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特許7097950分子ふるいSSZ-113、その合成および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】分子ふるいSSZ-113、その合成および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/06 20060101AFI20220701BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20220701BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C01B39/06
C01B39/48
B01J29/70 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020505909
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2018059086
(87)【国際公開番号】W WO2019162745
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】62/632,694
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502939(JP,A)
【文献】特表2012-512800(JP,A)
【文献】特表2010-534185(JP,A)
【文献】特表2012-523367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00
B01J 21/00 - 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
か焼された形で、以下の表に示すピークを含むX線回折パターンを有し、アルミニウム、ゲルマニウムおよびケイ素を含有するか焼された分子ふるい。
【表1】
【請求項2】
以下のモル関係を含む組成を有する、請求項1に記載の分子ふるい。
Al:(n)(SiO+GeO
(式中、nは少なくとも20である。)
【請求項3】
以下のモル関係を含む組成を有する、請求項1に記載の分子ふるい。
Al:(n)(SiO+GeO
(式中、nは20~600の範囲である。)
【請求項4】
合成されたままの形態で、以下の表に示すピークを含むX線回折パターンを有し、アルミニウム、ゲルマニウムおよびケイ素を含有する分子ふるい。
【表2】
【請求項5】
以下のモル関係を含む組成を有する、請求項4に記載の分子ふるい。
【表3】
【請求項6】
以下のモル関係を含む組成を有する、請求項4に記載の分子ふるい。
【表4】
【請求項7】
請求項4に記載の分子ふるいを合成する方法であって、
(a)
(1)酸化ゲルマニウムの供給源;
(2)酸化ケイ素の供給源;
(3)酸化アルミニウムの供給源;
(4)1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオン(Q)の供給源;
(5)フッ化物イオンの供給源;および
(6)水、
を含む反応混合物を提供すること、ならびに
(b)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、
を含み、前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成を有する、方法。
【表5】
【請求項8】
前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成を有する、請求項7に記載の方法。
【表6】
【請求項9】
前記酸化ケイ素および酸化アルミニウムの供給源がゼオライトYを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化させる方法であって、前記供給原料を有機化合物転化条件で、活性形態の、請求項1に記載の分子ふるいを含む触媒と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年2月20日に提出した米国仮出願第62/632,694号に対する優先権およびその利益を主張する。
【0002】
本開示は、SSZ-113と呼ばれる新規な合成結晶性分子ふるい、その合成、ならびに収着および触媒プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゼオライト材料は、収着剤としての有用性を有し、様々な種類の有機化合物転化(conversion)反応に対して触媒特性を有することが知られている。特定のゼオライト材料は、X線回折により測定される明確な結晶構造を有する規則正しい多孔質結晶材料であり、その中には、多数のより小さいキャビティがあり、これは、多数のさらにより小さいチャネルまたは細孔によって相互接続され得る。これらのキャビティと細孔は、特定のゼオライト材料内でサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の収着分子を受け入れるが、一方で、より大きい寸法の分子を排除するような寸法であるため、これらの材料は「分子ふるい」として知られるようになり、これらの特性を活用する種々の方法で利用されている。
【0004】
現在、国際ゼオライト協会によって認識されている200を超える既知のゼオライト骨格構造がある。多くの有機化合物転化および収着プロセスの性能を改善するために、既知の材料のものとは異なる特性を有する新しい構造が求められている。各構造には固有の細孔、チャネルおよびケージの寸法があり、これによって、上記のような特定の特性がもたらされる。
【0005】
本開示によれば、今では、SSZ-113と呼ばれる新しい分子ふるい構造が、構造規定剤(structure directing agent)として1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオンを使用することによって合成されるようになった。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、合成されたままの形態で、表1に示されるピークを含むX線回折パターンを有する分子ふるいが提供される。
【0007】
合成されたままでかつ無水の形態では、分子ふるいは、以下のモル関係を含む化学組成を有し得る。
【表1】
【0008】
別の態様では、か焼された形態で、表2に示されるピークを含むX線回折パターンを有する分子ふるいが提供される。
【0009】
か焼された形態では、分子ふるいは、以下のモル関係を含む化学組成を有し得る:
Al:(n)(SiO+GeO
式中、nは少なくとも20である。
【0010】
さらなる態様では、本明細書に記載の分子ふるいを合成する方法であって、(a)(1)酸化ゲルマニウムの供給源;(2)酸化ケイ素の供給源;(3)酸化アルミニウムの供給源;(4)1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオンの供給源;(5)フッ化物イオンの供給源;および(6)水、を含む反応混合物を提供すること;ならびに(b)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、を含む方法を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、有機化合物を含む供給原料を、転化生成物に転化させる方法であって、前記供給原料を、有機化合物転化条件にて、本明細書に記載の活性形態の分子ふるいを含む触媒と接触させることを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例1の合成されたままの分子ふるいの粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0013】
図2図2(a)および2(b)は、異なる倍率での例1の合成されたままの分子ふるいの走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0014】
図3図3は、例4のか焼された分子ふるいの粉末XRDパターンを示す。
【0015】
詳細な説明
序論
「アルミノゲルマノシリカート」の用語は、結晶性微細孔質固体であって、その骨格内にアルミニウム、ゲルマニウムおよびケイ素の酸化物を含む結晶性微細孔質固体を指す。場合によっては、これらの酸化物の1種以上を他の酸化物で置換し得る。
【0016】
「合成されたままの」の用語は、本明細書では、結晶化後で、有機構造規定剤を除去する前の形態の分子ふるいを指すために使用される。
【0017】
「無水の」の用語は、本明細書では、物理的に吸着された水と化学的に吸着された水の両方を実質的に含まない分子ふるいを指すために使用される。
【0018】
本明細書で使用する場合の周期表の族の番号付け体系は、Chem.Eng.News1985,63(5),26~27に開示されている。
【0019】
「制約指数」(Constraint Index:CI)は、分子ふるいが、様々なサイズの分子にその内部構造への制御されたアクセスを提供する程度を示す便利な尺度である。制約指数は、本明細書では、S.I.Zonesら.(Micropor.Mesopor.Mater.2000、35~36、31~46)によって記載された方法に従って測定される。該試験は、8、10および12員環以上(MR、環を構成する四面体または酸素原子の数)の細孔で構成される細孔系同士を区別できるように設計されている。CI値は、分子ふるいの細孔サイズが大きくなると減少する。例えば、ゼオライトは、多くの場合、CI値に基づいて次のように分類される:大細孔(12-MR)または超大細孔(14-MR以上)のゼオライトの場合はCI<1;中細孔(10-MR)のゼオライトの場合は1≦CI≦12;小細孔(8-MR)のゼオライトの場合はCI>12である。大細孔のゼオライトは一般的に、少なくとも7Åの細孔サイズを有する。中細孔サイズのゼオライトは一般的に、約5Å~7Å未満の細孔サイズを有する。小細孔サイズのゼオライトは、約3Å~5Å未満の細孔サイズを有する。
【0020】
反応混合物
一般に、分子ふるいSSZ-113は、(a)(1)酸化ゲルマニウムの供給源;(2)酸化ケイ素の供給源;(3)酸化アルミニウムの供給源;(4)1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオンの供給源(Q);(5)フッ化物イオンの供給源;および(6)水、を含む反応混合物を提供すること;ならびに(b)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、によって合成することができる。
【0021】
反応混合物は、モル比換算で、以下の範囲内の組成を有し得る。
【表2】
【0022】
酸化ゲルマニウムの適切な供給源には、酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムアルコキシド(例えば、ゲルマニウムエトキシド)、水酸化ゲルマニウム、およびカルボン酸ゲルマニウムが含まれる。
【0023】
酸化ケイ素の適切な供給源には、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩およびテトラアルキルオルトケイ酸塩が含まれる。
【0024】
Si:Geのモル比は、少なくとも1:1(例えば、2:1~500:1の範囲またはさらには5:1~100:1の範囲)であり得る。
【0025】
酸化アルミニウムの適切な供給源には、水和アルミナおよび水溶性アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)が含まれる。
【0026】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを組み合わせた供給源を、追加的または代替的に使用することができ、これには、アルミノシリカートゼオライト(例えば、ゼオライトY)およびクレイまたは処理されたクレイ(例えば、メタカオリン)が含まれ得る。
【0027】
好都合には、Qは、以下の構造(1)によって表される1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオンを含む。
【化1】
【0028】
上記のジ第四級アンモニウム化合物は、当技術分野で知られている方法により、1,3-ジハロプロパン(例えば、1,3-ジブロモプロパンまたは1,3-ジヨードプロパン)と1,2-ジメチルイミダゾールとの反応により容易に合成することができる(参照:例えば、SI Zonesら、J.Mater.Chem.2005、15、4215~4223)。
【0029】
Qの適切な供給源は、ジ第四級アンモニウム化合物の水酸化物および/または他の塩である。
【0030】
フッ化物イオンの適切な供給源には、フッ化水素、フッ化アンモニウムおよび二フッ化水素アンモニウムが含まれる。
【0031】
反応混合物は、反応混合物の0.01から10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で、先の合成からのSSZ-113などの分子ふるい材料の種結晶を含むことができる。種結晶添加(seeding)は、完全な結晶化が起こるのに必要な時間を短縮するのに有利である。加えて、種結晶添加により、核生成および/またはSSZ-113の形成を、望ましくない相よりも促進させることによって、得られる生成物の純度を高めることができる。
【0032】
本明細書に記載の各実施形態では、分子ふるい反応混合物は、複数の供給源から供給することができる。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源から供給することもできる。
【0033】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のいずれでも調製することができる。本明細書に記載の分子ふるいの結晶サイズ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって変化し得る。
【0034】
結晶化及び合成後の処理
上記反応混合物からの分子ふるいの結晶化は、静止、回転又は攪拌条件下のいずれでも、適切な反応容器、例えば、ポリプロピレンジャー又はテフロン内張り又はステンレス鋼製オートクレーブの中で、125℃から200℃の温度で、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間、例えば、2から20日間、行うことができる。結晶化は通常、自原性(autogenous)の圧力下で閉鎖系にて行われる。
【0035】
分子ふるいの結晶が形成された後、固体生成物を、反応混合物から遠心分離又は濾過等の標準的な機械的分離技術によって回収する。結晶を水洗し、次に、乾燥させて、合成されたままの分子ふるいの結晶を得る。乾燥段階は、典型的に、200℃未満の温度で行われる。
【0036】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性分子ふるい生成物は、その細孔構造内に、合成に使用した有機構造規定剤の少なくとも一部を含有する。
【0037】
合成されたままの分子ふるい中のカチオンは、他のカチオンとのイオン交換によって、当技術分野で周知の技術に従って、所望の程度にまで置換し得る。好ましい置換するカチオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウム)イオン及びそれらの混合物が含まれる。特に好ましい置換するカチオンは、触媒活性を特定の有機転化反応に適合させるものである。これらには、水素、希土類金属、および元素周期表の2から15族の金属が含まれる。
【0038】
本明細書に記載の分子ふるいは、後続する処理に供して、その合成に使用した構造規定剤(Q)の一部またはすべてを除去し得る。これは、合成されたままの材料を、少なくとも370℃の温度で、少なくとも1分間でかつ24時間以内の間、加熱し得る熱処理によって都合よく行なうことができる。熱処理は、925℃までの温度で行うことができる。熱処理には、大気圧以下及び/又は大気圧以上を使用することができるが、大気圧が典型的には便宜上の理由で望ましい場合がある。追加的に又は代替的に、有機構造規定剤はオゾンを用いる処理によって除去することができる(参照:例えば、A.N.Parikhら、Micropor.Mesopor.Mater.2004、76、17-22)。特に金属、水素およびアンモニウムの形態の非有機の生成物は、特定の有機(例えば、炭化水素)転化反応の触媒に特に有用である。本開示では、その水素形態の非有機の分子ふるいは、金属機能が存在するかまたは存在しないかにかかわらず、「活性形態」の分子ふるいと呼ばれる。
【0039】
分子ふるいの特徴付け
合成されたままでかつ無水の形態では、分子ふるいSSZ-113は、以下のモル関係を含む化学組成を有し得る。
【表3】
【0040】
合成されたままの形態の本分子ふるいは、該合成されたままの形態のものを調製するのに使用した反応混合物中の反応物のモル比とは異なるモル比を有し得ることに留意すべきである。この結果は、反応混合物中の100%の反応物が、(該反応混合物から)形成された結晶中に、完全には取り込まれなかったために起こり得る。
【0041】
か焼された形態では、分子ふるいSSZ-113は、以下のモル関係を含む化学組成を有し得る:
Al:(n)(SiO+GeO
式中、nは少なくとも20(例えば、20~600)である。
【0042】
合成されたままの形態および焼成された形態のSSZ-113は、特徴的な粉末X線回折パターンを有し、合成されたままの形態の分子ふるいの場合、少なくとも以下の表1に示された線が含まれ、か焼された形態の分子ふるいの場合、少なくとも以下の表2に示されたピークが含まれる。
【表4】

【表5】
【0043】
本明細書に提示した粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集した。放射線はCuKα線であった。ピーク高さと位置を、θがブラッグ角のとき2θの関数として、ピークの相対強度から読取り(バックグラウンドについて調整し)、そしてd、つまり記録された線に対応する面間隔を算出することができる。
【0044】
回折パターンの小さい変動は、格子定数の変化によってサンプルの骨格種のモル比が変動することから生じ得る。加えて、不規則な材料および/または十分に小さい結晶は、ピークの形や強度に影響して、ピークはかなり拡がるであろう。また、回折パターンの小さい変動は、調製に使用した有機化合物の変動からも生じ得る。か焼によってもまた、XRDパターンに小さいシフトが生じ得る。これらの小さい変動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は不変のまま維持される。
【0045】
収着と触媒作用
分子ふるいSSZ-113は、収着剤として、または現在の商業的/産業的に重要な多くの、多種多様な有機化合物転化プロセスを触媒する触媒として使用することができる。単独で、または他の結晶性触媒を含む1種以上の他の触媒活性物質との組み合わせで、SSZ-113によって効果的に触媒される化学転化プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものが含まれる。SSZ-113により触媒され得る有機転化プロセスの例には、例えば、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、および異性化が含まれ得る。
【0046】
多くの触媒の場合のように、SSZ-113を、有機転化プロセスで使用する温度及び他の条件に耐性のある別の材料と混合することが望ましい場合がある。そのような材料には、活性及び不活性材料、合成または天然のゼオライト、ならびに無機材料、例えば、クレイ、シリカ、および/またはアルミナなどの金属酸化物を含めることができる。後者は、天然に存在するもの、またはゼラチン状沈殿物もしくはゲルの形態のもの、例えば、シリカ及び他の金属酸化物の混合物のいずれでもよい。SSZ-113と組み合わせて、活性を有する材料(すなわち、それと組み合わせるか、新しい材料の合成中に存在する)を使用することにより、特定の有機転化プロセスでの触媒の転化率および/または選択性を変化させる傾向があり得る。不活性な材料の場合は、所定のプロセスでの転化量を制御する希釈剤として適切に機能させることができ、これにより、反応速度を制御する他の手段を使用することなく、経済的かつ従来的な方法で生成物を得ることができる。これらの材料は、天然のクレイ(例えば、ベントナイトおよびカオリン)と混合して、商業的な操作条件下での触媒の圧壊強度を改善することができる。これらの材料(すなわち、クレイ、酸化物など)は、触媒の結合剤として機能し得る。商業的な用途では、触媒が粉末状材料(微粉)に破壊されるのを防止することが望ましい場合があるので、良好な圧壊強度を有する触媒を提供することが望ましい場合がある。これらのクレイおよび/または酸化物結合剤は、通常、触媒の圧壊強度を改善する目的でのみ使用されてきた。
【0047】
SSZ-113と複合化することができる天然のクレイは、モンモリロナイト及びカオリンファミリーを含み、これらのファミリーは、サブベントナイト、ならびに一般的にDixie,McNamee,GeorgiaおよびFloridaクレイとして知られるカオリンまたは主なミネラル成分がハロイサイト(halloysite)、カオリナイト、ディッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)、またはアナウキサイト(anauxite)である他のものを含む。そのようなクレイは、最初に採掘されたままの未加工の状態で、または最初にか焼、酸処理、または化学修飾に供されたままの状態で使用することができる。SSZ-113と複合化するのに有用な結合剤は、追加的に又は代替的に、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物などの無機酸化物を含むことができる。
【0048】
前述の材料に加えて、又はこれと代替的に、SSZ-113は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリクス材料、ならびにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、およびシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と複合化することができる。
【0049】
SSZ-113と無機酸化物マトリクスとの相対的な割合は大幅に変化する場合があり、SSZ-113の含有量は、複合体の1から90重量%(例えば、2から80重量%)の範囲である。
なお、下記[1]から[12]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
か焼された形で、以下の表に示すピークを含むX線回折パターンを有する分子ふるい。
【表6】

[2]
以下のモル関係を含む組成を有する、[1]に記載の分子ふるい。
Al :(n)(SiO +GeO
(式中、nは少なくとも20である。)
[3]
以下のモル関係を含む組成を有する、[1]に記載の分子ふるい。
Al :(n)(SiO +GeO
(式中、nは20~600の範囲である。)
[4]
合成されたままの形態で、以下の表に示すピークを含むX線回折パターンを有する分子ふるい。
【表7】

[5]
以下のモル関係を含む組成を有する、[4]に記載の分子ふるい。
【表8】

[6]
以下のモル関係を含む組成を有する、[4]に記載の分子ふるい。
【表9】

[7]
[4]に記載の分子ふるいを合成する方法であって、
(a)
(1)酸化ゲルマニウムの供給源;
(2)酸化ケイ素の供給源;
(3)酸化アルミニウムの供給源;
(4)1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジカチオン(Q)の供給源;
(5)フッ化物イオンの供給源;および
(6)水、
を含む反応混合物を提供すること、ならびに
(b)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、
を含む、方法。
[8]
前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成を有する、[7]に記載の方法。
【表10】

[9]
前記反応混合物が、モル比換算で、以下の組成を有する、[7]に記載の方法。
【表11】

[10]
前記酸化ケイ素および酸化アルミニウムの供給源がゼオライトYを含む、[7]に記載の方法。
[11]
前記結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、[7]に記載の方法。
[12]
有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化させる方法であって、前記供給原料を有機化合物転化条件で、活性形態の、[1]に記載の分子ふるいを含む触媒と接触させることを含む、方法。
【実施例
【0050】
以下の例示的な例は、非限定的であることを意図している。
【0051】
例1
SSZ-113の合成
テフロンライナーに、7.5ミリモルの1,3-ビス(2,3-ジメチル-1H-イミダゾリウム)プロパンジヒドロキシド溶液(水酸化物含有量に基づいて)を装入した。次に、0.178gの酸化ゲルマニウムを添加し、続いて、0.813gのCBV-780 Y-ゼオライト(Zeolyst International、SiO/Alモル比=80)を添加した。次に、反応混合物中の水対T原子(T-atoms)(すなわち、Si+Ge+Al)のモル比が約5であるような量で、水を蒸発させるのに十分な時間、ライナーをフード中に置いた。その後、7.5ミリモルの48%HF溶液を注意深く反応混合物に滴下した。テフロンライナーに蓋をして、Parrオートクレーブ中で密封した。オートクレーブを回転スピットに取り付け(43rpm)、160℃のオーブン中で6日間加熱した。固体生成物を、遠心分離によって反応混合物から回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0052】
合成されたままの生成物の粉末XRDから、図1に示されるパターンが得られ、生成物がSSZ-113と呼ばれる純粋な形態の新しい分子ふるい相であることが示された。
【0053】
合成されたままの生成物のSEM画像は、図2(a)および2(b)に、異なる倍率で示され、結晶の一様な視野を示している。
【0054】
例2
CBV-780 Y-ゼオライトの代わりに390HUA Y-ゼオライト(Tosoh USA、Inc.;SiO/Alモル比=500)を使用したことを除いて、例1を繰り返した。
【0055】
粉末XRDにより、生成物が純粋なSSZ-113分子ふるいであることを確認した。
【0056】
例3
SSZ-113のか焼
例1の合成されたままの分子ふるいを、1℃/分の速度で、550℃に加熱した空気流下で、マッフル炉内でか焼し、550℃で5時間保持し、冷却して、その後、粉末XRDにより分析した。
【0057】
か焼された生成物の粉末XRDから、図3に示されるパターンが得られ、該材料が、構造規定剤を除去するためにか焼した後に、安定であることが示された。
【0058】
例4
微細孔容積の分析
例3のか焼された分子ふるい材料を、10mL(分子ふるい1g当たり)の1N硝酸アンモニウム溶液で、95℃にて2時間処理した。混合物を冷却し、溶媒をデカントで除去し、同じプロセスを繰り返した。
【0059】
乾燥後、生成物(NH-SSZ-113)を、吸着質であるNを使用して、B.E.T.方法で微細孔容積分析に供した。分子ふるいは、0.15cm/gの微細孔容積を有していた。分子ふるいの全細孔容積は0.25cm/gであった。
【0060】
例5
制約指数の測定
の形態のSSZ-113を3kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュに顆粒化した。顆粒化した材料のサンプル(0.6g)を空気中にて550°Cで4時間、か焼し、デシケーター中で冷却して、確実に乾燥させた。次に、0.5gの材料を、分子ふるい床の両側にアランダムを有する3/8インチのステンレス鋼管に詰めた。Lindburg炉を使用して、該反応管を加熱した。ヘリウムを反応管に10mL/分で、かつ大気圧で導入した。反応器を約800°Fに加熱し、n-ヘキサンと3-メチルペンタンを50/50の供給率で8μL/分の速度で反応器に導入した。該供給物をBrownleeポンプによって配送した。GCへの直接サンプリングは、10分間の供給物導入の後に開始した。制約指数(CI)値は、当技術分野で知られている方法を使用してGCデータから計算し、0.5であると決定した。全供給物の転化率は6.0%であった。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3