(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】車載ネットワークシステムおよびその通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
(21)【出願番号】P 2020556792
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2019089846
(87)【国際公開番号】W WO2019242492
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】201810651632.2
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810879199.8
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514222673
【氏名又は名称】中▲車▼青▲島▼四方▲車▼▲輛▼研究所有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC QINGDAO SIFANG ROLLING STOCK RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.231 Ruichang Road,Shibei District Qingdao,Shandong 266031 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐燕芬
(72)【発明者】
【氏名】朱游▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】徐▲東▼超
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237074(JP,A)
【文献】特開2010-195292(JP,A)
【文献】特開2009-077412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0163769(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101641910(CN,A)
【文献】片岡 健司 ほか,安全・安定に寄与する鉄道情報処理技術 前編 Railway Information Technology for Safety and Stability(Part I),情報処理 第48巻 第8号,日本,社団法人情報処理学会,2007年08月15日,第48巻,pp.864-872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載信号システムデバイス、列車制御管理システムデバイス、他の車載ネットワークサブシステムデバイス、および2つの独立したサブネットワークを備えることを特徴とする、車載ネットワークシステムであって、前記車載信号システムデバイスが、それぞれ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、安全性レベルに応じて、前記列車制御管理システムデバイスおよび前記他の車載ネットワークサブシステムデバイスが、安全性レベルが高い主要なサブシステムデバイスおよび安全性レベルが低い通常のサブシステムデバイスに分類され、前記主要なサブシステムデバイスの各々が、2つ以上の通信インターフェースを介して前記第1のサブネットワークAおよび前記第2のサブネットワークBにアクセスし、前記通常のサブシステムデバイスが、前記第1のサブネットワークA
または前記第2のサブネットワークBに直接アクセスする、車載ネットワークシステム。
【請求項2】
前記通常のサブシステムデバイスの各々が、1つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係しないデバイスであり、前記通常のサブシステムデバイスの各々が、前記1つの通信インターフェースを介して前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにアクセスすることを特徴とする、請求項
1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項3】
各客車内の前記通常のサブシステムデバイスが、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてメッセージを送信し、この客車内の前記主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の前記主要なサブシステムデバイスが、前記通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、前記第2のサブネットワークBまたは前記第1のサブネットワークAにおいてメッセージを転送し、受信側が、前記2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定することを特徴とする、請求項
1または2に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項4】
前記主要なサブシステムデバイスの各々が、少なくとも2つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係するデバイスであり、前記主要なサブシステムデバイスの各々が、2つ以上の通信インターフェースを介して前記2つのサブネットワークにアクセスすることを特徴とする、請求項1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項5】
各客車内の前記主要なサブシステムデバイスが、前記第1のサブネットワークAおよび前記第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側が、前記2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定することを特徴とする、請求項1または請求項
4に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項6】
前記車載信号システムデバイスが、各々が少なくとも2つの通信インターフェースを有する車載デバイスであり、前記車載信号システムデバイスが、それぞれ、各々が2つ以上の通信インターフェースを介して前記2つのサブネットワークにアクセスすることを特徴とする、請求項1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項7】
前記車載信号システムデバイスが、前記第1のサブネットワークAおよび前記第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側が、前記2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定することを特徴とする、請求項1または請求項
6に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項8】
前記車載信号システムデバイスが通信を実行するステップであって、
前記車載信号システムデバイスが、前記第1のサブネットワークAおよび前記第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側が、前記2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する、
ステップと、
前記主要なサブシステムデバイスが通信を実行するステップであって、
各客車内の前記主要なサブシステムデバイスが、前記第1のサブネットワークAおよび前記第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側が、前記2つのサブネットワークの前記ネットワークデータおよび前記ネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAまたは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する、
ステップと、
前記通常のサブシステムデバイスが通信を実行するステップであって、
各客車内の前記通常のサブシステムデバイスが、前記第1のサブネットワークAもしくは前記第2のサブネットワークBにおいてメッセージを送信し、この客車内の前記主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の前記主要なサブシステムデバイスが、前記通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、前記第2のサブネットワークBもしくは前記第1のサブネットワークAにおいて前記メッセージを転送し、受信側が、前記2つのサブネットワークの前記ネットワークデータおよび前記ネットワーク状態に従って、前記第1のサブネットワークAもしくは前記第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する
、
ステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の車載ネットワークシステムのための通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、鉄道車両のネットワーク通信の技術分野に属し、詳細には、列車の制御システムネットワークと信号システムネットワークを統合するのに適した車載ネットワークシステム、およびその通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載ネットワークシステムは、通常、列車の操車および運行に役立つための信号システムネットワーク、ならびに列車の制御および保守管理に役立つための列車制御管理システム(略してTCMSと呼ばれる)などの、様々なサービスタイプの多くのネットワークから構成される。そのような車載ネットワークシステムには以下の問題がある。
1.複数のシステムセットが共存するため、ネットワークの複雑さが増大し、障害ポイントが増加する。
2.複数のシステムセットが共存するため、列車の製造コストが増大し、キャビネットおよびケーブルの配置の複雑さが改善される。
3.ネットワークが互いに分離されているので、車両保守要員が統合された保守および管理を実現することができず、保守および管理の複雑さおよびコストが増大する。
【0003】
TCMSネットワークおよび信号システムネットワークが同じ物理ネットワークに直接統合された場合、ネットワークを簡略化することができる。しかしながら、TCMSネットワークには安全性レベルが低いサブシステムデバイスが存在するので、リスクを引き起こしやすく、信号システムの制御不能につながり、列車の運行安全に隠れた危険をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車載ネットワークシステムに存在していた問題を考慮して、本出願は、低複雑度、低コスト、および高安全性の車載ネットワークシステム、ならびにその通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本出願の一態様は、車載信号システムデバイス、TCMSデバイス、他の車載ネットワークサブシステムデバイス、および2つの独立したサブネットワークを備える車載ネットワークシステムを提供し、車載信号システムデバイスは、それぞれ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、安全性レベルに応じて、TCMSデバイスおよび他の車載ネットワークサブシステムデバイスは、安全性レベルが高い主要なサブシステムデバイスおよび安全性レベルが低い通常のサブシステムデバイスに分類され、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、通常のサブシステムデバイスは、第2のサブネットワークBおよび/または第1のサブネットワークAに直接アクセスする。
【0006】
一態様では、好ましくは、通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBに直接アクセスする。
【0007】
好ましくは、通常のサブシステムデバイスの各々は、1つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係しないデバイスであり、通常のサブシステムデバイスの各々は、1つの通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにアクセスする。
【0008】
好ましくは、各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第2のサブネットワークBまたは第1のサブネットワークAにおいてメッセージを転送し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0009】
別の態様では、好ましくは、通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスする。
【0010】
好ましくは、通常のサブシステムデバイスの各々は、少なくとも2つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係しないデバイスであり、通常のサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスする。
【0011】
好ましくは、各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0012】
好ましくは、主要なサブシステムデバイスの各々は、少なくとも2つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係するデバイスであり、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して2つのサブネットワークにアクセスする。
【0013】
好ましくは、各客車内の主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0014】
好ましくは、車載信号システムデバイスは、各々が少なくとも2つの通信インターフェースを有する車載デバイスであり、車載信号システムデバイスは、それぞれ、各々が2つ以上の通信インターフェースを介して2つのサブネットワークにアクセスする。
【0015】
好ましくは、車載信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0016】
前述の車載ネットワークシステムに基づいて、本出願の別の態様は、以下のステップを含む、車載ネットワークシステムのための通信方法を提供する。
車載信号システムデバイスが通信を実行する、すなわち、
車載信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、すなわち、
各客車内の主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、すなわち、
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAもしくは第2のサブネットワークBにおいてメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第2のサブネットワークBもしくは第1のサブネットワークAにおいてメッセージを転送し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAもしくは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する、または
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAもしくは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比較して、本出願は、以下の利点および好ましい効果を有する。
(1)本出願によって提供される車載ネットワークシステムでは、車載信号システムデバイス、TCMSデバイス、および他の車載ネットワークサブシステムデバイスは、信号ネットワークとTCMSネットワークの統合を実現するために同じネットワークに組み込まれ、その結果、ネットワークスイッチングデバイス、列車ケーブル、およびキャビネットの数を減少させることができ、車載ネットワークシステムの複雑さおよびメンテナンスコストを削減することができる。一方、デバイスの集中化および最適化された配置により、車載ネットワークシステムの障害ポイントが削減される。
(2)本出願によって提供される車載ネットワークシステムは、列車システム全体の観点から、ネットワークデバイスのデータ共有および故障診断を実現するのに有利であり、列車ネットワークのサービス多様化を実現するのに有利である。
(3)本出願によって提供される車載ネットワークシステムでは、互いに独立した第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは、互いのホットスタンバイとして使用され、主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBの物理的な分離を実現するために、通常のサブシステムデバイスの転送ポイントとして使用される。すなわち、通常のシステムデバイスは、通常のシステムデバイスが配置されていないサブネットワークに直接アクセスすることができない。したがって、信号システムデバイスが配置されている別のネットワークの安全性および安定性が保証され、したがって、安全性レベルが低い通常のサブシステムによって引き起こされる隠れた危険が回避され、ネットワーク統合によって引き起こされるリスクが軽減される。
(4)本出願によって提供される車載ネットワークシステムでは、信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、主要なサブシステムデバイスは、デュアルホーミング方式で第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは、互いにホットスタンバイである。すなわち、2つのサブネットワークは互いに冗長である。サブネットワークの1つに障害が発生すると、もう1つのサブネットワークが通信に使用される。このように、車載ネットワークデバイスの正常な動作が保証され、車両全体のデバイス間の通信は影響を受けず、ネットワークの信頼性が向上する。
(5)本出願によって提供される車載ネットワークシステムでは、通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスすることができ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは互いにホットスタンバイである。すなわち、2つのサブネットワークは互いに冗長である。サブネットワークの1つに障害が発生すると、もう1つのサブネットワークが通信に使用される。このように、車載ネットワークデバイスの正常な動作が保証され、車両全体のデバイス間の通信は影響を受けず、ネットワークの信頼性が向上する。
(6)本出願によって提供される車載ネットワークシステムでは、統合された保守管理プラットフォームが車両保守要員に提供され、その結果、保守コストが削減され、保守の複雑さが軽減され、保守効率が向上する。
(7)本出願によって提供される通信方法では、信号システムネットワークとTCMSネットワークを統合することにより、ネットワークスイッチングデバイス、列車ケーブル、およびキャビネットの数が減少し、列車ネットワークの複雑さ、製造コスト、および保守コストが削減される。
(8)本出願において提供される列車の主要なサブシステムデバイスにより通常のサブシステムデバイスからのメッセージを転送するホットスタンバイメカニズムでは、信号システムネットワークとTCMSネットワークの統合中に、安全性レベルが低い通常のサブシステムによって引き起こされる隠れた危険が回避され、ネットワーク統合によって引き起こされるリスクが軽減され、ネットワークの安全性および安定性が向上する。
(9)本出願によって提供する通信方法では、信号システムデバイス、TCMSデバイス、および他の車載サブシステムデバイスはすべて、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは互いにホットスタンバイである。すなわち、2つのサブネットワークは互いに冗長である。サブネットワークの1つに障害が発生すると、もう1つのサブネットワークが通信に使用される。このように、車載ネットワークデバイスの正常な動作が保証され、車両全体のデバイス間の通信は影響を受けず、ネットワークの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本出願の一実施形態による、車載ネットワークシステムのネットワークアーキテクチャ図である。
【0019】
【
図2】本出願の実施形態による、主要なサブシステムデバイスおよび通常のサブシステムデバイスのメッセージ送信モードの図である。
【0020】
【
図3】本出願の別の実施形態による、車載ネットワークシステムネットワークのネットワークアーキテクチャ図である。
【0021】
【
図4】本出願の別の実施形態による、主要なサブシステムデバイスおよび通常のサブシステムデバイスのメッセージ送信モードの図である。
【0022】
【
図5】本出願のさらに別の実施形態による、車載ネットワークシステムネットワークのネットワークアーキテクチャ図である。
【0023】
【
図6】本出願のさらに別の実施形態による、主要なサブシステムデバイスおよび通常のサブシステムデバイスのメッセージ送信モードの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願は、例示的な実装形態によって以下に具体的に記載される。しかしながら、1つの実装形態における要素、構造、および特徴は、さらなる記述なしに他の実装形態に有利に統合されてよいことを理解されたい。
【0025】
加えて、本出願の説明において、「第1」、「第2」などの用語は、単に例示を目的としたものであり、相対的な重要性を示すかまたは意味するものと解釈されないことに留意されたい。
【0026】
実施形態1
図1を参照して、本出願の一実施形態は、車載信号システムデバイス、TCMSデバイス、他の車載ネットワークサブシステムデバイス、ならびに2つの独立したサブネットワーク、すなわち、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBを備える車載ネットワークシステムを提供し、車載信号システムデバイスは、それぞれ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、安全性レベルに応じて、TCMSデバイスおよび他の車載ネットワークサブシステムデバイスは、安全性レベルが高い主要なサブシステムデバイスおよび安全性レベルが低い通常のサブシステムデバイスに分類され、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、通常のサブシステムデバイスは、第2のサブネットワークBに直接アクセスする。
【0027】
この実施形態では、車載信号システムデバイスを除く他の車載ネットワークデバイスが合理的に分類される。当業者は、車両運行の必要性に応じて高い安全性レベルおよび低い安全性レベルの分類を決定することができる。様々な車両モデルおよび適用状況に対して様々な分類基準が存在する。たとえば、分類は、列車運行の安全性に関係するかどうかに応じて実行されてよい。列車運行の安全性に関係するデバイスは安全性が高い主要なサブシステムデバイスであり、列車運行の安全性に関係しないデバイスは安全性が低い通常のサブシステムデバイスである。この場合、TCMSデバイスはすべて車両運行の安全性に関係するので、それらは主要なサブシステムデバイスに分類される。他の車載ネットワークサブシステムデバイスの中で、列車運行の安全性に関係するデバイスは主要なサブシステムデバイスに分類され、列車運行の安全性に関係しないデバイスは通常のサブシステムデバイスに分類される。分類後、車載ネットワークデバイスは、高い安全性レベルから低い安全性レベルに連続して、車載信号システムデバイス、主要なサブシステムデバイス、および通常のサブシステムデバイスである。
【0028】
この実施形態では、車載信号システムネットワークおよびTCMSネットワークが同じネットワークに統合され、その結果、車載ネットワークシステムの複雑さが軽減される。一方、デバイスの集中化および最適化された配置により、システムの障害ポイントが削減される。加えて、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは互いにホットスタンバイであるため、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいて回復不能な障害が発生したとき、車載ネットワークデバイスの正常な動作が影響を受けないことを保証することができる。
【0029】
様々な車両モデルにより、列車の客車内の車載信号システムデバイス、主要なサブシステムデバイス、および通常のサブシステムデバイスの構成モードは固定されていないことに留意されたい。たとえば、各客車には、3種類のデバイスが同時に装備されていてもよく、1種類または2種類のデバイスのみが装備されていてもよい。加えて、各種類の装備されているデバイスの数も固定されていない。本出願の図面では、表現の便宜のために、各客車は3種類のデバイスを備えているが、それは本出願に対する制限として解釈されるべきではない。
【0030】
車載ネットワークシステムの好ましい設計として、主要なサブシステムデバイスの各々は、少なくとも2つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係するデバイスであり、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して2つのサブネットワークにアクセスする。
【0031】
前述の車載ネットワークシステムでは、各客車内の主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。具体的には、ネットワーク状態は、データ到達時間、ネットワーク安定性、および他の特徴に従って判断され、その結果、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBが選択される。ネットワークデータは、データソースを示すことが可能なフィールドを含み、したがって、選択されたネットワークからのデータがネットワークデータに従って取得される。主要なサブシステムデバイスは、デュアルホーミングホットスタンバイメカニズムを採用する。第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいてネットワーク障害が発生したとき、主要なサブシステムデバイスは影響を受けず、正常に動作する他のサブネットワークにおいてデータを引き続き受け入れるので、ネットワークの信頼性が向上する。
【0032】
好ましい解決策として、主要なサブシステムデバイスは、中央制御ユニット(CCU)、駆動制御ユニット(DCU)、リモート入力/出力モジュール(RIOM)、ブレーキ制御ユニット(BCU)、および補助制御ユニット(ACU)を備える。しかしながら、主要なサブシステムデバイスは上記のデバイスに限定されず、ヒューマンマシンインターフェースユニット(HMI)、緊急記録モジュール(ERM)、および安全性レベルが高い他の車載ネットワークデバイスをさらに備えてよい。ここで、中央制御ユニット(CCU)、リモート入力/出力モジュール(RIOM)、ヒューマンマシンインターフェースユニット(HMI)、および緊急記録モジュール(ERM)はTCMSデバイスに属し、他のデバイスは他の車両ネットワークサブシステムデバイスに属する。
【0033】
車載ネットワークシステムの好ましい設計として、通常のサブシステムデバイスの各々は、1つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係しないデバイスであり、通常のサブシステムデバイスの各々は、1つの通信インターフェースを介して第2のサブネットワークBにアクセスする。
【0034】
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第2のサブネットワークBにおいてメッセージを送信し、この客車のネットワーク内の主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第1のサブネットワークAにおいてメッセージを転送する。第2のサブネットワークBが正常であるとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、またはそうでなければ、第1のサブネットワークAにおいて主要なサブシステムデバイスによって転送された通常のサブシステムデバイスからのデータが受け入れられる。第2のサブネットワークBにおいて列車レベルの障害が発生したとき、主要なサブシステムデバイスは影響を受けず、第1のサブネットワークAからのデータを引き続き受け入れる。主要なサブシステムデバイスは通常のサブシステムデバイスの転送ポイントとして使用されるので、通常のサブシステムデバイスは、この客車のネットワークにおいて主要なサブシステムデバイスによる転送を介して第1のサブネットワークAにデータを送信する。信号システムデバイスも影響を受けず、第1のサブネットワークAにおいてデータを引き続き受け入れる。上記のプロセスの間、通常のサブシステムデバイスは第1のサブネットワークAと直接通信せず、主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスの転送ポイントとして、第1のサブネットワークAと第2のサブネットワークBの物理的な分離を実現する。すなわち、信号ネットワークとTCMSネットワークの統合中に、通常のサブシステムデバイスによって引き起こされる信号システムデバイス内のリスクが排除される。第2のサブネットワークBにおいてブロードキャストストームまたはウイルス侵入などの危険な行動が行われたとき、信号システムデバイスが配置されている第1のサブネットワークAの正常な動作を引き続き保証することができる。主要なサブシステムデバイスと通常のサブシステムデバイスとの間のデータ交換は、主要なサブシステムデバイスと通常のサブシステムデバイスを接続するネットワークスイッチングユニットによって実行される。
【0035】
好ましい解決策として、通常のサブシステムデバイスは、電子ドア制御ユニット(EDCU)、暖房換気空調(HVAC)、乗客情報システム(PIS)、火災警報システム(FAS)、および照明制御ユニット(LCU)を備える。しかしながら、通常のサブシステムデバイスは上記のデバイスに限定されず、稼働部品検出システム、ビデオ監視システムCCTV、バッテリ管理システム(BMS)、および安全性レベルが低い他の車載ネットワークデバイスをさらに備えてよい。
【0036】
車載ネットワークシステムの好ましい設計として、車載信号システムデバイスは、各々が少なくとも2つの通信インターフェースを有する車載デバイスであり、車載信号システムデバイスは、それぞれ、各々が2つ以上の通信インターフェースを介して2つのサブネットワークにアクセスする。すなわち、安全性レベルを保証するために、車載信号システムデバイスの各々は、少なくとも2つの通信インターフェースを含み、少なくとも2つの通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにアクセスし、その結果、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおける車載信号システムは、互いに冗長である。
【0037】
車載信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいてネットワーク障害が発生したとき、信号システムデバイスは影響を受けず、正常に動作する他のサブネットワークにおいてデータを引き続き受け入れるので、ネットワークの信頼性が向上する。
【0038】
好ましい解決策として、車載信号システムデバイスは、運動決定ユニット(MDU)、バイタルデジタルユニット(VDU)、列車アクセスユニット(TAU)、自動列車監視システム(ATS)、安全ゲートウェイデバイス(SG)、および通信管理ユニット(CMU)を備える。しかしながら、車載信号システムデバイスは上記のデバイスに限定されず、自動列車運行システム(ATO)、バイタル運行プロセスユニット(VOP)、および他の信号システムデバイスをさらに備えてよい。
【0039】
図1をさらに参照すると、車載ネットワークシステムの好ましい解決策として、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのトポロジーは線形トポロジーであるが、それに限定されず、リングトポロジー、台形トポロジーなどであってよい。車載ネットワークシステムでは、列車の要件に応じて適切なネットワークトポロジーが選択されてよい。
【0040】
図1を引き続き参照すると、車載ネットワークシステムの好ましい解決策として、2つのサブネットワークと車載ネットワークデバイスとの間の通信を実現するために、複数のネットワークスイッチングユニットが各サブネットワークに配置され、車載ネットワークデバイスは、ネットワークスイッチングユニットを介してサブネットワークに接続される。
【0041】
実施形態2
図3を参照して、本出願の別の実施形態は、車載信号システムデバイス、TCMSデバイス、他の車載ネットワークサブシステムデバイス、ならびに2つの独立したサブネットワーク、すなわち、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBを備える車載ネットワークシステムを提供し、車載信号システムデバイスは、それぞれ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、安全性レベルに応じて、TCMSデバイスおよび他の車載ネットワークサブシステムデバイスは、安全性レベルが高い主要なサブシステムデバイスおよび安全性レベルが低い通常のサブシステムデバイスに分類され、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAに直接アクセスする。車載信号システムネットワークおよびTCMSネットワークが同じネットワークに統合され、その結果、車載ネットワークシステムの複雑さが軽減される。一方、デバイスの集中化および最適化された配置により、システムの障害ポイントが削減される。加えて、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは互いにホットスタンバイであるため、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいて回復不能な障害が発生したとき、車載ネットワークデバイスの正常な動作が影響を受けないことを保証することができる。
【0042】
この実施形態は、各客車内の通常のサブシステムデバイスが、第1のサブネットワークAにおいてメッセージを送信し、この客車のネットワーク内の主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスが、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第2のサブネットワークBにおいてメッセージを転送するという点で実施形態1とは異なる。第1のサブネットワークAが正常であるとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、またはそうでなければ、第2のサブネットワークBにおいて主要なサブシステムデバイスによって転送された通常のサブシステムデバイスからのデータが受け入れられる。第1のサブネットワークAにおいて列車レベルの障害が発生したとき、主要なサブシステムデバイスは影響を受けず、第2のサブネットワークBにおいてデータを引き続き受け入れる。主要なサブシステムデバイスは通常のサブシステムデバイスの転送ポイントとして使用されるので、通常のサブシステムデバイスは、この客車のネットワークにおいて主要なサブシステムデバイスによる転送を介して第2のサブネットワークBにデータを送信する。信号システムデバイスも影響を受けず、第2のサブネットワークBにおいてデータを引き続き受け入れる。上記のプロセスの間、通常のサブシステムデバイスは第2のサブネットワークBと直接通信せず、主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスの転送ポイントとして、第1のサブネットワークAと第2のサブネットワークBの物理的な分離を実現する。すなわち、信号ネットワークとTCMSネットワークの統合中に、通常のサブシステムデバイスによって引き起こされる信号システムデバイス内のリスクが排除される。第1のサブネットワークAにおいてブロードキャストストームまたはウイルス侵入などの危険な行動が行われたとき、信号システムデバイスが配置されている第2のサブネットワークBの正常な動作を引き続き保証することができる。
【0043】
実施形態3
図5を参照して、本出願のさらに別の実施形態は、車載信号システムデバイス、TCMSデバイス、他の車載ネットワークサブシステムデバイス、ならびに2つの独立したサブネットワーク、すなわち、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBを備える車載ネットワークシステムを提供し、車載信号システムデバイスは、それぞれ、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBに直接アクセスし、安全性レベルに応じて、TCMSデバイスおよび他の車載ネットワークサブシステムデバイスは、安全性レベルが高い主要なサブシステムデバイスおよび安全性レベルが低い通常のサブシステムデバイスに分類され、主要なサブシステムデバイスの各々は、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスし、通常のサブシステムデバイスは、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスする。車載信号システムネットワークおよびTCMSネットワークが同じネットワークに統合され、その結果、車載ネットワークシステムの複雑さが軽減される。一方、デバイスの集中化および最適化された配置により、システムの障害ポイントが削減される。加えて、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBは互いにホットスタンバイであるため、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいて回復不能な障害が発生したとき、車載ネットワークデバイスの正常な動作が影響を受けないことを保証することができる。
【0044】
この実施形態は、通常のサブシステムデバイスの各々が、少なくとも2つの通信インターフェースを有し、列車の運行および車両の安全に関係しないデバイスであり、通常のサブシステムデバイスの各々が、2つ以上の通信インターフェースを介して第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにアクセスするという点で実施形態1および2とは異なる。
【0045】
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBのうちの1つにおいてネットワーク障害が発生したとき、通常のサブシステムデバイスは影響を受けず、正常に動作する他のサブネットワークにおいてデータを引き続き受け入れるので、ネットワークの信頼性が向上する。
【0046】
実施形態1および2において提供された車載ネットワークシステムに基づいて、本出願の一実施形態は、以下のステップを含む、車載ネットワークシステムのための通信方法を提供する。
【0047】
S1:車載信号システムデバイスが通信を実行する
車載信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0048】
S2:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する
各客車内の主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0049】
S3:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第2のサブネットワークBまたは第1のサブネットワークAにおいてメッセージを送信し、この客車のネットワーク内の主要なサブシステムデバイスに同一のメッセージを送信し、この客車内の主要なサブシステムデバイスは、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてメッセージを転送し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0050】
ステップS1、S2、およびS3は、順番が入れ替えられてよい。たとえば、S1:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、およびS3:信号システムデバイスが通信を実行するが続くことが可能であり、S1:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:信号システムデバイスが通信を実行する、およびS3:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、が続くことも可能であり、S1:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、およびS3:信号システムデバイスが通信を実行する、が続くことも可能である。
【0051】
本出願によって提供された通信方法では、2つの独立したサブネットワークが信号ネットワークとTCMSネットワークを統合するために使用され、2つのサブネットワークは互いにホットスタンバイであり、その結果、ネットワークの信頼性が向上する。一方、主要なサブシステムデバイスが、2つのサブネットワークの物理的な分離を実現するために、通常のサブシステムデバイスのホットスタンバイとして、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてメッセージを転送し、その結果、通常のサブシステムデバイスが、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBと直接通信しないことが提案されている。したがって、信号ネットワークとTCMSネットワークの統合中に、通常のサブシステムデバイスによって引き起こされる信号システムデバイスにもたらされるリスクが排除され、ネットワークの安全性が向上する。
【0052】
実施形態3において提供された車載ネットワークシステムに基づいて、本出願の別の実施形態は、以下のステップを含む、車載ネットワークシステムのための通信方法を提供する。
【0053】
S1:車載信号システムデバイスが通信を実行する
車載信号システムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時に動作し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0054】
S2:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する
各客車内の主要なサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0055】
S3:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する
各客車内の通常のサブシステムデバイスは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワークデータおよびネットワーク状態に従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBにおいてデータを受け入れることを決定する。
【0056】
ステップS1、S2、およびS3は、順番が入れ替えられてよい。たとえば、S1:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、およびS3:信号システムデバイスが通信を実行する、が続くことが可能であり、S1:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:信号システムデバイスが通信を実行する、およびS3:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、が続くことも可能であり、S1:通常のサブシステムデバイスが通信を実行する、の後に、S2:主要なサブシステムデバイスが通信を実行する、およびS3:信号システムデバイスが通信を実行する、が続くことも可能である。
【0057】
本出願によって提供された通信方法では、2つの独立したサブネットワークが信号ネットワークとTCMSネットワークを統合するために使用され、2つのサブネットワークは互いにホットスタンバイであり、その結果、ネットワークの信頼性が向上する。
【0058】
本出願によって提供される通信方法が、具体的な実施形態によって以下にさらに記載される。説明は、車載信号システムデバイスの一例として列車アクセスユニット(TAU)を、主要なサブシステムデバイスの一例として中央制御デバイス(CCU)を、通常のサブシステムデバイスの一例として火災警報システム(FAS)を取り上げて与えられる。
【0059】
実施形態4
第1のサブネットワークAが一次ネットワークとして定義され、第2のサブネットワークBが補助ネットワークとして定義される。
【0060】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信する。第1のサブネットワークAが正常である場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生した場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0061】
図2を参照すると、CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第1のサブネットワークAが正常であるとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生したとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。FASは、第2のサブネットワークBにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第1のサブネットワークAにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第1のサブネットワークAが正常であるとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生したとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0062】
あるいは、
図4を参照すると、CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第1のサブネットワークAが正常であるとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生したとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。FASは、第1のサブネットワークAにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第2のサブネットワークBにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第1のサブネットワークAが正常であるとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生したとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0063】
実施形態5
第2のサブネットワークBが一次ネットワークとして定義され、第1のサブネットワークAが補助ネットワークとして定義される。
【0064】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信する。第2のサブネットワークBが正常である場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生した場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0065】
図2を引き続き参照すると、CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第2のサブネットワークBが正常であるとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生したとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。FASは、第2のサブネットワークBにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第1のサブネットワークAにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第2のサブネットワークBが正常であるとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生したとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0066】
あるいは、
図4を引き続き参照すると、CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第2のサブネットワークBが正常であるとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生したとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。FASは、第1のサブネットワークAにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第2のサブネットワークBにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第2のサブネットワークBが正常であるとき、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生したとき、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0067】
実施形態6
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBが優先順位をつけずに使用され、2つのサブネットワークはすべて正常に動作する。
【0068】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワーク状態およびネットワークデータに従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBのデータを受け入れる。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0069】
CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。FASは、第2のサブネットワークBにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第1のサブネットワークAにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、逆に、第2のサブネットワークBのデータ状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0070】
あるいは、CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージ1を送信する。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。FASは、第1のサブネットワークAにおいてメッセージ2を送信し、このメッセージをCCUにも送信する。メッセージ1に加えて、CCUは、FASのためのホットスタンバイ機能を実現するために、第2のサブネットワークBにおいてFASからのメッセージ2を送信する。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、逆に、第2のサブネットワークBのデータ状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0071】
実施形態7
第1のサブネットワークAが一次ネットワークとして定義され、第2のサブネットワークBが補助ネットワークとして定義される。
【0072】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信する。第1のサブネットワークAが正常である場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生した場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0073】
CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信する。第1のサブネットワークAが正常である場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生した場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0074】
FASは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信する。第1のサブネットワークAが正常である場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられ、第1のサブネットワークAにおいて障害が発生した場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0075】
実施形態8
第2のサブネットワークBが一次ネットワークとして定義され、第1のサブネットワークAが補助ネットワークとして定義される。
【0076】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信する。第2のサブネットワークBが正常である場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生した場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0077】
CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信する。第2のサブネットワークBが正常である場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生した場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0078】
FASは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信する。第2のサブネットワークBが正常である場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられ、第2のサブネットワークBにおいて障害が発生した場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。
【0079】
実施形態9
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBが優先順位をつけずに使用され、2つのサブネットワークはすべて正常に動作する。
【0080】
第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおけるTAUは、それぞれのサブネットワークにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワーク状態およびネットワークデータに従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBのデータを受け入れる。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0081】
CCUは、互いにホットスタンバイである第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信する。受信側は、2つのサブネットワークのネットワーク状態およびネットワークデータに従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBのデータを受け入れる。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0082】
FASは、第1のサブネットワークAおよび第2のサブネットワークBにおいて同時にメッセージを送信し、受信側は、2つのサブネットワークのネットワーク状態およびネットワークデータに従って、第1のサブネットワークAまたは第2のサブネットワークBのデータを受け入れる。第1のサブネットワークAのネットワーク状態およびネットワークデータが第2のサブネットワークBのそれらよりも優れている場合、第1のサブネットワークAのデータが受け入れられる。逆に、第2のサブネットワークBのネットワーク状態およびネットワークデータが第1のサブネットワークAのそれらよりも優れている場合、第2のサブネットワークBのデータが受け入れられる。
【0083】
前述の実施形態は、本出願を説明するために使用され、本出願を限定するものではない。本発明の趣旨および特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく本出願に対して行われたいかなる修正および変更も、本出願の保護範囲に入るものとする。