(association)を制限する変異を含有する、ヒト細胞株の174xCEM.T2(T2と称される)に由来するもの等のフォスターAPC(foster APC)(Zweerink et al. (1993) J. Immunol. 150:1763-1771)が、本明細書に例示されるように、使用される。
【0226】
別の実施形態では、本明細書に記載されるように、対象が、発現された未変性タンパク質と異なる本発明のペプチド、または本発明のペプチドを含む組成物/細胞集団に暴露され、その後、未変性タンパク質/抗原と交差反応性の宿主免疫が発達する。
【0227】
別の実施形態では、本発明の方法または実施形態において述べられる対象は、ヒトである。他の実施形態では、対象は哺乳動物であり、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌ、サル、または類人猿であり得る。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0228】
別の実施形態では、本発明のペプチド、ワクチン、および組成物は、腫瘍細胞の溶解を結果として生じる免疫応答を刺激する。
【0229】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかが用いられてCTLが誘起され、これは、インビトロにおいて誘起される。別の実施形態では、CTLはエキソビボで誘起される。別の実施形態では、CTLはインビトロで誘起される。別の実施形態では、結果として生じたCTLが対象に投与されることで、前記ペプチド、該ペプチドを含む発現産物、またはその相同体と関連する状態が治療される。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0230】
別の実施形態では、前記方法は、例えば、1若しくは複数の核酸送達法を用いる、本発明のペプチドをコードする遺伝子配列の導入を必要とする。別の実施形態では、本発明の核酸には、NA、RNA並びにDNAおよびRNAの混合物が、単独で、または非核酸成分と共に含まれる。別の実施形態では、前記方法は、対象に、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを投与するステップを含む(Tindle, R. W. et al. Virology (1994) 200:54)。別の実施形態では、前記方法は、対象に、ペプチドをコードする、あるいは別の実施形態では、2つ以上の本発明のペプチドをコードする裸のDNAを投与するステップを含む(Nabel, et al. PNAS-USA (1990) 90: 11307)。別の実施形態では、マルチエピトープ(multi-epitope)、類似体をベースにしたがんワクチンが利用される(Fikes et al, Design of multi-epitope, analogue-based cancer vaccines. Expert Opin Biol Ther.2003 Sep;3(6):985-93)。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0231】
核酸は、非経口投与もしくは静脈内投与を含む当技術分野で知られている手段によって、あるいは別の実施形態では、遺伝子銃によって、対象に投与され得る。別の実施形態では、核酸は組成物の形態で投与され、他の実施形態では、この形態は本明細書に列挙される任意の実施形態に一致する。
【0232】
本発明の方法に従った使用のためのベクターは、本発明のペプチドの発現を促進するかまたは可能にする任意のベクターを含み得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、例えば、米国特許第4,722,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、牛痘や鶏痘等の弱毒ウイルスを含む。別の実施形態では、ベクターは、Stover et al. (Nature 351:456-460 (1991))に記載されているようなBCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。本発明のペプチドの治療的投与または免疫処置に有用な種々様々な他のベクター(例えば、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター等)は、本明細書中の記述から当業者には明らかである。
【0233】
別の実施形態では、ベクターは、本明細書に記載されるような免疫調節性化合物をさらにコードしている。別の実施形態では、対象は、本発明のペプチドをコードするベクターの対象への投与と同時に、投与前に、または投与後に、前記免疫調節性化合物をコードするさらなるベクターを投与される。
【0234】
別の実施形態では、本発明のペプチド、組成物およびワクチンは、他の抗がん性の化合物および化学療法剤(例えば、がんの代替抗原(alternate cancer antigen)を標的にするモノクローナル抗体、あるいは別の実施形態では、本発明のペプチドが由来するAA配列に相当するかまたは部分的に相当するAA配列からなるエピトープを標的にするモノクローナル抗体)と共に、対象に投与される、または本発明の方法で利用される。
【0235】
用量域の種々の実施形態は本発明によって企図されるものである。μは、マイクロを指し;μgはマイクログラムを指す。別の実施形態では、投与量は20μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は10μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は30μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は40μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は60μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は80μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は100μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は150μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は200μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は300μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は400μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は600μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は800μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は1000μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は1500μg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は2000μg/ペプチド/日である。
【0236】
別の実施形態では、投与量は10μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は30μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は40μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は60μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は80μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は100μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は150μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は200μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は300μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は400μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は600μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は800μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は1000μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は1500μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は2000μg/ペプチド/用量である。
【0237】
別の実施形態では、投与量は10~20μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は20~30μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は20~40μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は30~60μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は40~80μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は50~100μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は50~150μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は100~200μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は200~300μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は300~400μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は400~600μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は500~800μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は800~1000μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は1000~1500μg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は1500~2000μg/ペプチド/用量である。
【0238】
別の実施形態では、ペプチド/用量またはペプチド/日の合計量は上記の量のうちの1つである。別の実施形態では、総ペプチド用量/用量は上記の量のうちの1つである。
【0239】
上記用量のそれぞれは本発明の別々の実施形態を表す。
【0240】
用量域の種々の実施形態は本発明によって企図されるものである。別の実施形態では、投与量は20mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は10mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は30mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は40mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は60mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は80mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は100mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は150mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は200mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は300mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は400mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は600mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は800mg/ペプチド/日である。別の実施形態では、投与量は1000mg/ペプチド/日である。
【0241】
別の実施形態では、投与量は10mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は30mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は40mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は60mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は80mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は100mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は150mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は200mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は300mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は400mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は600mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は800mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は1000mg/ペプチド/用量である。
【0242】
別の実施形態では、投与量は10~20mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は20~30mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は20~40mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は30~60mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は40~80mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は50~100mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は50~150mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は100~200mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は200~300mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は300~400mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は400~600mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は500~800mg/ペプチド/用量である。別の実施形態では、投与量は800~1000mg/ペプチド/用量である。
【0243】
別の実施形態では、ペプチド/用量またはペプチド/日の合計量は上記の量のうちの1つである。別の実施形態では、総ペプチド用量/用量は上記の量のうちの1つである。
【0244】
上記用量のそれぞれは本発明の別々の実施形態を表す。
【0245】
別の実施形態では、本発明は本発明のペプチド、組成物またはワクチンを含むキットを提供する。別の実施形態では、前記キットは、ラベルまたは添付文書をさらに含んでいる。別の実施形態では、前記キットは、遅延型過敏性試験を用いたWT1特異的CD4応答の検出に用いられる。別の実施形態では、前記キットは本明細書において列挙される他のいかなる方法にも使用される。別の実施形態では、前記キットは当技術分野において公知の他のいかなる方法にも用いられる。各可能な形態は、本発明の別々の実施形態を表す。
【実施例】
【0246】
実施例1
材料および方法
ペプチドデザイン
3つのコンピュータ支援予測アルゴリズムのBIMAS(http://www-bimas.cit.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)、SYFPEITHI(http://www.syfpeithi.de/)およびRANKPEP(http://bio.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.html)を用い、健常ドナーにおいて免疫応答を誘導することが可能な天然WT1タンパク質配列から始めることで、CD8T細胞およびCD4T細胞の両方に対するエピトープを選択した。その天然配列よりも高い予測結合性をもたらす、クラスIの天然ペプチドのアンカー残基内の1個のアミノ酸の改変よって、ヘテロクリティックペプチドをデザインした。CD4T細胞およびCD8T細胞の両方を同時に刺激するため、クラスIペプチドに隣接残基を付加することによって、クラスIIペプチドをデザインした。前記アルゴリズムにより多くの配列を予測することができるが、これらのモデルでは、生細胞に対し試験する場合、30%の場合においてMHCに対する結合性は予測されず(Gomez-Nunez et al. Leuk Res. 2006;30(10): 1293-8)、そのためインビトロ試験が必要とされる。さらに、結合性が示された場合でも、細胞傷害性T細胞応答が起こらない場合があり、これにはさらなるインビトロ研究が必要とされる。
【0247】
ペプチド合成
全てのペプチドは、ジーンメッド・シンセシス株式会社(Genemed Synthesis, Inc.)(テキサス州サンアントニオ)により合成されたものを購入した。ペプチドは、70%~90%の純度を有して無菌であった。ペプチドをDMSOに溶解し、食塩水で5mg/mLに希釈し、-80℃で保存した。使用される対照ペプチドは、HLA-DR.B1については、JAK-2由来DR.B1結合ペプチドJAK2-DR(GVCVCGDENILVQEF;配列番号59)またはBCR.ABL由来ペプチド(IVHSATGFKQSSKALQRPVASDFEP;配列番号60)であり;HLA-A0201については:ユーイング肉腫由来ペプチドEW(QLQNPSYDK;配列番号61)であり、HLA-A2402については、前立腺特異的膜抗原(PMSA)由来ペプチド624~632(TYSVSFDSL;配列番号62)である。
【0248】
細胞株、サイトカインおよび抗体
ヒト白血病細胞株のBA25およびHL-60を、T細胞の細胞毒性を測定するための標的として使用した。ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、IL-6、IL-15、腫瘍壊死因子(TNF)-αおよびプロスタグランジンE2(PGE2)は、R&Dシステムズ社(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。β2-ミクログロブリン(b2-m)は、シグマ社(ミズーリ州セントルイス)から購入した。免疫蛍光法アッセイに用いた抗体、例えば、ヒトCD3、CD4、CD8、HLA-A2(クローンBB7.2)およびアイソタイプ対照に対するmAbは、BDバイオサイエンス社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。CD14およびCD3用の細胞単離キットは、ミルテニーバイオテク社(ドイツ、ベルギッシュグラートバハ)から購入した。
【0249】
ペプチド結合についてのT2アッセイ
T2細胞(TAP-、HLA-A0201+)を、種々の最終濃度(50、10および2μg/ml)のペプチドの非存在下(負の対照)または存在下の、10μg/mlのヒトβ-2m(シグマ社、米国ミズーリ州セントルイス)を添加したFCS非含有RPMI培地中で、1×106細胞/mlで、37℃で一晩インキュベートした。ブレフェルジンA(シグマ社)を5μg/mlで培地に添加し、2時間インキュベーションした。次に、T2細胞を洗浄し、FITC結合型抗HLA-A2.1(BB7.2)mAbを用いて4℃で30分間染色し、その後、染色緩衝液(PBS+1%FBSおよび0.02%アジド)で洗浄した。細胞表面上のHLA-A2の発現を、FACScalibur(ベクトン・ディッキンソン社)によるフローサイトメトリーで測定し、FlowJo9.6.3ソフトウェアで解析した。
【0250】
インビトロ刺激およびヒトT細胞培養
HLA型が決定された健常ドナー由来の末梢血単核球(PBMC)をフィコール密度遠心分離によって得た。CD14+単球を、磁気ビーズ結合型ヒトCD14抗mAb(ミルテニーバイオテク社)を用いるポジティブ選択で単離し、T細胞の第一刺激に使用した。PBMCのCD14-分画を、pan T cellアイソレーションキット(ミルテニーバイオテク社)を用いる負の免疫磁気細胞分離(negative immunomagnetic cell separation)による、CD3の単離に用いた。細胞の純度は、常に98%超であった。T細胞を、5%の自己血漿(AP)、20μg/mLの合成ペプチド、1μg/mLのB2-m、および10ng/mLのIL-15を添加したRPMI1640の存在下で7日間刺激した。1%のAP、500ユニット/mLの組換えIL-4、および1,000ユニット/mLのGM-CSFを添加したRPMI1640培地中で細胞を培養することにより、単球由来樹状細胞(DC)をCD14+細胞から得た。インキュベーションの2日目および4日目に、IL-4およびGM-CSFを含有する新鮮な培地を追加、または培地の半分と交換した。5日目に、20μg/mLクラスIIペプチドを、プロセシングのために、未成熟DCに添加した。6日目に、成熟サイトカイン混合物を添加した(Dao et al. Plos One 2009; 4(8):e6730)。7日目または8日目に、T細胞をIL-15を有する成熟DCで再刺激した。ほとんどの場合、T細胞を、DCまたはCD14+細胞を抗原提示細胞(APC)として用いて3回同様に刺激した。最終刺激の1週間後、IFN-g ELISPOTアッセイ(酵素免疫スポットアッセイ)によりペプチド特異的T細胞応答を調べ、細胞毒性を51クロム(Cr)放出アッセイによって試験した。
【0251】
IFN-g ELISPOT
HA-Multiscreenプレート(ミリポア社)を、100μLのPBS中マウス抗ヒトIFN-g抗体(10Ag/mL;クローン1-D1K;マブテック社(Mabtech))でコートし、4Cで一晩インキュベートし、PBSで洗浄して未結合抗体を除去し、RPMI1640/10%自己血漿(AP)で37℃で2時間ブロッキングした。精製したCD3+T細胞(98%超の純度)を、自己CD14+(E:APC比10:1)または自己DC(E:APC比30:1)と一緒に播種した。種々の試験ペプチドを20μg/mLでウェルに添加した。負の対照のウェルには、ペプチド無しまたは無関係ペプチド有りで、APCおよびT細胞を含ませた。正の対照のウェルには、T細胞およびAPCおよび20μg/mLのフィトヘマグルチニン(PHA、シグマ社)を含ませた。全ての条件を3連で行った。マイクロタイタープレートを37℃で20時間インキュベートし、その後PBS/0.05%トウィーンで十分に洗浄し、100μl/ウェルのビオチン化抗ヒトIFN-g検出抗体(2μg/mL;クローン7-B6~1;マブテック社)を添加した。プレートを37℃でさらに2時間インキュベートし、記述(Dao et al.、前掲)の通りにスポットを発生させた。スポット数を、KS ELISPOT4.0ソフトウェア(カールツァイスビジョン社)を備えたコンピュータ支援ビデオ画像分析機器を用いて自動決定した。
【0252】
51クロム放出アッセイ
特異的CTLの存在を、記述(Dao et al.、前掲)の通りの標準的なクロム放出アッセイにて測定した。簡潔に説明すると、単独の、または50μg/mLの合成ペプチドで37℃で2時間(場合によっては一晩)パルスした標的細胞を、50μCi/106細胞のNa2
51CrO4(NENライフ・サイエンス・プロダクツ社(NEN Life Science Products, Inc.))で標識する。十分に洗浄した後、標的細胞を100:1~10:1の範囲のE:T比のT細胞と一緒にインキュベートする。全ての条件を3連で行った。プレートを37℃、5%CO2で4~5時間インキュベートした。上澄み液を回収し、ガンマカウンタで放射活性を測定した。特異的溶解%を次式から決定した:
[(実験による放出-自発性放出)/(最大放出-自発性放出)]×100%。
最大放出は、放射性標識された標的の1%SDS中の溶解によって決定した。
【0253】
実施例2
天然ペプチドおよびその類似ペプチドのHLA-A0201およびHLA-A2402に対する結合
ヒトWT1タンパク質にまたがる15塩基長の重複ペプチドのプールを用いてインビトロでヒトT細胞を感作させることで、配列239~248(NQMNLGATL;配列番号5;本明細書ではNQMと省略、または)が、HLA-A2402との関連において、免疫原性CD8 T細胞エピトープであることが最近特定された(Doubrovina et al., Blood 2012; 123(8):1633-46)。より強い免疫原性を有する類似ペプチドを得るために、3つのオンラインで利用可能なデータベース(BIMAS、RANKPEPおよびSYFPEITHI)を用いて、天然ペプチドおよび2位および9位(クラスIアンカー残基)に種々のアミノ酸置換を有する可能な類似体の予測スコアを選別した。3つデータベース全てから得られた予測結合性スコアは、HLA-A2402分子に対してよりも、HLA-A0201分子に対しての、天然NQMNLGATL(配列番号5)ペプチドのより良好な結合性を示した(表I)。2位のグルタミンがロイシンで置換された場合、3つ全ての予測プログラムによるHLA-A2402に対する結合性スコアは、依然として同様のレベルであった。しかし、HLA-A0201に対して、有意により強い結合性スコアが予測された。一方、2位のグルタミンがチロシンで置換された場合、HLA-A2402に対する結合性スコアは劇的に向上し、約90倍に増加した結合性がBIMAS予測によって示された。RANKPEPアルゴリズムによって3つ全てのペプチドがC末端において切断されていることが予測されたが、これは、ペプチド断片のプロセシングを示唆するものである。9位における種々のアミノ酸との置換により、結合性スコアを調べたが、それらのいずれも、2位における置換と比較して有意に向上された結合性を示さなかった。そのため、2つの類似ペプチド、NLMNLGATL(配列番号6;本明細書では略してNLM、あるいはA24-ヘテロクリティック-1と呼ぶ)およびNYMNLGATL(配列番号7;本明細書では略してNYM、あるいはA24-ヘテロクリティック-2と呼ぶ)をさらなる研究のために選択した。
【0254】
【0255】
実施例3
HLA-A0201分子およびHLA-A2402分子に対するペプチドの結合
MHCクラスI制限ペプチドの免疫原性は、生細胞表面のMHCクラスI分子と結合しそれを安定化させる能力を必要とする。さらに、コンピュータ予測は最大で70%の精度しかなく;そのため、抗原運搬能を欠く(TAP2陰性)HLA-A0201ヒトT2細胞を用いる従来の結合および安定化アッセイを用いた、ペプチドおよびHLA-A0201分子の間の相互作用の強度の、直接的な測定が求められた。T2細胞はTAP機能を欠いているため、クラスI分子に細胞質ゾルで生成された抗原ペプチドを適切に積むことに欠陥がある。外因的に加えられたペプチドと熱不安定性の空のHLA-A0201分子との結合は、それらを安定化することで、BB7.2等の特異的な抗HLA-A0201mAbによって認識される表面HLA-A0201のレベルの上昇をもたらす。
【0256】
T2結合アッセイによって、天然NQMNLGATL(配列番号5)ペプチドがT2細胞上のHLA-A2発現を増加させないことが示された(
図1、上段パネル)。しかし、NLMNLGATL(配列番号6)類似ペプチドは、ペプチドパルス無しのT2細胞との比較においてHLA-A2発現の用量依存的な増加を示すことによって、HLA-A2分子を安定化させた(
図1、中段パネル)。天然ペプチドNQMNLGATLと同様に、NYMNLGATL(配列番号7)ペプチドは、HLA-A2発現を増加させなかった(
図1、下段パネル)。これらのデータによって、コンピュータ支援アルゴリズムによって予測されたHLA-A2結合性スコアが確認された。
【0257】
実施例4
HLA-A0201分子およびA2402分子との関連における、ペプチド特異的CD8 T細胞応答の誘導
MHC分子に対する親和性はペプチド提示に必要であるが、もう1つ、HLA分子によって提示されたペプチドのT細胞認識も、ペプチド特異的応答を誘発するのに重要な必要条件である。そのため、インビトロ刺激プロトコルを用いて、新規の合成WT1ペプチド類似体を、HLA-A0201ドナーおよびHLA-A2402ドナーの両方においてペプチド特異的T細胞応答を刺激するそれらの能力について評価した。
【0258】
ペプチド特異的T細胞前駆体を増殖させるため、3回~5回のインビトロ刺激を行い、個々のペプチドに暴露された場合のIFN-g産生によって、特異的なT細胞応答を測定した。NLMNLGATLペプチドは、天然NQMNLGATLペプチドと交差反応した、強いIFN-g分泌を誘導した。T細胞の5回の刺激は、3回の刺激(
図2A)よりも多いIFN-gスポット(
図2B)によって示される、応答を強化した。NLMNLGATLペプチドで5回刺激した後のT細胞を、
51Cr放出アッセイを用いて、細胞毒性についても試験した。WT1陽性であるがHLA-A2陰性であったHL-60細胞に対して、殺傷は観察されなかった。しかし、T細胞は、WT1+且つHLA-A0201+であるAML細胞株SET-2およびHLA-A0201陽性患者由来の初代白血病芽球を殺傷しなかった(
図3)。NLMNLGATLおよびNYMNLGATLヘテロクリティックペプチドの両方が、HLA-A2402ドナーにおいてより良好なCD8 T細胞応答を誘導し得るかどうかを決定した。NLMNLGATLペプチドは、NLMNLGATLペプチドおよび天然NQMNLGATLペプチドの両方に対するT細胞応答を誘導することができたが、天然NQMNLGATLペプチドによって誘導されたT細胞応答と比較して、有意な増強はなかった。対照的に、NYMNLGATLペプチドは、3回刺激の後にそれ自体および天然ペプチドに対する強いT細胞応答を誘導したが(
図4A)、その応答は5回刺激後に消失し(
図4B)、また、天然配列との弱い交差反応性も示した。これらのデータにより、NLMNLGATLヘテロクリティックペプチドが、HLA-A0201分子との関連において、CD8 T細胞にとっての強力なエピトープであることが示された。一方、NYMNLGATLペプチドは、HLA-A0201陽性ドナーにおいてCD8 T細胞応答を誘導したが、その応答はNQMNLGATLペプチドよりも有意に良好ではなかった。
【0259】
実施例5
NQMNLGATL CD8 T細胞エピトープを認識するHLA-DR.B1ペプチドによるT細胞応答の誘導
CD4 T細胞が、CD40/CD40Lシグナル伝達を介してDCを完全に活性化させることによって、およびIL-2およびIFN-gを産生することによって、CD8 CTLを援助し得ることから、CD4エピトープおよびCD8エピトープの両方を併有しているペプチドは、ワクチンデザインに有効な免疫応答を誘起する際に、単一のクラスIエピトープよりも有効であることが示されている。さらに、CD8 T細胞エピトープが組み込まれているより長いペプチドで刺激されたT細胞が短ペプチドを認識できたならば、それによって、CD8 T細胞エピトープのプロセシングが確かめられるだろう。そのため、それぞれNQMNLGATLエピトープおよびNLMNLGATLエピトープにまたがる4つのHLA-DR.B1結合ペプチドをデザインした。
DR-天然-1:cmtwNQMNLGATLkg(配列番号8)
DR-天然-2:wNQMNLGATLkgvaa(配列番号9)
DR-ヘテロクリティック-1:cmtwNLMNLGATLkg(配列番号14)
DR-ヘテロクリティック-2:wNLMNLGATLkgvaa(配列番号17)
【0260】
クラスIIペプチド切断を予測するための決定的な方法が存在しないため、BIMAS、SYFPEITHIおよびRANKPEPアルゴリズムを用いてクラスIIペプチドの2つの異なる改変体をデザインした(表2)。
【0261】
【0262】
T細胞をNLMNLGATLエピトープにまたがる2つの「ヘテロクリティックな」DR.B1ペプチドで刺激した場合、それらは、IFN-g分泌を示す、短ペプチドおよび長ペプチドの両方に特異的なT細胞応答を誘導した。CD4ペプチドはそれらのサイトカイン大量産生によってより強力な応答を誘導するため、バックグラウンドは通常、CD8 T細胞ペプチド刺激よりも高い。そのため、DR-ヘテロクリティックペプチドの両方が特異的な応答を誘導するが、DR-ヘテロクリティック-2ペプチドは、ドナーにおいてDR-ヘテロクリティック-1ペプチドよりも明瞭な応答を示した(
図5Aに示される)。DR-ヘテロクリティック-2ペプチドによって誘導された応答が、短ペプチドであるNQMNGATLおよびNLMNGATLの両方、並びにDR-天然2ペプチドおよびDR-ヘテロクリティック-2ペプチドに特異的であることは明らかであった。さらに重要なことに、前記応答は、照射を受けた癌化細胞株BA-25(WT1+A2+)を対象にするものであり、WT1+であるがA0201陰性であるHL-60細胞を対象としたものではなかった。同様に、
図5Bに示されるように、T細胞が短いペプチド(NQMNLGATLまたはNLMNGATL)またはより長いペプチドで刺激された場合、BA-25細胞のみが殺傷され、HL-60細胞は殺傷されなかった。
【0263】
実施例6
NQMNLGATL CD8 T細胞エピトープを認識する他のHLA-DR.B1結合ペプチド
上記のDRペプチドに加え、NQMNLGATLエピトープ、NLMNLGATLエピトープおよびNLMNLGATLエピトープにまたがるさらなるHLA-DR.B1結合ペプチドをデザインし、評価した(表3)。
【0264】
【0265】
実施例7
ヒトHLA-B7クラスIおよびHLA-DrクラスII分子に結合するWT1腫瘍性タンパク質に由来するペプチドの作製
また、HLA-B0702に結合するペプチドをデザインした(表4)。以下のペプチド配列をデザインした:RQRPHPGAL(B7-天然1;配列番号34)、RLRPHPGAL(B7-ヘテロクリティック-1;配列番号37)、RIRPHPGAL(B7-ヘテロクリティック-2;配列番号38)、GALRNPTAC(天然2;配列番号29)、およびGALRNPTAL(B7-ヘテロクリティック-3;配列番号31)。これらおよび他の改変体の予測結合性スコアを表4に示す。これらのペプチドをインビトロで試験し、ヘテロクリティックなT細胞応答を刺激した(
図6)。HLA-B0702陽性ドナー由来のCD3 T細胞を、インビトロで、2セットのペプチド(合計5)で5回刺激した。ペプチド特異的応答を、個々のペプチドに対し、IFN-γ ELISPOTアッセイによって測定した。
【0266】
第一の一連のペプチドについて、ヘテロクリティック-1およびヘテロクリティック-2の両方がペプチド特異的応答を示したが、天然1(N1)ペプチドに対する交差反応性は、ヘテロクリティック-1ペプチドよりもヘテロクリティック-2ペプチドにおいてより強かった。第二の一連のペプチドについて、ヘテロクリティックペプチドは、刺激ペプチドに暴露された際に強いIFN-g産生を誘導したが、天然配列に対する交差反応性は見られなかった。
【0267】
【0268】
HLA結合性予測アルゴリズムを用いた、天然ペプチドRQRPHPGAL(p-125~p-117;配列番号34)およびGALRNPTAC(p-118~p-110;配列番号29)が、HLA-B7分子との関連において、T細胞応答を誘導するという発見に基づき、GALRNPTACペプチドについて、1つのヘテロクリティックペプチドをデザインし(配列番号31)、RQRPHPGALについて、2つのヘテロクリティックペプチドをデザインした(配列番号37および38)。結合性予測によれば、これらのペプチドも、A0201、A0301、B8、B1501、B37およびB5101等の他のHLAハプロタイプとの関連において、T細胞を刺激することができ得る(表4)。
【0269】
実施例8
ヒトHLA-B35、A0101、A0301、A1101クラスIおよびHLA-DRクラスII分子に結合するWT1腫瘍性タンパク質由来ペプチドの作製
ペプチドQFPNHSFKHEDPMGQ(p170~182)(配列番号39)は、HLA-DR.B1 0301および0401との関連においてT細胞応答を誘導する。長ペプチド内に組み込まれている短配列HSFKHEDPMは、B3501との関連においてT細胞応答を誘導する。HLA結合性予測アルゴリズムによる予測に基づいて、ヘテロクリティック-B35-1短ペプチドの伸長物である、1つのヘテロクリティック長ペプチドをデザインした。
【0270】
前記ペプチドの配列は、クラスIIペプチド:DR.B1-03/04-天然:QFPNHSFKHEDPM(配列番号42)、DR.B1-03/04-ヘテロクリティック:QFPNHSFKHEDPY(配列番号43;クラスIペプチド:1.天然:HSFKHEDPM(配列番号40)、2.ヘテロクリティック-01/03-1:HSFKHEDPY(A0101およびA0301に対する)(配列番号41)、および3.ヘテロクリティック-03/11-1 HSFKHEDPK(A0301およびA1101に対する)(配列番号42)である。HLA-B3501ハプロタイプに対するヘテロクリティックペプチドはコンピュータで試験した(表5)。
【0271】
【0272】
実施例9
ヒトHLA-A1、A3、A11クラスIおよびHLA-DR.B1-0401クラスII分子に結合するWT1腫瘍性タンパク質由来ペプチドの作製
ペプチドKRPFMCAYPGCNK(320~332)(配列番号44)は、HLA-DR.B1 0401との関連においてT細胞応答を誘導することが示された。長ペプチド内に組み込まれている短配列FMCAYPGCN(配列番号45)は、B35、B7およびA0101との関連においてT細胞応答を誘導する(表6)。予測アルゴリズムを用いて、複数のHLAハプロタイプに対する前記ペプチドの結合性スコアを調べた。ヘテロクリティック-1短ペプチドの伸長物である、1つのヘテロクリティック長ペプチドをデザインした。HLA-A0101、0301および1101により良好に結合する2つの短ヘテロクリティックペプチドをデザインした。前記ペプチドの配列は、クラスIIペプチド:DR.B1-04天然:KRPFMCAYPGCNK(配列番号44)、DR.B1-04ヘテロクリティック:KRPFMCAYPGCYK(配列番号46);クラスIペプチド:1.天然:FMCAYPGCN(配列番号45)、2.DR.B1-04-ヘテロクリティック-1短:FMCAYPGCY(A0101に対する)(配列番号47)、3.DR.B1-04-ヘテロクリティック-2-短:FMCAYPGCK(A0301およびA1101に対する)(配列番号48)である。KRPFMCAYPGCYK(配列番号46)は、DR.B1-04-ヘテロクリティック1短、FMCAYPGCN(配列番号45)の伸長物であり、配列の末端CNがCYになっている。
【0273】
【0274】
実施例10
さらなる交差反応性研究
ELISPOTアッセイを、天然配列(配列番号5)との比較において、ヘテロクリティック24-1(配列番号6)およびヘテロクリティック24-2(配列番号7)A24ペプチドについて、5回刺激後のドナーSAを用いて行った。
図7に示すように、ヘテロクリティックペプチドは交差反応を起こす。
【配列表】