(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】車両装置、及び、車両装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 9/00 20060101AFI20220701BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220701BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220701BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220701BHJP
G05F 1/56 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H02J9/00 120
B60R16/02 660L
H02J9/06 110
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02J7/00 302D
G05F1/56 310G
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2020528071
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2018081134
(87)【国際公開番号】W WO2019101585
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】102017220805.8
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クネードラー
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140888(JP,A)
【文献】特開2010-023821(JP,A)
【文献】特開2016-103935(JP,A)
【文献】特開2004-037310(JP,A)
【文献】特開2007-325381(JP,A)
【文献】特開平11-108106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
G05F 1/445
G05F 1/56
G05F 1/613
G05F 1/618
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの計算ロジック(10)と、
少なくとも1つの電気的及び/又は電子的な機能ユニット(12)と、
前記計算ロジック(10)及び前記機能ユニット(12)と電気的な相互作用関係にある少なくとも1つのバッファエネルギ貯蔵器(14)と、
を備えている車両装置であって、
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)は、通常の動作状態において、前記機能ユニット(12)へのエネルギ供給のために、車載電源網(16)の車載電源網電圧を少なくとも部分的にバッファするために及び/又は安定化させるために設けられている、
車両装置において、
少なくとも1つの監視ユニット(18)が設けられており、
前記監視ユニット(18)は、
前記車載電源網(16)の車載電源網電圧を能動的に監視し、前記車載電源網電圧の電圧推移及び/又は現在の電圧値に基づいて、障害動作状態を特定するように構成されており、かつ、
前記車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている少なくとも1つの障害動作状態、及び/又は、前記車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている少なくとも1つの障害動作状態において、
前記機能ユニット(12)のエネルギ消費を少なくとも部分的に制限し、
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)による前記計算ロジック(10)への少なくとも一時的なエネルギ供給を可能にする、
ために設けられており、
さらに、少なくとも1つのスイッチングユニット(22)が設けられており、
前記スイッチングユニット(22)は、前記障害動作状態において、前記監視ユニット(18)の制御信号に応じて前記車載電源網(16)を、前記バッファエネルギ貯蔵器(14)、前記機能ユニット(12)及び前記計算ロジック(10)から切り離すために設けられている、
ことを特徴とする、車両装置。
【請求項2】
前記機能ユニット(12)及び/又は前記計算ロジック(10)は、前記バッファエネルギ貯蔵器(14)に直接的に電気的に接続されている、
請求項1に記載の車両装置。
【請求項3】
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)は、前記障害動作状態において少なくとも15msの間、前記計算ロジック(10)へのエネルギ供給を維持するために設けられている、
請求項1又は2に記載の車両装置。
【請求項4】
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)は、コンデンサとして構成されており、少なくとも750μFの静電容量を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項5】
前記障害動作状態は、前記車載電源網電圧の短時間の電圧降下に相当し、前記電圧限界値は、最大9Vである、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項6】
前記監視ユニット(18)は、前記障害動作状態において、前記機能ユニット(12)を少なくとも部分的にスイッチオフするために、及び/又は、前記機能ユニット(12)を省エネルギのアイドル状態に移行させるために設けられている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項7】
前記監視ユニット(18)は、前記障害動作状態を特定するために、車両制御部(20)に接続されており、前記障害動作状態を、前記車両制御部(20)の障害信号に基づいて特定するために設けられている、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項8】
前記スイッチングユニット(22)は、極性反転保護回路として構成されている、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項9】
前記機能ユニット(12)は、電気モータとして構成されており、電気的なステアリングアシストを生成及び/又は提供するために設けられている、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の車両装置。
【請求項10】
少なくとも1つの車載電源網(16)と、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両装置とを備えている車両(24)。
【請求項11】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の車両装置を動作させるための方法であって、
当該車両装置は、
少なくとも1つの計算ロジック(10)と、
少なくとも1つの電気的及び/又は電子的な機能ユニット(12)と、
前記計算ロジック(10)及び前記機能ユニット(12)と電気的な相互作用関係にある少なくとも1つのバッファエネルギ貯蔵器(14)と、
を備えており、
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)は、通常の動作状態において、前記機能ユニット(12)へのエネルギ供給のために、車載電源網(16)の車載電源網電圧を少なくとも部分的にバッファするために及び/又は安定化させるために設けられている、
方法において、
前記車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている少なくとも1つの障害動作状態、及び/又は、前記車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている少なくとも1つの障害動作状態において、
前記機能ユニット(12)のエネルギ消費を少なくとも部分的に制限し、
前記バッファエネルギ貯蔵器(14)によって前記計算ロジック(10)に少なくとも一時的に電気エネルギを供給する、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の車両装置と、請求項13の上位概念に記載の車両装置を動作させるための方法とを起点とする。本発明はさらに、請求項12に記載の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、例えば電気モータとして構成されたアクチュエータと、計算ロジックと、アクチュエータへのエネルギ供給のために、車載電源網の車載電源網電圧をバッファするために及び/又は安定化させるために設けられているバッファコンデンサとを有する車両装置が公知である。計算ロジックは、例えばバス通信のために及び/又はメモリエラーを記録するために使用される。さらに、車両装置は、上記のバッファコンデンサと比較してより小さく寸法設定された第2のバッファコンデンサを含むことがあり、この第2のバッファコンデンサは、計算ロジックに対応付けられており、例えばスタータパルス及び/又は短絡などによって車載電源網の短時間の電圧降下が発生した場合に、計算ロジックを可能な限り長時間、アクティブな状態に維持するために設けられている。特に、車載電源網の電圧降下が強力である場合、及び/又は、比較的長時間にわたる場合には、第2のバッファコンデンサの電圧が、電圧降下を完全にやり過ごすためにもはや十分ではなくなる可能性があり、これによって、通常、計算ロジックの意図しない及び/又は望ましくないリセット又は再起動がトリガされることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に、エネルギ供給に関して改善された特性を有する車両装置を提供することである。上記の課題は、請求項1及び13に記載の特徴的構成によって解決され、その一方で、本発明の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項から見て取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本発明は、少なくとも1つの計算ロジックと、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的な機能ユニットと、計算ロジック及び機能ユニットと電気的な相互作用関係にある少なくとも1つのバッファエネルギ貯蔵器とを備えている車両装置であって、バッファエネルギ貯蔵器は、通常の動作状態において、機能ユニットへのエネルギ供給のために、車載電源網の車載電源網電圧を少なくとも部分的にバッファするために及び/又は安定化させるために設けられている、車両装置を起点とする。
【0005】
当該車両装置が、少なくとも1つの監視ユニットを含み、監視ユニットが、例えばスタータパルス及び/又は車載電源網の短絡によって引き起こされた、車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている少なくとも1つの障害動作状態、及び/又は、車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている少なくとも1つの障害動作状態において、機能ユニットのエネルギ消費を少なくとも部分的に制限し、特に車載電源網に加えて及び/又は車載電源網に代えて、バッファエネルギ貯蔵器による計算ロジックへの少なくとも一時的なエネルギ供給を可能にするために設けられている、ようにすることが提案される。好ましくは、障害動作状態は、車載電源網電圧の純粋な車載電源網リップルとは異なるものである。上記の実施形態によって、特に計算ロジックへのエネルギ供給を改善することができ、有利には、車載電源網の強力な電圧降下が発生した場合でも、計算ロジックへのエネルギ供給が、電圧降下を完全にやり過ごすために十分であることを保証することができ、これによって、有利には、計算ロジックの意図しない及び/又は望ましくないリセット又は再起動を阻止することができる。さらに、有利には、車両装置の柔軟性を高めることができ、及び/又は、効率、特に出力効率、構造スペース効率、コンポーネント効率及び/又はコスト効率を改善することができる。
【0006】
この関連において「車両装置」とは、車両の、有利には自動車の少なくとも一部、特にサブアセンブリであると理解されるべきである。特に、車両は、車載電源網を含むこともできる。さらに、車両は、有利にはステアリングシステムを含むことができ、このステアリングシステムは、特に車両の進行方向に対して影響を与えるために設けられている。さらに、車両装置は、さらなるコンポーネント及び/又はアセンブリを含むことができ、例えば、少なくとも1つのスイッチングユニットであって、回路技術的に、特に車載電源網の接続のための車両装置の車載電源網端子と、バッファエネルギ貯蔵器との間に配置され得る、少なくとも1つのスイッチングユニットを含むこと、及び/又は、少なくとも1つの結合回路であって、回路技術的に、バッファエネルギ貯蔵器と機能ユニット及び/又は計算ロジックとの間に配置され得る、少なくとも1つの結合回路を含むこと、及び/又は、少なくとも1つの制御電子機器であって、機能ユニット、計算ロジック及び/又は監視ユニットの動作を制御するために使用される、少なくとも1つの制御電子機器を含むこと、などが可能である。「設けられている」とは、特に具体的には、プログラミングされていること、設計されていること、及び/又は、装備されていることであると理解されるべきである。あるオブジェクトがある特定の機能のために設けられているとは、特に、このオブジェクトが、少なくとも1つの使用状態及び/又は動作状態においてこの特定の機能を実現及び/又は実施することであると理解されるべきである。
【0007】
この関連において「計算ロジック」とは、特に、情報入力部、情報処理部及び情報出力部を有する電気的及び/又は電子的なユニットであると理解されるべきである。有利には、計算ロジックはさらに、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのメモリ、少なくとも1つの入力及び/又は出力手段、少なくとも1つのオペレーティングプログラム、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの計算ルーチンを有する。有利には、計算ロジックには、通常の動作状態では、車載電源網によって電気エネルギが供給される。計算ロジックは、例えば、バス通信のために、メモリエラーを記録するために、及び/又は、車両の少なくとも1つの、有利には安全性に関連した車両コンポーネントの動作を制御するために、設けられ得る。有利には、計算ロジックはさらに、車両及び/又はステアリングシステムの制御装置に組み込まれている。有利には、計算ロジックをさらに、監視ユニットに組み込むこともできる。
【0008】
さらに、「機能ユニット」とは、特に、少なくとも1つの動作状態において、特に車両に、有利にはステアリングシステムに接続された少なくとも1つの機能を実行するために設けられているユニットであると理解されるべきである。機能は、任意の機能であってよく、例えば、照明機能、換気機能、空調機能、検出機能、開ループ制御及び/又は閉ループ制御機能、ステアリングトルク機能及び/又はステアリング機能、特にステアリング角度スーパーインポーズ機能及び/又はステアリングアシスト機能などであってよい。好ましくは、機能ユニットは、アクチュエータユニットとして、特に電気機械として、有利には電気モータとして構成されている。特に有利には、機能ユニットはさらに、ステアリングシステムの一部として構成されている。さらに、「バッファエネルギ貯蔵器」とは、特に、車載電源網によって供給された電気エネルギを少なくとも一時的に貯蔵及び/又はバッファするために設けられており、特に車載電源網と電気的な相互作用関係にあるエネルギ貯蔵器であると理解されるべきである。特に、バッファエネルギ貯蔵器は、少なくとも通常の動作状態では、機能ユニットに対応付けられている。特に、車両装置は、複数の、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ及び/又は少なくとも4つのバッファエネルギ貯蔵器を含むこともでき、これらのバッファエネルギ貯蔵器は、有利には互いに並列に接続されており、特に、通常の動作状態では、機能ユニットへのエネルギ供給のために、及び/又は、障害動作状態では、計算ロジックへの少なくとも一時的なエネルギ供給のために、協働するために設けられている。
【0009】
さらに、「監視ユニット」とは、特に、少なくとも部分的に電気的及び/又は電子的に構成されたユニットであると理解されるべきであり、このユニットは、特に、障害動作状態を特定するために、車載電源網の車載電源網電圧、機能ユニットのエネルギ消費、計算ロジックのエネルギ供給、及び/又は、障害動作状態に相関する障害信号を監視し、特に、障害動作状態において、機能ユニット、バッファエネルギ貯蔵器、スイッチングユニット、制御電子機器、及び/又は、結合回路を制御することによって、障害動作状態において、バッファエネルギ貯蔵器に貯蔵されているエネルギの少なくとも一部、有利には少なくとも大部分が、計算ロジックへの少なくとも一時的なエネルギ供給のために計算ロジックに伝送されるようにするために設けられている。「少なくとも大部分」という表現は、特に少なくとも5%、有利には少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも85%、特に有利には少なくとも95%であると理解されるべきである。
【0010】
本発明の有利な実施形態によれば、機能ユニットと計算ロジックとは、互いに並列に接続されており、これによって、特に、有利にも簡単な制御アルゴリズムを提供することができる。
【0011】
機能ユニット及び/又は計算ロジックは、例えば結合回路によって、特に任意的選択肢である結合回路によってバッファエネルギ貯蔵器に接続され得る。しかしながら、有利には、機能ユニット及び/又は計算ロジックが、特にスイッチング要素が間に挿入されることなくバッファエネルギ貯蔵器に直接的に電気的に接続されている、ようにすることが提案され、これによって、特に、コストを削減することができ、及び/又は、制御を簡単にすることができる。特に有利には、機能ユニット及び計算ロジックは、バッファエネルギ貯蔵器に直接的に電気的に接続されている。
【0012】
さらに、バッファエネルギ貯蔵器が、障害動作状態において、少なくとも15msの間、好ましくは少なくとも20msの間、好ましくは少なくとも25msの間、特に好ましくは少なくとも50msの間、計算ロジックへのエネルギ供給を維持するために設けられている、ようにすることが提案される。特に、バッファエネルギ貯蔵器は、障害動作状態において、少なくとも15msの間、好ましくは少なくとも20msの間、好ましくは少なくとも25msの間、特に好ましくは少なくとも50msの間、計算ロジックへのエネルギ供給を維持することができるように、寸法設定されている。これによって、有利には、車載電源網において発生する全ての電圧降下の少なくとも大部分をやり過ごすことができる。
【0013】
特に、バッファエネルギ貯蔵器が、コンデンサとして構成されており、少なくとも750μF、好ましくは少なくとも1000μFの静電容量を有する場合には、特に簡単な及び/又は低コストのバリエーションを提供することができる。
【0014】
好ましくは、障害動作状態は、車載電源網電圧の短時間の電圧降下に相当し、電圧限界値は、最大9V、好ましくは最大6V、特に好ましくは3Vあり、及び/又は、勾配限界値は、絶対値的に、少なくとも1V/ms、好ましくは少なくとも2V/ms、好ましくは少なくとも3V/ms、特に有利には少なくとも4V/msである。この関連において「短時間」という表現は、特に、少なくとも1ms、好ましくは少なくとも5ms、特に好ましくは少なくとも10msの期間、及び/又は、最大50ms、好ましくは最大25ms、特に好ましくは最大15msの期間であると理解されるべきである。これによって、好ましくは、短時間の電圧降下の間でも、計算ロジックへのエネルギ供給を保証することができる。
【0015】
監視ユニットはさらに、障害動作状態において、例えば、特に任意選択の結合回路を制御することによって機能ユニットを切り離すために及び/又は機能ユニットをブリッジするために設けられ得る。しかしながら、特に好ましくは、監視ユニットが、障害動作状態において、機能ユニットのエネルギ消費が少なくとも35%、好ましくは少なくとも55%、有利には少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも95%だけ低減されるように、機能ユニットを少なくとも部分的にスイッチオフするために、及び/又は、機能ユニットを特に省エネルギのアイドル状態に移行させるために、設けられている、ようにすることが提案される。これによって、特に、効率、特に出力効率、コンポーネント効率及び/又は構造スペース効率をさらに改善することができる。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、監視ユニットが、障害動作状態を特定するために、車載電源網の車載電源網電圧、特に車載電源網電圧の電圧推移及び/又は現在の電圧値を特に直接的に監視するために設けられている、ようにすることが提案される。この場合には有利には、監視ユニットは、電圧検出ユニットとして構成されている。これによって、特に、車載電源網電圧を、有利には直接的に監視することが可能となる。
【0017】
これに代えて又はこれに加えて、監視ユニットが、障害動作状態を特定するために、例えば機関制御部のような車両制御部に接続されており、障害動作状態を、車両制御部の障害信号に基づいて、特に上述した障害信号に基づいて特定するために設けられている、ようにすることが提案されている。特に、車両及び/又は車両装置は、車両制御部を含むこともできる。特に、車両装置は、障害動作状態において、障害信号を供給し、監視ユニットに伝送するために設けられている。これによって、特に、車載電源網電圧を、制御技術的に特に簡単に及び/又は低コストに監視することが可能となる。
【0018】
さらに、当該車両装置が、少なくとも1つのスイッチングユニット、特に上述したスイッチングユニットを含み、スイッチングユニットが、障害動作状態において、監視ユニットの制御信号に応じて車載電源網を少なくともバッファエネルギ貯蔵器と、好ましくは機能ユニット及び/又は計算ロジックとから切り離すために設けられている、ようにすることが提案される。これによって、特に、計算ロジックへの有利なエネルギ供給を保証することができ、特に、バッファエネルギ貯蔵器に貯蔵されているエネルギが車載電源網へと逆流することを阻止することができる。
【0019】
好ましくは、さらに、スイッチングユニットが、極性反転保護回路として構成されており、特に、有利には半導体スイッチング要素として構成されている少なくとも1つのスイッチング要素と、スイッチング要素に対して並列に接続された少なくとも1つのダイオードとを含む、ようにすることが提案される。これによって、特に、コスト効率を改善することができる。なぜなら、車載電源網を切り離すために、有利にも既存のアセンブリを利用することができるからである。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態においては、さらに、機能ユニットが、電気モータとして構成されており、電気的なステアリングアシストを生成及び/又は提供するために設けられている、ようにすることが提案される。これによって、特に、ステアリングシステムのコンポーネント及び/又はアセンブリを、有利にも計算ロジックへのエネルギ供給のために使用及び/又は制限することができる。
【0021】
本発明はさらに、車両装置を動作させるための方法であって、当該車両装置は、少なくとも1つの計算ロジックと、少なくとも1つの電気的及び/又は電子的な機能ユニットと、計算ロジック及び機能ユニットと電気的な相互作用関係にある少なくとも1つのバッファエネルギ貯蔵器とを有し、バッファエネルギ貯蔵器は、通常の動作状態において、機能ユニットへのエネルギ供給のために、車載電源網の車載電源網電圧を少なくとも部分的にバッファするために及び/又は安定化させるために設けられている、方法に関する。
【0022】
例えばスタータパルス及び/又は車載電源網の短絡によって引き起こされた、車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている少なくとも1つの障害動作状態、及び/又は、車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている少なくとも1つの障害動作状態において、機能ユニットのエネルギ消費を、特に監視ユニットによって少なくとも部分的に制限し、バッファエネルギ貯蔵器によって計算ロジックに少なくとも一時的に電気エネルギを供給することが提案される。特に、障害動作状態において、バッファエネルギ貯蔵器に貯蔵されているエネルギの少なくとも一部、有利には少なくとも大部分が、計算ロジックの少なくとも一時的なエネルギ供給のために、計算ロジックに伝送される。これによって、特に、計算ロジックへのエネルギ供給を改善することができ、有利には、車載電源網の強力な電圧降下が発生した場合においても、計算ロジックへのエネルギ供給が、電圧降下を完全にやり過ごすために十分であることを保証することができ、これによって、有利には、計算ロジックの意図しない及び/又は望ましくないリセット又は再起動を阻止することができる。さらに、有利には、車両装置の柔軟性を高めることができ、及び/又は、効率、特に出力効率、構造スペース効率、コンポーネント効率及び/又はコスト効率を改善することができる。
【0023】
車両装置、及び、車両装置を動作させるための方法は、上述した用途及び実施形態に限定されるべきではない。特に、車両装置、及び、車両装置を動作させるための方法は、本明細書に記載された機能を実現するために、本明細書に挙げられた数とは異なる数の要素、コンポーネント及びユニットを有することができる。
【0024】
図面
以下の図面の説明から、さらなる利点が明らかとなる。図面には、本発明の実施例が示されている。図面、明細書及び特許請求の範囲は、多数の組み合わせられた特徴を含む。当業者は、これらの特徴を有利な方法により個々に考慮して、さらなる有用な組合せへと統合するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】車両装置を備えている、例示的に自動車として構成された車両の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施例の説明
図1は、複数の車輪と、ステアリングシステム26とを備えている、例示的に自動車として構成された車両24の概略図を示している。ステアリングシステム26は、車輪との相互作用関係を有し、車両24の進行方向に対して影響を与えるために設けられている。さらに、ステアリングシステム26は、電気的に支援されるステアリングシステムとして構成されており、従って、電気的なパワーアシスト部を有する。しかしながら、基本的に、ステアリングシステムを、特に液圧式のパワーアシスト部を有する、液圧式に支援されるステアリングシステムとして構成することも考えられる。さらに、ステアリングシステムを、電気的なスーパーインポーズドステアリング部及び/又はパワーステアリング部によって構成することも考えられる。さらに、ステアリングシステムを、基本的に、ステアバイワイヤステアリングシステムとして構成してもよい。
【0027】
車両24は、車載電源網16の形態のエネルギ源を含む(
図2を参照)。車載電源網16は、車載電源網電圧を供給するために設けられている。車載電源網16は、例えば12Vの車載電源網電圧を有する。しかしながら、基本的に、車載電源網は、12Vとは異なる車載電源網電圧を供給してもよい。さらに、複数の車載電源網にそれぞれ異なる車載電源網電圧を供給することが考えられる。
【0028】
車両24は、車両装置をさらに備えている。車両装置は、計算ロジック10を含む。計算ロジック10は、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)と、少なくとも1つのメモリ(図示せず)とを含む。さらに、計算ロジック10は、少なくとも1つの計算ルーチン、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチンを有する、メモリに格納された少なくとも1つのオペレーティングプログラムを含む。
【0029】
計算ロジック10はさらに、車載電源網16との電気的な相互作用関係を有する。計算ロジック10は、通常の動作状態では車載電源網16によって電気エネルギが供給されるように、車載電源網16に接続されている。この場合には、計算ロジック10は、例えばメモリエラーを記録するために設けられている。しかしながら、これに代えて又はこれに加えて、計算ロジックは、バス通信のために設けられてもよいし、及び/又は、少なくとも1つの、有利には安全性に関連している車両コンポーネントの動作を制御するために設けられてもよい。
【0030】
車両装置は、機能ユニット12をさらに含む。機能ユニット12は、電気的及び/又は電子的に構成されている。機能ユニット12は、アクチュエータユニットとして構成されている。この場合には、機能ユニット12は、例えば電気モータとして、特に永久磁石励磁式の同期モータとして構成されている。
【0031】
機能ユニット12は、車載電源網16との電気的な相互作用関係を有する。機能ユニット12は、通常の動作状態では少なくとも部分的に車載電源網16によって電気エネルギが供給されるように、車載電源網16に接続されている。機能ユニット12はさらに、計算ロジック10に対して並列に接続されている。この場合には、機能ユニット12は、特にスイッチング要素などが間に挿入されることなく計算ロジック10に直接的に電気的に接続されている。
【0032】
さらに、機能ユニット12は、ステアリングシステム26の一部である。この場合には、機能ユニット12は、電気的なパワーステアリング部の一部であり、特に、電気的なステアリングアシストを生成及び/又は提供するために設けられている。しかしながら、これに代えて、機能ユニットは、任意の他の機能ユニットとして構成されてもよいし、及び/又は、ステアリングアシスト機能とは異なる機能を実行してもよい。これに関連して、純粋に例として、機能ユニットが、例えば、自律的な走行機能及び/又はステアバイワイヤステアリングシステムを有する車両の場合におけるように、ステアリング調整要素及び/又はラック位置制御部を調整するために設けられていることが考えられる。さらに、機能ユニットは、ステアリングトルクユニットとして構成されてもよいし、車両のステアリングホイールに対するステアリング抵抗及び/又は復元トルクを生成するために設けられてもよい。さらに、基本的に、機能ユニットを、ステアリングシステムとは独立して構成することも考えられる。さらに、機能ユニットを、計算ロジックに対して直列に配置することが考えられる。さらに、機能ユニットを、少なくとも1つのスイッチング要素を介して計算ロジックに接続させることもできる。
【0033】
さらに、車両装置は、少なくとも1つのバッファエネルギ貯蔵器14を含む。この場合には、車両装置は、例えば厳密に1つのバッファエネルギ貯蔵器14を含む。バッファエネルギ貯蔵器14は、コンデンサとして構成されている。バッファエネルギ貯蔵器14は、約1000μFの静電容量を有する。
【0034】
バッファエネルギ貯蔵器14は、車載電源網16との電気的な相互作用関係を有する。さらに、バッファエネルギ貯蔵器14は、計算ロジック10及び機能ユニット12との電気的な相互作用関係を有する。この場合には、バッファエネルギ貯蔵器14は、計算ロジック10及び機能ユニット12に対して並列に接続されている。バッファエネルギ貯蔵器14は、特にスイッチング要素などが間に挿入されることなく計算ロジック10及び機能ユニット12にそれぞれ直接的に電気的に接続されている。
【0035】
バッファエネルギ貯蔵器14は、車載電源網16によって供給された電気エネルギを少なくとも一時的に貯蔵及び/又はバッファするために設けられている。この場合には、バッファエネルギ貯蔵器14は、少なくとも、通常の動作状態において、機能ユニット12へのエネルギ供給のために、車載電源網16の車載電源網電圧を少なくとも部分的にバッファするために及び/又は安定化させるために設けられている。しかしながら、基本的に、車両装置は、複数のバッファエネルギ貯蔵器を有することもできる。さらに、バッファエネルギ貯蔵器を、アキュムレータなどとして構成することもできる。さらに、バッファエネルギ貯蔵器を、計算ロジック及び/又は機能ユニットに対して直列に配置することが考えられる。さらに、計算ロジック及び/又は機能ユニットを、少なくとも1つのスイッチング要素を介してバッファエネルギ貯蔵器に接続させることもできる。
【0036】
さらに、車両装置は、スイッチングユニット22を有する。この場合には、スイッチングユニット22は、極性反転保護回路として構成されている。スイッチングユニット22は、回路技術的に、特に車載電源網16の接続のために設けられた車両装置の車載電源網端子28と、バッファエネルギ貯蔵器14との間に配置されている。この場合には、スイッチングユニット22は、車載電源網16をバッファエネルギ貯蔵器14、機能ユニット12及び計算ロジック10に接続させるために設けられており、及び/又は、車載電源網16をバッファエネルギ貯蔵器14、機能ユニット12及び計算ロジック10から切り離すために設けられている。
【0037】
このためにスイッチングユニット22は、例えばMOSFETの形態の少なくとも1つの半導体スイッチング要素30と、半導体スイッチング要素30に対して並列に接続されたダイオード32とを含む。しかしながら、基本的に、ダイオードを省略することも考えられる。さらに、スイッチングユニットは、複数のスイッチング要素及び/又は半導体スイッチング要素を含むことができる。さらに、スイッチングユニットの少なくとも1つのスイッチング要素を、リレーとして構成することも考えられる。さらに、基本的に、スイッチングユニットを完全に省略することもできる。この場合には、極性反転保護回路を、例えば1つのダイオード及び/又は複数のダイオードのみによって実現することが考えられる。
【0038】
ここで、車両24の動作時には、例えば、車載電源網電圧が電圧限界値を下回っており、及び/又は、車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている、例えばスタータパルス及び/又は車載電源網16の短絡によって引き起こされ得る車載電源網電圧の短時間の電圧降下のような、種々の障害動作状態が発生する可能性がある。このような障害動作状態は、エネルギ供給が不十分であることに起因して、例えば、計算ロジック10の意図しない及び/又は望ましくない再起動をもたらす可能性がある。
【0039】
このような障害動作状態においても計算ロジック10への十分なエネルギ供給を保証するために、車両装置は、監視ユニット18をさらに含む。監視ユニット18は、少なくとも部分的に電気的及び/又は電子的に構成されている。この場合には、監視ユニット18は、電圧検出ユニットとして構成されている。
【0040】
監視ユニット18は、車載電源網16との電気的な相互作用関係を有する。監視ユニット18は、機能ユニット12との電気的な相互作用関係をさらに有する。さらに、監視ユニット18は、スイッチングユニット22と相互作用関係にある。この場合には、監視ユニット18は、スイッチングユニット22に、特にスイッチングユニット22の制御端子に直接的に電気的に接続されている。
【0041】
監視ユニット18は、車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている障害動作状態、及び/又は、車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている障害動作状態を特定するために設けられている。監視ユニット18は、車載電源網16の車載電源網電圧を能動的に監視し、車載電源網電圧の電圧推移及び/又は現在の電圧値に基づいて障害動作状態を特定するために設けられている。障害動作状態は、最大25msの車載電源網電圧の短時間の電圧降下に相当する。さらに、電圧限界値は、3V乃至9Vの間である。さらに、この場合には、監視ユニット18は、障害動作状態を特定するために、車両装置の例えば機関制御部のような車両制御部20に接続されており、障害動作状態を、追加的に車両制御部20の障害信号に基づいて特定するために設けられている。しかしながら、基本的に、障害動作状態を、車載電源網電圧の電圧推移及び/又は現在の電圧値のみに基づいて特定すること、又は、車両制御部の障害信号のみに基づいて特定することも考えられる。
【0042】
さらに、監視ユニット18は、車載電源網電圧が電圧限界値を下回っている障害動作状態、及び/又は、車載電源網電圧の勾配が勾配限界値を上回っている障害動作状態において、機能ユニット12のエネルギ消費を少なくとも部分的に制限して、バッファエネルギ貯蔵器14による計算ロジック10への少なくとも一時的なエネルギ供給を可能にするために設けられている。バッファエネルギ貯蔵器14は、障害動作状態において少なくとも25msの間、計算ロジック10へのエネルギ供給が維持され得るように寸法設定されており、これによって、特に、車載電源網16において発生する全ての電圧降下の少なくとも大部分をやり過ごすことができる。
【0043】
この場合には、監視ユニット18は、障害動作状態において、車載電源網16がバッファエネルギ貯蔵器14、機能ユニット12及び計算ロジック10から切り離されるように、スイッチングユニット22を制御するために設けられており、これによって、特に、バッファエネルギ貯蔵器14に貯蔵されているエネルギが車載電源網16へと逆流することを阻止することができる。さらに、監視ユニット18は、障害動作状態において、機能ユニット12を少なくとも部分的にスイッチオフするために、及び/又は、機能ユニット12を特に省エネルギのアイドル状態に移行させるために設けられており、これによって、機能ユニット12のエネルギ消費が低減され、バッファエネルギ貯蔵器14に貯蔵されているエネルギの少なくとも大部分が、計算ロジック10への少なくとも一時的なエネルギ供給のために計算ロジック10に伝送される。これらの手段により、計算ロジック10への有利なエネルギ供給を達成することができ、車載電源網16の強力な電圧降下が発生した場合でも、計算ロジック10へのエネルギ供給が、電圧降下を完全にやり過ごすために、かつ、計算ロジック10の意図しない及び/又は望ましくない再起動を阻止するために十分であることを保証することができる。